[第1実施形態のレンズ特性測定装置の構成]
図1は、第1実施形態のレンズ特性測定装置10の外観斜視図である。レンズ特性測定装置10は、眼鏡フレーム101に保持されている左右の眼鏡レンズ102(本発明の被検レンズに相当)の光学特性を同時測定する。この光学特性は、例えばバックフォーカスBf(図9参照)、球面屈折力、円柱屈折力(乱視屈折力)、円柱軸角度(乱視軸角度)、及びプリズム値(プリズム屈折力及びプリズム基底方向)等である。
眼鏡フレーム101は、左右の眼鏡レンズ102をそれぞれ保持する左右のリム104(レンズ枠ともいう)と、左右のリム104を接続するブリッジ部105と、左右のリム104にそれぞれ設けられた鼻当てパッド部106及びテンプル107と、を備える。
レンズ特性測定装置10は、図中上下方向に間隔をあけて設けられた上側筐体11及び下側筐体12と、上側筐体11及び下側筐体12の背面側に設けられた背部筐体13と、を備える。
上側筐体11の前面側には、眼鏡レンズ102の光学特性の測定結果等を表示するモニタ15と、レンズ特性測定装置10の各種操作を行う各種の操作スイッチ16と、を備える。また、上側筐体11の内部には、後述のセット部20に支持された眼鏡フレーム101の左右の眼鏡レンズ102に対してそれぞれ測定光である線状光束46(図4参照)を照射する一対の走査光学系35(図4参照)が設けられている。なお、一対の走査光学系35の一部は背部筐体13の内部に設けられている。
下側筐体12の上面には、既述の上側筐体11の下方位置[上側筐体11からの線状光束46(図4参照)の照射位置]にセット部20が設けられている。このセット部20には、光学特性の測定対象となる眼鏡フレーム101がセット及び支持される。
下側筐体12及び背部筐体13の内部には、後述の図4に示すように、セット部20にセットされた眼鏡フレーム101の左右の眼鏡レンズ102をそれぞれ透過した線状光束46が照射される一対のハルトマンプレート32と、一対のハルトマンプレート32をそれぞれ透過した線状光束46が投影される一対のスクリーン36と、一対のスクリーン36をそれぞれ撮影する一対の撮影光学系37と、が設けられている。
図2はセット部20の斜視図である。図3はセット部20の上面図である。図2及び図3に示すように、セット部20には、一対の挟持部材21,22がレンズ特性測定装置10の前後方向に間隔をあけて配置されている。挟持部材21,22は、互いに接近する方向と互いに離間する方向とに変位可能であり、両者の間にセットされた眼鏡フレーム101を挟持する。これにより、眼鏡フレーム101の上下方向をレンズ特性測定装置10の前後方向に揃え、且つ眼鏡レンズ102の表面を上側筐体11に対向させることができる。なお、眼鏡レンズ102の裏面とは眼鏡フレーム101の使用者(装着者)の顔面に対向する面であり、その反対側の面が眼鏡レンズ102の表面である。
また、セット部20には、眼鏡フレーム101の左右の眼鏡レンズ102の裏面側をそれぞれ支持する一対の支持ピン23が立設されている。各支持ピン23は、挟持部材21,22の前後方向の略中間点に配置されている。挟持部材21,22は、眼鏡フレーム101のフレーム中点が各支持ピン23を結んだ線上に配置されるように、眼鏡フレーム101の位置決めを行う。これにより、左右の眼鏡レンズ102をレンズ特性測定装置10による測定位置に位置合わせできる。なお、図中の符号OAは、左右の眼鏡レンズ102の光軸OA(光学中心位置)である。
挟持部材21,22の左右の両側には、眼鏡フレーム101の一部に当接して、眼鏡フレーム101を安定した姿勢で維持するフレームサポート25,26が設けられている。
また、挟持部材21,22の間であって、左右方向の略中央部には、前側の挟持部材21に対向する面が円柱周面として形成された鼻当て支持部材24が配置されている。この鼻当て支持部材24は、前後方向略中央位置から後方に摺動可能であって且つ不図示のバネ等により前方向に付勢されている。そして、鼻当て支持部材24は、挟持部材21,22により眼鏡フレーム101をその前後から挟持した場合に、眼鏡フレーム101の鼻当てパッド部106に当接する。
背部筐体13には、セット部20よりも上方向側の位置において、一対のアーム27をそれぞれ回転自在に支持する一対の回転軸28が設けられている。各アーム27の先端部にはそれぞれ押えピン29が設けられている。各アーム27がそれぞれ回転軸28を中心として回転すると、各アーム27の各々の押えピン29が、支持ピン23に支持されている左右の眼鏡レンズ102の表面に当接して、各眼鏡レンズ102を下方向側へ押圧する。これにより、左右の眼鏡レンズ102が支持ピン23に押さえ付けられて固定される。
各支持ピン23は、セット部20の底部に設けられた一対のカバーガラス30上に立設されている。各カバーガラス30は、各支持ピン23によりそれぞれ支持されている左右の眼鏡レンズ102をそれぞれ透過した線状光束46(図4参照)が入射する位置に設けられている。各カバーガラス30にそれぞれ入射した線状光束46は、カバーガラス30の下方側に設けられているハルトマンプレート32(図4参照)に照射される。
[走査光学系、ハルトマンプレート、スクリーン、及び撮影光学系]
図4は、左右の眼鏡レンズ102の光学特性の測定に用いられる一対の「走査光学系35、ハルトマンプレート32、スクリーン36、及び撮影光学系37」の一方を代表例として示した概略図である。
図4に示すように、走査光学系35は、セット部20にセットされた眼鏡レンズ102の上方側(本発明の他面側)に配置されており、光源40とレンズ41とスキャナ42とミラー43とコリメータ44とを備える。
光源40は、例えばレーザ光源、SLD(Super luminescent diode)光源、及びLED(Light emitting diode)光源等が用いられ、可視波長域の測定光(検査光)として線状光束46(線状光、線光束、走査光束、又はビームともいう)を出射する。この線状光束46は、レンズ41、スキャナ42、ミラー43、及びコリメータ44を経て眼鏡レンズ102に照射される。
スキャナ42は、例えばガルバノスキャナであり、互いに直交する揺動軸を中心として揺動する2枚のガルバノミラー42A(偏向ミラー)を近接配置した構造を有する。なお、線状光束46の進行方向下流側のガルバノミラー42Aは、コリメータ44の焦点位置に配置されている。
各ガルバノミラー42Aの一方はその揺動角度θを多段階(無段階)で調整することで、線状光束46を第1方向xに走査する。また、各ガルバノミラー42Aの他方はその揺動角度φを多段階(無段階)で調整することで、線状光束46を第1方向xと直交する第2方向yに走査する。これにより、スキャナ42は、線状光束46をミラー43に向けて出射しながら、この線状光束46の走査角度(揺動角度θ,φ)を変えることで、線状光束46を2次元方向に高速走査できる。
なお、スキャナ42は、ガルバノスキャナに限定されるものではなく、共振型スキャナ(レゾナントスキャナ)及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スキャナなどの線状光束46を2次元方向で高速走査可能な各種スキャナを用いてもよい。
ミラー43は、スキャナ42から入射した線状光束46をコリメータ44に向けて反射する。コリメータ44は、ミラー43から入射した線状光束46を撮影光学系37の撮影光軸OBに平行な平行光とした後、支持ピン23上に支持されている眼鏡レンズ102に向けて出射する。これにより、眼鏡レンズ102の表面側に線状光束46が照射される。
スキャナ42が線状光束46を2次元方向(第1方向x及び第2方向y)に走査することで、眼鏡レンズ102の表面上で線状光束46が2次元方向(第1方向X及び第2方向Y)に走査される。なお、本実施形態では第1方向x及び第1方向Xはレンズ特性測定装置10の左右方向であり、第2方向yはレンズ特性測定装置10の上下方向であり、第2方向Yはレンズ特性測定装置10の前後方向である。眼鏡レンズ102の表面上での線状光束46の走査により、この眼鏡レンズ102の表面上の複数の走査位置Pに線状光束46が順次照射される。そして、眼鏡レンズ102の各走査位置Pに照射された線状光束46は、それぞれ眼鏡レンズ102及びカバーガラス30を透過して、双方の下方側(本発明の一面側)に位置するハルトマンプレート32に照射される。
この際に本実施形態では、光源40から線状光束46が連続的に出射される。この場合、眼鏡レンズ102の表面上を線状光束46が一筆書きのように走査されるため、眼鏡レンズ102の表面上の各走査位置Pは連続している。
図5は、ハルトマンプレート32の上面図(下面図)である。図4及び図5に示すように、ハルトマンプレート32は、眼鏡レンズ102及びカバーガラス30に対して走査光学系35とは反対側の位置、より具体的にはカバーガラス30の下面に当接して設けられている。また、ハルトマンプレート32は、その中心32Oが撮影光軸OBに一致するように予め位置調整されている。
ハルトマンプレート32は、例えばガラス基板にクロム等を蒸着させた遮光部材である。このハルトマンプレート32には、多数のピンホール32A(開口又は穴ともいう)が既述の第1方向X及び第2方向Yに沿ってそれぞれ等間隔でマトリクス状に形成(2次元配列)されている。例えば本実施形態では、直径0.5mmのピンホール32Aが2mmピッチで13×23個配列されている。各ピンホール32Aは線状光束46を透過する。なお、ハルトマンプレート32内の各ピンホール32Aの配列方向及び配列パターンは特に限定はされず、例えば円周パターン或いは放射パターン等で配列されていてもよい。また、各ピンホール32A,32Bにはそれぞれ集光レンズが配置されていてもよい。
図6は、ハルトマンプレート32の上面の一部を拡大した拡大図である。図4及び図6に示すように、既述のように眼鏡レンズ102の表面上で線状光束46が2次元方向に連続的に走査されると、眼鏡レンズ102等を透過してハルトマンプレート32に照射される線状光束46も、ハルトマンプレート32の上面で2次元方向に連続的に走査される。この連続的に走査とは、任意の線状光束46が少なくとも一つ前の線状光束46の一部と重なり合うことである。そして、ハルトマンプレート32の上面での線状光束46の走査位置PHがピンホール32Aの位置に一致(ほぼ一致を含む)した場合、線状光束46がピンホール32Aを透過してスクリーン36に投影される。
ここで、光源40から出射される線状光束46の直径(光束径)は、ハルトマンプレート32上においてピンホール32Aの直径PDよりも大きく形成されていることが好ましい。これにより、ピンホール32Aを透過してスクリーン36に投影される線状光束46の直径(光束径)を直径PDに調整することができる。線状光束46の直径が小さくなり過ぎると、スクリーン36上に投影された線状光束46による点像の位置検出に失敗するおそれがあるので、線状光束46の直径を直径PDよりも大きく形成することで、線状光束46による点像の位置検出を確実に実行することができる。
また、光源40から出射される線状光束46の直径(光束径)は、ハルトマンプレート32上において互いに隣り合うピンホール32Aの距離PLよりも小さく形成されていることが好ましい。
図7は、線状光束46の直径に上限を設けた理由を説明するための説明図である。図7に示すように、仮に線状光束46の直径が距離PLよりも大きい場合、線状光束46は、互いに隣り合うピンホール32Aを同時に透過してそれぞれスクリーン36に投影される場合がある。この場合、図7の符号7Aに示すように、眼鏡レンズ102がマイナス度数又はプラスの弱度数のレンズであれば、スクリーン36上に同時投影される2つの線状光束46による点像は分離している。
これに対して、図7の符号7Bに示すように、眼鏡レンズ102がプラスの強度数のレンズである場合、スクリーン36上に同時投影される2つの線状光束46による点像は重なっているため、これら2つの点像を分離検出することは困難である。また、図7の符号7Cに示すように、眼鏡レンズ102がさらにプラスの強度数のレンズである場合、互いに隣り合うピンホール32Aを同時に透過した線状光束46がスクリーン36の手前で交差するため、スクリーン36上に同時投影される2つの線状光束46による点像の位置関係が反転してしまう。
従って、本実施形態では線状光束46の直径を距離PLよりも小さく形成することで、2つの線状光束46による点像の重なり及び位置関係の反転を防止することができる。
図4に戻って、スクリーン36は、ハルトマンプレート32の下方側に設けられている。スクリーン36は、例えば砂掛けしたガラス基板等であり、拡散透過性を有している。このスクリーン36には、ハルトマンプレート32のピンホール32Aを透過した線状光束46が投影される。そして、スキャナ42が線状光束46を2次元方向に走査し、これに伴い線状光束46が透過するピンホール32Aが変更されるのに応じて、スクリーン36に投影される線状光束46の投影位置Qも変化する。
従って、本実施形態では、詳しくは後述するが、スクリーン36に投影される線状光束46の投影位置Qを検出し、且つこの線状光束46が透過したピンホール32Aの位置を判別(特定)することにより、眼鏡レンズ102を透過してスクリーン36に投影された線状光束46の傾き角を検出することができる。
撮影光学系37は、スクリーン36に対してハルトマンプレート32とは反対側、すなわちスクリーン36の下方側に設けられており、線状光束46が投影されているスクリーン36をその下面側から撮影する。この撮影光学系37は、その上方側から下方側に向かって、フィールドレンズ48とカメラ50とを備える。フィールドレンズ48は、線状光束46が投影されているスクリーン36の像をカメラ50に入射する。
カメラ50は、結像レンズ50Aと、CCD(Charge Coupled Device)型又はCMOS(complementary metal oxide semiconductor)型の撮像素子50Bと、を備える。結像レンズ50Aは、フィールドレンズ48を経て入射したスクリーン36の像を撮像素子50Bの撮像面に入射する。
撮像素子50Bは、走査光学系35による線状光束46の走査が実行されている間、結像レンズ50Aを通して入射したスクリーン36の像を連続して撮像する。これにより、カメラ50により連続的に撮影されたスクリーン36の撮影画像52が、カメラ50から後述の統括制御部58へ出力される。
[統括制御部]
図8は、レンズ特性測定装置10の下側筐体12又は背部筐体13の内部に設けられている第1実施形態の統括制御部58の機能ブロック図である。図8に示すように、統括制御部58は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はFPGA(field-programmable gate array)等を含む各種の演算部及びメモリ等から構成された演算回路であり、操作スイッチ16に入力された各種の操作指示に基づきレンズ特性測定装置10の各部を統括制御する。また、統括制御部58には記憶部59が接続されている。
統括制御部58は、記憶部59内の不図示のソフトウェアプログラムを実行することで、光学系制御部62、撮影制御部64、画像取得部66、位置取得部68、位置判別部69、及び光学特性取得部70として機能する。
光学系制御部62は、走査光学系35の光源40による線状光束46の照射とスキャナ42の駆動(線状光束46の走査角度)とを制御する。光学系制御部62は、操作スイッチ16への測定開始操作の入力に応じて、光源40からの連続的な線状光束46の出射と、スキャナ42による所定の走査パターンでの線状光束46の2次元方向の走査と、を実行させる。これにより、眼鏡レンズ102の表面上で線状光束46が2次元方向に走査され、且つ同時に眼鏡レンズ102を透過した線状光束46がハルトマンプレート32の上面にて2次元方向に走査される。
撮影制御部64は、カメラ50によるスクリーン36の撮影を制御する。撮影制御部64は、走査光学系35による線状光束46の走査が実行されている間、カメラ50によるスクリーン36の撮影を連続して実行させる。これにより、カメラ50から後述の画像取得部66に対してスクリーン36の撮影画像52が連続して入力される。
ここで、カメラ50による撮影が、線状光束46の走査位置PHとピンホール32Aの位置とが一致したタイミングで実行された場合、この撮影で得られた撮影画像52には、スクリーン36に投影された線状光束46による点像が含まれる。なお、本実施形態では、個々の撮影画像52に含まれる線状光束46による点像の数が1点になるように、前述の光学系制御部62が走査光学系35による線状光束46の走査速度を制御している。
一方、カメラ50による撮影が、線状光束46の走査位置PHとピンホール32Aの位置とが一致しないタイミングで実行された場合、この撮影で得られた撮影画像52には線状光束46による点像が含まれない。
画像取得部66は、カメラ50から撮影画像52を逐次取得する。また同時に、画像取得部66は、撮影画像52の撮影時にスキャナ42から出射される線状光束46の走査角度(各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φ)を、光学系制御部62等から逐次取得する。この線状光束46の走査角度は、眼鏡レンズ102の表面上において線状光束46が照射された走査位置Pを示す情報である。そして、画像取得部66は、カメラ50から取得した撮影画像52を、線状光束46の走査角度を識別可能な状態で、記憶部59内の画像情報72(図9参照)に記憶させる。
図9は、画像情報72、及びこの画像情報72を基に位置取得部68が取得する投影位置情報74の説明図である。図9に示すように、画像情報72には、画像取得部66から連続して入力された各撮影画像52が、各々に対応する線状光束46の走査角度(走査位置P)に関連付けられた状態で記憶されている。
位置取得部68は、撮影画像52から、スクリーン36上に投影されている線状光束46の投影位置Qの位置座標を取得する。この位置取得部68は、走査光学系35による線状光束46の走査及びカメラ50によるスクリーン36の撮影が完了した場合、記憶部59から画像情報72を取得する。そして、位置取得部68は、画像情報72内の各撮影画像52を解析して、各撮影画像52の中で線状光束46による点像を含む撮影画像52を判別する。次いで、位置取得部68は、線状光束46による点像を含む各撮影画像52から、線状光束46の投影位置Qの位置座標を取得した結果に基づき、投影位置情報74を生成する。なお、投影位置Qの位置座標は、例えばスクリーン36上で撮影光軸OBと交差する点を原点とした座標である。
投影位置情報74には、線状光束46による点像を含む撮影画像52に対応する線状光束46の各走査角度と、これら各走査角度にそれぞれ対応する投影位置Qの位置座標と、が対応付けて記憶されている。この投影位置情報74は、位置取得部68から位置判別部69及び光学特性取得部70にそれぞれ出力される。
図8に戻って、位置判別部69は、スクリーン36上に投影された線状光束46が透過したハルトマンプレート32のピンホール32A及びその位置であるピンホール位置W(図11参照)を判別する。位置判別部69は、走査光学系35による線状光束46の走査及びカメラ50によるスクリーン36の撮影が完了後、位置取得部68から既述の投影位置情報74を取得し、且つ記憶部59内の装置情報77を参照する。
装置情報77には、後述の図10に示すように、ハルトマンプレート32及びスクリーン36の撮影光軸OB上での位置に関する情報、及びハルトマンプレート32内の各ピンホール32Aの位置座標が予め記憶されている。なお、各ピンホール32Aの位置座標は、ハルトマンプレート32の中心32O(撮影光軸OBに合わせて位置決めされている中心32O)を原点とした座標である。
図10は、位置判別部69によるピンホール32A及びその位置の判別処理を説明するための説明図である。図10に示すように、最初に位置判別部69は、投影位置情報74に基づき、スクリーン36上に投影された線状光束46が透過したハルトマンプレート32のピンホール32Aを判別(特定)する。
具体的に、線状光束46の走査角度(各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φ)に基づき、線状光束46の走査位置P(眼鏡レンズ102に対するコリメータ44からの線状光束46の照射位置)が求められる。また、眼鏡レンズ102を透過した線状光束46の屈折角度は、眼鏡レンズ102の種類(プラス度数、マイナス度数、及び度数の大きさ等)に応じて変わるが、この眼鏡レンズ102を透過した線状光束46のスクリーン36上での投影位置Qは既に投影位置情報74で得られている。
一方、レンズ特性測定装置10において、ハルトマンプレート32内の各ピンホール32Aの位置は固定である。また、ハルトマンプレート32とスクリーン36との位置関係も固定であり、眼鏡レンズ102の透過後からスクリーン36に投影されるまでの線状光束46の傾き角は一定である。
そして、眼鏡レンズ102の光学中心部を透過してハルトマンプレート32の中心部に照射された線状光束46は、眼鏡レンズ102による屈折の影響が小さいので、走査位置Pと投影位置Qとのずれは小さくなる。このため、眼鏡レンズ102の中心部に対応する走査位置P及び投影位置Qを最初に解析することで、線状光束46が通過したピンホール32Aを高精度に判別することができる。次いで、このピンホール32Aのピンホール位置W(図11参照)を基準とすることで、線状光束46の走査角度(走査位置P)と、線状光束46の投影位置Qと、装置情報77[各ピンホール32Aのピンホール位置W(図11参照)]とに基づき、眼鏡レンズ102の光学中心部以外を透過した線状光束46が透過したピンホール32Aについても判別できる。
従って、位置判別部69は、線状光束46の走査角度(走査位置P)と、線状光束46のスクリーン36上での投影位置Qと、装置情報77に記憶されている各ピンホール32Aのピンホール位置W(図11参照)とに基づき、線状光束46が透過したピンホール32Aのピンホール位置Wを判別することができる。
そして、位置判別部69は、各線状光束46の走査角度と、各線状光束46にそれぞれ対応するピンホール位置W(図11参照)との対応関係を示すピンホール位置情報79を、光学特性取得部70へ出力する。
なお、位置判別部69は、他の方法を用いて、各線状光束46がそれぞれ透過したピンホール32A及びピンホール位置W(図11参照)の判別を行ってもよい。例えば、線状光束46として白色光を用い、ハルトマンプレート32内の予め定めた1又は複数のピンホール32Aに特定の波長域の光(赤色光、緑色光、青色光等)を透過するフィルタを設ける。なお、複数のピンホール32Aにフィルタを設ける場合、ピンホール32Aごとにフィルタの種類(透過する光の波長域)を異ならせてもよい。また、撮像素子50Bとしてカラー撮像素子を用いる。
この例において、位置判別部69は、画像情報72内の各撮影画像52を解析することにより、フィルタ付きのピンホール32Aを透過した線状光束46による点像を含む撮影画像52(以下、第1の撮影画像52)と、フィルタ無のピンホール32Aを透過した線状光束46による点像を含む撮影画像52(以下、第2の撮影画像52)と、を判別できる。
そして、ハルトマンプレート32内でのフィルタ付きのピンホール32Aのピンホール位置W(図11参照)及び線状光束46の走査パターンを装置情報77に予め記憶しておくことにより、位置判別部69は、装置情報77を参照するだけで、第1の撮影画像52に対応するピンホール位置Wを簡単に判別することができる。
次いで、位置判別部69は、各第1の撮影画像52及び各第2の撮影画像52の撮影順番と、線状光束46の走査パターンと、ハルトマンプレート32内の各ピンホール32Aの位置関係とに基づき、先に判別したフィルタ付きのピンホール32Aの位置を基準として、各第2の撮影画像52にそれぞれ対応するフィルタ無のピンホール32Aの位置を判別することができる。
図8に戻って、光学特性取得部70は、位置取得部68から入力された投影位置情報74と、位置判別部69から入力されたピンホール位置情報79と、記憶部59内の装置情報77とに基づき、眼鏡レンズ102の光学中心位置(光軸OA)及び光学特性[バックフォーカスBf(図11参照)等]を取得する。
図11は、光学特性取得部70による眼鏡レンズ102の光学中心位置(光軸OA)の取得と、バックフォーカスBfの取得とを説明するための説明図である。図11に示すように、投影位置情報74及びピンホール位置情報79に基づき、各線状光束46がそれぞれ透過したピンホール32Aのピンホール位置Wと、各線状光束46のスクリーン36上での投影位置Qとが得られている。このため、光学特性取得部70は、スクリーン36に投影された線状光束46ごとのピンホール位置W及び投影位置Qに基づき、スクリーン36に投影された各線状光束46の傾き角をそれぞれ検出する。これにより、光学特性取得部70は、光軸OBと平行な線状光束46を射出する走査位置Pから、眼鏡レンズ102の光学中心位置、すなわち光軸OAの位置を取得(演算)することができる。
また、装置情報77に基づきハルトマンプレート32及びスクリーン36の各々の撮影光軸OB上での位置は既知であるので、ハルトマンプレート32とスクリーン36との間の距離ΔLは既知である。さらに、眼鏡レンズ102のセット位置は既知であるので、眼鏡レンズ102の裏面とハルトマンプレート32との間の距離ΔLAも既知である。また、スクリーン36に投影された線状光束46ごとに、ピンホール位置W及び投影位置Qとの差(撮影光軸OBに対して垂直方向の差)であるΔHも求められる。従って、これらの情報に基づき、光学特性取得部70は、眼鏡レンズ102のバックフォーカスBfを取得(演算)することができる。
なお、レンズ特性測定装置10は、ハルトマンプレート32、スクリーン36、及び撮影光学系37については、既述の図22に示したような太径の測定光を眼鏡レンズ102に照射する従来の装置と基本的に同じである。このため、光学特性取得部70は、線状光束46ごとのピンホール位置W及び投影位置Qが求められていれば、従来の装置と基本的に同じ演算方法で眼鏡レンズ102の光学中心位置及びバックフォーカスBfを求められる。また、光学特性取得部70は、バックフォーカスBf以外の眼鏡レンズ102の光学特性についても、従来の装置と同様の演算方法で求めることができる。さらに、光学特性取得部70は、眼鏡レンズ102内での光学特性値の分布を示すマッピング画像についても、従来の装置と同様に取得することができる。
光学特性取得部70は、取得した眼鏡レンズ102の光学中心位置(光軸OA)及び光学特性(バックフォーカスBf等)に関する情報をモニタ15に出力して表示させる。
[第1実施形態のレンズ特性測定装置の作用]
図12は、第1実施形態のレンズ特性測定装置10による眼鏡フレーム101の左右の眼鏡レンズ102の光学特性の測定処理(レンズ特性測定装置の作動方法)の流れを示すフローチャートである。なお、レンズ特性測定装置10は、左右の眼鏡レンズ102の光学特性を同時もしくは時系列的に測定するが、ここでは左右の眼鏡レンズ102のいずれか一方の光学特性の測定を例に挙げて説明を行う。
検者は、測定対象の眼鏡フレーム101をセット部20にセットして、挟持部材21,22により眼鏡フレーム101を挟持し、且つ支持ピン23により支持されている眼鏡レンズ102を押えピン29で押さえ付けて固定する(ステップS1)。なお、眼鏡フレーム101をセット部20にセットした後、操作スイッチ16での測定開始操作に応じて、挟持部材21、22、及び押えピン29を不図示のモータ駆動機構等で駆動して自動的に眼鏡フレーム101を固定してもよい。
次いで、検者が操作スイッチ16で測定開始操作を入力すると、光学系制御部62が光源40から線状光束46を連続的に出射させ、且つ予め定めた走査パターンに従ってスキャナ42の2枚のガルバノミラー42Aの少なくとも一方を変位させる。これにより、眼鏡レンズ102の表面上で線状光束46が上述の走査パターンで2次元方向に走査される(ステップS2)。
そして、眼鏡レンズ102の表面上での線状光束46の走査に応じて、既述の図6に示したように、眼鏡レンズ102及びカバーガラス30を透過した線状光束46がハルトマンプレート32の上面で2次元方向に走査される。これにより、ハルトマンプレート32の上面において、線状光束46の走査位置PHがピンホール32Aの位置に一致した場合に、このピンホール32Aを線状光束46が透過して、スクリーン36に投影される。その結果、線状光束46がハルトマンプレート32の各ピンホール32Aを順番に透過してそれぞれスクリーン36上に投影される。
本実施形態では、眼鏡レンズ102の測定範囲に対応した太径の測定光を眼鏡レンズ102に照射する従来の装置(図22参照)とは異なり、眼鏡レンズ102の表面上で細径の線状光束46を走査するので、光源40の光度を充分に確保することができ、さらに光源40の配光により撮影画像52の中心部と周辺部とで線状光束46による点像の明るさに差が生じることが防止される。このため、従来の装置よりも、撮影画像52の中心部又は周辺部での点像の光量変化が減少するので、撮影画像52の周辺部が暗くなったり、撮影画像52の中心部の点像が白飛びしたりすることが防止されるので、撮影画像52の中心部及び周辺部での測定感度の低下が防止される。
一方、撮影制御部64は、線状光束46の走査が実行されている間、カメラ50を制御して、スクリーン36の連続的な撮影を実行させる(ステップS3)。そして、カメラ50により撮影されたスクリーン36の撮影画像52は、画像取得部66へ逐次出力され、この画像取得部66によって線状光束46の走査角度(各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φ)を識別可能な状態で、記憶部59内の画像情報72に逐次記憶される。
この際に本実施形態では、個々の撮影画像52に含まれる線状光束46による点像の数が1点になるように、走査光学系35による線状光束46の走査速度を制御している。このため、既述の図7の符号7B及び符号7Cに示したように眼鏡レンズ102がプラスの強度数の凸レンズであった場合でも、スクリーン36上に投影される線状光束46による点像の重なり及び位置関係の反転を防止することができる。これにより、上記特許文献1のようにスクリーン36を移動させる必要がなくなるので、レンズ特性測定装置10の大型化及びスクリーン36の移動距離の再現性確保という問題は発生しない。
走査光学系35による線状光束46の走査と、カメラ50によるスクリーン36の連続撮影とが完了すると、位置取得部68は、記憶部59に記憶されている画像情報72内の各撮影画像52を解析して、線状光束46による点像を含む撮影画像52の判別と、線状光束46の投影位置Qの位置座標の取得とを行う(ステップS4)。そして、位置取得部68は、既述の図9に示したように投影位置情報74を生成し、この投影位置情報74を位置判別部69と光学特性取得部70とにそれぞれ出力する。
次いで、位置判別部69は、位置取得部68から入力された投影位置情報74(線状光束46の走査角度及び投影位置Q)と、記憶部59内の装置情報77(ピンホール32Aごとのピンホール位置W)とに基づき、各線状光束46がそれぞれ透過したピンホール32Aのピンホール位置Wを判別する(ステップS5)。そして、位置判別部69は、既述の図10に示したようにピンホール位置情報79を生成し、このピンホール位置情報79を光学特性取得部70へ出力する。
投影位置情報74及びピンホール位置情報79の入力を受けた光学特性取得部70は、これらの情報に基づき、各線状光束46がそれぞれ透過したピンホール32Aのピンホール位置Wと、各線状光束46のスクリーン36上での投影位置Qとを判別する。次いで、この判別結果に基づき、光学特性取得部70は、スクリーン36に投影された各線状光束46の傾き角をそれぞれ検出する。
そして、光学特性取得部70は、各線状光束46の傾き角と記憶部59内の装置情報77とに基づき、既述の図11に示したように、従来の装置(図22参照)と基本的に同じ演算方法(解析方法)を用いて、眼鏡レンズ102の光学中心位置(光軸OA)及び光学特性[バックフォーカスBf等]を取得する(ステップS6)。この光学特性取得部70による眼鏡レンズ102の光学特性等の測定結果は、モニタ15に出力されて表示される。
[第1実施形態のレンズ特性測定装置の効果]
以上のように第1実施形態のレンズ特性測定装置10では、眼鏡レンズ102の表面上で線状光束46を走査することにより、撮影画像52の中心部と周辺部とで線状光束46による点像の明るさに差が生じることが防止されるため、撮影画像52の中心部及び周辺部での測定感度の低下が防止される。また、スクリーン36を移動させる移動機構を設けることなく、スクリーン36上に投影される線状光束46による点像の重なり及び位置関係の反転を防止することができるので、レンズ特性測定装置10の大型化が防止される。その結果、撮影画像52の中心部及び周辺部での測定感度の低下防止と、レンズ特性測定装置10の大型化防止とが実現される。
[第2実施形態のレンズ特性測定装置]
図13は、第2実施形態のレンズ特性測定装置10Aの統括制御部58の機能ブロック図である。この第2実施形態のレンズ特性測定装置10Aは、線状光束46の走査範囲及び走査パターンの設定と、1フレーム分の撮影画像52に含まれる線状光束46による点像の点像数の調整と、を行う機能を有している。
図13に示すように、第2実施形態のレンズ特性測定装置10Aは、統括制御部58が走査設定部88及び点像数調整部90として機能する点を除けば上記第1実施形態のレンズ特性測定装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
走査設定部88は、操作スイッチ16に入力された走査設定操作に応じて、光学系制御部62に対して、線状光束46の走査範囲(眼鏡レンズ102の測定範囲)及び走査パターンの設定指令を行う。この指令を受けて、光学系制御部62は、走査光学系35のスキャナ42の駆動を制御して、線状光束46の走査範囲及び走査パターンの設定を行う。
線状光束46の走査範囲を設定(変更)可能にすることで、眼鏡レンズ102内において光学特性の測定に必要な領域だけを選択的に線状光束46で走査することができる。例えば、眼鏡レンズ102が単焦点レンズである場合、広範囲な測定範囲(走査範囲)で線状光束46を走査する必要はない。このため、線状光束46がハルトマンプレート32の例えば中央部の4つのピンホール32Aを走査するように、線状光束46の走査範囲を設定する。この場合には、レンズ特性測定装置10による光学特性の測定(解析)を高速で行うことができる。
また、線状光束46の走査パターンを設定(変更)可能にすることで、例えば走査パターンをリング状あるいは他の特殊形状のパターンに設定(変更)可能にした場合に、眼鏡レンズ102の透過前後の線状光束46のパターンの形状変化を測定することで、眼鏡レンズ102の度数分布の測定が可能となる。
図14は、撮影画像52に含まれる線状光束46による点像の点像数の調整を説明するための説明図である。図13及び図14に示すように、点像数調整部90は、操作スイッチ16に対する点像数の入力操作に応じて、光学系制御部62及び撮影制御部64に対して点像数の調整指令を行う。
点像数の調整指令を受けた光学系制御部62は、走査光学系35のスキャナ42の走査速度を調整する。例えば1フレーム分の撮影画像52に含まれる点像数を増加させる場合にはスキャナ42の走査速度を増加させ、逆に点像数を減らす場合にはスキャナ42の走査速度を減少させる。
また、点像数の調整指令を受けた撮影制御部64は、カメラ50の撮像素子50Bの駆動を制御して、撮像素子50Bの露光時間(シャッター速度)を調整する。例えば、撮影制御部64は、スキャナ42の走査速度に基づき、点像数の調整指令で指定された数の線状光束46による点像が1フレーム分の撮影画像52に含まれるように、撮像素子50Bの露光時間を調整する。なお、撮像素子50Bの露光時間は固定して(撮像素子50Bの制御は行わずに)、スキャナ42の走査速度のみを調整してもよい。
このようにスキャナ42及び撮像素子50Bを制御することで、図14の符号XIVAに示すように、1フレーム分の撮影画像52に含まれる点像数を1点に調整したり、或いは図14の符号XIVBに示すように、1フレーム分の撮影画像52に含まれる点像数を複数点に調整したりすることができる。特にスキャナ42の走査速度を増加させて、1フレーム分の撮影画像52に含まれる点像数を増加させるほど、眼鏡レンズ102の光学測定を短時間で完了することができる。例えばカメラ50による1フレームの撮影画像52の撮影中に、眼鏡レンズ102の表面の線状光束46の走査を完了させてもよい。
なお、1フレーム分の撮影画像52に含まれる点像数を増加させた場合、既述の図7の符号7B,7Cに示したように、眼鏡レンズ102の種類(例えばプラスの強度数の凸レンズ)によっては、スクリーン36に投影される線状光束46による点像が重なったり或いは位置関係が反転したりするおそれがある。この場合、点像数調整部90を作動させて、スキャナ42の走査速度を低下させることで、撮影画像52に含まれる点像数を減少(例えば1点に減少)させる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態のレンズ特性測定装置10B(図15参照)について説明を行う。上記各実施形態のスキャナ42は、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φを調整することにより、線状光束46が2次元方向に走査されるように線状光束46の走査角度を調整している。なお、線状光束46の走査角度(出射角度ともいう)とは、例えば、各ガルバノミラー42Aが揺動中心位置にある場合にスキャナ42から出射される線状光束46、すなわちスキャナ42の走査中心位置における線状光束46に平行な基準方向(図15中の一点鎖線で表示)を基準とする角度(図15中のxy方向の角度)である。
この際に、スキャナ42の種類、例えばガルバノスキャナ及びMEMSスキャナ(2軸MEMSミラー)、特にMEMSスキャナでは、ミラーの揺動角度θ,φの再現性が低いという問題がある。ここでいう再現性が低いとは、既述の光学系制御部62によるミラーの揺動角度θ,φの指示値(制御値、設定値、又は目標値ともいう)と、実際のミラーの揺動角度θ,φとの間に乖離が生じることがある。
このようにミラーの揺動角度θ,φの再現性が低くなると、ミラーの揺動角度θ,φの指示値は同じであっても、実際のミラーの揺動角度θ,φに変動が生じるため、これに応じてスキャナ42から出射される線状光束46の走査角度にも変動が生じてしまう。この場合には、既述の各走査位置Pがそれぞれ変動するため、線状光束46が透過するハルトマンプレート32内のピンホール32Aの位置(光束プロファイル)も変動してしまう。その結果、光学特性取得部70による眼鏡レンズ102の光学特性の測定精度が低下したり、光学特性取得部70により取得される眼鏡レンズ102の光学特性のマッピング画像(SCAマッピング画像)の再現性が低下したりするという問題が発生する。なお、「SCA」のSは球面度数(spherical)、Cは乱視度数(cylinder)、及びAは乱視軸(Axis)である。
また、眼鏡レンズ102の表面(レンズ面)の精度と、この表面上のごみ及び傷とを考慮した場合、ミラーの揺動角度θ,φの再現性、すなわちスキャナ42から出射される線状光束46の走査角度の再現性は高い方が望ましい。
そこで、第3実施形態のレンズ特性測定装置10B(図15参照)は、光学系制御部62による各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの制御(本発明の走査角度の制御に相当)の補正を行う。
図15は、第3実施形態のレンズ特性測定装置10Bの走査光学系35、スクリーン36、及び撮影光学系37の概略図である。図15に示すように、レンズ特性測定装置10Bは、ハーフミラー400及び受光光学系402を備える点を除けば、上記第1実施形態のレンズ特性測定装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
ハーフミラー400は、本発明の光分割部に相当するものであり、コリメータ44と、セット部20にセットされた眼鏡レンズ102の表面との間に設けられている。このハーフミラー400は、コリメータ44から出射された線状光束46の一部を後述の受光光学系402に向けて反射し、線状光束46の残りをそのまま透過させて眼鏡レンズ102に向けて出射する。
受光光学系402は、レンズ404、レンズ406、及びCCD型(CMOS型でも可)の撮像素子408を備える。レンズ404,406は、ハーフミラー400にて反射された線状光束46を撮像素子408の受光面に入射させる。
撮像素子408は、ハーフミラー400からレンズ404,406を通して入射された線状光束46を受光する受光面を有している。そして、撮像素子408は、線状光束46を受光面で受光(撮像)して受光信号を統括制御部58へ出力する。この受光信号は、撮像素子408の受光面での線状光束46の受光位置(受光面内の画素の位置座標)を示す。
ここで、撮像素子408の受光面にて受光される線状光束46の受光位置は、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φ、すなわちスキャナ42から出射される線状光束46の走査角度(θ,φ)ごとに異なる。このため、受光面上での線状光束46の受光位置と、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φ(線状光束46の走査角度)との間には1対1の関係が成り立つ。従って、受光面上での線状光束46の受光位置から、各ガルバノミラー42Aの実際の揺動角度θ,φが求められる。
図16は、第3実施形態のレンズ特性測定装置10Bの統括制御部58の機能ブロック図である。図16に示すように、第3実施形態の統括制御部58は、前述の各部の他に測定値取得部410及び補正部412として機能する点を除けば、上記第1実施形態の統括制御部58と基本的に同じである。
測定値取得部410は、撮像素子408から入力された受光信号と、記憶部59から取得した対応情報414とに基づき、各ガルバノミラー42Aの実際の揺動角度θ,φの測定値(実測値ともいう)を取得する。対応情報414は、既述の受光面上での線状光束46の受光位置と、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φとの対応関係を示す情報であり、予め実験又はシミュレーション等を行うことにより作成されている。これにより、測定値取得部410は、撮像素子408からの受光信号に基づき受光面内での線状光束46の受光位置を判別し、さらにこの受光位置に基づき対応情報414を参照することにより、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値を取得する。
各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値は、本発明の走査角度の測定値に相当する。そして、測定値取得部410は、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値に関する情報を補正部412へ出力する。
補正部412は、光学系制御部62による各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの制御を補正する。補正部412は、測定値取得部410から各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値を取得すると共に、光学系制御部62から各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの指定値を取得する。この指定値は、本発明の走査角度の指定値に相当する。
次いで、補正部412は、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値と指定値とを比較した結果に基づき、各揺動角度θ,φの測定値が指定値に一致するように、光学系制御部62による揺動角度θ,φの制御を補正する。これにより、補正部412は、光学系制御部62による線状光束46の走査角度の制御を補正することができる。
図17は、第3実施形態のレンズ特性測定装置10Bによる各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの補正制御の流れを示すフローチャートである。図17に示すように、既述の図12に示したステップS2,S3において、光学系制御部62が、走査光学系35を制御してスキャナ42から線状光束46を出射させると、この線状光束46がミラー43及びコリメータ44を介してハーフミラー400に入射する。そして、線状光束46の一部が、ハーフミラー400によって分割されると共に受光光学系402に向けて反射される(ステップS20、本発明の光分割ステップに相当)。
ハーフミラー400によって反射された線状光束46は、受光光学系402の撮像素子408の受光面で受光される(ステップS21、本発明の受光ステップに相当)。これにより、撮像素子408から受光信号が測定値取得部410へ出力される。
測定値取得部410は、撮像素子408から入力された受光信号が示す受光面上での線状光束46の受光位置に基づき、記憶部59から読み出した対応情報414を参照して、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値を取得する(ステップS22、本発明の測定値取得ステップに相当)。そして、測定値取得部410は、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値を補正部412へ出力する。
補正部412は、測定値取得部410から各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値を取得する。また、補正部412は、光学系制御部62から各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの指定値を取得する(ステップS23)。なお、この指定値の取得のタイミングは、ステップS22の後に限定されるものではなく、ステップS22の前であってもよい。
そして、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値と指定値とを比較した結果に基づき、光学系制御部62による揺動角度θ,φの制御を補正する(ステップS24、本発明の補正ステップに相当)。これにより、各ガルバノミラー42Aの実際の揺動角度θ,φ(線状光束46の走査角度)がその指定値と一致する。
このように第3実施形態のレンズ特性測定装置10Bでは、光学系制御部62による各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの制御を補正することで、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φ(線状光束46の走査角度)の指定値に対する測定値の誤差を低減させることができる。これにより、指示値に対する各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの変動、すなわちスキャナ42から出射される線状光束46の走査角度の変動が低減される。その結果、既述の各走査位置Pの変動が抑えられるので、光学特性取得部70による眼鏡レンズ102の光学特性の測定精度及び光学特性のマッピング画像の再現性が向上する。
上記第3実施形態では、コリメータ44と、セット部20にセットされた眼鏡レンズ102の表面との間にハーフミラー400を配置しているが、例えばスキャナ42とミラー43との間に配置したり、或いはミラー43とコリメータ44との間に配置したりしてもよい。また、ミラー43をハーフミラー400に置換してもよい。すなわち、スキャナ42から眼鏡レンズ102の表面に至る線状光束46の光路の途中位置であれば、ハーフミラー400の配置位置は特に限定はされない。
上記第3実施形態では、第1実施形態のレンズ特性測定装置10に対して各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの制御を補正する機能を追加した例について説明しているが、上記第2実施形態に対しても同様の機能を追加してもよい。
[第4実施形態]
図18は、第4実施形態のレンズ特性測定装置10Cの機能ブロック図である。この第4実施形態のレンズ特性測定装置10Cでは、既述の第3実施形態で説明した測定値取得部410により取得された各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値を用いて、眼鏡レンズ102の光学特性(マッピング画像)を求める。
図18に示すように、第4実施形態のレンズ特性測定装置10Cは、統括制御部58が上記第3実施形態の補正部412(図16参照)として機能せず且つ光学特性取得部70がマッピング画像生成部416として機能する点を除けば、上記第3実施形態のレンズ特性測定装置10Bと基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
第4実施形態の測定値取得部410は、上記第3実施形態と同様に、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの測定値、すなわち線状光束46の走査角度の測定値を取得する。そして、測定値取得部410は、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φ(線状光束46の走査角度)の測定値を記憶部59内の画像情報72に記憶させる。
図19は、第4実施形態の画像情報72及び投影位置情報74の説明図である。図20は、第4実施形態の位置判別部69によるピンホール32A及びそのピンホール位置Wの判別処理を説明するための説明図である。
図19に示すように、第4実施形態の画像情報72には、画像取得部66から連続して入力される各撮影画像52が、各々に対応して測定値取得部410から入力される線状光束46の走査角度の測定値に関連付けられた状態で記憶される。
第4実施形態の位置取得部68は、上記第1実施形態(図9参照)で説明したように、画像情報72に基づき投影位置情報74の生成を行う。この第4実施形態の投影位置情報74には、スクリーン36上に投影されている線状光束46の投影位置Qの位置座標と、各々の位置座標に対応する線状光束46の走査角度の測定値と、が関連付けられた状態で記憶されている。
図20に示すように、第4実施形態の位置判別部69は、上記第1実施形態(図10参照)で説明したように、投影位置情報74及び装置情報77に基づき、スクリーン36上に投影された線状光束46が透過したハルトマンプレート32のピンホール32A及びそのピンホール位置Wを判別する。
具体的に位置判別部69は、投影位置情報74に記憶されている各線状光束46の走査角度(各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φ)の測定値に基づき、各線状光束46の走査位置Pの測定置を求める。これにより、位置判別部69は、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの再現性が低い場合でも、各投影位置Qの位置座標にそれぞれ対応する各線状光束46の走査位置Pを正確に求められる。その結果、位置判別部69は、眼鏡レンズ102の中心部に対応する走査位置P及び投影位置Qを上記第1実施形態よりも高精度に解析することができるので、これら走査位置P及び投影位置Qを通る線状光束46が透過したピンホール32Aを第1実施形態よりも高精度に判別することができる。
以下、第1実施形態と同様に、位置判別部69は、最初に判別したピンホール32Aのピンホール位置Wを基準として、各線状光束46の走査角度(走査位置P)の測定値と、各投影位置Qと、装置情報77とに基づいて、眼鏡レンズ102の光学中心部以外を透過した線状光束46が透過したピンホール32Aについても判別する。その結果、第4実施形態では、スクリーン36上に投影された線状光束46が透過したピンホール32A及びそのピンホール位置Wを第1実施形態よりも高精度に判別することができる。そして、位置判別部69は、各線状光束46の走査角度の測定値と、各線状光束46にそれぞれ対応するピンホール位置Wとの対応関係を示すピンホール位置情報79を光学特性取得部70へ出力する。
図18に戻って、第4実施形態の光学特性取得部70は、上記第1実施形態(図11参照)と同様に、位置取得部68から入力された投影位置情報74と、位置判別部69から入力されたピンホール位置情報79と、記憶部59内の装置情報77とに基づき、眼鏡レンズ102の光学中心位置(光軸OA)及び光学特性を取得する。なお、この光学特性には、既述の第1実施形態で説明したバックフォーカスBf以外に、眼鏡レンズ102の各部の球面度数、円柱度数(乱視度数)、円柱軸角度(乱視軸角度)、プリズム値(プリズム度数及びプリズム基底方向)等が含まれる。
マッピング画像生成部416は、光学特性取得部70が取得した眼鏡レンズ102の光学特性と、投影位置情報74或いはピンホール位置情報79等から取得した各線状光束46の走査角度(走査位置P)の測定値とに基づき、公知の手法で眼鏡レンズ102の光学特性の分布を示すマッピング画像を生成する。そして、マッピング画像生成部416は、マッピング画像を記憶部59及びモニタ15に出力する。
図21は、第4実施形態のレンズ特性測定装置10Cによるマッピング画像の生成の流れを示すフローチャートである。図21に示すように、ステップS20からステップS22までの処理は、既述の図17に示した第3実施形態と同じであるため、ここでは説明を省略する。なお、ステップS20が本発明の光分割ステップに相当し、ステップS21が本発明の受光ステップに相当し、ステップS22が本発明の測定値取得ステップに相当する。
ステップS22が完了すると、測定値取得部410は、既述の図19に示したように、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φ(各線状光束46の走査角度)の測定値を記憶部59内の画像情報72に記憶させる。これにより、画像情報72において、各撮影画像52と、各撮影画像52のそれぞれ対応する線状光束46の走査角度の測定値とが対応付けられる。
次いで、位置取得部68は、記憶部59内の画像情報72に基づき、既述の図19に示した投影位置情報74を生成し、この投影位置情報74を位置判別部69へ出力する(ステップS30、本発明の位置取得ステップに相当)。
投影位置情報74の入力を受けた位置判別部69は、最初に、投影位置情報74に基づき、各線状光束46の走査角度の測定値にそれぞれ対応する走査位置Pの測定置を求める。次いで、位置判別部69は、各走査位置Pの測定値と、スクリーン36上に投影されている線状光束46の投影位置Qの位置座標とに基づいて、眼鏡レンズ102の中心部に対応する走査位置P及び投影位置Qの解析と、これら走査位置P及び投影位置Qに対応する線状光束46が透過したピンホール32Aの判別と、を行う。
そして、位置判別部69は、最初に判別したピンホール32Aのピンホール位置Wを基準として、各線状光束46の走査角度の測定値と、各投影位置Qと、装置情報77とに基づき、残りの線状光束46が透過したピンホール32Aのピンホール位置Wについても判別する。
このように位置判別部69は、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの再現性が低い場合でも、各走査位置Pの測定値等から、各線状光束46が透過したピンホール32A及びそのピンホール位置Wを高精度に判別することができる(ステップS31、本発明の位置判別ステップに相当)。そして、位置判別部69は、既述の図20に示したピンホール位置情報79を、光学特性取得部70へ出力する。
ピンホール位置情報79の入力を受けた位置判別部69は、このピンホール位置情報79と、既述の投影位置情報74及び装置情報77とに基づき、眼鏡レンズ102の光学中心位置及び光学特性を取得する(ステップS32、本発明の光学特性取得ステップに相当)。
次いで、マッピング画像生成部416は、光学特性取得部70が取得した眼鏡レンズ102の光学特性と、投影位置情報74等から取得した各線状光束46の走査角度(走査位置P)の測定値とに基づき、眼鏡レンズ102のマッピング画像を生成し、このマッピング画像をモニタ15等に出力する(ステップS33)。
以上のように第4実施形態では、各線状光束46の走査角度(各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φ)の測定値を用いて眼鏡レンズ102の光学特性及びマッピング画像の測定を行うことができる。その結果、各ガルバノミラー42Aの揺動角度θ,φの再現性が低い場合でも、この揺動角度θ,φのばらつきが眼鏡レンズ102の光学特性の測定結果及びマッピング画像に反映されることが防止される。これにより、眼鏡レンズ102の光学特性の測定精度と、同一の眼鏡レンズ102に対するマッピング画像の再現性と、を向上させることができる。
[その他]
上記各実施形態では、眼鏡レンズ102の表面上を線状光束46で走査する間、この線状光束46の光量を一定にしているが、例えば、線状光束46の走査角度に応じて光源40から出射される線状光束46の光量(輝度)を調整してもよい。具体的には、眼鏡レンズ102の中央部に照射される線状光束46の光量が低く且つ眼鏡レンズ102の周辺部に照射される線状光束46の光量が高くなるように、線状光束46の光量を調節する。これにより、撮影画像52の中央部及び周辺部での線状光束46の明るさを均一に調整することができる。
上記各実施形態では、眼鏡レンズ102の表面上を線状光束46で走査する間におけるカメラ50の撮影条件は固定されているが、例えば線状光束46が眼鏡レンズ102の中央部を走査している場合と、線状光束46が眼鏡レンズ102の周辺部を走査している場合とにおいて、カメラ50の撮影条件を変更してもよい。この撮影条件とは、例えばカメラ50の撮像素子50Bの露光(蓄積)時間及びゲイン等である。
上記各実施形態のレンズ特性測定装置10等において、眼鏡レンズ102のプリズム量のみを測定する場合、スキャナ42による線状光束46の走査は行わずに、撮影光軸OBに沿った線状光束46のみを眼鏡レンズ102に照射してもよい。
上記各実施形態では、眼鏡フレーム101の左右の眼鏡レンズ102の光学特性を眼鏡フレーム101の置き換えなしに測定するレンズ特性測定装置10等を例にあげて説明したが、例えば左右の眼鏡レンズ102の光学特性を片方ずつ測定するレンズ特性測定装置(レンズメータ)、及び生地レンズの光学特性を測定するレンズ特性測定装置(レンズメータ)等の各種の被検レンズを測定するレンズ特性測定装置に本発明を適用できる。また、眼鏡以外の各種用途の被検レンズの光学特性を測定するレンズ特性測定装置に対しても本発明を適用できる。