以下、実施形態によるブレーキ装置を、四輪自動車に適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態によるブレーキ装置1を示している。ブレーキ装置1は、車両を停止させるために制動力を付与するものである。ブレーキ装置1は、車両のホイルシリンダ(図示せず)にブレーキ液を供給するためマスタシリンダ(M/C)2で発生させるブレーキ液圧を電気的に制御する電動倍力装置(電動式ブースタ)として構成されている。この場合、ホイルシリンダは、例えば、車両の車輪側に設けられたディスクブレーキやドラムブレーキ等のブレーキシリンダに対応する。
即ち、電動倍力装置としてのブレーキ装置1は、運転者のブレーキペダルの操作等に基づいて、マスタシリンダ2でブレーキ液圧を発生させることにより、ホイルシリンダにブレーキ液圧を供給する。このとき、ホイルシリンダがディスクブレーキの場合には、パッドがディスクに押付けられることにより、車両に制動力が付与される。また、ホイルシリンダがドラムブレーキの場合には、シューがドラムに押付けられることにより車両に制動力が付与される。
ブレーキ装置1は、車両の制動力を発生させるために作動する電動機3と、制動要求信号に応じて電動機3を制御する制御装置9とを備えている。
電動機3は、制動要求信号に応じて制動力を出力する。電動機3は、例えばDCブラシレスモータからなる電動倍力装置の電動モータとして構成され、後述の制御装置9により駆動制御される。電動機3は、ブレーキペダル(図示せず)の操作(踏込み)量に基づき、マスタシリンダ2内のピストン(図示せず)を作動させてマスタシリンダ2内にブレーキ液圧を発生させる。
インバータ4は、電動機3に必要な電力を供給する。インバータ4は、電動機3に電気的に接続されている。また、インバータ4は、電源ライン5を介して、主電源6と電気的に接続されている。インバータ4は、例えば、複数のスイッチング素子(図示せず)を備えている。スイッチング素子のオン(閉)/オフ(開)は、制御装置9によって制御される。このために、インバータ4と制御装置9は、信号線4Aを介して接続されている。
主電源6は、例えば車両に搭載されたバッテリである。主電源6は、エンジン(図示せず)により回転駆動されて発電するジェネレータ(図示せず)の電力を蓄電する。主電源6は、例えばエンジンの始動用電動機であるスタータモータ(図示せず)に接続されている。主電源6は、スタータモータが駆動するときに電力を供給している。
主電源6は、電源ライン5とインバータ4を介して電動機3と接続されている。電源ライン5の途中には、スイッチ素子8が設けられている。主電源6は、電源ライン5とは別個の電源ライン7を介して制御装置9と接続されている。主電源6は、電動機3および制御装置9に電力を供給する。なお、主電源6は、車両に搭載された他の電気機器(制御装置)等にも電力を供給している。
スイッチ素子8は、主電源6と電動機3とを接続する電源ライン5に設けられている。スイッチ素子8は、例えば電磁リレー等によって構成され、後述の制御装置9と信号線8Aにより接続されている。
スイッチ素子8は、後述の制御装置9からの制御信号に基づいて、接続状態(ON状態)と非接続状態(OFF状態)とに切換えられる。即ち、スイッチ素子8がON状態のときには、主電源6と電動機3とが接続状態となり、電動機3は主電源6から電力の供給を受けることができる。
制御装置9は、電動機3を制御する。制御装置9は、例えばマイクロコンピュータ等によって構成されている。制御装置9は、電動機3の駆動を制御してマスタシリンダ2内にブレーキ液圧を発生させるマスタ圧制御ユニットとなっている。制御装置9は、主電源6からの電力供給に基づいて駆動する。制御装置9の出力側には、電動機3のインバータ4、スイッチ素子8が電気的に接続されている。
制御装置9は、運転者によるブレーキペダルの操作に基づくストロークセンサ(図示せず)の検出値、および、図示しない上位のコントロールユニットである上位ECU(例えば、先進運転システム:ADAS)が送信する制動指令である自動ブレーキ要求信号を受信する。制御装置9は、ストロークセンサの検出信号(制動要求信号)、または、自動ブレーキ要求信号(制動要求信号)に基づいて電動機3を作動させ、マスタシリンダ2内にブレーキ液圧を発生させる。
制御装置9は、電流制限判定処理部10を備えている。電流制限判定処理部10は、インバータ4を制御することにより、電動機3に供給する電流を制御する。電流制限判定処理部10のメモリ(図示せず)には、図3に示す制御処理のプログラム、主電源6の電圧の閾値Vth11,Vth12が記憶されている。電流制限判定処理部10は、図3に示す制御処理のプログラムに従って、電流を制限しない通常制御と、電流を制限した電流制限制御との切り替えを実行する。
電流制限判定処理部10は、図示しない電圧検出回路から検出された主電源6の電圧に応じた検出信号を受信する。これに加え、電流制限判定処理部10は、例えばCAN(Controller area network)を介して、車両の走行状態に関する情報を受信する。そして、電流制限判定処理部10は、主電源6の電圧と走行状態とに基づいて電動機3への電力供給を制限するか否かを決定している。
図2に示すように、電流制限判定処理部10は、電流制限を行わず制動要求信号に応じて電動機3を制御する通常制御状態と、電流制限を行うか否かを判定する中間状態と、電流制限を必ず行う電流制限制御状態とを有している。中間状態では、走行状態に基づいた切り替え条件の成否に応じて電流制限を行うか否かを判定する。前述した3つの状態を判定するために、電流制限判定処理部10は、2つの閾値Vth11,Vth12を有する。閾値Vth11は、第1の所定値であり、主電源6の電源電圧Vが閾値Vth11未満である場合は必ず電流制限(縮退処理)を実行しなくてはならない電圧値である。閾値Vth12は、第2の所定値であり、電源としては正常ではないが、電流制限(縮退処理)は必須ではない電圧値である。
電流制限判定処理部10は、主電源6の電源電圧Vが閾値Vth12よりも高い場合(V>Vth12)には、通常制御状態になる。電流制限判定処理部10は、主電源6の電源電圧Vが閾値Vth12以下で閾値Vth11以上の場合(Vth12≧V≧Vth11)には、中間状態になる。電流制限判定処理部10は、主電源6の電源電圧Vが閾値Vth11未満の場合(V<Vth11)には、電流制限制御状態になる。
本実施の形態によるブレーキ装置1は、上述の如き構成を有する。次に、電流制限判定処理部10による制御処理について、図3を参照して説明する。なお、図3に示す制御処理は、例えばエンジン始動スイッチがON操作された後、所定の周期毎に繰り返し実行される。また、図3に示す流れ図のステップは、それぞれ「S」という表記を用い、例えばステップ1を「S1」として示す。
S1では、電源電圧Vが閾値Vth12より高いか否かを判定する。電源電圧Vが閾値Vth12より高い場合(V>Vth12)は、S1で「YES」と判定し、S5に移行する。S5では、通常制御を継続する。このとき、電動機3に対する電流は制限されず、制動要求信号に応じて必要な電流が電動機3に供給される。
一方、電源電圧Vが閾値Vth12以下である場合(V≦Vth12)は、S1で「NO」と判定し、S2に移行する。S2では、電源電圧Vが閾値Vth11以上か否かを判定する。
電源電圧Vが閾値Vth11未満である場合(V<Vth11)は、S2で「NO」と判定し、S6に移行する。S6では、電流制限制御を実行する。このとき、電動機3に対する電流を制限するため、電流制限制御状態でマスタシリンダ2が出力可能な最大液圧P11は、通常制御状態でマスタシリンダ2が出力可能な最大液圧P12に比べて低下する(P11<P12)。
一方、電源電圧Vが閾値Vth11以上の場合(V≧Vth11)は、S2で「YES」と判定し、S3に移行する。S3では、例えばドライバ(運転者)や上位ECU(例えば、ADAS)に対して、中間状態であることを通知する。中間状態では、走行状態に応じて通常制御と電流制限制御とが切り替わる。
続くS4では、縮退処理切り替え判定として、走行状態に応じて電流制限を行うか否かを判定する。縮退処理切り替え判定では、自車両情報、自車両周囲の他の車両情報、道路環境の情報のいずれか少なくとも1つの条件で判定する。例えば、ブレーキ装置で判定する制動実施中/未実施の情報と、上位ECU(例えば、ADAS)から受信する走行状態の情報により、カーブを走行しながら制動していると判定した場合は、S4で「NO」と判定する。また、ブレーキ装置で判定する制動実施中/未実施の情報と、上位ECU(例えば、ADAS)から受信する走行状態の情報により、減速中(停車中や加速中でない)と判定した場合は、S4で「NO」と判定する。また、上位ECU(例えば、ADAS)から受信する先行車両の有無情報により、先行車両がいると判定した場合は、S4で「NO」と判定する。また、上位ECU(例えば、ナビゲーションECU)から受信する交通状況の情報により、交通状況が複雑で制動が必要になるような状況であると判定した場合は、S4で「NO」と判定する。
S4で「NO」と判定したときには、切り替え条件が不成立であるから、S5に移行し、通常制御を継続する。即ち、ブレーキ装置1が動作している可能性の高い状態では、通常制御から電流制限制御への切り替えは行わない。
一方、上記以外の状態のように、ブレーキ装置1が動作していない可能性の高い状態では、S4で「YES」と判定する。S4で「YES」と判定したときには、切り替え条件が成立しているから、S6に移行し、通常制御から電流制限制御に切り替える。これにより、電源電圧VがVth11未満になる前に、予め通常制御から電流制限制御に切り替えておくことができる。
かくして、本実施形態では、制御装置9は、車両の電源電圧Vが第1の所定値(閾値Vth11)未満である場合に縮退処理としての電流制限制御を実行する。また、制御装置9は、車両の電源電圧Vが第1の所定値(閾値Vth11)よりも高い第2の所定値(閾値Vth12)以下で第1の所定値(閾値Vth11)以上である場合には、縮退処理切り替え判定結果に基づいて、縮退処理の実行可否を決定する。これにより、制御の切り替えが望ましくない走行状態に至る前に切り替え処理を実行し、そのような走行状態における切り替えの頻度を下げることができる。
また、制御装置9は、中間状態に至った時点で、ドライバや上位ECU(例えば、ADAS)へ通知する。これにより、中間状態で制御の切り替えが望ましくない走行状態へ至る頻度を下げることが可能になる。
次に、図4ないし図6は第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、主電源の電源電圧が低下して電流制限制御(第1の縮退処理)を実行した後に、さらに電源電圧が低下した場合に、ブレーキ装置に対する電力供給を主電源から補助電源に切り替えると共に、電動機に供給する電流をさらに制限する補助電源切替制御(第2の縮退処理)を実行することにある。なお、第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図4に示すように、第2の実施形態によるブレーキ装置21は、第1の実施形態によるブレーキ装置1と同様に、電動機3と、制御装置29とを備えている。
主電源6は、第1の蓄電装置を構成し、電源ライン5とインバータ4を介して電動機3と接続されている。電源ライン5の途中には、第1スイッチ素子22が設けられている。主電源6は、第1スイッチ素子22がON状態(接続状態)となったときに、電動機3に電力を供給する。また、主電源6は、電源ライン5とは別個の電源ライン7を介して制御装置29と接続されている。
電源ライン7の途中には、主電源6から制御装置29に向かう方向の電流を許容し、逆方向の電流を遮断するダイオード23が設けられている。主電源6は、制御装置29に電力を供給する。なお、主電源6は、車両に搭載された他の電気機器(制御装置)等にも電力を供給している。
補助電源24は、車両に搭載されたバッテリまたはキャパシタで、第2の蓄電装置を構成している。補助電源24は、例えば主電源6の容量よりも小さい容量を有し、ジェネレータおよび主電源6からの電力を蓄電する。
そして、補助電源24は、補助電源ライン25を介して電動機3(インバータ4)と接続されている。補助電源ライン25の途中には、第2スイッチ素子26が設けられている。補助電源24は、第2スイッチ素子26がON状態(接続状態)となったときに、電動機3に電力を供給する。また、補助電源24は、補助電源ライン25とは別個の補助電源ライン27を介して制御装置29と接続されている。補助電源ライン27の途中には、補助電源24から制御装置29に向かう方向の電流を許容し、逆方向の電流を遮断するダイオード28が設けられている。補助電源24は、制御装置29に電力を供給する。なお、補助電源24は、ブレーキ装置1内に設けられていてもよい。
従って、電動機3は、第1スイッチ素子22を介して主電源6と接続され、第2スイッチ素子26を介して補助電源24と接続されている。電動機3は、第1スイッチ素子22がON状態(接続状態)となったときに、主電源6からの電力供給が可能な状態となり、第1スイッチ素子22がOFF状態(非接続状態)となったときに、主電源6からの電力供給が不能な状態となる。また、電動機3は、第2スイッチ素子26がON状態(接続状態)となったときに、補助電源24からの電力供給が可能な状態となり、第2スイッチ素子26がOFF状態(非接続状態)となったときに、補助電源24からの電力供給が不能な状態となる。
第1スイッチ素子22は、主電源6と電動機3とを接続する電源ライン5に設けられている。一方、第2スイッチ素子26は、補助電源24と電動機3とを接続する補助電源ライン25に設けられている。第1スイッチ素子22は、例えば電磁リレー等によって構成され、後述の制御装置29と信号線22Aにより接続されている。また、第2スイッチ素子26も同様に、例えば電磁リレー等によって構成され、後述の制御装置29と信号線26Aにより接続されている。
第1スイッチ素子22と第2スイッチ素子26とは、後述の制御装置29からの制御信号に基づいて、接続状態(ON状態)と非接続状態(OFF状態)とに切換えられる。即ち、第1スイッチ素子22がON状態のときには、主電源6と電動機3とが接続状態となり、電動機3は主電源6から電力の供給を受けることができる。また、第2スイッチ素子26がON状態のときには、補助電源24と電動機3とが接続状態となり、電動機3は補助電源24から電力の供給を受けることができる。
制御装置29は、電動機3を制御する。制御装置29は、第1の実施形態による制御装置9とほぼ同様に構成されている。制御装置29は、ストロークセンサの検出信号(制動要求信号)、または、自動ブレーキ要求信号(制動要求信号)に基づいて電動機3を作動させ、マスタシリンダ2内にブレーキ液圧を発生させる。制御装置29の出力側には、電動機3のインバータ4、第1スイッチ素子22、第2スイッチ素子26が電気的に接続されている。
また、制御装置29は、主電源6と補助電源24との両方から電力の供給を受けている。主電源6と制御装置29とを接続する電源ライン7には、ダイオード23が設けられている。一方、補助電源24と制御装置29とを接続する補助電源ライン27には、ダイオード28が設けられている。このため、制御装置29には、主電源6と補助電源24とのうち、高い方の電圧が供給される。従って、例えば一時的に主電源6の電圧が補助電源24の電圧よりも低下したときでも、制御装置29には、補助電源24の電圧が印加される。この結果、制御装置29がリセットされるのを抑制することができる。
そして、制御装置29は、電流制限判定処理部30を備えている。電流制限判定処理部30は、インバータ4を制御することにより、電動機3に供給する電流を制御する。電流制限判定処理部30のメモリ(図示せず)には、図6に示す制御処理のプログラム、主電源6の電圧の閾値Vth21~Vth24が記憶されている。電流制限判定処理部30は、図6に示す制御処理のプログラムに従って、電流を制限しない通常制御と、電流を制限した電流制限制御と、電動機3に対する電力供給源を主電源6から補助電源24に切り替える補助電源切替制御との切り替えを実行する。
電流制限判定処理部30は、図示しない電圧検出回路から検出された主電源6の電圧に応じた検出信号を受信する。これに加え、電流制限判定処理部30は、例えばCANを介して、車両の走行状態に関する情報を受信する。そして、電流制限判定処理部30は、主電源6の電圧と走行状態とに基づいて電動機3への電力供給を制限するか否かを決定している。
図5に示すように、電流制限判定処理部10は、電流制限を行わず制動要求信号に応じて電動機3を制御する通常制御状態と、電流制限を行うか否かを保留する第1の中間状態と、電流制限を必ず行う電流制限制御状態と、主電源6から補助電源24への切り替えを行うか否かを保留する第2の中間状態と、主電源6から補助電源24への切り替えを必ず行う補助電源切替制御状態とを有している。第1の中間状態では、走行状態に基づいた切り替え条件の成否に応じて電流制限を行うか否かを判定する。第2の中間状態では、走行状態に基づいた切り替え条件の成否に応じて主電源6から補助電源24への切り替えを行うか否かを判定する。
前述した5つの状態を判定するために、電流制限判定処理部10は、4つの閾値Vth21~Vth24を有する。閾値Vth21は、第1の所定値であり、主電源6の電源電圧Vが閾値Vth21未満である場合は必ず電流制限(第1の縮退処理)を実行しなくてはならない電圧値である。閾値Vth22は、第2の所定値であり、電源としては正常ではないが、電流制限(第1の縮退処理)は必須ではない電圧値である。閾値Vth23は、第3の所定値であり、主電源6の電源電圧Vが閾値Vth23未満である場合は必ず主電源6から補助電源24への切り替え(第2の縮退処理)を実行しなくてはならない電圧値である。閾値Vth24は、第4の所定値であり、電流制限は必須であるが、主電源6から補助電源24への切り替え(第2の縮退処理)は必須ではない電圧値である。
電流制限判定処理部30は、主電源6の電源電圧Vが閾値Vth22よりも高い場合(V>Vth22)には、通常制御状態になる。電流制限判定処理部30は、主電源6の電源電圧Vが閾値Vth22以下で閾値Vth21以上の場合(Vth22≧V≧Vth21)には、第1の中間状態になる。電流制限判定処理部30は、主電源6の電源電圧Vが閾値Vth21未満で閾値Vth24よりも高い場合(Vth21>V>Vth24)には、電流制限制御状態になる。電流制限判定処理部30は、主電源6の電源電圧Vが閾値Vth24以下で閾値Vth23以上の場合(Vth24≧V≧Vth23)には、第2の中間状態になる。電流制限判定処理部30は、主電源6の電源電圧Vが閾値Vth23未満の場合(V<Vth23)には、補助電源切替制御状態になる。
本実施の形態によるブレーキ装置21は、上述の如き構成を有する。次に、電流制限判定処理部30による制御処理について、図6を参照して説明する。なお、図6に示す制御処理は、例えばエンジン始動スイッチがON操作された後、所定の周期毎に繰り返し実行される。また、図6に示す流れ図のステップは、それぞれ「S」という表記を用い、例えばステップ11を「S11」として示す。
S11では、電源電圧VがVth22より高いか否かを判定する。電源電圧VがVth22より高い場合(V>Vth22)は、S11で「YES」と判定し、S15に移行する。S15では、通常制御を継続する。このとき、電動機3に対する電流は制限されず、制動要求信号に応じて必要な電流が電動機3に供給される。
一方、電源電圧VがVth22以下である場合(V≦Vth22)は、S11で「NO」と判定し、S12に移行する。S12では、電源電圧VがVth21以上か否かを判定する。
電源電圧VがVth21未満である場合(V<Vth21)は、S12で「NO」と判定し、S16に移行する。S16では、電源電圧VがVth24より高いか否かを判定する。
一方で、電源電圧VがVth21以上の場合(V≧Vth21)は、S12で「YES」と判定し、S13に移行する。S13では、例えばドライバや上位ECU(例えば、ADAS)に対して、第1の中間状態であることを通知する。第1の中間状態では、走行状態に応じて通常制御と電流制限制御とが切り替わる。
続くS14では、縮退処理切り替え判定として、走行状態に応じて電流制限を行うか否かを判定する。縮退処理切り替え判定では、第1の実施形態によるS4の処理と同様に、自車両情報、自車両周囲の他の車両情報、道路環境の情報のいずれか少なくとも1つの条件で判定する。ブレーキ装置1が動作している可能性の高い状態では、S14で「NO」と判定する。S14で「NO」と判定したときには、切り替え条件が不成立であるから、S15に移行し、通常制御を継続する。
一方、ブレーキ装置1が動作していない可能性の高い状態では、S14で「YES」と判定する。S14で「YES」と判定したときには、切り替え条件が成立しているから、S20に移行し、通常制御から電流制限制御に切り替える。これにより、電源電圧Vが閾値Vth21未満になる前に、予め通常制御から電流制限制御に切り替えておくことができる。
電源電圧VがVth24よりも高い場合(V>Vth24)は、S16で「YES」と判定し、S20に移行する。S20では、通常制御から電流制限制御に切り替える。電流制限制御でマスタシリンダ2が出力可能な最大液圧P21は、通常制御状態での最大液圧P22に比べて低下する(P21<P22)。
一方、電源電圧VがVth24以下である場合(V≦Vth24)は、S16で「NO」と判定し、S17に移行する。S17では、電源電圧VがVth23以上か否かを判定する。
電源電圧VがVth23未満である場合(V<Vth23)は、S17で「NO」と判定し、S21に移行する。S21では、補助電源切替制御を実行する。このとき、補助電源24の容量は主電源6の容量に比べて小さい。このため、電動機3に対する電流を、電流制限制御に比べてさらに制限する。従って、補助電源切替制御でマスタシリンダ2が出力可能な最大液圧P23は、電流制限状態の最大液圧P21に比べて低下する(P23<P21)。
一方で、電源電圧VがVth23以上の場合(V≧Vth23)は、S17で「YES」と判定し、S18に移行する。S18では、例えばドライバや上位ECU(例えば、ADAS)に対して、第2の中間状態であることを通知する。第2の中間状態では、走行状態に応じて電流制限制御と補助電源切替制御とが切り替わる。
続くS19では、他の縮退処理切り替え判定として、走行状態に応じて補助電源切替制御を行うか否かを判定する。他の縮退処理切り替え判定では、第1の実施形態によるS4の処理と同様に、自車両情報、自車両周囲の他の車両情報、道路環境の情報のいずれか少なくとも1つの条件で判定する。ブレーキ装置1が動作している可能性の高い状態では、S19で「NO」と判定する。S19で「NO」と判定したときには、S20に移行し、電流制限制御を実行する。
一方、ブレーキ装置1が動作していない可能性の高い状態では、S19で「YES」と判定する。S19で「YES」と判定したときには、S21に移行し、電流制限制御から補助電源切替制御に切り替える。これにより、電源電圧VがVth23未満になる前に、予め電流制限制御から補助電源切替制御に切り替えておくことができる。
かくして、第2の実施形態でも、第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、第2の実施形態では、制御装置29は、車両の電源電圧Vが第1の所定値(閾値Vth21)よりも高い第2の所定値(閾値Vth22)以下で第1の所定値(閾値Vth21)以上である場合には、縮退処理切り替え判定結果に基づいて、縮退処理としての電流制限制御の実行可否を決定する。これに加え、制御装置29は、車両の電源電圧Vが第1の所定値(閾値Vth21)よりも低く、第4の所定値(閾値Vth24)以下で第3の所定値(閾値Vth23)以上である場合には、他の縮退処理切り替え判定結果に基づいて、他の縮退処理としての補助電源切替制御の実行可否を決定する。これにより、制御の切り替えが望ましくない走行状態に至る前に切り替え処理を実行し、そのような走行状態における切り替えの頻度を下げることができる。
また、制御装置29は、第1の中間状態または第2の中間状態に至った時点で、ドライバや上位ECU(例えば、ADAS)へ通知する。これにより、中間状態で制御の切り替えが望ましくない走行状態へ至る頻度を下げることが可能になる。
次に、図1、図7および図8は第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、制御装置は、ブレーキ装置の温度が第1の所定値よりも高い場合に縮退処理を実行し、ブレーキ装置の温度が第1の所定値よりも低い第2の所定値以上で第1の所定値以下である場合に縮退処理切り替え判定結果に基づいて、縮退処理の実行可否を決定することにある。なお、第3の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図1に示すように、第3の実施形態によるブレーキ装置41は、第1の実施形態によるブレーキ装置1と同様に、電動機3と、制御装置42とを備えている。
制御装置42は、電動機3を制御する。制御装置42は、第1の実施形態による制御装置9とほぼ同様に構成されている。制御装置42は、ストロークセンサの検出信号(制動要求信号)、または、自動ブレーキ要求信号(制動要求信号)に基づいて電動機3を作動させ、マスタシリンダ2内にブレーキ液圧を発生させる。制御装置42は、主電源6からの電力供給に基づいて駆動する。制御装置42の出力側には、電動機3のインバータ4、スイッチ素子8が電気的に接続されている。
そして、制御装置42は、電流制限判定処理部43を備えている。電流制限判定処理部43は、インバータ4を制御することにより、電動機3に供給する電流を制御する。電流制限判定処理部43のメモリ(図示せず)には、図8に示す制御処理のプログラム、温度の閾値Tth1,Tth2が記憶されている。電流制限判定処理部43は、図8に示す制御処理のプログラムに従って、電流を制限しない通常制御と、電流を制限した電流制限制御との切り替えを実行する。
電流制限判定処理部43は、図示しない温度検出回路から検出されたブレーキ装置41の温度Tに応じた検出信号を受信する。このとき、ブレーキ装置41の温度Tは、制御装置42の温度でもよく、電動機3の温度でもよい。また、電流制限判定処理部43は、例えばCANを介して、車両の走行状態に関する情報を受信する。そして、電流制限判定処理部43は、ブレーキ装置41の温度と走行状態とに基づいて電動機3への電力供給を制限するか否かを決定している。
図7に示すように、電流制限判定処理部43は、電流制限を行わず制動要求信号に応じて電動機3を制御する通常制御状態と、電流制限を行うか否かを判定する中間状態と、電流制限を必ず行う電流制限制御状態とを有している。中間状態では、走行状態に基づいた切り替え条件の成否に応じて電流制限を行うか否かを判定する。前述した3つの状態を判定するために、電流制限判定処理部43は、2つの閾値Tth1,Tth2を有する。閾値Tth1は、第1の所定値であり、ブレーキ装置41の温度Tが閾値Tth1よりも高い場合は必ず電流制限(縮退処理)を実行しなくてはならない温度値である。閾値Tth2は、第2の所定値であり、正常な温度ではないが、電流制限(縮退処理)は必須ではない温度値である。
電流制限判定処理部43は、ブレーキ装置41の温度Tが閾値Tth2よりも低い場合(T<Tth2)には、通常制御状態になる。電流制限判定処理部43は、ブレーキ装置41の温度Tが閾値Tth2以上で閾値Tth1以下の場合(Tth2≦V≦Tth1)には、中間状態になる。電流制限判定処理部10は、ブレーキ装置41の温度Tが閾値Tth1よりも高い場合(T>Tth1)には、電流制限制御状態になる。
本実施の形態によるブレーキ装置41は、上述の如き構成を有する。次に、電流制限判定処理部43による制御処理について、図8を参照して説明する。なお、図8に示す制御処理は、例えばエンジン始動スイッチがON操作された後、所定の周期毎に繰り返し実行される。また、図8に示す流れ図のステップは、それぞれ「S」という表記を用い、例えばステップ31を「S31」として示す。
S31では、ブレーキ装置41の温度Tが閾値Tth2未満か否かを判定する。ブレーキ装置41の温度Tが閾値Tth2未満の場合(T<Tth2)は、S31で「YES」と判定し、S35に移行する。S35では、通常制御を継続する。
一方、ブレーキ装置41の温度Tが閾値Tth2以上である場合(T≧Tth2)は、S31で「NO」と判定し、S32に移行する。S32では、ブレーキ装置41の温度Tが閾値Tth1以下か否かを判定する。
ブレーキ装置41の温度Tが閾値Tth1よりも高い場合(T>Tth1)は、S32で「NO」と判定し、S36に移行する。S36では、電流制限制御を実行する。このとき、電動機3に対する電流を制限するため、電流制限制御でマスタシリンダ2が出力可能な最大液圧P31は、通常制御状態でマスタシリンダ2が出力可能な最大液圧P32に比べて低下する(P31<P32)。
一方で、ブレーキ装置41の温度Tが閾値Tth1以下の場合(T≦Tth1)は、S32で「YES」と判定し、S33に移行する。S33では、例えばドライバや上位ECU(例えば、ADAS)に対して、中間状態であることを通知する。中間状態では、走行状態に応じて通常制御と電流制限制御とが切り替わる。
続くS34では、縮退処理切り替え判定として、走行状態に応じて電流制限を行うか否かを判定する。縮退処理切り替え判定では、第1の実施形態によるS4の処理と同様に、自車両情報、自車両周囲の他の車両情報、道路環境の情報のいずれか少なくとも1つの条件で判定する。ブレーキ装置1が動作している可能性の高い状態では、S34で「NO」と判定する。S34で「NO」と判定したときには、切り替え条件が不成立であるから、S35に移行し、通常制御を継続する。
一方、ブレーキ装置1が動作していない可能性の高い状態では、S34で「YES」と判定する。S34で「YES」と判定したときには、切り替え条件が成立しているから、S36に移行し、通常制御から電流制限制御に切り替える。これにより、ブレーキ装置41の温度Tが閾値Tth1よりも高くなる前に、予め通常制御から電流制限制御に切り替えておくことができる。
かくして、第3の実施形態でも、第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、第3の実施形態では、制御装置42は、ブレーキ装置41の温度Tが第1の所定値(閾値Tth1)よりも高い場合に縮退処理としての電流制限制御を実行する。また、制御装置42は、ブレーキ装置41の温度Tが第1の所定値(閾値Tth1)よりも低い第2の所定値(閾値Tth2)以上で第1の所定値(閾値Tth1)以下である場合には、縮退処理切り替え判定結果に基づいて、縮退処理の実行可否を決定する。これにより、制御の切り替えが望ましくない走行状態に至る前に切り替え処理を実行し、そのような走行状態における切り替えの頻度を下げることができる。
また、制御装置42は、中間状態に至った時点で、ドライバや上位ECU(例えば、ADAS)へ通知する。これにより、中間状態での制御の切り替えが望ましくない走行状態へ至る頻度を下げることが可能となる。
次に、図9ないし図11は第4の実施形態を示している。第4の実施形態の特徴は、制動要求信号に応じて直接的に動作するメインブレーキ装置と、メインブレーキ装置を補助するサブブレーキ装置とを備え、電源電圧に応じてこれらを切り替えることにある。なお、第4の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図9に示すように、第4の実施形態によるブレーキ装置51は、メインブレーキ装置52と、サブブレーキ装置56とを備えている。メインブレーキ装置52は、第1の実施形態によるブレーキ装置1と同様に、電動機3と、制御装置54とを備えている。
第1の蓄電装置53は、車両に搭載されたバッテリである。第1の蓄電装置53は、エンジン(図示せず)により回転駆動されて発電するジェネレータ(図示せず)の電力を蓄電する。第1の蓄電装置53は、電源ライン5とインバータ4を介して電動機3と接続されている。電源ライン5の途中には、スイッチ素子8が設けられている。なお、電気自動車またはハイブリッド自動車の場合には、第1の蓄電装置53は、大型のバッテリとDC-DCコンバータによって構成される。
制御装置54は、電動機3を制御する。制御装置54は、第1の実施形態による制御装置9とほぼ同様に構成されている。制御装置54は、ストロークセンサの検出信号(制動要求信号)、または、自動ブレーキ要求信号(制動要求信号)に基づいて電動機3を作動させ、マスタシリンダ2内にブレーキ液圧を発生させる。制御装置54は、第1の蓄電装置53からの電力供給に基づいて駆動する。制御装置54の出力側には、電動機3のインバータ4、スイッチ素子8が電気的に接続されている。
そして、制御装置54は、ブレーキ装置切替判定処理部55を備えている。ブレーキ装置切替判定処理部55は、信号線55Aを介してサブブレーキ装置56の制御装置64に接続されている。ブレーキ装置切替判定処理部55は、メインブレーキ装置52とサブブレーキ装置56との切り替えを制御する。
メインブレーキ装置52による倍力制御を行う場合は、ブレーキ装置切替判定処理部55は、スイッチ素子8をON状態(接続状態)にし、制動要求信号に応じて電動機3を制御する。一方、サブブレーキ装置56による倍力制御を行う場合には、ブレーキ装置切替判定処理部55は、スイッチ素子8をOFF状態(非接続状態)にし、サブブレーキ装置56の制御装置64にサブブレーキ装置作動要求信号を送信する。これにより、ブレーキ装置切替判定処理部55から制御装置64にサブブレーキ装置作動要求信号が伝達され、制御装置64は、制動要求信号に応じて電動機58を制御する。
ブレーキ装置切替判定処理部55のメモリ(図示せず)には、図11に示す制御処理のプログラム、電源電圧Vの閾値Vth41,Vth42が記憶されている。ブレーキ装置切替判定処理部55は、図11に示す制御処理のプログラムに従って、メインブレーキ装置52による倍力制御と、サブブレーキ装置56による倍力制御との切り替えを実行する。
ブレーキ装置切替判定処理部55は、図示しない電圧検出回路から検出された第1の蓄電装置53の電圧に応じた検出信号を受信する。これに加え、ブレーキ装置切替判定処理部55は、例えばCANを介して、車両の走行状態に関する情報を受信する。そして、ブレーキ装置切替判定処理部55は、第1の蓄電装置53の電圧(電源電圧V)と走行状態とに基づいて、メインブレーキ装置52による倍力制御と、サブブレーキ装置56による倍力制御との切り替えを行うか否かを決定している。
図10に示すように、ブレーキ装置切替判定処理部55は、制動要求信号に応じてメインブレーキ装置52を作動させるメインブレーキ装置52による倍力制御状態と、メインブレーキ装置52とサブブレーキ装置56との切り替えを行うか否かを判定する中間状態と、制動要求信号に応じてサブブレーキ装置56を作動させるサブブレーキ装置56による倍力制御状態とを有している。中間状態では、走行状態に基づいた切り替え条件の成否に応じてメインブレーキ装置52とサブブレーキ装置56との切り替えを行うか否かを判定する。前述した3つの状態を判定するために、ブレーキ装置切替判定処理部55は、2つの閾値Vth41,Vth42を有する。閾値Vth41は、第1の所定値であり、第1の蓄電装置53の電源電圧Vが閾値Vth41未満である場合は必ずサブブレーキ装置56による倍力制御(縮退処理)を実行しなくてはならない電圧値である。閾値Vth42は、第2の所定値であり、電源としては正常ではないが、サブブレーキ装置56による倍力制御(縮退処理)は必須ではない電圧値である。
ブレーキ装置切替判定処理部55は、第1の蓄電装置53の電源電圧Vが閾値Vth42よりも高い場合(V>Vth42)には、メインブレーキ装置52による倍力制御状態になる。ブレーキ装置切替判定処理部55は、第1の蓄電装置53の電源電圧Vが閾値Vth42以下で閾値Vth41以上の場合(Vth42≧V≧Vth41)には、中間状態になる。ブレーキ装置切替判定処理部55は、第1の蓄電装置53の電源電圧Vが閾値Vth41未満の場合(V<Vth41)には、サブブレーキ装置56による倍力制御状態になる。
サブブレーキ装置56は、例えば車両の姿勢を安定化させるために制動力を付与するものである。このサブブレーキ装置56は、車両のホイールシリンダ(図示せず)にブレーキ液を供給するためポンプ(P)57で発生させるブレーキ液圧を電気的に制御する横滑り防止装置(ESC)として構成されている。
サブブレーキ装置56は、車両の制動力を発生させるために作動する電動機58と、電動機58を制御する制御装置64とを備えている。
電動機58は、例えばDCブラシレスモータによって構成され、後述の制御装置64により駆動制御される。インバータ59は、電動機58に必要な電力を供給する。インバータ59は、電動機58に電気的に接続されている。また、インバータ59は、電源ライン60を介して、第2の蓄電装置61と電気的に接続されている。インバータ59は、例えば、複数のスイッチング素子(図示せず)を備えている。スイッチング素子のオン(閉)/オフ(開)は、制御装置64によって制御される。このために、インバータ59と制御装置64は、信号線59Aを介して接続されている。
第2の蓄電装置61は、第1の蓄電装置53とは別個に車両に搭載されたバッテリである。第2の蓄電装置61は、エンジン(図示せず)により回転駆動されて発電するジェネレータ(図示せず)の電力を蓄電する。第2の蓄電装置61は、電源ライン60とインバータ59を介して電動機58と接続されている。電源ライン60の途中には、スイッチ素子63が設けられている。第2の蓄電装置61は、電源ライン60とは別個の電源ライン62を介して制御装置64と接続されている。なお、電気自動車またはハイブリッド自動車の場合には、第2の蓄電装置61は、大型のバッテリとDC-DCコンバータによって構成される。
スイッチ素子63は、第2の蓄電装置61と電動機58とを接続する電源ライン60に設けられている。スイッチ素子63は、例えば電磁リレー等によって構成され、後述の制御装置64と信号線63Aにより接続されている。
制御装置64は、電動機58を制御する。制御装置64は、例えばマイクロコンピュータ等からなり、電動倍力装置の電動機58を駆動制御してホイルシリンダにブレーキ液圧を発生させる。制御装置64は、第2の蓄電装置61からの電力供給に基づいて駆動する。制御装置64の出力側には、電動機58のインバータ59、スイッチ素子63が電気的に接続されている。
制御装置64は、各種のセンサによって検出された車両の姿勢に基づいて電動機58を作動させ、ホイルシリンダ内にブレーキ液圧を発生させる。また、制御装置64は、ブレーキ装置切替判定処理部55からサブブレーキ装置作動要求信号を受信した場合には、運転者によるブレーキペダルの操作に基づく制動要求信号(例えば、ストロークセンサの検出信号)、または、上位ECU(例えば、ADAS)から受信する自動ブレーキ要求信号(制動要求信号)に応じて電動機58を作動させる。
本実施の形態によるブレーキ装置51は、上述の如き構成を有する。次に、ブレーキ装置切替判定処理部55による制御処理について、図11を参照して説明する。なお、図11に示す制御処理は、例えばエンジン始動スイッチがON操作された後、所定の周期毎に繰り返し実行される。また、図11に示す流れ図のステップは、それぞれ「S」という表記を用い、例えばステップ41を「S41」として示す。
S41では、電源電圧Vが閾値Vth42より高いか否かを判定する。電源電圧Vが閾値Vth42より高い場合(V>Vth42)は、S41で「YES」と判定し、S45に移行する。S45では、メインブレーキ装置52による倍力制御を継続する。
一方、電源電圧Vが閾値Vth42以下である場合(V≦Vth42)は、S41で「NO」と判定し、S42に移行する。S42では、電源電圧Vが閾値Vth41以上か否かを判定する。
電源電圧Vが閾値Vth41未満である場合(V<Vth41)は、S42で「NO」と判定し、S46に移行する。S46では、サブブレーキ装置56による倍力制御を実行する。このとき、サブブレーキ装置56が出力可能な最大液圧P41は、メインブレーキ装置52が出力可能な最大液圧P42に比べて低下する(P41<P42)。
一方で、電源電圧Vが閾値Vth41以上の場合(V≧Vth41)は、S42で「YES」と判定し、S43に移行する。S43では、例えばドライバや上位ECU(例えば、ADAS)に対して、中間状態であることを通知する。中間状態では、走行状態に応じてメインブレーキ装置52による倍力制御とサブブレーキ装置56による倍力制御とが切り替わる。
続くS44では、縮退処理切り替え判定として、走行状態に応じてメインブレーキ装置52による倍力制御とサブブレーキ装置56による倍力制御との切り替えを行うか否かを判定する。縮退処理切り替え判定では、第1の実施形態によるS4の処理と同様に、自車両情報、自車両周囲の他の車両情報、道路環境の情報のいずれか少なくとも1つの条件で判定する。ブレーキ装置51が動作している可能性の高い状態では、S44で「NO」と判定する。S44で「NO」と判定したときには、切り替え条件が不成立であるから、S45に移行し、メインブレーキ装置52による倍力制御を継続する。
一方、ブレーキ装置51が動作していない可能性の高い状態では、S44で「YES」と判定する。S44で「YES」と判定したときには、切り替え条件が成立しているから、S46に移行し、メインブレーキ装置52による倍力制御からサブブレーキ装置56による倍力制御に切り替える。これにより、電源電圧Vが閾値Vth41未満になる前に、予めメインブレーキ装置52による倍力制御からサブブレーキ装置56による倍力制御に切り替えておくことができる。
かくして、第4の実施形態でも、第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。第4の実施形態では、制御装置54は、車両の電源電圧Vが第1の所定値(閾値Vth41)未満である場合に縮退処理としてのサブブレーキ装置56による倍力制御を実行する。また、制御装置54は、車両の電源電圧Vが第1の所定値(閾値Vth41)よりも高い第2の所定値(閾値Vth42)以下で第1の所定値(閾値Vth41)以上である場合には、縮退処理切り替え判定結果に基づいて、縮退処理の実行可否を決定する。これにより、制御の切り替えが望ましくない走行状態に至る前に切り替え処理を実行し、そのような走行状態における切り替えの頻度を下げることができる。
また、制御装置54は、中間状態に至った時点で、ドライバや上位ECU(例えば、ADAS)へ通知する。これにより、中間状態での制御の切り替えが望ましくない走行状態へ至る頻度を下げることが可能となる。
以上説明した実施態様に基づく電動ブレーキとして、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様としては、車両の制動力を発生させるために作動する電動機と、制動要求信号に応じて前記電動機を制御する制御装置と、を備えるブレーキ装置であって、前記制御装置は、車両の電源電圧が第1の所定値未満である場合に縮退処理を実行し、車両の電源電圧が前記第1の所定値よりも高い第2の所定値以下で前記第1の所定値以上である場合に縮退処理切り替え判定結果に基づいて、縮退処理の実行可否を決定することを特徴としている。
第2の態様としては、車両の制動力を発生させるために作動する電動機と、制動要求信号に応じて前記電動機を制御する制御装置と、を備えるブレーキ装置であって、前記制御装置は、前記ブレーキ装置の温度が第1の所定値よりも高い場合に縮退処理を実行し、前記ブレーキ装置の温度が前記第1の所定値よりも低い第2の所定値以上で前記第1の所定値以下である場合に縮退処理切り替え判定結果に基づいて、縮退処理の実行可否を決定することを特徴としている。
第3の態様としては、第1または第2の態様において、前記縮退処理切り替え判定は、自車両情報、自車両周囲の他の車両情報、道路環境の情報のいずれか少なくとも1つの条件で判定することを特徴としている。
第4の態様としては、第1ないし第3の態様のいずれかにおいて、前記縮退処理は、前記電動機に供給する電流を制限することであることを特徴としている。