JP7075026B1 - モールドパウダー及びモールドパウダーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 中炭素鋼用の高CaO/SiO2のモールドパウダーにおいて、主原料としてポルトランドセメントを含む場合や、副原料として炭酸ナトリウムを多く含む場合に、スラリー濃度を高くしても、スラリーの粘度が急上昇せず、スラリーの移送、噴霧がスムーズであり、スラリーがスプレータワー内に付着しにくいモールドパウダーの製造方法を提供すること。【解決手段】 モールドパウダーの製造方法は、モールドパウダーの原料と水を混合してスラリーを得る工程と、スラリーをスプレードライで顆粒化する工程とを含み、モールドパウダーの原料のCaO/SiO2が1.10~2.20であり、モールドパウダーの原料は主原料として10質量%以上のセメントクリンカーと5質量%以下(0質量%を含む)のポルトランドセメントとを含む。【選択図】 なし
Description
本開示は、鋼の連続鋳造に使用されるモールドパウダー及びモールドパウダーの製造方法に関する。
鋼の連続鋳造ではモールド内の溶鋼がモールドに冷やされて凝固シェルを形成し、凝固シェルは連続的に下方向に引き抜かれる。モールド内では溶鋼表面にモールドパウダーが投入される。モールドパウダーは溶鋼の熱によって溶融し、溶融スラグ層が形成される(以下、溶融したモールドパウダーをモールドパウダースラグという)。溶融スラグ層は溶鋼表面の保温及び酸化防止並びに溶鋼中の非金属介在物の吸収といった作用を有する。モールドパウダースラグはモールドと凝固シェルの隙間に流れ込み、両者間の潤滑を促進する。さらに、凝固シェルからモールドへの熱流束を制御することにより凝固シェルの冷却速度を適正に制御するといった作用を有する。
モールドパウダーの化学組成は、CaO、SiO2が主成分であり、Al2O3、MgO、Na2O、Li2O、F、C等が副成分である。一般的なモールドパウダーのCaO/SiO2は0.5から2.2の範囲である。
鋼のC濃度が0.09~0.18%の中炭素鋼の連続鋳造では、鋳片表面が割れやすいという問題がある。鋳片表面割れを防止するためには凝固シェルからモールドへの熱流束を低くすることが必要であり、そのためにモールドと凝固シェルの隙間に流れ込むモールドパウダースラグにカスピダイン(3CaO・2SiO2・CaF2)を晶出させる。カスピダインのCaO/SiO2は1.86であるから、モールドパウダーの化学組成もCaO/SiO2が1.86に近いほどカスピダインが晶出しやすくなる。つまり、中炭素鋼用のモールドパウダーのCaO/SiO2は通常1.10から2.20の範囲である。
モールドパウダーの原料は、主成分のCaO、SiO2を供給する主原料(基材ということも多い)と、各種機能を与えるための副原料を含む。主原料としては、ポルトランドセメントや合成珪酸カルシウムが使用されることが多い。特に、ポルトランドセメントは高塩基度かつ安価で品質が安定しているため、よく使用される(特許文献1)。
一方、溶鋼の表面に投入される際に発生する粉じんを抑制するため、モールドパウダーは顆粒状が好まれる。顆粒状のモールドパウダーの製造方法としては、モールドパウダーの原料と水を混合して得られるスラリーをスプレードライで顆粒化する方法が知られている。
スプレードライでは、水を蒸発させるための熱エネルギーを低減するため、スラリーに添加する水をできるだけ低減したい、即ち、スラリー中のモールドパウダーの原料の含有量(スラリー濃度)をできるだけ高くしたいというニーズがある。
しかし、主原料としてポルトランドセメントを含むスラリーの濃度を高くすると、スラリーの粘度が急上昇してスラリーの移送、噴霧が困難になったり、スラリーが凝集硬化してスプレータワー内に付着し、除去が困難になることがある。また、粘度の上昇を抑制するために水の添加量を増やすと、スプレードライによる顆粒の粒子径が小さくなるとともに、セメントは一般に強度が低下するため、得られるモールドパウダーは顆粒強度が上がらず、顆粒が崩壊して細かくなり、粉化しやすいことがある。中炭素鋼用の高CaO/SiO2のモールドパウダーにおいてスラリーの粘度が急上昇するのは、主原料としてポルトランドセメントを多く含む場合や、副原料として炭酸ナトリウムを多く含む場合である。
本開示の態様は上記実状を鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、中炭素鋼用の高CaO/SiO2のモールドパウダーにおいて、主原料としてポルトランドセメントを含む場合や、副原料として炭酸ナトリウムを多く含む場合に、スラリー濃度を高くしても、スラリーの粘度が急上昇せず、スラリーの移送、噴霧がスムーズであり、スラリーがスプレータワー内に付着しにくいモールドパウダーの製造方法と、顆粒強度が高く、粉化しにくいモールドパウダーを提供することである。
本開示の一の態様は、モールドパウダーの原料と水を混合してスラリーを得る工程と、スラリーをスプレードライで顆粒化する工程とを含むモールドパウダーの製造方法において、モールドパウダーの原料のCaO/SiO2が1.10~2.20であり、モールドパウダーの原料は主原料として10質量%以上のセメントクリンカーと5質量%以下(0質量%を含む)のポルトランドセメントとを含むことを特徴とするモールドパウダーの製造方法に関する。
本開示のモールドパウダーの製造方法で製造されるモールドパウダーは、CaO/SiO2が1.10~2.20の範囲でよりカスピダインが晶出しやすく、熱流束を低くして、鋳片表面の割れを防ぐことができるため、中炭素鋼に好適である。また、モールドパウダーの原料は主原料として10質量%以上のセメントクリンカーと5質量%以下(0質量%を含む)のポルトランドセメントとを含む。セメントクリンカーはせっこうを含まず、せっこうを含むポルトランドセメントも5質量%以下(0質量%を含む)であるため、スラリーの粘度が急上昇せず、移送、噴霧がスムーズであり、スプレータワー内に付着しにくい。スラリーの粘度が急上昇しない理由は次のように考えられる。まず、ポルトランドセメントに水を加えると水和が生じ、急速な硬化(急結)は避けられないため、急結の抑制を目的として、一般には適量のせっこうが添加されている。ポルトランドセメント中のせっこうとアルミン酸三カルシウムが反応し、針状結晶のエトリンガイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)が急速に生成され、スラリーの粘度が急上昇すると考えられる。一方、本開示のモールドパウダーの製造方法ではセメントクリンカーはせっこうを含まないため、エトリンガイトが生成されず、スラリーの粘度が急上昇しないと考えられる。また、スラリーに添加する水を低減することができるため、スプレードライで水を蒸発させるための熱エネルギーを低減することができる。さらに、得られるモールドパウダーは顆粒強度が高くなり、粉化しにくい。
本開示のモールドパウダーの製造方法では、モールドパウダーの原料は副原料として5質量%以上20質量%未満の炭酸ナトリウムを含むことが好ましい。副原料として炭酸ナトリウムを多く含む場合でも、スラリー濃度を高くしても、スラリーの粘度が急上昇せず、スラリーの移送、噴霧がスムーズであり、スラリーがスプレータワー内に付着しにくい。
本開示のモールドパウダーの製造方法では、スラリー中のモールドパウダーの原料の含有量(スラリー濃度)が50~75質量%であることが好ましい。スラリー濃度がこの範囲であるとスラリーの粘度が低く保たれ、移送、噴霧がスムーズであり、スプレータワー内に付着しにくく、熱エネルギーを低減することができる。さらに、得られるモールドパウダーは顆粒強度が高く、粉化しにくい。
本開示の他の態様は、CaO/SiO2が1.10~2.20であり、主原料として10質量%以上のセメントクリンカーと5質量%以下(0質量%を含む)のポルトランドセメントとを含み、顆粒状であることを特徴とするモールドパウダーに関する。
本開示の他の態様のモールドパウダーは、CaO/SiO2が1.10~2.20の範囲でよりカスピダインが晶出しやすく、熱流束を低くするため、中炭素鋼の鋳片表面の割れを防ぐことができる。また、本開示のモールドパウダーは、主原料として10質量%以上のセメントクリンカーと5質量%以下(0質量%を含む)のポルトランドセメントとを含み、モールドパウダーの原料と水とを混合して得られるスラリーの粘度が急上昇しないため、水の添加量を低減することができ、顆粒強度が高くなると考えられる。スラリーの粘度が急上昇しない理由は次のように考えられる。まず、ポルトランドセメントに水を加えると水和が生じ、急速な硬化(急結)は避けられないため、急結の抑制を目的として、一般には適量のせっこうが添加されている。ポルトランドセメント中のせっこうとアルミン酸三カルシウムが反応し、針状結晶のエトリンガイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)が急速に生成され、スラリーの粘度が急上昇すると考えられる。一方、本開示のモールドパウダーではセメントクリンカーがせっこうを含まないため、エトリンガイトが生成されず、スラリーの粘度が急上昇しないと考えられる。また、スラリーの粘度が急上昇しないため、スラリーの移送、噴霧がスムーズであり、スプレータワー内に付着しにくく、モールドパウダーの製造が容易である。さらに、スラリーに添加する水を低減することができるため、スプレードライで水を蒸発させるための熱エネルギーを低減することができる。
本開示の他の態様では、セメントクリンカーのS含有量が0.5質量%以下であることが好ましい。本開示のモールドパウダーが鋼の連続鋳造で溶鋼表面に投入されると、セメントクリンカーのS含有量が0.5質量%以下と少ないため、モールドパウダーから溶鋼へのSドロップ量が低減され、溶鋼汚染による鋼品質低下を防止することができる。
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成のすべてが本開示の解決手段として必須であるとは限らない。
<モールドパウダーの製造方法>
本実施形態のモールドパウダーの製造方法は、モールドパウダーの原料と水を混合してスラリーを得る工程と、スラリーをスプレードライで顆粒化する工程とを含み、モールドパウダーの原料のCaO/SiO2が1.10~2.20であり、モールドパウダーの原料は主原料として10質量%以上のセメントクリンカーと5質量%以下(0質量%を含む)のポルトランドセメントとを含む。
本実施形態のモールドパウダーの製造方法は、モールドパウダーの原料と水を混合してスラリーを得る工程と、スラリーをスプレードライで顆粒化する工程とを含み、モールドパウダーの原料のCaO/SiO2が1.10~2.20であり、モールドパウダーの原料は主原料として10質量%以上のセメントクリンカーと5質量%以下(0質量%を含む)のポルトランドセメントとを含む。
<モールドパウダー>
本実施形態のモールドパウダーは、CaO/SiO2が1.10~2.20の範囲でよりカスピダインが晶出しやすく、熱流束を低くして、鋳片表面の割れを防ぐことができるため、中炭素鋼に好適である。CaO/SiO2はより好ましくは1.30~2.00である。
本実施形態のモールドパウダーは、CaO/SiO2が1.10~2.20の範囲でよりカスピダインが晶出しやすく、熱流束を低くして、鋳片表面の割れを防ぐことができるため、中炭素鋼に好適である。CaO/SiO2はより好ましくは1.30~2.00である。
本実施形態のモールドパウダーは、主原料として10質量%以上のセメントクリンカーと5質量%以下(0質量%を含む)のポルトランドセメントとを含む。セメントクリンカーはせっこうを含まず、せっこうを含むポルトランドセメントも5質量%以下(0質量%を含む)であるため、スラリーの粘度が急上昇せず、移送、噴霧がスムーズであり、スプレータワー内に付着しにくい。また、スラリーに添加する水を低減することができるため、スプレードライで水を蒸発させるための熱エネルギーを低減することができる。さらに、得られるモールドパウダーは顆粒強度が高くなり、粉化しにくい。スラリーの粘度が急上昇しない理由は、ポルトランドセメントがせっこうを含むとポルトランドセメント中のせっこうとアルミン酸三カルシウムが反応し、針状結晶のエトリンガイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)が急速に生成されるのに対し、本実施形態のモールドパウダーはセメントクリンカーがせっこうを含まず、エトリンガイトが生成されないためと考えられる。セメントクリンカーの含有量はより好ましくは10~60質量%であり、ポルトランドセメントの含有量はより好ましくは0質量%である。
本実施形態のモールドパウダーは、副原料としては5質量%以上20質量%未満の炭酸ナトリウムを含むことが好ましい。炭酸ナトリウムの含有量が5質量%以上だと得られた顆粒の粒強度が高く、粉化しにくい。その他の主原料、副原料は特に限定されず、用途に適した慣用の主原料や副原料を使用することができる。
<スラリー>
スラリーは、水にモールドパウダーの原料を加え、公知の撹拌機で撹拌することで得られる。スラリー濃度(スラリー中のモールドパウダーの原料の含有量)は特に限定されないが、好ましくは50~75質量%であり、より好ましくは54~65質量%である。スラリー濃度をこの範囲にすることによりスラリーの粘度が低く保たれ、移送ポンプの負荷及び配管詰まりを低減することができるとともに、スプレータワー内への付着を低減することができる。また、熱エネルギーを低減し、乾燥効率を向上させることができる。さらに、得られるモールドパウダーは顆粒強度が高く、粉化しにくい。
スラリーは、水にモールドパウダーの原料を加え、公知の撹拌機で撹拌することで得られる。スラリー濃度(スラリー中のモールドパウダーの原料の含有量)は特に限定されないが、好ましくは50~75質量%であり、より好ましくは54~65質量%である。スラリー濃度をこの範囲にすることによりスラリーの粘度が低く保たれ、移送ポンプの負荷及び配管詰まりを低減することができるとともに、スプレータワー内への付着を低減することができる。また、熱エネルギーを低減し、乾燥効率を向上させることができる。さらに、得られるモールドパウダーは顆粒強度が高く、粉化しにくい。
<スプレードライ>
本実施形態のスプレードライは、500℃~800℃の熱風をスプレータワー上部からスプレータワー内に送り、スプレータワー内でノズルからスラリーを噴霧し、スラリーの液滴が落下する間に乾燥するものであり、平均粒子径が0.4~0.6mmの中空球状の顆粒が得られる。噴霧の位置と方向は、スプレータワー中間部から上向きでもよいし、スプレータワー上部から下向きでもよい。
本実施形態のスプレードライは、500℃~800℃の熱風をスプレータワー上部からスプレータワー内に送り、スプレータワー内でノズルからスラリーを噴霧し、スラリーの液滴が落下する間に乾燥するものであり、平均粒子径が0.4~0.6mmの中空球状の顆粒が得られる。噴霧の位置と方向は、スプレータワー中間部から上向きでもよいし、スプレータワー上部から下向きでもよい。
<セメントクリンカー>
本実施形態のセメントクリンカーはセメントメーカーから供給を受けることができる。一般の普通ポルトランドセメントは、セメントクリンカーにせっこうが加えられ、粉砕されたものである。一方、本実施形態のセメントクリンカーは、セメントクリンカーにせっこうが加えられずに粉砕されたものである。
本実施形態のセメントクリンカーはセメントメーカーから供給を受けることができる。一般の普通ポルトランドセメントは、セメントクリンカーにせっこうが加えられ、粉砕されたものである。一方、本実施形態のセメントクリンカーは、セメントクリンカーにせっこうが加えられずに粉砕されたものである。
本実施形態のセメントクリンカーは一般の普通ポルトランドセメントよりもS含有量が少ない。本実施形態のセメントクリンカーのS含有量は0.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましい。S含有量をこの範囲にすることによりモールドパウダーから溶鋼へのSドロップ量が低減され、溶鋼汚染による鋼品質低下を防止ことができる。
以下、本開示の実施例について詳細に説明する。
セメントクリンカーはせっこうを含まないため、せっこうを含む一般の普通ポルトランドセメントに比べてS含有量が低位であることがわかる。
モールドパウダーの原料と水をスラリー製造用タンクに投入し、撹拌機で10分間撹拌してスラリーを得た。主原料のセメントクリンカーは粉砕物を使用した。モールドパウダーの原料(主原料及び副原料)の配合割合(質量%)及びスラリー濃度(スラリー中のモールドパウダーの原料の含有量)(質量%)を表2に示す。
実施例1~実施例8(実1~実8)及び比較例1~3(比1~比3)は、CaO/SiO2を1.10~2.20の範囲とし、モールドパウダーの原料の配合割合とスラリー濃度を変化させた。
得られたスラリーをスプレードライ装置に移送し、スプレードライで顆粒状のモールドパウダーを得た。スラリーとモールドパウダーについて、以下の評価を行った。
<スラリーの粘度>
スラリーの粘度は、JIS R1652(セラミックススラリーの回転粘度計による粘度測定方法)に準じ、B型粘度計を使用して測定した。
スラリーの粘度は、JIS R1652(セラミックススラリーの回転粘度計による粘度測定方法)に準じ、B型粘度計を使用して測定した。
<スラリーの移送性>
スラリーの移送性は、スプレードライ装置への移送のスムーズさで評価した。移送が非常にスムーズな場合を「優:◎」、「優:◎」ほどではないが、問題なく移送可能な場合を「可:○」、移送に問題が生じた場合を「不可:×」とした。なお、比較例1はスラリーの粘度が1200mPa・sと非常に高く、スラリーを移送できなかったため、これより後の評価を行わなかった。
スラリーの移送性は、スプレードライ装置への移送のスムーズさで評価した。移送が非常にスムーズな場合を「優:◎」、「優:◎」ほどではないが、問題なく移送可能な場合を「可:○」、移送に問題が生じた場合を「不可:×」とした。なお、比較例1はスラリーの粘度が1200mPa・sと非常に高く、スラリーを移送できなかったため、これより後の評価を行わなかった。
<乾燥効率>
スプレードライの乾燥効率は、スプレータワーの排気温度が200℃で一定になるように熱風入口温度を設定したスプレードライ装置でスプレードライを行い、スプレータワーの入口温度で評価した。スプレータワーの入口温度が650℃より高い場合を「優:◎」、630~650℃の場合を「可:○」、630℃より低い場合を「不可:×」とした。
スプレードライの乾燥効率は、スプレータワーの排気温度が200℃で一定になるように熱風入口温度を設定したスプレードライ装置でスプレードライを行い、スプレータワーの入口温度で評価した。スプレータワーの入口温度が650℃より高い場合を「優:◎」、630~650℃の場合を「可:○」、630℃より低い場合を「不可:×」とした。
<スプレータワー内への付着>
スラリーのスプレータワー内への付着は、スプレータワーの排気温度が200℃で一定になるように熱風入口温度を設定したスプレードライ装置でスプレードライを行い、スプレータワー内への付着の程度で評価した。スプレータワー内への付着がほとんどない場合を「優:◎」、付着はあるものの付着物の厚みが1cm以下の場合を「可:〇」、付着物の厚みが1cmより厚い場合を「不可:×」とした。
スラリーのスプレータワー内への付着は、スプレータワーの排気温度が200℃で一定になるように熱風入口温度を設定したスプレードライ装置でスプレードライを行い、スプレータワー内への付着の程度で評価した。スプレータワー内への付着がほとんどない場合を「優:◎」、付着はあるものの付着物の厚みが1cm以下の場合を「可:〇」、付着物の厚みが1cmより厚い場合を「不可:×」とした。
<顆粒強度>
モールドパウダーの顆粒強度は、粒径300~710μmのモールドパウダー50gとアルミナボール50gをV型ミキサーで2分間攪拌し、撹拌後のモールドパウダーを210μmの篩で篩い分けし、通過したモールドパウダーの質量割合で評価した。質量割合が15%より少ない場合を「優:◎」、質量割合が15~25%の場合を「可:○」、質量割合が25%より多い場合を「不可:×」とした。
モールドパウダーの顆粒強度は、粒径300~710μmのモールドパウダー50gとアルミナボール50gをV型ミキサーで2分間攪拌し、撹拌後のモールドパウダーを210μmの篩で篩い分けし、通過したモールドパウダーの質量割合で評価した。質量割合が15%より少ない場合を「優:◎」、質量割合が15~25%の場合を「可:○」、質量割合が25%より多い場合を「不可:×」とした。
<鋼品質>
鋼品質は、モールドパウダーを鋼の連続鋳造に投入し、モールドパウダーから溶鋼へのSドロップ量で評価した。タンディッシュ内の溶鋼のS含有量と鋳造後の鋳片に含まれるS含有量を測定し、S含有量の増加が1ppmより少ない場合を「優:◎」、1~3ppmの場合を「可:〇」、3ppmより多い場合を「不可:×」とした。
鋼品質は、モールドパウダーを鋼の連続鋳造に投入し、モールドパウダーから溶鋼へのSドロップ量で評価した。タンディッシュ内の溶鋼のS含有量と鋳造後の鋳片に含まれるS含有量を測定し、S含有量の増加が1ppmより少ない場合を「優:◎」、1~3ppmの場合を「可:〇」、3ppmより多い場合を「不可:×」とした。
(1)実施例1及び比較例1~3
比較例1はせっこうを含む普通ポルトランドセメントを多量に使用したためスラリーの粘度が1200mPa・sと非常に高く、スラリーを移送できなかった。比較例2は、モールドパウダーの原料の配合割合は比較例1と同じにし、水を多量に添加してスラリー濃度を低くした。スラリーの粘度は移送できるまで下がったものの、製造には不適であった。比較例3は普通ポルトランドセメントを比較例1、比較例2より少ない10質量%にした。スラリーの粘度は、移送はできるがまだ高く、スプレータワー内への付着と顆粒強度が「不可:×」であった。実施例1は5質量%の普通ポルトランドセメントを含有し、微量のせっこうを含む。比較例3に対し、スラリー濃度を高くしても粘度は低く保たれ、乾燥効率、スプレータワー内への付着、顆粒強度、鋼品質が優れる結果となった。
比較例1はせっこうを含む普通ポルトランドセメントを多量に使用したためスラリーの粘度が1200mPa・sと非常に高く、スラリーを移送できなかった。比較例2は、モールドパウダーの原料の配合割合は比較例1と同じにし、水を多量に添加してスラリー濃度を低くした。スラリーの粘度は移送できるまで下がったものの、製造には不適であった。比較例3は普通ポルトランドセメントを比較例1、比較例2より少ない10質量%にした。スラリーの粘度は、移送はできるがまだ高く、スプレータワー内への付着と顆粒強度が「不可:×」であった。実施例1は5質量%の普通ポルトランドセメントを含有し、微量のせっこうを含む。比較例3に対し、スラリー濃度を高くしても粘度は低く保たれ、乾燥効率、スプレータワー内への付着、顆粒強度、鋼品質が優れる結果となった。
(2)実施例2~8
実施例2は、10質量%のセメントクリンカーと多量の炭酸ナトリウムを含む。炭酸ナトリウムを多量に含むスラリーは一般に粘度が高くなるが、実施例2は主原料に普通ポルトランドセメントを含まないため、スラリーの粘度は低く保たれ、乾燥効率、スプレータワー内への付着、顆粒強度、鋼品質が優れる結果となった。実施例3は、スラリー濃度を75質量%に高くしたのに伴いスラリーの粘度も高くなったが、十分製造可能であった。実施例4、実施例5は、炭酸ナトリウムの含有量を変化させた。炭酸ナトリウムの含有量が多い実施例4の方が、顆粒強度が優れる結果となった。実施例6は、スラリー濃度が50質量%であり、水が50質量%と多いため、スラリーの粘度は低くなり、移送性とスプレータワー内の付着は「優:◎」であるが、乾燥効率、顆粒強度は「可:○」となった。実施例7、実施例8はセメントクリンカーの含有量とスラリー濃度を変化させた。実施例7は実施例8に対し、セメントクリンカーを減らしたため、S含有量が減り、鋼品質は「優:◎」となった。
実施例2は、10質量%のセメントクリンカーと多量の炭酸ナトリウムを含む。炭酸ナトリウムを多量に含むスラリーは一般に粘度が高くなるが、実施例2は主原料に普通ポルトランドセメントを含まないため、スラリーの粘度は低く保たれ、乾燥効率、スプレータワー内への付着、顆粒強度、鋼品質が優れる結果となった。実施例3は、スラリー濃度を75質量%に高くしたのに伴いスラリーの粘度も高くなったが、十分製造可能であった。実施例4、実施例5は、炭酸ナトリウムの含有量を変化させた。炭酸ナトリウムの含有量が多い実施例4の方が、顆粒強度が優れる結果となった。実施例6は、スラリー濃度が50質量%であり、水が50質量%と多いため、スラリーの粘度は低くなり、移送性とスプレータワー内の付着は「優:◎」であるが、乾燥効率、顆粒強度は「可:○」となった。実施例7、実施例8はセメントクリンカーの含有量とスラリー濃度を変化させた。実施例7は実施例8に対し、セメントクリンカーを減らしたため、S含有量が減り、鋼品質は「優:◎」となった。
乾燥効率は実施例6が「可:○」であったのに対し、実施例1~5、7~8は「優:◎」であり、また、スラリーの移送性は実施例3が「可:○」であったのに対し、実施例1~2、4~8は「優:◎」であったことから、スラリー濃度は50~75質量%が好ましく、54~65質量%がより好ましい。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれる。例えば、明細書において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語とともに記載された用語は、明細書のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、本実施形態の構成も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形が可能である。
Claims (5)
- モールドパウダーの原料と水を混合してスラリーを得る工程と、
前記スラリーをスプレードライで顆粒化する工程とを含むモールドパウダーの製造方法において、
前記原料のCaO/SiO2が1.10~2.20であり、
前記原料は主原料として10質量%以上のセメントクリンカーと5質量%以下(0質量%を含む)のポルトランドセメントとを含むことを特徴とするモールドパウダーの製造方法。 - 請求項1に記載のモールドパウダーの製造方法において、
前記原料は副原料として5質量%以上20質量%未満の炭酸ナトリウムを含むことを特徴とするモールドパウダーの製造方法。 - 請求項1又は2に記載のモールドパウダーの製造方法において、
前記スラリー中の前記原料の含有量(スラリー濃度)が50~75質量%であることを特徴とするモールドパウダーの製造方法。 - CaO/SiO2が1.10~2.20であり、
主原料として10質量%以上のセメントクリンカーと5質量%以下(0質量%を含む)のポルトランドセメントとを含み、
顆粒状であることを特徴とするモールドパウダー。 - 請求項4に記載のモールドパウダーにおいて、
前記ポルトランドセメントのS含有量が0.5質量%以下であることを特徴とするモールドパウダー。
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