以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
〈第1の実施の形態〉
(力覚センサ装置1の概略構成)
図1は、第1の実施の形態に係る力覚センサ装置を例示する斜視図である。図2は、第1の実施の形態に係る力覚センサ装置を例示する図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は側面図である。図3は、第1の実施の形態に係る力覚センサ装置のセンサチップ及び起歪体を例示する斜視図である。図1~図3を参照するに、力覚センサ装置1は、センサチップ110と、起歪体20と、基板30とを有している。力覚センサ装置1は、例えば、工作機械等に使用されるロボットの腕や指等に搭載される多軸の力覚センサ装置である。
センサチップ110は、所定の軸方向の変位を最大で6軸検知する機能を有している。起歪体20は、印加された力をセンサチップ110に伝達する機能を有している。以降の実施の形態では、一例として、センサチップ110が6軸を検知する場合について説明するが、これには限定されず、例えば、センサチップ110は3軸を検知する場合等にも用いることができる。
センサチップ110は、起歪体20の上面側に、起歪体20から突出しないように接着されている。又、起歪体20の上面及び各側面に、センサチップ110に対して信号の入出力を行う基板30の一端側が適宜屈曲された状態で接着されている。センサチップ110と基板30の各電極31とは、ボンディングワイヤ等(図示せず)により、電気的に接続されている。
起歪体20の側面には、能動部品32~35が配置されている。具体的には、能動部品32~35は、基板30(例えば、フレキシブルプリント基板)の一方の面に実装され、基板30の他方の面は、起歪体20の側面に固定されている。能動部品32~35は、基板30に形成された配線パターン(図示せず)を介して、対応する電極31と電気的に接続されている。
より詳しくは、基板30において、起歪体20の第1の側面に配置された領域には能動部品32が実装されている。基板30において、起歪体20の第2の側面に配置された領域には能動部品33及び受動部品39が実装されている。基板30において、起歪体20の第3の側面に配置された領域には能動部品34及び受動部品39が実装されている。基板30において、起歪体20の第4の側面に配置された領域には能動部品35及び受動部品39が実装されている。なお、必要に応じ、起歪体20の第1の側面に配置された領域に、能動部品32に加え、受動部品39を実装してもよい。
図4は、能動部品32~35について説明する回路ブロック図である。図4に示すように、能動部品33は、センサチップ110と電気的に接続され、例えば、センサチップ110から出力されるX軸方向の力Fxを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号、及びセンサチップ110から出力されるY軸方向の力Fyを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号が入力される。能動部品33は、例えば、センサチップ110が出力するアナログの電気信号をディジタルの電気信号に変換し、内部で温度補正や振幅補正等を施し、ディジタルの電気信号として出力する機能を備えた制御ICである。
能動部品34は、センサチップ110と電気的に接続され、例えば、センサチップ110から出力されるZ軸方向の力Fzを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号、及びセンサチップ110から出力されるX軸を軸として回転させるモーメントMxを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号が入力される。能動部品34は、例えば、センサチップ110が出力するアナログの電気信号をディジタルの電気信号に変換し、内部で温度補正や振幅補正等を施し、ディジタルの電気信号として出力する機能を備えた制御ICである。
能動部品35は、センサチップ110と電気的に接続され、例えば、センサチップ110から出力されるY軸を軸として回転させるモーメントMyを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号、及びセンサチップ110から出力されるZ軸を軸として回転させるモーメントMzを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号が入力される。能動部品35は、例えば、センサチップ110が出力するアナログの電気信号をディジタルの電気信号に変換し、内部で温度補正や振幅補正等を施し、ディジタルの電気信号として出力する機能を備えた制御ICである。
能動部品32は、能動部品33~35と電気的に接続され、例えば、能動部品33、34、及び35の出力するディジタルの電気信号に対して所定の演算を行って、力Fx、Fy、及びFz、並びにモーメントMx、My、及びMzを力又はモーメントの単位に換算し、外部に出力する機能を備えた演算用ICである。能動部品32は、例えば、力Fx、Fy、及びFzを[N]の単位で、モーメントMx、My、及びMzを[N・cm]の単位で出力することができる。能動部品32は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等であってもよい。受動部品39は、能動部品33~35に接続される抵抗やコンデンサ等である。
なお、センサチップ110からの6軸出力を全てディジタル化或いはディジタル化及び補正計算等を実施する場合、通常は1軸について1つの制御ICが必要となる。この場合、制御ICの実装スペースを力覚センサ装置1内に設けようとすると、最低6個分の配置スペースを確保する必要があり、力覚センサ装置1のサイズ拡大が必要となる。外部に制御ICが実装された制御基板モジュールを接続することで、力覚センサ装置1のサイズを拡大することなく出力のディジタル化を実現する方法も考えられるが、トータルとしてみた占有面積及び体積が増加するため好ましくない。又、6軸分の性能及び機能を有した制御ICを1チップ化することも考えられるが、この場合も、制御ICを6個とする上記の場合と比較すると小さくはなるものの、力覚センサ装置1内に設ける場合には力覚センサ装置1のサイズ拡大が必要となる。
そこで、本実施の形態では、2つのチップをスタック実装して1つのパッケージに収容した2in1パッケージの制御ICを3個使用している。1チップのパッケージと2in1パッケージはサイズが大きく異ならないため、起歪体20の側面に制御ICを配置することができる。これにより、力覚センサ装置1のサイズ拡大を行うことなく、力覚センサ装置1内に6軸分の制御ICを実装可能となる。すなわち、能動部品を含めた力覚センサ装置1の小型化を実現できる。又、力覚センサ装置1のサイズ拡大を伴わずに、センサチップ110の出力信号のディジタル化が可能となる。
なお、能動部品32~35の機能をいくつのICで実現するかは任意に決定することができる。又、力覚センサ装置1内にいくつのICを実装するかは任意に決定することができる。例えば、力覚センサ装置1内に1つの制御ICのみを実装する形態としてもよい。
基板30は、起歪体20の第1の側面の下方で外側に屈曲し、基板30の他端側が外部に引き出されている。基板30の他端側には、力覚センサ装置1と接続される外部回路(制御装置等)との電気的な入出力が可能な入出力端子(図示せず)が配列されている。
このように、起歪体20の側面に能動部品(制御IC等)を配置することで、力覚センサ装置1としてのトータルサイズを最小に抑えつつ、能動部品により調整や補正がなされたディジタル信号を出力可能な力覚センサ装置1を実現することができる。
又、2in1パッケージの制御ICを使用することで、力覚センサ装置1を大型化することなくディジタル出力化が可能となる。
又、基板30からはディジタルの電気信号が出力されるため、アナログの電気信号が出力される場合と比較して、ノイズ耐性を向上することができる。
なお、本実施の形態では、便宜上、力覚センサ装置1において、センサチップ110が設けられた側を上側又は一方の側、その反対側を下側又は他方の側とする。又、各部位のセンサチップ110が設けられた側の面を一方の面又は上面、その反対側の面を他方の面又は下面とする。但し、力覚センサ装置1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。又、平面視とは対象物をセンサチップ110の上面の法線方向(Z軸方向)から視ることを指し、平面形状とは対象物をセンサチップ110の上面の法線方向(Z軸方向)から視た形状を指すものとする。
(センサチップ110)
図5は、センサチップ110をZ軸方向上側から視た図であり、図5(a)は斜視図、図5(b)は平面図である。図6は、センサチップ110をZ軸方向下側から視た図であり、図6(a)は斜視図、図6(b)は底面図である。図6(b)において、便宜上、同一高さの面を同一の梨地模様で示している。なお、センサチップ110の上面の一辺に平行な方向をX軸方向、垂直な方向をY軸方向、センサチップ110の厚さ方向(センサチップ110の上面の法線方向)をZ軸方向としている。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は、互いに直交している。
図5及び図6に示すセンサチップ110は、1チップで最大6軸を検知できるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサチップであり、SOI(Silicon On Insulator)基板等の半導体基板から形成されている。センサチップ110の平面形状は、例えば、3000μm角程度の正方形とすることができる。
センサチップ110は、柱状の5つの支持部111a~111eを備えている。支持部111a~111eの平面形状は、例えば、500μm角程度の正方形とすることができる。第1の支持部である支持部111a~111dは、センサチップ110の四隅に配置されている。第2の支持部である支持部111eは、支持部111a~111dの中央に配置されている。
支持部111a~111eは、例えば、SOI基板の活性層、BOX層、及び支持層から形成することができ、それぞれの厚さは、例えば、500μm程度とすることができる。
支持部111aと支持部111bとの間には、支持部111aと支持部111bとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、構造を補強するための補強用梁112aが設けられている。支持部111bと支持部111cとの間には、支持部111bと支持部111cとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、構造を補強するための補強用梁112bが設けられている。
支持部111cと支持部111dとの間には、支持部111cと支持部111dとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、構造を補強するための補強用梁112cが設けられている。支持部111dと支持部111aとの間には、支持部111dと支持部111aとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、構造を補強するための補強用梁112dが設けられている。
言い換えれば、第1の補強用梁である4つの補強用梁112a、112b、112c、及び112dが枠状に形成され、各補強用梁の交点をなす角部が、支持部111b、111c、111d、111aとなる。
支持部111aの内側の角部と、それに対向する支持部111eの角部とは、構造を補強するための補強用梁112eにより連結されている。支持部111bの内側の角部と、それに対向する支持部111eの角部とは、構造を補強するための補強用梁112fにより連結されている。
支持部111cの内側の角部と、それに対向する支持部111eの角部とは、構造を補強するための補強用梁112gにより連結されている。支持部111dの内側の角部と、それに対向する支持部111eの角部とは、構造を補強するための補強用梁112hにより連結されている。第2の補強用梁である補強用梁112e~112hは、X軸方向(Y軸方向)に対して斜めに配置されている。つまり、補強用梁112e~112hは、補強用梁112a、112b、112c、及び112dと非平行に配置されている。
補強用梁112a~112hは、例えば、SOI基板の活性層、BOX層、及び支持層から形成することができる。補強用梁112a~112hの太さ(短手方向の幅)は、例えば、140μm程度とすることができる。補強用梁112a~112hのそれぞれの上面は、支持部111a~111eの上面と略面一である。
これに対して、補強用梁112a~112hのそれぞれの下面は、支持部111a~111eの下面及び力点114a~114dの下面よりも数10μm程度上面側に窪んでいる。これは、センサチップ110を起歪体20に接着したときに、補強用梁112a~112hの下面が起歪体20の対向する面と接しないようにするためである。
このように、歪を検知するための検知用梁とは別に、検知用梁よりも厚く形成した剛性の強い補強用梁を配置することで、センサチップ110全体の剛性を高めることができる。これにより、入力に対して検知用梁以外が変形しづらくなるため、良好なセンサ特性を得ることができる。
支持部111aと支持部111bとの間の補強用梁112aの内側には、補強用梁112aと所定間隔を空けて平行に、支持部111aと支持部111bとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、歪を検知するための検知用梁113aが設けられている。
検知用梁113aと支持部111eとの間には、検知用梁113a及び支持部111eと所定間隔を空けて検知用梁113aと平行に、検知用梁113bが設けられている。検知用梁113bは、補強用梁112eの支持部111e側の端部と補強用梁112fの支持部111e側の端部とを連結している。
検知用梁113aの長手方向の略中央部と、それに対向する検知用梁113bの長手方向の略中央部とは、検知用梁113a及び検知用梁113bと直交するように配置された検知用梁113cにより連結されている。
支持部111bと支持部111cとの間の補強用梁112bの内側には、補強用梁112bと所定間隔を空けて平行に、支持部111bと支持部111cとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、歪を検知するための検知用梁113dが設けられている。
検知用梁113dと支持部111eとの間には、検知用梁113d及び支持部111eと所定間隔を空けて検知用梁113dと平行に、検知用梁113eが設けられている。検知用梁113eは、補強用梁112fの支持部111e側の端部と補強用梁112gの支持部111e側の端部とを連結している。
検知用梁113dの長手方向の略中央部と、それに対向する検知用梁113eの長手方向の略中央部とは、検知用梁113d及び検知用梁113eと直交するように配置された検知用梁113fにより連結されている。
支持部111cと支持部111dとの間の補強用梁112cの内側には、補強用梁112cと所定間隔を空けて平行に、支持部111cと支持部111dとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、歪を検知するための検知用梁113gが設けられている。
検知用梁113gと支持部111eとの間には、検知用梁113g及び支持部111eと所定間隔を空けて検知用梁113gと平行に、検知用梁113hが設けられている。検知用梁113hは、補強用梁112gの支持部111e側の端部と補強用梁112hの支持部111e側の端部とを連結している。
検知用梁113gの長手方向の略中央部と、それに対向する検知用梁113hの長手方向の略中央部とは、検知用梁113g及び検知用梁113hと直交するように配置された検知用梁113iにより連結されている。
支持部111dと支持部111aとの間の補強用梁112dの内側には、補強用梁112dと所定間隔を空けて平行に、支持部111dと支持部111aとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、歪を検知するための検知用梁113jが設けられている。
検知用梁113jと支持部111eとの間には、検知用梁113j及び支持部111eと所定間隔を空けて検知用梁113jと平行に、検知用梁113kが設けられている。検知用梁113kは、補強用梁112hの支持部111e側の端部と補強用梁112eの支持部111e側の端部とを連結している。
検知用梁113jの長手方向の略中央部と、それに対向する検知用梁113kの長手方向の略中央部とは、検知用梁113j及び検知用梁113kと直交するように配置された検知用梁113lにより連結されている。
検知用梁113a~113lは、支持部111a~111eの厚さ方向の上端側に設けられ、例えば、SOI基板の活性層から形成することができる。検知用梁113a~113lの太さ(短手方向の幅)は、例えば、75μm程度とすることができる。検知用梁113a~113lのそれぞれの上面は、支持部111a~111eの上面と略面一である。検知用梁113a~113lのそれぞれの厚さは、例えば、50μm程度とすることができる。
検知用梁113aの長手方向の中央部の下面側(検知用梁113aと検知用梁113cとの交点)には、力点114aが設けられている。検知用梁113a、113b、及び113cと力点114aとにより、1組の検知ブロックをなしている。
検知用梁113dの長手方向の中央部の下面側(検知用梁113dと検知用梁113fとの交点)には、力点114bが設けられている。検知用梁113d、113e、及び113fと力点114bとにより、1組の検知ブロックをなしている。
検知用梁113gの長手方向の中央部の下面側(検知用梁113gと検知用梁113iとの交点)には、力点114cが設けられている。検知用梁113g、113h、及び113iと力点114cとにより、1組の検知ブロックをなしている。
検知用梁113jの長手方向の中央部の下面側(検知用梁113jと検知用梁113lとの交点)には、力点114dが設けられている。検知用梁113j、113k、及び113lと力点114dとにより、1組の検知ブロックをなしている。
力点114a~114dは、外力が印加される箇所であり、例えば、SOI基板のBOX層及び支持層から形成することができる。力点114a~114dのそれぞれの下面は、支持部111a~111eの下面と略面一である。
このように、力又は変位を4つの力点114a~114dから取り入れることで、力の種類毎に異なる梁の変形が得られるため、6軸の分離性が良いセンサを実現することができる。
なお、センサチップ110において、応力集中を抑制する観点から、内角を形成する部分はR状とすることが好ましい。
図7は、各軸にかかる力及びモーメントを示す符号を説明する図である。図7に示すように、X軸方向の力をFx、Y軸方向の力をFy、Z軸方向の力をFzとする。又、X軸を軸として回転させるモーメントをMx、Y軸を軸として回転させるモーメントをMy、Z軸を軸として回転させるモーメントをMzとする。
図8は、センサチップ110のピエゾ抵抗素子の配置を例示する図である。4つ力点114a~114dに対応する各検知ブロックの所定位置には、ピエゾ抵抗素子が配置されている。
具体的には、図5及び図8を参照すると、力点114aに対応する検知ブロックにおいて、ピエゾ抵抗素子MxR3及びMxR4は、検知用梁113aを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113aの検知用梁113cに近い領域において検知用梁113cを長手方向(Y方向)に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。又、ピエゾ抵抗素子FyR3及びFyR4は、検知用梁113aを長手方向に二等分する線よりも補強用梁112a側であって、かつ、検知用梁113aの検知用梁113cから遠い領域において検知用梁113cを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
又、力点114bに対応する検知ブロックにおいて、ピエゾ抵抗素子MyR3及びMyR4は、検知用梁113dを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113dの検知用梁113fに近い領域において検知用梁113fを長手方向(X方向)に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。又、ピエゾ抵抗素子FxR3及びFxR4は、検知用梁113dを長手方向に二等分する線よりも補強用梁112b側であって、かつ、検知用梁113dの検知用梁113fから遠い領域において検知用梁113fを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
又、ピエゾ抵抗素子MzR3及びMzR4は、検知用梁113dを長手方向に二等分する線よりも検知用梁113f側であって、かつ、検知用梁113dの検知用梁113fに近い領域において検知用梁113fを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。ピエゾ抵抗素子FzR2及びFzR3は、検知用梁113eを長手方向に二等分する線よりも支持部111e側であって、かつ、検知用梁113eの検知用梁113fに近い領域において検知用梁113fを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
又、力点114cに対応する検知ブロックにおいて、ピエゾ抵抗素子MxR1及びMxR2は、検知用梁113gを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113gの検知用梁113iに近い領域において検知用梁113iを長手方向(Y方向)に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。又、ピエゾ抵抗素子FyR1及びFyR2は、検知用梁113gを長手方向に二等分する線よりも補強用梁112c側であって、かつ、検知用梁113gの検知用梁113iから遠い領域において検知用梁113iを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
又、力点114dに対応する検知ブロックにおいて、ピエゾ抵抗素子MyR1及びMyR2は、検知用梁113jを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113jの検知用梁113lに近い領域において検知用梁113lを長手方向(X方向)に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。又、ピエゾ抵抗素子FxR1及びFxR2は、検知用梁113jを長手方向に二等分する線よりも補強用梁112d側であって、かつ、検知用梁113jの検知用梁113lから遠い領域において検知用梁113lを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
又、ピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2は、検知用梁113jを長手方向に二等分する線よりも検知用梁113k側であって、かつ、検知用梁113jの検知用梁113lに近い領域において検知用梁113lを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。ピエゾ抵抗素子FzR1及びFzR4は、検知用梁113kを長手方向に二等分する線よりも支持部111e側であって、かつ、検知用梁113kの検知用梁113lから遠い領域において検知用梁113lを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
このように、センサチップ110では、各検知ブロックに複数のピエゾ抵抗素子を分けて配置している。これにより、力点114a~114dに印加(伝達)された力の向き(軸方向)に応じた、所定の梁に配置された複数のピエゾ抵抗素子の出力の変化に基づいて、所定の軸方向の変位を最大で6軸検知することができる。
又、センサチップ110では、検知用梁113c、113f、113i、及び113lをできるだけ短くして、検知用梁113b、113e、113h、及び113kを検知用梁113a、113d、113g、及び113jに近つけ、検知用梁113b、113e、113h、及び113kの長さをできるだけ確保する構造としている。この構造により、検知用梁113b、113e、113h、及び113kが弓なりに撓みやすくなって応力集中を緩和でき、耐荷重を向上することができる。
又、センサチップ110では、短くしたことで応力に対する変形が小さくなった検知用梁113c、113f、113i、及び113lにはピエゾ抵抗素子を配置していない。その代り、検知用梁113c、113f、113i、及び113lよりも細くて長く、弓なりに撓みやすい検知用梁113a、113d、113g、及び113j、並びに検知用梁113b、113e、113h、及び113kの応力が最大になる位置の近傍にピエゾ抵抗素子を配置している。その結果、センサチップ110では、効率よく応力を取り込むことが可能となり、感度(同じ応力に対するピエゾ抵抗素子の抵抗変化)を向上することができる。
なお、センサチップ110では、歪の検出に用いるピエゾ抵抗素子以外にも、ダミーのピエゾ抵抗素子が配置されている。ダミーのピエゾ抵抗素子は、歪の検出に用いるピエゾ抵抗素子も含めた全てのピエゾ抵抗素子が、支持部111eの中心に対して点対称となるように配置されている。
ここで、ピエゾ抵抗素子FxR1~FxR4は力Fxを検出し、ピエゾ抵抗素子FyR1~FyR4は力Fyを検出し、ピエゾ抵抗素子FzR1~FzR4は力Fzを検出する。又、ピエゾ抵抗素子MxR1~MxR4はモーメントMxを検出し、ピエゾ抵抗素子MyR1~MyR4はモーメントMyを検出し、ピエゾ抵抗素子MzR1~MzR4はモーメントMzを検出する。
このように、センサチップ110では、各検知ブロックに複数のピエゾ抵抗素子を分けて配置している。これにより、力点114a~114dに印加(伝達)された力又は変位の向き(軸方向)に応じた、所定の梁に配置された複数のピエゾ抵抗素子の出力の変化に基づいて、所定の軸方向の変位を最大で6軸検知することができる。
具体的には、センサチップ110において、Z軸方向の変位(Mx、My、Fz)は、所定の検知用梁の変形に基づいて検知することができる。すなわち、X軸方向及びY軸方向のモーメント(Mx、My)は、第1の検知用梁である検知用梁113a、113d、113g、及び113jの変形に基づいて検知することができる。又、Z軸方向の力(Fz)は、第2の検知用梁である検知用梁113e及び113kの変形に基づいて検知することができる。
又、センサチップ110において、X軸方向及びY軸方向の変位(Fx、Fy、Mz)は、所定の検知用梁の変形に基づいて検知することができる。すなわち、X軸方向及びY軸方向の力(Fx、Fy)は、第1の検知用梁である検知用梁113a、113d、113g、及び113jの変形に基づいて検知することができる。又、Z軸方向のモーメント(Mz)は、第1の検知用梁である検知用梁113d及び113jの変形に基づいて検知することができる。
各検知用梁の厚みと幅を可変することで、検出感度の均一化や、検出感度の向上等の調整を図ることができる。
但し、ピエゾ抵抗素子の数を減らし、5軸以下の所定の軸方向の変位を検知するセンサチップとすることも可能である。
図9は、センサチップ110における電極配置と配線を例示する図であり、センサチップ110をZ軸方向上側から視た平面図である。図9に示すように、センサチップ110は、電気信号を取り出すための複数の電極15を有している。各電極15は、力点114a~114dに力が印加された際の歪みが最も少ない、センサチップ110の支持部111a~111dの上面に配置されている。各ピエゾ抵抗素子から電極15までの配線16は、各補強用梁上及び各検知用梁上を適宜引き回すことができる。
このように、各補強用梁は、必要に応じて配線を引き出す際の迂回路としても利用できるため、検知用梁とは別に補強用梁を配置することで、配線設計の自由度を向上することができる。これにより、各ピエゾ抵抗素子を、より理想的な位置に配置することが可能となる。
図10は、センサチップ110の温度センサを例示する拡大平面図である。図9及び図10に示すように、センサチップ110は、歪み検出用に用いるピエゾ抵抗素子に温度補正を行うための温度センサ17を備えている。温度センサ17は、4つのピエゾ抵抗素子TR1、TR2、TR3、及びTR4がブリッジ接続された構成である。
ピエゾ抵抗素子TR1、TR2、TR3、及びTR4のうち、対向する2つは歪み検出用に用いるピエゾ抵抗素子MxR1等と同一特性とされている。又、ピエゾ抵抗素子TR1、TR2、TR3、及びTR4のうち、対向する他の2つは、不純物半導体により不純物濃度を変えることで、ピエゾ抵抗素子MxR1等と異なる特性とされている。これにより、温度変化によりブリッジのバランスが崩れるため、温度検出が可能となる。
なお、歪み検出用に用いるピエゾ抵抗素子(MxR1等)は、全て、センサチップ110を構成する半導体基板(シリコン等)の結晶方位に水平又は垂直に配置されている。これにより、同じ歪みに対して、より大きな抵抗の変化を得ることができ、印加される力及びモーメントの測定精度を向上させることが可能となる。
これに対して、温度センサ17を構成するピエゾ抵抗素子TR1、TR2、TR3、及びTR4は、センサチップ110を構成する半導体基板(シリコン等)の結晶方位に対して45度傾けて配置されている。これにより、応力に対する抵抗変化を低減できるため、温度変化のみを精度よく検知できる。
又、温度センサ17は、力点114a~114dに力が印加された際の歪みが最も少ない、センサチップ110の支持部111aの上面に配置されている。これにより、応力に対する抵抗変化をいっそう低減できる。
なお、ピエゾ抵抗素子は、本発明にかかる歪検出素子の代表的な一例である。
(起歪体20)
図11は、起歪体20を例示する図(その1)であり、図11(a)は斜視図、図11(b)は側面図である。図12は、起歪体20を例示する図(その2)であり、図12(a)は平面図、図12(b)は図12(a)のA-A線に沿う縦断面斜視図である。図12(a)において、便宜上、同一高さの面を同一の梨地模様で示している。図13は、起歪体20を例示する図(その3)であり、図13(a)は図12(a)のB-B線に沿う縦断面図であり、図13(b)は図13(a)のC-C線に沿う横断面図である。
図11~図13に示すように、起歪体20は、被固定部に直接取り付けられる土台21と、センサチップ110を搭載するセンサチップ搭載部となる柱28と、柱28の周囲に離間して配置された柱22a~22dとを備えている。
より詳しくは、起歪体20において、略円形の土台21の上面に、土台21の中心に対して均等(点対称)となるように4本の柱22a~22dが配置され、隣接する柱の土台21とは反対側同士を連結する梁23a~23dが枠状に設けられている。そして、土台21の上面中央の上方に、柱28が配置されている。なお、土台21の平面形状は円形には限定されず、多角形等(例えば、正方形等)としてもよい。
柱28は、柱22a~22dよりも太くて短く形成されている。なお、センサチップ110は、柱22a~22dの上面から突出しないように、柱28上に固定される。
柱28は、土台21の上面には直接固定されていなく、接続用梁28a~28dを介して柱22a~22dに固定されている。そのため、土台21の上面と柱28の下面との間には空間がある。柱28の下面と、接続用梁28a~28dの各々の下面とは、面一とすることができる。
柱28の接続用梁28a~28dが接続される部分の横断面形状は例えば矩形であり、矩形の四隅と矩形の四隅に対向する柱22a~22dとが接続用梁28a~28dを介して接続されている。接続用梁28a~28dが、柱22a~22dと接続される位置221~224は、柱22a~22dの高さ方向の中間よりも下側であることが好ましい。この理由については、後述する。なお、柱28の接続用梁28a~28dが接続される部分の横断面形状は矩形には限定されず、円形や多角形等(例えば、六角形等)としてもよい。
接続用梁28a~28dは、土台21の中心に対して均等(点対称)となるように、土台21の上面と所定間隔を空けて土台21の上面と略平行に配置されている。接続用梁28a~28dの太さや厚み(剛性)は、起歪体20の変形を妨げないようにするため、柱22a~22dや梁23a~23dよりも細く薄く形成することが好ましい。
このように、土台21の上面と柱28の下面とは所定の距離だけ離れている。所定の距離は、例えば、数mm程度とすることができる。柱28を土台21の上面には直接固定せず、柱28を接続用梁28a~28dを介して柱22a~22dに固定する構造とした場合、土台21の上面と柱28の下面との距離を長くするほど、ねじ締結時の柱28の変形が低減され、結果としてセンサチップ110のFz出力(オフセット)が低減される。一方、土台21の上面と柱28の下面との距離を長くするほど、センサチップ110の出力が低下する(感度が低下する)。
すなわち、柱28は、柱22a~22dの中間よりも下側に接続することが好ましい。これにより、センサチップ110の感度を確保しながら、ねじ締結時のセンサチップ110のFz出力(オフセット)を低減することができる。
ねじ締結時のセンサチップ110のFz出力(オフセット)の低減を土台21の剛性を上げることで達成しようとした場合、土台21の厚みを厚くする必要があり、力覚センサ装置全体のサイズが大きくなってしまう。柱28を土台21の上面には直接固定せず、柱28を接続用梁28a~28dを介して柱22a~22dに固定する構造することにより、力覚センサ装置全体のサイズが大きくなることなく、ねじ締結時のセンサチップ110のFz出力(オフセット)を低減することができる。
又、柱28を土台21の上面には直接固定せず、柱28を接続用梁28a~28dを介して柱22a~22dに固定する構造することにより、モーメント(Mx、My)入力時のモーメント成分(Mx、My)と並進方向の力成分(Fx、Fy)の分離性を向上することができる。
土台21には、起歪体20を被固定部にねじ等を用いて締結するための貫通孔21xが設けられている。本実施の形態では、土台21には4つの貫通孔21xが設けられているが、貫通孔21xの個数は任意に決定することができる。
土台21を除く起歪体20の概略形状は、例えば、縦5000μm程度、横5000μm程度、高さ7000μm程度の直方体状とすることができる。柱22a~22dの横断面形状は、例えば、1000μm角程度の正方形とすることができる。柱28の横断面形状は、例えば、2000μm角程度の正方形とすることができる。
但し、起歪体20において、応力集中を抑制する観点から、内角を形成する部分はR状とすることが好ましい。例えば、柱22a~22dの土台21の上面の中心側の面は、上下がR状に形成されていることが好ましい。同様に、梁23a~23dの土台21の上面と対向する面は、左右がR状に形成されていることが好ましい。
なお、R状の部分の曲率半径が大きいほど、応力集中を抑制する効果が大きくなる。しかし、R状の部分の曲率半径を大きくし過ぎると、起歪体20が大型化し、結果として力覚センサ装置1も大型化するため、R状の部分の曲率半径を大きくすることには限界がある。
そこで、本実施の形態では、図12(a)に濃い梨地模様で示したように、力覚センサ装置1にMx、My、及びMzが印加された際に過大な応力集中が発生する梁23a~23dの長手方向の中央部を両端部よりも太くしている。そして、梁23a~23dの長手方向の中央部は、柱22a~22dの側面よりも内側及び外側に張り出した張り出し部を備えている。
これにより、梁23a~23dの長手方向の中央部の断面積が大きくなるため、力覚センサ装置1にMx、My、及びMzが印加された際に、元々応力集中していた梁23a~23dの長手方向の中央部に発生する応力を低減することができる。すなわち、梁23a~23dの長手方向の中央部への応力集中を緩和することができる。
又、梁23a~23dの長手方向の中央部の側面を柱22a~22dの側面よりも外側に張り出させて張り出し部を設けたことにより、起歪体20の4つの側面に余剰空間が生じたため、能動部品32~35の各々の少なくても一部分を余剰空間に入り込ませることができ、起歪体20の側面に効率的に配置することができる(図1、図2等参照)。
能動部品32~35は、例えば、梁23a~23dよりも土台21側の起歪体20の側面において、平面視で張り出し部と少なくとも一部が重複するように配置することができる(図2(a)、図2(b)等参照)。
梁23a~23dのそれぞれの上面の長手方向の中央部には、梁23a~23dの長手方向の中央部から上方に突起する突起部が設けられ、突起部上に、例えば四角柱状の入力部24a~24dが設けられている。入力部24a~24dは外部から力が印加される部分であり、入力部24a~24dに力が印加されると、それに応じて梁23a~23d及び柱22a~22dが変形する。
このように、4つの入力部24a~24dを設けることで、例えば1つの入力部の構造と比較して、梁23a~23dの耐荷重を向上することができる。
柱28の上面の四隅には4本の柱25a~25dが配置され、柱28の上面の中央部には第4の柱である柱25eが配置されている。柱25a~25eは、同一の高さに形成されている。
すなわち、柱25a~25eのそれぞれの上面は、同一平面上に位置している。柱25a~25eのそれぞれの上面は、センサチップ110の下面と接着される接合部となる。
梁23a~23dのそれぞれの内側面の長手方向の中央部には、梁23a~23dのそれぞれの内側面から水平方向内側に突出する梁26a~26dが設けられている。梁26a~26dは、梁23a~23dや柱22a~22dの変形をセンサチップ110に伝達する梁である。又、梁26a~26dのそれぞれの上面の先端側には、梁26a~26dのそれぞれの上面の先端側から上方に突起する突起部27a~27dが設けられている。
突起部27a~27dは、同一の高さに形成されている。すなわち、突起部27a~27dのそれぞれの上面は、同一平面上に位置している。突起部27a~27dのそれぞれの上面は、センサチップ110の下面と接着される接合部となる。梁26a~26d及び突起部27a~27dは、可動部となる梁23a~23dと連結されているため、入力部24a~24dに力が印加されると、それに応じて変形する。
なお、入力部24a~24dに力が印加されていない状態では、柱25a~25eのそれぞれの上面と、突起部27a~27dのそれぞれの上面とは、同一平面上に位置している。
起歪体20において、土台21、柱22a~22d、柱28、梁23a~23d、入力部24a~24d、柱25a~25e、梁26a~26d、及び突起部27a~27dの各部位は、剛性を確保しかつ精度良く作製する観点から、一体に形成されていることが好ましい。起歪体20の材料としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)等の硬質な金属材料を用いることができる。中でも、特に硬質で機械的強度の高いSUS630を用いることが好ましい。
このように、センサチップ110と同様に、起歪体20も柱と梁とを備えた構造とすることで、印加される力によって6軸それぞれで異なる変形を示すため、6軸の分離性が良い変形をセンサチップ110に伝えることができる。
すなわち、起歪体20の入力部24a~24dに印加された力を、柱22a~22d、梁23a~23d、及び梁26a~26dを介してセンサチップ110に伝達し、センサチップ110で変位を検知する。そして、センサチップ110において、1つの軸につき1個ずつ形成されたブリッジ回路から各軸の出力を得ることができる。
(力覚センサ装置1の製造工程)
図14~図19は、力覚センサ装置1の製造工程を例示する図である。まず、図14(a)に示すように、起歪体20を作製する。起歪体20は、例えば、成形や切削、ワイヤ放電等により一体に形成することができる。起歪体20の材料としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)等の硬質な金属材料を用いることができる。中でも、特に硬質で機械的強度の高いSUS630を用いることが好ましい。起歪体20を成形により作製する場合には、例えば、金属粒子とバインダーとなる樹脂とを金型に入れて成形し、その後、焼結して樹脂を蒸発させることで、金属からなる起歪体20を作製できる。
次に、図14(b)に示す工程では、柱25a~25eの上面、及び突起部27a~27dの上面に接着剤41を塗布する。接着剤41としては、例えば、エポキシ系の接着剤等を用いることができる。外部から印加される力に対する耐力の点から、接着剤41はヤング率1GPa以上で厚さ20μm以下であることが好ましい。
次に、図15(a)に示す工程では、センサチップ110を作製する。センサチップ110は、例えば、SOI基板を準備し、準備した基板にエッチング加工(例えば、反応性イオンエッチング等)等を施す周知の方法により作製できる。又、電極や配線は、例えば、基板の表面にスパッタ法等によりアルミニウム等の金属膜を成膜後、金属膜をフォトリソグラフィによってパターニングすることにより作製できる。
次に、図15(b)に示す工程では、センサチップ110の下面が柱25a~25eの上面、及び突起部27a~27dの上面に塗布された接着剤41と接するように、センサチップ110を起歪体20内に加圧しながら配置する。そして、接着剤41を所定温度に加熱して硬化させる。これにより、センサチップ110が起歪体20内に固定される。具体的には、センサチップ110の支持部111a~111dが各々柱25a~25e上に固定され、支持部111eが柱25e上に固定され、力点114a~114dが各々突起部27a~27d上に固定される。
次に、図16(a)に示す工程では、能動部品32~35及び受動部品39が実装された基板30を準備する。
基板30は、図17(a)の工程で柱22a~22dの上面(端面)に固定される端面固定部30aを備えている。図16(a)において、十字がクロスする領域が端面固定部30aである。端面固定部30aの4隅には、電極31(ボンディングパッド)が設けられている。
基板30は、端面固定部30aから4方向に延伸し、図18(a)の工程で端面固定部30aに対して屈曲して柱22a~22dの側面に固定される側面固定部30b~30eを備えている。
本実施の形態では、側面固定部30bには能動部品32が実装され、側面固定部30cには能動部品33及び受動部品39が実装され、側面固定部30dには能動部品34及び受動部品39が実装され、側面固定部30eには能動部品35及び受動部品39が実装されている。但し、側面固定部30b~30eの全てに能動部品が実装される必要はなく、側面固定部30b~30eうちの少なくとも1つに能動部品が実装されていればよい。
基板30は、側面固定部30bから延伸する延伸部30fを備えている。延伸部30fの端部には、力覚センサ装置1と接続される外部回路(制御装置等)との電気的な入出力が可能な入出力端子(図示せず)が配列されている。
端面固定部30aは、図17(a)の工程で柱22a~22dの上面(端面)に固定される際にセンサチップ110及び入力部24a~24dを露出する開口部30xを備えている。開口部30xは、端面固定部30aから側面固定部30b~30eの各々の一部に延伸している。
このように、基板30は、開口部30xが設けられていること、配線の引き回しの容易性、及び能動部品32~35が実装されることから、例えば、十字形状の外形とすることができる。
次に、図16(b)に示す工程では、柱22a~22dの上面に、接着剤42を塗布する。接着剤42としては、例えば、エポキシ系の接着剤等を用いることができる。なお、接着剤42は、基板30を起歪体20上に固定するためのものであり、外部から力が印加されないため、汎用の接着剤を用いることができる。
次に、図17(a)に示す工程では、基板30の端面固定部30aの4隅の下面が柱22a~22dの上面に塗布された接着剤42と接するように、基板30を起歪体20上に配置する。この時点では、側面固定部30b~30eは、端面固定部30aに対して屈曲していない。
次に、図17(b)に示す工程では、柱22a~22dの各々の外側を向く2側面に接着剤43を(例えば、上下方向に2カ所ずつ)塗布する。但し、能動部品32が実装された部分の基板30の裏面と接着される領域では、柱22a及び22dの側面下方から土台21の上面外周部に延伸するように接着剤43を塗布する。
接着剤43としては、例えば、エポキシ系の接着剤等を用いることができる。なお、接着剤43は、基板30を起歪体20上に固定するためのものであり、外部から力が印加されないため、汎用の接着剤を用いることができる。接着剤43として、接着剤42と同じ接着剤を用いてもよい。或いは、接着剤42としてはワイヤボンディング性を確保するためにフィラー入りの比較的硬い(ヤング率の高い)接着剤を用い、接着剤43としては起歪体20の変形に追従する柔軟性を確保するために比較的柔らかい(ヤング率の低い)接着剤を用いてもよい。又、接着剤43は、図16(b)の工程で接着剤42と共に塗布してもよい。
次に、図18(a)に示す工程では、起歪体20上に配された端面固定部30aから水平方向にはみ出した側面固定部30b~30eを、起歪体20の各側面側に折り曲げる。そして、基板30を起歪体20側に加圧しながら接着剤42及び43を所定温度に加熱して硬化させる。これにより、基板30が起歪体20に固定される。なお、基板30はフレキシブル基板であり、起歪体20に対して十分に柔らかいことや、基板30と起歪体20とが部分的な接着であることから、基板30は起歪体20の変形を阻害しない。
次に、基板30の電極31とセンサチップ110の対応する電極15とをボンディングワイヤ(金線や銅線等の金属線)等(図示せず)により電気的に接続する。基板30において、端面固定部30aの、柱22a~22dの上面(端面)と平面視で重複する4隅の領域に電極31が形成されているが、柱22a~22dの上面(端面)は、入力部24a~24dに力が印加された際の歪みが最も少ない領域である。そのため、この領域は、超音波で加圧することが容易であり、ワイヤボンディングを安定して行うことができる。以上の工程により力覚センサ装置1が完成する。
このように、力覚センサ装置1は、センサチップ110、起歪体20、及び基板30の3部品のみで作製できるため、組み立てが容易であり、かつ位置合わせ箇所も最低限で済むため、実装起因による精度の劣化を抑制できる。
又、起歪体20において、センサチップ110との接続箇所(柱25a~25eの上面、及び突起部27a~27dの上面)は全て同一平面にあるため、起歪体20に対するセンサチップ110の位置合わせが1回で済み、起歪体20にセンサチップ110を実装することが容易である。
なお、図18(b)に示すように、更にカバーを接着する工程を設けてもよい。図18(b)に示す工程では、起歪体20の土台21より上側及びセンサチップ110を覆うように、入力部24a~24dを露出する開口部が設けられたカバー50を土台21の外周部に接着する。カバー50としては、例えば、金属材の表面にニッケルめっき等を施した材料を用いることができる。
基板30は起歪体20に接着されており、かつ、基板30の能動部品32~35が実装された部分は、基板30を折り曲げた際に、起歪体20の高さ方向のサイズ以内に収まっている。そのため、基板30は、カバー50の取付を阻害しない。
カバー50を設けることにより、防塵及び電気ノイズ対策が可能となる。特に、金属製の起歪体20及びカバー50を、銀ペースト等を用いて、基板30のGNDと電気的に接続することにより、ノイズ耐性(信号安定性)を高めることができる。この場合、基板30に、センサチップ110及び能動部品32~35とは系列の異なるGND端子を設け、このGND端子と起歪体20及びカバー50とを電気的に接続することが好ましい。
図19に示すように、能動部品32~35は、起歪体20の側面とカバー50の内壁面との間に、カバー50の内壁面と接しないように効率よく配置される。これにより、力覚センサ装置1のトータルサイズを最小に抑えることが可能となる。なお、図19では、便宜上、カバー50の上面側の一部を除去した状態を示している。
図20は、基板30の電源及びGNDの引き回しの一例を示す図である。図20に示すように、基板30において、電源(VDD)の配線パターンは、延伸部30f側から側面固定部30bを経由し、側面固定部30e、側面固定部30d、側面固定部30cの順に引き回すことができる。又、GNDの配線パターンは、延伸部30f側から側面固定部30bを経由し、側面固定部30c、側面固定部30d、側面固定部30eの順に引き回すことができる。なお、電源(VDD)及びGNDの配線パターンをループ状にするとノイズ耐性が低下するため、電源(VDD)及びGNDの配線パターンは側面固定部30c又は側面固定部30eで終端させ、側面固定部30bへ戻さないことが好ましい。
ところで、センサチップ110が出力するアナログの電気信号(力Fx、Fy、及びFz、並びにモーメントMx、My、及びMzに対応する信号)には感度のバラツキがあり、感度の高い信号と感度の低い信号が存在する。感度の低い信号はノイズ耐性が低いため、感度の低い信号を入力する能動部品(制御IC)は、できるだけ引き回されていないGND(側面固定部30c側のGND)に接続することがノイズ耐性上好ましい。
そこで、本実施の形態では、センサチップ110が出力するアナログの電気信号のうち感度が最も低い信号と感度が2番目に低い信号を入力する能動部品33を、側面固定部30cに実装している。又、センサチップ110が出力するアナログの電気信号のうち感度が3番目に低い信号と感度が4番目に低い信号を入力する能動部品34を、側面固定部30dに実装している。そして、残りの2信号を入力する能動部品35を、側面固定部30eに実装している。
これにより、センサチップ110が出力するアナログの各電気信号において、ノイズ耐性のばらつきを低減することが可能となる。
〈第1の実施の形態の変形例1〉
第1の実施の形態の変形例1では、基板に実装された能動部品の数が第1の実施の形態と異なる力覚センサ装置の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図21は、第1の実施の形態の変形例1に係る力覚センサ装置を例示する図であり、図21(a)は斜視図、図21(b)は平面図である。図21に示すように、力覚センサ装置1Aは、基板30に制御ICである能動部品33~35のみが実装されており、能動部品32(演算用IC)が実装されていない点が力覚センサ装置1(図1等参照)と相違する。
このように、能動部品32(演算用IC)は、必ずしも基板30に実装しなくてよい。この場合には、制御ICである能動部品33~35から各種補正後のディジタルの電気信号を出力し、基板30に接続される外部回路側でデータ集約及び演算処理を行うことができる。
〈第1の実施の形態の変形例2〉
第1の実施の形態の変形例2では、受力板を備えた力覚センサ装置の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例2において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図22は、第1の実施の形態の変形例2に係る力覚センサ装置を例示する斜視図である。図23は、第1の実施の形態の変形例2に係る力覚センサ装置を例示する図であり、図23(a)は平面図、図23(b)は図23(a)のD-D線に沿う縦断面図である。図22及び図23を参照するに、力覚センサ装置1Bは、起歪体20の入力部24a~24d上に受力板40を設けた点が力覚センサ装置1(図1等参照)と相違する。
受力板40の平面形状は、例えば、円形とすることができるが、矩形等としてもよい。受力板40の上面側には平面形状が矩形の4つの凹部40xと、平面形状が円形の4つの貫通孔40yが設けられている。又、受力板40の上面側の中心には、平面形状が円形の1つの凹部40zが設けられている。
4つの凹部40xは各々起歪体20の入力部24a~24dを覆うように配置され、各々の凹部40xの底面は起歪体20側に突起して起歪体20の入力部24a~24dの上面と接している。但し、凹部40x、貫通孔40y、及び凹部40zの平面形状は、任意に決定することができる。
図示はしないが、入力部24a~24dの上面に突起(又は突起受部)を形成し、起歪体20側に突起した凹部40xの底面に突起受部(又は突起)を形成して、入力部24a~24dの上面の突起(又は突起受部)と凹部40xの底面の突起受部(又は突起)を嵌め合わせることで受力板40と起歪体20とを位置決めするようにしてもよい。
凹部40x及び凹部40zは、必要に応じて、力覚センサ装置1Aを被固定部に取り付ける際の位置決めに用いることができる。又、貫通孔40yは、力覚センサ装置1Aを被固定部にねじ等を用いて締結するためのねじ孔である。
受力板40の材料としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)630等を用いることができる。受力板40は、例えば、溶接により起歪体20に固定することができる。
このように、受力板40を設けることで、受力板40を介して起歪体20の入力部24a~24dに外部から力を入力することができる。
又、本実施の形態では、受力板40において、起歪体20の入力部24a~24dとの接合部を、受力板40の下面40aに設けた凹部内から立設して受力板40の下面40aから突出する突出部40tとし、突出部40tの側面をR状としている。これにより、受力板40を不要に厚くすることなく(力覚センサ装置1BをZ方向にサイズアップすることなく)、R状の部分の曲率半径を大きくすることができる。その結果、受力板40において、突出部40tに発生する応力を低減することが可能となり、耐荷重を向上できる。
又、突出部40tの厚み(図23(b)のT部)が薄いことにより、受力板40と入力部24a~24dをレーザ溶接する際にレーザ出力を下げることができるので、受力板40にかかる残留熱応力が低減され、受力板40のゆがみを抑えることができる。
なお、受力板40の下面40aは、起歪体20の入力部24a~24dの上面と同一平面に位置してもよい。この場合、焼結時等に、受力板40が変形することを防止できる。
〈第1の実施の形態の変形例3〉
第1の実施の形態の変形例3では、受力板との接合部の構造が第1の実施の形態の変形例2とは異なる力覚センサ装置の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例3において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図24は、第1の実施の形態の変形例3に係る力覚センサ装置を例示する斜視図である。図25は、力覚センサ装置1Cにおいて、起歪体と受力板との接合について説明する図である。図24及び図25を参照するに、力覚センサ装置1Cは、起歪体20の入力部24a~24dの上面に接合部29a~29dが設けられた点、受力板40が受力板60に置換された点が力覚センサ装置1B(図22等参照)と相違する。
受力板60の材料としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)630等を用いることができる。受力板60の平面形状は、例えば、円形とすることができるが、矩形等としてもよい。受力板60の上面側には平面形状が円形の4つの凹部60xと、平面形状が円形の4つの貫通孔60yが設けられている。4つの凹部60xは、力覚センサ装置1Cを被固定部に取り付ける際の位置決めや、力覚センサ装置1Cを被固定部にねじ等を用いて締結するためのねじ孔として用いることができる。
力覚センサ装置1Cにおいて、起歪体20と受力板60とを接合するには、図25(a)に示すように起歪体20の入力部24a~24dの上面に設けられた接合部29a~29dを、図25(b)に示すように受力板60の4つの貫通孔60yに挿通する。その後、受力板60から突起する接合部29a~29dの先端部を塑性変形(かしめ)により拡径させることで、図24に示すように起歪体20と受力板60とを接合することができる。
このように、起歪体と受力板との接合は溶接に限定されず、かしめにより行ってもよい。或いは、起歪体と受力板との接合は、接着、ねじ止め、圧入、鑞接等により行ってもよい。
〈第1の実施の形態の変形例4〉
第1の実施の形態の変形例4では、受力板との接合部の構造が第1の実施の形態の変形例2とは異なる力覚センサ装置の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例4において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図26は、第1の実施の形態の変形例4に係る力覚センサ装置を例示する図であり、図26(a)は受力板70を取り外した状態の平面図、図26(b)は受力板70を取り付けた状態の平面図である。又、図27は、第1の実施の形態の変形例4に係る力覚センサ装置を例示する図であり、図27(a)は図26(b)のE-E線に沿う縦断面図、図27(b)は図26(b)の側面図である。
図26及び図27を参照するに、力覚センサ装置1Dは、起歪体20の入力部24a~24dが入力部24e~24hに置換され、受力板40が受力板70に置換された点が力覚センサ装置1(図12等参照)、力覚センサ装置1B(図23等参照)と相違する。
力覚センサ装置1Bにおいて、受力板40との接合面となる入力部24a~24dは、略長方形であった。これに対し、力覚センサ装置1Dにおいて、受力板70との接合面となる入力部24e~24hは、起歪体20の外周側が拡幅した形状であり、外周側の2箇所の角部は比較的大きなR状とされている(図26(a)の梨地模様で示した部分)。
受力板70の上面70b側には1つの凹部70xと3つの凹部70yが設けられている。凹部70x及び70yは何れも受力板70の外周側が円弧状の長穴であるが、凹部70xは凹部70yよりも受力板70の外周側が拡幅している。凹部70x及び凹部70xと対向して配置される1つの凹部70yは、例えば、位置決めに用いることができる。
凹部70x及び70yは各々起歪体20の入力部24e~24hを覆うように配置され、凹部70x及び70yの底面は起歪体20側に突起して側面がR状の突出部70tを形成し、起歪体20の入力部24e~24hの上面と接している。
これにより、受力板70を不要に厚くすることなく(力覚センサ装置1DをZ方向にサイズアップすることなく)、R状の部分の曲率半径を大きくすることができる。その結果、受力板70において、突出部70tに発生する応力を低減することが可能となり、耐荷重を向上できる。
又、突出部70tの厚み(図27(a)のT部)が薄いことにより、受力板70と入力部24e~24hをレーザ溶接する際にレーザ出力を下げることができるので、受力板70にかかる残留熱応力が低減され、受力板70のゆがみを抑えることができる。
又、受力板70の下面70aは、起歪体20の入力部24e~24hの上面と同一平面に位置している。これにより、焼結時等に、受力板70が変形することを防止できる。
受力板70には、平面形状が円形の4つの貫通孔70zが設けられている。貫通孔70zは、力覚センサ装置1Dを被固定部にねじ等を用いて締結するためのねじ孔である。各貫通孔70zの周囲には、受力板70の上面70bから突起して各貫通孔70zの周囲に平面を形成する厚肉部71が設けられている。各厚肉部71は、例えば、平面出しに用いることができる。
受力板70の材料としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)630等を用いることができる。受力板70は、例えば、溶接により起歪体20に固定することができる。但し、起歪体20と受力板70との接合は溶接に限定されず、かしめ、接着、ねじ止め、圧入、鑞接等により行ってもよい。
図28は、受力板70に力が加わった時に発生する応力について説明する図である。図28に示すように、受力板70に力が加わると、受力板70と起歪体20との接合部分(受力板70の各突出部70tと、起歪体20の入力部24e~24h)に応力が発生する。特に、受力板70の各突出部70tと起歪体20の入力部24e~24hの外周側(楕円の破線で示した部分)において、応力集中が高くなっている。
力覚センサ装置1Dでは、応力集中部分となる受力板70の各突出部70tと起歪体20の入力部24e~24hの外周側を拡幅している(大きく膨らませている)ため、応力集中部分となる受力板70と起歪体20との接合部分の強度を向上することができる。
〈第1の実施の形態の変形例5〉
第1の実施の形態の変形例5では、起歪体を基板のGNDに接続した力覚センサ装置の例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例5において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図29は、第1の実施の形態の変形例5に係る力覚センサ装置を例示する図であり、図29(a)は断面図、図29(b)は図29(a)の接合材38近傍の部分拡大断面図である。又、図30は、第1の実施の形態の変形例5に係る力覚センサ装置の基板を例示する図であり、図30(a)は一方の面側(能動部品実装面側)から視た斜視図、図30(b)は他方の面側(能動部品実装面の反対面側)から視た斜視図である。
図29に示すように、力覚センサ装置1Eは、基板30に代えて基板30Eを有している点が力覚センサ装置1(図1等参照)と相違する。
図30に示すように、基板30Eの他方の面側には、導体パターン36が設けられている。導体パターン36は基板30Eに形成された配線パターンを経由して入出力端子37の一部と接続されており、入出力端子37を介して外部回路のGNDに接続可能とされている。
図29に示すように、導体パターン36は、はんだや銀ペースト等の導電性の接合材38を介して、図31に示す金属製の起歪体20のA部と電気的に接続されている。これにより、導体パターン36及び入出力端子37を経由して起歪体20を外部回路のGNDと同電位にすることが可能となるため、力覚センサ装置1Eの耐ノイズ性を向上できる。
なお、起歪体20において、導体パターン36と接続する箇所はA部でなくても構わない。起歪体20において、導体パターン36と接続する箇所は、例えば、図32(a)のB~Eに示すように柱22a~22dの上面であってもよいし、図32(b)のF~Iに示すように柱22aや柱22dの側面等であっても構わない。これらの場合には、起歪体20のB~Iの何れかと接する位置の基板30Eの他方の面側に導体パターン36を設ければよい。なお、基板30Eに複数の導体パターン36を設け、起歪体20のA~Iの2つ以上と接続してもよい。
〈第1の実施の形態の変形例6〉
第1の実施の形態の変形例6では、起歪体のワイヤボンディングを行う箇所に凹部を設ける例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例6において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図33は、第1の実施の形態の変形例6に係る起歪体20Aを例示する図であり、図33(a)は斜視図、図33(b)は平面図である。
起歪体20Aは例えば金属射出成型で成形できるが、金属射出成型で起歪体20Aを成形する場合、起歪体20Aを金型から抜く際にはエジェクタピンを使用する。金属射出成型では一般的に成形品側(起歪体20A側)にエジェクタピンの打痕が残ってしまうが、起歪体20Aでは、力覚センサ装置へ荷重が印加された際の応力集中や変形が無く、また4か所の位置関係が変化しない柱22a~22dの上面に、金型のエジェクタピンを配置している。
そのため、図33に示すように、起歪体20Aは、柱22a、22b、22c、及び22dの上面(端面)に、各々エジェクタピンの打痕である凹部22w、22x、22y、及び22zが設けられている。凹部22w、22x、22y、及び22zの平面形状は、例えば、円形とすることができる。
ところで、図18(a)等に示す電極31は、基板30の端面固定部30aの柱22a~22dの上面と平面視で重複する4隅の領域に形成され、センサチップ110の対応する電極15とボンディングワイヤにより電気的に接続することができる。柱22a~22dの上面は、直下に柱が存在する事により、超音波で加圧することが容易であり、ワイヤボンディングを安定して行うことができる。また、入力部24a~24dに力が印加された際に、柱22a~22dの上面は応力集中や変形がなく、また4か所の位置関係が変化しないためフレキシブルプリント基板を配置した際に、フレキシブルプリント基板の剥離の抑制や、フレキシブルプリント基板が荷重印加に対する起歪体の変形に与える影響も軽減される。起歪体20Aでは、ワイヤボンディングを行う電極31の下面に凹部22w、22x、22y、及び22zが存在しており、端面固定部30aは各々の凹部上に固定されている。
又、図16(b)等に示すように、柱22a~22dの上面には接着剤42が塗布される。ワイヤボンディング工程の歩留まり向上のためには、安定した品質で基板30を起歪体20Aに貼付ける必要があり、例えば、接着剤42が基板30の電極31側に這い上がっていないこと等が要求される。
凹部22w、22x、22y、及び22zを設け、各凹部を適切な深さに設計することで、各凹部内を接着剤42の塗付領域にすることができる。これにより、接着剤42の塗布量コントロールや、塗布後の過度な濡れ広がりを抑制することが可能となる。その結果、基板30を起歪体20Aに安定した品質で貼付けることが可能となり、ワイヤボンディング工程の歩留まり向上を実現できる。
又、力覚センサ装置の小型化や後工程に対する設計上のマージンの観点からは、ボンディングワイヤがカバー50(図18、図19等参照)へ接触することを防ぐために、ワイヤボンディング用の電極31の高さを少しでも低くすることが好ましい。凹部22w、22x、22y、及び22zを設け、各凹部を適切な深さに設計することで、基板30の位置を低くすることが可能となるため、ボンディングワイヤがカバー50へ接触するおそれを低減することができる。
なお、設計上はエジェクタピンの打痕を凸形状とすることも可能であるが、上記の理由により、エジェクタピンの打痕を凸形状とすることは好ましくなく、凹形状とすることが好ましい。又、設計上はエジェクタピンの打痕ゼロの状態(凹凸形状が存在しない平坦面)を狙うことも可能であるが、サンプル間のバラつきで凹凸どちらかの形状となる場合や、バリが発生する場合が想定されるため、エジェクタピンの打痕ゼロの状態を狙うことも好ましくない。
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、第1の実施の形態では、能動部品として、3個の制御ICと各々の制御ICの出力を集約して演算処理する1個の演算用ICの合計4個を基板30上に実装する例を示した。又、第1の実施の形態の変形例1では、能動部品として、3個の制御ICを基板30上に実装する例を示した(演算用ICは実装しない)。しかし、これらには限定されず、能動部品としては、任意の機能を有する半導体素子(例えば、アンプやレギュレータ等)を実装することができる。