以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
(力覚センサ装置1の概略構成)
図1は、第1の実施の形態に係る力覚センサ装置を例示する斜視図である。図2は、第1の実施の形態に係る力覚センサ装置のセンサチップ及び起歪体を例示する斜視図である。図1及び図2を参照するに、力覚センサ装置1は、センサチップ110と、起歪体20と、入出力基板30とを有している。力覚センサ装置1は、例えば、工作機械等に使用されるロボットの腕や指等に搭載される多軸の力覚センサ装置である。
センサチップ110は、所定の軸方向の変位を最大で6軸検知する機能を有している。起歪体20は、印加された力をセンサチップ110に伝達する機能を有している。
センサチップ110は、起歪体20の上面側に、起歪体20から突出しないように接着されている。また、起歪体20の上面及び各側面に、センサチップ110に対して信号の入出力を行う入出力基板30の一端側が適宜屈曲された状態で接着されている。センサチップ110と入出力基板30の各電極31とは、ボンディングワイヤ等(図示せず)により、電気的に接続されている。
入出力基板30において、起歪体20の第1の側面に配置された領域には能動部品32及び受動部品39が実装されている。入出力基板30において、起歪体20の第2の側面に配置された領域には能動部品33及び受動部品39が実装されている。入出力基板30において、起歪体20の第3の側面に配置された領域には能動部品34及び受動部品39が実装されている。入出力基板30において、起歪体20の第4の側面に配置された領域には能動部品35及び受動部品39が実装されている。
能動部品33は、例えば、センサチップ110から出力されるX軸方向の力Fxを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号、及びセンサチップ110から出力されるY軸方向の力Fyを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号をディジタルの電気信号に変換するIC(ADコンバータ)である。
能動部品34は、例えば、センサチップ110から出力されるZ軸方向の力Fzを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号、及びセンサチップ110から出力されるX軸を軸として回転させるモーメントMxを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号をディジタルの電気信号に変換するIC(ADコンバータ)である。
能動部品35は、例えば、センサチップ110から出力されるY軸を軸として回転させるモーメントMyを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号、及びセンサチップ110から出力されるZ軸を軸として回転させるモーメントMzを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号をディジタルの電気信号に変換するIC(ADコンバータ)である。
能動部品32は、例えば、能動部品33、34、及び35から出力されるディジタルの電気信号に対して所定の演算を行い、力Fx、Fy、及びFz、並びにモーメントMx、My、及びMzを示す信号を生成し、外部に出力するICである。受動部品39は、能動部品32〜35に接続される抵抗やコンデンサ等である。
なお、能動部品32〜35の機能をいくつのICで実現するかは任意に決定することができる。また、能動部品32〜35を入出力基板30に実装せずに、入出力基板30と接続される外部回路側に実装する構成とすることも可能である。この場合には、入出力基板30からアナログの電気信号が出力される。
入出力基板30は、起歪体20の第1の側面の下方で外側に屈曲し、入出力基板30の他端側が外部に引き出されている。入出力基板30の他端側には、力覚センサ装置1と接続される外部回路(制御装置等)との電気的な入出力が可能な端子(図示せず)が配列されている。
なお、本実施の形態では、便宜上、力覚センサ装置1において、センサチップ110が設けられた側を上側または一方の側、その反対側を下側または他方の側とする。また、各部位のセンサチップ110が設けられた側の面を一方の面または上面、その反対側の面を他方の面または下面とする。但し、力覚センサ装置1は天地逆の状態で用いることができ、または任意の角度で配置することができる。また、平面視とは対象物をセンサチップ110の上面の法線方向(Z軸方向)から視ることを指し、平面形状とは対象物をセンサチップ110の上面の法線方向(Z軸方向)から視た形状を指すものとする。
(センサチップ110)
図3は、センサチップ110をZ軸方向上側から視た図であり、図3(a)は斜視図、図3(b)は平面図である。図4は、センサチップ110をZ軸方向下側から視た図であり、図4(a)は斜視図、図4(b)は底面図である。図4(b)において、便宜上、同一高さの面を同一の梨地模様で示している。なお、センサチップ110の上面の一辺に平行な方向をX軸方向、垂直な方向をY軸方向、センサチップ110の厚さ方向(センサチップ110の上面の法線方向)をZ軸方向としている。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は、互いに直交している。
図3及び図4に示すセンサチップ110は、1チップで最大6軸を検知できるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサチップであり、SOI(Silicon On Insulator)基板等の半導体基板から形成されている。センサチップ110の平面形状は、例えば、3000μm角程度の正方形とすることができる。
センサチップ110は、柱状の5つの支持部111a〜111eを備えている。支持部111a〜111eの平面形状は、例えば、500μm角程度の正方形とすることができる。第1の支持部である支持部111a〜111dは、センサチップ110の四隅に配置されている。第2の支持部である支持部111eは、支持部111a〜111dの中央に配置されている。
支持部111a〜111eは、例えば、SOI基板の活性層、BOX層、及び支持層から形成することができ、それぞれの厚さは、例えば、500μm程度とすることができる。
支持部111aと支持部111bとの間には、支持部111aと支持部111bとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、構造を補強するための補強用梁112aが設けられている。支持部111bと支持部111cとの間には、支持部111bと支持部111cとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、構造を補強するための補強用梁112bが設けられている。
支持部111cと支持部111dとの間には、支持部111cと支持部111dとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、構造を補強するための補強用梁112cが設けられている。支持部111dと支持部111aとの間には、支持部111dと支持部111aとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、構造を補強するための補強用梁112dが設けられている。
言い換えれば、第1の補強用梁である4つの補強用梁112a、112b、112c、及び112dが枠状に形成され、各補強用梁の交点をなす角部が、支持部111b、111c、111d、111aとなる。
支持部111aの内側の角部と、それに対向する支持部111eの角部とは、構造を補強するための補強用梁112eにより連結されている。支持部111bの内側の角部と、それに対向する支持部111eの角部とは、構造を補強するための補強用梁112fにより連結されている。
支持部111cの内側の角部と、それに対向する支持部111eの角部とは、構造を補強するための補強用梁112gにより連結されている。支持部111dの内側の角部と、それに対向する支持部111eの角部とは、構造を補強するための補強用梁112hにより連結されている。第2の補強用梁である補強用梁112e〜112hは、X軸方向(Y軸方向)に対して斜めに配置されている。つまり、補強用梁112e〜112hは、補強用梁112a、112b、112c、及び112dと非平行に配置されている。
補強用梁112a〜112hは、例えば、SOI基板の活性層、BOX層、及び支持層から形成することができる。補強用梁112a〜112hの太さ(短手方向の幅)は、例えば、140μm程度とすることができる。補強用梁112a〜112hのそれぞれの上面は、支持部111a〜111eの上面と略面一である。
これに対して、補強用梁112a〜112hのそれぞれの下面は、支持部111a〜111eの下面及び力点114a〜114dの下面よりも数10μm程度上面側に窪んでいる。これは、センサチップ110を起歪体20に接着したときに、補強用梁112a〜112hの下面が起歪体20の対向する面と接しないようにするためである。
このように、歪を検知するための検知用梁とは別に、検知用梁よりも厚く形成した剛性の強い補強用梁を配置することで、センサチップ110全体の剛性を高めることができる。これにより、入力に対して検知用梁以外が変形しづらくなるため、良好なセンサ特性を得ることができる。
支持部111aと支持部111bとの間の補強用梁112aの内側には、補強用梁112aと所定間隔を空けて平行に、支持部111aと支持部111bとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、歪を検知するための検知用梁113aが設けられている。
検知用梁113aと支持部111eとの間には、検知用梁113a及び支持部111eと所定間隔を空けて検知用梁113aと平行に、検知用梁113bが設けられている。検知用梁113bは、補強用梁112eの支持部111e側の端部と補強用梁112fの支持部111e側の端部とを連結している。
検知用梁113aの長手方向の略中央部と、それに対向する検知用梁113bの長手方向の略中央部とは、検知用梁113a及び検知用梁113bと直交するように配置された検知用梁113cにより連結されている。
支持部111bと支持部111cとの間の補強用梁112bの内側には、補強用梁112bと所定間隔を空けて平行に、支持部111bと支持部111cとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、歪を検知するための検知用梁113dが設けられている。
検知用梁113dと支持部111eとの間には、検知用梁113d及び支持部111eと所定間隔を空けて検知用梁113dと平行に、検知用梁113eが設けられている。検知用梁113eは、補強用梁112fの支持部111e側の端部と補強用梁112gの支持部111e側の端部とを連結している。
検知用梁113dの長手方向の略中央部と、それに対向する検知用梁113eの長手方向の略中央部とは、検知用梁113d及び検知用梁113eと直交するように配置された検知用梁113fにより連結されている。
支持部111cと支持部111dとの間の補強用梁112cの内側には、補強用梁112cと所定間隔を空けて平行に、支持部111cと支持部111dとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、歪を検知するための検知用梁113gが設けられている。
検知用梁113gと支持部111eとの間には、検知用梁113g及び支持部111eと所定間隔を空けて検知用梁113gと平行に、検知用梁113hが設けられている。検知用梁113hは、補強用梁112gの支持部111e側の端部と補強用梁112hの支持部111e側の端部とを連結している。
検知用梁113gの長手方向の略中央部と、それに対向する検知用梁113hの長手方向の略中央部とは、検知用梁113g及び検知用梁113hと直交するように配置された検知用梁113iにより連結されている。
支持部111dと支持部111aとの間の補強用梁112dの内側には、補強用梁112dと所定間隔を空けて平行に、支持部111dと支持部111aとに両端を固定された(隣接する支持部同士を連結する)、歪を検知するための検知用梁113jが設けられている。
検知用梁113jと支持部111eとの間には、検知用梁113j及び支持部111eと所定間隔を空けて検知用梁113jと平行に、検知用梁113kが設けられている。検知用梁113kは、補強用梁112hの支持部111e側の端部と補強用梁112eの支持部111e側の端部とを連結している。
検知用梁113jの長手方向の略中央部と、それに対向する検知用梁113kの長手方向の略中央部とは、検知用梁113j及び検知用梁113kと直交するように配置された検知用梁113lにより連結されている。
検知用梁113a〜113lは、支持部111a〜111eの厚さ方向の上端側に設けられ、例えば、SOI基板の活性層から形成することができる。検知用梁113a〜113lの太さ(短手方向の幅)は、例えば、75μm程度とすることができる。検知用梁113a〜113lの太さ(短手方向の幅)は、位置により異なっていてもよい。検知用梁113a〜113lのそれぞれの上面は、支持部111a〜111eの上面と略面一である。検知用梁113a〜113lのそれぞれの厚さは、例えば、50μm程度とすることができる。
検知用梁113aの長手方向の中央部の下面側(検知用梁113aと検知用梁113cとの交点)には、力点114aが設けられている。検知用梁113a、113b、及び113cと力点114aとにより、1組の検知ブロックをなしている。
検知用梁113dの長手方向の中央部の下面側(検知用梁113dと検知用梁113fとの交点)には、力点114bが設けられている。検知用梁113d、113e、及び113fと力点114bとにより、1組の検知ブロックをなしている。
検知用梁113gの長手方向の中央部の下面側(検知用梁113gと検知用梁113iとの交点)には、力点114cが設けられている。検知用梁113g、113h、及び113iと力点114cとにより、1組の検知ブロックをなしている。
検知用梁113jの長手方向の中央部の下面側(検知用梁113jと検知用梁113lとの交点)には、力点114dが設けられている。検知用梁113j、113k、及び113lと力点114dとにより、1組の検知ブロックをなしている。
力点114a〜114dは、外力が印加される箇所であり、例えば、SOI基板のBOX層及び支持層から形成することができる。力点114a〜114dのそれぞれの下面は、支持部111a〜111eの下面と略面一である。
このように、力または変位を4つの力点114a〜114dから取り入れることで、力の種類毎に異なる梁の変形が得られるため、6軸の分離性が良いセンサを実現することができる。
なお、センサチップ110において、応力集中を抑制する観点から、内角を形成する部分はR状とすることが好ましい。
図5は、各軸にかかる力及びモーメントを示す符号を説明する図である。図5に示すように、X軸方向の力をFx、Y軸方向の力をFy、Z軸方向の力をFzとする。また、X軸を軸として回転させるモーメントをMx、Y軸を軸として回転させるモーメントをMy、Z軸を軸として回転させるモーメントをMzとする。
図6は、センサチップ110のピエゾ抵抗素子の配置を例示する図である。4つ力点114a〜114dに対応する各検知ブロックの所定位置には、複数の歪検知素子であるピエゾ抵抗素子が配置されている。
具体的には、図3及び図6を参照すると、力点114aに対応する検知ブロックにおいて、ピエゾ抵抗素子MxR3及びMxR4は、検知用梁113aを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113aの検知用梁113cに近い領域において検知用梁113cを長手方向(Y方向)に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。ピエゾ抵抗素子FyR3及びFyR4は、検知用梁113aを長手方向に二等分する線よりも補強用梁112a側であって、かつ、検知用梁113aの検知用梁113cから遠い領域において検知用梁113cを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
また、ピエゾ抵抗素子MzR3'及びMzR4'は、検知用梁113aを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113aの支持部111a、111bと連結される位置と力点114aと連結される位置の中点近傍において検知用梁113cを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。ここで、検知用梁113aは、支持部111a、111bまたは力点114aと連結される位置の検知用梁113aの幅である第1梁幅より、ピエゾ抵抗素子MzR3'及びMzR4'が形成された位置の検知用梁113aの幅である第2梁幅の方が小さい。本実施の形態においては、図6に示されるように、検知用梁113aは、検知用梁113aが支持部111a、111bと連結される位置から、ピエゾ抵抗素子MzR3'及びMzR4'が形成された位置にかけて、検知用梁113aの短手方向の両側部において、梁幅が徐々に狭まるテーパー形状を有する。また、検知用梁113aは、検知用梁113aが力点114aと連結される位置から、ピエゾ抵抗素子MzR3'及びMzR4'が形成された位置にかけて、検知用梁113aの短手方向の両側部において、梁幅が徐々に狭まるテーパー形状を有する。即ち、検知用梁113aは、支持部111a、111bと連結される位置と力点114aと連結される位置の間に梁幅が狭くなった箇所が形成されており、この梁幅が狭くなった箇所の検知用梁113aの上にピエゾ抵抗素子MzR3'及びMzR4'が形成されている。
力点114bに対応する検知ブロックにおいて、ピエゾ抵抗素子MyR3及びMyR4は、検知用梁113dを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113dの検知用梁113fに近い領域において検知用梁113fを長手方向(X方向)に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。ピエゾ抵抗素子FxR3及びFxR4は、検知用梁113dを長手方向に二等分する線よりも補強用梁112b側であって、かつ、検知用梁113dの検知用梁113fから遠い領域において検知用梁113fを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
また、ピエゾ抵抗素子MzR3及びMzR4は、検知用梁113dを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113dの支持部111b、111cと連結される位置と力点114bと連結される位置の中点近傍において検知用梁113fを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。ここで、検知用梁113dは、支持部111b、111cまたは力点114bと連結される位置の検知用梁113dの幅である第1梁幅より、ピエゾ抵抗素子MzR3及びMzR4が形成された位置の検知用梁113dの幅である第2梁幅の方が小さい。本実施の形態においては、図6に示されるように、検知用梁113dは、検知用梁113dが支持部111b、111cと連結される位置から、ピエゾ抵抗素子MzR3及びMzR4が形成された位置にかけて、検知用梁113dの短手方向の両側部において、梁幅が徐々に狭まるテーパー形状を有する。また、検知用梁113dは、検知用梁113dが力点114bと連結される位置から、ピエゾ抵抗素子MzR3及びMzR4が形成された位置にかけて、検知用梁113dの短手方向の両側部において、梁幅が徐々に狭まるテーパー形状を有する。即ち、検知用梁113dは、支持部111b、111cと連結される位置と力点114bと連結される位置の間に梁幅が狭くなった箇所が形成されており、この梁幅が狭くなった箇所の検知用梁113dの上にピエゾ抵抗素子MzR3及びMzR4が形成されている。
ピエゾ抵抗素子FzR2及びFzR3は、検知用梁113eを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113eの検知用梁113fに近い領域において検知用梁113fを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。ピエゾ抵抗素子FzR1'及びFzR4'は、検知用梁113eを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113eの検知用梁113fから遠い領域において検知用梁113fを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
力点114cに対応する検知ブロックにおいて、ピエゾ抵抗素子MxR1及びMxR2は、検知用梁113gを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113gの検知用梁113iに近い領域において検知用梁113iを長手方向(Y方向)に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。ピエゾ抵抗素子FyR1及びFyR2は、検知用梁113gを長手方向に二等分する線よりも補強用梁112c側であって、かつ、検知用梁113gの検知用梁113iから遠い領域において検知用梁113iを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
ピエゾ抵抗素子MzR1'及びMzR2'は、検知用梁113gを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113gの支持部111c、111dと連結される位置と力点114cと連結される位置の中点近傍において検知用梁113iを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。ここで、検知用梁113gは、支持部111c、111dまたは力点114cと連結される位置の検知用梁113gの幅である第1梁幅より、ピエゾ抵抗素子MzR1'及びMzR2'が形成された位置の検知用梁113gの幅である第2梁幅の方が小さい。本実施の形態においては、図6に示されるように、検知用梁113gは、検知用梁113gが支持部111c、111dと連結される位置から、ピエゾ抵抗素子MzR1'及びMzR2'が形成された位置にかけて、検知用梁113gの短手方向の両側部において、梁幅が徐々に狭まるテーパー形状を有する。また、検知用梁113gは、検知用梁113gが力点114cと連結される位置から、ピエゾ抵抗素子MzR1'及びMzR2'が形成された位置にかけて、検知用梁113gの短手方向の両側部において、梁幅が徐々に狭まるテーパー形状を有する。即ち、検知用梁113gは、支持部111c、111dと連結される位置と力点114cと連結される位置の間に梁幅が狭くなった箇所が形成されており、この梁幅が狭くなった箇所の検知用梁113gの上にピエゾ抵抗素子MzR1'及びMzR2'が形成されている。
力点114dに対応する検知ブロックにおいて、ピエゾ抵抗素子MyR1及びMyR2は、検知用梁113jを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113jの検知用梁113lに近い領域において検知用梁113lを長手方向(X方向)に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。ピエゾ抵抗素子FxR1及びFxR2は、検知用梁113jを長手方向に二等分する線よりも補強用梁112d側であって、かつ、検知用梁113jの検知用梁113lから遠い領域において検知用梁113lを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
ピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2は、検知用梁113jを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113jの支持部111d、111aと連結される位置と力点114dと連結される位置の中点近傍において検知用梁113lを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。ここで、検知用梁113jは、支持部111d、111aまたは力点114dと連結される位置の検知用梁113jの幅である第1梁幅より、ピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2が形成された位置の検知用梁113jの幅である第2梁幅の方が小さい。本実施の形態においては、図6に示されるように、検知用梁113jは、検知用梁113jが支持部111d、111aと連結される位置から、ピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2が形成された位置にかけて、検知用梁113jの短手方向の両側部において、梁幅が徐々に狭まるテーパー形状を有する。また、検知用梁113jは、検知用梁113jが力点114dと連結される位置から、ピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2が形成された位置にかけて、検知用梁113jの短手方向の両側部において、梁幅が徐々に狭まるテーパー形状を有する。即ち、検知用梁113jは、支持部111d、111aと連結される位置と力点114dと連結される位置の間に梁幅が狭くなった箇所が形成されており、この梁幅が狭くなった箇所の検知用梁113jの上にピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2が形成されている。
ピエゾ抵抗素子FzR1及びFzR4は、検知用梁113kを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113kの検知用梁113lから遠い領域において検知用梁113lを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。ピエゾ抵抗素子FzR2'及びFzR3'は、検知用梁113kを長手方向に二等分する線上であって、かつ、検知用梁113kの検知用梁113lに近い領域において検知用梁113lを長手方向に二等分する線に対して対称な位置に配置されている。
このように、センサチップ110では、各検知ブロックに複数のピエゾ抵抗素子を分けて配置している。これにより、力点114a〜114dに印加(伝達)された力の向き(軸方向)に応じた、所定の梁に配置された複数のピエゾ抵抗素子の出力の変化に基づいて、所定の軸方向の変位を最大で6軸検知することができる。
また、センサチップ110では、検知用梁113c、113f、113i、及び113lをできるだけ短くして、検知用梁113b、113e、113h、及び113kを検知用梁113a、113d、113g、及び113jに近づけ、検知用梁113b、113e、113h、及び113kの長さをできるだけ確保する構造としている。この構造により、検知用梁113b、113e、113h、及び113kが弓なりに撓みやすくなって応力集中を緩和でき、耐荷重を向上することができる。
また、センサチップ110では、検知用梁113c、113f、113i、及び113lにはピエゾ抵抗素子を配置していない。その代り、検知用梁113c、113f、113i、及び113lよりも細くて長く、弓なりに撓みやすい検知用梁113a、113d、113g、及び113j、並びに検知用梁113b、113e、113h、及び113kの応力が最大になる位置の近傍にピエゾ抵抗素子を配置している。その結果、センサチップ110では、効率よく応力を取り込むことが可能となり、感度(同じ応力に対するピエゾ抵抗素子の抵抗変化)を向上することができる。
なお、センサチップ110では、歪の検出に用いるピエゾ抵抗素子以外にも、ダミーのピエゾ抵抗素子が配置されている。ダミーのピエゾ抵抗素子は、歪の検出に用いるピエゾ抵抗素子も含めた全てのピエゾ抵抗素子が、支持部111eの中心に対して点対称となるように配置されている。
ここで、ピエゾ抵抗素子FxR1〜FxR4は力Fxを検出し、ピエゾ抵抗素子FyR1〜FyR4は力Fyを検出し、ピエゾ抵抗素子FzR1〜FzR4、FzR1'〜FzR4'は力Fzを検出する。ピエゾ抵抗素子MxR1〜MxR4はモーメントMxを検出し、ピエゾ抵抗素子MyR1〜MyR4はモーメントMyを検出し、ピエゾ抵抗素子MzR1〜MzR4、MzR1'〜MzR4'はモーメントMzを検出する。本実施の形態においては、ピエゾ抵抗素子FzR1'〜FzR4'をダミーとして、ピエゾ抵抗素子FzR1〜FzR4から力Fzを検出してもよいし、その逆の関係でもよい。また、ピエゾ抵抗素子MzR1'〜MzR4'をダミーとして、ピエゾ抵抗素子MzR1〜MzR4からモーメントMzを検出してもよいし、その逆の関係でもよい。
このように、センサチップ110では、各検知ブロックに複数のピエゾ抵抗素子を分けて配置している。これにより、力点114a〜114dに印加(伝達)された力または変位の向き(軸方向)に応じた、所定の梁に配置された複数のピエゾ抵抗素子の出力の変化に基づいて、所定の軸方向の変位を最大で6軸検知することができる。
具体的には、センサチップ110において、Z軸方向の変位(Mx、My、Fz)は、所定の検知用梁の変形に基づいて検知することができる。すなわち、X軸方向及びY軸方向のモーメント(Mx、My)は、第1の検知用梁である検知用梁113a、113d、113g、及び113jの変形に基づいて検知することができる。また、Z軸方向の力(Fz)は、第2の検知用梁である検知用梁113e及び113kの変形に基づいて検知することができる。
また、センサチップ110において、X軸方向及びY軸方向の変位(Fx、Fy、Mz)は、所定の検知用梁の変形に基づいて検知することができる。すなわち、X軸方向及びY軸方向の力(Fx、Fy)は、第1の検知用梁である検知用梁113a、113d、113g、及び113jの変形に基づいて検知することができる。また、Z軸方向のモーメント(Mz)は、第1の検知用梁である検知用梁113a、113d、113g、及び113jの変形に基づいて検知することができる。
上記の本実施の形態のセンサチップは、検知用梁113aは、支持部111a、111bと連結される位置と力点114aと連結される位置の中点近傍で梁幅が狭くなるように形成されており、この梁幅が狭くなった箇所の検知用梁113aの上にピエゾ抵抗素子MzR3'及びMzR4'が形成されている。検知用梁113d、113g、113jと、ピエゾ抵抗素子MzR1、MzR2、MzR3、MzR4、MzR1'、MzR2'についても同様である。この構成と、それによる効果については後述する。
各検知用梁の厚みと幅を可変することで、検出感度の均一化や、検出感度の向上等の調整を図ることができる。
但し、ピエゾ抵抗素子の数を減らし、5軸以下の所定の軸方向の変位を検知するセンサチップとすることも可能である。
上記の本実施の形態に係るセンサチップによれば、梁の中間部にテーパー形状あるいは凹形状等により梁幅が狭められた部分を設けることにより、力が印加されたときの梁の変形が変わり、新たに応力を検出できる箇所を作り出すことができる。これにより、応力発生個所を制御することが可能である。また、入力の種類によって梁の異なる箇所(梁の離れた箇所)に発生する応力をピエゾ抵抗素子で検出することで、干渉の少ない軸分離が実現でき、複合的な入力に対して高精度に検出することができる。本実施の形態に係るセンサチップでは、特にMzとMyの軸分離について高い効果を得ることができる。また、梁や力点を増加させることなく1本の梁で複数種類の力及びトルクを精度よく検出することができるため、センサチップを小型化できる。
(起歪体20)
図7は、起歪体20を例示する図(その1)であり、図7(a)は斜視図、図7(b)は側面図である。図8は、起歪体20を例示する図(その2)であり、図8(a)は平面図、図8(b)は図8(a)のA−A線に沿う縦断面斜視図である。図8(a)において、便宜上、同一高さの面を同一の梨地模様で示している。図9は、起歪体20を例示する図(その3)であり、図9(a)は図8(a)のB−B線に沿う縦断面図であり、図9(b)は図9(a)のC−C線に沿う横断面図である。
図7〜図9に示すように、起歪体20は、被固定部に直接取り付けられる土台21と、センサチップ110を搭載するセンサチップ搭載部となる柱28と、柱28の周囲に離間して配置された柱22a〜22dとを備えている。
より詳しくは、起歪体20において、略円形の土台21の上面に、土台21の中心に対して均等(点対称)となるように4本の柱22a〜22dが配置され、隣接する柱同士を連結する第1の梁である4本の梁23a〜23dが枠状に設けられている。そして、土台21の上面中央の上方に、柱28が配置されている。なお、土台21の平面形状は円形には限定されず、多角形等(例えば、正方形等)としてもよい。
柱28は、柱22a〜22dよりも太くて短く形成されている。なお、センサチップ110は、柱22a〜22dの上面から突出しないように、柱28上に固定される。
柱28は、土台21の上面には直接固定されていなく、接続用梁28a〜28dを介して柱22a〜22dに固定されている。そのため、土台21の上面と柱28の下面との間には空間がある。柱28の下面と、接続用梁28a〜28dの各々の下面とは、面一とすることができる。
柱28の接続用梁28a〜28dが接続される部分の横断面形状は例えば矩形であり、矩形の四隅と矩形の四隅に対向する柱22a〜22dとが接続用梁28a〜28dを介して接続されている。接続用梁28a〜28dが、柱22a〜22dと接続される位置221〜224は、柱22a〜22dの高さ方向の中間よりも下側であることが好ましい。この理由については、後述する。なお、柱28の接続用梁28a〜28dが接続される部分の横断面形状は矩形には限定されず、円形や多角形等(例えば、六角形等)としてもよい。
接続用梁28a〜28dは、土台21の中心に対して均等(点対称)となるように、土台21の上面と所定間隔を空けて土台21の上面と略平行に配置されている。接続用梁28a〜28dの太さや厚み(剛性)は、起歪体20の変形を妨げないようにするため、柱22a〜22dや梁23a〜23dよりも細く薄く形成することが好ましい。
このように、土台21の上面と柱28の下面とは所定の距離だけ離れている。所定の距離は、例えば、数mm程度とすることができる。柱28を土台21の上面に直接固定せずに、土台21の上面と柱28の下面とを所定の距離だけ離すことの技術的意義については図17〜図22を参照しながら後述する。
土台21には、起歪体20を被固定部にねじ等を用いて締結するための貫通孔21xが設けられている。本実施の形態では、土台21には4つの貫通孔21xが設けられているが、貫通孔21xの個数は任意に決定することができる。
土台21を除く起歪体20の概略形状は、例えば、縦5000μm程度、横5000μm程度、高さ7000μm程度の直方体状とすることができる。柱22a〜22dの横断面形状は、例えば、1000μm角程度の正方形とすることができる。柱28の横断面形状は、例えば、2000μm角程度の正方形とすることができる。
但し、起歪体20において、応力集中を抑制する観点から、内角を形成する部分はR状とすることが好ましい。例えば、柱22a〜22dの土台21の上面の中心側の面は、上下がR状に形成されていることが好ましい。同様に、梁23a〜23dの土台21の上面と対向する面は、左右がR状に形成されていることが好ましい。
梁23a〜23dのそれぞれの上面の長手方向の中央部には、梁23a〜23dの長手方向の中央部から上方に突起する突起部が設けられ、突起部上に、例えば四角柱状の入力部24a〜24dが設けられている。入力部24a〜24dは外部から力が印加される部分であり、入力部24a〜24dに力が印加されると、それに応じて梁23a〜23d及び柱22a〜22dが変形する。
このように、4つの入力部24a〜24dを設けることで、例えば1つの入力部の構造と比較して、梁23a〜23dの耐荷重を向上することができる。
柱28の上面の四隅には4本の柱25a〜25dが配置され、柱28の上面の中央部には第4の柱である柱25eが配置されている。柱25a〜25eは、同一の高さに形成されている。
すなわち、柱25a〜25eのそれぞれの上面は、同一平面上に位置している。柱25a〜25eのそれぞれの上面は、センサチップ110の下面と接着される接合部となる。
梁23a〜23dのそれぞれの内側面の長手方向の中央部には、梁23a〜23dのそれぞれの内側面から水平方向内側に突出する梁26a〜26dが設けられている。梁26a〜26dは、梁23a〜23dや柱22a〜22dの変形をセンサチップ110に伝達する第2の梁である。また、梁26a〜26dのそれぞれの上面の先端側には、梁26a〜26dのそれぞれの上面の先端側から上方に突起する突起部27a〜27dが設けられている。
突起部27a〜27dは、同一の高さに形成されている。すなわち、突起部27a〜27dのそれぞれの上面は、同一平面上に位置している。突起部27a〜27dのそれぞれの上面は、センサチップ110の下面と接着される接合部となる。梁26a〜26d及び突起部27a〜27dは、可動部となる梁23a〜23dと連結されているため、入力部24a〜24dに力が印加されると、それに応じて変形する。
なお、入力部24a〜24dに力が印加されていない状態では、柱25a〜25eのそれぞれの上面と、突起部27a〜27dのそれぞれの上面とは、同一平面上に位置している。
起歪体20において、土台21、柱22a〜22d、柱28、梁23a〜23d、入力部24a〜24d、柱25a〜25e、梁26a〜26d、及び突起部27a〜27dの各部位は、剛性を確保しかつ精度良く作製する観点から、一体に形成されていることが好ましい。起歪体20の材料としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)等の硬質な金属材料を用いることができる。中でも、特に硬質で機械的強度の高いSUS630を用いることが好ましい。
このように、センサチップ110と同様に、起歪体20も柱と梁とを備えた構造とすることで、印加される力によって6軸それぞれで異なる変形を示すため、6軸の分離性が良い変形をセンサチップ110に伝えることができる。
すなわち、起歪体20の入力部24a〜24dに印加された力を、柱22a〜22d、梁23a〜23d、及び梁26a〜26dを介してセンサチップ110に伝達し、センサチップ110で変位を検知する。そして、センサチップ110において、1つの軸につき1個ずつ形成されたブリッジ回路から各軸の出力を得ることができる。
(力覚センサ装置1の製造工程)
図10〜図12は、力覚センサ装置1の製造工程を例示する図である。まず、図10(a)に示すように、起歪体20を作製する。起歪体20は、例えば、成形や切削、ワイヤ放電等により一体に形成することができる。起歪体20の材料としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)等の硬質な金属材料を用いることができる。中でも、特に硬質で機械的強度の高いSUS630を用いることが好ましい。起歪体20を成形により作製する場合には、例えば、金属粒子とバインダーとなる樹脂とを金型に入れて成形し、その後、焼結して樹脂を蒸発させることで、金属からなる起歪体20を作製できる。
次に、図10(b)に示す工程では、柱25a〜25eの上面、及び突起部27a〜27dの上面に接着剤41を塗布する。接着剤41としては、例えば、エポキシ系の接着剤等を用いることができる。外部から印加される力に対する耐力の点から、接着剤41はヤング率1GPa以上で厚さ20μm以下であることが好ましい。
次に、図11(a)に示す工程では、センサチップ110を作製する。センサチップ110は、例えば、SOI基板を準備し、準備した基板にエッチング加工(例えば、反応性イオンエッチング等)等を施す周知の方法により作製できる。また、電極や配線は、例えば、基板の表面にスパッタ法等によりアルミニウム等の金属膜を成膜後、金属膜をフォトリソグラフィによってパターニングすることにより作製できる。
次に、図11(b)に示す工程では、センサチップ110の下面が柱25a〜25eの上面、及び突起部27a〜27dの上面に塗布された接着剤41と接するように、センサチップ110を起歪体20内に加圧しながら配置する。そして、接着剤41を所定温度に加熱して硬化させる。これにより、センサチップ110が起歪体20内に固定される。具体的には、センサチップ110の支持部111a〜111dが各々柱25a〜25e上に固定され、支持部111eが柱25e上に固定され、力点114a〜114dが各々突起部27a〜27d上に固定される。
次に、図12(a)に示す工程では、柱22a〜22dの上面に、接着剤42を塗布する。接着剤42としては、例えば、エポキシ系の接着剤等を用いることができる。なお、接着剤42は、入出力基板30を起歪体20上に固定するためのものであり、外部から力が印加されないため、汎用の接着剤を用いることができる。
次に、図12(b)に示す工程では、能動部品32〜35及び受動部品39が実装された入出力基板30を準備し、入出力基板30の下面が柱22a〜22dの上面に塗布された接着剤42と接するように、入出力基板30を起歪体20上に配置する。そして、入出力基板30を起歪体20側に加圧しながら接着剤42を所定温度に加熱して硬化させる。これにより、入出力基板30が起歪体20に固定される。
なお、入出力基板30は、センサチップ110及び入力部24a〜24dを露出するように起歪体20に固定される。入出力基板30の各電極31は、入力部24a〜24dに力が印加された際の歪みが最も少ない、起歪体20の柱22a〜22d上に配置することが好ましい。
その後、入出力基板30の起歪体20から水平方向にはみ出した部分(入力端子側を除く)を、起歪体20の各側面側に折り曲げる。そして、入出力基板30とセンサチップ110の対応する部分をボンディングワイヤ等(図示せず)により電気的に接続する。これにより、力覚センサ装置1が完成する。
このように、力覚センサ装置1は、センサチップ110、起歪体20、及び入出力基板30の3部品のみで作製できるため、組み立てが容易であり、かつ位置合わせ箇所も最低限で済むため、実装起因による精度の劣化を抑制できる。
また、起歪体20において、センサチップ110との接続箇所(柱25a〜25eの上面、及び突起部27a〜27dの上面)は全て同一平面にあるため、起歪体20に対するセンサチップ110の位置合わせが1回で済み、起歪体20にセンサチップ110を実装することが容易である。
(検知用梁の形状の詳細)
図13(a)は、本実施の形態に係るセンサチップの一例の要部を拡大した平面図である。図3及び図6に示される検知用梁113a、113d、113g、113jをまとめて検知用梁113mで示している。検知用梁113b、113e、113h、113kをまとめて検知用梁113nで示している。検知用梁113c、113f、113i、113lをまとめて検知用梁113oで示している。また、ピエゾ抵抗素子MzR1、MzR2、MzR3、MzR4、MzR1'、MzR2'、MzR3'、MzR4'を代表してMzR1、MzR2で示している。
図13に示されるセンサチップの検知用梁113mにおいて、検知用梁113mが支持部と連結される位置から、ピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2が形成された位置にかけて、検知用梁113mの短手方向の両側部において、梁幅が徐々に狭まるテーパー形状を有する。また、検知用梁113mは、検知用梁113mが力点と連結される位置から、ピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2が形成された位置にかけて、検知用梁113mの短手方向の両側部において、梁幅が徐々に狭まるテーパー形状を有する。即ち、支持部または力点と連結される位置の検知用梁113mの幅である第1梁幅W3'より、ピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2が形成された位置の検知用梁113mの幅である第2梁幅W1'の方が小さい。このように、検知用梁113mは、支持部と連結される位置と力点と連結される位置の間に梁幅が狭くなった箇所が形成されており、この梁幅が狭くなった箇所113qの検知用梁113mの上にピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2が形成されている。
上記の本実施の形態のセンサチップにおいて、Z軸方向のモーメント(Mz)が入力されたとき、検知用梁113mにおいて発生する応力は、検知用梁113mの梁幅が狭くなった箇所113qとその近傍で大きくなる。従って、この梁幅が狭くなった箇所113qに配置されたピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2は、Z軸方向のモーメント(Mz)に対して高感度となる。梁幅が狭くなった箇所113qの位置は、例えば、検知用梁113mが支持部と連結される位置と力点と連結される位置の中点あるいはその近傍である。Z軸方向のモーメント(Mz)の入力時の応力が、検知用梁113mの梁幅が狭くなった箇所113qで大きくなるものであるから、梁幅が狭くなった箇所113qの位置は、検知用梁113mが支持部と連結される位置と力点と連結される位置の中点あるいはその近傍であることに限定されず、上記の中点よりも支持部側あるいは力点側に寄っていてもよい。この場合、梁幅が狭くなった箇所113qの検知用梁113mの上にピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2が形成されていればよい。
一方、センサチップにX軸方向の力(Fx)が入力されたときに、ピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2が形成されている、検知用梁113mの梁幅が狭くなった箇所113qには、応力はほとんど発生しない。また、センサチップにY軸方向のモーメント(My)が入力されたときに、ピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2が形成されている、検知用梁113mの梁幅が狭くなった箇所113qには、応力はほとんど発生しない。
本実施の形態のセンサチップによれば、Z軸方向のモーメント(Mz)と、X軸方向の力(Fx)及びY軸方向のモーメント(My)との軸分離性が高められる。センサチップの複合入力に対する軸分離性を向上させて、センサ精度を改善することができる。
本実施の形態のセンサチップにおいて、第2梁幅W1'/第1梁幅W3'は0.5以下であることが好ましい。これにより、Z軸方向のモーメント(Mz)が入力されたときの応力が検知用梁113a、113d、113g、113jの梁幅が狭くなった箇所で高めることができる。例えば、第1梁幅W3'は100μm〜115μm程度であり、第2梁幅W1'は50μm程度である。
上記においては、検知用梁113mの短手方向の両側部において、梁幅が徐々に狭まるテーパー形状を有する場合を説明しているが、検知用梁113mの短手方向の一方の側部で梁幅が徐々に狭まるテーパー形状を有する構成であってもよい。
図13(b)は検知用梁113m部分を拡大した平面図である。検知用梁113mの短手方向のテーパー部分の長さAと、検知用梁113mの長手方向のテーパー部分の長さBについて、A:B=1:8.5〜1:10.5の式を満たすA及びBの値を有するテーパー形状であることが好ましい。テーパー角度が足らないとMz入力時の応力が、検知用梁の梁幅が狭められた箇所以外の領域に発生する可能性がある。テーパー角度が過度であると、検知用梁の梁幅が狭められた箇所の機械的強度が低下する可能性がある。
図14(a)及び(b)は、本実施の形態に係るセンサチップの他の一例の要部を拡大した平面図である。図3及び図6に示される検知用梁113a、113d、113g、113jに対応する梁をまとめて検知用梁113mで示している。検知用梁113b、113e、113h、113kに対応する梁をまとめて検知用梁113nで示している。検知用梁113c、113f、113i、113lに対応する梁をまとめて検知用梁113oで示している。また、ピエゾ抵抗素子MzR1、MzR2、MzR3、MzR4、MzR1'、MzR2'、MzR3'、MzR4'を代表してMzR1、MzR2で示している。
図14に示されるセンサチップは、検知用梁113mの短手方向の両側部において凹形状113pが設けられている。これにより、検知用梁113mの梁幅が狭められた箇所を有する。凹形状113pが設けられて梁幅が狭められた箇所の検知用梁113mの上に、Z軸方向のモーメント検出用のピエゾ抵抗素子MzR1、MzR2が設けられている。即ち、支持部または力点と連結される位置の検知用梁113mの幅である第1梁幅W3より、ピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2が形成された位置の検知用梁113mの幅である第2梁幅W1の方が小さい。このように、検知用梁113mは、支持部と連結される位置と力点と連結される位置の間に梁幅が狭くなった箇所が形成されており、この梁幅が狭くなった箇所の検知用梁113mの上にピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2が形成されている。
図14に示されるセンサチップにおいて、Z軸方向のモーメント(Mz)が入力されたとき、検知用梁113mにおいて発生する応力は、検知用梁113mの梁幅が狭くなった凹形状113pとその近傍で大きくなる。一方、センサチップにX軸方向の力(Fx)が入力されたときに、ピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2が形成されている、検知用梁113mの梁幅が狭くなった凹形状113pには、応力はほとんど発生しない。また、センサチップにY軸方向のモーメント(My)が入力されたときに、ピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2が形成されている、検知用梁113mの梁幅が狭くなった凹形状113pには、応力はほとんど発生しない。このように、Z軸方向のモーメント(Mz)と、X軸方向の力(Fx)及びY軸方向のモーメント(My)との軸分離性が高められる。センサチップの複合入力に対する軸分離性を向上させて、センサ精度を改善することができる。
図14に示されるセンサチップにおいて、凹形状113pの位置は、例えば、検知用梁113mが支持部と連結される位置と力点と連結される位置の中点あるいはその近傍であるが、これに限定されず、上記の中点よりも支持部側あるいは力点側に寄っていてもよい。この場合、凹形状113pにより梁幅が狭くなった箇所の検知用梁113mの上にピエゾ抵抗素子MzR1及びMzR2が形成されていればよい。
例えば、第1梁幅W3は100μm〜115μm程度であり、第2梁幅W1は50μm程度である。第2梁幅W1/第1梁幅W3は0.5以下であることが好ましい。支持部または力点と連結される位置と凹形状113pを除く部分の検知用梁113mの梁幅である第3梁幅W2は例えば80μm程度である。第2梁幅W1/第3梁幅W2は0.7以下であることが好ましい。また、第3梁幅W2/第1梁幅W3は0.3以上、0.6以下であることが好ましい。
また、図14(b)に示されるように、検知用梁113mの短手方向の両側部において形成された凹形状113pの幅(凹形状113pの検知用梁113mの長手方向の長さ)L1、凹形状113pの端部から梁幅がW2で一定となっている部分の検知用梁113mの長手方向の長さL2、検知用梁113mが支持部と連結される位置において梁幅がW2より幅が拡げられて梁幅W3となるまでの検知用梁113mの長手方向の長さL3に関して、L1/L3は0.5以下であることが好ましく、L1/L2が0.3以下であることが好ましく、L2/L3は0.5以上0.9以下であることが好ましい。例えばL1が100μm程度、L2が187.5μm程度、L3が125μm程度である。
また、検知用梁113mの短手方向の一方の側部に凹形状が形成されて梁幅が狭められている構成であってもよい。
(第1実施例)
図15は参考例のセンサチップにZ軸方向のモーメント(Mz)を印加したときの応力をシミュレーションにより算出した結果を示す図(応力コンター図)である。引っ張りまたは圧縮の応力が局所的に極大となっている箇所に『+』及び『−』に記号を付し、『+』に向けてグラデーション濃度が濃くなるほど、あるいは『−』に向けてグラデーション濃度が薄くなるほど、引っ張りまたは圧縮の応力が大きくなることを示している。図15の参考例では、図13及び図14とは異なり、検知用梁113mには、支持部と連結される位置と力点と連結される位置の間に梁幅が狭くなった箇所が形成されていない。参考例に係るセンサチップでは、Mz入力時に、検知用梁113mが支持部と連結される位置と、検知用梁113mが力点と連結される位置において、発生する応力が大きくなっていた。
図16は、図14に示される本実施の形態の他の一例に係るセンサチップにZ軸方向のモーメント(Mz)を印加したときにセンサチップに発生した応力をシミュレーションにより算出した結果を示す図(応力コンター図)である。検知用梁113mには、支持部と連結される位置と力点と連結される位置の間に凹形状が形成され、梁幅が狭くなった箇所となっている。Mz入力時に、凹形状が形成され、梁幅が狭くなった箇所で発生する応力が大きくなっていた。
図17は、図14に示される本実施の形態の他の一例に係るセンサチップにX軸方向の力(Fx)を印加したときにセンサチップに発生した応力をシミュレーションにより算出した結果を示す図(応力コンター図)である。検知用梁113mには、支持部と連結される位置と力点と連結される位置の間に凹形状113pが形成され、梁幅が狭くなった箇所となっている。Fx入力時に、凹形状113pが形成され、梁幅が狭くなった箇所には、ほとんど応力は発生していなかった。また、X軸方向の力(Fx)の代わりにY軸方向のモーメント(My)を印加したときも、同様に、凹形状113pが形成され、梁幅が狭くなった箇所には、ほとんど応力は発生していなかった。
図18は、図13に示される本実施の形態に係るセンサチップにX軸方向の力(Fx)を印加したときにセンサチップに発生した応力をシミュレーションにより算出した結果を示す図(応力コンター図)である。検知用梁113mには、支持部と連結される位置と力点と連結される位置の間に梁幅が狭くなった箇所113qが形成されている。Fx入力時に、梁幅が狭くなった箇所113qには、ほとんど応力は発生していなかった。また、X軸方向の力(Fx)の代わりにY軸方向のモーメント(My)を印加したときも、同様に、梁幅が狭くなった箇所113qには、ほとんど応力は発生していなかった。
本実施の形態のセンサチップによれば、Z軸方向のモーメント(Mz)と、X軸方向の力(Fx)及びY軸方向のモーメント(My)との軸分離性が高められることが確認された。
(第2実施例)
図19は参考例に係るセンサチップに対する他軸成分のシミュレーションについて説明する図である。参考例に係るセンサチップは、図15に示されるセンサチップと同様であり、検知用梁113mには、支持部と連結される位置と力点と連結される位置の間に梁幅が狭くなった箇所が形成されていない。さらに、Mzを検出するためのピエゾ抵抗素子は、検知用梁113mと支持部が連結される位置の近傍における検知用梁113mの上に形成されている。図19は、参考例に係るセンサチップに、図面下方の入力軸の欄に示されるように選択された4つの軸を複合した入力を行ったときの、Fx入力とFx出力の誤差(N)、Fy入力とFy出力の誤差(N)、Fz入力とFz出力の誤差(N)をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。センサチップとしては、各軸に対して誤差が5%以内であることが求められている。図19に示されるように、参考例に係るセンサチップでは、Fzの出力の誤差が5%を超える複合入力の組み合わせが存在していた。
図20は本実施の形態の他の一例に係るセンサチップに対する他軸成分のシミュレーションについて説明する図である。本実施の形態の他の一例に係るセンサチップは、図14に示されるセンサチップと同様であり、検知用梁113mには、短手方向の両側部に凹形状が形成されて梁幅が狭くなった箇所が形成され、この梁幅が狭くなった箇所にMzを検出するためのピエゾ抵抗素子が形成されている。図20は、本実施の形態の他の一例に係るセンサチップに、図面下方の入力軸の欄に示されるように選択された4つの軸を複合した入力を行ったときの、Fx入力とFx出力の誤差(N)、Fy入力とFy出力の誤差(N)、Fz入力とFz出力の誤差(N)をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。図20に示されるように、本実施の形態の他の一例に係るセンサチップでは、Fx、Fy、Fzの出力はいずれも誤差が5%以下となっていた。図19の参考例よりFx、Fy、Fzの出力の誤差が大きく改善されていた。
図21は参考例に係るセンサチップに対する他軸成分のシミュレーションについて説明する図である。参考例に係るセンサチップに、図面下方の入力軸の欄に示されるように選択された4つの軸を複合した入力を行ったときの、Mx入力とMx出力の誤差(N・m)、My入力とMy出力の誤差(N・m)、Mz入力とMz出力の誤差(N・m)をシミュレーションにより求めた結果を示す。センサチップとしては、各軸に対して誤差が5%以内であることが求められている。図21に示されるように、参考例に係るセンサチップでは、Mx、Mzの出力の誤差が5%を超える複合入力の組み合わせが存在していた。
図22は本実施の形態の他の一例に係るセンサチップに対する他軸成分のシミュレーションについて説明する図である。本実施の形態の他の一例に係るセンサチップに、図面下方の入力軸の欄に示されるように選択された4つの軸を複合した入力を行ったときの、Mx入力とMx出力の誤差(N・m)、My入力とMy出力の誤差(N・m)、Mz入力とMz出力の誤差(N・m)をシミュレーションにより求めた結果を示す。図22に示されるように、本実施の形態の他の一例に係るセンサチップでは、Mxの一部で5%を超えたが、それ以外のMxの出力と、My、Mzの出力はいずれも誤差が5%以下となっていた。図21の参考例よりMx、My、Mzの出力の誤差が大きく改善されていた。
(第3実施例)
図23は参考例に係るセンサチップに対する他軸成分のシミュレーションについて説明する図である。参考例に係るセンサチップは、図15に示されるセンサチップと同様であり、検知用梁113mには、支持部と連結される位置と力点と連結される位置の間に梁幅が狭くなった箇所が形成されていない。さらに、Mzを検出するためのピエゾ抵抗素子は、検知用梁113mと支持部が連結される位置の近傍における検知用梁113mの上に形成されている。図23は、参考例に係るセンサチップに、単軸方向、2軸の複合入力、3軸の複合入力、4軸の複合入力、5軸の複合入力、6軸の複合入力を行ったときの、Fx入力とFx出力の誤差(N)、Fy入力とFy出力の誤差(N)、Fz入力とFz出力の誤差(N)、Mx入力とMx出力の誤差(N・m)、My入力とMy出力の誤差(N・m)、Mz入力とMz出力の誤差(N・m)をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。ここでは、Fx出力の誤差(N)、Fy出力の誤差(N)、Fz出力の誤差(N)をF系として、平均値(Avg.)と最大値(Max.)を算出した。また、Mx出力の誤差(N・m)、My出力の誤差(N・m)、Mz出力の誤差(N・m)をM系として、平均値(Avg.)と最大値(Max.)を算出した。
図23に示されるように、参考例に係るセンサチップでは、F系の平均値(Avg.)は単軸から6軸複合まで誤差は5%以下であったが、F系の最大値(Max.)は3〜6軸複合で誤差は5%を超えていた。M系の平均値(Avg.)は5〜6軸複合で誤差は5%を超えていた。M系の最大値(Max.)は5〜6軸複合で誤差は5%を超えていた。
図24は本実施の形態の他の一例に係るセンサチップに対する他軸成分のシミュレーションについて説明する図である。本実施の形態の他の一例に係るセンサチップは、図14に示されるセンサチップと同様である。図24に示されるように、本実施の形態の他の一例に係るセンサチップでは、F系の平均値(Avg.)及び最大値(Max.)は単軸から6軸複合まで誤差は5%以下であった。また、M系の平均値(Avg.)は単軸から6軸複合まで誤差は5%以下であった。一方で、M系の最大値(Max.)は2〜5軸複合で誤差は5%を超えていた。図24に示される本実施の形態の他の一例に係るセンサチップに対する他軸成分のシミュレーションから、軸分離性が大きく改善できていることが確認された。
図25は本実施の形態の一例に係るセンサチップに対する他軸成分のシミュレーションについて説明する図である。本実施の形態の一例に係るセンサチップは、図13に示されるセンサチップと同様である。図25に示されるように、本実施の形態の一例に係るセンサチップでは、F系の平均値(Avg.)及び最大値(Max.)は単軸から6軸複合まで誤差は5%以下であった。また、M系の平均値(Avg.)及び最大値(Max.)も単軸から6軸複合まで誤差は5%以下であった。図25に示される本実施の形態の一例に係るセンサチップに対する他軸成分のシミュレーションから、軸分離性が大きく改善できていることが確認された。
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。