JP7074180B2 - 石英ガラスルツボ及びこれを用いたシリコン単結晶の製造方法 - Google Patents

石英ガラスルツボ及びこれを用いたシリコン単結晶の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7074180B2
JP7074180B2 JP2020501693A JP2020501693A JP7074180B2 JP 7074180 B2 JP7074180 B2 JP 7074180B2 JP 2020501693 A JP2020501693 A JP 2020501693A JP 2020501693 A JP2020501693 A JP 2020501693A JP 7074180 B2 JP7074180 B2 JP 7074180B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
quartz glass
crucible
crystal
rutsubo
crystallization accelerator
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020501693A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2019163593A1 (ja
Inventor
弘史 岸
幸太 長谷部
貴裕 安部
秀樹 藤原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumco Corp
Original Assignee
Sumco Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumco Corp filed Critical Sumco Corp
Publication of JPWO2019163593A1 publication Critical patent/JPWO2019163593A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7074180B2 publication Critical patent/JP7074180B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C30CRYSTAL GROWTH
    • C30BSINGLE-CRYSTAL GROWTH; UNIDIRECTIONAL SOLIDIFICATION OF EUTECTIC MATERIAL OR UNIDIRECTIONAL DEMIXING OF EUTECTOID MATERIAL; REFINING BY ZONE-MELTING OF MATERIAL; PRODUCTION OF A HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; SINGLE CRYSTALS OR HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; AFTER-TREATMENT OF SINGLE CRYSTALS OR A HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; APPARATUS THEREFOR
    • C30B35/00Apparatus not otherwise provided for, specially adapted for the growth, production or after-treatment of single crystals or of a homogeneous polycrystalline material with defined structure
    • C30B35/002Crucibles or containers
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C30CRYSTAL GROWTH
    • C30BSINGLE-CRYSTAL GROWTH; UNIDIRECTIONAL SOLIDIFICATION OF EUTECTIC MATERIAL OR UNIDIRECTIONAL DEMIXING OF EUTECTOID MATERIAL; REFINING BY ZONE-MELTING OF MATERIAL; PRODUCTION OF A HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; SINGLE CRYSTALS OR HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; AFTER-TREATMENT OF SINGLE CRYSTALS OR A HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; APPARATUS THEREFOR
    • C30B15/00Single-crystal growth by pulling from a melt, e.g. Czochralski method
    • C30B15/10Crucibles or containers for supporting the melt
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03BMANUFACTURE, SHAPING, OR SUPPLEMENTARY PROCESSES
    • C03B20/00Processes specially adapted for the production of quartz or fused silica articles, not otherwise provided for
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C30CRYSTAL GROWTH
    • C30BSINGLE-CRYSTAL GROWTH; UNIDIRECTIONAL SOLIDIFICATION OF EUTECTIC MATERIAL OR UNIDIRECTIONAL DEMIXING OF EUTECTOID MATERIAL; REFINING BY ZONE-MELTING OF MATERIAL; PRODUCTION OF A HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; SINGLE CRYSTALS OR HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; AFTER-TREATMENT OF SINGLE CRYSTALS OR A HOMOGENEOUS POLYCRYSTALLINE MATERIAL WITH DEFINED STRUCTURE; APPARATUS THEREFOR
    • C30B29/00Single crystals or homogeneous polycrystalline material with defined structure characterised by the material or by their shape
    • C30B29/02Elements
    • C30B29/06Silicon

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)
  • Glass Melting And Manufacturing (AREA)

Description

本発明は、石英ガラスルツボに関し、特に、チョクラルスキー法(CZ法)によるシリコン単結晶の製造に用いられる石英ガラスルツボ及びその製造方法に関するものである。
CZ法によるシリコン単結晶の製造では石英ガラスルツボ(シリカガラスルツボ)が用いられている。CZ法では、多結晶シリコン原料を石英ガラスルツボ内で加熱して融解し、このシリコン融液に種結晶を浸漬し、ルツボを回転させながら種結晶を徐々に引き上げて単結晶を成長させる。半導体デバイス用の高品質なシリコン単結晶を低コストで製造するためには、一回の引き上げ工程で単結晶歩留まりを高めることができるだけでなく、一つのルツボから複数本のシリコン単結晶インゴットを引き上げるいわゆるマルチ引き上げを実施できる必要があり、そのためには長時間の使用に耐える形状が安定したルツボが必要となる。
従来の石英ガラスルツボはシリコン単結晶引き上げ時の1400℃以上の熱環境下で粘性が低くなり、その形状を維持できず、沈み込みや内倒れなどのルツボの変形が生じ、これによりシリコン融液の液面レベルの変動やルツボの破損、炉内部品との接触などが問題になる。また、ルツボの内面は単結晶引き上げ中にシリコン融液と接触することによって結晶化し、ブラウンリングと呼ばれるクリストバライトが形成されるが、これが剥離して育成中のシリコン単結晶に取り込まれた場合には有転位化の要因となる。
このような問題を解決するため、ルツボの壁面を積極的に結晶化させてルツボの強度を高める方法が提案されている。例えば、特許文献1には、石英ガラスルツボ内面から深さ1mm以内に2a族元素の結晶化促進剤の塗布膜が存在する石英ガラスルツボが記載されている。
また特許文献2には、ルツボ内面に水酸化バリウム水溶液等の失透促進剤を塗布し、特に結晶化速度がコーナー部>壁部>底部の順となるように失透促進剤の濃度をルツボの部位毎に調整することにより、結晶の剥離を防止することが記載されている。
また特許文献3には、ルツボ側壁の外層が石英ガラス中で網状化剤として作用するTi等の第一成分と石英ガラス中で分離点形成剤として作用するBa等の第二成分とを含み、0.2mm以上の厚さを持つドーピング領域からなり、結晶引き上げ時に加熱されたときドーピング領域にクリストバライトを形成して石英ガラスの結晶化を促進させることにより、ルツボの強度を高めることが記載されている。
また特許文献4には、石英ガラスルツボ等の石英ガラス製品の表面処理方法であって、メチル基を含有する還元性のコート剤(アミン、オルガノシランハロゲン他)にてルツボ内表面をコートして結晶引き上げ中にクリストバライト化を促進させることにより、失透点の剥離を防ぐことができると記載されている。
また特許文献5には、石英ルツボの内側表面に厚さが0.01~50μmの結晶質皮膜を有すると共に、該皮膜の融点がシリコンの融点よりも高い石英ルツボが記載されている。結晶質皮膜の結晶粒径は0.005~1μmであり、結晶質皮膜の組成はチタンと炭素及び/又は窒素の化合物及び/又はチタンであり、石英ルツボの内側表面にPVD法により形成される。
また特許文献6には、石英ルツボの内表面側を帯電させ、当該表面に炭酸バリウムを均一に付着させた石英ルツボを使用してシリコン単結晶を製造する方法が記載されている。
特許文献7には、石英ガラスルツボの内面から発生した気泡がシリコン融液中を浮上してシリコン単結晶中に取り込まれることを防止するため、内側透明層に圧縮応力を持たせた石英ガラスルツボが記載されている。特許文献8には、長時間の高温条件下で使用しても変形が抑制されるように、透明層の内部残留応力が内側から外側に向かって圧縮応力から引っ張り応力に緩やかに変化している石英ガラスルツボが記載されている。さらに特許文献9には、そのような内部残留応力を測定するため歪測定装置が記載されている。
近年、引き上げられるシリコン単結晶の大口径化に伴い、育成中の単結晶に気泡が取り込まれ、単結晶中にピンホールが発生する問題が目立つようになってきた。ピンホールはエアポケットとも呼ばれる球状の空洞欠陥(ボイド)であり、そのサイズは300~500μmが大部分を占めるが、150μm以下の小さなものや1mm以上の非常に大きなものもある。ピンホールの発生原因は、シリコン融液中に溶け込んだArガスや石英ルツボとシリコン融液との反応によって生じるSiOガスなどの気体であると考えられている。シリコン融液中に溶け込んだ気体がルツボの内面に形成された凹凸を起点に凝集して気泡を形成し、この気泡が付着面から離脱してシリコン融液中を浮上し、育成中の単結晶に取り込まれることにより、単結晶中にピンホールが形成される。ピンホールはインゴットからウェーハを切り出して初めて検出可能であり、ウェーハの表面又は内部に貫通又は非貫通の穴として表れる。
ピンホールの発生を防止するため、例えば特許文献10には、ルツボの内面のうち底部の中心から一定範囲内に高濡れ性領域を設けた石英ガラスルツボが記載されている。また、特許文献11には、側壁部の内面を凹凸面とし、底部の内面を平滑面とし、側壁部の内面からSiOガスの気泡を積極的に発生させることで引き上げ中のシリコン単結晶に気泡が取り込まれないようにすることが記載されている。
特開平8-2932号公報 特開2003-160393号公報 特開2005-523229号公報 特開2010-537945号公報 特開平11-292695号公報 特開2007-1793号公報 特開平11-278855号公報 特許第6025278号公報 国際公開第2017/110763号パンフレット 特開2010-168240号公報 特開2010-126423号公報
上記のように、内面に結晶化促進剤が塗布された石英ガラスルツボによれば、結晶引き上げ工程中に内面を積極的に結晶化させてルツボの耐久性を高めることが可能である。しかしながら、そのようなルツボを用いてシリコン単結晶を引き上げた場合でも、単結晶中にピンホールが発生することがあり、ピンホール発生率の低減が求められている。
特許文献1、2に記載された従来のルツボの強化方法では、結晶層の厚さが十分でない場合があり、結晶化状態によっては結晶粒が剥離することがあった。すなわち、結晶層の配向性が弱くなると、結晶化促進剤が結晶粒界にトラップされ、時間の経過と共に結晶化速度が遅くなり、ルツボの厚み方向の結晶成長が引き上げ工程の比較的早い段階で停止する。したがって、マルチ引き上げなどの高温熱負荷及び非常に長時間の引き上げ工程では、ルツボ内面の薄い結晶層がシリコン融液に溶損して完全に消失するという問題がある。
特許文献4に記載の従来のルツボの強化方法は、表面のブラウンリングの密度のみに注目しており、ルツボの厚み方向の結晶成長を考慮したものではない。結晶層の厚みが十分に確保されないとルツボの強度を保てず変形を起こしたり、石英ガラスの表面に発生したブラウンリングの剥離が起きたりするという問題がある。さらに、ブラウンリングがルツボ内面の全面を覆うことはないので、ルツボの強度アップには寄与しない。
特許文献5に記載された従来のルツボの強化方法は、結晶化促進剤としてチタン又はチタン化合物を用いているため、結晶化促進作用が十分とは言えず、しかもチタン又はチタン化合物をPVD法により形成する場合には設備が大掛かりでコストが高くなるという問題がある。
特許文献6に記載された従来のルツボの強化方法は、結晶化促進剤としての炭酸バリウムを付着させる石英ルツボ内表面側の帯電状態が維持されているうちに、具体的には石英ルツボを帯電させた後5時間以内に単結晶の引き上げを行わなければならず、ルツボの取り扱いが非常に面倒である。また炭酸バリウムは静電気の力によってルツボの内表面に付着しているだけであるため、石英ルツボ内にシリコン原料を装填する際にシリコン原料との接触により炭酸バリウムがルツボの内表面から剥離し易く、炭酸バリウムの均一な付着状態を実際に維持することは困難である。
したがって、本発明の目的は、結晶引き上げ工程中の高温下における耐久性を確保しつつ、シリコン単結晶中のピンホール発生率を低減することが可能な石英ガラスルツボを提供することにある。また、本発明の目的は、マルチ引き上げなどの非常に長時間の単結晶引き上げ工程に耐えることができる石英ガラスルツボ及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明による石英ガラスルツボは、円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、前記底部よりも高い曲率を有し前記側壁部と前記底部とを連接するコーナー部とを有する石英ガラスルツボ本体と、結晶化促進剤を含み、前記石英ガラスルツボ本体の内面に形成された内面塗布膜とを備え、前記石英ガラスルツボ本体の前記内面が圧縮応力下にあることを特徴とする。
本発明によれば、圧縮応力による歪みが解放されない状態でルツボの内面を結晶化させることができるので、従来よりも緻密で強度が強く、表面に気泡の発生の起点となる凹凸が少ない内側結晶層を形成することができる。また、圧縮応力下にある石英ガラスの結晶化速度は、圧縮応力下にない石英ガラスの結晶化速度よりも速いので、厚い内側結晶層を形成することができ、厚みの面からも内側結晶層の強度を高めることができる。したがって、結晶引き上げ工程中の高温下における耐久性を確保しつつ、シリコン単結晶中のピンホール発生率を低減することが可能な石英ガラスルツボを提供することができる。
本発明において、前記内面塗布膜は、前記結晶化促進剤を含み、SiOと二成分系以上のガラスを形成する化合物を含むことが好ましい。これにより、圧縮応力による歪みが解放されない1200℃以下でルツボの内面の結晶化を促進させることができる。したがって、緻密な結晶層を形成することができ、従来よりも強度が強い内側結晶層を得ることができる。
本発明において、前記石英ガラスルツボ本体のリム上端面及び前記石英ガラスルツボ本体の前記内面のうちリム上端から下方に2~40mmの範囲内には、前記結晶化促進剤の未塗布領域が設けられていることが好ましい。これによれば、リム上端面及びリム上端近傍の内面の結晶化を抑制することができる。リム上端部には応力がかかりやすいため、リム上端部が結晶化した場合にはひび割れ等によってパーティクルが発生し、これによりシリコン単結晶の歩留まりが低下するおそれがある。しかし、リム上端部の結晶化を抑制した場合には、リム上端部からのパーティクルの発生を抑制してシリコン単結晶の歩留まりを改善することができる。また、シリコン融液に浸かる位置に内側結晶層とガラス層との境界が存在すると境界に応力が集中してパーティクルが発生しやすい。しかし、内面塗布膜の上端を融液面よりも上方に配置することにより、パーティクルの発生を抑制してシリコン単結晶の歩留まりを改善することができる。
本発明において、シリコン単結晶引き上げ工程中に加熱された前記内面塗布膜の作用により前記石英ガラスルツボ本体の内面近傍に形成される内側結晶層に含まれる結晶粒の平均粒径は0.1~100μmであり、前記結晶粒の頻度分布のピークは0.1~100μmの範囲内にあり、前記石英ガラスルツボ本体の内面側から見た前記内側結晶層の各面方位の面積率の上位1位及び2位の和は50%以上であることが好ましい。石英ガラスルツボ本体の表面に形成される結晶層を構成する結晶粒が適切な結晶粒径及び結晶方位を有しているので、結晶引き上げ中に結晶成長を持続させて結晶層の剥離やシリコン融液との反応による消失を防止することができる。そのため、より割れにくく、厚みが薄くても高い強度を持つ結晶層を形成することができ、ルツボの変形による単結晶歩留まりの悪化を抑えることができる。さらに、結晶層を特定の配向状態にすることで結晶層の剥離を防止することができ、さらに緻密で凹凸の少ない結晶層を形成することができる。結晶化開始直後のルツボの表面に緻密で凹凸の少ない結晶層が形成される場合、結晶層は特定の配向状態を維持しながら成長しやすいので、圧縮応力との相乗効果をもたらすことができ、ルツボの耐久性の向上とシリコン単結晶中のピンホール発生率の低減効果を高めることができる。
本発明において、前記石英ガラスルツボ本体の内面側から見た前記内側結晶層の各面方位の組織係数TcをX線回折法により測定したときの当該組織係数Tcの上位1位及び2位が各面方位の組織係数Tcの総和に占める割合(Tc占有率)は50%以上であることが好ましい。このように、結晶層を構成する結晶粒が適切な結晶粒径及び結晶方位を有しているので、より割れにくく、厚みが薄くても高い強度を持つ結晶層を形成することができ、ルツボの変形による単結晶歩留まりの悪化を抑えることができる。さらに、圧縮応力との相乗効果をもたらすことができ、ルツボの耐久性の向上とシリコン単結晶中のピンホール発生率の低減効果を高めることができる。
本発明による石英ガラスルツボは、前記結晶化促進剤を含み、前記石英ガラスルツボ本体の外面に形成された外面塗布膜をさらに備え、前記石英ガラスルツボ本体の前記外面が圧縮応力下にあることが好ましい。これによれば、圧縮応力による歪みが解放されていない状態でルツボの外面を結晶化させることができるので、従来よりも緻密で強度が強い外側結晶層を得ることができる。また、圧縮応力下にある石英ガラスの結晶化速度は、圧縮応力下にない石英ガラスの結晶化速度よりも速いので、厚い外側結晶層を形成することができ、厚みの面からも外側結晶層の強度を高めることができる。したがって、ルツボの変形を抑えることができ、シリコン単結晶の歩留まりを改善することができる。
本発明において、前記外面塗布膜は、前記結晶化促進剤を含み、SiOと二成分系以上のガラスを形成する化合物を含むことが好ましい。これにより、圧縮応力による歪みが解放されない1200℃以下でルツボの外面の結晶化を促進させることができる。したがって、緻密な結晶層を形成することができ、従来よりも強度が強い外側結晶層を得ることができる。
本発明において、前記石英ガラスルツボ本体の前記外面のうちリム上端から下方に2~40mmの範囲内には、前記結晶化促進剤の未塗布領域が設けられていることが好ましい。これによれば、リム上端近傍の外面の結晶化を抑制することができる。したがって、リム上端部からのパーティクルの発生を抑えてシリコン単結晶の歩留まりを改善することができる。
本発明において、前記石英ガラスルツボ本体の前記外面近傍の気泡含有率は0.8%以上5%以下であることが好ましい。これによれば、結晶化促進剤によって石英ガラスルツボ本体の外面が結晶化した場合でも外面近傍に内包される気泡が原因で外側結晶層が発泡・剥離することを防止することができる。
本発明において、シリコン単結晶引き上げ工程中に加熱された前記外面塗布膜の作用により前記石英ガラスルツボ本体の外面近傍に形成される外側結晶層に含まれる結晶粒の平均粒径は0.1~100μmであり、前記結晶粒の頻度分布のピークは0.1~100μmの範囲内にあり、前記石英ガラスルツボ本体の外面側から見た前記外側結晶層の各面方位の面積率の上位1位及び2位の和は50%以上であることが好ましい。石英ガラスルツボ本体の表面に形成される結晶層を構成する結晶粒が適切な結晶粒径及び結晶方位を有しているので、結晶引き上げ中に結晶成長を持続させて結晶層の剥離やシリコン融液との反応による消失を防止することができる。そのため、より割れにくく、厚みが薄くても高い強度を持つ結晶層を形成することができ、ルツボの変形による単結晶歩留まりの悪化を抑えることができる。さらに、結晶層を特定の配向状態にすることで結晶層の剥離を防止することができ、さらに緻密で凹凸の少ない結晶層を形成することができる。結晶化開始直後のルツボの表面に緻密で凹凸の少ない結晶層が形成される場合、結晶層は特定の配向状態を維持しながら成長しやすいので、圧縮応力との相乗効果をもたらすことができ、ルツボの耐久性の向上とシリコン単結晶中のピンホール発生率の低減効果を高めることができる。
本発明において、前記石英ガラスルツボ本体の外面側から見た前記外側結晶層の各面方位の組織係数TcをX線回折法により測定したときの当該組織係数Tcの上位1位及び2位が各面方位の組織係数Tcの総和に占める割合(Tc占有率)は50%以上であることが好ましい。このように、結晶層を構成する結晶粒が適切な結晶粒径及び結晶方位を有しているので、より割れにくく、厚みが薄くても高い強度を持つ結晶層を形成することができ、ルツボの変形による単結晶歩留まりの悪化を抑えることができる。さらに、圧縮応力との相乗効果をもたらすことができ、ルツボの耐久性の向上とシリコン単結晶中のピンホール発生率の低減効果を高めることができる。
本発明において、前記結晶化促進剤の平均粒径は0.1~100μmであり、前記結晶化促進剤の粒径の頻度分布のピークは0.1~100μmの範囲内にあることが好ましい。
本発明において、前記石英ガラスルツボ本体は、気泡を含まない石英ガラスからなり、前記石英ガラスルツボ本体の前記内面を構成する透明層と、多数の微小な気泡を含む石英ガラスからなり、前記透明層の外側に設けられた不透明層とを備えることが好ましい。これにより、結晶引き上げ工程中の高温下における耐久性を確保しつつ、シリコン単結晶の歩留まりを高めることができる。
また、本発明による石英ガラスルツボは、円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、前記底部よりも高い曲率を有し前記側壁部と前記底部とを連接するコーナー部とを有する石英ガラスルツボ本体と、結晶化促進剤を含み、前記石英ガラスルツボ本体の外面に形成された外面塗布膜とを備え、前記石英ガラスルツボ本体の前記外面及び内面が圧縮応力下にあることを特徴とする。
本発明によれば、圧縮応力による歪みが解放されない1200℃以下でルツボの外面の結晶化を促進させることができ、従来よりも緻密で強度が強い外側結晶層を得ることができる。その結果、ルツボの内面の強度も向上するので、ルツボ内面に形成される傷、窪み等の凹部の数を少なくすることができ、また凹部の深さを浅くすることができる。
本発明において、前記外面塗布膜は、前記結晶化促進剤を含み、SiOと二成分系以上のガラスを形成する化合物を含むことが好ましい。これにより、圧縮応力による歪みが解放されない1200℃以下でルツボの内面の結晶化を促進させることができる。したがって、緻密な結晶層を形成することができ、従来よりも強度が強い外側結晶層を得ることができる。
前記石英ガラスルツボ本体の前記外面のうちリム上端から下方に2~40mmの範囲内には、前記結晶化促進剤の未塗布領域が設けられていることが好ましい。これによれば、リム上端面及びリム上端近傍の内面の結晶化を抑制することができる。
本発明において、前記石英ガラスルツボ本体の前記外面近傍の気泡含有率は0.8%以上5%以下であることが好ましい。これによれば、結晶化促進剤によって石英ガラスルツボ本体の外面が結晶化した場合でも外面近傍に内包される気泡が原因で外側結晶層が発泡・剥離することを防止することができる。
本発明において、シリコン単結晶引き上げ工程中に加熱された前記外面塗布膜の作用により前記石英ガラスルツボ本体の外面近傍に形成される外側結晶層に含まれる結晶粒の平均粒径は0.1~100μmであり、前記結晶粒の頻度分布のピークは0.1~100μmの範囲内にあり、前記石英ガラスルツボ本体の外面側から見た前記外側結晶層の各面方位の面積率の上位1位及び2位の和は50%以上であることが好ましい。
本発明において、前記石英ガラスルツボ本体の外面側から見た前記外側結晶層の各面方位の組織係数TcをX線回折法により測定したときの当該組織係数Tcの上位1位及び2位が各面方位の組織係数Tcの総和に占める割合(Tc占有率)は50%以上であることが好ましい。
本発明において、前記結晶化促進剤の平均粒径は0.1~100μmであり、前記結晶化促進剤の粒径の頻度分布のピークが0.1~100μmの範囲内にあることが好ましい。この場合、前記結晶化促進剤は炭酸バリウムであることが特に好ましい。これにより、ルツボ本体の表面の結晶化を単に促進させるだけでなく、適切な結晶粒径及び結晶方位を有する結晶層を形成することができ、結晶成長を持続させることができる。
さらにまた、本発明による石英ガラスルツボは、チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の引き上げに用いられるものであって、石英ガラスからなる有底円筒状のルツボ本体と、前記シリコン単結晶の引き上げ工程中の加熱によって前記ルツボ本体の表面に結晶層が形成されるように前記ルツボ本体の内面及び外面の少なくとも一方に形成された結晶化促進剤含有塗布膜とを備え、前記結晶層を構成する結晶粒の平均粒径が0.1~100μmであり、前記結晶粒の頻度分布のピークが0.1~100μmの範囲内にあり、前記ルツボ本体の表面側から見た前記結晶層の各面方位の面積率の上位1位及び2位の和が50%以上であることを特徴とする。
本発明によれば、ルツボ本体の表面に形成される結晶層を構成する結晶粒が適切な結晶粒径及び結晶方位を有しているので、結晶引き上げ中に結晶成長を持続させて結晶層の剥離やシリコン融液との反応による消失を防止することができる。そのため、より割れにくく、厚みが薄くても高い強度を持つ結晶層を形成することができ、ルツボの変形による単結晶歩留まりの悪化を抑えることができる。
本発明において、前記面積率の上位1位及び2位を占める面方位は(200)面と(112)面であることが好ましい。この場合、前記(200)面の面積率は前記(112)面の面積率よりも大きいことが特に好ましい。これによれば、ルツボ本体の表面に形成される結晶層に適切な配向性を持たせることができ、結晶引き上げ中に結晶成長を持続させて結晶層の剥離やシリコン融液との反応による消失を防止することができる。
本発明において、前記ルツボ本体の表面側から見た前記結晶層の各面方位の組織係数TcをX線回折法により測定したときの当該組織係数Tcの上位1位及び2位が各面方位の組織係数Tcの総和に占める割合(Tc占有率)は50%以上であることが好ましい。このように、結晶層を構成する結晶粒が適切な結晶粒径及び結晶方位を有しているので、より割れにくく、厚みが薄くても高い強度を持つ結晶層を形成することができ、ルツボの変形による単結晶歩留まりの悪化を抑えることができる。
本発明において、前記組織係数Tcの上位1位及び2位を占める面方位は(200)面と(112)面であることが好ましい。この場合、前記(200)面の組織係数Tc(200)は前記(112)面の組織係数Tc(112)よりも大きいことが特に好ましい。これによれば、結晶層に適切な配向性を持たせることができ、結晶引き上げ中に結晶成長を持続させて結晶層の剥離やシリコン融液との反応による消失を防止することができる。
本発明において、前記結晶化促進剤含有塗布膜に含まれる結晶化促進剤の平均粒径は0.1~100μmであり、前記結晶化促進剤の粒径の頻度分布のピークは0.1~100μmの範囲内にあることが好ましい。この場合、前記結晶化促進剤が炭酸バリウムであることが特に好ましい。これにより、ルツボ本体の表面の結晶化を単に促進させるだけでなく、適切な結晶粒径及び結晶方位を有する結晶層を形成することができ、結晶成長を持続させることができる。
また、本発明による石英ガラスルツボは、チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の引き上げに用いられる石英ガラスルツボであって、石英ガラスからなる有底円筒状のルツボ本体と、前記シリコン単結晶の引き上げ工程中の加熱によって前記ルツボ本体の表面に結晶層が形成されるように前記ルツボ本体の内面及び外面の少なくとも一方に形成された結晶化促進剤含有塗布膜とを備え、前記結晶層を構成する結晶粒の平均粒径が0.1~100μmであり、前記結晶粒の頻度分布のピークが0.1~100μmの範囲内にあり、前記ルツボ本体の表面側から見た前記結晶層の各面方位の組織係数TcをX線回折法により測定したときの当該組織係数Tcの上位1位及び2位が各面方位の組織係数Tcの総和に占める割合(Tc占有率)が50%以上であることを特徴とする。
本発明によれば、ルツボ本体の表面に形成される結晶層を構成する結晶粒が適切な結晶粒径及び結晶方位を有しているので、結晶引き上げ中に結晶成長を持続させて結晶層の剥離やシリコン融液との反応による消失を防止することができる。そのため、より割れにくく、厚みが薄くても高い強度を持つ結晶層を形成することができ、ルツボの変形による単結晶歩留まりの悪化を抑えることができる。
本発明において、前記組織係数Tcの上位1位及び2位を占める面方位は(200)面と(112)面であることが好ましい。この場合、前記(200)面の組織係数Tc(200)は前記(112)面の組織係数Tc(112)よりも大きいことが特に好ましい。これによれば、結晶層に適切な配向性を持たせることができ、結晶引き上げ中に結晶成長を持続させて結晶層の剥離やシリコン融液との反応による消失を防止することができる。
本発明において、前記結晶化促進剤含有塗布膜に含まれる結晶化促進剤の平均粒径は0.1~100μmであり、前記結晶化促進剤の粒径の頻度分布のピークは0.1~100μmの範囲内にあることが好ましい。この場合、前記結晶化促進剤は炭酸バリウムであることが特に好ましい。これにより、ルツボ本体の表面の結晶化を単に促進させるだけでなく、適切な結晶粒径及び結晶方位を有する結晶層を形成することができ、結晶成長を持続させることができる。
また、本発明による石英ガラスルツボの製造方法は、結晶化促進剤を溶媒中に分散させた結晶化促進剤含有塗布液を用意する工程と、石英ガラスからなる有底円筒状のルツボ本体の内面及び外面の少なくとも一方に結晶化促進剤含有塗布液を塗布する工程とを備え、前記結晶化促進剤の平均粒径が0.1~100μmであり、前記結晶化促進剤の粒径の頻度分布のピークが0.1~100μmの範囲内にあることを特徴とする。結晶化促進剤が溶媒に溶けた状態ではなく溶媒に分散した状態で塗布することにより、適切な結晶粒径及び結晶方位を有する結晶層を形成することができ、結晶層の強度を向上させることができる。
本発明において、前記結晶化促進剤含有塗布液を用意する工程は、前記結晶化促進剤を前記溶媒中に分散させる前に前記結晶化促進剤を超音波照射により解砕する工程を含むことが好ましい。この場合、前記結晶化促進剤は炭酸バリウムであることが特に好ましい。これにより、結晶化促進剤を溶媒中に均一に分散させることができ、結晶層を構成する結晶粒の粒度分布及び結晶方位を適正化して結晶層の強度を向上させることができる。
本発明によれば、結晶引き上げ工程中の高温条件下でも耐久性が高く、シリコン単結晶中のピンホールの発生率を低減することが可能な石英ガラスルツボを提供することができる。また本発明によれば、マルチ引き上げなどの非常に長時間の単結晶引き上げ工程に耐えることができる石英ガラスルツボ及びその製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の第1の実施の形態による石英ガラスルツボの構造を示す略側面断面図である。 図2は、図1の石英ガラスルツボの使用状態を示す略側面断面図であって、(a)は原料充填時、(b)は原料融解時をそれぞれ示している。 図3は、歪み測定器の原理を示す模式図である。 図4は、歪み測定器20を通して見えるルツボ本体10の断面のグレースケール画像である。 図5は、シリコン単結晶の引き上げに使用された第1の実施の形態による石英ガラスルツボの断面図であって、結晶引き上げ工程中の加熱によって表面が結晶化した状態を示す図である。 図6(a)及び(b)は、結晶層を構成する結晶粒のモデル図であって、(a)は結晶粒径が大きい場合、(b)は結晶粒径が小さい場合を示している。 図7は、EBSD法の原理を示す模式図である。 図8(a)乃至(c)は、ルツボ断面のEBSD解析結果の一例を示す図であって、(a)はIQ(Image Quality)マップ、(b)はシグナルマップ、(c)はIQマップ(ND)である。 図9は、EBSD法による測定結果から求めた結晶粒径の頻度分布を示すグラフである。 図10は、石英ガラスルツボの製造方法を示すフローチャートである。 図11は、回転モールド法によるルツボ本体の製造方法を説明するための模式図である。 図12は、結晶化促進剤含有塗布液の調製方法を示すフローチャートである。 図13は、本発明の第2の実施の形態による石英ガラスルツボの構造を示す略側面断面図である。 図14は、シリコン単結晶の引き上げに使用された第2の実施の形態による石英ガラスルツボの断面図であって、結晶引き上げ工程中の加熱によって表面が結晶化した状態を示す図である。 図15は、本発明の第3の実施の形態による石英ガラスルツボの構造を示す略側面断面図である。 図16は、シリコン単結晶の引き上げに使用された第3の実施の形態による石英ガラスルツボの断面図であって、結晶引き上げ工程中の加熱によって表面が結晶化した状態を示す図である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態による石英ガラスルツボの構造を示す略側面断面図である。また図2は、図1の石英ガラスルツボの使用状態を示す略側面断面図であって、(a)は原料充填時、(b)は原料融解時をそれぞれ示している。
図1及び図2に示すように、本実施形態による石英ガラスルツボ1は、シリコン融液5を支持するための有底円筒状の容器であって、石英ガラスルツボ本体(以下、「ルツボ本体」という)10と、ルツボ本体10の内面10iに形成された結晶化促進剤を含む内面塗布膜13Aとを備えている。ルツボ本体10は、円筒状の側壁部10aと、緩やかに湾曲した底部10bと、底部10bよりも高い曲率を有し側壁部10aと底部10bとを連接するコーナー部10cとを有している。
石英ガラスルツボ1の口径は22インチ(約560mm)以上であり、24インチ(約600mm)以上であることが好ましく、32インチ(約800mm)以上であることがさらに好ましい。このような大口径ルツボは直径300mm以上の大型のシリコン単結晶インゴットの引き上げに用いられ、長時間使用しても変形しにくく、シリコン単結晶の品質に影響を与えないことが求められるからである。近年、シリコン単結晶の大型化及び結晶引き上げ工程の長時間化に伴い、ルツボの熱環境が厳しくなってきており、ルツボの耐久性の向上は重要な課題である。
ルツボ本体10の肉厚はその部位によって多少異なるが、22インチ以上のルツボの側壁部10aの肉厚は7mm以上であることが好ましく、24インチ以上のルツボの側壁部10aの肉厚は8mm以上であることが好ましい。また、32インチ以上の大型ルツボの側壁部10aの肉厚は10mm以上であることが好ましく、40インチ(約1000mm)以上の大型ルツボの側壁部10aの肉厚は13mm以上であることがより好ましい。
ルツボ本体10は二層構造であって、気泡を含まない石英ガラスからなる透明層11(無気泡層)と、多数の微小な気泡を含む石英ガラスからなり、透明層11よりもルツボの外側に設けられた不透明層12(気泡層)とを備えている。
透明層11は、シリコン融液5と接触するルツボ本体10の内面10iを構成する層であって、石英ガラス中の気泡が原因で単結晶歩留まりが低下することを防止するために設けられている。透明層11の厚さは0.5~10mmであることが好ましく、単結晶の引き上げ工程中の溶損によって透明層11が完全に消失して不透明層12が露出することがないように、ルツボの部位ごとに適切な厚さに設定される。透明層11はルツボの側壁部10aから底部10bまでのルツボ全体に設けられていることが好ましいが、シリコン融液と接触しないルツボのリム上端部において透明層11を省略してもよい。
透明層11が「気泡を含まない」とは、気泡が原因で単結晶歩留まりが低下しない程度の気泡含有率及び気泡サイズであることを意味する。ルツボの内面近傍に気泡が存在すると、ルツボの内面の溶損によってルツボ内面近傍の気泡を石英ガラス中に閉じ込めておくことができなくなり、結晶引き上げの際に石英ガラス中の気泡が熱膨張によって破裂することによってルツボ破片(石英片)が剥離するおそれがあるからである。融液中に放出されたルツボ破片が融液対流に乗って単結晶の成長界面まで運ばれて単結晶中に取り込まれた場合には、単結晶の有転位化の原因となる。またルツボ内面の溶損によって融液中に放出された気泡が固液界面まで浮上して単結晶中に取り込まれた場合にはピンホールの原因となる。透明層11の気泡含有率は0.1vol%以下であることが好ましく、気泡の平均直径は100μm以下であることが好ましい。
透明層11の気泡含有率は、光学的検出手段を用いて非破壊で測定することができる。光学的検出手段は、ルツボに照射した光の透過光又は反射光を受光する受光装置を備える。照射光の発光手段は受光装置に内蔵されたものでもよく、外部の発光手段を利用してもよい。また光学的検出手段はルツボの内面に沿って回動操作できるものが好ましく用いられる。照射光としては、可視光、紫外線及び赤外線のほか、X線もしくはレーザ光などを利用することができる。受光装置は、光学レンズ及び撮像素子を含むデジタルカメラを用いることができる。単位体積当たりの気泡含有率は、単位面積当たりの気泡含有率を深さ方向に積算することにより求めることができる。表面から一定深さに存在する気泡を検出するには、光学レンズの焦点を表面から深さ方向に走査すればよい。光学的検出手段による測定結果は画像処理装置に取り込まれ、単位面積当たりの気泡含有率が算出される。単位面積当たりの気泡含有率は、デジタルカメラを用いて撮影したルツボ内面の画像を一定面積ごとに区分して基準面積とし、この基準面積に対する気泡の占有面積の比として求めることができる。
不透明層12は、透明層11の外側に設けられ、ルツボ本体10の外面10oを構成する層である。不透明層12は、ルツボ内のシリコン融液5の保温性を高めると共に、単結晶引き上げ装置内においてルツボを取り囲むように設けられたヒーター6からの輻射熱を分散させてルツボ内のシリコン融液5をできるだけ均一に加熱するために設けられている(図2(b)参照)。そのため、不透明層12はルツボの側壁部10aから底部10bまでのルツボ全体に設けられていることが好ましい。不透明層12の厚さは、ルツボ壁の厚さから透明層11の厚さを差し引いた値であり、ルツボの部位によって異なる。
ルツボ本体10の底部10bの不透明層12の厚さは、他の部位、特に側壁部10aの不透明層12よりも厚いことが好ましい。ルツボ本体10の底部10bの不透明層12をできるだけ厚くすることでルツボ内面の温度を下げることができ、これによりシリコン単結晶中のピンホールの発生を抑制することができる。
不透明層12の気泡含有率は、0.8%以上であり、1~5%であることが好ましい。不透明層12と透明層11との境界において気泡含有率の変化は急峻であり、両者の境界は肉眼でも明確である。不透明層12の気泡含有率は、例えばルツボから切り出した不透明石英ガラス片の単位体積当たりの重量と、気泡を含まない石英ガラスの単位体積当たりの重量とを比較することによる比重測定(アルキメデス法)により求めることができる。
ルツボ本体10は、合成シリカ粉から形成される内面層(以下「合成層」という)と、天然シリカ粉から形成される外面層(以下、「天然層」という)の二層からなることが好ましい。天然シリカ粉は、α-石英を主成分とする天然鉱物を粉砕して粒状にすることによって製造されるシリカ粉である。合成シリカ粉は、四塩化珪素(SiCl)の気相酸化(乾燥合成法)やシリコンアルコキシドの加水分解(ゾル・ゲル法)によって製造することができる。
詳細は後述するが、合成層と天然層の二層構造からなるルツボ本体10は、ルツボ製造用モールドの内面に沿って天然シリカ粉を堆積し、その上に合成シリカ粉を堆積し、アーク放電によるジュール熱によりシリカ粉を溶融することにより製造することができる。アーク溶融工程の初期にはシリカ粉の堆積層の外側から強く真空引きすることによって気泡を除去して透明層11を形成する。その後、真空引きを停止するか弱めることによって透明層11の外側に不透明層12を形成する。そのため、合成層と天然層との境界面は、透明層と不透明層との境界面と必ずしも一致するものではないが、合成層は、透明層11と同様に、結晶引き上げ工程中のルツボ内面の溶損によって完全に消失しない程度の厚さを有することが好ましい。
本実施形態において、ルツボ本体10の内面10i近傍には圧縮応力層Lcが形成されている。ルツボ本体10の内面10i近傍の内部残留応力が圧縮応力である場合には、ルツボ本体10の内面10iに緻密な結晶層を形成することができ、内面10iの強度を向上させることができる。図2(a)に示すようにシリコン単結晶の製造開始時にはルツボ内に多量の多結晶シリコン原料4が充填され、多結晶シリコン塊の鋭利な先端がルツボの内面10iに押し付けられるため、ルツボの内面10iに衝撃が加わりやすい。しかし、ルツボの内面10iに圧縮応力が付与されている場合は原料充填時の衝撃に対する耐久性を向上させることができる。
圧縮応力層Lcの厚みは0.5mm以上であることが好ましい。この場合において、圧縮応力層Lcの厚みはルツボの部位ごとに異なっていてもよく、例えばルツボの底部10bにおいて圧縮応力層Lcを厚くしてもよい。このようにした場合、ルツボの底部10bの内面の耐衝撃性を高め、凹凸の発生を抑制できると共に、ルツボの底部10bで気泡がトラップされる確率を下げることができる。
圧縮応力層Lcの応力強さはルツボの部位ごとに異なっていてもよい。例えば、側壁部10aよりも底部10b及びコーナー部10cの圧縮応力を強くしてもよい。コーナー部10cは側壁部の重量を支えていることから、コーナー部10cの圧縮応力を強くすることでコーナー部10cの変形を抑えることができる。また、底部10bの圧縮応力を強くすることでピンホールの発生原因となる凹凸が少なく、且つ、緻密な結晶層を形成することができる。
圧縮応力層Lcよりも奥側(外面側)には引っ張り応力層Ltが形成されていてもよい。この場合、圧縮応力から引っ張り応力への応力変化率は緩やかであることが好ましい。これにより、沈み込みや内倒れなどのルツボの変形を抑制することができる。引っ張り応力層Ltは圧縮応力層Lcと共に透明層11内に形成されていることが好ましい。引っ張り応力層Ltが不透明層12に形成されていると気泡と気泡との間に微細なひび割れが生じやすくなり、ひび割れが広がることで大きな亀裂になるおそれがあるからである。
ルツボ本体10の内面10iに形成される結晶層が早く厚くなるとルツボ本体10の強度が増加し、ルツボの強度面で良い方向に作用することから、ルツボの内面の圧縮応力はできるだけ強いことが好ましく、圧縮応力層Lcはできるだけ厚いことが好ましい。また引っ張り応力層Ltの引っ張り応力は強いことが好ましいが、引っ張り応力層Ltの厚さはできるだけ薄いことが好ましい。ルツボ本体10内面10iに形成される結晶層の成長速度が遅いか、或いは結晶層が薄い場合には、結晶層が消滅するので、ルツボ本体10の内面10iの圧縮応力が強いほうが、ルツボの溶解速度が速い環境に耐えることができる。また、ルツボ本体10の内面10iの圧縮応力層Lcが厚ければ結晶層を厚く形成することができるので、長時間の結晶引き上げ工程に耐えることができる、
ルツボ本体10の内面10i近傍の内部残留応力が圧縮応力か引っ張り応力かはルツボ壁の断面を歪み測定器で観察することで判断することができる。
図3は、歪み測定器の原理を示す模式図である。
図3に示すように、歪み測定器20は、直交ニコル状態に組み合わせた二枚の偏光板21,22を備えている。ルツボを肉厚方向にスライスし、二枚の偏光板21,22の間にスライスしたルツボ片23をサンプルとして設置し、白色光を通して観察する。ルツボ片23に歪みが存在しない場合、ルツボ片23は白色偏光に対して光路差を与えないため、直交する偏光板22(検光子)を通過することができない。一方、ルツボ片23に歪みが存在する場合、ルツボ片23は白色偏光に対して光路差を与えるため、白色偏光の偏光面が回転し、直交する偏光板22(検光子)通過する成分が観察される。
このように、歪みを持つルツボ片23に白色偏光を通すと歪みに応じた光路差が波長ごとに生じ、偏光板22を通過する光量は波長ごとに異なる。この結果、偏光板22(検光子)を通して観察されるルツボ片23には色彩が観察される。この色彩からルツボ片23の歪みを評価することが可能である。例えば、色度と複屈折との関係を示す干渉色図、または偏光色図を用いることでルツボ片23の歪みを評価することができる。また、鋭敏色法を用いると、色によって圧縮応力か引っ張り応力かを判定することができるため、残留圧縮応力と残留引っ張り応力との界面を観察することができる。
図4は、歪み測定器20を通して見えるルツボ本体10の断面のグレースケール画像である。
図4に示すように、歪み測定器20を用いて内部残留応力を有するルツボ本体10の断面を観察すると、圧縮応力を示す色彩(例えば青色)と、引っ張り応力を示す色彩(例えばオレンジ色)がそれぞれ現れる。本実施形態による石英ガラスルツボは、図示のようにルツボの内面近傍に圧縮応力層が存在し、圧縮応力層の奥側に引っ張り応力層が存在するものである。
またルツボ片23と偏光板22との間に1/4波長板24を設置することで歪みの応力を測定することも可能である(セナルモン法)。具体的な測定方法は次の通りである。まず、光源25の手前に設置した偏光板21(偏光子)に対して直交ニコル状態になるように偏光板22(検光子)を設置する。このとき検光子の回転角度を0°とする。次に、検光子側からサンプルを観察して、応力測定したいサンプル部分が最も明るくなるように、検光子に対してサンプルを回転させる。さらに、応力測定したいサンプル部分が最も暗くなるように、検光子を水平方向に回転させる。そして最も明るい状態から最も暗い状態への回転角度をθとするとき、歪みの応力Fは以下の式より求めることができる。
F=(λ×θ/180)/(C×L)
ここで、λは光源の波長(nm)、Cは光弾性定数(nm/cm)/MPa、Lは光路長(cm)である。シリカガラスの光弾性定数Cは、3.5±0.2(nm/cm)/MPaである。光源25の波長λは、使用する1/4波長板24に適した波長を選択する。あるいは使用する光源25の波長λに適した1/4波長板を選択してもよい。光路長Lは、光軸方向におけるサンプルの厚さである。
ルツボ本体10の内面10iには結晶化促進剤含有塗布膜である内面塗布膜13Aが形成されている。内面塗布膜13Aは、シリコン単結晶の引き上げ工程中の加熱によってルツボ本体10の表層部の結晶化を促進させる役割を果たすものである。ルツボ本体10の内面10i側には透明層11が形成されていることから、内面塗布膜13Aは透明層11上に形成される。内面塗布膜13Aは、増粘剤として作用する水溶性高分子を含んでおり、これによりルツボ本体10の内面10iには堅い膜が形成される。
内面塗布膜13Aの厚さは0.3~100μmであることが好ましい。ルツボ本体10の内面10iに塗布される結晶化促進剤の濃度は内面塗布膜13Aの厚さを変えることにより制御される。なお、石英ガラスで構成されるルツボ本体10には結晶化促進剤になり得る元素は意図的に添加されておらず、例えば、ルツボ本体10を天然シリカ粉で構成する場合、ルツボ本体10に含まれるバリウムの濃度は0.10ppm未満、マグネシウムの濃度は0.10ppm未満、カルシウムの濃度は2.0ppm未満であることが好ましい。またルツボ本体10内面の構成原料に合成シリカ粉を使用する場合、ルツボ本体10に含まれるマグネシウム及びカルシウムの濃度は共に0.02ppm未満であることが好ましい。
内面塗布膜13Aに含まれる結晶化促進剤は2a族の元素であり、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどを挙げることができる。中でも、シリコンへの偏析係数が小さく、また結晶化速度が結晶化と共に減衰せず、他の元素に比べて配向成長を最も強く引き起こすなどの特徴から、バリウムが特に好ましい。またバリウムは常温で安定していて取り扱いが容易であり、原子核の半径がガラス(Si)と同じくらいであるため、結晶成長が継続しやすいという利点もある。結晶化促進剤含有塗布膜は、結晶化促進剤を含む塗布液をルツボ壁面に塗布することによって形成することができる。結晶化促進剤としては2a族の元素の他にも、リチウム(Li)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)などを挙げることができる。このように、内面塗布膜13Aは、バリウム等を含む塗布液をルツボ壁面に塗布することによって形成することができる。
内面塗布膜13Aは、リム上端面10t及び内面10iのうちリム上端近傍を除いた領域に形成されることが好ましい。すなわち、リム上端近傍は、結晶化促進剤が塗布されていない未塗布領域15Aであることが好ましい。リム上端近傍を含む内面全体に内面塗布膜13Aを形成した場合には、リム上端部(上端面)も結晶化し、ルツボ本体10の結晶化領域から発塵したパーティクルがルツボ内のシリコン融液に混入してシリコン単結晶の歩留まりが低下するおそれがある。しかし、リム上端から下方に一定範囲内に未塗布領域15Aを設けてリム上端部の結晶化を抑制することにより、シリコン単結晶の歩留まりを改善することができる。
未塗布領域15Aは、リム上端から下方に2mm以上40mm以下の範囲内であることが好ましい。未塗布領域15Aの幅が2mmよりも小さい場合には、未塗布領域15Aを設けることによる効果がほとんど得られないからである。また未塗布領域15Aの幅が40mmよりも大きい場合には、内面塗布膜13Aの上端の位置がシリコン融液5の初期液面位置(図2(b)参照)よりも下方になる可能性が高くなるからである。結晶層とガラス層との境界がシリコン融液5に浸かると境界領域における応力集中によりクラックが発生し、結晶小片のパーティクルが発生する可能性が高くなる。しかし、シリコン融液の初期液面位置よりも上方に未塗布領域15Aを設けてリム上端部の結晶化を抑制することにより、シリコン単結晶の歩留まりを改善することができる。
通常、結晶引き上げ工程中の石英ガラスルツボ1はカーボンサセプタ8内に収容されており、石英ガラスルツボ1のリム上端部はカーボンサセプタ8の上端よりも上方に突出している。シリコン融液5の液面5aよりも下方ではルツボ壁が液圧によって外側に押されてカーボンサセプタに馴染むが、液面5aよりも上方では液圧がかからないのでルツボ壁がカーボンサセプタに押し付けられることがない。そのため、リム上端部はカーボンサセプタ8に支持されることなく常に自立状態である(図2参照)。未塗布領域15Aは、このようなカーボンサセプタ8の上端よりも上方に突出する領域に設けられることが好ましい。カーボンサセプタ8と接触することなく自立状態のリム上端部には応力がかかりやすく、リム上端部が結晶化した場合にはひび割れ等によってパーティクルが発生しやすいが、リム上端部を未塗布領域とすることにより、リム上端部の結晶化による発塵を抑えてシリコン単結晶の歩留まりを改善することができる
未塗布領域15Aの幅の範囲は、ルツボの側壁部10aの長さの0.02倍~0.1倍であることが好ましい。未塗布領域15Aの幅がルツボの側壁部10aの長さの0.02倍よりも小さい場合には、未塗布領域15Aを設けることによる効果が十分でないからである。また、未塗布領域15Aの幅がルツボの側壁部10aの長さの0.1倍よりも大きい場合には、カーボンサセプタ8によって支持される領域まで未塗布領域を形成することになり、シリコン単結晶の歩留まりの悪化のおそれがあるからである。
上記のように、本実施形態による石英ガラスルツボ1は、石英ガラス製のルツボ本体10の内面10iに内面塗布膜13Aが形成されたものである。この石英ガラスルツボ1を実際の結晶引き上げ工程で使用すると、結晶化促進剤の作用により石英ガラスが結晶化し、ルツボ本体10の表面に緻密な結晶層が形成されるので、ルツボの強度を向上させることができる。
図5は、シリコン単結晶の引き上げに使用された石英ガラスルツボ1の断面図であって、結晶引き上げ工程中の加熱によって表面が結晶化した状態を示す図である。
図5に示すように、結晶化促進剤が塗布された石英ガラスルツボ1の表面には、結晶引き上げ工程中の加熱によって石英ガラスの結晶化が促進され、ルツボ本体10の内面10iに内側結晶層14Aが形成される。シリコン単結晶の引き上げ工程中の加熱はシリコンの融点(1400℃)以上の温度で数十時間以上にもなるが、ルツボ本体10の表層部に結晶層がどのように形成されるかは、実際にシリコン単結晶の引き上げ工程を行って評価する以外に、1400℃以上シリカガラス軟化点以下の温度で1.5時間以上の熱処理を行って評価することができる。
内側結晶層14Aの厚さは200μm以上であり、400μm以上であることが好ましい。単結晶引き上げ中にシリコン融液と接触する内側結晶層14Aは徐々に溶損するが、内側結晶層14Aを徐々に成長させることにより、内側結晶層14Aの厚さを200μm以上にすることができ、400μm以上に維持することも可能である。
結晶引き上げ工程中の高温下で石英ガラスルツボ1がシリコン融液を長時間にわたって安定的に保持するためには、ルツボ本体10にどのような結晶層が形成されていてもよいわけではなく、望ましい結晶粒径及び結晶方位が存在する。結晶層が所望の結晶品質を満たさない場合は、結晶引き上げ工程中に結晶成長を持続させることができず、ルツボ本体10の強度が不足して沈み込み等の変形が生じ、単結晶歩留まりが低下するからである。
図6(a)及び(b)は、結晶層を構成する結晶粒のモデル図である。図示のように、結晶層中の結晶粒の結晶方位は結晶層の主面(ルツボの表面)に対して垂直であり、柱状の配向性を有することが好ましい。図6において結晶層の主面はXY平面であり、結晶粒はZ軸方向に細長い柱状の配向性を有する。これにより、ルツボ本体10の表面を均一に結晶化させるだけでなく結晶成長を持続させることができ、ルツボ本体10の変形を抑えて単結晶歩留まりを向上させることができる。また同じ配向性を有する結晶粒であってもその結晶粒径が大きい場合(図6(a)参照)と小さい場合(図6(b)参照)があり、結晶粒径が大きすぎると結晶層が緻密化されず、強度不足によるルツボの変形及び結晶層の剥離が生じやすくなる。一方、結晶粒径が小さすぎると結晶層が持続的に成長せず、結晶層の厚さが不足してルツボの強度が低下する。
このような理由から、内側結晶層14Aを構成する結晶粒の平均粒径は0.1~100μmであることが好ましく、結晶粒径の頻度分布のピークは0.1~100μmの範囲内にあることが好ましい。結晶粒の平均粒径が100μmよりも大きい場合には結晶層の緻密さが不足してルツボの強度が低下するからであり、結晶粒の平均粒径が0.1μmよりも小さい場合には結晶粒が小さすぎて結晶層の強度が逆に弱くなるからである。さらに、結晶粒径の頻度分布のピークが0.1~100μmの範囲内にある場合には、結晶粒径が平均粒径付近に集中しているので、平均粒径の測定値の信頼性を高めることができる。
また、結晶層を構成する結晶粒の各面方位の面積率の上位1位及び2位の和は50%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。さらに、面積率の上位1位及び2位を占める面方位は(200)面と(112)面であることが好ましい。このように、結晶層の配向性が強い場合には結晶成長を持続させて十分な厚さの結晶層を形成することができ、あるいは厚みが薄くても高い強度を持つ結晶層を形成することができ、これによりルツボの強度を向上させることができる。
面積率の上位1位及び2位を占める面方位が(200)面と(112)面である場合、(200)面の面積率は(112)面の面積率よりも大きいことが好ましい。(200)面の面積率が(112)面の面積率よりも大きい場合には、結晶粒の配向性を強めることができ、長時間にわたって結晶層の成長を持続させてルツボの強度を高めることができる。
結晶層を構成する結晶粒の配向性は、結晶化促進剤の表面密度の影響を受けると考えられる。形成される結晶核間の距離が広がると、結晶層成長時に起きる各種の配向成長が淘汰されにくくなり、結晶粒の配向性のばらつきが大きくなる。また結晶粒の配向性は、結晶化促進剤の内部拡散の影響を受けると考えられる。結晶化促進剤がルツボ壁の表面から内部へ拡散すると、結晶核の表面から深さ方向の発生位置にばらつきが生じ、結晶粒の配向性のばらつきが大きくなる。結晶化促進剤の内部拡散は、結晶化促進剤の塗布工程におけるルツボの予備加熱、あるいは、引き上げ時の昇温工程における低昇温化によって発生する。
結晶層の結晶粒径及び結晶方位は、EBSD(Electron Backscatter Diffraction Pattern)法により評価することができる。EBSD法は、SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)による結晶解析手法の一つであるECP(Electron Channeling Pattern)法を応用したサブミクロン領域の結晶解析手法である。ECP法では、試料に照射する電子線を試料上の一点に向かって順次角度を変えて入射するための特殊な電子光学系を必要とするが、EBSD法では電子線を分析した結晶粒上に止めるだけでよいため、電子光学系に特別の装置を付加する必要がない。
図7は、EBSD法の原理を示す模式図である。図示に示すように、EBSD装置40はSEMにEBSD検出器41(CCDカメラ)を付加するだけの簡単な構成を有している。約60~70°傾斜した試料42に電子線43を照射すると、試料42の表面から約50nmまでの浅い領域の各結晶面で電子線が散乱するが、結晶性試料の場合、電子線は回折し、結晶方位に応じたパターン(EBSDパターン)が現れる。このEBSDパターンをEBSD検出器41で撮影して解析することで試料の結晶方位に関する情報を得ることができ、結晶粒の方位分布、集合組織や結晶相分布を解析することができる。
なおEBSD測定では、隣接する測定点の方位差角の許容角度(トレランス)を設定する必要があるが、本実施形態においてトレランスは1~5°に設定されることが好ましい。
図8(a)乃至(c)は、ルツボ断面のEBSD解析結果の一例を示す図であって、(a)はIQ(Image Quality)マップ、(b)はシグナルマップ、(c)はIQマップ(ND)である。
図8(a)~(c)に示すように、EBSD法によれば各結晶粒の結晶方位を特定することができ、結晶方位ごとに例えば色分けして表示することも可能である。特に図8(a)に示すように、結晶層の断面(図6のXZ平面又はYZ平面)からは筋状の結晶粒界を観察することができ、結晶粒は深さ方向に延びる柱状の配向性を有することが分かる。さらに、IQマップの各結晶粒の面積を結晶方位ごとに集計することにより、結晶粒径の頻度分布を求めることができる。このように、EBSD法によれば、結晶層を構成する結晶粒の平均粒径、粒度分布及び結晶方位を正確に求めることができる。
図9は、EBSD法による測定結果から求めた結晶粒径の頻度分布を示すグラフである。EBSD法によれば、結晶層の表面(図6のXY平面)に垂直な方向(図6のZ軸方向)から評価したときの結晶方位マップから結晶粒径の頻度分布を求めることができ、さらに結晶層を構成する結晶粒の各面方位の面積率を求めることができる。本実施形態において、結晶粒の平均粒径は0.1~100μmであることが好ましく、結晶粒径の頻度分布のピークは0.1~100μmの範囲内にあることが好ましい。図9において、結晶粒の平均粒径は5.5μm、結晶粒径の頻度のピークは3μmである。
結晶層の結晶方位は、X線回折法の測定結果から求めた組織係数に基づいて評価することもできる。組織係数(Texture coefficient)は、結晶質サンプルの配向の大きさを示す係数であり、その値が大きいほど特定の方位の配向性が強いことを示している。サンプルの(hkl)面の組織係数Tc(hkl)は、以下の式で表される。
Figure 0007074180000001
ここで、I(hkl)はサンプルの(hkl)面からのX線の測定強度、Io(hkl)は粉末サンプルの(hkl)面からの標準強度、Nは回折線の数をそれぞれ示している。配向性がないサンプルの場合、Tc(hkl)は1となる。
そして、ルツボ本体10の表面から見た結晶層の各面方位の組織係数TcをX線回折法により測定したとき、当該組織係数Tcの上位1位及び2位が各面方位の組織係数Tcの総和に占める割合(Tc占有率)は50%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。この場合において、組織係数Tcの上位1位及び2位を占める面方位は(200)面と(112)面であることが好ましく、(200)面の組織係数Tc(200)は(112)面の組織係数Tc(112)よりも大きいことが特に好ましい。このように、結晶層の配向性が強い場合には結晶成長を持続させて十分な厚さの結晶層を形成することができ、あるいは厚みが薄くても高い強度を持つ結晶層を形成することができ、これによりルツボの強度を向上させることができる。
このように、結晶層を構成する結晶粒の平均粒径及び面方位が上記条件を満たす場合には、厚みが薄くても高い強度を持つ結晶層を形成することができる。したがって、ルツボの沈み込み等の変形を抑制することができ、単結晶歩留まりを改善することができる。
ルツボ本体10の内面10iに内面塗布膜13Aを形成した場合、ルツボ本体10の内面10iに傷や窪みが形成されることを抑制することができる。内面塗布膜13Aを形成しない場合、多結晶シリコン原料4をルツボ内に充填したとき多結晶シリコン塊の鋭利な先端がルツボ本体10の内面10iに直接接触し、多量の多結晶シリコン原料からの非常に大きな荷重が多結晶シリコン塊の鋭利な先端に集中するため、内面10iに傷や窪みが形成されやすい。しかし、ルツボ本体10の内面10iが内面塗布膜13Aで覆われている場合には、内面10iが直接的に傷つけられる事態を回避してルツボ内面を保護することができる。
多結晶シリコン原料4の溶融工程の初期では、ルツボ本体10の内面10iに傷、窪み等の凹部が形成され、凹部がガスを捕捉している。ルツボ本体10の内面10iに結晶化促進剤を含む塗布膜が形成され、内面10iに圧縮応力がない従来の石英ガラスルツボでは、原料溶融工程の後半に内面10iの結晶化が進み、ルツボ内面の粘性が高くなるため、凹部の形状が維持され、これによりルツボ表面に付着しているガスはルツボ表面から離脱しにくい。こうしてルツボ表面に付着し続けたガスは、結晶引き上げ工程中に表面から離脱して融液中に放出されるため、内面の結晶化が促進されない通常の石英ガラスルツボよりも単結晶中にピンホールが発生しやすい。
内面10iに結晶化促進剤が塗布されていない従来の石英ガラスルツボでは、原料溶融工程の後半でルツボ内面が結晶化しにくく、ガラス質の状態であるため粘度が低く、ルツボ表面に付着しているガスを捕捉する能力が低下するため、原料溶融工程の後半においてルツボ表面に付着しているガスはルツボ表面から離れて放出される。すなわち、内面塗布膜13Aが形成されたルツボは、内面塗布膜13Aが形成されていないルツボよりも長時間の結晶引き上げに耐えられる反面、単結晶中にピンホールを発生させやすい性質を有していると考えられる。
これに対し、内面に圧縮応力が付与された本発明による石英ガラスルツボでは、ルツボ内面が緻密で凹部の数が少なく、凹部の深さも浅いので、凹部がガスをキャッチすることができない。よって単結晶中のピンホール発生率を低減することができる。
図10は、石英ガラスルツボ1の製造方法を示すフローチャートである。また図11は、回転モールド法によるルツボ本体10の製造方法を説明するための模式図である。
図10及び図11に示すように、本実施形態による石英ガラスルツボ1は、内面10iに圧縮応力層Lcが形成されたルツボ本体10をいわゆる回転モールド法により製造した後、ルツボ本体10の内面10iに内面塗布膜13Aを形成することにより製造することができる。回転モールド法によるルツボ本体10の製造では、回転するモールド30の内面30iに、天然シリカ粉16A及び合成シリカ粉16Bを順に堆積させて原料シリカ粉の堆積層16を形成する(ステップS11)。ルツボ本体10の原料として天然シリカ粉のみを用いることも可能である。これらの原料シリカ粉は遠心力によってモールド30の内面30iに張り付いたまま一定の位置に留まり、ルツボの形状に維持される。
次に、モールド30内にアーク電極31を設置し、モールド30の内面30i側から原料シリカ粉の堆積層16をアーク溶融する(ステップS12)。加熱時間、加熱温度等の具体的条件はルツボの原料やサイズなどの条件を考慮して適宜決定する必要がある。このとき、モールド30の内面30iに設けられた多数の通気孔32から原料シリカ粉の堆積層16を吸引することにより、溶融石英ガラス中の気泡量を制御する。具体的には、アーク溶融の開始時にモールド30の内面30iに設けられた多数の通気孔32からの吸引力を強めて透明層11を形成し(ステップS13)、透明層11の形成後に吸引力を弱めて不透明層12を形成する(ステップS14)。
アーク熱は原料シリカ粉の堆積層16の内側から外側に向かって徐々に伝わり原料シリカ粉を融解していくので、原料シリカ粉が融解し始めるタイミングで減圧条件を変えることにより、透明層11と不透明層12とを作り分けることができる。シリカ粉が融解するタイミングで減圧を強める減圧溶融を行えば、アーク雰囲気ガスがガラス中に閉じ込められず、気泡を含まない石英ガラスになる。また、シリカ粉が融解するタイミングで減圧を弱める通常溶融(大気圧溶融)を行えば、アーク雰囲気ガスがガラス中に閉じ込められ、多くの気泡を含む石英ガラスになる。
その後、アーク加熱を終了し、ルツボの内面10iに圧縮応力が残留するようにルツボを冷却する(ステップS15)。急冷方法としては、アーク加熱終了直後にアーク電極をルツボから極力遠ざけると共に、アーク炉内、特にルツボ内面へ冷風を送り込んでルツボ内面を冷却することが好ましい。なお1200℃以下の温度ではSiOの構造変更が起きないので、1200℃以上の高温域での冷却速度が150℃/min以上となるようにルツボを冷却することが好ましく、280~300℃/minの冷却速度が特に好ましい。以上により、ルツボ壁の内側から外側に向かって透明層11及び不透明層12が順に設けられたルツボ本体10が完成する。
次に、こうして製造されたルツボ本体10の内面10iに内面塗布膜13Aを形成する(ステップS16)。上記のように、内面塗布膜13Aは、結晶化促進剤を含む塗布液を塗布し、乾燥させることによって形成することができる。ルツボの表面への結晶化促進剤塗布液の塗布は、刷毛及びスプレーにより行うことができる。塗布後は水等が蒸発し、増粘剤による堅い膜が形成される。
ルツボ本体10に塗布される結晶化促進剤含有塗布液は、バリウム化合物等の結晶化促進剤を含む。結晶化促進剤の平均粒径は0.1~100μmであることが好ましく、0.1~10μmであることがさらに好ましい。また結晶化促進剤の粒径の頻度分布のピークは0.1~100μmの範囲内にあることが好ましく、0.1~10μmの範囲内にあることがさらに好ましい。結晶化促進剤の粒径が0.1μmよりも小さいと成長した結晶粒も小さくなり、持続的な結晶成長が困難となる。また、結晶化促進剤の粒径が100μmよりも大きいか、あるいは結晶化促進剤の小さな粒子が凝集して100μmよりも大きな凝集体となっている場合には、成長した結晶粒も大きくなり、強度が低く剥離しやすくなる。しかし、結晶化促進剤の平均粒径を0.1~100μmにすることにより、結晶層の結晶粒の平均粒径を0.1~100μmにすることができる。
また結晶化促進剤の1次粒子のアスペクト比(長径/短径)は1.0以上10未満であることが好ましく、1.0以上3.0以下であることが特に好ましい。結晶化促進剤の粒子のアスペクト比が10.0以上(針状)の場合、粒子同士が互いに絡み合い、ルツボの表面での分散性が悪くなるからである。
図12は、結晶化促進剤含有塗布液の調製方法を示すフローチャートである。
図12に示すように、結晶化促進剤含有塗布液の調製では、結晶化促進剤の平均粒径及び粒度分布を上記範囲内にするため、超音波照射により結晶化促進剤を解砕する(ステップS21)と共に、溶媒の粘性を100mPa・s以上に調整する(ステップS22)。その後、細粒化した結晶化促進剤を溶媒中に分散させる(ステップS23)。このような調製により、結晶層中の結晶粒の粒度分布及び結晶方位を上記のようにすることができ、結晶層の強度を高めることが可能となる。超音波照射で解砕した結晶化促進剤の粒度分布は、例えばマイクロトラック法で測定することができる。
超音波照射による結晶化促進剤の解砕は、例えば水槽の底に超音波を発振する振動体を設け、液体に浸した結晶化促進剤を破砕し、結晶化促進剤粒子を微細化することにより行うことができる。あるいは、超音波ホモジナイザーなどの発振体を液体に浸し、液体中の結晶化促進剤を微細化してもよい。微細化した結晶化促進剤を含む液体は液体撹拌機能付きの容器に保管され、結晶化促進剤の沈殿がない状態に維持される。微細化した結晶化促進剤を均一に分散させるため、増粘剤を加えて液体の粘度を100mPa・s以上にすることが好ましい。
超音波照射による結晶化促進剤の解砕を実施しない場合、すなわち、結晶化促進剤の粒度分布のピークが100μmを超える状態では、ルツボに塗布された結晶化促進剤の粒径のばらつきが大きく、これにより結晶層の配向の種類が増加する。その結果、特定の結晶方位の占有率を高くすることができなくなり、結晶層の強度が低下する。逆に、超音波照射による結晶化促進剤の解砕を長時間実施した場合、すなわち、結晶化促進剤の粒度分布のピークが0.1μm以下にすると、結晶層の持続的な結晶成長が困難となる。あるいは、結晶化促進剤が凝集して100μmよりも大きな粒子となり、結晶層の配向の種類が増加することもある。
結晶化促進剤含有塗布液は、バリウム化合物と水からなる塗布液であってもよく、水を含まずバリウム化合物と無水エタノールとを含む塗布液であってもよい。バリウム化合物としては炭酸バリウム、塩化バリウム、酢酸バリウム、硝酸バリウム、水酸化バリウム、シュウ酸バリウム、硫酸バリウム等を挙げることができるが、水に不溶のバリウム化合物の方が好ましく、炭酸バリウムが特に好ましい。水酸化バリウムのような水溶性のバリウム化合物を用いた場合には結晶層を構成する結晶粒径の平均値が0.1μm以下となり、結晶粒径が小さくなりすぎて結晶層の強度が逆に弱くなるからである。また水に不溶のバリウムの方が人体に取り込まれ難いので安全性が高く、取り扱いの面で有利である。
結晶化促進剤含有塗布液はカルボキシビニルポリマー等の粘性が高い水溶性高分子(増粘剤)をさらに含むことが好ましい。増粘剤を含まない塗布液を用いる場合にはルツボ壁面への結晶化促進剤の定着が不安定であるため、結晶化促進剤を定着させるための熱処理が必要とされ、このような熱処理を施すと結晶化促進剤が石英ガラスの内部に拡散浸透し、後述する結晶のランダム成長を促進させる要因となる。しかし、結晶化促進剤と共に増粘剤を含む塗布液を用いる場合には、塗布液の粘性が高くなるためルツボに塗布したときに重力等で流れて不均一になることを防止することができる。また、塗布液が水溶性高分子を含む場合には、結晶化促進剤が塗布液中で凝集せず分散し、ルツボ表面に均一に塗布することが可能となる。したがってルツボ壁面に高濃度の結晶化促進剤を均一かつ高密度に定着させることができ、配向性の高い結晶粒の成長を促進させることができる。
増粘剤としては、ポリビニルアルコール、セルロース系増粘剤、高純度グルコマンナン、アクリルポリマー、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の金属不純物が少ない水溶性高分子をあげることができる。また、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリビニルカルボン酸アミド、ビニルカルボン酸アミド等を増粘剤として用いてもよい。塗布液の粘度は、100~10000mPa・sの範囲であることが好ましく、溶媒の沸点は50~100℃であることが好ましい。塗布液の粘度が100mPa・sよりも低いと結晶化促進剤の分散状態を維持することができず、結晶化促進剤が凝集して粒径が大きくなってしまう。しかし、溶媒の粘性が100mPa・s以上であれば、微細化した結晶化促進剤を溶媒中に均一に分散させることができる。
ルツボ本体10の内面10iへの結晶化促進剤塗布液の塗布(ステップS16)は、刷毛及びスプレーにより行うことができる。塗布後は水等が蒸発し、増粘剤による堅い膜が形成される。なお、結晶化促進剤を定着させる目的でルツボの表面温度を200~300℃まで加熱することは好ましくない。結晶化促進剤を含む水あるいはアルコール類を塗布した後、ルツボ表面を100℃以上に加熱すると、ルツボ表面のバリウムが内部に拡散し、結晶核が同時多発的に発生するため、目的の結晶方位にならず、結晶層の強度が得られないからである。
結晶化促進剤含有塗布膜が形成されるルツボ本体10の表層部の結晶化促進剤の濃度は低いことが好ましい。石英ガラスで構成されるルツボ本体10には結晶化促進剤になり得る元素が意図的に添加されておらず、例えば、ルツボ本体10を天然石英粉で構成する場合、ルツボ本体10に含まれるバリウムの濃度は0.10ppm未満、マグネシウムの濃度は0.10ppm未満、カルシウムの濃度は2.0ppm未満であることが好ましい。またルツボ本体10内表面の構成原料に合成石英粉を使用する場合、ルツボ本体10に含まれるマグネシウム及びカルシウムの濃度は共に0.02ppm未満であることが好ましい。
ルツボ本体10中の結晶化促進剤の濃度が高い場合、ルツボ本体10の表層部でランダム成長がおき、結晶化促進剤含有塗布膜中の結晶化促進剤も結晶界面にトラップされるため、結晶化促進剤濃縮層が形成されにくい。しかし、ルツボ本体10の表面に結晶化促進剤含有塗布膜を形成した場合、ルツボ本体10の表面に結晶化促進剤を均一な濃度で局在させることができる。特に、石英ガラス中の結晶化促進剤の濃度が低い場合、ルツボ本体10の表面に高濃度の結晶化促進剤が均一に局在するため、その後の結晶引き上げによって加わる熱によって結晶化が進むときランダム成長にはならず、結晶化促進剤濃縮層が形成されやすい。
以上により、本実施形態による石英ガラスルツボ1が完成する。その後、この石英ガラスルツボ1を用いてシリコン単結晶の引き上げ工程を実施すると、ルツボの表面に上述の結晶粒径及び結晶方位を有する結晶層が形成される。したがって、結晶層の厚みが薄くても割れにくく高い強度を持つ石英ガラスルツボ1を提供することができる。これにより、結晶引き上げ中の高温下で長時間使用しても沈み込み等のルツボの変形を抑制することができ、ルツボ内面にブラウンリング等が発生した場合でもその剥離を防止することができ、シリコン単結晶の歩留まりを改善することができる。
以上説明したように、本実施形態による石英ガラスルツボ1は、ルツボ本体10と、ルツボ本体10の内面10iに形成された結晶化促進剤を含む内面塗布膜13Aとを備え、ルツボ本体10の内面10iが圧縮応力下にあり、当該内面10iに内面塗布膜13Aが形成されているので、従来よりも緻密で強い強度の結晶層を得ることができる。したがって、結晶引き上げ工程中に気泡の発生の起点となる凹凸が少ない石英ガラスルツボ(シリカガラスルツボ)を提供することができる。また、圧縮応力下にある石英ガラスの結晶化速度は速いので、これに結晶化促進剤の作用を加えることで、圧縮応力が解放されない1200℃以下の低い温度で石英ガラスを結晶化させることができる。したがって、圧縮応力による歪みが解放されないうちに内面10iを結晶化させることができ、従来よりも緻密で強い強度の結晶層を得ることができる。
また、本実施形態による石英ガラスルツボ1は、石英ガラスからなる有底円筒状のルツボ本体10と、シリコン単結晶の引き上げ工程中の加熱によってルツボ本体10の内面近傍に内側結晶層14Aが形成されるようにルツボ本体10の内面10iに形成された内面塗布膜13Aとを備え、内側結晶層14Aにおける結晶粒の平均粒径が0.1~100μmであり、結晶粒の頻度分布のピークが0.1~100μmの範囲内にあり、ルツボ本体10の内面側から見た内側結晶層14Aの各面方位の面積率をEBSD法により測定したときの当該面積率の上位1位及び2位の和が50%以上であるので、ルツボの変形を抑えて単結晶歩留まりを向上させることができる。
また、本実施形態による石英ガラスルツボ1の製造方法は、炭酸バリウム等の水に不溶な結晶化促進剤を超音波照射等により解砕した後、増粘剤と共に溶媒中に分散させた粘性が100mPa・s以上の塗布液を用いることにより、ルツボ本体10の表面に良好な結晶化促進剤含有塗布膜を形成することができる。特に、結晶化促進剤の粒径を所定の範囲内として塗布液中に均一に分散させた状態でルツボに塗布するので、結晶化した部分が所定の範囲内で均一な粒径と配向状態になる。したがって、ルツボ本体10の表面に形成される結晶層の強度を高めることができる。
図13は、本発明の第2の実施の形態による石英ガラスルツボの構造を示す略側面断面図である。
図13に示すように、本実施形態による石英ガラスルツボ2の特徴は、ルツボ本体10の内面10i及び外面10oに内面塗布膜13A及び外面塗布膜13Bがそれぞれ形成されている点にある。内面塗布膜13Aと同様に、外面塗布膜13Bは結晶化促進剤を含む膜であり、内面塗布膜13Aと同一の塗布液を用いて形成することができる。この場合、外面塗布膜13Bの厚さは内面塗布膜13Aよりも薄いことが好ましい。
また、ルツボ本体10の外面10oには圧縮応力層Lcが形成されており、外面塗布膜13Bは圧縮応力下にある外面10oに形成されている。そのため、ルツボ本体10の外面10o側にも緻密で強度が強い結晶層を形成することができる。
外面塗布膜13Bもまた、リム上端面10t及び外面10oのうちリム上端近傍を除いた領域に形成されることが好ましい。すなわち、リム上端近傍は、結晶化促進剤が塗布されていない未塗布領域15Bであることが好ましい。リム上端近傍を含む外面全体に外面塗布膜13Bを形成した場合には、リム上端部(上端面)も結晶化し、この結晶化領域から発塵したパーティクルがルツボ内のシリコン融液に混入してシリコン単結晶の歩留まりが低下するおそれがある。しかし、リム上端から下方に一定範囲内に未塗布領域15Bを設けてリム上端部の結晶化を抑制することにより、シリコン単結晶の歩留まりを改善することができる。
未塗布領域15Bは、リム上端から下方に2mm以上40mm以下の範囲内であることが好ましい。未塗布領域15Bの幅が2mmよりも小さい場合には、未塗布領域15Bを設けることによる効果がほとんど得られないからである。また未塗布領域15Bの幅が40mmよりも大きい場合には、外面塗布膜13Bによるルツボ本体10の外面10oの強化が不十分となるからである。
上記のように、結晶引き上げ工程中の石英ガラスルツボ1はカーボンサセプタ8内に収容されているが、石英ガラスルツボ1のリム上端部はカーボンサセプタ8の上端よりも上方に突出しており、カーボンサセプタ8に支持されることなく常に自立状態である(図2参照)。未塗布領域15Bは、このようなカーボンサセプタ8の上端よりも上方に突出する領域に設けられることが好ましい。カーボンサセプタ8と接触しない石英ガラスルツボ1のリム上端部を未塗布領域とすることにより、リム上端部の結晶化による発塵を抑えてシリコン単結晶の歩留まりを改善することができる。
未塗布領域15Bの幅の範囲は、ルツボの側壁部10aの長さの0.02倍~0.1倍であることが好ましい。未塗布領域15Bの幅がルツボの側壁部10aの長さの0.02倍よりも小さい場合には、未塗布領域15Bを設けることによる効果が十分でないからである。また、未塗布領域15Bの幅がルツボの側壁部10aの長さの0.1倍よりも大きい場合には、カーボンサセプタ8によって支持される領域まで未塗布領域を形成することになり、シリコン単結晶の歩留まりの悪化のおそれがあるからである。
ルツボ本体10の外面10o近傍の気泡含有率は5%以下であり、0.8~5%であることが特に好ましい。ルツボ本体10の外面10o近傍の気泡含有率が非常に高い場合、ルツボ本体10の外面10oが結晶化した際に気泡が原因で外側結晶層が発泡・剥離してルツボが変形するおそれがある。しかし、外面10o近傍の気泡含有率が5%以下である場合には、外側結晶層の発泡・剥離によるルツボの変形を防止することができる。2a族の元素を含む結晶化促進剤を用いる場合、石英ガラスの結晶化速度は速いが、結晶成長はある程度の厚さで停止し、結晶成長が長く続くことはない。そのため、ルツボ本体10の外面10o近傍の気泡含有率が5%以下であれば、外側結晶層の発泡・剥離を十分に抑えることができる。外面近傍の気泡含有率が5%よりも高い場合には、結晶層の成長がある程度の厚さで止まったとしても外側結晶層が発泡・剥離する確率が高くなるため、好ましくない。また、気泡含有率が0.8%よりも低い場合には、ルツボ本体10の外面10oに半透明層又は透明層が形成され、ルツボ本体10の保温性・断熱性が低下することになるため、好ましくない。
以上説明したように、本実施形態による石英ガラスルツボ2は、ルツボ本体10の内面10iに内面塗布膜13Aが形成されているだけでなく、外面10oに外面塗布膜13Bが形成されているので、第1の実施の形態による効果に加えて、ルツボの変形による単結晶歩留まりの低下を抑制することができる。
図14は、シリコン単結晶の引き上げに使用された第2の実施の形態による石英ガラスルツボ2の断面図であって、結晶引き上げ工程中の加熱によって表面が結晶化した状態を示す図である。
図14に示すように、結晶化促進剤が塗布された石英ガラスルツボ2の表面には、結晶引き上げ工程中の加熱によって石英ガラスの結晶化が促進され、ルツボ本体10の内面10i及び外面10oに内側結晶層14A及び外側結晶層14Bがそれぞれ形成される。
上記のように、内側結晶層14Aの厚さは200μm以上であり、400μm以上であることが好ましい。単結晶引き上げ中にシリコン融液と接触する内側結晶層14Aは徐々に溶損するが、内側結晶層14Aを徐々に成長させることにより、内側結晶層14Aの厚さを200μm以上にすることができ、400μm以上に維持することも可能である。
一方、外側結晶層14Bの厚さは200μm以上であるが、内側結晶層14Aよりも薄く、結晶粒の配向性は内側結晶層14Aよりも弱いことが好ましい。これにより、結晶成長の持続性を弱めて外側結晶層14Bが過度に厚くなることを防止することができる。したがって、厚い結晶層と石英ガラスとの界面での気泡の膨張による結晶層の剥離を防止することができ、結晶粒界を伝わってクラックが発生することを防止することができる。
内側結晶層14A及び外側結晶層14Bは、第1の実施の形態における内側結晶層14Aと同様の結晶粒径及び結晶方位を有している。内側結晶層14A及び外側結晶層14Bを構成する結晶粒の平均粒径は0.1~100μmであることが好ましく、結晶粒径の頻度分布のピークは0.1~100μmの範囲内にあることが好ましい。また、結晶層を構成する結晶粒の各面方位の面積率の上位1位及び2位の和は50%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。さらに、面積率の上位1位及び2位を占める面方位は(200)面と(112)面であることが好ましい。結晶層が所望の結晶品質を満たすことにより、結晶引き上げ工程中に結晶成長を持続させることができ、ルツボ本体10の強度と共に単結晶歩留まりを向上させることができる。
図15は、本発明の第3の実施の形態による石英ガラスルツボの構造を示す略側面断面図である。
図15に示すように、本実施形態による石英ガラスルツボ3の特徴は、ルツボ本体10の外面10oにのみ外面塗布膜13Bが形成されている点にある。また、ルツボ本体10の内面10i及び外面10oには圧縮応力層Lcが形成されており、外面塗布膜13Bは圧縮応力下にある外面10oに形成されている。
外面塗布膜13Bは、リム上端面10t及び外面10oのうちリム上端近傍を除いた領域に形成されることが好ましい。すなわち、リム上端近傍は、結晶化促進剤が塗布されていない未塗布領域15Bであることが好ましい。未塗布領域15Bは、リム上端から下方に2mm以上40mm以下の範囲内であることが好ましい。
上記のように、結晶引き上げ工程中の石英ガラスルツボ1はカーボンサセプタ8内に収容されているが、石英ガラスルツボ1のリム上端部はカーボンサセプタ8の上端よりも上方に突出しており、カーボンサセプタ8に支持されることなく常に自立状態である(図2参照)。未塗布領域15Bは、このようなカーボンサセプタ8の上端よりも上方に突出する領域に設けられることが好ましい。カーボンサセプタ8と接触しない石英ガラスルツボ1のリム上端部を未塗布領域とすることにより、リム上端部の結晶化による発塵を抑えてシリコン単結晶の歩留まりを改善することができる。
ルツボ本体10の外面10o近傍の気泡含有率は5%以下であり、0.8~5%であることが特に好ましい。ルツボ本体10の外面10o近傍の気泡含有率が5%以下であれば、外側結晶層の発泡・剥離を十分に抑えることができる。また、気泡含有率が0.8%以上であれば、ルツボ本体10の外面10oに半透明層又は透明層が形成されることによる保温性・断熱性の低下を防止することができる。
本実施形態によれば、ルツボ本体10の内面10i及び外面10oの両方に緻密で強度が強い結晶層を形成することができる。またルツボの内面10iに圧縮応力層Lcを形成することにより、ルツボ内面10iに形成される傷、窪み等の凹部の数を少なくすることができ、また凹部の深さを浅くすることができる。
特に、結晶化開始から1200℃までのルツボ内の歪みが解放されない温度帯では、外側結晶層が早く成長することでその厚さが厚くなり、ルツボを内側へ圧縮しようとする力(水平方向への収縮)が加わることで、ルツボ内面側の圧縮応力が強くなり、且つ、内面圧縮層の厚さはさらに厚くなり、ルツボの内面側の強度が向上する。また、1200℃からシリコンの融点まで温度帯では、圧縮・引っ張り応力が解放されるが、外側結晶層の厚みが厚くなっていることでルツボの内倒れ等の変形が抑制される。また、ルツボの外面が変形しない状態で、ルツボ内の多結晶シリコンの荷重によってルツボ内面の圧縮が維持されることでルツボ内面の緻密化が維持されるので、ルツボ内面の強度も維持される。したがって、ルツボの内面でトラップされる気泡を少なくして単結晶中のピンホールの発生を抑制することができる。
図16は、シリコン単結晶の引き上げに使用された石英ガラスルツボ1の断面図であって、結晶引き上げ工程中の加熱によって表面が結晶化した状態を示す図である。
図16に示すように、結晶化促進剤が塗布された石英ガラスルツボ1の表面には、結晶引き上げ工程中の加熱によって石英ガラスの結晶化が促進され、ルツボ本体10の外面10oに外側結晶層14Bが形成される
上記のように、外側結晶層14Bの厚さは200μm以上であるが、内側結晶層14Aよりも薄く、結晶粒の配向性は内側結晶層14Aよりも弱いことが好ましい。これにより、結晶成長の持続性を弱めて外側結晶層14Bが過度に厚くなることを防止することができる。したがって、厚い結晶層と石英ガラスとの界面での気泡の膨張による結晶層の剥離を防止することができ、結晶粒界を伝わってクラックが発生することを防止することができる。
外側結晶層14Bは、第2の実施の形態における外側結晶層14Bと同様の結晶粒径及び結晶方位を有している。外側結晶層14Bを構成する結晶粒の平均粒径は0.1~100μmであることが好ましく、結晶粒径の頻度分布のピークは0.1~100μmの範囲内にあることが好ましい。また、結晶層を構成する結晶粒の各面方位の面積率の上位1位及び2位の和は50%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。さらに、面積率の上位1位及び2位を占める面方位は(200)面と(112)面であることが好ましい。結晶層が所望の結晶品質を満たすことにより、結晶引き上げ工程中に結晶成長を持続させることができ、ルツボ本体10の強度と共に単結晶歩留まりを向上させることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態においては、リム上端部を結晶化促進剤の未塗布領域としているが、内面塗布膜13A及び外面塗布膜13Bをリム上端部にまで形成することも可能である。
<実施例A1>
内面10i及び外面10oが圧縮応力下にあるルツボ本体10の当該内面10iに結晶化促進剤を含む内面塗布膜13Aを形成した実施例A1の石英ガラスルツボを用意した。ただしリム上端面10t及び内面10iのうち上端から下方に20mmまでの内面及び外面は結晶化促進剤の未塗布領域とした。またルツボ本体10の外面10oから深さ2mmまでの外面近傍領域内の気泡含有率は4%であった。
次にこの石英ガラスルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行った後、得られたシリコン単結晶をウェーハ製品に加工し、ピンホール発生率及び単結晶歩留まりを評価した。ピンホール発生率は、1本のシリコン単結晶から取得されたウェーハの総枚数に対するピンホールのあるウェーハの枚数の比であり、ピンホールの有無は目視により検査した。また、単結晶歩留まりは、多結晶シリコン原料の投入重量に対するシリコン単結晶の重量比である。その結果を表1に示す。
Figure 0007074180000002
表1に示すように、石英ガラスルツボを用いて製造されたシリコン単結晶のピンホール発生率は0.21%となり、単結晶歩留まりは86%となった。
<実施例A2>
ルツボ本体10の外面近傍領域内の気泡含有率が8%と高い点以外は実施例A1とほぼ同一の特性を有する石英ガラスルツボを用意し、この石英ガラスルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。その結果、表1に示すように、シリコン単結晶のピンホール発生率は0.22%となり、単結晶歩留まりは79%となった。
<実施例A3>
ルツボ本体10の内面10iには圧縮応力が存在するが外面10oには存在しておらず、外面近傍領域内の気泡含有率が3%である点以外は実施例A1とほぼ同一の特性を有する石英ガラスルツボを用意し、この石英ガラスルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。その結果、表1に示すように、シリコン単結晶のピンホール発生率は0.18%となり、単結晶歩留まりは77%となった。
<実施例A4>
ルツボ本体10のリム上端面及び上端部の内面10i及び外面10oに結晶化促進剤を塗布した点以外は実施例A1とほぼ同一の特性を有する石英ガラスルツボを用意し、この石英ガラスルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。その結果、表1に示すように、シリコン単結晶のピンホール発生率は0.22%となり、単結晶歩留まりは78%となった。
<実施例A5>
ルツボ本体10の内面10iには圧縮応力が存在するが外面10oには存在しておらず、さらにルツボ本体10のリム上端面及び上端部の内面及び外面に結晶化促進剤を塗布した点以外は実施例A1とほぼ同一の特性を有する石英ガラスルツボを用意し、この石英ガラスルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。その結果、表1に示すように、シリコン単結晶のピンホール発生率は0.17%となり、単結晶歩留まりは73%となった。
<実施例A6>
ルツボ本体の外面近傍領域内の気泡含有率が8%と高く、さらにルツボ本体のリム上端面及び上端部の内面及び外面に結晶化促進剤を塗布した点以外は実施例A1とほぼ同一の特性を有する石英ガラスルツボを用意し、この石英ガラスルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。その結果、表1に示すように、シリコン単結晶のピンホール発生率は0.18%となり、単結晶歩留まりは72%となった。
<比較例A1>
ルツボ本体10の内面10i及び外面10oの両方に圧縮応力層が存在しておらず、ルツボ本体10の外面近傍領域内の気泡含有率が9%と高く、さらにルツボ本体10のリム上端面及びリム上端近傍の内面及び外面に結晶化促進剤を塗布した点以外は実施例A1とほぼ同一の特性を有する石英ガラスルツボを用意し、この石英ガラスルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。その結果、表1に示すように、シリコン単結晶のピンホール発生率は4%と高くなり、単結晶歩留まりは55%と非常に低くなった。
以上の結果から、内面10iが圧縮応力下にあるルツボ本体10の当該内面10iに結晶化促進剤含有塗布膜が形成された石英ガラスルツボは、ピンホール発生率及び単結晶歩留まりを向上させることができることが分かった。
<実施例A7>
ルツボの内面10iのみならず外面10oにも結晶化促進剤を含む塗布膜を形成した点以外は実施例A1とほぼ同一の特性を有する石英ガラスルツボを用意し、この石英ガラスルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。その結果、表1に示すように、シリコン単結晶のピンホール発生率は0.14%となり、単結晶歩留まりは88%となった。
<実施例A8>
ルツボの外面10oにのみ結晶化促進剤を含む塗布膜を形成した点以外は実施例A1とほぼ同一の特性を有する石英ガラスルツボを用意し、この石英ガラスルツボを用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。その結果、表1に示すように、シリコン単結晶のピンホール発生率は0.19%となり、単結晶歩留まりは82%となった。
<実施例B1>
(結晶化促進剤塗布条件)
回転モールド法により製造された口径32インチの石英ガラスルツボ本体を用意し、このルツボ本体の内面及び外面に結晶化促進剤を塗布した。結晶化促進剤塗布液は、炭酸バリウム:0.0012g/mL及びカルボキシビニルポリマー:0.0008g/mLをそれぞれ含み、エタノールと純水との割合を調整し、それらを混合・攪拌することにより作製した。炭酸バリウムはその平均粒径が100μm以下となるように超音波照射により解砕した後に溶媒中に混合・撹拌して、結晶化促進剤含有塗布液を作製した。塗布液中の結晶化促進剤粒子の平均粒径は1μm、粒径頻度のピークは2μm、溶液の液体粘性は400mPa・sであった。この塗布液をルツボ本体の内面及び外面に塗布し、乾燥させて、シリコン単結晶引き上げ用石英ガラスルツボのサンプル(実施例B1a)を完成させた。
(評価条件)
次にこのルツボサンプルを用いてCZ法によるシリコン単結晶の引き上げ工程を行った。引き上げ終了後、使用済みのルツボサンプルの沈み込み量を測定したところ、表2に示すように、ルツボ上端の沈み込み量は約2mmであった。また単結晶歩留まり(投入原料に対する引き上げ単結晶の重量比)は86%となり、70%を上回る良好な結果となった。
(EBSDによる結晶性評価)
次に、使用済みのルツボサンプルの表面に形成された結晶層の状態をEBSD法により評価した。EBSD法による結晶解析にはショットキー電解放出型走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM-7800FPRIME)を用いた。方位差角の許容角度(トレランス)は5°に設定した。その結果、表2に示すように、結晶粒の平均粒径は0.11μmとなり、結晶粒径の頻度分布のピークは0.18μmとなった。さらに、面方位の面積率の上位3位は、(200)面:30.5%、(112)面:23.6%、(113)面:16.2%となった。上位1位及び2位を占める(200)面及び(112)面の面積率の総和は54%となり、結晶粒の配向性は高かった。
Figure 0007074180000003
(X線回折法による結晶性評価)
ルツボサンプル(実施例B1a)と同じ条件で製造した別のルツボサンプル(実施例B1b)を用いてCZ法によるシリコン単結晶の引き上げ工程を行った。引き上げ終了後、使用済みのルツボサンプルの沈み込み量を測定したところ、表3に示すように、ルツボ上端の沈み込み量は約1mmであった。また単結晶歩留まりは88%となり、70%を上回る良好な結果となった。さらに、使用済みのルツボサンプルをEBSD法により評価したところ、表3に示すように、結晶粒の平均粒径は0.13μmとなり、結晶粒径の頻度分布のピークは0.19μmとなった。
次に、ルツボサンプル(実施例B1b)の表面に形成された結晶層の状態をX線回折法により評価した。X線回折法による評価では、株式会社リガク製のX線回折装置RINT2500を用い、ターゲット:Cu(λ=1.5418nm)、走査軸:2θ、測定方法:連続、2θ角走査範囲:10~70°、受光スリット:0.15mm、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、サンプリング幅:0.02°、スキャンスピード:10°/minとした。X線で評価している表面からの深さ(検出深さ)はX線の入射角により可変であるが、ここでは数nm~数十μmとした。X線は結晶層が形成されているサンプルの表面に対して垂直に照射した。
次に、測定結果に基づいて結晶層の組織係数Tcを計算した。その結果、面方位の組織係数Tcの上位3位は、Tc(200):33.5%、Tc(112):30.3%、Tc(113):12.6%、となった。そして表3に示すように、上位1位及び2位を占めるTc占有率は64%となり、X線回折法による測定結果からも配向性が高いことを確認できた。
Figure 0007074180000004
<実施例B2>
実施例B1とは異なる結晶化促進剤の塗布条件によりルツボを製造し、このルツボサンプル(実施例B2a)を用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。塗布液中の結晶化促進剤粒子の平均粒径は8μm、粒径頻度のピークは10μm、溶液の液体粘性は400mPa・sであった。その結果、ルツボの沈み込み量は約3mmであった。また、単結晶歩留まりは83%となり、70%を上回る良好な結果となった。
この使用済みのルツボサンプルの結晶層をEBSD法により評価したところ、結晶粒の平均粒径が8.1μmであり、結晶粒径の頻度分布のピークが8.4μmであった。また、面方位の面積率の上位3位は、(200)面:34.8%、(112)面:32.0%、(113)面:10.7%となった。そして上位1位及び2位を占める面方位の面積率の合計は67%となり、結晶粒の配向性は高かった。
ルツボサンプル(実施例B2a)と同じ条件で製造した別のルツボサンプル(実施例B2b)を用いてCZ法によるシリコン単結晶の引き上げ工程を行った後、使用済みのルツボサンプルの沈み込み量を測定したところ、表3に示すように、ルツボ上端の沈み込み量は約3mmであった。また単結晶歩留まりは84%となり、70%を上回る良好な結果となった。さらに、使用済みのルツボサンプルをEBSD法により評価したところ、表3に示すように、結晶粒の平均粒径は7.8μmとなり、結晶粒径の頻度分布のピークは7.4μmとなった。
次に、この使用済みのルツボサンプルをX線回折法により評価したところ、結晶層の面方位の組織係数Tcの上位3位は、Tc(200):39.2%、Tc(112):31.9%、Tc(113):9.7%となった。そして、上位1位及び2位を占めるTc占有率は71%となり、結晶粒の配向性が高いことがX線回折法による測定結果からも確認できた。
<実施例B3>
実施例B1、B2とは異なる結晶化促進剤の塗布条件によりルツボを製造し、このルツボサンプル(実施例B3a)を用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。塗布液中の結晶化促進剤粒子の平均粒径は20μm、粒径頻度のピークは30μm、溶液の液体粘性は400mPa・sであった。その結果、ルツボの沈み込み量は約3mmであった。また、単結晶歩留まりは84%となり、70%を上回る良好な結果となった。
この使用済みのルツボサンプルの結晶層をEBSD法により評価したところ、結晶粒の平均粒径が94μmであり、結晶粒径の頻度分布のピークが84μmであった。また、面方位の面積率の上位3位は、(200)面:42.1%、(112)面:37.1%、(113)面:7.3%となった。そして上位1位及び2位を占める面方位の面積率の合計は79%となり、結晶粒の配向性は非常に高かった。
ルツボサンプル(実施例B3a)と同じ条件で製造した別のルツボサンプル(実施例B3b)を用いてCZ法によるシリコン単結晶の引き上げ工程を行った後、使用済みのルツボサンプルの沈み込み量を測定したところ、表3に示すように、ルツボ上端の沈み込み量は約2mmであった。また単結晶歩留まりは88%となり、70%を上回る良好な結果となった。さらに、使用済みのルツボサンプルをEBSD法により評価したところ、表3に示すように、結晶粒の平均粒径は97μmとなり、結晶粒径の頻度分布のピークは91μmとなった。
次に、この使用済みのルツボサンプルをX線回折法により評価したところ、結晶層の面方位の組織係数Tcの上位3位は、Tc(200):41.1%、Tc(112):39.0%、Tc(113):6.8%となった。そして、上位1位及び2位を占めるTc占有率は80%となり、結晶粒の配向性が非常に高いことがX線回折法による測定結果からも確認できた。
<実施例B4>
実施例B1~B3とは異なる結晶化促進剤の塗布条件によりルツボを製造し、このルツボサンプル(実施例B4a)を用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。塗布液中の結晶化促進剤粒子の平均粒径は1μm、粒径頻度のピークは3μm,溶液の液体粘性は90mPa・sであった。その結果、ルツボの沈み込み量は約11mmであった。また、単結晶歩留まりは76%となり、70%を上回る良好な結果となった。
この使用済みのルツボサンプルの結晶層をEBSD法により評価したところ、結晶粒の平均粒径が0.53μmであり、結晶粒径の頻度分布のピークが0.48μmであった。また、面方位の面積率の上位3位は、(200)面:25.9%、(112)面:25.5%、(113)面:15.1%となった。そして上位1位及び2位を占める面方位の面積率の合計は51%となり、結晶粒の配向性は少し低かった。
ルツボサンプル(実施例B4a)と同じ条件で製造した別のルツボサンプル(実施例B4b)を用いてCZ法によるシリコン単結晶の引き上げ工程を行った後、使用済みのルツボサンプルの沈み込み量を測定したところ、表3に示すように、ルツボ上端の沈み込み量は約9mmであった。また単結晶歩留まりは81%となり、70%を上回る良好な結果となった。さらに、使用済みのルツボサンプルをEBSD法により評価したところ、表3に示すように、結晶粒の平均粒径は0.49μmとなり、結晶粒径の頻度分布のピークは0.49μmとなった。
次に、この使用済みのルツボサンプルをX線回折法により評価したところ、結晶層の面方位の組織係数Tcの上位3位は、Tc(200):16.8%、Tc(112):16.2%、Tc(113):16.0%となった。そして、上位1位及び2位を占めるTc占有率は33%となり、結晶粒の配向性が少し低いことがX線回折法による測定結果からも確認できた。
<実施例B5>
実施例B1~B4とは異なる結晶化促進剤の塗布条件によりルツボを製造し、このルツボサンプル(実施例B5a)を用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。塗布液中の結晶化促進剤粒子の平均粒径は8μm、粒径頻度のピークは9μm、溶液の液体粘性は80mPa・sであった。その結果、ルツボの沈み込み量は約15mmであった。また、単結晶歩留まりは74%となり、70%を上回る良好な結果となった。
この使用済みのルツボサンプルの結晶層をEBSD法により評価したところ、結晶粒の平均粒径が79μmであり、結晶粒径の頻度分布のピークが76μmであった。また、面方位の面積率の上位3位は、(200)面:15.7%、(112)面:14.6%、(113)面:14.2%となった。そして上位1位及び2位を占める面方位の面積率の合計は30%となり、結晶粒の配向性は低かった。
ルツボサンプル(実施例B5a)と同じ条件で製造した別のルツボサンプル(実施例B5b)を用いてCZ法によるシリコン単結晶の引き上げ工程を行った後、使用済みのルツボサンプルの沈み込み量を測定したところ、表3に示すように、ルツボ上端の沈み込み量は約9mmであった。また単結晶歩留まりは79%となり、70%を上回る良好な結果となった。さらに、使用済みのルツボサンプルをEBSD法により評価したところ、表3に示すように、結晶粒の平均粒径は77μmとなり、結晶粒径の頻度分布のピークは75μmとなった。
次に、この使用済みのルツボサンプルをX線回折法により評価したところ、結晶層の面方位の組織係数Tcの上位3位は、Tc(200):27.7%、Tc(112):23.7%、Tc(113):14.0%となった。そして、上位1位及び2位を占めるTc占有率は51%となり、結晶粒の配向性が少し低いことがX線回折法による測定結果からも確認できた。
<実施例B6>
実施例B1~B5とは異なる結晶化促進剤の塗布条件によりルツボを製造し、このルツボサンプル(実施例B6a)を用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。塗布液中の結晶化促進剤粒子の平均粒径は1μm、粒径頻度のピークは3μm、溶液の液体粘性は30mPa・sであった。その結果、ルツボの沈み込み量は約14mmであった。また、単結晶歩留まりは72%となった。
この使用済みのルツボサンプルの結晶層をEBSD法により評価したところ、結晶粒の平均粒径が0.53μmであり、結晶粒径の頻度分布のピークが0.48μmであった。また、面方位の面積率の上位3位は、(200)面:33.6%、(202)面:32.1%、(112)面:11.2%となった。そして上位1位及び2位を占める面方位の面積率の合計は66%となり、結晶粒の配向性は高かった。
ルツボサンプル(実施例B6a)と同じ条件で製造した別のルツボサンプル(実施例B6b)を用いてCZ法によるシリコン単結晶の引き上げ工程を行った後、使用済みのルツボサンプルの沈み込み量を測定したところ、表3に示すように、ルツボ上端の沈み込み量は約13mmであった。また単結晶歩留まりは74%となり、70%を上回る良好な結果となった。さらに、使用済みのルツボサンプルをEBSD法により評価したところ、表3に示すように、結晶粒の平均粒径は0.53μmとなり、結晶粒径の頻度分布のピークは0.48μmとなった。
次に、この使用済みのルツボサンプルをX線回折法により評価したところ、結晶層の面方位の組織係数Tcの上位3位は、Tc(200)面:36.4%、Tc(202)面:34.9%、Tc(112)面:9.2%となった。そして、上位1位及び2位を占めるTc占有率は71%となり、結晶粒の配向性が高いことがX線回折法による測定結果からも確認できた。
<実施例B7>
実施例B1~B6とは異なる結晶化促進剤の塗布条件によりルツボを製造し、このルツボサンプル(実施例B7a)を用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。塗布液中の結晶化促進剤粒子の平均粒径は160μm、粒径頻度のピークは150μm、溶液の液体粘性は50mPa・sであり、結晶化促進剤の表面密度のばらつきが大きかった。その結果、ルツボの沈み込み量は約10mmであった。また、単結晶歩留まりは75%となり、70%を上回る結果となった。
この使用済みのルツボサンプルの結晶層をEBSD法により評価したところ、結晶粒の平均粒径が0.89μmであり、結晶粒径の頻度分布のピークが0.76μmであった。また、面方位の面積率の上位3位は、(200)面:34.5%、(112)面:36.6%、(113)面:8.1%となった。そして上位1位及び2位を占める面方位の面積率の合計は71%となり、結晶粒の配向性は高かった。
ルツボサンプル(実施例B7a)と同じ条件で製造した別のルツボサンプル(実施例B7b)を用いてCZ法によるシリコン単結晶の引き上げ工程を行った後、使用済みのルツボサンプルの沈み込み量を測定したところ、表3に示すように、ルツボ上端の沈み込み量は約14mmであった。また単結晶歩留まりは73%となり、70%を上回る良好な結果となった。さらに、使用済みのルツボサンプルをEBSD法により評価したところ、表3に示すように、結晶粒の平均粒径は0.86μmとなり、結晶粒径の頻度分布のピークは0.81μmとなった。
次に、この使用済みのルツボサンプルをX線回折法により評価したところ、結晶層の面方位の組織係数Tcの上位3位は、Tc(200):35.9%、Tc(112):37.9%、Tc(113):7.8%となった。そして、上位1位及び2位を占めるTc占有率は74%となり、結晶粒の配向性が高いことがX線回折法による測定結果からも確認できた。
<比較例B1>
実施例B1~B7とは異なる結晶化促進剤の塗布条件によりルツボを製造した。具体的には、結晶化促進剤の超音波破砕を長時間行って粒子を微細化して塗布液を作成した。そのため、塗布液中の結晶化促進剤粒子の平均粒径は0.5μm、粒径頻度のピークは0.5μmであった。その後、このルツボサンプル(比較例B1a)を用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。その結果、ルツボの沈み込み量は約37mmとなり、沈み込み量が非常に大きくなった。また、単結晶歩留まりは42%となり、70%を大幅に下回る結果となった。
この使用済みのルツボサンプルの結晶層をEBSD法により評価したところ、結晶粒の平均粒径が0.07μmであり、結晶粒径の頻度分布のピークが0.06μmであり、結晶粒径が非常に小さかった。また、面方位の面積率の上位3位は、(200)面:26.1%、(112)面:25.2%、(113)面:15.2%となった。そして上位1位及び2位を占める面方位の面積率の合計は51%となり、結晶粒の配向性は少し高かった。
ルツボサンプル(比較例B1a)と同じ条件で製造した別のルツボサンプル(比較例B1b)を用いてCZ法によるシリコン単結晶の引き上げ工程を行った後、使用済みのルツボサンプルの沈み込み量を測定したところ、表3に示すように、ルツボ上端の沈み込み量は約31mmであった。また単結晶歩留まりは41%となり、70%を下回る結果となった。さらに、使用済みのルツボサンプルをEBSD法により評価したところ、表3に示すように、結晶粒の平均粒径は0.08μmとなり、結晶粒径の頻度分布のピークは0.08μmとなった。
次に、この使用済みのルツボサンプルをX線回折法により評価したところ、結晶層の面方位の組織係数Tcの上位3位は、Tc(200):26.7%、Tc(112):26.1%、Tc(113):14.0%となった。そして、上位1位及び2位を占めるTc占有率は53%となり、結晶粒の配向性が少し高いことがX線回折法による測定結果からも確認できた。
<比較例B2>
実施例B1~B7並びに比較例B1とは異なる結晶化促進剤の塗布条件によりルツボを製造した。結晶化促進剤の超音波破砕を行わなかったため、塗布液中の結晶化促進剤粒子の平均粒径は110μm、粒径頻度のピークは150μmであった。その後、このルツボサンプル(比較例B2a)を用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。その結果、ルツボの沈み込み量は約33mmとなり、沈み込み量が非常に大きくなった。また、単結晶歩留まりは38%となり、70%を大幅に下回る結果となった。
この使用済みのルツボサンプルの結晶層をEBSD法により評価したところ、結晶粒の平均粒径が110μmであり、結晶粒径の頻度分布のピークが112μmであり、結晶粒径が非常に大きかった。また、面方位の面積率の上位3位は、(200)面:31.8%、(112)面:28.0%、(113)面:14.2%なった。そして上位1位及び2位を占める面方位の面積率の合計は60%となり、結晶粒の配向性は少し高かった。
ルツボサンプル(比較例B2a)と同じ条件で製造した別のルツボサンプル(比較例B2b)を用いてCZ法によるシリコン単結晶の引き上げ工程を行った後、使用済みのルツボサンプルの沈み込み量を測定したところ、表3に示すように、ルツボ上端の沈み込み量は約38mmであった。また単結晶歩留まりは33%となり、70%を下回る結果となった。さらに、使用済みのルツボサンプルをEBSD法により評価したところ、表3に示すように、結晶粒の平均粒径は108μmとなり、結晶粒径の頻度分布のピークは112μmとなった。
次に、この使用済みのルツボサンプルをX線回折法により評価したところ、結晶層の面方位の組織係数Tcの上位3位は、(200)面:28.2%、(112)面:26.8%、(113)面:16.2%となった。そして、上位1位及び2位を占めるTc占有率は55%となり、結晶粒の配向性が少し高いことがX線回折法による測定結果からも確認できた。
1,2,3 石英ガラスルツボ
4 多結晶シリコン原料
5 シリコン融液
5a 液面(初期液面位置)
6 ヒーター
8 カーボンサセプタ
10 石英ガラスルツボ本体(ルツボ本体)
10a ルツボ本体の側壁部
10b ルツボ本体の底部
10c ルツボ本体のコーナー部
10i ルツボ本体の内面
10o ルツボ本体の外面
10t ルツボ本体のリム上端面
11 透明層
12 不透明層
13A 内面塗布膜
13B 外面塗布膜
14A 内側結晶層
14B 外側結晶層
15A 未塗布領域
15B 未塗布領域
16 原料シリカ粉の堆積層
16A 天然シリカ粉
16B 合成シリカ粉
20 歪み測定器
21 偏光板(偏光子)
22 偏光板(検光子)
23 ルツボ片
24 1/4波長板
25 光源
30 モールド
30i モールドの内面
31 アーク電極
32 通気孔
40 EBSD装置
41 EBSD検出器
42 試料
43 電子線
Lc 圧縮応力層
Lt 引っ張り応力層

Claims (25)

  1. 円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、前記底部よりも高い曲率を有し前記側壁部と前記底部とを連接するコーナー部とを有する石英ガラスルツボ本体と、
    結晶化促進剤を含み、前記石英ガラスルツボ本体の内面に形成された内面塗布膜とを備え、
    前記石英ガラスルツボ本体の前記内面が圧縮応力下にあり、
    シリコン単結晶引き上げ工程中に加熱された前記内面塗布膜の作用により前記石英ガラスルツボ本体の内面近傍に形成される内側結晶層に含まれる結晶粒の平均粒径が0.1~100μmであり、
    前記結晶粒の頻度分布のピークが0.1~100μmの範囲内にあり、
    前記石英ガラスルツボ本体の内面側から見た前記内側結晶層の各面方位の面積率の上位1位及び2位の和が50%以上であり、
    前記石英ガラスルツボ本体の内面側から見た前記内側結晶層の各面方位の組織係数TcをX線回折法により測定したときの当該組織係数Tcの上位1位及び2位が各面方位の組織係数Tcの総和に占める割合(Tc占有率)が50%以上であることを特徴とする石英ガラスルツボ。
  2. 前記内面塗布膜は、前記結晶化促進剤を含み、SiOと二成分系以上のガラスを形成する化合物を含む、請求項1に記載の石英ガラスルツボ。
  3. 前記結晶化促進剤がバリウム化合物である、請求項1又は2に記載の石英ガラスルツボ。
  4. 前記内面塗布膜が高分子を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
  5. 前記結晶化促進剤は前記石英ガラスルツボ本体の前記内面のみに塗布されており、前記石英ガラスルツボ本体の外面には塗布されていない、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
  6. 前記石英ガラスルツボ本体のリム上端面及び前記石英ガラスルツボ本体の前記内面のうちリム上端から下方に2~40mmの範囲内には、前記結晶化促進剤の未塗布領域が設けられており、前記内面塗布膜は前記未塗布領域を除いた前記石英ガラスルツボ本体の前記内面の全面に形成されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
  7. 前記結晶化促進剤を含み、前記石英ガラスルツボ本体の外面に形成された外面塗布膜をさらに備え、
    前記石英ガラスルツボ本体の前記外面が圧縮応力下にある、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
  8. 前記外面塗布膜は、前記結晶化促進剤を含み、SiOと二成分系以上のガラスを形成する化合物を含む、請求項7に記載の石英ガラスルツボ。
  9. 前記石英ガラスルツボ本体の前記外面のうちリム上端から下方に2~40mmの範囲内には、前記結晶化促進剤の未塗布領域が設けられている、請求項7又は8に記載の石英ガラスルツボ。
  10. 前記石英ガラスルツボ本体の前記外面近傍の気泡含有率は0.8%以上5%以下である、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
  11. シリコン単結晶引き上げ工程中に加熱された前記外面塗布膜の作用により前記石英ガラスルツボ本体の外面近傍に形成される外側結晶層に含まれる結晶粒の平均粒径が0.1~100μmであり、
    前記結晶粒の頻度分布のピークが0.1~100μmの範囲内にあり、
    前記石英ガラスルツボ本体の外面側から見た前記外側結晶層の各面方位の面積率の上位1位及び2位の和が50%以上である、請求項7乃至10のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
  12. 前記石英ガラスルツボ本体の外面側から見た前記外側結晶層の各面方位の組織係数TcをX線回折法により測定したときの当該組織係数Tcの上位1位及び2位が各面方位の組織係数Tcの総和に占める割合(Tc占有率)が50%以上である、請求項11に記載の石英ガラスルツボ。
  13. 前記結晶化促進剤の平均粒径が0.1~100μmであり、
    前記結晶化促進剤の粒径の頻度分布のピークが0.1~100μmの範囲内にある、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
  14. 前記石英ガラスルツボ本体は、気泡を含まない石英ガラスからなり、前記石英ガラスルツボ本体の前記内面を構成する透明層と、多数の微小な気泡を含む石英ガラスからなり、前記透明層の外側に設けられた不透明層とを備える、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
  15. 前記石英ガラスルツボ本体に含まれるバリウムの濃度は0.1ppm未満、マグネシウムの濃度は0.1ppm未満、カルシウムの濃度は2.0ppm未満である、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
  16. 円筒状の側壁部と、湾曲した底部と、前記底部よりも高い曲率を有し前記側壁部と前記底部とを連接するコーナー部とを有する石英ガラスルツボ本体と、
    結晶化促進剤を含み、前記石英ガラスルツボ本体の外面に形成された外面塗布膜とを備え、
    前記石英ガラスルツボ本体の前記外面及び内面が圧縮応力下にあり、
    シリコン単結晶引き上げ工程中に加熱された前記外面塗布膜の作用により前記石英ガラスルツボ本体の外面近傍に形成される外側結晶層に含まれる結晶粒の平均粒径が0.1~100μmであり、
    前記結晶粒の頻度分布のピークが0.1~100μmの範囲内にあり、
    前記石英ガラスルツボ本体の外面側から見た前記外側結晶層の各面方位の面積率の上位1位及び2位の和が50%以上であり、
    前記石英ガラスルツボ本体の外面側から見た前記外側結晶層の各面方位の組織係数TcをX線回折法により測定したときの当該組織係数Tcの上位1位及び2位が各面方位の組織係数Tcの総和に占める割合(Tc占有率)が50%以上であることを特徴とする石英ガラスルツボ。
  17. 前記外面塗布膜は、前記結晶化促進剤を含み、SiOと二成分系以上のガラスを形成する化合物を含む、請求項16に記載の石英ガラスルツボ。
  18. 前記結晶化促進剤がバリウム化合物である、請求項16又は17に記載の石英ガラスルツボ。
  19. 前記外面塗布膜が高分子を含む、請求項16乃至18のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
  20. 前記結晶化促進剤は前記石英ガラスルツボ本体の前記外面のみに塗布されており、前記石英ガラスルツボ本体の前記内面には塗布されていない、請求項16乃至19のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
  21. 前記石英ガラスルツボ本体の前記外面のうちリム上端から下方に2~40mmの範囲内には、前記結晶化促進剤の未塗布領域が設けられており、前記外面塗布膜は前記未塗布領域を除いた前記石英ガラスルツボ本体の前記外面の全面に形成されている、請求項16乃至20のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
  22. 前記石英ガラスルツボ本体の前記外面近傍の気泡含有率は0.8%以上5%以下である、請求項16乃至21のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
  23. 前記結晶化促進剤の平均粒径が0.1~100μmであり、
    前記結晶化促進剤の粒径の頻度分布のピークが0.1~100μmの範囲内にある、請求項16乃至22のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
  24. 前記石英ガラスルツボ本体に含まれるバリウムの濃度は0.1ppm未満、マグネシウムの濃度は0.1ppm未満、カルシウムの濃度は2.0ppm未満である、請求項16乃至23のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ。
  25. 請求項1乃至24のいずれか一項に記載の石英ガラスルツボ内でシリコン原料を加熱してシリコン融液を生成し、前記シリコン融液からシリコン単結晶を引き上げることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
JP2020501693A 2018-02-23 2019-02-13 石英ガラスルツボ及びこれを用いたシリコン単結晶の製造方法 Active JP7074180B2 (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018030404 2018-02-23
JP2018030404 2018-02-23
JP2018187506 2018-10-02
JP2018187506 2018-10-02
PCT/JP2019/004974 WO2019163593A1 (ja) 2018-02-23 2019-02-13 石英ガラスルツボ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2019163593A1 JPWO2019163593A1 (ja) 2021-02-04
JP7074180B2 true JP7074180B2 (ja) 2022-05-24

Family

ID=67688243

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020501693A Active JP7074180B2 (ja) 2018-02-23 2019-02-13 石英ガラスルツボ及びこれを用いたシリコン単結晶の製造方法

Country Status (6)

Country Link
US (2) US11466381B2 (ja)
JP (1) JP7074180B2 (ja)
KR (1) KR102408990B1 (ja)
CN (1) CN111936677B (ja)
TW (1) TWI701362B (ja)
WO (1) WO2019163593A1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20240011183A1 (en) * 2020-12-18 2024-01-11 Sumco Corporation Quartz glass crucible, manufacturing method therefor, and method for manufacturing silicon single crystal
CN115108816A (zh) * 2021-03-23 2022-09-27 新沂市中鑫光电科技有限公司 一种高强高韧石英坩埚添加剂

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002029890A (ja) 2000-07-19 2002-01-29 Wacker Nsce Corp シリコン単結晶引き上げ用石英ガラスルツボ
JP2008507467A (ja) 2004-07-23 2008-03-13 エムイーエムシー・エレクトロニック・マテリアルズ・インコーポレイテッド 部分的に失透化させたルツボ
JP2012091969A (ja) 2010-10-27 2012-05-17 Kuramoto Seisakusho Co Ltd 石英ガラスルツボとその製造方法およびシリコン単結晶の製造方法
US20140352605A1 (en) 2013-05-31 2014-12-04 Heraeus Shin-Etsu America, Inc. Method for making barium-doped crucible and crucible made thereby
WO2017110763A1 (ja) 2015-12-21 2017-06-29 株式会社Sumco シリカガラスルツボ、シリカガラスルツボの製造方法、シリコン単結晶の引き上げ装置、インゴットおよびホモエピタキシャルウェーハ

Family Cites Families (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6025278B2 (ja) 1981-10-23 1985-06-17 株式会社東芝 光学的情報記録媒体
JP3100836B2 (ja) 1994-06-20 2000-10-23 信越石英株式会社 石英ガラスルツボとその製造方法
JP4054434B2 (ja) 1998-03-31 2008-02-27 コバレントマテリアル株式会社 シリコン単結晶引上げ用石英ガラスルツボおよびその製造方法
JPH11292695A (ja) 1998-04-14 1999-10-26 Nippon Steel Corp シリコン単結晶引き上げ用石英ルツボ
JP4288646B2 (ja) * 2001-10-16 2009-07-01 ジャパンスーパークォーツ株式会社 石英ガラスルツボの表面改質方法と表面改質ルツボ
JP4004783B2 (ja) 2001-11-26 2007-11-07 シルトロニック・ジャパン株式会社 単結晶成長用石英ルツボ
DE10217946A1 (de) 2002-04-22 2003-11-13 Heraeus Quarzglas Quarzglastiegel und Verfahren zur Herstellung desselben
JP4517953B2 (ja) 2005-06-22 2010-08-04 株式会社Sumco シリコン単結晶の製造方法
US9139932B2 (en) 2006-10-18 2015-09-22 Richard Lee Hansen Quartz glass crucible and method for treating surface of quartz glass crucible
JP5042971B2 (ja) 2008-11-28 2012-10-03 株式会社Sumco シリコン単結晶引き上げ用石英ガラスルツボ及びその製造方法
JP5043048B2 (ja) 2009-01-21 2012-10-10 株式会社Sumco シリコン単結晶引き上げ用石英ガラスルツボ及びその製造方法
US8656741B2 (en) * 2010-05-25 2014-02-25 Emhart Glass S.A. Base cooling nozzle for a post-manufacture glass container thermal strengthening station
WO2014192163A1 (ja) 2013-05-31 2014-12-04 株式会社Sumco シリコン単結晶引き上げ用シリカガラスルツボ及びその製造方法
TWI588114B (zh) * 2014-08-05 2017-06-21 興亞玻璃股份有限公司 白色玻璃容器及其製造方法
SG11201811126SA (en) 2016-09-23 2019-01-30 Sumco Corp Quartz glass crucible, manufacturing method thereof, and manufacturing method of silicon single crystal using quartz glass crucible

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002029890A (ja) 2000-07-19 2002-01-29 Wacker Nsce Corp シリコン単結晶引き上げ用石英ガラスルツボ
JP2008507467A (ja) 2004-07-23 2008-03-13 エムイーエムシー・エレクトロニック・マテリアルズ・インコーポレイテッド 部分的に失透化させたルツボ
JP2012091969A (ja) 2010-10-27 2012-05-17 Kuramoto Seisakusho Co Ltd 石英ガラスルツボとその製造方法およびシリコン単結晶の製造方法
US20140352605A1 (en) 2013-05-31 2014-12-04 Heraeus Shin-Etsu America, Inc. Method for making barium-doped crucible and crucible made thereby
WO2017110763A1 (ja) 2015-12-21 2017-06-29 株式会社Sumco シリカガラスルツボ、シリカガラスルツボの製造方法、シリコン単結晶の引き上げ装置、インゴットおよびホモエピタキシャルウェーハ

Also Published As

Publication number Publication date
KR102408990B1 (ko) 2022-06-14
US20220411956A1 (en) 2022-12-29
US11466381B2 (en) 2022-10-11
TWI701362B (zh) 2020-08-11
TW201938849A (zh) 2019-10-01
JPWO2019163593A1 (ja) 2021-02-04
CN111936677B (zh) 2022-07-15
KR20200106528A (ko) 2020-09-14
CN111936677A (zh) 2020-11-13
WO2019163593A1 (ja) 2019-08-29
US20210140063A1 (en) 2021-05-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR102213151B1 (ko) 석영 유리 도가니 및 그 제조 방법과 석영 유리 도가니를 이용한 실리콘 단결정의 제조 방법
US20220411956A1 (en) Quartz glass crucible
JP7070719B2 (ja) シリコン単結晶の製造方法
US9758901B2 (en) Vitreous silica crucible for pulling of silicon single crystal and method for manufacturing the same
JP2007197230A (ja) 酸化アルミニウム単結晶の製造方法及びこの方法を用いて得られる酸化アルミニウム単結晶
JP4726138B2 (ja) 石英ガラスルツボ
WO2022131047A1 (ja) 石英ガラスルツボ及びその製造方法並びにシリコン単結晶の製造方法
JP7279722B2 (ja) 石英ガラスルツボ及びこれを用いたシリコン単結晶の製造方法
JP6922982B2 (ja) 石英ガラスルツボ

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200813

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200813

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210706

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210902

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220118

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220119

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220412

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220425

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7074180

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150