以下、添付図面を参照して、定着装置、および画像形成装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態における画像形成装置全体の構成・動作について説明する図である。図1に示すように、本実施の形態における画像形成装置1は、タンデム型カラープリンタである。
画像形成装置本体1の上方にあるボトル収容部101には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。ボトル収容部101の下方には、中間転写ユニット85が配設されている。その中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。各作像部4Y、4M、4C、4Kには、それぞれ、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kが配設されている。
また、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの周囲には、それぞれ、帯電部75、現像部76、クリーニング部77、除電部(不図示である。)等が配設されている。
そして、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)がおこなわれて、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に各色の画像が形成されることになる。
感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、不図示の駆動モータによって図1中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電部75の位置で、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が一様に帯電される(帯電工程である。)。その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、現像装置76との対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、各色のトナー像が形成される(現像工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78及び第1転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(1次転写工程である。)。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、クリーニング部77との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に残存した未転写トナーがクリーニング部77のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程である。)。
最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト78上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト78上にカラー画像が形成される。
ここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78、4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング部80、等で構成される。中間転写ベルト78は、3つのローラ82~84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ82の回転駆動によって図1中の矢印方向に無端移動される。
4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kは、それぞれ、中間転写ベルト78を感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kに、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。そして、中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト78は、2次転写ローラ89との対向位置に達する。
この位置では、2次転写バックアップローラ82が、2次転写ローラ89との間に中間転写ベルト78を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト78上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体P上に転写される。このとき、中間転写ベルト78には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。こうして、中間転写ベルト78上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、装置本体1の下方に配設された給紙部12から、給紙ローラ97やレジストローラ対98等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、給紙部12には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。レジストローラ対98に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対98のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト78上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対98が回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置20の位置に搬送される。そして、この位置で、定着ベルト21及び加圧ローラ31による熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された記録媒体Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。次に、図2にて、画像形成装置本体1に設置される定着装置20の構成・動作について詳述する。
図2は、定着装置の構成について説明する図である。図2に示すように、定着装置20は、ベルト部材としての定着ベルト21、ニップ形成部材26、加熱部材22、補強部材23(支持部材)、ヒータ25(熱源)、加圧回転体としての加圧ローラ31、温度センサ40、接離機構51、52等で構成される。ここで、定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状ベルトであって、図2中の矢印方向(反時計方向)に回転(走行)する。
定着ベルト21は、内周面側から、基材層、弾性層、離型層が順次積層されていて、その全体の厚さが1mm以下に設定されている。定着ベルト21の基材層は、層厚が30~100μmであって、ニッケル、ステンレス等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料で形成されている。定着ベルト21の弾性層は、層厚が100~300μmであって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴム、等のゴム材料で形成されている。弾性層を設けることで、ニップ部における定着ベルト21表面の微小な凹凸が形成されなくなり、記録媒体P上のトナー像Tに均一に熱が伝わり柚子肌画像の発生が抑止される。
定着ベルト21の離型層は、層厚が10~50μmであって、PFA(テトラフルオロエチレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等の材料で形成されている。離型層を設けることで、トナーT(トナー像)に対する離型性(剥離性)が確保される。また、定着ベルト21の直径は15~120mmになるように設定されている。なお、本実施の形態では、定着ベルト21の直径が30mm程度に設定されている。
また、ニップ部の位置で定着ベルト21の外周面に当接する加圧回転体としての加圧ローラ31は、直径が30~40mm程度であって、中空構造の芯金32上に弾性層33を形成したものである。加圧ローラ31の弾性層33は、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の材料で形成されている。なお、弾性層33の表層にPFA、PTFE等からなる薄肉の離型層を設けることもできる。加圧ローラ31は定着ベルト21に圧接して、双方の部材間に所望のニップ部を形成する。
ニップ形成部材26は、液晶ポリマー等の耐熱樹脂材料等で構成される。ニップ形成部材26と、定着ベルト21との間に、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性部材を設けることにより、ニップ部において記録媒体Pの表面の微小な凹凸にベルト表面が追従して、記録媒体P上のトナー像Tに均一に熱が伝わり柚子肌画像の防止に効果がある。ニップ形成部材26は、加圧ローラ31側の面が加圧ローラ31の曲率にならうように断面形状が凹状に形成されている。これにより、記録媒体Pは加圧ローラ31の曲率にならうようにニップ部から送出されるために、定着工程後の記録媒体Pが定着ベルト21に吸着して分離しないような不具合を抑止することができる。
なお、図2において、ニップ部を形成するニップ形成部材26の断面形状を凹状に形成したが、ニップ部を形成するニップ形成部材26の形状を平面状に形成したり、平面から凹形状に連続的に変化するように形成したりすることもできる。ニップ形状を任意の形状とすることによって、ニップ部の形状が記録媒体Pの画像面に対してほぼ平行となる場合には、記録媒体にシワが発生するのを防止する効果がある。また、凹状の断面形状に近づけることによって、定着ベルト21と記録媒体との密着性が高くなり、定着性が向上する。さらに、ニップ部の出口側における定着ベルト21の曲率が大きくなるために、ニップ部から送出された記録媒体を定着ベルト21から容易に分離することができる。
加熱部材22は、肉厚が0.2mm以下のパイプ状部材である。加熱部材22の材料としては、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属熱伝導体(熱伝導性を有する金属である。)を用いることができる。加熱部材22の肉厚を0.2mm以下に設定することで、定着ベルト21(加熱部材22)の加熱効率を向上することができる。加熱部材22は、ニップ部を除く位置で定着ベルト21の内周面に近接もしくは接触するように形成され、ニップ部の位置には内部に凹状に形成されるとともに開口部が形成された凹部が設けられている。ここで、常温時における定着ベルト21と加熱部材22とのギャップA(ニップ部を除く位置のギャップである。)は、0mmより大きく1mm以下とすることが好ましい(0mm<A≦1mmである)。
これにより、加熱部材22と定着ベルト21とが摺接する面積が大きくなって定着ベルト21の磨耗が加速する不具合を抑止するとともに、加熱部材22と定着ベルト21とが離れ過ぎて定着ベルト21の加熱効率が低下する不具合を抑止することができる。さらに、加熱部材22が定着ベルト21に近設されることで、可撓性を有する定着ベルト21の円形姿勢がある程度維持されるため、定着ベルト21の変形による劣化・破損を軽減することができる。また、加熱部材22と定着ベルト21との摺動抵抗を低下させるために、加熱部材22の摺接面を摩擦係数の低い材料で形成したり、定着ベルト21の内周面21aにフッ素を含む材料からなる表面層を形成したりすることもできる。
なお、図2では、加熱部材22の断面形状がほぼ円形になるように形成したが、加熱部材22の断面形状が多角形になるように形成することもできる。また、加熱源からの熱をベルト部材に均一に伝達し、かつ駆動時のベルト部材の走行安定性を確保する手段が別途用意されている場合には、加熱部材22を有さず、ベルトを直接加熱する方式の定着器を構成することも可能である。その場合は、定着器全体としての熱容量の内、加熱部材22の熱容量が排除されるため、より昇温性能や省エネ性能に優れた定着器を構成できる利点がある。
また、補強部材23(支持部材)は、ニップ部を形成するニップ形成部材26を補強、支持するためのもので、定着ベルト21の内周面側に固設されている。
加熱部材22は、その長手方向両端部が定着装置20の図示しない側板に固定支持されている。そして、加熱部材22は、ヒータ25の輻射熱(輻射光)により加熱されて定着ベルト21を加熱する。すなわち、加熱部材22がヒータ25(加熱手段)によって直接的に加熱されて、加熱部材22を介して定着ベルト21がヒータ25によって間接的に加熱されることになる。なお、ヒータ25の出力制御は、定着ベルト21表面に対向するサーモパイルやサーミスタなどの温度センサ40によるベルト表面温度の検出結果に基いておこなわれる。また、このようなヒータ25の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定することができる。
このように、定着装置20は、定着ベルト21の一部のみが局所的に加熱されるのではなく、加熱部材22によって定着ベルト21が周方向にわたってほぼ全体的に加熱されることになるために、装置を高速化した場合であっても定着ベルト21が充分に加熱されて定着不良の発生を抑止することができる。なお、図2において、ヒータ25の例としてハロゲンヒータを用いたが、熱源の種類はハロゲンヒータに限定されるものではなく、例えば誘導加熱方式の熱源を有する定着装置であっても良い。
補強部材23は、長手方向の長さがニップ形成部材26と同等になるように形成されていて、その長手方向両端部が定着装置20の図示しない側板に固定支持されている。そして、補強部材23がニップ形成部材26、定着ベルト21介して加圧ローラ31)に当接することで、ニップ部においてニップ形成部材26が加圧ローラ31の加圧力を受けて大きく変形する不具合を抑止している。なお、補強部材23は、上述した機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが好ましい。
また、ヒータ25がハロゲンヒータなど輻射熱を利用して加熱する方式の熱源である場合には、補強部材23におけるヒータ25に対向する面の一部又は全部に、断熱部材を設けたり、BA処理や鏡面研磨処理を施したりすることもできる。ヒータ25から補強部材23に向かう輻射熱(補強部材23を加熱する熱)が加熱部材22の加熱に用いられることになるために、定着ベルト21(加熱部材22)の加熱効率がさらに向上することになる。
加圧ローラ31には、不図示の駆動機構の駆動ギアに噛合するギヤが設置されていて、加圧ローラ31は図2中の矢印方向(時計方向)に回転駆動される。また、加圧ローラ31は、その長手方向両端部が定着装置20の不図示の側板に軸受を介して回転自在に支持されている。なお、加圧ローラ31の内部には、ハロゲンヒータ等の熱源を設けることもできる。また加圧ローラ31の弾性層33を発泡性シリコーンゴム等のスポンジ状の材料で形成した場合には、ニップ部に作用する加圧力を減ずることができるために、ニップ形成部材26に生じる撓みを軽減することができる。さらに、加圧ローラ31の断熱性が高められて、定着ベルト21の熱が加圧ローラ31側に移動しにくくなるために、定着ベルト21の加熱効率が向上する。
また、図2では、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径と同等になるように形成したが、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径よりも小さくなるように形成することもできる。その場合、ニップ部における定着ベルト21の曲率が加圧ローラ31の曲率よりも小さくなるために、ニップ部から送出される記録媒体Pが定着ベルト21から分離され易くなる。また、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径よりも大きくなるように形成することもできるが、定着ベルト21の直径と加圧ローラ31の直径との関係によらず、加圧ローラ31の加圧力が加熱部材22に作用しないように構成されている。
さらに、定着装置20には、定着ベルト21に対して加圧ローラ31を接離する接離機構51~53が設けられている。詳しくは、接離機構は、加圧レバー51、偏心カム52、加圧スプリング53、等で構成されている。加圧レバー51は、一端側に設けられた支軸51aを中心として定着装置20の図示しない側板に回転自在に支持されている。
加圧レバー51の中央部は、加圧ローラ31の軸受(図示せず。側板に形成された長穴に移動可能に保持されている。)に当接している。また、加圧レバー51の他端側には加圧スプリング53が接続され、さらに加圧スプリング53の保持板に偏心カム52(不図示の駆動モータによって回転可能に構成されている。)が係合している。このような構成により、偏心カム52の回転により、加圧レバー51が支軸51aを中心にして回転して、加圧ローラ31が図2の破線矢印方向に移動することになる。
すなわち、通常の定着工程時には、偏心カム52の回転方向の姿勢が図2の状態になって、加圧ローラ31は定着ベルト21を加圧して所望のニップ部を形成する。これに対して、通常の定着工程時以外のとき(ジャム処理時や待機時等である。)には、偏心カム52の回転方向の姿勢が図2の状態から180度回転して、加圧ローラ31は定着ベルト21から離脱する(又は、定着ベルト21を減圧する)。
以下、上述のように構成された定着装置20の、通常時の動作について簡単に説明する。装置本体1の電源スイッチが投入されると、ヒータ25に電力が供給されるとともに、加圧ローラ31の図2中の矢印方向の回転駆動が開始される。これにより、加圧ローラ31との摩擦力によって、定着ベルト21も図2中の矢印方向に従動(回転)する。その後、給紙部12から記録媒体Pが給送されて、2次転写ローラ89の位置で、記録媒体P上に未定着のカラー画像が担持(転写)される。
未定着画像T(トナー像)が担持された記録媒体Pは、不図示のガイド板に案内されながら図2の矢印Y10方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ31のニップ部に送入される。そして、加熱部材22(ヒータ25)によって加熱された定着ベルト21による加熱と、補強部材23によって補強されたニップ形成部材26と加圧ローラ31との押圧力とによって、記録媒体Pの表面にトナー像Tが定着される。その後、ニップ部から送出された記録媒体Pは、矢印Y11方向に搬送される。
また、定着装置20は、定着ベルト21の表面性を維持するため、定着ベルト21に押し当てられて定着部材の表面を改質するための定着部材表面改質手段41を備えており、定着部材表面改質手段41は、定着部材に対して接離可能な構成となっている。定着部材表面改質手段41は、定着部材表面を削る/潰す/軟化させる、あるいは、定着部材表面の異物を吸着する機能を有する。本実施例の定着部材表面改質手段41は、摺擦部材(研磨ローラ42)であり、定着部材表面を微少に削り取り、異物を除去する機能を有している。上記摺擦部材は、定着ベルト21と当接して定着ベルト21の表面を改質する定着表面改質部材である。
研磨ローラ42は、軸形状の芯金とそれを覆う研磨層から構成される。また、制御部44により動作が制御される接離機構部43を有し、研磨ローラ42は接離機構部43により、定着ベルト21に接離可能となっている。接離機構部43は、特に制限されるものではないが、駆動モータを有するカム機構、ソレノイド等が挙げられる。接離機構部43は、このような構成により、上記定着表面改質部材の当接/離間及び当接圧を制御する。
なお、研磨ローラ42は、金属、又は樹脂に直接研磨目が転写されたローラ、またはローラに砥粒が吹き付けられたローラとしてもよい。制御部44は、定着部材表面改質手段41の動作を制御するためのICチップにより構成される。
上記定着装置では、定着ベルト21の表面改質部材の駆動源となる接離機構部43の動作に際して、以下の特徴を有している。具体的には、(1)駆動源の異常を検出した際は、定着ベルト21の改質動作であるリフレッシュ動作(定着部材の改質動作)における表面改質部材によるリフレッシュ加圧位置を減圧方向に変更する。(2)駆動源の異常は駆動源のトルク値によって判定される。(3)トルク値が閾値を判定した時間連続して超えて検出された場合に、トルク値が異常であると判定する。(4)リフレッシュ加圧位置を減圧方向した後もトルク異常が継続する場合は、再度リフレッシュ加圧位置を減圧方向に変更し、トルク異常が解消するまで減圧を繰り返す。(5)リフレッシュ加圧位置を減圧方向に変更し、その上限に達してもトルク異常が解消しない場合は、駆動源の動作を停止する。
すなわち、表面改質部材の駆動源の駆動トルク異常が検出された際、リフレッシュ加圧位置を減圧方向に変更し、変更後にトルク異常がなくなれば動作を継続し、変更後もトルク異常が発生するのであれば、再度リフレッシュ加圧位置を減圧方向に変更する動作を繰り返す。また、リフレッシュ加圧位置の減圧方向に変更し、その上限に達した場合は、駆動源の故障であるとして、動作を停止させる制御を実施する。これにより、駆動源の故障を誤検出することによるマシンのダウン回数を軽減することが可能となる。
図3は、表面改質部材により定着部材が表面改質される様子を示す説明図である。図3(a)は、表面改質される前の定着ベルト21の表面Rの拡大イメージ図である。図3(b)は、短い経過時間で回転方向Dに回転する定着ベルト21に生じた、表面改質部材による研磨跡P1を示す図である。図3(c)は、長い経過時間で回転方向Dに回転する定着ベルト21に生じた、表面改質部材による研磨跡P2を示す図である。
これらの図に示すように、表面改質部材により定着ベルト21が表面改質されると、定着部材表面に回転方向に沿ったスジ(研磨跡P1、P2)が形成される(図1(b)、(c))。本スジは、画像に出ないほど微小なスジであり、表面改質時間が長くなると定着部材の表面全体に均一に形成される(図1(c))。スジが形成された状態で表面改質を実施すると、表面改質部材の定着部材への食い込み力が低減され、安定した駆動トルクとなる。一方で、新品もしくは表面改質時間が短い定着部材に対して表面改質を実施すると、表面改質部材と定着ベルと21との間の食い込み力が増大し、表面改質部材の駆動モータ(接離機構部43の駆動モータ)の許容トルクがオーバーしてマシンダウンが発生する可能性がある。したがって、以下に示す手法により、上記のトルク上昇時のマシンダウンを回避する。
図4は、本実施例における駆動モータの制御を示す遷移図である。また、図5は、本実施例のリフレッシュ動作における駆動モータの制御の手順を示すフローチャートである。以下、図4、図5を用いて、本実施例における制御方法について説明する。
図5に示すように、制御部44は、接離機構部43が有する駆動モータがONされると、当該駆動モータのトルク値の監視を開始する(S300)。具体的には、制御部44は、上記モータのON信号を表面改質部材の制御開始タイミングとして認識し、当該駆動モータのトルク値を監視周期ごとに検出する。
制御部44は、検出した上記駆動モータのトルク値Tdが、トルク異常閾値Tjを超えているか否かを判定し(S301)、検出した上記駆動モータのトルク値Tdが、トルク異常閾値Tjを超えていると判定した場合(S301;Yes)、トルク上昇ありと判断する。一方、制御部44は、検出した上記駆動モータのトルク値Tdが、トルク異常閾値Tjを超えていないと判定した場合(S301;No)、トルク上昇がないと判断し、リフレッシュ動作を継続する(S306)。
そして、制御部44は、リフレッシュ動作の実行時間が終了したか否かを判定し(S307)、リフレッシュ動作の実行時間が終了していないと判定した場合(S307;No)、S301に戻り、以降の処理を繰り返す。一方、制御部44は、リフレッシュ動作の実行時間が終了したと判定した場合(S307;Yes)、S310に進む。
制御部44は、検出した上記駆動モータのトルク値Tdが、トルク異常閾値Tjを超えていると判定した場合(S301;Yes)、さらに、トルク上昇ありをトルク異常判定時間tj秒連続して検出したか否かを判定する(S302)。制御部44は、トルク上昇ありをトルク異常判定時間tj秒連続して検出したと判定した場合(S302;Yes)、トルク異常と判定する。上記異常判定時間は、ノイズ等により突発的にトルク値の上昇を検出した際の誤動作を防ぐことを目的としている。したがって、異常判定時間は少なくとも2回以上の異常判定が実施可能なように設定する。たとえば、監視周期が1secの場合は、異常判定時間は少なくとも2sec以上とする。
一方、制御部44は、トルク上昇ありをトルク異常判定時間tj秒連続して検出したと判定していない場合(S302;No)、トルク異常は生じていないと判断し、S306に進み、リフレッシュ動作を継続する。
制御部44は、S302においてトルク異常と判定した場合(S302;Yes)、リフレッシュ加圧位置を1段階減圧位置に変更し(S303)、当該1段階減圧位置に変更後、再度、S301、S302と同様の処理を実行し、トルク異常の判定を実施する(S304、S305)。このように、制御部44は、トルク異常が解消していない場合には、1段階減圧位置に変更後、再度、トルク異常の判定を実行し、リフレッシュ実行時間が終了するまで繰り返す。
そして、制御部44は、S305においてトルク異常と判定した場合(S305;Yes)、リフレッシュ加圧位置の減圧方向への変更が所定の閾値を超えて限界に達したか否かを判定する(S308)。制御部44は、リフレッシュ加圧位置の減圧方向への変更が所定の閾値を超えて限界に達したと判定した場合(S308;Yes)、トルク異常に対処するために設定された限界値(接離機構部で圧力を落とす限界値)に達したことを示す異常フラグを出力し(S309)、駆動モータの動作を停止すると共に、その時点で設定されている加圧位置をイニシャル位置に戻し(S310)、処理を終了させる(S311)。
なお、制御部44は、S307においてリフレッシュ動作の実行時間が終了したと判定した場合(S307;Yes)、すなわち、トルク異常が再発せず表面改質時間が終了した場合には、上記異常フラグを出力することなく、S310に進み、その時点で設定された加圧位置をイニシャル位置に戻し、終了する。
本制御フローを実施することによって、トルク異常時にはリフレッシュ加圧位置を1段階減圧位置に変更した上で定着部材に表面改質の研磨跡をつけるため、駆動源のトルク上昇を防止することが可能となる。例えば、図4に示したように、制御部44が、上記モータのON信号を表面改質部材の制御開始タイミングとして認識すると(T1)、リフレッシュ加圧位置に移動させるように接離機構部43を制御し、表面改質部材による加圧力を加圧力α1とする(リフレッシュ第一加圧)。
制御部44は、最初にトルク上昇ありをトルク異常判定時間tj秒連続して検出すると(T2)、リフレッシュ加圧位置の減圧方向に移動させるように接離機構部43を制御し、表面改質部材による加圧力を、加圧力α1よりも小さい加圧力α2とする(リフレッシュ第二加圧)。
制御部44は、再びトルク上昇ありをトルク異常判定時間tj秒連続して検出すると(T3)、さらに、リフレッシュ加圧位置の減圧方向に移動させるように接離機構部43を制御し、表面改質部材による加圧力を、加圧力α2よりも小さい加圧力α3とする(リフレッシュ第三加圧)。
制御部44は、繰り返しリフレッシュ加圧位置を減圧方向に変更したことにより生じた加圧力α3により、上記モータの駆動トルクが閾値THに達したと判断し、この段階で初めて駆動モータの動作を停止し、処理を終了させる。
なお、S310において、加圧位置を変更した際に表面改質時間の判定を実施後に元の加圧位置に戻して再度表面改質を実施する理由は、加圧位置を変更したままの表面改質動作では本来の性能を発揮できない可能性があるためである。
このように、本実施例では、駆動トルクが一定期間連続して閾値超えを検出した際に、定着部材が表面改質された経過時間に応じてリフレッシュ加圧位置を減圧方向に変更し、駆動トルクを低下させる。したがって、駆動源のトルク異常が発生した場合であっても、リフレッシュ加圧位置の減圧方向への変更の限界点に達するまでは動作を止めないため、従来のように、モータの許容トルクオーバーに起因してトルク異常を検出したことによるマシンダウンを回避することができる。すなわち、従来技術と異なり、駆動源のトルク異常が発生した場合であっても、動作を止めることなくトルク上昇を回避ができ、かつ定着ベルトに対する表面改質時間が少ない時に発生するトルク上昇によって生じ得るモータ許容トルクオーバーを起因としたマシンダウンを回避できる。
本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化したり、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせて実施することができる。
例えば、図3のS304、S305では、制御部44は、トルク異常が解消していない場合には、1段階減圧位置に変更後、再度、トルク異常の判定を実行したが、トルク異常が解消した場合には、1段階加圧位置に変更後、すなわち、もとの加圧位置に戻した後、再度、トルク異常の検出を判定してもよい。
このように、本実施例では、加熱部材22により加熱される定着ベルト21と、定着ベルト21の少なくとも一部を押圧可能に配置され、定着ベルト21との間にニップ部を形成する加圧ローラ31と、を備え、ニップ部に未定着トナー像を担持した記録媒体を搬送して、未定着トナー像を記録媒体に定着する定着装置20において、定着ベルト21と当接して定着ベルと21の表面を改質する定着表面改質部材である研磨ローラ42と、定着表面改質部材の当接/離間及び当接圧を制御する駆動源を有した接離機構部43と、接離機構部43の動作を制御する制御部44と、を備えた定着部材表面改質手段41を備え、制御部44は、定着表面改質部材による定着ベルト21の改質動作において、駆動モータのトルク異常を検出した場合に、定着ベルト21が表面改質された時間に応じて定着表面改質部材による加圧位置を減圧方向に変更し、駆動トルクを低下させるように接離機構部43の動作を制御する。したがって、駆動源のトルク異常が発生した場合であっても、従来のように、直ちにダウンタイムが発生してしまうことを回避することができる。
また、制御部44は、加圧位置の減圧方向への変更する限界値に達するまで、接離機構部43の動作を制御するので、定着表面改質部材と定着ベルト21が非接触になり空振りすることを防止することができる。
また、制御部44は、駆動モータのトルク値が所定の閾値以上となっている時間が所定の時間連続して検出したか否かを判定し、トルク値が所定の閾値以上となっている時間が所定の時間連続して検出したと判定した場合に、トルク異常を検出したと判定するので、ノイズ等による突発的なトルク上昇による誤検出を防ぐことができる。
また、制御部44は、トルク異常を検出したと判定した場合において、加圧位置の減圧方向への変更が所定の閾値を超えて限界に達したか否かを判定し、加圧位置の減圧方向への変更が所定の閾値を超えて限界に達したと判定した場合、駆動モータの動作を停止するので、加圧位置を変更してもトルクが下がらない場合は駆動モータの故障と判断し、動作停止することができる。
また、制御部44は、トルク異常を検出した場合において、当該トルク異常が解消された場合には、減圧方向に変更した前記加圧位置をもとの加圧位置に戻し、再度、トルク異常の検出を判定するので、使用環境の変化等によりトルク異常が解消された場合は、トルク異常検出前の状態でリフレッシュ動作を継続することができる。