JP7070030B2 - タイヤトレッド用ゴム組成物およびタイヤの製造方法 - Google Patents
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[1]天然ゴムとクエン酸水溶液とを接触させる第1工程と、
第1工程の後に天然ゴムとヒドラジド化合物とを混合する第2工程と
により製造される天然ゴム組成物と、
臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積(CTAB)が100m2/g以上、好ましくは110m2/g以上のカーボンブラックとを含むタイヤトレッド用ゴム組成物、
[2]天然ゴム組成物製造工程中の乾燥温度が140℃以下、好ましくは125℃以下である上記[1]記載のタイヤトレッド用ゴム組成物、
[3]天然ゴムを塩基性物質の水溶液に浸漬する工程を含む上記[1]または[2]記試の天然ゴム組成物の製造方法、
[4]前記塩基性物質の水溶液が界面活性剤を含有する上記[3]記載の天然ゴム組成物の製造方法、
[5]前記カーボンブラックの含有量が、ゴム成分100質量部に対して10~100質量部、好ましくは30~60質量部である上記[1]~[4]のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物、ならびに
[6]上記[5]記載のタイヤトレッド用ゴム組成物により構成されたトレッドを備えるタイヤ
に関する。
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、天然ゴムとクエン酸水溶液とを接触させる第1工程と、第1工程の後に天然ゴムとヒドラジド化合物とを混合する第2工程とにより製造される天然ゴム組成物と、CTABが100m2/g以上のカーボンブラックとを含み、臭気が低減され、経時的な粘度の上昇が抑えられる。
天然ゴム組成物は、天然ゴムとクエン酸水溶液とを接触させる第1工程と、第1工程の後に天然ゴムとヒドラジド化合物とを混合する第2工程とを含む製造方法により製造される。クエン酸水溶液との接触後にヒドラジド化合物と混合することにより、得られる天然ゴム組成物は、臭気が低減され、経時的な粘度の上昇が抑えられた恒粘度化天然ゴムとなる。
Ra-CONHNH2 (1)
(式中、Raは、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30の不飽和炭化水素基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数3~30のアリール基のいずれかを示す。)
で表される化合物、または一般式(2):
NH2NHCO-Rb-CONHNH2 (2)
(式中、Rbは、二価の炭素数1~30のアルカン、二価の炭素数1~30の不飽和炭化水素基、二価の炭素数3~30のシクロアルカン、二価の炭素数3~30のアリールのいずれかを示す。)
で表される化合物が挙げられる。
クエン酸水溶液と天然ゴムとを接触させる第1工程は、ヒドラジド化合物を加える前であれば、特に限定されるものではないが、クレーパー処理によるシート化の段階でクエン酸水溶液を振り掛けることにより行うことが好ましい。この工程により、シート化が容易になると同時に、天然ゴムの劣化を促進する金属イオンを取り除き、PO(劣化指標)、PRI(酸化指標)の向上、経時での粘度上昇の抑制という効果を奏する。その他、切断、洗浄工程で、切断物をクエン酸水溶液中に浸漬させることにより天然ゴムとクエン酸水溶液とを接触させることもできる。クエン酸水溶液と接触する際の切断物の粒径は、例えば200mm以下であり、本発明の効果が向上するという観点から100mm~1mmであるのが好ましい。切断物の粒径の調整は、公知のスラブカッター、ロータリーカッター、クレーパー処理によるシート化、およびシュレッダー処理による切断を複数回組み合わせて行うことにより可能となる。
クエン酸水溶液で処理した天然ゴムにヒドラジド化合物を混合させる第2工程は、クエン酸水溶液での処理の後であれば、特に限定されるものではないが、乾燥前の天然ゴムに浸漬または噴霧して加えるか、または乾燥後のゴムに混練りして加えることができる。そのような場合、ヒドラジド化合物は、溶媒などに溶解して配合することが好ましい。
カーボンブラックは、臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積(CTAB)が100m2/g以上のものである。このようなカーボンブラックは、1種または2種以上を組合せて用いることができる。カーボンブラックのCTABが100m2/g未満ではゴムに対する補強効果が十分でなく、発明の効果が十分に発揮されないおそれがある。CTABは、110m2/g以上が好ましい。一方、カーボンブラックのCTABに特に上限はないが、十分な低発熱性の観点からは、165m2/g以下が好ましく、162m2/g以下がより好ましく、160m2/g以下がさらに好ましい。ここで、CTABはカーボンブラックの粒子径の大きさに相関する値であり、CTAB吸着比表面積が大きいほどカーボンブラックの粒子径が小さいことを表す。CTABは、JIS K 6217-3:2001に準拠して測定できる。また、CTABが100m2/g以上のカーボンブラックを用いることにより、カーボンブラックの細孔に臭気の原因となる短鎖脂肪鎖やアルデヒド類もトラップされる。カーボンブラックの表面は、カルボニル基やフェノール性のヒドロキシ基など種々の官能基が存在するため、ヒドラジド化合物を配合したNRにカーボンブラックを入れることで大幅な臭気低減と恒粘度化が達成されると推測される。
ゴムとしては、特に限定されるものではないが、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。ジエン系ゴムは、併用されてもよい。これらの中でも、より優れたグリップ性能が得られる点から、SBRを含むことがより好ましい。
特に限定されるものではないが、一例を挙げると、フィラーは、カーボンブラック、シリカ、珪藻土、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、タルク等である。
液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)等が挙げられる。なかでも、耐摩耗性と走行中の安定した操縦安定性能がバランスよく得られるという理由から、液状SBRが好ましい。なお、本明細書における液状ジエン系重合体は、常温(25℃)で液体状態のジエン系重合体である。
粘着付与樹脂としては、芳香族系石油樹脂等の従来タイヤ用ゴム組成物で慣用される樹脂が挙げられる。芳香族石油樹脂としては例えば、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)等が挙げられる。フェノール系樹脂としては例えばコレシン(BASF社製)、タッキロール(田岡化学工業(株)製)等が挙げられる。クマロンインデン樹脂としては例えばクマロン(日塗化学(株)製)、エスクロン(新日鐡化学(株)製)、ネオポリマー(新日本石油化学(株)製)等が挙げられる。スチレン樹脂としては例えばSylvatraxx(登録商標)4401(アリゾナケミカル社製)等が挙げられる。テルペン樹脂としては例えばTR7125(アリゾナケミカル社製)、TO125(ヤスハラケミカル(株)製)等が挙げられる。
オイルは特に限定されない。一例を挙げると、オイルは、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、ひまし油(加硫ブラダー用)等である。プロセスオイルは、併用されてもよい。
老化防止剤は特に限定されない。老化防止剤は、従来、ゴム組成物において汎用されている各種老化防止剤から任意に選択して用いられ得る。一例を挙げると、老化防止剤は、キノリン系老化防止剤、キノン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤等である。老化防止剤は、併用されてもよい。
加硫剤は特に限定されるものではなく、ゴム工業において一般的なものを使用することができるが、硫黄原子を含むものが好ましく、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等が挙げられる。
加硫促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系もしくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系加硫促進剤が挙げられ、なかでも、初期ウェットグリップ性能の向上効果がより好適に得られる点から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
タイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。例えば、混練工程では、排出温度が120~170℃、好ましくは150℃になるように、1~10分間、好ましくは4分間混練りした後、硫黄および加硫促進剤を加えて排出温度が80~120℃、好ましくは100℃になるように1~10分間、好ましくは3分間混練りし、加硫工程では140~180℃、好ましくは170℃で5~60分間、好ましくは12分間加硫する。
前記タイヤトレッド用ゴム組成物から構成されるトレッドを備えたタイヤは、前記タイヤトレッド用ゴム組成物を用いて、通常の方法により製造できる。すなわち、ジエン系ゴム成分に対して前記の配合剤を必要に応じて配合した前記タイヤ組成物を、トレッドの形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを製造することができる。
・原料ゴム:TSR20
・クエン酸:関東化学(株)製
・ヒドラジド化合物:東京化成工業(株)製のアセトヒドラジド
・アミノグアニジン重炭酸塩:東京化成工業(株)製
・塩基性物質:東京化成工業(株)製の水酸化ナトリウム水溶液
・界面活性剤:東京化成工業(株)製のベンゼンスルホン酸ナトリウム
・カーボンブラック1:三菱化学(株)製のダイヤブラックN220(CTAB:110m2/g、DBP吸油量:114ml/100g、N2SA:115m2/g)
・カーボンブラック2:三菱化学(株)製のダイヤブラックN550(CTAB:42m2/g、FEF、DBP吸油量:115ml/100g、N2SA:41m2/g)
・シリカ:エボニックデグサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g、平均一次粒子径:15nm)
・シランカップリング剤:エボニックデグサ社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
・オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH-24(芳香族系プロセスオイル)
・老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(6PPD:N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン)
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛
・ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸「つばき」
・硫黄:5%オイル含有粉末硫黄(HK200-5、細井化学工業(株)製)
・加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(CBS:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
・加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(DPG、1,3-ジフェニルグアニジン)
表1または2に記載された処方にしたがい、原料ゴムを切断し、水洗し、クレーパーでのシート化を繰り返し、直径約10mm程度に切断する。切断、水洗、シート化の途中で、切断物を10質量%クエン酸水溶液に表1または2に記載された時間浸漬する。最終的には5mm以下のクラムを得る。得られるクラムをドライヤーで表1または2に記載された温度で3時間乾燥した後、表1または2に示すヒドラジド化合物またはアミノグアニジン重炭酸塩の水溶液を、天然ゴム100質量部に対して加え、二軸ロールで練り、天然ゴム組成物を得る。得られる天然ゴム組成物を20日間30℃で保管し、次工程に供する。また、恒粘度化評価を後述するように行う。なお、塩基性物質は表1または2に記載した濃度の水溶液とし、表1または2に記載した濃度で界面活性剤を含有したものを使用し、クエン酸水溶液との接触が完了した後、乾燥工程の前にその溶液に天然ゴムシートを浸漬する。
製造後1日目の天然ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4/130℃)と製造後20日目(30℃で保存)のムーニー粘度(ML1+4/130℃)を測定し、製造後1日目のムーニー粘度を、製造後20日目のムーニー粘度を100として指数化する。ムーニー粘度の測定は、JIS K 6300-1の「未加硫ゴム-物理特性-第1部:ムーニー粘度計による粘度およびスコーチタイムの求め方」に準じたムーニー粘度の測定方法に従い、130℃の温度条件にておこなう。なお、値が100に近いほど恒粘度化が良好であることを示す。値が100よりも小さいと貯蔵中に硬化がおこったことを示す。目標は95以上、105以下である。
天然ゴムの臭気の主な原因物質としては、酢酸、吉草酸、イソ吉草酸、イソ吉草酸アルデヒドおよび酪酸などのような低級脂肪酸およびそのアルデヒド類が挙げられる。そこで、Head-Space GCMSを用いて検出される天然ゴムに含有される上記成分のピーク面積比を各成分の嗅覚閾値で補正し、全てを足したものを臭気成分量とする。評価としては、
臭気成分指数=1/(各実施例の臭気成分量/比較例1の臭気成分量)×100
で表される。指数が大きいほど臭気成分が少ないことを示す。目標値は、160以上である。
転がり抵抗試験機を用い、各試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、比較例5を100とした時の指数で表示する。指数が大きいほど低燃費性が良好であることを示す。目標値は、110以上である。
Claims (6)
- タイヤ用ゴム組成物の製造方法であって、
天然ゴムとクエン酸水溶液とを接触させる第1工程と、
第1工程の後に天然ゴムとヒドラジド化合物とを混合する第2工程と
を含む天然ゴム組成物製造工程と、
天然ゴム組成物製造工程で得た天然ゴム組成物と、ゴム成分100質量部に対して5~100質量部の臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積(CTAB)が100m2/g以上のカーボンブラックとを含むタイヤトレッド用ゴム組成物原料を混練りする混練工程と
を含むタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法。 - 天然ゴム組成物製造工程中の乾燥温度が140℃以下である請求項1記載のタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法。
- 天然ゴム組成物製造工程中に、天然ゴムを塩基性物質の水溶液に浸漬する工程を含む請求項1または2記載のタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法。
- 前記塩基性物質の水溶液が界面活性剤を含有する請求項3記載のタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法。
- 前記カーボンブラックの含有量が、ゴム成分100質量部に対して10~100質量部である請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法。
- 請求項5記載のタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法により製造されたタイヤトレッド用ゴム組成物をトレッドの形状に加工する工程と、
前記トレッドを用いてタイヤを製造する工程と
を含むタイヤの製造方法。
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