以下、図面を参照して、本発明に係る部材取付構造の、一実施形態について説明する。
図1や図9に示すように、この部材取付構造は、被取付部材1に設けられた取付孔5と、取付部材10に設けられた挿通孔20とに、取付具30を取付部材10側から挿入して回転させることによって、取付部材10を被取付部材1に取付けるものである。
また、図1や図3~5に示すように、この実施形態における取付具30は、挿通孔20の表側(挿通孔20の、被取付部材1との対向面とは反対側を意味する。以下の説明でも同様)の周縁に係合する頭部31と、該頭部31から延出され、挿通孔20及び取付孔5に挿入される軸部33と、軸部33の先端側外周から径方向外側に突出する一対の係合突部35,35と、軸部33の頭部31側に形成された一対の弾性係合片40,40とを有している。更に図5(a),(b)に示すように、各弾性係合片40には、挿通孔20の裏側(挿通孔20の、被取付部材1との対向面側を意味する。以下の説明でも同様)の周縁に係合する係合段部45と、この係合段部45に対して頭部31側に連設され、かつ、弾性係合片40が仮保持溝23に係合した状態で、該仮保持溝23内に配置される、回転規制部47とが設けられている。なお、取付具30の構造については、後で詳述する。
この実施形態における前記被取付部材1は、車両下方に配置されたオイルパンを覆うアンダーカバーであり、前記取付部材10は、アンダーカバーに開閉可能に取付けられるリッドである。このリッドは、エンジンオイルを交換すべく、オイルパンからエンジンオイルを排出する際に、アンダーカバーから取外されるものである。なお、被取付部材としては、例えば、車体パネルや、車体フレーム等としたり、取付部材としては、トリムボードやガーニッシュ等としたりしてもよく、特に限定はされない。
また、図1に示すように、この実施形態における被取付部材1には、取付部材10との対向面側に、所定深さの円形凹状をなした凹部3が形成されており、この凹部3の底部に、前記取付孔5が設けられている。この取付孔5は、中央部が略円形孔状をなすと共に、その周方向に対向する箇所から、一対の第2切欠き溝7,7が外方へ向けて形成されており、全体として鍵穴状をなしている。一対の第2切欠き溝7,7には、取付具30の一対の係合突部35,35が通過可能となっている。
なお、取付孔の形状としては、上記形状に限定されるものではない。例えば、第2切欠き溝を1個又は3個以上としてもよく、少なくとも、取付具の軸部が挿通可能で、かつ、係合突部が通過可能な第2切欠き溝を有していればよい。
一方、図2に示すように、取付部材10に設けられた挿通孔20は、この実施形態の場合、略円形孔状をなすと共に、前記取付具30の軸部33が挿通される軸孔21を有している。図6や図7に示すように、この実施形態の軸孔21の内径は、取付具30の軸部33の外径とほぼ適合している。また、この軸孔21の周方向に対向する箇所から、一定幅で切欠かれてなる一対の第1切欠き溝22,22が、軸孔21の外方へ向けて延設されており、前記軸孔21と併せて挿通孔20全体として鍵穴状をなしている。なお、一対の第1切欠き溝22,22には、取付具30の一対の係合突部35,35が通過可能となっている。
更に挿通孔20には、取付具30の弾性係合片40が係合可能な仮保持溝23が形成されている。図1に示すように、この仮保持溝23は、取付部材10の厚さ方向全域を切欠いて形成されている。また、図2に示すように、この実施形態では、前記軸孔21の内周であって、その中心C1に対して斜めに対向する位置、すなわち、軸孔21の中心C1に対して点対称となる位置に、一対の仮保持溝23,23が形成されている。
更に、各仮保持溝23の内周の一側は、仮保持溝23内に後述する回転規制部47(図5(a),(b)参照)が配置された状態で、取付具30を所定方向に回転させたときに、すなわち、取付具30を図6(a)の矢印R1に示す方向に回転させたときに、取付具30の回転規制部47に係合して、取付具30の回転を規制する、ストッパ壁24をなしている。なお、以下の説明では、この矢印R1の方向を、第1回転方向R1として説明する。すなわち、この実施形態では、仮保持溝23の内周の、第1回転方向R1側の一側が、ストッパ壁24をなしている。
また、図2に示すように、挿通孔20を表側から見たときに(取付部材10の面方向に対して直交する方向から見たときに)、この実施形態のストッパ壁24は、挿通孔20の軸孔21の中心C1を通り、かつ、前記一対の第1切欠き溝22,22の配列方向に沿った直線L1に直交する直線L2を、第1回転方向R1に対してやや超えた位置において、前記直線L2と平行な直線状をなすように形成されている。
更に、各仮保持溝23の内周の他側は、仮保持溝23内に回転規制部47が配置された状態で、図6(b)の矢印R2に示すように、取付具30を、前記矢印R1の方向とは反対方向に回転させたときに、回転規制部47とストッパ壁24との係合を解除すると共に、取付具30の回転を許容できる形状とされている(図2参照)。なお、以下の説明では、上記矢印R2の方向を、第1回転方向R1とは反対方向の、第2回転方向R2として説明する。
図2に示すように、各仮保持溝23の内周の他側(仮保持溝23の、前記ストッパ壁24に対して周方向に対向する側部)は、R状に丸みを帯びた形状とされた、押圧部25をなしている。すなわち、この実施形態では、仮保持溝23の内周の、第2回転方向R2側の他側が、押圧部25をなしている。この押圧部25は、図6(b)に示すように、取付具30を所定方向とは反対方向、すなわち、第2回転方向R2に回転させたときに、取付具30の回転規制部47を押圧して、弾性係合片40を軸部33の径方向内側に撓み変形させる部分となっている(図6(c)参照)。
また、図2に示すように、押圧部25の、挿通孔20の中心C1からの最小距離D1は、図5(b)に示される、回転規制部47の、軸部33の軸心C2からの最大距離D2よりも、小さくなるように形成されている。
更に図2に示すように、各第1切欠き溝22の、挿通孔20の中心C1側に向く一対の角部26,27(軸孔21との境界部における一対の角部)は、次のような形状となっている。すなわち、各第1切欠き溝22の、押圧部25側の一方の角部26(取付具30の第1回転方向R1側において、押圧部25に近接する角部)は、R状に丸みを帯びた形状となっている。一方、各第1切欠き溝22の、ストッパ壁24側の他方の角部27(取付具30の第2回転方向R2側において、ストッパ壁24に近接する角部)は、鋭利で角ばった形状となっている。
したがって、図7(a)に示すように、第1切欠き溝22内に取付具30の回転規制部47が位置した状態で、取付具30を第1回転方向R1側に回転させたときには、R状をなした角部26が回転規制部47の通過を許容して、取付具30を回転させることができる。一方、上記状態で、取付具30を第2回転方向R2側に回転させようとしても、角ばった角部27に回転規制部47が係合して、その通過が阻止されて、取付具30を回転させることができない。
なお、挿通孔の形状としては、上記形状に限定されるものではない。例えば、第1切欠き溝を1個又は3個以上としたり、仮保持溝も1個又は3個以上としたりしてもよく、少なくとも、取付具の軸部が挿通可能で、かつ、取付具の係合突部が通過可能な第1切欠き溝と、弾性係合片が係合可能な仮保持溝とを有し、更に、仮保持溝の内周一側が取付具の回転を規制するストッパ壁をなし、仮保持溝の内周他側が、取付具の回転を許容できる形状とされていればよい。
また、この実施形態では、図1や図6,図7に示すように、挿通孔20を表側から見たときに、反時計方向を取付具30の第1回転方向R1とし、時計方向を取付具30の第2回転方向R2として、仮保持溝23の、第1回転方向R1側の一側をストッパ壁24とし、仮保持溝23の、第2回転方向R2側の他側を押圧部25としたが、これとは逆に、時計方向を取付具30の第1回転方向R1とし、反時計方向を取付具30の第2回転方向R2として、仮保持溝23の対応する両側部をストッパ壁24や押圧部25としてもよい。
次に、取付具30の構造について詳述する。図1や図3~5に示すように、この実施形態における取付具30は、前記挿通孔20の表側周縁に係合する、略円盤状をなした頭部31を有している。図1に示すように、この頭部31の表側には、図示しないマイナスドライバー等の工具が挿入可能な、工具挿入溝31aが形成されている。なお、図3に示すように、頭部31の裏側には、一定幅の凹溝31bが、軸部33の軸心C2を通るように形成されている。
また、以下の説明において、弾性係合片40や回転規制部47の周方向の一側とは、前記仮保持溝23の内周の一側と、同じ向きの側部を意味しており(すなわち、第1回転方向R1側の側部を意味する)、更に、弾性係合片40や回転規制部47の周方向の他側とは、前記仮保持溝23の内周の他側と、同じ向きの側部を意味している(すなわち、第2回転方向R2側の側部を意味する)。
前記頭部31の裏側中央からは、略円筒状をなした軸部33が延出されている。また、図3や図5(b)に示すように、この軸部33の内周には、長板状をなした板状部33aが、軸部33の軸心C2を通る直線L3に沿って配置されており、その両側部が軸部33の対向する内周面に連結され、軸部33の補強が図られている。なお、この軸部33は、取付部材10の挿通孔20と、被取付部材1の取付孔5とに挿入される。また、軸部としては、挿通孔及び取付孔に挿入可能であればよいが、取付具30の第2回転方向R2側への回転時に、弾性係合片40の径方向内側への撓みを許容するための、空隙を有する形状が好ましい。
更に、軸部33の延出方向の先端部の外周であって、周方向に対向する箇所からは、径方向外側に向けて、一対の係合突部35,35が突出されている。ここでは、前記板状部33aと同様に、軸部33の軸心C2を通る直線L3上に、一対の係合突部35,35が配列されている(図5(b)参照)。
そして、これらの一対の係合突部35,35は、挿通孔20の一対の第1切欠き溝22,22を通過すると共に、取付孔5の一対の第2切欠き溝7,7を通過し、かつ、一対の第2切欠き溝7,7から挿出させた状態で、取付具30を第2回転方向R2側に回転させることで、取付孔5の裏側(取付部材10との対向面とは反対側)周縁に係合するようになっている。また、各係合突部35の、軸部33の先端側の外面には、テーパ面35aが形成されており、取付具30の軸部33を挿通孔20や取付孔5に挿入していく際に、それらの孔の内周に引っ掛かりにくくする。
更に図3や図5に示すように、前記軸部33の、頭部31側の外周であって、前記一対の係合突部35,35の配列方向(直線L3に沿った方向)に対して直交する位置(直線L3に直交する直線L4に沿った位置)には、前記凹溝31bに連通する一対のスリット36,36を介して、一対の弾性係合片40,40が、軸部33の径方向内側及び径方向外側に向けて撓み変形可能となるように形成されている。
また、図3や図4(a)に示すように、各弾性係合片40は、その基端側が、頭部31から離反した位置で軸部33に連結されており、先端側(自由端側)が頭部31側に向けて近接して配置されている。また、図4(a)や図5(b)に示すように、各弾性係合片40は、その周方向の両側部が互いに平行となるように形成されている。更に図4(b)や図5(a)に示すように、各弾性係合片40の外面41は、基端側から先端側に向けて、軸部33の外周からの突出高さが次第に高くなり、かつ、円弧状に湾曲した形状となっている。また、図5(a),(b)に示すように、各弾性係合片40の内面43は、前記外面41に対応して、円弧状に湾曲した形状となっている。
更に図5に示すように、各弾性係合片40の、頭部31側に近接する先端側には、挿通孔20の裏側(被取付部材1との対向面側)に係合する係合段部45が、弾性係合片40の径方向外側に向けて突出して設けられている。図4(b)に示すように、この実施形態の係合段部45は、弾性係合片40の、軸部33の外周から最も突出した頂部から、弾性係合片40の先端に向けて、次第に突出高さが低くなる傾斜した形状となっている。なお、図5(a),(b)に示すように、係合段部45の、径方向外側に最も突出する部分を、最外径部45aとする。また、係合段部45の、最外径部45aから径方向内側に引き込んだ位置には、図5(a)に示すように、円弧状をなした引き込み部45bが設けられている。
なお、この実施形態における一対の弾性係合片40,40は、一対の係合突部35,35を一対の第1切欠き溝22,22に整合させて、取付具30を挿通孔20に挿通させた状態で、挿通孔20の軸孔21の裏側周縁に係合して、取付部材10に取付具30を仮保持させると共に、その状態で、取付具30が第2回転方向R2側に回転して、図7(a)に示すように、一対の係合突部35,35が、一対の第1切欠き溝22,22に直交する位置となっても、第1切欠き溝22と軸孔21との境界部分に係合して、挿通孔20から取付具30が脱落しないようになっている。
更に、各弾性係合片40には、係合段部45に対して頭部31側に連設され、かつ、弾性係合片40が仮保持溝23に係合した状態で、図6(a),(b)に示すように、該仮保持溝23内に配置される、回転規制部47が設けられている。
図5(a)に示すように、この実施形態における回転規制部47は、係合段部45の最外径部45aよりも引き込まれた引き込み部45bから、弾性係合片40の径方向外側へ向けて、係合段部45の最外径部45aからは突出しない長さで突出されている。すなわち、図5(b)に示すように、回転規制部47の、軸部33の外周からの最大突出長さA1は、係合段部45の最外径部45aの、軸部33の外周からの突出長さA2よりも小さくなるように設けられている。
更に回転規制部47は、係合段部45の周方向の他側であって、図6(a),(b)に示すように、仮保持溝23内に配置された状態で、仮保持溝23の内周の他側に寄った位置に設けられている。すなわち、図5(a),(b)に示すように、回転規制部47の周方向の他側(第2回転方向R2に向く側部)が、弾性係合片40の周方向の他側(第2回転方向R2に向く側部)に対して、段差がなく面一となるように設けられている。
また、回転規制部47の、周方向に沿った幅B1は、係合段部45の周方向に沿った幅B2よりも小さくなるように設けられている。更に、図5(a),(b)に示すように、回転規制部47の、取付具30の所定方向の回転方向、及び、取付具30の所定方向とは反対方向の回転方向における、両角部49,48、すなわち、回転規制部47の、取付具30の回転を規制する第1回転方向R1側の角部49、及び、取付具30の回転を許容する第2回転方向R2側の角部48は、R状に丸みを帯びた形状となっている。
また、図6(a)に示すように、ストッパ壁24に回転規制部47が当接した状態で、回転規制部47と、仮保持溝23の内周の他側との間に、隙間Sが設けられている。この実施形態では、ストッパ壁24に、回転規制部47の周方向の一側(第1回転方向R1側に向く側部)が当接した状態で、回転規制部47の周方向の他側と、仮保持溝23のR状をなした押圧部25との間に、隙間Sが設けられるようになっている。
なお、以上説明した取付具の構造としては、上記態様に限定されるものではない。例えば、係合突部や弾性係合片を、1個又は3個以上としてもよい。すなわち、取付具としては、少なくとも、頭部と、軸部と、係合突部と、弾性係合片とを有し、かつ、弾性係合片に、係合段部と、回転規制部とが設けられた構造であれば、特に限定はされない。
次に上記構成をなした部材取付構造の動作について説明する。
すなわち、図1に示すように、挿通孔20の一対の第1切欠き溝22,22に、取付具30の一対の係合突部35,35を整合させて、挿通孔20の表側から取付具30を挿入していくと、一対の係合突部35,35が一対の第1切欠き溝22,22の裏側から挿出されると共に、挿通孔20の軸孔21の内周によって、各弾性係合片40の外面41がそれぞれ押圧されて、一対の弾性係合片40,40を軸部33の径方向内側に向けて撓み変形させつつ押し込まれる。その後、一対の切欠き溝22,22を、各弾性係合片40の頂部が乗り越えると、一対の弾性係合片40,40が弾性復帰して、その係合段部45,45が、挿通孔20の軸孔21の裏側周縁に係合すると共に、一対の回転規制部47,47が、挿通孔20の一対の仮保持溝23,23内に挿入配置された状態となり(図6(a),(b)参照)、図8に示すように、取付具30が取付部材10に仮保持される。
上記のように、挿通孔20の一対の仮保持溝23,23内に、取付具30の一対の回転規制部47,47が配置された状態で、取付具30が第1回転方向R1側に回転しようとしても、図6(a)に示すように、仮保持溝23の内周の一側に位置するストッパ壁24に、回転規制部47の周方向の一側が当接するので、取付具30のそれ以上の回転が規制されるようになっている。
一方、挿通孔20の一対の仮保持溝23,23内に、取付具30の一対の回転規制部47,47が配置された状態で、取付具30を第2回転方向R2側に回転させると、図6(b)に示すように、各仮保持溝23の内周の他側に位置するR状をなした押圧部25が、R状をなした角部48を介して回転規制部47を押圧して、一対の弾性係合片40,40を軸部33の径方向内側へ向けて撓み変形させる。このとき、押圧部25がR状をなしていると共に、回転規制部47の角部48もR状をなしているので、押圧部25に回転規制部47の角部48が引っ掛かることを防止して、押圧部25のR面上を角部48のR面が滑るように移動して、回転規制部47が押圧されるようになっている。更に取付具30を第2回転方向R2側に回転させると、図6(c)に示すように、各弾性係合片40が更に軸部33の径方向内側に撓み変形していき、各弾性係合片40に設けた回転規制部47が各第1切欠き溝22に至ると、一対の弾性係合片40,40がそれぞれ弾性復帰して、図7(a)に示すように、一対の第1切欠き溝22,22内に配置される。
更に図7(a)に示すように、挿通孔20の一対の第1切欠き溝22,22内に、取付具30の一対の弾性係合片40,40及び一対の回転規制部47,47が配置された状態で、再度、取付具30を第1回転方向R1側に回転させると、図7(b)に示すように、各第1切欠き溝22の、押圧部25側のR状をなした角部26によって、R状をなした角部49を介して回転規制部47を押圧して、一対の弾性係合片40,40を軸部33の径方向内側へ向けて撓み変形させる。このとき、第1切欠き溝22の角部26がR状をなしていると共に、回転規制部47の角部49もR状をなしているので、第1切欠き溝22の角部26に回転規制部47の角部49が引っ掛かることを防止して、角部26のR面上を角部49のR面が滑るように移動して、回転規制部47が押圧されるようになっている。その後、各回転規制部47が各仮保持溝23に至ると、各弾性係合片40がそれぞれ弾性復帰して、図6(a),(b)に示すように、一対の仮保持溝23,23内に、一対の回転規制部47,47が挿入配置される。
一方、図7(a)に示す状態から、取付具30を第2回転方向R2側に更に回転させた場合には、各第1切欠き溝22の、ストッパ壁24側の角ばった角部27に、回転規制部47の周方向の他側が当接するので、取付具30の回転が規制されるようになっている。
すなわち、この実施形態においては、図6(a),(b)に示すように、仮保持溝23内に回転規制部47が配置された状態で、取付具30を第1回転方向R1側に回転させると、仮保持溝23のストッパ壁24により取付具30が回転規制され、取付具30を第2回転方向R2側に回転させると、仮保持溝23の押圧部25により取付具30の回転が許容される。一方、図7(a)に示すように、第1切欠き溝22内に回転規制部47が配置された状態で、取付具30を第2回転方向R2側に回転させると、第1切欠き溝22の角部27により取付具30が回転規制され、取付具30を第2回転方向R1側に回転させると、第1切欠き溝23の角部26により取付具30の回転が許容される。このように、回転規制部47が仮保持溝23又は第1切欠き溝22のどちらに位置するかで、取付具30の回転を規制する回転方向、及び、取付具30の回転を許容する回転方向が、異なるようになっている。
次に、上記構造からなる部材取付構造の作用効果について説明する。
まず、図1に示すように、取付部材10の挿通孔20の一対の第1切欠き溝22,22に、取付具30の一対の係合突部35,35を整合させて、挿通孔20の表側から取付具30を挿入していくことで、一対の弾性係合片40,40の係合段部45,45が、挿通孔20の軸孔21の裏側周縁に係合すると共に(図9(a)参照)、一対の回転規制部47,47が、挿通孔20の一対の仮保持溝23,23内に挿入配置された状態で(図6(a),(b)参照)、図8に示すように、取付具30を取付部材10に仮保持することができる。この状態で、図6(a)に示すように、取付具30を第1回転方向R1側、すなわち、仮保持溝23のストッパ壁24側に回転させようとすると、回転規制部47の周方向他側部が、ストッパ壁24に当接するので、取付具30の回転を規制することができる。
以上のように、この取付構造においては、取付部材10の厚さ方向の全域に亘って仮保持溝23を形成すると共に、この仮保持溝23の内周を利用して、その一側にストッパ壁24を設けたので、取付部材10が薄い板厚のリッド等であっても、取付具30を確実に仮保持することができると共に、その回転規制を確実に図ることができる。
そして、上記のように、取付部材10に取付具30を仮保持した後、被取付部材1の取付孔5の一対の第2切欠き溝7,7に、取付具30の一対の係合突部35,35を整合させて、取付孔5の表側(取付孔5の、取付部材10との対向面側)から取付具30を挿入しつつ、被取付部材1の表側に取付部材10を重ね合わせる。すると、一対の係合突部35,35が、一対の第2切欠き溝7,7からそれぞれ挿出すると共に、被取付部材1の表側に取付部材10が当接した状態となる。
この状態で、図6(b)に示すように、取付具30を第2回転方向R2側、すなわち、仮保持溝23の押圧部25側に回転させると、R状の押圧部25が、R状の角部48を介して回転規制部47を押圧して、一対の弾性係合片40,40を軸部33の径方向内側へ向けて撓み変形させつつ回転していき(図6(c)参照)、各回転規制部47が各第1切欠き溝22に至ると、各弾性係合片40がそれぞれ弾性復帰する(図7(a)参照)。
その結果、図7(a)に示すように、取付具30の一対の弾性係合片40,40が、挿通孔20の一対の第1切欠き溝22,22内に配置されると共に、図9(b)に示すように、取付具30の一対の係合突部35,35が、取付孔5の第2切欠き溝7,7のない位置に移動して、取付孔5の裏側周縁に係合するので、取付具30の頭部31と係合突部35とによって、被取付部材1と取付部材10とが挟み込まれることとなり、取付具30を介して取付部材10を被取付部材1に取付けることができる。
また、被取付部材1から取付部材10を取外したい場合には、取付具30の一対の係合突部35,35が取付孔5の裏側周縁に係合し、かつ、挿通孔20の一対の第1切欠き溝22,22内に、取付具30の一対の弾性係合片40,40及び一対の回転規制部47,47が配置された状態から(図7(a),図9(b)参照)、再度、取付具30を第1回転方向R1側に回転させる。すると、各第1切欠き溝22のR状の角部26によって、R状の角部49を介して回転規制部47を押圧して、一対の弾性係合片40,40を軸部33の径方向内側に撓み変形させつつ回転させ(図7(b)参照)、各回転規制部47が各仮保持溝23に至ると、各弾性係合片40がそれぞれ弾性復帰する(図6(a),(b)参照)。その結果、取付具30の一対の係合突部35,35が、挿通孔20の一対の第1切欠き溝22,22及び取付孔5の一対の第2切欠き溝7,7に概ね整合する位置となるので、この状態で被取付部材1の表側から取付部材10を引き離すことで、取付孔5から取付具30を引き抜くことができ、被取付部材1から取付部材10を取外すことができる。
また、図2や図6(b)に示すように、この実施形態においては、仮保持溝23の内周の他側は、取付具30を第2回転方向R2に回転させたときに、回転規制部47を押圧して、弾性係合片40を径方向内側に撓ませる、押圧部25をなしている。
上記態様の場合、取付部材10に取付具30を仮保持した後、被取付部材1に取付部材10を取付けるべく、取付具30の軸部33を被取付部材1の取付孔5に挿入して、第2回転方向R2に回転させると、押圧部25によって、回転規制部47が押圧されて、弾性係合片40が径方向内側に撓むので、取付具30を第2回転方向R2側に回転させやすくすることができる。また、図8に示すように、取付部材10に取付具30が仮保持された状態で、被取付部材1に取付部材10を取付ける前に、不意の外力等によって、取付具30が第2回転方向R2に回転しようとしても、押圧部25が回転規制部47に当接して、その回転をある程度規制することができる。
更に、この実施形態においては、図5に示すように、回転規制部47の、取付具30の所定方向の回転方向(ここでは第1回転方向R1)及び取付具30の所定方向とは反対方向の回転方向(ここでは第2回転方向R2)における、両角部49,48がR状をなすと共に、挿通孔20の押圧部25、及び、第1切欠き溝22の押圧部25側の角部26がR状をなしている。そのため、図6(b)に示すように、挿通孔20に取付具30が仮保持された状態から、被取付部材1に取付部材10を取付すべく、取付具30を第2回転方向R2に回転させて、その一対の係合突部35,35を取付孔5の裏側周縁に係合させる場合や、被取付部材1から取付部材10を取外すべく、取付具30を第1回転方向R1に回転させて、取付具30の一対の係合突部35,35と取付孔5の係合とを解除させる場合、すなわち、取付具30を第1回転方向R1や第2回転方向R2のいずれの方向に回転させる際に、取付具30をスムーズに回転させることができ、取付部材10の取付作業性や取外し作業性を向上させることができる。なお、回転規制部47の取付具30の第1回転方向R1及び第2回転方向R2における、両角部49,48がR状をなしているか、又は、挿通孔20の押圧部25、及び、第1切欠き溝22の押圧部25側の角部26がR状をなしていれば、上記と同様の効果を得ることができる。
また、この実施形態における回転規制部47は、図5に示すように、係合段部45の、径方向外側に最も突出する部分である、最外径部45aよりも、引き込まれた位置(引き込み部45b)から、突出していると共に、その周方向に沿った幅B1は、係合段部45の周方向に沿った幅B2よりも小さくなるように設けられているので、弾性係合片40の外径が大きくなることを抑制しつつ、係合段部45の、挿通孔20の裏側周縁に対する、かかり代を大きく確保することができる。
更に図5(a)に示すように、この実施形態においては、回転規制部47は、係合段部45の周方向の他側であって、仮保持溝23内に配置された状態で、仮保持溝23の内周の他側に寄った位置に設けられているので、係合段部45の、挿通孔20の裏側周縁に対する、かかり代をより大きく確保することができる。
また、この実施形態においては、図6(a)に示すように、ストッパ壁24に回転規制部47が当接した状態で、回転規制部47と、仮保持溝23の内周の他側との間に、隙間Sが設けられているので、取付具30を第2回転方向R2側に、より回転させやすくすることができると共に、取付具30の、第2回転方向R2側への回転力を高めて、一対の弾性係合片40,40を、軸部33の径方向内側へ向けて撓み変形させやすくすることができる。
図10及び図11には、本発明に係る部材取付構造の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この実施形態における部材取付構造は、取付具30Aの回転規制部47Aの形状が、前記実施形態における取付具30の回転規制部47と異なっている。図10には、取付具30Aの頭部を切断した状態の断面斜視図が示されているが、同図10に示すように、この実施形態の取付具30Aの回転規制部47Aは、弾性係合片40の頭部側であって、係合段部45の最外径部45aよりも引き込まれた位置から、弾性係合片40の周方向全域に亘って、かつ、弾性係合片40の径方向外側へ向けて、回転規制部47Aが、係合段部45の最外径部45aから突出しない長さで突出されている。
また、この回転規制部47Aは、取付具30Aの所定方向とは反対方向の回転方向、すなわち、回転を許容する回転方向である第2回転方向R2側の角部48が、R状に丸みを帯びた形状をなしており、一方、取付具30の所定方向の回転方向、すなわち、回転を規制する回転方向である第1回転方向R1側の角部49が、エッジ状に角ばった形状をなしている。
更に図11に示すように、取付部材10に設けられた挿通孔20Aは、取付具30Aの弾性係合片40が係合可能とされた仮保持溝23Aが、回転規制部47Aの形状に対応して、前記実施形態の仮保持溝23(図6,7参照)よりも幅広に形成されている。
そして、この実施形態では、図11(a)に示すように、取付具30Aの一対の回転規制部47A,47Aが、挿通孔20Aの一対の仮保持溝23A,23A内に挿入配置された状態で、取付具30Aを第1回転方向R1側、すなわち、仮保持溝23Aのストッパ壁24側に回転させようとすると、回転規制部47Aの周方向の一側が、ストッパ壁24に当接するので、取付具30Aの回転を規制することができる。
また、図11(a)に示す状態から、取付具30Aを第2回転方向R2側、すなわち、仮保持溝23Aの押圧部25側に回転させると、R状の押圧部25が、R状の角部48を介して回転規制部47Aを押圧して、一対の弾性係合片40,40を軸部33の径方向内側へ向けて撓み変形させて、取付具30Aの回転が許容されるので、前記実施形態と同様に、取付具30Aを介して取付部材10を被取付部材1に取付けることができる。
一方、図11(b)に示す状態から、取付具30Aを第1回転方向R1側に回転させた場合には、回転規制部47Aはエッジ状の角部49を有するものの、各第1切欠き溝22のR状の角部26によって回転規制部47Aが押圧されて、一対の弾性係合片40,40を軸部33の径方向内側に撓み変形させるので、取付具30Aの回転が許容されて、取付孔5からの取付具30Aの引き抜きが可能となり、被取付部材1から取付部材10を取外すことができる。
なお、図11(b)に示す状態から、取付具30Aを第2回転方向R2側に回転させた場合には、各第1切欠き溝22の、ストッパ壁24側の角ばった角部27に、回転規制部47Aの周方向の他側が当接するので、取付具30Aの回転が規制される。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。