本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下では電子制御ユニットを「ECU(Electronic Control Unit)」と称する。
図1は、本開示の実施の形態に係る電力伝送システムの全体構成図である。図1を参照して、この電力伝送システムは、送電装置100と、受電装置200と、系統電源300とを含む。送電装置100は、たとえば充電器に設けられる。こうした充電器は、住宅、公共施設、商業施設、宿泊施設、駐車場などに設置され得る。受電装置200は、たとえば車両10に搭載される。車両10は、バッテリ400と、車両ECU410と、通信部420と、報知部430とをさらに備える。車両10は、バッテリ400に蓄えられた電力のみを用いて走行可能な電気自動車であってもよいし、バッテリ400に蓄えられた電力とエンジン(図示せず)の出力との両方を用いて走行可能なハイブリッド車であってもよい。系統電源300は、電力系統(電力会社等によって提供される電力網)から電力の供給を受ける交流電源である。系統電源300の例としては、家庭用電源(たとえば、電圧200V、周波数50Hzの交流電源)が挙げられる。系統電源300は、接地部Gに接地されている。
たとえば、送電装置100は地面(駐車場の床面など)に設置され、受電装置200は車両10の下面に設置される。送電装置100は、車両10の受電装置200が送電装置100に対向するように車両10の位置合わせが行なわれた状態において、受電装置200へ磁界を通じて非接触で送電するように構成される。受電装置200は、送電装置100からの電力を非接触で受電する。
送電装置100は、系統電源300から受ける電力に所定の電力変換処理を行なうことにより送電用電力を得て、その送電用電力を受電装置200へ非接触で送電するように構成される。送電装置100は、送電用電力にノイズが含まれないようにノイズを除去するノイズフィルタ120,140,160と、上記電力変換処理を行なう電力変換部と、この電力変換部を制御する送電ECU310とを備える。電力変換部は、インバータ130と、AC/DCコンバータ150とを含む。また、送電装置100は、上記受電装置200への非接触送電を行なうLC共振部R1と、受電装置200との無線通信を行なう通信部320とをさらに含む。
送電装置100の端子T1(第1電源端子)は系統電源300の第1出力端子に接続され、送電装置100の端子T2(第2電源端子)は系統電源300の第2出力端子に接続される。また、送電装置100の端子T3(接地端子)は系統電源300の接地部Gと電気的に接続されている。送電装置100の端子T1~T3は、たとえばアース端子付き電源プラグによって具現化される。送電装置100の電源プラグを系統電源300のコンセントに接続する(たとえば、差し込む)ことによって、送電装置100は系統電源300から電力の供給を受けることが可能になる。また、電源プラグを使用しない例としては、送電装置100の端子T1~T3が、図示しない配線用遮断器(いわゆるブレーカー)を介して系統電源300の各端子に接続される例が挙げられる。この場合、ユーザが配線用遮断器を操作することによって、系統電源300と送電装置100との間で接続/遮断の切替えを行なうことができる。
送電装置100の入力部(より特定的には、端子T1~T3とAC/DCコンバータ150との間)には、ノイズフィルタ160が設けられている。ノイズフィルタ160は、端子T1,T2に入力される電力に含まれるノイズを除去して、ノイズが除去された電力をAC/DCコンバータ150へ出力する。以下、送電装置100の端子T1とAC/DCコンバータ150の第1入力端子とをつなぐ電線を「電力線PL1」、送電装置100の端子T2とAC/DCコンバータ150の第2入力端子とをつなぐ電線を「電力線PL2」、送電装置100の端子T3とつながって接地部Gと同じ電位になっている電線を「接地線GL」と称する。
ノイズフィルタ160は、電力線PL1,PL2に設けられたコイル164,165と、電力線PL1と接地線GLとの間に設けられたコンデンサ161a,162aと、電力線PL2と接地線GLとの間に設けられたコンデンサ161b,162bと、電力線PL1と電力線PL2との間に設けられたコンデンサ163とを含む。コイル164,165は、コモンモードノイズを除去するコモンモードチョークコイル(ラインフィルタ)である。コンデンサ163は、ディファレンシャルモードノイズ(ノーマルモードノイズ)を除去するアクロスザラインコンデンサ(以下、「Xコンデンサ」とも称する)であり、コンデンサ161a,161b,162a,162bは、コモンモードノイズを除去するラインバイパスコンデンサ(以下、「Yコンデンサ」とも称する)である。
AC/DCコンバータ150は、ノイズフィルタ160からの入力電力(より特定的には、交流電力)を整流及び変圧してインバータ130へ出力する。AC/DCコンバータ150は、整流回路152と、整流回路152の出力側に設けられたDC/DCコンバータ151とを含む。整流回路152は、たとえば、ダイオードブリッジ回路と平滑用コンデンサとを含んで構成され、交流電力を整流して直流電力を出力する。DC/DCコンバータ151は、たとえば、チョークコイル、ダイオード、平滑用コンデンサ、及びスイッチQ5(たとえば、電力用半導体スイッチング素子)を含んで構成されるブースト型DC/DCコンバータである。スイッチQ5は、送電ECU310からの駆動信号に従って制御される。スイッチQ5の駆動信号(より特定的には、方形波の電圧信号)のデューティ比(スイッチQ5がONしている時間の割合)が大きくなるほどAC/DCコンバータ150の出力電圧(ひいては、インバータ130の入力電圧)が高くなる。AC/DCコンバータ150は、入力される電力をたとえば400Vに昇圧して、電圧400Vの直流電力をインバータ130へ出力する。
AC/DCコンバータ150とインバータ130との間には、ノイズフィルタ140が設けられている。ノイズフィルタ140は、AC/DCコンバータ150の出力電力に含まれるノイズを除去して、ノイズが除去された電力をインバータ130へ出力する。以下、AC/DCコンバータ150の第1出力端子とインバータ130の第1入力端子とをつなぐ電線を「電力線PL3」、AC/DCコンバータ150の第2出力端子とインバータ130の第2入力端子とをつなぐ電線を「電力線PL4」と称する。
ノイズフィルタ140は、電力線PL3と接地線GLとの間に設けられたコンデンサ141a(Yコンデンサ)と、電力線PL4と接地線GLとの間に設けられたコンデンサ141b(Yコンデンサ)と、電力線PL3と電力線PL4との間に設けられたコンデンサ142(Xコンデンサ)とを含む。
インバータ130は、AC/DCコンバータ150からの入力電力(より特定的には、直流電力)を所定周波数(たとえば、85kHz)の交流電力に変換してLC共振部R1へ出力するように構成される。インバータ130は、たとえば、スイッチング素子Q1~Q4(たとえば、電力用半導体スイッチング素子)を含む単相フルブリッジ回路によって構成される。インバータ130を構成する各スイッチング素子は、送電ECU310によってPWM制御される。PWM制御(デューティ制御)によってインバータ130の出力電力の大きさを調整することができる。また、インバータ130は、PWM制御のスイッチング周波数(駆動周波数)で駆動される。インバータ130の駆動周波数は、インバータ130の出力周波数、ひいては送電周波数(送電電力の周波数)と一致する。
インバータ130とLC共振部R1との間には、ノイズフィルタ120が設けられている。ノイズフィルタ120は、インバータ130の出力電力に含まれるノイズを除去して、ノイズが除去された電力をLC共振部R1へ出力する。LC共振部R1は、送電コイル101及びキャパシタ102a,102bが直列に接続されて構成される。以下、インバータ130の第1出力端子と送電コイル101の第1端子(キャパシタ102a側の端子)とをつなぐ電線を「電力線PL5」、インバータ130の第2出力端子と送電コイル101の第2端子(キャパシタ102b側の端子)とをつなぐ電線を「電力線PL6」と称する。
ノイズフィルタ120は、電力線PL5,PL6に設けられたコイル104a,104bと、電力線PL5と電力線PL6との間に設けられたコンデンサ103とを含む。コイル104a,104bは、ディファレンシャルモードノイズ(ノーマルモードノイズ)を除去するノーマルモードチョークコイルである。コンデンサ103は、Xコンデンサである。
LC共振部R1は、送電コイル101の周囲に生成される磁界を通じて、受電装置200のLC共振部R2へ非接触で送電する。LC共振部R1は直列共振回路である。送電コイル101の第1端子にはキャパシタ102a(共振用コンデンサ)が直列に接続され、送電コイル101の第2端子にはキャパシタ102b(共振用コンデンサ)が直列に接続されている。この実施の形態に係るキャパシタ102a、102bは、本開示に係る「第1キャパシタ」、「第2キャパシタ」の一例に相当する。LC共振部R1のQ値は100以上であることが好ましい。なお、高い精度で送電電力を制御するために、LC共振部R1に流れる電流を検出するための電流センサ(図示せず)を設けてもよい。
電力線PL6の送電コイル101とキャパシタ102bとの間の所定部位(以下、「検出部位P」とも称する)には、スイッチ170を介して信号生成部180が接続されている。スイッチ170は、送電ECU310によって開閉(オフ/オン)制御され、送電ECU310からの制御信号に応じてオン状態(導通状態)になったりオフ状態(遮断状態)になったりする。スイッチ170がオフされることで、信号生成部180が電力線PL6から切り離される。
スイッチ170としては、たとえば電磁式のメカニカルリレーを採用できる。ただし、SSR(Solid State Relay)とも称される半導体リレーをスイッチ170として採用してもよい。半導体リレーの例としては、サイリスタ、トライアック、又はトランジスタ(IGBT、MOSFET、バイポーラトランジスタ等)から構成されるリレーが挙げられる。
信号生成部180は、スイッチ170がオン状態であるときに、送電装置100の電力経路(より特定的には、電力線PL6)における検出部位Pの地絡抵抗(すなわち、接地部Gに対する電気抵抗)の大きさを示す電圧信号(以下、「地絡診断信号」とも称する)を生成するように構成される。より具体的には、信号生成部180は、インピーダンス素子181及び電圧印加回路182を含む。インピーダンス素子181と電圧印加回路182とは互いに直列に接続されている。インピーダンス素子181の一方端はスイッチ170を介して検出部位Pに接続され、インピーダンス素子181の他方端は電圧印加回路182に接続されている。電圧印加回路182の一方端はインピーダンス素子181に接続され、電圧印加回路182の他方端は接地線GLに接続されている。電圧印加回路182は接地線GLを介して接地部Gと電気的に接続されている。
電圧印加回路182は、インピーダンス素子181を介して検出部位Pに所定の電圧を印加するように構成される。電圧印加回路182としては、たとえば、所定周波数の交流電圧を検出部位Pに印加する交流電圧印加回路(発振回路など)を採用できる。電圧印加回路182によって検出部位Pに印加される電圧(以下、単に「印加電圧」とも称する)は、たとえば低周波数(好ましくは、1Hz以上10Hz以下)の電圧である。この実施の形態では、印加電圧として、周波数2.5Hz、電圧(振幅)±5Vの正弦波交流電圧を採用する。
インピーダンス素子181は、信号生成部180における検出抵抗として機能する。インピーダンス素子181としては、検出抵抗として機能する任意のインピーダンス素子を採用し得るが、この実施の形態では抵抗素子を採用する。検出部位Pと電圧印加回路182との間に検出抵抗(インピーダンス素子181)が設けられることによって、電圧印加回路182から検出部位Pに印加される電圧に対して、検出部位Pの地絡抵抗と信号生成部180の検出抵抗とによる分圧器が形成される。このため、電圧印加回路182が上記印加電圧を検出部位Pに印加したときにインピーダンス素子181に加わる電圧は、検出部位Pの地絡抵抗の大きさに応じて変化する。詳しくは、検出部位Pにおいて地絡が生じていないときには、検出抵抗の大きさに対して地絡抵抗が十分大きいため、分圧器における電圧降下(分圧)はほとんど生じない。他方、検出部位Pにおいて地絡が生じると、地絡抵抗が小さくなり、上記の分圧器による分圧(電圧降下)によってインピーダンス素子181に加わる電圧が小さくなる。この実施の形態では、インピーダンス素子181に加わる電圧(分圧値)が、地絡診断信号(すなわち、検出部位Pの地絡抵抗の大きさを示す電圧信号)に相当する。
上記のように生成される地絡診断信号は、信号生成部180の出力端子Tsに接続される信号線SLを介して電圧検出回路190へ出力される。電圧検出回路190は、交流電圧信号である地絡診断信号から振幅の大きさを示す信号を抽出して送電ECU310へ出力するように構成される。送電コイル101において地絡が生じる(すなわち、検出部位Pの地絡抵抗が小さくなる)と、地絡診断信号の振幅が小さくなる傾向があるため、地絡診断信号の振幅の大きさに基づいて、送電コイル101の地絡の有無を判定することができる。
電圧検出回路190は、インピーダンス変換を行なうバッファ回路191と、ノイズを除去するフィルタ回路192と、ピーク値を保持するピークホールド回路193とを含んで構成される。信号生成部180からの入力信号(地絡診断信号)は、バッファ回路191及びフィルタ回路192を介してピークホールド回路193に入力される。バッファ回路191としては、公知のバッファ回路(ボルテージフォロア等)を採用できる。フィルタ回路192は、たとえば電圧印加回路182による印加電圧の周波数(たとえば、2.5Hz)に対応する通過帯域を有するBPF(バンドパスフィルタ)である。ただしこれに限られず、主なノイズが高周波ノイズである場合には、BPFに代えてLPF(ローパスフィルタ)を用いてもよい。
ピークホールド回路193は、たとえば、高い入力インピーダンスを確保するためのバッファアンプと、ピーク電圧を保持するためのコンデンサと、リセットを行なうためのスイッチ(以下、「リセットスイッチ」とも称する)と(いずれも図示せず)を含んで構成される。リセットスイッチは、上記コンデンサに並列に接続される接地線に設けられ、送電ECU310によって開閉(オフ/オン)制御される。
ピークホールド回路193においてピークホールドを行なう場合には、リセットスイッチをオフ状態にする。リセットスイッチがオフ状態であるときには、コンデンサの電圧が入力電圧と同じになるようにコンデンサに電荷が蓄積される。入力電圧がコンデンサの電圧よりも低くなっても、蓄積された電荷は保持される。これにより、コンデンサには入力電圧のピーク値に対応する電荷が保持され、ピークホールド回路193からは、コンデンサの電圧(すなわち、入力電圧のピーク値)を示す電圧信号が出力される。
フィルタ回路192によってノイズが除去された地絡診断信号がピークホールド回路193に入力されると、ピークホールド回路193において上記のようにピークホールドが行なわれる。これにより、ピークホールド回路193のコンデンサには、地絡診断信号のピーク電圧(すなわち、振幅の大きさ)に対応する電荷が保持される。そして、ピークホールド回路193は、地絡診断信号の振幅の大きさを示す電圧信号を送電ECU310へ出力する。
他方、ピークホールド回路193においてコンデンサに保持されたピーク電圧のリセットを行なう場合には、送電ECU310によってリセットスイッチがオンされる。送電ECU310からのリセット信号がピークホールド回路193に入力されると、リセットスイッチがオンされ、ピークホールド回路193のコンデンサから電荷が放出される。
送電ECU310は、演算装置、記憶装置、入出力ポート、及び通信ポート(いずれも図示せず)等を含む。演算装置は、CPU(Central Processing Unit)を含むマイクロプロセッサによって構成される。記憶装置は、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、プログラム等を保存するストレージ(ROM(Read Only Memory)や、書き換え可能な不揮発性メモリ等)とを含む。送電ECU310は、送電装置100における各種機器の制御を行なう。詳細は後述するが、送電ECU310は、たとえばピークホールド回路193の出力信号(地絡診断信号の振幅の大きさを示す電圧信号)を用いて、送電コイル101の地絡の有無を判定するように構成される。各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
通信部320は、受電装置200との間で無線通信を行なうための通信インターフェースである。通信部320は、受電装置200へ情報を送ったり、受電装置200からの情報を受け取ったりする。
なお、送電ECU310、通信部320、信号生成部180、及び電圧検出回路190等は、系統電源300の電力を用いて生成される駆動電力により動作してもよいし、他の電源(図示せず)から電力の供給を受けて動作してもよい。
受電装置200は、LC共振部R2と、コンデンサ203と、コイル204a,204bと、整流器205とを含む。
LC共振部R2は、受電コイル201及びキャパシタ202a,202bが直列に接続されて構成される。受電コイル201の両端にキャパシタ202a,202bが接続されている。受電コイル201は、送電装置100の送電コイル101から磁界を通じて非接触で受電する。LC共振部R2のQ値は100以上であることが好ましい。
コンデンサ203及びコイル204a,204bによってノイズフィルタが形成される。このノイズフィルタによって上記受電時に発生する高調波ノイズが抑制される。整流器205は、受電コイル201によって受電された交流電力を整流して、整流された電力(直流電力)をバッテリ400側へ出力する。整流器205は、たとえば4つのダイオードからなるダイオードブリッジ回路によって構成される。
また、整流器205とバッテリ400との間には、充電リレー(図示せず)が設けられる。整流器205によって整流された電力(直流電力)は受電装置200から出力され、充電リレーを介してバッテリ400に供給される。充電リレーは、車両ECU410によってON/OFF制御され、受電装置200によるバッテリ400の充電時にON(導通状態)にされる。
バッテリ400は、再充電可能な直流電源である。バッテリ400は、たとえば二次電池(リチウムイオン電池又はニッケル水素電池等)を含んで構成される。バッテリ400は、受電装置200から供給される電力を蓄えて、図示しない車両駆動装置(インバータ及び駆動モータ等)へ電力を供給する。
バッテリ400に対しては、バッテリ400の状態を監視する監視ユニットが設けられている。監視ユニットは、バッテリ400の状態(温度、電流、電圧等)を検出する各種センサを含み、検出結果を車両ECU410へ出力する。車両ECU410は、監視ユニットの出力に基づいてバッテリ400の状態(SOC(State Of Charge)等)を検出するように構成される。SOCは、蓄電残量を示し、たとえば、満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を0~100%で表わしたものである。
車両ECU410は、演算装置、記憶装置、入出力ポート、及び通信ポート(いずれも図示せず)等を含み、車両10における各種機器の制御を行なう。演算装置は、CPUを含むマイクロプロセッサによって構成される。記憶装置はRAM及びROMを含む。ROMは、プログラム等を保存する。車両ECU410は、たとえば車両10の走行制御やバッテリ400の充電制御等を実行する。各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
通信部420は、送電装置100との間で無線通信を行なうための通信インターフェースである。送電装置100の通信部320と車両10の通信部420との間で無線通信が行なわれることによって、送電ECU310と車両ECU410との間で情報のやり取りを行なうことが可能になる。
報知部430は、車両ECU410から要求があったときに、ユーザ(たとえば、車両10の運転者)へ所定の報知処理を行なうように構成される。報知部430の例としては、表示装置、スピーカー、ランプ(たとえば、警告ランプ)が挙げられる。ユーザへの報知処理は任意であり、表示装置への表示(文字や画像等)で知らせてもよいし、スピーカーにより音(音声を含む)で知らせてもよいし、所定のランプを点灯(点滅を含む)させてもよい。
上記のような電力伝送システムにおいて、送電装置100は、系統電源300から電力の供給を受けて、供給された電力を送電コイル101から受電装置200の受電コイル201へ非接触で送電するように構成される。
ところで、系統電源から電力の供給を受ける非接触電力伝送システムにおいて電力経路の地絡の有無を診断する方法としては、零相変流器を用いる方法が知られている。しかしながら、零相変流器を用いて送電コイルの地絡の有無を判定する場合には、地絡箇所によって判定精度が変わり、地絡箇所によっては十分な判定精度を確保できなくなる可能性がある(詳細は、後述する図5参照)。
そこで、この実施の形態に係る送電装置100では、送電コイル101とキャパシタ102bとの間に位置する検出部位Pの地絡抵抗の大きさを示す電圧信号を生成し、生成された電圧信号を用いて送電コイル101の地絡の有無を判定する。より具体的には、電圧印加回路182による印加電圧がインピーダンス素子181を介して検出部位Pに印加されることによって地絡診断信号(すなわち、検出部位Pの地絡抵抗の大きさを示す電圧信号)が生成される。そして、送電ECU310が、電圧検出回路190の出力信号(詳しくは、ピークホールド回路193において上記地絡診断信号を用いて生成された信号)に基づいて送電コイル101の地絡の有無を判定する。こうすることで、地絡箇所によらず高い精度で送電コイル101の地絡の有無を判定することが可能になる(詳細は、後述する図4参照)。なお、この実施の形態に係る送電ECU310は、本開示に係る「判定部」を含む。送電ECU310においては、たとえば、演算装置と、演算装置により実行されるプログラムとによって判定部が具現化される。
図2は、送電ECU310により実行される地絡判定処理の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、ステップS110、S120、S130、S140、S150、S160(以下、単に「S110」、「S120」、「S130」、「S140」、「S150」、「S160」と称する)を含む。
送電ECU310は、所定の実行条件が成立するか否かを判断し、実行条件が成立する場合に図2の処理を実行する。実行条件は、たとえばインバータ130の非作動時(すなわち、インバータ130の出力が無いとき)に成立するように設定される。インバータ130の非作動時には、系統電源300からの電力がLC共振部R1に供給されなくなる。この実施の形態では、送電ECU310が車両10から送電開始要求を受信すると、送電コイル101から受電コイル201への送電(ひいては、送電装置100からの送電電力によるバッテリ400の充電)が開始される。送電ECU310は、送電開始時にインバータ130を作動させて、送電(ひいては、バッテリ400の充電)が終了すると、インバータ130を非作動状態にする。送電開始前にはインバータ130が非作動状態になっているため、たとえば送電ECU310が車両10から送電開始要求を受信したときに上記実行条件が成立するようにしてもよい。また、送電終了後にもインバータ130が非作動状態になるため、たとえば送電終了後に送電ECU310がインバータ130を非作動状態にしたときに上記実行条件が成立するようにしてもよい。
図2を参照して、S110では、送電ECU310がスイッチ170(リレー)をオンする。これにより、電圧印加回路182による印加電圧(たとえば、2.5Hzの交流電圧)が検出部位Pに印加され、地絡診断信号が電圧検出回路190に入力される。さらに、電圧検出回路190において、地絡診断信号の振幅の大きさを示す電圧信号(以下、「振幅信号」とも称する)が生成される。生成された振幅信号は、ピークホールド回路193から送電ECU310へ出力される。
送電ECU310は、S120において、上記振幅信号の値(すなわち、電圧信号の振幅値)を読み取り、S130において、読み取った振幅信号の値が所定値以下であるか否かを判断する。所定値は、検出部位P(ひいては、送電コイル101)の地絡判定に用いられるしきい値であり、送電コイル101の地絡発生による地絡抵抗の急激な低下を検出できるように設定される。たとえば、予め実験等により上記振幅信号の値と地絡抵抗との関係が求められて、送電コイル101の地絡が生じていないときには上記振幅信号の値が上記所定値よりも大きくなり、送電コイル101の地絡が生じることによって上記振幅信号の値が上記所定値以下になるように、上記所定値が設定される。なお、上記所定値は、固定値であってもよいし、送電装置100の状態等に応じて可変であってもよい。
振幅信号の値が所定値以下である場合(S130にてYES)には、送電コイル101の地絡が生じていると判定され、送電ECU310は、S140において、異常が生じた旨を示す警報通知を車両10へ送信する。警報通知は、送電装置100の通信部320から送信され、車両10の通信部420で受信される。そして、通信部420を通じて車両ECU410が警報通知を受信すると、車両ECU410は報知部430に所定の報知処理を行なわせる。車両ECU410は、たとえば車両10内の運転者が視認可能な位置に設置された警告ランプ(報知部430)を点灯させて、異常が生じたことを車両10の運転者に知らせる。
なお、送電ECU310は、S140において、送電コイル101の地絡が生じた旨を記憶装置に記録してもよい。たとえば、送電ECU310は、記憶装置内のダイアグ(自己診断)のフラグをオンする(フラグの値を0から1にする)ことにより、送電コイル101の地絡が生じた旨を記憶装置に記録してもよい。
上記S140の処理後、処理はS150へ進む。また、振幅信号の値が所定値よりも大きい場合(S130にてNO)には、送電コイル101の地絡が生じていないと判定され、上記S140の処理が行なわれることなく、処理がS150に進む。
S150では、送電ECU310がピークホールド回路193のリセットスイッチをオンする。これにより、ピークホールド回路193のコンデンサから全ての電荷が放出され、ピークホールド回路193の状態(特に、コンデンサの状態)がリセットされる。
上記S150の処理後、送電ECU310は、S160においてスイッチ170(リレー)をオフする。これにより、信号生成部180(ひいては、電圧印加回路182)が電力線PL6から切り離され、電圧印加回路182による印加電圧が検出部位Pに印加されなくなる。このS160をもって、図2の一連の処理は終了する。
図3は、図1に示した電力伝送システムにおいて、第1地絡箇所A(送電コイル101の端部)及び第2地絡箇所B(送電コイル101の中間部)の各々で地絡が生じた状態を示す図である。
図3を参照して、第1地絡箇所Aで地絡が生じた場合には、第1地絡箇所Aと接地線GLとの間に地絡抵抗171aが生じる。そして、信号生成部180の検出抵抗(インピーダンス素子181)と地絡抵抗171aとによる分圧値が、信号生成部180から電圧検出回路190へ出力される。一方、第2地絡箇所Bで地絡が生じた場合には、第2地絡箇所Bと接地線GLとの間に地絡抵抗171bが生じる。そして、信号生成部180の検出抵抗(インピーダンス素子181)と地絡抵抗171bとによる分圧値が、信号生成部180から電圧検出回路190へ出力される。
図4は、送電装置100において、地絡判定に用いられる検出電圧(より特定的には、ピークホールド回路193から送電ECU310へ出力される電圧信号の振幅値)と地絡抵抗との関係を示す図である。
図4を参照して、第1地絡箇所A及び第2地絡箇所Bのいずれで地絡が生じても、送電装置100における検出電圧(すなわち、電圧信号の振幅値)と地絡抵抗とは、線L1で示すような関係を有する。地絡発生時には地絡箇所によらず同じように地絡抵抗が低下する。そして、この地絡抵抗の低下に伴い、送電装置100における検出電圧が大きく低下する(線L1参照)。このため、第1地絡箇所A及び第2地絡箇所Bのいずれで地絡が生じても、上記の検出電圧に基づいて高い精度で送電コイル101の地絡の有無を判定することができる。
図5は、比較例に係る地絡判定方法において、地絡判定に用いられる零相電流と地絡抵抗との関係を示す図である。比較例に係る地絡判定方法は、送電コイル101の両端に零相変流器をつないで、零相変流器において検出される零相電流の大きさに基づいて、送電コイル101の地絡の有無を判定する方法である。
図5を参照して、この比較例に係る方法において、第1地絡箇所Aで地絡が生じた場合には、零相電流と地絡抵抗とが線L21で示すような関係を有し、地絡抵抗の低下に伴い、零相電流が大きく上昇する。一方、第2地絡箇所Bで地絡が生じた場合には、零相電流と地絡抵抗とが線L22で示すような関係を有し、地絡抵抗の低下に伴う零相電流の上昇が小さい。このため、比較例に係る方法では、送電コイル101の端部での地絡は高い精度で検出できるが、送電コイル101の中間部での地絡を高い精度で検出することは困難である。
以上説明したように、送電装置100では、接地部Gに電気的に接続される電圧印加回路182がインピーダンス素子181を介して検出部位Pに所定の電圧を印加することによって、検出部位Pの地絡抵抗の大きさを示す電圧信号(地絡診断信号)を生成する。こうした電圧信号を用いて送電コイル101の地絡の有無を判定することによって、地絡箇所によらず高い精度で送電コイル101の地絡の有無を判定することが可能になる。
また、送電装置100は、系統電源300の交流電力を直流電力に変換して出力するAC/DCコンバータ150と、AC/DCコンバータ150から出力される直流電力を所定周波数の交流電力に変換してLC共振部R1へ出力するインバータ130と、検出部位Pとインピーダンス素子181との間に配置されるスイッチ170とを備える。そして、送電ECU310が、インバータ130の非作動時に図2の処理を実行することにより、スイッチ170をオン状態にして(S110)、送電コイル101の地絡の有無を判定する(S130)。こうした構成によれば、地絡判定を行なわないときには、スイッチ170をオフ状態(遮断状態)にして信号生成部180を検出部位Pから切り離すことができる。また、地絡判定を行なうときには、スイッチ170をオン状態(導通状態)にすることで、信号生成部180を検出部位Pに接続することができる。さらに、インバータ130の非作動時にスイッチ170がオン状態になることで、LC共振部R1(ひいては、検出部位P)がインバータ130の出力の影響を受けなくなり、信号生成部180により生成される地絡診断信号に基づいて送電コイル101の地絡の有無を適切に判定することが可能になる。
インバータ130の非作動時に上記の地絡判定を実行する場合、地絡判定の実行タイミングの好適な例としては、送電開始直前(たとえば、送電開始要求が発生してから送電を開始するまでの所定タイミング)、又は送電終了直後(たとえば、送電終了後にインバータ130を非作動状態にしてから所定時間経過後のタイミング)が挙げられる。また、送電開始直前と送電終了直後との両方で上記の地絡判定を実行してもよい。
本実施の形態の送電装置100による地絡判定方法では、送電コイル101の両端に接続されたキャパシタ102a及び102b(いずれも共振用コンデンサ)が低周波電流を絶縁する。このため、カップリングコンデンサ型漏電検出方式で必要になる大容量のカップリングコンデンサを、本実施の形態の方法では必要としない。こうした方法によれば、送電装置100を大型化することなく地絡の有無を判定することができる。
上記実施の形態では、送電コイル101とキャパシタ102bとの間に検出部位Pを配置したが、送電コイル101とキャパシタ102aとの間に検出部位Pを配置し、この検出部位Pにスイッチ170を介して信号生成部180を接続してもよい。
図1に示した回路構成は適宜変更可能である。たとえば、ピークホールド回路193の代わりに比較器(オペアンプ等)を用いて、図2のS130に相当する判定(より特定的には、しきい値との比較)をアナログ回路によって行なうようにしてもよい。また、電圧印加回路182による印加電圧は、矩形波、パルス波、半波などであってもよい。電圧印加回路182としては、マルチバイブレータ、タイマ回路、インバータロジック回路なども採用できる。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。