実施するための形態について、以下に説明する。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
(1)本開示の一態様に係るPCケーブルの損傷検知方法は、PCケーブルが、複数のPC鋼線が撚り合わされたPC鋼撚り線と、前記PC鋼撚り線の長手方向に沿って配置された光ファイバーと、を有する光ファイバー付きPC鋼撚り線を含み、
前記光ファイバーの一方の端部側で発光手段を発光させ、前記光ファイバーの他方の端部まで透過した光を検知する検知工程と、
前記検知工程で検知した光の光量に基いて、前記光ファイバーが切断されているか否か判断する判断工程と、を有する。
本開示の一態様に係るPCケーブルの損傷検知方法によれば、光ファイバーの一方の端部で発光手段を発光させ、他方の端部で光を検知し、検知した光量に基づいて、光ファイバーが切断されているか否かを判断できる。そして、光ファイバーが切断されていると判断された場合には、PCケーブルに損傷があることを検知できる。
このように、本開示の一態様に係るPCケーブルの損傷検知方法によれば、検知工程で検知した光の光量により光ファイバーが切断されているか否かを判断でき、該判断に基づいてPCケーブルの損傷を検知できる。このため、特殊な測定装置を必要とせず、また検知を実施する者に特殊な技能は要求されず、PCケーブルの損傷の有無を容易に検知できる。
(2)前記PCケーブルは、複数のPC鋼線が撚り合わされたPC鋼撚り線を2本以上有していても良い。
ここでは、PCケーブルが、光ファイバーを除いたPC鋼撚り線の部分に関して、該PC鋼撚り線を2本以上有することを意味する。
PCケーブルは、既述の光ファイバー付きPC鋼撚り線のみから構成することもできるが、光ファイバー付きPC鋼撚り線以外に、光ファイバーを含まないPC鋼撚り線も含むことができる。
このため、例えばPCケーブルが光ファイバー付きPC鋼撚り線のみから構成される場合、ここでの規定は光ファイバー付きPC鋼撚り線の光ファイバーを除いたPC鋼撚り線部分の本数が2本以上であることを意味する。また、PCケーブルが光ファイバー付きPC鋼撚り線と、光ファイバーを含まないPC鋼撚り線とを有する場合、光ファイバー付きPC鋼撚り線の光ファイバーを除いたPC鋼撚り線部分の本数と、光ファイバーを含まないPC鋼撚り線の本数との合計が2本以上であることを意味する。
(3)前記PCケーブルは、前記光ファイバー付きPC鋼撚り線を2本以上有していても良い。
(4)前記PCケーブルは、前記光ファイバーを2本以上有し、
前記PCケーブルに含まれる全ての前記光ファイバーを接続し、1本の複合光ファイバーとする接続工程をさらに有し、
前記検知工程では、前記複合光ファイバーの一方の端部側で前記発光手段を発光させ、前記複合光ファイバーの他方の端部まで透過した光を検知し、
前記判断工程では、前記検知工程で検知した光の光量に基いて、前記複合光ファイバーが切断されているか否かを判断することもできる。
(5)前記判断工程において、前記複合光ファイバーが切断されていると判断された場合に、
前記複合光ファイバーを構成する前記光ファイバー間の少なくとも一部の接続を解き、2本以上の分割光ファイバーとする分割工程と、
前記分割光ファイバーに対して、前記検知工程と、前記判断工程とを実施する再検査工程と、
切断された光ファイバーが特定されるまで、前記分割工程と、前記再検査工程とを繰り返し実施する繰り返し工程とを有することもできる。
(6)前記光ファイバー付きPC鋼撚り線は、2本以上の前記光ファイバーを有することもできる。
(7)前記光ファイバー付きPC鋼撚り線は、2本以上の前記光ファイバーを有し、
前記光ファイバー付きPC鋼撚り線の長手方向と垂直な断面において、前記光ファイバー付きPC鋼撚り線に含まれる前記PC鋼撚り線の外接円の中心を対称点とした点対称位置に少なくとも一対の前記光ファイバーを有することもできる。
(8)前記光ファイバー付きPC鋼撚り線が有する前記光ファイバーが、シングルモード光ファイバー、及びマルチモード光ファイバーから選択される1種類以上であってもよい。
(9)前記PCケーブルは、前記光ファイバー付きPC鋼撚り線を2本以上有し、
前記PCケーブルの長手方向と垂直な断面において、前記光ファイバー付きPC鋼撚り線が前記PCケーブルの少なくとも最表面に配置されていてもよい。
(10)前記PCケーブルは、前記光ファイバー付きPC鋼撚り線を2本以上有し、
前記PCケーブルの長手方向と垂直な断面において、前記光ファイバー付きPC鋼撚り線が、
前記PCケーブルの外接円の中心から、直径方向に沿って複数本配置されていてもよい。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す)に係るPCケーブルの損傷検知方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許の請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本発明の発明者らは、PCケーブルの損傷の有無を容易に検知できるPCケーブルの損傷検知方法について、鋭意検討を行った。
そして、複数のPC鋼線が撚り合わされたPC鋼撚り線と、該PC鋼撚り線の長手方向に沿って配置された光ファイバーと、を有する光ファイバー付きPC鋼撚り線を含むPCケーブルとし、光ファイバー付きPC鋼撚り線の光ファイバーを用いてPCケーブルの損傷を検知する方法を見出し、本発明を完成させた。
本実施形態のPCケーブルの損傷検知方法を適用するPCケーブルは、上述のように複数のPC鋼線が撚り合わされたPC鋼撚り線と、該PC鋼撚り線の長手方向に沿って配置された光ファイバーと、を有する光ファイバー付きPC鋼撚り線を含む。
そして、本実施形態のPCケーブルの損傷検知方法は以下の工程を含むことができる。
光ファイバーの一方の端部側で発光手段を発光させ、光ファイバーの他方の端部まで透過した光を検知する検知工程。
検知工程で検知した光の光量に基いて、光ファイバーが切断されているか否かを判断する判断工程。
以下に、まず、本実施形態のPCケーブルの損傷検知方法を適用する、PCケーブルの構成例について説明する。
1.PCケーブルの構成例について
図1は、PCケーブルの長手方向と垂直な面での断面構成例を示している。PCケーブル10は、PC鋼撚り線11を有している。
そして、PCケーブル10が有するPC鋼撚り線11のうち、少なくとも一部を、光ファイバーを組み込んだPC鋼撚り線である光ファイバー付きPC鋼撚り線12とすることができる。すなわち、PCケーブル10は光ファイバー付きPC鋼撚り線12を含むことができる。なお、PCケーブル10が含む全てのPC鋼撚り線11を光ファイバー付きPC鋼撚り線12とすることもできる。
図1ではPCケーブル10が複数本のPC鋼撚り線11を含む場合を例に説明したが、PC鋼撚り線11の本数は特に限定されるものではなく、用途や、要求される強度等に応じて任意に選択することができる。PCケーブル10が含むPC鋼撚り線の本数は、1本以上でもよく、2本以上の複数本であっても良い。特にPCケーブル10は、複数のPC鋼線が撚り合わされたPC鋼撚り線11を2本以上有することが好ましい。また、PCケーブル10は、PC鋼撚り線11を12本以上有することがより好ましい。これはPC鋼撚り線11の本数を2本以上とすることで、強度を特に高めることができるからである。
PCケーブル10が有するPC鋼撚り線11の本数の上限は特に限定されないが、例えば150本以下のPC鋼撚り線11を含むことが好ましく、27本以下のPC鋼撚り線を含むことがより好ましい。
なお、PCケーブル10は使用する際、必要に応じてその周囲にシース管や、外套管等の保護管13を配置することもできる。また、PCケーブル10と、保護管13との間にはPC鋼撚り線11の防食を目的として、PC鋼撚り線11に緊張力を導入した後セメントグラウト等の充填材14を注入することもできる。
本実施形態のPCケーブルの損傷検知方法においては、光ファイバー付きPC鋼撚り線12が有する光ファイバーの一方の端部から光を供給し、他方の端部まで透過した光の光量により光ファイバーの切断の有無を判断する。光ファイバーはPCケーブルに含まれる光ファイバー付きPC鋼撚り線に組み込まれているため、光ファイバーが切断されていると判断される場合には、該光ファイバーを組み込んだ光ファイバー付きPC鋼撚り線に損傷が生じていることになる。さらには、該光ファイバー付きPC鋼撚り線を含むPCケーブルにも損傷が生じていることになる。
そこで、PCケーブルに損傷が生じた場合に、より確実に検知するため、PCケーブルは光ファイバー付きPC鋼撚り線を複数本有することが好ましく、PCケーブルは、光ファイバー付きPC鋼撚り線を例えば2本以上有することが好ましい。PCケーブルが複数本の光ファイバー付きPC鋼撚り線を有することで、PCケーブルに損傷が生じた場合に係る損傷の発生をより確実に検知できる。
PCケーブルが光ファイバー付きPC鋼撚り線を2本以上、すなわち複数本有する場合、その具体的な配置は特に限定されるものではない。例えば、PCケーブルのうち、損傷しやすい場所に、光ファイバー付きPC鋼撚り線を配置することが好ましい。
このため、PCケーブルが光ファイバー付きPC鋼撚り線を2本以上有する場合、PCケーブルの長手方向と垂直な断面において、光ファイバー付きPC鋼撚り線がPCケーブルの少なくとも最表面に配置されていることが好ましい。すなわち、例えば、図1に示すように、PCケーブルの長手方向と垂直な断面において、光ファイバー付きPC鋼撚り線12を含むPC鋼撚り線11の束であるPCケーブル10のうち、最表面に光ファイバー付きPC鋼撚り線12a、12bを配置することが好ましい。
PCケーブル10は特に最表面部分に外力が加えられ易く、損傷し易い。このため、損傷し易い最表面部分に光ファイバー付きPC鋼撚り線12を配置しておくことで、PCケーブルが損傷したことをより確実に検知できるからである。
また、PCケーブルが光ファイバー付きPC鋼撚り線を2本以上有する場合、PCケーブルの長手方向と垂直な断面において、光ファイバー付きPC鋼撚り線がPCケーブルの外接円の中心から、直径方向に沿って複数本配置されていることが好ましい。すなわち、例えば図1に示したように、PCケーブルの長手方向と垂直な断面において、PCケーブルの外接円C1の中心Oから、直径方向に沿って、光ファイバー付きPC鋼撚り線12c、12aが配置されていることが好ましい。
このように光ファイバー付きPC鋼撚り線を配置することで、PCケーブルの長手方向と垂直な断面において、直径方向のいずれかの箇所のみが損傷した場合でも、該損傷をより確実に検知できるため好ましい。
2.光ファイバー付きPC鋼撚り線について
ここで、PCケーブルに含まれる光ファイバー付きPC鋼撚り線の構成例について図面を用いて説明する。なお、光ファイバーを有していないPC鋼撚り線は、光ファイバーを有していない点以外は以下の光ファイバー付きPC鋼撚り線と同様の構成を有するため説明を省略する。
(1)光ファイバー付きPC鋼撚り線の第1の構成例
光ファイバー付きPC鋼撚り線の第1の構成例について、図2~図5を用いながら説明する。
図2は、第1の構成例の光ファイバー付きPC鋼撚り線の斜視図であり、図3は図2に示した光ファイバー付きPC鋼撚り線20の長手方向と垂直な断面の構成例を示している。図4は光ファイバー部材の構成例の説明図を示している。図5は、光ファイバー部材をPC鋼撚り線に配置した場合の、光ファイバー付きPC鋼撚り線の長手方向と垂直な断面の一部拡大図を示している。
図2~図5では被覆(シース)を有しない光ファイバー付きPC鋼撚り線の構成例を示しているが、後述するように被覆を有する光ファイバー付きPC鋼撚り線とすることもできる。
まず、光ファイバー付きPC鋼撚り線の各部材について説明する。
(PC鋼撚り線)
図2に示す光ファイバー付きPC鋼撚り線20は、鋼性の素線であるPC鋼線211を複数本撚り合わせたPC鋼撚り線21を有する。各PC鋼線211は、光ファイバー付きPC鋼撚り線20に緊張力を導入した場合に、緊張力を負担する。
PC鋼撚り線21を構成するPC鋼線211の本数は特に限定されるものではなく、光ファイバー付きPC鋼撚り線の使用形態(内ケーブルや外ケーブル)などに応じて選択することができ、7本、19本などが挙げられる。PC鋼線211の本数が7本の場合、PC鋼撚り線21の構造は、図2、図3に示すように、1本の中心素線となるPC鋼線211Aの外周に、6本の外周素線となるPC鋼線211Bが螺旋状に撚られた1層撚りの構造とすることができる。この場合、外周素線となるPC鋼線211BがPC鋼撚り線21の最外周に位置することになる。図2、図3では、中心素線となるPC鋼線211Aと、外周素線となるPC鋼線211Bとして、同じ径のPC鋼線を用いた例を示しているが、係る形態に限定されない。例えば中心素線となるPC鋼線211Aの径と、外周素線となるPC鋼線211Bの径が異なっていてもよい。
一方、PC鋼線の数が19本の場合、PC鋼撚り線の構造は、図示は省略するが、1本の中心素線となるPC鋼線に対して内側から順に内周素線となるPC鋼線、及び外周素線となるPC鋼線が螺旋状によられた2層撚り構造とすることができる。代表的には内周素線と外周素線の本数の組み合わせが異なる2つのタイプがある。
具体的には、1本の中心素線と9本の内周素線と9本の外周素線とで構成されるタイプと、1本の中心素線と6本の内周素線と12本の外周素線とで構成されるタイプとがある。前者のタイプでは、中心素線と外周素線は、略同等の径のPC鋼線で構成でき、内周素線は、中心素線よりも径の小さいPC鋼線で構成できる。
後者のタイプでは、中心素線と内周素線は、略同等の径のPC鋼線で構成できる。外周素線は、中心素線と略同等の径のPC鋼線と、それよりも径の小さいPC鋼線とを交互に配置して構成できる。
図3に示すように、PC鋼撚り線21には、隣接し合う3本のPC鋼線211に囲まれた空間である内部空隙31や、隣接する2本の、外周素線となるPC鋼線211Bの間に形成される谷である凹部領域32などの空間が形成される。これらの内部空隙31や、凹部領域32は、PC鋼撚り線21の長手に連続する撚り溝33、すなわち隣接するPC鋼線211間に、隣接する2本のPC鋼線211の表面によって形成される溝により構成される。そして、内部空隙31や、凹部領域32は、PC鋼撚り線の長手方向に沿って延在するように、中心軸Aを中心とした螺旋状の形状を有する。
図2、図3に示すようにPC鋼撚り線21が1層撚り構造の場合、すなわちPC鋼線の数が7本の場合、内部空隙31の隙間は、中心素線となるPC鋼線211Aと2本の外周素線となるPC鋼線211Bとの間に形成される。
PC鋼撚り線が2層撚り構造(素線の数が19本)の場合、内部空隙の隙間は、中心素線と2本の内周素線の間、1本の内周素線と2本の外周素線との間、2本の内周素線と1本の外周素線との間に形成される。
(光ファイバー)
光ファイバー付きPC鋼撚り線は、光ファイバーを有することができる。
光ファイバーは、コアとクラッドとで構成されるものを好適に利用できる。コアとクラッドの材質は、プラスチックや石英ガラスが挙げられる。光ファイバーとしては、クラッドの外周に一次被覆を備える光ファイバー素線や、更に二次被覆を備える光ファイバー芯線、更に二次被覆の外周に補強材と補強材の外周を覆う外被とを備える光ファイバーコードなどが利用できる。一次被覆の材質は、例えば、紫外線硬化型樹脂が挙げられる。二次被覆の材質は、例えば、難燃性ポリエステルエラストマーなどが挙げられる。補強材の材質は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などが挙げられる。外被の材質は、難燃性ポリエチレンなどの難燃性ポリオレフィンや、難燃性架橋ポリエチレンなどの難燃性架橋ポリオレフィン、耐熱ビニルなどが挙げられる。
なお、本実施形態のPCケーブルの損傷検知方法は、光ファイバーの一方の端部から光を供給し、他方の端部まで透過した光の光量により、光ファイバーが切断されているかを判断し、PCケーブルの損傷の有無を検知する。このため、PCケーブルに含まれるPC鋼撚り線に損傷が生じた場合に、光ファイバーにも損傷が生じるように、光ファイバーを必要以上に保護しないことが好ましい。このため、例えば光ファイバーとして、光ファイバー素線、もしくは光ファイバー芯線を用いることが好ましい。光ファイバーとして光ファイバー芯線を用いる場合には、二次被覆の厚さが薄いことが好ましい。また、光ファイバーコードを用いる場合には、二次被覆の厚さを薄くし、補強材を配置せず、二次被覆の外周に外被が直接配置された構成を有することが好ましい。
光ファイバー付きPC鋼撚り線が有する光ファイバーの種類は特に限定されるものではない。光ファイバー付きPC鋼撚り線が有する光ファイバーは、例えばシングルモード光ファイバー、及びマルチモード光ファイバーから選択された1種類以上であることが好ましい。
光ファイバー付きPC鋼撚り線が有する光ファイバーを用い、散乱光を利用することで、光ファイバーの長手方向に沿ったPC鋼撚り線のひずみ分布や、温度分布を測定することもできる。そして、例えば本実施形態のPCケーブルの損傷検知方法を実施した後、光ファイバーが切断された位置をより具体的に特定するため、散乱光を用いてPC鋼撚り線のひずみ等の測定を行ったりすることも考えられる。ひずみや温度を測定する場合、散乱光としてはブリルアン散乱光や、レイリー散乱光等を好ましく用いることができる。係る散乱光を用いる場合、特にシャープなピークが得られることから、光ファイバーとしてシングルモード光ファイバーを好ましく用いることができる。このため、係る観点から光ファイバー付きPC鋼撚り線が有する光ファイバーとしてシングルモード光ファイバーを好ましく用いることができる。
また、PCケーブルは、例えば光ファイバー付きPC鋼撚り線を複数本有する等して、複数本の光ファイバーを有することもできる。このようにPCケーブルが複数本の光ファイバーを有する場合、本実施形態のPCケーブルの損傷検知方法では、後述するように複数本の光ファイバーをコネクタ等で直列に接続してから検知工程に供することもできる。そして、複数本の光ファイバーを直列に接続した際に、接続部での光のロスを抑制できると考えられることから、光ファイバー付きPC鋼撚り線が有する光ファイバーとしてマルチモード光ファイバーを好ましく用いることができる。
なお、図2、図3に示した光ファイバー付きPC鋼撚り線のように被覆(シース)を設けない場合、PC鋼線との密着性を高めるため、光ファイバーは、以下の光ファイバー部材としてから配置することが好ましい。
(光ファイバー部材)
図4、図5を用いて光ファイバー部材の構成例について説明する。図4は、光ファイバー部材の斜視図であり、図5は光ファイバー部材40を、PC鋼撚り線の凹部領域内に配置した際の光ファイバー付きPC鋼撚り線の長手方向と垂直な面での断面の構成例を示している。
図4に示すように、光ファイバー部材40は、その内部に光ファイバー41を有している。なお、光ファイバーは、既述のように光ファイバー素線や、光ファイバー芯線、光ファイバーコードのいずれであっても良く、例えばクラッドの外周に一次被覆を備えた光ファイバー素線を用いることができる。
図4においては、光ファイバー部材40内に1本の光ファイバーを配置した例を示しているが係る形態に限定されない。光ファイバー部材40は、例えば2本以上の光ファイバーを含むこともできる。
光ファイバー部材40は、光ファイバー41を包囲する樹脂製のフィラー42を有している。このような光ファイバー部材40は、フィラー42を押出し成型で製造する際に、フィラー42内に光ファイバー41を配置する方法で製造することができる。また、スリット、すなわち切込み線を有するフィラー42を押出し成型で製造した後、スリットから光ファイバー41を挿入し接着剤で固定してもよい。
フィラー42の材料の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン樹脂等を用いることができる。
光ファイバー部材40の長手方向と垂直な断面において、光ファイバー41を配置する位置は特に限定されないが、例えば図4に示すように、その中央部に配置することもできる。また、光ファイバーが、PC鋼線と接するように構成するため、光ファイバー部材40内において、例えばPC鋼線と接触する面に光ファイバーの一部が露出する様に光ファイバーを光ファイバー部材の選択した一の表面側に偏在するように配置することもできる。
光ファイバー部材40は、その設置する場所に応じて外形形状を選択することができ、その具体的な形状は特に限定されない。
既述のように図2、図3に示したPC鋼撚り線21の表面には、互いに隣接する2本のPC鋼線211同士の間に、断面が略三角形、すなわち少なくとも2つの辺が曲線となっている三角形の谷間である凹部領域32が形成されている。なお、ここでの断面とは光ファイバー付きPC鋼撚り線の長手方向と垂直な断面を意味する。そして、光ファイバー部材40を、凹部領域32に挿入し、隣接する2本のPC鋼線211に挟まれた状態で、当該2本のPC鋼線211に沿って螺旋状に延在するように設置する場合の光ファイバー部材40の構成例について以下に説明する。
上述のように、凹部領域内に光ファイバー部材40を挿入した構成とする場合、図4及び図5に示すように、光ファイバー部材40はその長手方向と垂直な断面において、略三角形の断面をなし、略三角形断面の凹部領域32に挿入し易いように構成することが好ましい。
また、例えば図4、図5に示したように、光ファイバー部材40は、その長手方向と垂直な断面において、凹状の円弧をなす輪郭線を少なくとも2つ有することができる。この場合、図5に示すように、光ファイバー部材40の長手方向と垂直な断面において、光ファイバー部材40の第1の表面42Aを構成する第1の輪郭線43Aは、凹部領域32を形成する一方のPC鋼線211の表面211aに沿ってほぼ同じ曲率で延びることが好ましい。また、光ファイバー部材40の第2の表面42Bを構成する第2の輪郭線43Bは、凹部領域32を形成する一方のPC鋼線211の表面211bに沿ってほぼ同じ曲率で延びることが好ましい。光ファイバー部材40が、配置する凹部領域32に対応した形状を有することで、光ファイバー部材40を凹部領域32内に安定して保持することができるため、好ましい。
なお、光ファイバー部材40の長手方向と垂直な断面での形状を上述のように略三角形とした場合、光ファイバー部材40は、第3の表面42Cを構成する第3の輪郭線43Cを有する。図5から明らかなように、凹部領域32内に光ファイバー部材40を配置した場合に、第3の表面42Cは、PC鋼線211と対向する面ではない。このため、第3の輪郭線43Cの形状は、光ファイバー部材40とPC鋼線211との接着性等に影響は与えないが、例えば第3の輪郭線43Cは、第1の輪郭線43A及び第2の輪郭線43Bと同一形状の凹状の円弧とすることもできる。この場合、光ファイバー部材40は、その長手方向軸周りに120度ずつ回転させても同じように使用可能であり、当該回転方向の向きを気にせずに光ファイバー部材40をPC鋼撚り線21に設置することができるため、作業性の観点から好ましい。
光ファイバー部材40の長手方向の断面の形状を略三角形とし、その輪郭線を凹状の円弧とした例を示したが、係る形態に限定されるものではない。例えば、第1の輪郭線43A~第3の輪郭線43Cから選択される1つ以上の輪郭線を直線や、凸状の円弧、その他の形状とすることもできる。また、光ファイバー部材40を配置する場所の形状にあわせて、その外形形状を選択することができる。
なお、光ファイバー部材40を凹部領域32内に配置する場合、光ファイバー部材40は、該凹部領域32を形成する隣接する2本のPC鋼線211のうち、1本にのみ接着されていることが好ましい。PC鋼撚り線21に力が加わった場合に、PC鋼撚り線21を構成する各PC鋼線211は伸縮することになるが、隣接するPC鋼線が同じ方向に、同程度伸縮するとは限らない。このため、光ファイバー部材40を、凹部領域32を形成する隣接する2本のPC鋼線211に接着しておくと、光ファイバー部材40と、PC鋼線211との接着部の一部が不規則に剥離し、光ファイバーに複雑なひずみを与える恐れがある。その結果、光ファイバー部材40がPC鋼撚り線21の伸縮に追従できなくなる場合があるからである。このため、図5に示す様に、光ファイバー部材40は、例えば凹部領域32を形成する隣接する2本のPC鋼線211のうち、1本とのみ接着剤44等により接着しておくことが好ましい。
次に、光ファイバー付きPC鋼撚り線の好適な構造の構成例について説明する。
光ファイバー付きPC鋼撚り線は、PC鋼撚り線と、光ファイバーを備えていればよく、各部材の具体的な配置は特に限定されるものではない。
例えば、光ファイバー付きPC鋼撚り線では、その長手方向と垂直な断面において、光ファイバーを、PC鋼撚り線の撚り溝に対応した位置に設けることが好ましい。
光ファイバーを、PC鋼撚り線の撚り溝に対応した位置に設けることで、光ファイバーをPC鋼撚り線の伸縮に追従させ易くなる。このため、PC鋼撚り線に断線等の損傷が生じた場合には、光ファイバーも断線する等、PC鋼撚り線の状態をより反映させやすくなるからである。
PC鋼撚り線の撚り溝に対応した位置として、PC鋼撚り線の撚り溝により形成される既述の内部空隙31や、凹部領域32が挙げられる。このため、光ファイバーをPC鋼撚り線の撚り溝に対応した位置に設ける例として、PC鋼撚り線の撚り溝により形成される既述の内部空隙や、凹部領域に沿って光ファイバーを設ける構成が挙げられる。この場合、光ファイバーは、それぞれ内部空隙、及び凹部領域から選択された1種類以上の空間内に配置することもできるが、該空間の近傍にあればよく、空間の外に配置されていても良い。
特に、光ファイバーは、PC鋼撚り線の外周側に位置する凹部領域に沿って配置することが好ましい。これは、PC鋼撚り線内部に位置する内部空隙と比較して、外周側に位置する凹部領域の方が容易に光ファイバーの設置を行うことができるからである。
具体的な構成例について、図2、図3を用いて説明する。
図2に示した光ファイバー付きPC鋼撚り線20の長手方向とは、光ファイバー付きPC鋼撚り線20の長さ方向に当たり、図中のX軸方向に相当する。光ファイバー付きPC鋼撚り線20の長手方向と垂直な断面とは、YZ平面での断面を示しており、図3に示した通りである。
そして、上述のように光ファイバー付きPC鋼撚り線20の長手方向と垂直な断面において、光ファイバーは、PC鋼撚り線21の撚り溝33に対応した位置に、それぞれ配置することが好ましい。
具体的には例えば、図2、図3に示したように、光ファイバー411を含む第1光ファイバー部材401や、光ファイバー412を含む第2光ファイバー部材402を凹部領域32に沿って配置することができる。
また、既述のように、光ファイバー411を含む第1光ファイバー部材401や、光ファイバー412を含む第2光ファイバー部材402は、内部空隙31に沿って配置することもできる。
なお、図2、図3では光ファイバー付きPC鋼撚り線20が2本の光ファイバーを有する例を示したが、係る形態に限定されない。光ファイバー付きPC鋼撚り線は、例えば1本の光ファイバーのみを有していても良く、2本以上、すなわち複数本の光ファイバーを有していてもよい。
ただし、光ファイバー付きPC鋼撚り線は、2本以上の光ファイバーを有することが好ましい。
これは、例えばPC鋼撚り線が完全には切断されず、一部のみが損傷した場合でも、異なる位置に配置した光ファイバーを複数本有する場合、該損傷を検出できる可能性が高くなるからである。
また、既述のように、光ファイバーを用い、散乱光によりPC鋼撚り線のひずみや、温度を測定できるが、例えばひずみと温度とを同時に測定する場合や、ひずみや温度の測定方式によっては2本以上の光ファイバーを要する場合もある。このため、光ファイバー付きPC鋼撚り線は、光ファイバーを2本以上有することが好ましい。
さらに、例えば光ファイバーのみが経年劣化等により切断される場合もあることから、光ファイバー付きPC鋼撚り線は、予備の光ファイバーも有することが好ましい。このため、光ファイバー付きPC鋼撚り線は、2本以上の光ファイバーを有していることが好ましい。
光ファイバー付きPC鋼撚り線が2本以上の光ファイバーを有する場合の構成例について、図3を用いて説明する。例えば図3に示すように、光ファイバー付きPC鋼撚り線20の長手方向と垂直な断面において、光ファイバー付きPC鋼撚り線20に含まれるPC鋼撚り線21の外接円C2の中心Aを対称点とした点対称位置に少なくとも一対の光ファイバー411、412を有することが好ましい。すなわち、例えば光ファイバー付きPC鋼撚り線20の長手方向と垂直な断面において、光ファイバー付きPC鋼撚り線20に含まれるPC鋼撚り線21の外接円C2の直径方向の両端部に一対の光ファイバー411、412を有することが好ましい。具体的には例えば、PC鋼撚り線21の外接円C2の中心Aを対称点とした点対称位置である凹部領域32Aと、凹部領域32Bとに沿うように、それぞれ光ファイバー411、412を配置することができる。
上述のように一対の光ファイバー411、412をPC鋼撚り線21の外接円C2の中心Aを対称点とした点対称位置に配置することで、光ファイバー付きPC鋼撚り線20内で、光ファイバーを分散して配置できることになる。このため、例えばPC鋼撚り線21の一部を損傷した場合において、該損傷部分の近くに配置した光ファイバーも損傷する等、PC鋼撚り線の状態をより反映させやすくなり好ましい。
また、光ファイバー付きPC鋼撚り線の長手方向と垂直な断面において、光ファイバーは、光ファイバー付きPC鋼撚り線の外接円内に配置されていることが好ましい。これは、光ファイバーを、光ファイバー付きPC鋼撚り線の外接円内に配置することで、光ファイバーをよりPC鋼撚り線の近傍に配置でき、PC鋼撚り線の伸縮に特に追従させ易いためである。光ファイバーがPC鋼撚り線の伸縮に追従し易くすることで、PC鋼撚り線が断線等損傷した場合には、光ファイバーも損傷する等、PC鋼撚り線の状態をより反映させやすくなる。
図2、図3に示した光ファイバー付きPC鋼撚り線20においては、被覆を有していないことから光ファイバー付きPC鋼撚り線20の外接円は、図3に点線で示したPC鋼撚り線21の外接円C2となる。
このため、図2、図3に示した光ファイバー付きPC鋼撚り線20において、光ファイバー411、412は、PC鋼撚り線21の外接円C2内に配置することが好ましい。
特に、光ファイバー付きPC鋼撚り線の長手方向と垂直な断面において、光ファイバーは、それぞれ隣接する2本のPC鋼線の表面と、係る隣接する2本のPC鋼線の共通接線とで囲まれた領域内に配置されていることが好ましい。
例えば図5に示すように、光ファイバー41は、隣接する2本のPC鋼線211の表面211a、211bと、係る隣接する2本のPC鋼線211の共通接線Lとで囲まれた領域内に配置されていることが好ましい。この場合、光ファイバーは、PC鋼撚り線の内側寄りに配置されることになるため、PC鋼撚り線21の損傷が無いにも関わらず、光ファイバー41のみが損傷することを防止できるからである。
特に、光ファイバーを光ファイバー部材としてから、PC鋼撚り線に配置する場合には、光ファイバー部材40が、隣接する2本のPC鋼線211の表面211a、211bと、係る隣接する2本のPC鋼線の共通接線Lとで囲まれた領域内に配置されていることがさらに好ましい。このように光ファイバー部材自体を配置することで、光ファイバー部材全体がPC鋼撚り線の内側寄りに配置されることになるため、PC鋼撚り線21が損傷していないに関わらず、光ファイバー41のみが損傷することを特に防止できるからである。
なお、光ファイバー付きPC鋼撚り線において、光ファイバーは、PC鋼線と接するように配置することもできる。このように光ファイバーをPC鋼線と接するように配置することで、例えば光ファイバーにPC鋼線に加えられたものとほぼ同じ力が加わった状態とすることができるからである。光ファイバーにPC鋼と同様の力が加わることで、PC鋼撚り線が断線等損傷した場合には、光ファイバーも損傷する等、PC鋼撚り線の状態をより反映させやすくなり好ましい。
(2)光ファイバー付きPC鋼撚り線の第2の構成例
光ファイバー付きPC鋼撚り線は、被覆(シース)を有することもできる。被覆を有する場合の光ファイバー付きPC鋼撚り線の構成例を、図面を用いて説明する。なお、既に説明した事項については説明を一部省略する。また、光ファイバーを含まないPC鋼撚り線についても被覆を有することができ、光ファイバーを有しない点以外は以下に説明する光ファイバー付きPC鋼撚り線と同様に構成できる。
図6は被覆を有する光ファイバー付きPC鋼撚り線60の長手方向と垂直な面での断面図を示している。
被覆を有する光ファイバー付きPC鋼撚り線60とする場合、被覆として、防食被覆61と外側被覆62とを有することができる。
防食被覆61は、PC鋼撚り線21を外部環境から保護してPC鋼撚り線21の腐食を抑制する。防食被覆61は、PC鋼撚り線21の外周を被覆する外周部611を有する。外周部611は、PC鋼撚り線21の外周輪郭に沿った表面を有し、その表面におけるPC鋼撚り線21の撚り溝33に対応した箇所に撚り溝613が形成されている。
防食被覆61は、各PC鋼線211の間(内部空隙)に充填される充填部612を有していることが好ましい。充填部612を有することで、PC鋼撚り線21の隙間に水分などが侵入することを抑制でき、PC鋼撚り線21の腐食をより一層抑制し易い。
充填部612を備える場合、外周部611と充填部612とは同一材質で一連に形成されていることが好ましい。
防食被覆61の材質は、特に限定されないが、例えば耐食性に優れる樹脂を好ましく用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂などが挙げられる。
そして、防食被覆61の外側にはさらに、防食被覆61の外周を覆う外側被覆62を備えることができる。なお、防食被覆61と、外側被覆62とは同じ樹脂により形成することもできるが、異なる樹脂により構成することが好ましい。これは、外側被覆62は、主に紫外線による劣化を防止する機能を有しているが、外側被覆62の樹脂のみで防食被覆も形成すると、コストが高くなる恐れがあるからである。
また、外側被覆62は、光ファイバー411、412を防食被覆61へ固定する固定部材としての機能も期待できる。外側被覆62の外周面621は、撚り溝が形成されない円筒状面で構成されている。外側被覆62の材質は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン樹脂が挙げられる。
防食被覆61、及び外側被覆62は、例えば以下の手順により形成できる。
予めPC鋼線211を撚って形成したPC鋼撚り線21について、目板で撚り線の外周素線となるPC鋼線211Bの撚りを解いておく(撚り解き工程)。
中心素線、及び外周素線の外周に防食被覆の構成樹脂を供給し、中心素線であるPC鋼線211A、及び外周素線であるPC鋼線211Bの外周に塗布する(防食樹脂供給工程)。
外周素線であるPC鋼線211Bを再び中心素線であるPC鋼線211A上に撚り戻した後、塗装した樹脂を冷却する(冷却工程)。
防食被覆の撚り溝に対応する位置に光ファイバーを配置し、固定する(固定工程)。
防食被覆61の外周に外側被覆62の構成樹脂を押出成型等により成型し、外側被覆62を形成する(外側被覆配置工程)。
なお、被覆(シース)を有する場合、光ファイバーは、被覆内に埋設されることになるため、図2、図3等を用いて説明した被覆を有しない場合とは異なり、光ファイバーはそのまま被覆内に埋設できる。すなわち、光ファイバーは、光ファイバー部材としてからPC鋼撚り線に配置する必要はない。
被覆を有する場合でも、光ファイバー付きPC鋼撚り線の長手方向と垂直な断面において、光ファイバーは、PC鋼撚り線の撚り溝に対応した位置に設けられていることが好ましい。
PC鋼撚り線21の撚り溝33に対応した位置としては、防食被覆61の外周部の撚り溝613や、防食被覆61の内側の内部空隙31や、凹部領域32などが挙げられる。このため、光ファイバーをPC鋼撚り線の撚り溝に対応した位置に設ける例として、防食被覆61の外周部の撚り溝613や、既述の内部空隙31や、凹部領域32に沿って、光ファイバーを設ける構成が挙げられる。
光ファイバーを、PC鋼撚り線の撚り溝に対応した位置に設けることで、光ファイバーをPC鋼撚り線の伸縮に追従させ易いため、PC鋼撚り線が断線等損傷した場合には、光ファイバーも損傷する等、PC鋼撚り線の状態をより反映させやすくなる。
また、光ファイバー付きPC鋼撚り線の長手方向と垂直な断面において、光ファイバーは、光ファイバー付きPC鋼撚り線の外接円内に配置されていることが好ましい。これは、光ファイバーを、光ファイバー付きPC鋼撚り線の外接円内に配置することで、光ファイバーを、PC鋼撚り線の近傍に配置することができ、PC鋼撚り線の伸縮に特に追従させやすくなるからである。
図6に示した光ファイバー付きPC鋼撚り線60の長手方向と垂直な断面における光ファイバー付きPC鋼撚り線の外接円とは、外側被覆62の外周面621の輪郭線を意味する。このため、外側被覆62の外周面621よりも内側で、PC鋼撚り線21の撚り溝33に対応した箇所に光ファイバー411、412を配置することが好ましい。この場合、光ファイバー411、412は防食被覆61に埋設させることや、防食被覆61と外側被覆62との間(境界部)に配置することができる。また、光ファイバー411、412を外側被覆62に埋設させることもできる。光ファイバー411、412を外側被覆62に埋設させる場合、これらの光ファイバーの配置位置は、例えば防食被覆61の外周近傍が挙げられる。
なお、光ファイバー411、412をPC鋼撚り線の撚り溝に対応した位置に配置する場合、例えば防食被覆61に該光ファイバーを埋め込んだり、防食被覆61に予め設けておいた溝に該光ファイバーを配置することもできる。
(3)光ファイバー付きPC鋼撚り線の第3の構成例
図7、図8を用いて、光ファイバー付きPC鋼撚り線の第3の構成例を説明する。なお、図8は、図7中の点線円X部分を拡大して示したものである。
光ファイバー付きPC鋼撚り線70において、光ファイバー411、412は、その一部が防食被覆61の外周部611の表面に埋設されて、防食被覆61と一体化されている。この一体化により、PC鋼撚り線21の伸縮に光ファイバー411等を追従させ易くなり、PC鋼撚り線が断線等損傷した場合には、光ファイバーも損傷する等、PC鋼撚り線の状態をより反映させやすくなる。光ファイバー411、412の防食被覆61に埋設されていない残部は、外周部611の表面から露出し、外側被覆62に覆われる。防食被覆61の外周部611の表面には、光ファイバー411、412が埋設されることで凹部63が形成されている。この凹部63は、光ファイバー411、412の螺旋に沿って螺旋状に形成されている。
光ファイバー付きPC鋼撚り線70の製造は、既述の光ファイバー付きPC鋼撚り線60の防食被覆61を形成している途中に光ファイバーを配置することで行える。具体的には、冷却工程において、外周素線となるPC鋼線211Bを再び中心素線となるPC鋼線211A上に撚り戻した後、光ファイバーを樹脂の表面に押し付けてから樹脂を冷却する。そうすれば、光ファイバーの一部が防食被覆61の外周部611表面に埋設されて、防食被覆61と一体化させることができる。
なお、防食被覆61に切削加工などにより圧入溝を形成しておき、該圧入溝に光ファイバーを配置するように構成することもできる。
防食被覆61に光ファイバー411、412が埋設されている点以外は、既述の第2の構成例と同様に構成できるため、説明を省略する。
(4)光ファイバー付きPC鋼撚り線の第4の構成例
図9を用いて光ファイバー付きPC鋼撚り線90の第4の構成例を説明する。
被覆を有する光ファイバー付きPC鋼撚り線においても、光ファイバー付きPC鋼撚り線の長手方向と垂直な断面において、光ファイバーは、それぞれ隣接する2本のPC鋼線の表面と、係る隣接する2本のPC鋼線の共通接線とで囲まれた領域内に配置されていることが好ましい。
すなわち、例えば図9に示した、光ファイバー付きPC鋼撚り線90の様に構成することができる。図9は、光ファイバー付きPC鋼撚り線90の長手方向と垂直な面での断面図を示している。
図9に示した光ファイバー付きPC鋼撚り線90において、光ファイバー411、412は、隣接する外周素線である2本のPC鋼線211の間に形成された凹部領域32に配置されている。
また、光ファイバー411、412は、それぞれ隣接する2本のPC鋼線211の表面と、係る隣接する2本のPC鋼線211の共通接線Lと、で囲まれた領域内に配置されている。
光ファイバー411、412を、隣接する2本のPC鋼線211の表面と、係る隣接する2本のPC鋼線211の共通接線L、で囲まれた領域内に配置することで、特にPC鋼線211の近傍に配置することができ、PC鋼撚り線21の伸縮に追従させ易い。このため、PC鋼撚り線が断線等損傷した場合には、光ファイバーも損傷する等、PC鋼撚り線の状態をより反映させやすくなる。
また、図9では、光ファイバー411、412が、PC鋼線211と接している。このように構成することで、光ファイバー411、412にPC鋼線211に加えられたものとほぼ同じ力を加えることができ、PC鋼撚り線が断線等損傷した場合に、光ファイバーも損傷する等、PC鋼撚り線の状態を特に反映させやすくなる。
図9に示した、光ファイバー付きPC鋼撚り線90の製造方法は特に限定されないが、例えばまず、PC鋼撚り線と、光ファイバーとを用意し、隣接する外周素線となるPC鋼線の間の凹部領域に光ファイバーを配置する(光ファイバ配置工程)。その後、光ファイバーを配置したPC鋼撚り線の外周側から溶融状態の防食被覆の構成樹脂を押し出すことで、防食被覆を形成できる(防食被覆形成工程)。
その後は他の光ファイバー付きPC鋼撚り線の場合と同様にして必要に応じて外側被覆を形成することができる。なお、光ファイバーは防食被覆により保護されているため、外側被覆を設けなくてもよく、例えば上記防食被覆形成工程で製造工程を終了することもできる。
なお、図6、図7、図9に示した光ファイバー付きPC鋼撚り線60、70、90では2本の光ファイバー411、412を有する場合の例を示したが、既述のように光ファイバーの本数は特に限定されず、例えば1本であっても良く、2本以上であっても良い。
ただし、既述のように光ファイバー付きPC鋼撚り線は、2本以上の光ファイバーを有することが好ましい。
これは、例えばPC鋼撚り線が完全には切断されず、一部のみが損傷した場合でも、異なる位置に配置した光ファイバーを複数本有する場合、該損傷を検出できるからである。
また、光ファイバーを用い、散乱光によりPC鋼撚り線のひずみや、温度を測定できるが、例えばひずみと温度とを同時に測定する場合や、ひずみや温度の測定方式によっては2本以上の光ファイバーを要する場合もある。このため、光ファイバー付きPC鋼撚り線は、光ファイバーを2本以上有することが好ましい。
さらに、例えば光ファイバーのみが経年劣化等により切断される場合もあることから、光ファイバー付きPC鋼撚り線は、予備の光ファイバーも有することが好ましい。このため、光ファイバー付きPC鋼撚り線は、2本以上の光ファイバーを有していることが好ましい。
そして、光ファイバー付きPC鋼撚り線が2本以上の光ファイバーを有する場合の配置の構成例について図9を用いて説明する。光ファイバー付きPC鋼撚り線60の長手方向と垂直な断面において、光ファイバー付きPC鋼撚り線60に含まれるPC鋼撚り線21の外接円C2の中心Aを対称点とした点対称位置に少なくとも一対の光ファイバー411、412を有することが好ましい。すなわち、光ファイバー付きPC鋼撚り線60の長手方向と垂直な断面において、光ファイバー付きPC鋼撚り線60に含まれるPC鋼撚り線21の外接円C2の直径方向の両端部に一対の光ファイバー411、412を有することが好ましい。具体的には例えば、PC鋼撚り線21の外接円C2の中心Aを対称点とした点対称位置である凹部領域32Aと、凹部領域32Bとに沿うように、それぞれ光ファイバー411、412を配置することができる。
上述のように一対の光ファイバー411、412をPC鋼撚り線21の外接円C2の中心Aを対称点とした点対称位置に配置することで、光ファイバー付きPC鋼撚り線60内で、光ファイバーを分散して配置できることになる。このため、例えばPC鋼撚り線21の一部を損傷した場合において、該損傷部分の近くに配置した光ファイバーも損傷する等、PC鋼撚り線の状態をより反映させやすくなり好ましい。
3.PCケーブルの損傷検知方法の構成例について
(1)PCケーブルの損傷検知方法の構成例
次に、本実施形態のPCケーブルの損傷検知方法の一構成例について詳述する。
既述のように、本実施形態のPCケーブルの損傷検知方法は以下の工程を有する。
光ファイバーの一方の端部側で発光手段を発光させ、光ファイバーの他方の端部まで透過した光を検知する検知工程。
検知工程で検知した光の光量に基いて、光ファイバーが切断されているか否かを判断する判断工程。
各工程について以下に説明する。
検知工程では、例えば図10に示すように、光ファイバー付きPC鋼撚り線101が有する光ファイバー1011の一方の端部1011a側で発光手段102を発光させる。そして、該光ファイバー1011の他方の端部1011bまで透過した光を受光手段103により受光する。
発光手段102としては、光ファイバー1011が切断等されていない状態で、一方の端部から他方の端部まで透過する光を発する手段であれば良く特に限定されない。例えばファイバーチェッカー等を用いることができる。また、発光手段102が発する光は特に限定されないが、例えば光ファイバーの検査等で通常用いられる波長1550nmの光や、波長620nm以上750nmの赤色の光等を用いることができる。
受光手段103としては特に限定されず、例えば光量を定量的に評価できる光パワーメーターや、PD(Photodiode)等や、肉眼を用いることができる。
そして、判断工程では、検知工程で検知した光の光量(透過光量)に基いて、評価に供した光ファイバーの切断の有無を判断することができる。
判断工程において、光ファイバーが切断されていると判断する際の基準となる光の光量については特に限定されない。
例えば、PCケーブルを設置直後に予め検知工程を実施し、当初透過光量を記録しておき、検知工程で検知される透過光量が当初透過光量よりも一定割合まで低下した場合に光ファイバーが切断されたと判断することができる。
判断工程で光ファイバーが切断されたと判断された場合、該光ファイバーを含む光ファイバー付きPC鋼撚り線や、PCケーブルは損傷を受けていることになる。このため、必要に応じて更なる精密検査や、補修を行うことができる。
このように、本実施形態に係るPCケーブルの損傷検知方法によれば、検知工程で検知した光の光量により光ファイバーが切断されているか否かを判断でき、該判断に基づいてPCケーブルの損傷を検知できる。このため、特殊な測定装置を必要とせず、また検知を実施する者に特殊な技能は要求されず、PCケーブルの損傷の有無を容易に検知できる。
(2)PCケーブルの損傷検知方法の第1の変形例
次に、本実施形態のPCケーブルの損傷検知方法の変形例について説明する。
既述のように、光ファイバー付きPC鋼撚り線は、2本以上の光ファイバーを含むこともできる。また、PCケーブルは、光ファイバー付きPC鋼撚り線を2本以上含むこともできる。
このため、PCケーブルは2本以上の光ファイバーを有する場合もある。PCケーブルが2本以上の光ファイバーを有する場合、光ファイバー毎に上述の検知工程と判断工程を実施することもできる。ただし、検査の対象となる光ファイバーが多くなると、検査に時間を要することになる。
そこで、PCケーブルが光ファイバーを2本以上有する場合、PCケーブルに含まれる全ての光ファイバーを接続し、1本の複合光ファイバーとする接続工程をさらに有することもできる。
そして、検知工程では、複合光ファイバーの一方の端部側で発光手段を発光させ、複合光ファイバーの他方の端部まで透過した光を検知することができる。
また、判断工程では、検知工程で検知した光の光量に基いて、複合光ファイバーが切断されているか否かを判断することができる。
接続工程で複数本の光ファイバーを接続する手段は特に限定されるものではなく、例えば光ファイバー間を融着により接合することができる。また、光ファイバー間を各種コネクタ、例えばFCコネクタ(F01形単心光ファイバコネクタ)等により接続することもできる。特に接続部での光のロスを低減するため、複数本の光ファイバーは融着により接続することが好ましい。
なお、複数本の光ファイバーを接続する際、異なる種類の接続手段を併用することもできる。例えば一部の光ファイバーについては光ファイバー間を融着により接続し、他の光ファイバーについては光ファイバー間をコネクタにより接続することもできる。
接続工程により、PCケーブルが有する複数本の光ファイバーを直列な1本の複合光ファイバーとすることができる。
検知工程、及び判断工程は複合光ファイバーを用いる点以外は、既述の検知工程、判断工程と同様にして実施することができる。
すなわち、例えば図11に示すように、光ファイバー付きPC鋼撚り線111~114を有するPCケーブルの場合、光ファイバー付きPC鋼撚り線111~114が有する光ファイバーを接続工程で直列に接続し、複合光ファイバー115とすることができる。
具体的には例えば接続部121A、121B、121Cで各光ファイバー付きPC鋼撚り線111~114が有する光ファイバーを接続し、1本の複合光ファイバーとすることができる。
検知工程では複合光ファイバー115の一方の端部115a側で発光手段102を発光させる。そして、該複合光ファイバー115の他方の端部115bまで透過した光を受光手段103により受光することができる。
判断工程では、検知工程で受光手段103が検知した光の光量(透過光量)に基いて、評価に供した複合光ファイバーが切断されているかを判断することができる。この際の判断基準については既述の様に特に限定されず、例えばPCケーブルを設置した際に測定した当初透過光量を基準に、任意に判断できる。
上記判断工程で、複合光ファイバーが切断されていると判断された場合、該複合光ファイバーを構成するいずれかの光ファイバーが切断されていることを意味しており、PCケーブルが損傷を受けていることになる。
上述のように接続工程を実施してから検知工程、判断工程を実施することで、PCケーブルが含有する光ファイバーの数が複数本であるにも関わらず、検知工程、判断工程を1回実施するのみでPCケーブルが損傷しているかを判断することができる。従って、短時間で効率よくPCケーブルの損傷を検知することができる。
(3)PCケーブルの損傷検知方法の第2の変形例
第1の変形例で説明した工程のみでは、PCケーブルのどの箇所に損傷が生じているかが明らかではない。このため、上記判断工程において、複合光ファイバーが切断されていると判断された場合に、切断された光ファイバーを特定するため、本実施形態のPCケーブルの損傷検知方法は、以下の工程をさらに有することもできる。
複合光ファイバーを構成する光ファイバー間の少なくとも一部の接続を解き、2本以上の分割光ファイバーとする分割工程。
前記分割光ファイバーに対して、検知工程と、判断工程とを実施する再検査工程。
切断した光ファイバーが特定されるまで、分割工程と、再検査工程とを繰り返し実施する繰り返し工程。
上記判断工程において、複合光ファイバーが切断されていると判断された場合にまず、分割工程として、複合光ファイバーを構成する複数本の光ファイバー間を接続する接続部を解き、2本以上の分割光ファイバーに分離できる。例えば図11に示した複合光ファイバー115の接続部121Bでの接続を解き、図12に示す様に、2つの分割光ファイバー122、123とすることができる。
次に再検査工程として、分割光ファイバー122、123について、検知工程と、判断工程を実施できる。
具体的には、それぞれの分割光ファイバー122、123について、一方の端部122a、123a側で発光手段102を発光させ、他方の端部122b、123bまで透過した光を各受光手段103により受光させる検知工程を実施できる。
判断工程では、検知工程で検知した光の光量(透過光量)に基いて、評価に供した分割光ファイバー122、123が切断されているか否かを判断することができる。
そして、切断された光ファイバーが特定されるまで、上記再検査工程を繰り返し実施することができる。
例えば再検査工程で分割光ファイバー122が切断されていると判断した場合には、分割工程で接続部121Aでの接続を解き、分割光ファイバー1111と、分割光ファイバー1121とする。次いで、分割光ファイバー1111と、分割光ファイバー1121について再検査工程を実施し、切断された光ファイバーを特定することができる。
このように分割工程と、再検査工程とを繰り返し実施することで、容易に切断された光ファイバーを特定できる。そして、切断された光ファイバーを含む光ファイバー付きPC鋼撚り線は、損傷している可能性がある。このため、このように切断された光ファイバーを特定することで、PCケーブル内のおおよその損傷個所も特定することができる。
(4)その他の任意の工程について
本実施形態のPCケーブルの損傷検知方法はさらにその他の任意の工程を有することもできる。
(ひずみ測定工程)
例えば判断工程で光ファイバーや、複合光ファイバー、分割光ファイバーが切断されていると判断された場合には、以下のひずみ測定工程を実施することもできる。
具体的には、光ファイバーを用いて、散乱光によりPC鋼撚り線のひずみの測定を行うひずみ測定工程を有することができる。
ひずみ測定工程では、光ファイバー、複合光ファイバー、または分割光ファイバーを用いて、PC鋼撚り線のひずみの測定を行うことができる。なお、ひずみ測定工程では、光ファイバーの長手方向の任意の位置のPC鋼撚り線のひずみや、光ファイバーの長手方向に沿ったPC鋼撚り線のひずみ分布を測定することができる。
ひずみ測定工程で用いる散乱光としては特に限定されないが、例えばブリルアン散乱光や、レイリー散乱光、ラマン散乱光から選択された1種類以上を用いることができる。
ひずみの測定方式は特に限定されないが、例えば、BOCDA(Brillouin Optical Correlation Domain Analysis)、BOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometry)、FBG(Fiber Bragg Grating)、BOTDA(Brillouin Optical Time Domain Analysis)、BOCDR(Brillouin Optical Correlation Domain Reflectometry)などが挙げられる。
光ファイバーや、複合光ファイバー、分割光ファイバーを用いてPC鋼撚り線のひずみを測定する場合、測定に用いる光ファイバーを測定方式に応じた測定装置に接続し、測定に供することができる。
上述のようにして、光ファイバーや、複合光ファイバー、分割光ファイバーに測定方式に対応した測定装置を接続した後、任意のタイミングでひずみ測定を実施することができる。
なお、ひずみ測定工程におけるひずみの測定方式として、主にBOCDA等のブリルアン散乱光を用いた測定方式を例示したが、ブリルアン散乱光のみに限定されず、例えばレイリー散乱光等の他の散乱光を用いてひずみや、ひずみの分布を測定することもできる。
上述のようにひずみ測定工程を実施し、被測定物である光ファイバーの長さ方向のひずみ分布を評価して、ひずみの異常点を検知することで光ファイバーの切断された箇所をより正確に検知できる。
なお、散乱光を用いたひずみ測定を行う場合、光ファイバー付きPC鋼撚り線の周辺の温度変化によって、光ファイバーを構成するガラス等の材料の特性が変化し、散乱光の周波数に影響を与え、ひずみを正確に測定できない場合がある。
そこで、散乱光を用いてひずみを測定する場合、さらに以下の温度測定工程と、補正工程を実施することが好ましい。
光ファイバーを用いて、散乱光により温度を測定する温度測定工程。
ひずみ測定工程で測定したPC鋼撚り線のひずみを、温度測定工程で測定した温度を用いて補正する補正工程。
温度測定工程と、補正工程について説明する。
(温度測定工程)
温度測定工程では、光ファイバーや、複合光ファイバー、分割光ファイバーを用いて、温度の測定を行うことができる。なお、温度測定工程では、光ファイバーの長手方向の任意の位置の温度や、光ファイバーの長手方向に沿った温度分布を測定することができる。ただし、後述のように、温度測定工程で測定した温度により、ひずみ測定工程で測定したひずみを補正することから、ひずみ測定工程でひずみやひずみ分布を測定した位置に対応する箇所で温度や、温度分布を測定することが好ましい。
温度の測定方式は特に限定されないが、例えば、BOCDA、BOTDR、FBG、BOTDA、BOCDR、ROTDR(Raman Optical Time Domain Reflectmeter)などが挙げられる。
光ファイバーや、複合光ファイバー、分割光ファイバーを用いて温度を測定する場合、測定に用いる光ファイバーを測定方式に応じた測定装置に接続し、測定に供することができる。
上述のようにして、光ファイバーや、複合光ファイバー、分割光ファイバーに測定方式に対応した測定装置を接続した後、任意のタイミングで温度測定を実施することができる。
なお、温度測定工程における温度の測定方式として、主にBOCDA等のブリルアン散乱光を用いた測定方式、もしくはラマン散乱光を用いた測定方式であるROTDRを例示したが、ブリルアン散乱光、ラマン散乱光のみに限定されない。例えばレイリー散乱光等の他の散乱光を用いて温度や、温度の分布を測定することもできる。
なお、散乱光は、PC鋼撚り線のひずみに対応して光ファイバーに生じたひずみだけではなく、光ファイバー周辺の温度の影響も受ける場合があるため、ひずみ測定工程と、温度測定工程とでは、異なる種類の散乱光を使用することが好ましい。例えば、ひずみ測定工程では、光ファイバーを用いてブリルアン散乱光によりひずみの測定を行い、温度測定工程では、光ファイバーを用いてラマン散乱光により温度の測定を行うことが好ましい。
(補正工程)
補正工程では、ひずみ測定工程で測定したひずみを、温度測定工程で測定した温度を用いて補正できる。
補正工程では例えば以下の式(1)により補正後のひずみを算出できる。
(補正後のひずみ(%)) = (ひずみ測定工程で測定したひずみ(%))-(温度測定工程で測定した温度(℃))×温度係数(%/℃)) ・・・(1)
なお、上記式(1)中の「温度工程で測定した温度」に代えて、基準となる温度からの温度変化を用いることもできる。
温度係数は、例えば測定に用いたものと同じ光ファイバー付きPC鋼撚り線を用いて、既知の温度と、既知のひずみ量との関係から予め算出しておくことができる。
また、本実施形態のPCケーブルの損傷検知方法は、上述のひずみ測定工程以外にも、例えば判断工程の結果に応じて、PCケーブルが損傷していることを警告する警告工程等を有することもできる。
なお、本実施形態のPCケーブルの損傷検知方法は、各種用途に用いられているPCケーブルに適用することができ、PCケーブルの利用形態は特に限定されない。例えば斜材、内ケーブル、外ケーブルなどのセメント硬化体用のPCケーブルや、グランドアンカー、ケーブルボルト等の各種用途に用いられているPCケーブルについて適用できる。