JP7064956B2 - はかりの検査装置および検査方法 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 平成29年12月1日 エル・おおさか(大阪府立労働センター:大阪府大阪市中央区北浜東3-14)606号室にて開催された、大阪計量士会12月度例会にて公開
本発明は、はかりの検定や使用中検査(または定期検査。以後、特に拘らない場合は単に検査と称す)に適している、はかりの検査装置およびはかりの検査方法に関する。
各種の取引や証明を行う際に使用される特定計量器や質量計は、計量法により、検定や検査に合格しないと取引や証明に使用することができない。また、前記検定や検査を行う際には、一部の例外を除いて基準分銅(または実用基準分銅)を使用しなければならない。例えば、精度等級3級6000目量の特定計量器について、検定をする場合には、分銅質量が100g以上1tにおいて基準器公差で表す質量の5/10万以内に収まっていることが必要要件であるので2級基準分銅(M1級)または2級実用基準分銅を用いなければならない。また、精度等級3級6000目量の特定計量器について、検査をする場合には、分銅質量が100g以上1tにおいて基準器公差で表す質量の15/10万以内に収まっていることが必要要件であるので、3級基準分銅(M2級)または3級実用基準分銅を用いなければならない。なお、以下において、基準分銅または実用基準分銅を単に基準分銅と称す。
ところで、測定対象物を吊り下げた状態で測定する吊りはかり(懸垂式はかり)や、秤量(最大測定荷重)に対して載台の面積が小さいコイルスケールなどのはかりを特定計量器として用いる場合がある。吊りはかりの検定や検査を行う場合には、基準分銅を載せる載台を吊りはかりにより下方に吊り下げた状態で、載せる基準分銅の数を順次増やしながら計量することにより作業が行われる。この際、多くの基準分銅を使用するが、載台上に載せた基準分銅の重心が一致していないと、基準分銅を載せた載台が振れたり、吊りはかりに設けられているホイストが回転したりするため、測定荷重が大きくなると、この検定や検査の作業に危険を伴ってしまう恐れがある。
したがって、秤量が2t以下の吊りはかりだけでなく、秤量が5tや10tの吊りはかりの場合でも、できるだけ危険を伴うことなく安全に行えるように、法律(計量法)上は、載台に載せるなどする基準分銅は2tまでと定められている。例えば、秤量が5tや10tの吊りはかりの場合でも、載台上に10kgの基準分銅を200個積んだり、500kgの基準分銅を4個吊り下げたりしており、このように2tまでの器差試験を行った上で、検定や検査の合否が決められている。当然のことながら、2tを超えて秤量(例えば5t、10t)までの測定範囲における測定結果の信頼性は低い、という課題が存在している。
また、秤量に対して載台の面積が小さいコイルスケールなどのはかりでは、コイルを載せるV字形状の溝が形成されている。しかし、このように、秤量に対して載台の面積が小さいとともに、V字形状の溝が形成されているなどして基準分銅を載せることが困難なコイルスケールなどのはかりでは、大きな荷重となるように多数の基準分銅を載せると、基準分銅が崩れるなどして危険が伴う恐れがある。したがって、このような秤量に対して載台の面積が小さいはかりでは、検定を受けなくても特定計量器として使用することが認められている。そして使用中検査もないまま使用されるので、使用者は測定結果の信頼性を何らかの方法で検証したいが、なされないまま継続使用している、という課題が存在している。
また、秤量が大きな大型はかり(トラックスケールなど)においては、使用中検査を行う際や、修理後検定を行う際に、質量が大きい基準分銅を多数集めて検査や検定を行う現場まで運ばなければならないため、多大な運搬費用ならびに労力を要する。このため、使用中検査においては、昭和40年代初頭から最大の試験荷重を以下のように決めている。
・秤量が1tを超え、10t未満のはかりは、秤量の3/4付近(但し、秤量の3/4が1t未満の場合は1t)
・秤量が10t以上のはかりは、秤量の3/5付近(但し、秤量の3/5が8t未満の場合は8t)
さらに、定期検査または計量証明のための検査、およびこれに代わるものとして計量士が行う検査に細則の承認を受けた車両を以下の条件で使用することができるようにしている。すなわち、秤量が2tを超え、20t以下のはかりについては、5tを超える領域の検査(いわゆる器差検査)において基準分銅を用いる代わりに車両を使用してもよい(車両と基準分銅とを合わせて使用する)よう構成している。
また、大型はかりの代表的なものであるトラックスケールは、製造時において、トラックスケールの製造会社で組み立てて調整した後に、製造会社の工場などで基準分銅を用いて、検定を行っている。しかし、トラックスケールは、大型であるとともに据え付け作業が必要であるため、検定した後に、一旦分解して現地に搬送して、現地で改めて据付作業と組立作業とを再度行っているが、この後、組み立て直したトラックスケールに対して、基準分銅を用いて検定したり検査したりする義務がなく、また、これらの検査作業に多大な費用がかかるため、組付け後に検査することなく、計量性能の担保はメーカの責任内としてトラックスケールの使用を開始している。本来的には何らかの検査をやりたいという要望があるが、課題として残されたまま今日に至っている。
また、トラックスケールを使用開始してから2年毎に定期検査を受ける必要がある。この2年毎の定期検査の際には、上記したように基準分銅および車両を用いて器差検査を行うが、この場合においても多大な費用がかかる。さらに、この定期検査で不合格となると、この後に、このトラックスケールを修理して検定を受け直さなければならないが、検定で合格するまでの間は使用できない。また、これらの修理、検定作業にも多大な費用がかかってしまう。つまり、修理後の検定の際には、定期検査時のような車両を使用することが許されておらず、秤量まで基準分銅を用いなければならないため、より多くの手間および時間と費用が発生する。
以上のように、はかりの検定や検査を行う場合に、秤量(最大測定荷重)が大きいはかりに対しても基準分銅を用いなければならないという原則を貫くと、現場までの分銅運搬費用や多大な手間がかかるため、前述のように使用中検査においては、最大の試験荷重を秤量の3/4付近または3/5付近とし、検査荷重の一部を車両質量で代替してもよいという救済措置的な対応が法令でとられているのが実状である。
しかし、この場合、はかりの試験荷重以上の測定については検査していないため、これらの測定範囲における測定結果の信頼性が極めて低いものとなってしまう。また、検定や検査には多大な手間と費用がかかるとともに、使用中検査で不合格となった場合には、再度、修理後の検定に合格するまでは、使用できないという課題がある。実際問題として、使用中検査が不合格となった場合、直ちに修理して、修理後の検定を受けようとしても秤量までの分銅を準備して現場へ運搬するには、例えば秤量40tのトラックスケールの場合では10t車4台が必要になるので、数日間を要することとなり、その間トラックスケールが使用できないこととなるので、使用者にとっては事業運営上大きな問題となる。
このような課題に対処するものとして、特許文献1の図10などに開示された検重方法がある。この検重方法に用いる検重装置は、図19に示すように、固定部(基礎部)101に固定された支持固定枠102を、検査対象はかり(トラックスケール)103の上方を跨ぐ姿勢で配置し、検査対象はかり103の載台104と支持固定枠102における載台104の上方箇所との間で上下方向に並ぶ姿勢で、油圧シリンダ装置などの荷重発生装置105と、検重用のロードセル106と、を上下方向に並ぶ姿勢で直列に配設させている。そして、この検重装置を用いて、荷重発生装置105から荷重を発生させ、検重用のロードセル106により荷重を測定しながら、検査対象はかり103の測定値を検出するとともにこれらの値を比較する(器差を確認する)ことで、検査対象はかり103を検査するよう構成されている。
この検重装置および検重方法によれば、基準分銅などを用いることなく、検査対象はかり103を検査(または検定)することが可能である。また、秤量(最大測定荷重)に対応した荷重を実際に検査対象はかり103などに負荷させて検査(または検定)することが可能となる。
特許4808538号公報
しかし、特許文献1に示す検重方法や検重装置では、検重用のロードセル106を用いるが、この検重用のロードセル106は、極めて高精度の測定精度を有するものでなければならない。ここで、ロードセル106は、はかりの構成要素として使用されるものでもあり、ロードセル106ははかりの筐体内などに複数個配置され、ロードセル106の荷重負荷部に、測定対象物を載せる載台などを組み付けて、はかりとして組み上げた場合には、そのはかりの精度を分銅による検定や検査により確認できる。しかしながら、ロードセル106単体には、測定対象物を載せる載台などが設けられていないので、大きな荷重の基準分銅を載せるなどして荷重を負荷させることが困難であり、はかりと同じような検査や検定を受けることができない。したがって、ロードセル106単体ではその精度を確認することが困難である。
但し、ロードセル106単体の精度を確認可能な特殊な高精度荷重試験機が全く存在しないわけではなく、このような特殊な試験機としては、産業技術総合研究所にある実荷重試験機(実荷重式力標準機とも称される)が存在するものの、極めて数や場所が限られているため、汎用性に劣り、実用的ではない。このようなことから、特許文献1に示す検重方法や検重装置は現時点においても実用化されていない。
本発明は上記課題を解決するもので、基準分銅を用いなくても、検査対象はかりを検査または検定することが実用的に可能であるはかりの検査装置およびはかりの検査方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために本発明のはかりの検査装置は、載台または測定対象物の吊り部を有する検査対象はかりを検査または検定するはかりの検査装置であって、鉛直荷重を発生する荷重発生装置と、載台または測定対象物の吊り部を有して、基準となる荷重値を検出する基準はかりと、を備え、荷重発生装置と基準はかりと検査対象はかりとを上下方向に並ぶ姿勢で直列に配設させて、荷重発生装置からの荷重が、基準はかりの載台または吊り部と、検査対象はかりの載台または吊り部と、に共通して負荷するように構成したことを特徴とする。また、基準はかりが検査対象はかりよりも高精度であり、かつ基準はかりの最大測定荷重である秤量が、検査対象はかりの秤量以上であると好適である。
また、本発明のはかりの検査方法は、載台または測定対象物の吊り部を有する検査対象はかりを検査または検定するはかりの検査方法であって、鉛直荷重を負荷する荷重発生装置と、載台または測定対象物の吊り部を有する基準はかりと、載台または測定対象物の吊り部を有するとともに検査対象である検査対象はかりと、を上下方向に並ぶ姿勢で直列に配設し、荷重発生装置からの荷重が、基準はかりの載台または吊り部と、検査対象はかりの載台または吊り部と、に共通して負荷し、基準はかりと検査対象はかりとの測定値の差を確認して、検査対象はかりの検定または検査を行うことを特徴とする。
この構成や方法によれば、荷重発生装置からの荷重を、載台または測定対象物の吊り部をそれぞれ有する基準はかりと検査対象はかりとに共通して負荷することにより、大秤量の場合などでも、基準分銅を用いなくても検査対象はかりを検査または検定することが可能となる。また、この場合に、検重用のロードセルではなくて、載台または測定対象物の吊り部を有する基準はかりを用いるので、基準はかりとしてその精度が確認済みであるものを用いることにより、容易に実用化することができる。
また、本発明のはかりの検査装置は、検査対象はかりおよび基準はかりのうちの一方の載台に、他方のはかりを載せ、他方のはかりの載台に、鉛直荷重を負荷する荷重発生装置としての荷重発生物を載せることを可能に構成したこと特徴とする。
また、本発明のはかりの検査装置は、固定部に固定された支持固定枠を、検査対象はかりおよび基準はかりの上方を跨ぐ姿勢で配置し、支持固定枠と固定部との間で、荷重発生装置と、基準はかりの載台と、検査対象はかりの載台と、が上下方向に並ぶ姿勢で、荷重発生装置、基準はかりおよび検査対象はかりを直列に配置させたことを特徴とする。
また、本発明のはかりの検査装置は、検査対象はかりを載せる台部と荷重発生装置を支持する支持部とが一体的に形成された支持枠が設けられ、支持枠の台部と支持部との間で上下方向に並ぶ姿勢で、荷重発生装置と、載台を有する基準はかりと、載台を有する検査対象はかりと、を上下方向に並ぶ姿勢で直列に配設させたことを特徴とする。
また、本発明のはかりの検査装置は、検査対象はかりが、測定対象物が吊り下げられる吊り部を有する吊り秤であり、台部に、載台を有する基準はかりが載せられ、基準はかりの載台に支持固定枠が組み付けられ、支持固定枠に荷重発生装置が載せられ、台部に、吊り秤の吊り部により吊り上げる連結体を連結させ、荷重発生装置により吊り秤である検査対象はかりを引き上げて、吊り秤である検査対象はかりに引き上げ力が負荷されるとともに、引き上げ力の反力による押し下げ力が、支持固定枠を介して基準はかりに作用するよう配置させることを特徴とする。この構成によれば、吊りはかりの検定または検査を行うことが可能となる。
また、本発明のはかりの検査装置は、検査対象はかりがトラックスケールであるとともに固定部がコンクリート製の基礎であり、基礎の上面に、長手方向に延びる検査用主桁を取付け、検査または検定時には、検査用主桁に支持固定枠を係止させることを特徴とする。この構成により、基礎などを損傷することなく、トラックスケールの検査や検定を安全に行うことができる。
また、本発明のはかりの検査装置は、基準はかりが、計量値が0であるように設定する零点設定部を有することを特徴とする。また、本発明のはかりの検査方法は、基準はかりが、計量値が0であるように設定する零点設定部を有し、荷重発生装置と基準はかりと検査対象はかりとを上下方向に並ぶ姿勢で直列に配設し、荷重発生装置により荷重を発生していない状態で、検査対象はかりおよび基準はかりの計量値が0であるようにそれぞれ設定することを特徴とする。この構成や方法により、基準はかりやその他の構成要素の荷重を除去して、検査対象はかりの測定結果と基準はかりによる検出結果とを良好に比較することができる。
また、本発明のはかりの検査装置は、基準はかりが、機械式の槓桿と、平衡さおと、増錘部とを備えて、重力加速度の影響を受けない機械式はかりであることを特徴とする。この構成により、当該検査装置の設置場所による重力加速度の変動の影響を受けなくなるので、当検査装置を任意の場所に移動して検査や検定を行う場合でも、より高精度な検査や検定を安定して行うことができる。
また、本発明のはかりの検査装置は、基準はかりが、機械式の槓桿と、高精度荷重センサーと、重力自己補正装置と、を備えて、重力加速度の影響を補正できるはかりであることを特徴とする。この構成により、当該検査装置の設置場所による重力加速度の変動の影響を最少にできるので、当検査装置を任意の場所に移動して検査や検定を行う場合でも、より高精度な検査や検定を安定して行うことができる。
また、本発明のはかりの検査装置は、基準はかりが、複数個の高精度ロードセルと、重力補正装置と、を備え、重力加速度の影響を補正できるはかりであることを特徴とする。この構成により、検査装置の設置場所による重力加速度の変動の影響を最少にできるので、当検査装置を任意の場所に移動して検査を行う場合でも、より高精度な検査を安定して行うことができる。
また、本発明のはかりの検査方法は、荷重発生装置の位置を移動し、必要に応じて基準はかりを載台上で移動させることで、偏置荷重試験を行うことを特徴とする。この検査方法により、少ない台数(例えば1台)の基準はかりにより、偏置荷重試験を良好に行うことができる。
また、本発明のはかりの検査方法は、基準分銅を載せて検査する際の荷重負荷によって生じる検査対象はかりのロードセルの傾斜角度と、荷重発生装置により荷重を負荷されて検査する際のロードセルの傾斜角度と、が同じになるような位置に、荷重発生装置を配置して、検査を行うことを特徴とする。この方法により、荷重発生装置を用いて荷重を負荷する(すなわち、集中荷重を負荷する)にもかかわらず、基準分銅を載せて(すなわち、分散荷重を載せて)検査または検定する際と同様な状況で、検査または検定することができて、検査または検定に対する信頼性をより向上させることができる。
本発明によれば、鉛直荷重を発生する荷重発生装置と、載台または測定対象物の吊り部を有する基準はかりと、載台または測定対象物の吊り部を有するとともに検査対象である検査対象はかりと、を上下方向に並ぶ姿勢で直列に配設させ、荷重発生装置からの荷重が、基準はかりの載台または吊り部と、検査対象はかりの載台または吊り部と、に共通して負荷するように構成することにより、基準分銅を用いなくても、検査対象はかりを検査または検定することが可能となるとともに、容易に実用化することができる。
また、検査用として用いる基準はかり(製品として出荷される載台または測定対象物の吊り部を有するはかり)は、製品の出荷時において載台に対する荷重を負荷させる位置を変えて偏置負荷試験を行い、測定値が所定の公差以下となるように調整されている。したがって、載台などに荷重を負荷する限り、十分に信頼性が高い検査や検定を行うことができる利点もある。つまり、検査用として基準はかりの代わりにロードセルを用いた場合には、ロードセルに対する負荷位置の変化があれば、例え鉛直荷重が負荷されても測定値の信頼性が低下する恐れがあるが、検査用として基準はかりを用いることで、負荷位置の変化があっても、鉛直荷重が負荷されておれば検定や検査を十分な信頼性を保ちながら、比較的容易に実用化することができる。
また、基準はかりとして、計量値が0であるように設定する零点設定部をそれぞれ有するものを用いて、荷重発生装置と基準はかりと検査対象はかりとを上下方向に並ぶ姿勢で直列に配設し、荷重発生装置により荷重を発生していない状態で、検査対象はかりおよび基準はかりの計量値が0であるようにそれぞれ設定することにより、基準はかりやその他の構成要素の荷重を除去して、検査対象はかりの測定結果と基準はかりによる検出結果とを良好に比較することができる。
また、本発明のはかりの検査装置の基準はかりとして、機械式の槓桿と、平衡さおと、増錘部とを備えて、重力加速度の影響を受けない機械式はかりを用いることにより、当該検査装置の設置場所による重力加速度の変動の影響を受けなくなるので、当検査装置を任意の場所に移動して検査や検定を行う場合でも、より高精度な検査や検定を安定して行うことができる。
また、本発明のはかりの検査装置の基準はかりとして、機械式の槓桿と、高精度荷重センサーと、重力自己補正装置と、を備えて、重力加速度の影響を補正できるはかりであることにより、当該検査装置の設置場所による重力加速度の変動の影響を最少にできるので、当検査装置を任意の場所に移動して検査や検定を行う場合でも、より高精度な検査や検定を安定して行うことができる。
また、本発明のはかりの検査装置の基準はかりを、複数個の高精度ロードセルと、重力補正装置と、を備え、重力加速度の影響を補正できるよう構成することにより、当該検査装置の設置場所による重力加速度の変動の影響を最少にできるので、当検査装置を任意の場所に移動して検査を行う場合でも、より高精度な検査を安定して行うことができる。
また、基準分銅を載せて検査する際の荷重負荷によって生じる検査対象はかりのロードセルの傾斜角度と、荷重発生装置により荷重を負荷されて検査する際のロードセルの傾斜角度と、が同じになるような位置に、荷重発生装置を配置して、検査を行うことにより、荷重発生装置を用いて荷重を負荷する(すなわち、集中荷重を負荷する)にもかかわらず、基準分銅を載せて(すなわち、分散荷重を載せて)検査または検定する際と同様な状況で、検査または検定することができて、検査または検定に対する信頼性をより向上させることができる。
本発明の第1の実施の形態に係るはかりの検査装置および検査方法を示す図である。 本発明の第2の実施の形態に係るはかりの検査装置および検査方法を示す図である。 本発明の第3の実施の形態に係るはかりの検査装置および検査方法を示す図で、検査対象はかりが体重計である場合を示す。 本発明の第4の実施の形態に係るはかりの検査装置および検査方法を示す図で、検査対象はかりが吊り秤(懸垂式はかり)である場合を示す。 本発明の第5の実施の形態に係るはかりの検査装置および検査方法を示す斜視図で、検査対象はかりがトラックスケールである場合を示す。 同第5の実施の形態に係るはかりの検査装置の縦断面図である。 同はかりの検査装置の基礎ベースを取り付けた状態を示す斜視図である。 同はかりの検査装置の検査用主桁を取り付けた状態を示す斜視図である。 同はかりの検査装置により、秤量が70t~100tまでのより大きなトラックスケール(検査対象はかり)を修理検定する様子を示す斜視図である。 同はかりの検査装置により、秤量が20t~50tまでのトラックスケール(検査対象はかり)を定期検査する様子および偏置荷重試験を行う様子を示す斜視図である。 従来の基準分銅を載せて検査(または検定)する際の様子を簡略的に示す側面図である。 本検査方法により検査(または検定)する際の様子を簡略的に示す側面図である。 基準はかりの分銅載台に基準分銅を載せた状態を示す平面図である。 基準はかりの分銅載台に基準分銅を載せた状態を示す正面図である。 検査装置がピットレス式のトラックスケールである正面図で、支持固定枠と分銅載台とが兼用されている場合を示す。 本実施の形態の検査装置の基準はかりの1例の機械式はかり(てこ式はかり)を示す図である。 本実施の形態の検査装置の基準はかりの他の例(機械式の槓桿と、高精度荷重センサーと、重力自己補正装置と、を備えた基準はかり)を示す図である。 本実施の形態の検査装置の基準はかりのその他の例(マルチロードセル方式はかりと、重力補正装置を備えた基準はかり)を示す図である。 従来の検重方法および検重装置を示す図である。
以下、本発明の実施の形態に係るはかりの検査装置およびはかりの検査方法を、図面に基づき説明する。
図1~図6などに示すように、本発明の実施の形態に係るはかりの検査装置1は、載台4aまたは測定対象物の吊り部を有する検査対象はかり4を検査または検定するはかりの検査装置1であって、共通する構成として、鉛直荷重を発生(負荷)する荷重発生装置2と、載台または測定対象物の吊り部(すなわち、載台や吊り部などの荷重が負荷される荷重被負荷部)を有して、基準となる荷重値を検出する基準はかり3と、を備えている。そして、これらの荷重発生装置2と、載台または測定対象物の吊り部を有する基準はかり3と、載台または測定対象物の吊り部を有する検査対象はかり4と、を上下方向に並ぶ姿勢で直列に配設させて、荷重発生装置2からの荷重が、基準はかり3の載台または吊り部と、検査対象はかり4の載台または吊り部と、に共通して負荷するように構成している。また、基準はかり3は、検査対象はかり4よりも高精度であるものが用いられる。また、基準はかり3の最大測定荷重である秤量が検査対象はかり4の秤量以上であるものが用いられる。また、載台(または吊り部)を有する基準はかり3は、載台に対する荷重を負荷させる位置を変えて偏置荷重試験を行い、測定値が所定の公差以下となるように調整されている。
また、吊りはかり以外の検査対象はかりの偏置荷重試験を行うために、荷重発生装置2が検査対象はかり4の載台の所定位置に移動可能とし、更に必要に応じて基準はかり3も移動可能としている。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るはかりの検査装置1および検査方法を示す図である。この図1に示すように、この実施の形態では、基準はかり3として載台3aを有するものが用いられ、また、検査対象である検査対象はかり4としても載台4aを有するものが用いられる。そして、所定位置に固定された基台5の上に検査対象はかり4が載せられ、この検査対象はかり4の載台4aの上に、基準はかり3が載せられ、基準はかり3の載台3aの上に、荷重発生装置としての荷重発生物(固形物など)2Aが載せられて、これらの荷重発生物2A、基準はかり3、検査対象はかり4が上下方向に並ぶ姿勢で直列に配設される。また、図示しないが、基準はかり3および検査対象はかり4は、入力部および表示部を有する指示計を備えており、入力部に設けられた押しボタンを押すなどして指示した際に、計量値が0であるように設定する零点設定部(風袋設定部とも称される)をそれぞれ有する。ここで、荷重発生物2Aとしては、基準分銅を用いてもよいが、基準分銅に代えて、固形物などの荷重発生物2Aに微小質量の分銅2Aaなどの微小質量物を加えて、測定用質量となるようにしたものを用いてもよい。
このはかりの検査装置1を用いて、検査対象はかり4を検定または検査する際(はかりの検査方法を実行する際)には、予め、検査対象はかり4の上に基準はかり3だけを載せた状態(荷重発生物(固形物など)2Aを載せない状態)で、測定荷重が0(零)となるように、検査対象はかり4の測定荷重をキャンセル(減算)しておく。また、必要に応じて、基準はかり3も荷重発生物(固形物など)2Aを載せない状態で、測定荷重(検出荷重)が0(零)となるように、基準はかり3の測定荷重をキャンセル(減算)しておく。
この後、基準はかり3の載台3aの上に、検査範囲で決められた値となるように荷重発生物(固形物など)2Aを載せる。これにより、荷重発生物(固形物など)2Aの荷重が、基準はかり3の載台3aと、検査対象はかり4の載台4aとに共通して負荷する(基準はかり3では高精度に荷重値が検出される)ので、これらの測定値の差を、器差として確認し、この結果から検定または検査の合否などを判定する。
この検査方法によれば、従来は検査最大荷重まで対応する基準分銅を準備する必要があったが、本検査方法によれば、検査荷重や検定荷重に相当する固形物などの荷重発生物2Aを用いて、基準はかり3の載台3aに検査荷重や検定荷重に相当する荷重発生物2Aを載せ、その際の、測定値の差を器差として確認すればよいため、検査最大荷重まで対応する基準分銅を準備する必要がなくなり、検定作業や検査作業を比較的簡単に行うことができて便利となる。
また、基準はかり3は、製品の出荷時において載台3aに対する荷重を負荷させる位置を変えて偏置負荷試験を行い、測定値が所定の公差以下となるように調整されているので、その載台3aに荷重を負荷する限り、十分に信頼性が高い検査や検定を行うことができる利点もある。つまり、基準はかり3の代わりにロードセルを用いた場合には、荷重を負荷させる位置を極めて厳密にしなければ、測定値の信頼性が低下する恐れがあるが、検査用として載台3aなどを有する基準はかりを用いることで、検定や検査を十分な信頼性を保ちながら、比較的容易に実用化することができる。
また、検査対象はかり4の偏置荷重試験を行う場合には、基準はかり3を載台4aの所定位置に移動させて載台3aの上に、検査範囲で決められた値となるように荷重発生物(固形物など)2Aを載せることにより、偏置荷重試験を容易に実施できる。
なお、上記実施の形態では、どのような検査対象はかり4の載台4aに対しても、比較的容易に基準はかり3を載せることができるように、基準はかり3は比較的小型のもの(あるいは、検査対象はかり4と同等の大きさのもの)を用いると好適である。しかし、これに限るものではなく、例えば、検査対象はかり4が基準はかり3よりも小型である場合などには、基準はかり3の載台3aに検査対象はかり4を載せるとともに、検査対象はかり4の載台4aに荷重発生物(固形物など)2Aを載せながら、検査を行う(検査装置を構成する)ようにしてもよく、この構成や方法でも同様の作用効果を得ることができる。
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施の形態に係るはかりの検査装置を示す図である。
図2に示すように、このはかりの検査装置1では、固定部としての基台5に固定された支持固定枠6を、検査対象はかり4および基準はかり3の上方を跨ぐ姿勢で配置している。そして、支持固定枠6と、この検査装置1を配置した基台5との間で、荷重発生装置2と、基準はかり3の載台3aと、検査対象はかり4の載台4aと、が上下方向に並ぶ姿勢で、荷重発生装置2、基準はかり3および検査対象はかり4を直列に配置させている。なお、図2に示すはかりの検査装置1では、基台5の上に、検査対象はかり4、基準はかり3、荷重発生装置2の順で載った状態に配置されている状態を示しているが、検査対象はかり4と基準はかり3の大きさなど、必要に応じて、検査対象はかり4の下方に基準はかり3を配置してもよい。
鉛直荷重を発生(負荷)する荷重発生装置2は油圧ジャッキまたは電動ジャッキなどからなり、本体部が支持固定枠6に取り付けられて、出退部が下方に突出して、基準はかり3の載台3aに対して、鉛直下向きに荷重を負荷する。負荷荷重は、基準はかり3と検査対象はかり4とに同一の負荷が作用する。また、上記実施の形態と同様に、上記のように、はかりの検査装置1の各構成要素を配置した際に、荷重発生装置2の荷重を発生していない状態で、測定荷重が0(零)となるように、基準はかり3および検査対象はかり4の測定荷重をキャンセル(減算)しておく。
なお、荷重発生装置2の制御で負荷荷重を目標値(検定又は検査荷重値)に到達させることは原理的に可能であるが、制御時間を短縮するために微小な負荷荷重を制御する目的で微小荷重負荷装置7を設けている。微小荷重負荷装置7は、例えば、特許4808538号公報などに開示されているものを用いると好適であるが、これに限るものではない。
この構成において、荷重発生装置2から鉛直荷重を負荷し、基準はかり3により高精度に検出(測定)した値が検査(検定)荷重となり、この値と、検査対象はかり4の測定値とが器差となる。この検査方法によれば、基準はかり3の検出値を確認しながら、負荷荷重を荷重発生装置2により調整しながら制御することが可能となる。例えば、1,000kg・・・5,000kgとの基準はかり3の検出値を確認しながら、あたかも、1t(1.000t)の分銅を積み上げた状態に、容易かつ迅速に行うことができ、手間や時間も大幅に削減できる。例えば、秤量が2tのはかりだけでなく、秤量が5tや10tの大秤量のはかりの場合でも、大荷重を荷重発生装置2から負荷させることで、危険を伴うことなく安全に、かつ秤量値(最大測定荷重:2tから5tや10t)まで検査、検定することができる。
但し、支持固定枠6を設置する基台(基礎)1には、上向きの引張荷重が作用するので、基台(基礎)1は、適切な強度や剛性を有するよう構成する。また、荷重発生装置2からの荷重が、基準はかり3の載台3aや検査対象はかり4の載台4aに鉛直方向に負荷していることを確認する確認手段を設けると好適である。このような検査装置1および検査方法は、はかりがトラックスケールである場合の検定(特に現地の修理検定)・定期検査に最適であるが、他のはかりにも適用可能である。
なお、この実施の形態の場合でも、荷重発生装置2により荷重を負荷する部材、例えば、基準はかり3の載台3aに、微小荷重を負荷する微小荷重負荷装置7を設けることが好適である。また、上記実施の形態と同様に、基準はかり3は、製品の出荷時において載台3aに対する荷重を負荷させる位置を変えて偏置負荷試験を行い、測定値が所定の公差以下となるように調整されているので、その載台3aに荷重を負荷する限り、十分に信頼性が高い検査や検定を行うことができる利点もある。
また、秤量に対して載台の面積が小さいコイルスケールなどのはかりに対しても、このコイルスケールなどのはかりを検査対象はかり3とし、基準はかり3の載台3aと、検査対象はかり4の載台4aと、が上下方向に並ぶ姿勢で、荷重発生装置2、基準はかり3および検査対象はかり4を直列に配置させることで、検査したり検定したりすることができる。なお、コイルスケールなどのはかりが小さい場合には、基台5上に基準はかり3を載せ、基準はかり3上に検査対象はかり4であるコイルスケールなどのはかりを載せ、このコイルスケールなどのはかりの上方から荷重発生装置2の荷重および微小荷重負荷装置7の荷重を負荷するように構成するとよい。これにより、危険を伴うことなく安全に検査や検定を行うことができる。
また、検査対象はかり4の偏置荷重試験を行うためには、荷重発生装置2の位置が検査対象はかり4の載台の所定位置に支持固定枠6内で移動可能とし、更に必要に応じて基準はかり3も移動可能としている。もし、検査対象はかり4の載台4aの寸法が大きい場合は、荷重発生装置2を支持している支持固定枠6を移動させた上で、荷重発生装置2の位置を支持固定枠6内で移動させ、検査対象はかり4の載台4aの所定位置に合わせることにより偏置荷重試験を実施できる。
(第3の実施の形態)
図3は、本発明の第3の実施の形態に係るはかりの検査装置を示す図である。
図3に示すように、このはかりの検査装置1は、検査対象はかり4が体重計である場合を示し、図3の左側領域(a)は、体重計である検査対象はかり4により人Aが体重を測定している様子を簡略的に示す。このように、体重計である検査対象はかり4は、載台4aと、測定荷重を表示する表示部4bとを有する。
この種の検査対象はかり4でも、従来、定期検査などを行う場合には、図3の中央領域(b)に示すように、最大測定荷重(秤量)まで対応可能な基準分銅8A~8Dを載台4aに順次載せて、検査していた。例えば、最大測定荷重(秤量)が200kgである場合には、合わせて200kgとなる基準分銅8A~8Dを順次載台4aに載せながら検査を行っていた。したがって、例えば、このような体重計が設けられている医院(クリニック)などが、エレベータなどを有しない建物の2階や3階などにある場合には、合わせて200kgとなる基準分銅8A~8Dを現場まで持ち込まなければならず、多くの労力や時間を必要としていた。
これに対して、本実施の形態の変形例の検査装置1では、図3の右側領域(c)に示すように、検査対象はかり4を載せる台部9aと荷重発生装置2を支持する支持部9bとが一体的に形成された支持枠9が設けられている。そして、支持枠9の台部9aと支持部9bとの間で上下方向に並ぶ姿勢で、荷重発生装置2と、載台3aを有する基準はかり3と、載台4aを有する検査対象はかり4と、を上下方向に並ぶ姿勢で直列に配設させている。
そして、検査を行う場合には、図3の右側領域(c)に示すように、支持枠9に、検査対象はかり4、基準はかり3、荷重発生装置2を取付け、荷重発生装置2からの荷重を発生させていない状態で、測定荷重が0(零)となるように、基準はかり3および検査対象はかり4の測定荷重をキャンセル(減算)しておく。そして、この後、荷重発生装置2から基準はかり3の載台3aに対して、鉛直下向きに荷重を負荷する。基準はかり3により高精度に検出(測定)した値が検査(検定)荷重となり、この値と、検査対象はかり4の測定値とが器差となる。
また、検査対象はかり4の偏置荷重試験を行うために、荷重発生装置2の位置が検査対象はかり4の載台4aの所定位置に支持部9b内で移動可能とし、更に必要に応じて基準はかり3も移動可能としている。
この検査方法によっても、基準はかり3の検出値を確認しながら、検査対象はかり4の測定荷重を確認し、その際の、測定値の差を器差として確認すればよいため、検査最大荷重まで対応する基準分銅を準備する必要がなくなり、検定作業や検査作業を比較的簡単に行うことができて便利となる。すなわち、従来は、例えば、200kgの基準分銅8A~8Dを、階段を上り下りするなどして搬送する必要がある場合など、多くの労力や時間を必要としていたが、本実施の形態によれば、比較的軽い基準はかり3や支持枠9、荷重発生装置2を用いることで、検査対象の現場まで搬送する労力を軽減することができる。
(第4の実施の形態)
図4は、本発明の第4の実施の形態に係るはかりの検査装置を示す図である。
このはかりの検査装置1は、検査対象はかり4が、測定対象物が吊り下げられる吊り部4cを有する吊り秤(懸垂式はかり)である場合を示す。
図4に示すように、このはかりの検査装置1では、基台5に載せられた台部としての台枠11に、載台3aを有する基準はかり3が載せられ、基準はかり3の載台3a上に支持固定枠6が組み付けられる。また、支持固定枠6の上辺部に、油圧シリンダなどからなる荷重発生装置2が載せられ、台枠11に、基準はかり3の載台3aに干渉することなく吊り秤である検査対象はかり4の吊り部4cにより吊り上げる連結体12を連結させている。そして、荷重発生装置2により吊り秤である検査対象はかり4を引き上げて、吊り秤である検査対象はかり4に引き上げ力が負荷されるとともに、この引き上げ力の反力による押し下げ力が、支持固定枠6を介して基準はかり3に作用するよう配置されている。
この構成においても、荷重発生装置2からの荷重を発生させていない状態で、測定荷重が0(零)となるように、基準はかり3および検査対象はかり4の測定荷重をキャンセル(減算)しておく。そして、この後、荷重発生装置2により検査対象はかり(吊り秤)4を引き上げる。これにより、吊り秤である検査対象はかり4に引き上げ力が負荷されるとともに、引き上げ力の反力による押し下げ力が、支持固定枠6を介して基準はかり3に作用する。基準はかり3により高精度に検出(測定)した値が検査(検定)荷重となり、この値と、吊り秤である検査対象はかり4の測定値とが器差となる。
この検査方法によっても、基準はかり3の検出値を確認しながら、吊り秤である検査対象はかり4の測定荷重を確認し、その際の、測定値の差を器差として確認すればよいため、検査最大荷重まで対応する基準分銅を準備する必要がなくなり、検定作業や検査作業を比較的簡単に行うことができて便利となる。
つまり、従来、吊り秤の検定や検査を行う場合には、基準分銅を載せる載台を吊りはかりにより下方に吊り下げた状態で、載せる基準分銅の数を順次増やしながら計量することにより作業が行われる。この際、多くの基準分銅を使用するが、載台上に載せた基準分銅の重心が一致していないと、基準分銅を載せた載台が振れたり、吊りはかりに設けられているホイストが回転したりするため、測定荷重が大きくなると、この検定や検査の作業に危険を伴ってしまう恐れがある。また、秤量が2tの吊りはかりだけでなく、秤量が5tや10tの吊りはかりの場合には、できるだけ危険を伴うことなく安全に行えるように、法律(計量法)上は、載台に載せるなどする基準分銅は2tまでと定められており、2tまでの器差試験を行った上で、検定や検査の合否が決められていた。
これに対して、上記構成の検査装置ならびに検査方法によれば、基準分銅を載せた載台が振れたり、吊りはかりに設けられているホイストが回転したりすることがないため、安全に検査(または検定)することができる。また、基準分銅を運ぶ手間を要しないため、検査対象の現場まで基準分銅を搬送する労力を軽減することができる。また、測定荷重が大きくなる場合でも、秤量(最大測定荷重)まで検査(または検定)することができるので、秤量(最大測定荷重)までの吊りはかりの精度を確認することができて、信頼性が向上する。
(第5の実施の形態)
図5~図10は、本発明の第5の実施の形態に係るはかりの検査装置を示す図である。
このはかりの検査装置1は、検査対象はかり4がトラックスケールである場合を示す。ここで、図5は、はかりの検査装置1の概略的な全体斜視図である。この図5において、4aはトラックスケールである検査対象はかり4の載台、3は基準はかり、2は油圧シリンダなどからなる荷重発生装置、6は基準はかり3の上方を跨ぐ姿勢で配置されている門型の支持固定枠、15は検査対象はかり4が配設されている基礎、16は、基礎15の側壁15aに設けられて、支持固定枠6が組み付けられる鉄などの金属製の検査用主桁、17は、検査を行う際に基準はかり3や支持固定枠6、検査用主桁16を現場に搬送するためのクレーン付きトラックである。
なお、図6に示すように、コンクリート製の基礎(ピット)15は周囲が埋められて、その上面が地表面などの設置面と同様な高さとなっている。また、トラックなどの車両が載せられるトラックスケールの載台4aは下方から複数のロードセル10により支持されており、これらのロードセル10に指示計などが接続されている。また、図6においては、ロードセル10と、検査対象はかり4の載台4aを下方から支持する支持桁19Aとが、ピット20内に配置されている、いわゆる埋込式(ピット)のトラックスケールである場合を示している。
検査を行う際には、図7、図8に示すように、基礎15の側壁15aの上面両側に、ボルトなどにより基礎15に取り付けた基礎ベース15bを介して、長手方向に延びる検査用主桁16(支持固定枠6を組み付けるための桁)を組付ける。
そして、トラックスケールである検査対象はかり4の載台4aの上に、基準はかり3を載せる(例えば、定期検査時に合格しなかったために、秤量60tまでのトラックスケール(検査対象はかり4)を修理検定する場合には、図5に示すように、秤量30tの高精度の基準はかり3を2台用いて、載台4a上に載せる)とともに、支持固定枠6および荷重発生装置2を組み付ける。そして、まず、荷重発生装置2からの荷重を発生させていない状態で、測定荷重が0(零)となるように、基準はかり3および検査対象はかり4の測定荷重をキャンセル(減算)しておく。そして、この後、荷重発生装置2により、基準はかり3およびトラックスケールである検査対象はかり4に荷重を順次負荷する。この場合も、基準はかり3により高精度に検出(測定)した値が検査(検定)荷重となり、この値と、トラックスケールである検査対象はかり4の測定値とが器差となる。
また、秤量が70t~100tまでのより大きなトラックスケール(検査対象はかり4)を修理検定する場合には、図9に示すように、秤量30tの高精度の基準はかり3を4台用いて載台4a上に載せるとともに、支持固定枠6および荷重発生装置2を組み付ける。そして、まず、荷重発生装置2からの荷重を発生させていない状態で、測定荷重が0(零)となるように、基準はかり3および検査対象はかり4の測定荷重をキャンセル(減算)した後、荷重発生装置2により、基準はかり3およびトラックスケールである検査対象はかり4に荷重を順次負荷する。この場合も、基準はかり3により高精度に検出(測定)した値が検査(検定)荷重となり、この値と、トラックスケールである検査対象はかり4の測定値とが器差となる。
この検査方法によっても、基準はかり3の検出値を確認しながら、トラックスケールである検査対象はかり4の測定荷重を確認し、その際の、測定値の差を器差として確認すればよいため、検査最大荷重まで対応する基準分銅を準備する必要がなくなり、検定作業や検査作業を比較的簡単に行うことができて便利となる。また、測定荷重が大きくなる場合でも、秤量(最大測定荷重)まで検査(または検定)することができるので、秤量(最大測定荷重)までのトラックスケールの精度を確認することができて、信頼性が向上する。
ここで、検査対象はかり4がトラックスケールである場合は、検査最大荷重が極めて大きいとともに、荷重発生装置2からの荷重が集中して発生するため、支持固定枠(負荷枠)6をコンクリート製の基礎15に直接取り付けると、取付けているコンクリート部分などが強度不足により破損するおそれがある。
このような不具合が生じないように、上記構成においては、コンクリート製の基礎15に、横方向(基礎15や載台4aの長手方向)に延びる鉄などの金属製の検査用主桁16を結合し、支持固定枠(負荷枠)6からの引張力を金属製の検査用主桁16の全体に分散させながら、基礎15に作用させることが好適であり、この構成により、コンクリート製の基礎15が破損することを防止できる。なお、必要に応じて基礎15と検査用主桁16との結合箇所の数を増やすなどして基礎15の耐久性を向上させると好適である。
なお、基礎(ピット)15を新設する場合には、基礎15の側壁15aの配筋(鉄筋)を増加させるとともに、基礎15の側壁15aよりも上方に突出する部分を設け、この突出部分に直接支持固定枠6を連結させるよう構成してもよい(検査用主桁16を設けずに、検査用主桁16と同等の耐久性を有する鉄筋などを設けて直接結合するよう構成してもよい)。
なお、秤量が20t~50tまでのトラックスケール(検査対象はかり4)を定期検査する場合には、図10に示すように、秤量30tの高精度の基準はかり3を1台用いて載台4a上に載せるとともに、支持固定枠6および荷重発生装置2を組み付ける。そして、まず、荷重発生装置2からの荷重を発生させていない状態で、測定荷重が0(零)となるように基準はかり3および検査対象はかり4の測定荷重をキャンセル(減算)した後、荷重発生装置2により、基準はかり3およびトラックスケールである検査対象はかり4に荷重を順次負荷する。この場合も、基準はかり3により高精度に検出(測定)した値が検査(検定)荷重となり、この値と、トラックスケールである検査対象はかり4の測定値とが器差となる。
この場合には、検査対象はかり4の秤量の60%までの荷重試験が可能となる。また、基準はかり3および支持固定枠6、荷重発生装置2の組付け位置を変えることで、荷重を前輪側や後輪側に負荷させた場合の検査(偏置荷重試験)を行うことも可能であり、基準はかり3を1台用いるだけでよいので、搬送するためのクレーン付きトラック17として、比較的小型のもの(例えば、4t車)で済ますことができる利点がある。
ここで、現行の検定や定期検査に使用する基準分銅は、検査対象はかり4の検定・使用公差の1/3以下の記載のものを使用しなければならないことが法定されている。したがって、上記検査装置および検査方法を用いるにあたっても同様の精度が必要となる。
検査対象はかり4がトラックスケールである場合、現状のトラックスケールの最大目量は6000目量(60t×10kg)であるので、これに対応するためには、検定時には、秤量30t、目量0~10tまでは0.5kg、目量が10t~30tの範囲は1.0kg、の基準はかり3を2台使用する。なお、基準はかり3として、機械式(てこ式)・増し錘、さお平衡式のはかりを採用して、重力加速度の影響を受けないよう構成したり、機械式の槓桿と、高精度荷重センサーと、重力自己補正装置などを備えて、重力加速度の影響を補正できるよう構成したりすると好適である。また基準はかり公差としては、トラックスケールの検定公差の1/5が望ましい。なお、このような基準はかり3を4台使用することで、秤量100t、1目量20kgのトラックスケールまで適用して検定することが可能である。
定期検査に上記検査装置および検査方法を用いる場合は、秤量30t、目量0~15tまでは1.0kg、目量が15t~30tの範囲は2.0kg、の基準はかり3を2台使用する。なお、基準はかり3としては、移動(搬送)する際に便利で、低価格で実現できる、高精度ロードセル式はかり、特に4点マルチロードセル式はかりに重力加速度補正機能(重力補正機能)を備えたものが好適である。また、また基準はかり公差としては、トラックスケールの使用公差の1/5が望ましい。なお、定期検査用としては、秤量×0.6が最大負荷荷重なので、秤量が20t~100tまでの検査対象はかり4(トラックスケール)に適用可能である。また、秤量が50t以下なら1台の基準はかり3を使用することも可能であり、図10に示すように、1台の基準はかり3を載台4a上で移動させることで、偏置荷重試験を行うこともできる。
また、従来、基準分銅を載せて検査または検定する際には、検査対象はかり4の載台4aに対して基準分銅8(全ての基準分銅8を合わせた荷重W)を均等に載せて検査を行うが、この際、検査対象はかり4の載台4aは、基準分銅Fの負荷によって、中央部が最も下方となるように略円弧状に撓み(窪み)、これに伴って、ロードセル10の載台4aを載せる箇所に形成されている球面状部10aが載台4aに対して鉛直に接するように、外側に傾斜角度θ1で若干傾斜した姿勢となって(図11においては、分かり易いように誇張して図示している。)測定される。
一方、上記のように、荷重発生装置2を用いて荷重を負荷する場合(例えば、2台の荷重発生装置2を用いて荷重を負荷する場合)には、図12に示すように、各荷重発生装置2から基準はかり3を通して検査対象はかり4の載台4aに負荷する下方への力(W/2)が集中荷重として作用するとともに、支持固定枠6を通して基礎15を引き上げる力(F/2)が作用するため、この際にロードセル10が傾斜する角度θ2が、基準分銅Fを均等に載せて検査を行う場合の傾斜角度θ1と同じとなる位置Xを算出し、この位置Xに荷重発生装置2を配置すると好適である。
この方法を用いることにより、この方法では、荷重発生装置2を用いて荷重を負荷する(すなわち、集中荷重を負荷する)が、基準分銅8を載せて(すなわち、分散荷重を載せて)検査または検定する際と同様な状況で、検査または検定することができて、検査または検定に対する信頼性をより向上させることができる。
また、上記実施の形態で用いる基準はかり3は、当然ながら高精度であるとともに、基準分銅を用いて良好に検査(する検定)できることが必要である。したがって、例えば、図13、図14に示すように、基準はかり3の載台3aに良好に載せることができるように、基準はかり3の載台3aに載せられる分銅載台18は、その上面部である基準分銅載面18aが水平な姿勢で平に形成され、分銅載台18の基準分銅載面18aには、縦横に複数の基準分銅を順次載置できるようになっているとともに、分銅載台18の両側下面に、基台(設置面)5近傍まで下方に延びて、基台5までの高さを調整可能な転倒防止脚18bを有すると好適である。例えば、分銅載台18には、1級基準分銅や2級基準分銅などの基準分銅8を多数載せることが可能で、最大30tonの基準分銅8を載せることが可能に構成するとよいが、これに限るものではない。
また、図6、図15に示すように、トラックスケールである検査対象はかり4を検査または検定する際に用いる支持固定枠(負荷枠)6を、基準はかり3の検査または検定する際に用いる分銅載台18としても用いることができるように、分銅載台18の中央部に、荷重負荷装置2を配置可能な凹部18aを有するものを用いてもよい。
なお、図6に示す検査装置1は、検査対象はかり4のロードセル10と、検査対象はかり4の載台4aを下方から支持する支持桁19Aとが、ピット(基礎)15内に配置されている、いわゆる埋込式(ピット)のトラックスケールである場合を示し、図15に示す検査装置1は、ピットが設けられておらず、検査対象はかり4のロードセル10と、検査対象はかり4の載台4aを上方から連結して、ロードセル10上に載せられる支持桁19Bとが設けられている、いわゆるピットレス式のトラックスケールである場合を示す。この構成によれば、トラックスケールである検査対象はかり4を検査または検定する際に用いる支持固定枠(負荷枠)6と、検査対象はかり4を検査または検定する際に用いる分銅載台18と、を兼用できるため、その分、製造コストを低減することが可能となる。
また、上記実施の形態の基準はかり3として、図16に示すように、機械式はかり(てこ(槓桿)式はかり)などの重力加速度の影響を受けないはかりを用いることが、より好適である。
例えば、この基準はかり3は、荷重発生装置2からの鉛直荷重Wを受ける載台3aと、横揺れ装置(鋼球受けユニット)28を介して、載台3aからの荷重を受けて、第1槓桿(てこ)27の重点27cに負荷する荷重受け枠29と、基板部20となどからなる。また、この基準はかり3は、支点27aを中心に揺動自在に支持され、重点27cへの負荷を軽減させて力点27bに伝達する第1槓桿(てこ)27と、支点を中心に揺動自在に支持され、重点への負荷を軽減させて力点に伝達する第2槓桿(てこ)26と、支点25aを中心に揺動自在に支持され、重点25cへの負荷を軽減させて力点25bに伝達する第3槓桿(てこ)25と、支点22aを中心に揺動自在に支持され、連結部24を介して重点22cへの負荷は軽減され力点22bに鉛直荷重Wの目標荷重値として手動又は自動的に選択され吊り下げられた複数個の増錘部21の質量によって生じる負荷と平衡する平衡棹22などによって構成されている。
平衡棹22に組付けられて偏荷重検出を検出する偏荷重検出器23は平衡棹22の平衡を検出するためのものであり、不平衡の場合には、上下方向のストッパー14により平衡棹22の傾斜は制限される。その場合、偏荷重検出器23の出力は±最大出力となる。鉛直荷重Wはこの偏荷重検出器23の出力によって荷重発生装置2および微小荷重負荷装置が応答し、偏荷重検出器23の出力が≒0(平衡棹22が平衡つまり水平に釣り合う)になるように制御される。鉛直荷重Wの目標荷重値は例えば40tトラックスケールの検定の場合は、質量値0、200kg、5t、10t、20t、30t、40tに相当する荷重であり、この荷重値の精度はトラックスケールの検定公差の1/5が望ましい。なお、図16における13は、平衡棹22の上下方向への瞬間的な移動を制動する(緩衝させる)オイルダンパである。
また、横揺れ装置28は、荷重発生装置2によって負荷される荷重Wによって載台3aが撓んだ際に第1槓桿(てこ)重点27cに、傾斜荷重が作用しないよう、搖動することによって荷重受け枠29への横荷重を逃がし、鉛直荷重が重点27cに作用することによって、計量精度の低下を防止する。
そして、増錘部21の質量によって生じる負荷と鉛直荷重Wが一致して、平衡棹22が平衡つまり水平に釣り合った状態での、鉛直荷重Wの値と検査対象はかり4の測定値(計量値)とを比較、確認することで検査対象はかり4を検査または検定するようになっている。なお、平衡棹22の平衡(水平)状態の確認は、人が視認してもよいが、傾斜センサーを設けるなどして検知してもよい。そうして水平状態になった平衡棹22は偏荷重検出器23に上下方向負荷を与えないようセットされているので、偏荷重検出器23の出力が≒0となり、鉛直荷重Wの制御信号が平衡状態に達したと判定する。このように偏荷重検出器23を用いることで、差動トランスのような変位計を用いて平衡、不平衡を検出する場合よりも応答が速くなって、荷重発生装置2や微小荷重負荷装置7の制御時間を短縮できるよう構成されている。なお、これに限るものではなく、差動トランスのような変位計を用いて平衡、不平衡を検出してもよい。また、平衡棹22の平衡(水平)状態を、人が視認して確認する場合には、機械式の天秤のように、平衡棹22の先端部の変位が大きくなるように棹の長さを大きくして、水平指標(天秤側)と度表(固定側の目盛り線)とにより視認するよう構成してもよい。
上記のように、基準はかり3として、図16に示すように、平衡棹22および機械式槓桿(てこ)25、26、27、増錘部21を備えた機械式はかり(てこ式はかり)、すなわち重力加速度の影響を受けないはかりを用いることで、当該検査装置1の設置場所による重力加速度の変動の影響を受けなくなるので、当検査装置1を任意の場所に移動して検査や検定を行う場合でも、より高精度な検査や検定を安定して行うことができる。
また、上記実施の形態の基準はかり3として、図17に示すように、機械式の槓桿と、高精度荷重センサーと、重力自己補正装置とを備えて、重力加速度の影響を補正できるように構成することも好適である。
この基準はかり3は、荷重発生装置2からの鉛直荷重Wを受ける載台3aと、横揺れ装置(鋼球受けユニット)28を介して、載台3aからの荷重を受けて、第1槓桿(てこ)27の重点27cに負荷する荷重受け枠29と、基板部20となどからなる。また、この基準はかり3は、支点27aを中心に揺動自在に支持され、重点27cへの負荷を軽減させて力点27bに伝達する第1槓桿(てこ)27と、支点を中心に揺動自在に支持され、重点への負荷を軽減させて力点に伝達する第2槓桿(てこ)26と、支点25aを中心に揺動自在に支持され、重点25cへの負荷を軽減させて力点25bに伝達する第3槓桿(てこ)25と、支点30aを中心に揺動自在に支持され、連結部24を介して重点30cへの負荷は軽減されて力点30bから高精度荷重センサー(例えば音叉式振動センサー)33に伝達する第4槓桿(てこ)30を備えている。また、第4槓桿(てこ)30は、力点30bより支点30aに近い位置に第2重点30dを備え、第2重点30dには重力補正錘受け31が吊り下げられており、重力補正錘受け31上に、適宜な昇降装置(図示されていない)によって掛け外しされる、重力補正錘32などを備えた構成とされている。
載台3aに作用する鉛直荷重Wは高精度荷重センサー33によって測定される。
荷重Wの目標荷重値は例えば40tトラックスケールの検定の場合は、質量値0、200kg、5t、10t、20t、30t、40tに相当する荷重であり、この目標値に達するように発生荷重と目標荷重値の差が≒0になるように荷重発生装置2及び微小荷重負荷装置7が制御される。この荷重値の精度はトラックスケールの検定公差の1/5が望ましい。
また、この基準はかり3は、重力自己補正装置として、第4槓桿(てこ)30の第2重点30dに重力補正錘32の質量を負荷できるようになっている。重力補正錘32の質量が負荷されると、その荷重は高精度荷重センサー33によって測定される。
当検査装置1に作用する重力加速度が変化したことを補正するためには、同一質量値を負荷した場合の発生荷重を各々の重力加速度下において測定し、その測定値の比率を求めて、補正係数とすることで重力の自己補正が可能となっている。故に、載台3aに作用する鉛直荷重Wが0即ち無負荷とし、当該基準はかり3を校正した基準場所において、重力補正錘32の質量を負荷し、その時の荷重を高精度荷重センサー33によって測定する。そして、この時の測定値w1を記憶しておく。次いで、検査装置1を使用される現場に設置した際に、当該基準はかり3の使用開始前に、同様に重力補正錘32の質量を負荷し、その時の荷重を高精度荷重センサー33によって測定する。この時の測定値w2を求め、補正係数w1/w2を得て記憶する。その後、荷重発生装置2からの鉛直荷重Wを高精度荷重センサー33によって測定する際は、その測定値に補正係数w1/w2を乗するような演算プログラムとしておく。
これによって、重力加速度変化を補正することができるから、当該検査装置1の設置場所による重力加速度の変動の影響を受けなくなり、当検査装置1を任意の場所に移動して検査や検定を行う場合でも、より高精度な検査や検定を安定して行うことができる。
また、上記実施の形態の基準はかり3として、図18に示すように、高精度ロードセル34を複数個使用するマルチロードセル方式とし、内部に独立した重力補正装置を備えて、重力加速度の影響を補正できるはかりにより構成してもよく、定期検査用などに好適である。
この基準はかり3は、荷重発生装置2からの鉛直荷重Wを受ける載台3aと、横揺れ装置(鋼球受けユニット)28を介して、載台3aからの荷重を受ける高精度ロードセル34と、独立した高精度電子天秤35と、重力補正錘32などによって構成されている。
載台3aに作用する鉛直荷重Wは高精度ロードセル34によって測定される。
荷重Wの目標荷重値は例えば40tトラックスケールの定期検査の場合は、質量値0、200kg、5t、10t、20t、24tに相当する荷重であり、この目標値に達するように発生荷重と目標荷重値の差が≒0になるように荷重発生装置2及び微小荷重負荷装置7(図示していない)が制御される。この荷重値の精度はトラックスケールの使用公差の1/5が望ましい。
また、この基準はかり3は、重力補正装置として、昇降装置36によって高精度電子天秤35の荷重受け皿上に載せ降ろしされる重力補正錘32が備わっている。重力補正錘32の質量は高精度電子天秤35によって測定される。
当該検査装置1に作用する重力加速度が変化したことを補正するためには、同一質量値を負荷した場合の発生荷重を各々の重力加速度下において測定し、その測定値の比率を求めて、補正係数とすれば重力の自己補正が可能となる。すなわち、載台3aに作用する鉛直荷重Wが0即ち無負荷とし、当該基準はかり3を校正した基準場所において、重力補正錘32の質量を負荷し、その時の荷重を高精度電子天秤35によって測定する。この時の測定値w1を記憶しておく。次いで、検査装置1を使用される現場に設置した際に、当該基準はかり3の使用開始前に、同様に重力補正錘32の質量を負荷し、その時の荷重を高精度電子天秤35によって測定する。この時の測定値w2を求め、補正係数w1/w2を得て記憶する。その後、荷重発生装置2からの鉛直荷重Wを高精度ロードセル34によって測定する際は、その測定値に補正係数w1/w2を乗するような演算プログラムとしておく。
この構成によって、重力加速度変化を補正することができるから、当該検査装置1の設置場所による重力加速度の変動の影響を受けなくすることができて、当検査装置1を任意の場所に移動して検査を行う場合でも、より高精度な検査を安定して行うことができる。
なお、上記3種類の実施の形態では、何れも、検査対象はかり4の検査や検定を行う際には、荷重発生装置2からの荷重を発生させていない状態で、測定荷重が0(零)となるように、基準はかり3および検査対象はかり4の測定荷重をキャンセル(減算)していた。しかしこれに限るものではなく、基準はかり3にほぼ対応する質量の基準分銅を用いてもよい。
例えば、検査対象はかり4がトラックスケールであるとともに、基準はかり3の自重が1t弱、荷重発生装置2や支持固定枠6の重量が100kg弱であり、2台の基準はかり3を用いる場合に、2台の基準はかり3および荷重発生装置2や支持固定枠6の自重が2t弱とする。この場合に、1tの基準分銅を2個、または500kgの基準分銅を4個準備し、まず、2t分の基準分銅を検査対象はかり(トラックスケール)4の載台4aに載せて、その時の測定表示値を内部カウント値(実目量で1/10目量)で読み取る。例えば、この際の測定値が2002kg表示であり、器差が+2kgであったとする。
次いで、基準分銅を検査対象はかり(トラックスケール)4の載台4aから除去して、2台の基準はかり3を載台4aの所定位置に置く。その時の表示値は2t弱なので、その後に、10kgの基準分銅と1kgの基準分銅とを順次載せて、表示値が2002kgとなるように基準分銅を追加する。そして、この状態で、基準はかり3と検査対象はかり(トラックスケール)4とに荷重発生装置2からの荷重を負荷させて、秤量まで検査したり検定したりする。
このような方法によっても、基準はかり3の重量などがキャンセルされ、基準はかり3により高精度に検出(測定)した値が検査(検定)荷重となり、この値と、トラックスケールである検査対象はかり4の測定値とが器差となる。そして、この方法によっても、基準はかり3の検出値を確認しながら、検査対象はかり4の測定荷重を確認し、その際の、測定値の差を器差として確認すればよいため、検査最大荷重まで対応する基準分銅を準備する必要がなくなり、検定作業や検査作業を比較的簡単に行うことができて便利となる。また、測定荷重が大きくなる場合でも、秤量(最大測定荷重)まで検査(または検定)することができるので、秤量(最大測定荷重)までのトラックスケールの精度を確認することができて、信頼性が向上する。
1 はかりの検査装置
2 荷重発生装置
3 基準はかり
3a、4a 載台
4 検査対象はかり
5 基台
6 支持固定枠
7 微小荷重負荷装置
8、8A~8D 基準分銅
9 支持枠
10 ロードセル
11 台枠(台部)
12 連結体
13 オイルダンパ
14 ストッパー
15 基礎
16 検査用主桁
17 クレーン付きトラック
18 分銅載台
19A、19B 支持桁
21 増錘部
22 平衡棹
23 偏荷重検出器
24 連結部
25 第3槓桿(てこ)
26 第2槓桿(てこ)
27 第1槓桿(てこ)
28 横揺れ装置
29 荷重受け枠
30 第4槓桿(てこ)
31 重力補正錘受け
32 重力補正錘
33 高精度荷重センサー
34 高精度ロードセル
35 高精度電子天秤
36 昇降装置

Claims (12)

  1. 載台または測定対象物の吊り部を有する検査対象はかりを検査または検定するはかりの検査装置であって、
    鉛直荷重を発生する荷重発生装置と、載台または測定対象物の吊り部を有して、基準となる荷重値を検出する基準はかりと、を備え、
    基準はかりが検査対象はかりよりも高精度であり、かつ基準はかりの最大測定荷重である秤量が、検査対象はかりの秤量以上であり、
    荷重発生装置と基準はかりと検査対象はかりとを上下方向に並ぶ姿勢で直列に配設させて、荷重発生装置からの荷重が、基準はかりの載台または吊り部と、検査対象はかりの載台または吊り部と、に共通して負荷するように構成したこと
    を特徴とするはかりの検査装置。
  2. 検査対象はかりおよび基準はかりのうちの一方の載台に、他方のはかりを載せ、他方のはかりの載台に、鉛直荷重を負荷する荷重発生装置としての荷重発生物を載せることを可能に構成したこと
    特徴とする請求項1に記載のはかりの検査装置。
  3. 固定部に固定された支持固定枠を、検査対象はかりおよび基準はかりの上方を跨ぐ姿勢で配置し、
    支持固定枠と固定部との間で、荷重発生装置と、基準はかりの載台と、検査対象はかりの載台と、が上下方向に並ぶ姿勢で、荷重発生装置、基準はかりおよび検査対象はかりを直列に配置させたこと
    を特徴とする請求項1に記載のはかりの検査装置。
  4. 検査対象はかりを載せる台部と荷重発生装置を支持する支持部とが一体的に形成された支持枠が設けられ、
    支持枠の台部と支持部との間で上下方向に並ぶ姿勢で、荷重発生装置と、載台を有する基準はかりと、載台を有する検査対象はかりと、を上下方向に並ぶ姿勢で直列に配設させたこと
    を特徴とする請求項1に記載のはかりの検査装置。
  5. 検査対象はかりがトラックスケールであるとともに固定部がコンクリート製の基礎であり、
    基礎の上面に、長手方向に延びる検査用主桁を取付け、
    検査または検定時には、検査用主桁に支持固定枠を係止させること
    を特徴とする請求項3に記載のはかりの検査装置。
  6. 載台を有する検査対象はかりを検査または検定するはかりの検査装置であって、
    鉛直荷重を発生する荷重発生装置と、載台を有して、基準となる荷重値を検出する基準はかりと、検査対象はかりを載せる台部と荷重発生装置を支持する支持部とが一体的に形成された支持枠と、を備え、
    支持枠の台部と支持部との間で上下方向に並ぶ姿勢で、荷重発生装置と、載台を有する基準はかりと、載台を有する検査対象はかりと、を上下方向に並ぶ姿勢で直列に配設させて、荷重発生装置からの荷重が、基準はかりの載台と、検査対象はかりの載台と、に共通して負荷するように構成したこと
    を特徴とするはかりの検査装置。
  7. 検査対象はかりであるトラックスケールを検査または検定するはかりの検査装置であって、
    鉛直荷重を発生する荷重発生装置と、載台を有して、基準となる荷重値を検出する基準はかりと、を備え、
    コンクリート製の基礎に固定された支持固定枠を、トラックスケールおよび基準はかりの上方を跨ぐ姿勢で配置し、
    支持固定枠と基礎との間で、荷重発生装置と、基準はかりの載台と、トラックスケールの載台と、が上下方向に並ぶ姿勢で、荷重発生装置、基準はかりおよびトラックスケールを直列に配置させて、荷重発生装置からの荷重が、基準はかりの載台と、トラックスケールの載台と、に共通して負荷するように構成し、
    基礎の上面に、長手方向に延びる検査用主桁を取付け、
    検査または検定時には、検査用主桁に支持固定枠を係止させること
    を特徴とするはかりの検査装置。
  8. 基準はかりは、計量値が0であるように設定する零点設定部を有すること
    を特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載のはかりの検査装置。
  9. 載台または測定対象物の吊り部を有する検査対象はかりを検査または検定するはかりの検査方法であって、
    鉛直荷重を負荷する荷重発生装置と、載台または測定対象物の吊り部を有する基準はかりと、載台または測定対象物の吊り部を有するとともに検査対象である検査対象はかりと、を上下方向に並ぶ姿勢で直列に配設し、
    検査対象はかりよりも高精度である基準はかりを用い、かつ基準はかりの最大測定荷重である秤量を、検査対象はかりの秤量以上とし、
    荷重発生装置からの荷重が、基準はかりの載台または吊り部と、検査対象はかりの載台または吊り部と、に共通して負荷し、基準はかりと検査対象はかりとの測定値の差を確認して、検査対象はかりの検定または検査を行うこと
    を特徴とするはかりの検査方法。
  10. 載台を有する検査対象はかりを検査または検定するはかりの検査方法であって、
    鉛直荷重を発生する荷重発生装置と、載台を有して、基準となる荷重値を検出する基準はかりと、検査対象はかりを載せる台部と荷重発生装置を支持する支持部とが一体的に形成された支持枠と、を用い、
    支持枠の台部と支持部との間で上下方向に並ぶ姿勢で、荷重発生装置と、載台を有する基準はかりと、載台を有するとともに検査対象である検査対象はかりと、を上下方向に並ぶ姿勢で直列に配設し、
    荷重発生装置からの荷重が、基準はかりの載台と、検査対象はかりの載台と、に共通して負荷し、基準はかりと検査対象はかりとの測定値の差を確認して、検査対象はかりの検定または検査を行うこと
    を特徴とするはかりの検査方法。
  11. 検査対象はかりであるトラックスケールを検査または検定するはかりの検査方法であって、
    鉛直荷重を負荷する荷重発生装置と、載台を有する基準はかりと、を用い、
    コンクリート製の基礎に固定された支持固定枠を、トラックスケールおよび基準はかりの上方を跨ぐ姿勢で配置し、
    支持固定枠と基礎との間で、荷重発生装置と、基準はかりの載台と、トラックスケールの載台と、が上下方向に並ぶ姿勢で、荷重発生装置、基準はかりおよびトラックスケールを直列に配設し、
    基礎の上面に、長手方向に延びる検査用主桁を取付け、
    検査または検定時には、検査用主桁に支持固定枠を係止させ、
    荷重発生装置からの荷重が、基準はかりの載台と、トラックスケールの載台と、に共通して負荷し、基準はかりとトラックスケールとの測定値の差を確認して、検査対象はかりであるトラックスケールの検定または検査を行うこと
    を特徴とするはかりの検査方法。
  12. 基準はかりが、計量値が0であるように設定する零点設定部を有し、
    荷重発生装置と基準はかりと検査対象はかりとを上下方向に並ぶ姿勢で直列に配設し、
    荷重発生装置により荷重を発生していない状態で、検査対象はかりおよび基準はかりの計量値が0であるようにそれぞれ設定すること
    を特徴とする請求項9~11の何れか1項に記載のはかりの検査方法。
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