JP7063032B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
Siを含有し、結晶方位がGoss方位({110}<001>方位)に高度に配向した方向性電磁鋼板は、軟質磁性材料として、主にトランスその他の電気機器の鉄心材料に使用されている。かかる方向性電磁鋼板は、優れた磁気特性が求められ、特に、良好な励磁特性及び鉄損特性が求められる。励磁特性を表す指標としては、例えば、磁場の強さ800A/mにおける磁束密度B8等が用いられている。また、鉄損特性を表す指標としては、例えば、50Hzで1.7Tまで磁化させたときの単位質量あたりの鉄損W17/50等が用いられている。
近年、省エネルギー、省資源への社会的要求は益々厳しくなり、方向性電磁鋼板の鉄損低減、励磁特性改善への要求も熾烈になってきている。その理由は、鉄損W17/50の値が低い鉄心材料を用いることで、発電機や変圧器の効率を大幅に向上させることができるからである。そのため、鉄損特性の良い方向性電磁鋼板の開発が、益々強く求められている。
ここで、鉄損は、履歴損及び渦電流損からなる。履歴損には、鋼板の純度、内部歪、結晶方位等が寄与し、渦電流損には、鋼板の電気抵抗、板厚、結晶粒度、磁区の大きさ、鋼板被膜張力等が大きく寄与することが知られている。かかる鉄損を低減する方法の一つとして、脱炭焼鈍工程における急速加熱技術があり、二次再結晶粒を微細化することで渦電流損を低減する方法が各種提案されている。
例えば、以下の特許文献1には、脱炭焼鈍する際に、酸素ポテンシャルPHO/PHが0.2以下の非酸化性雰囲気中で、100℃/s以上で700℃以上に急速加熱することで、方向性電磁鋼板の鉄損を低減する技術が開示されている。
また、以下の特許文献2には、雰囲気中の酸素濃度を500ppm以下とし、かつ、加熱速度100℃/s以上で800℃~950℃に急速加熱し、続いて、急速加熱での温度より低い775℃~840℃の温度に保定し、更に、815℃~875℃の温度に保定することで、低鉄損の方向性電磁鋼板を得る技術が開示されている。
また、以下の特許文献3には、脱炭焼鈍における200℃~700℃の区間を50℃/s以上で急速加熱する際に、250℃~600℃の間のいずれかの温度で1~10秒間保定することで、過度に加熱速度を高めることなく、二次再結晶粒の微細化が可能であるとする技術が開示されている。
上記のような急速加熱技術を適用することで二次再結晶が微細化される理由は、主に、一次再結晶集合組織中に、二次再結晶核となる{110}<001>方位粒(Goss方位粒)が増加するためと考えられている。
特開平07-062436号公報 特開平10-298653号公報 特開平2014-25106号公報
しかしながら、上記特許文献1~特許文献3に開示されているような急速加熱技術で製造される方向性電磁鋼板では、二次再結晶粒の微細化効果は得られるものの、昇温速度の増加に伴って、磁束密度が低下する傾向にあり、加えて、製造単位であるコイル毎に磁束密度のバラつきも増加するため、安定してより高い磁束密度を有する鉄損の低い方向性電磁鋼板を製造することができないという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、磁束密度の低下を抑制して、安定してより高い磁束密度を有する鉄損の低い方向性電磁鋼板を製造することが可能な、方向性電磁鋼板の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、急速加熱技術を用いて製造した方向性電磁鋼板において、急速加熱過程を中心に、脱炭焼鈍工程のヒートサイクル及び雰囲気と、磁束密度と、の関係について、鋭意検討を行った。その結果、コイル毎で生じる磁束密度のバラつきは、脱炭焼鈍工程を2段階の過程に分け、前段の脱炭焼鈍過程、及び、後段の脱炭焼鈍過程のそれぞれにおいて、温度及び酸素ポテンシャルを適正な範囲内に制御することに加え、前段の脱炭焼鈍過程から後段の脱炭焼鈍過程への昇温過程における酸素ポテンシャルの変化率を適切に制御することで、低減可能であるとの知見を得ることが出来た。
かかる知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]質量%で、C:0.02~0.10%、Si:2.0~4.5%、Mn:0.01~0.30%、S:0.001~0.050%、酸可溶性Al:0.010~0.065%、N:0.002~0.015%を含有し、残部がFe及び不純物からなる鋼を熱間圧延して熱延鋼板とする熱間圧延工程と、得られた前記熱延鋼板を焼鈍する熱延板焼鈍工程と、焼鈍後の前記熱延鋼板に対して、一回又は中間焼鈍を挟む二回以上の冷間圧延を実施して冷延鋼板とする冷間圧延工程と、得られた前記冷延鋼板に対して脱炭焼鈍を行って脱炭焼鈍鋼板とする脱炭焼鈍工程と、得られた前記脱炭焼鈍鋼板に対して仕上げ焼鈍を施す仕上げ焼鈍工程と、を含み、前記脱炭焼鈍工程の昇温過程では、550℃以上750℃以下の範囲での平均昇温速度を400℃/秒以上3000℃/秒以下として、前記冷延鋼板を、850℃以上950℃以下の温度まで加熱し、前記昇温過程後の第1脱炭焼鈍過程では、酸素ポテンシャルPHO/PHを0.2以上0.9以下に制御した上で、800℃以上870℃未満の温度T1で、少なくとも60秒以上保持し、前記第1脱炭焼鈍過程後の第2脱炭焼鈍過程では、酸素ポテンシャルPHO/PHを0.1以下に制御した上で、870℃以上1000℃未満の温度T2で、10秒以上60秒以下保持し、前記第1脱炭焼鈍過程から前記第2脱炭焼鈍過程への昇温過程では、平均昇温速度Vを、5℃/秒以上30℃/秒以下とし、かつ、酸素ポテンシャルPHO/PHの単位時間当たりの変化率R[1/s]が、以下の式(1)を満足する、方向性電磁鋼板の製造方法。
(P1-P2)/{(T2-T1)/V}≦R ・・・式(1)
ここで、上記式(1)において、P1:第1脱炭焼鈍過程における酸素ポテンシャルPHO/PH、P2:第2脱炭焼鈍過程における酸素ポテンシャルPHO/PHである。
[2]前記鋼は、残部のFeの一部に替えて、質量%で、Ni:0.010~1.500%、Cr:0.01~0.50%、Cu:0.01~0.50%、Sb:0.005~0.500%、Se:0.001~0.050%、Sn:0.005~0.500%、Bi:0.0003~0.0100%、Mo:0.005~0.100%、B:0.0002~0.0025%、Te:0.0005~0.0100%、Nb:0.0010~0.0100%、V:0.001~0.010%、Ta:0.001~0.010%からなる群より選択される1種又は2種以上を更に含有する、[1]に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
以上説明したように本発明によれば、磁束密度の低下を抑制して、安定してより高い磁束密度を有する鉄損の低い方向性電磁鋼板を製造することが可能となる。
本発明の実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法の流れの一例を示した流れ図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(本発明者らによる検討について)
本発明の実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法について説明するに先立ち、本発明者らが行った検討について、簡単に説明する。
本発明者らは、上記課題を解決するために、まず、急速加熱技術を適用することで、磁束密度がバラつきやすくなる理由について、検討を行った。その結果、以下のような知見を得ることができた。
すなわち、昇温速度を高めると、二次再結晶の核となる{110}<001>粒(Goss方位粒)が増加する。このGoss方位粒の増加によって、二次再結晶粒が小径化し、鉄損が低減される。ここで、鉄損の低減と同時に、Goss方位粒の優先成長性に影響のあるΣ9対応方位粒が減少してしまう。その結果、Goss方位粒の優先成長性が低下し、相対的に、圧延方向(RD)と平行な<100>からズレた、磁気特性に劣位な方位粒の優先成長性が高まってしまう。このようにして、Goss方位粒の増加効果とΣ9対応方位粒の減少効果とが拮抗することで、磁束密度のバラつきが生じやすくなると考えられる。
上記のような知見を踏まえた上で、本発明者らは、急速加熱技術を用いて製造した方向性電磁鋼板において、急速加熱過程を中心に、脱炭焼鈍工程のヒートサイクル及び雰囲気と、磁束密度と、の関係について、鋭意検討を行った。その結果、先だって言及したように、コイル毎で生じる磁束密度のバラつきは、脱炭焼鈍工程を2段階の過程に分け、前段の脱炭焼鈍過程、及び、後段の脱炭焼鈍過程のそれぞれにおいて、温度及び酸素ポテンシャルを適正な範囲内に制御することに加え、前段の脱炭焼鈍過程から後段の脱炭焼鈍過程への昇温過程における酸素ポテンシャルの変化率を適切に制御することで、低減可能であるとの知見を得ることが出来た。
急速加熱技術を適用した際の脱炭焼鈍過程において、前段の脱炭焼鈍過程及び後段の脱炭焼鈍過程における酸素ポテンシャルPHO/PHの変化率を高めることで、磁束密度のバラつきが低減する理由について、その詳細は不明であるものの、本発明者らは、以下のような理由を推測している。
すなわち、先だって言及したように、急速加熱技術を適用すると、Goss方位粒の増加効果とΣ9対応方位粒の減少効果とが拮抗し、磁束密度のバラつきが生じやすくなると考えられる。このような磁束密度のバラつきを抑制するのが、前段の脱炭焼鈍過程と後段の脱炭焼鈍過程との酸素ポテンシャルPHO/PHの変化率である。本発明者らによる検討の結果、この酸素ポテンシャルPHO/PHの変化率は、脱炭焼鈍鋼帯の最表面に形成される酸化膜に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。特に、酸素ポテンシャルPHO/PHの変化率を高めると、詳細は不明ではあるものの、鋼板最表面のSiO膜の被覆率が高まることが明らかとなった。形成されるSiO膜は非晶質であり、ガス透過性が極めて低い。このため、かかるSiO膜が仕上げ焼鈍中の吸脱窒を抑制し、Goss方位粒の優先成長性を高める効果があると推測され、その結果、磁束密度のバラつきが低減するものと考えられる。
本発明者らは、上記知見をもとに、更なる検討を行った結果、以下のような更なる知見を得ることができた。
まず、脱炭焼鈍工程の昇温過程では、急速加熱技術を適用するために、550℃以上750℃以下の範囲での平均昇温速度を400℃/秒以上3000℃/秒以下とし、かつ、冷延鋼板を850℃以上950℃以下の温度まで加熱することが重要である。
550℃以上750℃以下の範囲での平均昇温速度が400℃/秒未満である場合には、急速加熱技術による二次再結晶の微細化効果を享受することができず、好ましくない。一方、550℃以上750℃以下の範囲での平均昇温速度が3000℃/秒を超える場合には、二次再結晶不良が顕著となり、鉄損が劣化するため好ましくない。
また、冷延鋼板の到達加熱温度が850℃未満である場合には、一次再結晶が十分に発現せず、急速加熱効果が減じられるため、好ましくない。一方、冷延鋼板の到達加熱温度が950℃を超える場合には、鋼板表面の緻密なSiO皮膜の被覆率が極めて増加し、脱炭性が顕著に劣化するため、好ましくない。
次に、上記昇温過程後に行われる前段の脱炭焼鈍過程(以下、「第1脱炭焼鈍過程」ともいう。)では、酸素ポテンシャルPHO/PHを、0.2以上0.9以下に制御した上で、冷延鋼板を、800℃以上870℃未満の範囲内である温度T1で、少なくとも60秒以上保持することが重要である。
第1脱炭焼鈍過程の酸素ポテンシャルPHO/PHが0.2未満である場合には、脱炭が進まないため、好ましくない。一方、第1脱炭焼鈍過程の酸素ポテンシャルPHO/PHが0.9を超える場合には、鋼板が過酸化され、後の仕上焼鈍工程においてインヒビターであるAlNの酸化を促進してしまい、二次再結晶の優先成長性が低下して良好な鉄損特性を得ることができないため、好ましくない。
第1脱炭焼鈍過程の保持温度が800℃未満である場合には、冷延鋼板を十分に脱炭焼鈍することができず、好ましくない。一方、第1脱炭焼鈍過程の保持温度が870℃以上である場合には、鋼板が過酸化され、後の仕上焼鈍工程においてインヒビターであるAlNの酸化を促進してしまい、二次再結晶の優先成長性が低下して良好な鉄損特性を得ることができないため、好ましくない。更に、第1脱炭焼鈍過程の保持時間が60秒未満である場合には、保持温度を上限値近傍の温度とした場合であっても、冷延鋼板を十分に脱炭焼鈍することができず、好ましくない。なお、第1脱炭焼鈍過程の保持時間の上限値については、特に規定するものではないが、鋼板の過酸化を抑制するという観点から、300秒程度とすることが好ましい。
また、上記第1脱炭焼鈍過程後に行われる後段の脱炭焼鈍過程(以下、「第2脱炭焼鈍過程」ともいう。)では、酸素ポテンシャルPHO/PHを、0.1以下に制御した上で、第1脱炭焼鈍後の冷延鋼板を、870℃以上1000℃未満の範囲内である温度T2で、10秒以上60秒以下保持することが重要である。
第2脱炭焼鈍過程の酸素ポテンシャルPHO/PHが0.1を超える場合には、鋼板表面に疎な鉄系酸化物が残存してしまい、後の仕上焼鈍工程において吸脱窒が促進されてインヒビターであるAlNの粗大化を招き、二次再結晶の優先成長性が低下して良好な鉄損特性を得ることができないため、好ましくない。一方、第2脱炭焼鈍過程の酸素ポテンシャルPHO/PHの下限値は、特に規定するものではないが、SiO膜を十分に形成させるという観点から、0.05程度とすることが好ましい。
第2脱炭焼鈍過程の保持温度が870℃未満である場合には、鋼板表面に疎な鉄系酸化物が残存してしまい、後の仕上焼鈍工程において吸脱窒が促進されてインヒビターであるAlNの粗大化を招き、二次再結晶の優先成長性が低下して良好な鉄損特性を得ることができないため、好ましくない。一方、第2脱炭焼鈍過程の保持温度が1000℃以上である場合には、鋼板組織が粗大化し、後の仕上焼鈍工程において粒成長駆動力が低下してしまい、二次再結晶が不安定化して良好な鉄損特性を得ることができないため、好ましくない。更に、第2脱炭焼鈍過程の保持時間が10秒未満である場合には、保持温度を上限値とした場合であっても、鋼板表面に疎な鉄系酸化物が残存してしまい、後の仕上焼鈍工程において吸脱窒が促進されてインヒビターであるAlNの粗大化を招き、二次再結晶の優先成長性が低下して良好な鉄損特性を得ることができないため、好ましくない。一方、第2脱炭焼鈍過程の保持時間が60秒を超える場合には、保持温度を870℃とした場合であっても、鋼板表面に疎な鉄系酸化物が残存してしまい、後の仕上焼鈍工程において吸脱窒が促進されてインヒビターであるAlNの粗大化を招き、二次再結晶の優先成長性が低下して良好な鉄損特性を得ることができないため、好ましくない。
更に、磁束密度のバラつきの抑制に最も重要な、第1脱炭焼鈍過程から第2脱炭焼鈍過程への切り替え時について、第1脱炭焼鈍過程から第2脱炭焼鈍過程への昇温過程では、平均昇温速度Vを、5℃/秒以上30℃/秒以下とし、かつ、酸素ポテンシャルPHO/PHの単位時間当たりの変化率R[1/s]が、以下の式(101)を満足することが重要である。ここで、以下の式(101)において、P1は、第1脱炭焼鈍過程における酸素ポテンシャルPHO/PHであり、P2は、第2脱炭焼鈍過程における酸素ポテンシャルPHO/PHである。

(P1-P2)/{(T2-T1)/V}≦R ・・・式(101)
上記式(101)の左辺において、(T2-T1)/Vで与えられる値は、第1脱炭焼鈍過程から第2脱炭焼鈍過程への切り替えに要する時間に対応している。そのため、上記式(101)の左辺は、第1脱炭焼鈍過程から第2脱炭焼鈍過程へ向けて、保持温度と同じような時間経過で酸素ポテンシャルPHO/PHを切り替えた場合の、単位時間あたりの酸素ポテンシャルPHO/PHの変化率を表している。従って、上記式(101)全体としては、第1脱炭焼鈍過程から第2脱炭焼鈍過程への切り替え時には、温度の変化率よりも大きな比率で、酸素ポテンシャルPHO/PH(脱炭焼鈍時の露点、とも考えることができる。)を切り替えることが重要であることを示している。
切り替え時における昇温過程の平均昇温速度Vが5℃/秒未満である場合には、鋼板表面に疎な鉄系酸化物が残存してしまい、後の仕上焼鈍工程において吸脱窒が促進されてインヒビターであるAlNの粗大化を招き、二次再結晶の優先成長性が低下して良好な鉄損特性を得ることができないため、好ましくない。一方、切り替え時における昇温過程の平均昇温速度Vが30℃/秒を超える場合には、切り替え時間が短くなりすぎ、酸素ポテンシャルPHO/PHを完全に切り替えることが困難となる可能性があるため、好ましくない。
また、酸素ポテンシャルPHO/PHの単位時間当たりの変化率Rの上限値は、特に規定するものではなく、用いる設備等に応じて実際の上限値が決まることとなる。この際、酸素ポテンシャルPHO/PHの単位時間当たりの変化率Rの上限値は、概ね0.4程度となることが多い。
以上説明したような知見に基づき、本発明者らは、以下で詳述する方向性電磁鋼板の製造方法に想到したのである。以下では、かかる知見に基づき完成された、本発明の実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法について、詳細に説明する。
(実施形態)
<方向性電磁鋼板の製造方法の全体的な流れについて>
以下では、図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法の全体的な流れについて、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法の流れの一例を示した流れ図である。
本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法は、図1に示したように、所定の化学成分を有する鋼を熱間圧延する熱間圧延工程(ステップS101)と、得られた熱延鋼板を焼鈍する熱延板焼鈍工程(ステップS103)と、得られた熱延焼鈍鋼板に対して冷間圧延を行う冷間圧延工程(ステップS105)と、得られた冷延鋼板を脱炭焼鈍する脱炭焼鈍工程(ステップS107)と、得られた脱炭焼鈍鋼板を仕上げ焼鈍する仕上げ焼鈍工程(ステップS109)と、を主に含む。以下、これら工程について、詳細に説明する。
○熱間圧延工程について
熱間圧延工程(ステップS101)は、所定の化学成分を有する鋼(より詳細には、スラブ等の鋼塊)を熱間圧延して、熱延鋼板とする工程である。以下では、まず、本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法に供される鋼の化学成分について、詳細に説明する。なお、以下では特に断りのない限り、「%」との表記は「質量%」を表わすものとする。
本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法では、質量%で、C:0.02~0.10%、Si:2.0~4.5%、Mn:0.01~0.30%、S:0.001~0.050%、酸可溶性Al:0.010~0.065%、N:0.002~0.015%を含有し、残部がFe及び不純物からなる鋼が用いられる。
また、本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法に供される鋼は、残部のFeの一部に替えて、質量%で、Ni:0.010~1.500%、Cr:0.01~0.50%、Cu:0.01~0.50%、Sb:0.005~0.500%、Se:0.001~0.050%、Sn:0.005~0.500%、Bi:0.0003~0.0100%、Mo:0.005~0.100%、B:0.0002~0.0025%、Te:0.0005~0.0100%、Nb:0.0010~0.0100%、V:0.001~0.010%、Ta:0.001~0.010%からなる群より選択される1種又は2種以上を更に含有していてもよい。
[C:0.02~0.10%]
C(炭素)は、不可避的に含有される元素であるとともに、鉄損劣化を引き起こす元素である。Cの含有量が0.02%未満である場合では、熱間圧延に先立つスラブ加熱時において結晶粒が異常粒成長し、製品において線状細粒と呼ばれる二次再結晶不良を起こすため、好ましくない。一方、Cの含有量が0.10%を超える場合には、冷間圧延後の脱炭焼鈍において焼鈍時間が長時間必要となり、経済的でないばかりでなく、脱炭が不完全となりやすく、製品での磁気時効と呼ばれる磁性不良を起こすため、好ましくない。従って、Cの含有量は、0.02~0.10%とする。なお、Cの含有量は、好ましくは、0.04~0.10%であり、より好ましくは、0.06~0.10%である。
[Si:2.0~4.5%]
Si(ケイ素)は、鋼の電気抵抗(比抵抗)を高めて鉄損の一部を構成する渦電流損失を低減するのに、極めて有効な元素である。しかしながら、Siの含有量が2.0%未満である場合には、製品の渦電流損失を抑制できないため、好ましくない。また、Siの含有量が4.5%を超える場合には、加工性が著しく劣化して、常温での冷間圧延が困難になるため、好ましくない。従って、Siの含有量は、2.0~4.5%とする。なお、Siの含有量は、好ましくは、2.50%~4.25%であり、より好ましくは、3.0~4.0%である。
[Mn:0.01~0.30%]
Mn(マンガン)は、二次再結晶を左右するインヒビターと呼ばれる化合物であるMnSを形成する、重要な元素である。Mnの含有量が0.01%未満である場合には、二次再結晶を生じさせるのに必要なMnSの絶対量が不足するため、好ましくない。一方、Mnの含有量が0.30%を超える場合には、スラブ加熱時の固溶が困難になるばかりでなく、熱間圧延時の析出サイズが粗大化しやすくインヒビターとしての最適サイズ分布が損なわれるため、好ましくない。従って、Mnの含有量は、0.01%~0.30%とする。なお、Mnの含有量は、好ましくは、0.04~0.25%であり、より好ましくは、0.06~0.20%である。
[S:0.001~0.050%]
S(硫黄)は、上記Mnと反応することで、インヒビターであるMnSを形成する重要な元素である。Sの含有量が0.001%未満である場合や、Sの含有量が0.050%を超える場合には、十分なインヒビター効果を得ることができない。従って、Sの含有量を、0.001~0.050%とする。なお、Sの含有量は、好ましくは、0.005%~0.040%であり、より好ましくは、0.010~0.035%である。
[酸可溶性Al:0.010~0.065%]
酸可溶性アルミニウム(sol.Al)は、方向性電磁鋼板のための主要インヒビター構成元素である。酸可溶性Alの含有量が0.010%未満である場合には、インヒビターが量的に不足し、インヒビター強度が不足するので好ましくない。一方、酸可溶性Alの含有量が0.065%を超える場合には、インヒビターとして析出させるAlNが粗大化し、結果としてインヒビター強度を低下させるので好ましくない。従って、酸可溶性Alの含有量は、0.010%~0.065%とする。なお、酸可溶性Alの含有量は、好ましくは、0.015%~0.040%であり、より好ましくは、0.018~0.035%である。
[N:0.002~0.015%]
N(窒素)は、上記の酸可溶性Alと反応してAlNを形成する、重要な元素である。Nの含有量が0.002%未満である場合や、Nの含有量が0.015%を超える場合には、十分なインヒビター効果を得ることができないため、好ましくない。従って、Nの含有量は、0.002~0.015%とする。なお、Nの含有量は、好ましくは、0.003%~0.14%であり、より好ましくは、0.004~0.013%である。
[Ni:0.010~1.500%]
Ni(ニッケル)は、比抵抗を高めて鉄損を低減させるのに有効な元素である。かかる鉄損の低減効果は、残部のFeの一部に替えて、Niを0.010%以上含有させることで得ることが可能である。一方、Niを過剰に含有させると、磁束密度が劣化する。かかる磁束密度の劣化は、Niの含有量が1.500%を超えた場合に顕著となるため、Niの含有量は、1.500%以下とすることが好ましい。Niの含有量は、より好ましくは、0.050~1.000%である。
[Cr:0.01~0.50%]
Cr(クロム)は、比抵抗を高めて鉄損を低減させるのに有効な元素である。かかる鉄損の低減効果は、残部のFeの一部に替えて、Crを0.01%以上含有させることで得ることが可能である。一方、Crを過剰に含有させると、磁束密度が劣化する。かかる磁束密度の劣化は、Crの含有量が0.50%を超えた場合に顕著となるため、Crの含有量は、0.50%以下とすることが好ましい。Crの含有量は、より好ましくは、0.02~0.04%である。
[Cu:0.01~0.50%]
Cu(銅)は、比抵抗を高めて鉄損を低減させるのに有効な元素である。かかる鉄損の低減効果は、残部のFeの一部に替えて、Cuを0.01%以上含有させることで得ることが可能である。一方、Cuを過剰に含有させると、磁束密度が劣化する。かかる磁束密度の劣化は、Cuの含有量が0.50%を超えた場合に顕著となるため、Cuの含有量は、0.50%以下とすることが好ましい。Cuの含有量は、より好ましくは、0.05~0.30%である。
[Sn:0.005~0.500%]
[Sb:0.005~0.500%]
Sn(スズ)及びSb(アンチモン)は、二次再結晶を安定して得るとともに、二次再結晶粒径を微細化して高周波鉄損の低減に有効な元素である。これらの効果は、残部のFeの一部に替えて、Snを0.005%以上含有させる場合や、残部のFeの一部に替えて、Sbを0.005%以上含有させる場合に得ることが可能である。一方、Snの含有量が0.500%を超える場合や、Sbの含有量が0.500%を超える場合には、上記効果が飽和するため、経済的な観点から好ましくない。従って、Snの含有量及びSbの含有量は、0.500%以下とすることが好ましい。なお、Snの含有量は、より好ましくは、0.010~0.300%であり、Sbの含有量は、より好ましくは、0.010~0.300%である。
[Se:0.001~0.050%]
Se(セレン)は、上記Mnと反応することで、インヒビターであるMnSeを形成する元素である。かかるインヒビター効果は、残部のFeの一部に替えて、Seの含有量を0.001%以上とすることで得ることが出来る。一方、Seの含有量が0.050%を超える場合には、十分なインヒビター効果を得ることができない。従って、Seの含有量は、0.050%以下であることが好ましい。Seの含有量は、より好ましくは、0.005~0.040%である。
[Bi:0.0003~0.0100%]
Bi(ビスマス)は、磁束密度を向上させることが可能な元素である。かかる磁束密度向上効果は、残部のFeの一部に替えて、Biを0.0003%以上含有させることで得ることが可能である。一方、Biの含有量が0.0100%を超える場合には、磁束密度向上効果が飽和するだけでなく、一次被膜不良の可能性が高まる可能性がある。従って、Biの含有量は0.0100%以下とすることが好ましい。Biの含有量は、より好ましくは、0.0005~0.0090%である。
[Mo:0.005~0.100%]
Mo(モリブデン)は、二次再結晶を安定して得るための元素として有効である。かかる二次再結晶の安定化効果は、残部のFeの一部に替えて、Moを0.005%以上含有させることで得ることが可能である。一方、Moの含有量が0.100%を超える場合には、上記効果が飽和するため、経済的な観点から好ましくない。従って、Moの含有量は、0.100%以下とすることが好ましい。Moの含有量は、より好ましくは、0.010~0.080%である。
[B:0.0002~0.0025%]
B(ホウ素)は、インヒビターの働きを強化して、二次再結晶を安定して得るために有効な元素である。かかる効果は、残部のFeの一部に替えて、Bを0.0002%以上含有させることで得ることが可能である。一方、Bの含有量が0.0025%を超える場合には、上記効果を得ることができないため、好ましくない。従って、Bの含有量は、0.0025%以下とすることが好ましい。なお、Bの含有量は、より好ましくは、0.0003~0.0020%である。
[Te:0.0005~0.0100%]
Te(テルル)は、インヒビターの働きを強化して、二次再結晶を安定して得るために有効な元素である。かかる効果は、残部のFeの一部に替えて、Teを0.0005%以上含有させることで得ることが可能である。一方、Teの含有量が0.0100%を超える場合には、上記効果を得ることができないため、好ましくない。従って、Teの含有量は、0.0100%以下とすることが好ましい。なお、Teの含有量は、より好ましくは、0.0007~0.0090%である。
[Nb:0.0010~0.0100%]
Nb(ニオブ)は、インヒビターの働きを強化して、二次再結晶を安定して得るために有効な元素である。かかる効果は、残部のFeの一部に替えて、Nbを0.0010%以上含有させることで得ることが可能である。一方、Nbの含有量が0.0100%を超える場合には、上記効果を得ることができないため、好ましくない。従って、Nbの含有量は、0.0100%以下とすることが好ましい。なお、Nbの含有量は、より好ましくは、0.0030~0.0080%である。
[V:0.001~0.010%]
V(バナジウム)は、インヒビターの働きを強化して、二次再結晶を安定して得るために有効な元素である。かかる効果は、残部のFeの一部に替えて、Vを0.001%以上含有させることで得ることが可能である。一方、Vの含有量が0.010%を超える場合には、上記効果を得ることができないため、好ましくない。従って、Vの含有量は、0.010%以下とすることが好ましい。なお、Vの含有量は、より好ましくは、0.002~0.009%である。
[Ta:0.001~0.010%]
Ta(タンタル)は、インヒビターの働きを強化して、二次再結晶を安定して得るために有効な元素である。かかる効果は、残部のFeの一部に替えて、Taを0.001%以上含有させることで得ることが可能である。一方、Taの含有量が0.010%を超える場合には、上記効果を得ることができないため、好ましくない。従って、Taの含有量は、0.010%以下とすることが好ましい。なお、Taの含有量は、より好ましくは、0.002~0.009%である。
以上、本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法に供される鋼の化学成分について、詳細に説明した。
続いて、上記のような化学成分を有する鋼を熱間圧延する際の条件について、簡単に説明する。
本実施形態に係る熱間圧延工程では、公知の方法に従い、上記のような化学成分を有する鋼(より詳細には、スラブ等の鋼塊)を熱間圧延して、熱延鋼板を製造すればよい。
より詳細には、公知の加熱方法により、上記のような化学成分を有する鋼塊を1150℃~1350℃程度まで加熱した後、厚みが1.5mm~3.0mm程度となるまで、加熱された鋼塊を圧延することが好ましい。鋼塊の加熱温度は、より好ましくは、1200℃~1300℃であり、得られる熱延鋼板の厚みは、より好ましくは、2.0mm~2.5mmである。
○熱間板焼鈍工程について
熱延板焼鈍工程(ステップS103)は、熱間圧延工程を経て製造された熱延鋼板を焼鈍して、熱延焼鈍鋼板とする工程である。本実施形態に係る熱延板焼鈍工程では、公知の方法に従い、熱間圧延工程を経て製造された熱延鋼板を焼鈍して、熱延焼鈍鋼板とすればよい。
より詳細には、熱延鋼板を、公知の加熱方法により800℃~1200℃程度まで加熱した後、800℃~1000℃の温度を10秒~60秒保持することが好ましい。このような条件で焼鈍処理を施すことで、鋼板組織に再結晶が生じ、良好な磁気特性を実現することが可能となる。
本実施形態に係る熱延板焼鈍工程において、より好ましい加熱温度は、900℃~1150℃であり、より好ましい焼鈍温度は、850℃~950℃であり、より好ましい焼鈍時間は、20秒~50秒である。
なお、かかる熱延板焼鈍工程は、必要に応じて省略することが可能である。
○冷間圧延工程について
冷間圧延工程(ステップS105)は、熱延焼鈍鋼板に対して、一回又は中間焼鈍を挟む二回以上の冷間圧延を実施して、冷延鋼板とする工程である。本実施形態に係る冷間圧延工程では、公知の方法に従い、熱延板焼鈍工程を経て製造された熱延焼鈍鋼板を冷間圧延し、冷延鋼板とすればよい。
より詳細には、熱延焼鈍鋼板に対して、最終圧下率が80%~95%となる冷間圧延を実施して、冷延鋼板を製造することが好ましい。ここで、最終圧下率が80%未満である場合には、{110}<001>方位が圧延方向に高い集積度をもつGoss核を得ることができない可能性が高くなり、好ましくない。一方、最終圧下率が95%を超える場合には、後段の仕上げ焼鈍工程において、二次再結晶が不安定となる可能性が高くなるため、好ましくない。
また、中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を実施する場合、一回目の冷間圧延は、圧下率を5~50%程度とし、950℃~1200℃の温度で30秒~30分程度の中間焼鈍を実施することが好ましい。
かかる冷間圧延工程で製造される冷延鋼板の最終板厚は、例えば、0.17mm~0.35mm程度であることが好ましい。
上記のような冷間圧延工程に際して、磁気特性をより一層向上させるために、熱処理を与えることも可能である。冷間圧延中に複数回のパスにより各板厚段階を経て最終板厚となるが、少なくとも一回以上の途中板厚段階において、鋼板に対し100℃以上の温度範囲で1分以上の時間保持する熱効果を与えることが好ましい。かかる熱効果により、後段の脱炭焼鈍工程において、より優れた一次再結晶集合組織を形成させることが可能となり、ひいては、後段の仕上げ焼鈍工程において、{110}<001>方位が圧延方向に揃った良好な二次再結晶を十分に発達させることが可能となる。
○脱炭焼鈍工程について
脱炭焼鈍工程(ステップS107)は、得られた冷延鋼板に対して脱炭焼鈍を行って、脱炭焼鈍鋼板とする工程である。本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法では、鉄損の低減を目的として、急速加熱技術を利用した脱炭焼鈍を実施する。
この際、急速加熱技術を利用する際に問題となる、コイル毎の磁束密度のバラつきを防止するために、本実施形態に係る脱炭焼鈍工程では、先だって説明したような知見に基づき、脱炭焼鈍工程を2段階の過程に分け、前段の脱炭焼鈍過程、及び、後段の脱炭焼鈍過程のそれぞれにおいて、温度及び酸素ポテンシャルを適正な範囲内に制御することに加え、前段の脱炭焼鈍過程から後段の脱炭焼鈍過程への昇温過程における酸素ポテンシャルの変化率を適正に制御する。
具体的には、脱炭焼鈍工程の昇温過程において、550℃以上750℃以下の範囲での平均昇温速度を400℃/秒以上3000℃/秒以下として、冷延鋼板を、850℃以上950℃以下の温度まで加熱する。
また、昇温過程後の第1脱炭焼鈍過程では、酸素ポテンシャルPHO/PHを0.2以上0.9以下に制御した上で、800℃以上870℃未満の温度T1で、少なくとも60秒以上保持し、第1脱炭焼鈍過程後の第2脱炭焼鈍過程では、酸素ポテンシャルPHO/PHを0.1以下に制御した上で、870℃以上1000℃未満の温度T2で、10秒以上60秒以下保持する。
更には、第1脱炭焼鈍過程から第2脱炭焼鈍過程への昇温過程では、平均昇温速度Vを、5℃/秒以上30℃/秒以下とし、かつ、酸素ポテンシャルPHO/PHの単位時間当たりの変化率R[1/s]が、上記式(101)を満足するように、酸素ポテンシャルPHO/PHの切り替えを実施する。
以下に、式(101)を再掲する。

(P1-P2)/{(T2-T1)/V}≦R ・・・式(101)
なお、第1脱炭焼鈍過程に先立つ昇温過程において、550℃以上750℃以下の範囲での平均昇温速度は、好ましくは、700℃/秒以上2500℃/秒以下であり、冷延鋼板の到達加熱温度は、好ましくは、870℃以上930℃以下である。
また、第1脱炭焼鈍過程において、酸素ポテンシャルPHO/PHは、好ましくは、0.3以上0.8以下である。第1脱炭焼鈍過程の保持温度は、好ましくは、800℃以上850℃以下であり、第1脱炭焼鈍過程の保持時間は、好ましくは、60秒以上300秒以下である。
更に、第2脱炭焼鈍過程において、酸素ポテンシャルPHO/PHは、好ましくは、0.0001以上0.0500以下である。第2脱炭焼鈍過程の保持温度は、好ましくは、890℃以上980℃以下であり、第2脱炭焼鈍過程の保持時間は、好ましくは、15秒以上55秒以下である。
また、第1脱炭焼鈍過程から第2脱炭焼鈍過程への切り替え時における昇温過程の平均昇温速度Vは、好ましくは、10℃/秒以上25℃/秒以下である。
なお、脱炭焼鈍工程における各昇温過程の平均昇温速度は、例えば、ガス燃焼による加熱の場合には直接加熱やラジアントチューブを用いた間接加熱を用いたり、その他に通電加熱又は誘導加熱等といった公知の加熱方法を用いたりすることで、実現することが可能である。
○仕上げ焼鈍工程について
脱炭焼鈍工程を経て製造された脱炭焼鈍鋼板の表面に、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を水スラリーにて塗布した後、脱炭焼鈍鋼板に対して仕上げ焼鈍を施す仕上げ焼鈍工程(ステップS109)が実施される。本実施形態に係る仕上げ焼鈍工程では、公知の方法に従い、脱炭焼鈍鋼板を焼鈍すればよい。
より詳細には、脱炭焼鈍鋼板を、公知の加熱方法により900℃~1200℃程度まで加熱した後、かかる範囲内の温度で10時間以上保持することが好ましい。かかる仕上げ焼鈍工程を経ることで、二次再結晶組織を発達させるとともに、鋼板表面にフォルステライト等の皮膜を好適に形成させることが可能となる。その結果、鉄損が低く、磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を製造することが可能となる。
○絶縁被膜形成工程について
上記のような仕上げ焼鈍工程の後には、必要に応じて、絶縁被膜の形成工程が実施される。ここで、絶縁被膜の形成工程については、特に限定されるものではなく、下記のような公知の絶縁被膜処理液を用いて、公知の方法により処理液の塗布及び乾燥を行えばよい。方向性電磁鋼板の表面に絶縁被膜を更に形成することで、方向性電磁鋼板の磁気特性を更に向上させることが可能となる。
なお、絶縁被膜が形成される地鉄の表面は、処理液を塗布する前に、アルカリなどによる脱脂処理や、塩酸、硫酸、リン酸などによる酸洗処理など、任意の前処理を施してもよいし、これら前処理を施さずに仕上焼鈍後のままの表面であってもよい。
ここで、方向性電磁鋼板の表面に形成される絶縁被膜は、方向性電磁鋼板の絶縁被膜として用いられるものであれば、特に限定されるものではなく、公知の絶縁被膜を用いることが可能である。このような絶縁被膜として、例えば、無機物を主体とし、更に有機物を含んだ複合絶縁被膜を挙げることができる。ここで、複合絶縁被膜とは、例えば、クロム酸金属塩、リン酸金属塩又はコロイダルシリカ、Zr化合物、Ti化合物等の無機物の少なくとも何れかを主体とし、微細な有機樹脂の粒子が分散している絶縁被膜である。特に、近年ニーズの高まっている製造時の環境負荷低減の観点からは、リン酸金属塩やZrあるいはTiのカップリング剤、又は、これらの炭酸塩やアンモニウム塩を出発物質として用いた絶縁被膜が好ましく用いられる。
また、上記のような絶縁被膜形成工程に続いて、形状矯正のための平坦化焼鈍を施しても良い。鋼板に対して平坦化焼鈍を行うことで、更に鉄損を低減させることが可能となる。
以上、本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法について、詳細に説明した。
<方向性電磁鋼板の磁気特性の測定方法について>
本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法に則して製造された方向性電磁鋼板は、鉄損が低く、優れた磁気特性を示すものとなる。方向性電磁鋼板の示す各種の磁気特性は、JIS C2550に規定されたエプスタイン法や、JIS C2556に規定された単板磁気特性測定法(Single Sheet Tester:SST)に則して、測定することが可能である。
以下では、実施例及び比較例を示しながら、本発明に係る方向性電磁鋼板の製造方法について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも本発明に係る方向性電磁鋼板の製造方法のあくまでも一例であって、本発明に係る方向性電磁鋼板の製造方法が下記の例に限定されるものではない。
(実験例1)
まず、質量%で、C:0.075%、Si:3.24%、Mn:0.075%、S:0.028%、酸可溶性Al:0.028%、N:0.008%を含有し、残部がFe及び不純物からなるケイ素鋼スラブを製造した。次に、得られたケイ素鋼スラブを1350℃で加熱する、スラブ加熱を行った。その後、加熱されたケイ素鋼スラブの熱間圧延を行って、厚さが2.3mmの熱間圧延鋼帯を得た。次に、得られた熱間圧延鋼帯の焼鈍を行って、熱延焼鈍鋼帯を得た。かかる熱間圧延鋼帯の焼鈍工程では、鋼帯を1120℃まで加熱して再結晶させた後、かかる加熱温度よりも低い900℃の温度で30秒間焼鈍した。次に、得られた熱延焼鈍鋼帯に1回の冷間圧延を行って、厚さが0.23mmの冷間圧延鋼帯を得た。
続いて、得られた冷間圧延鋼帯の脱炭焼鈍を行って、脱炭焼鈍鋼帯を得た。この脱炭焼鈍工程では、以下の表1に示す条件で脱炭焼鈍を行った。なお、以下の表1において、下線は、本発明の範囲外であることを示す。
以下の表1に示した以外の条件としては、昇温過程における冷間圧延鋼帯の最高到達温度を850℃とした。また、第1脱炭焼鈍過程の酸素ポテンシャルPHO/PHを、0.5とし、保持温度は830℃とし、保持時間は120秒とした。更に、脱炭焼鈍過程の切り替え時には、平均昇温速度Vを8℃/秒とし、第2脱炭焼鈍過程の酸素ポテンシャルPHO/PHを、0.05とし、保持温度は930℃とし、保持時間は20秒とした。
次に、得られた脱炭焼鈍鋼帯に対し、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を水スラリーにて塗布した後、コイルに巻取り、仕上げ焼鈍を行った。得られたコイルを水洗した後、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とした絶縁被膜を塗布し、焼付・形状矯正を兼ねた平坦化焼鈍を施して、方向性電磁鋼板の製品コイルとした。
上記のような条件で、それぞれの方向性電磁鋼板を5コイルずつ製造し、それぞれのコイルから単板磁気測定用サイズを採取した。採取した鋼板に50Hzで1.7Tまで磁化させたときの単位質量当たりの鉄損W17/50(W/kg)と、磁束密度B8(T)と、をJIS C2556に規定されている単板磁気特性試験(Single Sheet Test:SST)法に則して測定した。
得られた5コイルの鉄損W17/50のうち、0.80W/kg以下であったコイルの比率を計算し、得られた結果を、以下の表1にあわせて示した。また、磁束密度B8については、5コイルの磁束密度の平均値と、コイル間での磁束密度のバラつきを示す標準偏差と、を算出し、以下の表1にあわせて示した。
Figure 0007063032000001
上記表1から明らかなように、第1脱炭焼鈍過程に先立つ昇温過程での平均昇温速度が400℃/秒以上3000℃/秒以下であり、脱炭焼鈍過程切り替え時の酸素ポテンシャルPHO/PHの変化率Rが式(101)を満足することで、磁束密度のバラつきが0.01以下となり、平均磁束密度が1.929T以上であり、鉄損が0.80W/kg以下であるコイルの比率が0.4以上となることがわかる。かかる結果は、高磁束密度で鉄損の低い方向性電磁鋼板が安定的に得られていることを示すものである。
(実験例2)
まず、質量%で、C:0.075%、Si:3.24%、Mn:0.075%、S:0.028%、酸可溶性Al:0.028%、N:0.008%を含有し、残部がFe及び不純物からなるケイ素鋼スラブを製造した。次に、得られたケイ素鋼スラブを1350℃で加熱する、スラブ加熱を行った。その後、加熱されたケイ素鋼スラブの熱間圧延を行って、厚さが2.3mmの熱間圧延鋼帯を得た。次に、得られた熱間圧延鋼帯の焼鈍を行って、熱延焼鈍鋼帯を得た。かかる熱間圧延鋼帯の焼鈍では、鋼帯を1120℃まで加熱して再結晶させた後、かかる加熱温度よりも低い900℃の温度で30秒間焼鈍した。次に、熱延焼鈍鋼帯に1回の冷間圧延を行って、厚さが0.23mmの冷間圧延鋼帯を得た。
続いて、得られた冷間圧延鋼帯の脱炭焼鈍を行って、脱炭焼鈍鋼帯を得た。この脱炭焼鈍では、以下の表2に示す条件で脱炭焼鈍を行った。なお、以下の表2において、下線は、本発明の範囲外であることを示す。
以下の表2に示した以外の条件としては、昇温過程における冷間圧延鋼帯の最高到達温度を890℃とした。また、第1脱炭焼鈍過程の保持温度を820℃とし、保持時間を120秒とし、酸素ポテンシャルPHO/PHを0.6とした。更に、脱炭焼鈍過程の切り替え時には、平均昇温速度Vを10℃/秒とし、第2脱炭焼鈍過程の保持時間を20秒とした。
次に、得られた脱炭焼鈍鋼帯に対し、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を水スラリーにて塗布した後、コイルに巻取り、仕上げ焼鈍を行った。得られたコイルを水洗した後、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とした絶縁被膜を塗布し、焼付・形状矯正を兼ねた平坦化焼鈍を施して、方向性電磁鋼板の製品コイルとした。
上記のような条件で、それぞれの方向性電磁鋼板を5コイルずつ製造し、それぞれのコイルから単板磁気測定用サイズを採取した。採取した鋼板に50Hzで1.7Tまで磁化させたときの単位質量当たりの鉄損W17/50(W/kg)と、磁束密度B8(T)と、をJIS C2556に規定されている単板磁気特性試験(Single Sheet Test:SST)法に則して測定した。
得られた5コイルの鉄損W17/50のうち、0.80W/kg以下であったコイルの比率を計算し、得られた結果を、以下の表2にあわせて示した。また、磁束密度B8については、5コイルの磁束密度の平均値と、コイル間での磁束密度のバラつきを示す標準偏差と、を算出し、以下の表2にあわせて示した。
Figure 0007063032000002
上記表2から明らかなように、第1脱炭焼鈍過程に先立つ昇温過程での平均昇温速度が400℃/秒以上3000℃/秒以下であり、脱炭焼鈍過程切り替え時の酸素ポテンシャルPHO/PHの変化率が式(101)を満足し、第2脱炭焼鈍過程の保持温度が870℃以上1000℃以下であれば、磁束密度のバラつきが0.01以下となり、平均磁束密度が1.930T以上であり、鉄損が0.80W/kg以下であるコイルの比率が0.4以上となることがわかる。かかる結果は、高磁束密度で鉄損の低い方向性電磁鋼板が安定的に得られていることを示すものである。
(実験例3)
まず、質量%で、C:0.075%、Si:3.24%、Mn:0.075%、S:0.028%、酸可溶性Al:0.028%、N:0.008%を含有し、残部がFe及び不純物からなるケイ素鋼スラブを製造した。次に、得られたケイ素鋼スラブを1350℃で加熱する、スラブ加熱を行った。その後、加熱されたケイ素鋼スラブの熱間圧延を行って、厚さが2.3mmの熱間圧延鋼帯を得た。次に、得られた熱間圧延鋼帯の焼鈍を行って、熱延焼鈍鋼帯を得た。かかる熱間圧延鋼帯の焼鈍では、鋼帯を1120℃まで加熱して再結晶させた後、かかる加熱温度よりも低い900℃の温度で30秒間焼鈍した。次に、熱延焼鈍鋼帯に1回の冷間圧延を行って、厚さが0.23mmの冷間圧延鋼帯を得た。
続いて、得られた冷間圧延鋼帯の脱炭焼鈍を行って、脱炭焼鈍鋼帯を得た。この脱炭焼鈍では、以下の表3に示す条件で脱炭焼鈍を行った。なお、以下の表3において、下線は、本発明の範囲外であることを示す。
以下の表3に示した以外の条件としては、昇温過程における冷間圧延鋼帯の最高到達温度を870℃とした。また、第1脱炭焼鈍過程の保持時間を120秒とし、酸素ポテンシャルPHO/PHを0.5とし、第2脱炭焼鈍過程の保持温度を930℃とし、保持時間を20秒とし、酸素ポテンシャルPHO/PHを0.05とした。
次に、得られた脱炭焼鈍鋼帯に対し、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を水スラリーにて塗布した後、コイルに巻取り、仕上げ焼鈍を行った。得られたコイルを水洗した後、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とした絶縁被膜を塗布し、焼付・形状矯正を兼ねた平坦化焼鈍を施して、方向性電磁鋼板の製品コイルとした。
上記のような条件で、それぞれの方向性電磁鋼板を5コイルずつ製造し、それぞれのコイルから単板磁気測定用サイズを採取した。採取した鋼板に50Hzで1.7Tまで磁化させたときの単位質量当たりの鉄損W17/50(W/kg)と、磁束密度B8(T)と、をJIS C2556に規定されている単板磁気特性試験(Single Sheet Test:SST)法に則して測定した。
得られた5コイルの鉄損W17/50のうち、0.80W/kg以下であったコイルの比率を計算し、得られた結果を、以下の表3にあわせて示した。また、磁束密度B8については、5コイルの磁束密度の平均値と、コイル間での磁束密度のバラつきを示す標準偏差と、を算出し、以下の表3にあわせて示した。
Figure 0007063032000003
上記表3から明らかなように、第1脱炭焼鈍過程に先立つ昇温過程での平均昇温速度が400℃/秒以上3000℃/秒以下であり、第1脱炭焼鈍過程の保持温度が800℃以上870℃以下であり、脱炭焼鈍過程切り替え時の昇温過程における平均昇温速度が5℃/秒以上30℃/秒以下であり、酸素ポテンシャルPHO/PHの変化率が式(101)を満たすことで、磁束密度のバラつきが0.01以下となり、平均磁束密度が1.929T以上で、鉄損が0.80W/kg以下であるコイルの比率が0.4以上となることがわかる。かかる結果は、高磁束密度で鉄損の低い方向性電磁鋼板が安定的に得られていることを示すものである。
(実験例4)
まず、以下の表4に示した成分組成を有し、残部がFe及び不純物からなる種々のケイ素鋼スラブを製造した。次に、得られたケイ素鋼スラブを1350℃で加熱する、スラブ加熱を行った。その後、加熱されたケイ素鋼スラブの熱間圧延を行って、厚さが2.3mmの熱間圧延鋼帯を得た。次に、得られた熱間圧延鋼帯の焼鈍を行って、熱延焼鈍鋼帯を得た。かかる熱間圧延鋼帯の焼鈍では、鋼帯を1120℃まで加熱して再結晶させた後、かかる加熱温度よりも低い900℃の温度で30秒間焼鈍した。次に、熱延焼鈍鋼帯に1回の冷間圧延を行って、厚さが0.23mmの冷間圧延鋼帯を得た。
続いて、得られた冷間圧延鋼帯の脱炭焼鈍を行って、脱炭焼鈍鋼帯を得た。この脱炭焼鈍の条件としては、第1脱炭焼鈍過程に先立つ昇温過程における平均昇温速度を1000℃/秒とし、冷間圧延鋼帯の最高到達温度は870℃とした。第1脱炭焼鈍過程では、酸素ポテンシャルPHO/PHを0.6とし、保持温度を820℃とし、保持時間を120秒とした。また、脱炭焼鈍過程切り替え時の昇温過程における平均昇温速度Vを10℃/秒とし、酸素ポテンシャルPHO/PHの変化率は0.12[/秒]とした。また、第2脱炭焼鈍過程では、酸素ポテンシャルPHO/PHを0.04とし、保持温度を935℃とし、保持時間を25秒とした。
次に、脱炭焼鈍鋼帯に対し、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を水スラリーにて塗布した後、コイルに巻取り、仕上げ焼鈍を行った。得られたコイルを水洗した後、リン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とした絶縁被膜を塗布し、焼付・形状矯正を兼ねた平坦化焼鈍を施して、方向性電磁鋼板の製品コイルとした。
上記のような条件で、それぞれの方向性電磁鋼板を5コイルずつ製造し、それぞれのコイルから単板磁気測定用サイズを採取した。採取した鋼板に50Hzで1.7Tまで磁化させたときの単位質量当たりの鉄損W17/50(W/kg)と、磁束密度B8(T)と、をJIS C2556に規定されている単板磁気特性試験(Single Sheet Test:SST)法に則して測定した。
得られた5コイルの鉄損W17/50のうち、0.80W/kg以下であったコイルの比率を計算し、得られた結果を、以下の表4にあわせて示した。また、磁束密度B8については、5コイルの磁束密度の平均値と、コイル間での磁束密度のバラつきを示す標準偏差と、を算出し、以下の表4にあわせて示した。
Figure 0007063032000004
上記表4から明らかなように、本発明の条件下においては、いずれの成分組成においても、磁束密度のバラつきが0.009以下となり、平均磁束密度が1.927T以上であり、鉄損が0.80W/kg以下であるコイルの比率が0.4以上となることがわかる。かかる結果は、高磁束密度で鉄損の低い方向性電磁鋼板が安定的に得られていることを示すものである。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.02~0.10%
    Si:2.0~4.5%
    Mn:0.01~0.30%
    S:0.001~0.050%
    酸可溶性Al:0.010~0.065%
    N:0.002~0.015%
    を含有し、残部がFe及び不純物からなる鋼を熱間圧延して熱延鋼板とする熱間圧延工程と、
    得られた前記熱延鋼板を焼鈍する熱延板焼鈍工程と、
    焼鈍後の前記熱延鋼板に対して、一回又は中間焼鈍を挟む二回以上の冷間圧延を実施して冷延鋼板とする冷間圧延工程と、
    得られた前記冷延鋼板に対して脱炭焼鈍を行って脱炭焼鈍鋼板とする脱炭焼鈍工程と、
    得られた前記脱炭焼鈍鋼板に対して仕上げ焼鈍を施す仕上げ焼鈍工程と、
    を含み、
    前記脱炭焼鈍工程の昇温過程では、550℃以上750℃以下の範囲での平均昇温速度を400℃/秒以上3000℃/秒以下として、前記冷延鋼板を、850℃以上950℃以下の温度まで加熱し、
    前記昇温過程後の第1脱炭焼鈍過程では、酸素ポテンシャルPHO/PHを0.2以上0.9以下に制御した上で、800℃以上870℃未満の温度T1で、少なくとも60秒以上保持し、
    前記第1脱炭焼鈍過程後の第2脱炭焼鈍過程では、酸素ポテンシャルPHO/PHを0.1以下に制御した上で、870℃以上1000℃未満の温度T2で、10秒以上60秒以下保持し、
    前記第1脱炭焼鈍過程から前記第2脱炭焼鈍過程への昇温過程では、平均昇温速度Vを、5℃/秒以上30℃/秒以下とし、かつ、酸素ポテンシャルPHO/PHの単位時間当たりの変化率R[1/s]が、以下の式(1)を満足する、方向性電磁鋼板の製造方法。

    (P1-P2)/{(T2-T1)/V}≦R ・・・式(1)

    ここで、上記式(1)において、
    P1:第1脱炭焼鈍過程における酸素ポテンシャルPHO/PH
    P2:第2脱炭焼鈍過程における酸素ポテンシャルPHO/PH
    である。
  2. 前記鋼は、残部のFeの一部に替えて、質量%で、
    Ni:0.010~1.500%
    Cr:0.01~0.50%
    Cu:0.01~0.50%
    Sb:0.005~0.500%
    Se:0.001~0.050%
    Sn:0.005~0.500%
    Bi:0.0003~0.0100%
    Mo:0.005~0.100%
    B:0.0002~0.0025%
    Te:0.0005~0.0100%
    Nb:0.0010~0.0100%
    V:0.001~0.010%
    Ta:0.001~0.010%
    からなる群より選択される1種又は2種以上を更に含有する、請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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