JP7060917B2 - 電池用セパレータ塗液及び電池用セパレータ - Google Patents
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Description
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
但し、水溶性高分子がカルボキシメチルセルロースである場合、カルボキシメチルセルロースの下記条件aで測定される粘度は5000mPa・s以下である;
(条件a)
カルボキシメチルセルロースの濃度が1質量%となるようにイオン交換水で希釈し、水溶液を得る;該水溶液の粘度を、B型粘度計により測定する;測定の際、液温は25℃とし、回転数を60rpmとし、回転開始から3分後の値を粘度値とする。
[2] 繊維状セルロースはイオン性置換基を有する[1]に記載の電池用セパレータ塗液。
[3] 繊維状セルロースにおけるイオン性置換基の導入量は1.0mmol/g以上である[1]又は[2]に記載の電池用セパレータ塗液。
[4] 水溶性高分子は、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース及びグアーガムから選択される少なくとも1種である[1]~[3]のいずれかに記載の電池用セパレータ塗液。
[5] 電池用セパレータ塗液は分散媒を含み、繊維状セルロースの含有量は、分散媒の100質量部に対して、0.1質量部以上1.3質量部以下である[1]~[4]のいずれかに記載の電池用セパレータ塗液。
[6] 繊維状セルロースの含有量と水溶性高分子の含有量の質量比は、9:1~5:5である[1]~[5]のいずれかに記載の電池用セパレータ塗液。
[7] 基材と、塗工層を有する電池用セパレータであって、塗工層は、微粒子と、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、水溶性高分子と、を含む電池用セパレータ;
但し、水溶性高分子がカルボキシメチルセルロースである場合、カルボキシメチルセルロースの下記条件aで測定される粘度は5000mPa・s以下である;
(条件a)
カルボキシメチルセルロースの濃度が1質量%となるようにイオン交換水で希釈し、水溶液を得る;該水溶液の粘度を、B型粘度計により測定する;測定の際、液温は25℃とし、回転数を60rpmとし、回転開始から3分後の値を粘度値とする。
[8] 基材は、ポリオレフィン系樹脂を含む[7]に記載の電池用セパレータ。
[9] 塗工層における繊維状セルロースの含有量と水溶性高分子の含有量の質量比は、9:1~5:5である[7]又は[8]に記載の電池用セパレータ。
本発明は、微粒子と、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、水溶性高分子と、を含む電池用セパレータ塗液に関する。但し、水溶性高分子がカルボキシメチルセルロースである場合、該カルボキシメチルセルロースの下記条件aで測定される粘度は5000mPa・s以下である。
(条件a)
カルボキシメチルセルロースの濃度が1質量%となるようにイオン交換水で希釈し、水溶液を得る;該水溶液の粘度を、B型粘度計により測定する;測定の際、液温は25℃とし、回転数を60rpmとし、回転開始から3分後の値を粘度値とする。
(1)電池用セパレータ塗液が高温条件で調製もしくは保存される。
(2)電池用セパレータ塗液が長時間保存される。
(3)電池用セパレータ塗液の調製時や塗工時等に強攪拌される。
なお、(1)の条件における高温条件とは、調製もしくは保存時に電池用セパレータ塗液の温度が40℃以上となる条件である。例えば、本発明の電池用セパレータ塗液は、液温が50℃や70℃といった高温になった場合であっても優れた微粒子分散性を発揮することができる。
(2)の条件における長時間保存とは、電池用セパレータ塗液を36時間以上保存する条件である。例えば、本発明の電池用セパレータ塗液は、攪拌後に48時間や144時間といった長時間保存をした場合であっても優れた微粒子分散性を発揮することができる。
(3)の条件における強攪拌とは、T.K.ホモディスパーといった撹拌機で攪拌した際の回転数が4000rpm以上であり、かつ攪拌時間が2時間以上である条件である。例えば本発明の電池用セパレータ塗液は、回転数5000rpmや8000rpmといった速い回転速度で攪拌をした場合であって、かつ攪拌時間が3時間といった長時間であっても優れた微粒子分散性を発揮することができる。
本発明の電池用セパレータ塗液は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを含む。なお、本明細書においては、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを、微細繊維状セルロースともいう。
この場合は、まず、電池用セパレータ塗液を希釈し、乾燥させた後に、透過型電子顕微鏡で観察し、微細繊維状セルロースの存在を確認する。次いで、固体NMRを用いて、セルロースのI型結晶を検出する。
まず、50ml容量のアルミカップに電池用セパレータ塗液20±5gを量り取る。同様にして、電池用セパレータ塗液を量り取ったアルミカップを複数個用意する。送風定温乾燥機にて105℃で16時間加熱し電池用セパレータ塗液を乾燥させる。乾燥させた電池用セパレータ塗液1gに対し、100mlの割合となるように0.5mol/L銅エチレンジアミン溶液を加え、撹拌して微細繊維状セルロースを溶解する。得られた溶解液を、ろ過して残渣を取り除いた後、水中に滴下し、再生セルロースを得る。この再生セルロースは微細繊維状セルロースが銅エチレンジアミン溶液中で溶解し、水中で再生されたものである。得られた再生セルロースはろ別し、十分に水洗後、乾燥させる。
TAPPI International Standard; ISO/FDIS 5351, 2009.
Smith, D. K.; Bampton, R. F.; Alexander, W. J. Ind. Eng. Chem.,Process Des. Dev. 1963, 2, 57-62.
測定に用いた絶乾状態の微細繊維状セルロース質量:a(g)(但し、aは0.14以上0.16以下)
溶液のセルロース濃度:c=a/30(g/mL)
溶媒落下時間:t0(sec)
微細繊維状セルロース溶液の落下時間:t(sec)
溶液の相対粘度:ηrel=t/t0
溶液の比粘度:ηsp=ηrel―1
固有粘度:[η]=ηsp/c(1+0.28ηsp)
重合度:DP=[η]/0.57
なお、微細繊維状セルロースの平均重合度は、上記方法で算出されるものであるため、粘度平均重合度と呼ばれることもある。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。この場合、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(以下、「リン酸化試薬」又は「化合物A」という)を反応させることにより行うことができる。このようなリン酸化試薬は、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に粉末や水溶液の状態で混合してもよい。また別の例としては、繊維原料のスラリーにリン酸化試薬の粉末や水溶液を添加してもよい。
リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩などが挙げられるが、特に限定されない。リン酸のリチウム塩としては、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、またはポリリン酸リチウムなどが挙げられる。リン酸のナトリウム塩としてはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、またはポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。リン酸のカリウム塩としてはリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、またはポリリン酸カリウムなどが挙げられる。リン酸のアンモニウム塩としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
微細繊維状セルロースがカルボキシル基を有するものである場合、カルボキシル基導入工程を経ることで微細繊維状セルロースにカルボキシル基を導入することができる。カルボキシル基導入工程では、TEMPO酸化処理などの酸化処理やカルボン酸由来の基を有する化合物、その誘導体、またはその酸無水物もしくはその誘導体によって繊維原料を処理することで、微細繊維状セルロースにカルボキシル基を導入することができる。
微細繊維状セルロースを製造する場合、リン酸基導入工程やカルボキシル基導入工程といったイオン性置換基導入工程と、後述する解繊処理工程との間にアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、イオン性置換基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されないが、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。アルカリ溶液における溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよい。溶媒は、極性溶媒(水、またはアルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。
また、アルカリ溶液のうちでは、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が特に好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液への浸漬時間は特に限定されないが、5分以上30分以下が好ましく、10分以上20分以下がより好ましい。
アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は特に限定されないが、イオン性置換基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
微細繊維状セルロースを製造する場合、イオン性置換基導入工程と、後述する解繊処理工程の間に酸処理を行ってもよい。また、イオン性置換基導入工程、酸処理、アルカリ処理及び解繊処理をこの順で行ってもよい。
酸処理工程における酸溶液への浸漬時間は特に限定されないが、5分以上120分以下が好ましく、10分以上60分以下がより好ましい。
酸処理における酸溶液の使用量は特に限定されないが、イオン性置換基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
イオン性置換基導入繊維は、解繊処理工程で解繊処理される。解繊処理工程では、通常、解繊処理装置を用いて、繊維を解繊処理して、微細繊維状セルロース含有スラリーを得るが、処理装置、処理方法は、特に限定されない。
解繊処理装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミルなどを使用できる。あるいは、解繊処理装置としては、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできる。解繊処理装置は、上記に限定されるものではない。好ましい解繊処理方法としては、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミの心配が少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーが挙げられる。
電池用セパレータ塗液に含まれる微粒子としては、有機微粒子及び無機微粒子を挙げることができる。中でも微粒子は、無機微粒子であることが好ましい。
また、上記無機微粒子の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、上記絶縁性微粒子を構成する材料など)で表面被覆することで、電気絶縁性を持たせた微粒子とすることもできる。
なお、微粒子の含有量は例えば10質量%以下であると、微粒子同士の衝突確率が減り、より沈降し易い傾向が見られる。しかし、本発明の電池用セパレータ塗液は、所定条件の微細繊維状セルロースを含有するため、微粒子の含有量が少ない場合であっても、微粒子の沈降を抑制することができる。
本発明の電池用セパレータ塗液は水溶性高分子を含む。水溶性高分子としては、例えば、キサンタンガム、タマリンドガム、グルコマンナン、グアーガム、ローカストビーンガム、プルランなどの水溶性多糖類、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、カゼインナトリウムなどの水溶性たんぱく質、デキストリン、澱粉、変性澱粉、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、アミロースなどのデンプン類、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸塩類、アクリル酸アルキルエステル共重合体等の合成高分子等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、水溶性高分子は、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース及びグアーガムから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
(条件a)
カルボキシメチルセルロースの濃度が1質量%となるようにイオン交換水で希釈し、水溶液を得る。該水溶液の粘度を、B型粘度計により測定する;測定の際、液温は25℃とし、回転数を60rpmとし、回転開始から3分後の値を粘度値とする。
電池用セパレータ塗液は分散媒を含むことが好ましい。分散媒としては、水や有機溶媒、及びこれらの混合物が挙げられる。中でも分散媒は水であることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール等が挙げられる。なお、本明細書において分散媒とは、電池用セパレータ塗液中において、塗工層形成時の乾燥の際に残る固形分を除いた残りの部分を指す。
電池用セパレータ塗液は、上記成分のほかに、バインダー成分をさらに含んでもよい。上記バインダー成分の具体例としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体;エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルメタクリレート共重合体などの(メタ)アクリル酸共重合体;フッ素系ゴム;スチレン-ブタジエンゴム(SBR);ポリウレタン;エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのバインダー成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらのバインダー成分は、それ単体では水に不溶であるため、適当な界面活性剤と共に、エマルションの形で提供される。電池用セパレータ塗液がバインダー成分をさらに含むことにより、後述する電池用セパレータ基材との接着性を高めることができる。上記バインダー成分の含有量は電池用セパレータ塗液中の微粒子の全質量に対して15質量%以下であることが好ましい。
本発明は、基材と、塗工層を有する電池用セパレータに関するものでもある。塗工層は、微粒子と、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースと、水溶性高分子と、を含む。但し、水溶性高分子がカルボキシメチルセルロースである場合、カルボキシメチルセルロースの上記条件aで測定される粘度は5000mPa・s以下である。
この場合は、まず、電池用セパレータの表面を透過型電子顕微鏡で観察し、微細繊維状セルロースの存在を確認する。次いで、固体NMRを用いて、セルロースのI型結晶を検出する。
まず、電池用セパレータを1cm角程度に断裁後、カッターミルを用いて1mm角程度にまで粉砕する。次いで、電池用セパレータの粉砕物1gに対し、100mlの割合となるように0.5mol/L銅エチレンジアミン溶液を加え、撹拌して微細繊維状セルロースを溶解する。得られた溶解液を、ろ過して残渣を取り除いた後、水中に滴下し、再生セルロースを得る。この再生セルロースは微細繊維状セルロースが銅エチレンジアミン溶液中で溶解し、水中で再生されたものである。得られた再生セルロースはろ別し、十分に水洗後、乾燥させる。
電池用セパレータは基材を含む。基材は、電解液に対し安定なものであって、多孔性基材であることが好ましい。
中でも基材の構成材料は、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、ポリプロピレン又はポリエチレンであることがより好ましい。基材はポリプロピレン又はポリエチレンからなる不織布もしくはフィルムであることが特に好ましい。
また、必要に応じて、他の樹脂を併用することもできる。併用可能な樹脂としては、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン/アクリル酸エステル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂や、SBR、NBR等のゴム系エマルジョンなどが挙げられる。
電池用セパレータの製造工程は、基材の少なくとも一方の面に電池用セパレータ塗液を塗布する工程と、電池用セパレータ塗液が塗布された基材を乾燥する工程とを含むことが好ましい。電池用セパレータ塗液を基材表面に塗布する際には、従来から知られている塗工機を用いることができる。塗工機としては、例えば、ダイコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、スクイズロールコーター、カーテンコーター、ブレードコーター、ナイフコーターなどを挙げることができる。なお、電池用セパレータ塗液は基材の片面に塗布されることが好ましい。
本発明の電池用セパレータは、リチウム二次電池等に代表される電気化学素子に好ましく用いられる。電気化学素子としては、有機電解液を用いるリチウム電池(一次電池および二次電池)の他、スーパーキャパシタなどの用途にも用いることができる。
負極としては、従来から知られているリチウム二次電池に用いられている負極であれば特に制限はない。負極はLi+イオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する。
乾燥質量100質量部の針葉樹クラフトパルプに、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を含浸させ、リン酸二水素アンモニウムが49質量部、尿素が130質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを105℃の乾燥機で乾燥し、水分を蒸発させてプレ乾燥させた。その後、140℃に設定した送風乾燥機で、10分間加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。
<中性TEMPO酸化処理>(Mはモル濃度mol/Lを表す)
乾燥質量100質量部相当の未乾燥の針葉樹晒クラフトパルプと、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)1.6質量部と、80%亜塩素酸ナトリウム113質量部とを、9000質量部の0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH=6.8)に懸濁した(液A)。
2Mの次亜塩素酸ナトリウム50mLに、0.1Mになるまで0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH=6.8)を加えた(液B)。
液Aに液Bを注いで、直ちに密閉した後、マグネチックスターラーを用いて500rpmで攪拌しながら、温度60℃で72時間反応させ、パルプスラリーを得た。
<繊維幅の測定>
微細繊維状セルロースの繊維幅を下記の方法で測定した。
湿式微粒化装置にて処理をした微細繊維状セルロースの上澄み液を、微細繊維状セルロースの濃度が0.01質量%以上0.1質量%以下となるように水で希釈し、親水化処理したカーボングリッド膜に滴下した。乾燥後、酢酸ウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEOL-2000EX)により観察した。微細繊維状セルロース1及び2は、繊維幅4nm程度の微細繊維状セルロースになっていることを確認した。
置換基導入量は、繊維原料へのリン酸基もしくはカルボン酸基の導入量であり、この値が大きいほど、多くのリン酸基もしくはカルボン酸基が導入されている。置換基導入量は、対象となる微細繊維状セルロースをイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈した後、イオン交換樹脂による処理、アルカリを用いた滴定によって測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%繊維状セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ株式会社、コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後の微細繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測した。すなわち、図1(リン酸基)及び図2(カルボキシル基)に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とした。算出した結果は以下の表1に示した。
ベーマイト(AlOOH)粉末を、イオン交換水に懸濁した後、湿式ボールミルを用いて、粒子径が1μm以下となるまで微粉砕を行い、微粉砕ベーマイトスラリーを得た。得られた微粉砕ベーマイトスラリーの組成が、ベーマイト100質量部に対して、イオン交換水が51質量部となるよう、イオン交換水を加えた。さらに、固形分濃度が2質量%の微細繊維状セルロース1の懸濁液35gと、水溶性高分子として、固形分濃度が2質量%のキサンタンガム(XG)(東京化成工業株式会社製)の水溶液15gを加え(微細繊維状セルロース1と水溶性高分子の質量比率が7:3、総固形分1g、水49gの液を添加し)、50℃に加温した後、T.K.ホモディスパー(特殊機化工業製)で5000rpmにて3時間撹拌し、さらに48時間静置して、電池用セパレータ塗液を得た。
キサンタンガムの代わりに、カルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬製 BSH-6、下記条件で測定される粘度3500mPa・s)を用いた以外は、実施例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
液温25℃において、B型粘度計による1質量%の水溶液の粘度を測定する。回転数は60rpmとし、回転開始から3分後の値を、当該水溶液の粘度とする。
キサンタンガムの代わりに、グアーガム(GG)(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
微細繊維状セルロース1と水溶性高分子の質量比率を9:1とした以外は、実施例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
微細繊維状セルロース1と水溶性高分子の質量比率を5:5とした以外は、実施例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
ベーマイト粉末の代わりに、チタン酸バリウム粉末を用いた以外は、実施例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
ベーマイト粉末の代わりに、リン酸リチウム粉末を用いた以外は、実施例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
T.K.ホモディスパーで攪拌する前の加温温度を50℃から70℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
T.K.ホモディスパーで攪拌する際の攪拌回転数を5000rpmから8000rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
T.K.ホモディスパーで攪拌した後の静置時間を48時間から144時間の静置時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
微細繊維状セルロース1の代わりに、微細繊維状セルロース2を用いた以外は、実施例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
キサンタンガムを加えなかった以外は、実施例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
微細繊維状セルロース1の代わりに、微細繊維状セルロース2を用いた以外は、比較例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
T.K.ホモディスパーで攪拌する前に50℃に加温せず、25℃に保持した以外は比較例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
T.K.ホモディスパーで攪拌する際の攪拌回転数及び攪拌時間を5000rpm、3時間の攪拌から、3000rpm、1時間の攪拌に変更した以外は比較例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
T.K.ホモディスパーで攪拌した後の静置時間を48時間から24時間に変更した以外は比較例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
T.K.ホモディスパーで攪拌する前に50℃に加温せず、25℃に保持し、T.K.ホモディスパーで攪拌する際の攪拌回転数及び攪拌時間を3000rpm、1時間の攪拌とし、攪拌した後の静置時間を24時間の静置時間とした以外は比較例1と同様にして、電池用セパレータ塗液を得た。
ポリエチレン繊維(繊維長:5mm、繊維強度:28cN/dtex、弾性率:900cN/dtex)を0.2質量%となるように水に分散し、湿式抄紙法にて、ランダムな配向のウェブを形成した。このウェブに接着剤としてエチレン-(メタ)アクリル酸系樹脂(東邦化学製、ハイテックS-3148、エチレン/アクリル酸=80質量部/20質量部、樹脂末端にウレタン基を有する)を対ポリエチレン繊維比で10質量%となるように噴霧した後、110℃に設定した熱風乾燥機にて乾燥することによって30g/m2の不織布を得た。この不織布に対しカレンダー処理を行い密度が0.64g/cm3の不織布を得た。この不織布を、電池用セパレータ塗液を塗工するための不織布基材とした。
上記不織布基材に乾燥後の塗工層坪量が5g/m2となるよう、電池用セパレータ塗液を塗工して電池用セパレータを作製した。
<微粒子分散性>
各実施例、比較例及び参考例で得られた電池用セパレータ塗液について、微粒子の沈降の有無を確認し、以下の基準で評価した。
○:微粒子の沈降がなく、上澄み層が存在しない。
△:一部、微粒子の沈降が認められるが、上澄み層は存在しない。
×:全体的に微粒子の沈降があり、上澄み層が存在する。
<塗工性>
不織布基材に乾燥後の塗工層坪量が5g/m2となるよう、電池用セパレータ塗液を塗工し、塗工性を以下の基準で評価した。
○:塗工後の外観観察で全面にムラがない。
△:塗工後の外観観察で一部にムラ部分がある。
×:塗工後の外観観察で全面にムラがみられる。もしくは塗工自体が出来ない。
不織布基材に乾燥後の塗工層坪量が5g/m2となるよう、電池用セパレータ塗液を塗工し、電池用セパレータ塗液の裏抜け有無を確認した。
○:塗工時に塗工台紙へ塗液の付着がない。
×:塗工時に塗工台紙へ塗液の付着が見られる。
一方、比較例で得られた電池用セパレータ塗液は過酷条件下では微粒子分散性に劣っていた。また、比較例で得られた電池用セパレータ塗液を過酷条件下に置いた後に、塗工して作製した電池用セパレータにおいては、塗液の裏抜けが発生していた。
Claims (9)
- 微粒子と、平均繊維幅が10nm以下の繊維状セルロースと、水溶性高分子と、を含む電池用セパレータ塗液;
但し、前記水溶性高分子がカルボキシメチルセルロースである場合、前記カルボキシメチルセルロースの下記条件aで測定される粘度は5000mPa・s以下である;
(条件a)
前記カルボキシメチルセルロースの濃度が1質量%となるようにイオン交換水で希釈し、水溶液を得る;該水溶液の粘度を、B型粘度計により測定する;測定の際、液温は25℃とし、回転数を60rpmとし、回転開始から3分後の値を粘度値とする。 - 前記繊維状セルロースはイオン性置換基を有する請求項1に記載の電池用セパレータ塗液。
- 前記繊維状セルロースにおけるイオン性置換基の導入量は1.0mmol/g以上である請求項2に記載の電池用セパレータ塗液。
- 前記水溶性高分子は、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース及びグアーガムから選択される少なくとも1種である請求項1~3のいずれか1項に記載の電池用セパレータ塗液。
- 前記電池用セパレータ塗液は分散媒を含み、
前記繊維状セルロースの含有量は、前記分散媒の100質量部に対して、0.1質量部以上1.3質量部以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の電池用セパレータ塗液。 - 前記繊維状セルロースの含有量と前記水溶性高分子の含有量の質量比は、9:1~5:5である請求項1~5のいずれか1項に記載の電池用セパレータ塗液。
- 基材と、塗工層を有する電池用セパレータであって、
前記塗工層は、微粒子と、平均繊維幅が10nm以下の繊維状セルロースと、水溶性高分子と、を含む電池用セパレータ;
但し、前記水溶性高分子がカルボキシメチルセルロースである場合、前記カルボキシメチルセルロースの下記条件aで測定される粘度は5000mPa・s以下である;
(条件a)
前記カルボキシメチルセルロースの濃度が1質量%となるようにイオン交換水で希釈し、水溶液を得る;該水溶液の粘度を、B型粘度計により測定する;測定の際、液温は25℃とし、回転数を60rpmとし、回転開始から3分後の値を粘度値とする。 - 前記基材は、ポリオレフィン系樹脂を含む請求項7に記載の電池用セパレータ。
- 前記塗工層における前記繊維状セルロースの含有量と前記水溶性高分子の含有量の質量比は、9:1~5:5である請求項7又は8に記載の電池用セパレータ。
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