本発明に係るコンバインの一例について説明する。
[コンバインの全体構造]
まずは、図1を参照して、コンバインの全体構造について簡単に説明する。図1は、本実施形態のコンバイン1の左側面を示す。図中には、コンバイン1の前後方向及び上下方向を矢印で示している。
コンバイン1は、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7、動力部8及び操縦部9を備える。コンバイン1は、走行部2によって走行しながら、刈取部3によって刈り取った穀稈を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部6に貯える。脱穀後の排藁は排藁処理部7によって処理される。動力部8は、これらの走行部2や刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7に動力を供給する。オペレータは、操縦部9においてコンバイン1を操縦する。
走行部2は、走行機体10と、左右一対のクローラ11とを備える。走行機体10は、クローラ11によって支持されている。クローラ11は、コンバイン1を前後方向に走行させたり、左右方向に旋回させたりする。刈取部3は、走行機体10の前方に設けられている。刈取部3は、圃場に植立している複数条の穀稈を刈り取って脱穀部4に供給する。刈取部3は、走行機体10の前端部に連結された油圧シリンダ12によって昇降自在に構成されている。
脱穀部4は、刈取部3の後方に設けられている。脱穀部4は、フィードチェーン13と、扱胴14とを備える。フィードチェーン13は、刈取部3の後方であって、脱穀部4の前部に設けられている。フィードチェーン13は、刈取部3から穀稈を受け継ぎ、その穀稈を脱穀部4から排藁処理部7へと搬送する。扱胴14は、フィードチェーン13によって搬送される穀稈を脱穀する。フィードチェーン13及び扱胴14は、それぞれサイドカバー15及び藁押え台カバー16によって左側から覆われている。
選別部5は、脱穀部4の下方に設けられている。選別部5は、揺動選別装置17と、風選別装置18とを備える。揺動選別装置17は、脱穀部4から落下した脱穀物を穀粒と藁屑等に選別する。風選別装置18は、揺動選別装置17に選別風を供給し、揺動選別装置17と共に脱穀物を穀粒と藁屑等に選別する。選別された穀粒は、図示しない穀粒回収機構により回収されて貯留部6へと搬送される。選別された藁屑等は、排藁処理部7を介して機外に排出される。
貯留部6は、脱穀部4の右側に設けられている。貯留部6は、グレンタンク19と、排出装置20とを備える。グレンタンク19は、選別部5から搬送されてきた穀粒を貯留する。排出装置20は、後端部(穀粒の搬送上流側の基端部)を中心として先端部を上下左右方向に回動自在に構成されており、グレンタンク19に貯留されている穀粒を任意の場所に排出できる。
排藁処理部7は、脱穀部4の後方に設けられている。排藁処理部7は、フィードチェーン13により搬送された穀稈を切断して排出する。動力部8は、選別部5の右側に設けられている。動力部8は、動力を発生させるエンジン21を備える。動力部8は、エンジン21の代わりに電動モータを備えてもよく、エンジン21と電動モータの双方を備えていてもよい。
操縦部9は、動力部8の上方に設けられている。操縦部9は、運転席22と、ハンドル23を含む複数の操作具とを備える。運転席22は、オペレータが着座する座席である。ハンドル23は、コンバイン1の進行方向を変更する操向ハンドルである。オペレータは、運転席22に着座した状態でハンドル23などの複数の操作具を操作することにより、コンバイン1を操縦できる。
[刈取部]
次に、刈取部3の構成について説明する。図2,3に示すように、刈取部3は、分草板31、引起装置32、掻込装置33、切断装置34及び搬送装置35を備える。
刈取部3の先端には、五条分となる六つの分草板31が設けられている。各分草板31は、前方に向かって尖った先端形状を有する。分草板31は、刈り取られる穀稈と圃場に残される穀稈とを分離するとともに、刈り取られる穀稈を一条毎に分離して引起装置32に案内する。
引起装置32は、分草板31によって一条毎に分離された穀稈を引き起こす。引起装置32は、分草板31の後方に配置されている。引起装置32は、五条分となる五つの引起ケース36を有する。各引起ケース36は、その上端部が下端部よりも後方に位置するように水平を基準に前傾(垂直を基準に後傾)し、左右方向に間隔を設けて並べられている。引起ケース36は、タイン37が形成されたタイン付きチェーン38を回転駆動可能に支持する。
掻込装置33は、引起装置32によって引き起こされた穀稈の株元を掻き込む。掻込装置33は、引起装置32の後方に配置されている。掻込装置33は、五条分となる五つの掻込機構40を有する(図9参照)。掻込機構40は、その前端部が後端部よりも下方に位置するように水平を基準に前傾(垂直を基準に後傾)し、左右方向に間隔を設けて並べられている。
切断装置34は、掻込装置33によって掻き込まれた穀稈を切断する。切断装置34は、掻込装置33の下方に設けられている。切断装置34は、穀稈を切断するための刈刃39を有する。
搬送装置35は、切断装置34によって切断された穀稈を後方へ搬送する。搬送装置35は、上部搬送装置60、下部搬送装置61、縦搬送装置62及び補助搬送装置63を備える。上部搬送装置60、下部搬送装置61、縦搬送装置62及び補助搬送装置63は、それぞれ前端部が後端部よりも下方に位置するように水平を基準に前傾(垂直を基準に後傾)している。上部搬送装置60は、刈り取られた穀稈の穂部を後方へ搬送する。下部搬送装置61は、刈り取られた穀稈の株元を後方へ搬送する。下部搬送装置61は、上部搬送装置60の下方に配置されている。
縦搬送装置62は、下部搬送装置61から受け継いだ穀稈の株元を後上方へ搬送する。縦搬送装置62は、下部搬送装置61の後上方に配置されている。縦搬送装置62は、上下方向に沿って移動可能に構成されており、図1では最も下方に位置している。穀稈の長さに合わせて縦搬送装置62の位置を変更することで、最適な搬送姿勢を保つことができる。補助搬送装置63は、縦搬送装置62から受け継いだ穀稈の株元を後上方へ搬送する。補助搬送装置63は、縦搬送装置62の後上方に配置されている。
また、刈取部3には、刈取フレーム70が設けられている。刈取フレーム70は、刈取入力ケース71、縦伝動ケース72、横伝動ケース73、分草フレーム74、フレームパイプ75、引起縦伝動ケース76、縦連結フレーム77、引起横伝動ケース78、引起駆動ケース79及び中搬送駆動ケース80を備える。
刈取入力ケース71は、刈取部3の後部に配置され、脱穀部4の前方において左右方向に延在している。クローラ11の上方には、左右一対の支持フレーム81が設けられている。各支持フレーム81の上部には、割パイプ受部材82が設けられている。刈取入力ケース71の両端部は、割パイプ受部材82を介して左右の支持フレーム81の上部に回転自在に且つ着脱自在に支持されている。刈取入力ケース71の中間部には、補助搬送装置63を支持する右搬送駆動ケース83が接続されており、その補助搬送装置63の上方に右穂部搬送機構60Rが支持されている。
縦伝動ケース72は、その上端部が下端部よりも後方に位置するように水平を基準に前傾(垂直を基準に後傾)している。縦伝動ケース72の上端部は、刈取入力ケース71の中間部に接続されている。縦伝動ケース72の中間部は、油圧シリンダ12を介して走行機体10に連結されている。油圧シリンダ12を伸縮させると、刈取入力ケース71を支点として縦伝動ケース72が回転し、それによって刈取部3が昇降する。縦伝動ケース72の下端部は、横伝動ケース73の中間部に接続されている。
横伝動ケース73は、左右方向に延在している。横伝動ケース73の軸線方向は、刈取入力ケース71の軸線方向に対して略平行であり、縦伝動ケース72の軸線方向に対して略直交している。
分草フレーム74は、分草板31と同数の管状部材で構成され、それらが左右方向に間隔を設けて並べられている。分草フレーム74を構成する管状部材は、前後方向に沿って延在し、その前端部に分草板31が取り付けられている。分草フレーム74の下方には、左右方向に延在したフレームパイプ75が接続されている。フレームパイプ75は、分草フレーム74を構成する六本の管状部材を連結している。フレームパイプ75は、横伝動ケース73の前斜下方に配置されている。
横伝動ケース73の左端部には、引起縦伝動ケース76が接続されている。引起縦伝動ケース76は、その上端部が下端部よりも前方に位置するように水平を基準に後傾(垂直を基準に前傾)姿勢で起立している。引起縦伝動ケース76の中間部には、後述する左穂部搬送機構60Lを支持する左搬送駆動ケース(図示せず)が接続されている。横伝動ケース73の右端部には、上下方向に沿って延在した縦連結フレーム77(図2参照)が接続されている。引起横伝動ケース78は、左右方向に沿って延在し、引起縦伝動ケース76の上端部と縦連結フレーム77の上端部との間に架け渡されている。
引起横伝動ケース78には、引起駆動ケース79が連結されている。引起駆動ケース79は、五条分となる五本の管状部材により構成され、それらが左右方向に間隔を設けて並べられている。引起横伝動ケース78には、各引起駆動ケース79を構成する管状部材の上端部が接続されている。各引起ケース36は、引起駆動ケース79と分草フレーム74とによって支持されている。
横伝動ケース73の中間部には、中搬送駆動ケース80が接続されている。中搬送駆動ケース80は、その上端部が下端部よりも前方に位置するように水平を基準に後傾(垂直を基準に前傾)姿勢で起立している。中搬送駆動ケース80の軸線方向は、鉛直方向に対して引起縦伝動ケース76よりも大きく傾いている。中搬送駆動ケース80は、分草フレーム74に接続された支持フレーム84と共に、下部搬送装置61(を構成する一つの搬送機構)を下方から支持している。中搬送駆動ケース80の上方には、中央穂部搬送機構60Cに接続された上部搬送駆動ケース85が設けられている。
刈取フレーム70は、前後方向に延在した上部センターフレーム86を含む。上部センターフレーム86の後端部は、刈取入力ケース71の中間部に接続されている。上部センターフレーム86の前端部は、引起横伝動ケース78の中間部に接続されている。上部センターフレーム86は、搬送装置35及び縦伝動ケース72の上方に配置されている。
刈取入力ケース71には、刈取入力軸71aが収容されている。刈取入力軸71aの左端部には、エンジン21の動力が入力される入力プーリ87が固定されている。また、刈取入力軸71aには、縦伝動ケース72に収容された縦伝動軸(図示せず)の上端部が連動連結されている。これらの他にも、刈取フレーム70を構成する各ケース及びパイプには、動力伝達機構を構成する軸やギヤが収容されている。詳細は省略するが、引起装置32、掻込装置33、切断装置34及び搬送装置35には、その動力伝達機構を介して刈取入力軸71aから取り出された動力が伝達される。
[上部搬送装置]
次に、上部搬送装置60の構成について説明する。図4に示すように、上部搬送装置60は、機体の右側に位置する右穂部搬送機構60Rと、中央に位置する中央穂部搬送機構60Cと、左側に位置する左穂部搬送機構60Lとを含む。上述のように、これらの搬送機構は刈取フレーム70に支持されている。また、これらの搬送機構は、複数のタイン64が形成されたチェーンを回転駆動可能に支持している。図面では簡略的に記載しているが、実際には多数のタイン64が所定のピッチで配列されている。本実施形態では、右側二条分の穀稈の穂部が右穂部搬送機構60Rにより搬送され、中央一条分の穀稈の穂部が中央穂部搬送機構60Cにより搬送され、左側二条分の穀稈の穂部が左穂部搬送機構60Lにより搬送される。
上部搬送装置60は、右穂部搬送機構60R、中央穂部搬送機構60C及び左穂部搬送機構60Lにより搬送される穀稈の穂部を合流させながら搬送する。右穂部搬送機構60Rの中途部には、中央穂部搬送機構60Cの搬送経路の終端部に相対する中間合流部Y1と、左穂部搬送機構60Lの搬送経路の終端部に相対する最終合流部Y2とが設けられている。中間合流部Y1では、右穂部搬送機構60Rが搬送する二条分の穀稈の穂部に、中央穂部搬送機構60Cにより搬送された一条分の穀稈の穂部が合流する。最終合流部Y2では、右穂部搬送機構60Rが搬送する三条分の穀稈の穂部に、左穂部搬送機構60Lにより搬送された二条分の穀稈の穂部が合流する。
上部搬送装置60は、刈り取り後に合流された複数条(本実施形態では五条)の穀稈の穂部を一括に搬送し、刈取部3の後方に位置する脱穀部4に送り込む。穂部ガイド50は、その上部搬送装置60から脱穀部4へ搬送される穀稈の穂部をガイドする。穂部ガイド50は、左穂部搬送機構60Lにより支持されている。上部搬送装置60の右穂部搬送機構60Rと穂部ガイド50との間には、上部搬送装置60から脱穀部4に搬送される穀稈が流通可能な間隙Gが設けられている。即ち、間隙Gは、上部搬送装置60から脱穀部4へ搬送される穀稈の通路となる。間隙Gは、後方に向かって左斜め上方に傾斜して延びている。
ところで、穀稈の刈取量(藁厚)が多くなると、間隙Gにおいて穂部が円滑に搬送されず、穂部の搬送不良による詰まりを発生する場合がある。特に最終合流部Y2では、左穂部搬送機構60Lにより搬送された穀稈が角度を大きく変えて間隙G内に送り込まれるため、穂部が滞留しやすい。これに対し、間隙Gを過度に大きく設けておくと、刈取量が通常かそれ以下である場合に、タイン64が一部の穀稈に作用せず、穂部が適切に搬送されない恐れがある。そこで、このコンバイン1では、間隙Gの大きさが調整可能に構成されている。これにより、作物の品種や刈取量に応じて、例えば酒米や飼料用米など穂部のボリュームが大きい作物を刈り取る場合には、脱穀部4に搬送される穀稈の通路の幅を変えて、穂部の搬送不良による詰まりの発生を防止することができる。
間隙Gの大きさは、上部搬送装置60の右穂部搬送機構60Rに対する穂部ガイド50の相対位置を変更することで調整される。穂部ガイド50は、それに取り付けられた取付具の操作により、例えば取付具としてのボルト54b,55bを緩める(または取り外す)という操作により、右穂部搬送機構60Rに対する相対位置を変更できるように構成されている。間隙Gの大きさを調整するうえでは、必ずしも穂部ガイド50を全体的に移動させる必要はないため、本実施形態では、穂部ガイド50を部分的に移動させる(具体的には、後述する挟扼ガイド51とガイド板52の一部を移動させる)ことで、間隙Gの大きさを調整できるように構成されている。
穂部ガイド50は、上部搬送装置60の右穂部搬送機構60Rと協働して穀稈を挟持する挟扼ガイド51を有する。そして、右穂部搬送機構60Rに対する挟扼ガイド51の相対位置を変更することで、間隙Gの大きさを調整可能に構成されている。挟扼ガイド51は、X方向(図4~図8参照)に沿って変位自在に構成されている。X方向は、脱穀部4に搬送される穀稈の通路の幅を変更できる方向であり、本実施形態では左前方斜め方向である。図4では、挟扼ガイド51が右穂部搬送機構60Rに最も近付いており、間隙Gの大きさが最小である。図5では、挟扼ガイド51が右穂部搬送機構60Rから最も離れており、間隙Gの大きさが最大である。間隙Gは、これらの間の大きさに設定することも可能である。本実施形態では、脱穀部4に搬送される穀稈の通路が途中で屈曲しており、その前半部分は後方に向かって左側へ傾斜して延びるのに対し、後半部分は後方に向かって略真っ直ぐに延びている。このため、挟扼ガイド51を前方に変位させたのでは、通路の後半部分で幅が広がらず、挟扼ガイド51を真横に変位させたのでは、通路の前半部分(特に合流部Y2の近傍)で幅が広がり過ぎる恐れがある。そこで、穀稈の通路を全体的に且つ均一に広げるために、挟扼ガイド51を左前方斜め方向(X方向)に変位できるようにしている。
図6,7に示すように、挟扼ガイド51は、穀稈の相対的に穂先側をガイドする上部挟扼ガイド51uと、穀稈の相対的に株元側をガイドする下部挟扼ガイド51dとを含む。上部挟扼ガイド51uは、下部挟扼ガイド51dの上方に配置されている。本実施形態では、上部挟扼ガイド51uが、下部挟扼ガイド51dとは独立して、右穂部搬送機構60Rに対する相対位置を変更可能に構成されている。上部挟扼ガイド51u及び下部挟扼ガイド51dは、いずれも断面円形の棒状部材によって形成されている。また、上部挟扼ガイド51u及び下部挟扼ガイド51dは、それぞれ穀稈の搬送経路に沿って最終合流部Y2から後方に延在している。
上部挟扼ガイド51u及び下部挟扼ガイド51dには、それぞれ溶接などで固定されたステー53u,53dが設けられている。ステー53u,53dは、いずれも板状部材により形成されている。ステー53dは、基端部と先端部とで高さを変化させるように屈曲している。ステー53dの先端部は、ステー53uの先端部の下方に重ねて配置され、それらがボルト54bで締結されている。ボルト54bは、ステー53uに形成された長孔54hに挿通されている。長孔54hは、X方向に沿って長い楕円形に形成されている。
穂部ガイド50は、上部挟扼ガイド51uの前端部、下部挟扼ガイド51dの前端部、並びに、後述するガイド板52の前部及び中央部の四箇所で、上部搬送装置60を構成する左穂部搬送機構60Lに取り付けられている。上部挟扼ガイド51uの前端部は、プレート55pに対して溶接などで固定されている。プレート55pは、左穂部搬送機構60Lに固定されたブラケット50aに重ねて配置され、それらがボルト55bで締結されている。ボルト55bは、ブラケット50aに形成された長孔55hに挿通されている。長孔55hは、X方向に沿って長い楕円形に形成されている。
ボルト54b,55bを緩めると、それらが長孔54h,55hに沿って動く状態となり、上部挟扼ガイド51uをX方向に沿って移動させることができる。これにより、右穂部搬送機構60Rに対する上部挟扼ガイド51uの相対位置を変更し、間隙Gの大きさを調整できる。間隙Gの大きさを調整した後は、ボルト54b,55bを締め付けて上部挟扼ガイド51uの位置を固定する。図6,7では隠れているが、下部挟扼ガイド51dの前端部は、左穂部搬送機構60Lの下面に溶接などで固定されており、右穂部搬送機構60Rに対する下部挟扼ガイド51dの相対位置は固定されている。
挟扼ガイド51が、上下に並設された複数の(本実施形態では二本の)ガイドを含む場合には、少なくとも最も上方に位置するガイド(本実施形態では上部挟扼ガイド51u)について、右穂部搬送機構60Rに対する相対位置を変更可能に構成されていることが好ましい。穀稈の穂先側では、株元側に比べて、品種や刈取量に応じてボリュームが大きく変化しうるためである。挟扼ガイド51が三本以上のガイドを含む場合も同様であり、最も下方に位置するガイドや、中間に位置するガイドについては、右穂部搬送機構60Rに対する相対位置が固定されていてもよい。
本実施形態では、右穂部搬送機構60Rに対する下部挟扼ガイド51dの相対位置が固定されているが、これに限られず、例えば図8のような構造でもよい。図8では、下部挟扼ガイド51dの前端部がプレート56pに固定され、プレート56pはボルト56bを介して左穂部搬送機構60Lに取り付けられている。ボルト56bは、プレート56pに形成された長孔56hに挿通されている。長孔56hは、X方向に沿って長い楕円形に形成されている。ボルト55b,56bを緩めることにより、上部挟扼ガイド51uと同様に、右穂部搬送機構60Rに対する下部挟扼ガイド51dの相対位置を変更できる。これに限られず、上部挟扼ガイド51uと下部挟扼ガイド51dとが一体的に動くようにしてもよい。
図8のように、上部挟扼ガイド51uと下部挟扼ガイド51dの双方が、互いに独立して、右穂部搬送機構60Rに対する相対位置を変更できる構成では、ボリュームが大きく変化しがちな穂先側の間隙と、ボリュームの変化が小さい株元側の間隙とを別個に調整できる。それ故、状況に応じた細かい調整が可能となり、穂部の搬送能力が高められる。但し、穂先側の間隙を株元側の間隙よりも小さくすると、穂部が適切に搬送されない恐れがあるため、そのような設定を防止することが望まれる。例えば、上部挟扼ガイド51uと下部挟扼ガイド51dの位置をポテンショメータで検出し、それらが上記の如き不都合な位置関係にあるときには、刈取部3への動力伝達を入り切りする刈取クラッチが接続されないように構成することが考えられる。或いは、上部挟扼ガイド51uと下部挟扼ガイド51dとを連結部材58で連結し、下部挟扼ガイド51dを移動させると上部挟扼ガイド51uも併せて移動する構造としつつ、上部挟扼ガイド51uを下部挟扼ガイド51dに対して移動可能に構成してもよい。この場合、例えば、上部挟扼ガイド51uの前端側の移動可能距離(長孔55hのX方向の長さ)を、下部挟扼ガイド51dの前端側の移動可能距離(長孔56hのX方向の長さ)と、上部挟扼ガイド51uの後端部の移動距離(長孔54hのX方向の長さ)とを合計した距離にすることが考えられる。また、後述する長孔57hの長さは、長孔55hと同じ長さにすることが考えられる。
穂部ガイド50は、穀稈の起立姿勢を維持させるように穂部をガイドするガイド板52を有する。そして、右穂部搬送機構60Rに対するガイド板52の相対位置を変更することで、間隙Gの大きさを調整可能に構成されている。ガイド板52は、多面形状の板状部材により形成されている。ガイド板52は、左端に位置する引起ケース36(図2参照)の後部から後方に向けて延設されている。ガイド板52の前部及び中央部は、それぞれブラケット50b,50cを介して左穂部搬送機構60Lに支持固定されている。ガイド板52の後部は、ブラケット50dを介して上部挟扼ガイド51uに支持固定されている。
ガイド板52は、第1ガイド板52aと、その第1ガイド板52aの前方に配置された第2ガイド板52bとを含む。本実施形態では、第1ガイド板52aが、第2ガイド板52bとは独立して、上部搬送装置60の右穂部搬送機構60Rに対する相対位置を変更可能に構成されている。ブラケット50b,50cは、いずれも第2ガイド板52bに取り付けられている。第2ガイド板52bは、左穂部搬送機構60Lに支持固定されており、右穂部搬送機構60Rに対する相対位置が固定されている。ブラケット50dは、第1ガイド板52aに取り付けられている。第1ガイド板52aは、挟扼ガイド51に支持固定されており、右穂部搬送機構60Rに対する相対位置を変更可能に構成されている。
第1ガイド板52aの前端部は、第2ガイド板52bの後端部に重ねて配置され、それらが複数のボルト57bで締結されている。穂部が引っ掛からないように、第1ガイド板52aの前端部は第2ガイド板52bの後端部の下方に配置されている。各ボルト57bは、第1ガイド板52aに形成された長孔57hに挿通されている。各長孔57hは、X方向に沿って長い楕円形に形成されている。上部挟扼ガイド51uを移動させる際には、各ボルト57bを緩めて、それらが長孔57hに沿って動く状態にすることで、第1ガイド板52aも一緒に移動させることができる。
このように、本実施形態では、ガイド板52に関して、第2ガイド板52bを移動させずに第1ガイド板52aだけを移動させることで、間隙Gの大きさを調整できる。ガイド板52を全体的に移動させる場合に比べると、移動させる部材が小さく且つ軽量になるため、オペレータの作業負担を軽減できる。また、右穂部搬送機構60Rに対する第2ガイド板52の相対位置が固定されているため、間隙Gの大きさを調整した際に、第2ガイド板52の前方に位置する引起ケース36との隙間が余計に設けられることがなく、穀稈の引っ掛かりを防止することができる。
本実施形態では、ガイド板52の少なくとも一部が、挟扼ガイド51の少なくとも一部と一体的に、右穂部搬送機構60Rに対する相対位置を変更可能に構成されている。具体的には、ガイド板52の第1ガイド板52aが、挟扼ガイド51の上部挟扼ガイド51uと一体的に、右穂部搬送機構60Rに対する相対位置を変更可能に構成されている。図6,7の例では、ボルト54b,55b及びボルト57bの各々を緩めることで、右穂部搬送機構60Rに対する上部挟扼ガイド51u及び第1ガイド板52aの相対位置を変更できる。これにより、挟扼ガイド51及びガイド板52の双方を一度の操作で移動できるため、間隙Gの大きさをより簡単に調整できる。
本実施形態では、X方向に沿って長く形成された長孔54hにボルト54bが挿通されている例を示した。これにより、上部挟扼ガイド51uを移動させる際にはボルト54bを緩めるだけでよく、作業性に優れる。但し、これに限られず、例えば、独立した複数の丸穴をX方向に並べて形成し、それらの何れかにボルト54bを挿通する構成にしてもよい。上部挟扼ガイド51uを移動させる際には、ボルト54bを丸穴から一旦取り外し、別の丸穴に挿入することになる。ボルト55b、ボルト56b(図8参照)及びボルト57bの挿通についても、これと同様である。
本実施形態では、間隙Gの大きさを調整する際に、オペレータがボルト54b,55b及びボルト57bの各々を緩める等の作業を行う例を示したが、ガイド板52の第1ガイド板52aが電動モータ等の専用駆動源により、上部搬送装置60に対する相対位置を変更可能に構成されていてもよい。この場合、オペレータは操縦部9に設けられた所定の操作具(不図示)を操作することにより、上部搬送装置60に対する上部挟扼ガイド51u及び第1ガイド板52aの相対位置を変更できる。操作具としては、例えば、ダイヤル式操作具やタッチパネル式操作具等が設けられ、穀物の種類や、藁量の多寡に応じて所望の項目を選択することで操縦部9にいながら間隙Gの隙間を調整することができる。また、藁量の多寡は最終合流部Y2等に設けた藁量検出センサで検出することとしてもよく、藁量に応じて自動的に専用駆動源が制御されて間隙Gの隙間を調整することとしてもよい。
[掻込装置]
次に、図9,10を参照しながら、掻込装置33の構成について簡単に説明する。既述の通り、本実施形態では、掻込装置33が、五条分となる五つの掻込機構40を有する。以降の説明では、これらを掻込機構40a~40eと個別的に称しつつ、これらを掻込機構40と総称する。本実施形態では、右側二条分の穀稈の株元が掻込機構40a,40bによって掻き込まれ、中央一条分の穀稈の株元が掻込機構40cによって掻き込まれ、左側二条分の穀稈の株元が掻込機構40d,40eによって掻き込まれる。矢印Rは、それぞれの回転軸41の回転方向を示す。
図10のように、掻込機構40dは、回転軸41と、星形状の掻込ホイール42と、大径プーリ43と、小径プーリ44と、掻込ベルト45とを有する。回転軸41は、その上端部が下端部よりも前方に位置するように水平を基準に後傾(垂直を基準に前傾)している。掻込ホイール42は、回転軸41を中心として回転可能に回転軸41の下端部に固定されている。大径プーリ43は、回転軸41を中心として回転可能に回転軸41の上端部に固定されている。小径プーリ44は、大径プーリ43の前方に配置されている。掻込ベルト45は、大径プーリ43と小径プーリ44とに巻回されている。掻込ベルト45の外周には、複数のタイン45tが形成されている。他の掻込機構40a~40c,40eも、これと同様の構成を有する。
右端の掻込機構40a、中央の掻込機構40c及び左端の掻込機構40eの回転軸41の中途部には、それぞれ従動スプロケット46が設けられている。各従動スプロケット46には、それぞれ搬送チェーン47a,47c,47eが巻回されており、それらは駆動スプロケット48a,48c,48eによって駆動される。駆動スプロケット48a,48cには、上記縦伝動軸から取り出した動力が伝達される。駆動スプロケット48eには、引起縦伝動ケース76に収容された伝動軸から取り出した動力が伝達される。搬送チェーン47a,47c,47eを駆動することにより、掻込機構40a,40c及び掻込機構40eの回転軸41が回転する。
右端に位置する掻込機構40aの掻込ホイール42は、その隣に位置する掻込機構40bの掻込ホイール42に噛み合わされている。よって、図9において掻込機構40aの回転軸41が反時計回りに回転することで、掻込機構40bの回転軸41が時計回りに回転する。また、左端に位置する掻込機構40eの掻込ホイール42は、その隣に位置する掻込機構40dの掻込ホイール42に噛み合わされている。よって、図9において掻込機構40eの回転軸41が時計回りに回転することで、掻込機構40dの回転軸41が反時計回りに回転する。これらの回転軸41の回転によって掻込ベルト45が回転し、穀稈が後上方に掻き込まれる。
掻込ベルト45によって穀稈を掻き込む際には、作物に接触したタイン45tが大径プーリ43と小径プーリ44との間で内側に折り畳まれるように変形することがあり、その状態のまま大径プーリ43に侵入すると、掻込ベルト45が損傷したり、タイン45tが破損したりする恐れがある。そこで、掻込機構40dでは、そのような不都合を防ぐためにガイド棒90を設けている。これによれば、タイン45tが内側に折り畳まれるように変形しても、ガイド棒90によってガイドされながら復元するため、変形した状態で大径プーリ43に侵入することを防止できる。
ガイド棒90は片持ち支持されており、前方に位置する基端部から後方に位置する先端部に亘って円弧状に延びている。ガイド棒90は、後方に向かって回転方向R(掻込機構40dでは上方から見て反時計回り方向)に沿って湾曲している。ガイド棒90の基端部は、掻込ベルト45を覆うベルトカバー49の下方に配置され、そのベルトカバー49の下方に取り付けられたベルトカバー座49sに溶接などで固定されている。ガイド棒90の先端部は、大径プーリ43に侵入しようとするタイン45tの下方に配置されている。ガイド棒90は、断面円形状の丸棒で形成されているため、ガイド棒90に対して掻込ベルト45が何れの方向から接触しても、掻込ベルト45を傷付けない。
ガイド棒90は、掻込機構40dだけでなく、掻込機構40bにも同様に設けられている。本実施形態では、掻込機構40b及び掻込機構40dにガイド棒90が設けられているが、必要に応じて、他の掻込機構40a,40c,40eにもガイド棒90を設けることが可能である。
本実施形態では、刈取部が五条刈用に構成されている例を示したが、これに限られない。したがって、本発明に係るコンバインは、例えば四条刈用または六条刈用に構成されていてもよい。
本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。