JP7060012B2 - ヒ化ガリウム結晶基板 - Google Patents

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Description

本発明は、ヒ化ガリウム結晶基板に関する。
結晶品質の高いヒ化ガリウム結晶として、特開2008-239480号公報(特許文献1)は、ヒ化ガリウムからなる半導体結晶であって、直径が6インチ以上であり、平均転位密度が1×104cm-2以下である半導体結晶を開示し、好ましくはさらに光弾性法で測定した平均残留歪みが1×10-5以下である半導体結晶を開示する。また、W.A.Gault et al.,"The Growth of High Quality III-V Crystal by the Vertical Gradient Freeze Method",Defect Control in Semiconductors,1990,pp.653-660(非特許文献1)は、VGF(垂直温度傾斜凝固)法による高品質のヒ化ガリウムの成長方法を開示する。また、M.Yamada,"High-sensitivity computer-controlled infrared polariscope",Review of Scientific Instruments,Vol.64,No.7,July 1993,pp.1815-1821(非特許文献2)は、コンピュータ制御された高感度赤外偏光器を用いて、LEC法により成長させた市販の半絶縁性ヒ化ガリウム(111)ウエハの残留歪みにより生じる小さな位相差および主軸の複屈折を測定する方法を開示する。
特開2008-239480号公報
W.A.Gault et al.,"The Growth of High Quality III-V Crystal by the Vertical Gradient Freeze Method",Defect Control in Semiconductors,1990,pp.653-660 M.Yamada,"High-sensitivity computer-controlled infrared polariscope",Review of Scientific Instruments,Vol.64,No.7,July 1993,pp.1815-1821
本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板は、主面の直径が150mm以上205mm以下で厚さが300μm以上800μm以下である。上記ヒ化ガリウム結晶基板の外縁の一部にフラット部およびノッチ部のいずれかを含む。上記ヒ化ガリウム結晶基板は、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のケイ素原子および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度の炭素原子のいずれかを含む。上記フラット部から上記主面内で上記フラット部を示す直線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の第1フラット部領域および上記ノッチ部から上記主面内で上記ノッチ部を示す曲線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、上記ヒ化ガリウム結晶基板が上記ケイ素原子を含む場合は、平均転位密度が0cm-2以上15000cm-2以下であり、上記ヒ化ガリウム結晶基板が上記炭素原子を含む場合は、平均転位密度が3000cm-2以上20000cm-2以下である。
本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板は、主面の直径が150mm以上205mm以下で厚さが300μm以上800μm以下である。上記ヒ化ガリウム結晶基板の外縁の一部にフラット部およびノッチ部のいずれかを含む。上記ヒ化ガリウム結晶基板は、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のケイ素原子および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度の炭素原子のいずれかを含む。上記フラット部から上記主面内で上記フラット部を示す直線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の第1フラット部領域および上記ノッチ部から上記主面内で上記ノッチ部を示す曲線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下である。
本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板は、主面の直径が150mm以上205mm以下で厚さが300μm以上800μm以下である。上記ヒ化ガリウム結晶基板の外縁の一部にフラット部およびノッチ部のいずれかを含む。上記ヒ化ガリウム結晶基板は、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のケイ素原子および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度の炭素原子のいずれかを含む。上記フラット部から上記主面内で上記フラット部を示す直線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅の第2フラット部領域および上記ノッチ部から上記主面内で上記ノッチ部を示す曲線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅の第2ノッチ部領域のいずれかにおいて、上記ヒ化ガリウム結晶基板が上記ケイ素原子を含む場合は、平均転位密度が0cm-2以上15000cm-2以下であり、上記ヒ化ガリウム結晶基板が上記炭素原子を含む場合は、平均転位密度が3000cm-2以上20000cm-2以下である。
本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板は、主面の直径が150mm以上205mm以下で厚さが300μm以上800μm以下である。上記ヒ化ガリウム結晶基板の外縁の一部にフラット部およびノッチ部のいずれかを含む。上記ヒ化ガリウム結晶基板は、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のケイ素原子および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度の炭素原子のいずれかを含む。上記フラット部から上記主面内で上記フラット部を示す直線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅の第2フラット部領域および上記ノッチ部から上記主面内で上記ノッチ部を示す曲線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅の第2ノッチ部領域のいずれかにおいて、平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下である。
図1Aは、本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板において、フラット部が形成される外縁の一部の場所の一例を示す概略平面図である。 図1Bは、本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板において、フラット部ならびに第1および第2フラット部領域の一例を示す概略拡大平面図である。 図2Aは、本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板において、ノッチ部が形成される外縁の一部の場所の一例を示す概略平面図である。 図2Bは、本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板において、ノッチ部ならびに第1および第2ノッチ部領域を示す概略拡大平面図である。 図3Aは、本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板の平均転位密度の測定部分の一例を示す概略拡大断面図である。 図3Bは、本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板の平均転位密度の測定部分の別の一例を示す概略拡大断面図である。 図4は、本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板の平均残留歪みの測定部分の一例を示す概略拡大断面図である。 図5Aは、本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板の製造方法の一例を示す製造装置内部の垂直方向の概略断面図である。 図5Bは、本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板の製造方法の一例を示す断熱材および坩堝の内部の水平方向の概略断面図である。 図6Aは、本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板の製造方法の別の一例を示す製造装置内部の垂直方向の概略断面図である。 図6Bは、本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板の製造方法の別の一例を示す断熱材および坩堝の内部の水平方向の概略断面図である。 図7Aは、本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板の製造方法のまた別の一例を示す製造装置内部の垂直方向の概略断面図である。 図7Bは、本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板の製造方法のまた別の一例を示す坩堝の内部の水平方向の概略断面図である。 図8は、本発明の一態様にかかるヒ化ガリウム結晶基板の製造方法のさらに別の一例を示す概略平面図である。
[本開示が解決しようとする課題]
特開2008-239480号公報(特許文献1)に開示のヒ化ガリウムからなる半導体結晶、W.A.Gault et al.,"The Growth of High Quality III-V Crystal by the Vertical Gradient Freeze Method",Defect Control in Semiconductors,1990,pp.653-660(非特許文献1)に開示のヒ化ガリウム、およびM.Yamada,"High-sensitivity computer-controlled infrared polariscope",Review of Scientific Instruments,Vol.64,No.7,July 1993,pp.1815-1821(非特許文献2)に開示の半絶縁性ヒ化ガリウム(111)ウエハは、いずれも、外縁の一部にフラット部およびノッチ部のいずれかを含む基板の製造時(フラット部/ノッチ部付基板製造時)および/または外縁の一部にフラット部およびノッチ部のいずれかを有する基板上でのエピタキシャル層成長時(フラット部/ノッチ部付基板上でのエピタキシャル層成長時)に、フラット部およびその近傍あるいはノッチ部およびその近傍において、割れによる不良率(割れ不良率)が高くなるという問題がある。
ここで、上記の特開2008-239480号公報(特許文献1)、"The Growth of High Quality III-V Crystal by the Vertical Gradient Freeze Method",Defect Control in Semiconductors,1990,pp.653-660(非特許文献1)、およびM.Yamada,"High-sensitivity computer-controlled infrared polariscope",Review of Scientific Instruments,Vol.64,No.7,July 1993,pp.1815-1821(非特許文献2)においては、ヒ化ガリウムの結晶またはウエハ全体における平均転位密度または平均残留歪みを規定しているが、フラット部およびその近傍あるいはノッチ部およびその近傍における平均転位密度または平均残留歪みについては検討されていない。
そこで、フラット部/ノッチ部付基板製造時およびフラット部/ノッチ部付基板上でのエピタキシャル層成長時に、フラット部およびその近傍あるいはノッチ部およびその近傍において、割れによる不良率(割れ不良率)が低いヒ化ガリウム結晶基板を提供することを目的とする。
[本開示の効果]
本開示によれば、フラット部/ノッチ部付基板製造時およびフラット部/ノッチ部付基板上でのエピタキシャル層成長時に、フラット部およびその近傍あるいはノッチ部およびその近傍において、割れによる不良率(割れ不良率)が低いヒ化ガリウム結晶基板を提供できる。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。ここで、複数のフラット部領域およびノッチ部領域をそれぞれ明確に区別するために、第1フラット部領域および第1ノッチ部領域、あるいは第2フラット部領域および第2ノッチ部領域と表記する。
[1]本発明の一態様にかかるGaAs(ヒ化ガリウム)結晶基板は、主面の直径が150mm以上205mm以下で厚さが300μm以上800μm以下である。上記GaAs結晶基板の外縁の一部にフラット部およびノッチ部のいずれかを含む。上記GaAs結晶基板は、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のSi(ケイ素)原子および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度のC(炭素)原子のいずれかを含む。上記フラット部から上記主面内で上記フラット部を示す直線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の第1フラット部領域および上記ノッチ部から上記主面内で上記ノッチ部を示す曲線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、上記GaAs結晶基板が上記Si素原子を含む場合は、平均転位密度が0cm-2以上15000cm-2以下であり、上記GaAs結晶基板が上記C原子を含む場合は、平均転位密度が3000cm-2以上20000cm-2以下である。本態様のGaAs結晶基板は、第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のいずれかにおける平均転位密度が所定の範囲内にあるため、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率が低い。
[2]本発明の一態様にかかるGaAs結晶基板は、主面の直径が150mm以上205mm以下で厚さが300μm以上800μm以下である。上記GaAs結晶基板の外縁の一部にフラット部およびノッチ部のいずれかを含む。上記GaAs結晶基板は、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のSi原子および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度のC原子のいずれかを含む。上記フラット部から上記主面内で上記フラット部を示す直線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の第1フラット部領域および上記ノッチ部から上記主面内で上記ノッチ部を示す曲線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下である。本態様のGaAs結晶基板は、第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のいずれかにおける平均残留歪みが所定の範囲内にあるため、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率が低い。
[3]本発明の一態様にかかるGaAs結晶基板は、主面の直径が150mm以上205mm以下で厚さが300μm以上800μm以下である。上記GaAs結晶基板の外縁の一部にフラット部およびノッチ部のいずれかを含む。上記GaAs結晶基板は、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のSi原子および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度のC原子のいずれかを含む。上記フラット部から上記主面内で上記フラット部を示す直線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の第1フラット部領域および上記ノッチ部から上記主面内で上記ノッチ部を示す曲線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、上記GaAs結晶基板が上記Si原子を含む場合は、平均転位密度を0cm-2以上15000cm-2以下としかつ平均残留歪みを2×10-6以上1×10-4以下とすることができ、上記GaAs結晶基板が上記C原子を含む場合は、平均転位密度を3000cm-2以上20000cm-2以下としかつ平均残留歪みを2×10-6以上1×10-4以下とすることができる。本態様のGaAs結晶基板は、第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のいずれかにおける平均転位密度および平均残留歪みがそれぞれ所定の範囲内にあるため、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率がさらに低い。
[4]本発明の一態様にかかるGaAs結晶基板は、主面の直径が150mm以上205mm以下で厚さが300μm以上800μm以下である。上記GaAs結晶基板の外縁の一部にフラット部およびノッチ部のいずれかを含む。上記GaAs結晶基板は、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のSi(ケイ素)原子および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度のC(炭素)原子のいずれかを含む。上記フラット部から上記主面内で上記フラット部を示す直線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅の第2フラット部領域および上記ノッチ部から上記主面内で上記ノッチ部を示す曲線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅の第2ノッチ部領域のいずれかにおいて、上記GaAs結晶基板が上記Si原子を含む場合は、平均転位密度が0cm-2以上15000cm-2以下であり、上記GaAs結晶基板が上記C原子を含む場合は、平均転位密度が3000cm-2以上20000cm-2以下である。本態様のGaAs結晶基板は、第2フラット部領域および第2ノッチ部領域のいずれかにおける平均転位密度が所定の範囲内にあり、第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のいずれかにおいてその外周部近傍に位置する一部領域の平均転位密度を一定範囲内に制御できるため、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率が低い。
[5]本発明の一態様にかかるGaAs結晶基板は、主面の直径が150mm以上205mm以下で厚さが300μm以上800μm以下である。上記GaAs結晶基板の外縁の一部にフラット部およびノッチ部のいずれかを含む。上記GaAs結晶基板は、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のSi原子および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度のC原子のいずれかを含む。上記フラット部から上記主面内で上記フラット部を示す直線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅の第2フラット部領域および上記ノッチ部から上記主面内で上記ノッチ部を示す曲線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅の第2ノッチ部領域のいずれかにおいて、平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下である。本態様のGaAs結晶基板は、第2フラット部領域および第2ノッチ部領域のいずれかにおける平均残留歪みが所定の範囲内にあり、第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のいずれかにおいてその外周部近傍に位置する一部領域の平均残留歪みを一定範囲内に制御できるため、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率が低い。
[6]本発明の一態様にかかるGaAs結晶基板は、主面の直径が150mm以上205mm以下で厚さが300μm以上800μm以下である。上記GaAs結晶基板の外縁の一部にフラット部およびノッチ部のいずれかを含む。上記GaAs結晶基板は、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のSi原子および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度のC原子のいずれかを含む。上記フラット部から上記主面内で上記フラット部を示す直線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅の第2フラット部領域および上記ノッチ部から上記主面内で上記ノッチ部を示す曲線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅の第2ノッチ部領域のいずれかにおいて、上記GaAs結晶基板が上記Si原子を含む場合は、平均転位密度を0cm-2以上15000cm-2以下としかつ平均残留歪みを2×10-6以上1×10-4以下とすることができ、上記GaAs結晶基板が上記C原子を含む場合は、平均転位密度を3000cm-2以上20000cm-2以下としかつ平均残留歪みを2×10-6以上1×10-4以下とすることができる。本態様のGaAs結晶基板は、第2フラット部領域および第2ノッチ部領域のいずれかにおける平均転位密度および平均残留歪みがそれぞれ所定の範囲内にあるため、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率がさらに低い。
[本発明の実施形態の詳細]
<GaAs結晶基板>
図1A、図1B、図2Aおよび図2Bは、本実施形態のGaAs結晶基板11の例を示す。図1Aは、フラット部11fが形成されるGaAs結晶基板11の外縁の一部の場所を示す概略平面図である。図1Bは、フラット部11fならびに第1および第2フラット部領域11frを示す概略拡大平面図である。フラット部11fとは、結晶体および結晶基板の結晶方位の判別、表裏判別およびプロセス上の位置合わせなどを容易にするために、結晶体および結晶基板の外縁(外周)の一部に形成されたフラットな面をいう。フラット部付のGaAs結晶基板11において、フラット部11fは、1以上形成され、通常は2つ形成され、オリエンテーションフラット(以下、OFともいう)およびアイデンテフィケーションフラット(以下、IFともいう)とも呼ばれる。GaAs結晶基板11において、主面の面方位、振り方向、振り角度、およびフラット部(OF/IF)の位置は、顧客の要求に応じて定められる。たとえば、主面の面方位は(100)、振り方向は8方向、振り角度は0°以上20°以下、OF/IF位置は時計回り(以下、CWともいう。OFに対してIFが時計回りの位置に配置。)と反時計回り(以下、CCWともいう。OFに対してIFが反時計回りの位置に配置。)の2種類、OF長さは40mm以上65mm以下、IF長さは20mm以上45mm以下と定められる。
図2Aは、ノッチ部11nが形成されるGaAs結晶基板11の外縁の一部の場所を示す概略平面図である。図2Bは、ノッチ部11nならびに第1および第2ノッチ部領域11nrを示す概略拡大平面図である。ノッチ部11nとは、結晶体および結晶基板の結晶方位の判別および整列などを容易にするために、結晶体および結晶基板の外縁(外周)の一部に形成された切欠き部分をいう。ノッチ部付のGaAs結晶基板11において、ノッチ部11nは、1以上形成され、通常は1つ形成される。GaAs結晶基板11において、主面の面方位、ノッチ形状、およびノッチの中心切欠き方向は、顧客の要求に応じて定められる。たとえば、主面の面方位は(100)、ノッチ形状は外縁から中心へ0.5mm以上1.5mm以下の部分を85°以上95°以下の開き角で削り取った形状、ノッチの中心切欠き方向は中心からみて[010]方向と定められる。
(実施形態I-1)
図1A、図1B、図2Aおよび図2Bを参照して、本実施形態のGaAs結晶基板11は、主面の直径が150mm以上205mm以下で厚さが300μm以上800μm以下である。GaAs結晶基板11は、その外縁の一部にフラット部11fおよびノッチ部11nのいずれかを含む。GaAs結晶基板11は、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のSi原子および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度のC原子のいずれかを含む。GaAs結晶基板11は、フラット部11fから主面内でフラット部11fを示す直線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅WRの第1フラット部領域11frおよびノッチ部11nから主面内でノッチ部11nを示す曲線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅WRの第1ノッチ部領域11nrのいずれかにおいて、GaAs結晶基板11が上記Si原子を含む場合は、平均転位密度が0cm-2以上15000cm-2以下であり、GaAs結晶基板11が上記C原子を含む場合は、平均転位密度が3000cm-2以上20000cm-2以下である。本実施形態のGaAs結晶基板11は、第1フラット部領域11frおよび第1ノッチ部領域11nrのいずれかにおける平均転位密度が所定の範囲内にあるため、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率が低い。
なお、本実施形態のGaAs結晶基板において、上記の「主面内でノッチ部を示す曲線に対して垂直」とは、主面内でノッチ部を示す曲線上の各々の点における接線に対して垂直であることを意味する。ここで、「曲線」とは、少なくとも一部が直線でない線を意味し、一部に直線を含んでいてもよい。また、割れ不良率は、GaAs結晶基板の直径、含まれる原子の種類(Si原子またはC原子)または濃度、あるいは基板製造時またはエピタキシャル層成長時の差異により変動するものであり、割れ不良率が低いとは、GaAs結晶基板の直径、含まれる原子の種類(Si原子またはC原子)および濃度、ならびに基板製造時またはエピタキシャル層成長時が同じ範囲内において相対的に割れ不良率が低いことを意味する。
本実施形態のGaAs結晶基板11は、主面の直径が150mm以上205mm以下で厚さが300μm以上800μm以下である。GaAs結晶基板11の直径は、大口径のGaAs結晶基板11においても上記割れ不良率を低減する観点から、150mm以上205mm以下である。GaAs結晶基板11の厚さは、上記割れ不良率を低減する観点から、300μm以上800μm以下である。
本実施形態のGaAs結晶基板11は、その外縁の一部にフラット部11f(図1Aおよび図1B)およびノッチ部11n(図Aおよび図2B)のいずれかを含む。GaAs結晶基板11のフラット部11fおよびその近傍あるいはノッチ部11nおよびその近傍においても割れを抑制することにより、上記割れ不良率を低減することができる。
本実施形態のGaAs結晶基板11は、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のSi原子および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度のC原子のいずれかを含む。GaAs結晶基板11は、含まれるSi原子およびC原子の濃度によって平均転位密度が変動するため、Si原子またはC原子の所定の濃度において第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のいずれかの平均転位密度を所定の範囲に調整することにより、上記割れ不良率を低減することができる。ここで、GaAs結晶基板11は、含まれるSi原子の濃度の増大とともに半導電性にn型導電性が付与され、Si原子の濃度が3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下においては、1.0×1016cm-3以上1.0×1019cm-3以下程度のキャリア濃度を有する。GaAs結晶基板11は、含まれるC原子濃度の増大とともに半導電性に絶縁性が付与され、C原子の濃度が1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下においては、1.0×107Ω・cm以上5.0×108Ω・cm以下程度の抵抗率を有する。
本実施形態のGaAs結晶基板11は、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率を低減する観点から、フラット部11fから主面内でフラット部11fを示す直線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅WRの第1フラット部領域11frおよびノッチ部11nから主面内でノッチ部11nを示す曲線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅WRの第1ノッチ部領域11nrのいずれかにおいて、GaAs結晶基板11が上記濃度のSi原子を含む場合は、平均転位密度が0cm-2以上15000cm-2以下であり、GaAs結晶基板が上記濃度のC原子を含む場合は、平均転位密度が3000cm-2以上20000cm-2以下である。
本実施形態のGaAs結晶基板11において、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率をさらに低減する観点から、フラット部11fから主面内でフラット部11fを示す直線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅WRの第2フラット部領域11frおよびノッチ部11nから主面内でノッチ部11nを示す曲線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅WRの第2ノッチ部領域11nrのいずれかにおいて、GaAs結晶基板11が上記濃度のSi原子を含む場合は、平均転位密度が0cm-2以上15000cm-2以下であることが好ましく、GaAs結晶基板が上記濃度のC原子を含む場合は、平均転位密度が3000cm-2以上20000cm-2以下であることが好ましい。
第2フラット部領域および第2ノッチ部領域は、第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のそれぞれのフラット部11fおよびノッチ部11nのそれぞれに近い部分領域である。第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のそれぞれの外周部側の一部である第2フラット部領域および第2ノッチ部領域の平均転位密度は、第1フラット部領域および第1ノッチ部領域の平均転位密度に比べてそれぞれ高くなる可能性がある。また、割れの起点は外周部のため、第2フラット部領域の平均転位密度の値が、割れ不良率により影響する。したがって、高い平均転位密度となる可能性がある第2フラット部領域および第2ノッチ部領域においても、平均転位密度が上記の範囲内にあるGaAs結晶基板は、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率がさらに低減する。
図3Aおよび図3Bは、本実施形態のGaAs結晶基板11の平均転位密度の測定部分の例を示す概略拡大断面図である。図3Aを参照して、GaAs結晶基板11の平均転位密度は、GaAs結晶基板11を500℃のKOH(水酸化カリウム)融液中に10分間浸漬した後に第1または第2フラット部領域11frあるいは第1または第2ノッチ部領域11nrの主面に形成されるエッチングピットの単位面積当たりの平均の数(エッチングピット平均密度)として顕微鏡を用いて測定する。しかしながら、第1または第2フラット部領域11frにおけるフラット部の面取り部分または第1または第2ノッチ部領域11nrにおけるノッチ部の面取り部分では、上記エッチングピットが見えない場合がある。この場合は、図3Bを参照して、第1または第2フラット部領域11frあるいは第1または第2ノッチ部領域11nrの主面を基板の中心部まで研削して露出した中心部の第1または第2フラット部領域11frcあるいは中心部の第1または第2ノッチ部領域11nrcを、上記と同様の条件処理することにより形成されるエッチングピット平均密度を測定する。
また、フラット部11fの長さLRについては、特に制限はないが、目視による視認性および機械による認識性を高めるとともにとチップを取る領域を確保する観点から、OF長さは40mm以上65mm以下およびIF長さは20mm以上45mm以下が好ましい。ここで、直径が6インチのGaAs結晶基板においては、OF長さは43mm以上53mm以下およびIF長さは25mm以上35mm以下がより好ましい。直径が8インチのGaAs結晶基板においては、OF長さは52mm以上63mm以下およびIF長さは32mm以上43mm以下がより好ましい。
また、ノッチ部11nについては、目視による視認性および機械による認識性を高めるとともにとチップを取る領域を確保する観点から、ノッチ形状は外縁から中心へ0.5mm以上1.5mm以下の部分を85°以上95°以下の開き角で削り取った形状が好ましく、外縁から中心へ1.00mm以上1.25mm以下の部分を89°以上95°以下の開き角で削り取った形状がより好ましく、ノッチの中心切欠き方向は中心からみて[010]方向が好ましい。
(実施形態I-2)
図1A、図1B、図2Aおよび図2Bを参照して、本実施形態のGaAs結晶基板11は、主面の直径が150mm以上205mm以下で厚さが300μm以上800μm以下である。GaAs結晶基板11は、その外縁の一部にフラット部11fおよびノッチ部11nのいずれかを含む。GaAs結晶基板11は、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のSi原子および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度のC原子のいずれかを含む。GaAs結晶基板11は、フラット部11fから主面内でフラット部11fを示す直線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅WRの第1フラット部領域11frおよびノッチ部11nから主面内でノッチ部11nを示す曲線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅WRの第1ノッチ部領域11nrのいずれかにおいて、平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下である。本実施形態のGaAs結晶基板11は、第1フラット部領域11frおよび第1ノッチ部領域11nrのいずれかにおける平均残留歪みが所定の範囲内にあるため、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率が低い。
なお、本実施形態のGaAs結晶基板において、上記の「主面内でノッチ部を示す曲線に対して垂直」とは、主面内でノッチ部を示す曲線上の各々の点における接線に対して垂直であることを意味する。ここで、「曲線」とは、少なくとも一部が直線でない線を意味し、一部に直線を含んでいてもよい。また、割れ不良率は、GaAs結晶基板の直径、含まれる原子の種類(Si原子またはC原子)または濃度、あるいは基板製造時またはエピタキシャル層成長時の差異により変動するものであり、割れ不良率が低いとは、GaAs結晶基板の直径、含まれる原子の種類(Si原子またはC原子)および濃度、ならびに基板製造時またはエピタキシャル層成長時が同じ範囲内において相対的に割れ不良率が低いことを意味する。
本実施形態のGaAs結晶基板11における150mm以上で205mm以下の直径、300μm以上800μm以下の厚さ、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のSi原子、および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度のC原子については、実施形態I-1のGaAs結晶基板11における150mm以上で205mm以下の直径、300μm以上800μm以下の厚さ、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のSi原子、および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度のC原子とそれぞれ同じであるため、ここでは、繰り返さない。GaAs結晶基板11は、含まれるSi原子およびC原子の濃度によって第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のいずれかの平均残留歪みが変動するため、Si原子またはC原子の所定の濃度において第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のいずれかの平均残留歪みを所定の範囲に調整することにより、上記割れ不良率を低減することができる。
本実施形態のGaAs結晶基板11は、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率を低減する観点から、フラット部11fから主面内でフラット部11fを示す直線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅WRの第1フラット部領域11frおよびノッチ部11nから主面内でノッチ部11nを示す曲線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅WRの第1ノッチ部領域11nrのいずれかにおいて、平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下である。
本実施形態のGaAs結晶基板11において、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率をさらに低減する観点から、フラット部11fから主面内でフラット部11fを示す直線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅WRの第2フラット部領域11frおよびノッチ部11nから主面内でノッチ部11nを示す曲線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅WRの第2ノッチ部領域11nrのいずれかにおいて、平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下であることが好ましい。
第2フラット部領域および第2ノッチ部領域は、第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のそれぞれのフラット部11fおよびノッチ部11nのそれぞれに近い部分領域である。第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のそれぞれの外周側の一部である第2フラット部領域および第2ノッチ部領域の平均残留歪みは、第1フラット部領域および第1ノッチ部領域の平均残留歪みに比べてそれぞれ高くなる可能性がある。また、割れの起点は外周部のため、第2フラット部領域の平均残留歪みの値が、割れ不良率により影響する。したがって、高い平均残留歪みとなる可能性がある第2フラット部領域および第2ノッチ部領域においても、平均残留歪みが上記の範囲内にあるGaAs結晶基板は、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率がさらに低減する。
図4は、本実施形態のGaAs結晶基板11の平均残留歪みの測定部分の例を示す概略拡大断面図である。図4を参照して、GaAs結晶基板11の鏡面加工した第1または第2フラット部領域11frあるいは第1または第2ノッチ部領域11nrの主面全体に亘って均等に所定のピッチで広がる所定の大きさの特定領域において、その主面に垂直に波長1.3μmの偏光PLを透過させる。このとき、試料前後に配置した偏光子と検光子を同期回転させ得られた透過光強度を偏光角φの関数として収集する。偏光角φと透過光強度より複屈折の位相差と主軸方位を求め面内歪成分を求めることができる。ここでは各点の円柱座標系の半径方向と接線方向の伸縮歪差の絶対値を平均し、平均残留歪みとして算出している。
また、本実施形態のGaAs結晶基板11におけるフラット部11fの長さLR(OF長さおよびIF長さ)ならびにノッチ部11nのノッチ形状および中心切欠き方向は、実施形態I-1のGaAs結晶基板11のフラット部11fの長さLR(OF長さおよびIF長さ)ならびにノッチ部11nのノッチ形状および中心切欠き方向とそれぞれ同じであるため、ここでは、繰り返さない。
(実施形態I-3)
図1A、図1B、図2Aおよび図2Bを参照して、本実施形態のGaAs結晶基板11は、主面の直径が150mm以上205mm以下で厚さが300μm以上800μm以下である。GaAs結晶基板11は、その外縁の一部にフラット部11fおよびノッチ部11nのいずれかを含む。GaAs結晶基板11は、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のSi原子および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度のC原子のいずれかを含む。GaAs結晶基板11は、フラット部11fから主面内でフラット部11fを示す直線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅WRの第1フラット部領域11frおよびノッチ部11nから主面内でノッチ部11nを示す曲線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅WRの第1ノッチ部領域11nrのいずれかにおいて、GaAs結晶基板11が上記Si原子を含む場合は、平均転位密度が0cm-2以上15000cm-2以下かつ平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下であることが好ましく、GaAs結晶基板11が上記C原子を含む場合は、平均転位密度が3000cm-2以上20000cm-2以下かつ平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下であることが好ましい。本実施形態のGaAs結晶基板11は、第1フラット部領域11frおよび第1ノッチ部領域11nrのいずれかにおける平均転位密度および平均残留歪みがそれぞれ所定の範囲内にあるため、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率がさらに低い。
なお、本実施形態のGaAs結晶基板において、上記の「主面内でノッチ部を示す曲線に対して垂直」とは、主面内でノッチ部を示す曲線上の各々の点における接線に対して垂直であることを意味する。ここで、「曲線」とは、少なくとも一部が直線でない線を意味し、一部に直線を含んでいてもよい。また、割れ不良率は、GaAs結晶基板の直径、含まれる原子の種類(Si原子またはC原子)または濃度、あるいは基板製造時またはエピタキシャル層成長時の差異により変動するものであり、割れ不良率がさらに低いとは、GaAs結晶基板の直径、含まれる原子の種類(Si原子またはC原子)および濃度、ならびに基板製造時またはエピタキシャル層成長時が同じ範囲内において相対的に割れ不良率がさらに低いことを意味する。
本実施形態のGaAs結晶基板11における150mm以上で205mm以下の直径、300μm以上800μm以下の厚さ、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のSi原子、および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度のC原子については、実施形態I-1および実施形態I-2のGaAs結晶基板11における150mm以上で205mm以下の直径、300μm以上800μm以下の厚さ、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のSi原子、および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度のC原子とそれぞれ同じであるため、ここでは、繰り返さない。GaAs結晶基板11は、含まれるSi原子およびC原子の濃度によって第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のいずれかの平均転位密度および平均残留歪みが変動するため、Si原子またはC原子の所定の濃度において第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のいずれかの平均転位密度および平均残留歪みを所定の範囲に調整することにより、上記割れ不良率をより低減することができる。
本実施形態のGaAs結晶基板11は、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率を低減する観点から、フラット部11fから主面内でフラット部11fを示す直線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅WRの第1フラット部領域11frおよびノッチ部11nから主面内でノッチ部11nを示す曲線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅WRの第1ノッチ部領域11nrのいずれかにおいて、GaAs結晶基板11が上記濃度のSi原子を含む場合は、平均転位密度が0cm-2以上15000cm-2以下かつ平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下が好ましく、GaAs結晶基板が上記濃度のC原子を含む場合は、平均転位密度が3000cm-2以上20000cm-2以下かつ平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下が好ましい。ここで、GaAs結晶基板11の平均転位密度は実施形態I-1と同様にして測定し、GaAs結晶基板11の平均残留歪みは実施形態I-2と同様にして測定する。
本実施形態のGaAs結晶基板11において、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率をさらに低減する観点から、フラット部11fから主面内でフラット部11fを示す直線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅WRの第2フラット部領域11frおよびノッチ部11nから主面内でノッチ部11nを示す曲線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅WRの第2ノッチ部領域11nrのいずれかにおいて、GaAs結晶基板11が上記濃度のSi原子を含む場合は、平均転位密度が0cm-2以上15000cm-2以下かつ平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下がより好ましく、GaAs結晶基板が上記濃度のC原子を含む場合は、平均転位密度が3000cm-2以上20000cm-2以下かつ平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下がより好ましい。
第2フラット部領域および第2ノッチ部領域は、第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のそれぞれのフラット部11fおよびノッチ部11nのそれぞれに近い部分領域である。第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のそれぞれの外周側の一部である第2フラット部領域および第2ノッチ部領域の平均転位密度および平均残留歪みは、第1フラット部領域および第1ノッチ部領域の平均転位密度および平均残留歪みに比べてそれぞれ高くなる可能性がある。また、割れの起点は外周部のため、第2フラット部領域の平均転位密度および平均残留歪みの値が、割れ不良率により影響する。したがって、高い平均転位密度および高い平均残留歪みとなる可能性がある第2フラット部領域および第2ノッチ部領域においても、平均転位密度および平均残留歪みが上記の範囲内にあるGaAs結晶基板は、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率がさらに低減する。
また、本実施形態のGaAs結晶基板11におけるフラット部11fの長さLR(OF長さおよびIF長さ)およびノッチ部11nのノッチ形状および中心切欠き方向は、実施形態I-1および実施形態I-2のGaAs結晶基板11のフラット部11fの長さLR(OF長さおよびIF長さ)およびノッチ部11nのノッチ形状および中心切欠き方向とそれぞれ同じであるため、ここでは、繰り返さない。
<GaAs結晶基板の製造方法>
図5A、図5B、図6A、図6B、図7Aおよび図7Bは、実施形態I-1~実施形態I-3のGaAs結晶基板11の製造方法の例を示す概略断面図である。図5A、図6Aおよび図7Aは製造装置内部の垂直方向の概略断面図であり、図5B、図6Bおよび図7Bは断熱材および坩堝の内部の水平方向の概略断面図である。図8は、実施形態I-1~実施形態I-3のGaAs結晶基板11の製造方法の別の例を示す概略平面図である。
図5A、図5B、図6A、図6B、図7A、図7Bおよび図8を参照して、GaAs結晶基板11の一般的な製造方法は、圧力容器105内に配置される坩堝101、坩堝台座102、およびヒータ103などを含む結晶成長装置100を用いて、VB(垂直ブリッヂマン)法、VGF(垂直温度傾斜凝固)法などの垂直ボート法により、結晶成長させるものである。まず、坩堝101内にGaAs種結晶10sおよびGaAs原料9を配置する。次に、ヒータ103の温度調節および坩堝101の垂直方向の移動により、GaAs原料9を溶解させ、溶解したGaAs原料9をそのGaAs種結晶10s側から凝固させることによりGaAs結晶体10を成長させる(図5A、図5B、図6Aおよび図6B)。次に、GaAs結晶体10を冷却する。次に、冷却したGaAs結晶体10を坩堝101から取り出す。次に、取り出したGaAs結晶体10からGaAs結晶基板11を切り出す(図7Aおよび図7B)。次に、切り出したGaAs結晶基板11の外縁(外周)を研削および/または研磨することにより、GaAs結晶基板11の外縁(外周)の一部にフラット部11fおよびノッチ部11nのいずれかを形成する(図8)。外縁(外周)の一部にフラット部11fおよびノッチ部11nのいずれかが形成されたGaAs結晶基板11の主面を鏡面研磨する。
(実施形態II-1)
図5A、図5B、図6Aおよび図6Bを参照して、本実施形態のGaAs結晶基板11の製造方法は、上記の一般的な製造方法において、GaAs結晶体10の成長時および冷却時あるいはGaAs結晶体10の冷却時(すなわち少なくともGaAs結晶体10の冷却時)に、断熱性が高い部分と低い部分とを備える断熱材104を坩堝101の外周の外側に配置する。これにより、GaAs結晶体10において、後にGaAs結晶基板11のフラット部11fおよびノッチ部11nのいずれかとなる部分(かかる部分は、GaAs結晶体10のフラット予定部10fおよびノッチ予定部10nのいずれかともいう、以下同じ)とGaAs結晶基板11の内部となる部分(かかる部分は、GaAs結晶体10の基板内部予定部ともいう、以下同じ)との温度差を抑制して、GaAs結晶基板11の第1および第2フラット部領域11frならびに第1および第2ノッチ部領域11nrにおける転位などの結晶欠陥および歪みを低減して、第1および第2フラット部領域11frならびに第1および第2ノッチ部領域11nrの平均転位密度および平均残留歪みを所定の範囲に調整することができる。
断熱材104の配置形態は、特に制限はないが、上記の観点から、GaAs結晶体10のフラット予定部10fおよびノッチ予定部10nのいずれか(すなわちGaAs結晶基板11のフラット部11fおよびノッチ部11nのいずれかとなる部分)の外縁(外周)の外側には断熱材104の断熱性が高い部分を配置することが好ましい。たとえば、断熱材104におけるGaAs結晶体10のフラット予定部10fおよびノッチ予定部10nのいずれかの外縁(外周)の外側の部分は、それ以外の部分に比べて、より厚さが大きいか、より断熱性が高い材料であるか、が好ましい。
断熱材104は、図5Aおよび図5Bに示すような一体物であってもよく、図6Aおよび図6Bに示すような複数の部分体の集合物であってもよい。断熱材104が一体物の場合は、断熱材104におけるGaAs結晶体10のフラット予定部10fおよびノッチ予定部10nのいずれかの外縁(外周)の外側に位置する部分は、それ以外の部分に比べて、より厚さが大きい(図5Aおよび図5B)か、より断熱性が高い材料とすることが好ましい。断熱材104が複数の部分体の集合物である場合は、断熱材104におけるGaAs結晶体10のフラット予定部10fおよびノッチ予定部10nのいずれかの外縁(外周)の外側に位置する部分体が、それ以外の部分体に比べて、より厚さが大きい(図6Aおよび図6B)か、より断熱性が高い材料とすることが好ましい。
断熱材104の材料は、断熱効果を有するものであれば特に制限はないが、炭素材料、セラミックス、SiN(窒化ケイ素)、SiC(炭化ケイ素)、石英、および内部にGaAs(ヒ化ガリウム)を充填した筒型容器などが好ましい。
(実施形態II-2)
図7Aおよび図7Bを参照して、本実施形態のGaAs結晶基板11の製造方法は、上記の一般的な製造方法において、取り出したGaAs結晶体10からGaAs結晶基板11を切り出す際に、GaAs結晶基板11においてフラット部11fおよびノッチ部11nのいずれかが形成される部分が、他の部分に比べて、GaAs結晶体10の外縁(外周)からより離れた内部になるように切り出す。これにより、GaAs結晶基板のフラット部11fおよびノッチ部11nのいずれかが形成される部分とGaAs結晶基板11の内部の部分との温度差を抑制して、GaAs結晶基板11の第1および第2フラット部領域11frならびに第1および第2ノッチ部領域11nrにおける転位などの結晶欠陥および歪みを低減して、第1および第2フラット部領域11frならびに第1および第2ノッチ部領域11nrの平均転位密度および平均残留歪みを所定の範囲に調整することができる。
(実施形態II-3)
図8を参照して、本実施形態のGaAs結晶基板11の製造方法は、上記の一般的な製造方法において、切り出したGaAs結晶基板11の外縁(外周)を研削および/または研磨することにより、GaAs結晶基板11の外縁(外周)の一部にフラット部11fおよびノッチ部11nのいずれかを形成する際に、フラット部11fおよびノッチ部11nのいずれかを形成による発熱を除去するように温度調節をする。これにより、GaAs結晶基板のフラット部11fおよびノッチ部11nのいずれかが形成される部分とGaAs結晶基板11の内部の部分との温度差を抑制して、GaAs結晶基板11の第1および第2フラット部領域11frならびに第1および第2ノッチ部領域11nrにおける転位などの結晶欠陥および歪みを低減して、第1および第2フラット部領域11frならびに第1および第2ノッチ部領域11nrの平均転位密度および平均残留歪みを所定の範囲に調整することができる。
ここで、切り出したGaAs結晶基板11の外縁(外周)を研削および/または研磨する方法には、とくに制限はなく、たとえば、図8に示すような回転砥石201を用いることができる。また、フラット部11fおよびノッチ部11nのいずれかを形成による発熱を除去するように温度調節する方法には、特に制限はなく、GaAs結晶基板11の外縁(外周)の一部にフラット部11fおよびノッチ部11nのいずれかを形成するときのみに、冷却水容器202uから噴射する冷却水202wの量を増大させる方法、および/または、冷却水202wの水温を低下させる方法などが可能である。
上記の実施形態II-1~実施形態II-3のGaAs結晶基板11の製造方法において、実施形態II-1のGaAs結晶基板11の製造方法と実施形態II-3のGaAs結晶基板11の製造方法とを組み合わせることにより、または、実施形態II-2のGaAs結晶基板11の製造方法と実施形態II-3のGaAs結晶基板11の製造方法とを組み合わせることにより、GaAs結晶基板のフラット部11fおよびノッチ部11nのいずれかが形成される部分とGaAs結晶基板11の内部の部分との温度差をより抑制して、GaAs結晶基板11の第1および第2フラット部領域11frならびに第1および第2ノッチ部領域11nrにおける転位などの結晶欠陥および歪みをより低減して、第1および第2フラット部領域11frならびに第1および第2ノッチ部領域の平均転位密度および平均残留歪みを所定の範囲に調整することができる。
(実験例1)
図5Aおよび図5Bに示す結晶成長装置を用いて、主面の面方位が(100)で外縁に長さ48mmのOF(オリエンテーションフラット)と長さ30mmのIF(アイデンティフィケーションフラット)の2つのフラット部11fを有する直径6インチ(152.4mm)で厚さ650μmのSi原子濃度が3.0×1016cm-3のGaAs結晶基板11を作製し、第1フラット部領域11fr(フラット部11fから主面内でフラット部11fを示す直線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の領域)における平均転位密度および平均残留歪みを測定し、GaAs結晶基板の研磨時および研磨後のGaAs結晶基板上のエピタキシャル層である厚さ5μmのGaAs層の成長時における割れ不良率を算出する。具体的には、以下のとおりである。
1.GaAs結晶体の成長
図5Aおよび図5Bに示すVB法によりGaAs結晶体10を成長させる。かかる結晶成長において、原料融解および凝固による結晶成長時および成長した結晶の冷却時に、坩堝101の周りに一体物である断熱材104を配置する。断熱材104は、固体炭素で形成されており、GaAs結晶体10のフラット予定部10fの外側に位置する部分の厚さが大きくGaAs結晶体10のフラット予定部10f以外の部分の外側に位置する部分の厚さが小さい。これにより、得られるGaAs結晶基板11の第1フラット部領域における平均転位密度および平均残留歪みを所定の範囲に調整できる。結晶成長および冷却されたGaAs結晶体10を坩堝から取り出す。
2.GaAs結晶基板の作製
取出したGaAs結晶体10からGaAs結晶基板11を切り出す。切り出したGaAs結晶基板11の外縁(外周)を研削および研磨することにより、GaAs結晶基板11の外縁(外周)の一部に長さ48mmのOFと長さ30mmのIFの2つのフラット部11fを形成する。フラット部11fを形成するときのみに、冷却水容器202uから噴射する冷却水202wの量を増大させる。これにより、得られるGaAs結晶基板11の第1フラット部領域における平均転位密度および平均残留歪みを所定の範囲に調整できる。
3.平均転位密度の評価
得られたGaAs結晶基板11の主面を鏡面研磨した後、500℃のKOH(水酸化カリウム)融液中に10分間浸漬した後に主面の第1フラット部領域11fr(フラット部11fから主面内でフラット部11fを示す直線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の領域)に形成されるエッチングピットの単位面積当たりの平均の数(エッチングピット平均密度)として顕微鏡を用いて測定する。なお、本実験例を含む各実験例においては、主面における第1または第2フラット部領域11frあるいは第1または第2ノッチ部領域11nrにおける平均転位密度と研削して露出させた中心部の第1フラット部領域11frcまたは中心部の第1ノッチ部領域11nrcにおける平均転位密度は同じである。
4.平均残留歪みの評価
得られたGaAs結晶基板11の主面を鏡面研磨した後、鏡面加工した第1フラット部領域11fr(フラット部11fから主面内でフラット部11fを示す直線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の領域)の主面全体に亘って200μmピッチで配置された点において、その主面に垂直にビーム径100μmで波長1.3μmの入射光を透過させる。得られた透過光強度と偏光角の関係から試料の複屈折の位相差と主軸方位を算出し、各点の円柱座標系での半径方向と接線方向の伸縮歪差の絶対値を算出し、それらの点における伸縮歪差の絶対値の平均を平均残留歪みとして算出する。
5.割れ不良率の評価
割れ不良率とは、以下の基板製造時およびエピタキシャル層成長時のそれぞれにおいて、全サンプル数に対して割れが発生したサンプルの百分率を示す。
(1)基板製造時
得られたGaAs結晶基板11を、1次研磨としてコロイダルシリカを含む研磨剤を900cm3/分で滴下し、不織布タイプの研磨布を用いて、上面回転数10rpm、下面回転数30rpm、キャリア公転10rpm、およびキャリア自転5rpmの条件で90分間両面研磨した後、仕上げ研磨としてコロイダルシリカを含まない研磨剤を1000cm3/分で滴下し、スウェードタイプの研磨布を用いて、上面回転数150rpmおよび下面回転数150rpmの条件で3分間片面研磨した時の割れ不良率を算出する。
(2)エピタキシャル層成長時
得られたGaAs結晶基板11を、上記の1次研磨および仕上げ研磨した後、仕上げ研磨された主面上に、MOCVD(有機金属気相堆積)法により、結晶成長雰囲気温度600℃、結晶成長雰囲気圧力50Torr、およびV/III比(III族元素モル濃度に対するV族元素モル濃度の比をいう、以下同じ)100の条件で、エピタキシャル層として厚さ5μmのGaAs層を成長させた時の割れ不良率を算出する。
本実験例(実験例1)について、第1フラット部領域の平均転位密度が実施例となる0cm-2~15000cm-2および比較例となる54000cm-2と、第1フラット部領域の平均残留歪みが実施例となる2.0×10-6~1.0×10-4ならびに比較例となる1.0×10-6および3.0×10-4との組み合わせにおいて、基板製造時の割れ不良率を表1にまとめ、エピタキシャル層成長時の割れ不良率を表2にまとめる。
Figure 0007060012000001
Figure 0007060012000002
(実験例2)
Si原子濃度を1.0×1017cm-3とすること以外は、実験例1と同様にしてGaAs結晶基板を作製し、第1フラット部領域における平均転位密度および平均残留歪みを測定し、GaAs結晶基板の研磨時および研磨後のGaAs結晶基板上のエピタキシャル層である厚さ5μmのGaAs層の成長時における割れ不良率を算出する。本実験例(実験例2)について、第1フラット部領域の平均転位密度が実施例となる0cm-2~14000cm-2および比較例となる40000cm-2と、第1フラット部領域の平均残留歪みが実施例となる2.2×10-6~9.5×10-5ならびに比較例となる1.0×10-6および4.0×10-4との組み合わせにおいて、基板製造時の割れ不良率を表3にまとめ、エピタキシャル層成長時の割れ不良率を表4にまとめる。
Figure 0007060012000003
Figure 0007060012000004
(実験例3)
Si原子濃度を1.0×1018cm-3とすること以外は、実験例1と同様にしてGaAs結晶基板を作製し、第1フラット部領域における平均転位密度および平均残留歪みを測定し、GaAs結晶基板の研磨時および研磨後のGaAs結晶基板上のエピタキシャル層である厚さ5μmのGaAs層の成長時における割れ不良率を算出する。本実験例(実験例3)について、第1フラット部領域の平均転位密度が実施例となる0cm-2~15000cm-2および比較例となる70000cm-2と、第1フラット部領域の平均残留歪みが実施例となる2.5×10-6~1.0×10-4ならびに比較例となる1.5×10-6および2.0×10-4との組み合わせにおいて、基板製造時の割れ不良率を表5にまとめ、エピタキシャル層成長時の割れ不良率を表6にまとめる。
Figure 0007060012000005
Figure 0007060012000006
(実験例4)
Si原子濃度を3.0×1019cm-3とすること以外は、実験例1と同様にしてGaAs結晶基板を作製し、第1フラット部領域における平均転位密度および平均残留歪みを測定し、GaAs結晶基板の研磨時および研磨後のGaAs結晶基板上のエピタキシャル層である厚さ5μmのGaAs層の成長時における割れ不良率を算出する。本実験例(実験例4)について、第1フラット部領域の平均転位密度が実施例となる0cm-2~14500cm-2および比較例となる38000cm-2と、第1フラット部領域の平均残留歪みが実施例となる2.0×10-6~8.0×10-5ならびに比較例となる1.0×10-6および3.5×10-4との組み合わせにおいて、基板製造時の割れ不良率を表7にまとめ、エピタキシャル層成長時の割れ不良率を表8にまとめる。
Figure 0007060012000007
Figure 0007060012000008
(実験例5)
Si原子濃度が3×1016cm-3に替えてC原子濃度が1×1015cm-3とし、ノッチ部をノッチの中心切欠き方向を基板中心から見て[010]方向に外縁から中心へ1.0mm分を90°の開き角度で削り取った形状で加工すること以外は、実験例1と同様にしてGaAs結晶基板11を作製し、第1ノッチ部領域11nr(ノッチ部11nから主面内でノッチ部11nを示す曲線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の領域)における平均転位密度および平均残留歪みを測定し、GaAs結晶基板の研磨時および研磨後のGaAs結晶基板上のエピタキシャル層である厚さ5μmのGaAs層の成長時における割れ不良率を算出する。本実験例(実験例5)について、第1ノッチ部領域の平均転位密度が実施例となる3000cm-2~20000cm-2ならびに比較例となる1700cm-2および75000cm-2と、第1ノッチ部領域の平均残留歪みが実施例となる2×10-6~1.0×10-4ならびに比較例となる1.0×10-6および3.0×10-4との組み合わせにおいて、基板製造時の割れ不良率を表9にまとめ、エピタキシャル層成長時の割れ不良率を表10にまとめる。
Figure 0007060012000009
Figure 0007060012000010
(実験例6)
C原子濃度を2.0×1016cm-3とすること以外は、実験例5と同様にしてGaAs結晶基板を作製し、第1ノッチ部領域における平均転位密度および平均残留歪みを測定し、GaAs結晶基板の研磨時および研磨後のGaAs結晶基板上のエピタキシャル層である厚さ5μmのGaAs層の成長時における割れ不良率を算出する。本実験例(実験例6)について、第1ノッチ部領域の平均転位密度が実施例となる3300cm-2~18000cm-2ならびに比較例となる1200cm-2および50000cm-2と、第1ノッチ部領域の平均残留歪みが実施例となる2.1×10-6~9.0×10-5ならびに比較例となる1.5×10-6および3.0×10-4との組み合わせにおいて、基板製造時の割れ不良率を表11にまとめ、エピタキシャル層成長時の割れ不良率を表12にまとめる。
Figure 0007060012000011
Figure 0007060012000012
(実験例7)
C原子濃度を5.0×1017cm-3とすること以外は、実験例5と同様にしてGaAs結晶基板を作製し、第1ノッチ部領域における平均転位密度および平均残留歪みを測定し、GaAs結晶基板の研磨時および研磨後のGaAs結晶基板上のエピタキシャル層である厚さ5μmのGaAs層の成長時における割れ不良率を算出する。本実験例(実験例7)について、第1ノッチ部領域の平均転位密度が実施例となる3100cm-2~19000cm-2ならびに比較例となる1700cm-2および32000cm-2と、第1ノッチ部領域の平均残留歪みが実施例となる3.0×10-6~1.0×10-4ならびに比較例となる1.9×10-6および3.0×10-4において、基板製造時の割れ不良率を表13にまとめ、エピタキシャル層成長時の割れ不良率を表14にまとめる。
Figure 0007060012000013
Figure 0007060012000014
(実験例8)
図6Aおよび図6Bに示す結晶成長装置を用いて、主面の面方位が(100)でノッチの中心切欠き方向を基板中心から見て[010]方向に外縁から中心へ1.0mm分を90°の開き角度で削り取った形状で加工したノッチ部11nを有する直径8インチ(203.2mm)で厚さ750μmのSi原子濃度が1.5×1018cm-3のGaAs結晶基板11を作製し、第1ノッチ部領域11nrにおける平均転位密度および平均残留歪みを測定し、GaAs結晶基板の研磨時および研磨後のGaAs結晶基板のエピタキシャル層である厚さ5μmのGaAs層の成長時における割れ不良率を算出する。具体的には、以下のとおりである。
1.GaAs結晶体の成長
図6Aおよび図6Bに示すVB法によりGaAs結晶体10を成長させる。かかる結晶成長において、原料融解および凝固による結晶成長時および成長した結晶の冷却時に、坩堝101の周りに複数の部分体の集合物である断熱材104を配置する。断熱材104は、pBN(熱分解窒化ほう素)で被覆された固体炭素で形成されており、GaAs結晶体10のノッチ予定部10nの外側に位置する部分体の厚さが大きくGaAs結晶体10のノッチ予定部10n以外の部分の外側に位置する部分体の厚さが小さい。これにより、得られるGaAs結晶基板11の平均転位密度および平均残留歪みを所定の範囲に調整できる。結晶成長および冷却されたGaAs結晶体10を坩堝から取り出す。
2.GaAs結晶基板の作製
取出したGaAs結晶体10からGaAs結晶基板11を切り出す。切り出したGaAs結晶基板11の外縁(外周)を研削および研磨することにより、GaAs結晶基板11の外縁(外周)の一部に、ノッチの中心切欠き方向を基板中心から見て[010]方向に外縁から中心へ1.0mm分を90度の開き角度で削り取った形状で加工したノッチ部11nを形成する。ノッチ部11nを形成するときのみに、冷却水容器202uから噴射する冷却水202wの量を増大させる。これにより、得られるGaAs結晶基板11の第1ノッチ領域の平均転位密度および平均残留歪みを所定の範囲に調整できる。
得られたGaAs結晶基板11について、実験例1と同様にして、平均転位密度、平均残留歪み、および割れ不良率の評価を行なう。本実験例(実験例8)について、第1ノッチ部領域の平均転位密度が実施例となる0cm-2~14500cm-2および比較例となる30000cm-2と、第1ノッチ部領域の平均残留歪みが実施例となる2.0×10-6~9.0×10-5ならびに比較例となる1.0×10-6および2.0×10-4との組み合わせにおいて、基板製造時の割れ不良率を表15にまとめ、エピタキシャル層成長時の割れ不良率を表16にまとめる。
Figure 0007060012000015
Figure 0007060012000016
実験例1~実験例8に示すように、直径が150mm以上205mm以下で厚さが300μm以上800μm以下で外縁の一部にフラット部およびノッチ部のいずれかを含むGaAs結晶基板において、Si原子の濃度が3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下のときは、第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、平均転位密度が0cm-2以上15000cm-2以下または平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下であれば、C原子の濃度が1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下のときは、第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、平均転位密度が3000cm-2以上20000cm-2以下または平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下であれば、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率が低くなることが分かる。
さらに、上記GaAs結晶基板において、Si原子の濃度が3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下のときは、第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、平均転位密度が0cm-2以上15000cm-2以下かつ平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下であれば、C原子の濃度が1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下のときは、第1フラット部領域および第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、平均転位密度が3000cm-2以上20000cm-2以下かつ平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下であれば、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率がより低くなることが分かる。
(実験例9)
GaAs結晶体のフラット予定部の外側に位置する断熱材の厚さを実験例3の2倍にすること以外は、実験例3と同様にして、GaAs結晶基板を作製し、第2フラット部領域(フラット部から主面内でフラット部を示す線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅の領域)における平均転位密度および平均残留歪みを測定し、GaAs結晶基板の研磨時および研磨後のGaAs結晶基板上のエピタキシャル層である厚さ5μmのGaAs層の成長時における割れ不良率を算出する。本実験例(実験例9)について、第2フラット部領域の平均転位密度が実施例となる0cm-2~15000cm-2および比較例となる70000cm-2と、第2フラット部領域の平均残留歪みが実施例となる2.5×10-6~1.0×10-4ならびに比較例となる1.5×10-6および2.0×10-4との組み合わせにおいて、基板製造時の割れ不良率を表17にまとめ、エピタキシャル層成長時の割れ不良率を表18にまとめる。
Figure 0007060012000017
Figure 0007060012000018
(実験例10)
GaAs結晶体のノッチ予定部の外側に位置する断熱材の厚さを実験例6の2倍にすること以外は、実験例6と同様にして、GaAs結晶基板を作製し、第2ノッチ部領域(ノッチ部から主面内でノッチ部を示す曲線に対して垂直方向に1mmの距離までの幅の領域)における平均転位密度および平均残留歪みを測定し、GaAs結晶基板の研磨時および研磨後のGaAs結晶基板上のエピタキシャル層である厚さ5μmのGaAs層の成長時における割れ不良率を算出する。本実験例(実験例10)について、第2ノッチ部領域の平均転位密度が実施例となる3300cm-2~18000cm-2ならびに比較例となる1200cm-2および50000cm-2と、第2ノッチ部領域の平均残留歪みが実施例となる2.1×10-6~9.0×10-5ならびに比較例となる1.5×10-6および3.0×10-4との組み合わせにおいて、基板製造時の割れ不良率を表19にまとめ、エピタキシャル層成長時の割れ不良率を表20にまとめる。
Figure 0007060012000019
Figure 0007060012000020
実験例9および実験例10に示すように、直径が150mm以上205mm以下で厚さが300μm以上800μm以下で外縁の一部にフラット部およびノッチ部のいずれかを含むGaAs結晶基板において、Si原子の濃度が3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下のときは、第2フラット部領域および第2ノッチ部領域のいずれかにおいて、平均転位密度が0cm-2以上15000cm-2以下または平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下であれば、C原子の濃度が1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下のときは、第2フラット部領域および第2ノッチ部領域のいずれかにおいて、平均転位密度が3000cm-2以上20000cm-2以下または平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下であれば、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率が低くなることが分かる。
さらに、上記GaAs結晶基板において、Si原子の濃度が3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下のときは、第2フラット部領域および第2ノッチ部領域のいずれかにおいて、平均転位密度が0cm-2以上15000cm-2以下かつ平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下であれば、C原子の濃度が1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下のときは、第2フラット部領域および第2ノッチ部領域のいずれかにおいて、平均転位密度が3000cm-2以上20000cm-2以下かつ平均残留歪みが2×10-6以上1×10-4以下であれば、基板製造時および基板上でのエピタキシャル層成長時における割れ不良率がより低くなることが分かる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
9 GaAs原料、10 GaAs結晶体、10f フラット予定部、10n ノッチ予定部、10s GaAs種結晶、11 GaAs結晶基板、11f フラット部、11fr,11frc 第1フラット部領域,第2フラット部領域、11n ノッチ部、11nr,11nrc 第1ノッチ部領域,第2ノッチ部領域、100 結晶成長装置、101 坩堝、102 坩堝台座、103 ヒータ、104 断熱材、105 圧力容器、201 回転砥石、202u 冷却水容器、202w 冷却水、LR 長さ、WR 幅、P偏光。

Claims (11)

  1. 主面の直径が150mm以上205mm以下で厚さが300μm以上800μm以下のヒ化ガリウム結晶基板であって、
    前記ヒ化ガリウム結晶基板の外縁の一部にフラット部およびノッチ部のいずれかを含み、
    前記ヒ化ガリウム結晶基板は、3.0×1016cm-3以上3.0×1019cm-3以下の濃度のケイ素原子および1.0×1015cm-3以上5.0×1017cm-3以下の濃度の炭素原子のいずれかを含み、
    前記フラット部から前記主面内で前記フラット部を示す直線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の第1フラット部領域および前記ノッチ部から前記主面内で前記ノッチ部を示す曲線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、
    前記ヒ化ガリウム結晶基板が前記ケイ素原子を含む場合は、平均転位密度が0cm-2以上15000cm-2以下であり、
    前記ヒ化ガリウム結晶基板が前記炭素原子を含む場合は、平均転位密度が3000cm-2以上20000cm-2以下であ
    前記第1フラット部領域および前記第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、平均残留歪みが2×10 -6 以上1×10 -4 以下である、ヒ化ガリウム結晶基板。
  2. 前記ヒ化ガリウム結晶基板は、3.0×10 16 cm -3 以上3.0×10 19 cm -3 以下の濃度の前記ケイ素原子を含み、
    前記第1フラット部領域および前記第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、前記平均転位密度が0cm -2 以上15000cm -2 以下である、請求項1に記載のヒ化ガリウム結晶基板。
  3. 前記ヒ化ガリウム結晶基板は、1.0×10 16 cm -3 以上1.0×10 19 cm -3 以下のキャリア濃度を有する、請求項2に記載のヒ化ガリウム結晶基板。
  4. 前記ヒ化ガリウム結晶基板は、厚さが650μm以上800μm以下である、請求項3に記載のヒ化ガリウム結晶基板。
  5. 前記ヒ化ガリウム結晶基板は、前記主面の直径が203.2mm以上205mm以下であり、厚さが750μm以上800μm以下である、請求項3に記載のヒ化ガリウム結晶基板。
  6. 前記ヒ化ガリウム結晶基板は、1.0×10 15 cm -3 以上5.0×10 17 cm -3 以下の濃度の前記炭素原子を含み、
    前記第1フラット部領域および前記第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、前記平均転位密度が3000cm -2 以上20000cm -2 以下である、請求項1に記載のヒ化ガリウム結晶基板。
  7. 前記ヒ化ガリウム結晶基板は、1.0×10 7 Ω・cm以上5.0×10 8 Ω・cm以下の抵抗率を有する、請求項6に記載のヒ化ガリウム結晶基板。
  8. 前記ヒ化ガリウム結晶基板は、前記第1フラット部領域および前記第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、前記平均残留歪みが7.0×10 -5 以上1×10 -4 以下である、請求項7に記載のヒ化ガリウム結晶基板。
  9. 前記ヒ化ガリウム結晶基板は、厚さが650μm以上800μm以下である、請求項8に記載のヒ化ガリウム結晶基板。
  10. 主面の直径が150mm以上205mm以下で厚さが650μm以上800μm以下のヒ化ガリウム結晶基板であって、
    前記ヒ化ガリウム結晶基板の外縁の一部にフラット部およびノッチ部のいずれかを含み、
    前記ヒ化ガリウム結晶基板は、3.0×10 16 cm -3 以上3.0×10 19 cm -3 以下の濃度のケイ素原子を含み、
    前記ヒ化ガリウム結晶基板は、1.0×10 16 cm -3 以上1.0×10 19 cm -3 以下のキャリア濃度を有し、
    前記フラット部から前記主面内で前記フラット部を示す直線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の第1フラット部領域および前記ノッチ部から前記主面内で前記ノッチ部を示す曲線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、平均転位密度が0cm -2 以上15000cm -2 以下であり、
    前記第1フラット部領域および前記第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、平均残留歪みが2×10 -6 以上1×10 -4 以下である、ヒ化ガリウム結晶基板。
  11. 主面の直径が150mm以上205mm以下で厚さが650μm以上800μm以下のヒ化ガリウム結晶基板であって、
    前記ヒ化ガリウム結晶基板の外縁の一部にフラット部およびノッチ部のいずれかを含み、
    前記ヒ化ガリウム結晶基板は、1.0×10 15 cm -3 以上5.0×10 17 cm -3 以下の濃度の炭素原子を含み、
    前記ヒ化ガリウム結晶基板は、1.0×10 7 Ω・cm以上5.0×10 8 Ω・cm以下の抵抗率を有し、
    前記フラット部から前記主面内で前記フラット部を示す直線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の第1フラット部領域および前記ノッチ部から前記主面内で前記ノッチ部を示す曲線に対して垂直方向に2mmの距離までの幅の第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、平均転位密度が3000cm -2 以上20000cm -2 以下であり、
    前記第1フラット部領域および前記第1ノッチ部領域のいずれかにおいて、平均残留歪みが7.0×10 -5 以上1×10 -4 以下である、ヒ化ガリウム結晶基板。
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