以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
<シリアル型画像形成装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るシリアル型画像形成装置の一例を示す概略構成の平面図である。図1の画像形成装置10は、シリアル型インクジェット記録装置である。
図1において、装置本体の左右の側板に横架したガイド部材である主従のガイドロッド11、12でキャリッジ13を記録媒体1の搬送方向の直交方向(主走査方向)に摺動自在に保持している。キャリッジ13は、主走査モータによってタイミングベルトを介して図1で矢示方向(キャリッジ走査方向)に移動走査する。
キャリッジ13には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための記録ヘッド14a、14bを、ノズル列が主走査方向と直交するように配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド14は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド14aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、それぞれ吐出する。また、記録ヘッド14bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
そして、キャリッジ13を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド14a,14bを駆動することにより、停止している記録媒体1にインク滴を吐出して1走査分を記録し、記録媒体1を所定量搬送後、次の行の記録を行う。
また、キャリッジ13の走査方向の右側の記録媒体1と重ならない領域に、記録ヘッド14の維持回復機構15が設けられる。印刷待機時などにはキャリッジ13はこの位置まで移動し、記録ヘッド14a,14bのノズル面やノズルの汚れを除去する維持回復動作が行われる。
また、印刷動作中に空吐出を行う際にも、キャリッジ13をこの位置に移動させ、増粘したインクを吐出させる。本実施形態において、維持回復機構15は印刷領域外にある空吐出受けとして機能する。
<ライン型画像形成装置>
次に、本発明の液体吐出装置をライン型画像形成装置に適用する構成について、図2~図4を用いて説明する。
図2は、本発明の他の実施形態に係る、ライン型画像形成装置の一例において、画像形成中のヘッドユニットと、空吐出受けの説明図である。図3は、図2のライン型画像形成装置において、空吐出中の画像形成ユニットと空吐出受け説明図である。
図4は、図2のライン型画像形成装置20におけるライン型の画像形成ユニットの底面図である。図4において、(a)は、ライン型画像形成ユニット全体の底面図であり、(b)は(a)に含まれるヘッドの1つの拡大図である。
図2において、画像形成手段である画像形成ユニット4は搬送部である搬送ベルト71に対向して配置されている。搬送ベルト71は、矢印Xmの方向に、記録媒体1を搬送する。
図4(a)に示すように画像形成ユニット4には、ライン状にヘッドアレイ48に設けられており、各ヘッドアレイ48には、各色の記録ヘッド40K,40C,40M,及び40Yが設置されている。
記録媒体1は、例えば用紙であり、ロール紙(連続用紙)かカット紙か形状は問わない。
また、用紙以外の様々な媒体であってもよい。記録媒体1は所定の方向に搬送されている(図2の矢印方向)。この記録媒体1の記録する面に所定の距離を保って対向して記録ヘッド40は画像形成ユニット4に支持されている。
画像形成ユニット4から、記録媒体1の搬送方向の上流(図2右側)に、維持回復機構(メンテナンス手段)90が設けられている。維持回復機構90は、夫々ライン型ヘッドからなる画像形成ユニット4における記録ヘッド4の維持回復を行う。
画像形成ユニット4の記録ヘッド40は、上下に移動可能な構成である。画像形成ユニット4は、上下に移動することにより、図2に示した搬送ユニット80に近接した位置、即ち液体(インク液)を吐出する位置である印刷位置と、図3に示すように搬送ユニット80から離間させた位置である離間位置との間で移動可能である。この離間位置は、画像形成ユニット4の各記録ヘッド40に対して、維持回復機構90により維持を行う維持位置であり、次の動作まで待機する待機位置であるとともに、メンテナンスを行う回復位置である。
なお、この上下移動を行うため、例えば、画像形成ユニット4がユニット位置移動手段47によって支持されている。そのユニット位置移動手段47を動かすことにより、搬送ベルト71に対して、画像形成ユニット4の位置が上下に移動する。例えば、なお、図2では、ユニット位置移動手段47を矢印で示しているが、ユニット位置移動手段47としてレールとローラを組み合わせた移動機構を用いてもよいし、アーム等を用いて持ち上げてもよい。
搬送ベルト71は、モータにより回転される駆動ローラ73と従動ローラ72との間に掛け回されて周回移動し、記録媒体1は、支持部材74に支えられた搬送ベルト71の周回移動によって搬送される。ここで、支持部材74は、搬送中に用紙を吸着するために、吸引手段又は静電吸着手段を備えてもよい。
また、維持回復機構90は、係合部91とクリーニングユニット95とを備える。
係合部91は、メンテナンスが行われるときに、離間位置(図2の点線部)にある、画像形成ユニット4の記録ヘッド40K,40C,40M,及び40Yに対向する対向領域へ往復復動するとともに記録ヘッド40K,40C,40M,及び40Yに選択的に係合する。
下記、各ヘッドに対してインクの色を除いて、維持回復機構90の構成は同様であるため、同じ構成については、40Kに対する部材のみ説明し、その他の色に対する部材の説明は省略する。同じ構成については語尾の記号を省略して説明する。
係合部91はキャップ部92、ワイパー93、及びキャップ部92とワイパー93とを固定する固定部材94を有する。
キャップ部92は、離間位置を占めた記録ヘッド40に係合して記録ヘッド40のノズル104を密閉しキャップする。メンテナンス時に、記録ヘッド40は、キャップ部92が係合した状態でインクを吐出するいわゆる空吐出を行い、キャップ部92は、この空吐出により記録ヘッド40から吐出されたインクを受ける空吐出受けとして機能する。なお、メンテナンスの際は、印刷領域となる記録媒体1の代わりに、維持回復機構90がヘッドユニット4の下に移動するため、維持回復機構90は、印刷領域外にあるものとする。
ワイパー93は、離間位置にある記録ヘッド40から流出したインクを拭って記録ヘッド40をクリーニング(ワイピング)する。クリーニングユニット95は、メンテナンス時における係合部91の往復動後、係合部91がホームポジションに復帰した状態で、キャップ部92、ワイパー93等のクリーニングを行う。クリーニングユニット95による係合部91のクリーニングは、その他、所定枚数の画像形成後など定期的に行っても良い。
維持回復機構90はまた、キャップ部92が離間位置にある記録ヘッド40に係合した状態でヘッド40内部のインクを吸引し、インクをヘッド40の外部に流出させるためのポンプ96を備えている。維持回復機構90はさらに、キャップ部92及びポンプ96を連結しヘッド40の外部に後処理液を排出する排出経路と、排出経路に接続されヘッド40の外部に流出した液体(インク・後処理液)を夫々貯める液体貯め部とを備えている。
なお、図2、図3では、維持回復機構90が画像形成ユニット4の上流側に設けられている例を示しているが、維持回復機構90は、画像形成ユニット4の下流側や幅方向の側方に設けられていてもよい。
画像形成ユニットは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のヘッドアレイ48K、48C、48M、48Yによって構成されている。そして、ヘッドアレイ48Kには、画像形成手段である各色の記録ヘッド40K‐1,40K‐2,40K‐3,40K‐4,40K-3,40K-6が設置されている。他の色のヘッドアレイ48C、48M、48Yにおいても、同様に夫々6つの記録ヘッド40が設けられている。記録ヘッド40が用紙搬送速度に同期してインク滴吐出を行うことで、記録媒体1上にカラー画像を形成する。
各ヘッドアレイ48K、48C、48M、48Yは、千鳥状に配列して構成されており、このように記録ヘッド40をアレー化することにより広域な印刷領域幅を確保している。
図4(a)では、6個のヘッドを持って各色ライン化となる配置に形成しているが、これに限ることはない。用紙幅に応じてこのヘッド数が変更されても構わない。
また、記録ヘッド4を千鳥配置にてライン化としているが、記録ヘッド4を搬送方向の直交方向に一列に直線状に一列に並べることでライン化してもよいし、1ヘッドにてライン化しても構わない。また、配色もこれに限ることはない。
図4(b)は、記録ヘッド40の一例を示す図である。記録ヘッド40は、複数のノズル104が搬送方向と直交する方向(以下、適宜ノズル列方向と呼ぶ)に所定のピッチpで配列されている。
図2の記録ヘッド40では、このノズル列がLA、LBと2列備えられ、各ノズルがノズル列方向にそれぞれ略1/2・pずれて配列されており、ノズル列方向に高解像に記録できるようにしている。
<ヘッドの内部構造>
次に、液体吐出ヘッドとして機能する記録ヘッド14(40)の一例について図5を参照して説明する。図5は記録ヘッド14のノズル配列方向と直交する方向である液室長手方向に沿う断面説明図である。
この記録ヘッド14は、流路板101と、振動板部材102と、ノズル板103とを接合している。これにより、液滴を吐出するノズル104が貫通孔105を介して通じる個別液室106、個別液室106に液体を供給する流体抵抗部107、液体導入部108がそれぞれ形成される。
そして、フレーム部材117に形成した共通液室110から振動板部材102に形成されたフィルタ部109を介してインクが液体導入部108に導入され、液体導入部108から流体抵抗部107を介して液室106にインクが供給される。なお、「個別液室」は、加圧室、加圧液室、圧力室、個別流路、圧力発生室、個別液室などと称されるものを含む意味であって、ノズル104と連通する領域である。
流路板101は、SUSなどの金属板を積層して、貫通孔105、個別液室106、流体抵抗部107、液体導入部108などの開口部や溝部をそれぞれ形成している。振動板部材102は各液室106、流体抵抗部107、液体導入部108などの壁面を形成する壁面部材であるとともに、フィルタ部109を形成する部材である。なお、流路板101は、SUSなどの金属板に限らず、シリコン基板を異方性エッチングして形成することもできる。
そして、振動板部材102の液室106と反対側の面に個別液室106のインクを加圧してノズル104から液滴を吐出させるエネルギーを発生するアクチュエータ手段(圧力発生手段)としての柱状の積層型の圧電素子112が接合されている。この圧電素子112の一端部はベース部材113に接合され、また、圧電素子112には駆動波形を伝達するFPC115が接続されている。これらによって、圧電アクチュエータを構成している。
なお、この例では、圧電素子112は積層方向に伸縮させるd33モードで使用しているが、積層方向と直交する方向に伸縮させるd31モードでもよい。
このように構成した記録ヘッド14においては、例えば、図7に示すように、圧電素子112に印加する電圧を基準電位Veから下げることによって、圧電素子112が収縮し、振動板部材102が変形して個別液室106の容積が膨張する。これにより、個別液室106内にインクが流入する。
その後、圧電素子112に印加する電圧を上げることによって、圧電素子112を積層方向に伸長させ、振動板部材102をノズル104方向に変形させて個別液室106の容積を収縮させる。これにより、個別液室106内のインクが加圧され、ノズル104から液滴Lが吐出される。
そして、圧電素子112に印加する電圧を基準電位Veに戻すことによって振動板部材102が初期位置に復元され、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室110から液室106内にインクが充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
ところで、ノズル104から吐出された液滴300は、一定距離Lで保たれた記録媒体1に飛翔時間Tj後に着弾する。このとき液滴300の吐出速度をVjとすると、Tj=L/Vjである。
この吐出速度Vjは、ノズル104付近の個別液室106内のインク増粘により変動することがあり、飛翔時間Tjが異なり、記録媒体1は一定速度で搬送されているため、搬送方向の着弾位置にばらつきが生じる。また、吐出されるインクの滴量にもばらつきが生じる。
そこで、本発明では、上記の着弾位置やインク滴量のばらつきを解消するため、インク吐出制御において、第1の搖動、第2の搖動、空吐出動作を実施する。下記、インク吐出制御について説明する。
<インク吐出制御>
図6は、本発明の第1実施形態における画像形成装置におけるインク吐出制御に係る全体ブロック図である。
画像形成装置10又20において、インク吐出制御に係る構成として、コントローラ5と、ヘッド制御部2と、記録ヘッド14(3)と、を有する。
コントローラ5は、画像形成装置10又は画像形成装置20の主制御部であり、システム全体の制御を司る。コントローラ5は、ヘッド制御部2の上位制御部である。
図1の構成の場合、ヘッド制御部2及び記録ヘッド14はキャリッジ13に設けられている。また、図2に示す構成では、ヘッド制御部2及び記録ヘッド40は画像形成ユニット4内に設けられている。キャリッジ13や、画像形成ユニット20内において、ヘッド制御部2と記録ヘッド14とは、ケーブルによって、電気的に接続されている。
記録ヘッド14は、圧電素子112を内蔵し、ヘッド制御部2から送信される駆動波形、及び、印字データ信号に応じて圧電素子を駆動することで、記録媒体1にインク滴を吐出する。
記録ヘッド14はヘッド駆動部31を備えている。ヘッド駆動部31、ヘッド制御部2、又はコントローラ5の少なくともいずれか一つ又は複数が、記録ヘッド14を駆動し、制御する駆動制御部として機能する。
コントローラ5は、外部装置(例えばホストコンピュータ)と接続され、印刷要求とその印刷画像を受け取る。印刷要求に基づき印刷画像を印字信号制御部21に供給する。また、駆動波形生成部22で生成する駆動波形情報を設定する機能や、ヘッド駆動部31を制御するための情報を設定する機能を持つ。
ヘッド制御部2は、印字信号制御部21と、駆動波形生成部22と、空吐出波形生成部23と、を有する。
印字信号制御部21は、印刷する画像データをそれぞれの記録ヘッド、ノズル列に対応する画像データに分離して、ヘッド駆動部31に転送する。また、印字の基準となるライン同期信号LSの生成を行う。
すなわち、印字信号制御部21は、印刷予定の多値の画像データを、階調して、色ごとに少値化することで、画像データにおける各色、ノズル毎の画像形成期間と、画像非形成期間とに分離する。少値化後の画像データは、吐出の有無と吐出量を示すデータとなり、階調後の画像データの画像形成期間では、各ノズルにおける滴の吐出量(滴サイズ)の情報も含まれる。
ライン同期信号LSの周期Tは、ノズル列方向と垂直を成す方向の記録媒体の相対速度である。より詳しくは、図1の形態であれば印字時におけるキャリッジ13の走査速度とその方向の印字解像度(走査ラインの解像度)により決定し、図3の形態であれば記録媒体1の搬送速度と、その方向の印字解像度(ラインヘッドの解像度)により決まる。つまり周期Tで1画素のドットが形成される。ライン同期信号LSは駆動波形生成部22に供給され、駆動波形生成の開始基準として用いられる。
駆動波形生成部22は、圧電素子112を駆動するための駆動波形Vpを生成するものであり、ライン同期信号LSを基準に生成が開始される。
記録ヘッド14は、ヘッド駆動部31と、N個の圧電素子112とを有する。図6では、記録ヘッド14aを例に示しているが、キャリッジ13にはもう一つのヘッド14bも設けられている。
このヘッド駆動部31は、ノズル列毎に設けられている。例えば、図1の形態では、ヘッド駆動部31は、記録ヘッド14の1ノズル列分、即ち、各列に対応づけられた各色の圧電素子112を駆動するため、キャリッジ13内に4つのヘッド駆動部31が設けられる。
また、図2の形態では、それぞれの記録ヘッド40毎、それぞれのノズル列LA,LB毎にヘッド駆動部31が備えられる。例えば、図4(a)では、4色各色につき記録ヘッド40が6個あり、各記録ヘッド40には2列のノズル列が形成されているため、画像形成ユニット4内に、48つのヘッド駆動部31が設けられる。
圧電素子112のそれぞれに対応してヘッド駆動部31に設けられた複数の駆動波形選択出力部37において、この駆動波形の時分割された一部あるいは全部が、選択されて各圧電素子に印加される。この駆動波形の詳細例は図7とともに後述する。
圧電素子112は駆動波形を伝達するFPC基板115(図5参照)を介して、一方の電極は他の圧電素子とともに共通電位(例えばグランド)に接続され、他方の電極はそれぞれヘッド駆動部31に接続される。
ヘッド駆動部31は、1つあるいは複数の集積回路で構成され、そのうち少なくとも圧電素子に接続する部分はFPC基板115に設置されている。
1つのヘッド駆動部31が駆動するN個のノズルからは、このライン同期信号LSに同期して吐出し、記録媒体1上で1列のドット列を形成する(以下、適宜ラインと呼ぶ)。
また、印字生成制御部から出力されるライン同期信号LDは、ヘッド駆動部31へ画像データを転送する際の、ライン同期信号としても用いられる。
なお、ライン同期信号LSは、各々対応するヘッド駆動部ごと生成し、各々のノズル列から形成されるドット位置が揃うようにそれぞれタイミングが調整されるとより好ましい。
また、印字信号制御部21からヘッド駆動部31への画像データの転送は、1ライン周期内に印字するN個のノズルの印字データを、ライン同期信号LSを転送開始基準に、転送クロックSCKを基準とし、シリアルに転送される。
以下、ヘッド駆動部31の詳細構成について説明する。ヘッド駆動部31は、シフトレジスタ25、ラッチ36、搖動指示部38、空吐出量算出部60、駆動波形選択信号生成部39、選択部61、及び駆動波形選択出力部37を有している。
印字信号制御部21から記録ヘッド14の1ライン分のデータに相当するN個の印字データが、転送クロックSCKに同期してシリアルに入力される。シリアルに入力されるN個の印字データは、シフトレジスタ35に順次保持される。
記録ヘッド14のノズル104からは、例えば大滴、中滴、小滴、吐出なしの4値の大きさの異なるドットに対応するインク滴を吐出するものとすると、1個の印字データは2ビットのデータである。本実施形態では、印字データは大滴=3、中滴=2、小滴=1、吐出なし=0を表すものとする。印字データは波形を選択するための信号に相当する。
[駆動波形選択信号の生成]
次に、図7を用いて、第1実施形態に係る駆動波形選択信号の生成を説明する。図7は、本発明の実施形態に係る駆動波形選択信号の生成例を説明する図である。
図6に示す駆動波形(駆動波形信号)Vp(図7(b))や、駆動波形選択信号M0~M4(図7(c-0)~(c-4))は、ライン同期信号LS(図7(a))に同期
して生成が開始される。
図7(b)に示す駆動波形Vpは、圧電素子112に印加される電圧波形であり、1周期T内に、例えば図示した波形として生成される。ここで、Veは、基準電位を示す。
図7(c-0)~(c-4)に示す駆動波形選択信号は、駆動波形Vpのオン・オフを切り替えるための信号である。例えば、駆動波形選択信号がHighの期間は、スイッチがオンになることで、圧電素子112に駆動波形Vpが印加される。
一方、駆動波形選択信号がLowの期間は、スイッチがオフになることで、その直前の電位がホールドされる。駆動波形Vpのどの部分を選択し、出力するかによって印加される波形が変わり、これによって、ノズルにおいては、吐出あり又は吐出なし、吐出されるときのインク滴量が変わる。
図7(c-0)の駆動波形選択信号M0は、「吐出なし」の場合に対応する信号であり、基準電位Veに保たれたままとなる。長期間にわたりスイッチ45がオフになり、圧電素子112に信号が印加されない状態が続くと、自然放電により電位が下がってくるので、電位が基準電位Veである期間は印加するようにHighとなっている。
図7(c-1)の駆動波形選択信号M1は、「小滴吐出」の場合に対応する信号である。駆動波形選択信号M1は、図7(iv)の期間は印加するようにHighとなっている。
図7(c-2)の駆動波形選択信号M2は、「中滴吐出」の場合に対応する信号である。駆動波形選択信号M2は、図7の(ii)、(iv)の期間は印加するようにHighとなっている。
図7(c-3)の駆動波形選択信号M3は、「大滴吐出」の場合に対応する信号である。駆動波形選択信号M3は、図7(ii)、(iii)、(iv)の期間は印加するようにHighとなっている。すなわち、印字周期T内に、複数のパルス列からなる駆動波形を用いて滴速度を変えながらインク滴を連続吐出させ、飛翔中に1つの液滴として合体するようにして、大滴が形成される。
図7(c-4)の駆動波形選択信号M4は、「メニスカスの搖動」の場合に対応する信号である。駆動波形選択信号M4は、図7(i)の期間は印加するようにHighとなっている。すなわち、図7(i)の期間におけるパルスの振動は、ノズルから吐出しない程度のものとなっており、これにより、メニスカスの搖動だけを実現する。
このように、駆動波形選択出力部37において、選択部46では、吐出あり又は吐出なし、吐出されるインク滴量を示す画像データに従って、駆動波形選択信号M0~M4のうち1つを選択し、スイッチ45のオン・オフが制御される。
なお、空吐出波形は、共通駆動波形とは別に作成されるものとする。
図7では、微駆動波形を共通駆動の波形の一部を利用する例を示したが、これは第1の搖動(非吐出期間微駆動)や、第2の搖動(直前微駆動)のいずれかに使用してもよい。あるいは、2種類の微駆動を共通駆動波形に含ませてもよい。
あるいは、第1の搖動、第2の搖動用の微駆動波形について、共通駆動波形とは別に生成した専用の2つの微駆動波形を、例えば、ヘッド制御部2や、コントローラ5において、予め記憶しておき、第1の搖動又は第2の搖動の際に共通駆動波形に代えて、出力してもよい。
本発明の実施形態においては、駆動波形選択出力部37は、印刷予定の画像データにおける画像形成期間に基づいて図7のように波形を選択することで圧電素子112に駆動波形を出力している。これに加えて、駆動波形選択出力部37は、駆動印刷中の非吐出期間においては、第1の搖動のための弱微駆動波形を出力し続け、インク吐出の直前には、第2の搖動のための強微駆動波形を圧電素子112に対して出力する。第1の搖動と第2の搖動については、図14、図15とともに後述する。
図6に戻って、ラッチ36は、一旦シフトレジスタ35に保持されたN個の印字データを、ライン同期信号LSの入力により保持するN個のラッチであり、1つあたり2ビットのデータ(D1~DN)を保持し、それぞれ対応する搖動指示部38へ供給する。
搖動指示部38は、駆動対象となる圧電素子112のそれぞれに対応してN個備えられている。搖動指示部38が指示する搖動は、第2の搖動である直前微駆動に相当する。
図8は、搖動指示部38のより詳細な構成例である。図8に示すように、各搖動指示部38は、バッファ41、変換部42、搖動期間生成部43、非吐出期間検出部44とから構成される(図8参照)。
バッファ41は、例えばNb段のシフトレジスタなどで構成されたFIFO(First In First Out)型のバッファであり、複数ラインNb分の印字データが格納され、ライン同期信号LSが入力されるたびに、ラッチ36の出力である印字データDn(nはノズル番号で、1~N)が入力され、格納された最古の印字データが出力される。
非吐出期間検出部44は、印字データDnがどれだけの期間(ライン数)非吐出(吐出なし)が続くかを検出するものであり、検出した非吐出期間に応じて、その非吐出期間に続く吐出が、所望の吐出が可能となるに必要な吐出直前に行うべきメニスカスの搖動パルス数Nshkを決定し出力する。
搖動期間生成部43は、非吐出期間検出部44からメニスカス搖動パルス数Nshkが通知されると、バッファ41の最終段からNshk+1段手前の出力を監視し、その出力が吐出を示す印字データとなった時に、搖動指示信号ShkをNshkラインの期間有効(アクティブ)にして出力する。変換部42は、搖動指示信号Shkが有効となっている間は、バッファ41から入力される印字データが吐出なしであった場合にメニスカス搖動を示すデータに変換して出力する。それ以外は変換しないで出力する。
このようにして、搖動指示部38は、対応するノズルの非吐出期間に応じて、吐出直前に所定回数のメニスカス搖動を行うよう印字データを変換し、対応する駆動波形選択出力部37に供給する。
搖動指示信号生成部52において、ラッチ36から入力される印字データDnはバッファ41により、バッファ段数Nbライン分遅延して出力される(Dn')。バッファ41のうち、途中のいくつかの印字データは、搖動期間生成部43において参照される。
非吐出期間検出部44は、非吐出期間カウンタ54と、カウンタ制御部53とから構成される。
非吐出期間カウンタ54は、ライン同期信号LSを基準として印字データDnが吐出なしとなるライン数をカウントし、カウント数Cntを出力する。非吐出期間カウンタ54において、カウントするか否かはカウンタ制御部53から供給されるENに従い、カウンタのリセットはカウンタ制御部53から供給されるRSTに従い行われる。
カウンタ制御部53は、非吐出期間カウンタ54のカウント有効/無効、及びカウント値のリセットを制御する。カウンタ制御部53は、カウントするか否かを示すイネーブル信号ENと、カウンタのリセット信号RSTとを出力する。カウンタイネーブル信号ENは、印字動作中は常に有効で、カウンタリセット信号RSTは、印字データDnが吐出なし以外のデータが入力されたときはカウンタを0にリセットする。
搖動期間生成部43は、選択部51と、搖動指示信号生成部52と、搖動期間決定部55とから構成される。
選択部51は、バッファ41のうちの途中のいくつかの印字データが入力され、搖動パルス数Nshkに従って、そのうちの1つが選択する。
搖動指示信号生成部52は、選択部51の出力が吐出を示す印字データとなった時に、搖動指示信号ShkをNshkラインの期間有効(アクティブ)にして出力する。
搖動期間決定部55は、非吐出期間カウンタ54から供給される非吐出期間カウント数Cntが予め設定されている閾値Thを超えた場合に、その非吐出期間に続く吐出が、所望の吐出が可能となるに必要な吐出直前に行うべきメニスカスの搖動パルス数Nshkを出力する。非吐出期間に応じて最適な搖動パルス数を加えるため、この閾値Thと搖動パルス数Nshkの組み合わせは複数設定することが好ましく、表1はこの数値の一例である。
ここでは、4組の設定値例を示しているが閾値の組み合わせ及び組数はこの限りではない。また、それぞれの非吐出期間に対する最適な搖動パルス数は、インク特性やヘッド構造、周囲環境(特に湿度)などが変わると異なるので、予め吐出実験などにより求めておき、周囲環境に応じて更新するようにしておくとより好ましい。
なお、非吐出期間はライン数でカウントしているので、非吐出時間Ti[秒]を、ライン周期Tで割った値に換算して設定する。本例ではT=25[us](吐出周波数40kHz)としての例である。また、搖動パルス数Nshkは非吐出期間カウント数Cntが0にリセットされても、搖動指示信号Shkが有効になるまでは、その値が保持される。カウント値がより大きな閾値Thを超えた場合には、すぐに対応する搖動パルス数Nshkに変更される。
なお、バッファ41のバッファ段数Nbは、設定される搖動パルス数Nshkの最大値に「+1」した値である。表1の例ではNb=101である。想定するNshkの最大値はある程度余裕を持って設定すればよいが、大きくしすぎると印字データ入力から印字開始までのレイテンシが遅くなるので、バランスを考えて設計する。
選択部51に入力するバッファ41からの印字データは、最終段からNshk+1手前の印字データである。非吐出期間に応じて搖動期間を変更するので、採用しうるNshkに対応した複数の印字データを入力する。
表1の例ではそれぞれ6,11,51,101段手前の印字データが入力され、Nshk=5となれば、6段手前の印字データが選択され、非吐出時間が継続しNshk=10となれば、11段手前の印字データに切り替わって出力される。
搖動指示信号生成部52は、選択部51で選択出力された印字データを監視し、吐出を表す印字データとなった時に搖動指示信号ShkをNshkラインの期間有効(アクティブ)にして出力する。
変換部42では、搖動指示信号Shkがアクティブのとき、バッファ41から入力される印字データDn'が吐出なしであった場合にメニスカス搖動を示すデータに変換したデータDn''を出力する。それ以外は変換しないで出力する。本実施形態の例では、印字データを1ビット追加し、メニスカス搖動=4とする。
なお、画像によっては、非吐出期間が最大の閾値(400000、10秒)を大幅に超えても吐出が行われないノズルも存在する。バッファ41の段数Nb以上の搖動パルス数は付加できないので、このような場合には吐出直前でなくとも一旦メニスカス搖動を行い、ノズル部粘度が上昇しすぎないようにするのが望ましい。
その閾値Thを表1の例のように定めるとすると、搖動期間決定部55は、非吐出期間カウント数Cntが、閾値Th=60000を超えると、強制搖動信号Sonを有効にして搖動指示信号生成部52に通知する。
搖動指示信号生成部52では、強制搖動信号Sonが有効になれば、選択部51の出力にかかわらず、搖動指示信号ShkをNshkラインの期間アクティブにして搖動を指示する。 このように指示することで、ノズル毎に、非吐出期間が続いた後に吐出する際、予め設定される吐出直前に行うべきメニスカスの搖動パルス数Nshkが非吐出期間に応じて決定され、その吐出の直前に搖動される。
したがって、印刷する画像によってノズル毎に非吐出期間が異なるような場合であっても、第2の搖動期間である直前微駆動期間を調整し、各々のノズルから所望の吐出特性が得られるようになる。
つまり、不吐出などの吐出不良防止や、吐出速度や吐出滴量の低下の軽減できる。また、各ノズルにおいて必要以上にメニスカス搖動を加えないので、メニスカス搖動によるインク乾燥の促進を抑えることができる。よって、インク粘度回復のために必要な空吐出量及び空吐出処理頻度を低減し、印刷生産性の向上及び無駄なインク消費を削減することができる。
<空吐出量算出部>
次に空吐出量の算出方法の一例について説明する。図9は、図6の空吐出量算出部60の詳細ブロック図の一例である。
本実施形態において、空吐出量算出部60は、各ノズルに発生する非吐出期間を印字予定の画像データから導出し、その非吐出期間の累積時間を元に各ノズル毎の空吐出量を決定する、空吐出量設定部である。
空吐出量算出部60は、吐出量変換部62、排出インク量推定部63、加算部64、空吐出量カウンタ65、空吐出判定部66、空吐出データ生成部67とから構成される。
吐出量変換部62は、印字データDnが入力され、印字データから吐出されるインク滴の滴量に変換する。印字データに対応するインク滴量は設計時に決まっている。例えば、大滴:10pl、中滴:4pl、小滴:2pl、吐出なし:0pl等である。
排出インク量推定部63は、例えば、ルックアップテーブルなどにより構成される。非吐出期間カウント数Cntが入力され、カウンタリセットRSTの直前の値がラッチされる。
非吐出期間に応じたインク粘度が初期値に戻るまでに必要な総排出量は、実験により予め求められており、非吐出期間の累積時間を参照値として総排出量を出力する配列が設定される。
例えば、インク増粘により低下した吐出速度が通常値(所望値)に戻るまでに必要な吐出総量を非吐出期間に応じて数点求めておき、排出インク量推定値として排出インク量推定部63で設定する。
図10は、第1実施形態における非吐出期間と総排出量の関係の一例である。
●は実験による算出値、点線は補間した線、破線は非吐出期間の範囲で区切った場合の推定値である。より詳細に推定値を求めるには測定数を増やすか、算出値からその間の値を補間したものであっても良い。そして、入力される非吐出期間カウント数Cntに応じて、排出インク量推定値が出力される。
そして、最終的に空吐出量算出部60は対応するノズルから空吐出が必要と判定すれば、空吐出要求FReqを出力する。コントローラ5は、空吐出処理要求があれば、適宜印字動作を休止し、空吐出処理に移行する。
空吐出が可能になれば、空吐出波形生成部23及び駆動波形選択信号生成部39に空吐出用の駆動波形情報を設定し、空吐出駆動波形を生成し、ヘッド駆動部31に供給する。
また、コントローラ5からの空吐出指示があるとき、空吐出量算出部60の後段に設けられる選択部61は、印字データを、空吐出量算出部60から出力される空吐出データに切替えて駆動波形選択出力部37に出力する。空吐出量算出部60は、空吐出指示があれば、各ノズル毎に決定された空吐出量の分だけ空吐出データを生成し、選択部61を介して駆動波形選択出力部37に出力する。
このようにすれば、各ノズル毎に、非吐出期間に生じたインク増粘量を考慮して必要最小限の空吐出量を予測し算出するので、空吐出量を低減することができ、無駄なインク消費を削減することができる。
加算部64は、排出インク量推定部63出力と空吐出量カウンタ65に保持され出力されている現在の空吐出予測量を加算し、空吐出量カウンタ65のロード値として供給する。
空吐出量カウンタ65は、ダウンカウンタなどにより構成され、カウンタリセットRSTを排出インク量推定部63及び加算部64の処理時間分遅延させた信号で、加算部64の出力をロードし、吐出量変換部62から入力される吐出量を減算していき、減算されたカウンタ値を出力する。これが現時点での粘度回復のために必要な空吐出予測値となる。
非吐出期間が確定するたびに、現時点で必要な空吐出量に、検出された非吐出期間に新たに増加したインク増粘分に相当する排出総量推定値を加算することにより空吐出予測値を更新する。通常の吐出により増粘したインクは順次排出されていくので、印字データに基づき、空吐出予測値から減算していく。
空吐出判定部66は、空吐出量カウンタ65から出力される空吐出予測値が予め設定しておく値を超えると空吐出が必要と判定し、空吐出要求FReqを発行する。
空吐出データ生成部67は、空吐出要求に基づきコントローラ5から通知される空吐出指示に従い、空吐出予測値を空吐出1滴のインク滴量で割った数だけ空吐出滴数を指示する空吐出データFDnとして生成して出力する。なお、当該ノズルでは空吐出要求を発行していなくても、空吐出予測値に基づき必要量の空吐出を行うと良い。
また、空吐出要求から実際の空吐出までは時間遅延が発生するので、要求後も空吐出量の算出は継続しておくと良い。
また、装置内環境(温度・湿度など)や印刷条件(印刷速度)などが変われば、各種設定値の最適値も変わるので、これに併せてそれぞれの設定値もヘッド制御部2を介して更新するようにするのがより好ましい。以下詳説する。
駆動波形生成部22で生成する駆動波形の情報は、記録ヘッド、画像形成装置の設計時に、使用するインクの特性に適合するように設計され、装置内(例えばコントローラ5のプログラム格納用のROM81や不揮発性メモリ83、図18参照)に記憶される。そして、装置の立ち上げ時に駆動波形生成部22に設定される。
同様に、搖動指示部38に設定される非吐出期間閾値Thと対応するメニスカス搖動パルス数Nshkなどの各種設定値も、予め実験などにより、吐出特性(吐出速度、インク滴量、吐出安定性など)がほぼ所望となるように決定されており装置内に記憶させておく。この各種設定値を装置の立ち上げ時に、ヘッド制御部2を介して各部に設定する。
また、空吐出量算出部60に設定される各種設定値も予め実験などにより算出されており、装置内、例えばコントローラ5等に記憶され、この値を装置の立ち上げ時に、ヘッド制御部2を介して各部に設定する。
また、空吐出量算出部60は対応するノズルから空吐出が必要と判定すれば、空吐出要求FReqを出力する。それぞれ要求されるFreq_1~Nは、ヘッド制御部2に入力され、いずれか1つ、あるいは複数からの要求があればコントローラ5に、空吐出処理要求を通知する。コントローラ5は、空吐出処理要求があれば、適宜印字動作を休止し、空吐出処理に移行する。
また、従来一定間隔で行っていた空吐出処理を、必要時のみ実施するようにできるので、通常印刷処理を妨げることなく、印刷生産性を向上させることができる。
上記の構成により、本実施形態では、ノズルの非吐出期間である、印刷予定の画像データにおける色毎の画像非形成期間(画像無し期間)では空吐出すべき量を加算し、画像データにおける画像形成期間(画像有り期間)から変換される吐出量に応じて空吐出すべき量を減算して、これを繰り返して最終的な空吐出量を各ノズル毎に決定している。
そのため、一の空吐出と該一の次の空吐出の1シーケンスの間に複数回の非吐出期間(画像非形成期間)と印字吐出(画像形成期間)がある画像印字においても、各ノズル毎の実際の増粘インク量を過不足無く決定・排出することができ、増粘インクによる異常吐出が無い、高画質を得ることが可能になる。
<第1実施形態の変形例>
上記の実施形態では駆動波形選択信号生成部39はヘッド駆動部31に設けられていたが、駆動波形選択信号生成部39は、ヘッド駆動部31の内部に備え、駆動波形選択信号M0~4をヘッド駆動部31内に供給するようにしても良いし、そのうちの一部のみヘッド駆動部31で生成するようにしても良い。例えば、メニスカス搖動波形を選択する駆動波形選択信号M4は、M0とM3の反転信号との論理和で生成できる。このようにすれば転送する信号線数は減らすことができる。
搖動指示部38は、例えば印字信号制御部21内に備えられ、生成される搖動指示信号Shkを印字データと共に、シリアル転送信号線SDI,SCKを用いて転送しても良い。そして、印字データと同様にシフトレジスタ35に順次格納され、ラッチ36で1ライン分のデータが保持され、それぞれ駆動波形選択出力部37に供給される。
あるいはコントローラ5内で画像データの処理と共に各画素に対応して搖動指示信号Shkを生成するものであっても良い。
同様に、空吐出量算出部60も、例えば印字信号制御部21内に備えられ、空吐出予測量と空吐出要求を判定し、空吐出時には空吐出予測量に基づいて空吐出データを生成し、印字データ同様にヘッド駆動部31に供給するようにしてもよい。あるいはコントローラ5内で処理することもできる。
駆動波形Vpは、上述の説明では、複数種類のインク滴を吐出させる複数の駆動波形要素を組み合わせ、各圧電素子に対して必要な波形部分をスイッチング素子によって選択的に印加するようにしているが、それぞれの種類の吐出に対応する複数の駆動波形を、駆動波形生成部22で生成するようにして、駆動波形選択出力部37では、アナログマルチプレクサなどによりこれらの駆動波形のうちの1つが選択出力されるようにしても良い。
図11は、ヘッド駆動部に含まれる信号選択部の変形例の回路図である。
本変形例の信号選択部370は、選択部371と、スイッチ372と、共通駆動波形選択部373とを有する。
図11において、駆動波形Vp1は、駆動波形の選択的に印加することによって大滴・中滴・小滴を吐出するための共通駆動波形であり、駆動波形Vp2はメニスカス搖動専用の波形である。選択部371は、搖動指示信号Shkに従ってVp1かVp2を選択出力する。駆動波形Vp2のメニスカス搖動専用の波形は、後述する直前微駆動の第2の搖動のための波形であるとする。
スイッチ372は図6のスイッチ45と、選択部373は選択部46と同様に機能する。
例えば、なお、本例では、駆動波形は、共通駆動波形と、メニスカス搖動専用(直前微駆動)の2種類であり、第1の搖動用の波形は、図7に示すように共通駆動波形に含まれる例を示したが、メニスカス搖動専用の波形として、第1の搖動用の波形も、共通駆動波形とは別々に作成してもよい。
<ノズルにおけるインク状態>
下記、図12~図14の模式図及び図15のグラフを用いて、液室内のインク粘度の時間変化について説明する。図12~図14はノズルのインク粘度を説明する模式図であり、図15は、第1実施形態におけるインク粘度の時間変化を示すグラフである。
図12は、非吐出期間におけるノズル周辺のインク状態の経時変化を説明する図である。図12において、(a)は、インク粘度が低い、例えば空吐出動作直後の液室内のインクの状態を示す模式図であり、(b)は、長時間、非吐出期間が続いた状態の液室内のインクの状態を示す模式図である。
図12(b)に示すように、非吐出期間が続くと、インクが空気に触れるノズル周辺でインクが増粘する。このように周辺のインクが増粘すると、吐出速度が低下したり、不吐出が発生する等の異常が発生する。
そこで、本発明の実施形態では図13に示すように、非吐出期間中に弱い微駆動を実行する。
図13は、非吐出期間中におけるノズル周辺の弱微駆動のノズル周辺のインク状態の説明図である。図13において、(a)は、インク粘度が低い、例えば空吐出動作直後の液室内のインクの状態を示す模式図であり、(b)は、長時間、非吐出期間が続いた状態で微駆動を実行していた場合の液室内のインクの状態を示す模式図である。
図13(b)のように、吐出用のピエゾを微少に駆動させ(微駆動)、ノズル部の増粘インクをノズル奥へ拡散させることにより、ノズル部のインク粘度を正常近くに低く保ち、吐出性を確保することができる。
しかしながら、この微駆動を行うと、増粘ノズルをノイズ奥の方に拡散してしまう。これにより、副作用として、ノズルの奥まで増粘インクが拡散していき、吐出異常(吐出速度低下等)を長引かせてしまう。さらにこのとき、微駆動による拡散に依ってノズル部の増粘が飽和量に達しないため、微駆動を行えば行うほど、無尽蔵に増粘インクを生み出してしまうおそれがある。
そこで、本発明の実施形態では、前述の「非吐出期間中」微駆動の副作用を除去したまま、吐出性を確保するために、画像形成のためのインク吐出の直前に、図13(b)の微駆動よりも強い微駆動を加える。
詳しくは、図14は、本発明で適用する非吐出期間中の第1の搖動と、画像吐出前の直前微駆動の搖動を行った際のノズル周辺のインク状態の説明図である。詳しくは図14において、(a)は、非吐出期間に弱い微駆動を実施した液室内のインクの状態を示す模式図である、(c)は画像形成の直前に直前微駆動を実施した液室内のインクの状態を示す模式図である。
また、図15のグラフにおいて、横軸は時間、縦軸はインク粘度を示している。図15において、ノズルAは、記録媒体上に長時間(t4~t10の期間吐出)、インクを吐出するノズルに相当する。ノズルBは、インクを記録媒体1の一部に吐出し(t6~t9の期間吐出)、記録媒体1の下流側はインクを吐出しない(t9~t11の期間非吐出)ノズルに相当する。ノズルCは、記録媒体1の下流側にインクを吐出する(t9~t10の期間吐出)ノズルに相当する。ノズルDは、t3以降インクを吐出しないノズルに相当する。
図14(b)では、図13で示した非吐出期間中の微駆動を、最小限に抑えている。ここで、図15において増加していく点線は、非吐出期間中に微駆動を行わなかった場合のインク粘度、増加していく実線は、非吐出期間中に微駆動を行わった場合のインク粘度の推移を示している。
図15に示すように、僅かであっても、非吐出期間中に微駆動を印加することで、ノズルにおいてインク粘度の増加を抑制できる。このように、非吐出期間中の微駆動に依る増粘インクの拡散行為は必要最小限に抑えることで、非吐出期間中の微駆動の副作用である、ノズル奥への増粘インクを拡散させてしまう点を、回避できる。
しかし、この最小限の微駆動では、インクの粘度の上昇を完全に抑えることはできないため、時間の経過とともにインクの増粘は進み、非吐出期間中の微駆動の直後にインク吐出を開始しても吐出速度の低下や不吐出などの吐出不良となる可能性が高い。
そこで、図14(c)に示すように、直前微駆動として、極めて短時間、画像形成のための吐出の直前に微駆動を入れることでノズル内部の増粘インクを瞬間的に攪拌し、インク粘度を下げる。これにより、直前微駆動の直後の画像形成の吐出を正常に確保する。
上記のように非吐出期間中の第1の搖動、インク吐出直前の第2の搖動、2種類の搖動を使い分けることで、「非吐出期間中」の微駆動の副作用を発生させずに、且つ経時によるインク粘度の上昇を抑制しつつ、インク吐出時の吐出性を確保することができる。
なお、第1の搖動は、非吐出期間であって、且つ、第2の搖動(直前微駆動)の指示が出ていないときに、駆動波形選択出力部37は共通駆動波形から微駆動を選択することで実行される。駆動波形選択出力部37は第1の搖動指示部として機能する。
搖動指示部38は、直前微駆動を指示するため、第2の搖動指示部(直前搖動指示部)として機能する。
また、上述のように、搖動指示部は、直前微駆動の時間を、搖動の時間(Tf1,Tf2,Tf3、図15)をノズル毎に設定する。
そのため、インク粘度が異なるノズル間においても、いずれも適切にインク粘度を低下させるため、図15のt4,t6,t9のタイミングでは、低下したインク粘度で、画像形成を開始することが可能になる。
上述の第1実施形態では、画像データのうち、非吐出期間の累積時間を使用して空吐出量を設定していた。しかし、図14、図15で示すように、ノズル周辺のインクの粘度は、第2の搖動である直前微駆動を実施することによって、インク粘度が低下する。
そのため、直前微駆動を考慮せずに、非吐出期間のみを考慮して空吐出量を設定すると、直前微駆動の時間が長いほど、設定された空吐出量で空吐出するとリフレッシュが過剰になるおそれがある(図15、t12、破線の円で示すノズルB、C参照)。
そのため、空吐出量を算出する際に、直前微駆動の情報も参照すると、さらに空吐出量を抑制して最適化することも可能になる。
そこで、空吐出量を設定する際に、さらに、搖動の時間も考慮する制御構成を下記説明する。
<第2実施形態>
下記、空吐出量を設定する際に、インク粘度を予測することで、非吐出期間の累積時間に加えて、画像データと、直前微駆動の搖動の時間も考慮する制御について説明する。
上記実施形態では、ヘッド駆動部31側に、搖動指示部と空吐出設定部を設けていたが、搖動指示部と空吐出設定部の機能は、インク粘度予測の機能とともにコントローラ5側に設けてもよい。
図16は、本発明の第2実施形態のコントローラ50のノズルリフレッシュ制御に係る部分の機能ブロック図である。例えば、これらの機能はコントローラの画像処理部に含まれていると最適である。
コントローラ50は、階調処理部401、画像形成用吐出量算出部402、非吐出期間カウンタ403、インク粘度予測部404、直前微駆動時間設定部405、空吐出有無判定部406、空吐出量算出部407、空吐出データ変換部408、画像データ変換部409を有する。これらは、図18のCPU(Central Processing Unit)80によって機能が実現される。
また、コントローラ50は、波形データ記憶部410と、直前微駆動閾値記憶部411と、空吐出有無閾値記憶部412、空吐出波形データ記憶部413をさらに有している。これらの記憶部のデータはROM(Read Only Memory)81によって記憶されている。
波形データ記憶部410は図18のROM81によって構成され、共通駆動波形、非吐出期間用微駆動波形、吐出直前駆動波形、空吐出波形などの波形データを記憶している。
階調処理部401は、受け付けた多値の元画像データに階調処理を行い、少値の画像データへ変換する。多値の元画像データは、例えば、読み取った、又は送信された原稿の画像そのものに相当する。即ち、元画像データは、記録媒体1上に画像を形成するためのデータであり、空吐出や搖動のためのデータが含まれない画像データである。
画像形成用吐出量算出部402は、印刷予定の少値化された画像データの画像形成期間からインク吐出量を算出する。
非吐出期間カウンタ403は、画像データにおける画像データ「無」の期間の累積時間を、ノズル毎にカウントする。
インク粘度予測部404は、ノズル毎の非吐出期間と、画像データから算出されるインク吐出量と、第2の搖動動作の搖動時間とに応じて、液室内のノズル周辺のインク粘度を予測する(推定する)。
直前微駆動時間設定部405は、予測されたインク粘度と、直前微駆動閾値記憶部411に記憶された1又は複数の直前微駆動閾値(Vth1~Vth3)とを比較して、直前微駆動の有無及び直前微駆動の時間を設定する。直前微駆動時間設定部405は、直前搖動指示部として機能する。
空吐出有無判定部406は、各ノズルについて設定されるインク粘度予測値が、空吐出要否閾値量以上かどうかを判定する。そして、複数のノズルを有するノズル列のうち、設定された空吐出量が、空吐出要否閾値量以上であるノズル数が、予め設定したノズル数以上に達したか否かによって、ノズル列で空吐出を実行するか否かを決定する。
空吐出量算出部407は、ノズルの非吐出期間と、印刷予定の画像データから算出されるインク吐出量と、直前微駆動の搖動時間とから算出されるインク粘度予測値に応じて、空吐出として吐出させる液体の空吐出量を設定する、空吐出量設定部として機能する。
図17は、第2実施形態で用いるインク粘度予測値と空吐出量の関係を示すグラフである。図17に示すように、空吐出量で算出される空吐出量はインク粘度と比例関係になるように設定する。
空吐出データ変換部408は、設定された空吐出量を実現するように、空吐出波形・空吐出発数を設定する。
画像データ変換部409は、少値化された画像データを、所定の画像単位で、ヘッド処理部2で処理可能な形式に変換して画像データDnにする。また、画像データ変換部409は、第1の搖動、第2の搖動に関するデータも出力する。
なお、本実施形態では、直前微駆動時間設定部405と空吐出量算出部407、インク粘度予測部404の機能を、コントローラ50に設ける例を示しているが、これらの機能は第1実施形態と同様に、ヘッド駆動部31に設けてもよいし、あるいは、ヘッド制御部2の印字信号制御部21に設けてもよい。
<ハードウエア構成>
図18は、図16のコントローラ50のハードウエア構成の一例を示した図である。
コントローラ50は、CPU80と、ROM81と、RAM(Random Access Memory)82、不揮発性メモリ83と、インターフェース部84と、IOインターフェース85とがメモリバス86を介して接続されている。バスは複数のバスに分離されていても良い。
CPU80は、この画像形成装置全体の制御を司る。ROMは、情報や制御プログラムなどが格納される。RAM82は、ワーキングメモリなどに使用されており、プログラム用と画像処理用は分離しても良い。
不揮発性メモリ83は、装置固有の情報や、更新可能な情報を格納する。インターフェース部84は、外部装置(ホストコンピュータなど)との情報のやり取りを仲介する。
IOインターフェース85は、装置内の各部との情報のやり取りを行う。IOインターフェース85には、図6に示したヘッド駆動部31、駆動波形生成部22、印字信号制御部21の他に、図示しない操作パネルなどの入出力装置、各種センサなどにも接続される。
各種センサには、キャリッジのホームポジションセンサや紙位置検出センサ、機内環境(温度や湿度など)を検出するセンサなどがある。また不揮発性メモリ83は、挿抜可能な形態としても良い。
なお、図12は、第2実施形態のコントローラ50のハードウエア構成として説明したが、第1実施形態のコントローラ5も同様のハードウエア構成を有しているものとする。
<第2実施形態のリフレッシュ制御>
次に、インク粘度予測値の時間変化と、インク粘度予測値に応じた第2の搖動時間と、空吐出量の具体的な設定について説明する。
図19は、インク粘度予測値の時間変化を示すグラフである。図20は、本発明の実施形態に係るリフレッシュ制御のフローチャートである。
図19において、横軸は時間、縦軸はインク粘度予測値を示している。図19において、ノズルAは、記録媒体上に長時間(t4~t10の期間吐出)、インクを吐出するノズルに相当する。ノズルBは、インクを記録媒体1の一部に吐出し(t6~t9の期間吐出)、記録媒体1の下流側はインクを吐出しない(t9~t11の期間非吐出)ノズルに相当する。ノズルCは、記録媒体1の下流側にインクを吐出する(t9~t10の期間吐出)ノズルに相当する。ノズルDは、t3以降インクを吐出しないノズルに相当する。
図20のフローチャートは、1周期分内の空吐出シーケンスにおける、インク粘度予測値の演算と空吐出量の設定の詳細フローである。S15において前回の空吐出の終了時をSTARTとする。
ステップS101では、印刷予定の画像データにおいて画像非形成期間に相当するため、非吐出期間となる。空吐出の直後は、図1の形態で、キャリッジ13と共に記録ヘッド14a,14bが移動する場合には、空吐出受けと記録媒体との間に少なくともバッファとなる間隔が存在している。また、図2の形態で、空吐出受けである維持回復機構90が図2の印刷位置に戻るまでの時間が存在するため少なくともその分の非吐出期間が存在する。空吐出動作位置から印刷位置へ戻り、記録ヘッド14(40)と記録媒体1とが対向した後も、画像形成のためのデータがない場合は、引き続き、非吐出期間が継続する。
ステップS102で、非吐出期間に対応づけて、インク粘度予測値を加算する(図19、t0→t1)。即ち、少値化された画像データにおいて画像非形成期間が継続する時間が長くなると、インク粘度予測値が増加していく。
ステップS103で、インク粘度予測値が第1の閾値Vth1に到達する前に、画像データの次の画像開始時間に到達すると(Yes、図19、t1)、直前微駆動を「無」に設定する(S104)。
その後、画像データでの画像形成期間のための滴サイズ、吐出時間に応じてインクの吐出量を算出する(S105)。
そして、算出されたインク吐出量に応じて、インク粘度予測値を減算する(S106、図19、t1→t2)。
その画像形成動作が終了すると、ノズルは非吐出状態になるため、ステップS101に戻る。
一方、S103で、第1の閾値Vth1に到達する前に画像データの次の画像開始時間に到達しなかった場合、非吐出期間が長くなることになり、インク粘度予測値も増加していく。
そして、インク粘度予測値が第1の閾値Vth1以上第2の閾値Vth2未満のときに画像データが次の画像形開始時間が到達すると(S107でYes、図19、t4)、直前微駆動を実行することを決定し、直前微駆動時間をTf1に設定する(S108)。
直前微駆動を実行することで、ノズル周辺のインク粘度は低下するため、直前微駆動時間Tf1に応じて、インク粘度予測値を減算する(図19、ノズルA、t3→t4)。
そしてS105に進み、画像データでの画像形成のための滴サイズ、吐出時間に応じてインクの吐出量を算出し、算出されたインク吐出量に応じて、インク粘度予測値を減算した後(S106)、ノズルは非吐出状態になるため、ステップS101に戻る。
なお、例えばベタ画像が用紙一面に出力される場合などは、インクが吐出し続けるため、ノズル周辺の増粘したインクが全て出力し終えると、補給されたインクと略同じ粘度のインクが出力される。この状況になると、インクの粘度の低下は停止し、理想値を維持し続ける(図19、ノズルA、t8→t10)。
一方、S107で、インク粘度予測値が第1の閾値Vth1を超えた後に第2の閾値Vth2に到達する前に画像データの次の画像開始時間に到達しなかった場合、非吐出期間が長くなることになり、インク粘度予測値も増加していく。
そして、インク粘度予測値が第2の閾値Vth2以上第3の閾値Vth3未満のときに画像データが次の画像形開始時間が到達すると(S110でYes、図19、t6)、直前微駆動を実行することを決定し、直前微駆動時間をTf2に設定する(S111)。
直前微駆動を実行することで、ノズル周辺のインク粘度は低下するため、直前微駆動時間Tf2に応じて、インク粘度予測値を減算する(図19、ノズルB、t5→t6)。
そしてS105に進み、画像データでの画像形成のための滴サイズ、吐出時間に応じてインクの吐出量を算出し、算出されたインク吐出量に応じて、インク粘度予測値を減算する(図19、t6→t9)。(S106)、画像形成のための画像データがなくなると、ノズルは非吐出状態になるため、ステップS101に戻る。
一方、S110で、インク粘度予測値が第2の閾値Vth2を超えた後に第3の閾値Vth3に到達する前に画像データの次の画像開始時間に到達しなかった場合、非吐出期間が長くなることになり、インク粘度予測値も増加していく。
そして、インク粘度予測値が第3の閾値Vth3以上になってから画像データが次の画像形開始時間が到達すると(S113でYes、図19、t9)、直前微駆動を実行することを決定し、直前微駆動時間をTf3に設定する(S114)。
直前微駆動を実行することで、ノズル周辺のインク粘度は低下するため、直前微駆動時間Tf3に応じて、インク粘度予測値を減算する(S115、図19、t7→t9)。
そしてS105に進み、画像データでの画像形成のための滴サイズ、吐出時間に応じてインクの吐出量を算出し、算出されたインク吐出量に応じて、インク粘度予測値を減算した後(S106)、画像形成のための画像データがなくなると、ノズルは非吐出状態になるため、ステップS101に戻る。
一方、S113でNoの場合、即ち、S103、S104、S110、S113ですべてNoであるため、画像形成のための吐出を行わないため、インク粘度予測値は下がることなく、増加していく(図19、ノズルD、t2→t11)。
なお、空吐出の周期は、複数の用紙への画像形成に対して1回行われたり、一枚の用紙の中でも画像を形成する部分と形成しない部分とがあるため、1つの空吐出の周期(シーケンス)の中で、例えば図19に示すように、インク粘度予測値の加算と減算を繰り返してもよい。
空吐出シーケンスの終期を示す空吐出開始タイミングに到達することが予測されると(S116)、空吐出開始タイミングでのインク粘度予測値と空吐出要否閾値Vth0とを比較する(S117)。
そして、空吐出が必要と判断されると(S118でYes)、インク粘度予測値に応じて、空吐出量を算出する(S119)。
ここで、S118において、複数のノズルを有するノズル列において、空吐出シーケンスに移行するかどうかを、ノズル列のうち、設定された空吐出量が、空吐出要否閾値量以上であるノズル数が、予め設定したノズル数以上に達したか否かによって、決定してもよい。
詳しくは、ノズルの空吐出動作の有無はノズル列毎に判定する。そして、複数のノズルを有するあるノズル列において、t11のタイミングで、例えば図19のノズルAのように、インク粘度予測値が空吐出要否閾値よりも低いノズルが多く、空吐出要否閾値よりも高いノズルが予め設定したノズル数に到達しない場合は、空吐出を実行しない、と判断する。
一方、ノズル列においてノズルB、C、Dのように、インク粘度予測値が空吐出要否閾値よりも高いノズルが多く、その中にノズルAのようにインク粘度予測値が空吐出要否閾値よりも低いノズルが存在する場合は、そのノズル列に対するすべてのノズルに対して空吐出を実施させる。その場合、ノズルAのようにインク粘度予測値が空吐出要否閾値よりも低いノズルは、最小限の空吐出量で空吐出動作を実行させるように設定する。
空吐出シーケンスに移行するかどうかを、予め設定したインク粘度予測値の空吐出要否閾値Vth0に対して、予め設定したノズル数以上が達したか否かによって決定するので、空吐出が不要な場合は空吐出を実施せずその時間を削減できるので、印刷生産性を向上させることが出来る。
S119で空吐出量を設定するとき、図19に示すように、ノズルDのようにインク粘度が高い場合であっても、空吐出を実行することでインク粘度が空吐出要否閾値Vth0よりも低くなるように、t11でのインク粘度が高いほど、空吐出量を多く設定する。
そして、空吐出量に応じて、空吐出波形・空吐出発数を設定する(S120)。例えば、波形を調整することで1発あたりの吐出量を調整してもよいし、同じ吐出量のインク滴を用いて、吐出発数を変更することで吐出量を調整してもよい。
そして、空吐出指示を行い、空吐出を実施して(S121)、終了となる(END,STARTに戻る)。
このように、本実施形態では、非吐出期間ではインク粘度予測値を加算し、印字吐出ではインク粘度予測値を減算し、直前微駆動の印加時間に応じてインク粘度予測値を減算することでインク粘度予測値を算出し、これを繰り返して最終的なインク粘度予測値を算出することで、そのインク粘度予測値に応じて空吐出量を各ノズル毎に決定している。
そのため、一の空吐出と該一の次の空吐出の1シーケンスの間に複数回の非吐出期間(画像非形成期間)と印字吐出(画像形成期間)を含む画像印字においても、非吐出期間中のメニスカス搖動や印字吐出直前に行うメニスカス搖動による増粘インク量の変化を考慮して空吐出量を決定することができる。そのため、各ノズル毎の実際の増粘インク量を過不足無く決定し・排出することができ、増粘インクによる異常吐出無い高画質を得ることが出来る。
また、本実施形態では、第1実施形態の制御に加えて、画像データに基づいたインクの吐出量や、直前微駆動のデータも考慮して、空吐出量を設定するため、増粘の解消に対して不足することなく、空吐出量を適切に節約して設定することができる。
なお、上記の実施形態及び実施例では、カット状の用紙を用いた例を示したが、長尺状の記録媒体に対して空吐出を実施してもよい。その場合は、空吐出受けの代わりに、長尺シート上の印刷領域と印刷領域との間の印刷領域外に、空吐出を行うようにタイミングを設定する。
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上記実施の形態では、本発明に係る搬送装置を備えた画像形成装置について説明したが、本発明に係る搬送装置は、画像形成装置を含めた液体を吐出する装置に広く適用することができる。
ここで、「液体吐出装置」とは、液体吐出部である液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出部を駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置等も含むことができる。
例えば、「液体吐出装置」としては、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置の他に、立体造形物(三次元造形物)を造形するために粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)が挙げられる。
又、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するもの等を意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子等の電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着する全てのものが含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等液体が一時的でも付着可能であればよい。
又、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液等も含まれる。
又、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置等が含まれる。
又、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質する等の目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置等がある。
「液体吐出ユニット」とは、インクジェットヘッド等の液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたもの等が含まれる。
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合等で互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。又、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
又、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータ等を使用することができる。
又、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等は何れも同義語とする。