JP7059161B2 - 回転機診断システム - Google Patents

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Description

本発明は、回転機診断システムに関する。
鉄鋼、機械、自動車など、様々な産業において、産業用の三相交流モータを用いた生産ラインが活用されている。例えば鉄鋼の生産ラインでは、圧延された鉄鋼は数十から数百の搬送用モータで構成された搬送ライン上を搬送され、様々な工程を経て加工されていく。このようなラインで使用されるモータ(回転機)は、受けのベアリング機構や導線の絶縁機構が破壊されることで、回転機としての機能が停止することが知られている。
多数の回転機を組み合わせて鉄鋼を搬送する等の機能を実現する場合、一部の回転機の故障がライン全体をとめてしまう恐れがあるため、すべての回転機の定期点検が行われている。しかし、この点検は1日ですべての回転機に対して実施することはできない。
すべての回転機を少なくとも最低一回点検するには非常に長い期間が必要となり、この点検の間に点検していない回転機に故障が発生してしまう恐れがある。このため、回転機の電流波形から回転機の健常度を診断する技術が開発されている(例えば、特許文献1、2を参照)。
特開2013-106470号公報 特開2016-195524号公報
前述した通り、回転機の診断を行うことでラインの異常を早期に発見して対策を講じることが可能となるが、これまでに知られている診断方法には以下のような問題があった。
例えば、特許文献1に記載の回転機の異常診断装置では、診断用の信号を定期的に回転機に与えて動きを変化させる必要がある。そして、回転機のコントローラを変更もしくは改造する必要があることから、診断用の設備が大規模化しコストが大きくなるという問題がある。また、診断用信号を実際に回転機に印加して回転機の動きを変調するため、生産ラインに影響を及ぼしてしまう可能性も考えられる。
また、特許文献2に記載の電動機の診断装置は、回転機の動作電流を検出し、電流波形からパワースペクトルをFFT(高速フーリエ変換)により演算し、これに現れる側帯波を検出して異常を検出している。
すなわち、特許文献2に記載の診断装置では、診断に必要な構成は、電流検出用のセンサと解析装置だけなので、特許文献1に記載の診断装置に比べて、小規模な設備での診断が可能となる。
ところが、特許文献2に記載の診断装置の場合、側帯波は主ピークから1Hz程度しか離れておらず、精度良くスペクトルを分解するには10秒を越える長時間のFFTの演算が必要になる。一方でメインピークの周波数は数十から数百Hzであるため、FFTの演算点数が膨大になる。このため、大容量のメモリが必要になると共に非常に高い演算能力が必要となり、解析装置として一般的なコンピュータ装置に相当する規模のものが必要になる。
このような大容量のメモリや高い演算能力が要求される解析装置を、数十から数百個設けられる全ての回転機に設置して、一斉に回転機のモニタリングを行うようにすると、全体での演算量や消費電力が大きくなりすぎるという問題が発生する。
また、FFTの演算で得られた膨大なデータを診断システムが集計して診断するためには、大容量のデータ通信が必要になり、データ通信のために大きな電力を消費してしまう。したがって、診断システムを設置するために、工場内に電源線や通信線を設置する工事が必要となり、大規模な回転機の監視を行うシステムを容易に構築することは困難であった。
本発明は、回転機の的確な診断が簡易な構成で行うことができる回転機診断システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、回転機に接続された少なくとも1本の電流線の電流を検知する電流検知器と、電流検知器が検知した電流の主周波数に対して直交検波を行い側帯波の強度を抽出する検波部と、を備える。そして、検波部は通信回路を有し、検波部が抽出した側帯波の強度を、通信回路からクラウド計算機に送信すると共に、通信回路でクラウド計算機から送信された検波部の動作設定値を受信し、受信した動作設定値に基づいて検波部を作動させるようにしたものである。
本発明によれば、回転機の劣化などの状態をモニタリングするシステムを低コスト、低電力、かつ、簡易に提供できるようになる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の第1の実施の形態例の検波部の構成例を示すブロック図である。 本発明の第1の実施の形態例の入力回路の構成例を示す回路図である。 本発明の第1の実施の形態例のシステム全体の構成例を示すブロック図である。 本発明の第1の実施の形態例による検波部の起動時のシーケンス図である。 本発明の第1の実施の形態例で観測される電流スペクトルの例を示す波形図である。 本発明の第1の実施の形態例による入力フィルタの周波数特性の例を示す波形図である。 本発明の第1の実施の形態例による検波部の内部動作波形の例を示す波形図である。 本発明の第1の実施の形態例による検波部の内部動作波形の例を示す波形図である。(a)はミキサ1201の出力GMIXのスペクトル、(b)は低域通過フィルタ1204の周波数特性、(c)は低域通過フィルタ1204の出力GLPF1のスペクトルを示す。 本発明の第1の実施の形態例による検波部の内部動作波形の例を示す波形図である。(a)はPIDコントローラ1206の出力GPIDのスペクトル、(b)はバンドパスフィルタ1208の周波数特性、(c)はバンドパスフィルタ1208の出力GBPFのスペクトルを示す。 本発明の第1の実施の形態例によるバンドパスフィルタ1208の出力GBPFの時系列波形の(a)と、上り伝送パケットの第1の構成例(b)を示す図である。 本発明の第1の実施の形態例によるバンドパスフィルタ1208の出力GBPFのスペクトル(a)と、上り伝送パケットの第2の構成例(b)を示す図である。 本発明の第1の実施の形態例による下り伝送パケットの構成例を示す図である。 本発明の第1の実施の形態例の検波部の構成例(変形例1)を示すブロック図である。 本発明の第1の実施の形態例の検波部の構成例(変形例2)を示すブロック図である。 本発明の第1の実施の形態例の検波部の構成例(変形例3)を示すブロック図である。 本発明の第2の実施の形態例の検波部の構成例を示すブロック図である。 本発明の第2の実施の形態例による検波部の内部動作波形の例を示す波形図である。 本発明の第2の実施の形態例の検波部においてデータラッチがリセット信号でラッチ動作を行う場合の動作波形の例を示す波形図である。 本発明の第2の実施の形態例(変形例)による入力フィルタの周波数特性の例を示す波形図である。 本発明の第1の実施の形態例の検波部の構成例(変形例)を示すブロック図である。 図20に示す構成例の場合の検波タイミングと伝送パケットの構成例を示す図である。 図20に示す構成例の場合のる検波部の起動時のシーケンス図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を詳細に説明する。なお、実施の形態例を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
以下に説明する各実施の形態例は、産業用の生産ラインに設置された回転機の診断を行う回転機診断システムである。
<第1の実施の形態例>
まず、本発明の第1の実施の形態例を、図1~図15を参照して説明する。
図1は、第1の実施の形態例の同期検波部1000の構成を示す。
ここでは、生産ラインに設置された三相交流モータを、診断対象の回転機1500とする。回転機(三相交流モータ)1500は、サーボアンプ1501と3本の電力線(それぞれu相、v相、w相)で接続され、サーボアンプ1501から供給される三相交流電源で駆動される。
ここで、3本の電力線の内の少なくとも1本(ここでは一例としてw相の電力線)に、電流検知器(カレントトランスフォーマ)1502が接続され、電流検知器1502がw相の電流をモニタリングする。なお、電流検知器1502は、回転機1500に流れる電流の大きさに応じて、適切に選択されなければならない。すなわち、電流容量の大きなモータに対して、許容電流容量の小さな電流検知器を適用すると、電流検知器が破損する恐れがあるので注意を要する。また、逆に電流容量の小さなモータに対して許容電流容量の大きな電流検知器を適用すると、電流信号が検出できなくなる。
電流検知器1502で得られた電流の検知信号は、直交検波部1000に供給される。
直交検波部1000は、アナログフロントエンド1100、デジタル信号処理部1200、通信回路1300、および電源回路1400から構成される。
アナログフロントエンド1100には、電流検知器1502の出力CTOPおよびCTONが入力される。アナログフロントエンド1100は、入力回路1110とアナログデジタル変換回路1120とを備える。
入力回路1110は、レベル変換および入力フィルタ処理を行い、出力CONDOを得る。入力回路1110の出力CONDOは、アナログデジタル変換回路1120に供給される。入力回路1110の詳細構成の例については後述する(図2)。
アナログデジタル変換回路1120は、入力のアナログ信号をデジタル化して、出力ADCOを得る。アナログデジタル変換回路1120の出力ADCOは、デジタル信号処理部1200に供給される。
デジタル信号処理部1200は、ゲイン制御用ミキサ1201、周波数制御用ミキサ1202、ゲイン制御用低域通過フィルタ1203、周波数制御用低域通過フィルタ1204、および目標ゲイン設定用引き算器1205を備える。また、デジタル信号処理部1200は、ゲイン制御器1206、周波数制御器1207、帯域通過フィルタ1208、可変制御発振回路1209、復調信号生成用ミキサ1210,1211、および出力演算部1212を備える。
そして、デジタル信号処理部1200には、上位システム(クラウド計算機130:図3)から通信回路1300が受信した、可変制御発振器1209の中心周波数設定値FCENTER、周波数ゲインFSTEP、ゲイン制御乗数PIDGCONST、周波数制御乗数PIDFCONST、およびゲイン制御目標値REFが入力される。
また、デジタル信号処理部1200の出力OUTは、通信回路1300を経由して図3に示す上位システム(クラウド計算機130)に送信される。
次に、直交検波部1000のデジタル信号処理部1200のゲイン制御パスについて説明する。
ゲイン制御用ミキサ1201では、アナログデジタル変換回路1120の出力ADCOと、復調信号生成用ミキサ1210の出力COSの掛け算が行われ、ゲイン制御用ミキサ1201の出力GMIXが、ゲイン制御用低域通過フィルタ1203に供給される。ゲイン制御用低域通過フィルタ1203で低域を通過させることで、後段の制御器における積分ゲインを増大することができる。モータ電流に対する同期検波では速度を必要としないため、積分制御を有効活用することで誤差の少ない制御が可能となる。
ゲイン制御用低域通過フィルタ1203で低域を通過させた出力GLPF1は、目標ゲイン設定用引き算器1205に供給される。
目標ゲイン設定用引き算器1205では、出力GLPF1からゲイン制御目標値REFを減算する演算(GLPF1-REFの演算)が行われ、演算出力GSUBが得られる。目標ゲイン設定用引き算器1205の演算出力GSUBは、ゲイン制御器1206に供給される。ゲイン制御器1206では、ゲイン制御乗数PIDGCONSTが演算出力GSUBに乗算され、ゲイン制御出力GPIDが得られる。
ゲイン制御器1206が出力するゲイン制御出力GPIDは、このゲイン制御出力GPIDの特定周波数帯域を通過させるため帯域通過フィルタ1208に供給される。帯域通過フィルタ1208の出力は、出力演算部1212に供給される。
なお、ゲイン制御器1206のゲイン制御出力GPIDは、復調信号生成用ミキサ1210,1211にも供給される。復調信号生成用ミキサ1210では、可変制御発振回路1209の一つの出力COS0と、ゲイン制御出力GPIDとが乗算され、乗算出力COSがゲイン制御用ミキサ1201に供給される。また、復調信号生成用ミキサ1211では、可変制御発振回路1209のもう1つの出力SIN0と、ゲイン制御出力GPIDとが乗算され、乗算出力SINが周波数制御用ミキサ1202に供給される。
次に、直交検波部1000のデジタル信号処理部1200の周波数制御パスについて説明する。
周波数制御用ミキサ1202では、アナログデジタル変換回路1120の出力ADCOと、復調信号生成用ミキサ1211の出力SINの掛け算が行われ、周波数制御用ミキサ1202の出力FMIXが、周波数制御用低域通過フィルタ1204に供給される。
周波数制御用低域通過フィルタ1204で低域を通過させた出力FLPF1は、周波数制御器1207に供給される。周波数制御器1207では、周波数制御乗数PIDFCONSTが出力FLPF1に乗算され、周波数制御出力FPIDが得られる。
周波数制御器1207が出力する周波数制御出力FPIDは、出力演算部1212に供給される。
また、周波数制御器1207が出力する周波数制御出力FPIDは、可変制御発振回路1209にも供給される。可変制御発振回路1209は、周波数制御出力FPIDと、通信回路1300から得られた周波数ゲインFSTEPおよび中心周波数設定値FCENTERに基づいて、発振出力COS0およびSIN0を生成する。
出力演算部1212は、ゲイン制御出力GBPFと周波数制御出力FPIDを適切に処理して、送信用信号OUTを生成する。例えば各種フィルタ処理、出力用のコード変換、CRC演算等が考えられる。これらはシステム構成に応じて柔軟に設計すればよい。
なお、図11の例で後述するように、出力演算部1212が高速フーリエ変換(FFT)の演算を行い、周波数解析を行うようにしてもよい。但し、出力演算部1212が行うFFT演算は、ゲイン制御出力GBPFに対して行う演算であり、電流検知器1502の出力を直接FFT演算する場合に比べて、非常に低いサンプリングレートで実行できる。
出力演算部1212で得られた送信用信号OUTは、通信回路1300から図3に示す上位システム(クラウド計算機130)に送信される。
なお、直交検波部1000の電源回路1400には、例えば電池1401が接続され、直交検波部1000内の各回路を作動させる電源電圧VCCを得る。電池1401を使用するのは一例であり、図1に破線で接続を示すように、太陽電池セル1402などの環境発電を設置して、電源回路1400が電源電圧VCCを得るようにしてもよい。なお、環境発電は、電池1401と併用してもよい。
図2は、アナログフロントエンド1100の入力回路1110の回路構成例を示す。
入力回路1110は、低域通過フィルタ1111、入力ロード1112、およびレベルシフタ1113を備える。
入力ロード1112は、電流検知器1502の2つの入力CTOPおよびCTONを架橋する抵抗性負荷308から構成される。抵抗性負荷308の大きさは、適用する電流検知器1502に依存して設計する必要がある。
レベルシフタ1113は、入力回路1110の後段に接続されたアナログデジタル変換回路1120に対して、入力レベルを調整する機能を持つ。すなわち、レベルシフタ1113は、電源電圧VCCと接地電位GNDの間を、ハイ側分圧抵抗器309とロウ側分圧抵抗器310で分圧して、適切に調整したレベルを電流検知器1502の一方の入力CTONに印加する。ここで決めた基準レベルは、低域通過フィルタ1111の動作にも影響することを考慮して設計する必要がある。
低域通過フィルタ1111は、4個の抵抗器301,302,304,306と2個のコンデンサ303,305とオペアンプ307から構成されるアクティブアンプである。アクティブアンプは、パッシブアンプに比較してゲインを調整できるという利点がある。
低域通過フィルタ1111で得られた出力CONDOは、アナログデジタル変換回路1120(図1)に供給される。
図3は、回転機診断システム100の全体構成例を示す図である。
回転機診断システム100は、複数の計測サイト110a~110mと、ネットワーク120と、クラウド計算機130とを備える。
計測サイト110a~110mは、生産ラインの回転機1500の設置数に応じた任意の数だけ設置される。システム構成によっては、1個の計測サイト110aだけを設ける場合もある。
図3では、1個の計測サイト110aの構成を示すが、他の計測サイト110b~110mも、同様の構成である。
計測サイト110a~110mは、回転機1500を計測する複数の回転機計測ユニット111a~111nと、各回転機計測ユニット111a~111nが出力するパケットPKT1,PKT2,・・・,PKTnを収集するデータ収集装置112とを備える。回転機計測ユニット111a~111nも、生産ラインの回転機1500の設置数に応じた任意の数だけ設置される。システム構成によっては、1個の回転機計測ユニット111aだけを設ける場合もある。
それぞれの回転機計測ユニット111a~111nは、回転機1500の電流をモニタリングする電流検知器1502と、電流検知器1502が検知した電流を検波する直交検波部1000とを備える。
それぞれの回転機計測ユニット111a~111nの直交検波部1000が備える通信回路1300(図1)は、回転機の計測データが含まれるパケットPKT1,PKT2,・・・,PKTnを出力する。
データ収集装置112は、各回転機計測ユニット111a~111nからのパケットP~PKTnを、ネットワーク120を介してクラウド計算機130に伝送する。
クラウド計算機130では、受信したパケットPKT1~PKTnに含まれるデータを蓄積する。そして、クラウド計算機130が備える演算ノード131で、蓄積したデータを使った様々な処理が施される。演算ノード131の情報は、回転機を用いた生産ラインの監視を行うシステムから参照され、回転機の劣化状況に合わせたオペレーションに役立てる処理が行われる。これにより機器のダウンタイムを最小にすることが期待され、オペレーションコストの低減に寄与する。
図4は、クラウド計算機130の演算ノード131からの指示で、特定の計測サイト110aの直交検波部1000を起動させる起動シーケンスを示す。
演算ノード131が起動させる前の状態のとき、直交検波部1000は、スリープモードであり、計測を行わない状態で待機している(ステップS11)。このように直交検波部1000がスリープモードに待機することで、回転機計測ユニット111aの消費電力を低減することができる。したがって、各回転機計測ユニット111a~111nを構成する端末を電池駆動する際の電池寿命を延ばすことができ、回転機診断システム100の運用コストを低減することができる。
ここで、演算ノード131から計測サイト110aに起動信号WAKEUPが伝送されると、該当する計測サイト110aの直交検波部1000が、アクティブ状態に遷移する(ステップS12)。その後、必要に応じて演算ノード131からの下り通信PKTDOWNが送信され、測定条件が設定される。この下り通信PKTDOWNでの測定条件の設定は、毎回行わなくてもよい。例えば、予め設定した動作条件を、計測サイト110aを設置した後に変更したいときに行うようにしてもよい。
そして、計測サイト110aの直交検波部1000は、初期化動作を行い(ステップS13)、設定状態での周波数制御およびゲイン制御を実行し(ステップS14)、同期検波動作の準備に入り(ステップS15)、同期検波による測定を開始する(ステップS16)。ここでは、例えば各制御が静定したことを通知する信号を内部で作成し、この信号を計測開始トリガ信号として活用する方法が考えられる。制御が静定したことを検出するには、制御結果と制御目標との差分をモニタリングし、モニタリングした差分が所定の設定値よりも小さくなることを検出する方法が一例として考えられる。
その後、計測サイト110aの直交検波部1000は、同期検波による測定を終了する(ステップS17)。この測定の終了は、例えば測定開始からの時間を内部のタイマで測定し、所定の時間になったら終了する。この測定開始などの時間も、測定設定値として下り通信で設定できるようにしてもよい。このようにすることで、運用コストを低減することができる。
測定が終了すると、直交検波部1000が備える通信回路1300(図1)が、測定結果のデータを上り通信で送信する(ステップS18)。演算ノード131は、受信した測定結果のデータに基づいた演算処理で、回転機の状態を診断する。
そして、計測サイト110aの直交検波部1000は、上りデータ通信終了後、スリープ状態になり、次のWAKEUP信号の受信まで待機する(ステップS19)。
次に、本実施の形態例の直交検波部1000での検波により、回転機の状態を計測する動作について説明する。
図5は直交検波部1000への入力信号(電流検知器1502の出力信号)のスペクトル解析例である。図5の横軸は周波数、縦軸は各周波数でのパワーを示す。
図5に示す波形の中央の周波数位置は主ピーク200である。そして、主ピークの周波数位置f0を中心として、第一側帯波201,202と、第二側帯波203,204が発生している。ここで、第一側帯波201,202や第二側帯波203,204が異常な状態であるとき、回転機1500に劣化などの異常があることが知られており、直交検波部1000では、側帯波201,202,203,204から回転機1500の状態を計測している。
主ピーク200の周波数f0と第一の側帯波201,202との周波数差はdf1である。同様に、主ピーク200の周波数f0と第二の側帯波203,204との周波数差はdf2である。
直交検波部1000では、主ピーク200に対して検波することで、主ピーク200の周波数f0が直流および2倍の高調波2f0に変換され、第一の側帯波201,202は周波数df1へ、第二の側帯波203,204は周波数df2へ移動する。
したがって、直交検波部1000で同期検波した後に、高周波側(2f0)に移動したピークを低域通過フィルタで取り除き、さらに帯域通過フィルタで除去することで、側帯波のみを含む信号を抽出することが可能になる。
図5に示すスペクトルから回転機1500の異常を早期検出するには、微弱な側帯波201,202の強度を測定する必要があり、このためには主ピーク200を直交検波により除去することが非常に有効である。
図6は、入力回路1110が備える低域通過フィルタ1111の周波数特性の決め方を示す図である。図6(a)は、低域通過フィルタ1111への入力信号の周波数特性を示し、図6(b)は、低域通過フィルタ1111の通過特性を示す。図6(a)の横軸は周波数、縦軸は振幅を示す。図6(b)の横軸は周波数、縦軸はゲインを示す。
周波数f0の主ピーク200の近傍の側帯波として異常信号が検出されることを考慮すると、低域通過フィルタ1111(図2)は、最低でも主ピーク200の周波数f0を通過させるように設計するのが好ましい。この場合、低域通過フィルタ1111のカットオフ周波数fcは、f0<fcを満たすように設計するのが好ましい。後段の回路で低周波のサンプリングが発生する場合には、カットオフ周波数fcをあまり高周波にしすぎないよう設計することで、雑音の折り返しを抑制することができる。カットオフ周波数fcは、主ピーク200の周波数f0よりは大きくするものの、できる限り小さい周波数にすることが精度良い側帯波の検出には有効である。
図7は、図1に示す直交検波部1000の各部の波形の例を示す。図7に示す各波形図の横軸は時間である。
図7(a)は、電流検知器1502の2つの出力CTOP,CTONを示す。図7(a)の縦軸は電圧である。
電流検知器1502の一方の出力CTOPは、アナログ波形なので高周波雑音が重畳されている。電流検知器1502の他方の出力CTONは、レベルシフタ1113(図2)により生成された電位に調整された電圧である。
図7(b)は、入力回路1110の低域通過フィルタ1111を通過した信号CONDOを示す。図7(b)の縦軸は電圧である。
図7(b)に示すように、低域通過フィルタ1111を通過した信号CONDOは、電流検知器1502の出力CTOPから高周波雑音が除去された滑らかな波形になる。
図7(c)は、直交検波部1000のデジタル信号処理部1200のゲイン制御パスの値(LSB)の変化を示す。
ゲイン制御用ミキサ1201の出力GMIXは、信号CONDOの波形(図7(b))に対し、復調信号生成用ミキサ1210が出力する信号COSがローレベル“Low”のときにはマイナスを掛け算して折り返し、ハイレベル“High”のときにはスルーする。
図7(c)に示すように、ゲイン制御用ミキサ1201の出力GMIXを、ゲイン制御用低域通過フィルタ1203でローパス処理すると平坦な波形の出力GLPF1が得られる。このゲイン制御用低域通過フィルタ1203の出力GLPF1から、目標ゲイン設定用引算回路1205でゲイン制御目標値REFを減算することで、出力GSUBが得られ、制御が安定すると出力GSUBが基準レベルに静定する。
図7(d)は、直交検波部1000のデジタル信号処理部1200の周波数制御パスの値(LSB)の変化を示す。
周波数制御用ミキサ1201の出力FMIXは、信号CONDOの波形(図7(b))に対し、復調信号生成用ミキサ1211が出力する信号SINがローレベル“Low”のときにはマイナスを掛け算して折り返し、ハイレベル“High”のときにはスルーする。
図7(d)に示すように、周波数制御用ミキサ1201の出力FMIXを、周波数制御用低域通過フィルタ1204でローパス処理すると平坦な波形の出力FLPFが得られ、制御が安定すると出力FLPFが図7に示すように通り基準レベルに静定する。
これらのゲイン制御出力GPIDと周波数制御出力FPIDは、積分成分を含むためゼロにならない。ゲイン制御出力GPIDに関しては、側帯波がない場合には直流波形に、側帯波が存在する場合には、直流成分に側帯波成分が重畳された波形となる。周波数制御出力FPIDは、周波数制御が安定している限り一定の値をとることになり、これは図5におけるf0に相当する値となる。
図8は、ゲイン制御用低域通過フィルタ1203に供給される信号GMIXの波形(図8(a))と、ゲイン制御用低域通過フィルタ1203の通過特性(図8(b))と、ゲイン制御用低域通過フィルタ1203を通過させた後の波形(図8(c))を示す。図8の各図の横軸は周波数、縦軸はゲインである。
ゲイン制御用低域通過フィルタ1203の入力信号GMIXは、同期検波後の振動であるため、図8(a)に示すように、図5の主ピークの周波数f0は、直流と2倍の周波数2f0へ移動し、第一および第二側帯波のピークが、周波数df1およびdf2に観測される。
ただし、この状態では主ピークの2倍波2f0の成分の強度が圧倒的に大きいため、ゲイン制御用低域通過フィルタ1203でこれをカットする必要がある。よって、図8(b)に示すように、ゲイン制御用低域通過フィルタ1203のカットオフ周波数fc1は、主ピークの2倍波2f0よりも小さくする必要がある。一方で、第二側帯波df2の周波数よりは大きくないと、回転機の異常を観測する信号成分を失ってしまう。
これらの条件から、ゲイン制御用低域通過フィルタ1203のカットオフ周波数fc1は、df2<fc1<2f0と設定する必要がある。またゲイン制御用ミキサ1201が理想的な特性を有していない場合、主ピークの1倍波f0成分が大きな強度を持つことがある。これを抑制するためには、カットオフ周波数fc1は、df2<fc1<f0と設定することがより好ましい。
図8(c)に示す信号GLPF1は、ゲイン制御用低域通過フィルタ1203を通過した後の信号であり、主ピークの2倍波2f0成分が抑制され、側帯波成分が精度良く抽出できる準備ができた信号になっている。
しかしながら、図8(c)に示す信号GLPF1では、低周波側にまだ取り除けていない雑音(図中のNoise)が残存する。この低周波雑音は、帯域通過フィルタ1208(図1)で除かれる。
次に、図9を用いて、低周波雑音を取り除く帯域通過フィルタ1208の特性を説明する。図9に示す各特性図の横軸は周波数、縦軸はゲインである。図9(a)は、ゲイン制御器1206の出力GPIDのスペクトルを示す。図9(b)は、帯域通過フィルタ1208の周波数特性を示す。図9(c)は、帯域通過フィルタ1208を通過した後の波形GBPFのスペクトルである。
ゲイン制御器1206の出力GPIDには、低周波側に雑音(図中のNoise)が残っているため、周波数fc2から周波数fc3を通過帯域に持つ帯域通過フィルタ1208により、この雑音を除去する。この際、下側のカットオフ周波数fc2は、雑音周波数をfnとすると、fn<fc2<df1となるように設定し、下側のカットオフ周波数fc3は、df2<fc3<2f0となるように設定するのが好ましい。これにより、図9(c)に示すように、低周波側の雑音が除去され、側帯波成分df1およびdf2を、精度良く抽出することが可能となる。
図10(a)は、帯域通過フィルタ1208の出力GBPFの時系列波形の例を示す。図10(a)において、横軸は時間、縦軸は値(LSB)を示す。
また、図10(b)は、出力GBPFが得られた場合の、通信回路1300が送信する通信ペイロードのパケットPKTUPの構成の一例である。
図10(a)に示すように、起動してからゲイン制御出力が静定するよりも前の時間帯(Init)は起動シーケンスとして定義しておき、出力演算部1212は、この期間(Init)を除いた出力の交流振幅値MAGを最終出力とする。この交流振幅値MAGは、第一および第二側帯波の成分を含んだ強度になっている。よって、回転機1500が劣化した時には、交流振幅値MAGの値が大きくなり、正常の場合にはゼロに近い値になる。
上り通信のパケットPKTUPには、図10(b)に示すように、センサ状態を示す情報(sensor Condition)、交流振幅値MAGおよび周波数制御出力FPIDなどのデータ(Data)、信頼性担保情報(CRC)が配置されている。
センサ状態を示す情報には、センサ固有番号sensorID、バッテリ残量情報batt、温度情報tempといった情報が含まれる。このような情報が含まれるパケットPKTUPをシステムの上位(クラウド計算機130の演算ノード131)に送信することで、診断結果をシステムの上位で演算することが可能になる。
具体的には、交流振幅値MAGの大きさは異常そのものを示し、周波数制御出力FPIDは同期検波が正常に動作しているかを確認するのに役立つ。さらに、主ピークの周波数f0は回転機1500の駆動スピードと連動するため、多数の回転機1500を同時にモニタリングしている状況では、搬送ライン全体の健全度を主ピークの周波数f0から判断できるようになる。
次に、図1に示す出力演算部1212が、第一側帯波と第二側帯波のスペクトルを得る演算を行った場合の例を説明する。すなわち、図10に示す例では、交流振幅値MAGを上位側に送信するようにしたが、第一側帯波と第二側帯波のスペクトルを解析して、それぞれの強度を上位側に送信してもよい。出力演算部1212が第一側帯波と第二側帯波のスペクトルを解析する場合には、出力演算部1212が高速フーリエ変換(FFT)の演算を行う。ここでのFFT演算は、交流振幅値MAGをFFT演算してスペクトルを得る演算であり、生データをFFTするのに比較して、側帯波は非常に低周波(数Hz)であることからサンプリングレートを低くでき、演算量を低く抑えることが可能になる。
図11は、出力演算部1212が交流振幅値MAGから第一側帯波と第二側帯波のスペクトルを解析した場合の例を示す。
図11(a)は、交流振幅値MAGのスペクトルを示す。図11(a)の横軸は周波数、縦軸はゲインである。
図11(b)は、交流振幅値MAGのスペクトルを解析して得られた第一側帯波と第二側帯波の強度および周波数を配置した送信パケットの構成例を示す。
図11(a)に示す交流振幅値MAGを周波数解析した場合、第一側帯波の強度MAG1および周波数df1と、第二側帯波の強度MAG2および周波数df2とが得られる。
このようにして得られた第一側帯波の強度MAG1および周波数df1、ならびに第二側帯波の強度MAG2および周波数df2を、図11(b)に示すように、通信回路1300が送信する通信ペイロードのパケットPKTUPのデータ(Data)に配置する。パケットPKTUPのその他の内容は、図10(b)の構成と同じである。
図12は、システム上位(図3のクラウド計算機130)からダウンリンクで、通信回路1300が受信するパケットPKTDOWNの構成の一例を示す。
パケットPKTDOWNには、情報を識別するためのsensorIDと、設定データsetingと、CRC情報とを配置する。
設定データsetingとしては、周波数制御乗数PIDFCONST、ゲイン制御乗数PIDGCONST、可変制御発振回路の中心周波数FCENTER、制御発信機の周波数ゲインFSTEP、およびゲイン制御目標REFが配置される。
なお、これらの設定データは、起動時に毎回送信する必要はなく、例えば同期検波がうまく行かない場合や、装置の設置時に送信され、各計測サイト側では受信した設定データが記憶される。このようにすることで、ダウンリンクの通信を必要最低限に抑えることができ、システム運用のための消費電力を小さくすることができる。特に、ダウンリンクの通信は消費電力が大きく、ダウンリンクの通信回数を減らすことで、より大きな効果がある。
なお、図1に示す直交検波部1000では、アナログフロントエンド1100のアナログデジタル変換回路1120でデジタル変換されたデータを処理するようにした。これに対して、直交検波部1000が入力回路1110のアナログ信号としての出力CONDOを入力として、直交検波部1000内でデジタル変換するようにしてもよい。
図13および図14は、直交検波部1000がアナログデジタル変換回路を備える場合の構成例を示す。
図13に示す例では、アナログフロントエンド1100は入力回路1110を備え、入力回路1110の出力CONDO(アナログ信号)を、デジタル信号処理部1200に供給する。デジタル信号処理部1200は、ゲイン制御用ミキサ1201および周波数制御用ミキサ1202でアナログ信号処理を行い、ゲイン制御用ミキサ1201の出力GMIXおよび周波数制御用ミキサ1202の出力FMIXを得る。
そして、ゲイン制御用ミキサ1201の出力GMIXをアナログデジタル変換回路1213に供給してデジタル出力GADCを得、このデジタル出力GADCをゲイン制御用低域通過フィルタ1203に供給する。
また、周波数制御用ミキサ1202の出力FMIXをアナログデジタル変換回路1214に供給してデジタル出力FADCを得、このデジタル出力FADCを周波数制御用低域通過フィルタ1204に供給する。
図13に示す直交検波部1000のその他の箇所は、図1に示す直交検波部1000と同様に構成する。
図14に示す例は、さらに、ゲイン制御用低域通過フィルタ1203および周波数制御用低域通過フィルタ1204もアナログ回路とし、両フィルタ1203および1204の後段に、アナログデジタル変換回路1215および1216を配置した例である。
この場合、ゲイン制御用低域通過フィルタ1203は、出力GLPF1をアナログデジタル変換回路1215に供給し、変換されたデジタル信号GADCを目標ゲイン設定用引算回路1205に供給する。また、周波数制御用低域通過フィルタ1204は、出力FLPF1をアナログデジタル変換回路1216に供給し、変換されたデジタル信号FADCを周波数制御器1207に供給する。
図14に示す直交検波部1000のその他の箇所は、図13に示す直交検波部1000と同様に構成する。
この図13および図14に示すように、直交検波部1000の内部でデジタル変換処理を行うように構成した場合にも、図1の構成と同様に、第一側帯波と第二側帯波の強度に応じた信号を得ることができる。
また、ここまで説明した構成では、直交検波部1000が備える電源回路1400として、電池1401または環境発電を備える構成とした。これに対して、電源1400として、回転機1500に接続された電力線から検知した電流を電源として使用してもよい。
すなわち、図15に示すように、回転機1500のu相の電力線に、電力検知器1503を配置し、電力検知器1503で得た電流を、電源回路1400に供給する。u相の電力線から電流を得るのは一例であり、その他の相の電力線でもよい。但し、異常を検知するための電力検知器1502とは別の相の電力線から電流を得るのが好ましい。
そして、電源回路1400は、電力検知器1503で得た電流から、直交検波部1000を作動させる電源電圧VCCを得る。
図15に示す直交検波部1000のその他の構成については、図1に示す直交検波部1000と同様に構成する。
このようにして、回転機1500を駆動させる電力から、直交検波部1000を作動させる電源を得るようにしたことで、電池などが不要になり、電源構成を簡単にすることができる。
<第2の実施の形態例>
次に、本発明の第2の実施の形態例を、図16~図18を参照して説明する。図16~図18において、第1の実施の形態例で説明した図1~図15と同一箇所には同一符号を付し、重複説明を省略する。
図16は、第2の実施の形態例における直交検波部1000の構成を示す図である。
図16に示す直交検波部1000は、図1に示す可変制御発振回路1209の代わりに、周波数演算部1701を設けている。また、デジタル信号処理部1200として、入力ADCOをラッチするデータラッチ1601と、乗算論理部1602,1603,1604,1605とを備える。
すなわち、デジタル信号処理部1200のデータラッチ1601は、周波数演算部1701から供給されるクロックCKに同期して、入力ADCOをラッチして、ラッチ出力LTOを得る。なお、データラッチ1601は、主ピークの周波数に対して非常に早い周波数でサンプリングする。
データラッチ1601のラッチ出力LTOは、乗算論理部1602,1603に供給される。乗算論理部1602は、別の乗算論理部1604の出力COSとラッチ出力LTOとの論理演算出力GMULTを、ゲイン制御用低域通過フィルタ1203に供給する。乗算論理部1604は、ゲイン制御器1206の出力GPIDと、周波数演算部1701の出力COS0との論理演算で、乗算出力COSを得る。
また、乗算論理部1603は、別の乗算論理部1605の出力SINとラッチ出力LTOとの論理演算出力FMULTを、周波数制御用低域通過フィルタ1204に供給する。乗算論理部1605は、ゲイン制御器1206の出力GPIDと、周波数演算部1701の出力SIN0との論理演算で、乗算出力SINを得る。
周波数演算部1701は、クロックCKを発生させる発振器と、その発振器の出力のカウント動作などに基づいて上述した出力COS0およびSIN0を生成させる回路を備える。
図17は、図16に示す直交検波部1000の各部の波形の例を示す。図17に示す各波形図の横軸は時間である。
図17(a)は、データラッチ1601の出力LTOの変化を示す。出力LTOの波形は、主ピークの周波数に対して非常に早い周波数でサンプリングするため、アナログのように滑らかな波形となる。
図17(b)は、図16に示す直交検波部1000のゲイン制御パスの値(LSB)の変化を示す。
乗算論理部1602の論理演算出力GMULTは、乗算論理部1604が出力する信号COSがローレベル“Low”のときにはマイナスを掛け算して折り返し、ハイレベル“High”のときにはスルーする波形になる。
この乗算論理部1602の論理演算出力GMULTを、ゲイン制御用低域通過フィルタ1203でローパス処理すると平坦な波形の出力GLPF1が得られる。このゲイン制御用低域通過フィルタ1203の出力GLPF1から、目標ゲイン設定用引算回路1205でゲイン制御目標値REFを減算することで、出力GSUBが得られ、制御が安定すると出力GSUBが基準レベルに静定する。
図17(c)は、直交検波部1000の周波数制御パスの値(LSB)の変化を示す。
乗算論理部1603の論理演算出力FMULTは、乗算論理部1605が出力する信号SINがローレベル“Low”のときにはマイナスを掛け算して折り返し、ハイレベル“High”のときにはスルーする。
この乗算論理部1603の論理演算出力FMULTを、周波数制御用低域通過フィルタ1204でローパス処理すると平坦な波形の出力FLPFが得られ、制御が安定すると出力FLPFが基準レベルに静定する。
図17に示す波形は、第1の実施の形態例の図7に示す動作波形と同一であり、この図17に示す波形から、第1の実施の形態例と同様に同期検波を行えることが判る。
図16に示す本実施の形態例の直交検波部1000の場合、デジタル信号処理部1200と周波数演算部1701は、純粋な論理回路であるため、ロジック回路、FPGA、マイクロコンピュータ上で動作するソフトウェアなどの様々な実装方法で、直交検波部1000を構成することができる。
ここで、対象とする回転機の主ピーク周波数に応じて測定系に要求されるスピードが変わるため、スピードに応じて最適な実装方法を選択すればよい。
なお、図16に示す周波数演算部1701では、発振器の出力を直接クロックCKとしてデータラッチ1601に供給するようにした。これに対して、発振器が出力したクロックCKのカウント値と、周波数制御器1207の周波数制御出力FPIDとを、周波数演算部1701内で比較して、比較結果としてのリセット信号を、データラッチ1601にクロックとして供給してもよい。
このようにデータラッチ1601がリセット信号でラッチ動作を行うことで、ラッチ周期を低減することができ、デジタル信号処理部1200の負荷を低減することができる。
さらに、この場合にはリセット信号でトリガをかけて、アナログデジタル変換回路1120を間欠駆動することで、アナログデジタル変換回路1120における消費電流を低減することができる。
図18は、図16に示す直交検波部1000においてデータラッチ1601がリセット信号でラッチ動作を行う場合の動作波形である。
図18(a)は、データラッチ1601の出力LTOの変化を示す。出力LTOは周波数制御が静定している場合には4f0のサンプリング周波数を有し、アナログ波形であるLTOに対して、図に黒丸で示す位置の値をサンプリングした出力となる。
図18(b)は、図16に示す直交検波部1000のゲイン制御パスの値(LSB)の変化を示す。
乗算論理部1602の論理演算出力GMULTは、乗算論理部1604が出力する信号COSがローレベル“Low”のときにはマイナスを掛け算して折り返し、ハイレベル“High”のときにはスルーする波形になる。アナログ波形が存在した場合の掛け算結果180(図18(b))と、図17(b)における論理演算出力GMULTの波形は異なったものとなる。
図18(c)は、直交検波部1000の周波数制御パスの値(LSB)の変化を示す。
乗算論理部1603の論理演算出力FMULTは、乗算論理部1605が出力する信号SINがローレベル“Low”のときにはマイナスを掛け算して折り返し、ハイレベル“High”のときにはスルーする。アナログ波形が存在した場合の掛け算結果181(図18(c))と、図17(c)における論理演算出力FMULTの波形は異なったものとなる。
図18に示す波形は、第1の実施の形態例の図7に示す動作波形とサンプリング周波数が異なるもののLSB値としては同一であり、この図18に示す波形から、第1の実施の形態例と同様に同期検波を行えることが判る。
図19は、このリセット信号でデータラッチ1601がラッチ動作を行う場合の、入力回路1110が備える低域通過フィルタ1111(図2)の周波数特性を示したものである。図19(a)は、アナログデジタル変換回路1120の出力ADCOの周波数特性を示し、横軸は周波数、縦軸は振幅を示す。図19(a)は、低域通過フィルタ1111の特性を示す、横軸は周波数、縦軸はゲインを示す。
低域通過フィルタ1111のカットオフ周波数fc4は、主ピークの周波数f0より大きい必要があるが、データラッチ1601のサンプリング周波数は制御が静定している場合、周波数4f0になる。よって、図19(b)に示すように、カットオフ周波数fc4はf0<fc4<4f0を満たすように設定する必要がある。
このように低域通過フィルタ1111のカットオフ周波数4f0を設定することで、データラッチ1601におけるデータ取り込み時の雑音の折り返しを低減し、精度良い計測が可能になる。
<変形例>
なお、本発明は、上述した各実施の形態例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した各実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、複数の実施の形態例の構成を組み合わせてもよい。
例えば、図1や図3に示す構成では、直交検波部1000が、1つの回転機1500の電流検知器1502の出力信号を検波するようにした。これに対して、1つの直交検波部1000が、複数の電流検知器1502の出力信号を検波してもよい。
図20は、1つの直交検波部1000′が、複数の電流検知器1502の出力信号を検波する場合の構成の例を示す。
図20に示す構成について説明すると、ここではm個(mは任意の整数)の回転機1500a~1500mを用意し、このm個の回転機1500a~1500mごとに、個別に電流検知器1502を設ける。そして、それぞれの電流検知器1502の出力信号を、直交検波部1000′が備えるマルチプレクサ1701に供給する。マルチプレクサ1701は、出力演算部1212から供給される選択信号SELに基づいて、アナログフロントエンド1100に供給する入力信号を、順に切り替える処理を行う。
直交検波部1000′のアナログフロントエンド1100とデジタル信号処理部1200の構成については、図1に示す直交検波部1000と同様の構成である。
図21(a)は、図20に示す構成の直交検波部1000′の場合に、マルチプレクサ1701に供給される選択信号SELと、出力演算部1212に供給されるバンドパスフィルタ1208の出力GBPFを示す。
図21(a)に示すように、m個の電流検知器1502を切り替える選択信号SELをマルチプレクサ1701に送る。この選択信号SELの切り替わりに連動して、1つの電流検知器1502の出力についての、交流振幅値MAGを得る。ここで、それぞれの電流検知器1502の交流振幅値MAGを出力する期間において、起動してからゲイン制御出力が静定するよりも前の時間帯(Init)を定め、その静定するよりも前の時間帯(Init)を除いた期間の交流振幅値MAGを計測する。
図21(b)は、図20に示す構成の直交検波部1000′の場合に、通信回路1300が送信する通信ペイロードのパケットPKTUPの構成の一例である。
図21(b)に示すように、パケットPKTUPには、センサ状態を示す情報(sensor Condition)、交流振幅値MAGおよび周波数制御出力FPIDなどのデータ(Data)、信頼性担保情報(CRC)が配置されている。
ここで、データ(Data)の区間には、m個の交流振幅値MAGおよび周波数制御出力FPIDを配置する。
図22は、図20に示す構成の直交検波部1000′を備えた場合における、直交検波部1000′を起動させる起動シーケンスを示す。図22において、図4に示す起動シーケンスと同一の処理については、同一のステップ番号を付す。
図22に示すシーケンスが図4に示すシーケンスと相違する点は、ステップS12とステップS13との間に、ステップS21の処理が行われる点と、ステップS18とステップS19との間に、ステップS22の判断処理が行われる点である。
すなわち、ステップS12で直交検波部1000がアクティブ状態に遷移した後、ステップS21で選択信号SELに基づいたマルチプレクサ1701での選択処理が行われてから、ステップS13の初期化動作に移行する。
また、ステップS18で測定結果のデータを上り通信で送信した後、ステップS22でm個の選択を全て行ったか否かを判断し、m個の選択が行われた場合に(ステップS22のYES)、ステップS19の待機に移る。また、ステップS22でm個の選択を全て行っていない場合(ステップS22のNO)、マルチプレクサ1701に次の選択信号SELを送り、ステップS21からステップS18までの処理を繰り返す。
このようにして、1つの直交検波部1000′が、複数の電流検知器1502の出力信号を検波して、順にクラウド計算機130側に送信することができる。この図20に示す構成とすることで、多数の回転機1500についての検波を、少ない検波部で効率よく行うことができ、システム構成の簡易化につながる。
なお、図20に示す構成や、図1などに示す構成では、アナログフロントエンド1100として、入力回路1110を備えて、入力回路1110の出力CONDOをアナログデジタル変換回路1120に供給して、デジタル変換出力ADCOを得るようにした。これに対して、電流検知器1502の出力を直接、アナログデジタル変換回路1120に供給してデジタル変換するようにしてもよい。例えば、マイクロコンピュータ(いわゆるマイコン)で直交検波部を構成したとき、そのマイコンが備えるアナログデジタル変換回路1120の入力である入力MUXに、電流検知器1502の出力を供給する構成としてもよい。
また、図20に示す構成では、図1に示す第1の実施の形態例の構成に組み合わせた例としたが、第2の実施の形態例において、同様に複数の電流検知器1502の出力信号を、1つの検波部で検波するようにしてもよい。
また、第1の実施の形態例や第2の実施の形態例において、検波部が備える低域通過フィルタ1203,1204や、帯域通過フィルタ1208は、実際の作動状態によってノイズなどの除去が不要である場合に、一部または全てを省略してもよい。また、これらのフィルタを設ける場合であっても、図1などに示す接続位置以外の箇所に、低域通過フィルタや帯域通過フィルタを配置してもよい。
また、上述した実施の形態例では、モータである回転機の診断システムとした。これに対して、モータの劣化診断だけでなく、劣化により駆動電流の主ピークの近傍に側帯波を生じるようなモータ以外の回転機の診断にも本発明を適用することが可能である。
また、構成図や機能ブロック図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
また、各実施の形態例で説明した構成は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラムなどの情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置くことができる。
100…回転機診断システム、110a~110n…計測サイト、111a~111n…回転機計測ユニット、112…データ収集装置、120…ネットワーク、130…クラウド計算機、131…演算ノード、301,302,306…抵抗器、303,305…コンデンサ、307…オペアンプ、308…抵抗性負荷、309…ハイ側分圧抵抗器、310…ロウ側分圧抵抗器、1000,1000′…直交検波部、1100…アナログフロントエンド、1110…入力回路、1111…低域通過フィルタ、1112…入力ロード、1113…レベルシフタ、1120…アナログデジタル変換回路、1200…デジタル信号処理部、1201…ゲイン制御用ミキサ、1202…周波数制御用ミキサ、1203…ゲイン制御用低域通過フィルタ、1204…周波数制御用低域通過フィルタ、1205…目標ゲイン設定用引算回路、1206…ゲイン制御器、1207…周波数制御器、1208…帯域通過フィルタ、1209…可変制御発振回路、1210,1211…復調信号生成用ミキサ、1212…出力演算部、1213,1214,1215,1216…アナログデジタル変換回路、1300…通信回路、1400…電源回路、1401…電池、1402…太陽電池セル、1500,1500a~1500m…回転機(三相交流モータ)、1501…サーボアンプ、1502,1503…電流検知器、1600…デジタル信号処理部、1601…データラッチ、1602,1603,1609…乗算論理部、1604,1605…低域通過フィルタ、1606…引算回路、1607,1608…PIDコントローラ、1609,1610…乗算論理部、1611…帯域通過フィルタ、1612…出力演算部、1701…周波数演算部、1801…マルチプレクサ

Claims (8)

  1. 回転機に接続された少なくとも1本の電流線の電流を検知する電流検知器と、
    前記電流検知器が検知した電流の主周波数に対して直交検波を行い側帯波の強度を抽出する検波部と、を備え、
    前記検波部は通信回路を有し、
    前記検波部が抽出した前記側帯波の強度を、前記通信回路からクラウド計算機に送信すると共に、前記通信回路で前記クラウド計算機から送信された前記検波部の動作設定値を受信し、
    受信した前記動作設定値に基づいて前記検波部を作動させる
    回転機診断システム。
  2. 前記検波部は、電源回路を有し、電池から供給される電力によって駆動される
    請求項1に記載の回転機診断システム。
  3. 前記検波部は、電源回路を有し、環境発電により得られた電力または前記電流線の電流を検知して得た電力によって駆動される
    請求項1に記載の回転機診断システム。
  4. 前記検波部は、カットオフ周波数以下を通過させる入力フィルタを含むアナログフロントエンド回路を有し、
    前記入力フィルタのカットオフ周波数は、少なくとも前記主周波数よりも高い周波数に設定して、前記入力フィルタが前記主周波数の成分を通過させる
    請求項1に記載の回転機診断システム。
  5. 前記検波部は、少なくとも前記側帯波の周波数を通過帯域に含む帯域通過フィルタを有し、
    前記帯域通過フィルタは直交検波した結果に対して適用される
    請求項1に記載の回転機診断システム。
  6. 前記側帯波の強度は前記検波部の動作が静定した後に抽出される
    請求項1に記載の回転機診断システム。
  7. 前記電流検知器および前記検波部は、複数組用意し、
    複数組の前記検波部が検波したデータを収集するデータ収集装置と、
    前記データ収集装置が収集したデータを蓄積するクラウド計算機とを有する
    請求項1に記載の回転機診断システム。
  8. 前記検波部は、前記検波部の入力をサンプリングするデータラッチを備え、
    前記データラッチで前記検波部の入力をサンプリングする
    請求項1に記載の回転機診断システム。
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