JP7059015B2 - 踵荒れ抑制剤のスクリーニング方法及びキット - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 (1)研究集会による公開 ▲1▼開催日 平成29年7月29日 (開催期間平成29年7月29-30日) ▲2▼集会名、開催場所 第35回 日本美容皮膚科学会総会・学術大会 〒530-0011 大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪 ナレッジキャピタル ホワイエ北館のB2階 (2)ウェブサイトによる公開 『ナリス化粧品 ニュースリリース』 ▲1▼ウェブサイトの掲載日 平成29年8月1日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス http://www.naris.co.jp/wp-content/uploads/523228e19d0bd2d9da8bdc903ab55088.pdf (3)ウェブサイトによる公開 『J-CASTニュ-ス』 ▲1▼ウェブサイトの掲載日 平成29年8月3日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス https://www.j-cast.com/2017/08/03304927.html?p=all
本発明は踵荒れ抑制効果を有する素材のスクリーニング方法及びそのためのキットに関する。具体的には、培養表皮モデルのケラチン1、ケラチン10より選択された1つ以上の遺伝子及び/又はタンパクの発現量と、インボルクリン遺伝子及び/又はタンパクの発現量を指標とした荷重刺激によって生じる踵荒れ抑制効果を有する素材のスクリーニング方法及びそのためのキットに関する。
足裏で起こる様々なトラブルの中でもかさつきや粉ふき、ひび割れといった症状を伴う踵荒れは季節や性別に関わらず日常的に好発することが知られている。美容的観点から見た目の美しさを損なうだけでは無く、痛みを伴う場合、歩行に際して困難や不快感を引き起こすため、健康に害を及ぼす可能性もあり、根本的な解決方法の提案が望まれている。しかしながら、踵荒れが起こるメカニズムについて詳細に検討して報告した例はほとんど無く、根本的な解決手段はあまり知られていない。
従来、踵荒れに対する対策としてはピーリング(特許文献1)や研削器(特許文献2)などを用いた角質除去、保湿(特許文献3)や角層柔軟効果(特許文献4)を有する化粧料の使用など様々な手段が提案されているが、こうした対策は踵荒れで生じる症状を軽快させることを目的とするもので、踵荒れの発生原因に即した手段ではないため、その効果は一時的で、再発するといった問題もあった。
皮膚は大きく分けて3層構造をとり、外側から表皮、真皮、皮下組織となっているが、角層は表皮の中で最も外側に位置し、主に死んだ細胞と水を保持した角層細胞間脂質から構成されている。角層は、体内からの過剰な水分蒸散を防ぐと共に、外界からの多様な刺激や異物の浸入を防御する役割などを担っており、この様な働きはバリア機能と呼ばれている。
表皮の最下部に位置する基底細胞から、細胞分裂により生まれた細胞(ケラチノサイト)が徐々に押し上げられ、必要な物質を生産しながら分化、成熟することで角層細胞(角質細胞)へ至るまでの過程は角化と呼ばれる。表皮では、精密な基底細胞の細胞分裂と角化のバランスの調整により、正常性が保たれている。角化に伴って異なるケラチン分子種が発現し、例えば基底細胞ではケラチン5(K5)、ケラチン14(K14)、有棘細胞ではケラチン1(K1)、ケラチン10(K10)などが順次発現する。さらに、終末角化(終末分化)の過程では角層細胞を強靭な構造にしている辺縁帯(コーニファイド・エンベロープ)がインボルクリン(IVL)やロリクリンといったタンパクがトランスグルタミナーゼIによって架橋、不溶化することで形成される。辺縁帯は安定な角質細胞構造の構築に寄与しており、角層がバリアとして機能するための重要な構造である。したがって、K5、K14、K1、K10、IVLなどの量を指標として、角化の程度を評価することができることは知られていた。
たとえば、表皮細胞に対する角化亢進剤の適用は、ケラチン1、ケラチン10、インボルクリンの発現促進を誘導し(非特許文献1)、逆に、角化抑制剤の適用は、ケラチン1、ケラチン10、インボルクリンの発現抑制を誘導する(非特許文献2)。
しかしながら、外観上の肌荒れを伴う皮膚疾患やドライスキンにおいては、細胞分裂等の角化の程度以外に関する変化を伴うこともあり、ケラチン1、ケラチン10、インボルクリンのすべての発現量が亢進するものだけではなく、ケラチン1およびケラチン10が減少してインボルクリン発現領域が広がるもの(非特許文献3、4)もあり、踵荒れにおいて、これらの量にどのような変化が生じているかについては、全く知られていなかった。
特開2005-200391号公報 特開2001-62724号公報 特許第3979497号 特開2010-241748号公報
Adeline F. Deyrieux et al. Journal of Cell Science. 2007; 120(1): 125-136. M. Gschwandtner et al. Allergy. 2013; 68(1): 37-47. 前島英樹. Clinical Derma. 2013; 15(3): 3-6. Akemi Ishida-Yamamoto et al. J Invest Dermatol. 1995; 104(3): 391-395.
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、踵特有の荒れを改善する有効物質をスクリーニングする方法を提供することを課題とする。
〔1〕第1発明としては、
次の(A)~(D)のステップを含む踵荒れ抑制効果を有する物質をスクリーニングする方法。
(A):培養表皮モデルと被験物質を共存させるステップ
(B):培養表皮モデルに荷重を加えるステップ
(C):培養表皮モデルから遺伝子を抽出するステップ
(D):(d-1)及び(d-2)を指標に踵荒れ抑制効果を有する物質を判断するステップ
(d-1):ケラチン1、ケラチン10より選択された少なくとも1つ以上の遺伝子発現量及び/又はタンパク発現量、
(d-2):インボルクリンの遺伝子発現量及び/又はタンパク発現量
〔2〕第2発明としては、第1発明における(D)ステップにおいて、
ケラチン1、ケラチン10より選択された少なくとも1つ以上の遺伝子発現量を減少させ、インボルクリンの遺伝子発現量は変化させない被験物質を踵荒れ抑制効果を有する物質として判断するスクリーニング方法。
〔3〕第3発明としては、
次の(A)~(D)のステップを含む踵荒れ抑制効果を有する物質をスクリーニングする方法。
(A):培養表皮モデルと被験物質を共存させるステップ
(B):培養表皮モデルに荷重を加えるステップ
(C):培養表皮モデルからタンパクを抽出するステップ
(D):ケラチン1、ケラチン10より選択された少なくとも1つ以上のタンパクの発現量及びインボルクリンのタンパクの発現量を指標に踵荒れ抑制効果を有する物質を判断するステップ
〔4〕第4発明としては、第3発明における(D)ステップにおいて、
ケラチン1、ケラチン10より選択された少なくとも1つ以上のタンパク発現量を減少させ、インボルクリンのタンパク発現量は変化させない被験物質を踵荒れ抑制効果を有する物質として判断するスクリーニング方法。
〔5〕第5発明としては、
次の(A)~(C)のステップを含む踵荒れ抑制効果を有する物質をスクリーニングする方法。
(A):培養表皮モデルと被験物質を共存させるステップ
(B):培養表皮モデルに荷重を加えるステップ
(C):培養表皮モデルから組織切片を作製し、角層の厚みの変化を指標に踵荒れ抑制効果を有する物質を判断するステップ
〔6〕第6発明としては、
第1発明乃至第5発明の方法を用いた評価キット。
本発明による踵荒れ抑制剤のスクリーニング方法及びキットは、踵特有の荒れを改善する有効物質をスクリーニングすることが可能になる。
健常群と荒れ群の踵写真(代表例) 健常群と荒れ群の体重 健常群と荒れ群の皮膚の柔らかさ 健常群と荒れ群の表皮角層水分量 健常群と荒れ群の経表皮水分蒸散量 健常群と荒れ群の角層細胞面積 荷重刺激による細胞生存率への影響 荷重刺激によるケラチン1遺伝子発現量変化 荷重刺激によるケラチン10遺伝子発現量変化 荷重刺激によるインボルクリン遺伝子発現量変化 荷重刺激による角層厚の変化
本発明における培養表皮モデルは、特に限定されないが、例えば、ヒト正常表皮細胞を重層培養した三次元培養モデルを用いればよく、LabCyte EPI-MODEL(ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)、EPI-200(クラボウ)、EPISKIN(SkinEthic)等を使用することが出来る。
本発明において「荷重を加える」とは、何らかの手段により培養表皮モデルに圧迫刺激を加える趣旨である。例えば、重りを載せる 、空気で加圧する、水で圧迫するなどの手段が挙げられる。その強弱は特に限定されない。培養表皮モデルに荷重刺激を与える方法については特に限定されない。培養表皮モデル全体に荷重を加えても良いし、一部に荷重を加えても良い。例えば、荷重をかけた際に細胞死が起こらない範囲内の重りを細胞に載せて刺激することが出来る。また、刺激を与える時間や間隔、回数についても限定されない。荷重刺激による遺伝子発現量の変化は刺激回数が増えるほど顕著になる一方で、培養表皮モデルは培養期間が長くなると通常培養した場合でも徐々に正常な角層機能が失われていくことが知られているため、これらの変化を考慮して条件を選択すれば良い。
本発明において「指標にする」とは、例えば、遺伝子の発現量であれば、ケラチン1、ケラチン10より選択された1つ以上の遺伝子の発現量とインボルクリン遺伝子の発現量の変化量を指標にするという趣旨であり、「変化量」における「変化」は、発現量の増加、減少、変動しない場合も含む趣旨である。例えば、荷重刺激を与えた後の被験物質の有無(試験群・ブランク群)での比較でも良いし、被験物質存在下で荷重刺激を与えたもの(試験群)と被験物質無し・無刺激のもの(コントロール群)との比較でも良く、これらの比較によって当該被試験物質の有効性を決定することが出来る。「タンパク量を指標にする」場合も、これと同様に考えれば良い。
さらに、ケラチン1、ケラチン10、インボルクリン遺伝子の発現量のみを指標にする場合、ケラチン1、ケラチン10、インボルクリンのタンパクの発現量のみを指標にする場合以外に、ケラチン1、ケラチン10については遺伝子発現量、インボルクリンについてはタンパク発現量を指標にする場合、ケラチン1、ケラチン10についてはタンパク発現量、インボルクリンについては遺伝子発現量を指標にすることもできる。
本発明において「発現量が減少する」とは、例えば、遺伝子の発現量の場合、試験群(荷重あり、かつ被験物質あり)とブランク群(荷重あり、かつ被験物質なし)を比較した際にその遺伝子発現量が減少していれば良い。減少の程度は求める効果の度合いによって適宜設定すれば良いが、試験群とブランク群を比較した際に好ましくは概ね10%、より好ましくは25%ぐらいの差があれば、より有効な効果物質を選択することが期待出来る。
「タンパク発現量が減少する」という場合も、同様の趣旨である。
本発明において「発現量に変化がない」とは数学的に全く変化がないという趣旨ではない。試験の一般的なバラつきを考慮して実質的に変化がないという趣旨である。具体的には、例えば遺伝子の発現量の場合、試験群とブランク群の遺伝子発現量を比較し、その差に実質的な差異が無ければ良い。試験の一般的なバラつきを考慮すると、その差が概ね±5%程度であれば、差がないと判断出来る目安となる。
「タンパクの発現量に変化がない」という場合も、同様の趣旨である。
培養表皮モデルから遺伝子やタンパクを抽出する方法は公知の方法を用いれば良い。例えば、遺伝子の抽出であればRNeasy Mini Kit(Qiagen)などが使用でき、抽出された全RNAは必要に応じてさらにmRNAのみに精製して用いても良い。
本発明の遺伝子発現量の確認方法は、公知の方法を用いれば良い。遺伝子チップ、アレイ等の固相化試料を用いた核酸ハイブリダイゼーション法、RT-PCR法、リアルタイムPCR法、サブトラクション法、ならびにクロスハイブリダイゼーション法など公知の方法を用いて測定することが出来る。
タンパクの発現量を確認する場合は、ウエスタンブロット法、ELISA法、免疫沈降法など公知の方法を用いて測定することが出来る。
本発明では、培養表皮モデルから作製した切片を用いて測定した角層の厚みの変化を指標とすることも出来る。角層の厚みの変化を単独で指標としても良いし、遺伝子発現やタンパク発現と合わせて指標にしても良い。複数のファクターを指標にすることで、より好ましい物質を選択することが出来る。
被験物質は特に制限はない。動植物由来エキス、菌類の培養物またはこれらの酵素処理物、化合物またはその誘導体等であっても被験物質として用いることができ、液状の他、粉末状、ジェル状等であっても差し支えない。また、そのままでは培地に溶解しない場合は、界面活性剤等の可溶化剤を適宜使用することにより溶解させることで被験物質として用いることが出来る。さらに、抽出の方法も特に限定されない。添加濃度については、エキス等被験物質を添加してから24時間後に明らかに細胞が死滅していなければどの濃度でも問題ない。また、被験物質と培養表皮モデルとを共存させるステップは、培養表皮モデルに荷重刺激を与える前でも後でも、同時でも良い。被験物質と培養表皮モデルとを共存させる方法としては、被験物質を培養表皮モデルの培地側に添加する方法、角層側に添加する方法等が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法を用いたキットは当該方法を使用していれば特に限定はされない。一つのキットで本発明のスクリーニング方法を具備するものでも良いし、二つ以上のキットに分かれていても差し支えない。例えば、培養表皮モデルとこれに適した培地、使用する重りをセットにしたもの等が考えられる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
<試験1>踵荒れと各種因子との関係
試験に同意を得た20歳~40歳代の男女30名に対し、下記項目について皮膚測定試験を実施した。各測定は被験者の両足を33±2℃前後のぬるま湯で水洗し、10分間測定環境(23±2℃,5%RH)に馴化させた後に実施した。
<測定項目と方法>
1.体重
各被験者の体重を体組成計(インナースキャンBC-202,TANITA)にて測定した。
2.皮膚の柔らかさ
足底の踵部中央を測定部位とし、被験者がベッドの上に伏臥位の体勢になり、ベッドの上面に対して足の甲が直角になる様に足先を垂らした状態で、踵部中央を硬度・弾性測定装置(BLS780 Ballistomer,DIA-STRON)にて数回測定し、k値が0.97~1.03である3点のIndent値の平均値を算出し、これを皮膚の柔らかさとした。
3.表皮角層水分量
被験者が皮膚の柔らかさ測定と同様の体勢の状態で踵部中央を皮表角層水分量測定装置(SKICON-200EX-USB,YAYOI)にて7点測定し、上限値と下限値を除いた5点の平均値を算出し、これを表皮角層水分量とした。
4.経表皮水分蒸散量
被験者が皮膚の柔らかさ測定と同様の体勢の状態で踵部中央をポータブル水分蒸散計(VapoMeter,Delfin)にて3点測定し、平均値を算出して、これを経表皮水分蒸散量とした。
5.角層細胞面積
5-1.角層細胞の採取
被験者の踵部中央より角質チェッカー(角質チェッカー プラスチックプレートタイプ,PROMOTOOL)を用いて角層細胞を剥離した。
5-2.角層細胞面積の算出
採取した角層細胞をヘマトキシリン-エオシン染色した後、蛍光顕微鏡(BZ-X710 All-in-One Fluorescence Microscope,キーエンス)にて撮影し、撮影画像から画像処理ソフトウェア(ImageJ)にて一定区画内に存在する角層細胞面積の平均値を算出して、これを角層細胞面積とした。
6.荒れ評価
被験者の足底踵部をデジタル一眼レフカメラ(OLYMPUS PEN Lite E-PL6,OLYMPUS)にて撮影し、この画像を用いて15名の評価者が荒れ状態を目視にて表1に示す基準で6段階評価した。
Figure 0007059015000001
7.解析方法
荒れ評価の結果から図1に示すような皮膚状態を代表とする踵表面が滑らかな健常群(レベル0および1)と、表面に細かな亀裂や粉ふきが認められ全体にかさついた様相を示す荒れ群(レベル4および5)の2群を抽出し、各測定結果をこの2群で比較、評価した。
<結果と考察>
結果を図2~図6に示す。図2~6に示すように健常群と荒れ群では各測定項目において違う特徴を有することが確認された。
<体重>
踵における荒れ群では健常群と比べて、体重が重い傾向を示した。
頬や手の甲等における肌荒れは、一般に体重差に関係なく見られる現象である。踵における肌荒れは、荷重に起因している可能性が示唆された。
<皮膚の柔らかさ>
踵における荒れ群では健常群に比べ皮膚が硬いことが認められた。
角層の水分量は皮膚の柔軟性に寄与していると言われていることから、水分量が少なく、硬く肥厚した皮膚は外部環境からの機械的刺激などに対して柔軟に対応することが出来ないため、弱い状態であると考えられ、その程度は異なるものの、頬や手の甲等における肌荒れでも同様の変化が起きていると予想される。
<経表皮水分蒸散量と表皮角層水分量>
踵における荒れ群では健常群と比べて、経表皮水分蒸散量は低く、表皮角層水分量が少ないことが確認された。一般に、頬や手の甲等における肌荒れでは、経表皮水分蒸散量が高く、表皮角層水分量が少ないことが知られているが、踵における肌荒れは、頬や手の甲等とは異なる現象が起きていることがわかった。
<角層細胞面積>
角層細胞面積は、踵における荒れ群では健常群と比べて大きくなる傾向が認められた。
一般に、ターンオーバーが正常な状態よりも早すぎると正常な角化が行われず、バリア機能が弱くなるため肌荒れを招くことが知られているが、踵では角層細胞面積が大きかったことから、ターンオーバーは遅く、通常の肌荒れとは異なる現象が起きていることがわかった。
<まとめ>
一般に、炎症等に起因してターンオーバーが速まった結果引き起こされる頬や手の甲等における肌荒れでは、バリア機能の低下により経表皮水分蒸散量が高く、角層水分量が少ないことが知られているが、上記結果から、踵における肌荒れではターンオーバーが遅く、経表皮水分蒸散量が低いのにも関わらず、角層水分量も少ないという一般的な肌荒れとは異なる特徴を有していることがわかった。また、荒れ群では体重が重く、皮膚も硬いことから日常的に体重という負荷(荷重)が繰り返されることにより、頬や手の甲等の肌荒れとは異なる荒れ現象が起きていることが示唆された。
<試験2>培養表皮モデルを用いた荷重刺激実験
踵皮膚測定から踵の荒れの一因として荷重刺激による角層の肥厚が考えられたため、本発明者らは荷重刺激による角層肥厚の誘発について培養表皮モデルを用いて検討した。
<材料と方法>
1.培養表皮モデル
体重による踵への荷重刺激を再現する試験としてヒト正常表皮細胞を重層培養したヒト三次元培養表皮モデルであるLabCyte EPI-MODEL(ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)を用いた。
2.重り
培養表皮モデルへの荷重刺激はステンレス製のボルトとナットを組み合わせて作成した重りを用いた。
なお、重りは細胞に載せて刺激を加え、培養した際に細胞の生存数に影響を及ぼさないことをあらかじめ確認した上で重量を決定し、これを用いた。
3.培養表皮モデルへの荷重刺激
ヒト三次元培養表皮モデルLabCyte EPI-MODEL(ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)を37℃、5%CO下で培養し、2~3日に1回アッセイ培地[EPI-MODEL](ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)の交換を行った。
踵皮膚における荷重刺激の再現として、培養表皮モデルに荷重刺激を与え、荷重刺激を与えた群と荷重刺激を与えない群とを比較することでその影響を確認した。荷重刺激を与える群では重り(約4.5g)を各皮膚モデルカップの上に30分間静置し、その後重りを取り除き、培地を交換後に培養を継続した。
培地交換から次の培地交換前までを1回の培養として、上記培養を5回繰り返した。
荷重刺激による遺伝子発現量変化は培養開始9日後に次の実験手法により測定した。
4.荷重刺激後の発現量変化の評価
培養後の培養表皮モデルはCell Counting Kit-8(同仁化学)を用いたWST-8により荷重刺激が細胞生存率に著しい影響を及ぼしていないことを確認した(図7)。
細胞生存率の確認後、リン酸緩衝生理食塩水(Ca、Mg不含)(Phosphate Buffered Saline、PBS(-))で皮膚モデルカップを洗浄し、カップからメスを用いて培養表皮モデルを切り離した。
切り離した細胞からRNeasy Mini Kit(Qiagen)を用いて細胞内の全RNA(総RNA)を分離・精製した。
分離・精製した全RNAから逆転写キットPrimeScriptTM RT Reagent Kit (Perfect Real Time)(タカラバイオ)を利用してcDNAを合成し、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction、RT-PCR)により複数の角化マーカーの遺伝子発現量を定量的に分析した。表2に各遺伝子発現量を定量するために用いたプライマーを記載する。プライマーはインビトロジェンに合成を依頼したものを購入して用いた。
荷重刺激を与えず培養のみ行った群(荷重なし)と荷重刺激を与えて培養した群(荷重あり)とを比較することで、荷重刺激による遺伝子発現量変化を評価した(図8~10)。
Figure 0007059015000002
<結果と考察>
遺伝子発現量の評価では培養表皮モデルに対して重りを一定時間のせ荷重刺激を与えることで角化マーカーのケラチン1及びケラチン10の遺伝子発現量が増加するのに対して(図8、図9)、インボルクリンでは増加しておらず(図10)、無刺激で通常培養した正常な培養表皮モデルとは異なる遺伝子発現の傾向であることを確認した。
無刺激で通常培養した場合、培養表皮モデルでは正常に角化が進み、十分なバリア機能を有した角層が形成されることが知られている。
すなわち、実験の結果は荷重刺激によって角化過程における角化マーカーの遺伝子発現量に変化が起こり、乱れが生じたことを表していると言える。
5.角層厚測定による角層肥厚の評価
培養表皮モデルに荷重刺激を加える、あるいは刺激を加えずに一定期間培養を行った後、皮膚モデルカップからメスを用いて培養表皮モデルを切り離した。
切り離した培養表皮モデルをO.C.T.コンパウンド(サクラファインテックジャパン)で包埋し、これを急速凍結した。
凍結した細胞はクリオスタッド(Leica Microsystems)を用いて薄切し、切片を作製した。
切片はマイルドホルム(和光純薬)を用いて固定した。
ヘマトキシリン-エオシン染色にて細胞質および細胞核の染色を行った。
染色後の切片は蛍光顕微鏡(キーエンス)を用いて撮影し、撮影画像を用いてフリーの画像処理ソフトウェア(ImageJ)にて角層厚の計測を行い、計測結果を比較して角層厚の変化を評価した。
結果を図11に示す。
図11に示すように荷重ありの表皮培養モデルの角層厚は荷重なしと比べて優位に増加していた。
角層厚の評価でも荷重刺激によって角層厚が増加することを確認したことから、この変化は角化マーカーの遺伝子発現量の変化に伴い生じたものであると考えられた。
実際のヒト踵の皮膚では上記実験で用いた重りの細胞に対する荷重刺激よりも大きな刺激が加わっていると予想され、踵の角層ではよりダイナミックに角化過程における遺伝子発現量の変化が起きていると考えられる。また、角層厚についても遺伝子発現量の変化に伴って厚みが増加することで踵の角層は肥厚した状態になっていると予想された。
前述の踵皮膚測定試験の結果と培養表皮モデルを用いた荷重刺激実験の結果から、荒れた踵の皮膚では過剰な荷重刺激によって角化過程に関連する遺伝子発現に変化が起きることで角層の肥厚を誘発し、その結果、角層への水分供給不足やNMF、セラミドなどの保湿因子の流出が起こり、荒れを誘発していると考えられた。
すなわち過剰な荷重刺激による遺伝子発現の変化を抑制することが出来れば、角層の肥厚を防止、改善することが可能となり、角層の肥厚に起因した荒れの誘発を防ぐことが出来る。
言い換えれば、荷重刺激によって起こる特にケラチン1やケラチン10の遺伝子発現量の増加を防ぎ、正常な状態と同じ発現量にすることで荒れの誘発を防止することが出来ると言える。
<培養表皮モデルを用いたスクリーニング例>
1.ヒト三次元培養表皮モデルLabCyte EPI-MODEL(ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)を37℃、5%CO下で培養し、2~3日に1回アッセイ培地[EPI-MODEL](ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)の交換を行った。
2.荷重刺激を与える群では重り(約4.5g)を各皮膚モデルカップの上に30分間静置し、その後重りを取り除き、培地を交換後に培養を継続した。
3.被験物質(市販の植物エキス)は、初回の刺激のみ荷重刺激を与える前の培地に終濃度50ppmあるいは100ppmとなる様に添加し、2回目以降は、重り(約4.5g)を各皮膚モデルカップの上に30分間静置し、その後重りを取り除き、培地を交換する際に適当な終濃度になるよう被験物質を添加した後、培養を継続した。
培地交換から次の培地交換前までを1回の培養として、上記培養を5回繰り返した。
4.荷重刺激による遺伝子発現量の変化は培養開始9日後に次の実験手法により測定した。
<荷重刺激後の発現量変化の評価>
1.培養後のヒト三次元培養表皮モデルはCell Counting Kit-8(同仁化学)を用いたWST-8により荷重刺激が細胞生存率に著しい影響を及ぼしていないことを確認した。
2.細胞生存率の確認後、リン酸緩衝生理食塩水(Ca、Mg不含)(Phosphate Buffered Saline、PBS(-))で皮膚モデルカップを洗浄し、カップからメスを用いてヒト三次元培養表皮モデルを切り離した。
3.切り離した細胞からRNeasy Mini Kit(Qiagen)を用いて細胞内の全RNA(総RNA)を分離・精製した。
4.分離・精製した全RNAから逆転写キットPrimeScriptTM RT Reagent Kit (Perfect Real Time)(タカラバイオ)を利用してcDNAを合成し、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction、Q-RT-PCR)により複数の角化マーカーの遺伝子発現量を定量的に分析した。各遺伝子発現量を定量するために表1に記載したプライマーを用いた。プライマーはインビトロジェンに合成を依頼したものを購入して用いた。
5.被験物質を培地に添加した群(試験群)と添加していない群(ブランク群)とを比較し、さらに荷重なし、被験物質なしで培養のみ行った群(コントロール群)とも比較することで、被験物質の踵荒れ抑制効果を評価した。より高い効果を有する物質を選択する為、試験群とブランク群とを比較した場合にケラチン1またはケラチン10より選択された少なくとも1つ以上の遺伝子発現量を10%以上減少させ、且つ、インボルクリンの遺伝子発現量は±5%程度の変化に留めるような被験物質を目安に踵荒れ抑制効果を有する物質と判断した。
本発明によれば、踵特有の荒れ肌を抑制する効果を有する物質を選択することができ、踵における荒れ肌を根本的に解決出来る有効物質を提供することが期待される。



Claims (1)

  1. 次の(A)~(D)のステップを含む踵荒れ抑制効果が期待できる物質をスクリーニングする方法。
    (A):培養表皮モデルと被験物質を共存させるステップ
    (B):培養表皮モデルに荷重を加えるステップ
    (C):培養表皮モデルから遺伝子又はタンパクを抽出するステップ
    (D):下記(d-1)及び(d-2)を指標に、
    (d-1)は減少させ、(d-2)は変化させない被験物質を踵荒れ抑制効果が期待できる物質として判断するステップ
    (d-1):ケラチン1、ケラチン10より選択された少なくとも1つ以上の遺伝子発現量及び/又はタンパク発現量、
    (d-2):インボルクリンの遺伝子発現量及び/又はタンパク発現量
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