JP7024003B2 - 角層の水分保持能評価方法 - Google Patents

角層の水分保持能評価方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7024003B2
JP7024003B2 JP2020057405A JP2020057405A JP7024003B2 JP 7024003 B2 JP7024003 B2 JP 7024003B2 JP 2020057405 A JP2020057405 A JP 2020057405A JP 2020057405 A JP2020057405 A JP 2020057405A JP 7024003 B2 JP7024003 B2 JP 7024003B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
stratum corneum
amount
protein
peroxynitrite
nitrated
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020057405A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021156731A (ja
Inventor
広之 ▲高▼田
美穂 森田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Naris Cosmetics Co Ltd
Original Assignee
Naris Cosmetics Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Naris Cosmetics Co Ltd filed Critical Naris Cosmetics Co Ltd
Priority to JP2020057405A priority Critical patent/JP7024003B2/ja
Publication of JP2021156731A publication Critical patent/JP2021156731A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7024003B2 publication Critical patent/JP7024003B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Description

本発明は角層の水分保持能評価方法に関する。
皮膚の最外層である角層は、水分の蒸発や微生物、毒物などに対する主要な保護バリアである。角層において、水分は角層の物質透過性、可塑性などの物理的性質や、皮膚表層の角層細胞の落屑に重要な作用を有する酵素の活性を制御することが知られており(非特許文献1)、角層が水分を保持することは皮膚にとって重要である。
このように角層が水分を保持する能力は角層水分保持能と呼ばれる。表皮の正常な分化・増殖に伴う水分保持成分の生成やバリアの形成が角層水分保持能の維持には重要であるが加齢や皮膚トラブルにより、劣化する(非特許文献2)ため、角層水分保持能の維持や向上を目的とする研究が盛んに行われている 。角層水分保持能の指標としては、角層水分量や経皮水分蒸散量が存在する。
角層水分保持能の評価は、上述のように、角層水分量を計測することで評価が行われてきた。角層水分量を計測する方法は、これまで種々の方法が考案されている。例えば、角層の電気伝導率や静電容量、誘電率などの電気的性質が、角層中の水分量によって変化するということに着目し、電気的性質の測定値から相対的な角層水分量を知ろうとする装置が提案されている(特許文献1、非特許文献3、非特許文献4)。また、経表皮水分蒸散量を計測する方法には、開放系と閉鎖系の二つがあるが、どちらも皮膚表面の空間中の水分を観測するものである(非特許文献5)。
これらの装置は皮膚を傷つけることなく、迅速かつ簡便に角層水分量や経表皮水分蒸散量を知ることができる点で有益であった。しかし、上記のような角層水分量を測定する方法では、発熱や発汗等、測定時の皮膚状態によるブレが大きかったり、適用したスキンケア化粧品の成分や、その洗浄後の残存物などによって測定値が変動するなど、測定結果が角層外部の要因に影響を受けてしまっており、直接的に測定した角層水分量を角層水分保持能とみなすことはできず、例えば、被験者が健康状態の時に、洗顔、馴化などにより、被験者全員の測定条件を統一して外部要因の影響をできる限り小さくして測定、比較する必要があり、被験者への負担や手間が生じており、日常的に行える方法ではなかった。また、経皮水分蒸散量も、体温や皮膚付着物等の影響を受けやすいのに加え、そもそも角層中の水分を測定対象とするものではなく、角層水分保持能を反映した測定量ではなかった。したがって、発汗や化粧品塗布などによる一時的・過渡的な角層水分量の変化に左右されない、被験者の角層が本来安定的に備えている水分保持能、すなわち真の角層水分量を、簡便に知る方法が求められていた。
一方で、皮膚にはニトロ化タンパク質が存在し、ニトロ化タンパク質は主にペルオキシナイトライトにより生成されることが知られる。角層におけるニトロ化タンパク質の生成は、肌の黄ぐすみの原因になることが分かっており(特許文献2)、さらにペルオキシナイトライトは皮膚のしわやたるみ、色素沈着などの皮膚の老化に関与すると報告されている(特許文献3)。しかしながら、皮膚中のペルオキシナイトライトあるいはニトロ化タンパク質と、角層水分保持能との関係は全く明らかにされていなかった。
特公昭63-19016号公報 特開2017-181423号公報 特開2002-265387号公報
Rawlings A et al., The effect of glycerol and Humidity on desmosome degradation in stratum corneum., Arch Dermatol Res, 287, 457-64, 1995. 正木仁 et al., 加齢によって表皮細胞および角層細胞にみられた変化., 日本皮膚科学会雑誌, 96(3), 189-, 1986. Tagami H et al., Evaluation of the skin surface hydration in vivo by electrical measurement.,J Invest Dermatol, 75, 500-7, 1980. 橋本久美子 et al., 角層水分量測定における高周波伝導度測定装置及びCorneometerの比較., 香粧会誌, 11, 252-8, 1987. 丸善株式会社., 化粧品事典 日本化粧品技術者会編.,439,2003
本発明の課題は、評価時の皮膚状態や角層外部の要因(水分等)に左右されずに、角層の水分保持能を評価する方法を提供することである。
前記課題を解決すべく、鋭意検討を行った結果、十分な洗浄および安静・馴化後に測定した角層水分量(角層水分保持能)が、角層中のニトロ化タンパク質量と正の相関があることを発見した。
本現象について培養表皮細胞を用いて更に検討の結果、ペルオキシナイトライトによるニトロ化タンパク質生成が促進されるほど、表皮細胞の細胞分化・増殖能、および角層のバリア機能が高くなることを突き止めた。
従来タンパク質のニトロ化は、肌にとって悪影響をもたらすと考えられてきたが、本知見に基づけば、角層中のニトロ化タンパク質が多い皮膚では、分化の過程で、ペルオキシナイトライトによるタンパク質のニトロ化反応が活発であると言えることから、角層中のニトロ化タンパク質量が多いほど、言い換えるとペルオキシナイトライトによるタンパク質以外の生体内因子への反応が阻害されるほど、角層水分保持能が高いと評価できる。
加えて、角層のバリア機能、表皮細胞の分化・増殖能、表皮細胞のペルオキシナイトライト活性阻害能は、ニトロ化タンパク質量と連動しているとの発見に基づき、角層のニトロ化タンパク質量を指標として把握することにより、角層のバリア機能、表皮細胞の分化・増殖能、表皮細胞のペルオキシナイトライト活性阻害能を把握することができるとの発明に至った。
つまり、角層のニトロ化タンパク質量を測定することで、角層水分保持能と、角層水分保持能に寄与する要素である角層のバリア機能、表皮細胞の分化・増殖能、ペルオキシナイトライト活性阻害能を評価できるとの結論に至り、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、角層のニトロ化タンパク質量を指標にすることにより、上記課題を解決した。
本発明の評価方法を用いることで、評価時の皮膚状態に影響されず、角層水分保持能を評価することができる。
図1は頬部の角層水分保持能とニトロ化タンパク質量の関係を示す図である 図2はペルオキシナイトライトを培養表皮細胞に添加して生成したニトロ化タンパク質の量を示す図である。 図3はペルオキシナイトライトを培養表皮細胞に添加して変化した遺伝子発現を示す図である。 図4はpHが異なる条件での、ペルオキシナイトライトによるタンパク質のニトロ化量を示す図である。 図5はpHを酸性に近づけた際に、ペルオキシナイトライトを培養表皮細胞に添加して生成したニトロ化タンパク質の量を示す図である。 図6はpHが異なる条件での、ペルオキシナイトライトを培養表皮細胞に添加して変化した遺伝子発現を比較した図である。 図7はペルオキシナイトライトを三次元皮膚モデルに添加して変化した角層のバリア機能を比較した図である。
本発明の「角層のニトロ化タンパク質量を指標とする」とは、任意の方法を用いて角層中のニトロ化タンパク質の存在量を効果判定の基準にするという趣旨である。
本発明でニトロ化タンパク質量測定に用いる角層採取の方法は特に限定されず、例えばテープストリッピングや、コットンによる皮膚の塗擦等により採取することができる。採取時に毛髪など、角層以外が含まれていた場合であっても、測定に影響がない範囲であれば問題ない。
ニトロ化タンパク質の量は直接的に測定してもよいし、間接的に測定してもよい。例えば採取した角層を加水分解処理や酵素処理等にて分解し、得られた単離ニトロ基の量や単離ニトロ化アミノ酸残基の量を測定したものをニトロ化タンパク質量とすることもできる。たとえば、ニトロ化アミノ酸としてはニトロチロシンや3,5-ジニトロチロシン、ニトロトリプトファン、ニトロフェニルアラニン、2,4-ジニトロフェニルアラニン等、ニトロ化タンパク質を構成するアミノ酸残基となりうる化合物が含まれる。またニトロ化されたタンパク質としては前述のアミノ酸残基となりうる化合物を構成物中に含むタンパク質が含まれる。さらに、ニトロ化タンパク質が生じることにより発生する、生体物質の量、生体反応の大きさを数値化し、ニトロ化タンパク質量として把握することもできる。
ニトロ化タンパク質量の測定は、公知の方法で行うことができる。例えば、吸光度法、免疫染色法、ウエスタンブロッティング、放射免疫測定 (Radioimmunoassay)、ELISA、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、質量分析法、NMR法、自家蛍光等を用いて測定することができる。
本発明における評価方法では、ニトロ化タンパク質量が多いほど、角層の水分保持能、角層のバリア機能、表皮細胞の分化・増殖能、又はペルオキシナイトライト活性阻害能が高いと判断する。例えば、被験者の平均値、中央値などの基準値を定め、ニトロ化タンパク質量が基準値以上であれば、角層の水分保持能、角層のバリア機能、表皮細胞の分化・増殖能、ペルオキシナイトライト活性阻害能が高いと評価することができる。
ニトロ化タンパク質量を測定することによって、角層水分保持能を数値化する場合は、あらかじめ、複数人のニトロ化タンパク質量と角層水分保持能としての角層水分量を母集団データとして測定し、散布図から回帰曲線を求めることで、被験者のニトロ化タンパク質量から数値として角層水分保持能を求めることができる。簡易には回帰曲線を検量線として使用し、測定したニトロ化タンパク質量に応じて角層水分保持能を推定することも可能であるし、より正確には分位点回帰分析を行うことで、ニトロ化タンパク質量から、推定される角層水分保持能の範囲とその範囲から外れる確率を求めることができる。
一般に角層水分量とは、角層中に含まれる水分量のことである。角層水分量は化粧水を塗布した状態や、濡れた状態では上がり、低湿度下などでは下がってしまい、環境や皮膚状態に大きく左右される。このように角層水分量が角層の測定時の水分量であり、保湿時や濡れている場合は高い値が出るなど、外部環境や一時的な皮膚状態の影響を受けてしまっていた。一方、本発明においては、角層水分保持能をこれと相関する角層のニトロ化タンパク質量に置き換えて把握することで、皮膚に対する塗布物の有無、身体の安静の程度など、角層外部の要因による影響を受けることなく、本来の角層水分量、つまり角層が本来持つ水分を維持する能力を評価することができる。
本発明において角層水分保持能の指標とする角層のニトロ化タンパク質量は、ペルオキシナイトライトなどによる特定の反応においてのみ増減するため、発熱や発汗等の評価時の皮膚状態、水分やスキンケア化粧品等、角層水分量に対する一時的な変動を与える角層外部の要因に左右されずに水分保持能を評価するための指標として用いることができる。
本発明におけるペルオキシナイトライト活性は、核酸・脂質・ならびにその他タンパク質以外の生体内分子に対する、ペルオキシナイトライトによる酸化・ニトロ化反応性のことであり、本発明では表皮細胞のペルオキシナイトライト活性が表皮細胞の分化・増殖能、角層のバリア機能、角層の水分保持能を低下させることを明らかにした。
本発明における、ペルオキシナイトライト活性阻害能評価においては、ニトロ化タンパク質量を指標としており、ニトロ化タンパク質が多いほど、ペルオキシナイトライトのタンパク質以外との反応性が低く、結果としてペルオキシナイトライトの活性を阻害できていると判断する。
以下の実施例により、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
<実施例1:角層中のニトロ化タンパク質量と角層水分保持能との関係>
日本在住の20~40代の健康な男女16名を被験者とした。各被験者は、測定前に洗顔料を用いた洗顔、および22℃、湿度50%の室内で20分間安静にすることで、頬の水分状態を一定にした。各被験者の頬の角層水分量をSKICON(ヤヨイ)で5回測定した。測定部の水分状態を被験者間で一定にすることで、角層水分量は角層水分保持能とみなすことができる。テープを用いて被験部位から角層を採取した。この際、テープを頬部にあて、テープの上から5回指で優しくこすり、テープをはがした。テープを用いた角層の採取は、同一部位を3度繰り返した。角層が付着したテープは1.5mLチューブに入れた。6N塩酸を1mL加え、37℃で48時間 インキュベートした。水酸化ナトリウムを混合することで中和し、角層抽出物とした。
常法に従い、BCA法にて角層抽出物中の総タンパク質量(g/mL)を求めた。さらに角層抽出物をNitrotyrosine ELISA Kit(abcam )に供し、ニトロチロシン量(nmol/mL)を算出した。同被験者から採取した角層が付着した、3枚のテープそれぞれのニトロチロシン量を総タンパク質量で割り、各テープのタンパク質一定量あたりのニトロチロシン量(nmol/g)を求めた。被験者ごとに、3枚のテープのタンパク質量あたりのニトロチロシン量を平均し、被験者ごとのタンパク質量あたりのニトロチロシン量を求めた。
測定した5点の角層水分量の平均と、求めたタンパク質量あたりのニトロチロシン量の関係について、ピアソンの相関関係の検定を行ったところ、これらが正の相関関係にあることが明らかとなった(図1)。角層水分量測定は、被験者が健康状態の時に、洗顔、馴化などにより、被験者全員の皮膚状態を一定にすることで角層水分保持能として評価されているため、この結果より、角層にニトロ化タンパク質が多いほど、頬部の角層水分保持能が増加することが示された。また、図1は、ニトロ化タンパク質量を測定することで角層水分保持能を間接的に把握することができることを示し、当該ニトロ化タンパク質量を角層水分保持能として評価できるといえる。
<実施例2:ペルオキシナイトライトの表皮細胞に対する作用の検証>
抗菌剤含有Humedia KG2(KURABO)に分散した新生児由来正常ヒト表皮ケラチノサイト(KURABO)5.0×104 Cells/mLを、24 well plateに500μLずつ播種した。37℃、5%CO2下で3日間インキュベートした。0.1M水酸化ナトリウムで2mM(終濃度100μM)、1mM(終濃度50μM:peroxynitrite+)、0.5mM(終濃度25μM)に薄めたペルオキシナイトライトを25μL添加した。コントロール(peroxynitrite-)としては0.1M水酸化ナトリウムを25μL添加した。37℃、5%CO2下で24 hrインキュベートした。
Nitro tyrosine ELISA Kit付属のExtraction Bufferを50μL加えた。冷蔵庫で30分放置し、上清を回収し抽出タンパク質とした。常法に従い、BCA法にて抽出タンパク質の総タンパク質量(g/mL)を求めた。さらに抽出タンパク質をNitrotyrosine ELISA Kitに供し、ニトロチロシン量(nmol/mL)を算出した。各抽出タンパク質一定量あたりのニトロチロシン量(nmol/g)を求めた。条件ごとに、タンパク質一定量あたりのニトロチロシン量を平均し、条件ごとのタンパク質量あたりのニトロチロシン量を求めた。
Total RNA Purification Kit(JenaBioscience)を使用し、各wellの細胞からTotal RNAを抽出した。PrimeScriptTM RT Reagent Kit(TaKaRa) を用い、逆転写を行い、cDNAを合成した。リアルタイムPCRを行い、比較Ct法により、p21、ケラチン5(KRT5)、ケラチン14(KRT14)、ケラチン1(KRT1)、ケラチン10(KRT10)、インボルクリン(INV)、ロリクリン(LOR)の遺伝子発現について、peroxynitrite-を1とした場合の、peroxynitrite+の遺伝子発現量を、「ペルオキシナイトライトによる発現変化量1」として求めた。なお、ハウスキーピング遺伝子としては、GAPDHを用いた。
本方法において、ニトロ化タンパク質の生成は起こらなかった(図2)。一方で、遺伝子発現には変化が見られ、ペルオキシナイトライトを添加することで、p21の発現増加、ケラチン1、ケラチン10、ロリクリンの発現低下が見られた(図3)。これらの結果より、ペルオキシナイトライトはニトロ化タンパク質を生成しない条件の場合、タンパク質以外の生体内物質に作用して、細胞増殖や細胞分化を抑制していることが分かった。
<実施例3:pHによるニトロ化タンパク質生成への影響検証>
抗菌剤含有Humedia KG2に分散した新生児由来正常ヒト表皮ケラチノサイト5.0×104 Cells/mLを、24 well plateに500μLずつ播種した。37℃、5%CO2下で3日間インキュベートした。pH4.5、5.5、6.5、7.5に調製したマッキルベイン緩衝液100μLに置換した。10mM(終濃度1mM)に薄めたペルオキシナイトライトを10μL添加した。37℃、5%CO2下で10minインキュベートした。
Nitro tyrosine ELISA Kit付属のExtraction Bufferを50μL加えた。冷蔵庫で30分放置し、上清を回収し抽出タンパク質とした。常法に従い、BCA法にて抽出タンパク質の総タンパク質量(g/mL)を求めた。さらに抽出タンパク質をNitrotyrosine ELISA Kitに供し、ニトロチロシン量(nmol/mL)を算出した。各抽出タンパク質一定量あたりのニトロチロシン量(nmol/g)を求めた。条件ごとに、タンパク質一定量あたりのニトロチロシン量を平均し、条件ごとのタンパク質量あたりのニトロチロシン量を求めた。
pH7.5の条件と比較して、pH4.5~6.5ではニトロチロシンがより多く生成された(図4)この結果より、ペルオキシナイトライトはpHが中性条件よりも酸性条件で、よりニトロ化タンパク質を生成することが明らかとなった。
<実施例4:ペルオキシナイトライトの表皮細胞に対する作用の検証2>
抗菌剤含有Humedia KG2に分散した新生児由来正常ヒト表皮ケラチノサイト5.0×104 Cells/mLを、24 well plateに500μLずつ播種した。37℃、5%CO2下で3日間インキュベートした。0.2M塩酸(終濃度10mM)または蒸留水を25μL加えた。1mM(終濃度50μM)に薄めたペルオキシナイトライトを25μL添加した(peroxynitrite+)。コントロールとしては0.1M水酸化ナトリウムを25μL添加した(peroxynitrite-)。37℃、5%CO2下で24 hrインキュベートした。
Nitro tyrosine ELISA Kit付属のExtraction Bufferを50μL加えた。冷蔵庫で30分放置し、上清を回収し抽出タンパク質とした。常法に従い、BCA法にて抽出タンパク質の総タンパク質量(g/mL)を求めた。さらに抽出タンパク質をNitrotyrosine ELISA Kitに供し、ニトロチロシン量(nmol/mL)を算出した。各抽出タンパク質一定量あたりのニトロチロシン量(nmol/g)を求めた。条件ごとに、タンパク質一定量あたりのニトロチロシン量を平均し、条件ごとのタンパク質量あたりのニトロチロシン量を求めた。
Total RNA Purification Kitを使用し、各wellの細胞からTotal RNAを抽出した。PrimeScriptTM RT Reagent Kitを用い、逆転写を行い、cDNAを合成した。リアルタイムPCRを行い、比較Ct法により、p21、ケラチン5(KRT5)、ケラチン14(KRT14)、ケラチン1(KRT1)、ケラチン10(KRT10)、インボルクリン(INV)、ロリクリン(LOR)の遺伝子発現について、peroxynitrite-を1とした場合の、peroxynitrite+の遺伝子発現量を、「ペルオキシナイトライトによる発現変化量2」として求めた。実施例2で示した「ペルオキシナイトライトによる発現変化量1」を1とした場合の、本実施例における「ペルオキシナイトライトによる発現変化量2」の発現増加率を求め、図6に示した。なお、ハウスキーピング遺伝子としては、GAPDHを用いた。
培養表皮細胞に0.2M塩酸を加えた後にペルオキシナイトライトを添加することで、コントロールに比較して、ニトロ化タンパク質が約1.36倍生成した(図5)。さらに、遺伝子発現の変化もあり、ニトロ化タンパク質が生成しなかった条件と比較して、p21、ケラチン5、ケラチン14が発現低下、インボルクリン、ロリクリンが発現増加した(図6)。これらの結果より、表皮細胞において、ニトロ化タンパク質が生成しやすい条件では、ペルオキシナイトライトによる細胞増殖・分化の抑制が緩和されることが分かった。これは、ペルオキシナイトライトがタンパク質との反応を起こすことで、その他生体内物質への酸化・ニトロ化反応が減少するためであると考察される。また、ニトロ化タンパク質は生体内では分解されづらいため、角層のニトロ化タンパク質量は表皮全体のペルオキシナイトライト活性阻害力を示すと判断できる。さらに、実施例1と合わせて考えると、角層ニトロ化タンパク質量が多い皮膚では、分化の過程で発生したペルオキシナイトライトを、タンパク質のニトロ化を介してより効率的に活性阻害することで、細胞分化・増殖の抑制を抑え、結果として角層水分保持能が増加していると考えられる。
<実施例5:ペルオキシナイトライトの角層バリア機能に対する作用の検証>
三次元皮膚モデルLabCyte EPI―MODEL 6D(J-TEC)を37℃、5%CO2下で7日間インキュベートした。7日間の培養期間中、次の処理を3回実施した。0.2M塩酸(HCl+)または蒸留水を25μL加えた培地に交換した。1mM(終濃度50μM)に薄めたペルオキシナイトライト/0.1M水酸化ナトリウムを25μL添加した(peroxynitrite+)。コントロールとしては0.1M水酸化ナトリウムを25μL添加した(control)。37℃、5%CO2下で1時間インキュベートし、通常の培地に置換した。
7日間のインキュベート終了後、0.1%Fluorescein sodium salt(FLUKA)水溶液を200μL添加し、2時間常温でインキュベートした。メスで組織を分離し、ティシュー・テック O.C.T.コンパウンド(サクラファインテックジャパン) 中に包埋し凍結した。クリオスタット (Leica Microsystems) を使用して5μm厚の切片を作成し、蛍光顕微鏡にて撮影した。
ペルオキシナイトライトを添加すると蛍光物質の浸透が促進した一方、塩酸を添加して弱酸性条件にした培地にペルオキシナイトライトを添加すると浸透が抑制された(図7)。この結果より、ペルオキシナイトライトは角層のバリア機能を低下させ、角層への外因物質の浸透を促進させるが、弱酸性条件にすることで、ペルオキシナイトライトのタンパク質との反応性が向上し、その他生体内因子との反応を阻害することで、角層のバリア機能の低下を抑制できることが明らかとなった。
<実施例6:角層ニトロ化タンパク質量を求めることによる角層水分保持能の評価>
日本在住の20~40代の健康な男女16名を被験者とした。各被験者は、測定前に洗顔料を用いた洗顔、および22℃、湿度50%の室内で20分間安静にすることで、頬の水分状態を一定にした。各被験者の頬の角層水分量をSKICON(ヤヨイ)で5回測定した。テープを用いて被験部位から角層を採取した。この際、テープを頬部にあて、テープの上から5回指で優しくこすり、テープをはがした。テープを用いた角層の採取は、同一部位を3度繰り返した。角層が付着したテープは1.5mLチューブに入れた。6N塩酸を1mL加え、37℃で48時間 インキュベートした。水酸化ナトリウムを混合することで中和し、角層抽出物とした。
常法に従い、BCA法にて角層抽出物中の総タンパク質量(g/mL)を求めた。さらに角層抽出物をNitrotyrosine ELISA Kit(abcam )に供し、ニトロチロシン量(nmol/mL)を算出した。同被験者から採取した角層が付着した、3枚のテープそれぞれのニトロチロシン量を総タンパク質量で割り、各テープのタンパク質一定量あたりのニトロチロシン量(nmol/g)を求めた。被験者ごとに、3枚のテープのタンパク質量あたりのニトロチロシン量を平均し、被験者ごとのタンパク質量あたりのニトロチロシン量を求めた。
ニトロチロシン量(nmol/g)と角層水分保持能(μS)の散布図から、回帰曲線の式を求めた。回帰曲線の式にニトロチロシン量を当てはめて求めた推定の角層水分保持能と、実際の角層水分保持能の差を求めた。
81.25%の被験者では、角層水分保持能が回帰曲線の推定値±71μSであった。この結果より、例えば採取した角層のニトロチロシン量が1000nmol/gの場合、回帰曲線にあてはめると推定角層水分保持能が185μSとなり、81.25%の確率で角層水分保持能は114~256μSである。

Claims (5)

  1. 被験部位から採取した角層のニトロ化タンパク質量を指標とする、角層の水分保持能評価方法。
  2. 前記ニトロ化タンパク質量を指標とし、ニトロ化タンパク質量が多いほど角層の水分保持能が高いと評価する、角層の水分保持能評価方法。
  3. 前記ニトロ化タンパク質量が、ニトロ化タンパク質を構成するニトロチロシン量である、請求項1又は2に記載の評価方法。
  4. 前記ニトロ化タンパク質量が、加水分解させた角層のニトロ化タンパク質量である、請求項1~のいずれか一項に記載の評価方法。
  5. 予め請求項1~のいずれか一項に記載の評価方法で評価した複数の被験者の皮膚状態データを母集団データとし、当該母集団データと任意の被験者の皮膚データとの対比により被験者の肌状態を評価する方法。
JP2020057405A 2020-03-27 2020-03-27 角層の水分保持能評価方法 Active JP7024003B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020057405A JP7024003B2 (ja) 2020-03-27 2020-03-27 角層の水分保持能評価方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020057405A JP7024003B2 (ja) 2020-03-27 2020-03-27 角層の水分保持能評価方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021156731A JP2021156731A (ja) 2021-10-07
JP7024003B2 true JP7024003B2 (ja) 2022-02-22

Family

ID=77917598

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020057405A Active JP7024003B2 (ja) 2020-03-27 2020-03-27 角層の水分保持能評価方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7024003B2 (ja)

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005249672A (ja) 2004-03-05 2005-09-15 Shiseido Co Ltd 角層中の酸化タンパク質を指標とする角層の透明性・保水性を評価する方法
JP2012161273A (ja) 2011-02-07 2012-08-30 Nippon Menaade Keshohin Kk 皮膚表皮内水分保持能評価法
JP2016513808A (ja) 2013-03-15 2016-05-16 ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー 微生物からの自然防御の客観的尺度として皮膚から抗微生物ペプチドを測定するための非侵襲的方法
JP2017181423A (ja) 2016-03-31 2017-10-05 株式会社ナリス化粧品 肌の黄ぐすみ改善素材のスクリーニング方法及び評価キット
JP2017201254A (ja) 2016-05-05 2017-11-09 国立大学法人京都大学 テラヘルツ波を用いた皮膚角層水分量の計測方法
JP2019062887A (ja) 2017-09-28 2019-04-25 日光ケミカルズ株式会社 皮膚常在細菌叢解析を用いた皮膚状態を予測する方法
JP2019122266A (ja) 2018-01-12 2019-07-25 株式会社ナリス化粧品 踵荒れ抑制剤のスクリーニング方法及びキット

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE2421618A1 (de) * 1974-05-04 1975-11-20 Henkel & Cie Gmbh Hautpflege- und hautschutzmittel mit einem gehalt an haut-feuchthaltemitteln

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005249672A (ja) 2004-03-05 2005-09-15 Shiseido Co Ltd 角層中の酸化タンパク質を指標とする角層の透明性・保水性を評価する方法
JP2012161273A (ja) 2011-02-07 2012-08-30 Nippon Menaade Keshohin Kk 皮膚表皮内水分保持能評価法
JP2016513808A (ja) 2013-03-15 2016-05-16 ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー 微生物からの自然防御の客観的尺度として皮膚から抗微生物ペプチドを測定するための非侵襲的方法
JP2017181423A (ja) 2016-03-31 2017-10-05 株式会社ナリス化粧品 肌の黄ぐすみ改善素材のスクリーニング方法及び評価キット
JP2017201254A (ja) 2016-05-05 2017-11-09 国立大学法人京都大学 テラヘルツ波を用いた皮膚角層水分量の計測方法
JP2019062887A (ja) 2017-09-28 2019-04-25 日光ケミカルズ株式会社 皮膚常在細菌叢解析を用いた皮膚状態を予測する方法
JP2019122266A (ja) 2018-01-12 2019-07-25 株式会社ナリス化粧品 踵荒れ抑制剤のスクリーニング方法及びキット

Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
KANG, S. et al.,Beneficial effects of dried pomegranate juice concentrated powder on ultraviolet B-induced skin photoaging in hairless mice,EXPERIMENTAL AND THERAPEUTIC MEDICINE,2017年06月16日,Vol.14, No.2,pp.1023-1036
奥田奈緒美 ほか,加齢による肌黄ばみへの角層中ニトロ化タンパク質の影響,FRAGRANCE JOURNAL ,2017年08月,Vol.45, No.8,pp.20-25

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021156731A (ja) 2021-10-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Banka et al. Pattern hair loss in men: diagnosis and medical treatment
US11892447B2 (en) Method for evaluating the effects of dehydration on children's skin
JP5830465B2 (ja) 表皮分化マイクロrnaシグネチャーとその使用
JP2020074769A (ja) 被験体の皮膚細胞に由来する核酸の調製方法
JP6923927B2 (ja) 脱毛および白毛化を抑制もしくは改善するための組成物ならびにその使用
JP2013503613A5 (ja)
DeVault et al. Dendrite regeneration of adult Drosophila sensory neurons diminishes with aging and is inhibited by epidermal-derived matrix metalloproteinase 2
JP5300302B2 (ja) 1−ピペリジンプロピオン酸及び/またはその塩を活性成分とするscca−1産生抑制剤
CN104189005A (zh) 润肤剂组合物
JP7024003B2 (ja) 角層の水分保持能評価方法
US20180149640A2 (en) Method for Evaluating the Harmful Effects of Urine on Children's Skin
US9970848B2 (en) Method for evaluating state of horny layer and method for evaluating horny layer improvement effect of cosmetic preparation
JP5653783B2 (ja) 皮膚表皮内水分保持能評価法
US11193941B2 (en) Method for evaluating condition of skin dryness
Plonka et al. Electron paramagnetic resonance (EPR) spectroscopy for investigating murine telogen skin after spontaneous or depilation-induced hair growth
TWI595235B (zh) 粗糙肌膚的評估方法
JP2024041778A (ja) ペルオキシナイトライト活性阻害剤のスクリーニング方法
US20160361384A1 (en) Cosmetic use of dermicidin, or analogues or fragments thereof, for the prevention and/or treatment and diagnosis of oily skin and aesthetic skin disorders associated therewith
Nanes et al. Keratin switching modulates cellular mechanical properties to balance epidermal strength and plasticity
JP5653673B2 (ja) 皮膚血管機能評価法
JP2023067653A (ja) 皮膚常在菌叢解析を用いて皮膚状態を予測する方法
JP2023069499A (ja) 乾燥による皮膚表面形状悪化の検出方法
JP2007127444A (ja) 保湿性評価方法
de Berker et al. The Normal Nail and Nail Signs
CN115335121A (zh) 用于组织再生的方法及其试剂盒

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210317

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20211130

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220124

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220208

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220209

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7024003

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150