JP2023067653A - 皮膚常在菌叢解析を用いて皮膚状態を予測する方法 - Google Patents

皮膚常在菌叢解析を用いて皮膚状態を予測する方法 Download PDF

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史帆里 三浦
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Anna Iijima
一人 高崎
Kazuto TAKASAKI
朋幸 竹内
Tomoyuki Takeuchi
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Abstract

【課題】皮膚常在菌叢を構成する菌から、皮膚状態と高い相関性のある菌を見出し、その菌の存在比率に基づき、皮膚状態を予測する方法を提供すること。【解決手段】皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差を指標とすることを特徴とする、経皮水分蒸散量(TEWL)の予測方法。【選択図】なし

Description

本発明は、皮膚常在真菌叢における特定の真菌の存在比率又は存在比率の差を指標として経皮水分蒸散量(TEWL)を予測する方法に関する。
ヒトの皮膚上には、皮膚常在菌と呼ばれる様々な微生物が生息している。細菌ではCutibacterium属やStaphylococcus属、真菌ではMalassezia属が代表的であるが(非特許文献1)、皮膚常在菌叢を構成する菌種や割合は、皮膚の状態、外界からの刺激、個人差など、様々な要因によって変化すると考えられている。
皮膚常在菌は、皮膚機能に対して様々な影響を及ぼす。例えば、病原菌の侵入を防ぐ皮膚バリア機能の改善作用(非特許文献2)、Staphylococcus epidermidisによる保湿作用(非特許文献3)、Staphylococcus thermophilusによるセラミド産生作用(非特許文献4)などが報告されている。また、Cutibacterium acnesはプロピオン酸や乳酸を産生することによって皮膚を弱酸性に保ち、病原菌の増殖を防いでいる(非特許文献5)。一方、Cutibacterium acnesはニキビの原因にもなるため、適正な存在比が望ましいとされている。Staphylococcus aureusやCorynebacterium属細菌は、アトピー性皮膚炎の症状を増悪させることが知られている(非特許文献6)。真菌であるMalassezia属は、マラセチア毛包炎や脂漏性皮膚炎、癜風といった皮膚疾患を引き起こす(非特許文献7)。よって、皮膚を良い状態に保つためには、皮膚常在菌叢を良い状態に整えることが重要である。
近年、皮膚常在菌叢のバランスを良好に保つための改善剤が報告されている。例えば、特許文献1には、アメリカアブラヤシ果実油が、シンプソンインデックスが0.7未満の使用者に対し、Propionibacterium acnesのバランスを改善させるとともにCorynebacterium属を減少させ、その結果として皮膚の茶ジミ、キメ及びシワを改善できることが記載されている。また、特許文献2には、高麗ニンジン抽出物及び/又はチンピ抽出物が、Staphylococcus hominisの菌量促進作用とStaphylococcus aureusの菌数抑制作用を有し、その結果、アトピー性皮膚炎の症状を緩和し、毛穴個数の増加、メラニン量の増加、シワ本数の増加を予防又は改善できることが報告されている。
一方、皮膚常在菌叢解析を用いて、皮膚状態を予測する方法が報告されている。例えば、特許文献3には、皮膚細菌叢を構成する全ての細菌種とその存在比率を解析し、そのうちのCorynebacterium属の存在比率を指標として、皮膚のキメやシワを予測する方法が記載されている。また、特許文献4には、皮膚常在細菌叢に含まれる環境由来菌の菌量によって、経皮水分蒸散量(TEWL)、皮膚の明るさ、弾力性、シミ、角質水分量、黄味、凹凸、毛穴個数、紅斑指数、キメ、皮脂量、シワ本数、メラニン指数、細菌多様性を診断できることが報告されている。
しかしながら、上記の先行技術は、必ずしも感度良く、且つ定量的に皮膚状態を評価できるものではなかった。また、いずれの方法も、細菌叢解析によるものであり、真菌叢を利用して皮膚状態を予測する方法はこれまでなかった。
特開2019-65004号公報 特開2021-1160号公報 特開2019-62887号公報 特開2019-216652号公報
J Dermatol, Vol.37, PP.786-792, 2010 日皮会誌, 115巻, PP.977-984, 2005 J Dermatol Sci, Vol.79, PP.119-126, 2015 J Invest Dermatol, Vol.113, PP.98-106, 1999 Nature rev Microbiol, Vol.9, PP.244-253, 2011 Immunity, Vol.42, PP.756-766, 2015 真菌誌, vol.47, PP.75-80, 2006
本発明の目的は、皮膚常在菌叢を構成する菌から、皮膚状態と高い相関性のある菌を見出し、その菌の存在比率に基づき、皮膚状態を予測する方法を提供することにある。
本願発明者らは、次世代シーケンサーによるメタゲノム解析によって、複数の被験者の皮膚常在菌叢を構成する細菌及び真菌の存在比率の解析結果と、各種測定機器を用いて測定した皮膚パラメーターのデータを相関分析した結果、皮膚常在菌叢のうち真菌叢における特定のMalassezia属の真菌の存在比率又は存在比率の差と、肌荒れ指標である経皮水分蒸散量(TEWL)に相関関係があることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1]皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差を指標とすることを特徴とする、経皮水分蒸散量(TEWL)の予測方法。
[2]下記の工程を含む、経皮水分蒸散量(TEWL)の予測方法。
(1)皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差の解析値と経皮水分蒸散量(TEWL)との相関関係に基づいて回帰式を作成する工程
(2)被験者の皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差を解析する工程
(3)工程(2)の解析で得られた被験者の皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差の解析値を、工程(1)で作成した回帰式に当てはめて、該被験者の経皮水分蒸散量(TEWL)の予測値を求める工程
[3]前記予測値を、予め設定された経皮水分蒸散量(TEWL)の基準スコアと照合し、被験者の経皮水分蒸散量(TEWL)のスコアを決定する工程をさらに含む、[2]に記載の方法。
[4]前記マラセチア(Malassezia)属の真菌が、マラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)及びマラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)から選ばれる1種又は2種である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5][2]に記載の方法で得られた被験者の経皮水分蒸散量(TEWL)の予測値、又は[3]に記載の方法で得られた経皮水分蒸散量(TEWL)のスコアを用いて、皮膚状態を改善するためのアドバイスを行う、美容アドバイス方法。
本発明の方法によれば、被験者の経皮水分蒸散量(TEWL)を簡便、迅速、かつ正確に予測することができる。よって、本発明によれば、化粧品原料、化粧料、皮膚外用剤などの皮膚に対する効果を皮膚常在菌叢への影響と関連付けて説明することが可能となる。さらに、本発明の方法を用いることによって、皮膚常在菌叢の改善剤及び肌荒れ改善(経皮水分蒸散量抑制)効果のある化粧料、皮膚外用剤や有効成分の開発が可能となる。
前胸部における経皮水分蒸散量(TEWL)と皮膚常在真菌叢におけるマラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)の存在比率(%)の関係を示した図である。 前胸部における経皮水分蒸散量(TEWL)と皮膚常在真菌叢におけるマラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)の存在比率(%)の関係を示した図である。 前胸部における経皮水分蒸散量(TEWL)と皮膚常在真菌叢におけるマラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)の存在比率(%)とMalassezia sympodialisの存在比率(%)の差の関係を示した図である。
本発明の経皮水分蒸散量(TEWL)の予測方法は、皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差を指標とすることを特徴とする。
マラセチア(Malassezia)属の真菌は、Basidiomycota門、Exobasidiomycetes綱、Malasseziales目、Malasseziaceae科に属し、脂質要求性の性質を持つ。マラセチア(Malassezia)属は、近年の遺伝子学的解析法の発達により、2000年前後から急速に菌種分類研究が進み、現在は14種から構成される属となっている。このうち、マラセチア・デルマティス(Malassezia dermatis)、マラセチア・フルフル(Malassezia furfur)、マラセチア・グロボーサ(Malassezia globosa)、マラセチア・ジャポニカ(Malassezia japonica)、マラセチア・オブツーサ(Malassezia obtusa)、マラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)、マラセチア・スルーフィエ(Malassezia slooffiae)、マラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)及びマラセチア・ヤマトエンシス(Malassezia yamatoensis)の9種がヒトの皮膚由来であり、本発明の方法において指標とするマラセチア(Malassezia)属の真菌としては、マラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)及びマラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)が好ましい。マラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)及びマラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)はいずれか1種であってもよく、2種であってもよい。
本発明の方法において、「存在比率」とは、皮膚常在真菌叢に占めるマラセチア(Malassezia)属の少なくとも1種の真菌の割合をいう。また、「存在比率の差」とは、マラセチア(Malassezia)属の異なる2種の真菌の上記割合の差をいう。
「経皮水分蒸散量(Trans Epidermal Water Loss:TEWL)」とは、体内から無自覚のうちに角層を通じて揮散する水分量のことをいい、経表皮水分喪失、不感蒸泄、又は不感知蒸泄などともいう。経皮水分蒸散量(以下、単に「TEWL」を記載する場合がある)は、単位面積(m2)あたり、単位時間(h)あたりの水分の重量(g)、すなわち、g/(m2・h)で表される。TEWLは、皮膚の重要な機能の一つであるバリア機能を反映する指標として用いられる。肌荒れをするとTEWLの増加が観察されることはその代表例であり、一般的に、角質水分量とTEWLは反比例の関係にある。
後記実施例に示すように、皮膚常在真菌叢におけるマラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)の存在比率(%)とTEWLは正の相関関係(図1)、マラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)とTEWLは負の相関関係(図2)、マラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)の存在比率(%)とマラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)の存在比率(%)の差とTEWLは正の相関関係(図3)がある。よって、マラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)の存在比率(%)が高い人ほど、又はマラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)の存在比率(%)とマラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)の存在比率(%)の差が大きい人ほど、TEWLが高いため、皮膚常在真菌叢におけるマラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)の存在比率(%)、又はマラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)の存在比率(%)とマラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)の存在比率(%)の差を指標として、簡便にTEWLの多募を評価できる。反対に、マラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)の存在比率(%)が低い人ほど、TEWLが高いため、皮膚常在真菌叢におけるマラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)の存在比率(%)を指標として、簡便にTEWLの多募を評価できる。
本発明の経皮水分蒸散量(TEWL)の予測方法の一実施態様は、(1)皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差の解析値と経皮水分蒸散量(TEWL)との相関関係に基づいて回帰式を作成する工程、(2)被験者の皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差を解析する工程、及び(3)工程(2)の解析で得られた被験者の皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差の解析値を、工程(1)で作成した回帰式に当てはめて、該被験者の経皮水分蒸散量(TEWL)の予測値を求める工程を含む。
本発明の方法において、工程(1)の回帰式の作成のための標本となる集団の被験者(以下、「参照被験者」と記載する場合がある)の数は多数であるほどよく、特に限定はされないが、例えば少なくとも50名以上が好ましく、100名以上がより好ましい。参照被験者の年齢や性別は特に限定されないが、参照被験者の年齢は、各年代が同程度に分布していることが好ましい。また、参照被験者の皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差の解析値及びTEWLの情報を記録したデータベースを作成しておくことが好ましい。このデータベースは、新たに取得した被験者の皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差の解析値及びTEWLの予測値を追加することによって更新してもよい。
標本となる集団の皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差を解析するにあたり、参照被験者より皮膚常在真菌叢を含む試料を採取する。試料を採取する皮膚は、ヒトの全身の皮膚を対象とできるが、脂漏部位である顔面(額、頬、顎、鼻など)及び体幹(前胸部、背部など)の皮膚が好ましく、前胸部及び背部の皮膚がより好ましい。
皮膚表面からの試料の採取方法としては、綿棒による拭き取り法(スワブ法)、洗い出し法(スクラブ法)、テープストリップ法、及び皮膚組織切除法(バイオプシー法)が挙げられるが、非侵襲的であることから拭き取り法、洗い出し法、又はテープストリップ法が好ましい。拭き取り法や洗い出し法における採取液としては、ポリソルベート80、ポリソルベート20又はトリトンX-100といった界面活性剤を添加した蒸留水、生理食塩液、及びリン酸緩衝液を用いる。テープストリッピング法には、セロファンテープをはじめ、各種の市販されている粘着テープを用いることができる。
採取した試料の解析方法としては、培養法、PCR法、リアルタイムPCR法、定量Reverse Transcription-PCR(RT-PCR)法、次世代シーケンサー(NGS:next-generation sequencer)によるメタゲノム解析法等を利用することができるが、マラセチア(Malassezia)属真菌は難培養性であることから、PCR法、リアルタイムPCR法、定量RT-PCR法、又はNGSによるメタゲノム解析法などの非培養法が好ましく、NGSによるメタゲノム解析がより好ましい。NGSを用いることで、皮膚常在真菌叢を構成する全ての真菌種とその存在比率の解析を一度に行うことが可能である。
採取した試料からのDNAの抽出は、例えば、核酸抽出法として当業者に公知のいかなる方法を用いてもよく、例えば、フェノール抽出法、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)法、アルカリSDS法等が挙げられる。また、これらの方法は適宜改変して行ってもよく、試薬メーカーより販売されている各種DNA抽出キットを用いてもよい。試料の種類によっては、メンブランフィルターによる濾過やホモジナイズを行う。また、試薬メーカーより販売されているDNeasy Plant mini Kit(株式会社キアゲン製)等の各種DNA抽出キットを用いても良い。これらの方法により抽出したDNAは、PCRの鋳型として用いるのに適した状態で保持することが好ましく、例えば適切な緩衝液に溶解させて低温下で保管することが好ましい。また、DNAの抽出後、クロロホルム/イソアミルアルコール処理、イソプロパノール沈澱、フェノール/クロロホルムによる除蛋白、エタノール沈澱などの精製処理を行ってもよい。
NGSによるメタゲノム解析を行う場合、どのような遺伝子領域でもターゲットとすることはできるが、リボゾーム遺伝子領域を用いることが好ましい。リボゾーム遺伝子領域としては、18S rRNA領域、28S rRNA領域、5.8S rRNA領域、又は5.8S rRNA領域の前後にあるスペーサー領域(internal transcribed spacer領域:ITS領域)などが挙げられる。なお、ITS領域は、5.8S rRNA領域の上流側にあるITS-1と下流側にあるITS-2に分けられる。
TEWLの測定は公知の方法で行うことができ、測定法には、開放系と閉鎖系の二つがある。開放系の測定法では、二つの湿度センサーが一定の間隔で皮膚表面上に位置するように設計された中空の円筒型のプローブを皮膚にあて、2点の水分量を測定し、皮膚表面の水分の濃度勾配からFickの法則によって、TEWLを計算する。一方、閉鎖系の測定法では、皮膚の表面に密閉式のプローブをあて、プローブ内の皮膚表面に乾燥した空気や窒素ガスを還流させ、回収したガスの含有水分量からTEWLを計算する。また、ガスを還流させない閉鎖系の方式もあり、その場合には、密閉プローブ内の水分量を連続的に測定し、その上昇速度からTEWLを推定する。
回帰式は、上記の標本となる集団から得られた皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差の解析値と、TEWLの測定値とから、線形回帰分析により求めることができる。なお、いったん作成された回帰式は、被験者のTEWLの予測を行う演算装置にその回帰式を記憶させて使用すればよい。
本発明の方法において、工程(2)の被験者は、TEWLの予測対象となる任意の被験者であって、エステティックサロンや化粧品販売店の顧客等である。皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差の解析は、上記の方法に従って行えばよい。なお、解析に供する被験者の試料の採取方法もまた、上記の方法と同様にできるが、容易性及び低侵襲性の点から、額や頬などの顔面の皮膚から、綿棒による拭き取り法(スワブ法)で採取することが好ましい。
工程(3)では、被験者の皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差の解析値を、予め作成された回帰式に当てはめることにより、該被験者のTEWLの予測値を求める。
被験者のTEWLの予測値は、予め設定されたTEWLの基準スコアと照合し、該被験者のTEWLのスコアを決定してもよい。TEWLの基準スコアは、例えば、前記参照被験者のTEWLを3区分(高い、中間、低い)に分類し、TEWLが高い区分に分類された場合のスコアを3点、中間の区分に分類された場合のスコアを2点、低い区分に分類された場合のスコアを1点のように設定する。また、TEWLの基準スコアと皮膚状態を関連づけてもよい。ここで、「皮膚状態」とは、TEWLに反映される皮膚角層のバリア機能に関連する皮膚状態であって、例えば、角質水分量(潤い)、肌荒れ、炎症、ハリ、シワ、タルミ、キメなどの状態が含まれる。皮膚状態を関連づけたTEWLの基準スコアの例として、3点は、角質水分量が高く、潤いがあって、肌荒れがなく、皮膚状態が良い、2点は、角質水分量が中程度で、潤いや肌荒れがややあり、皮膚状態が中程度である、1点は、角質水分量が低く、潤いが不足し、肌荒れがあり、皮膚状態が悪い、とする。
本発明によればまた、上記のようにして得られた被験者のTEWLの予測値、又は、TEWLのスコアの少なくとも一方を用いて、皮膚状態を改善するためのアドバイスを行う、美容アドバイス方法が提供される。アドバイスは、例えば、美容部員等が、被験者のTEWLの予測値、又は、TEWLのスコアに応じて、角質水分量や肌荒れ等を改善するための化粧料や肌の手入れ方法を提供することが挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
試験は、臨床研究の倫理ガイドラインとヘルシンキ宣言で定められた倫理原則に従って被験者に対して文書による説明と同意を得た上で実施した。
被験者60名(男女各30名)を対象とし、前胸部を被験部位とした。皮膚常在真菌のサンプリングは、0.05%(w/v)濃度のポリソルベート80を添加したTris-EDTA(TE)緩衝液を染み込ませた綿棒による拭き取り法で実施した。採取した試料から、DNA抽出試薬GenCheck(ファスマック)によってDNA抽出を行った。NGS Miseq(イルミナ)によるメタゲノム解析を行い、皮膚常在真菌叢を構成する真菌とその存在比率を解析した。メタゲノム解析の試薬類はメーカーのプロトコルに準じ、ターゲットとしてはITS-1領域を用い、ITS-1プライマーとしては下記のITS-1-F primer及びITS-1-R primerを用いた。
ITS-1-F primer:CTTGGTCATTTAGAGGAAGTAA(配列番号1)
ITS-1-R primer:GTTCAAAGAYTCGATGATTCAC(配列番号2)
経皮水分蒸散量(TEWL)は、被験者を60分間安静させた後、Tewameter TMHex(Courage+Khazaka)によって測定した。
Y軸を解析した皮膚常在真菌叢に占めるマラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)の存在比率(%)、X軸をTEWLとして散布図を作成し、この散布データに基づいて直線回帰式を求めた。散布図及び回帰直線、相関係数、回帰式を図1に示す。
Y軸を解析した皮膚常在真菌叢に占めるマラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)の存在比率(%)、X軸をTEWLとして散布図を作成し、この散布データに基づいて直線回帰式を求めた。散布図及び回帰直線、相関係数、回帰式を図2に示す。
Y軸を解析した皮膚常在真菌叢に占めるマラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)の存在比率(%)とマラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)の存在比率(%)の差、X軸をTEWLとして散布図を作成し、この散布データに基づいて直線回帰式を求めた。散布図及び回帰直線、相関係数、回帰式を図3に示す。
図1に示されるように、マラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)の存在比率(%)とTEWLは正の相関関係を示し(y=7.9x+12.7, R=0.46)、図2に示されるように、マラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)の存在比率(%)とTEWLは負の相関関係を示した(y=-12.8x+53.7, R=-0.56)。また、図3に示されるように、マラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)の存在比率(%)とマラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)の存在比率(%)の差とTEWLは、正の相関関係を示し(図3:y=20.6x-41.3, R=0.58)、その相関係数はマラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)単独又はマラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)単独の時よりも高かった。
これらの結果から、皮膚常在真菌叢に占めるマラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)又はマラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)の存在比率(%)、またそれらの差によって、肌荒れ指標であるTEWLを予測することが可能であると考えられた。
(実施例2)
被験者6名(男女各3名)を対象とし、前胸部を被験部位とした。実施例1と同様にNGS Miseq(イルミナ)によるメタゲノム解析を行い、試料中の真菌におけるマラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)の存在比率(%)とマラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)の存在比率(%)を求めた。それらの差の値を図3で求めた式に当てはめることにより、TEWLの予測値を求めた。結果を下記表1に示す。
Figure 2023067653000001
表1に示されるように、Malassezia restrictaの存在比率(%)とMalassezia sympodialisの存在比率(%)の差によって求めたTEWLの予測値は、TEWLの実測値と同等であった。
以上の結果から、皮膚常在真菌叢に占めるMalassezia restrictaの存在比率(%)とMalassezia sympodialisの存在比率(%)の差によって、TEWLを予測することが可能であり、予測の正確性が実証された。
本発明は、皮膚常在菌叢の改善剤及び皮膚状態の改善効果のある化粧料や皮膚外用剤、有効成分の開発に利用できる。

Claims (5)

  1. 皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差を指標とすることを特徴とする、経皮水分蒸散量(TEWL)の予測方法。
  2. 下記の工程を含む、経皮水分蒸散量(TEWL)の予測方法。
    (1)皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差の解析値と経皮水分蒸散量(TEWL)との相関関係に基づいて回帰式を作成する工程
    (2)被験者の皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差を解析する工程
    (3)工程(2)の解析で得られた被験者の皮膚常在真菌叢におけるマラセチア(Malassezia)属の真菌の存在比率又は存在比率の差の解析値を、工程(1)で作成した回帰式に当てはめて、該被験者の経皮水分蒸散量(TEWL)の予測値を求める工程
  3. 前記予測値を、予め設定された経皮水分蒸散量(TEWL)の基準スコアと照合し、被験者の経皮水分蒸散量(TEWL)のスコアを決定する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
  4. 前記マラセチア(Malassezia)属の真菌が、マラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)及びマラセチア・シンポディアリス(Malassezia sympodialis)から選ばれる1種又は2種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 請求項2に記載の方法で得られた被験者の経皮水分蒸散量(TEWL)の予測値、又は請求項3に記載の方法で得られた経皮水分蒸散量(TEWL)のスコアを用いて、皮膚状態を改善するためのアドバイスを行う、美容アドバイス方法。
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