JP7057172B2 - 燃焼空気流量の制御方法及び連続多帯式加熱炉 - Google Patents

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Description

本発明は、燃焼空気流量の制御方法及び連続多帯式加熱炉に関する。
一般的な直火型の連続多帯式加熱炉は、複数の加熱ゾーンにそれぞれ配設される複数のバーナーでスラブ等を加熱する。バーナーを用いた加熱の際には、加熱炉内で適切な燃焼状態を実現するために、バーナーに供給される燃料流量と空気流量との比(バーナー空気比)が調整される。
理想的なバーナー空気比に対し、バーナーへの空気の供給量が過剰である場合、排ガス損失(排気ガスとして逃げる熱損失)が発生する。連続多帯式加熱炉の炉内酸素濃度が低い場合は、バーナー空気比の調整によって容易に適切な燃焼状態が実現されるため、排ガス損失が低減される。
一方、連続多帯式加熱炉は、装入及び抽出用の扉、搬送用のスキッド等を備えているため、これらの設備から炉内へ不可避的に空気が侵入する。加熱炉内への空気の侵入量が多いと、燃焼に対する炉内酸素の影響を無視することができなくなり、バーナー空気比の調整において炉内酸素の影響を考慮する必要が生じる。
そこで、外気の侵入を考慮して加熱炉内の空気比(空燃比)を設定し、加熱炉内が設定された空気比となるようにバーナーへの空気流量を調整する燃焼制御方法が提案されている(特許文献1)。特許文献1の燃焼制御方法は、炉内酸素濃度と炉内一酸化炭素濃度とを測定し、これらの測定値と目標値との偏差を解消する空気比を算出し、算出した空気比となるようにバーナーへの空気流量を調整することによって、最適な燃焼状態を保持できるとしている。
しかしながら、特許文献1の燃焼制御方法は、測定された炉内酸素濃度と炉内一酸化炭素濃度とを用いて空気比を補正する制御に留まるものであり、侵入空気自体を定量的に考慮するものではない。このため、実際の制御では、時定数や空気比のハンチングが大きくなりやすい。したがって、特許文献1の燃焼制御方法では、空気比の補正幅を大きくし、排ガス損失を十分に低減することが困難である。
特開昭61-49928号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、排ガス損失を十分に低減することが可能な燃焼空気流量の制御方法及び連続多帯式加熱炉を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、直列して設けられる複数の加熱ゾーンを有する炉体と、これらの加熱ゾーンにそれぞれ配設される複数のバーナーとを備える連続多帯式加熱炉におけるバーナーへ供給される燃焼空気流量の制御方法であって、上記複数の加熱ゾーン毎のバーナーへの燃料流量、バーナーへの燃焼空気流量、炉内酸素濃度及び炉温を測定する工程と、上記複数の加熱ゾーン毎の上記燃料流量、上記燃焼空気流量、上記炉内酸素濃度及び上記炉温、並びに上記炉体内の排ガス移流及び滞留を考慮した非定常質量保存式に基づいて上記複数の加熱ゾーン毎の侵入空気流量を算出する工程と、上記複数の加熱ゾーン毎の上記侵入空気流量に基づいて上記複数の加熱ゾーン内を所望の空気比に保持可能なバーナーへの燃焼空気流量を算出する工程と、上記複数のバーナーへ供給する燃焼空気流量を上記算出工程で算出された上記燃焼空気流量に調整する工程とを備える。
当該燃焼空気流量の制御方法は、複数の加熱ゾーン毎の燃料流量、燃焼空気流量、炉内酸素濃度及び炉温、並びに炉体内の排ガス移流及び滞留を考慮した非定常質量保存式に基づいて加熱ゾーン毎の侵入空気流量を算出するので、加熱ゾーン毎の侵入空気流量を定量的に把握することができる。そして、当該燃焼空気流量の制御方法は、加熱ゾーン内を所望の空気比とするように、算出された侵入空気流量に基づいてバーナーへ供給する燃焼空気流量を調整するので、加熱ゾーン内の空気比を適切な値に保持し、排ガス損失を十分に低減できる。
上記測定工程で、炉内一酸化炭素濃度をさらに測定し、上記侵入空気流量の算出工程で、上記測定工程で測定した炉内一酸化炭素濃度をさらに考慮するとよい。このように上記測定工程で炉内一酸化炭素濃度を測定し、その測定値を上記算出工程での侵入空気流量の算出に考慮することで、一酸化炭素の燃焼に必要な空気量を精度よく考慮した燃焼空気流量に調整できるので、さらに排ガス損失を低減できる。
上記課題を解決するためになされた別の発明は、直列して設けられる複数の加熱ゾーンを有する炉体と、これらの加熱ゾーンにそれぞれ配設される複数のバーナーとを備える連続多帯式加熱炉であって、上記複数の加熱ゾーン毎のバーナーへの燃料流量を測定する複数の燃料流量計と、上記複数の加熱ゾーン毎のバーナーへの燃焼空気流量を測定する複数の空気流量計と、上記複数の加熱ゾーン毎の炉内酸素濃度を測定する複数の酸素濃度計と、上記複数の加熱ゾーン毎の炉温を測定する複数の温度計と、上記複数の加熱ゾーン毎の上記燃料流量、上記燃焼空気流量、上記炉内酸素濃度及び上記炉温、並びに上記炉体内の排ガス移流及び滞留を考慮した非定常質量保存式に基づいて上記複数の加熱ゾーン毎の侵入空気流量を算出する第1演算部と、上記複数の加熱ゾーン毎の上記侵入空気流量に基づいて上記複数の加熱ゾーン内を所望の空気比に保持可能なバーナーへの燃焼空気流量を算出する第2演算部と、上記複数のバーナーへ供給する燃焼空気流量を上記第2演算部で算出された上記燃焼空気流量に調整する燃焼空気流量調整部とをさらに備える。
当該連続多帯式加熱炉は、複数の加熱ゾーン毎の燃料流量、燃焼空気流量、炉内酸素濃度及び炉温、並びに炉体内の排ガス移流及び滞留を考慮した非定常質量保存式に基づいて複数の加熱ゾーン毎の侵入空気流量を算出するので、加熱ゾーン毎の侵入空気流量を定量的に把握することができる。そして、当該連続多帯式加熱炉は、加熱ゾーン内を所望の空気比とするように、算出された侵入空気流量に基づいてバーナーへ供給する燃焼空気流量を調整するので、加熱ゾーン内の空気比を適切な値に保持し、排ガス損失を十分に低減できる。
上記複数の加熱ゾーン毎の炉内一酸化炭素濃度を測定する複数の一酸化炭素濃度計をさらに備え、上記第1演算部が、上記侵入空気流量の算出で上記炉内一酸化炭素濃度をさらに考慮するとよい。このように一酸化炭素濃度計で炉内一酸化炭素濃度を測定し、その測定値を第1演算部での侵入空気流量の算出に考慮することで、一酸化炭素の燃焼に必要な空気量を精度よく考慮した燃焼空気流量に調整できるので、さらに排ガス損失を低減できる。
本発明の燃焼空気流量の制御方法及び連続多帯式加熱炉は、排ガス損失を十分に低減できる。
本発明の一実施形態の連続多帯式加熱炉の概要を説明するための模式的構成図である。 図1とは異なる本発明の一実施形態の連続多帯式加熱炉の概要を説明するための模式的構成図である。 図3は、比較例におけるバーナー空気比、炉内酸素濃度及び炉内一酸化炭素濃度の時間変化を示すグラフである。 図4は、実施例におけるバーナー空気比、炉内酸素濃度及び炉内一酸化炭素濃度の時間変化を示すグラフである。
〔第一実施形態〕
以下、本発明に係る燃焼空気流量の制御方法及び連続多帯式加熱炉の第一実施形態について図を参照しつつ詳説する。
[連続多帯式加熱炉]
図1の連続多帯式加熱炉1は、直列して設けられる複数の加熱ゾーンを有する炉体2と、これらの加熱ゾーンにそれぞれ配設される複数のバーナーとを備えている。具体的には、連続多帯式加熱炉1が、第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23をこの順に有する炉体2を備えており、第1加熱帯21にはバーナー31が配設され、第2加熱帯22にはバーナー32が配設され、均熱帯23にはバーナー33が配設されている。なお、図1では、炉体2の外から内に向かう白抜き矢印で侵入空気の流れが示され、炉体2内の均熱帯23から第1加熱帯21に向かう白抜き矢印で炉体2内を移流するガスの流れが示されている。
また、連続多帯式加熱炉1は、複数の加熱ゾーン毎のバーナーへの燃料流量を測定する複数の燃料流量計と、複数の加熱ゾーン毎のバーナーへの燃焼空気流量を測定する複数の空気流量計と、複数の加熱ゾーン毎の炉内酸素濃度を測定する複数の酸素濃度計と、複数の加熱ゾーン毎の炉温を測定する複数の温度計とを備えている。具体的には、連続多帯式加熱炉1は、第1加熱帯21のバーナー31への燃料流量を測定する燃料流量計Qf1と、バーナー31への燃焼空気流量を測定する空気流量計Qa1と、炉内酸素濃度を測定する酸素濃度計O1と、炉温を測定する温度計T1と、第2加熱帯22のバーナー32への燃料流量を測定する燃料流量計Qf2と、バーナー32への燃焼空気流量を測定する空気流量計Qa2と、炉内酸素濃度を測定する酸素濃度計O2と、炉温を測定する温度計T2と、均熱帯23のバーナー33への燃料流量を測定する燃料流量計Qf3と、バーナー33への燃焼空気流量を測定する空気流量計Qa3と、炉内酸素濃度を測定する酸素濃度計O3と、炉温を測定する温度計T3とを備えている。
また、連続多帯式加熱炉1は、複数の加熱ゾーン毎の燃料流量、燃焼空気流量、炉内酸素濃度及び炉温、並びに炉体内の排ガス移流及び滞留を考慮した非定常質量保存式に基づいて複数の加熱ゾーン毎の侵入空気流量を算出する第1演算部と、複数の加熱ゾーン毎の侵入空気流量に基づいて複数の加熱ゾーン内を所望の空気比に保持可能なバーナーへの燃焼空気流量を算出する第2演算部と、複数のバーナーへ供給する燃焼空気流量を第2演算部で算出された燃焼空気流量に調整する燃焼空気流量調整部とをさらに備えている。なお、第1演算部、第2演算部及び燃焼空気流量調整部は、図示しないコンピュータにより実現される。
[燃焼空気流量の制御方法]
当該燃焼空気流量の制御方法は、上述の連続多帯式加熱炉1におけるバーナーへ供給される燃焼空気流量の制御方法であり、以下の工程を備える。
(1)複数の加熱ゾーン毎のバーナーへの燃料流量、バーナーへの燃焼空気流量、炉内酸素濃度及び炉温を測定する測定工程
(2)複数の加熱ゾーン毎の燃料流量、燃焼空気流量、炉内酸素濃度及び炉温、並びに炉体内の排ガス移流及び滞留を考慮した非定常質量保存式に基づいて複数の加熱ゾーン毎の侵入空気流量を算出する第1算出工程
(3)複数の加熱ゾーン毎の侵入空気流量に基づいて複数の加熱ゾーン内を所望の空気比に保持可能なバーナーへの燃焼空気流量を算出する第2算出工程
(4)複数のバーナーへ供給する燃焼空気流量を第2算出工程で算出された燃焼空気流量に調整する調整工程
<測定工程>
測定工程は、第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23のそれぞれについて、バーナーへの燃料流量、バーナーへの燃焼空気流量、炉内酸素濃度及び炉温を測定する工程である。バーナーへの燃料流量の測定には燃料流量計Qf1、燃料流量計Qf2及び燃料流量計Qf3が用いられ、バーナーへの燃焼空気流量の測定には空気流量計Qa1、空気流量計Qa2及び空気流量計Qa3が用いられ、炉内酸素濃度の測定には酸素濃度計O1、酸素濃度計O2及び酸素濃度計O3が用いられ、炉温の測定には温度計T1、温度計T2及び温度計T3が用いられる。
<第1算出工程>
第1算出工程は、第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23のそれぞれについて測定された燃料流量、燃焼空気流量、炉内酸素濃度及び炉温と、炉体2内の排ガス移流及び滞留を考慮した非定常質量保存式とに基づいて第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23の侵入空気流量を算出する工程である。
(非定常質量保存式)
第1算出工程で用いられる非定常質量保存式は下記式(1)で与えられる。ここで、ρはガスの密度(kg/m)、Cはガスの濃度(vol%)、Qは体積流量(m/sec)、mは質量流量(kg/sec)、Mは未燃COの生成に由来する流量(kg/sec)、Vは帯の容積(m)を示す。また、添え字のiは第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23を示し、xはガスの組成であるO、N、CO、CO、HOを示し、bはバーナーの排ガスに由来することを示し、lは侵入空気に由来することを示す。
Figure 0007057172000001
式(1)の左辺第1項はガスの時間変化に関する項であり、左辺第2項は炉内を移流するガスの流れに関する項である。式(1)の右辺第1項はバーナーに由来するガスの生成項であり、右辺第2項は侵入空気に由来するガスの生成項である。また、右辺第3項は未燃COに由来するガスの生成項であり、化学反応式2CO+O=2COに基づく燃料及び燃焼空気の燃焼計算において酸素が不足する場合に、不足酸素量に対応して増加するCO及び減少するCOの質量流量を示すものである。
ガスの密度ρi,xは、温度計T1からT3で測定された炉温と、気体の状態方程式とに基づく計算により求まる。炉内酸素濃度Ci,O2は、酸素濃度計O1からO3で測定されるため既知である。各帯のガスの濃度Ci,xの和は1である。ガスの質量流量mi,b,xは、燃料流量計Qf1からQf3で測定された燃料流量と、空気流量計Qa1からQa3で測定された燃焼空気流量と、化学反応式とに基づく燃焼計算により求まる。第1算出工程では、上述の各パラメータと式(1)に示されるガス成分毎の5本の連立方程式とを用いることにより、各帯の酸素以外のガスの濃度Ci,xと、各帯の侵入空気流量mi,l,xと、各帯の体積流量Qとが算出される。
<第2算出工程>
第2算出工程は、第1算出工程で算出された各帯の侵入空気流量に基づいて各帯のそれぞれを所望の空気比に保持可能なバーナーへの燃焼空気流量を算出する工程である。具体的には、第2算出工程では、バーナーへの燃料流量に比例した理想空気量と、各帯の侵入空気流量と、各帯の流入ガス流量と、各帯の流出ガス流量とに基づいて、第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23のそれぞれを目標空気比に保持可能な空気量を求め、求めた空気量となるバーナーへの燃焼空気流量を算出する。なお、目標空気比は、排ガス損失を低減する観点から、1.0以上1.2以下とすると好ましい。
<調整工程>
調整工程は、第1加熱帯21のバーナー31、第2加熱帯22のバーナー32、均熱帯23のバーナー33のそれぞれへ供給する燃焼空気流量を第2算出工程で算出された燃焼空気流量に調整する工程である。これにより、第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23の空気比は、目標空気比に近い値で保持される。
(利点)
当該燃焼空気流量の制御方法及び当該連続多帯式加熱炉1は、第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23の燃料流量、燃焼空気流量、炉内酸素濃度及び炉温、並びに炉体2内の排ガス移流及び滞留を考慮した非定常質量保存式に基づいて第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23の侵入空気流量を算出するので、第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23の侵入空気流量を定量的に把握することができる。そして、当該燃焼空気流量の制御方法及び当該連続多帯式加熱炉1は、第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23を所望の空気比とするように、算出された侵入空気流量に基づいてバーナー31、バーナー32及びバーナー33へ供給する燃焼空気流量を調整するので、第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23の空気比を適切な値に保持し、排ガス損失を十分に低減できる。
また、炉内酸素濃度が高いと、炉内酸素の影響でスラブ表面に生成されるスケールの量が増大し、鋼板等の加工品の製造効率が低下するが、当該燃焼空気流量の制御方法及び当該連続多帯式加熱炉1は、必要以上にバーナー31、バーナー32及びバーナー33へ供給する燃焼空気流量を増加させない制御が可能であるので、炉内酸素濃度を低くできる。つまり、当該燃焼空気流量の制御方法及び当該連続多帯式加熱炉1は、スラブ表面に生成されるスケールの量を低減できる。
さらに、当該燃焼空気流量の制御方法及び当該連続多帯式加熱炉1は、各帯の侵入空気量と、各帯の流入ガス流量と、各帯の流出ガス流量とを演算し、これらに基づきバーナー31、バーナー32及びバーナー33へ供給する燃焼空気流量を調整するので、炉体2内の状態変化に大きく遅れることのないフィードフォワード方式で燃焼空気流量を制御できる。当該燃焼空気流量の制御方法及び当該連続多帯式加熱炉1は、時間変化に対する追従性の高い燃焼空気流量の制御を採用できるため、従来技術のように空気比の補正幅を小さくする必要がなく、炉内酸素濃度を適切に低減できる。
〔第二実施形態〕
以下、本発明に係る燃焼空気流量の制御方法及び連続多帯式加熱炉の第二実施形態について図を参照しつつ詳説する。
[連続多帯式加熱炉]
図2の連続多帯式加熱炉10は、直列して設けられる複数の加熱ゾーンを有する炉体2と、これらの加熱ゾーンにそれぞれ配設される複数のバーナーとを備えている。具体的には、連続多帯式加熱炉1が、第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23をこの順に有する炉体2を備えており、第1加熱帯21にはバーナー31が配設され、第2加熱帯22にはバーナー32が配設され、均熱帯23にはバーナー33が配設されている。
また、連続多帯式加熱炉10は、複数の加熱ゾーン毎のバーナーへの燃料流量を測定する複数の燃料流量計と、複数の加熱ゾーン毎のバーナーへの燃焼空気流量を測定する複数の空気流量計と、複数の加熱ゾーン毎の炉内酸素濃度を測定する複数の酸素濃度計と、複数の加熱ゾーン毎の炉内一酸化炭素濃度を測定する複数の一酸化炭素濃度計と、複数の加熱ゾーン毎の炉温を測定する複数の温度計とを備えている。図2の連続多帯式加熱炉10は、複数の一酸化炭素濃度計を備え、第1演算部が侵入空気流量の算出で炉内一酸化炭素濃度をさらに考慮する点以外は、図1の連続多帯式加熱炉1の各加熱ゾーンと同様に構成されるので、同一符号を付して説明を省略する。
上記複数の一酸化炭素濃度計として、具体的には、連続多帯式加熱炉10は、第1加熱帯21の炉内一酸化炭素濃度を測定する一酸化炭素濃度計CO1と、第2加熱帯22の炉内一酸化炭素濃度を測定する一酸化炭素濃度計CO2と、均熱帯23の炉内一酸化炭素濃度を測定する一酸化炭素濃度計CO3とを備える。
図2の連続多帯式加熱炉10では、複数の加熱ゾーン毎の燃料流量、燃焼空気流量、炉内酸素濃度及び炉温、並びに炉体内の排ガス移流及び滞留に加えて、上記複数の一酸化炭素濃度計で測定された炉内一酸化炭素濃度を考慮した非定常質量保存式に基づいて複数の加熱ゾーン毎の侵入空気流量を算出する。
[燃焼空気流量の制御方法]
当該燃焼空気流量の制御方法は、上述の連続多帯式加熱炉10におけるバーナーへ供給される燃焼空気流量の制御方法であり、以下の工程を備える。
(1)複数の加熱ゾーン毎のバーナーへの燃料流量、バーナーへの燃焼空気流量、炉内酸素濃度、炉内一酸化炭素濃度及び炉温を測定する測定工程
(2)複数の加熱ゾーン毎の燃料流量、燃焼空気流量、炉内酸素濃度、炉内一酸化炭素濃度及び炉温、並びに炉体内の排ガス移流及び滞留を考慮した非定常質量保存式に基づいて複数の加熱ゾーン毎の侵入空気流量を算出する第1算出工程
(3)複数の加熱ゾーン毎の侵入空気流量に基づいて複数の加熱ゾーン内を所望の空気比に保持可能なバーナーへの燃焼空気流量を算出する第2算出工程
(4)複数のバーナーへ供給する燃焼空気流量を第2算出工程で算出された燃焼空気流量に調整する調整工程
<測定工程>
測定工程は、第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23のそれぞれについて、バーナーへの燃料流量、バーナーへの燃焼空気流量、炉内酸素濃度、炉内一酸化炭素濃度及び炉温を測定する工程である。炉内一酸化炭素濃度の測定には、第1加熱帯21の一酸化炭素濃度計CO1、第2加熱帯22の一酸化炭素濃度計CO2及び均熱帯23の一酸化炭素濃度計CO3が用いられる。他の量については、第一実施形態の燃焼空気流量の制御方法で述べた測定工程と同様であるので、説明を省略する。
<第1算出工程>
第1算出工程は、第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23のそれぞれについて測定された燃料流量、燃焼空気流量、炉内酸素濃度、炉内一酸化炭素濃度及び炉温と、炉体2内の排ガス移流及び滞留を考慮した非定常質量保存式とに基づいて第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23の侵入空気流量を算出する工程である。
(非定常質量保存式)
第1算出工程で用いられる非定常質量保存式は下記式(2)で与えられる。ここで、各変数の意味は、第一実施形態の燃焼空気流量の制御方法で述べた非定常質量保存式(1)と同様であるので、説明を省略する。
Figure 0007057172000002
第一実施形態の非定常質量保存式(1)との相違点は、右辺第3項Mi,xがない点である。上記式(1)の右辺第3項は、酸素が不足した際に発生する未燃COに由来するガスの生成項である。第一実施形態では、炉内一酸化炭素濃度は測定されていないため、一酸化炭素の発生は、炉内酸素濃度から判断される酸素の不足により推定し、非定常質量保存式(1)の中で強制的に発生させる項を設ける必要がある。これに対し、炉内一酸化炭素濃度が測定されている連続多帯式加熱炉10を用いた燃焼空気流量の制御方法では、実測により炉内一酸化炭素濃度を知ることができるので、この右辺第3項は不要となる。
ガスの密度ρi,xは、温度計T1からT3で測定された炉温と、気体の状態方程式とに基づく計算により求まる。炉内酸素濃度Ci,O2及び炉内一酸化炭素濃度Ci,COは、酸素濃度計O1からO3及び一酸化炭素濃度計CO1からCO3でそれぞれ測定されるため既知である。各帯のガスの濃度Ci,xの和は1である。ガスの質量流量mi,b,xは、燃料流量計Qf1からQf3で測定された燃料流量と、空気流量計Qa1からQa3で測定された燃焼空気流量と、化学反応式とに基づく燃焼計算により求まる。第1算出工程では、上述の各パラメータと式(2)に示されるガス成分毎の5本の連立方程式とを用いることにより、各帯の酸素及び一酸化炭素以外のガスの濃度Ci,xと、各帯の侵入空気流量mi,l,xと、各帯の体積流量Qとが算出される。
<第2算出工程、調整工程>
第2算出工程及び調整工程は、それぞれ第一実施形態の第2算出工程及び調整工程と同様であるので、説明を省略する。
(利点)
当該燃焼空気流量の制御方法及び当該連続多帯式加熱炉10は、第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23の炉内一酸化炭素濃度をさらに考慮した非定常質量保存式に基づいて第1加熱帯21、第2加熱帯22及び均熱帯23の侵入空気流量を算出する。このため、推定による炉内一酸化炭素濃度を用いる非定常質量保存式に基づいて侵入空気流量を算出する場合に比べ、炉内一酸化炭素濃度がより正確であり、算出される侵入空気流量の精度が向上する。従って、当該燃焼空気流量の制御方法及び当該連続多帯式加熱炉10は、一酸化炭素の燃焼に必要な空気量を精度よく考慮した燃焼空気流量に調整できるので、さらに排ガス損失を低減できる。
[その他の実施形態]
本発明の燃焼空気流量の制御方法及び連続多帯式加熱炉は上記実施形態に限定されるものではない。
上記実施形態では、連続多帯式加熱炉の炉体が複数の加熱ゾーンとして第1加熱帯、第2加熱帯及び均熱帯を備えるものについて説明したが、加熱ゾーンはこれらに限定されない。また、加熱ゾーンの数は3に限定されず、連続多帯式加熱炉が2以上の加熱ゾーンを備えていればよい。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<スケールロスの比較>
連続多帯式加熱炉を用いて上述の第一実施形態の燃焼空気流量の制御方法に基づく実施例の制御と特許文献1の制御方法に基づく比較例の制御と実施し、これらを検証した。検証においては、各帯におけるバーナー空気比及び炉内酸素濃度と排ガス流量とを測定し、さらにスケールロスを算出した。排ガス流量は、第1加熱帯21の下流に設けたガス流量計により測定し、スケールロスは、炉内酸素濃度に基づいて算出した。測定された各帯の炉内酸素濃度と、測定された排ガス流量と、算出されたスケールロスとを表1に示す。
Figure 0007057172000003
比較例では、バーナー空気比は実施例と同様に1.0以下で制御されたが、侵入空気による各帯の炉内酸素濃度の上昇が見られ、特に均熱帯では炉内酸素濃度が6.5%という高い値となった。
一方、実施例では、比較例に対して排ガス流量が約10%低減することが確認された。また、実施例では、比較例に対して各帯の炉内酸素濃度が大幅に低減されており、この炉内酸素濃度の低減量に基づいた試算によれば、スケールロスについて約1.3%の低減を期待できることがわかった。
<炉内一酸化炭素濃度測定の効果の確認>
連続多帯式加熱炉を用いて上述の第二実施形態の燃焼空気流量の制御方法に基づく実施例の制御と特許文献1の制御方法に基づく比較例の制御と実施し、炉内一酸化炭素濃度を測定し考慮する効果の検証を行った。検証においては、第1加熱帯21において、制御された燃焼空気流量によるバーナー空気比、炉内酸素濃度及び炉内一酸化炭素濃度の時間変化を測定し、比較した。比較例の制御の場合を図3に示し、実施例の制御の場合を図4に示す。なお、図4においては、比較を容易化するため、比較例のバーナー空気比についても示している。
図3に示す比較例では、炉内酸素濃度が0となった場合に炉内一酸化炭素濃度が上昇している。これに対し、図4に示す実施例では、例えば丸印で囲った時間帯のように、炉内酸素濃度が0となった場合において炉内一酸化炭素が発生しても、その測定値に基づいてバーナー空気比が上昇し、一酸化炭素の燃焼に必要な空気が供給されていることが分かる。これにより炉内一酸化炭素の上昇が抑えられており、排ガス損失を低減できることが分かる。
本発明の燃焼空気流量の制御方法及び連続多帯式加熱炉は、排ガス損失を十分に低減できる。このため、本発明の燃焼空気流量の制御方法及び連続多帯式加熱炉は、スラブ等の表面に生成されるスケールの量を低減でき、鋼板等の加工品の製造効率を向上させることができる。
1、10 連続多帯式加熱炉
2 炉体
21 第1加熱帯
22 第2加熱帯
23 均熱帯
31,32,33 バーナー
Qf1,Qf2,Qf3 燃料流量計
Qa1,Qa2,Qa3 空気流量計
O1,O2,O3 酸素濃度計
CO1,CO2,CO3 一酸化炭素濃度計
T1,T2,T3 温度計

Claims (5)

  1. 直列して設けられる複数の加熱ゾーンを有する炉体と、これらの加熱ゾーンにそれぞれ配設される複数のバーナーとを備える連続多帯式加熱炉におけるバーナーへ供給される燃焼空気流量の制御方法であって、
    上記複数の加熱ゾーン毎のバーナーへの燃料流量、バーナーへの燃焼空気流量、炉内酸素濃度及び炉温を測定する工程と、
    上記複数の加熱ゾーン毎の上記燃料流量、上記燃焼空気流量、上記炉内酸素濃度及び上記炉温、並びに上記炉体内の排ガス移流及び滞留を考慮した非定常質量保存式に基づいて定量的に把握できるように上記複数の加熱ゾーン毎の侵入空気流量を算出する工程と、
    上記複数の加熱ゾーン毎の上記侵入空気流量に基づいて上記複数の加熱ゾーン内を所望の空気比に保持可能なバーナーへの燃焼空気流量を算出する工程と、
    上記複数のバーナーへ供給する燃焼空気流量を上記算出工程で算出された上記燃焼空気流量に調整する工程と
    を備える燃焼空気流量の制御方法。
  2. 上記侵入空気流量を定量的に算出する工程で、ガスの組成であるO 、N 、CO、CO 、H Oごとに侵入空気に起因する流量を算出する請求項1に記載の燃焼空気流量の制御方法。
  3. 上記測定工程で、炉内一酸化炭素濃度をさらに測定し、
    上記侵入空気流量の算出工程で、上記測定工程で測定した炉内一酸化炭素濃度をさらに考慮する請求項1又は請求項2に記載の燃焼空気流量の制御方法。
  4. 直列して設けられる複数の加熱ゾーンを有する炉体と、これらの加熱ゾーンにそれぞれ配設される複数のバーナーとを備える連続多帯式加熱炉であって、
    上記複数の加熱ゾーン毎のバーナーへの燃料流量を測定する複数の燃料流量計と、
    上記複数の加熱ゾーン毎のバーナーへの燃焼空気流量を測定する複数の空気流量計と、
    上記複数の加熱ゾーン毎の炉内酸素濃度を測定する複数の酸素濃度計と、
    上記複数の加熱ゾーン毎の炉温を測定する複数の温度計と、
    上記複数の加熱ゾーン毎の上記燃料流量、上記燃焼空気流量、上記炉内酸素濃度及び上記炉温、並びに上記炉体内の排ガス移流及び滞留を考慮した非定常質量保存式に基づいて定量的に把握できるように上記複数の加熱ゾーン毎の侵入空気流量を算出する第1演算部と、
    上記複数の加熱ゾーン毎の上記侵入空気流量に基づいて上記複数の加熱ゾーン内を所望の空気比に保持可能なバーナーへの燃焼空気流量を算出する第2演算部と、
    上記複数のバーナーへ供給する燃焼空気流量を上記第2演算部で算出された上記燃焼空気流量に調整する燃焼空気流量調整部と
    をさらに備える連続多帯式加熱炉。
  5. 上記複数の加熱ゾーン毎の炉内一酸化炭素濃度を測定する複数の一酸化炭素濃度計をさらに備え、
    上記第1演算部が、上記侵入空気流量の算出で上記炉内一酸化炭素濃度をさらに考慮する請求項4に記載の連続多帯式加熱炉。
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