以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、複数の実施形態において、他の実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。第六実施形態、及び、第六実施形態と第七、第八実施形態とを組み合わせた形態が特許請求の範囲に記載の発明を実施するための形態に相当し、それ以外の実施形態は参考形態に相当する。
(第一実施形態)
第一実施形態による「弁装置」としての燃料噴射弁1を図1~7を参照して説明する。燃料噴射弁1は、図2に示すエンジンシステム10に適用される。
最初に、エンジンシステム10の構成について図2を参照して説明する。エンジンシステム10は、例えば、4サイクルのエンジン11を含むシステムであって、燃料噴射弁1が噴射する「流体」としてのガス燃料を燃焼室110において燃焼することによって回転トルクを発生する。エンジンシステム10は、図2に示すように、エンジン11、吸気系12、燃料噴射弁1、排気系13、点火プラグ14などを備える。
吸気系12は、吸気マニホールド121、スロットル弁122、及び、吸気弁123を有する。吸気マニホールド121には、エンジン11の燃焼室110に供給される空気の量を調整可能なスロットル弁122が設けられている。燃料噴射弁1は、吸気マニホールド121に設けられている。燃料噴射弁1が噴射するガス燃料は、吸気マニホールド121を流れる空気とともに燃焼室110に導入される。吸気マニホールド121とエンジン11とが接続する箇所には、吸気マニホールド121内と燃焼室110とを連通する吸気ポート124が設けられている。吸気ポート124は、吸気弁123によって開閉される。
排気系13は、排気マニホールド131、及び、排気弁132を有する。排気マニホールド131とエンジン11とが接続する箇所には、排気マニホールド131内と燃焼室110とを連通する排気ポート133が設けられている。排気ポート133は、排気弁132によって開閉される。
点火プラグ14は、燃焼室110に導入されるガス燃料と空気との混合気を点火可能な火花を発生可能である。点火プラグ14は、点火制御部141と電気的に接続している。点火制御部141は、エンジン11のクランクシャフト111の回転角度などエンジン11を搭載する装置の情報に基づいて点火プラグ14における点火タイミングを制御する。
次に、燃料噴射弁1の詳細な構成について、図1を参照して説明する。燃料噴射弁1は、ハウジング20、「第一弁部材」としての内側弁部材25、「第二弁部材」としての外側弁部材35、固定コア40、磁気絞り部41、「非磁性部」としての衝撃緩和部材42、コイル45、制御部50、「第一可動コア」としての内側可動コア55、「第二可動コア」としての外側可動コア65、第一ばね71、及び、第二ばね72を備える。なお、図1では、内側弁部材25及び外側弁部材35がハウジング20の「通孔形成部」としての噴射部24に当接するよう移動する方向を「閉弁方向」とし、内側弁部材25及び外側弁部材35がハウジング20の噴射部24から離間するよう移動する方向を「開弁方向」とする。
ハウジング20は、第一筒部21、第二筒部22、第三筒部23、及び、噴射部24を有する。第一筒部21は、両端に開口を有する筒状の部位である。第一筒部21は、磁性材料から形成されている。第二筒部22は、第一筒部21の一方の開口を形成する縁部に設けられている。第二筒部22は、両端に開口を有する筒状の部位である。第二筒部22は、非磁性材料から形成されている。第三筒部23は、第二筒部22の第一筒部21とは反対側に設けられている。第三筒部23は、両端に開口を有する筒状の部位である。第三筒部23は、磁性材料から形成されている。第一筒部21、第二筒部22及び第三筒部23は、中心軸が同軸上に設けられている。
噴射部24は、第一筒部21の第二筒部22とは反対側に設けられている略円状の部位である。噴射部24は、ガス燃料が流通可能な複数の噴孔を有する。複数の噴孔のうち燃料噴射弁1の中心軸CA1上に位置する噴孔を「第一通孔」としての内側噴孔241とする。また、複数の噴孔のうち内側噴孔241から見て中心軸CA1から離れる方向に形成されている噴孔を「第二通孔」としての外側噴孔242,243とする。第一実施形態では、内側噴孔241は、断面積が外側噴孔242,243の合計の断面積に比べ小さくなるよう形成されている。
内側弁部材25は、略棒状に形成されている部材であって、軸部251、及び、シール部252を有する。内側弁部材25は、ハウジング20に対して相対移動可能に設けられている。
軸部251は、棒状の部位である。軸部251は、開弁方向側の端面253及びシール部252近傍の径方向外側の側面254に開口する通路250を有する。
シール部252は、軸部251の閉弁方向側に設けられている。シール部252は、軸部251と一体に形成されている。シール部252は、弾性を有する材料、例えば、ゴムから形成されている。シール部252は、噴射部24の第一筒部21側の端面244に当接すると、内側噴孔241の第一筒部21側の開口を塞ぐことが可能なよう形成されている。これにより、内側弁部材25は、内側噴孔241を開閉可能である。
外側弁部材35は、略筒状に形成されている部材であって、筒部351、及び、シール部352を有する。外側弁部材35は、ハウジング20に対して相対移動可能に設けられている。
筒部351は、軸部251の径外方向に設けられる筒状の部位である。筒部351は、筒部351の径方向内側と径方向外側とを連通する通路350を有する。通路350は、筒部351の複数の箇所において筒部351を径方向に貫くよう形成されている。
シール部352は、筒部351の閉弁方向側に設けられている。シール部352は、筒部351と一体に形成されている。シール部352は、弾性を有する材料、例えば、ゴムから環状に形成されている。シール部352は、噴射部24の端面244に当接すると、外側噴孔242,243の第一筒部21側の開口を塞ぐことが可能なよう形成されている。これにより、外側弁部材35は、外側噴孔242,243を開閉可能である。
固定コア40は、第三筒部23の径方向内側にハウジング20に対して相対移動不能に設けられる。第一実施形態では、固定コア40は、筒状に形成されており、開弁方向側の端部が第三筒部23の径方向内側に固定されている筒状の固定部材231によって支持されている。
磁気絞り部41は、固定コア40の閉弁方向側であって、後述する内側可動コア55に対向する位置に設けられている。磁気絞り部41は、環状に形成されている。第一実施形態では、磁気絞り部41は、固定コア40と一体に形成されている。磁気絞り部41は、内径が固定コア40の内径に比べ大きくなるよう形成されている。図1に示す断面図には、固定コア40と磁気絞り部41との境界を二点鎖線VL4で示す。図1では、二点鎖線VL4は、内側可動コア55の径方向外側の側面551を表す断面線を開弁方向に延ばしたときの仮想線と重なる。
衝撃緩和部材42は、磁気絞り部41の径方向内側に設けられている。衝撃緩和部材42は、比較的硬度が高い非磁性材料から形成されている。衝撃緩和部材42の閉弁方向側の端面421は、磁気絞り部41の閉弁方向側の「磁気絞り部の第一可動コアに対向する端面」としての端面411に比べ噴射部24側に位置する。衝撃緩和部材42の端面421は、内側可動コア55に当接可能である。
コイル45は、ハウジング20の径方向外側に設けられている。具体的には、コイル45は、磁性材料から形成されているコイル保持部材451によってハウジング20に対して相対移動不能に固定されている。コイル45は、制御部50と電気的に接続している。コイル45は、通電により磁界を形成する。
制御部50は、CPU、ROM、RAM及び入出力ポートなどからなるマイクロコンピュータによって構成されている。制御部50は、外部から入力される情報に基づいてコイル45に供給する電流の大きさを制御する。
内側可動コア55は、内側弁部材25の開弁方向側に内側弁部材25と一体に移動可能に設けられる。内側可動コア55は、磁性材料から略円板状に形成されている。内側可動コア55は、外径が軸部251の外径に比べ大きくなるよう形成されている。内側可動コア55は、コイル45が磁界を形成すると、固定コア40との間に磁気吸引力が発生する。内側可動コア55は、内側可動コア55の開弁方向側と閉弁方向側とを連通する通路550を有する。通路550は、軸部251の通路250に連通している。
外側可動コア65は、外側弁部材35の開弁方向側に外側弁部材35と一体に移動可能に設けられる。外側可動コア65は、磁性材料から略円環状に形成されている。外側可動コア65は、外径が筒部351の外径に比べ大きくなるよう形成されている。また、外側可動コア65は、内径が内側可動コア55の外径と同じ大きさまたは僅かに大きくなるよう形成されている。外側可動コア65の径方向内側の側面651及び側面651と摺動可能な内側可動コア55の側面551には、例えば、軟窒化処理といった耐摩耗性処理が施されている。外側可動コア65は、コイル45が磁界を形成すると、固定コア40との間に磁気吸引力が発生する。
燃料噴射弁1では、内側可動コア55に対向する磁気絞り部41の端面411の面積は、外側可動コア65に対向する固定コア40の閉弁方向側の「固定コアの第二可動コアに対向する端面」としての端面401の面積に比べ小さい。また、燃料噴射弁1では、図1に示すように、内側弁部材25及び外側弁部材35が噴射部24の端面244に当接しているとき、内側可動コア55と磁気絞り部41の端面411との距離L11は、外側可動コア65と固定コア40の端面401との距離L12に比べ短い。
第一ばね71は、固定コア40の径内方向及び固定部材231の径内方向に設けられている。第一ばね71の一端は、内側可動コア55の開弁方向側の端面に当接している。第一ばね71の他端は、固定部材231の径方向内側に設けられているアジャスティングパイプ43に当接している。第一ばね71は、シール部252が噴射部24の端面244に当接するよう内側可動コア55とともに内側弁部材25を付勢する。
第二ばね72は、固定コア40の径外方向に設けられている。第二ばね72の一端は、外側可動コア65の開弁方向側に当接している。第二ばね72の他端は、固定部材231の閉弁方向側の端面に当接している。第二ばね72は、シール部352が噴射部24の端面244に当接するよう外側可動コア65とともに外側弁部材35を付勢する。
次に、燃料噴射弁1の作用について図1,3,4を参照して説明する。
燃料噴射弁1は、コイル45に電流が流れていないとき、図1の状態となっている。具体的には、内側弁部材25のシール部252及び外側弁部材35のシール部352は、噴射部24の端面244に当接しているため、内側噴孔241及び外側噴孔242,243は閉じられている。アジャスティングパイプ43の内側を通ってハウジング20内に流入しているガス燃料は、内側可動コア55の通路550、軸部251の通路250、及び、筒部351の通路350を通って、第一筒部21の径方向内側に流入している。
コイル45に電流が流れると、コイル45の周囲に磁気回路が形成される。図3に、コイル45の周囲に形成される磁気回路を模式的に示す。
磁気回路は、図3に示すように、コイル保持部材451及び第一筒部21から外側可動コア65、磁気絞り部41、固定コア40、固定部材231、及び、第三筒部23を通る経路R65と、コイル保持部材451及び第一筒部21から外側可動コア65、内側可動コア55、磁気絞り部41、固定コア40、固定部材231、及び、第三筒部23を通る経路R55と、の二つの経路が形成される。このうち、経路R55における磁気絞り部41と内側可動コア55との距離L11は、経路R65における磁気絞り部41と外側可動コア65との距離L12に比べ短いため、コイル45に電流が流れ始めたときは、主に経路R55に磁気回路が形成される。これにより、固定コア40と内側可動コア55との間に磁気吸引力が発生するため、内側可動コア55が内側弁部材25とともに開弁方向に移動し、シール部252が端面244から離間する。シール部252が端面244から離間すると、内側噴孔241が開く。内側噴孔241が開くと、第一筒部21内のガス燃料が内側噴孔241から噴射される。内側可動コア55及び内側弁部材25は、図3に示すように、内側可動コア55が衝撃緩和部材42に当接するまで開弁方向に移動する。
コイル45にさらに電流が流れると、内側可動コア55に対向する磁気絞り部41の面積が比較的小さいため、経路R55の磁束密度が飽和する。これにより、経路R65の磁気回路が形成されやすくなり、固定コア40と外側可動コア65との間に外側可動コア65及び外側弁部材35を移動可能な磁気吸引力が発生する。固定コア40と外側可動コア65との間に磁気吸引力が発生すると、外側可動コア65が外側弁部材35とともに固定コア40の方向に移動し、図4に示すように、シール部352が端面244から離間する。シール部352が端面244から離間すると、外側噴孔242,243が開く。外側噴孔242,243が開くと、第一筒部21内のガス燃料が外側噴孔242,243から噴射される。
次に、燃料噴射弁1における噴射制御について、図5~7を参照して説明する。図5には、制御部50が制御する電流のパルス幅とガス燃料の噴射量との関係を示す。図5では、横軸に電流のパルス幅Tiを示し、縦軸にガス燃料の噴射量Qを示す。図5には、内側可動コア55及び外側可動コア65と固定コア40との間に発生する磁気吸引力の大きさにあわせて、三つの通電モードが示されている。
図5では、発生する磁気吸引力の大きさが0から内側可動コア55を移動可能な程度の大きさまでの磁気吸引力を発生するときの通電モードを実線G1で示す。また、発生する磁気吸引力の大きさが0から外側可動コア65を移動可能な程度の大きさまでの磁気吸引力を発生するときの通電モードを実線G2で示す。また、発生する磁気吸引力の大きさが内側可動コア55を移動可能な程度の大きさから外側可動コア65を移動可能な程度の大きさまでの磁気吸引力を発生するときの通電モードを実線G3で示す。なお、図5には、内側可動コア55を移動可能な電流のパルス幅の最小値をパルス幅T1で示す。すなわち、内側可動コア55を確実に移動するためには、パルス幅T1以上の電流が必要である。また、外側可動コア65を移動可能な電流のパルス幅の最小値をパルス幅T2で示す。すなわち、外側可動コア65を確実に移動するためには、パルス幅T2以上の電流が必要である。
図6,7には、図5の特性図上のいくつかの制御内容における特性の比較を示す。なお、図6,7には、一回のガス燃料の噴射における特性を示している。
図6には、図5上の制御P1と制御P2との比較を示す。制御P1での噴射制御によるガス燃料の噴射量の合計と制御P2での噴射制御によるガス燃料の噴射量の合計とは同じ噴射量Q1である。
制御P1では、制御部50は、最大電流値Am1の電流をパルス幅Pw1でコイル45に通電している(図6の実線G11)。このときの単位時間当たりの燃料噴射量は、最大で噴射量Qs1となる(図6の実線G12)。一方、パルス幅Pw1に比べ短いパルス幅Pw2で最大電流値Am1に比べ大きい最大電流値Am2でコイル45に通電するとき(図6の点線G21)、単位時間当たりの燃料噴射量は、最大で噴射量Qs2となる(図6の点線G22)。
制御P1と制御P2とを比較すると、制御P1は、制御P2に比べガス燃料を長い時間噴射していることとなる。これにより、制御P1によるガス燃料の噴射は、制御P2によるガス燃料の噴射に比べ圧力脈動が小さくなる。
図7には、図5上の制御P3と制御P4との比較を示す。制御P3での噴射制御によるガス燃料の噴射量の合計と制御P4での噴射制御によるガス燃料の噴射量の合計とは同じ噴射量Q2である。
制御P3では、制御部50は、最大電流値Am3の電流をパルス幅Pw3でコイル45に通電している(図7の実線G31)。このときの単位時間当たりの燃料噴射量は、最大で噴射量Qs3となる(図7の実線G32)。一方、制御P4では、制御部50は、内側弁部材25が端面244から継続的に離間する状態を維持できるよう電流値Am41の電流をコイル45に通電する(図7の点線G41)。これにより、単位時間当たりの燃料噴射量は、噴射量Qs41となる(図7の点線G42)。さらに、パルス幅Pw3に比べ短いパルス幅Pw4で最大電流値Am3に比べ小さい電流値Am42の電流をコイル45に通電する(図7の点線G41)。これにより、単位時間当たりの燃料噴射量は、最大で噴射量Qs3に比べ少ない噴射量Qs42となる(図7の点線G42)。
制御P3と制御P4とを比較すると、制御P4は、制御P3に比べ少ない量のガス燃料を長い時間噴射していることとなる。これにより、制御P4によるガス燃料の噴射は、制御P3によるガス燃料の噴射に比べ圧力脈動が小さくなる。
(a)第一実施形態による燃料噴射弁1では、コイル45への通電によって磁界が形成されると、磁気絞り部41を介した内側可動コア55と固定コア40との間の磁気吸引力によって内側弁部材25が移動し内側噴孔241が開く。その後、コイル45への通電量を増加させると、固定コア40と内側可動コア55との間に設けられる磁気絞り部41における磁束密度が飽和する。これにより、外側可動コア65と固定コア40との間の磁気吸引力が大きくなるため、外側弁部材35が移動し外側噴孔242,243が開く。
このように、燃料噴射弁1では、コイル45への通電の制御によって内側噴孔241の開閉と外側噴孔242,243の開閉とを制御することができるため、複数の弁部材のそれぞれを駆動する複数の駆動源が不要となる。これにより、燃料噴射弁1は、内側噴孔241及び外側噴孔242,243を有することによって燃料の噴射可能な噴射量の範囲を広げつつ、簡素な構成で体格を小さくすることができる。
(b)燃料噴射弁1では、磁気絞り部41と内側可動コア55との距離L11は、磁気絞り部41と外側可動コア65との距離L12に比べ短い。これにより、燃料噴射弁1は、コイル45に通電するとき、先に内側可動コア55及び内側弁部材25を開弁方向に移動することができる。
また、燃料噴射弁1では、内側可動コア55に対向する磁気絞り部41の面積は、外側可動コア65に対向する磁気絞り部41の面積に比べ小さい。これにより、内側可動コア55と磁気絞り部41との間における磁束密度が飽和しやすくなる。したがって、燃料噴射弁1は、内側可動コア55及び内側弁部材25が開弁方向に移動した後、外側可動コア65及び外側弁部材35が開弁方向に移動することができる。
(c)磁気絞り部41には、内側可動コア55に対向する側である径方向内側に非磁性材料から形成されている衝撃緩和部材42が設けられている。これにより、内側可動コア55に対向する磁気絞り部41の面積は、さらに小さくなり、磁束密度が飽和しやすくなる。したがって、燃料噴射弁1は、内側可動コア55及び内側弁部材25が開弁方向に移動した後、外側可動コア65及び外側弁部材35が開弁方向に確実に移動することができる。
(d)また、燃料噴射弁1では、内側弁部材25及び外側弁部材35を一つのコイル45への電流制御によって別々に駆動することが可能であるため、複数の弁部材のそれぞれを駆動する複数の駆動源が不要となる。これにより、燃料噴射弁1の製造コストを低減することができる。
(e)一般的に、ガス燃料と空気とは混合しにくいため、ガス燃料を燃焼することによって回転トルクを出力するエンジンの燃焼効率を低くなりやすい。第一実施形態による燃料噴射弁1では、図5に示すように、制御部50によるコイル45への通電の電流値及びパルス幅の制御によって燃料噴射弁1が噴射するガス燃料の圧力脈動を制御することができる。特に、図5の制御P4のように、内側噴孔241から連続して噴射しているガス燃料に、外側噴孔242,243から所定の間隔で間欠噴射しているガス燃料を合わせると、気流が攪拌され、ガス燃料と空気との混合を促進することができる。したがって、燃料噴射弁1は、エンジン11におけるガス燃料の燃焼状態を制御することができる。
(f)第一実施形態による燃料噴射弁1は、中心軸CA1上に位置する内側噴孔241、及び、内側噴孔241から見て中心軸CA1から離れる方向に形成されている外側噴孔242,243を有する。これにより、内側噴孔241を開閉可能な内側弁部材25と、外側噴孔242,243を開閉可能な外側弁部材35とを同軸上に移動させることができる。したがって、燃料噴射弁1は、良好な加工性を有し、体格を小さくしつ製造コストをさらに低減することができる。
(g)第一実施形態による燃料噴射弁1では、内側噴孔241は、断面積が外側噴孔242,243の合計の断面積に比べ小さくなるよう形成されている。これにより、内側噴孔241のみを開くときには、小流量のガス燃料を噴射可能であり、内側噴孔241と外側噴孔242,243との両方を開くときは、大流量のガス燃料を噴射可能となる。したがって、燃料噴射弁1は、ガス燃料の噴射可能な量の範囲をさらに広げることができる。
(第二実施形態)
次に、第二実施形態による弁装置を図8を参照して説明する。第二実施形態は、磁気絞り部に衝撃緩和部材が設けられていない点が第一実施形態と異なる。
第二実施形態による燃料噴射弁2は、ハウジング20、内側弁部材25、外側弁部材35、固定コア40、磁気絞り部81、コイル45、制御部50、内側可動コア55、外側可動コア65、第一ばね71、及び、第二ばね72を備える。
磁気絞り部81は、固定コア40の閉弁方向側に設けられている。磁気絞り部81は、環状に形成されている。磁気絞り部81は、内径が固定コア40の内径に比べ大きくなるよう形成されている。磁気絞り部81の径方向内側には、内側可動コア55に対向する位置に空間82を有する。図8に示す断面図には、固定コア40と磁気絞り部81との境界を二点鎖線VL8で示す。図8では、二点鎖線VL8は、内側可動コア55の径方向外側の側面551を表す断面線を開弁方向に延ばしたときの仮想線と重なる。
燃料噴射弁2では、内側可動コア55に対向する磁気絞り部81の閉弁方向側の端面811の面積は、外側可動コア65に対向する固定コア40の端面401の面積に比べ小さい。
第二実施形態による燃料噴射弁2では、磁気絞り部81は、固定コア40と内側可動コア55との間に位置する空間82を有する。これにより、内側可動コア55に対向する磁気絞り部81の面積は、外側可動コア65に対向する磁気絞り部81の面積に比べ小さくなるため、固定コア40と内側可動コア55との間の磁気絞り部81における磁束密度が飽和しやすくなる。したがって、第二実施形態は、第一実施形態と同じ効果を奏する。
(第三実施形態)
次に、第三実施形態による弁装置を図9~12を参照して説明する。第三実施形態は、内側弁部材の形状、外側弁部材の形状、及び、第三付勢部材を備える点が第一実施形態と異なる。
第三実施形態による燃料噴射弁3は、ハウジング20、「第一弁部材」としての内側弁部材26、「第二弁部材」としての外側弁部材36、固定コア40、磁気絞り部41、コイル45、制御部50、内側可動コア55、外側可動コア65、第一ばね71、第二ばね72、及び、「付勢部材」としての第三ばね73を備える。
内側弁部材26は、略棒状に形成されている部材であって、軸部251、シール部252、及び、内側突状部263を有する。内側弁部材26は、ハウジング20に対して相対移動可能に設けられ、内側噴孔241を開閉可能である。
内側突状部263は、軸部251の径方向外側の側面254に設けられている。内側突状部263は、側面254から径外方向に突出するよう形成されている。本実施形態では、内側突状部263は、図10に示すように、軸部251の径方向外側に等間隔で四本形成されている。
外側弁部材36は、略筒状に形成されている部材であって、筒部351、シール部352、及び、外側突状部363を有する。外側弁部材36は、ハウジング20に対して相対移動可能に設けられ、外側噴孔242,243を開閉可能である。
外側突状部363は、筒部351の径方向内側の側面353に設けられている。外側突状部363は、図10に示すように、側面353から径内方向に突出するよう形成されている。外側突状部363は、図9に示すように、内側突状部263に比べ噴射部24から離れた位置に設けられている。本実施形態では、外側突状部363は、図10に示すように、筒部351の径方向内側に等間隔で四本形成されている。
第三ばね73は、内側突状部263と外側突状部363との間に設けられている。第三ばね73は、内側突状部263と外側突状部363とが離間するよう内側突状部263及び外側突状部363を付勢する。
燃料噴射弁3が備える内側可動コア55は、図11に示すように、周縁部に、四つの溝552を有する。四つの溝552は、中心軸CA1に沿う方向に内側可動コア55を貫通するよう形成されている。四つの溝552は、外側突状部363が通過可能な大きさを有する。
本実施形態では、燃料噴射弁3を組み立てるとき、内側弁部材26、内側可動コア55及び第三ばね73を第三筒部23側からハウジング20内に挿入した後、外側弁部材36及び外側可動コア65を第三筒部23側からハウジング20内に挿入する。外側弁部材36及び外側可動コア65をハウジング20内に挿入するとき、外側突状部363は溝552を通過する。また、別の組み立て方法として、外側弁部材36及び外側可動コア65を第一筒部21側からハウジング20内に挿入した後、内側弁部材26、内側可動コア55及び第三ばね73を第一筒部21側からハウジング20内に挿入する。内側弁部材26、内側可動コア55及び第三ばね73をハウジング20内に挿入するとき、外側突状部363は溝552を通過する。これにより、内側弁部材26及び外側弁部材36は、図9に示す位置に設けられる。
次に、燃料噴射弁3の作用について図9,12を参照して説明する。燃料噴射弁3は、コイル45に電流が流れていないとき、図9の状態となっている。コイル45に電流が流れコイル45の周囲に磁気回路が形成されると、内側可動コア55と固定コア40との間に磁気吸引力が発生する。当該磁気吸引力がある程度大きくなると内側可動コア55及び内側弁部材26は開弁方向に移動する。これにより、図12に示すように、シール部252が端面244から離間し、内側噴孔241が開く。
内側弁部材26が開弁方向に移動すると、内側突状部263と外側突状部363との間の距離が閉弁状態に比べ短くなる(図12参照)。内側突状部263と外側突状部363との間の距離が短くなると、第三ばね73は圧縮される。これにより、外側弁部材36は、圧縮された第三ばね73によって図9の状態に比べ強く開弁方向に付勢される。
コイル45にさらに電流が流れると、固定コア40と内側可動コア55との間の磁束密度が飽和し、固定コア40と外側可動コア65との間に磁気吸引力が発生する。固定コア40と外側可動コア65との間の磁気吸引力がある程度大きくなると、外側可動コア65及び外側弁部材36は開弁方向に移動する。外側弁部材36が開弁方向に移動すると、シール部352が端面244から離間し、外側噴孔242,243が開く。
第三実施形態による燃料噴射弁3では、コイル45への通電の制御によって内側噴孔241の開閉と外側噴孔242,243の開閉とを制御することができる。これにより、第三実施形態は、第一実施形態と同じ効果を奏する。
第三実施形態による燃料噴射弁3は、内側弁部材26を閉弁方向に付勢し外側弁部材36を開弁方向に付勢する第三ばね73を備える。これにより、内側噴孔241が閉じているとき、第三ばね73の付勢力によって内側弁部材26は閉弁方向に付勢されるため、内側噴孔241における液密性を確実に維持することができる。また、内側弁部材26が開弁方向に移動するとき、第三ばね73の付勢力によって、内側弁部材26は、第一実施形態に比べ低速で移動する。これにより、内側弁部材26とともに移動する内側可動コア55が衝撃緩和部材42に衝突するときの衝撃を小さくすることができる。したがって、第三実施形態は、内側可動コア55及び衝撃緩和部材42の衝突による破損を防止しつつ、内側可動コア55と衝撃緩和部材42との衝突による衝突音を小さくすることができる。
第三実施形態による燃料噴射弁3では、内側噴孔241が開いているとき、外側弁部材36に第三ばね73の開弁方向への付勢力が作用するため、外側噴孔242,243は、比較的開きやすくなる。これにより、第三実施形態は、外側弁部材36を開弁方向に移動するための磁気吸引力を第一実施形態に比べ小さくすることができるため、コイル45の体格を小さくすることができる。また、第三実施形態は、外側弁部材36を開弁方向に移動するための磁気吸引力を小さくすることができるため、外側噴孔242,243の開弁応答性を向上することができる。
また、第三実施形態による燃料噴射弁3では、コイル45が第一実施形態と同じである場合、第三ばね73の付勢力を利用して外側弁部材36のリフト量を大きくすることができる。これにより、燃料噴射弁3が噴射可能なガス燃料の噴射量の範囲を広げることができる。
(第四実施形態)
次に、第四実施形態による弁装置を図13,14を参照して説明する。第四実施形態は、内側弁部材に弾性部材が設けられている点及び外側弁部材の形状が第一実施形態と異なる。
第四実施形態による燃料噴射弁4は、ハウジング20、「第一弁部材または第二弁部材のいずれか一方」としての内側弁部材25、弾性部材27、「第一弁部材または第二弁部材のいずれか他方」としての外側弁部材36、固定コア40、磁気絞り部41、コイル45、制御部50、内側可動コア55、外側可動コア65、第一ばね71、及び、第二ばね72を備える。
弾性部材27は、軸部251の径方向外側の側面254に設けられている。弾性部材27は、側面254から径外方向に突出するよう形成され、内側弁部材25と一体となってハウジング20に対して相対移動可能である。弾性部材27は、弾性材料から形成され、内側噴孔241が開くとき、外側弁部材36が有する外側突状部363に係合可能である。
次に、燃料噴射弁4の作用について図13,14を参照して説明する。燃料噴射弁4は、コイル45に電流が流れていないとき、図13の状態となっている。コイル45の周囲に磁気回路が形成され内側可動コア55と固定コア40との間の磁気吸引力がある程度大きくなると、シール部252が端面244から離間し、内側噴孔241が開く。内側噴孔241が開くとき、弾性部材27は、図14に示すように、外側突状部363に係合し変形する。これにより、外側弁部材36は、弾性部材27の変形による自身の復元力が外側弁部材36を開弁方向に移動するよう作用する(図14の白抜き矢印F4)。
コイル45にさらに電流が流れると固定コア40と外側可動コア65との間に外側可動コア65及び外側弁部材36を移動可能な磁気吸引力が発生し、外側可動コア65及び外側弁部材36は開弁方向に移動する。外側弁部材36が開弁方向に移動すると、シール部352が端面244から離間し、外側噴孔242,243が開く。
第四実施形態による燃料噴射弁4では、コイル45への通電の制御によって内側噴孔241の開閉と外側噴孔242,243の開閉とを制御することができる。これにより、第四実施形態は、第一実施形態と同じ効果を奏する。
第四実施形態による燃料噴射弁4では、外側突状部363に係合すると外側弁部材36を開弁方向に付勢する弾性部材27が内側弁部材25に設けられている。内側弁部材25の開弁方向への移動によって弾性部材27が外側突状部363に係合すると、内側弁部材25は、第一実施形態に比べ低速で移動する。これにより、内側弁部材25とともに移動する内側可動コア55が衝撃緩和部材42に衝突するときの衝撃を小さくすることができる。したがって、第四実施形態は、内側可動コア55及び衝撃緩和部材42の衝突による破損を防止しつつ、内側可動コア55と衝撃緩和部材42との衝突による衝突音を小さくすることができる。
第四実施形態による燃料噴射弁4では、内側噴孔241が開いているとき、外側弁部材36に弾性部材27の開弁方向への付勢力が作用するため、外側噴孔242,243は、比較的開きやすくなる。これにより、外側弁部材36を開弁方向に移動するための磁気吸引力を第一実施形態に比べ小さくすることができるため、コイル45の体格を小さくすることができる。また、外側噴孔242,243の開弁応答性を向上することができる。
また、第四実施形態による燃料噴射弁4では、内側噴孔241が開いているとき、外側弁部材36に弾性部材27の復元力が外側弁部材36を開弁方向に移動するよう作用する。これより、コイル45が第一実施形態と同じである場合、燃料噴射弁4が噴射可能なガス燃料の噴射量の範囲を広げることができる。
(第五実施形態)
次に、第五実施形態による弁装置を図15,16を参照して説明する。第五実施形態は、外側弁部材に弾性部材が設けられている点及び内側弁部材の形状が第一実施形態と異なる。
第五実施形態による燃料噴射弁5は、ハウジング20、「第一弁部材または第二弁部材のいずれか他方」としての内側弁部材26、「第一弁部材または第二弁部材のいずれか一方」としての外側弁部材35、弾性部材37、固定コア40、磁気絞り部41、コイル45、制御部50、内側可動コア55、外側可動コア65、第一ばね71、及び、第二ばね72を備える。
弾性部材37は、筒部351の径方向内側の側面353に設けられている。弾性部材37は、側面353から径内方向に突出するよう形成され、外側弁部材35と一体となってハウジング20に対して相対移動可能である。弾性部材37は、弾性材料から形成され、内側噴孔241が開くとき、内側弁部材26が有する内側突状部263に係合可能である。本実施形態では、弾性部材37は、側面353に等間隔で四つ設けられている。
次に、燃料噴射弁5の作用について図15,16を参照して説明する。燃料噴射弁5は、コイル45に電流が流れていないとき、図15の状態となっている。コイル45の周囲に磁気回路が形成され内側可動コア55と固定コア40との間の磁気吸引力がある程度大きくなると、シール部252が端面244から離間し、内側噴孔241が開く。内側噴孔241が開くとき、図16に示すように、内側突状部263が弾性部材37に係合する。これにより、外側弁部材35は、弾性部材37は変形し、弾性部材37の変形による自身の復元力が外側弁部材35を開弁方向に移動するよう作用する(図16の白抜き矢印F5)。
コイル45にさらに電流が流れると固定コア40と外側可動コア65との間に外側可動コア65及び外側弁部材35を移動可能な磁気吸引力が発生し、外側可動コア65及び外側弁部材35は開弁方向に移動する。外側弁部材35が開弁方向に移動すると、シール部352が端面244から離間し、外側噴孔242,243が開く。
第五実施形態による燃料噴射弁5では、コイル45への通電の制御によって内側噴孔241の開閉と外側噴孔242,243の開閉とを制御することができる。これにより、第五実施形態は、第一実施形態と同じ効果を奏する。
第五実施形態による燃料噴射弁5は、内側突状部263に係合すると外側弁部材35を開弁方向に付勢する弾性部材37を備える。内側弁部材26の開弁方向への移動によって弾性部材37が内側突状部263に係合すると、内側弁部材26は、第一実施形態に比べ低速で移動する。これにより、内側弁部材26とともに移動する内側可動コア55が衝撃緩和部材42に衝突するときの衝撃を小さくすることができる。したがって、第五実施形態は、内側可動コア55及び衝撃緩和部材42の衝突による破損を防止しつつ、内側可動コア55と衝撃緩和部材42との衝突による衝突音を小さくすることができる。
また、第五実施形態による燃料噴射弁5では、内側噴孔241が開いているとき、外側弁部材35に弾性部材37の復元力による開弁方向への付勢力が作用するため、外側噴孔242,243は、比較的開きやすくなる。これにより、外側弁部材35を開弁方向に移動するための磁気吸引力を第一実施形態に比べ小さくすることができるため、コイル45の体格を小さくすることができる。また、外側噴孔242,243の開弁応答性を向上することができる。
第五実施形態による燃料噴射弁5では、内側噴孔241が開いているとき、外側弁部材35に弾性部材37の復元力が外側弁部材35を開弁方向に移動するよう作用する。これより、コイル45が第一実施形態と同じである場合、燃料噴射弁5が噴射可能なガス燃料の噴射量の範囲を広げることができる。
(第六実施形態)
次に、第六実施形態による弁装置を図17,18を参照して説明する。第六実施形態は、内側弁部材、内側可動コア、外側弁部材、及び、外側弁部材の形状が第一実施形態と異なる。
第六実施形態による燃料噴射弁6は、ハウジング20、「第一弁部材」としての内側弁部材28、「第二弁部材」としての外側弁部材38、固定コア40、磁気絞り部41、コイル45、制御部50、「第一可動コア」としての内側可動コア56、「第二可動コア」としての外側可動コア66、摺動部材67、第一ばね71、及び、第二ばね72を備える。
内側弁部材28は、略棒状に形成されている部材であって、軸部281、及び、シール部282を有する。内側弁部材28は、ハウジング20に対して相対移動可能に設けられている。
軸部281は、非磁性材料から形成されている棒状の部位である。軸部281は、閉弁方向側の端部が衝撃緩和部材42の径内方向に位置するよう設けられている。軸部281は、開弁方向側の端面283及びシール部282近傍の径方向外側の側面284に開口する通路280を有する。通路280は、燃料が流通可能である。
シール部282は、軸部281の閉弁方向側の端部設けられている。シール部282は、弾性を有する材料、例えば、ゴムから形成されている。シール部282は、噴射部24の第一筒部21側の端面244に当接すると、内側噴孔241の第一筒部21側の開口を塞ぐことが可能なよう形成されている。これにより、内側弁部材28は、内側噴孔241を開閉可能である。
外側弁部材38は、弾性を有する材料、例えば、ゴムから環状に形成されている部材である。外側弁部材38は、内側弁部材28の径外方向に位置し、ハウジング20に対して相対移動可能であって、かつ、噴射部24の端面244に当接可能に設けられている。外側弁部材38は、噴射部24の端面244に当接すると、外側噴孔242,243の第一筒部21側の開口を塞ぐことが可能なよう形成されている。これにより、外側弁部材38は、外側噴孔242,243を開閉可能である。
内側可動コア56は、磁性材料から略筒状に形成されている部材である。内側可動コア56は、内側弁部材28の軸部281の開弁方向側の端部の側面284に設けられている。内側可動コア56は、内側弁部材28と一体に往復移動可能である。内側可動コア56は、コイル45が磁界を形成すると、固定コア40との間に磁気吸引力が発生する。内側可動コア56は、開弁方向に移動すると、衝撃緩和部材42の端面421に当接する。
外側可動コア66は、磁性材料から略筒状に形成されている部材である。外側可動コア66は、内側弁部材28及び内側可動コア56の径外方向に位置し、閉弁方向側の端部に外側弁部材38が設けられている。外側可動コア66は、外側弁部材38と一体に往復移動可能である。外側可動コア66は、内側弁部材28の側面284に開口する通路280と連通可能な通路660を有する。外側可動コア66は、コイル45が磁界を形成すると、固定コア40との間に磁気吸引力が発生する。
摺動部材67は、外側可動コア66の径方向内側の側面661に設けられている非磁性材料から形成されている部材である。本実施形態では、摺動部材67は、内側弁部材28の側面284に摺動可能である。
燃料噴射弁6が備えるハウジング20の噴射部24は、図17に示すように、端面244から開弁方向に突出するよう形成されている突起245を有する。突起245は、シール部282が当接可能な端面244の周囲に環状に形成されている。突起245の径方向内側の側面246は、内側弁部材28の軸部281の開弁方向側の端部に摺動可能である。突起245は、突起245の径方向内側と径方向外側とを連通する通路247を有する。
燃料噴射弁6において、外側弁部材38の径方向外側の側面381と側面381に対向するハウジング20の内壁面211との距離を距離L61とする。また、外側可動コア66の径方向外側の側面662と側面662に対向するハウジング20の内壁面211との距離を距離L62とする。燃料噴射弁6では、距離L61,L62は、摺動部材67の径方向内側の側面671と摺動部材67の側面671に対向する内側弁部材28の径方向外側の側面284との距離L60に比べ大きい。
次に、燃料噴射弁6の作用について図17,18を参照して説明する。燃料噴射弁6は、コイル45に電流が流れていないとき、図17の状態となっている。コイル45への通電によってコイル45の周囲に磁気回路が形成される。コイル45の周囲に磁気回路が形成され内側可動コア56と固定コア40との間の磁気吸引力がある程度大きくなると、シール部282が端面244から離間する。これにより、内側噴孔241が開く。内側噴孔241が開いているとき、図18に示すように、内側弁部材28の閉弁方向側の端部は、噴射部24の突起245の側面246に摺動可能な位置にある。また、内側弁部材28の開弁方向側の端部は、衝撃緩和部材42の径方向内側の側面422に摺動可能な位置にある。
コイル45にさらに電流が流れると固定コア40と外側可動コア66との間に磁気吸引力が発生する。当該磁気吸引力が外側可動コア66及び外側弁部材38を移動可能な大きさになると、外側可動コア66及び外側弁部材38は、内側弁部材28に摺動する摺動部材67によって内側弁部材28に案内されつつ開弁方向に移動する。外側弁部材38が開弁方向に移動すると、外側弁部材38が端面244から離間し、外側噴孔242,243が開く。
第六実施形態による燃料噴射弁6では、コイル45への通電の制御によって内側噴孔241の開閉と外側噴孔242,243の開閉とを制御することができる。これにより、第六実施形態は、第一実施形態と同じ効果を奏する。
第六実施形態による燃料噴射弁6では、非磁性材料から形成されている内側弁部材28は、閉弁方向側の端部が非磁性材料から形成されている噴射部24の側面246に摺動可能であって、開弁方向側の端部が非磁性材料から形成されている衝撃緩和部材42の側面422に摺動可能である。このように、燃料噴射弁6では、摺動箇所を非磁性材料に限定することによって、DLCなどの比較的高価な表面コーティングを施す場合に比べ安価に摺動箇所の表面荒れを防止することができる。したがって、第六実施形態は、表面荒れによる内側弁部材28の固着などの不具合の発生を安価に抑制することができる。
また、第六実施形態による燃料噴射弁6では、内側弁部材28は、閉弁方向側の端部及び開弁方向側の端部のみが摺動することによって、自身の往復移動が案内されている。これにより、燃料噴射弁6では、内側弁部材28の移動を案内するための摺動箇所を可能な限り少なくすることができるため、摺動箇所の加工時間を短縮することができる。したがって、第六実施形態は、摺動箇所の表面荒れの発生の抑制をさらに安価に行うことができる。
第六実施形態による燃料噴射弁6では、外側可動コア66及び外側弁部材38は、内側弁部材28に摺動する摺動部材67によって非磁性材料から形成されている内側弁部材28に案内されつつ開弁方向に移動する。これにより、上述したように摺動箇所の表面荒れを防止することができる。したがって、第六実施形態は、表面荒れによる外側弁部材38の固着などの不具合の発生を抑制することができる。
また、第六実施形態による燃料噴射弁6では、外側弁部材38とハウジング20との距離L61,及び、外側可動コア66とハウジング20との距離L62が、摺動部材67と内側弁部材28との距離L60に比べ大きい。これにより、外側可動コア66及び外側弁部材38が中心軸CA1に対して垂直な方向に移動しても、外側可動コア66及び外側弁部材38が磁性材料から形成されているハウジング20の第一筒部21などに摺動することを防止できる。したがって、第六実施形態は、摺動箇所の表面荒れによる外側弁部材38の固着などの不具合の発生を抑制することができる。また、外側弁部材38は、中心軸CA1上を往復移動可能な内側弁部材28によって案内されるため、中心軸CA1に対して垂直な方向への移動を抑制することができる。これにより、外側噴孔242,243野開弁特性を安定させることができる。
(第七実施形態)
次に、第七実施形態による弁装置を図19~22を参照して説明する。第七実施形態は、コイルへの通電の制御内容が第一実施形態と異なる。
第七実施形態による燃料噴射弁7は、図19に示すように、ハウジング20、内側弁部材25、外側弁部材35、固定コア40、磁気絞り部41、コイル45、制御部60、内側可動コア55、外側可動コア65、第一ばね71、及び、第二ばね72を備える。
制御部60によるガス燃料の噴射制御について、図20~22を参照して説明する。図20~22のそれぞれには、コイル45への通電量の大きさ別に、電流値I、内側噴孔241からの単位時間当たりのガス燃料の噴射量Qi、外側噴孔242,243からの単位時間当たりのガス燃料の噴射量Qo、及び、単位時間当たりのガス燃料の合計噴射量Qtotalを示している。なお、図20~22のそれぞれには、二回のガス燃料の噴射における特性を示している。
図20に示す特性図は、内側噴孔241のみからガス燃料を噴射するときの燃料噴射弁7の特性を示している。制御部60は、時刻t21においてコイル45への通電を開始した直後、電流値Am21の電流をコイル45に流す。これにより、内側弁部材25が噴射部24の端面244から離間し、ハウジング20内のガス燃料が内側噴孔241から噴射される。ハウジング20内のガス燃料が内側噴孔241から噴射されると、制御部60は、コイル45に通電する電流値を電流値Am21に比べ小さい電流値Am22とする(図18の時刻t22)。コイル45に電流が流れている間、内側噴孔241から噴射されるガス燃料は、単位時間当たりの燃料噴射量が最大で噴射量Q21となる。したがって、第六実施形態による燃料噴射弁の単位時間当たりのガス燃料の合計噴射量は、噴射量Q21となる。
図21に示す特性図は、内側噴孔241、外側噴孔242,243の順にガス燃料を噴射するときの燃料噴射弁7の特性を示している。制御部60は、時刻t31においてコイル45への通電を開始した直後、電流値Am31の電流をコイル45に流す。これにより、内側弁部材25が噴射部24の端面244から離間しハウジング20内のガス燃料が内側噴孔241から噴射される。ハウジング20内のガス燃料が内側噴孔241から噴射されると、制御部60は、コイル45に通電する電流値を電流値Am31に比べ小さい電流値Am32とする(図19の時刻t32)。電流値Am32の電流がコイル45を流れているとき、外側噴孔242,243は開いており、ハウジング20内のガス燃料は、内側噴孔241及び外側噴孔242,243から噴射されている。このときの燃料噴射量は、内側噴孔241からの噴射量Q31と外側噴孔242,243からの噴射量Q32との合計量となる。時刻t33において、コイル45への通電を終了すると、外側噴孔242,243が閉じられた後に内側噴孔241が閉じられる。
図22に示す特性図は、内側噴孔241からガス燃料を継続的に噴射している状態で外側噴孔242,243から間欠的にガス燃料を噴射するときの燃料噴射弁7の特性を示している。制御部60は、内側弁部材25が噴射部24の端面244から離間している状態を維持するようコイル45に電流値Am41の電流を流している。時刻t41において、電流値Am41に比べ高い電流値Am42の電流をコイル45に流す。これにより、外側弁部材35が噴射部24から離間するため、ハウジング20内のガス燃料は、内側噴孔241に加え外側噴孔242,243からも噴射される。外側噴孔242,243からガス燃料が噴射されると、制御部60は、コイル45に通電する電流値を電流値Am42に比べ小さく電流値Am41に比べ高い電流値Am43とする(図20の時刻t42)。このときの燃料噴射量は、内側噴孔241からの噴射量Q41と外側噴孔242,243からの噴射量Q42との合計量となる。時刻t43において、コイル45への通電を終了すると、外側噴孔242,243が閉じられた後に内側噴孔241が閉じられる。
第七実施形態による燃料噴射弁7では、コイル45への通電を開始した直後、比較的高い電流をコイル45に流す。これにより、内側噴孔241が迅速に開くため、ハウジング20内のガス燃料が内側噴孔241から噴射される。ハウジング20内のガス燃料がハウジング20の外に噴射されると、ハウジング20内の圧力が低下するため、内側弁部材25や外側弁部材35が噴射部24から離間しやすくなる。したがって、第七実施形態では、ガス燃料の噴射における開弁応答性を向上することができる。
また、燃料噴射弁7では、ガス燃料の噴射における開弁応答性が向上することからコイル45に電流を流す時間を短くすることができる。これにより、コイル45への通電による発熱を抑制することができる。また、電気エネルギを節約することができるため、エネルギ消費量を低減することができる。
(第八実施形態)
次に、第八実施形態による弁装置を図23~29を参照して説明する。第八実施形態は、制御部における電流の制御内容が第一実施形態と異なる。
第八実施形態による燃料噴射弁8は、図23に示すように、ハウジング20、内側弁部材25、外側弁部材35、固定コア40、磁気絞り部41、コイル45、制御部70、内側可動コア55、外側可動コア65、第一ばね71、及び、第二ばね72を備える。
制御部70によるガス燃料の噴射制御及び燃料噴射弁8の作動について、図24~27を参照して説明する。図24には、電流値I、可動コアと固定コア40との間の磁気吸引力Ps、及び、弁部材のリフト量Mvの時間変化を示している。可動コアと固定コア40との間の磁気吸引力Psを示す特性図では、内側可動コア55と固定コア40との間の磁気吸引力を点線Lp11で示し、外側可動コア65と固定コア40との間の磁気吸引力を実線Lp12で示す。また、弁部材のリフト量Mvを示す特性図では、内側弁部材25のリフト量を点線Lp21で示し、外側弁部材35のリフト量を実線Lp22で示す。図25~27は、それぞれ異なる状態の燃料噴射弁8を示している。
制御部70は、図24に示すように、時刻t51においてコイル45への通電を開始する。コイル45を流れる電流が徐々に大きくなると、可動コアと固定コア40との間の磁気吸引力Psも大きくなる。時刻t52において内側可動コア55と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psiになると、内側可動コア55は内側弁部材25とともに開弁方向に移動し、シール部252が端面244から離間する。ここで、所定の値Psiは、第一ばね71の付勢力と、内側可動コア55及び内側弁部材25に作用する第一筒部21内のガス燃料の圧力に基づく閉弁方向の力と、の合計である。シール部252が端面244から離間すると、内側噴孔241が開き、第一筒部21内のガス燃料が内側噴孔241から噴射される。内側可動コア55及び内側弁部材25は、図25に示すように、内側可動コア55が衝撃緩和部材42に当接するまで開弁方向に移動する(図24の時刻t53におけるリフト量L11)。
内側可動コア55が内側弁部材25とともに開弁方向に移動すると、内側可動コア55と固定コア40との間の距離が短くなる。これにより、内側可動コア55と固定コア40との間の磁気吸引力Psは、図24に示すように、電流値I及び内側弁部材25のリフト量Mvの増加率に比べ大きな増加率で増加する(図24の時刻t52から時刻t53までの間)。
時刻t53において内側可動コア55が衝撃緩和部材42に当接した後、コイル45を流れる電流値をさらに大きくすると、時刻t54において外側可動コア65と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psoになる。ここで、所定の値Psoは、第二ばね72の付勢力と、外側可動コア65及び外側弁部材35に作用する第一筒部21内のガス燃料の圧力に基づく閉弁方向の力と、の合計である。外側可動コア65と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psoになると、外側可動コア65は外側弁部材35とともに開弁方向に移動し、シール部352が端面244から離間する。シール部352が端面244から離間すると、外側噴孔242,243が開き、第一筒部21内のガス燃料が外側噴孔242,243から噴射される。外側可動コア65及び外側弁部材35は、図26に示すように、外側可動コア65が固定コア40の端面401に当接するまで開弁方向に移動する(図24の時刻t55におけるリフト量L12)。
外側可動コア65が外側弁部材35とともに開弁方向に移動すると、外側可動コア65と固定コア40との間の距離が短くなる。これにより、経路R65の磁気回路が形成されやすくなるため、経路R55の磁気回路における磁気吸引力Psは低下する(図24の時刻t54から時刻t55までの間の点線Lp11)。
時刻t55において外側可動コア65が固定コア40の端面401に当接すると、制御部70は、電流値を図24に示す制御における最大電流値Am51に比べ小さい電流値Am52に変更する(図24の時刻t55から時刻t57までの間)。これにより、内側可動コア55と固定コア40との間の磁気吸引力、及び、外側可動コア65と固定コア40との間の磁気吸引力は、いずれも小さくなる。
時刻t55から時刻t57までの間において内側可動コア55と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psiに比べ小さくなると、内側可動コア55は、内側弁部材25とともに固定コア40から離間し閉弁方向に移動する(図24の時刻t56)。内側可動コア55が閉弁方向に移動すると、時刻t58においてシール部252が端面244に当接する。このとき、外側可動コア65と固定コア40との間の磁気吸引力は、所定の値Psoに比べ大きいため、外側可動コア65は固定コア40の端面401に当接したままとなっている。すなわち、電流値Am52は、内側可動コア55と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psiに比べ小さくなる電流値であって、外側可動コア65と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psoに比べ大きくなる電流値である。これにより、燃料噴射弁8は、図27に示すように、内側噴孔241が閉じている一方、外側噴孔242,243が開いている状態となる。
次に、図24とは異なる制御部70によるガス燃料の噴射制御について、図28を参照して説明する。図28には、図24と同様に、電流値I、可動コアと固定コア40との間の磁気吸引力Ps、及び、弁部材のリフト量Mvの時間変化を示している。図28は、内側噴孔241の開閉及び外側噴孔242,243の開閉をそれぞれ二回行うときの特性図である。
制御部70は、図28に示すように、時刻t61においてコイル45への通電を開始する。時刻t62において内側可動コア55と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psiになると、内側可動コア55は内側弁部材25とともに開弁方向に移動するため内側噴孔241が開く。その後、時刻t63において、内側弁部材25のリフト量がリフト量L11となる。図28に示す制御では、制御部70は、時刻t63から時刻t64までの間、内側弁部材25のリフト量がリフト量L11を維持するよう、電流値を電流値Am61に維持する。
時刻t64においてコイル45を流れる電流値を増加すると、時刻t65において外側可動コア65と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psoになる。これにより、外側可動コア65は外側弁部材35とともに開弁方向に移動するため外側噴孔242,243が開く。
制御部70は、外側弁部材35のリフト量がリフト量L12となった後、電流値を図28に示す制御における最大電流値Am62に比べ小さい電流値Am63に変更する(図28の時刻t66から時刻t68までの間)。ここで、電流値Am63は、内側可動コア55と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psiに比べ小さくなる電流値であって、外側可動コア65と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psoに比べ大きくなる電流値である。これにより、時刻t67において内側可動コア55が固定コア40から離間するため、燃料噴射弁8では、内側噴孔241が閉じている一方、外側噴孔242,243が開いている状態となる。
時刻t68の後の時刻t69において、制御部70は、電流値を徐々に小さくする。これにより、図28に示すように、外側可動コア65と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psoに比べ小さくなるため、外側可動コア65は固定コア40の端面401から離間し、閉弁方向に移動する。外側可動コア65が閉弁方向に移動すると、シール部352が端面244に当接するため、外側噴孔242,243が閉じられる(図28の時刻t60)。図28に示す制御では、制御部70は、時刻t60の後、上述した時刻t61から時刻t69の作動を繰り返し、内側噴孔241の開弁、外側噴孔242,243の開弁、内側噴孔241の閉弁、外側噴孔242,243の閉弁、及び、全閉のこの順で繰り返す。
次に、図24,28とは異なる制御部70によるガス燃料の噴射制御について、図29を参照して説明する。図29には、図24、28と同様に、電流値I、可動コアと固定コア40との間の磁気吸引力Ps、及び、弁部材のリフト量Mvの時間変化を示している。
制御部70は、図29に示すように、時刻t70においてコイル45への通電を開始する。時刻t71において内側可動コア55と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psiになると、内側可動コア55は内側弁部材25とともに開弁方向に移動し内側噴孔241が開く。その後、時刻t72において、内側弁部材25のリフト量がリフト量L11となる。図29に示す制御では、制御部70は、時刻t72から時刻t73までの間、内側弁部材25のリフト量がリフト量L11を維持するよう、電流値を電流値Am71に維持する。
時刻t73においてコイル45を流れる電流値を大きくすると、時刻t74において外側可動コア65と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psoになる。これにより、外側可動コア65は外側弁部材35とともに開弁方向に移動し外側噴孔242,243が開く。
外側弁部材35のリフト量がリフト量L12となった後、電流値を図27に示す制御における最大電流値Am72(図29の時刻t75)に比べ小さい電流値Am73に変更する。ここで、電流値Am73は、内側可動コア55と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psiに比べ小さくなる電流値であって、外側可動コア65と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psoに比べ大きくなる電流値である。これにより、燃料噴射弁8では、時刻t76において内側噴孔241は閉じる一方、外側噴孔242,243は開いている状態を維持する。
時刻t76の後の時刻t77において、制御部70は、電流値を徐々に小さくする。これにより、図29に示すように、外側可動コア65と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psoに比べ小さくなるため、外側可動コア65は閉弁方向に移動する。このとき、制御部70は、時刻t77の後の時刻t78において、再び電流値を大きくする。これにより、内側可動コア55と固定コア40との間の磁気吸引力が増加する。
外側可動コア65が閉弁方向に移動するとシール部352が端面244に当接するため、外側噴孔242,243が閉じられる(図29の時刻t81)。このとき、図29に示す制御では、内側可動コア55と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psiになるため、内側可動コア55は内側弁部材25とともに開弁方向に移動し内側噴孔241が開く。
時刻t81以降、制御部70は、時刻t82から時刻t88において上述した時刻t72から時刻t78と同じ制御を行う。これにより、図29に示す制御では、制御部70は、内側噴孔241と外側噴孔242,243とを交互に開弁し、内側噴孔241及び外側噴孔242,243の少なくとも一つが開いている状態を維持する。
第八実施形態による燃料噴射弁8では、制御部70は、内側噴孔241及び外側噴孔242,243が開いている状態で、内側可動コア55と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psiに比べ小さくなる電流値であって、外側可動コア65と固定コア40との間の磁気吸引力が所定の値Psoに比べ大きくなる電流値の電流を通電させる。これにより、燃料噴射弁8では、内側噴孔241のみが開いている状態、及び、内側噴孔241及び外側噴孔242,243が開いている状態に加え、外側噴孔242,243のみが開いている状態でガス燃料を噴射することができる。したがって、第八実施形態は、ガス燃料の噴射を、第一実施形態に比べ、多段化することができる。
また、燃料噴射弁8では、図27に示した制御のように内側噴孔241と外側噴孔242,243とを交互に開くことができる。燃料噴射弁8では内側噴孔241のガス燃料の噴射量と外側噴孔242,243のガス燃料の噴射量とは異なるため、ガス燃料を噴射している最中のガス燃料の圧力脈動は比較的大きく変化する。これにより、燃料噴射弁8は、エンジン11の燃焼室110における燃焼状態に応じて、圧力脈動を変化させることができる。
(第九実施形態)
次に、第九実施形態による弁装置を図30を参照して説明する。第九実施形態は、弁装置が適用されるシステムが第一実施形態と異なる。
第九実施形態による弁装置9を図28を参照して説明する。弁装置9は、図30に示す燃料電池システム90に適用される。
燃料電池システム90は、燃料電池91、燃料ガス流通系92、酸化剤ガス流通系93などを備える。燃料電池システム90は、燃料ガスとしての水素と酸化剤ガスとしての酸素との電気化学反応を利用して電気エネルギを発生する。
燃料電池91は、例えば、固体高分子電解質型燃料電池であって、複数のセル、積層されている複数のセルの積層方向の両端にそれぞれ設けられている電極、水素供給管、空気供給管などを有する。
セルは、電解質膜、及び、当該電解質膜の両側面に設けられる電極を有するMEA、並びに、MEAを挟持する一対のセパレータを有する。セルは、水素と空気とを隔離しつつ流通可能に形成されている。セルは、水素供給管が供給する水素と空気供給管が供給する空気に含まれる酸素との反応によって、一対のセパレータが有するアノードとカソードとの間に電位差、すなわち、電気エネルギを発生可能である。
燃料ガス流通系92は、水素タンク921、水素管922、レギュレータ923などを有する。水素タンク921は、燃料電池91に供給される水素を高圧で貯留可能である。水素管922は、水素タンク921と燃料電池91の水素供給管とを接続している。水素管922は、水素が流れる流路を有する。レギュレータ923は、水素管922に設けられる。レギュレータ923は、水素管922を流れる水素の圧力を調整可能である。
弁装置9は、水素管922のレギュレータ923と燃料電池91との間に設けられる。弁装置9は、燃料電池91に供給される水素の供給量を調整可能である。
酸化剤ガス流通系93は、空気が流通可能な管であって、大気と燃料電池91の空気供給管とを接続している。酸化剤ガス流通系93は、大気を燃料電池91に供給可能である。
第九実施形態による弁装置9では、水素管922を流れる水素の供給量を調整する。このとき、弁装置9では、内側噴孔241及び外側噴孔242,243の開閉を制御することによって、燃料電池91が必要とする水素の供給量を広範囲にわたってカバーすることが可能である。したがって、第九実施形態は、第一実施形態の効果(a)~(d)、(f)、(g)を奏することができる。
また、第九実施形態による弁装置9では、制御部50によるコイル45への通電の電流値及びパルス幅の制御によって、水素の流れに比較的大きな圧力脈動を発生させることができる。これにより、燃料電池91における水素との酸素との電気化学反応において発生する水を当該圧力脈動によって燃料電池91から排出することができる。これにより、燃料電池91の出力低下を防止することができる。
(その他の実施形態)
第一~八実施形態では、「弁装置」は、ガス燃料を噴射する燃料噴射弁であるとした。また、第九実施形態では、水素ガスを噴射する弁装置であるとした。しかしながら、「流体」はガス燃料でなくてもよい。液体燃料であってもよいし、他の流体であってもよい。
上述の実施形態では、磁束密度が飽和する磁気絞り部は、固定コアに設けられるとした。しかしながら、内側可動コアの開弁方向側に設けられてもよい。
上述の実施形態では、内側可動コアに対向する磁気絞り部の面積は、外側可動コアに対向する固定コアの面積に比べ小さく、内側可動コアと磁気絞り部の閉弁方向側の端面との距離は、外側可動コアと固定コアの閉弁方向側の端面との距離に比べ短いとした。しかしながら、面積及び距離の関係はこれに限定されない。内側可動コアに対向する磁気絞り部の面積は、外側可動コアに対向する固定コアの面積に比べ小さいだけであってもよいし、内側可動コアと磁気絞り部の閉弁方向側の端面との距離は、外側可動コアと固定コアの閉弁方向側の端面との距離に比べ短いだけであってもよい。
上述の実施形態では、制御部は、電流の大きさを制御することによって、内側噴孔のみの噴射、内側噴孔と外側噴孔との連続噴射、内側噴孔からの噴射が継続している状態での外側噴孔からの間欠噴射、及び、外側噴孔からの噴射のみが継続している状態を使い分けるとした。しかしながら、単純にコイルに電流を流すことによって、内側噴孔と外側噴孔との連続噴射を行うだけであってもよい。
第八実施形態の図29で示した制御を第九実施形態の燃料電池システムに適用してもよい。この場合、燃料電池内に溜まる水分を水素の圧力の変化によって除去することできるため、燃料電池システムの水分による性能低下を防止することができる。
上述の実施形態では、燃料噴射弁は、中心軸上に位置する内側噴孔、及び、内側噴孔から見て中心軸から離れる方向に形成されている外側噴孔を有するとした。しかしながら、噴孔の配置はこれに限定されない。複数の噴孔に対して複数の弁部材の独立した移動によって開閉が制御されていればよい。また、複数の弁部材の移動は、同軸上でなくてもよい。
上述の実施形態では、内側噴孔は、断面積が外側噴孔の合計の断面積に比べ小さくなるよう形成されているとした。しかしながら、噴孔の断面積の関係はこれに限定されない。
第六実施形態では、摺動部材は、外側可動コアに設けられるとした。しかしながら、摺動部材が設けられる部材は、これに限定されない。磁性材料から形成される外側弁部材に設けられてもよい。
上述の実施形態では、弁部材のシール部は、ゴムから形成されるとした。樹脂から形成されていてもよい。
上述の実施形態では、制御部は、コイルに供給する電流の大きさを制御するとした。しかしながら、コイルに印加される電圧を制御してもよい。
上述の実施形態では、外側可動コアの径方向内側の側面と内側可動コアの径方向外側の側面とには、軟窒化処理が施されているとした。この処理は、DLCをコーティングしてもよいし、フッ素樹脂をコーティングしてもよい。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。