JP7055213B2 - 連続鋼鋳造プロセスを監視するための方法および装置 - Google Patents

連続鋼鋳造プロセスを監視するための方法および装置 Download PDF

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Description

本発明は、溶鋼が取鍋からタンディッシュに注がれ、出口ノズルを通って鋳型に移送される連続鋼鋳造プロセスを監視する方法に関する。本発明はまた、本発明に係る方法を実行するために、プロセッサに影響を与える命令を含むコンピュータプログラムを含む装置およびコンピュータ読み取り可能な媒体に関する。
製鋼プロセスでは、鋼は連続鋳造設備で鋳造される。これらの設備には、取鍋、タンディッシュ、鋳型部品をそれぞれ複数の鋳型に切り替えることができるタワーを有する。溶鋼は、取鍋からタンディッシュに、タンディッシュから鋳型内へと移送される。タンディッシュは分配及びバッファ容器として使用される。タンディッシュは、溶鋼を異なる鋳型へと分配する。一般に、タンディッシュは、空の取鍋を次に鋳造する取鍋に、つまり鋳型での鋳造を中断することなく切り替えることができるバッファとして機能する。取鍋の切り替え後、新しく開いた取鍋から出てくる鋼がタンディッシュ内の残りの鋼と混合される。この混合は、溶鋼の組成と温度の両方に関係する。
したがって、取鍋内の鋼の温度と組成にはしばしば違いがある。製鋼所によっては、プロセス全体での溶鋼の温度損失を予測する複雑なモデルを適用している。モデルには鋳造のための予想時間、取鍋のライニングの品質、取鍋の熱的条件、等級に必要な合金化のレベル、処理時間などのいくつかの入力パラメータがある。
連続鋼鋳造プロセスの鋳造速度は、鋼の所望のグレード、溶鋼の過熱、および鋳型の寸法に基づいて決定される。これにより、タンディッシュ内の溶鋼の過熱に関連する鋳造速度が制御される。この知識により、さまざまな等級および設備に関連する最小許容過熱値のプリセット値のリストが生成される。過熱は、鋳造機内の溶鋼の温度と、対応する液相線温度とに基づいて決定できる。温度は、例えば、欧州特許出願公開第1614489号明細書、欧州特許出願公開第2399106号明細書、欧州特許第1757915号明細書及び欧州特許第2639562号明細書に記載されるような浸漬熱電対、タンディッシュの上部から浸漬された連続温度測定デバイス、またはタンディッシュの側壁または下部に取り付けられた組み込みデバイスによって測定できる。
液相線情報は、等級仕様の組成、最後に分析されたサンプルから既知の組成に基づく計算を用いることにより、或いは、例えば、国際公開第2016/108762号に記載されるデバイスを用いて液相線温度を測定するための実際の測定デバイスを用いることによって取得できる。
各等級と設備にはその過熱度に関連する上限と下限がある。過熱が上限を超えると、鋳造が遅くなり過ぎて、適正な鋳造速度に調整することが難しくなる。多くの場合、曲げ部分にブレイクアウト(変形)のリスクがある。過熱が低くなりすぎると、鋳型内の温度が低くなりすぎて、鋳型粉による必要な潤滑が有効でなくなる。最悪の場合、タンディッシュが凍結する可能性がある。ブレイクアウトや凍結により生じる生産の損失及び修理に関連するコストは非常に高くなる可能性がある。したがって、鋼鋳造プロセス中に溶鋼の過熱を注意深く監視することが重要である。例えば、過熱が下限に近づいた場合、連続鋳造プロセスが停止し得ることで、鋳造設備への損傷を回避する。あるいは、鋳造プロセスを続行できるように、初期の取鍋の変更を行い得る。取鍋から取鍋への時間が長い場合、および/または予定外の遅延の場合、制御されていない過熱の問題が発生する可能性が高くなる。これらの鋳物は、より高い過熱で開始する必要があり、低い過熱で終了し得る。
修理のためのブレイクアウトおよびシャットダウンを回避するために、米国特許第6539273号明細書には、過熱に基づいて鋳造速度を制御するための方法および装置が記載されている。したがって、米国特許第6539273号明細書は、測定値に基づいて鋳造プロセスを直接妨害するためのスキームを記載している。しかしながら、連続鋼鋳造プロセスの効率的な監視技術は依然として必要とされている。
欧州特許出願公開第1614489号明細書 欧州特許出願公開第2399106号明細書 欧州特許第1757915号明細書 欧州特許第2639562号明細書 国際公開第2016/108762号 米国特許第6539273号明細書
よって、本発明は、先行技術から知られている方法よりも少ない入力パラメータと仮定とに基づいて連続鋼鋳造プロセスを監視するための改善された方法を提供することを目的とし、予測可能な低過熱状態の場合に適切な測定を準備するのに十分な時間をオペレータに与えるものである。
本発明は、溶鋼が取鍋からタンディッシュに注がれ、出口ノズルから鋳型へ移送される連続鋼鋳造プロセスを監視する方法において、以下のステップ:溶鋼の臨界過熱温度値を得ることと、ある期間にわたる溶鋼の温度値を測定することと、測定温度値を溶鋼の液相線温度と比較することにより、測定温度値に対応する過熱温度値を決定することと、臨界過熱温度値に達するときの予測時間インスタンスを予測することと、を含む方法を提供する。
本発明の文脈において、「連続鋼鋳造プロセス」という用語は、複数の取鍋の溶鋼がその後タンディッシュに注がれる鋳造プロセスを指すために使用できるが、ただ1つの取鍋の溶鋼がタンディッシュに注がれる鋳造プロセス又は連続鋳造プロセスの部分を指すために使用することもできる。
本明細書において「臨界過熱温度」という用語は、凍結等の低温すぎる過熱温度によって引き起こされる悪影響無しに、連続鋳造を可能にする最小の加熱温度値とみなされる過熱温度値を指すために使用される。低い過熱温度は多くの鋳造の問題の原因として知られている。
製鋼における過熱温度TSHは、溶鋼の温度値TMと、溶鋼の液相線温度TLとの差として定義でき、次の式で計算できる。

SH=TM-TL

Lは鋼の組成の関数であり、本質的には一定値と見なすことができるが、TLは、連続鋳造プロセス中、特定の等級で許容される組成変動の幅に応じて、熱から熱まで約±10℃の範囲で変化し得る。本明細書において「熱」という用語は、取鍋の内容物を指す。TLは、目的のために開発されたモデルを使用して鋼の組成から計算するか、鋼合金の熱力学的特性の研究を通じて導き出すことができる。
Mは、タンディッシュ内に配置されたパイロメータで測定でき、通常は、鋳造する鋼に適用される実際のプロセスに応じて、鋳造中に数℃変化する。
本明細書において「予測」という用語は、本明細書では、将来の過熱値の予測のため、および過熱値に関連付けられた時間インスタンスのため、すなわち、過熱温度が臨界過熱温度値に低下するときの将来の事象を指すために使用される。
数学的および/または計算方法および/またはモデルを予測のために使用することができる。予測は、決定された過熱温度値を唯一の入力パラメータとして使用して行うことができる。しかしながら、本発明の例では、さらなる入力を利用することができる。本方法および/またはモデルは、各取鍋の交換後に再初期化して繰り返すことができる。
有利には、本発明は、操作者のための使いやすいインターフェースを提供する。本発明に係る方法は、過熱が低いことに関連する「鋳造終了」事象、例えば、凍結または鋳造粉末の潤滑不良を防止するものである。また、本発明に係る方法は、鋳造プロセスの残りの安全な時間の全体像を提供するものであり、これにより、鋳造プロセス中に臨界過熱に到達した場合に適切なアクションを準備するための追加の時間を生成するものである。
一例においては、本方法は以下を含む:
鋳造の残り時間を得ることと、
予測時間インスタンスが残り時間内であるかを決定すること。
この発明の文脈において、「残り時間」という用語は、取鍋の内容物が取鍋からタンディッシュに移送されるまでの予測時間である。本発明の更なる例では、残り時間は、定期的に、例えば定期的に更新することができ、これは有利には決定の精度を改善するものである。また、残り時間に関する情報は利用可能であり、取鍋変更などの他のプロセス決定の目的で使用され得る。
また、予測時間インスタンスが決定された時間内にあるかどうかの決定は、例えば、残り時間の更新に続いて、一度または定期的に行うことができる。決定の結果はオペレータに提示することができる。例えば、結果は、製鉄所の制御室にある画面に表示することができる。
更なる例では、残り期間を取得することが、以下を含む:
現在の鋳造流量および/または取鍋内の溶鋼の量に基づいて残り時間を決定すること、好ましくは取鍋内の溶鋼の量は、取鍋内の溶鋼の重量を決定することによって決定され、および/または、残り期間に関して経験的に決定された時間値を取得する。
残り時間は、鋳造プロセスの開始前または鋳造プロセスの開始時に、鋳造流量を測定/推定するか、および/または取鍋内の溶鋼の量を重み付けするかまたは推定することによって決定できる。経験的には、決定された鋳造流量および決定された溶鋼の量に対応する経験的に決定された時間値を調べることができる。
取鍋内の溶鋼の量は、取鍋内の溶鋼の重量を決定することによって決定できる。例えば、取鍋には、取鍋内の溶鋼の量を正確に測定するための目盛を装備できる。有利には、溶鋼の量は正確に決定することができ、その決定を複数回繰り返すか、または連続的に行うことができる。ただし、多くの場合、取鍋の交換を決定するための入力として関連する情報がすでに使用されているため、取鍋内の溶鋼の量に関する情報はすでにわかっているはずである。
更なる例では、予測が、決定された過熱温度値及び残り時間の予測される終了時間における予想された過熱値に対応する予測された過熱温度値に基づく。残り時間の終了時間で予想される過熱値に対応する予測された過熱温度値を予測することが、
決定された過熱値の線形関数として予測すること、または
決定された過熱値の二次方程式として予測すること
を含み得る。
過熱温度値を予測するには、過熱対時間の勾配の実際の勾配を決定することによって行われ得る。残り時間tEnd Predictedは、次の式で計算できる。

tEnd Predicted=(TSH-TSH Critical)/勾配

SHは決定された過熱温度値を指し、TSH Criticalは臨界過熱温度値を指す。この線形法は、多くの場合、高い側の時間を予測するが、予測が連続的に更新されると、時間の経過とともに予測がより正確になる。ほとんどの場合、線形予測システムは十分に機能するが、高次予測モデルがより正確な結果を提供する。勾配は、異なる時間間隔に基づいて計算できる。時間間隔が短いと、予測値に多くのノイズが発生する可能性が高く、時間間隔が長いと、安全な鋳造の残り時間の過大評価が発生する可能性がある。取鍋から取鍋への時間が長い鋳造では5~30分、取鍋から取鍋への時間が短い高速鋳造機では5~15分の時間間隔設定で最良の結果が得られる。勾配計算の優先度は約5分で、平滑化された過熱値の配列から計算を開始することが望ましい。
二次方程式に基づく最小二乗計算から、より正確な予測が取得できる。この計算の入力として使用される時間間隔は、線形法でも使用される時間間隔とすることができる。最小二乗法は、追加のトレース平滑化の影響を最小限に抑える。この方程式を解くと、予測された過熱温度値の配列が生成される。その後、予測された過熱温度値が臨界過熱温度値と等しくなる時間を決定することができる。
別の例では、臨界過熱値は経験的に決定された値である。「臨界過熱温度」は、鋳造機および品位鋳造物に関連する値であり得る。これらの値は、鋳造機の設置のオペレータに既知であり、多くの場合、経験の結果である。臨界過熱温度の値は、主に5℃~15℃の範囲である。多くの場合、高スループットの鋳造機は、この範囲の下限で動作するが、低スループットの鋳造機はその範囲の上限で動作する傾向がある。
別の例では、測定温度値に対応する過熱温度値を決定することが、
(i)最低20%、好ましくは、溶鋼の初期量の少なくとも30%が取鍋からタンディッシュ内へ移送された後;および/または
(ii)測定温度値の最大温度が検出された後
に開始される。
状況に応じて、溶鋼の温度変化は、時間の経過に伴ってかなり線形になり得るが、変動する場合もある。一般に、温度は、予想される取鍋の交換時間の終点に向かって低下する傾向がある。一度取鍋の交換が行われると、温度の上昇がよく観察される。しばらくすると、つまり、溶鋼の最低20%が、取鍋からタンディッシュに移送されたとき、温度の変化がより直線的な挙動を示し始める。
有利には、溶鋼の初期量の最低20%が取鍋からタンディッシュに移された後、および/または測定温度値の最大温度が検出された後に、過熱温度値を決定し始めるときにより正確な予測を得ることができる。
更に別の例では、温度値を測定することが、少なくとも3点、好ましくは少なくとも5点、最も好ましくは連続的に温度を異なる時間インスタンスで測定して、時間の経過に伴う温度の関数を生成することを含む。
有利には、複数の温度測定を行うことにより、過熱をより正確に計算することができる。温度測定は、連続的な温度測定によって、例えば、鋳造位置に近い位置でタンディッシュの壁にセンサを設置することによって決定することができる。
また、本方法は、時間の経過に伴う温度の関数に平滑化関数を適用することをさらに含むことができる。
有利には、例えばソフトウェアアルゴリズムを用いて平滑化関数を適用することにより、結果として得られる予測における測定温度値の短期変動への影響が低減される。
別の例では、液相線温度が、溶鋼の鋼の組成の分析に基づいて、および/または、一般の等級組成に基づいて、および/またはin situ(その場での)測定に基づいて、および/または、以前の鋼処理プロセスからの鋼の組成の分析、好ましくは直前の鋼処理プロセスからの鋼の組成の分析に基づいて決定される。
例えば、液相線温度は、計算により決定することができる。この計算は、タンディッシュ内の鋼の等級に関連した組成、または鋼のサンプルの分析に基づくことができる。あるいは、液相線温度は、対応する測定のために設計された装置を用いて決定することもできる。有利には、その結果は、サンプルを分析する場合よりも速く利用可能であり、最も信頼性の高いものと見なされる。
また、以前の鋼処理プロセスからの鋼の組成物の分析に基づいて液相線温度が決定されると、連続鋼鋳造プロセスが開始する前であっても液相線温度の値を利用可能とすることができる。大抵の場合、直前の連続鋼鋳造プロセスの鋼組成は、現在の鋼組成に非常に類似している。
別の例では、溶鋼の温度値を測定することは、タンディッシュの出口ノズル付近の溶鋼の温度値を測定することを含む。
有利には、タンディッシュの出口ノズル付近で温度が測定されると、非常に正確な値を得ることができる。これは、タンディッシュの底部または壁に組み込むことができる連続的な温度を測定する装置によって行うことができる。他の位置の温度を測定することにより、不正確な測定となり、遅い応答時間をもたらす可能性があり、これが後の過熱計算に悪影響を及ぼす場合がある。
更に別の例では、溶鋼の温度を測定することが、温度測定装置を用いて溶鋼の温度を測定すること、好ましくは、タンディッシュの側壁又は底部に搭載された熱電対を用いて測定することを含む。
操作者は溶鋼に曝されないため、側壁または底部に搭載された熱電対は、連続鋼鋳造プロセス全体を通して連続的な温度測定、速い応答時間、及び操作者に対して改善された安全性をもたらすことを可能にする。また、一例では、配線を冗長にすることにより、温度値をワイヤレス送信することができる。
別の例では、ある期間は少なくとも5分の期間である。有利には、臨界過熱温度値に達するときに予測時間インスタンスを予測することは、溶鋼の温度値が少なくとも5分間にわたって測定されるときに最も良好になることが見出されている。
一例では、予測時間インターバルの予測が、
(i)溶鋼の新しい温度値を測定したとき、および/または
(ii)溶鋼の新しい臨界過熱温度を取得するとき、および/または
(iii)残り時間を決定するとき
の後に実行される。
別の例では、本方法ステップはリアルタイムで実施される。
本発明に係る方法は、例えば、リアルタイムでプロセッサ上で実行することができ、本明細書において「リアルタイム」とは、ミリ秒のオーダー、時にはマイクロ秒のオーダーでの応答を指すために使用される。有利には、予測は、方法ステップがリアルタイムで実行されるとき、より正確となり得る。しかしながら、更なる実施例では、方法ステップは、非リアルタイムでも実行することができ、ここで方法ステップは、1秒に1回、1分に一回、またはより長い時間間隔で実施される。
本発明はまた、溶鋼が取鍋からタンディッシュに注がれ、出口ノズルから鋳型へ移送される連続鋼鋳造プロセスを監視するための装置にも関し、
溶鋼の臨界過熱温度値を取得するための手段と、
ある期間にわたる溶鋼の温度値を測定する手段と、
測定温度値を溶鋼の液相線温度と比較することにより測定温度値に対応する過熱温度値を決定する手段と、
臨界過熱温度値に達するときの予測時間インスタンスを予測する手段と
を備える。
また、本発明は、本発明に係る方法を実行するためにプロセッサに影響を与えるための命令を含むコンピュータプログラムを含むコンピュータ読み取り可能な媒体に関する。
以下の概略図は、いくつかの例示的な説明に関連して本発明の理解を改善するための本発明の態様を示すものである。
図1は、複数の取鍋の溶鋼が続いてタンディッシュ内に注入される鋳造プロセスにおけるタンディッシュ温度の変化を示す。 図2は、一の取鍋の溶鋼がタンディッシュ内に注入されるときのタンディッシュ温度の詳細図を示す。 図3は、本発明の一実施形態に係る測定温度値に対応する決定された過熱温度値を示す。 図4は、本発明の一実施形態に係る予測された過熱温度の経時的な変化を示す。 図5は、本発明の一実施形態に係る予測時間インスタンスの予測を示す。 図6は、本発明の一実施形態に係る方法の方法ステップを示す。 図7は、本発明の一実施形態に係る装置の概略図を示す。
図1は、複数の取鍋の溶鋼が続いてタンディッシュ内に注がれる鋳造プロセスにおけるタンディッシュ温度の変化を示す。図1においては合計で6つの取鍋の交換が例示的に示されている。温度と鋳造時間の変化は取鍋ごとに異なる場合があることがわかる。さらに、取鍋の終わりに向かって温度の急激な低下が起こっていることがわかる。示されている例では、1529℃の液相線温度が計算された。図1からわかるように、溶鋼の測定温度は、1回目と4回目の取鍋交換時に液相線温度のレベルまでほぼ低下した。したがって、臨界過熱温度に達するときに過熱値を決定し、決定された温度値に基づいて予測時間インスタンスを予測することは、連続鋼鋳造プロセスを監視するために非常に有益であり得る。
図2は、一の取鍋の溶鋼がタンディッシュ内に注がれるタンディッシュ温度の詳細図を示す。図2は、図1に示す鋳造プロセスのうちの一の取鍋で測定された温度TMeasに対応するタンディッシュ温度の変化の詳細図であり得る。示されている例では、取鍋から取鍋までの時間は59分である。しかしながら、当業者は、取鍋から取鍋までの時間が、プロセスに応じてより短くまたはより長くなり得ることを知っているであろう。
一般に、タンディッシュ温度の変化は線形パターンには従わない。これは、温度が、予測される取鍋交換時間の終わりに向かって、短く急な上昇の後にほぼ直線的に下降する傾向があるためである。図は、短い時間の後、つまり、溶鋼の最低20%から30%が取鍋からタンディッシュに移されたときに、温度変化がより直線的な挙動を示し始めることを示している。したがって、溶鋼の初期量の最低20%が取鍋からタンディッシュに移された後、および/または測定温度値の最大温度が検出された後に、測定温度値に対応する過熱温度値を決定することには意味がある。
図3は、本発明の一実施形態に係る測定温度値TMeasに対応する決定された過熱温度値TSHを示している。丸で示された溶鋼の測定温度値TMeasが図2の値であり得る。示されている一実施形態では、1分あたりに一の新しい温度値が得られている。また、過熱温度値TSHを決定するために示される一実施形態では、平滑化関数(図3には示されていない)が、時間に対する温度の関数に適用される。しかしながら、他の実施形態では、平滑化関数が適用されない場合があり、サンプリング時間は、1分あたり一の温度値よりも速いまたは遅い場合がある。
上記のように、測定温度値TMeasを溶鋼の液相線温度と比較して測定温度値TMeasに対応する過熱温度値TSHを決定するステップは、溶鋼の最低20%から30%が取鍋からタンディッシュに移されたときに開始する。測定温度値TMeasに対応する決定された過熱温度値TSHは四角で示されている。本議論の目的のために、臨界過熱温度値TSH criticalは25℃に設定され、十字印を使用して示されている。
示されている一実施形態では、臨界過熱温度値TSH criticalはプロセスにおいて一度だけ決定された。しかしながら、他の実施形態では、臨界過熱温度は、プロセス中に定期的または不定期に更新することができる。
図4は、本発明の一実施形態に係る時間の経過に伴う予測された過熱温度TSH Predictedの変化を示している。決定された過熱温度値TSH及び測定温度値TMeasは、図3に示されている値にすることができる。したがって、図4および図3は、同じ実施形態に関連し得る。
示されている一実施形態では、予測された過熱温度値TSH Predictedは、決定された過熱温度値TSHの二次方程式として計算される。予測された過熱温度値TSH Predictedは、プロセスの予測された終了時間tEnd Predictedにおける予測された過熱値か、または次の取鍋交換の時間インスタンスに対応する。
図5は、本発明の一実施形態に係る予測時間インスタンスtForecastの予測を示す。決定された過熱温度値TSH、予測された過熱温度値TSH Predicted、および測定温度値TMeasは図3および4の実施形態のものであり得る。したがって、図3、4および5はすべて同じに実施形態に関連し得る。
図5では、予測時間インスタンスtForecastは、新しい過熱温度値TSHの決定に続いて1分ごとに動的に予測される。予測時間インスタンスtForecastは線で示され、鋳造の残り時間、つまり、臨界過熱温度値TSH Criticalに達する予測時間を意味する。
予測時間インスタンスtForecastは、次の式で計算できる。
Forecast=(TSH-TSH Critical)/(TSH-TSH Predicted)/(tEnd Predicted-tActual
残り期間tEnd Predictedは、プロセスが終了する時間、または次の取鍋交換が発生する時間の予測である。実際の時間tActualは、予測時間インスタンスtForecastが計算される時間インスタンスに対応する。
図6は、溶鋼が取鍋からタンディッシュに注がれ、出口ノズルから鋳型へ移送される本発明の一実施形態に係る連続鋼鋳造プロセスを監視するための方法1000の方法ステップを示す。方法1000は、以下のステップを含む。
溶鋼の臨界過熱温度値を得ること1010;
ある期間にわたる溶鋼の温度値を測定すること1020;
測定温度値を溶鋼の液相線温度と比較することにより、測定温度値に対応する過熱温度値を決定すること1030;および
臨界過熱温度値に達するときの予測時間インスタンスを予測すること1040。
随意には、方法1000は、以下のステップを含むことができる。
鋳造の残りの期間を得ること1050;および
予測時間インスタンスが残り時間内であるかどうかを決定すること1060。
図7は、溶鋼が取鍋からタンディッシュに注がれ、出口ノズルから鋳型へ移送される連続鋼鋳造プロセスを監視するための本発明の一実施形態に係る装置100の概略図を示す。装置100は、以下を備える。
溶鋼の臨界過熱温度値を取得するための手段110;
ある期間にわたる溶鋼の温度値を測定する手段120;
測定温度値を溶鋼の液相線温度と比較することにより測定温度値に対応する過熱温度値を決定する手段130;および
臨界過熱温度値に達するときの予測時間インスタンスを予測する手段140。
随意には、装置100はまた、以下を備えることができる。
鋳造の残り期間を得るための手段150;及び
予測時間インスタンスが残り時間内であるかを決定するための手段160。
請求項、明細書、および図面に開示された特徴は、別個にまたは互いに任意の組み合わせの両方で、請求項に記載の発明の異なる実施形態に不可欠であり得る。
100 監視のための装置
110 臨界過熱温度値を決定するための手段
120 温度値を測定するための手段
130 過熱温度値を決定するための手段
140 予測するための手段
150 残り時間を取得するための手段
160 予測時間インスタンスが残り時間内であるかを決定するための手段
1000 監視方法
1010 臨界過熱温度値を決定すること
1020 温度値を測定すること
1030 過熱温度値を決定すること
1040 予測すること
1050 残り時間を取得すること
1060 予測時間インスタンスが残り時間内であるかを決定すること
SH 決定された過熱温度値
SH Predicted 予測された過熱温度値
Meas 測定温度値
SH Critical 臨界過熱温度値
Actual 実際の時間
End Predicted 予測された終了時間
Forecast 予測時間インスタンス

Claims (14)

  1. 溶鋼が取鍋からタンディッシュに注がれ、出口ノズルから鋳型へ移送される連続鋼鋳造プロセスを監視する方法において、以下のステップ:
    前記溶鋼の臨界過熱温度値を得ること(1010)と、
    ある期間にわたる前記溶鋼の温度値を前記タンディッシュの側壁又は底部に搭載された温度測定装置を用いて測定すること(1020)と、
    測定温度値を前記溶鋼の液相線温度と比較することにより、前記測定温度値に対応する過熱温度値を決定すること(1030)と、
    前記臨界過熱温度値に達するときの予測時間インスタンスを予測すること(1040)
    であって、前記予測時間インスタンスt Forecast を以下の式:
    Forecast =(T SH -T SH Critical )/(T SH -T SH Predicted )/(t End Predicted -t Actual
    を用いて計算し、
    ここでT SH は決定された過熱温度、T SH Critical は臨界過熱温度、T SH Predicted は予測された過熱温度、t End Predicted は残り時間、t Actual は予測時間インスタンスt Forecast が計算されたときの実際の時間を示し、
    ここで前記過熱温度の予測は過熱対時間の実際の勾配を決定することによって行い、
    前記取鍋の内容物が前記取鍋から前記タンディッシュ内へ移されるまでの予測時間である鋳造の残り時間を得ること(1050)と、
    前記予測時間インスタンスが、前記残り時間内であるかを決定すること(1060)と
    を含む方法。
  2. 前記残り時間を得ること(1050)が、
    現在の鋳造流量および/または前記取鍋内の溶鋼の量に基づいて、前記残り時間を決定するか、および/又は前記取鍋内の溶鋼の量が、前記取鍋内の溶鋼の重量を決定することにより決定される、および/又は、前記残り時間に関して、経験的に決定された時間値を得ることを含む請求項に記載の方法。
  3. 前記予測すること(1040)が、前記決定された過熱温度値、および前記残り時間の終了時間で予想される過熱値に対応する予測された過熱温度値に基づく、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記残り時間の予測された終了時間で前記予想される過熱値に対応する前記予測された過熱温度値を予測することが、
    前記決定された過熱値の線形関数として予測するか、又は
    前記決定された過熱値の二次方程式として予測する、請求項に記載の方法。
  5. 前記臨界過熱温度値が経験的に決定された値である請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記測定温度値に対応する過熱温度値を決定することが、
    (i)溶鋼の初期量の少なくとも0%が前記取鍋から前記タンディッシュ内へ移送された後;および/または
    (ii)前記測定温度値の最大温度が検出された後
    に開始される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記温度値を測定すること(1020)が、
    異なる時間で少なくとも3つは連続的に温度を測定して、時間の経過に伴う温度の関数を生成するか、および/又は時間の経過に伴う温度の関数に平滑化関数を適用することを含む請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記液相線温度が、溶鋼の鋼の組成の分析に基づいて、および/または、一般の等級組成に基づいて、および/またはその場での測定に基づいて、および/または、以前の鋼処理プロセスからの鋼の組成の分析に基づいて決定される請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記溶鋼の温度値を測定すること(1020)が、前記タンディッシュの側壁又は底部に搭載された熱電対を用いて測定することを含む請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記ある期間が少なくとも5分の期間である請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記予測時間インスタンスの予測が、
    (i)前記溶鋼の新しい温度値を測定したとき、および/または
    (ii)前記溶鋼の新しい臨界過熱温度を取得するとき、および/または
    (iii)前記残り時間を決定するとき
    の後に実行される、請求項1~1のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記方法のステップがリアルタイムで実行される請求項1~1のいずれか1項に記載の方法。
  13. 溶鋼が取鍋からタンディッシュに注がれ、出口ノズルから鋳型へ移送される連続鋼鋳造プロセスを監視するための装置であって、
    前記溶鋼の臨界過熱温度値を取得するための手段(110)と、
    前記タンディッシュの側壁又は底部に搭載された温度測定装置を用いて、ある期間にわたる前記溶鋼の温度値を測定する手段(120)と、
    測定温度値を前記溶鋼の液相線温度と比較することにより前記測定温度値に対応する過熱温度値を決定する手段(130)と、
    前記臨界過熱温度値に達するときの予測時間インスタンスを予測する手段(140)であって、前記予測時間インスタンスt Forecast を以下の式:
    Forecast =(T SH -T SH Critical )/(T SH -T SH Predicted )/(t End Predicted -t Actual
    を用いて計算し、ここでT SH は決定された過熱温度、T SH Critical は臨界過熱温度、T SH Predicted は予測された過熱温度、t End Predicted は残り時間、t Actual は予測時間インスタンスt Forecast が計算されたときの実際の時間を示し、前記過熱温度の予測は過熱対時間の実際の勾配を決定することによって行う手段と、
    前記取鍋の内容物が前記取鍋から前記タンディッシュ内へ移されるまでの予測時間である鋳造の残り時間を得る手段(150)と、
    前記予測時間インスタンスが、前記残り時間内であるかを決定する手段(160)と
    を備える装置。
  14. 請求項1~1のいずれかに記載の方法を実行するように、プロセッサに影響を与える命令を含むコンピュータプログラムを含むコンピュータ読み取り可能な媒体。
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