JP7054606B2 - 長尺状の調光デバイス - Google Patents

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Description

本発明は、長尺状の調光デバイスに関する。より具体的には、電圧の印加に応じて透過光の散乱状態を変化させる長尺状の調光デバイスに関する。
従来、ポリマーと液晶材料との複合体における光散乱効果を利用した調光デバイスの開発が行われている。このような複合体においては、ポリマーマトリクス内で液晶材料が相分離または分散した構造をとることから、ポリマーと液晶材料の屈折率をマッチングすること、および、該複合体に電圧を印加して液晶材料の配向を変化させることによって、光を透過させる透過モードと光を散乱させる散乱モードとを制御することができる。
上記高分子分散型(例えば、PDLC、PNLC)調光デバイスに関しては、耐衝撃性の向上等を目的として、種々の構成が提案されている。例えば、上記複合体において、電圧の印加に応じて透過光の散乱状態を変化させる動作領域と、電圧によって透過率が変化しない液晶固定化領域とを設けること(特許文献1)、上記複合体において、ポリマーから形成され、中心部が細い柱状樹脂の集合体を複数設けること(特許文献2)、上記複合体を構成するポリマーを主成分とし、上記複合体が占める領域を複数の領域に分割する構造物を設けること(特許文献3)等が提案されている。
特開2005-274599号公報 特開2011-154388号公報 特開2002-287127号公報
上記構成によれば、一定の耐衝撃性が得られ得る。その一方で、調光デバイスがフレキシブルデバイスである場合には、曲げおよび曲げに伴う上下基板のずりに対する機械強度が不十分であり、屈曲後に白濁が発生するおそれがある。さらに、調光デバイスが長尺状である場合、ロール状に巻き取る際の巻き取り圧による面方向の圧力、フィルムのずり応力、引張り力等によって端部から液晶材料が漏れる、液晶材料が流動して表示特性が変化する、等の問題が生じ得る。また、複合体中のポリマー含有量が大きくなると、駆動電圧が高くなる傾向にある。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、屈曲した状態または一定の圧力または張力をかけて巻き取られた場合においても、適度な駆動電圧で良好な表示特性を示す調光デバイスを提供することにある。
本発明の1つの局面によれば、一対の基板と、該基板間に挟持され、第1のポリマーおよび液晶化合物を含む調光層と、該調光層を複数の区画に区画する連続構造を有し、第2のポリマーを含む隔壁と、を有し、円柱形の巻き芯に巻き取り可能な長尺状の調光デバイスが提供される。該調光層中の該第1のポリマーの含有量は、20重量%以下であり、該隔壁中の該第2のポリマーの含有量は、60重量%以上であり、該隔壁の配置間隔は、10mm以下であり、該隔壁の幅は、該巻き芯の直径に対して0.1%以下であり、かつ、該区画の一辺の長さに対して1%~100%である。
1つの実施形態において、平面視における上記調光層と上記隔壁との面積の合計に対する上記調光層の面積の割合が、60%以上である。
1つの実施形態において、上記第1のポリマーおよび上記第2のポリマーが、同じモノマー成分の重合反応物である。
1つの実施形態において、上記基板の線膨張係数が100ppm以下である。
1つの実施形態において、少なくとも一方の上記基板の上記調光層と反対側に、ハードコート層が設けられている。
1つの実施形態において、少なくとも一方の上記基板の上記調光層と反対側に、保護層が設けられている。
1つの実施形態において、上記第1のポリマーおよび上記第2のポリマーが、液晶ポリマーを含む。
本発明によれば、所定の連続構造を有する隔壁によって調光層を複数の区画に分けるとともに、該隔壁と調光層とにおけるポリマー含有量を調節することにより、屈曲した状態または一定の圧力または張力をかけて巻き取られた場合においても、適度な駆動電圧で良好な表示特性を示す調光デバイスが提供される。
本発明の1つの実施形態による調光デバイスの概略斜視図である。 図1に示す調光デバイスをA-A線で切断した際の概略断面図である。 隔壁の連続構造の一例を説明する概略平面図である。 本発明の調光デバイスの製造方法の一例を説明する概略図である。
以下、本発明の1つの実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
A.調光デバイス
A-1.全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による調光デバイスの概略斜視図であり、図2は、図1に示す調光デバイスをA-A線で切断した際の概略断面図である。調光デバイス100は、長尺状であり、円柱形の巻き芯に巻き取り可能である(図示例では、調光デバイス100は、巻き芯200にロール状に巻回されている)。調光デバイス100は、一対の基板10a、10bと、該基板10a、10b間に挟持された調光層30と、調光層30を複数の区画32に区画する隔壁20と、を有する。基板10a、10bは、配向膜12と、透明電極14と、基材16とをこの順で含み、配向膜12が調光層30と接するように配置されている。なお、本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが5倍以上、好ましくは10倍以上、より好ましくは20倍以上の細長形状を含む。また、配向膜12は、調光デバイスの駆動方式等に応じて、省略され得る。
調光デバイス100は、目的に応じて、任意の適切な機能層をさらに有し得る。該機能層としては、例えば、ハードコート層、粘着剤層、保護層等が挙げられる。これらは、基板10a、10bのいずれか一方、または、両方の外側(電極が設けられていない側)に配置される。
調光デバイス100の全体厚みは、例えば30μm~800μm、好ましくは50μm~450μmであり得る。
本発明の調光デバイスは、円柱形の巻き芯に巻き取り可能な可撓性を有する。本発明の調光デバイスは、曲率半径100mmの曲げにおけるヘイズ値の変化(透過モード時におけるヘイズ値の変化)が、好ましくは1%以下、より好ましくは0.8%以下である。
本発明の調光デバイスは、電圧の印加/無印加の切替えによって、透明状態(透過モード)と不透明状態(散乱モード)とを切替えることができる。
電圧は、交流および/または直流の電圧を指す。印加波形は特に制限されず、直流、交流、パルス、またはそれらの合成波等であり得る。直流電圧の場合、好ましくは0.5msec以上、交流電圧の場合、正弦波、矩形波、三角波、またはそれらの合成波のいずれでも良く、好ましくは100kHz以下の周波数で0.5msec以上、パルス波の場合、好ましくはパルス幅0.5msec以上を印加することで上記切替えができる。
本発明の調光デバイスの駆動電圧は、直流電圧では通常、60V以下、好ましくは30V以下であり、交流電圧では通常、120Vp-p以下、好ましくは90Vp-p以下、パルス電圧では最大値が60V以下、好ましくは最大値が30V以下である。
本発明の調光デバイスのヘイズは、透過モードにおいて15%以下であることが好ましく、散乱モードにおいて70%以上であることが好ましい。特に好ましくは、透過モードにおいて10%以下であり、散乱モードにおいて85%以上である。散乱モードにおいてヘイズが70%未満であると、調光デバイス越しの像が見えてしまい、隠ぺい性が低くなる。
A-2.調光層
調光層は、第1のポリマーおよび液晶化合物を含む。より具体的には、調光層は、第1のポリマーを生成するためのモノマー成分と非重合型の液晶化合物とを含む液晶組成物を重合させて得られる複合体(第1のポリマーと液晶化合物との複合体)を含む。該複合体において、液晶化合物は、第1のポリマーが形成するネットワーク構造中で相分離または分散状態で存在している。
上記液晶化合物は、好ましくは配向状態において、第1のポリマーと略同一の屈折率を示す。よって、液晶化合物の配向度が高い状態において、調光層に入射した光は、進行方向を大きく曲げることなく、調光層を透過することができる。このとき、調光層は、透過モードであり、ヘイズ値は、例えば15%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下とすることができる。ヘイズ値は、例えば、JIS K7136に準拠して測定され得る。
一方、液晶化合物の配向度が低い状態では、液晶化合物の向きが不規則となるために第1のポリマーと液晶化合物との間で屈折率差が増大する。この状態において、調光層に入射した光は、該屈折率差に起因して進行方向を大きく曲げて散乱する。このとき、調光層は、散乱モードであり、ヘイズ値は、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上とすることができる。
図示例の調光デバイス100の駆動方式は、リバースモードであり、電圧が印加された状態で散乱モードとなり、電圧が印加されていない状態で透過モードとなる。具体的には、基板10a、10bの透明電極14面に設けられた配向膜12の配向作用によって、電圧無印加時に液晶化合物が配向して透過モードとなり、電圧の印加によって該液晶化合物の配向が乱れて散乱モードとなる。なお、電圧無印加時に液晶化合物が配向し得る限りにおいて、配向膜は省略され得る(例えば、電極表面に直接ラビング処理が施されている場合)。
ノーマルモードの調光デバイスにおいては、電圧が印加された状態で透過モードとなり、電圧が印加されていない状態で散乱モードとなる。具体的には、配向膜が省略され、電圧印加時に液晶化合物が配向して透過モードとなり、電圧の印加解除によって該液晶化合物の配向が乱れて散乱モードとなる。
調光層に含まれる液晶化合物としては、非重合型の任意の適切な液晶化合物が用いられる。例えば、ネマティック型、スメクティック型、コレステリック型液晶化合物が挙げられる。透過モードにおいて優れた透明性を実現できることから、ネマティック型液晶化合物を用いることが好ましい。誘電率の異方性は、正または負のいずれであってもよい。
上記液晶化合物の具体例としては、特開平11-174211等に記載されるように、シアノビフェニル系、シアノフェニルシクロヘキサン系、シアノフェニルエステル系、安息香酸フェニルエステル系、フェニルピリミジン系化合物やそれらの混合物等の室温または高温でネマティック相やスメクティック相を呈する低分子液晶化合物が挙げられる。このような低分子液晶化合物の具体例としては、特開平11-153787に記載されるように、ビフェニル系、フェニルベンゾエート系、シクロヘキシルベンゼン系、アゾキシベンゼン系、アゾベンゼン系、アゾメチン系、ターフェニル系、ビフェニルベンゾエート系、シクロヘキシルビフェニル系、フェニルピリミジン系、シクロヘキシルピリミジン系、コレステロール系等の各種低分子液晶化合物を挙げることができる。これらの低分子液晶化合物は、単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
調光層中における液晶化合物の含有量は、例えば80重量%以上、好ましくは85重量%~97重量%であり、より好ましくは90重量%~95重量%である。液晶化合物の含有量が当該範囲であれば、適度な駆動電圧で透過モードと散乱モードとにおけるヘイズの変化量を十分に大きくすることができる。
調光層に含まれる第1のポリマーとしては、光透過率、上記液晶化合物の屈折率等に応じて適切に選択され得る。第1のポリマーは、代表的には活性エネルギー線硬化型樹脂であり、液晶ポリマー、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド樹脂等が好ましく用いられ得る。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記液晶化合物との屈折率のマッチングが容易となることから、好ましくは、第1のポリマーは、少なくとも1種の液晶ポリマーを含む。
上記液晶ポリマーは、好ましくは、所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている。液晶ポリマーの配向状態が固定化されていることにより、上記液晶化合物の配向状態の変化を通じて透過モードと散乱モードとの切換えが好適に行われ得る。このような液晶ポリマーは、液晶モノマーとして、重合型モノマー(2官能以上の架橋型モノマーを含み得る)を用い、該液晶モノマーを配向させた後に、液晶モノマー同士を重合または架橋させることによって得られ得る。ここで、重合によりポリマーが形成され、架橋によりネットワーク構造が形成されることとなるが、これらは非液晶性である。したがって、得られる液晶ポリマーにおいては、例えば、液晶性の化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。
上記液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なる。具体的には、当該温度範囲は、好ましくは40℃~120℃であり、さらに好ましくは50℃~100℃であり、最も好ましくは60℃~90℃である。
液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、特表2002-533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合型メソゲン化合物等が使用できる。このような重合型メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker-Chem社の商品名LC-Sillicon-CC3767が挙げられる。液晶モノマーとしては、例えばネマティック型液晶モノマーが好ましい。
調光層中における第1のポリマーの含有量は、20重量%以下であり、好ましくは3重量%~15重量%、より好ましくは5重量%~10重量%である。第1のポリマーの含有量が3重量%未満であると、散乱効果が出にくくなる、基板との密着性が低くなる等の問題が生じ得る。一方、第1のポリマーの含有量が20重量%を超えると、駆動電圧が高くなる、調光機能が低下する(透過モードにおけるヘイズ値が上昇する、透過モードと散乱モードとにおけるヘイズの変化量が小さくなる)等の問題が生じ得る。
調光層は、代表的には、上記液晶組成物を光重合させることによって形成される。該液晶組成物は、上記モノマー成分および液晶化合物に加えて、目的に応じて、任意の適切な成分をさらに含み得る。例えば、該液晶組成物は、カイラル剤をさらに含み得る。カイラル剤を用いることにより、上記液晶化合物または液晶ポリマーをコレステリック配向性とすることができる。カイラル剤の種類や添加量は、らせんピッチ等の所望の設定値に応じて適切に決定できる。また例えば、該液晶組成物は、重合開始剤をさらに含み得る。重合開始剤の種類や添加量は、モノマー成分の種類、組成等に応じて適切に決定できる。他の任意成分としては、酸化防止剤、可塑剤、色素等が挙げられる。液晶組成物中における任意成分の含有量は、例えば10重量%以下であり得る。
調光層の厚みは、例えば3μm~30μm、好ましくは10μm~25μmであり得る。厚みが当該範囲であれば、適度な駆動電圧で良好な表示特性が得られ得る。
A-3.隔壁
隔壁は、調光層を複数の区画に区画する連続構造を有する。代表的には、隔壁は、平面視格子状の連続構造を有し、2枚の基板を接続するように設けられる。このような構成とすることにより、長尺状の調光デバイスを巻き芯に巻き取る際、および、巻き出す際の面方向の圧力やずり応力、張力によって液晶化合物が流動したり、漏れ出したりすることを防止できる。また、調光デバイスを所望の形状に切り出した際に、断面から液晶化合物が漏れ出すことを防止できる。さらに、スペーサーとしても機能し得る。なお、後述するとおり、調光層と隔壁とは、露光条件の違いによって1つの液晶組成物から互いに異なるポリマー含有量を有する領域として形成され得る。よって、隔壁は、調光層から独立した壁面を有している必要はなく、調光層と連続的に設けられていてもよい。隔壁が調光層と連続的に設けられている場合、以下の隔壁の形状に関する記載は、調光層に隣接し、調光層よりも多いポリマー含有量を有する領域の輪郭形状の記載である。
上記隔壁は、好ましくはその壁面と基板とのなす角度が略直角(90°±5°、好ましくは90°±2°)となるように設けられる。1つの実施形態において、隔壁は、略直方体形状を有する。このような形状とすることにより、長尺状の調光デバイスを巻き芯に巻き取る際、および、巻き出す際の面方向の圧力やずり応力、張力によって液晶化合物が流動したり、漏れ出したりすることを好適に防止できる。
上記「平面視格子状の連続構造」は、平面視において、隔壁が複数の方向に延びて周期的に並んだ区切りを形成することを意味する。隔壁の伸びる方向の数は、好ましくは2方向(この場合、格子の形状は四角形)または3方向(この場合、格子の形状は三角形または六角形)であり、より好ましくは2方向である。
上記隔壁の伸びる方向が2方向である場合、上記第1の方向は、好ましくは調光デバイスの短手方向と略平行(0°±5°)な方向とされる。また、第1の方向と第2の方向とのなす角度は、本発明の効果が得られる限りにおいて制限はなく、例えば80°~100°、好ましくは85°~95°、より好ましくは88°~92°である。このような構成とすることにより、巻き芯に巻き取る際、および、巻き出す際に面方向の圧力やずり応力等が負荷されても、構造を好適に維持することができる。
図3は、隔壁の連続構造の一例を説明する概略平面図である。図示例において、隔壁20は、平面視において、調光デバイスの短手方向と平行な第1の方向および該第1の方向と直交する第2の方向(長手方向)に各々一定の配置間隔で延びて、長方格子状パターンを形成している。
同一方向に延びる隔壁の配置間隔Dは、10mm以下であり、好ましくは1mm以下、より好ましくは30μm~500μmである。このように小さく区画することにより、巻き芯に巻き取る際、および、巻き出す際に面方向の圧力やずり応力等が負荷されても、構造を好適に維持することができる。なお、延びる方向によって配置間隔が異なる場合、上記配置間隔Dは、最大の間隔を意味する。また、延びる方向によって配置間隔が異なる場合、最大の間隔DMAXと最小の間隔DMINは、例えば1<DMAX/DMIN≦20の関係を満たし、好ましくは1<DMAX/DMIN≦10の関係を満たす。
隔壁の幅(延びる方向によって幅が異なる場合は、最大の幅)Wは、巻き芯の直径に対して0.1%以下であり、好ましくは0.08%以下である。巻き芯に対して隔壁の幅を小さくすることにより、巻き芯に追随して屈曲して局所的に応力が集中した場合であっても、隔壁の破壊を防止し得る。
上記隔壁の幅Wは、平面視における上記区画の一辺の長さに対して1%~100%、好ましくは3%~30%、より好ましくは5%~20%である。このような割合とすることにより、機械強度を維持しつつコントラストを上げることができる。なお、図示例の辺Aおよび辺Bのように、区画を形成する辺の長さが異なる場合は、すべての辺の長さが上記割合を満たすものとする。また、辺の長さは、隔壁の幅方向の中心線の交差点間距離として求められる(例えば、図示例の辺Bの長さはLである)。
上記隔壁の幅Wは、例えば3μm~50μm、好ましくは5μm~30μm、より好ましくは8μm~20μmであり得る。
上記隔壁は、第2のポリマーを含む。隔壁中における第2のポリマーの含有量は、調光層中の第1のポリマー含有量よりも多い。また、隔壁中における第2のポリマーの含有量は、60重量%以上であり、例えば70重量%以上、好ましくは75重量%を超え95重量%以下であり、より好ましくは80重量%~95重量%である。当該含有量であれば、巻き芯に巻き取る際、および、巻き出す際に面方向の圧力やずり応力等が負荷されても、壁構造を好適に維持することができる。また、駆動電圧の過度な上昇を抑制し得る。
上記第2のポリマーとしては、第1のポリマーと同様のものを例示することができる。第2のポリマーは、第1のポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよい。好ましくは、第1のポリマーと第2のポリマーとは、構成単位として同じモノマーを含む。より具体的には、第1のポリマーおよび第2のポリマーは、好ましくは同じモノマー成分の重合反応物を含み、より好ましくは同じ液晶モノマーの重合反応物である液晶ポリマーを含み、さらに好ましくは同じ架橋型液晶モノマーの重合反応物である液晶ポリマーを含む。液晶ポリマーが架橋構造を有することにより、面方向の圧力やずり応力等に対して壁構造を好適に維持することができる。
1つの実施形態において、調光層と隔壁とは、1つの液晶組成物から露光条件の違いによって、ポリマーの含有率等において互いに異なる領域として形成され得る。当該実施形態においては、隔壁は、第2のポリマー(第1のポリマーと同じモノマー成分の重合反応物)に加えて、上記液晶組成物に含まれる成分(例えば、液晶化合物、カイラル剤、酸化防止剤等)を同様に含み得る。
上記隔壁中の液晶化合物の含有量は、例えば40重量%以下、好ましくは3重量%~20重量%、より好ましくは5重量%~10重量%である。
上記隔壁は、電圧の印加時および無印加時において、光透過率が実質的に変化しない。リバースモードの調光デバイスにおいて、隔壁の光透過率(波長550nm)は、配向軸への入射偏光に対して例えば30%~95%、好ましくは60%~90%である。
1つの実施形態において、平面視における上記調光層と隔壁との面積の合計に対する調光層の面積の割合(開口率)が、60%以上であり、好ましくは70%以上、より好ましくは80%~95%である。調光層の面積(開口率)が60%以上であることにより、調光機能を好適に発揮することができる。
A-4.基板
基板は、巻き芯に巻き取り可能な可撓性を有する。基板(結果として、調光デバイス全体)は、曲率半径が好ましくは100mm以下で、より好ましくは80mm以下で、光学特性に悪影響を与えることなく屈曲可能である。
基板は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下の線膨張係数を有する。線膨張係数が当該範囲である場合、巻き芯に巻き取る際、および、巻き出す際に張力をかけても基板の変形が生じにくいという利点を有する。なお、線膨張係数は、JIS K 7197に準拠して測定される。
基板の光透過率(波長550nm)は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。光透過率がこのような範囲であれば、透過モードにおいて優れた透明性を実現できる。
図示例においては、一対の基板10a、10bの両方に関して、基材上に透明電極および配向膜がこの順に設けられているが、上述のとおり、配向膜は、調光デバイスの駆動モード等に応じて省略され得る。透明電極もまた、一対の基板の両方に設けられている必要はなく、目的に応じて、いずれか一方の基板にのみ設けられていてもよい。
基材としては、巻き芯に巻き取り可能な可撓性を有する限り制限はなく、樹脂基材であってもよく、ガラス基材であってもよい。基材は、好ましくは樹脂基材である。樹脂基材の形成材料としては、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系樹脂等が好ましく用いられ得る。ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、イソフタル酸、シクロヘキサン環等を含む脂環式のジカルボン酸または脂環式のジオール等を含む共重合PET(PET-G)、その他ポリエステル、および、これらの共重合体やブレンド体等が挙げられる。これらの材料は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられ得る。
基材の厚みは、例えば20μm~500μm、好ましくは50μm~300μmであり得る。
透明電極は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO)等の金属酸化物を用いて形成され得る。あるいは、透明電極は、銀ナノワイヤー(AgNW)、カーボンナノチューブ(CNT)、有機導電膜、金属層またはこれらの積層体によって形成され得る。透明電極は、目的に応じて、所望の形状にパターニングされ得る。例えば、透明電極を縦ストライプ、横ストライプまたは格子状にパターン形成することにより、調光デバイスにブラインド機能を好適に付与することができる。
配向膜は、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール等の塗布膜にレーヨン等の布でラビング処理を施すことによって形成され得る。
A-5.他の機能層
ハードコート層は、例えば、アクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を表面に付加する方式等にて形成することができる。
保護層は、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等から形成される樹脂フィルムであり得る。保護層の厚みは、代表的には10μm~100μmである。
粘着剤層は、例えば、アクリル系重合体をベースポリマーとするアクリル系粘着剤によって形成され得る。アクリル系粘着剤層の厚みは、被着体の材質や用途に応じて、適宜、調整され得るが、通常、5μm~50μmである。代表的にはアクリル系粘着剤で形成される。
上記粘着剤層は、調光デバイスの最外層を構成し得る。粘着剤層は、使用に供されるまでの間、セパレーターによって保護されていてもよい。
B.調光デバイスの製造方法
本発明の調光デバイスの製造方法としては、任意の適切な方法が選択され得る。
1つの実施形態において、本発明の調光デバイスの製造方法は、一方の基板上に、上記液晶化合物、モノマー成分(例えば、液晶モノマー)等を含む液晶組成物を塗布して塗布層を形成する工程、該塗布層上に他方の基板を積層して、一対の基板と該基板間に挟持された塗布層とを有する積層体を作製する工程、該積層体に所定のパターンで第1の活性エネルギー線照射を行う工程、および、該積層体の全面に第2の活性エネルギー線照射を行う工程、を含む。当該製造方法によれば、隔壁と基板とが強固に固着し得るとともに、隔壁と調光層とが物理的一体性を有し得ることから、巻き芯に巻き取る際、および、巻き出す際に面方向の圧力やずり応力等が負荷されても、より好適に構造を維持することができる。
図4を参照しながら上記実施形態の製造方法についてより具体的に説明する。まず、図4(a)に示すように、基板10aの配向膜側表面に液晶組成物を塗布して塗布層40を形成する。
上記液晶組成物中における液晶化合物とモノマー成分との配合比(モノマー成分:液晶化合物(重量基準))は、例えば8:92~25:75、好ましくは10:90~20:80である。液晶組成物は、感光性のモノマー成分を用いること、光開始剤を配合すること等により、感光性材料とされている。
塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)等が挙げられる。塗布層は、必要に応じて自然乾燥または加熱乾燥処理され得る。
次いで、図4(b)に示すように、基板10bを配向膜側表面が塗布層40と対向するように塗布層40上に積層する。
次いで、図4(c)に示すように、隔壁の平面視形状に対応する開口パターンを有するマスク50を介して第1の活性エネルギー線照射を行う。これにより、塗布層40の活性エネルギー線照射領域においてモノマー成分が重合する。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が用いられる。なかでも、紫外線が好ましい。
次いで、図4(d)に示すように、マスクが無い状態で、塗布層40全面に対して第2の活性エネルギー線照射を行う。これにより、塗布層40全体において重合反応が進行して、隔壁20および隔壁20によって複数の区画32に区画された調光層30が形成される。
紫外線の照射条件は、モノマー成分の種類等に応じて適切に設定され得る。例えば、上記第1の活性エネルギー線照射における紫外線の照射条件は、基板材料の透過率、光重合開始剤の吸収波長に応じて適宜選定され得、好ましくは第2の活性エネルギー線照射よりも強い強度で照射される。具体的には、モノマー成分および液晶化合物を含む塗布層に対して、好ましくは5mW/cm~300mW/cm、より好ましくは5mW/cm~200mW/cm、さらに好ましくは20mW/cm~150mW/cmの強度で照射される。また、第1の活性エネルギー線は照射源からの直進性が高いコリメート光であることが好ましい。本過程において、隔壁の構造体はほぼ形成が完了することができる。また、本パターン露光により液晶組成物からモノマー(より具体的には、その重合反応物であるポリマー)が局所的に析出して隔壁を形成するが、この際に高温で露光すると、モノマー成分と液晶化合物との溶解性が向上することで、隔壁中に液晶化合物が取り込まれやすくなる。その結果、隔壁中のポリマー含有量が低下し、強度も同時に低下し得る。よって、露光温度の範囲は、液晶化合物の液晶温度範囲にもよるが、例えば-20℃~90℃に液晶相をとる材料の場合、等方相転移温度よりも20℃以上低いことが好ましく、より好ましくは20℃~40℃の室温付近の比較的低温の範囲で露光をすることが好ましい。また、第2の活性エネルギー線照射における紫外線強度は、塗布層に対して、好ましくは3mW/cm~150mW/cm、より好ましくは5mW/cm~100mW/cm、さらに好ましくは10mW/cm~50mW/cmとすることができる。このような照射条件でパターン露光および全面露光を行うことにより、同じ液晶組成物から構成成分比の異なる調光層と隔壁とを形成することができる。上記紫外線照射は、所望の積算照射量が得られる限りにおいて、連続的に行われてもよく、間欠的に行われてもよい。光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV-LED等を用いることができる。
上記製造方法の各工程は、連続的に行われ得る。各工程を連続的に行うことにより、高い生産性が実現できる。具体的には、一方の長尺状の基板を搬送しながら、該基板上に上記液晶組成物を塗布し、塗布層上に他方の長尺状の基板を重ねて一対のロール間を通し、該ロール間を通過した積層体に対して第1の活性エネルギー線照射および第2の活性エネルギー線照射を順次行うことができる。図示しないが、図4(d)で得られた長尺状の調光デバイスは、適宜、巻き芯に巻き取られ得る。巻き芯の直径は、例えば80mm~600mm、好ましくは200mm~400mmである。
別の実施形態において、本発明の調光デバイスの製造方法は、一方の基板上に、第2のポリマーを含む材料を所望のパターンで印刷し、必要に応じて活性エネルギー照射および/または加熱して隔壁を形成すること、該隔壁が形成された基板上に、上記液晶組成物を塗布して塗布層を形成すること、該塗布層上に他方の基板を積層して、一対の基板と該基板間に挟持された塗布層および隔壁とを有する積層体を作製すること、および、該積層体の全面に活性エネルギー線照射を行って調光層を形成すること、を含む。
上記印刷は、ナノインプリント、スクリーン印刷等の方法で行われ得る。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、以下の「部」または「%」の記載はそれぞれ、特段の記載が無いかぎり、「重量部」または「重量%」を意味する。
≪駆動電圧の測定方法≫
エヌエフ回路設計ブロック社製EC750SAを用いて調光デバイスに交流電圧を昇圧しながら印加し、ヘイズが上限に達した時点の電圧を読み取って駆動電圧として評価した。なお、カイラル性を持たせていない場合は液晶配向による偏光依存性が発生するため、この際は偏光板を介して入射し測定を行う。
≪線膨張係数の測定方法≫
線膨張係数は、熱機械分析装置(TMA)によりJIS7197に基づき測定した。
≪ポリマー含有量の測定方法≫
ポリマー含有量は、隔壁断面の電子顕微鏡画像から画像解析にて算出した。具体的には断面切片の液晶相を除去し、100μm四方の視野におけるポリマー部の占める面積の比率をポリマー含有量とした。また、調光層におけるポリマー含有量は、隔壁と調光層とに含まれる合計ポリマー量から隔壁に含まれるポリマー量を除いた値から算出した。
≪ヘイズの測定方法≫
スガ試験機社製のヘイズメーター「HGM-2DP」により、測定した。
[実施例1]
100Ω/□の透明電極(ITO膜)を片面に有するロール状のPETフィルム(厚み100μm)の該電極面にポリイミド(JSR社製、「オプトマーAL1254」)を100nmの厚みで塗布し、90℃で10分加熱後120℃で90分間焼成し、長尺一軸方向にラビング処理を施すことにより、平行配向膜を形成した。これにより、[配向膜/透明電極/PETフィルム]の構成を有する基板Aを得た。得られた基板Aの線膨張係数は、30ppm/℃であった。
液晶化合物(HCCH社製、「854600-00」) 80部と、架橋型液晶モノマー(BASF社製、「LC242」) 20部とを混合した。得られた混合物に、重合開始剤(BASF社製、「Irgacure TPO」)をLC242に対し1部添加し、等方相まで加熱後、撹拌して液晶組成物を得た。
得られた液晶組成物を上記基板の配向膜表面に20μm厚で塗布した。次いで、配向膜が該塗布層に接するように別の基板Aを塗布層上に貼り合わせて、[基板A/塗布層/基板A]の構成を有する積層体を作製した。続いて、150μm四方の遮光部が15μmの間隔でマトリクス状に配置されたパターン(平面視正方格子状のパターン)を有するフォトマスクを介して、室温で該積層体に紫外線を照射した。具体的には、365nmに中心波長を有するLED光源にて30mW/cmの照度で10分間連続的に照射した。これにより、紫外線照射部にて上記液晶モノマーが重合して液晶ポリマーとなり、上記パターンに対応する連続構造の隔壁を形成した。次いで、フォトマスクを介することなく、同じ光源を用いて10mW/cmの照度にて5分間連続的に照射して、塗布層における未反応の液晶モノマーを重合させた。これにより、液晶ポリマーのネットワーク中に液晶化合物が相分離または分散した複合体(調光層)が形成された。
以上のようにして、リバースモード型の長尺状の調光フィルムを得た。
[実施例2]
液晶組成物中における液晶化合物の配合量を90部としたこと、液晶モノマーの配合量を10部としたこと、および、100μm四方の遮光部が10μmの間隔でマトリクス状に配置されたパターンを有するフォトマスクを用いたこと以外は実施例1と同様にして、リバースモード型の長尺状の調光フィルムを得た。
[比較例1]
液晶組成物中における液晶化合物の配合量を70部としたこと、液晶モノマーの配合量を30部としたこと、および、フォトマスクを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、リバースモード型の長尺状の調光フィルムを得た。
[比較例2]
液晶組成物中における液晶化合物の配合量を95部としたこと、液晶モノマーの配合量を5部としたこと、および、フォトマスクを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、リバースモード型の長尺状の調光フィルムを得た。
[比較例3]
液晶組成物中における液晶化合物の配合量を50部としたこと、液晶モノマーの配合量を50部としたこと、および、100μm四方の遮光部が20μmの間隔でマトリクス状に配置されたパターンを有するフォトマスクを用いたこと以外は実施例1と同様にして、リバースモード型の長尺状の調光フィルムを得た。
得られた調光フィルムを曲げ試験1に供した。試験結果を巻取り前のヘイズ値および駆動電圧とともに表1に示す。
<曲げ試験1>
調光フィルムを直径10cmの巻取り芯に1Nの張力で20m巻き取り、次いで、巻き出した。巻き取り後のロール状態における外観を観察するとともに、巻取り前と巻き出し後の調光フィルム(ともに電圧無印加状態)のヘイズ値の変化量(巻取り前のヘイズ値と巻き出し後のヘイズとの差の絶対値)を求めた。
Figure 0007054606000001
表1に示されるとおり、実施例1および2の調光フィルムは、曲げ試験において隔壁が好適に機能した結果、白濁が発生せず、また、ヘイズ変化も小さかった。さらに、適度な駆動電圧で良好な表示特性を示した。これに対し、比較例1の調光フィルムでは、調光層中のポリマー含有量が大きく、また、隔壁を有さないことから、曲げ試験において一時的に白濁が発生するとともに、初期ヘイズが高くなり、駆動電圧も上昇した。比較例2の調光フィルムでは、調光層中のポリマー含有量が小さく、また、隔壁を有さないことから、曲げ試験において白濁が発生して、ヘイズの変化量が増大した。比較例3の調光フィルムでは、曲げ試験において隔壁が好適に機能した結果、白濁は発生しなかったものの、調光層中のポリマー含有量が大きいために、初期ヘイズが高くなり、駆動電圧も上昇した。
[実施例3]
透明電極(ITO膜)を片面に有するロール状のPETフィルム(厚み188μm、幅30cm)の該電極面にポリイミド(JSR社製、「オプトマーAL3046」)の塗布膜を形成し、長尺一軸方向にラビング処理を施すことにより、平行配向膜を形成した。これにより、[配向膜/透明電極/PETフィルム]の構成を有する基板Bを得た。得られた基板Bの線膨張係数は、30ppm/℃であった。
液晶化合物(HCCH社製、「854600-00」) 80部と、重合型液晶モノマー(BASF社製、「LC242」) 20部とを混合した。得られた混合物に、重合開始剤(BASF社製、「Irgacure TPO」)をLC242に対し1部添加し、等方相まで加熱後、撹拌して液晶組成物を得た。
得られた液晶組成物を上記基板の配向膜表面に20μm厚で塗布した。次いで、配向膜が該塗布層に接するように別の基板Bを塗布層上に貼り合わせて、[基板B/塗布層/基板B]の構成を有する積層体を作製した。続いて、100μm四方の遮光部が10μmの間隔でマトリクス状に配置されたパターンを有するフォトマスクを介して、室温で該積層体に紫外線を照射した。具体的には、365nmに中心波長を有するLED光源にて20mW/cmの照度で5分間連続的に照射した。これにより、紫外線照射部にて上記液晶モノマーが重合して液晶ポリマーとなり、上記パターンに対応する連続構造の隔壁を形成した。次いで、フォトマスクを介することなく、同じ光源にて10mW/cmの照度で5分間連続的に照射して、塗布層における未反応の液晶モノマーを重合させた。これにより、液晶ポリマーのネットワーク中に液晶化合物が相分離または分散した複合体(調光層)が形成された。
以上のようにして、リバースモード型の長尺状の調光フィルムを得た。
[比較例4]
フォトマスクを用いなかったこと以外は実施例3と同様にして、リバースモード型の長尺状の調光フィルムを得た。
[比較例5]
5mm四方の遮光部が1cmの間隔でマトリクス状に配置されたパターンを有するフォトマスクを用いたこと以外は実施例3と同様にして、リバースモード型の長尺状の調光フィルムを得た。
[比較例6]
液晶化合物(HCCH社製、「854600-00」) 97部と、重合型液晶モノマー(BASF社製、「LC242」) 3部とを混合した。得られた混合物に、重合開始剤(BASF社製、「Irgacure TPO」)をLC242に対し1部添加し、等方相まで加熱後、撹拌して液晶組成物を得た。
上記のようにして調製した液晶組成物を用いたこと以外は実施例3と同様にして、リバースモード型の長尺状の調光フィルムを得た。
得られた調光フィルムを曲げ試験2に供した。試験結果を駆動電圧とともに表2に示す。
<曲げ試験2>
調光フィルムを直径10cmの巻取り芯に1Nの張力で20m巻き取り、次いで、巻き出した。ロール状態および巻き出し後のフィルムの外観を観察した。
Figure 0007054606000002
表2に示されるとおり、実施例3の調光デバイスは、隔壁が好適に機能した結果、ロール状に巻き取られ、屈曲した状態および巻き出された後においても、白濁が発生しなかった。一方、隔壁が形成されていない比較例4の調光デバイスは、ロール状に巻き取ることにより端部から液晶化合物の漏れが生じた。また、巻き出し後においては、透過モードにおいて調光層に白濁が生じ、また、端部に剥がれが生じた。隔壁の幅が大きい比較例5では、ロール状態においては、良好な外観を維持したものの、巻き出し後には端部に剥がれが生じた。液晶ポリマーの含有量の少ない比較例6では、隔壁が十分に機能せず、ロール状に巻き取ることにより端部に液晶化合物の滲みが生じた。また、巻き出し後においては、透過モードにおいて調光層に白濁が生じた。
本発明の調光デバイスは、窓ガラス用フィルムや画像表示装置等の分野において好適に用いられる。
100 調光デバイス
10 基板
20 隔壁
30 調光層
32 区画

Claims (6)

  1. 一対の基板と、該基板間に挟持され、第1のポリマーおよび液晶化合物を含む調光層と、該調光層を複数の区画に区画する連続構造を有し、第2のポリマーを含む隔壁と、を有し、円柱形の巻き芯に巻き取り可能な長尺状の調光デバイスであって、
    該調光層中の該第1のポリマーの含有量が、5重量%~10重量%であり、
    該隔壁中の該第2のポリマーの含有量が、80重量%~95重量%であり、
    該隔壁の配置間隔が、10mm以下であり、
    該隔壁の幅が、該巻き芯の直径に対して0.1%以下であり、かつ、該区画の一辺の長さに対して1%~100%であり、
    該第1のポリマーおよび該第2のポリマーが、構成単位として同じ液晶モノマーを含む液晶ポリマーである、
    調光デバイス。
  2. 平面視における前記調光層と前記隔壁との面積の合計に対する前記調光層の面積の割合が、60%以上である、請求項1に記載の調光デバイス。
  3. 前記基板の線膨張係数が100ppm/K以下である、請求項1または2に記載の調光デバイス。
  4. 少なくとも一方の前記基板の前記調光層と反対側に、ハードコート層が設けられている、請求項1から3のいずれかに記載の調光デバイス。
  5. 少なくとも一方の前記基板の前記調光層と反対側に、保護層が設けられている、請求項1から4のいずれかに記載の調光デバイス。
  6. 前記液晶モノマーが、架橋性液晶モノマーである、請求項1から5のいずれかに記載の調光デバイス。
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