JP7053035B2 - 2軸試験機 - Google Patents
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Description
また、この影響対策として、フレームや下部取付板自体の板厚を増やすなど、剛性を上げる方法が考えられる。
しかし、このような方法は、鉛直荷重による撓み変形を減らすのには有効であるが、鋼材費だけで莫大な費用を要するとの問題があった。また、フレームや下部取付板自体の板厚を増すことで必然的に大型化するとともに重量も増大し、運搬・設置に係る労力と費用も多大に嵩むという問題もあった。
第2の発明は、第1の発明において、前記鉛直荷重補剛材は、前記下部取付板と当接する前記試験体の当接面形状に応じて着脱自在であることを特徴とする。
第3の発明は、第1の発明または第2の発明において、前記鉛直荷重補剛材の鉛直荷重を受ける面形状は、前記試験体の鉛直荷重を受ける面形状と略同一形状であることを特徴とする。
本実施形態の2軸試験機は、全体概略を説明すると、試験体である免震ゴムW(以下、単に「免震ゴムW」という。)に対して上方(鉛直方向)及び横方(圧縮と引張の両方の水平方向)から圧力を加える油圧ユニット部と、免震ゴムを上下から保持して加圧力による免震ゴムWの変位を検出するための試験機本体部と、これら各部を取り囲むフレーム1とからなる。また、油圧ユニット部のコントロール及び荷重・変位の試験データを検出し算出する制御部を有する外付けのPC装置が設けられている。
内側フレームB内には、後述する油圧ユニット部の鉛直シリンダ6と鉛直ピストンロッド6aの部分と、後述する試験機本体部の上部取付板3の部分を囲むように配置されている。
また、これらの外側フレームAや内側フレームBは、設置場所での組み立て分解が可能とし、設置場所までの搬入が容易になるように総重量を軽減している。
鉛直シリンダ6は、上部フレーム1aの下面中央部に吊り下げて保持されている油圧シリンダ装置である。この鉛直シリンダ6の機能は、鉛直ピストンロッド6aを鉛直(上下)方向に伸縮(往復)作動させて、所定の鉛直加重を負荷するものである。
水平シリンダ7は、下部フレーム1bの上面の延長で、側部フレーム1cの外側に位置した基台上に固定保持された油圧シリンダ装置である。この水平シリンダ7の機能は、水平ピストンロッド7aを水平(横側)方向に伸縮(往復)作動させて所定の水平加重を負荷するものである。そして、水平ピストンロッド7aの先端には、スライド板10が連結されている。
また、図3(a)、(b)に示すように、スライド板10の中心部には、鉛直荷重補剛材11を位置決めするピン10bを備えている。このピン10bは、スライド板10における鉛直荷重補剛材11の対向面に設けたピン収納穴内10aに、弾性部材(圧縮コイルバネ部材10c)を介して穴没可能に備えられている。
このように、鉛直荷重補剛材11を挿入することで、下部取付板5とスライド板10が変形しても、その変形量は鉛直荷重補剛材11を介していることで直接的な接触を避け、下部取付板5までには伝わらず、下部取付板5の撓みによる変形量を大幅に抑えられることができる効果を奏する。
鉛直荷重を負荷したときに、鉛直荷重補剛材11の外端部で下部取付板とスライド板が接触しないように鉛直荷重補剛材11の板厚を決める必要がある。実際の試験において、鉛直荷重2,400KNを負荷したときに、鉛直荷重補剛材11の外端の最大変形量が1~2mm程度であることが実測され、鉛直荷重補剛材11の板厚により変形させる荷重を無くすためには2mm以上の厚さを持つ鋼板が必要となった。このため市場に流通している鋼板において、厚さ2mmに最も近いという条件下、厚さ2.3mmのものが廉価であるためこれを採用することにした。
これにより、2軸試験機に薄い金属部材を挿入するだけで下部取付板5を補鋼し鉛直加重により撓み変形を著しく減少させることができ、画期的な費用低減及び資材購買の効率化が図れる。
図3(a)、(b)に示すように、鉛直荷重補剛材11には、試験中に動かないように位置決めし固着するための断面視凸形状のピン10bが通る貫通孔11aが中心部の1カ所に設けられている。
また、スライド板10の中心部には、鉛直荷重補剛材11を位置決めするピン10bを備え、このピン10bは、スライド板10における鉛直荷重補剛材11の対向面に設けたピン収納穴内10aに、弾性部材を介して穴没可能に備えられている。
ピン収納穴10aは、断面視凹形状に加工されている。そして、このピン収納穴10aには、ピン10bが上下動させるために伸縮する、例えば、弾性部材として、圧縮コイルバネ部材10cを備えている。これにより、ピン10bをスライド板10の上側に押し出す仕組みになっている。
なお、ピン10bは、単数でも複数でもよく、任意に設計変更可能である。
また、弾性部材は圧縮コイルバネに限定解釈されるものではなく、上方からの圧力の有無により、ピン10bをピン収納穴10a内から突没できるものであればよく、板バネ等他、高反発のゴムやウレタンであってもよい。
このようなピン10bは、鉛直荷重補剛材11の板厚よりも長くして、試験者が鉛直荷重補剛材11の貫通孔11aに入れ易くして作業の効率を図っている。そして、鉛直荷重補剛材11の貫通孔11aに挿入後、下部取付板5は、鉛直荷重の負荷により矢印符号Tのように上方から下降する。
したがって、鉛直荷重補剛材11から突出し、はみ出ていた長さの分のピン10bはピン収納穴10aに収まり、下部取付板5と鉛直荷重補剛材11とが当接するので隙間が生じることはない。
また、水平試験時の鉛直変位を測定するために変位センサ31のレーザ測定対象物となるセンサターゲット51を突出した形状としているが、単に鉛直方向の変位の試験だけであれば特に突出させる必要がない。
したがって、制御部の下で、鉛直油圧シリンダ6及び水平油圧シリンダ7を作動させて、免震ゴムWを鉛直方向及び水平方向(圧縮と引張の両方)に変形させることができ、この変形を鉛直ロードセル8、水平ロードセル9及び4個のセンサ31による測定により2軸試験を行うことができる。
図4(a)は、従来の免震ゴムWに鉛直方向への一定の圧縮負荷を加えたときの2軸試験機を示す模式図である。図4(a)に示すように、免震ゴムWに、例えば2400KNの鉛直荷重Sを矢印符号のように圧縮負荷した場合、下部取付板5⇒スライド板10⇒下部フレーム1bへと下方へ荷重が伝わり、それぞれに滑りと撓み変形が発生する(図中の3つの「変形」を参照。)。下部取付板5に撓み変形が発生すると変位センサターゲット51の位置が内側に向かって傾斜移動することによって変位を検知する変位センサ31での位置測定に影響を与える。また、傾斜すると免震ゴムWの圧縮する変位そのものに影響を与える結果、測定値が不正確になってしまう。
したがって、下部取付板5に備えられた変位センサターゲット51の位置が撓み変形により傾斜移動することが無いことから、免震ゴムWの圧縮する変位にも影響を与えず測定精度が正確になる。
なお、変位センサ31は少なくとも2個以上と法上規定されていて、本実施形態では4個の変位センサ31を用いて説明しているが、改善後の2軸試験機では精度が低下しないことから2個のセンサ配置でも構わない。
このように鉛直荷重補剛材11が非常に薄い板厚であっても、免震ゴムWに鉛直方向の一定の圧縮負荷を加えたときにも変位センサ31の測定精度が正確である理想的な2軸試験機を提供することが可能である。
出願人は、本実施形態の図3(b)に示される構成の2軸試験機を用い鉛直荷重の圧縮負荷を加えて、免震ゴムW径及び鉛直荷重の組合せにおける最適な鉛直荷重補剛材11の寸法径を求めたので説明する。
解析方法は、6パターンの鉛直荷重補剛材径及び4パターンの免震ゴムW径について、それぞれの組合せの24パターンについて、[表1]の鉛直荷重を加え、下部取付板5の変形量の最大値と最小値を算出して行った。
(1)鉛直荷重補剛材11は、金属の板厚2.3mmの薄い円板で、径の寸法を次の6パターンとする。
φ700mm、 φ800mm、 φ900mm、 φ1,000mm、
φ1,100mm、 φ1,200mm
(2)試験体(免震ゴム)径及び鉛直荷重の組合せを[表1]に、その組合せ結果を表2に、その結果をグラフにて図5に示す。
(3)解析の評価
表2は、各試験体である免震ゴムWの径と鉛直荷重補剛材11の径との関係において、鉛直荷重2,400KNを負荷した場合の下部取付板5の撓み変形量の最大と最小を測定し表化したものである。ここで、撓み変形量の最大とは、下部取付板5の撓みの一番大きい箇所(下部取付板5の内側部分)であり、撓み変形量の最小とは、下部取付板5の撓みの一番小さい箇所(下部取付板5の外側部分)である。
図5は、折れ線グラフで解析結果を示しており、縦軸は表の「解析値分類」の「最大(mm)」と最小(mm)の差である「下部取付板 変形量差(mm)」であり、横軸は「鉛直荷重補剛材径(mm)」であり、折れ線は免震ゴムWの径を示している。ここで、折れ線は免震ゴムWの径が、φ360が1点鎖線、φ510が点線、φ720が2点鎖線、φ1,110が実線である。
表2及び図5において、最適な鉛直荷重補剛材11の径は、「差の平均」及び「差の2乗の平均の平方根」が最も小さい数値のものとする。この結果、鉛直荷重補剛材11の径は、φ700mmが最も差が最小であることが分る。
したがって、鉛直荷重補剛材11の鉛直荷重を受ける面の径(面形状)は、免震ゴムWの鉛直荷重を受ける面の径(面形状)と略同一であることが最適であることが立証された。
次に、出願人は、2軸試験機において、鉛直荷重を負荷した場合の下部取付板5・スライド板10・下部フレーム1bの撓み変形量をそれぞれ対比解析し、この結果をみると、鉛直荷重補剛材11を用いたパターンが下部取付板5の撓み変形量が最も少ないこと分る。本対比解析について、以下に説明する。
ここで用いる免震ゴムWの径は1,000mmで、鉛直荷重補剛材11が金属の板厚2.3mmの薄い円板で、鉛直荷重は2,400KNとする。
表3は、撓み変形量を測定する対比対象が4パターンであることを表している。
パターン2は、従来(現行)2の鉛直荷重補剛材11を用いない2軸試験機であって、下部取付板5の板厚が560mmで、スライド板の板厚が290mmである。ここで、下部取付板5の板厚が560mm、パターン1の約2倍としたのは、下部取付板5の剛性を上げることによる撓み変形の対処を行った効果測定をするためである。
パターン3は、本願発明1の鉛直荷重補剛材11を用いた2軸試験機であって、パターン1と同じく下部取付板5の板厚が250mmで、スライド板の板厚が290mmである。用いる鉛直荷重補剛材11は円形で、径がφ1,800mmとしている。ここで、径がφ1800mmとしたのは、このような大きい径であっても、鉛直荷重の面圧を下げ、撓み変形が小さくなる効果があるか否かをみるためである。
パターン4は、本願発明2の鉛直荷重補剛材11を用いた2軸試験機であって、パターン1と同じく下部取付板5の板厚が250mmで、スライド板の板厚が290mmである。用いる鉛直荷重補剛材11は円形で、径がφ1,000mmとしている。ここで、径がφ1,000mmとしたのは、上記と同じく、鉛直荷重の面圧を下げ、撓み変形が小さくなる効果がある否かを確認するためである。
従来(現行)2のパターンは、下部取付板5の板厚を約2倍にしたことの効果があって、パターン1よりもいずれも変形量が小さく、特に下部取付板5の変形量が格段に小さくなったことが分る。
パターン3は、パターン1に鉛直荷重補剛材11をスライド板と下部取付板5の間に、鉛直荷重補剛材11の径がφ1,800と免震ゴムWの径φ1,000mmよりも大きくして配置したものであるが、変形量がパターン1と対比して効果が少ないことが分る。
パターン4は、パターン1に鉛直荷重補剛材11をスライド板10と下部取付板5の間に、鉛直荷重補剛材11の径がφ1,000と免震ゴムWの径φ1000mmと同じにして配置したもので、下部フレームとスライド板の変形量がパターン1と対比して変化がないものの、下部取付板の変形量がパターン1~3と対比して格段に小さい変形量であって画期的な効果があることが分った。
次に、出願人は、2軸試験機において、鉛直荷重補剛材11が無い場合とある場合に分けて、鉛直荷重113KNから23988KNの範囲の6パターンを負荷した試験を行い、上下取付板の圧縮量(変形量)をレーザ変位計(変位センサ3a)とダイヤルゲージを用いて測定を行なった。本試験でのダイヤルゲージの取付場所は、試験体(免震ゴムW)の近傍と、2軸試験機(図2)の側面視に向かって右端と、その右前角の3カ所である。
表4と表5とにおいて、試験体(免震ゴムW)の近傍と、2軸試験機(図2)の正面に向かって右端と、その右前角の3カ所の変形量をそれぞれ対比すると、鉛直荷重の6パターンのいずれにおいても鉛直荷重補剛材11が有る方が上下取付板の圧縮量(変形量)が小さく画期的な効果があることが分った。
1a 上部フレーム
1b 下部フレーム
1c 側部フレーム
1d 側部フレーム
2 鉛直リニアガイド
3 上部取付板
31 変位センサ
4 水平スライドベアリング
5 下部取付板
51 変位センサターゲット
6 鉛直シリンダ
6a 鉛直ピストンロッド
7 水平シリンダ
7a 水平ピストンロッド
8 鉛直ロードセル
9 水平ロードセル
10 スライド板
10a ピン収納穴
10b ピン
10c 圧縮コイルバネ(弾性部材)
11 鉛直荷重補鋼材
A 外側フレーム
B 内側フレーム
W 免震ゴム(試験体)
Claims (3)
- 試験体の上部と下部との間に鉛直荷重と水平荷重を加えて該試験体の変位を試験する2軸試験機であって、
前記鉛直荷重を発生する鉛直シリンダと、
前記鉛直シリンダによる鉛直荷重を前記試験体に上方から加える上部取付板と、
前記試験体を載置する下部取付板と、
前記下部取付板に前記水平荷重を横方から加えるスライド板と、
前記下部取付板と前記スライド板との間に配置し、前記鉛直荷重による前記下部取付板の撓み変形を減少させる鉛直荷重補剛材を備え、
前記スライド板の中心部には、前記鉛直荷重補剛材を位置決めするピンを備え、
前記ピンは、前記スライド板における前記鉛直荷重補剛材対向面に設けたピン収納穴内に、弾性部材を介して穴没可能に備えられていることを特徴とする2軸試験機。 - 前記鉛直荷重補剛材は、前記下部取付板と当接する前記試験体の当接面形状に応じて着脱自在であることを特徴とする請求項1に記載の2軸試験機。
- 前記鉛直荷重補剛材の鉛直荷重を受ける面形状は、前記試験体の鉛直荷重を受ける面形状と略同一形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の2軸試験機。
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