以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、液体噴射ヘッドを備えた装置の一例として、インクジェット式プリンター(以下、プリンター)1を例に挙げて説明する。
図1は、プリンター1の構成を模式的に表した平面図であり、図2は、プリンター1の構成を模式的に表した側面図である。このプリンター1は、記録ヘッドユニット2(広義の液体噴射ヘッドの一種)、インクタンク3、給紙ローラー4、及び、搬送機構5等を備えている。記録ヘッドユニット2は、液体の一種であるインクを噴射して画像等の記録を行う記録ヘッド7(狭義の液体噴射ヘッドの一種)が複数配列された装置であり、記録紙6(記録媒体或いは着弾対象物の一種)の紙幅方向(記録紙6の搬送方向に対して直交する方向)に沿って長尺に形成されている。インクタンク3は、記録ヘッドユニット2に供給するためのインクが貯留された液体供給源の一種である。インクタンク3内のインクは、液体供給チューブ8を介して記録ヘッドユニット2に供給される。なお、液体供給源を記録ヘッドユニット2の上方に搭載する構成を採用することもできる。また、記録ヘッドユニット2の詳しい構成は後述する。
給紙ローラー4は、搬送機構5の上流側に配設されている。この給紙ローラー4は、図示しない給紙部から給紙された記録紙6を挟持した状態で互いに反対方向に同期回転可能な上下一対のローラー4a、4bにより構成されている。そして、給紙ローラー4は、給紙モーター9からの動力で駆動され、図示しないスキュー補正ローラーと共働して記録紙6の搬送方向に対する傾き及び搬送方向に直交する方向(記録紙6の紙幅方向)の位置ずれを補正してから、この記録紙6を搬送機構5側に供給する。
搬送機構5は、搬送ベルト11、搬送モーター12、駆動ローラー13、従動ローラー14、テンションローラー15、及び、圧接ローラー16を備えている。搬送モーター12は、搬送機構5の駆動源であり、駆動ローラー13に動力を伝達する機構である。搬送ベルト11は、無端状のベルトであり、駆動ローラー13及び従動ローラー14の間に張設されている。テンションローラー15は、駆動ローラー13と従動ローラー14との間において搬送ベルト11の内周面に当接し、ばね等の付勢部材の付勢力により搬送ベルト11に張力を付与するローラーである。圧接ローラー16は、搬送ベルト11を挟んで従動ローラー14の直上に配設され、記録紙6を搬送ベルト11側に押圧するローラーである。
搬送ベルト11の外周面には、リニアースケール18が全周に渡って配設されている。このリニアースケール18は、搬送ベルト11の搬送方向に一定間隔(例えば、360dpi)で複数配列されたスリット状の検出用パターンである。このリニアースケール18の検出用パターンは、検出ヘッド19によって光学的に検出され、検出信号がエンコーダー信号として、プリンター1の制御部(図示せず)に出力される。したがって、制御部は、このエンコーダー信号に基づいて、搬送機構5(搬送ベルト11)による記録紙6の搬送量を把握することができる。また、このエンコーダー信号は、単位ヘッド32の圧電素子93(後述)を駆動するための駆動信号の発生タイミングを規定する。
次に記録ヘッドユニット2について、図3~図7を用いて説明する。図3は、記録ヘッドユニット2の分解斜視図である。図4は、記録ヘッド7の斜視図である。図5は、記録ヘッド7の底面図である。図6は、図4におけるA-A断面図である。図7は、図4におけるB-B断面図である。なお、以下においては、記録ヘッドユニット2の各構成部材の積層方向を、適宜上下方向として説明する。
図3に示すように、本実施形態における記録ヘッドユニット2は、インクを各記録ヘッド7に分配する供給部材22、複数(本実施形態では6つ)の記録ヘッド7、及び、各記録ヘッド7が取り付けられるベースプレート23を備えている。供給部材22は、液体供給チューブ8が接続される合成樹脂等から成る部材である。この供給部材22の内部には、一端が液体供給チューブ8と連通し、他端が記録ヘッド7の液体導入口24と連通する液体流路(図示せず)が形成されている。また、本実施形態における供給部材22の内部には、記録ヘッド7のコネクター25と接続される回路基板(図示せず)が配置されている。そして、液体流路及び回路基板は、供給部材22の下面において、それぞれ記録ヘッド7の液体導入口24およびコネクター25と接続されるように構成されている。
ベースプレート23は、例えば、金属から成る硬質な板材である。記録ヘッド7は、このベースプレート23に位置決めした状態で固定されている。本実施形態におけるベースプレート23は、板厚方向に貫通し、各記録ヘッド7の下面を露出させるベース貫通孔26を複数備えている。このベース貫通孔26に、記録ヘッド7の下部を挿入することで、各記録ヘッド7間の相対位置を規定することができる。なお、本実施形態においては、記録ヘッド7とベースプレート23とは、ねじ28により固定されている。具体的には、記録ヘッド7の下部を構成するホルダー27(図4参照)に形成されたフランジ部29が、ねじ28によりベースプレート23のベース貫通孔26の縁に固定されている。また、本実施形態においては、記録ヘッド7が長手方向に3つ並設されて成る記録ヘッド7の列を2列備えている。
本実施形態における記録ヘッド7は、図4~図6に示すように、単位ヘッド32を保持するホルダー27、単位ヘッド32にインクを供給する中間流路部材33、内部に圧力調整バルブ58等が形成されたバルブユニット34、及び、複数のカバー部材(具体的には、第1の外部カバー35、第1の内部カバー36、第2の外部カバー37、第2の内部カバー38)等を備えている。また、図4に示すように、記録ヘッド7の上面には、液体導入口24、大気開放口30、及び、コネクター25が突設されている。液体導入口24、及び、コネクター25は、上記したように供給部材22に接続される一方、大気開放口30は、供給部材22に接続されずに大気に開放されている。本実施形態においては、液体導入口24、大気開放口30、及び、コネクター25は第1の外部カバー35に形成されている。
第1の外部カバー35及び第1の内部カバー36は、図6及び図7に示すように、バルブユニット34の上部を覆う板状の部材である。具体的には、第1の内部カバー36は、バルブユニット34の上面及び上部の側面を覆うカバー部材であり、第1の外部カバー35は、さらにその外側(すなわち、第1の内部カバー36の外側)を覆うカバー部材である。本実施形態における第1の内部カバー36は、バルブユニット34に対して略隙間なく取り付けられている。また、図6に示すように、第1の内部カバー36の上面部における気体経路53(後述)の上端の開口部に対応する位置には、第1のカバー開口39が開口されている。さらに、図7に示すように、第1の内部カバー36の上面部における上部流路60(後述)の上端開口に対応する位置には、第2のカバー開口40が開口されている。
第1の外部カバー35は、第1の内部カバー36との間に空間が形成されるように間隔を空けて配置されている。本実施形態においては、第1の外部カバー35の上面部と第1の内部カバー36の上面部との間に間隔が形成される一方、第1の外部カバー35の側面部と第1の内部カバー36の側面部との間に間隔が略形成されないように取り付けられている。これにより、第1の外部カバー35と第1の内部カバー36との間に、基板配置空間42及び上部空間43が形成される。なお、基板配置空間42と上部空間43とは、第1の外部カバー35の上面部から下方に向けて延在した仕切板44により仕切られている。
基板配置空間42は、第1の外部カバー35の上面から上方に向けて延在されたコネクター25となる部分の内側のコネクター空間46に連通され、第1の中継基板45が配置される空間である。第1の中継基板45は、端子47をコネクター空間46の開口に露出させた状態で、コネクター空間46及び基板配置空間42に収容されている。上部空間43の底面部は、図6に示すように、第1のカバー開口39を介して気体経路53と連通されている。また、上部空間43の上面部は、第1の外部カバー35の上面部に突設された大気開放口30(具体的には、大気開放口30の内部の空間)を介して大気と連通されている。さらに、上部空間43内には、図7に示すように、第1の外部カバー35の液体導入口24に対応する部分(すなわち、液体導入口24の反対側)から下方に向けて突出された上部挿入流路48が配置されている。この上部挿入流路48は、その先端部がバルブユニット34(詳しくは、バルブユニット34の上部流路60)に挿入され、液体導入口24から流入したインクをバルブユニット34の上部流路60に供給する部分である。そして、上部挿入流路48の先端部の外周と上部流路60の内周との間には、シール部材50が配置されている。これにより、上部挿入流路48と上部流路60とが液密に連通される。なお、第1の外部カバー35は、ねじ等により第2の外部カバー37に固定され、第1の内部カバー36は、ねじ等により第2の内部カバー38に固定されている。
第2の外部カバー37及び第2の内部カバー38は、図6及び図7に示すように、バルブユニット34の下部を覆う板状の部材である。第2の外部カバー37は、ホルダー27の上面における外周縁から起立した壁部材であり、接着剤等により当該外周縁に固定されている。本実施形態における第2の内部カバー38は、ホルダー27の上面に対して間隔を空けて取り付けられ、且つバルブユニット34に対して略隙間なく取り付けられている。このため、第2の内部カバー38の下面部とホルダー27の上面との間には、中間流路部材33が配置される下部空間52が形成される。この下部空間52は、例えば、第2の外部カバー37と第2の内部カバー38との間に充填剤等を充填することで、ほぼ密封されている。また、この下部空間52は、図6に示すように、第2の内部カバー38を貫通する第1の気体接続路51(本発明における第1の接続路に相当)と連通され、この第1の気体接続路51を介して、気体経路53(詳しくは、後述する第2の気体接続路54)と接続されている。本実施形態における第1の気体接続路51は、第2の内部カバー38の下面部から上方に向けて延在されている。さらに、図7に示すように、第2の内部カバー38の下面部(換言すると、底面部)における下部挿入流路49(後述)に対応する位置には、当該下部挿入流路49が挿通される第3のカバー開口41が開口されている。
バルブユニット34(本発明における第2の部材に相当)は、第1の内部カバー36と第2の内部カバー38との間に挟持されたユニットである。このバルブユニット34の内部には、下部空間52を大気に開放する気体経路53、及び、インクタンク3から単位ヘッド32に供給するインクの供給圧力を調整する一連の流路(本発明における第2の液体経路に相当)が形成されている。具体的には、気体経路53は、図6に示すように、第1のカバー開口39に対応する位置において上下方向に貫通する状態に形成されている。換言すると、この気体経路53の上端は、第1のカバー開口39に対応する位置(詳しくは、バルブユニット34の上面(すなわち、下部空間52に面するバルブユニット34の下面とは反対側の面)における第1のカバー開口39に対応する位置)に開口し、第1のカバー開口39を介して上部空間43と連通する。なお、この気体経路53の上端の開口部が本発明における開口部に相当する。また、気体経路53の下端部は、第1の気体接続路51が挿入される第2の気体接続路54(本発明における第2の接続路に相当)となっている。第1の気体接続路51と第2の気体接続路54とは、シール部材55(本発明における弾性部材の一種)を介して気密に接続されている。なお、第1の気体接続路51と第2の気体接続路54との接続構造に関し、詳しくは後述する。
また、図7に示すように、バルブユニット34の内部には、フィルター56が配設されたフィルター室57及び圧力調整バルブ58を有する圧力調整部59等を備えている。フィルター室57は、液体導入口24及び上部挿入流路48を介して供給部材22から送られてくるインクが導入される部屋である。なお、フィルター室57と上部挿入流路48とは、上部流路60を介して接続されている。また、フィルター室57と圧力調整部59(詳しくは、バルブ収容室61)との境界部分には、フィルター56が配設されている。このフィルター56により、上流側から流れてきた異物等が下流側に流れることを抑制できる。圧力調整部59は、圧力調整バルブ58が配設されたバルブ収容室61と、当該バルブ収容室61に連通する圧力調整室62と、圧力調整室62の一側の開口部を封止する状態で配設された受圧部材63と、を備えている。圧力調整室62とバルブ収容室61との間を仕切る壁部は、バルブ収容室61と圧力調整室62とを相互に連通させる流入口64が開設されると共に、バルブ収容室61側の面が弁座として機能する。圧力調整バルブ58は、例えばコイルバネ等の付勢部材68により圧力調整室62側へ付勢されるとともに、軸部分が流入口64を介して圧力調整室62に挿入されている。
また、圧力調整室62の開口は、ダイアフラム状の受圧部材63により封止され、大気圧空間69と区画されている。なお、大気圧空間69は、圧力調整室62の外側の空間であり、例えば、第1の外部カバー35や第1の内部カバー36等に形成された経路(気体経路53とは異なる経路)を介して記録ヘッド7の外側の空間、すなわち大気に開放されている。受圧部材63は、圧力調整室62の内圧が所定の圧力より低くなると、圧力調整室62の内側(バルブ収容室61側)へ弾性変形する可撓性のフィルム部材66と、このフィルム部材66の内側に設けられた作動片67とにより構成されている。作動片67は、一端部を支点として、フィルム部材66の変形に伴って回動可能に構成されている。そして、受圧部材63が内側に弾性変形し、この受圧部材63に押圧されて圧力調整バルブ58が付勢部材68の付勢力に抗してフィルター室57側に移動すると、圧力調整バルブ58により流入口64が閉塞された閉状態から、流入口64を通じてバルブ収容室61側から圧力調整室62側へインクの流入が許容される開状態へと変化する。また、圧力調整室62の流入口64よりも下流側の底部には下部流路65が連通されている。この下部流路65の下端は、気体経路53の下端部の開口(すなわち、第2の気体接続路54の開口)とは異なる位置(具体的には、ノズル列方向にずれた位置)に開口され、第1の気体接続路51と第2の気体接続路54との接続箇所とは異なる位置で、下部挿入流路49と接続されている。本実施形態においては、下部流路65の下端部に下部挿入流路49を挿入することで、下部流路65と下部挿入流路49とが接続されている。なお、下部挿入流路49の先端部の外周と下部流路65の内周との間には、シール部材50が配置されている。これにより、下部挿入流路49と下部流路65とが液密に連通される。なお、下部挿入流路49が本発明における第3の接続路に相当し、下部流路65の下端が本発明における第4の接続路に相当する。
中間流路部材33は、ホルダー27の上面に配置され、当該ホルダー27の上面と第2の内部カバー38の下面部との間(すなわち、下部空間52内)に保持された部材である。この中間流路部材33は、バルブユニット34に挿入され、バルブユニット34からのインクが導入される下部挿入流路49と、下部挿入流路49を通じて導入されたインクを各単位ヘッド32に分配する分配流路70とを備えている。下部挿入流路49は、第1の気体接続路51とは異なる位置(具体的には、ノズル列方向にずれた位置)で、中間流路部材33の上面からバルブユニット34側に向けて突出された流路であり、上記したように下部流路65内に挿入されている。分配流路70は、一方の端(上流側)が下部挿入流路49と連通され、他方の端(下流側)がホルダー内流路77に接続される流路である。本実施形態における分配流路70は、単位ヘッド32の数に応じて、4つに分岐されている。
ホルダー27は、記録ヘッド7の下部を構成する合成樹脂等から成る箱体状部材である。このホルダー27の内部には、単位ヘッド32が収容されるヘッド収容空間73が形成されている。本実施形態においては、図5に示すように、1つの記録ヘッド7に4つの単位ヘッド32を備えているため、これに対応して4つのヘッド収容空間73が形成されている。また、ホルダー27の下面には、ヘッド収容空間73の下面側の開口を塞ぐように固定板74が取り付けられている。この固定板74は、ヘッド収容空間73内に単位ヘッド32を収容した状態で、接着剤等を用いてホルダー27の下面及び単位ヘッド32の下面に固定されている。そして、この固定板74により、ヘッド収容空間73が密封されている。なお、固定板74には、各単位ヘッド32のノズル86を露出させる固定板開口75が形成されている。
また、ホルダー27の内部には、図6及び図7に示すように、ヘッド収容空間73からホルダー27の上面に貫通する配線部材配置空間76及びホルダー内流路77がヘッド収容空間73毎に形成されている。配線部材配置空間76は、図6に示すように、ヘッド収容空間73とホルダー27の上方の空間(すなわち、下部空間52)とを接続する空間である。単位ヘッド32から延在した第2の配線部材80は、この配線部材配置空間76を通じて、ホルダー27と中間流路部材33との間に配置された第2の中継基板78に接続されている。ホルダー内流路77は、図7に示すように、ヘッド収容空間73内に収容された単位ヘッド32の液体導入路84(図8参照)と中間流路部材33内の分配流路70とを接続する流路である。すなわち、ホルダー内流路77の下端は、液体導入路84と液密に接続され、ホルダー内流路77の上端は、分配流路70と液密に接続されている。
なお、図6に示すように、上記した第1の中継基板45と第2の中継基板78とは、例えば、FPC(フレキシブルプリント基板)等の第1の配線部材79により接続されている。この第1の配線部材79は、第1の外部カバー35と第1の内部カバー36との隙間、及び、第2の外部カバー37と第2の内部カバー38との隙間を通じて、基板配置空間42から下部空間52まで延在されている。そして、第1の配線部材79の上端は基板配置空間42内において第1の中継基板45と接続され、下端は下部空間52内において第2の中継基板78と接続されている。なお、この第1の配線部材79が配置された隙間のうち、少なくとも第2の外部カバー37と第2の内部カバー38との隙間の一部は、第1の配線部材79を挿通した状態で充填剤等を充填して埋めることができる。
次に、本実施形態における単位ヘッド32について、詳しく説明する。図8は、単位ヘッド32の要部の断面図である。本実施形態における単位ヘッド32は、図8に示すように、ノズルプレート85、流路基板90、圧電素子93(アクチュエーターの一種)、封止板94、及び、コンプライアンス基板98等が積層された状態で、ヘッドケース82に取り付けられている。
流路基板90は、ノズル列方向に沿って長尺なシリコン製の基板(例えば、シリコン単結晶基板)である。この流路基板90には、図8に示すように、流路基板90の長手方向に沿って長尺な連通部88が2つ形成されている。この連通部88は、それぞれ封止板94の貫通部95と連通して共通液室87を構成する。また、流路基板90の2つの連通部88に挟まれた領域には、ノズル列方向に沿って複数の圧力室91が、並設されている。この圧力室91の列は、2つの連通部88に対応して2列に形成されている。各圧力室91は、圧力室91よりも狭い幅に形成された供給路89を介して、連通部88と連通されている。
流路基板90の下面(封止板94とは反対側の面)には、ノズルプレート85が、接着剤等を介して固定されている。このノズルプレート85は、シリコン製の基板(例えば、シリコン単結晶基板)からなり、圧力室91に連通するノズル86が圧力室91毎に複数穿設されている。すなわち、ノズルプレート85には、複数のノズル86がノズルプレート85の長手方向に沿って直線状(換言すると、列状)に開設されている。この並設された複数のノズル86は、一端側のノズル86から他端側のノズル86までドット形成密度に対応したピッチで等間隔に設けられている。本実施形態では、2列に形成された圧力室91の列に対応して、お互いに離間したノズル86の列が2列に形成されている。
流路基板90の上面(ノズルプレート85とは反対側の面)には、振動板92が積層されている。この振動板92は、例えば、流路基板90の上面(すなわち、封止板94側とは反対側の面)に形成された二酸化シリコン(SiO2)からなる弾性膜と、この弾性膜上に形成された二酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜と、から成る。この振動板92によって、圧力室91となるべき空間の上部開口が封止されている。換言すると、振動板92によって、圧力室91の上面が区画されている。この振動板92における圧力室91(詳しくは、圧力室91の上部開口)に対応する部分は、圧電素子93の撓み変形に伴ってノズル86から遠ざかる方向あるいは近接する方向に変位する変位部として機能する。なお、振動板92のうち連通部88に対応する領域は、振動板92が除去された開口となっている。
振動板92の上面における各圧力室91に対応する領域には、圧電素子93がそれぞれ積層されている。本実施形態における圧電素子93は、所謂撓みモードの圧電素子である。この圧電素子93は、各ノズル86に対応してノズル列方向に沿って複数並設されている。各圧電素子93は、例えば、振動板92上から順に、個別電極となる下電極層、圧電体層及び共通電極となる上電極層が順次積層されてなる。なお、駆動回路や配線の都合によって、下電極層を共通電極、上電極層を個別電極にすることもできる。このように構成された圧電素子93は、下電極層と上電極層との間に両電極の電位差に応じた電界が付与されると、ノズル86から遠ざかる方向あるいは近接する方向に撓み変形する。これにより、圧力室91の容積が変化し、当該圧力室91内のインクに圧力変動が生じることになる。そして、この圧力変動を利用することで、単位ヘッド32はノズル86からインクを噴射する。
また、振動板92の上面には、シリコン製の基板(例えば、シリコン単結晶基板)からなる封止板94が接合されている。この封止板94には、共通液室87となる貫通部95、及び、貫通部95に対して隔離された圧電素子列収容空間96等が形成されている。貫通部95は、連通部88に対応する位置において、厚さ方向に貫通した状態に形成されている。本実施形態における貫通部95は、ノズル列方向に沿って長尺に形成されている。なお、貫通部95の上部(換言すると、ヘッドケース82側の部分)における幅(詳しくは、ノズル列方向に直交する方向の寸法)は、貫通部95の下部(換言すると、流路基板90側の部分)における幅よりも広く形成されている。本実施形態における貫通部95の上部の内側(すなわち、ノズル列方向に直交する方向における中央側)の部分は、封止板94が板厚方向に貫通されずに、封止板94の上面から板厚方向の途中まで凹んだ状態に形成されている。そして、この貫通部95の上面から凹んだ部分に後述する液体導入路84が連通されている。また、本実施形態における貫通部95は、2つの連通部88に対応して2つ設けられている。各貫通部95の下端は、それぞれ連通部88と連通して、共通液室87を構成する。
圧電素子列収容空間96は、2列に形成された圧電素子93の列に対応して、2列に形成されている。この圧電素子列収容空間96は、ノズル列方向に沿って長尺に形成されている。また、圧電素子列収容空間96は、封止板94の下面から板厚方向の途中まで、圧電素子93の変位を阻害しない程度の大きさに凹んだ状態に形成されている。さらに、2つの圧電素子列収容空間96の間には、封止板94が板厚方向に除去された接続空間97が形成されている。接続空間97は後述する挿通空間83と連通され、その内部には挿通空間83に挿通された、例えば、FPC(フレキシブルプリント基板)等の第2の配線部材80の端部が配置される。そして、第2の配線部材80の端部は、この接続空間97内において、各圧電素子93から延在されたリード配線の端子(図示せず)と接続されている。なお、圧電素子列収容空間96は、可及的に流路抵抗が高められた図示しない大気開放路を介して、単位ヘッド32の外側の空間、すなわちヘッド収容空間73に開放されている。
封止板94の上面には、コンプライアンス基板98が接合されている。このコンプライアンス基板98は、連通部88の上面を封止して共通液室87を区画する基板であり、可撓性を有する封止膜100と金属等の硬質な部材からなる固定基板99とが積層されて成る。本実施形態におけるコンプライアンス基板98は、封止膜100を下方(すなわち、封止板94側)に配置した状態で、封止板94の上面に接合されている。このコンプライアンス基板98における挿通空間83に対応する位置及び液体導入路84に対応する位置は、厚さ方向に貫通した開口となっている。また、コンプライアンス基板98の共通液室87に対向する領域のうち液体導入口24の周囲以外の領域は、固定基板99が除去されて封止膜100のみとなっている。この封止膜100のみからなる部分は、共通液室87内のインクの圧力変動を吸収するコンプライアンス部として機能する。
コンプライアンス基板98の上面には、ヘッドケース82が接合されている。本実施形態におけるヘッドケース82は、合成樹脂製の箱体状部材である。このヘッドケース82の中央部には、ノズル列方向に沿って長尺な空間である挿通空間83が形成されている。挿通空間83は、第2の配線部材80が挿通される空間であり、ヘッドケース82を板厚方向に貫通した状態に形成されている。すなわち、挿通空間83は、単位ヘッド32の上面に開口し、ヘッド収容空間73及び配線部材配置空間76と連通する。また、ヘッドケース82の内部にはホルダー内流路77と接続される液体導入路84が形成されている。この液体導入路84の下端は、共通液室87(詳しくは、貫通部95)と接続されている。さらに、ヘッドケース82の下面のうち共通液室87に対応する部分には、封止膜100の可撓変形を阻害しない程度の深さのコンプライアンス空間101が下面から凹んだ状態に形成されている。なお、コンプライアンス空間101は、可及的に流路抵抗が高められた図示しない大気開放路を介して、単位ヘッド32の外側の空間、すなわちヘッド収容空間73に開放されている。
そして、上記したように、単位ヘッド32内の空間、すなわち、第2の配線部材80が配置される接続空間97及び挿通空間83、圧電素子列収容空間96、並びに、コンプライアンス空間101は、ヘッド収容空間73に連通されている。また、ヘッド収容空間73は、配線部材配置空間76を介して下部空間52と連通されている。この単位ヘッド32内の空間、ヘッド収容空間73、配線部材配置空間76及び下部空間52から成る一連の空間が本発明における空間に相当する。また、この一連の空間は、第1の気体接続路51と連通する部分を除いて気密に保たれている。さらに、下部空間52は、第1の気体接続路51と第2の気体接続路54との接続により気体経路53と気密に連通する。そして、気体経路53は、上部空間43及び大気開放口30を介して大気と連通する。すなわち、単位ヘッド32内の空間、ヘッド収容空間73、配線部材配置空間76及び下部空間52から成る一連の空間は、大気に開放されている。
一方、インクタンク3からのインクは、液体供給チューブ8、供給部材22内の液体流路、液体導入口24、及び、上部挿入流路48を介して、バルブユニット34に導入される。なお、これらバルブユニット34の外側にある部材に形成された流路のうち何れか1つの流路又はこれらの組み合わせからなる複数の流路が、本発明における外部流路に相当する。バルブユニット34内に導入されたインクは、圧力調整バルブ58が開状態において、上部流路60、フィルター室57、バルブ収容室61、流入口64、圧力調整室62、及び、下部流路65からなるバルブユニット34内の一連の流路を介して中間流路部材33へ導入される。このバルブユニット34内の一連の流路が、本発明における第2の液体経路に相当する。また、中間流路部材33に導入されたインクは、当該中間流路部材33内の下部挿入流路49及び分配流路70、並びに、ホルダー内流路77を介して単位ヘッド32内の流路に供給される。そして、単位ヘッド32内に導入されたインクは、当該単位ヘッド32内の流路、すなわち、液体導入路84、共通液室87、供給路89、及び、圧力室91を介してノズル86に供給される。この単位ヘッド32内の流路、ホルダー内流路77、分配流路70、及び、下部挿入流路49から成るノズル86に至るまでの一連の流路(換言すると、液体の経路)が本発明における第1の液体経路に相当する。また、第2の外部カバー37、第2の内部カバー38、中間流路部材33、ホルダー27、単位ヘッド32、及び、固定板74から成る部材群が本発明における第1の部材に相当する。
ここで、バルブユニット34は、接着剤等を使用せずに、第1の内部カバー36と第2の内部カバー38との間に挟持されている。このため、第1の内部カバー36を第2の内部カバー38から取り外せば、バルブユニット34を第2の内部カバー38から容易に取り外すことができる。そして、再びバルブユニット34を取り付ける際には、下部挿入流路49と下部流路65とが接続され、第1の気体接続路51と第2の気体接続路54とが接続されるように、バルブユニット34を第2の内部カバー38に配置し、第1の内部カバー36を第2の内部カバー38に対して固定すればよい。要するに、バルブユニット34は、第2の内部カバー38に対して着脱可能に取り付けられている。そして、バルブユニット34を第2の内部カバー38に対して取り付けた状態、すなわち第1の内部カバー36と第2の内部カバー38との間に挟持された状態においては、第1の気体接続路51と第2の気体接続路54とが気密に接続される。また、上部挿入流路48と上部流路60とが液密に接続されると共に、下部挿入流路49と下部流路65とが液密に接続される。なお、バルブユニット34の固定方法は、本実施形態で例示したものに限られない。例えば、係止部を係止させたり、ねじを螺合したりして、バルブユニット34を第2の内部カバー38に対して取り付けても良い。要するに、バルブユニット34を第2の内部カバー38に対して着脱可能に取り付けることができれば、どのような固定方法であっても良い。
次に、第1の気体接続路51と第2の気体接続路54との接続箇所について、詳しく説明する。図9は、第2の内部カバー38の第1の気体接続路51とバルブユニット34の第2の気体接続路54との接続箇所を拡大した断面図である。第1の気体接続路51は、上記したように第2の内部カバー38から上方に向けて延在された気体の経路(通路)であり、第2の内部カバー38から突出した突出部102の内部に形成されている。具体的には、突出部102は円筒形状に形成され、第1の気体接続路51はこの突出部102において第2の内部カバー38を貫通するように形成されている。すなわち、第1の気体接続路51の一端は突出部102の先端に開口され、他端は第2の内部カバー38の下面(下部空間52側の面)に開口されている。また、第1の気体接続路51の内部には、当該第1の気体接続路51を区画する内壁面から内側に向けて突出した庇部103が形成されている。この庇部103は、第1の気体接続路51の上下方向(すなわち、第1の気体接続路51の延在方向)における途中において、当該第1の気体接続路51の流路面積(断面積)を絞る部分である。この庇部103により、第1の気体接続路51が上部接続路104と下部接続路105との2つの空間に分割されている。そして、この上部接続路104と下部接続路105とは、庇部103の隙間に形成された連通開口106を介して接続されている。
連通開口106は、庇部103を上下方向に貫通する、上部接続路104及び下部接続路105よりも小径な空間である。本実施形態における連通開口106は、平面視において、円形状且つ上部接続路104及び下部接続路105と同心円状に形成されている。この連通開口106は、当該連通開口106内にインク等の液体が流入した場合において、当該液体がメニスカスを形成する程度の直径に形成されることが望ましく、例えば、0.2mm以下の直径に形成されている。なお、庇部103に形成される連通開口106は1つに限られず、2つ以上形成されても良い。すなわち、第1の気体接続路51の流路面積(断面積)を絞ることができれば、庇部103及び連通開口106の形状等は、どのような形状であっても良い。
第2の気体接続路54は、バルブユニット34の気体経路53の下端部を成す部分である。この第2の気体接続路54の内径は、突出部102が挿入可能なように突出部102の外形よりも大きく(すなわち、大径に)形成されている。そして、突出部102を第2の気体接続路54の内部に挿入することで、第1の気体接続路51と第2の気体接続路54とが接続される。本実施形態における第2の気体接続路54の内径は、気体径路53のその他の部分の内径よりも大きく形成されている。なお、第2の気体接続路54の内径と気体径路53のその他の部分の内径とを同じ大きさに形成することもできる。また、突出部102と第2の気体接続路54の内壁面との間には、環状のシール部材55が配置されている。本実施形態におけるシール部材55は、第2の気体接続路54の内壁面に取り付けられている。具体的には、シール部材55の外周部分に下方に向けて延在された取付片107が形成され、この取付片107が第2の気体接続路54の内周面に形成された取付空間108に嵌め込まれることで、シール部材55が第2の気体接続路54の内周面に取り付けられている。なお、シール部材55に突出部102が挿入されていない状態で、このシール部材55の内径は、突出部102の外径よりも小さく形成されている。このため、シール部材55に突出部102が挿入されると、当該シール部材55が変形し、当該シール部材55を介して第1の気体接続路51と第2の気体接続路54とが気密に連通する。
このように、本発明の記録ヘッド7は、第1の気体接続路51と第2の気体接続路54とが気密に接続されたので、この接続箇所を通じて空間に液体が進入することを抑制できる。また、バルブユニット34の気体経路53を介して、下部空間52が大気に開放されるため、上部空間43から下部空間52までの距離が長くなり、ひいては大気から下部空間52までの距離が長くなる。これにより、たとえ大気開放口30を介して上部空間43に進入したインクや、結露等により垂れた水分や、バルブユニット34の洗浄時において残った洗浄液等の液体が、気体経路53の上端の開口部から進入したとしても、下部空間52以下の空間に液体が到達することを抑制できる。その結果、下部空間52内に配置された第2の中継基板78や圧電素子列収容空間96内の圧電素子93等が破壊や汚損されることを抑制できる。さらに、本実施形態においては、第1の気体接続路51の内部に庇部103が形成されたので、上記したような液体が気体経路53を伝って第1の気体接続路51の内部に進入したとしても、庇部103により下部空間52に液体が到達することを一層抑制できる。特に、庇部103の隙間に形成された連通開口106の径を、液体がメニスカスを形成する程度の大きさに設定すれば、下部空間52への液体の進入を更に抑制できる。そして、バルブユニット34が第2の内部カバー38に対して着脱可能に取り付けられたので、例えば、修理等においてバルブユニット34を交換する際に、当該バルブユニット34を交換し易くなる。
また、第1の気体接続路51は突出部102に形成され、当該突出部102が第2の気体接続路54の内部に挿入されたので、第1の気体接続路51と第2の気体接続路54との接続が容易になる。これに加えて、第2の内部カバー38に対するバルブユニット34の位置決めが容易になる。さらに、第1の気体接続路51と第2の気体接続路54とは、シール部材55を介して接続されたので、第1の気体接続路51と第2の気体接続路54との接続箇所における気密性を高めることができる。特に、シール部材55は、第2の気体接続路54の内壁面に取り付けられたので、突出部102の周囲にシール部材55を配置する場合と比べて、突出部102を第2の気体接続路54に挿入し易くなる。すなわち、突出部の周囲にシール部材を配置した場合、比較的面積の大きいシール部材の外周面と第2の気体接続路の内壁面とが擦れるため、摩擦力(抵抗力)が大きくなる。一方、本実施形態のように第2の気体接続路54の内壁面にシール部材55を配置した場合、比較的面積の小さいシール部材55の内周面と突出部102の外周面とが擦れるため、摩擦力が小さくなる。要するに、突出部102を第2の気体接続路54の内部に挿入する際にシール部材55から受ける摩擦力を小さくすることができる。これにより、第1の気体接続路51と第2の気体接続路54との接続が一層容易になる。
さらに、第1の気体接続路51と第2の気体接続路54との接続箇所とは異なる位置で、下部流路65の下端と下部挿入流路49とが接続されたので、第2の内部カバー38や中間流路部材33等から成る記録ヘッド7の下方の部分(すなわち、第1の部材)とバルブユニット34(すなわち、第2の部材)との接続箇所が少なくとも2つ以上になるため、第2の内部カバー38や中間流路部材33等から成る部材とバルブユニット34との位置ずれが起き難くなる。また、気体経路53の上端は、下部空間52側から外れた位置(本実施形態では、バルブユニット34の上面)に開口するため、当該開口部を介して後述する気密性の検査がし易くなる。具体的には、開口部に連通する大気開放口30を設けることができるため、この大気開放口30に後述する気密検査装置を接続し易くなる。さらに、下部空間52はバルブユニット34の気体経路53を介して任意の位置に大気開放させることができるため、設計の自由度が増す。
なお、上部挿入流路48と上部流路60との接続箇所、及び、下部挿入流路49と下部流路65との接続箇所においても、図9に示すような第1の気体接続路51と第2の気体接続路54との接続箇所と同様の構成を採用できる。すなわち、上部流路60の内壁面に環状のシール部材50を取り付け、第1の外部カバー35から突出した上部挿入流路48を当該シール部材50に挿入して、上部挿入流路48と上部流路60とを接続する構成を採用できる。また、下部流路65の内壁面に環状のシール部材50を取り付け、中間流路部材33から突出した下部挿入流路49を当該シール部材50に挿入して接続する構成を採用できる。なお、この場合において、第1の気体接続路51とは異なり、上部挿入流路48及び下部挿入流路49の内部には、庇部103が形成されない。
次に、上記した記録ヘッド7を製造する際に行われる記録ヘッド7の検査方法について説明する。図10は、記録ヘッド7の検査方法の流れを説明するフローチャートである。まず、第2の外部カバー37、第2の内部カバー38、中間流路部材33、ホルダー27、単位ヘッド32、及び、固定板74等を組み立てて、記録ヘッド7の下方の部分を作製する。次に、接続工程において、作成した記録ヘッド7の下方の部分にバルブユニット34を取り付ける(ステップS1)。すなわち、突出部102を第2の気体接続路54に挿入し、第1の気体接続路51と第2の気体接続路54とを接続すると共に、下部流路65と下部挿入流路49とを接続した状態で、第1の外部カバー35及び第1の内部カバー36を第2の外部カバー37及び第2の内部カバー38に固定することで、記録ヘッド7の下方の部分に対してバルブユニット34を固定する。次に、この状態で、洗浄工程において、大気開放口30から洗浄液を導入させずに、すなわち、気体経路53の上端の開口部から洗浄液を導入させずに、液体導入口24に洗浄液を導入する(ステップS2)。例えば、液体導入口24に洗浄装置を接続し、洗浄装置から記録ヘッド7内に洗浄液を導入する。これにより、液体導入口24からノズル86に至るまでの記録ヘッド7内の液体流路に洗浄液が通液され、当該液体流路が洗浄される。そして、液体流路に洗浄液を所定時間通液して液体流路を洗浄したならば、通液を終了し、記録ヘッド7を乾燥させる。最後に、第1の気体接続路51と第2の気体接続路54とを接続した状態で、気密検査工程において、大気開放口30から気体経路53の上端の開口部を通じて流体(例えば、空気)を送ることで気密性の検査を行う(ステップS3)。例えば、大気開放口30に空気を送るポンプ等を備えた気密検査装置を接続し、気密検査装置から記録ヘッド7内に空気を導入する。そして、記録ヘッド7の外側に空気が漏れていないか検査を行った後、検査を終了する。
このように、大気開放口30から空気等の流体を導入して気密性の検査が行えるため、気密性の検査が容易になる。また、洗浄工程において、大気開放口30から洗浄液を導入させないため、下部空間52以下の空間に液体が到達することを抑制できる。その結果、下部空間52内に配置された第2の中継基板78や圧電素子列収容空間96内の圧電素子93等が破壊や汚損されることを一層抑制できる。
ところで、上記した第1の実施形態においては、第1の気体接続路51を第2の気体接続路54に挿入して、第1の気体接続路51と第2の気体接続路54とが接続されたが、これには限られない。例えば、第2の気体接続路を第1の気体接続路に挿入して、第1の気体接続路と第2の気体接続路とが接続される構成を採用してもよい。すなわち、バルブユニットの下方に突出部を設け、この突出部に第2の気体接続路を形成し、第2の内部カバーにこの突出部が挿入される第1の気体接続路を設けても良い。このように構成した場合、シール部材は、突出部が挿入される第1の気体接続路の内壁面に取り付けられる。なお、この場合において、突出部が第2の内部カバーを貫通して、先端部が下部空間に挿入されても良い。要するに、シール部材を介して第1の気体接続路と第2の気体接続路とが気密に接続されていれば、第2の気体接続路と下部空間とが直接連通されていても良い。
また、上記した第1の実施形態においては、突出部102が円筒形状に形成されたが、これには限られない。図11に示す第2の実施形態における突出部102及び図12に示す第3の実施形態における突出部102は、先端に向けて先細る針状に形成されている。
具体的には、第2の実施形態における突出部102は、図11に示すように、第2の気体接続路54に挿入された状態で、シール部材55よりも上側(奥側)の先端部分109が先細るように(換言すると縮径するように)形成されている。また、本実施形態における第1の気体接続路51は、庇部103よりも下部の下部接続路105、庇部103よりも上部の上部接続路104、及び、先端部分109を貫通する先端接続路110とから成る。先端接続路110は、下部接続路105及び上部接続路104よりも小径な部分であり、上下方向(すなわち、突出部102の突出方向)に沿って延在されている。そして、この先端接続路110は、先端部分109の先端に開口されている。このように、突出部102を先細り形状に形成したので、第1の気体接続路51をシール部材55に挿入し易くなる。その結果、第1の気体接続路51と第2の気体接続路54との接続が更に容易になる。また、突出部102の先端に第1の気体接続路51を開口させたので、液体が第1の気体接続路51の内部に進入し難くなる。すなわち、図11に示す破線のように、液体が先端部分109の傾斜に沿って流れるため、先端接続路110に進入し難くなる。なお、第2の気体接続路54の上端側(すなわち、奥側)は、突出部102の形状に応じて縮径している。また、その他の構成は、上記した第1の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
また、第3の実施形態における第1の気体接続路51は、図12に示すように、突出部102の先端部分109において、突出部102の突出方向に対して交差する方向に開口されている。具体的には、本実施形態における第1の気体接続路51は、庇部103よりも下部の下部接続路105、庇部103よりも上部の上部接続路104、及び、先端部分109の斜面側に開口する先端接続路110とから成る。すなわち、本実施形態における先端接続路110は、上部接続路104の上端から突出部102の先端に向けて延在され、途中で屈曲されて、先端部分109の斜面に開口する。このように、先端接続路110を先端部の斜面側に開口することで、液体が第1の気体接続路51の内部に一層進入し難くなる。なお、先端接続路110は、先端部分109の側方に開口すれば、どのような構成であっても良い。例えば、先端接続路は、上部接続路の上端から先端部分の斜面に向けて斜めに延在するように構成されてもよい。また、その他の構成は、上記した第2の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
ところで、上記した各実施形態においては、単位ヘッド32内の各空間(すなわち、第2の配線部材80が配置される接続空間97及び挿通空間83、圧電素子列収容空間96、並びに、コンプライアンス空間101)は、1つの気体経路53を介して大気に開放されたがこれには限られない。例えば、各空間に対応するように下部空間を分割し、各空間と各下部空間とをそれぞれ気密に連通すると共に、各下部空間に連通する気体経路をそれぞれ設けても良い。また、一連の気体経路のうちの一部を可撓部材で区画した構成を採用することもできる。例えば、図13~図16に例示する第4の実施形態においては、可撓性を有する可撓部材111により受圧部材63を押圧できるように構成されている。この点に関し、以下で詳しく説明する。なお、図13は、第4の実施形態における記録ヘッド7の斜視図である。図14は図13におけるA-A断面図、図15はB-B断面図、図16はC-C断面図である。
図13に示すように、本実施形態における記録ヘッド7の上面には、液体導入口24、大気開放口30、コネクター25の他に、接続口113が突設されている。この接続口113は、供給部材22に対して接続され、図示しない供給部材22内の気体経路53を介して、図示しない加圧機構と連通されている。図15に示すように、第1の外部カバー35の接続口113とは反対側には、第1の外部カバー35から下方に向けて突出した上部気体接続路114が形成されている。この上部気体接続路114は、接続口113と連通する気体の経路である。また、上部気体接続路114の先端は、第1の内部カバー36の上面部に形成された第4のカバー開口115を介して、バルブユニット34に挿入されている。そして、上部気体接続路114は、バルブユニット34の内部に形成された圧力調整経路116と気密に接続されている。なお、圧力調整経路116と上部気体接続路114との接続箇所は、図9に示す第1の気体接続路51と第2の気体接続路54との接続箇所と上下方向を反転して略同じ構成であるため、説明を省略する。
圧力調整経路116は、バルブユニット34の上面から下面側の途中まで上下方向に延在された垂直経路117、及び、この垂直経路117の一部と連通し、垂直経路117の延在方向と交差する方向に延在された水平経路118を備えている。そして、水平経路118の垂直経路117とは反対側の端部は、大気圧空間69を介して受圧部材63と対向する押圧空間119に接続されている。この押圧空間119は、図16に示すように、大気圧空間69側の開口が、例えば合成樹脂製の薄いフィルムからなる可撓部材111で封止された空間である。すなわち、可撓部材111は、押圧空間119の内壁面に配置され、当該押圧空間119の内壁面を構成するフィルムである。そして、この可撓部材111により押圧空間119と、この外側の大気圧空間69とが区画されている。なお、大気圧空間69は図示しない気体の経路を介して大気に開放されている。また、図14に示すように、大気開放口30から単位ヘッド32内の空間に至る気体の経路は、上記した第1の実施形態とほぼ同じ構成であるため、説明を省略する。さらに、図16に示すように、液体導入口24から単位ヘッド32内の流路を介してノズル86に至る液体流路も、上記した第1の実施形態とほぼ同じ構成であるため、説明を省略する。
このように、本実施形態においては、押圧空間119と大気圧空間69とを可撓部材111で区画したので、加圧機構を駆動して、接続口113、上部挿入流路48、圧力調整経路116、及び、押圧空間119に気体(例えば、空気)を送ることで、可撓部材111を外側(すなわち、受圧部材63側)に変形させることができる。そして、この可撓部材111の変形を利用して、大気圧空間69に配置された受圧部材63を押圧することができる。その結果、受圧部材63が内側に変形し、圧力調整バルブ58を開状態へと変化させることができる。すなわち、圧力調整バルブ58を強制的に開状態へと変化させて、インクタンク3からのインクを単位ヘッド32側に送ることが可能となる。
なお、本実施形態において、接続口113から押圧空間119に至る気体の経路に着目すれば、バルブユニット34が本発明における第1の部材に相当し、第1の外部カバー35が本発明における第2の部材に相当する。この場合、上部気体接続路114が挿入される部分以外の圧力調整経路116、及び、押圧空間119が本発明における空間に相当し、圧力調整経路116の上部気体接続路114が接続される部分が本発明における第1の接続路に相当する。また、バルブユニット34内の一連の流路が、本発明における第1の液体経路に相当する。さらに、上部気体接続路114が本発明における第2の接続路に相当し、上部挿入流路48が本発明における第2の液体経路に相当する。そして、接続口113の上端の開口部が本発明における開口部に相当し、上部気体接続路114から接続口113の上端の開口部に至る一連の経路が本発明における気体経路に相当する。一方、大気開放口30から単位ヘッド32内の空間に至る気体の経路に着目すれば、上記した各実施形態と同様に、第2の外部カバー37、第2の内部カバー38、中間流路部材33、ホルダー27、単位ヘッド32、及び、固定板74が本発明における第1の部材に相当し、バルブユニット34が本発明における第2の部材に相当する。
また、上記した各実施形態においては、気体経路53の上端が第1のカバー開口39、上部空間43を介して大気開放口30と接続されたが、これには限られない。上部挿入流路48と上部流路60との接続箇所と同様の構成を採用することもできる。例えば、図17に示す第5の実施形態においては、気体経路53が上部空間43を介さずに大気開放口30と接続されている。なお、図17は、第5の実施形態における記録ヘッド7の断面図であり、図6に示す第1の実施形態における記録ヘッド7のA-A断面図、又は、図14に示す第4の実施形態における記録ヘッド7のA-A断面図に相当する図である。
より詳しく説明すると、図17に示すように、本実施形態における気体経路53の上部は、第2の上部気体接続路121が挿入される第1の上部気体接続路120となっている。この第1の上部気体接続路120の内部には、シール部材55が配置されている。また、本実施形態における第1の外部カバー35には、大気開放口30に対応する部分(すなわち、大気開放口30の反対側)から下方に向けて突出された第2の上部気体接続路121が形成されている。この第2の上部気体接続路121の先端部は、上部空間43よりも下方まで延在されて、バルブユニット34の気体経路53(詳しくは、第1の上部気体接続路120)に挿入されている。そして、第1の上部気体接続路120と第2の上部気体接続路121とは、シール部材55を介して気密に接続されている。このように、気体経路53が、上部空間43を介さずに第1の外部カバー35の気体の経路、すなわち、第2の上部気体接続路121及び大気開放口30を介して大気に開放されたので、上部空間43を密封しなくても、より正確な気密検査を行うことができる。これにより、第1の外部カバー35と第1の内部カバー36との間で気密性を確保する必要が無くなり、記録ヘッド7の組み立てが容易になる。なお、第1の上部気体接続路120と第2の上部気体接続路121との接続箇所において、図9~図12に示す第1の気体接続路51と第2の気体接続路54との接続箇所の何れかの構成、又は、これを上下方向に反転した構成を採用することができる。また、その他の構成は、上記した第1の実施形態又は第4の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
なお、上記で例示したバルブユニット34は単一の部材で構成されたが、これには限られない。バルブユニット34は、複数の部材で構成されても良い。例えば、液体の経路や気体の経路毎に部材が分割されていても良い。すなわち、本発明における第1の部材や第2の部材は、単一の部材で構成される場合に限られず、複数の部材で構成されていてもよい。また、上記した第1~第4の実施形態では、本発明における空間の一部として、配線部材、圧電素子等の電子部品が収容される空間(すなわち、接続空間97、挿通空間83、及び、圧電素子列収容空間96等)、コンプライアンス部として機能する部分に形成された薄い膜で区切られた空間(すなわち、コンプライアンス空間101)、又は、弁の開閉に用いられる空間(すなわち、押圧空間119)等を例示したが、これには限られない。例えば、液体流路内のインクを脱泡するために、気体透過性を有する部材を介して当該液体流路と隔てられた空間であって、ポンプ等により減圧される空間にも本発明を適用できる。
ところで、上記した各実施形態では、圧力室91内のインクに圧力変動を生じさせる駆動素子として、所謂撓み振動型の圧電素子93を例示したが、これには限られない。例えば、所謂縦振動型の圧電素子や、発熱素子、静電気力を利用して圧力室の容積を変動させる静電アクチュエーター等の各種アクチュエーターを採用することができる。また、上記した各実施形態では、液体噴射ヘッドとして、複数の記録ヘッド7が並べられた記録ヘッドユニット2(所謂ラインヘッド)を例示したが、これには限られない。記録紙等の記録媒体の搬送方向と直交する方向に走査(往復移動)しつつインクの噴射を行う液体噴射ヘッド(所謂シリアルヘッド)にも本発明を適用できる。
そして、以上においては、液体噴射ヘッドとして、インクを噴射する記録ヘッドユニット2を例に挙げて説明したが、本発明は、他の液体噴射ヘッドにも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも本発明を適用することができる。ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドでは液体の一種としてR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液体の一種として液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは液体の一種として生体有機物の溶液を噴射する。