JP7051657B2 - 列車模型走行装置 - Google Patents

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Description

本発明は、列車の模型を走行させる列車模型走行装置に関する。
高速走行する列車は、大気をかき分けて進むため、走行時の空力特性によって様々な現象を引き起こす。例えば、音、振動、走行経路に沿って存在する物質の飛散、などはその代表と言える。そして、列車運行事業者や、列車の車両メーカは、それらの現象を解析し、不都合な現象を抑制するために様々な研究開発を行うが、その過程で重要なのは研究開発の効果検証である。
例えば、走行経路に沿って存在する物質の飛散に起因する不具合の例として、車両床下部への着雪が挙げられる。冬場の積雪地帯を列車が高速走行(概ね100km/h以上)すると、線路上の雪が舞い上がり、車両床下部に付着する現象が見られる。車両床下部に付着する雪は、寒冷地を走行している間、付着量が増えていき、やがて大きな塊となる。そうしてできた雪氷の塊は、列車走行による振動や風圧に耐えきれなくなったり、温暖地に移動してからの融解によって地上へ落下する。そして、雪氷それ自身が砕けて跳ね上がったり、更には落下した雪氷がバラストを跳ね上げ、自車両やすれ違い車両を損傷させたり、敷地内外の地上構造物に被害をもたらす事象が起こり得る。
因みに、車両床下部への着雪の発生過程は、下記のように分けられる。
過程イ:積雪のある線路上を列車が高速走行する。
過程ロ:列車通過時の地上風(列車風)によって、積雪上の雪粒子が舞い上がる。
過程ハ:列車通過時の気圧の急変動にともなって、積雪上の雪粒子が舞い上がる。
過程ニ:車輪の回転によって、レール周囲の積雪が蹴り上げられる。
過程ホ:舞い上がった雪(氷・水)粒子が車体表面の凹凸部や台車内部へ侵入し、着雪する。
こうした車両床下部への着雪の対策としては、従来、線路上の除雪や車両融雪作業といった人的作業のほか、車両床下の平滑化(ボディマウント)や車両融雪ヒータの設置といった着雪自体を防止する構造的・機械的な対策が行われている。更に、空力的な着雪対策として、台車部に侵入する雪粒子の量を低下させる目的で、台車の側面または下面に、流れの障壁となるダミー部材(デフレクタ)を設けることが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
特許第4614745号公報
車両床下部への着雪対策の効果検証としては、次の4つの手法が知られている。
検証手法A:風洞実験。
検証手法B:実雪風洞実験、または粉体風洞実験。
検証手法C:数値流体解析。
検証手法D:実車試験。
そして、これらの検証手法は、それぞれ次に述べるような利点・欠点がある。
検証手法Aは、車両周りの流れを詳細に観測できる一方、雪のような空気よりも慣性が大きい粒子の挙動やその付着状況は調べることができない。また、風洞内に模型を固定し、相対風速を与えるため、列車通過時の気圧の変化や車輪回転は再現できない。さらに、車両床下の流れを再現するためのムービングベルトは、ベルトを高速回転する機構上、ベルト表面に大きな凹凸を設けることはできないため、軌道面の凹凸と列車の相対運動による車両床下流れは再現することができない。
検証手法Bは、実際の雪や粉体を撒くことができる特殊な風洞設備を用いることで、粒子の流れや付着の現象を観測できるが、列車通過時の気圧の変化や車輪回転は再現できない。また、特殊な設備となるため、模型スケールの制約が大きいほか、車両床下における列車と地面の相対運動を再現できるムービングベルトを組み込むことが困難である。
検証手法Cは、流れと着雪の関係性を微細に把握することができるが、車両の床下や台車全体を対象にすると計算量が相当に大規模なものとなる上、現在の技術レベルでは複雑な流れ場における粒子の動きや付着(着雪)などの再現性は必ずしも高くない。
検証手法Dは、実現象の効果検証を行うことができるが、観測は気象条件に左右されるほか、実車を用いることから観測できる期間や測定項目などの制約条件が多く、定量的な評価が難しい問題がある。
車両床下部への着雪対策を例に挙げて各検証手法に係る問題を説明したが、着雪のような走行経路に沿って存在する物質の飛散に限らず、音や振動など、列車の高速走行に伴う不都合な現象への対策の効果検証に対しては、これらの各検証手法は多かれ少なかれ同じような問題があると言える。
本発明は、列車の高速走行に伴い引き起こされる不都合な現象の対策の効果検証に適した新しい手法を提供するために考案されたものである。
上述した課題を解決するための第1の発明は、列車模型と、前記列車模型を走行させる直線状に敷設された線路と、前記列車模型に一端が接続された第1索状体と、前記列車模型に一端が接続された第2索状体と、前記第1索状体を巻き取るための第1ドラムと前記第1ドラムを回転させる第1モータとを有し、前記線路の走行終点側に設置された第1巻取装置と、前記第2索状体を巻き出すための第2ドラムと前記第2ドラムの回転を制動させる第2ブレーキとを有し、前記線路の走行始点側に設置された第2巻取装置と、前記第1モータの速度を制御するとともに前記第2ブレーキの制動力を制御することで、前記第1索状体および前記第2索状体に張力を付与しつつ前記列車模型を走行させる制御を行う制御装置と、を備えた列車模型走行装置である。
第1の発明によれば、列車の高速走行に伴い引き起こされる不都合な現象の対策の効果検証に適した新しい手法を提供し得る。
具体的には、回転可能な車輪を有する模型を用いることで、列車通過時の車体周辺等の気圧の変化のみならず車輪回転に伴う気流や気圧の変化を再現できる。また、線路を列車模型が走行するため、実際と相似な凹凸のある軌道面(線路上面)と車両床下の相対運動を再現できる。さらに、線路は直線状に敷設されており、且つ、列車模型を第1索状体で牽引しつつ第2索状体で逆方向に引っ張りながら走らせることができるので、列車模型を、実車両における高速走行に相当する速度で安定的に走行させることができる。しかも、従来の風洞実験では風洞を設ける必要性から模型スケールの制約があったが、本発明では装置全体(特に走行経路全体)を開放系で構成することができ、その開放系で列車模型を走行させることができるので、模型スケールの制約もない。よって、ムービングベルトを用いる風洞実験ではできなかった高速走行に相当する車両床下の流れも再現可能であり、従来よりも精度の高い効果検証が可能になる。
第2の発明は、前記列車模型が、実際の鉄道車両の縮尺模型である複数の鉄道車両模型が連結されて構成されており、前記第1索状体は、前記列車模型の先頭の鉄道車両模型に一端が接続され、前記第2索状体は、前記列車模型の最後尾の鉄道車両模型に一端が接続され、前記列車模型を走行させることで、前記実際の鉄道車両が複数連結されて編成される列車の高速走行を模擬する第1の発明の列車模型走行装置である。
第2の発明によれば、複数車両で編成した列車の高速走行に伴い引き起こされる不都合な現象の対策の効果検証に適した新しい手法を提供することが可能になる。例えば、車両床下部への着雪の発生においては、列車通過時の列車風や気圧の急変動、車輪の回転による積雪上の雪粒子の舞い上がりが重要であるが、それらの影響は、当然、複数車両で編成しているか否かで大きく変わる。編成する車両数が多い程、そして後方になればなる程に雪粒子の舞い上がりの影響が複雑且つ大きくなることは、積雪した線路を走行する複数編成の列車がたなびかせる雪煙を思い浮かべると理解し易い。本発明によれば、より実際の状況に近い複数編成による列車模型を走行させることができるので、従来よりも効果検証の精度を高めることができる。
第3の発明は、前記線路が、100m以上の長さである、第1又は第2の発明の列車模型走行装置である。
第3の発明によれば、風洞実験等では実現できない長距離の高速走行に伴い引き起こされる不都合な現象の対策の効果検証を、精度良く実施できる。
第4の発明は、前記第2ブレーキが、制動力が異なるブレーキ動作が可能であり、前記制御装置は、前記第1モータの最大トルクよりも弱い弱ブレーキを前記第2ブレーキに作動させた後に前記第1モータの回転を開始させることで前記列車模型の走行を開始させる、第1~第3の何れかの発明の列車模型走行装置である。
第4の発明によれば、列車模型に適当な張力を掛けて走行させることができる。
第5の発明は、前記制御装置が、前記弱ブレーキよりも制動力の強い強ブレーキを前記第2ブレーキに作動させるとともに前記第1モータの回転速度を減速させることで前記列車模型を減速させる、第4の発明の列車模型走行装置である。
第5の発明によれば、列車模型を走行方向の反対方向へ強く引っ張りながら、列車模型の牽引を弱めることができるので、高速走行に相当する速い速度で走行する列車模型を、姿勢のみだれを抑制させながら安定的に制動できる。これにより、例えば、減速中の列車模型が、その慣性により前方につんのめるようになって脱線するような事態を防ぐことができる。
第6の発明は、前記第1巻取装置が、前記第1モータの回転を制動する第1ブレーキを有し、前記制御装置は、前記減速により前記列車模型が停止した場合に、前記第1ブレーキを作動させた後に、前記第2ブレーキの作動を解除する制御を行う、第5の発明の列車模型走行装置である。
第6の発明によれば、第1モータの回転をロックさせた後に、列車模型を移動方向と反対側に強く引っ張っていた第2ブレーキの作動を解除するので、列車模型の走行停止時に装置全体を停止する際の安全性を高めることができる。例えば、列車模型が停止した直後に第2索状体に掛かった張力により、停車したはずの列車模型が反対方向に走り出してしまうといった事態を防ぐことができる。
第7の発明は、前記第2ブレーキが、連続スリップ運転が可能、且つ制動力の電気的な制御が可能な電磁ブレーキである、第1~第6の何れかの発明の列車模型走行装置である。
第7の発明によれば、長時間に亘る安定した制動が可能になり、長距離の走行や比較的短時間での繰り返しの走行に好適である。また、列車模型の走行条件に応じて制動力を電気的に制御することが可能になり、列車模型走行中の第1索状体および第2索状体の張力を一定に保つことができる。
第8の発明は、前記第1巻取装置が、前記第1索状体の前記第1ドラムへの巻取位置を調整して乱巻きを防止するシフターを有し、前記制御装置は、前記第1モータの回転と前記シフターの動作とを連動制御する、第1~第7の何れかの発明の列車模型走行装置である。
第8の発明によれば、第1索状体の第1ドラムへの巻取位置を調整して乱巻きを防止できる。
第9の発明は、前記線路には、雪を模擬した粉体が散布された散布区間が設けられている、第1~第8の何れかの発明の列車模型走行装置である。
第9の発明によれば、冬場の積雪地帯を列車が高速走行して車両床下部へ付着する雪氷の効果検証が可能になる。また、走行毎の準備にて散布を再現さえすれば、実走による検証手法のように気象条件や積雪条件等による制約条件は受けないので、定量的な評価が可能になる。
第10の発明は、前記線路には、前記散布区間の前後に前記列車模型が通過可能に覆われた被覆区間が設けられている、第9の発明の列車模型走行装置である。
第10の発明によれば、走行前に整えた散布区間の粉体が自然風や日射により変化することを抑制できるので、定量的な評価が可能になる。また、列車模型が散布区間を通過するのに伴う外部への飛散を抑制することができるので、走行後の後始末や、散布区間の再整備が容易になる。
列車模型走行装置の構成例を示す図。 列車模型の構成例を示す側面図。 鉄道車両模型の構成例を示す下方斜め下から見た図。 第1巻取装置の構成例を示す上面図。 第1巻取装置の構成例を示す側面。 第1シフターの構成例を示す正面図。 第2巻取装置の構成例を示す上面図。 第2巻取装置の構成例を示す側面図。 列車模型走行装置の機能構成例を示す機能ブロック図。 制御装置における制御の流れを説明するためのフローチャート。 シーケンス走行処理により実現されるシーケンス走行のタイムチャート。 列車模型走行装置で列車模型を走行させた後の台車部の走行方向前側を撮影した画像。 列車模型走行装置で列車模型を走行させた後の台車部の走行方向後側を撮影した画像。
以下、本発明を適用した実施形態の例を説明するが、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限られないことは勿論である。
図1は、本発明が適用された列車模型走行装置10の構成例を示す図である。
列車模型走行装置10は、高速走行時の車両床下部への着雪対策の効果を検証するための試験に用いることを前提に構成された装置であって、列車模型に、雪を模擬した粉体が散布された散布区間を走行させる全長が100mを超える装置である。
具体的には、列車模型走行装置10は、列車模型20と、列車模型20を走行させる直線状に敷設された線路30と、列車模型20に一端が接続された第1索状体41と、列車模型20に一端が接続された第2索状体42と、第1索状体41のシーブ43と、第2索状体42のシーブ44と、第1索状体41を巻き取るための第1巻取装置50と、第2索状体42を巻き出すための第2巻取装置60と、第1巻取装置50及び第2巻取装置60の動作を電子・電気制御する制御装置70と走行始点配車検知センサ90と、減速地点到達検知センサ91と、を備える。
図2は、列車模型20の構成例を示す側面図である。列車模型20は、実際の鉄道車両の縮尺模型であって、複数の鉄道車両模型21(21a,21b,…)が連結されて構成されている。
なお、本実施形態の列車模型20では、実際の鉄道車両の下半分に相当する部分模型としているが、実際の鉄道車両全体を縮尺した全体模型としてもよい。そして、列車模型20を構成する鉄道車両模型21の連結数は適宜設定可能であるが、車両床下部への着雪対策の効果検証を目的とした試験に用いる場合には、前方車両によって巻き上げられた雪が後方車両に付着する着雪現象の過程を考慮すると、3両以上連結するのが好適である。
図3は、鉄道車両模型21の構成例を示す下方斜め下から見た図であって、先頭の鉄道車両模型21aの例を示している。鉄道車両模型21aの底面側を上方に向けた(上下逆さにした)図である。鉄道車両模型21は、アルミニウム合金製等で作られた模型であって、雪を模した粉体(詳細後述)の付着を視認し易いように、粉体と異なる色に着色されている。本実施形態では、雪を模擬した白っぽい粉体を用いるため、鉄道車両模型21は濃暗色(例えば紺色)に着色されている。そして、鉄道車両模型21は、車両本体部29の底面に実車を模して設けられた2箇所の窪み22それぞれに、台車部23と、空力パーツ24と、を有する。
台車部23は、実車の台車の縮尺模型であり、線路30(図2参照)と接触して回転することができる車輪や、サスペンション機構などを備える。
空力パーツ24は、台車部23の前後位置に着脱可能なパーツであって、台車部23の走行方向の前後に生じる気流をコントロールするために試作的に設計された部品である。本実施形態では、列車模型走行装置10を、車両床下部への着雪対策の効果検証に用いるので、空力パーツ24は着雪対策が施された形状を縮小再現したパーツということになる。様々な形状の空力パーツ24を取り替えては、列車模型走行装置10を走行させることで、その対策部品の効果を検証する。
なお、鉄道車両模型21には、適宜、カバー26を設けることができる。カバー26は、台車部23の側面を覆うように着脱可能なパーツであって、台車部23の側面全体又は一部を覆うようにデザインされる。図3の例では、前方の台車部23にのみカバー26を図示しているが、後方の台車部23についても同様にカバー26を設定することができる。カバー26の有無やカバー26の形状についても、着雪対策の効果検証の対象とすることができる。
図2に戻って、先頭の鉄道車両模型21aの前方上部には、接続金具27が取り付けられており、第1索状体41のねじれを戻すための回転可能なシャックル28を介して第1索状体41の模型側端部が接続されている。同様に、最後尾の鉄道車両模型21dの後方上部にも、接続金具27が取り付けられており、シャックル28を介して第2索状体42の模型側端部が接続されている。
図1に戻って、線路30は、列車模型20のための軌道であって、およそ100mの加速区間31と、およそ100mの減速区間32と、加速区間31と減速区間32の間に設けられた100m以上の実験区間33と、を有する合計300m以上の直線状の模型軌道である。
線路30の沿線周辺部には、適宜、バラストを模擬した砕石を散布したり、防音壁を模した設置物を設けるとしてもよい。
線路30の実験区間33は、列車模型走行装置10を使用して効果検証するための模型実験を行う主区間である。本実施形態では、散布区間34と、散布区間34の前後に設けた被覆区間35と、を有する。
本実施形態では、列車模型走行装置10を車両床下部への着雪対策の効果検証に用いる前提であるため、散布区間34には、積雪状態を再現すべく雪を模した粉体8が散布される。
粉体8は、胡桃殻の粉、石灰粉、樹脂粉、などにより実現される。粒子径は、列車模型20の模型スケールや走行速度などの条件に応じて適宜設定する。本実施形態では、列車模型走行装置10を車両床下部への着雪対策の効果検証に用いる前提なので、粉体8には、列車模型20の走行により雪のように舞い上がり列車模型20に付着することができる粒子径を適宜選定するものとする。
被覆区間35は、列車模型20が通過可能に線路30を覆うトンネル構造体として実現される。被覆区間35は、走行前に整えた散布区間の粉体が自然風や日射により変化することを抑制する。また、列車模型20が散布区間34を走行すると、散布されていた粉体8が舞い上がるが、被覆区間35は舞い上がった粉体8が試験場の外へ散乱するのを抑制し、走行後の飛び散った粉体8の後始末を容易にする効果がある。
第1索状体41及び第2索状体42は、例えば、合成樹脂製のロープ(より具体的には、超高分子量ポリマー繊維をゲル紡糸法により作成された高強度・低比重のロープなど)や、金属ワイヤー、などによって実現される。
図4は、第1巻取装置50の構成例を示す上面図である。図5は、第1巻取装置50の構成例を示す側面図である。
第1巻取装置50は、線路30の走行終点側に設置された装置であって、フレーム51と、第1索状体41を巻き取るための第1ドラム52と、第1ドラム52を回転させる第1モータ53と、第1モータ53の回転を制動する第1ブレーキ54と、第1シフター55Aと、軸受56と、カップリング57と、を有する。
フレーム51は、アルミニウム合金等により作成され、第1ドラム52、第1モータ53、第1ブレーキ54、第1シフター55A、軸受56、などを一体的に固定支持する構造体である。
第1ドラム52の回転軸は、軸受56で支持される。当該回転軸の一端は、第1ブレーキ54に接続され、他端はカップリング57を介して第1モータ53の駆動軸と接続されている。
第1モータ53は、制御装置70により駆動制御される電動機である。第1モータ制御ケーブル81により制御装置70(図1参照)と電気的に接続され、当該ケーブルを介して電力の供給を受ける。
第1ブレーキ54は、制御装置70により作動制御される制動装置である。第1ブレーキ54を電気制御可能なブレーキとする構成では、第1ブレーキ制御ケーブル82により制御装置70(図1参照)と電気的に接続され、当該ケーブルを介して電力の供給を受け、制御信号を受信して駆動制御される。
第1シフター55Aは、第1索状体41の第1ドラム52への巻取位置を調整して乱巻きを防止する機構部である。いわゆる整列巻きのための仕組みであり、ロープシフター、ロープサバキと呼ばれる装置である。
図6は、第1シフター55Aの構成例を示す正面図(列車模型20の走行始点側から見た図)である。第1シフター55Aは、フレーム51に懸架されたシフター用モータ551の回転軸で偏心カム552を回転駆動させる。偏心カム552には、フレーム51に対して揺動可能な揺動腕553のカムフォロワー554が係合している。揺動腕553の先端部には、第1索状体41を挿通する挿通部555が設けられている。
第1シフター55Aのシフター用モータ551は、第1シフター制御ケーブル83により制御装置70(図1参照)と電気的に接続され、当該ケーブルを介して電力の供給を受け、また制御信号を受信して駆動制御される。そして、第1シフター55Aは第1ドラム52の巻取速度に応じた速さで制御装置70によって連動制御され、第1ドラム52の軸方向に沿って往復揺動する。
なお、第1シフター55Aの構成は、図6に示した構成に限らず、他の形式であってもよい。
図7は、第2巻取装置60の構成例を示す上面図である。図8は、第2巻取装置60の構成例を示す側面図である。
第2巻取装置60は、線路30の走行始点側に設置された装置であって、フレーム61と、第2索状体42を巻き出す第2ドラム62と、第2ブレーキ63と、クラッチ64と、カップリング65と、第2モータ66と、第3ブレーキ67と、軸受69と、を有する。
フレーム61は、アルミニウム合金等により作成され、第2ドラム62、第2ブレーキ63、クラッチ64、第2モータ66、第3ブレーキ67、軸受69、などを一体的に固定支持する構造体である。
第2ドラム62には、列車模型20が走行する前の初期状態において第2索状体42が巻き取られた状態にあり、走行開始とともに巻き出しが行われる。第2ドラム62の回転軸の一方は、軸受69でフレーム61により支持され、第2ブレーキ63の回転軸の一方に連結されている。
第2ブレーキ63は、第2ドラム62から第2索状体42を巻き出す際に、第2ドラム62の回転を制動させる。第2ブレーキ63には、連続的且つ安定的な制動力の発揮が要求されるので、連続スリップ運転が可能な電磁ブレーキ、例えばパウダーブレーキなどによって実現される。そして、第2ブレーキ63は、第2ブレーキ制御ケーブル84により制御装置70と電気的に接続し、制御装置70により異なる制動力でブレーキ動作が可能に作動制御される。
第2ブレーキ63の回転軸の他方は、クラッチ64並びにカップリング65を介して、第2モータ66の駆動軸に連結されている。
クラッチ64は、クラッチ制御ケーブル85により制御装置70と電気的に接続され、制御装置70によりON/OFFが制御される。
第2モータ66は、制御装置70により駆動制御される電動機である。第2モータ制御ケーブル86により制御装置70(図1参照)と電気的に接続され、当該ケーブルを介して電力の供給を受ける。第2モータ66は、列車模型20の走行完了の後に、第2ドラム62に第2索状体42を巻き戻すために第2ドラム62を回転させる。
第2ドラム62の回転軸の他方(図7に向かって上側)は、軸受69でフレーム61により支持され、第3ブレーキ67の回転軸に連結されている。
第3ブレーキ67は、制御装置70により作動制御される制動装置であって、第2ブレーキ63の作動不良時や制御装置70の電源が断たれた際に使用する非常ブレーキ装置であり、例えば、無励磁ブレーキで実現される。第3ブレーキ67は、第3ブレーキ制御ケーブル87により制御装置70(図1参照)と電気的に接続されており、通常は、当該ケーブルを介して電力の供給を受けてブレーキが開放状態に維持される。しかし、制御装置70が第2ブレーキ63の作動不良を検知して電力供給を中止したり、停電や制御装置70の故障により電力が断たれると、ばねでブレーキが作動する。
第2シフター55Bは、第1巻取装置50の第1シフター55Aと同じものである。第2シフター55Bのシフター用モータ551は、第2シフター制御ケーブル88により制御装置70と電気的に接続されて駆動制御される。そして、第2索状体42を巻き戻す際に作動し、第2索状体42の第2ドラム62への巻取位置を調整して乱巻きを防止する。
図1に戻って、制御装置70は、列車模型走行装置10の動作を統合的に制御する装置である。列車模型走行装置10の全長は100mを超えるため、制御装置70は、第1巻取装置50の近傍に設置されてその動作制御を担う親制御装置71と、第2巻取装置60の近傍に設置されてその動作制御を担う子制御装置72と、親制御装置71及び子制御装置72を通信接続する通信ケーブル73と、図示されていない電源部と、を備える。但し、制御装置70は、親制御装置71と子制御装置72との間の通信に係るタイムラグを考慮した同期・同調制御によって、親制御装置71の制御と子制御装置72の制御とを同期させることができる。
図9は、列車模型走行装置10の機能構成例を示す機能ブロック図である。
親制御装置71は、演算処理部711と、操作入力部712と、情報表示部713と、記憶部714と、I/F(インターフェース)コントローラ715と、通信器716と、を有し、これらは内部バス717により信号送受可能に接続されている。また、親制御装置71は、第1シフターコントローラ750と、第1モータコントローラ751と、第1ブレーキコントローラ752と、を有する。
演算処理部711は、CPU(中央演算装置)により実現され、記憶部714に記憶されているプログラム720を実行することにより、列車模型走行装置10を統合的に制御する機能を実現する。
操作入力部712は、例えば、スイッチ、キーボード、マウス、レバー、などの操作入力を受け付ける各種デバイスにより実現され、操作入力信号を演算処理部711へ出力する。
情報表示部713は、例えば、フラットパネルディスプレイ、LED、などにより実現される。そして、演算処理部711により表示制御されて、列車模型走行装置10の操作に関する情報や、当該装置の現状に関する情報を表示してオペレータに提示する。
記憶部714は、例えば、ICメモリー、ハードディスク、オンラインストレージなどにより実現され、制御プログラム740や、制御パターンデータ742、などを記憶する。演算処理部711の演算用の記憶領域としても使用される。
制御パターンデータ742は、列車模型20をどのような速度パターンで実験区間33をどのように走行させるかの種類毎に用意されており、実験区間33を走行する際の速度パターンを実現するための各種設定値を格納する。
例えば、実験区間33を等速で走行させる速度パターンの場合、制御パターンデータ742には、加速区間31の走行中に、要求される所与の等速速度に達し得る第1モータ53の駆動制御データと、第1シフター55Aのモータを第1モータ53の回転スピードに連動する回転スピードで駆動制御するためのデータと、第2ブレーキ63の制御パターンを実現するためのデータ、などを含むことになる。要求される等速速度の速度違いで、高速・中速・低速の3種類の制御パターンデータ742を予め用意しておくとしてもよい。勿論、実験区間33で走行速度を変える変速型の制御パターンデータ742も適宜、選択可能に用意してもよい。
I/Fコントローラ715は、演算処理部711と外部装置との間の信号送受を可能にする電気・電子回路である。いわゆるインターフェースICなどにより実現できる。
そして、I/Fコントローラ715には、第1シフターコントローラ750と、第1モータコントローラ751と、第1ブレーキコントローラ752と、が接続されており、演算処理部711は、これらの各コントローラを制御することができる。
第1シフターコントローラ750は、第1シフター55Aのシフター用モータ551(図6参照)の動作を制御する電子・電気回路である。演算処理部711から入力される制御信号に対応して、第1シフター制御ケーブル83を通じて第1シフター55Aのシフター用モータ551の回転速度をコントロールする。
第1モータコントローラ751は、第1モータ53(図4参照)の動作を制御する電子・電気回路である。演算処理部711から入力される制御信号に対応して、第1モータ制御ケーブル81を通じて第1モータ53の回転速度をコントロールする。
第1ブレーキコントローラ752は、第1ブレーキ54(図4参照)の動作を制御する電子・電気回路である。演算処理部711から入力される制御信号に対応して、第1ブレーキ制御ケーブル82を通じて制動力をコントロールする。第1ブレーキ54を油圧式とする構成ならば、第1ブレーキコントローラ752に油圧制御回路を搭載し、第1ブレーキ制御ケーブル82を油圧ホースとする構成を採用することとしてもよい。
また、I/Fコントローラ715は、センサーケーブル93を介して、減速地点到達検知センサ91(例えば、光学式通過センサにより実現可。)に接続されており、演算処理部711は当該センサからの検知信号を受信することができる。
通信器716は、通信ケーブル73を介した子制御装置72との通信を行う。通信規格は適宜設定可能であるが、例えば、1200mの長距離伝送が可能で耐ノイズ性に優れたRS-485を用いるとしてもよい。その場合、通信器716はRS-485規格に準拠したものとすればよい。
子制御装置72は、I/Fコントローラ721と、通信ケーブル73を介した親制御装置71との通信を担う通信器722と、を有する。なお、子制御装置72には、当該装置の全体動作を制御する演算処理部を設けた構成を採用するとしてもよい。
子制御装置72のI/Fコントローラ721は、第2シフターコントローラ754と、第2モータコントローラ755と、クラッチコントローラ756と、第2ブレーキコントローラ757と、第3ブレーキコントローラ758と、走行始点配車検知センサ90と、に接続されている。演算処理部711は、通信ケーブル73を介してこれらのコントローラを制御することができる。
第2シフターコントローラ754は、第2シフター55B(図7参照)のシフター用モータ551(図6参照)の動作を制御する電子・電気回路である。演算処理部711からの制御信号が入力されると、当該制御信号に対応して、第2シフター制御ケーブル88を通じて第2シフター55Bのシフター用モータ551の回転速度をコントロールする。
第2モータコントローラ755は、第2モータ66(図7参照)の動作を制御する電子・電気回路である。演算処理部711からの制御信号が入力されると、当該制御信号に対応して、第2モータ制御ケーブル86を通じて第2モータ66の回転速度をコントロールする。
クラッチコントローラ756は、クラッチ64(図7参照)の動作を制御する電子・電気回路である。演算処理部711からの制御信号が入力されると、当該制御信号に対応して、クラッチ制御ケーブル85を通じてクラッチ64のON/OFFをコントロールする。
第2ブレーキコントローラ757は、第2ブレーキ63(図7参照)の動作を制御する電子・電気回路である。演算処理部711からの制御信号が入力されると、当該制御信号に対応して、第2ブレーキ制御ケーブル84を通じて第2ブレーキ63の制動力をコントロールする。
第3ブレーキコントローラ758は、第3ブレーキ67(図7参照)にブレーキ開放用の電力の供給/停止を制御する電子・電気回路である。
また、子制御装置72のI/Fコントローラ721は、センサーケーブル92を介して、走行始点配車検知センサ90(例えば、光学式通過センサにより実現可。)に接続されており、演算処理部711は通信ケーブル73を介して当該センサからの検知信号を受信することができる。
次に、列車模型走行装置10の動作について説明する。
図10は、制御装置70における制御の流れを説明するためのフローチャートである。
制御装置70は、先ず列車模型20の走行速度の選択操作を受け付ける(ステップS2)。そして、選択された走行速度に対応する制御パターンデータ742を読み込む(ステップS4)。制御パターンデータ742には、実験区間33において列車模型20を選択された走行速度で走行させるための第1モータ53の回転速度などの各部をコントロールするための設定値が格納されている。勿論、走行速度から演算処理によりそれらの設定値を算出するとしてもよい。
次に、制御装置70は、走行開始条件の判定を行う(ステップS6)。走行開始条件は、例えば、1)走行始点配車検知センサ90からの検知信号「あり」、2)各部の故障検知「なし」、3)第1モータ53の運転準備「完了」、4)第1ブレーキ制動「なし」、5)クラッチ「OFF」、6)第2ブレーキ制動「なし」、7)第3ブレーキ制動「なし」、などのAND条件とする。
そして、走行開始条件が満たされていると判断すると(ステップS6のYES)、制御装置70は先に読み込んだ制御パターンデータ742に基づいてシーケンス走行処理の実行を開始する(ステップS8)。
図11は、シーケンス走行処理により実現されるシーケンス走行のタイムチャートである。シーケンス走行を実現するには、各部は次の順序で動作制御される。
すなわち、制御装置70は、第2巻取装置60の第2ブレーキ63を弱作動させる。(SC1)。次いで、第2ブレーキ63を弱作動から所定時間T8が経過した後、第1巻取装置50の第1モータ53を正転駆動させとともに(SC2)、第1モータ53の駆動開始とともに第1シフター55Aを作動開始する(SC3)。つまり、制御装置70は、第1モータ53の回転と第1シフター55Aの動作とを連動制御する。なお、第2シフター55Bは動作されず、第2索状体42を第2ドラム62のフリートアングルの中央位置で保持した状態(図7の状態)で維持される。
第2ブレーキ63の弱制動は、第1モータ53による牽引力よりも小さく設定されており、複数の鉄道車両模型で編成された列車模型の走行を安定させるための制動力に設定されている。そのため、第1モータ53の最大トルクよりも弱い制動であることは勿論である。第2ブレーキ63の作動からやや遅れて第1モータ53及び第1シフター55Aが作動することで、第2索状体42に走行方向と反対方向への張力が生じる。複数の鉄道車両模型で編成された列車模型20は、走行方向に沿った張力が付与された状態で走行を行うことになる。
つまり、制御装置70は、第1モータ53の速度を制御するとともに第2ブレーキ63の制動力を制御することで、第1索状体41および第2索状体42に張力を付与しつつ列車模型20を走行させる制御を行う。
張力が付与された状態で列車模型20は加速するので、列車模型20が第1索状体41および第2索状体42を走行中に巻き込むことがない。また、軌道不整や走行乱流などにより後方の鉄道車両模型が横振れするといった現象を起こさずに、安定して直線走行し、実際の鉄道車両が複数連結されて編成された列車の高速走行を模擬することが可能になる。
さて、先に読み込んだ制御パターンデータ742には、列車模型20が実験区間33に差し掛かる前、すなわち加速区間31を走行し終える前に、列車模型20の走行速度が選択された走行速度に達するように各部を制御する設定が格納されている。よって、やがて列車模型20の走行速度は目標とする速度に到達する。言い換えると、第1モータ53をコントロールする周波数が、先に読み込んだ制御パターンデータ742の設定値に到達する(SC4)。因みに、図11の例では、列車模型20は、実験区間33に到達する前に選択操作された走行速度に達して実験区間33を等速走行する例を示している。
やがて、列車模型20は、実験区間33を抜けて減速地点到達検知センサ91で検知される(SC5)。制御装置70は、この減速地点到達検知センサ91による検知をもって、第1モータ53の正転駆動を減速させる(SC2参照)。以降、第1モータ53は減速停止に向かうこととなる。また、これとともに、制御装置70は、弱ブレーキよりも制動力の強い強ブレーキを第2ブレーキ63に作動させる(SC6)。よって、列車模型20は、減速地点到達検知センサ91で検知されると減速する。
次に、制御装置70は、減速により列車模型20が停止すると、第1ブレーキ54を作動させるとともに(SC7)、第1モータ53を回転しないようにロック状態とする(SC8)。そして、制御装置70は、そこから所定時間T2の後に、第2ブレーキ63の強ブレーキの作動を解除する制御を行う(SC6参照)。
もし、列車模型20が停止した後、第2ブレーキ63の強ブレーキ作動の解除に先行して第1ブレーキ54の作動及び第1モータ53のロックを行わないと、第2索状体42の張力により、列車模型20が走行始点側に引き戻される現象が起きてしまう。具体的には、列車模型20が減速停止したとき、牽引方向の第1索状体41と制動方向の第2索状体42には同じ張力が掛かっている。しかし、列車模型20の停止位置が第1巻取装置50に近く、第2巻取装置60から遠いため、列車模型20が停止した後に両方の巻取装置を同時に解放した場合、第2巻取装置60の方向へ大きく引き戻され、この際に張力の抜けた第2索状体42を列車模型20が巻き込む恐れがある。これを防ぐため、列車模型20の停止後、先行して第1巻取装置50の回転を固定してから、第2巻取装置60を徐々に解放する。この結果、列車模型20がほとんど動かないままに、第2ドラム62側が回転して第2索状体42が緩やかに引き出されるため、上記の問題事象の発生を防止できる。
次に、制御装置70は、第2ブレーキ63の強ブレーキの作動解除から更に所定時間T9の経過後に、第2ブレーキ63の弱ブレーキの作動を解除する制御を行う(SC1参照)。つまり、制御装置70は、第2ブレーキ63の制動を段階的に弱めるように制御する。
そして、制御装置70は、第2ブレーキ63の強ブレーキの解除から、所定時間T7が経過すると第1ブレーキ54の作動を解除するとともに(SC7参照)、第1モータ53のロックを解除する(SC8参照)。これでシーケンス走行処理は終了となる。
図10に戻って、制御装置70は、シーケンス走行処理を終了すると(ステップS10)、回送開始操作が行われるまで待機し、回送開始操作が行われることで(ステップS12のYES)回送処理を実行する(ステップS14)。回送処理は、走行終点側に止まっている列車模型20を走行始点側に戻すための処理である。
回送処理は、第1巻取装置50と第2巻取装置60の使い方が、シーケンス走行処理におけるそれとは逆転するだけで、索状体への張力の設定も含めて、シーケンス走行処理をほぼ同じである。具体的には、回送処理では、制御装置70は、第1モータ53が未通電状態、第2ブレーキ63及び第3ブレーキ67が未作動状態、第1シフター55Aが未作動状態であることを確認すると、第1ブレーキ54を弱作動させてから、クラッチ64を接続して、第2モータ66を作動させることで第2ドラム62を巻取方向に回転させる。暫くその状態を継続し、列車模型20が走行始点配車検知センサ90により検知されると、第2モータ66を停止させるとともに第1ブレーキ54を強作動させて、列車模型20の走行を停止する。そして、クラッチ64をOFFにする。回送時の列車模型20の走行は所定の低速速度による定速走行である。
図12は、本実施形態の列車模型走行装置10で列車模型20を走行させた後の台車部23の走行方向前方側を撮影した画像である。同様に、図13は、本実施形態の列車模型走行装置10で列車模型20を走行させた後の台車部23の走行方向後方側を撮影した画像である。
これらの画像において、破線で囲った範囲内に粉体8が付着している様子が見て取れる。すなわち、濃色の列車模型20の表面に、付着した粉体8が白く見えている。どこに、どのように付着しているかによって、その時装着した空力パーツ24やカバー26(図3参照)の車両床下部への着雪対策としての効果を検証できる。
以上、本実施形態の列車模型走行装置10によれば、列車の高速走行に伴い引き起こされる不都合な現象の対策の効果検証に適した新しい手法を提供することができる。
具体的には、回転可能な車輪を有する模型を用いることで、列車通過時の車体周辺等の気圧の変化や車輪回転を再現できる。また、線路を列車模型が走行するため、実際と相似な凹凸のある軌道面(線路上面)と車両床下の相対運動を再現できる。さらに、線路は直線状に敷設されており、且つ、走行開始において、列車模型20の第1索状体41による牽引の開始に先行して、第2ブレーキ63を作動させるように制御することで、列車模型20に適当な張力を掛けることができるので、列車模型20を、実車両における高速走行に相当する速度で安定的に走行させることができる。
しかも、従来の風洞実験では風洞を設ける必要性から模型スケールの制約があったが、本実施形態では装置全体(特に走行経路全体)を開放系で構成することができ、その開放系で列車模型を走行させることができるので、模型スケールの制約もない。よって、ムービングベルトを用いる風洞実験ではできなかった高速走行に相当する車両床下の流れを再現し、従来よりも精度の高い効果検証が可能になる。
そして、複数車両で編成した列車の高速走行に伴い引き起こされる不都合な現象の対策の効果検証に適した新しい手法を提供が可能になる。例えば、車両床下部への着雪の発生においては、列車通過時の列車風や気圧の急変動、車輪の回転による雪粒子の舞い上がりが重要であるが、それらの影響は、当然、複数車両で編成しているか否かで大きく変わる。編成する車両数が多い程、そして後方になればなる程に雪粒子の舞い上がりの影響が複雑且つ大きくなる。本実施形態によれば、より実際の状況に近い複数車両編成による列車模型を走行させることができるので、従来よりも効果検証の精度を高めることができる。
また、本実施形態では実験区間33だけで100m以上となる線路を用いるので、風洞実験等では実現できない長距離の高速走行に伴い引き起こされる不都合な現象の対策の効果検証を、精度良く実施できる。
また、列車模型20の減速に当たっては、列車模型20を移動方向と反対側に強く引っ張りながら、列車模型の牽引を弱めることができるので、高速走行に相当する速い速度で走行する列車模型を、安定的に制動できる。これにより、例えば、列車模型が、その慣性により前方につんのめるようになって脱線するような事態を防ぐことができる。
また、第1モータ53の回転をロックさせた後に、列車模型を移動方向と反対側に強く引っ張っていた第2ブレーキ63の作動を解除するので、列車模型20の走行停止時に装置全体を停止する際の安全性を高めることができる。例えば、列車模型が停止した直後に第2ブレーキの作動が解除されて、停車したはずの列車模型が反対方向に走り出してしまう事態を防ぐことができる。
そして、実験区間33に散布区間34を設けることで、冬場の積雪地帯を列車が高速走行して車両床下部へ付着する雪氷の効果検証が可能になる。また、走行毎の準備にて散布を同条件に再現しさえすれば、実走による検証手法のように気象条件や積雪条件等による制約条件は受けないので、定量的な評価が可能になる。
〔変形例〕
以上、本発明を適用した実施形態の一例について説明したが、本発明を適用可能な形態は上記形態に限定されるものではなく適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
例えば、上記実施形態では、列車模型走行装置10を車両床下部への着雪対策の効果検証に用いる例を示したが、着雪対策の効果検証以外の用途に用いることもできる。例えば、線路30の脇にバラストを模した粒子(例えば細粒の石)を敷設した上で上述した実施形態の着雪対策の効果検証を実施するとすれば、高速鉄道の通過に伴うバラストの飛散を抑制する対策の効果検証にも用いることができる。また、異なる車両形状の列車模型20を高速走行させたときの地上側と車上側の騒音や、車上の振動を比較測定することで、高速走行時の風切り音や振動などを抑制可能な車両形状の相対的な効果検証を実施することができる。
また例えば、上記実施形態では、第1巻取装置50の構成と、第2巻取装置60の構成とが異なる例を示したが、第1巻取装置50と第2巻取装置60とを、同じモータとブレーキ装置を組み込んだ構成とすることも可能である。当該構成においては、列車模型20の走行方向は、上記実施形態のように一方向に限らず両方向とすることができる。つまり、上記実施形態では実験区間33の往路でのみ実験を行ったが、復路でも実験が可能となる。
8…粉体
10…列車模型走行装置
20…列車模型
21…鉄道車両模型
23…台車部
24…空力パーツ
26…カバー
30…線路
33…実験区間
34…散布区間
35…被覆区間
41…第1索状体
42…第2索状体
50…第1巻取装置
52…第1ドラム
53…第1モータ
54…第1ブレーキ
55A…第1シフター
55B…第2シフター
60…第2巻取装置
62…第2ドラム
63…第2ブレーキ
66…第2モータ
67…第3ブレーキ
70…制御装置
1…親制御装置
72…子制御装置
73…通信ケーブル
90…走行始点配車検知センサ
91…減速地点到達検知センサ
711…演算処理部
740…制御プログラム
742…制御パターンデータ

Claims (10)

  1. 列車模型と、
    前記列車模型を走行させる直線状に敷設された線路と、
    前記列車模型に一端が接続された第1索状体と、
    前記列車模型に一端が接続された第2索状体と、
    前記第1索状体を巻き取るための第1ドラムと前記第1ドラムを回転させる第1モータとを有し、前記線路の走行終点側に設置された第1巻取装置と、
    前記第2索状体を巻き出すための第2ドラムと前記第2ドラムの回転を制動させる第2ブレーキとを有し、前記線路の走行始点側に設置された第2巻取装置と、
    前記第1モータの速度を制御するとともに前記第2ブレーキの制動力を制御することで、前記第1索状体および前記第2索状体に張力を付与しつつ前記列車模型を走行させる制御を行う制御装置と、
    を備えた列車模型走行装置。
  2. 前記列車模型は、実際の鉄道車両の縮尺模型である複数の鉄道車両模型が連結されて構成されており、
    前記第1索状体は、前記列車模型の先頭の鉄道車両模型に一端が接続され、
    前記第2索状体は、前記列車模型の最後尾の鉄道車両模型に一端が接続され、
    前記列車模型を走行させることで、前記実際の鉄道車両が複数連結されて編成される列車の高速走行を模擬する請求項1に記載の列車模型走行装置。
  3. 前記線路は、100m以上の長さである、
    請求項1又は2に記載の列車模型走行装置。
  4. 前記第2ブレーキは、制動力が異なるブレーキ動作が可能であり、
    前記制御装置は、前記第1モータの最大トルクよりも弱い弱ブレーキを前記第2ブレーキに作動させた後に前記第1モータの回転を開始させることで前記列車模型の走行を開始させる、
    請求項1~3の何れか一項に記載の列車模型走行装置。
  5. 前記制御装置は、前記弱ブレーキよりも制動力の強い強ブレーキを前記第2ブレーキに作動させるとともに前記第1モータの回転速度を減速させることで前記列車模型を減速させる、
    請求項4に記載の列車模型走行装置。
  6. 前記第1巻取装置は、前記第1モータの回転を制動する第1ブレーキを有し、
    前記制御装置は、前記減速により前記列車模型が停止した場合に、前記第1ブレーキを作動させた後に、前記第2ブレーキの作動を解除する制御を行う、
    請求項5に記載の列車模型走行装置。
  7. 前記第2ブレーキは、連続スリップ運転が可能、且つ制動力の電気的な制御が可能な電磁ブレーキである、
    請求項1~6の何れか一項に記載の列車模型走行装置。
  8. 前記第1巻取装置は、前記第1索状体の前記第1ドラムへの巻取位置を調整して乱巻きを防止するシフターを有し、
    前記制御装置は、前記第1モータの回転と前記シフターの動作とを連動制御する、
    請求項1~7の何れか一項に記載の列車模型走行装置。
  9. 前記線路には、雪を模擬した粉体が散布された散布区間が設けられている、
    請求項1~8の何れか一項に記載の列車模型走行装置。
  10. 前記線路には、前記散布区間の前後に前記列車模型が通過可能に覆われた被覆区間が設けられている、
    請求項9に記載の列車模型走行装置。
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