JP7049103B2 - 単一細胞の網羅的3’末端遺伝子発現解析法 - Google Patents

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    • C12Q1/6837Enzymatic or biochemical coupling of nucleic acids to a solid phase using probe arrays or probe chips

Description

本発明は、単一細胞レベルでmRNAの3’配列を利用した網羅的な遺伝子発現を解析するためのシステム、方法およびキットに関する。
一般に組織や多数の細胞を解析試料とした解析法(バルク解析法)では、細胞毎の違いを平均化して測定してしまうため、個々の細胞および細胞間の生命活動を統合的に解析することが困難である。特に免疫系細胞、神経細胞、および多能性幹細胞では、発現している遺伝子の種類とその発現レベルが細胞ごとに大きく異なっており、疾患のメカニズム解明を目的として、1細胞レベルでの遺伝子発現解析技術の開発が急速に進展している。
特に2005年以降の増幅関連試薬や次世代シーケンサ(Next Generation Sequencer : NGS)の著しい技術発展により、全遺伝子を調べる網羅的な遺伝子発現解析技術の開発が加速し、膨大な数の遺伝子について発現状況を詳細に知ることができるようになっている。特に新規マーカー遺伝子の探索が重要とされる再生医療、疾患のメカニズム解明などの基礎研究分野において、網羅的遺伝子発現解析技術の需要は高い。
また網羅的な遺伝子発現解析の手段としては、mRNAから合成された完全長1st cDNA(遺伝子全体)について配列決定を行う方法(RNA-seq)がこれまで主流であった。一般にNGS解析において、装置本体およびシーケンス試薬は非常にコストが高い。一方でNGS解析1ランあたりの解読塩基長(サイズ)には制限があることから、RNA-seq法では検出遺伝子あたりに要するシーケンスコストが割高となってしまう課題があった。そのため、コストが約1/5~1/10へ低減可能である、mRNAの3’末端の配列に相当する1st cDNAのみを試料調製してNGS解析する方法も近年普及している。
たとえば疾患のメカニズム解明に関する研究では、疾患に関連する組織を形成する細胞集団間における個々の細胞の情報を統計的に理解することが重要である。この細胞集団の規模が大きいほど得られる情報量も大きくなる利点がある。そのため近年、解析細胞数を数千個~1万個以上に増大させることが求められており、これに伴って細胞一つずつからNGS解析用のDNAライブラリ試料を調製する際の労力(繁雑性)、試薬コスト(NGS解析コストも含む)の面で克服すべき課題がある。最近では多くの細胞を一つずつ個別の反応槽へ分離し、1細胞から1st cDNAを合成するための技術開発も進展しており、セルソーター、マイクロ流路、およびドロプレットを用いたデバイスが普及している。例えばSoumillonら(非特許文献1)はセルソーターを利用してマイクロウェルプレートへ細胞をソート後、mRNAの3’末端の配列に由来するDNA配列を増幅してNGS解析を行い、合計12832細胞の遺伝子発現解析に成功している。上記方法では、44枚の384ウェルプレートを消費して細胞を1ウェル毎にソート後、ウェル毎に異なる配列を含んだ(細胞識別用)逆転写反応用プローブを分注すると共にウェルあたり数μLの逆転写反応試薬を添加することで1st cDNAを合成している。すなわち合計16896ウェルに各試薬を分注しなければならず非常に労力を要し、少なくとも数十~100mLと膨大な量の試薬を消費することから試薬コストが非常に高額となってしまう点で課題がある(非特許文献1)。
また1細胞中に含まれるmRNA量は約0.5 pg(105~106分子)と極微量であるために、低発現遺伝子群における検出率(検出感度)、定量精度において克服すべき技術課題が未だある。
これらの課題を解決するためのアプローチとして特許文献1では、まず極微量なmRNAから試料損失を解決して高精度に定量解析することを目的とし、例えば、多くのプローブが固定された磁気ビーズ表面上で1細胞由来のmRNAを高い効率で捕捉し、合成されたcDNAライブラリ試料をリアルタイムPCR法により定量解析することで、複数遺伝子について細胞あたり10コピー程度の低発現遺伝子でも高精度に発現解析する方法が開示されている。さらに特許文献2では多孔質メンブレンもしくは2次元アレイ状に配置したビーズで構成されたチップを使って、多数の細胞を1細胞レベルで遺伝子発現解析する方法が示されている。すなわち各細胞が捕捉される領域ごとに異なる細胞認識配列を有するプローブが担体に固定されているため、合成されたcDNAライブラリには細胞毎に異なる細胞認識配列を導入することができる。得られた試料を一括してNGS解析することで、多数の細胞を1細胞レベルで並列処理解析することが可能となるため、試料調製における繁雑性、および試薬コストを1/100以下へ低減できることが示されている。
米国特許出願公開2012/0245053 米国特許出願公開2016/0010078
Soumillonら, bioRxiv, インターネットホームページhttps://doi.org/10.1101/003236, 2014年
1細胞レベルで確度の高い網羅的な遺伝子発現解析を実現するためには、(i)千個~1万個以上の解析細胞数において、(ii)高い検出感度および定量精度で、網羅的遺伝子発現解析を行うことが重要である。実用面では、さらに解析費用が低コストであることが求められている。
(i)の解析細胞数を増大させるための技術開発が進む一方で、(ii)に関しては未だ課題が残る。具体的には網羅的遺伝子発現解析の試料調製方法では一般的に、合計10以上もの多くの工程数を経る必要がある(例:(1) 1細胞を微小反応槽へソートさせる工程、(2)細胞溶解工程、(3)mRNA捕捉工程、(4) 1st cDNA合成工程、(5) 2nd cDNA合成工程、(6) 1st PCR増幅工程、(7)精製工程、(8)酵素処理によるDNA断片化工程、(9) 2nd PCR増幅用タグ配列(多くはサンプル識別用インデックスを含む)のライゲーション工程、(10)精製工程、(11)付加された配列を利用した2nd PCR増幅工程、(12)精製工程、(13) DNA定量工程)。そのため、一連の各工程において反応効率を高く維持させながら試料調製を進め、1細胞あたり約0.5 pg(105~106分子)と極微量なmRNA分子の初期試料に由来するDNA分子を、最終試料中に如何に多く残存させるかが重要である。特に、PCR増幅までの前半の工程で試料損失を回避することが重要である。さらに1細胞解析のような微量DNAを用いた試料調製では、特に酵素処理によるDNA断片化工程(タグメンテーション工程も含む)における至適反応条件(酵素量、反応時間、温度)が少しでもずれると、ターゲットDNAが250塩基以下に短く断片化・分解されやすく、試料損失の大きな原因となってしまう課題がある。一般にDNA断片化工程用に市販されている酵素試薬は、少なくとも1~100ngのDNA量が必要とされており、これは細胞数(mRNAに由来するcDNA)で換算すると少なくとも数千~105個に相当する程、活性が強力である。通常、この断片化反応を直ちに完全に停止させることは困難であり、次の工程へ進む作業をしているわずか数十秒、数分間でもターゲット分子の分解が進んでしまい、試料損失となってしまう課題がある。
さらにDNA断片化(タグメンテーション)工程後のPCR工程では、副産物(分子認識配列、細胞認識配列、増幅用配列を有しない配列)の増幅が完全に排除できず、ターゲットであるmRNAの3’末端由来のDNA領域のみを純粋に増幅させる手段がない。すなわち副産物の存在により増幅に要するDNAポリメラーゼ、dNTP、プライマーなどの各コンポーネントがその副産物との反応に使用されてしまい、ターゲットDNAの増幅効率が低下してしまうため、増幅されるターゲットDNA分子の割合が減ってしまう。
すなわち1細胞あたり極微量なmRNA分子の初期試料から、諸反応工程の途中で失われてしまう「試料損失」を回避し、この初期試料の利用効率を極限まで高めた反応条件でmRNAの3’末端配列に由来するターゲットDNA試料を調製できるか否かが、確度・精度の高い網羅的遺伝子発現解析を低コストで行うために最も重要な課題である。
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、もって、1細胞レベルの網羅的遺伝子発現解析を効率的に行う方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための種々検討した結果、本発明者らは同時に複数の細胞について1細胞レベルの網羅的遺伝子発現解析を行う際に、初期試料である1細胞中のmRNA分子の利用効率を高く保持させた最終試料を調製し、確度の高い網羅的遺伝子発現データを取得できる方法を開発した。
一態様において、本発明は、複数の微小反応槽を有するデバイス、例えばチップ(もしくはアレイ)が複数枚、並列に組み込まれたデバイスを用いて細胞の遺伝子発現を解析する方法であって、
該微小反応槽の中には、増幅用プライマー配列、細胞識別配列、分子識別配列、およびオリゴ(dT)配列を含むプローブが固定された固相担体が1個以上充填されており、
上記方法が、
前記微小反応槽1つ当たり単一の細胞が対応するように、複数の細胞を前記微小反応槽へ導入する工程と、
前記単一細胞由来のmRNAを前記プローブに捕捉する工程と、
前記捕捉されたmRNAの逆転写反応により1st cDNAを合成し、単一細胞由来の1st cDNAライブラリを前記固相担体上で作製する工程と、
前記固相担体を(プールして)洗浄する工程と、
前記1st cDNAライブラリから2nd cDNAを合成する工程と、
前記1st cDNAと前記2nd cDNAとからなる2本鎖DNAの断片化およびタグ配列の付加を行う工程と、
前記固相担体を洗浄液で洗浄して、固定化された2本鎖DNA断片以外の成分を除去する工程と、
前記2本鎖DNA断片について、前記増幅用プライマー配列および前記タグ配列の少なくとも一部の配列または少なくとも一部に相補的な配列を有するプライマーを用いて増幅を行い、前記mRNAの3’末端配列に由来する配列のみを増幅する工程と、
増幅された配列について、前記細胞識別配列および前記分子識別配列を用いて前記単一細胞毎に遺伝子発現解析を行う工程と
を含む方法を提供する。
本発明に関連する更なる特長は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるものである。
本発明によれば、同時に複数の細胞を一括で、かつmRNAの3’末端に由来する配列のみを増幅して遺伝子発現解析を行うため、解析に要する労力、試薬コストを低減することができる。また1st cDNA合成工程、2nd cDNA合成工程、タグメンテーション工程、およびPCR工程と全体の多工程にわたりmRNAに由来するターゲットDNA分子が固相担体(磁気ビーズ)で保持されているため、工程毎に磁気ビーズを用いた簡便な洗浄により残留試薬を完全に除去すると共に、100%の効率でmRNA由来の全ターゲットDNA分子を回収できる。すなわち各工程における至適な試薬条件を用いて高効率に反応を進めることができる上、精製における試料損失が無い。そのため極微量な1細胞中のmRNA分子から、利用効率を極限まで高めた状態で反応を進めてmRNAの3’末端に由来する配列のみを増幅した最終試料をNGS解析に適用でき、確度・精度の高い網羅的遺伝子発現データを取得することができる。本発明は、創薬、各種疾患におけるメカニズム解明、再生医療などへの応用が可能であり、生命科学の発展にも寄与し得る。
(a)は、微小反応槽がアレイ状に配置されたチップの一例の平面図である。(b)は、チップの一例の断面図であり、拡大図(c)は、細胞溶解後に溶出されたmRNAを微小反応槽内で捕捉する工程の一例を示し、さらに拡大図(d)は、担体(磁性ビーズ)表面において1st cDNAを合成する工程の一例を示した概略図である。 チップを用いた1st cDNA合成後、最終試料であるDNAライブラリを調製してNGS解析を行うまでの各工程の一例を示す概略図である。 (a)は、ランダムプライマーおよび鎖置換型DNAポリメラーゼを用いた担体上での2nd cDNA合成法の別の例の概略図を示す。(b)は、1本鎖DNAリガーゼを用いた担体上での2nd cDNA合成法のまた別の例の概略図を示す。(c)は、ターミナルトランスフェラーゼを用いた担体上での2nd cDNA合成法の別例の概略図を示す。 (a)逆転写反応用プローブ109(配列番号1)、および2nd cDNA合成用のランダムプライマー213である2種類のプローブが固定された担体(磁性ビーズ)表面において1st cDNA合成する工程を示した概略図の一例である。(b)固定化ランダムプライマー213、および鎖置換型DNAポリメラーゼを用いた担体上での2nd cDNA合成法の概略図の一例。 付加された2種類のタグ配列の概略図である。 タグメンテーション反応後に洗浄した試料(実施例1)と、市販キットに添付された中和液を添加した試料を用いてPCR増幅して得た、増幅DNA産物量を示すグラフである。 タグメンテーション反応で得た担体にターゲットDNAが固定された同じ試料を鋳型とし、(1) PCR増幅用配列112を含むForwardプライマー、および19塩基の共通配列部分121を含んだReverseプライマーを利用したPCR増幅産物試料、(2) PCR増幅用配列112を含むForwardプライマー、および特異的配列A部分(14塩基)と特異的配列B部分(15塩基)を共に含んだReverseプライマーを利用したPCR増幅試料、(3) PCR増幅用配列112を含むForwardプライマー、特異的配列A部分(14塩基)と特異的配列B部分(15塩基)を共に含んだReverseプライマー、および増幅サポート用としてNGS用配列プライマー(P5)(配列番号11)とNGS用配列プライマー(P7)を利用したPCR増幅試料、に含まれるDNA量を比較したグラフである。 定量精度を調べる目的で、実施例1に記載の方法でERCC(Ambion、92種類のmRNAが既知量混和された試料)を解析した実験データを示すグラフである。 実施例1に記載の方法による1細胞解析実験データを示すグラフである。 実施例1に記載の方法によって得られた1細胞あたりの平均検出遺伝子数と、チップ(ここでは100種の細胞認識タグ)あたりの総検出遺伝子数を示したグラフである。
本発明は、同時に複数の細胞について1細胞レベルの網羅的遺伝子発現解析を行うための方法に関する。具体的には、複数の微小反応槽がアレイ状に配置されたチップ(もしくはアレイ)が複数枚、並列に組み込まれたデバイスを用いて複数の細胞を同時に捕捉し、1細胞由来のmRNAを高効率に捕捉して1st cDNA合成する。好ましくは、1本のチューブ内に複数細胞に由来する1st cDNAをプールして残留試薬を洗浄する。続いてチューブ内で2nd cDNA合成後、タグメンテーション反応(または、DNA断片化酵素により2本鎖DNAを断片化させる反応後、さらにライゲーション反応によりタグ配列を付加する反応)後にタグメンテーション阻害剤を含む界面活性剤で洗浄することで不要な断片化DNAを除去し、mRNAの3’末端部分のみを効率よくPCR増幅させる。これを精製した最終試料中には、諸反応工程の途中の「試料損失」を回避し、初期試料(各細胞におけるmRNAの3’末端)の利用効率を極限まで高めて得られたDNAが多く含まれる。
本明細書において「遺伝子発現解析」とは、サンプル(細胞、組織切片など)における遺伝子、すなわちmRNAの発現を定量的に分析すること、サンプルにおける遺伝子(mRNA)の発現分布を分析すること、サンプルにおける特定の細胞または位置と遺伝子(mRNA)発現量との相関データを得ることなどを意味する。サンプルは、遺伝子発現を解析しようとする生体由来サンプルであれば特に限定されるものではなく、細胞サンプル、組織サンプル、液体サンプルなどの任意のサンプルを用いることができる。また、サンプルの由来となる生体も特に限定されるものではない。なお、本明細書では、解析対象のmRNAの3’末端に由来するDNA断片を総称して「ターゲットDNA」と定義する。
本明細書において「網羅的遺伝子発現解析」とは、細胞に含まれる複数の遺伝子を並列的に発現解析することを意味し、例えば、少なくとも1000以上の遺伝子について、並列的に発現解析するものである。また「1細胞レベルの遺伝子発現解析」とは、1細胞に含まれる遺伝子(mRNA)の発現解析を意味し、複数細胞に含まれる遺伝子の平均的な発現解析とは区別されるものである。
一態様において、本開示は、複数の微小反応槽を有するデバイス、例えばチップ(もしくはアレイ)が複数枚、並列に組み込まれたデバイスを用いて細胞の遺伝子発現を解析する方法であって、
該微小反応槽の中には、増幅用プライマー配列、細胞識別配列、分子識別配列、およびオリゴ(dT)配列を含むプローブが固定された固相担体が1個以上充填されており、
前記方法が、
前記微小反応槽1つ当たり単一の細胞が対応するように、複数の細胞を前記微小反応槽へ導入する工程と、
前記単一細胞由来のmRNAを前記プローブに捕捉する工程と、
前記捕捉されたmRNAの逆転写反応により1st cDNAを合成し、単一細胞由来の1st cDNAライブラリを前記固相担体上で作製する工程と、
前記固相担体を(プールして)洗浄する工程と、
前記1st cDNAライブラリから2nd cDNAを合成する工程と、
前記1st cDNAと前記2nd cDNAとからなる2本鎖DNAの断片化およびタグ配列の付加を行う工程と、
前記固相担体を洗浄液で洗浄して、固定化された2本鎖DNA断片以外の成分を除去する工程と、
前記2本鎖DNA断片について、前記増幅用プライマー配列および前記タグ配列の少なくとも一部の配列または少なくとも一部に相補的な配列を有するプライマーを用いて増幅を行い、前記mRNAの3’末端配列に由来する配列のみを増幅する工程と、
増幅された配列について、前記細胞識別配列および前記分子識別配列を用いて前記単一細胞毎に遺伝子発現解析を行う工程と
を含む方法を提供する。
複数の微小反応槽を有するデバイスは、遺伝子発現を解析するために構成されたチップ、いわゆる二次元アレイが複数枚、並列に組み込まれたものであり、このデバイスの微小反応槽の中には、増幅用プライマー配列、細胞識別配列、分子識別配列、およびオリゴ(dT)配列を含むプローブが固定された固相担体が1個以上充填されている。このようなデバイスは当技術分野で公知であり、特に限定されるものではない。例えば特許文献1、特許文献2、国際公開WO2016/038670号などに記載されているデバイスを用いることができる。
微小反応槽に充填される固相担体は、mRNAの捕捉効率を上げるために表面積の大きい材料を用いて作製することが好ましく、例えば、1個以上のビーズ、多孔質構造、メッシュ構造などを採用することが好ましい。固相担体としてビーズを用いる場合には、樹脂材料(ポリスチレンなど)、酸化物(ガラスなど)、金属(鉄など)、セファロース、およびこれらの組み合わせなどからビーズを作製することができる。操作の簡便性から、磁性ビーズ(paramagnetic bead)を使用することが好ましい。固相担体は、径10nm~100μmのサイズのもの、例えば径10nm~100μmのサイズのビーズであることが好ましい。また、このような固相担体が微小反応槽から漏出しないように細孔シートまたは多孔質膜などを配置してもよい。
固相担体には、増幅用プライマー配列、細胞識別配列、分子識別配列、およびオリゴ(dT)配列を含むプローブが固定されるが、このようなプローブは慣用的なオリゴヌクレオチド合成法により合成することができ、また当技術分野で公知の任意の方法により固相担体に固定することができる。オリゴ(dT)の重合度は、mRNAのポリA配列とハイブリダイズして、mRNAをオリゴ(dT)が固定された固相担体に捕捉しうる重合度であればよい。例えば、10~20塩基程度とすることができる。増幅用プライマー配列をプローブへ導入することで、増幅工程(例えばPCR)においてこの配列を共通プライマーとして利用することができる。また細胞認識配列については、微小反応槽ごとに異なる既知配列を有する細胞認識配列を使用する。例えば5塩基のランダム配列を使用した場合、45=1024の位置または領域を認識することが可能となる。すなわち、1度の操作で1024個の単一細胞について各細胞由来のmRNA(ターゲットDNA)を識別しながら解析することができる。さらに、分子認識配列については、プローブ分子(mRNA分子、もしくはmRNA由来のDNA分子)ごとに異なるランダム配列を有する分子認識配列を使用する。分子認識配列(例えば7塩基)をプローブへ導入すると、47=1.6×105分子を認識することができるため、次世代シーケンサ(NGS)で得られる増幅産物についての配列データから同じ細胞由来で同じ遺伝子の配列をもった増幅産物が、どの分子由来であるかを認識することが可能となる。つまり分子認識配列を利用して増幅バイアスの補正を行うことができるため、高精度な定量データを得ることができる。上記細胞識別配列および分子識別配列については、例えば国際公開WO2014/141386号に詳細が記載されている。
なお、後続の2nd cDNAの合成のために、固相担体にランダムプライマーを含むDNAプローブがさらに固定されていてもよい。ランダムプライマーは、プライマーとして機能し得る長さおよび組成であれば特に限定されるものではなく、例えば6~15塩基の長さのランダムプライマーを使用することができる。
微小反応槽の各々には、1個の貫通孔が形成されており、その貫通孔に単一細胞が捕捉される。該貫通孔は、解析しようとする細胞の大きさに応じて適宜設定可能であるが、好ましくは直径10μm以下とする。
上記デバイスを用いて、微小反応槽1つ当たり単一の細胞が対応するように、複数の細胞を微小反応槽へ導入する。その際、貫通孔に対して負圧を印加(吸引)することで、貫通孔のそれぞれに単一細胞が捕捉される。必要に応じて、観察装置により貫通孔への細胞の捕捉が行われているかを確認し、必要に応じて細胞を再度導入する。捕捉されなかった細胞は後続の工程に影響を及ぼすため、例えば洗浄液の導入と排出により、取り除くことが好ましい。
次いで、単一細胞由来のmRNAを、固相担体に固定されたプローブに捕捉する。本発明において、「mRNAの捕捉」とは、細胞内に含まれるmRNA分子を抽出して、他の細胞成分と分離することを意味する。具体的には、当技術分野で公知の細胞溶解液を微小反応槽に分注し、捕捉されたそれぞれの単一細胞からmRNAを抽出する。例えば、タンパク質分解酵素、チオシアン酸グアニジン・グアニジン塩酸などのカオトロピック塩、TweenおよびSDSなどの界面活性剤、あるいは市販の細胞溶解用試薬(例えばLysis溶液)を用いて、細胞を溶解し、それに含まれる核酸、すなわちmRNAを溶出することができる。必要に応じて、観察装置により細胞溶解の状況を確認する。溶出したmRNAは、プローブのオリゴ(dT)配列との結合によってプローブに捕捉される。
必要に応じて洗浄液を用いて、デバイス、微小反応槽、および固相担体を洗浄して、不要な成分および試薬を除去する。
次に、捕捉されたmRNAの逆転写反応により、mRNAの配列またはその一部の配列に対して相補的な配列を有する1st cDNAを合成する。この1st cDNA合成、すなわち相補鎖合成は、当技術分野で公知の方法により行うことができる。例えば、慣用的な逆転写酵素、またはテンプレートスイッチ(Template switch)機能を有する逆転写酵素を用いて逆転写反応を行うことによって、cDNAを合成することができる。合成反応後は、mRNAを、例えばRNaseを用いて分解除去する。この結果、固相担体上には、mRNAに対応する1st cDNAから構成されるcDNAライブラリが作製される。微小反応槽1つには単一細胞が対応するため、単一細胞由来の1st cDNAライブラリを、それぞれの微小反応槽に含まれる固相担体上に作製することができる。
その後、固相担体(1st cDNAライブラリ)を洗浄する工程を実施することにより、残留試薬、例えば、逆転写酵素、DNA分解酵素などを除去することができ、その後の2nd cDNA合成工程や増幅工程を阻害されることなく実施することができる。
上記固相担体を洗浄する工程の前または後に、単一細胞由来1st cDNAライブラリが固定化された固相担体を、複数の細胞分プールする工程を行う。例えば、1つのチップ上の複数の微小反応槽それぞれで作製された単一細胞由来1st cDNAライブラリが固定化された固相担体をまとめて1つのチューブなどに入れて、複数の細胞分の1st cDNAライブラリのプールとすることができる。1st cDNAライブラリは、例えばチップあたり100~10000個程度の細胞分をプールすることが可能である。これにより、単一細胞由来1st cDNAライブラリの複数の細胞分について一括して後続の工程を行うことができ、操作の簡略化と試薬コストの削減を図ることができる。なお、上述の通り、固相担体には細胞認識配列が存在することから、複数細胞分の1st cDNAライブラリを混合してプールしても、遺伝子発現解析の際にはいずれの微小反応槽由来(いずれの単一細胞由来)であるかを識別することが可能である。さらには、1つのデバイスには複数のチップが並列組み込まれているため、例えば16枚のチップが組み込まれたデバイスを用いることで、1回の反応あたり1600~160000個の細胞を処理することが可能となる。最終的に調製された試料中には、PCR増幅の工程でチップ認識タグも導入されるため、全ての細胞由来のサンプルを1つにプールして次世代シーケンサで解析しても、細胞を区別して遺伝子発現解析を行うことが可能である。
次に、1st cDNAライブラリから2nd cDNAを合成する。2nd cDNA合成工程は、当技術分野で公知の相補鎖合成反応を利用して行うことができる。いくつかの例を示すが、当業者であれば適切な方法を選択し実施することができる。1つの方法は、ランダムプライマーおよび鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを用いた相補鎖伸長反応により2nd cDNAを合成するものである。ランダムプライマーは、プライマーとして機能し得る長さおよび組成であれば特に限定されるものではなく、例えば6~15塩基の長さのランダムプライマーを使用することができる。鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼも当技術分野で公知であり、例えばPhi29 DNAポリメラーゼ、Bst DNA ポリメラーゼ、Csa DNAポリメラーゼなどが市販されている。この方法により、例えば図2の(a)に示すような反応が起こり、高い合成効率で2nd cDNAを合成することが可能である。
2nd cDNA合成工程の別の例は、1st cDNA合成の際にテンプレートスイッチ機能を有する逆転写酵素を使用した場合、1st cDNAに特異的配列が付加されるため、その特異的配列を利用するものである。例えば、SmartScribe Reverse Transcriptase、SuperScriptII, SuperScript IVなどが市販されている。すなわち、付加された特異的配列に相補的な配列を含むプライマーを用いた相補鎖伸長反応により2nd cDNAを合成する。DNAポリメラーゼは慣用のものを使用することができ、例えば、Tks Gflex DNAポリメラーゼ、Ex Hot start DNA Polymerase、Platinum Taq DNA Polymerase High Fidelityなどが市販されている。この方法により、例えば図1-2の「2nd cDNA合成後、洗浄」に示すような反応が起こり、2nd cDNAを合成することが可能である。
2nd cDNA合成工程のまた別の例は、まず1本鎖DNAリガーゼを用いて既知配列を1st cDNAの3’末端へ付加し、この既知配列に相補的な配列を含むプライマーを用いた相補鎖伸長反応により2nd cDNAを合成するものである。1本鎖DNAリガーゼは、例えばCirc Ligase ssDNA Ligaseなどが市販されている。また付加する既知配列も適当な長さおよび組成とすることができ、例えば10~30塩基の長さの配列を付加することができる。この方法により、例えば図2の(b)に示すような反応が起こり、2nd cDNAを合成することが可能である。
2nd cDNA合成工程のさらに別の例は、まずターミナルトランスフェラーゼ(TdT)により1st cDNAの3’末端へポリ塩基配列(ポリT、A、GまたはC配列)を付加し、このポリ塩基配列に相補的な配列を含むプライマーを用いた相補鎖伸長反応により2nd cDNAを合成するものである。ターミナルトランスフェラーゼ(TdT)およびDNAポリメラーゼは慣用のものを使用することができ、当業者であれば適宜選択して使用し得る。また付加するポリ塩基配列も適当な種類および長さとすることができ、例えば10~30塩基の長さのポリ塩基配列とすることができる。この方法により、例えば図2の(c)に示すような反応が起こり、2nd cDNAを合成することが可能である。
2nd cDNA合成工程の別の実施形態として、固相担体に予めランダムプライマーを含むDNAプローブが固定されており、2nd cDNA合成工程において、固相担体に固定されたランダムプライマーおよび鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを用いた相補鎖伸長反応により2nd cDNAを合成し、cDNA増幅するものである。鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼは上述した通りであり、任意のものを使用することができる。この方法により、例えば図3の(b)に示すような反応が起こり、2nd cDNAを合成し、さらにcDNAを増幅することが可能である。そのため、極微量にしか存在しないmRNAであっても、増幅により感度を高めることが可能となる。さらに2nd cDNA合成反応、および増幅反応の効率を高める目的で、反応液相中にもランダムプライマー(未固定、図2の(a))を添加することで、液相中および固相担体上の両方から反応を進ませても構わない。
2nd cDNA合成後、cDNAと2nd cDNAとからなる2本鎖DNAの断片化およびタグ配列の付加を行う。1つの方法として、タグメンテ―ション反応を利用することができる。タグメンテ―ション反応は、2本鎖DNAを断片化してタグ配列を付加するものであり、当技術分野で公知の反応である。使用する酵素(トランスポザーゼ)および試薬も市販されており、当業者であれば適当な酵素および試薬を使用してタグメンテ―ション反応を実施することができる。別の方法として、DNA断片化酵素により2本鎖DNAを断片化させる反応を行った後、ライゲーション反応によりタグ配列を付加する反応を行う。DNA断片化酵素およびライゲーションに使用する酵素(リガーゼ)もまた当技術分野で公知であり、当業者であれば適当な試薬を選択することが可能である。付加されるタグ配列は、後続の増幅工程においてプライマーが結合するのに好適な長さおよび組成を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば20~35塩基程度の長さの塩基配列とすることができる。
次いで、固相担体を洗浄液で洗浄して、固定化された2本鎖DNA断片以外の成分を除去する。前工程のDNA断片化およびタグ付加に使用する酵素、特にタグメンテ―ション反応に使用する酵素(トランスポザーゼ)の活性を直ちに停止させて、後続の工程への影響を少なくすることが可能である。例えば、使用する酵素に対する阻害作用を有する洗浄液で固相担体を洗浄することが好ましい。この洗浄工程により、数百塩基と短いターゲットDNA(すなわちmRNAの3’末端に由来する配列)のみを抽出し、副産物である他の配列のDNAを除去する事が可能となる。すなわち後続の遺伝子発現解析工程において、通常の完全長DNA配列を用いる場合に比べ、遺伝子同定(配列決定)および定量解析におけるコスト、労力および解析時間の削減を図ることができる。
そして、2本鎖DNA断片について、増幅用プライマー配列およびタグ配列の少なくとも一部の配列または少なくとも一部に相補的な配列を有するプライマーを用いて増幅を行い、mRNAの3’末端配列に由来する配列のみを増幅する。プライマーには、他の配列を付加してもよく、例えば使用したチップを識別するための配列や、後続のNGS解析に要する配列を付加してもよい。プライマーの設計、増幅反応の条件などは、当技術分野で公知であり、増幅対象の配列の長さ、使用する試薬などに応じて適宜選択し得る。また、1st cDNAライブラリを固相担体上に作製し、各種の反応(1st cDNA合成工程、2nd cDNA合成工程、およびタグメンテーション工程)の後に残留試薬や副産物を洗浄により簡便かつ完全に除去することができるため、固相担体に固定された状態で試料損失なく、mRNAの3’末端配列に由来する配列であるターゲットDNAのみを得ることができる。これをPCR増幅して得た試料は、各細胞に由来する極微量なmRNA分子から利用効率を極限まで高めて調製されたターゲットDNAのみを含むため、最終的な遺伝子発現解析において良好な結果を得ることが可能となる。
次いで、増幅された配列について、細胞識別配列および分子識別配列を用いて単一細胞に遺伝子発現解析を行う。具体的には、増幅された配列をNGS(次世代シーケンサ)による配列決定に供し、単一細胞における遺伝子発現を解析する。増幅された配列には、チップ識別配列、細胞識別配列、および分子識別配列が含まれるため、それらを指標として、いずれのチップに由来するのか、いずれの単一細胞に由来するのか、いずれの分子に由来するのかを識別して遺伝子発現を解析することが可能となる。
上述した本開示の遺伝子発現解析方法は、各工程を実施するために必要なデバイス、酵素などの試薬、洗浄液、使い捨て容器(チューブ)、かかる方法の実施についての説明を含む説明書などを含むキットを用いることによって、容易かつ簡便に行うことができる。
また本開示の遺伝子発現解析方法は、各工程を実施するために必要な複数のチップを組み込んだデバイス、試薬や洗浄液などを導入する手段、チップを観察する手段、チップに負圧を印加(吸引)する手段などを備えたシステムを用いることによって、容易かつ簡便に行うことができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、単一細胞レベルの網羅的遺伝子発現解析手法例を示すものであり、本発明を限定するものではない。
1細胞レベルでの網羅的遺伝子発現解析方法は、図1-1の(a)~(d)、および図1-2に記載のフローに示すように、微小反応槽がアレイ上に配置されたチップ上での(1)細胞捕捉工程、(2)細胞溶解後のmRNA捕捉工程、(3)担体表面での1st cDNA合成工程、(4)1st cDNAライブラリ固定化担体(磁性ビーズ)を1チューブ内へ展開してプール・洗浄する工程、(5)2nd cDNAを合成し、洗浄する工程、(6)タグメンテーション反応し、洗浄する工程、(7)PCR増幅工程、(8)NGS解析する工程、を含む。場合によっては、上記工程(4)をチップが搭載されたデバイス中で自動的に行い、担体にDNAが保持された状態のPCR増幅前までの工程(上記反応工程(1)(2)(3)(4)(5)(6)部分)について、上記デバイスを用いて一括で行うことも可能である。本実施例の方法により、多数の細胞の各々から同時に試料調製する諸工程の労力を低減することが可能となる。各工程に関する詳細を、以下に説明する。
(1) チップ上での細胞捕捉工程
100個の微小反応槽103がアレイ状に配置したチップ100(図1-1の(a)平面図、(b)断面図)を16枚、搭載したデバイスを用意する。この微小反応槽103の中は、PCR増幅用配列112(配列番号4)、微小反応槽ごとに異なる6塩基の既知配列である細胞識別配列111(配列番号3)、プローブ分子毎に異なる7塩基のランダム配列からなる分子識別配列110(配列番号2)、およびオリゴ(dT)VNの配列で構成される逆転写反応用プローブ109(配列番号1)が高密度に固定化された担体(好ましくは磁性ビーズ)104が潤沢に充填してある。微小反応槽の上面には細胞よりも小さい径(2~6μm)の微小貫通孔102が存在し、さらに下面は多孔質素材膜(孔径:0.8μm、ミリポア社)130で密着させることで担体を保持しながら試薬が通過させられる試薬排出部105が存在している。すなわち、本実施例で使用するデバイスはチップの下方向から陰圧をかけることが可能な構造であるため、微小反応槽の試薬排出部105を通過して微小反応槽の上部・内部から試薬を排出することができる。まず始めにデバイスに搭載された全てのチップ100の上面へ、RNase Inhibitor(1U/μL)を含んだ2μLのPhosphate buffered saline(PBS)を添加後、陰圧をかけることでPBSを排出させ、微小反応槽103を洗浄する。Green fluorescent protein(GFP)を発現させたヒト大腸がん細胞(HCT116)を100細胞/μLとなるようにPBSで希釈した細胞懸濁液を用意し、約80細胞が含まれる0.8μLを全チップの上面へ添加し、ただちに陰圧をかける。これによってPBSはチップ下面から排出され(図1-1の(b))、微小貫通孔102よりも十分に大きい細胞101が微小反応槽103の上面に捕捉される。
各細胞101を微小反応槽の上面で複数個(本実施例では投入細胞数:1280個)、同時に捕捉することができる。蛍光顕微鏡を用いた観察により、約1分間以内で細胞捕捉が完了することを確認する。最終結果であるNGS解析データ出力後、細胞識別配列111を手がかりに微小反応槽の位置が特定できるため、この細胞捕捉の動画・画像と照らし合わせることでどのようなサイズ、状態の細胞であったかを調べることができる。
(2) 担体上でのmRNA捕捉工程
2μLの細胞溶解試薬(100 mM Tris (pH8.0)、500 mM NaCl、10 mM EDTA、1%SDS、5 mM DTT)を全チップの上面へ添加し、弱く陰圧をかけながら室温で2分間インキュベートさせる。この操作により細胞膜106(図1-1の(c))および核膜107は溶解し、各細胞中に含まれるmRNA 108が微小反応槽中に溶出する。mRNAの3’末端にはポリA配列が存在するため、逆転写反応用プローブ109の3’末端側に含まれるオリゴ(dT)配列部分で、mRNA分子は捕捉される(図1-1の(d))。例えば径1μmの担体104あたりに固定される逆転写反応用プローブ109は5 x 104~105分子であり、微小反応槽あたりに充填される担体が105~2 x 105個であることから、微小反応槽あたりの逆転写反応用プローブ数は5 x 109~2 x 1010分子となる。すなわち、1細胞あたり存在する105~106分子のmRNAを捕捉するためのプローブとしては十分量であり、高効率でmRNAを捕捉することが可能である。
(3) 担体表面での1st cDNA合成工程
デバイス内の陰圧を強くすることで完全に細胞溶解試薬を除去する。さらに2μLの細胞洗浄液(100 mM Tris (pH8.0)、500 mM NaCl、5 mM DTT)を全チップの上面へ添加し、ただちに陰圧をかける。この操作を2回行うことで、各微小反応槽をよく洗浄し、後続の逆転写反応の阻害剤となり得る細胞溶解試薬を除去する。4μLの逆転写反応試薬(1x Lysis buffer、1x Ultra Low First strand Buffer、SMART-Seq v4 Oligo 115 (3.6μM)、SMART Scribe RT(13.8 U/μL)、RNase Inhibitor (1.5 U/μL):タカラバイオ社)を全チップの上面へ添加し、緩やかな陰圧をかけることで微小反応槽内へ試薬を満たさせた後、42℃ 90分間インキュベートさせる。これにより、捕捉されたmRNA分子108を鋳型として、逆転写反応用プローブ109の3’方向に1st cDNA 113が合成される。本実施例で使用した逆転写酵素SMART Scribe RTはテンプレートスイッチ(Template Switch:TS)機能を持つため、合成された1st cDNAは3’末端に数塩基の特異的配列114が付加される。次にこの特異的配列114と相補的配列を3’末端側に含むSMART-Seq v4 Oligo 115が相補鎖結合し、これを鋳型としてさらに1st cDNA合成が進む。従って、最終的に合成された1st cDNAは、3’末端側にSMART-Seq v4 Oligo 115の相補的配列、5’末端にPCR増幅用配列112(配列番号4)、細胞識別配列111(配列番号3)、および分子識別配列110(配列番号2)を有する(図1-1の(d))。本工程により、同時に複数の1細胞において、発現している全遺伝子由来のmRNAから1st cDNAライブラリを担体に固定させた状態で合成することができる。
(4) 1st cDNAライブラリ固定化担体を1チューブ内でプール・洗浄する工程
デバイス内の陰圧をやや強くすることで逆転写反応液を除去し、チップ100、およびチップ下面で担体を保持するとともに試薬排出部105の役割を担っていた多孔質素材膜130を、ピンセットで取り出してチューブ116内の20μLの担体展開用バッファ117(50 mM Tris、50 mM NaCl、0.1%Tween20、pH8.0)中へ入れる。チップは自家蛍光が少ない柔軟性のある素材(PDMSなど)であり、多孔質素材膜も柔軟性のある素材であるため、チューブ底部分にネオジウム磁石118を設置しながらバッファ内でチップをピンセットで揺する、もしくは揉むことで、容易に微小反応槽に充填された担体104はバッファ117内へ展開される。これにより、チップを用いて同時に複数の各細胞から合成された1st cDNAライブラリ試料がプールされる。細胞識別配列111が各1st cDNAライブラリ(微小反応槽)毎に異なっているため、本工程でプールしてもNGS解析データにおいて細胞毎に区別することが可能であるため問題はない。またプールする細胞数が多いほど、試料調製に要する労力・コストの低減化が可能となる。目視で全ての担体がバッファ内へ展開されたことを確認し、チップおよび多孔質素材膜をチューブから除去する。ネオジウム磁石118で担体104を捕捉しながら逆転写反応試薬の残留試薬などが溶出したバッファを除去し、50μLの担体洗浄液(10 mM Tris、0.1%Tween20 (pH8.0))で洗浄後、担体を1μLの10 mM Tris (pH 8.0)へ懸濁させる。
(5) 2nd cDNAを合成し、洗浄する工程
5μLの2nd cDNA合成試薬(1x Tks Gflex Buffer、Tks Gflex DNA polymerase (0.125 U/μL)、2nd cDNA合成用プライマー119(0.72μM):タカラバイオ社)を同チューブ内の担体と混和し、98℃ 1分間→58℃ 5分間→68℃ 6分間の温度条件でサーマルサイクラーを用いて反応させ、2nd cDNA 120を合成する。ネオジウム磁石118で担体を捕捉しながら、2nd cDNA合成反応の残留試薬が含まれる上澄みを除去し、50μLの担体洗浄液(10 mM Tris、0.1%Tween20 (pH8.0))で洗浄する。
(6) タグメンテーション反応し、洗浄する工程
1μLのタグメンテーション試薬(0.25μLの滅菌水、0.5μLのAmplicon Tagment Mix、0.25μLのTagment DNA bufferから成る混和液:イルミナ社)を担体と混和し、55℃で2.5分間インキュベート後10℃まで温度を下げる。タグメンテーション試薬に含まれるトランスポザーゼによって、担体に保持された状態の2本鎖DNAが、250~1000塩基以下に断片化されると同時に、共通配列部分121(配列番号5)および特異的配列A部分122(配列番号6)からなるタグ配列A、および共通配列部分121および特異的配列B部分123(配列番号7)からなるタグ配列Bの2種類のタグ配列(図4)がランダムに付加される。反応終了後ただちに、氷上で冷やした50μLの高濃度塩を含有する界面活性剤洗浄液(0.1%Tween20、100 mM Tris (pH8.0)、500 mM NaCl)を添加し、ネオジウム磁石118で担体を捕捉しながら、タグメンテーション反応の残留試薬が含まれる上澄みを除去する。この操作を2回繰り返して洗浄した後、氷上で冷やした50μLの洗浄液(0.1%Tween20、20 mM Tris (pH8.0))で同様に2回繰り返して洗浄する。この操作によって、トランスポザーゼを直ちに完全除去して活性を停止させることができるとともに、担体に保持されていないDNA断片(タグメンテーション反応における副産物)は完全に除去できるのでターゲットDNA(mRNAの3’末端由来の配列を有する)のみが担体に保持された状態で得ることができる。ここで担体に保持された状態で断片化されたDNAは、タグ配列Aおよびタグ配列Bのいずれかの配列が付加されている。
また、一般のタグメンテーション反応(イルミナ社)では、中和液を添加して5分間インキュベートさせることで反応活性を低減させている。この従来法では完全に停止させることは困難であり、次工程に進むまでのわずかな時間(数十秒、数分)においても、過剰なDNA断片化活性によりターゲットDNAが短断片(200~250塩基以下)へ壊されてしまう試料損失の課題があった。図5は、本実施例の方法である担体洗浄を利用した試料と、従来法である中和液を利用した試料を用いたPCR増幅後のDNA量を比較した実験データである。断片化による試料損失の影響をうけた従来法(右側のグラフ)に対し、本実施例の方法では得られたDNA量は2.5倍も増大していることが確認できる(左側のグラフ)。特に1細胞解析など微量DNAを反応させる場合において試料損失の課題は検出感度および定量精度に大きく影響を及ぼすため深刻であったが、本実施例の方法はこの課題を回避することが出来る。
(7) PCR増幅工程
DNAポリメラーゼを事前に活性化させる目的で、28.6μLの反応液(1x Tks Gflex Buffer、Tks Gflex DNA polymerase (0.025 U/μL):タカラバイオ社)を98℃ 1分間インキュベート後、4℃へ冷却させる。この反応液へPCR増幅用配列112(配列番号4)の5’側にNGS解析用配列(P5_R1SP)124(配列番号8)が付加されたForwardプライマー(10μM)を1μL、および共通配列部分121(配列番号5)の5’側にチップ識別配列126(配列番号10)、およびNGS解析用配列(P7_R2SP)125(配列番号9)が付加されたReverseプライマーを0.4μL混和してPCR反応溶液30μLを調製し、タグメンテーション反応後の試料と氷上にて混和させる。続いて68℃ 30秒間→98℃ 45秒間インキュベートした後、98℃ 15秒間→60℃ 45秒間→68℃ 30秒間を14サイクルのPCR増幅をサーマルサイクラーで実施し、4℃へ冷却させる。ネオジウム磁石を用いて上澄みである約30μLのPCR増幅産物試料を別チューブへ採取する。20μLの0.1%Tween 20(10 mM Tris (pH8.0))で担体表面およびチューブ内壁を洗浄して残留したPCR産物を追加回収し、PCR増幅産物試料と混和させる(計50μL)。AmpureXPビーズを用いてDNA試料を精製・定量し、NGS解析の為の最終試料127を得た。このPCR増幅工程では、チップ(チューブ)毎に異なった5塩基の既知配列であるチップ識別配列126をターゲットDNAへ導入する。すなわち本実施例で用いた16枚分のチップの識別が可能となるため、100種類の細胞識別配列111と組み合わせることで合計1600細胞について理論上区別することができる。すなわち、1回のNGS解析で1600個の細胞について網羅的遺伝子発現解析を行うことが可能となる。
また本実施例の方法では、タグメンテーション反応後に得た、タグ配列A、およびタグ配列Bのいずれかの配列が付加された担体固定化DNA(mRNAの3’末端由来のDNA配列)を鋳型とし、両方のタグ配列が共に有する19塩基の共通配列部分121(配列番号5)(図4)を含んだReverseプライマーを利用している。これに対し従来法では、特異的配列A部分(14塩基)(図4)、および特異的配列B部分(15塩基)(図4)を利用したプライマーを利用しており、鋳型と相補鎖結合する配列が14~15塩基と短いためにターゲットDNAの相補鎖結合力は弱い。図6は、タグメンテーション反応で得た担体にターゲットDNAが固定された同じ試料を鋳型とし、(1)PCR増幅用配列112(配列番号4)を含むForwardプライマー、および19塩基の共通配列部分121を含んだReverseプライマーを利用したPCR増幅産物試料、(2)PCR増幅用配列112を含むForwardプライマー、および特異的配列A部分(14塩基)と特異的配列B部分(15塩基)を共に含んだReverseプライマーを利用したPCR増幅試料、(3)PCR増幅用配列112を含むForwardプライマー、特異的配列A部分(14塩基)と特異的配列B部分(15塩基)を共に含んだReverseプライマー、および増幅サポート用としてNGS用配列プライマー(P5)(配列番号11)とNGS用配列プライマー(P7)(配列番号12)を利用したPCR増幅試料、に含まれるDNA量を比較した実験データである。本実施例の方法である(1)では、試料中のDNA量が有意に多いことが確認できる。すなわち本実施例の方法の(1)では相補鎖結合配列が19塩基と長いため、14~15塩基と短い従来法である(2)(3)に対して安定に鋳型とアニールできて高効率なPCR増幅ができたと考えられる。さらに一般的には、鋳型となるターゲットDNA(mRNAの3’末端に由来するDNA配列)は、担体に固定化されていないため、タグメンテーション反応における副産物(mRNAの3’末端以外に由来するDNA断片で、2種類のタグが付加されたもの)が試料中に残存するため、PCR増幅工程では副産物の増幅のためにDNAポリメラーゼ、プライマー類が消化されて、ターゲットDNAの増幅効率はさらに低くなると考えられる。また副産物由来のPCR増幅産物は、NGS解析における定量精度・感度に対しても悪影響を及ぼす。もって、本実施例の方法は従来の増幅工程における諸問題を回避することが可能である。
(8) NGS解析する工程
1枚のチップ100あたり80個の細胞を投入・捕捉し、諸工程を経て得られた最終試料127を用いてNGS装置128で解析を行う。すなわち得られたシーケンスリードを、100種類の細胞識別配列111で分離後、細胞識別配列あたりのシーケンスリード中に検出された遺伝子数を調べた結果、検出遺伝子数値における連続性が異なった3種類のデータを確認できる(図8)。すなわち、微小反応槽103あたり複数細胞が捕捉されたと想定される2~3細胞データ、1細胞データ、および細胞が捕捉されなかった(諸工程がうまくワークしなかった)と想定される0細胞データが各々確認できる。1細胞データにおける平均検出遺伝子は7818個であり、1チップ100あたりの総検出遺伝子数は15773であった(図9)。補足であるが、本実施例ではMiseq(イルミナ社)のNGS装置を用いており、スループットが15M~20Mリード/ランとやや低いため、細胞あたりのリード数は平均0.14Mリードと少なかった。本試料を1Gリード/ランより高スループットなNGS装置を用いて細胞あたり1Mリードほど得られれば、細胞あたりの検出遺伝子数も1チップあたりの総検出遺伝子数である15773へ近似すると考えられる。これにより、1細胞レベルの網羅的遺伝子発現解析が可能であることが実証できた。また、92種類のmRNAが既知量ミックスされたERCC(Ambion)を用いて、本実施例の方法による定量精度を調べた。その結果、1細胞相当量(0.614pg)から得たデータにおけるR2値は0.9073であり、100細胞相当量(61.4pg)から得たデータにおけるR2値は0.9714であり、高い定量精度が実証できた(図7)。
実施例1と同様に微小反応槽がアレイ上に配置されたチップ上での(1)細胞捕捉工程、(2)細胞溶解後のmRNA捕捉工程、(3)担体表面での1st cDNA合成工程、(4)1st cDNAライブラリ固定化担体(磁性ビーズ)を1チューブ内へ展開してプール・洗浄する工程、(5)2nd cDNAを合成し、洗浄する工程、(6)タグメンテーション反応し、洗浄する工程、(7)PCR増幅工程、(8)NGS解析する工程、を含む。本実施例は、(3)の担体表面での1st cDNA合成工程において、実施例1で用いた高価なTS機能を有する逆転写酵素ではなく、安価な逆転写酵素を利用するため試料調製試薬におけるコスト低減が可能となる。また(5)2nd cDNAを合成し、洗浄する工程では、ランダムプライマーおよび鎖置換型DNAポリメラーゼを利用するため、実施例1に比べて2nd cDNA合成効率の向上が見込める。実施例1と異なる「(3)担体表面での1st cDNA合成工程」、および「(5)2nd cDNAを合成し、洗浄する工程」に関する詳細を、以下に説明する。他工程は実施例1と同じである。
(3) 担体表面での1st cDNA合成工程-TS機能のない逆転写酵素を利用
実施例1と同様に微小反応槽がアレイ上に配置されたチップ上での(1)細胞捕捉工程、(2)細胞溶解後のmRNA捕捉工程を行った後、デバイス内の陰圧を強くすることで完全に細胞溶解試薬を除去する。さらに2μLの細胞洗浄液(100 mM Tris (pH8.0)、500 mM NaCl、5 mM DTT)を全チップの上面へ添加し、ただちに陰圧をかける。この操作を2回行うことで、各微小反応槽をよく洗浄し、後続の逆転写反応の阻害剤となりえる細胞溶解試薬を除去する。4μLの逆転写反応試薬(1x FS buffer、25 mM DTT、2.5 mM dNTPs、0.75% NP40、RNase OUT (4 U/μL)、SuperScriptIII (20 U/μL): Thermo Fisher社)を全チップの上面へ添加し、緩やかな陰圧をかけることで微小反応槽内へ試薬を満たさせた後、50℃ 50分間インキュベートさせる。これにより、捕捉されたmRNA分子108を鋳型として、逆転写反応用プローブ109の3’方向に1st cDNA 113が合成される。従って、最終的に合成された1st cDNAの5’末端にはPCR増幅用配列112(配列番号4)、細胞識別配列111(配列番号3)、および分子識別配列110(配列番号2)が存在する。本工程により、同時に複数の1細胞において、発現していた全遺伝子由来のmRNAから1st cDNAライブラリを担体に固定させた状態で合成することができる。
(5) 2nd cDNAを合成し、洗浄する工程-ランダムプライマーおよび鎖置換型DNAポリメラーゼを利用
実施例1と同様に(4)1st cDNAライブラリ固定化担体(磁性ビーズ)を1チューブ内へ展開してプール・洗浄する工程を行った後、本試料とExonuclease I試薬(1x Buffer、Exonuclease I(1U/μL))を混和して5μLの反応液とし、37℃で15分間インキュベートする。つづいてExonuclease Iを熱失活させるため80℃で15分間インキュベートする。50μLの洗浄液(0.1%Tween20、10 mM Tris (pH8.0))で担体を2回繰り返して洗浄する。この操作により2nd cDNA合成の阻害となり得る、1st cDNA合成に寄与せず担体表面に残留した1本鎖の逆転写反応用プローブ200が分解・除去できる(図2の(a))。続いて同じチューブへ5μLのRNase H試薬(50 mM This-HCl (pH8.3)、75 mM KCl、3 mM MgCl2、20 mM DTT、RNase H (1U/μL):Thermo Fisher社)を添加して担体と混和し、37℃で15分間インキュベートした後、50μLの洗浄液(0.1%Tween20、10 mM Tris (pH8.0))で担体を2回繰り返して洗浄する。この操作によりmRNA 108を分解・除去できる。次に5μLの2nd cDNA合成試薬(10μMランダムプライマー201(配列番号13)、1x Bst Reaction Buffer、0.25 mM dNTP mix、Bst DNA polymerase (1.6U/μL):日本ジーン社)を添加して担体と混和し、50℃で30分間インキュベートする。本試薬は鎖置換型DNA polymeraseを含むため、1st DNA 113の複数個所でアニールしたランダムプライマー201を起点として、前方向で合成された鎖(202、203)と置き換わるように相補鎖結合反応が次々に進む(図2の(a))。始めに合成された相補鎖は担体から外れて液相中に存在する副産物205となり、1st DNA 113の3’側付近にアニールしたランダムプライマーによって合成された相補鎖である2nd cDNA 204は、最終的に担体に捕捉された状態で得ることができる。ネオジウム磁石118で担体を捕捉しながら、2nd cDNA合成反応の残留試薬、および担体から外れて液相中に存在する副産物205が含まれる上澄みを除去し、50μLの担体洗浄液(10 mM Tris、0.1%Tween20 (pH8.0))で洗浄する。
後続工程である(6)タグメンテーション反応し、洗浄する工程、(7)PCR増幅工程、(8)NGS解析する工程は、実施例1と同じである。
実施例1および2と同様、微小反応槽がアレイ上に配置されたチップ上での(1)細胞捕捉工程、(2)細胞溶解後のmRNA捕捉工程、(3)担体表面での1st cDNA合成工程、(4)1st cDNAライブラリ固定化担体(磁性ビーズ)を1チューブ内へ展開してプール・洗浄する工程、(5)2nd cDNAを合成し、洗浄する工程、(6)タグメンテーション反応し、洗浄する工程、(7)PCR増幅工程、(8)NGS解析する工程、を含む。本実施例は、実施例2と同じくTS機能のない安価な逆転写酵素を利用するため、コスト低減が可能となる。また1本鎖DNAリガーゼによって付加された5’リン酸化_3’ジデオキシシチジン修飾オリゴ207(配列番号14)を利用し、相補的配列のプライマー208(配列番号15)による相補鎖合成によって2nd cDNA 209を合成する(図2の(b))。実施例2と異なる「(5)2nd cDNAを合成し、洗浄する工程」に関する詳細を、以下に説明する。
実施例1および2と同様に微小反応槽がアレイ上に配置されたチップ上での(1)細胞捕捉工程、(2)細胞溶解後のmRNA捕捉工程を行う。実施例2と同じ方法で、(3)担体表面での1st cDNA合成工程を実施後、実施例1および2と同様に(4)1st cDNAライブラリ固定化担体(磁性ビーズ)を1チューブ内へ展開してプール・洗浄する工程を行う。
(5) 2nd cDNAを合成し、洗浄する工程-1本鎖DNAリガーゼを利用
実施例2と同じく、本試料とExonuclease I試薬(1x Buffer、Exonuclease I(1U/μL):タカラバイオ社)を混和して5μLの反応液とし、37℃で15分間インキュベートする。つづいてExonuclease Iを熱失活させるため80℃で15分間インキュベートする。50μLの洗浄液(0.1%Tween20、10 mM Tris (pH8.0))で担体を2回繰り返して洗浄する。この操作により2nd cDNA合成の阻害となり得る、1st cDNA合成に寄与せず担体表面に残留した1本鎖の逆転写反応用プローブ200が分解・除去できる(図2の(b))。続いて同じチューブへ5μLのRNase H試薬(50 mM This-HCl (pH8.3)、75 mM KCl、3 mM MgCl2、20 mM DTT、RNase H (1U/μL):Thermo Fisher社)を添加して担体と混和し、37℃で15分間インキュベートした後、50μLの洗浄液(0.1%Tween20、10 mM Tris (pH8.0))で担体を2回繰り返して洗浄する。この操作により分解されたmRNA 206が除去できる。続いて同チューブへ4μLの1本鎖DNAリガーゼ試薬(1x Buffer、50μM dATP、2.5 mM MgCl2、Circ ssDNA Ligase (0.25U/μL) 5’リン酸化_3’ジデオキシシチジン修飾オリゴ207(配列番号14))を添加して担体と混和し、60℃ 1時間→80℃ 10分間インキュベートする。この反応によって5’リン酸化_3’ジデオキシシチジン修飾オリゴ207が1st cDNAの3’末端に付加される。続いて5μLの2nd cDNA合成試薬(1x Tks Gflex Buffer、Tks Gflex DNA polymerase (0.125 U/μL: タカラバイオ社)、6μM 2nd cDNA合成用プライマー208(配列番号15))を同チューブ内の担体と混和し、98℃ 1分間→50℃ 5分間→68℃ 6分間の温度条件でサーマルサイクラーを用いて反応させ、2nd cDNA 209を合成する(図2の(b))。ネオジウム磁石118で担体を捕捉しながら、2nd cDNA合成反応の残留試薬が含まれる上澄みを除去し、50μLの担体洗浄液(10 mM Tris、0.1%Tween20 (pH8.0))で洗浄する。
後続工程である(6)タグメンテーション反応し、洗浄する工程、(7)PCR増幅工程、(8)NGS解析する工程は、実施例1と同じである。
実施例1~3と同様、微小反応槽がアレイ上に配置されたチップ上での(1)細胞捕捉工程、(2)細胞溶解後のmRNA捕捉工程、(3)担体表面での1st cDNA合成工程、(4)1st cDNAライブラリ固定化担体(磁性ビーズ)を1チューブ内へ展開してプール・洗浄する工程、(5)2nd cDNAを合成し、洗浄する工程、(6)タグメンテーション反応し、洗浄する工程、(7)PCR増幅工程、(8)NGS解析する工程、を含む。本実施例は、実施例2および3と同じくTS機能のない安価な逆転写酵素を利用するため、コスト低減が可能となる。ターミナルトランスフェラーゼを用いて1st cDNAの3’末端へ連続塩基(本実施例ではポリT配列)210を付加し、相補的配列(本実施例ではポリA配列)211(配列番号16)のプライマーを用いた相補鎖合成によって2nd cDNA 212を合成する(図2の(c))。実施例2および3と異なる「(5)2nd cDNAを合成し、洗浄する工程」に関する詳細を、以下に説明する。
実施例1~3と同様に微小反応槽がアレイ上に配置されたチップ上での(1)細胞捕捉工程、(2)細胞溶解後のmRNA捕捉工程を行う。実施例2と同じ方法で、(3)担体表面での1st cDNA合成工程を実施後、実施例1~3と同様に(4)1st cDNAライブラリ固定化担体(磁性ビーズ)を1チューブ内へ展開してプール・洗浄する工程を行う。
(5) 2nd cDNAを合成し、洗浄する工程-ターミナルトランスフェラーゼを利用
実施例2および3と同じく、本試料とExonuclease I試薬(1x Buffer、Exonuclease I(1U/μL):タカラバイオ社)を混和して5μLの反応液とし、37℃で15分間インキュベートする。つづいてExonuclease Iを熱失活させるため80℃で15分間インキュベートする。50μLの洗浄液(0.1%Tween20、10 mM Tris (pH8.0))で担体を2回繰り返して洗浄する。この操作により2nd cDNA合成の阻害となり得る、1st cDNA合成に寄与せず担体表面に残留した1本鎖の逆転写反応用プローブ200が分解・除去できる(図2の(c))。続いて同じチューブへ5μLのRNase H試薬(50 mM This-HCl (pH8.3)、75 mM KCl、3 mM MgCl2、20 mM DTT、RNase H (1U/μL):Thermo Fisher社)を添加して担体と混和し、37℃で15分間インキュベートした後、50μLの洗浄液(0.1%Tween20、10 mM Tris (pH8.0))で担体を2回繰り返して洗浄する。この操作により分解されたmRNA 206(図2の(c))が除去できる。同チューブへ12μLのトランスフェラーゼ反応液(5 mM Tris-HCl (pH8.3)、25 mM KCl、0.75 mM MgCl2、1.5 mM dATP、RNase H (0.15U/μL)、ターミナルトランスフェラーゼ (0.188U/μL)、0.45% NP40)を添加して担体と混和後、30℃ 15分間→70℃ 5分間インキュベートする。50μLの洗浄液(0.1%Tween20、10 mM Tris (pH8.0))で担体を2回繰り返して洗浄する。この反応により1st cDNAの3’末端へ連続塩基(本実施例ではポリT配列)210を付加できる。続いて5μLの2nd cDNA合成試薬(1x Tks Gflex Buffer、Tks Gflex DNA polymerase (0.125 U/μL)、1μM 3’末端BN付加_ポリA配列プライマー211(配列番号16):タカラバイオ社)を同チューブ内の担体と混和し、98℃ 1分間→44℃ 5分間→68℃ 6分間の温度条件でサーマルサイクラーを用いて反応させ、2nd cDNA 212を合成する(図2の(c))。ネオジウム磁石118で担体を捕捉しながら、2nd cDNA合成反応の残留試薬が含まれる上澄みを除去し、50μLの担体洗浄液(10 mM Tris、0.1%Tween20 (pH8.0))で洗浄する。
後続工程である(6)タグメンテーション反応し、洗浄する工程、(7)PCR増幅工程、(8)NGS解析する工程は、実施例1と同じである。
実施例1~4と同様、微小反応槽がアレイ上に配置されたチップ上での(1)細胞捕捉工程、(2)細胞溶解後のmRNA捕捉工程、(3)担体表面での1st cDNA合成工程、(4)1st cDNAライブラリ固定化担体(磁性ビーズ)を1チューブ内へ展開してプール・洗浄する工程、(5)2nd cDNAを合成し、洗浄する工程、(6)タグメンテーション反応し、洗浄する工程、(7)PCR増幅工程、(8)NGS解析する工程、を含む。ただし本実施例では、逆転写反応用プローブ109だけでなくランダムプライマー213も固定した担体を微小反応槽103へ充填したチップを利用する(図3の(a)および(b))。また実施例2~4と同じくTS機能のない安価な逆転写酵素を利用するため、コスト低減が可能となる。
逆転写反応用プローブ109(配列番号1)だけでなくランダムプライマー(5’側に新たなPCR用配列を付加しても構わない)213も固定した担体を用いている点以外は、実施例1と同じく微小反応槽がアレイ上に配置されたチップ上での(1)細胞捕捉工程、(2)細胞溶解後のmRNA捕捉工程を行う。実施例2~4と同じ方法で、(3)担体表面での1st cDNA合成工程を実施後(図3の(a))、実施例1と同様に(4)1st cDNAライブラリ固定化担体(磁性ビーズ)を1チューブ内へ展開してプール・洗浄する工程を行う。続いて同じチューブへ5μLのRNase H試薬(50 mM This-HCl (pH8.3)、75 mM KCl、3 mM MgCl2、20 mM DTT、RNase H (1U/μL):Thermo Fisher社)を添加して担体と混和し、37℃で15分間インキュベートした後、50μLの洗浄液(0.1%Tween20、10 mM Tris (pH8.0))で担体を2回繰り返して洗浄する。この操作によりmRNA 108を分解・除去できる(図3の(a))。実施例1~4と異なる「(5)2nd cDNAを合成し、洗浄する工程」に関する詳細を、以下に説明する。
(5) 2nd cDNAを合成し、洗浄する工程-固定化ランダムプライマーおよび鎖置換型DNA polymeraseを利用
同チューブへ5μLの鎖置換型DNA polymeraseを含む2nd cDNA合成試薬(1x Bst Reaction Buffer、0.25 mM dNTP mix、Bst DNA polymerase (1.6U/μL:日本ジーン社))を添加して担体と混和し、50℃で30分間インキュベートする。本工程では、1st DNA 113が担体に固定化されたランダムプライマー213と相補的な配列部分でアニールし、2nd cDNA 214が合成される(図3の(b))。すなわち、実施例1~4と異なり、2nd cDNA鎖側も担体に固定された状態で得られる。次に異なるランダムプライマーと相補的な部分で1st cDNAがアニールし、新たな2nd cDNA 215が合成され得る。このように1分子の1st cDNAから複数の2nd cDNA分子が合成され、またこの増幅された2nd cDNA分子は担体上の逆転写反応用プローブ109(配列番号1)とさらにアニールできることから新たなcDNA鎖が合成され得る。すなわち担体に捕捉された状態で1細胞由来のcDNAを増幅させることができる(図3の(b))。これにより低発現遺伝子においても検出感度および定量精度を向上させることができる。続いて、ネオジウム磁石118で担体を捕捉しながら、2nd cDNA合成反応の残留試薬、および担体から外れて液相中に存在する副産物205が含まれる上澄みを除去し、50μLの担体洗浄液(10 mM Tris、0.1%Tween20 (pH8.0))で洗浄する。
後続工程である(6)タグメンテーション反応し、洗浄する工程、(7)PCR増幅工程、(8)NGS解析する工程は、実施例1と同じである。
100:チップ
101:細胞
102:微小貫通孔
103:微小反応槽
104:担体
105:試薬排出部
106:溶解された細胞膜
107:溶解された核膜
108:mRNA
109:逆転写反応用プローブ
110:分子識別配列
111:細胞識別配列
112:PCR増幅用配列
113:1st DNA
114:Template Switch(TS)機能を有した逆転写酵素により付加されたTS特異的配列
115:SMART-Seq v4 Oligo
116:PCRチューブ
117:担体展開用バッファ
118:ネオジウム磁石
119:2nd cDNA合成用プライマー
120:2nd cDNA
121:共通配列部分(19塩基)
122:特異的配列A部分(14塩基)
123:特異的配列B部分(15塩基)
124:NGS解析用配列(P5_R1SP)
125:NGS解析用配列(P7_R2SP)
126:チップ識別配列
127:最終試料
128:NGS解析装置
130:多孔質素材膜
200:Exonuclease Iにより分解された1本鎖の逆転写反応用プローブ109
201:ランダムプライマー
202:201より先に1st cDNA 113へアニールして鎖置換型DNAポリメラーゼにより相補鎖伸長反応した鎖
203:201、202より先に1st cDNA 113へアニールして鎖置換型DNAポリメラーゼにより相補鎖伸長反応した鎖
204:担体に固定された2nd cDNA
205:担体から外れて液相中に存在する副産物
206:RNaseにより分解されたmRNA
207:1本鎖DNAリガーゼで付加された5’リン酸化_3’ジデオキシシチジン修飾オリゴ
208:207と相補的な配列を含む2nd cDNA合成用プライマー
209:208を利用して合成された2nd cDNA
210:ターミナルトランスフェラーゼにより付加されたポリT配列
211:3’末端にBNが付加されたポリA配列プライマー
212:ポリA配列プライマー211を利用して合成された2nd cDNA
213:担体固定化ランダムプライマー
214:担体に固定化された2nd cDNA
215:1st cDNAの3’末端側で新たにランダムプライマーがアニールして合成された2nd
cDNA
下記に示す配列は全て人工(Artificial)のオリゴヌクレオチドであり、5’→3’方向に示す。
配列番号1:逆転写反応用プローブ109(100種類ある細胞識別タグの一例を示す)
CCATCTCATCCCTGCGTGTCTCCGACTCAGCGTACTNNNNNNNTTTTTTTTTTTTTTTTTTVN
配列番号2:分子識別配列110(N=A、G、C、T)
NNNNNNN
配列番号3:細胞識別配列111(100種類ある既知配列中の一例を示す)
CGTACT
配列番号4:PCR増幅用配列112
CCATCTCATCCCTGCGTGTCTCCGACTCAG
配列番号5:共通配列部分121
AGATGTGTATAAGAGACAG
配列番号6:特異的配列A部分122
TCGTCGGCAGCGTC
配列番号7:特異的配列B部分123
GTCTCGTGGGCTCGG
配列番号8:NGS解析用配列(P5_R1SP)124
AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT
配列番号9:NGS解析用配列(P7_R2SP)125
CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATGTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCT
配列番号10:チップ識別配列126(16種類ある中の一例を示す)
CGATA
配列番号11:P5
AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACAC
配列番号12:P7
CAAGCAGAAGACGGCATACGAGAT
配列番号13:ランダムプライマー201(N=A、G、C、T)
NNNNNNNNN
配列番号14:5’リン酸化_3’ジデオキシシチジン修飾オリゴ207
(5’P)AGCAACGCACTTTGAATTTTGTAATCCTGAAGGG(3’ddC)
配列番号15:207と相補的な配列を含む2nd cDNA合成用プライマー208
CCCTTCAGGATTACAAAATTCAAAGTGCGTTGCT
配列番号16:3’BN付加ポリA配列プライマー211(B=G、C、T、 N=A、G、C、T)
AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAABN

Claims (16)

  1. 複数の微小反応槽を有するデバイスを用いて細胞の遺伝子発現を解析する方法であって、
    該微小反応槽の中には、増幅用プライマー配列、細胞識別配列、分子識別配列、およびオリゴ(dT)配列を含むプローブが固定された固相担体が1個以上充填されており、
    前記方法が、
    前記微小反応槽1つ当たり単一の細胞が対応するように、複数の細胞を前記微小反応槽へ導入する工程と、
    前記単一細胞由来のmRNAを前記プローブに捕捉する工程と、
    前記捕捉されたmRNAの逆転写反応により1st cDNAを合成し、単一細胞由来の1st cDNAライブラリを前記固相担体上で作製する工程と、
    前記固相担体を洗浄する工程と、
    前記1st cDNAライブラリから2nd cDNAを合成する工程と、
    前記1st cDNAと前記2nd cDNAとからなる2本鎖DNAの断片化およびタグ配列の付加を、2本鎖DNAに対するタグメンテーション反応により行う工程と、
    前記固相担体を前記タグメンテーション反応に使用する酵素に対する阻害作用を有する洗浄液で洗浄して、固定化された2本鎖DNA断片以外の成分を除去する工程と、
    前記2本鎖DNA断片について、前記増幅用プライマー配列および前記タグ配列の少なくとも一部の配列または少なくとも一部に相補的な配列を有するプライマーを用いて増幅を行い、前記mRNAの3’末端配列に由来する配列のみを増幅する工程と、
    増幅された配列について、前記細胞識別配列および前記分子識別配列を用いて前記単一細胞毎に遺伝子発現解析を行う工程と
    を含む方法。
  2. 前記タグ配列が特異的配列部分および共通配列部分を含み、前記増幅工程において、前記タグ配列のうち該共通配列または該共通配列に相補的な配列を増幅することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記固相担体を洗浄する工程の前または後に、前記単一細胞由来1st cDNAライブラリが固定化された固相担体を、複数の細胞分プールする工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記単一細胞由来1st cDNAライブラリが固定化された固相担体を、10~100000個の細胞分をプールすることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
  5. 前記固相担体が径10nm~100μmのサイズであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記固相担体が磁性ビーズであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記逆転写反応をテンプレートスイッチ(Template switch)機能を有する逆転写酵素を用いて行うことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記2nd cDNA合成工程において、ランダムプライマーおよび鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを用いた相補鎖伸長反応により2nd cDNAを合成することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記2nd cDNA合成工程において、テンプレートスイッチ機能を有する逆転写酵素により付加された特異的配列に相補的な配列を含むプライマーを用いた相補鎖伸長反応により2nd cDNAを合成することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
  10. 前記2nd cDNA合成工程において、1本鎖DNAリガーゼを用いて既知配列を前記1st cDNAの3’末端へ付加し、該既知配列に相補的な配列を含むプライマーを用いた相補鎖伸長反応により2nd cDNAを合成することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記2nd cDNA合成工程において、ターミナルトランスフェラーゼ(TdT)により1st cDNAの3’末端へポリT、A、GまたはCのポリ塩基配列を付加し、該ポリ塩基配列に相補的な配列を含むプライマーを用いた相補鎖伸長反応により2nd cDNAを合成することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記固相担体に、増幅用プライマー配列、細胞識別配列、分子識別配列、およびオリゴ(dT)配列を含むプローブと、ランダム配列を含むプライマーとが固定されており、前記2nd cDNA合成工程において、前記固相担体に固定されたランダムプライマーおよび鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを用いた相補鎖伸長反応により2nd cDNAを合成し、cDNA増幅することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記微小反応槽の各々に直径10μm以下の貫通孔が形成されており、前記細胞導入工程において、該貫通孔に単一細胞が捕捉されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記洗浄液が500mMの濃度の塩を含有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記微小反応槽の中に、前記プローブが固定された固相担体が複数個充填されている、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 5 x 104~105分子の前記プローブが固定された固相担体が105~2 x 105個充填されている、請求項15に記載の方法。
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