以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る吊り足場1の斜視図であり、図2は、吊り足場1の側面図である。図2に示すように、吊り足場1は、デッキ2と、作業床を構成するパネル材3と、吊り部材4とを備えている。パネル材3は、例えば木製足場板、鋼製足場板、アンチ(板付き布枠)等で構成されており、作業用の足場となる作業床を構成することができる部材であれば、特に限定されない。パネル材3の大きさや形状も、デッキ2の大きさや形状に合わせて任意に設定することができる。また、パネル材3の数も、デッキ2の大きさや形状によって変更可能である。
吊り部材4は、デッキ2を構成するデッキビーム20~35(後述する)を建築物に吊り下げるための部材であり、例えば金属製のチェーン等で構成することができる。吊り部材4の上側は、例えば建築物等に対して直接または吊り具用金物等を介して間接的に固定されている。吊り部材4の下側にデッキビーム20~35が固定される。吊り部材4の本数は、デッキ2の大きさや形状に合わせて任意の本数にすることができる。また、吊り部材4の長さは、建築物や作業内容等に応じて任意の長さに変更することができる。また、吊り部材4の位置は、建築物や作業内容に応じて任意の位置にすることができる。上記デッキビーム20~35は、パネル材3が設置されるとともに水平方向に延びる足場構成部材である。
図1では、パネル材3と、吊り部材4の一部を省略している。吊り足場1は、各種建築物の建築現場や各種土木作業現場において、その作業の種類や内容等に応じて構築されるものである。例えば、橋梁の架設や橋梁の補修工事等においても吊り足場1を使用することができる。建設作業以外にも、メンテナンス作業時にも吊り足場1が構築される。吊り足場1は、例えば規模の大きな生産設備や工場施設である各種プラントの建築現場やメンテナンス作業現場で構築するのに適している。各種プラントでは、建物の外部に複数の配管が入り組むようにして設けられており、これら配管に対する作業や建物に対する作業を行う際に、本実施形態に係る吊り足場1を構築することができる。
図1に示すように、デッキ2は、第1デッキ2A、第2デッキ2B、第3デッキ2C、第4デッキ2D及び第5デッキ2Eを備えている。デッキ2は、第1デッキ2Aのみで構成されていてもよいし、任意の複数のデッキ2A~2Eで構成されていてもよく、その数は5つに限られるものではない。第1デッキ2Aは、第2~第5デッキ2B~2Eとは別に組み立てられるデッキであり、ファーストデッキとも呼ばれる。第1デッキ2Aを例えば地上で組み立てた後、吊り部材4によって建築物に吊り下げることで、第2~第5デッキ2B~2Eよりも先に作業床を形成できる。その後、第1デッキ2Aの作業床に作業員が上がって第2デッキ2Bを組み立て、第2デッキ2Bの組み立てが完了した後、第2デッキ2Bの作業床に作業員が上がって第3デッキ2Cを組み立て、このようにして第5デッキ2Eまで組み立てることで、作業床を順次拡張していくことが可能になっている。つまり、本実施形態の吊り足場1は、既設のデッキ(第1デッキ2A)を吊り下げた状態で順次、足場を拡張していくことが可能な先行床施工型吊り足場である。尚、吊り足場1には、図示しないが、手摺、幅木、布材等が取り付けられていてもよい。
第1デッキ2Aは、基端側デッキビーム20と、右側短型デッキビーム21と、左側短型デッキビーム22と、第1中間デッキビーム23とで構成されている。基端側デッキビーム20と第1中間デッキビーム23とは同じものであり、互いに対向している。また、右側短型デッキビーム21と左側短型デッキビーム22とは同じものであり、互いに対向している。右側短型デッキビーム21及び左側短型デッキビーム22の長さは、基端側デッキビーム20及び第1中間デッキビーム23の長さよりも短く設定されている。基端側デッキビーム20と右側短型デッキビーム21とは直交しており、また、基端側デッキビーム20と左側短型デッキビーム22とは直交している。また、第1中間デッキビーム23と右側短型デッキビーム21とは直交しており、また、第1中間デッキビーム23と左側短型デッキビーム22とは直交している。したがって、基端側デッキビーム20と第1中間デッキビーム23とは平行であり、また右側短型デッキビーム21と左側短型デッキビーム22とは平行である。
このように、1つのデッキ2Aを構成する4つのデッキビーム20~23は、平面視で矩形状をなすように配置されている。そして、基端側デッキビーム20と右側短型デッキビーム21及び左側短型デッキビーム22とが接続され、また第1中間デッキビーム23と右側短型デッキビーム21及び左側短型デッキビーム22とが接続されている。これらデッキビーム20~23の接続構造については後述する。4つのデッキビーム20~23の長さは全て同じでもよい。また、デッキビーム20~23の長さは、2種類に限られるものではなく、任意に設定することができ、あくまでも例であるが、短いものから順に、610mm、914mm、1219mm、1524mm、1829mm等とすることもでき、この場合は5種類の長さのデッキビームを任意に組み合わせてデッキ2A~2Eを構成することができる。上記寸法は、例えばデッキビームの両端に取り付けるビームジョイントの中心~中心までの寸法とすることができる。
尚、例えば第1デッキ2Aにおいて対向するデッキビーム20、23の長さ(またはデッキビーム21、22の長さ)は同じにする。これにより、第1デッキ2Aは、長方形か正方形となる。デッキビーム20~23の長さ、幅、上下方向の寸法等の諸元を予め決めておくことで、デッキビーム20~23を規格品とすることができ、システム化された吊り足場1を構成できる。
また、第2デッキ2Bは、第1デッキ2Aと同様に平面視で矩形状をなしており、第1中間デッキビーム23と、第1右側デッキビーム24と、第1左側デッキビーム25と、第2中間デッキビーム26とで構成されている。第1中間デッキビーム23は第1デッキ2Aと共通化されている。第2デッキ2Bを構成するデッキビーム23~26は同じ長さである。
また、第3デッキ2Cは、第2デッキ2Bと同様に平面視で矩形状をなしており、第2中間デッキビーム26と、第2右側デッキビーム27と、第2左側デッキビーム28と、第3中間デッキビーム29とで構成されている。第2中間デッキビーム26は第2デッキ2Bと共通化されている。第3デッキ2Cを構成するデッキビーム26~29は同じ長さである。
また、第4デッキ2Dは、第2デッキ2Bと同様に平面視で矩形状をなしており、第3中間デッキビーム29と、第3右側デッキビーム30と、第3左側デッキビーム31と、第1奥側デッキビーム32とで構成されている。第3中間デッキビーム29は第3デッキ2Cと共通化されている。第4デッキ2Dを構成するデッキビーム29~32は同じ長さである。
また、第5デッキ2Eは、第2デッキ2Bと同様に平面視で矩形状をなしており、第3左側デッキビーム31と、第1奥側デッキビーム33と、第2奥側デッキビーム34と、第3奥側デッキビーム35とで構成されている。第3左側デッキビーム31は第4デッキ2Dと共通化されている。第5デッキ2Eを構成するデッキビーム31、33~35は同じ長さである。
例えば、図3に示すように、第2デッキ2Bの第1右側デッキビーム24と第1左側デッキビーム25を、第1中間デッキビーム23及び第2中間デッキビーム26よりも短くしてもよい。第2デッキ2Bを構成するデッキビーム23~26は、互いに上下方向に延びる軸周りに相対回動可能に接続されている。デッキビーム23~26を相対回動させることにより、図4に示すように第2中間デッキビーム26を第1中間デッキビーム23、即ち第1デッキ2Aに近づけることができる。図4に示す回動状態となるように、第1右側デッキビーム24及び第1左側デッキビーム25を第1中間デッキビーム23に対して傾斜した姿勢で接続し、さらに、第2中間デッキビーム26を第1右側デッキビーム24及び第1左側デッキビーム25に対して傾斜した姿勢で接続する。これにより、第2中間デッキビーム26を第1デッキ2Aに近い位置で第1右側デッキビーム24及び第1左側デッキビーム25に接続できるので、第1デッキ2A上からの接続作業が容易に行える。その後、図3に示すように、デッキビーム23~26が長方形を形成するように、デッキビーム23~26を相対回動させる。その後、デッキビーム23~26が回動しないように、回動阻止部材(図示せず)によってロックしておく。回動阻止部材は、例えば第1左側デッキビーム25と第1中間デッキビーム23との角度を90゜で保った状態で固定することが可能な部材であればよく、例えば第1左側デッキビーム25と第1中間デッキビーム23の端部に嵌合するキャップ状に形成された部材や、第1左側デッキビーム25と第1中間デッキビーム23の端部を固定するクランプ等を挙げることができる。尚、第3デッキ2C、第4デッキ2D及び第5デッキ2Eも第2デッキ2Bと同様に構成することができる。
すなわち、次のようにして吊り足場1を構築することができる。まず、第1デッキ2Aを地上で組み立てた後、建築物に吊り下げる工程を行う。この工程では、パネル材3を第1デッキ2Aに設置しておく。その後、第1デッキ2Aのパネル材3上の作業員が第2デッキ2Bを構成するデッキビーム24、25を、第1デッキ2Aを構成しているデッキビーム23に対して回動可能に連結する工程を行う。このとき、第2デッキ2Bを構成するデッキビーム26を、第1デッキ2Aを構成しているデッキビーム23に近づけておく。次いで、デッキビーム24、25、26を回動させて長方形または正方形の第2デッキ2Bとする工程を行う。しかる後、第2デッキ2Bにパネル材3を設置する。このようにして第5デッキ2Eまで形成する。これが吊り足場構築方法である。
(デッキビームの構成)
第1~第5デッキ2A~2Eを構成するデッキビーム20~35は長さが異なるだけで同じ構造とすることができる。デッキビーム20~35は、水平方向に延びる中心線を対称の中心として上下対称構造である。また、上述した各デッキビーム20~35の名称は説明の便宜のために付しただけである。図5は、相対的に長いデッキビーム20(23~35)の例を示しており、また、図6は、相対的に短いデッキビーム21(22)の例を示している。図5に示すデッキビーム20のみで第1~第5デッキ2A~2Eが構成されていてもよいし、図6に示すデッキビーム21のみで第1~第5デッキ2A~2Eが構成されていてもよい。
図5に示すように、デッキビーム20は、上側パイプ材40と、下側パイプ材41と、一側連結材42と、他側連結材43と、中間パイプ材(短支柱)44とを備えている。上側パイプ材40及び下側パイプ材41は、例えば円形断面を有する鋼管等で構成されており、具体的には、従来から仮設足場を構成している単管建地や布材等の部材である。よって、上側パイプ材40及び下側パイプ材41の外径は、単管建地や布材等と同じである。
上側パイプ材40は水平に延びている。下側パイプ材41は、上側パイプ材40から下方に離れて配置され、当該上側パイプ材40と平行に延びている。上側パイプ材40の外径と下側パイプ材41の外径とは同じであるが、異なっていてもよい。また、上側パイプ材40の長さと下側パイプ材41の長さとは同じである。デッキビーム20の長さは、上側パイプ材40の長さに相当する。平面視でデッキビーム20の長手方向に直交する方向をデッキビーム20の左右方向と定義し、デッキビーム20の左右方向はデッキビーム20の幅方向と呼ぶこともできる。
一側連結材42及び他側連結材43は、それぞれ、上側パイプ材40及び下側パイプ材41に対して例えば溶接等によって固定されており、当該上側パイプ材40材及び当該下側パイプ材41を連結するための部材である。一側連結材42は、上側パイプ材40の一端部から下側パイプ材41の一端部まで延び、左右方向に互いに間隔をあけて配設された左右一対の金属製の板材42a、42bで構成されている。左側の板材42aは、上側パイプ材40の一端部の外周面における下側部分から下側パイプ材41の一端部の外周面における上側部分まで連続して延びるとともに、デッキビーム20の長手方向にも延びており、平面視で上側パイプ材40及び下側パイプ材41の軸線から左方向に偏位している。右側の板材42bは、左側の板材42aと平行であり、平面視で上側パイプ材40及び下側パイプ材41の軸線から右方向に偏位している。平面視では、左右の板材42a、42bが上側パイプ材40によって隠れるように位置付けられる。
他側連結材43は、上側パイプ材40の他端部から下側パイプ材41の他端部まで延び、左右方向に互いに間隔をあけて配設された左右一対の板材43a、43bで構成されている。左側の板材43aは、上側パイプ材40の他端部の外周面における下側部分から下側パイプ材41の他端部の外周面における上側部分まで連続して延びるとともに、デッキビーム20の長手方向にも延びており、平面視で上側パイプ材40及び下側パイプ材41の軸線から左方向に偏位している。右側の板材43bは、左側の板材43aと平行であり、平面視で上側パイプ材40及び下側パイプ材41の軸線から右方向に偏位している。一側連結材42と他側連結材43とは同じ構造である。従って、デッキビーム20は、長手方向の中央部を通って鉛直方向に延びる直線を対称の中心とした対称構造となっている。
中間パイプ材44は、例えば鋼管等で構成されており、上側パイプ材40の長手方向中間部から下側パイプ材41の長手方向中間部まで延びている。中間パイプ材44の上端部は、上側パイプ材40の外周面における下側部分に対して上側ブラケット44aを介して固定されている。中間パイプ材44の下端部は、下側パイプ材41の外周面における上側部分に対して下側ブラケット44bを介して固定されている。中間パイプ材44も上側パイプ材40及び下側パイプ材41に対して溶接等で固定することができる。したがって、上側パイプ材40と下側パイプ材41とは、長手方向両端部だけではなく、中間部同士も連結されることになるので、デッキビーム20は高い強度を確保することができる。尚、中間パイプ材44の個数は1つに限られるものではなく、2つ以上であってもよい。中間パイプ材44は、足場構成部材に設けられたクサビが差し込まれる差し込み部を有していてもよい。尚、上側パイプ材40及び下側パイプ材41が短い場合には、中間パイプ材44を省略してもよい。
デッキビーム20の左右方向の寸法は、上下方向の寸法よりも短く設定されている。すなわち、デッキビーム20を構成する上側パイプ材40は1本のみであり、上側パイプ材40の側方に別のパイプ材が配設されておらず、また、下側パイプ材41も1本のみであり、下側パイプ材41の側方に別のパイプ材が配設されていない。そして、これら上側パイプ材40及び下側パイプ材41が平面視で左右方向には並ばないように配置されている。具体的には、上側パイプ材40の真下に下側パイプ材41が位置しており、従って、平面視では、上側パイプ材40の軸線と、下側パイプ材41の軸線とが重複する位置関係になる。このように上側パイプ材40及び下側パイプ材41を配置することで、デッキビーム20の左右方向の寸法は、上側パイプ材40ないし下側パイプ材41の外径と等しくなる。尚、中間パイプ材44のブラケット44a、44bの左右方向の寸法が上側パイプ材40ないし下側パイプ材41の外径よりも大きい場合があるが、その差は僅かであるとともに、デッキビーム20の長手方向の一部分のみであるため、デッキ2を構成する上では殆ど問題にならない。また、中間パイプ材44のブラケット44a、44bの左右方向の寸法を上側パイプ材40ないし下側パイプ材41の外径以下としてもよい。
図6に示すデッキビーム21を構成している各部材は、上側パイプ材40及び下側パイプ材41の長さが、図5に示すデッキビーム20を構成しているものと異なるだけであり、基本的には同じ構造であることから、図5と同じ符号を付して説明を省略する。
(直交用デッキビームの構成)
図1に示すように、吊り足場1は、必要に応じて直交用デッキビーム50を備えていてもよい。直交用デッキビーム50の配設位置は任意に設定することができるが、図1に示す例では、第4デッキ2Dと第5デッキ2Eにそれぞれ直交用デッキビーム50を配設しているが、第1~第3デッキ2A~2Cに直交用デッキビーム50を配設してもよい。第4デッキ2Dに配設される直交用デッキビーム50は、互いに対向する一対の第3中間デッキビーム29及び第1奥側デッキビーム32に架け渡され、当該一対のデッキビーム29、32に対して直交するように配置される。直交用デッキビーム50の位置は、第3中間デッキビーム29及び第1奥側デッキビーム32の長手方向であれば、任意に設定できる。尚、互いに対向する一対の第3右側デッキビーム30及び第3左側デッキビーム31に直交用デッキビーム50を架け渡してもよい。また、直交用デッキビーム50は、各デッキビームに設置した後に当該デッキビーム上を水平方向に移動させることができる。
直交用デッキビーム50は、当該直交用デッキビーム50と平行な第3右側デッキビーム30に対して水平方向に離れて配置される。これにより、直交用デッキビーム50と第3右側デッキビーム30との間には開口Aが形成されることになる。この開口Aに、プラントの配管が通るように吊り足場1を構築することで、配管との干渉を回避しながら、広範囲に吊り足場1を構築できる。この場合、直交用デッキビーム50と第3右側デッキビーム30との間の開口Aは、配管が通らない部分のみパネル材3で塞げばよい。
第5デッキ2Eに配設される直交用デッキビーム50は、互いに対向する一対の第3左側デッキビーム31及び第3奥側デッキビーム35に架け渡され、当該一対のデッキビーム31、35に対して直交するように配置される。直交用デッキビーム50の位置は、第3左側デッキビーム31及び第3奥側デッキビーム35の長手方向であれば、任意に設定できる。尚、互いに対向する一対の第1奥側デッキビーム33及び第2奥側デッキビーム34に直交用デッキビーム50を架け渡してもよい。直交用デッキビーム50と第1奥側デッキビーム33との間には開口Bが形成されることになる。この開口Bに、プラントの配管が通るように吊り足場1を構築することもできる。
図7に示すように、直交用デッキビーム50は、上記デッキビーム20と同様な上側パイプ材51及び下側パイプ材52と、一対の板材53a、53bからなる一側連結材53と、一対の板材54a(1枚のみ示す)からなる他側連結材54と、中間パイプ材55とを備えている。中間パイプ材55の上端部は、上側ブラケット55aによって上側パイプ材51に固定されている。中間パイプ材55の下端部は、下側ブラケット55bによって下側パイプ材52に固定されている。
直交用デッキビーム50は、さらに一側係止部56と他側係止部57とを備えている。一側係止部56は、上側パイプ材51及び下側パイプ材52の一端部に固定された金属製の板材で構成されており、下方に開放するとともに、左右方向(平面視で直交用デッキビーム50の長手方向に直交する方向)の両方向に開放している。一側係止部56の開放部分の寸法は、図5及び図6に示す上側パイプ材40及び下側パイプ材41の外径寸法に対応している。具体的には、一側係止部56の開放部分における直交用デッキビーム50の長手方向の寸法は、図5及び図6に示す上側パイプ材40及び下側パイプ材41の外径寸法よりも若干大きめ(がたつきが殆ど生じない程度)に設定されていて、一側係止部56の開放部分から上側パイプ材40及び下側パイプ材41を径方向に挿入することが可能になっている。これにより、例えば図1に示すように、直交用デッキビーム50を第3中間デッキビーム29の上方に配置してから下方へ移動させることにより、一側係止部56を第3中間デッキビーム29に対して上方から係止させて直交用デッキビーム50の落下を防止できる。他側係止部57は一側係止部56と同様に構成されており、上側パイプ材51及び下側パイプ材52の他端部に固定されている。
(回動型ビームジョイント)
図3及び図4に示すように、第2デッキ2Bを構成するデッキビーム23~26を相対回動可能に接続する場合には、回動型ビームジョイント60を使用してデッキビーム23~26を接続する。回動型ビームジョイント60は、吊り足場1を構成する部材であり、水平方向に延びる中心線を対称の中心として上下対称構造である。図8A及び図8Bにも示すように、回動型ビームジョイント60は、共に高強度な金属材からなる第1接続部61と第2接続部62とを備えている。図8A及び図8Bでは、第1中間デッキビーム23と第1右側デッキビーム24とを接続する場合について示しており、第1中間デッキビーム23が第1のデッキビームであり、第1右側デッキビーム24が第2のデッキビームである。回動型ビームジョイント60は、第1中間デッキビーム23の一端部と、第1右側デッキビーム24の一端部とを互いに接続する。尚、図8A及び図8Bに示す例以外にも、回動型ビームジョイント60は他のデッキビームを接続する場合においても使用できる。
回動型ビームジョイント60の第1接続部61は、第1中間デッキビーム23の一側連結材42を構成している左右一対の板材42a、42bの間に差し込まれて当該一対の板材42a、42bに連結される部材である。尚、第1接続部61は、他側連結材43を構成している左右一対の板材43a、43bの間に差し込まれて当該一対の板材43a、43bに連結される部材としても利用できる。
具体的には、第1接続部61は、第1中間デッキビーム23の一対の板材42a、42bの間に差し込まれる板状の本体部61aを備えている。本体部61aは、板材42a、42bに沿って上下方向に延びるとともに、第1中間デッキビーム23の長手方向にも延びている。本体部61aの長手方向の寸法は、板材42a、42bの同方向の寸法よりも長く設定されている。これにより、本体部61aが板材42a、42bの間に差し込まれた状態で、板材42a、42bの間から第1中間デッキビーム23の長手方向両側へ向けて突出する。第1接続部61は、板材42a、42bの間へ向けて第1中間デッキビーム23の一端側から差し込まれるので、差し込み方向を基準として、第1接続部61の先端部は差し込み方向の先端側に位置する端部とし、第1接続部61の基端部は差し込み方向の基端側に位置する端部とする。
本体部61aの先端部寄りの部分は、板材42a、42bの間から突出する部分である。この本体部61aの先端部寄りの部分には、図10に示すような留め具63が挿入される挿入孔61bが厚み方向に貫通するように形成されている。留め具63は、互いに直行する第1棒状部63a及び第2棒状部63bを備えている。第1棒状部63aの先端部は、回動軸63c周りに回動可能になっている。第1棒状部63aを挿入孔61bに挿入した状態で第1接続部61が板材42a、42bの間から抜ける方向に移動しようとすると、第1棒状部63aが板材42a、42bの縁部に当接するので、第1接続部61が板材42a、42bの間から抜けなくなる。第1棒状部63aを挿入孔61bから抜いて留め具63を取り外すことにより、第1接続部61を板材42a、42bの間から抜くことができる。留め具63は、例えば板材42a、42bを貫通するように取り付けることもできる。また、留め具63は、例えば板材42aや本体部61aに対して落下防止用のワイヤやチェーン等(図示せず)で取り付けられている。
図9Aに示すように、第1接続部61の本体部61aの基端部には、上下方向に延びる回動軸部61cが設けられている。回動軸部61cは、水平方向の断面が円形状となっており、例えば円管材や円柱状の部材等で構成されている。回動軸部61cの上端部及び下端部は本体部61aの上端部及び下端部にそれぞれ溶接等により固定されている。回動軸部61cの外周面と、本体部61aの基端側の縦縁部との間には、隙間Sが形成されている。
図8A及び図8Bに示すように、回動型ビームジョイント60の第2接続部62は、第1右側デッキビーム24の一側連結材42を構成している左右一対の板材42a、42bの間に差し込まれて当該一対の板材42a、42bに連結される部材である。尚、第2接続部62は、他側連結材43を構成している左右一対の板材43a、43bの間に差し込まれて当該一対の板材43a、43bに連結される部材としても利用できる。
具体的には、第2接続部62は、第1右側デッキビーム24の一対の板材42a、42bの間に差し込まれる板状の本体部62aを備えている。本体部62aは、第1接続部61の本体部61aと同様に板材42a、42bに沿って上下方向に延びるとともに、第1右側デッキビーム24の長手方向にも延びている。本体部62aの長手方向の寸法は、板材42a、42bの同方向の寸法よりも長く設定されている。これにより、本体部62aが板材42a、42bの間に差し込まれた状態で、板材42a、42bの間から第1右側デッキビーム24の長手方向両側へ向けて突出する。第2接続部62は、板材42a、42bの間へ向けて第1右側デッキビーム24の一端側から差し込まれるので、差し込み方向を基準として、第2接続部62の先端部は差し込み方向の先端側に位置する端部とし、第2接続部62の基端部は差し込み方向の基端側に位置する端部とする。
本体部62aの先端部寄りの部分は、板材42a、42bの間から突出する部分である。この本体部62aの先端部寄りの部分には、第1接続部61と同様に、図10に示すような留め具63が挿入される挿入孔62bが厚み方向に貫通するように形成されている。
第2接続部62の本体部62aの基端部には、上下方向に延びる筒部62cが設けられている。筒部62cは、水平方向の断面が円形状となっており、例えば円管材等で構成されている。筒部62cには、第1接続部61の回動軸部61cが回動可能に差し込まれるようになっている。つまり、筒部62cの内周面と、回動軸部61cの外周面との間には、所定の隙間ができるように、筒部62cの内径及び回動軸部61cの外径が設定されている。また、筒部62cの周壁部の厚みは、図9Aに示す隙間Sよりも薄く設定されている。
第1接続部61と第2接続部62とを接続する際には、まず、回動軸部61cを本体部61aから外した状態にしておく。その後、回動軸部61cを、第2接続部62の筒部62cに差し込む。次いで、回動軸部61cの上端部及び下端部を第1接続部61の本体部61aに溶接する。これにより、第1接続部61と第2接続部62とが回動軸部61c周りに相対回動可能になる。
したがって、図3、図4に示すように、回動型ビームジョイント60を使用してデッキビーム23~26を接続することで、第2デッキ2Bが平面視で長方形から平行四辺形、平行四辺形から長方形に変形可能になる。
尚、図1に示すように、第1中間デッキビーム23は、第1デッキ2Aを構成する部材であることから、右側短型デッキビーム21及び左側短型デッキビーム22と接続する必要がある。この場合、回動型ビームジョイント60の第2接続部62の筒部62cに、本体部62aと同様な板材からなる接続板部62d(図3にのみ示す)を設け、この接続板部62dを、左側短型デッキビーム22の一側連結材を構成している左右一対の板材の間に差し込んで上述した留め具によって取り付けることができる。右側短型デッキビーム21との接続も同様に接続板部62dによって行うことができる。
(非回動型ビームジョイント)
上述した回動型ビームジョイント60でデッキビーム20~35を接続することができる他、図11~図13、図18、図19に示すように、第1~第4非回動型ビームジョイント70~73でデッキビーム20~35を接続することもできる。第1~第4非回動型ビームジョイント70~73は必要に応じて使用すればよい。第1~第4非回動型ビームジョイント70~73は、吊り足場1を構成する部材であり、水平方向に延びる中心線を対称の中心として上下対称構造である。したがって、第1~第4非回動型ビームジョイント70~73を上下反転させて使用することができる。
図11に示すように、第1非回動型ビームジョイント70は、2つのデッキビーム36、37を長手方向に直列に配置した状態で互いに接続するための部材である。図11では、デッキビーム36の一端部とデッキビーム37の一端部とを接続する例を示しているが、直列に配置されたデッキビームであれば第1非回動型ビームジョイント70によって接続可能である。尚、図1には、第1非回動型ビームジョイント70を示していないが、図11のように直列に接続するデッキビーム36、37が吊り足場1に含まれている場合には、第1非回動型ビームジョイント70を使用すればよい。
第1非回動型ビームジョイント70は、デッキビーム36の一側連結材42を構成している左右一対の板材42a、42bの間及びデッキビーム37の一側連結材42を構成している左右一対の板材42a、42bの間に差し込まれる板材で構成されており、この板材の厚み及び上下方向の寸法は、それぞれ、回動型ビームジョイント60の本体部61aの厚み及び上下方向の寸法と同じである。第1非回動型ビームジョイント70の長さは、デッキビーム36の板材42a、42bの間に差し込んだ状態で板材42a、42bの間から突出するように設定されており、突出した部分には、上記留め具63が挿入される挿入孔70bが形成されている。また、第1非回動型ビームジョイント70の長さは、デッキビーム37の板材42a、42bの間に差し込んだ状態で板材42a、42bの間から突出するように設定されており、突出した部分には、上記留め具63が挿入される挿入孔70cが形成されている。つまり、第1非回動型ビームジョイント70によるデッキビーム36、37との接続構造は、回動不可である点を除いて、回動型ビームジョイント60による接続構造と同じである。従って、第1非回動型ビームジョイント70も回動型ビームジョイント60と同様にデッキビーム20~35から外れないように取り付けることができる。第1非回動型ビームジョイント70の中央部には、上下方向に延びる円管材で構成された本体部70Aが設けられている。本体部70Aには、周壁部を貫通する貫通孔70aが形成されている。この貫通孔70aには、吊り部材4の下側を後述する第2非回動型ビームジョイント71のように係止させることができるようになっている。
図13に示す第2非回動型ビームジョイント71は、例えば図1に示す基端側デッキビーム20と右側短型デッキビーム21のように直交するもの同士を互いに接続するための部材である。基端側デッキビーム20と右側短型デッキビーム21以外にも、例えば、第3右側デッキビーム30と第1奥側デッキビーム32を接続する場合等にも第2非回動型ビームジョイント71を使用できる。第2非回動型ビームジョイント71の説明では、互いに直交する基端側デッキビーム20及び右側短型デッキビーム21をそれぞれ第1のデッキビーム及び第2のデッキビームと呼ぶこともできる。
第2非回動型ビームジョイント71は、筒状本体部71aと、第1接続部71bと、第2接続部71cと、抜け止め部材77(図14A及び図14Bに示す)とを備えており、仮設足場用吊り金具に相当する部材である。図15に示すように、吊り部材4によって第2非回動型ビームジョイント71が吊り下げられるようになっており、抜け止め部材77によって吊り部材4の筒状本体部71aからの抜けが阻止されるようになっている。
図13に示すように、筒状本体部71aは上下方向に延びる金属製の円管材で構成されており、その上下方向の寸法はデッキビーム20~35の上下方向の寸法よりも短く設定されている。筒状本体部71aは、角筒状に構成されていてもよい。また、筒状本体部71aの長さは任意に設定することができる。
筒状本体部71aには吊り部材4の下側を挿通させることができるようなっている。つまり、筒状本体部71aの内径は、吊り部材4を構成しているチェーンの最大外径部が有する外径寸法よりも大径に設定されている。また、筒状本体部71aの上部及び下部には、それぞれ、周壁部を貫通する一対の貫通孔71fが形成されている。一対の貫通孔71fの高さ及び径は同じであり、従って、周壁部における互いに対向する部位に一対の貫通孔71fが開口することになる。
図14A及び図14Bに示すように、抜け止め部材77は、全体としてピン状部材または軸状部材で構成されており、例えば金属等の高強度な材質でできている。抜け止め部材77は、直線状にまっすぐに延びる中間部77aと、中間部77aの一端部から当該中間部77aの延びる方向と交差する方向へ屈曲した屈曲部77bと、中間部77aの他端部に対して当該中間部77aの延びる方向と交差した軸77cによって回動可能に支持された回動部77dとを有している。中間部77aは、筒状本体部71aの貫通孔71fと、吊り部材4を構成しているチェーンのリング4a(図15に示す)内に挿通可能な外径とされている。中間部77aの長さは、筒状本体部71aの外径寸法よりも長く設定されており、中間部77aを筒状本体部71aの一対の貫通孔71fに挿通すると、筒状本体部71aの外周面から中間部77aの一部が突出する。
屈曲部77bは、中間部77aの軸線に対して直交するように形成されている。屈曲部77bの長さは、筒状本体部71aの貫通孔71fの内径よりも長く設定されており、これにより、屈曲部77bが貫通孔71fを通過することができなくなっている。
回動部77dは、中間部77aと同径の部材である。回動部77dは、軸77c周りに回動することにより、図14Aに実線で示すように挿通許容位置と、同図に仮想線で示すようにロック位置とに切り替えられる。ロック位置へは自動的に切り替えられる。挿通許容位置では、回動部77dの軸線と中間部77aの軸線とが同一直線上に配置されることになるので、回動部77dを筒状本体部71aの貫通孔71fと、吊り部材4を構成しているチェーンのリング4a(図15に示す)内とに挿通することができる。一方、ロック位置では、回動部77dの軸線が中間部77aの軸線に対して直交する位置関係になるので、回動部77dが貫通孔71fを通過することができなくなる。抜け止め部材77の構造は上述した構造に限られるものではなく、吊り部材4の筒状本体部71aからの抜けを阻止することが可能な構造であればよい。また、抜け止め部材77を筒状本体部71aの上下2ヶ所の貫通孔70fの両方に挿通してもよい。これにより、安全性がより一層向上する。
図15に示すように、吊り部材4の下側を筒状本体部71aに挿通させた状態で、抜け止め部材77の回動部77dを挿通許容位置にしてから、当該抜け止め部材77を回動部77dから筒状本体部71aの貫通孔71fと、吊り部材4を構成しているチェーンのリング4a内に挿通させると、回動部77dが貫通孔71fから筒状本体部71aの外方へ突出する。その後、回動部77dをロック位置に切り替えると、抜け止め部材77が筒状本体部71aの貫通孔71fから抜けなくなり、筒状本体部71aに保持される。これにより、第2非回動型ビームジョイント71を吊り部材4に取り付けることができる。
また、図16に示すように、抜け止め部材77を筒状本体部71aの下端部に配置してもよい。この図16に示す例では、抜け止め部材77の中間部77aを、筒状本体部71aの下端部よりも下方に位置する吊り部材4を構成しているチェーンのリング4aに挿通している。そして、中間部77aの長手方向両側が筒状本体部71aの下端部に当接するように配置される。抜け止め部材77は、屈曲部77b及び回動部77dを有していることにより、リング4aから抜けないようになっている。
また、図17に示すように、抜け止め部材77は、筒状本体部71aの下端部よりも下方に位置する吊り部材4を構成しているチェーンの輪状になった部分4cに挿通されるとともに、筒状本体部71aの下端部に当接するように配置されていてもよい。この例では、吊り部材4の端部にフック4bが取り付けられており、このフック4bを筒状本体部71aの上方のリング4aに引っ掛けることにより、輪状になった部分4cが筒状本体部71aの下方に形成される。輪状になった部分4cに抜け止め部材77を挿通した後、吊り部材4を上方へ引っ張ると、中間部77aの長手方向両側が筒状本体部71aの下端部に当接するように配置されて筒状本体部71aから抜けないようになっている。
図13に示すように、第1接続部71bは、回動型ビームジョイント60の本体部61aと同様な板材で構成されており、一側連結材42を構成する左右一対の板材42a、42bの間から突出する部分には、上記留め具63を挿入する挿入孔71dが形成されている。第2接続部71cは、回動型ビームジョイント60の本体部62aと同様な板材で構成されており、一側連結材42を構成する左右一対の板材42a、42bの間から突出する部分には、上記留め具63を挿入する挿入孔71eが形成されている。従って、第2非回動型ビームジョイント71も回動型ビームジョイント60と同様にデッキビーム20~35に接続され、デッキビーム20~35から外れないように取り付けられる。
筒状本体部71aの外周面には、第1接続部71bの基端部及び第2接続部71cの基端部が例えば溶接により固定されている。そして、平面視で第1接続部71bと第2接続部71cとは互いに直交する方向へ突出している。これにより、例えば基端側デッキビーム20と右側短型デッキビーム21のように直交するもの同士を互いに接続することができる。
図18に示す第3非回動型ビームジョイント72は、仮設足場用吊り金具に相当する部材であり、例えば図1に示す右側短型デッキビーム21と第1中間デッキビーム23と第1右側デッキビーム24のように直交するものを含む3つのデッキビームを互いに接続するための部材である。右側短型デッキビーム21と第1中間デッキビーム23と第1右側デッキビーム24以外にも、直列配置される2つのデッキビームと、これら直列配置されるデッキビームに対して直交するデッキビームとを接続する場合に、第3非回動型ビームジョイント72を使用できる。第3非回動型ビームジョイント72の説明では、互いに直交する右側短型デッキビーム21と第1中間デッキビーム23をそれぞれ第1のデッキビーム及び第2のデッキビームと呼ぶこともでき、第1右側デッキビーム24は第3のデッキビームと呼ぶことができる。
第3非回動型ビームジョイント72は、第2非回動型ビームジョイント71の筒状本体部71a、第1接続部71b、第2接続部71c及び抜け止め部材77と同様に構成された筒状本体部72a、第1接続部72b、第2接続部72c及び抜け止め部材77(図18には示さず)を備えるとともに、第3接続部72gを備えている。筒状本体部72aには、抜け止め部材77を挿通することが可能な貫通孔72fが形成されている。これにより、図15~図17に示した例と同様に、第3非回動型ビームジョイント72を吊り部材4に吊り下げることができる。また、第1接続部71b及び第2接続部71cにはそれぞれ上記留め具63を挿入する挿入孔72d、72eが形成されている。
第3接続部72gは、第1接続部72b及び第2接続部72cと同様な板材で構成されており、第1右側デッキビーム24の一側連結材42を構成している左右一対の板材42a、42bの間に差し込まれて当該一対の板材42a、42bに接続される。第3接続部72gには、上記留め具63が挿入される挿入孔72hが形成されている。
第3接続部72gの基端部は、筒状本体部72aの外周面に例えば溶接等により固定されている。平面視で第2接続部72cと、第3接続部72gとは互いに直交する方向へ突出している。また、第1接続部72bと、第3接続部72gとは、同一直線上に並ぶように配置されている。これにより、右側短型デッキビーム21と第1中間デッキビーム23と第1右側デッキビーム24を互いに接続することができる。尚、平面視で第1接続部72bと、第3接続部72gとが互いに直交する方向へ突出していてもよい。
図19に示す第4非回動型ビームジョイント73は、仮設足場用吊り金具に相当する部材であり、例えば図1に示す第2左側デッキビーム28と、第3中間デッキビーム29と、第3左側デッキビーム31と、第2奥側デッキビーム34のように直交するものを含む4つのデッキビームを互いに接続するための部材である。第2左側デッキビーム28と、第3中間デッキビーム29と、第3左側デッキビーム31と、第2奥側デッキビーム34以外にも、直列配置される2つのデッキビームと、これら直列配置されるデッキビームに対して直交する方向に直列配置される2つのデッキビームとを接続する場合に、第4非回動型ビームジョイント73を使用できる。
第4非回動型ビームジョイント73は、第3非回動型ビームジョイント72の筒状本体部72a、第1接続部72b、第2接続部72c、第3接続部72g及び抜け止め部材77と同様に構成された筒状本体部73a、第1接続部73b、第2接続部73c、第3接続部73g及び抜け止め部材77(図19には示さず)を備えるとともに、第4接続部73iを備えている。筒状本体部73aには、抜け止め部材77を挿通することが可能な貫通孔73fが形成されている。これにより、図15~図17に示した例と同様に、第4非回動型ビームジョイント73を吊り部材4に吊り下げることができる。また、第1接続部73b、第2接続部73c及び第3接続部73gにはそれぞれ上記留め具63を挿入する挿入孔73d、73e、73hが形成されている。
第4接続部73iは、第1接続部73b、第2接続部73c及び第3接続部73gと同様な板材で構成されており、例えば第2奥側デッキビーム34の一側連結材42を構成している左右一対の板材42a、42bの間に差し込まれて当該一対の板材42a、42bに接続される。第4接続部73iには、上記留め具63が挿入される挿入孔73jが形成されている。
第4接続部73iの基端部は、筒状本体部73aの外周面に例えば溶接等により固定されている。平面視で第1接続部73b及び第3接続部73gと、第4接続部73iとは互いに直交する方向へ突出している。また、第2接続部73cと、第4接続部73iとは、同一直線上に並ぶように配置されている。これにより、第2左側デッキビーム28と、第3中間デッキビーム29と、第3左側デッキビーム31と、第2奥側デッキビーム34を互いに接続することができる。
(短支柱)
図1に示すように、吊り足場1は、例えば布材90等の足場構成部材が連結される短支柱80を備えている。図20及び図21に示すように、短支柱80は、上側パイプ材40の長手方向中間部から下側パイプ材41の長手方向中間部まで上下方向に延びており、第1筒部材81及び第2筒部材82と、第2筒部材82の高さを所定高さとするためのロックピン83(図21に示す)とを備えている。
第1筒部材81は上下方向に延びており、上下方向の寸法は、上側パイプ材40と下側パイプ材41との離間寸法よりも短く設定されている。第1筒部材81の下端部は、下側パイプ材41の外周面に沿うように円弧状に湾曲形成された第1円弧状部81aで構成されている。第1筒部材81の上端部には、径方向に延びる閉塞板81bが例えば溶接等によって固定されている。閉塞板81bの中央部にはロッド挿通孔81cが形成されている。また、第1筒部材81の円弧状部81aよりも上には、一対のピン挿通孔81dが径方向に貫通するように形成されている。
第2筒部材82は、上下方向に延びるとともに第1筒部材81と同軸上に配置されている。第2筒部材82は、第1筒部材81よりも大径に形成されており、第2筒部材82内に第1筒部材81を挿入することが可能になっている。第2筒部材82の上下方向の寸法は、第1筒部材81の上下方向の寸法よりも長いが、上側パイプ材40と下側パイプ材41との離間寸法よりも短く設定されている。第2筒部材82内に第1筒部材81を挿入することで、短支柱80の長さを変えることができ、最も短くした状態では、上側パイプ材40と下側パイプ材41との離間寸法よりも短くなる。つまり、短支柱80は伸縮構造を持っている。
第2筒部材82の上端部は、上側パイプ材40の外周面に沿うように円弧状に湾曲形成された第2円弧状部82aで構成されている。第2筒部材82の内部には、第2円弧状部82aよりも下に、径方向に延びる固定板82bが設けられている。この固定板82bは、第2筒部材82の内周面に固定されている。
固定板82bの中央部には、下方へ延びるロッド82cが固定されている。このロッド82cは、第1筒部材81のロッド挿通孔81cに挿通され、上下方向に相対移動可能になっている。ロッド82cの下部には、径方向に延びる抜け止め部材82dが固定されている。抜け止め部材82dが閉塞板81bの下面に当接することにより、ロッド82cのロッド挿通孔81cからの抜けが阻止される。
ロックピン83を抜いた状態で、短支柱80の長さを上側パイプ材40と下側パイプ材41との離間寸法よりも短くしてから、短支柱80を上側パイプ材40と下側パイプ材41との間に入れる。その後、第1筒部材81の第1円弧状部81aを下側パイプ材41の外周面に接触させた状態で、第2筒部材82を上方へ移動させていくと、第2円弧状部82aが上側パイプ材40の外周面に接触する。このとき、第2筒部材82の下端部の高さが第1筒部材81のピン挿通孔81dの上縁部と同じ高さになるように、ピン挿通孔81dの形成位置が設定されている。この状態で、ロックピン83をピン挿通孔81dに挿通すると、第2筒部材82の下端部がロックピン83の外周面に当接してそれ以上、下方向へ移動しなくなる。よって、第1円弧状部81aを下側パイプ材41の外周面に接触させ、かつ、第2円弧状部82aを上側パイプ材40の外周面に接触させておくことができ、短支柱80が上側パイプ材40及び下側パイプ材41の間から抜け出ないように、上側パイプ材40及び下側パイプ材41に保持される。短支柱80は、上側パイプ材40及び下側パイプ材41の長手方向の任意の位置に保持しておくことができる。尚、ロックピン83は抜け防止用の屈曲部と回動部83aとを有している。
第2筒部材82は、布材90に設けられたクサビ(図示せず)が差し込まれる差し込み部84を有している。差し込み部84は、上方に開放したポケット状をなしており、例えば第2筒部材82の外周面に固定された金属製部材によって形成することができる。クサビは、布材90の端部から下方へ突出しており、このクサビの形状や構造は様々であるので、クサビの形状や構造に合わせて差し込み部84の形状や構造を変更すればよい。差し込み部84の位置は、クサビを差し込んだ状態で布材90の高さが上側パイプ材40の高さと同じになるように設定されている。布材90の上には、パネル材3(図2に示す)を設置することができる。差し込み部は、例えば第2筒部材82の径方向に延びるフランジに形成された開口部や切欠部であってもよい。
(短支柱の変形例1)
図22は、変形例1に係る短支柱80を示すものである。この変形例1では、差し込み部84を低い位置に設けている。すなわち、この変形例1では、第1筒部材81が上に位置するように、短支柱80を上下反転させて使用する。差し込み部84は、第2筒部材82の外周面に固定された金属製部材によって形成されている。この変形例1は、例えばアンチ(図示せず)の真下に布材90を設置したい場合に使用することができる。つまり、布材90の高さを上側パイプ材40の高さよりも低くすることで、布材90にアンチを置いたとき、アンチの高さが上側パイプ材40の高さと同じになるように設定されている。
(短支柱の変形例2)
図23は、変形例2に係る短支柱80を示すものである。変形例2は、変形例1と同様に第1筒部材81が上に位置するように、短支柱80を上下反転させて使用している。変形例2の第1筒部材81には差し込み部が設けられていないが、差し込み部は、吊り足場1を構築する現場で設けることができる。すなわち、クサビの差し込み部を有する各種クランプを第2筒部材82の外周面に固定することができるようになっている。クランプとしては、例えばクサビの差し込み部としての孔部が形成されたフランジ状のクランプであってもよいし、クサビの差し込み部としてのポケットを有するポケットクランプ等であってもよい。これらクランプは、任意の高さ及び角度で固定することができるので、吊り足場1の構築自由度がより一層高まる。これらクランプは、従来から周知であり、例えば第2筒部材82を径方向に挟持することによって取り付けられるように構成することができる。尚、変形例2において、第1筒部材81が下に位置する姿勢で使用することもできる。
(棚足場)
図2に示すように、仮設足場として棚足場110を設けることもできる。棚足場110は、吊り足場1のパネル材3から上方に離れた所に設けられ、吊り足場1よりも小型なもの(足場となる部分の面積が小さいもの)である。棚足場110も建築物に吊り下げられた状態で構築されるので、吊り足場の一種と呼ぶこともできる。
棚足場110は、複数の布材111と、パネル材112と、吊り支柱113と、吊り部材4とを備えている。例えば4本の布材111が平面視で矩形状をなすように配置されることで、上述したデッキ2のような構造物が構成される。布材111の両端部には、それぞれ下方へ突出するクサビ111aが取り付けられている。
図24に示すように、吊り支柱113は、仮設足場用吊り金具に相当する部材であり、第2非回動型ビームジョイント71の筒状本体部71a及び抜け止め部材77と同様に構成された筒状本体部113a及び抜け止め部材77(図24には示さず)を備えている。筒状本体部113aには、抜け止め部材77を挿通することが可能な貫通孔113fが形成されている。これにより、図15~図17に示した例と同様に、吊り支柱113を吊り部材4に吊り下げることができる。
吊り支柱113は、布材111に設けられたクサビ111aが差し込まれる差し込み部114を有している。クサビ111aを差し込み部114に差し込むことにより、布材111を吊り支柱113に接続できる。差し込み部114は、例えば上方に開放したポケット状をなしており、筒状本体部113aの外周面に固定された金属製部材によって形成することができる。クサビ111aの形状や構造は様々であるので、クサビ111aの形状や構造に合わせて差し込み部114の形状や構造を変更すればよい。この例では、4つの差し込み部114が筒状本体部113aの周方向に等間隔に設けられているが、これに限らず、差し込み部114の数は3つであってもよいし、2つまたは1つであってもよい。
また、図示しないが、クサビ111aが差し込まれる差し込み部は、フランジに形成された孔部や切欠部であってもよい。すなわち、筒状本体部113aの外周面には、径方向へ突出するとともに周方向に延びるフランジを溶接等により固定しておく。このフランジには、クサビ111aが差し込まれる孔部や切欠部を形成しておく。クサビ111aをフランジの孔部や切欠部に差し込むことにより、布材111を吊り支柱113に接続できる。
図1に示すように、吊り支柱113をデッキ2の外方に設けることで、布材90と共に、デッキ2の外方に拡張した足場を構築することもできる。また、吊り支柱113及び布材90によって別の吊り足場を構築することもできる。
(吊り支柱の変形例1)
図25は、吊り支柱113の変形例1に係るものである。変形例1では、吊り支柱113が、筒状本体部113aと、抜け止め部材77(図25には示さず)とを備えており、布材111のクサビ111aが差し込まれる差し込み部は、筒状本体部113aとは別体のフランジクランプ120によって形成されるようになっている。フランジクランプ120は、筒状本体部113aの径方向に延びる板材からなる第1挟持部材121及び第2挟持部材122と、第1挟持部材121の先端側と第2挟持部材122の先端側とが互いに接離する方向に回動可能に該第1挟持部材121の基端側と該第2挟持部材122の基端側とを連結する連結軸123と、第1挟持部材121の先端側と第2挟持部材122の先端側とを互いに接近する方向に締結する締結部材124とを備えている。
第1挟持部材121及び第2挟持部材122は、上下方向に延びる連結軸123によって相対的に回動可能になっており、図示しない開放状態と、図25に示す閉鎖状態とに切り替えることができる。第1挟持部材121及び第2挟持部材122には、それぞれ、筒状本体部113aの外周面に沿う第1切欠部121a及び第2切欠部122aが形成されている。さらに、第1挟持部材121及び第2挟持部材122には、それぞれ、布材111のクサビ111aが差し込まれる差し込み部としての孔部121b、122bが形成されている。孔部121b、122bの数は3つ以上であってもよいし、1つであってもよい。尚、孔部121b、122bの代わりに、切欠部等であってもよい。
締結部材124は、例えばボルト124a及びナット124bで構成されている。ボルト124aの基端部は、第2挟持部材122の先端部に対して上下方向に延びる回動軸125によって連結されている。ボルト124aを回動軸125周りに回動させることで、当該ボルト124aの軸部分が第1挟持部材121の先端部に形成された挿入用切欠部124cに差し込まれる。この状態でナット124bを締め込むことにより、第1挟持部材121及び第2挟持部材122が締結されて筒状本体部113aにフランジクランプ120が固定される。
吊り支柱113は、筒状本体部113aと抜け止め部材77で構成されたものであってもよいし、筒状本体部113aと抜け止め部材77とフランジクランプ120とで構成されたものであってもよい。また、ボルト124a及びナット124bの代わりに、クサビによって締結力を発生させる構造であってもよい。
(吊り支柱の変形例2)
図26は、吊り支柱113の変形例2に係るものである。変形例2では、吊り支柱113が、筒状本体部113aと、抜け止め部材77(図26には示さず)とを備えており、布材111のクサビ111aが差し込まれる差し込み部は、筒状本体部113aとは別体のポケットクランプ130によって形成されるようになっている。ポケットクランプ130は、筒状本体部113aを径方向に挟持する第1挟持部材131及び第2挟持部材132と、第1挟持部材131の先端側と第2挟持部材132の先端側とが互いに接離する方向に回動可能に該第1挟持部材131の基端側と該第2挟持部材132の基端側とを連結する連結軸133と、第1挟持部材131の先端側と第2挟持部材132の先端側とを互いに接近する方向に締結する締結部材134とを備えている。
第1挟持部材131及び第2挟持部材132は、上下方向に延びる連結軸133によって相対的に回動可能になっている。第1挟持部材131及び第2挟持部材132の内縁部は、それぞれ、筒状本体部113aの外周面に沿うように成されている。さらに、第1挟持部材131及び第2挟持部材132には、それぞれ、布材111のクサビ111aが差し込まれる差し込み部としてのポケットPAが形成されている。この例では、4つのポケットPAが周方向に互いに間隔をあけて設けられている。ポケットPAの数は3つ以下であってもよい。
締結部材134は、例えばボルト134a及びナット134bで構成されている。ボルト134aの基端部は、第2挟持部材132の先端部に対して上下方向に延びる回動軸135によって連結されている。ボルト134aを回動させることで、当該ボルト134aの軸部分が第1挟持部材131の先端部に形成された挿入用切欠部134cに差し込まれる。この状態でナット134bを締め込むことにより、第1挟持部材131及び第2挟持部材132が締結されて筒状本体部113aにポケットクランプ130が固定される。
吊り支柱113は、筒状本体部113aと抜け止め部材77で構成されたものであってもよいし、筒状本体部113aと抜け止め部材77とポケットクランプ130とで構成されたものであってもよい。また、ボルト134a及びナット134bの代わりに、クサビによって締結力を発生させる構造であってもよい。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、建築物に固定された吊り部材4の下側を、例えば第2非回動型ビームジョイント71の筒状本体部71aに挿通させた状態で筒状本体部71aから抜けないように保持することができる。この第2非回動型ビームジョイント71を水平方向に間隔をあけて複数吊し、デッキビーム20~35を第2非回動型ビームジョイント71に接続することにより、デッキビーム20~35を水平に保持できる。このようにして複数のデッキビーム20~35を保持した後、それらデッキビーム20~35にパネル材3を設置することで、吊り足場1を構築できる。第2非回動型ビームジョイント71は、各吊り部材4に吊り下げることができるので、吊り部材4の位置に応じて第2非回動型ビームジョイント71を自由に配置できる。つまり、例えばプラントの配管を避けるように吊り部材4を配置しておけば、配管を避けるように第2非回動型ビームジョイント71を設置できるので、配管との干渉を回避しながら、デッキビーム20~35及びパネル材3を設置することができる。
また、図2に示すように、吊り支柱113を自由に配置できることから、棚足場110のような小型の仮設足場も容易に設置できる。
また、図1や図2に示すように複数のデッキビーム20~35とパネル材3とによってシステム化された吊り足場1を構築することができる。これにより、従来からある単管吊り足場に比べて構築に要する時間が大幅に短縮される。また、デッキビーム20~35を構成している上側パイプ材40及び下側パイプ材41が平面視でデッキビーム20~35の長手方向に直交する方向には並ばないので、トラス構造の梁ユニットに比べてデッキビーム20~35の左右方向の寸法が大幅に短くなる。
また、上側パイプ材40や下側パイプ材41には、パネル材3として、従来からある木製足場板、鋼製足場板、アンチ等を設置することができ、汎用性が高い。また、システム足場用の布材90を上側パイプ材40や下側パイプ材41の任意の位置に連結して使用することもできるので、システム化された吊り足場1でありながら、自由度が高い。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。