JP7048413B2 - 超電導磁石装置の運転方法および超電導磁石装置 - Google Patents

超電導磁石装置の運転方法および超電導磁石装置 Download PDF

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Description

本発明の実施形態は、超電導磁石装置の運転方法および超電導磁石装置に関する。
従来、超電導磁石装置を用いた技術が知られている。例えば、磁気共鳴画像診断装置のように誤差のない高磁場が求められる分野で超電導磁石装置が用いられている。
国際公開第2016/093085号
超電導コイルの中心磁場には、超電導コイルの内部で生じる渦電流に基づくノイズ磁場が含まれている。この中心磁場の見かけ上の値は、ノイズ磁場も含めた値となっている。ここで、停電などの事象で冷却機が一時的に停止されると超電導コイルが昇温され、ノイズ磁場の態様が変化する。例えば、昇温により渦電流が消失することでノイズ磁場も消失する。つまり、冷却機が一時的に停止されると中心磁場の値が変化してしまう。超高精度の中心磁場を求められる場面では、この中心磁場の値が変化せずに安定していることが要求される。
本発明の実施形態は、このような事情を考慮してなされたもので、磁場を安定させることができる超電導磁石装置の運転技術を提供することを目的とする。
本発明の実施形態に係る超電導磁石装置の運転方法は、冷却部を用いて超電導コイルを臨界温度以下に冷却して超電導に転移させるステップと、前記超電導に転移された前記超電導コイルに励磁電源から電流を供給するステップと、前記電流の供給を停止して永久電流モードを開始するステップと、前記超電導コイルを前記臨界温度以下、かつ定常運転温度よりも高い特定温度にするステップと、前記超電導コイルの磁場が安定する特定条件が成立した後に、前記超電導コイルを前記定常運転温度以下に冷却して定常運転を開始するステップと、を含む。
本発明の実施形態により、磁場を安定させることができる超電導磁石装置の運転技術が提供される。
第1実施形態の超電導磁石装置を示す断面図。 第1実施形態の超電導磁石装置を示すブロック図。 第1実施形態の超電導磁石装置を示す回路図。 第1実施形態の中心磁場と温度との関係を示すグラフ。 第1実施形態の超電導磁石装置の解析方法を示すフローチャート。 第1実施形態の超電導磁石装置の運転方法を示すフローチャート。 第2実施形態の超電導磁石装置を示す断面図。 第3実施形態の超電導磁石装置を示す断面図。 第4実施形態の超電導磁石装置を示す断面図。 第5実施形態の超電導磁石装置を示す断面図。 第5実施形態の超電導磁石装置を示すブロック図。 第5実施形態の中心磁場と温度との関係を示すグラフ。 変形例の中心磁場と温度との関係を示すグラフ。 第5実施形態の超電導磁石装置の解析方法を示すフローチャート。 第5実施形態の超電導磁石装置の運転方法を示すフローチャート。 第6実施形態の超電導磁石装置を示す断面図。
(第1実施形態)
以下、本実施形態を添付図面に基づいて説明する。まず、第1実施形態の超電導磁石装置について図1から図6を用いて説明する。図1の符号1は、永久電流モードで運転が可能な超電導磁石装置である。なお、永久電流モードとは、超電導磁石装置1を構成する回路が閉ループを成し、この回路が臨界温度以下に冷却されて超電導に転移されたときに、電流が閉ループに沿っていつまでも流れる運転態様のことである。
図1に示すように、超電導磁石装置1は、メインコイルとしての超電導コイル2と、この超電導コイル2とともに超電導回路を構成する永久電流スイッチ3と、超電導コイル2に電力を供給する励磁電源4と、超電導コイル2および永久電流スイッチ3を冷却するための冷却部5と、超電導コイル2に取り付けられたコイルヒータ6と、超電導コイル2の温度を検出する温度センサ7と、各部品を制御する制御装置8とを備える。なお、以下の説明において、永久電流スイッチをPCS(Persistent Current Switch)と略記する場合がある。
また、超電導磁石装置1は、超電導コイル2および永久電流スイッチ3にそれぞれ接続されて冷却部5に熱を伝導するための冷却媒体9と、超電導コイル2および永久電流スイッチ3を収容する真空容器10と、真空容器10の内部に配置される輻射シールド11と、冷却部5に接続される第1冷却ステージ12と、第1冷却ステージ12に接続される伝導部としての第2冷却ステージ13とを備える。
さらに、超電導磁石装置1は、コイルヒータ6に電力を供給するコイルヒータ電源14と、冷却部5に電力を供給する冷却部電源15と、永久電流スイッチ3を加熱するためのPCSヒータ16と、PCSヒータ16に電力を供給するPCSヒータ電源17とを備える。
超電導磁石装置1は、その製造段階または設置段階において、超電導コイル2の中心磁場Cの磁場を計測する磁場センサ18が一時的に取り付けられる。また、磁場センサ18が計測した磁場に基づいて、中心磁場Cと超電導コイル2の温度との関係を予め解析する解析部19が設けられる。なお、磁場センサ18および解析部19は、実運用段階では、超電導磁石装置1に設けられてなくても良い。
中心磁場Cとは、超電導磁石装置1が実運用段階で求められる部分で生じる磁場のことである。図1では、中心磁場Cが超電導コイル2の中央の磁場として図示しているが、この中心磁場Cは、超電導コイル2の中央にあるものに限られない。例えば、複数の超電導コイル2が配置される場合には、中心磁場Cがそれぞれの超電導コイル2の外側にあっても良い。また、複数の超電導コイル2により生じる磁場により1箇所に中心磁場Cが形成されても良い。
本実施形態の超電導磁石装置1は、実運用段階で定常運転を開始するときに、超電導に転移された超電導コイル2を臨界温度以下、かつ定常運転温度よりも高い特定温度にして、超電導コイル2の中心磁場Cが安定する特定条件が成立した後に、超電導コイル2を定常運転温度以下に冷却して定常運転を開始するようにしている。
なお、本実施形態の超電導磁石装置1は、超電導コイル2および永久電流スイッチ3と冷却部5とが冷却媒体9を介して熱的に接続された伝導冷却方式を例示している。冷却媒体9は、アルミニウムまたは銅などの良熱伝導性を示す材質で形成される。冷却部5は、GM冷凍機などの極低温冷凍機で構成される。冷却部5が伝導冷却型であるため、液体ヘリウムなどの冷媒が必要ないので、超電導コイル2および永久電流スイッチ3を簡易に冷却することができる。また、超電導コイル2および永久電流スイッチ3が液体ヘリウムなどに浸漬されていないので、停電などの事象で冷却部5が停止されたときに、超電導コイル2および永久電流スイッチ3の温度が敏感に反応する。
次に、超電導磁石装置1のシステム構成を図2に示すブロック図を参照して説明する。この図2に示すように、制御装置8は、超電導磁石装置1の運転に関する各種設定を記憶する設定記憶部20と、各部品を統括して超電導磁石装置1の運転を制御する運転制御部21と、励磁電源4を制御する励磁電源制御部22と、定常運転開始前の超電導コイル2の温度を制御する特定制御部23と、永久電流モードの開始時に永久電流スイッチ3を制御する永久電流モード制御部としてのPCS制御部24と、冷却部電源15を制御する冷却制御部25と、時間の経過を計時する計時部26(RTC:Real-Time Clock)とを備える。
解析部19は、超電導状態に転移した超電導コイル2において、中心磁場Cと超電導コイル2の温度との対応関係を予め解析し、特定条件を決定する。なお、中心磁場Cと超電導コイル2の温度との対応関係は、実験(実測)によって求められるものでも良い。さらに、この対応関係は、実験結果を解析(計算)することで求められるものでも良い。
PCS制御部24は、超電導コイル2に励磁電源4から電流を供給された後に、電流の供給を停止して永久電流モードを開始する制御を行う。特定制御部23は、超電導に転移された超電導コイル2を臨界温度以下、かつ定常運転温度よりも高い特定温度にする制御を行う。運転制御部21は、超電導コイル2の中心磁場Cが安定する特定条件が成立した後に、特定温度Sの超電導コイル2を定常運転温度以下に冷却して定常運転を開始する制御を行う。
本実施形態の制御装置8は、CPU、ROM、RAM、HDDなどのハードウェア資源を有し、CPUが各種プログラムを実行することで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて実現されるコンピュータで構成される。さらに、本実施形態の超電導磁石装置1の運転方法は、プログラムをコンピュータに実行させることで実現される。
なお、超電導コイル2および永久電流スイッチ3は、超電導物質の導体を有する超電導線材が巻回されたコイルである。図3に示すように、永久電流スイッチ3は、その両端が超電導コイル2の両端に接続されている。つまり、超電導コイル2と永久電流スイッチ3とで並列回路を構成する。そして、永久電流モードのときには、超電導コイル2と永久電流スイッチ3とで閉ループL(永久電流コイル)が形成される。
さらに、コイルヒータ6またはPCSヒータ16は、超電導コイル2または永久電流スイッチ3に熱が伝わる構成をとることができればどのような構成のものでも良い。例えば、フィルム状のヒータ、または電熱線状のヒータなどが挙げられる。フィルム状のヒータを用いる場合には、ヒータをコイルの表面に接着する、或いはコイルを構成する超電導線材の層間に挿入して接着するなどの構成が望ましい。また、電熱線状のヒータを用いる場合には、コイルの表面に電熱線を巻きつける、或いはコイルを構成する超電導線材に沿って電熱線を共巻する構成が望ましい。
また、超電導物質の導体は、臨界温度以下、臨界磁場以下、さらに臨界電流以下の3条件が揃った環境で電気抵抗がゼロの状態(超電導状態)で電流を流すことができる。従って、この電気抵抗がゼロの状態で、超電導コイル2と永久電流スイッチ3とで形成された閉ループLに電流を流すと、電流は殆ど減衰することなくほぼ一定値を維持することができる。また、閉ループLに流れる電流は、揺らぎが生じ難くなっているので、非常に安定度が高い一定磁場を発生し続けることができる。このような超電導技術は、例えば、0.1ppm/h以下の高い磁場安定度を要求する医療用のMRI、または分子構造分析用のNMRなどの装置に応用されている。
また、永久電流スイッチ3は、高電気抵抗の常電導状態(OFF状態)と電気抵抗がゼロの超電導状態(ON状態)とを切り替えることができる。ここで、永久電流スイッチ3がON状態となると、超電導コイル2と永久電流スイッチ3との閉ループLで、永久電流モードの運転が可能になる。一方、永久電流スイッチ3がOFF状態となると、永久電流スイッチ3の高電気抵抗によって閉ループLでの永久電流モードの運転が不可能になる。なお、PCSヒータ16により永久電流スイッチ3が加熱されると、常電導状態(OFF状態)となり、PCSヒータ16を停止すると、超電導状態(ON状態)となる。
超電導コイル2および永久電流スイッチ3の超電導線材は、複数本の超電導フィラメントと、これらの超電導フィラメントの周囲の母材(安定化材)とで構成される。なお、超電導フィラメントは、一般的にNbTiで形成されるが、NbSnおよびMgBなどのNbTi以外の超電導材料であっても良い。なお、超電導コイル2の母材は、一般的に銅などの低電気抵抗金属で形成される。また、永久電流スイッチ3の母材は、一般的にCuNiなどの高電気低抗金属で形成される。
超電導コイル2および永久電流スイッチ3の温度を臨界温度(超伝導転移温度)以下に冷却して超電導状態にすると、各超電導フィラメントの電気抵抗がゼロになり、これらの超電導フィラメントに電流が流れ続ける。また、永久電流スイッチ3の温度を臨界温度よりも高くして常電導状態にすると、高い電気抵抗が発生する。この永久電流スイッチ3の電気抵抗により超電導コイル2を励磁できる。
超電導に転移された超電導コイル2は、設計段階で予め決められた中心磁場Cを発生させる。しかしながら、超電導コイル2を構成する超電導線材の内部で微小な渦電流が発生し、この渦電流に起因する磁場がノイズとなって中心磁場Cに含まれる。この渦電流の発生原因には様々なものが考えられる。例えば、超電導線材同士を接続する半田の内部で生じたり、超電導フィラメントの周囲の母材の内部で生じたりする。
常温の常電導状態の物質中を渦電流が流れる場合には、その物質の電気抵抗により、直ぐに渦電流が消失してしまう。ここで、半田に含まれる超電導物質となる鉛および超電導物質ではないが、母材に含まれる銅などの物質は、極超低温に冷却されると電気抵抗が極端に低くなり、そこに生じた渦電流が消えずにいつまでも存在してしまう。特に、母材と超電導フィラメントとを跨ぐように流れる電気経路を有する渦電流の場合には、消失するまでに長期間を有する時定数の長い渦電流となってしまう。
このような渦電流に基づくノイズ磁場が中心磁場Cに含まれている場合に問題となるのが、停電などの事象で冷却部5が一時的に停止されたときである。冷却部5が一時的に停止されると超電導コイル2が昇温される。ここで、超電導コイル2が臨界温度を超えない状態で直ぐに停電が復旧されると、超電導磁石装置1の運転を継続することができる。しかし、超電導コイル2の一時的な昇温により、半田に含まれる鉛および母材に含まれる銅などの物質の電気抵抗が急激に高まり、その物質中を流れる渦電流が消失してしまう。そのため、渦電流に起因するノイズ磁場が消失し、中心磁場Cの値が変化してしまう。
例えば、ノイズ磁場が中心磁場Cを増大させるように働いている場合には、停電後に中心磁場Cの値が低くなる。一方、ノイズ磁場が中心磁場Cを打ち消すように働いている場合には、停電後に中心磁場Cの値が高くなる。つまり、このノイズ磁場が、中心磁場Cが変動する原因となる変動成分となっている。高い磁場安定度を要求する場面では、超電導コイル2の中心磁場Cの値が変化せずに安定していることが要求される。
そこで、本実施形態の超電導磁石装置1は、超電導に転移された超電導コイル2で永久電流モードが開始された後に、コイルヒータ6を用いて超電導コイル2を昇温する。この昇温がなされることで、超電導コイル2の内部の渦電流が消失し、ノイズ磁場も無くなる。その後に、定常運転を開始することで、停電などの事象で冷却部5が一時的に停止した場合であっても、中心磁場Cが変化しないようになる。
図4は、中心磁場Cと超電導コイル2の温度との関係の一例を示すグラフである。超電導コイル2の温度を実線で示し、中心磁場Cの値を点線で示している。
まず、冷却部5を用いて超電導コイル2を臨界温度M以下に冷却すると、この超電導コイル2が超電導に転移される。この超電導に転移された直後の降温期間Fにおいて、超電導コイル2は、定常運転温度N以下に冷却される。ここで、中心磁場Cは、ノイズ磁場が含まれているので高い値を示している。
時間Q1において、コイルヒータ6を作動させて、超電導コイル2が特定温度Sになるまで加熱する。この特定温度Sは、臨界温度M以下、かつ定常運転温度Nよりも高い温度となっている。そして、超電導コイル2の温度を一定に保つ。この昇温期間Rにおいて、超電導コイル2の内部の渦電流が消失することで、ノイズ磁場も数分オーダーで消失してゆく。そのため、中心磁場Cの値が低下してゆく。
中心磁場Cの値が低下し、その値が低下しなくなった時点でノイズ磁場が消失したものと推定される。そして、この中心磁場Cの値が変化しなくなった後の時間Q2において、コイルヒータ6を停止して、超電導コイル2を再び定常運転温度N以下に冷却する。この昇温期間Rの後の降温期間Fにおいて、定常運転を開始する。
第1実施形態では、超電導コイル2が特定温度Sになるまで加熱するときのコイルヒータ6に流す電流値を出力値として設定する。また、時間Q1から時間Q2までのノイズ磁場が消失するまでに充分な昇温期間Rをコイルヒータ6の出力期間として設定する。なお、出力期間は、連続する1つの期間でなくても良く、例えば、昇温期間Rと降温期間Fとを交互に繰り返して、複数の昇温期間Rが合計された期間が出力期間であっても良い。
第1実施形態では、予め決められた出力値でコイルヒータ6を作動させて、特定温度Sになるまで超電導コイル2を昇温し、予め決められた出力期間が経過するまでコイルヒータ6を作動させることで特定条件が成立する。この出力値と出力期間は、予め解析して求められる。そして、求められた出力値と出力期間が超電導磁石装置1の設定記憶部20に記憶される。
このようにすれば、超電導磁石装置1の運用が開始される前に特定条件を把握し、予め制御内容を決定することができるので、運用時の超電導磁石装置1の制御を容易に行うことができる。また、コイルヒータ6の作動を制御することで特定条件を成立させることができる。
なお、第1実施形態の制御装置8の運転制御部21は、超電導コイル2が特定温度Sに達したか否かを温度センサ7による検出温度により判定する。また、出力期間が経過したか否かを計時部26による計時により判定する。
次に、中心磁場Cの変動成分が消失する特定条件を予め解析して求める超電導磁石装置1の解析方法について図5のフローチャートを用いて説明する。なお、図2に示すブロック図を適宜参照する。
図5に示すように、まず、ステップS11において、冷却制御部25は、冷却部電源15から冷却部5に電流を供給し、冷却部5を作動させることで、超電導コイル2と永久電流スイッチ3の冷却を開始する。なお、冷却が開始されると、超電導コイル2と永久電流スイッチ3が臨界温度M以下に冷却される。そして、超電導コイル2と永久電流スイッチ3が超電導状態に転移される。さらに、超電導コイル2と永久電流スイッチ3が定常運転温度Nになるまで冷却される。
次のステップS12において、冷却部5による冷却が継続されている状態で、PCS制御部24は、PCSヒータ電源17からPCSヒータ16に電流を供給し、PCSヒータ16を作動させる。そして、PCS制御部24は、PCSヒータ16を用いて永久電流スイッチ3を加熱して臨界温度Mよりも高い温度にする。すると、永久電流スイッチ3が高電気抵抗の常電導状態(OFF状態)に転移される。
次のステップS13において、励磁電源制御部22は、励磁電源4を制御して電流供給を開始し、超電導コイル2に電流を流し始める。そして、超電導コイル2に流れる電流が定常運転時の値になる。
次のステップS14において、PCS制御部24は、PCSヒータ電源17からPCSヒータ16に供給される電流を停止し、永久電流スイッチ3の温度を再び降下させる。ここで、永久電流スイッチ3の温度が臨界温度M以下になると、永久電流スイッチ3が電気抵抗の無い超電導状態(ON状態)に転移される。
次のステップS15において、励磁電源制御部22は、励磁電源4を制御して電流供給を停止する。このとき、励磁電源4の電流の供給量の低下に対応して、永久電流スイッチ3に流れる電流が増加し始める。
次のステップS16において、励磁電源4から供給される電流の値がゼロになると、永久電流スイッチ3に流れる電流が定常運転時の値になる。また、超電導コイル2と永久電流スイッチ3とで閉ループLが完成し、永久電流モードが開始される。
次のステップS17において、特定制御部23は、コイルヒータ電源14からコイルヒータ6に電流を供給し、コイルヒータ6を作動させる。そして、特定制御部23は、コイルヒータ6を用いて超電導コイル2を加熱し、特定温度Sになるまで昇温させる。なお、運転制御部21は、超電導コイル2が特定温度Sに達したか否かを温度センサ7による検出温度により判定し、その判定結果を特定制御部23に入力しても良い。そして、判定結果に基づいて特定制御部23がコイルヒータ6を制御しても良い。
次のステップS18において、特定制御部23は、コイルヒータ6を制御し、特定温度Sになった超電導コイル2の温度を一定に保つ。
次のステップS19において、解析部19は、磁場センサ18を用いて超電導コイル2の中心磁場Cの磁場を計測する。
次のステップS20において、解析部19は、中心磁場Cの値が一定になったか否かを判定する。ここで、中心磁場Cの値が一定になっていない場合(ステップS20がNO)は、前述のステップS18に戻る。一方、中心磁場Cの値が一定になった場合(ステップS20がYES)は、ステップS21に進む。
次のステップS21において、超電導コイル2を特定温度Sに昇温するために必要なコイルヒータ6の出力値と、中心磁場Cの値を一定にするために必要な出力時間とを求める。そして、求められた出力値と出力期間とを超電導磁石装置1の設定記憶部20に記憶させる。
次に、実運用段階の超電導磁石装置1の運転方法について図6のフローチャートを用いて説明する。なお、図2に示すブロック図を適宜参照する。この超電導磁石装置1の運転方法は、ステップS11からステップS18までのステップは、前述の超電導磁石装置1の解析方法(図5参照)と同様のステップである。
図6に示すように、ステップS18の次に進むステップS19Aにおいて、運転制御部21は、計時部26による計時に基づいて、設定記憶部20に記憶された予め決められた出力期間が経過したか否かを判定する。ここで、出力期間が経過していない場合(ステップS19AがNO)は、前述のステップS18に戻る。一方、出力期間が経過した場合(ステップS19AがYES)は、ステップS20Aに進む。
次のステップS20Aにおいて、特定制御部23は、コイルヒータ電源14を制御して電流供給を停止することで、コイルヒータ6を停止させる。そして、超電導コイル2が再び冷却される。
次のステップS21Aにおいて、定常運転温度Nになるまで冷却された超電導コイル2を用いて定常運転が開始される。
第1実施形態の超電導磁石装置1では、定常運転を開始する前に特定温度Sになるまで超電導コイル2を昇温し、特定温度Sを特定条件が成立するまで一定に保つことで、中心磁場Cの変動成分を確実に消失させることができる。
また、コイルヒータ6が超電導コイル2に設けられることで、コイルヒータ6の熱が超電導コイル2に直接伝わるので、超電導コイル2を迅速に昇温させることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の超電導磁石装置1Aについて図7を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図7に示すように、第2実施形態の超電導磁石装置1Aでは、前述の第1実施形態の温度センサ7(図1参照)が設けられていない。第2実施形態では、超電導コイル2が特定温度Sに達するために必要な出力値が予め解析され、その設定値が設定記憶部20(図2参照)に記憶される。制御装置8は、設定記憶部20に記憶された出力値と出力期間のみに基づいて、実運用段階の超電導磁石装置1Aの運転の制御を行う。
第2実施形態では、温度センサ7が設けられていないため、超電導磁石装置1Aの部品点数を減らせるばかりか、超電導コイル2を特定温度Sにする制御を簡素化することができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の超電導磁石装置1Bについて図8を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図8に示すように、第3実施形態の超電導磁石装置1Bでは、超電導コイル2を加熱するためのコイルヒータ6が伝導部としての第2冷却ステージ13に取り付けられている。その他の構成は、前述の第1実施形態と同様である。
第3実施形態では、超電導に転移された超電導コイル2で永久電流モードが開始された後に、コイルヒータ6を用いて超電導コイル2を昇温する。コイルヒータ6の熱は、第2冷却ステージ13を介して超電導コイル2に伝導される。
この第3実施形態では、コイルヒータ6が、超電導コイル2から冷却部5まで熱を伝導させる伝導部としての第2冷却ステージ13に設けられることで、コイルヒータ6の熱が超電導コイル2に徐々に伝わるので、超電導コイル2全体を均一に昇温させることができる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の超電導磁石装置1Cについて図9を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図9に示すように、第4実施形態の超電導磁石装置1Cでは、前述の第3実施形態の温度センサ7(図8参照)が設けられていない。第4実施形態では、超電導コイル2が特定温度Sに達するために必要な出力値が予め解析され、その設定値が設定記憶部20(図2参照)に記憶される。制御装置8は、設定記憶部20に記憶された出力値と出力期間のみに基づいて、実運用段階の超電導磁石装置1Cの運転の制御を行う。
第4実施形態では、温度センサ7が設けられていないため、超電導磁石装置1Cの部品点数を減らせるばかりか、超電導コイル2を特定温度Sにする制御を簡素化することができる。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態の超電導磁石装置1Dについて図10から図15を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図10および図11に示すように、第5実施形態の超電導磁石装置1Dでは、前述の第1実施形態のコイルヒータ6(図1参照)および特定制御部23(図2参照)が設けられていない。第5実施形態では、冷却部5を制御する冷却制御部25が、超電導コイル2を特定温度Sにする特定制御部となっている。
この第5実施形態では、超電導に転移された超電導コイル2で永久電流モードが開始された後に、冷却部5を停止することで超電導コイル2を昇温する。この昇温がなされることで、超電導コイル2の内部の渦電流が消失し、ノイズ磁場も無くなる。その後に、定常運転を開始することで、停電などの事象で冷却部5が一時的に停止した場合であっても、中心磁場Cが変化しないようになる。
図12は、中心磁場Cと超電導コイル2の温度との関係の一例を示すグラフである。超電導コイル2の温度を実線で示し、中心磁場Cの値を点線で示している。
まず、冷却部5を用いて超電導コイル2を臨界温度M以下に冷却すると、この超電導コイル2が超電導に転移される。この超電導に転移された直後の降温期間Fにおいて、超電導コイル2は、定常運転温度N以下に冷却される。ここで、中心磁場Cは、ノイズ磁場が含まれているので高い値を示している。
時間Q3において、冷却部5を停止して超電導コイル2を昇温させる。すると、超電導コイル2の温度が徐々に上昇し、特定温度Sになる。この特定温度Sは、臨界温度M以下、かつ定常運転温度Nよりも高い温度となっている。
そして、時間Q4において、超電導コイル2の温度が、特定温度Sになったとき、または特定温度Sを超えたときに、冷却部5を再び作動させて、超電導コイル2を再び定常運転温度N以下に冷却する。この時間Q3からQ4までを1回目の昇温期間Rとする。
この1回目の昇温期間Rにおいて、超電導コイル2の内部の渦電流が消失することで、ノイズ磁場も消失する。そのため、中心磁場Cの値が低下する。そして、所定の降温期間Fを経過した後の時間Q5において、冷却部5を再び停止して超電導コイル2を昇温させる。すると、超電導コイル2の温度が徐々に上昇し、再び特定温度Sになる。
そして、時間Q6において、超電導コイル2の温度が、特定温度Sになったとき、または特定温度を超えたときに、冷却部5を再び作動させて、超電導コイル2を再び定常運転温度N以下に冷却する。この時間Q5からQ6までを2回目の昇温期間Rとする。
この2回目の昇温期間Rにおいても、超電導コイル2の内部の渦電流が消失することで、ノイズ磁場も消失する。なお、2回目の昇温期間Rでは、中心磁場Cの値の低下率が、1回目の昇温期間Rの低下率よりも小さくなっている。これは、1回目の昇温期間R1で殆どのノイズ磁場が消失したことを示している。
第5実施形態では、昇温期間R(R1,R2,…)において中心磁場Cの値の低下がなくなるまで、冷却部5の停止と再作動を繰り返す。そして、この中心磁場Cの値の低下がなくなるまでに必要な昇温期間Rの時間間隔と、昇温期間Rの繰り返し回数が特定条件となる。
昇温期間Rの時間間隔と昇温期間Rの繰り返し回数は、予め解析して求められる。そして、求められた昇温期間Rの時間間隔と昇温期間Rの繰り返し回数が超電導磁石装置1の設定記憶部20に記憶される。
なお、第5実施形態の制御装置8の運転制御部21(図3参照)は、超電導コイル2が特定温度Sに達したか否かを温度センサ7による検出温度により判定する。また、昇温期間Rが経過したか否かを計時部26による計時により判定する。
次に、中心磁場Cの変動成分が消失する特定条件を予め解析して求める超電導磁石装置1Dの解析方法について図14のフローチャートを用いて説明する。なお、図11に示すブロック図を適宜参照する。
図14に示すように、まず、ステップS31において、冷却制御部25は、冷却部電源15から冷却部5に電流を供給し、冷却部5を作動させることで、超電導コイル2と永久電流スイッチ3の冷却を開始する。なお、冷却が開始されると、超電導コイル2と永久電流スイッチ3が臨界温度M以下に冷却される。そして、超電導コイル2と永久電流スイッチ3が超電導状態に転移される。さらに、超電導コイル2と永久電流スイッチ3が定常運転温度Nになるまで冷却される。
次のステップS32において、冷却部5による冷却が継続されている状態で、PCS制御部24は、PCSヒータ電源17からPCSヒータ16に電流を供給し、PCSヒータ16を作動させる。そして、PCS制御部24は、PCSヒータ16を用いて永久電流スイッチ3を加熱して臨界温度Mよりも高い温度にする。すると、永久電流スイッチ3が高電気抵抗の常電導状態(OFF状態)に転移される。
次のステップS33において、励磁電源制御部22は、励磁電源4を制御して電流供給を開始し、超電導コイル2に電流を流し始める。そして、超電導コイル2に流れる電流が定常運転時の値になる。
次のステップS34において、PCS制御部24は、PCSヒータ電源17からPCSヒータ16に供給される電流を停止し、永久電流スイッチ3の温度を再び降下させる。ここで、永久電流スイッチ3の温度が臨界温度M以下になると、永久電流スイッチ3が電気抵抗の無い超電導状態(ON状態)に転移される。
次のステップS35において、励磁電源制御部22は、励磁電源4を制御して電流供給を停止する。このとき、励磁電源4の電流の供給量の低下に対応して、永久電流スイッチ3に流れる電流が増加し始める。
次のステップS36において、励磁電源4から供給される電流の値がゼロになると、永久電流スイッチ3に流れる電流が定常運転時の値になる。また、超電導コイル2と永久電流スイッチ3とで閉ループLが完成し、永久電流モードが開始される。
次のステップS37において、冷却制御部25は、冷却部電源15から冷却部5に供給される電流を停止し、超電導コイル2を昇温させる。そして、冷却制御部25は、超電導コイル2が特定温度Sになるまで冷却部5の停止を継続する。なお、運転制御部21は、超電導コイル2が特定温度Sに達したか否かを温度センサ7による検出温度により判定し、その判定結果を冷却制御部25に入力しても良い。そして、判定結果に基づいて冷却制御部25が冷却部5を制御しても良い。
次のステップS38において、冷却制御部25は、冷却部電源15から冷却部5に電流を供給し、冷却部5を再び作動させる。この冷却部5の再作動は、超電導コイル2の温度が、特定温度Sになったとき、または特定温度Sを超えたときに行う。なお、計時部26の計時に基づいて、冷却部5を停止してから所定の昇温期間Rが経過したときに、冷却部5の再作動を行っても良い。
次のステップS39において、解析部19は、磁場センサ18を用いて超電導コイル2の中心磁場Cの磁場を計測する。
次のステップS40において、解析部19は、中心磁場Cの値に変化があるか否かを判定する。ここで、中心磁場Cの値に変化がない場合(ステップS40がNO)は、前述のステップS37に戻る。一方、中心磁場Cの値に変化がある場合(ステップS40がYES)は、ステップS41に進む。
次のステップS41において、超電導コイル2を特定温度Sに昇温するために必要な昇温期間Rの時間間隔と昇温期間Rの繰り返し回数とを求める。そして、求められた時間間隔と繰り返し回数とを超電導磁石装置1の設定記憶部20に記憶させる。
次に、実運用段階の超電導磁石装置1Dの運転方法について図15のフローチャートを用いて説明する。なお、図11に示すブロック図を適宜参照する。この超電導磁石装置1Dの運転方法は、ステップS31からステップS38までのステップは、前述の超電導磁石装置1の解析方法(図14参照)と同様のステップである。
図15に示すように、ステップS38の次に進むステップS39Aにおいて、運転制御部21は、冷却部5の停止と再作動を設定記憶部20に記憶された予め決められた回数繰り返したか否かを判定する。ここで、冷却部5の停止と再作動を予め決められた回数繰り返していない場合(ステップS39AがNO)は、前述のステップS37に戻る。一方、冷却部5の停止と再作動を予め決められた回数繰り返した場合(ステップS39AがYES)は、ステップS40Aに進む。
次のステップS40Aにおいて、冷却制御部25は、冷却部電源15から冷却部5に電流を供給し、冷却部5を作動させることで、超電導コイル2を再び冷却する。
次のステップS41Aにおいて、定常運転温度Nになるまで冷却された超電導コイル2を用いて定常運転が開始される。
第5実施形態では、冷却部5を停止させて特定温度Sになるまで超電導コイル2を昇温し、特定温度Sに達したときに冷却部5を再び作動させ、この冷却部5の停止と再作動を予め決められた時間間隔で予め決められた回数繰り返すことで特定条件が成立する。このようにすれば、冷却部5の制御により中心磁場Cの変動成分を確実に消失させることができる。
なお、第5実施形態は、冷却部5の停止と再作動を所定回数繰り返しているが、冷却部5の停止と再作動を1回行うことで、中心磁場Cの変動成分を確実に消失させられる場合には、冷却部5の停止と再作動を繰り返す必要はない。
図13は、変形例としての中心磁場Cと超電導コイル2の温度との関係の一例を示すグラフである。超電導コイル2の温度を実線で示し、中心磁場Cの値を点線で示している。
まず、冷却部5を用いて超電導コイル2を臨界温度M以下に冷却すると、この超電導コイル2が超電導に転移される。この超電導に転移された直後の降温期間Fにおいて、超電導コイル2は、定常運転温度N以下に冷却される。ここで、中心磁場Cは、ノイズ磁場が含まれているので高い値を示している。
時間Q7において、冷却部5を停止して超電導コイル2を昇温させる。すると、超電導コイル2の温度が徐々に上昇し、特定温度Sになる。この特定温度Sは、臨界温度M以下、かつ定常運転温度Nよりも高い温度となっている。
そして、時間Q8において、超電導コイル2の温度が、特定温度Sになったとき、または特定温度Sを超えたときに、冷却部5を再び作動させて、超電導コイル2を再び定常運転温度N以下に冷却する。この時間Q7からQ8までの1回目の昇温期間Rで中心磁場Cの値が急激に低下し、時間Q8に至る前に、中心磁場Cの値の低下が治まっていることが分かる。
この変形例では、冷却部5を1度停止させて特定温度Sになるまで超電導コイル2を昇温し、特定温度Sに達したときに特定条件が成立する。このようにすれば、冷却部5の作動を制御することで特定条件を成立させることができる。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態の超電導磁石装置1Eについて図16を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図16に示すように、第6実施形態の超電導磁石装置1Eでは、前述の第5実施形態の温度センサ7(図10参照)が設けられていない。第6実施形態では、超電導コイル2が特定温度Sに達するために必要な出力値が予め解析され、その設定値が設定記憶部20(図11参照)に記憶される。制御装置8は、設定記憶部20に記憶された出力値と出力期間のみに基づいて、実運用段階の超電導磁石装置1Eの運転の制御を行う。
第6実施形態では、温度センサ7が設けられていないため、超電導磁石装置1Eの部品点数を減らせるばかりか、超電導コイル2を特定温度Sにする制御を簡素化することができる。
本実施形態に係る超電導磁石装置の運転方法を第1実施形態から第6実施形態に基づいて説明したが、いずれか1の実施形態において適用された構成を他の実施形態に適用しても良いし、各実施形態において適用された構成を組み合わせても良い。
なお、本実施形態において、基準値を用いた任意の値の判定は、「任意の値が基準値以上か否か」の判定でも良いし、「任意の値が基準値を超えているか否か」の判定でも良い。或いは、「任意の値が基準値以下か否か」の判定でも良いし、「任意の値が基準値未満か否か」の判定でも良い。また、基準値が固定されるものでなく、変化するものであっても良い。従って、基準値の代わりに所定範囲の値を用い、任意の値が所定範囲に収まるか否かの判定を行っても良い。また、予め装置に生じる誤差を解析し、基準値を中心として誤差範囲を含めた所定範囲を判定に用いても良い。
なお、本実施形態のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わっても良い。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されても良い。
本実施形態の制御装置8は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスまたはキーボードなどの入力装置と、通信インターフェースとを備える。この制御装置8は、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
なお、本実施形態の制御装置8で実行されるプログラムは、ROMなどに予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記憶されて提供するようにしても良い。
また、この制御装置8で実行されるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしても良い。また、この制御装置8は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワークまたは専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
なお、超電導コイル2および永久電流スイッチ3は、1個の冷却部5で冷却しなくても良い。例えば、超電導コイル2を冷却する冷却部と、永久電流スイッチ3を冷却する冷却部との複数の冷却部を設けても良い。
なお、本実施形態では、超電導コイル2および永久電流スイッチ3を冷却する方式として伝導冷却方式を例示しているが、その他の態様であっても良い。例えば、液体ヘリウムを冷媒として用いたヘリウム冷却方式であっても良い。また、液体窒素を用いた冷却方式であっても良い。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、超電導コイルの磁場が安定する特定条件が成立した後に、超電導コイルを定常運転温度以下に冷却して定常運転を開始することで、磁場を安定させることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1(1A~1E)…超電導磁石装置、2…超電導コイル、3…永久電流スイッチ、4…励磁電源、5…冷却部、6…コイルヒータ、7…温度センサ、8…制御装置、9…冷却媒体、10…真空容器、11…輻射シールド、12…第1冷却ステージ、13…第2冷却ステージ、14…コイルヒータ電源、15…冷却部電源、16…PCSヒータ、17…PCSヒータ電源、18…磁場センサ、19…解析部、20…設定記憶部、21…運転制御部、22…励磁電源制御部、23…特定制御部、24…PCS制御部、25…冷却制御部、26…計時部、C…中心磁場、F…降温期間、L…閉ループ、M…臨界温度、N…定常運転温度、Q…時間、R…昇温期間、S…特定温度。

Claims (9)

  1. 冷却部を用いて超電導コイルを臨界温度以下に冷却して超電導に転移させるステップと、
    前記超電導に転移された前記超電導コイルに励磁電源から電流を供給するステップと、
    前記電流の供給を停止して永久電流モードを開始するステップと、
    前記超電導コイルを前記臨界温度以下、かつ定常運転温度よりも高い特定温度にするステップと、
    前記超電導コイルの磁場が安定する特定条件が成立した後に、前記超電導コイルを前記定常運転温度以下に冷却して定常運転を開始するステップと、
    を含む超電導磁石装置の運転方法。
  2. 前記磁場の変動成分が消失する前記特定条件を予め解析して求めるステップを含む請求項1に記載の超電導磁石装置の運転方法。
  3. 前記特定温度になるまで前記超電導コイルを昇温し、前記特定温度を前記特定条件が成立するまで一定に保つ請求項1または請求項2に記載の超電導磁石装置の運転方法。
  4. ヒータを用いて前記特定温度になるまで前記超電導コイルを昇温し、予め決められた出力期間が経過するまで前記ヒータを作動させることで前記特定条件が成立する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超電導磁石装置の運転方法。
  5. 前記ヒータは、前記超電導コイルに設けられる請求項4に記載の超電導磁石装置の運転方法。
  6. 前記ヒータは、前記超電導コイルから前記冷却部まで熱を伝導させる伝導部に設けられる請求項4に記載の超電導磁石装置の運転方法。
  7. 前記冷却部を停止させて前記特定温度になるまで前記超電導コイルを昇温し、前記特定温度に達したときに前記特定条件が成立する請求項1または請求項2に記載の超電導磁石装置の運転方法。
  8. 前記冷却部を停止させて前記特定温度になるまで前記超電導コイルを昇温し、前記特定温度に達したときに前記冷却部を再び作動させ、この冷却部の停止と再作動を予め決められた回数繰り返すことで前記特定条件が成立する請求項1または請求項2に記載の超電導磁石装置の運転方法。
  9. 超電導コイルと、
    前記超電導コイルを臨界温度以下に冷却して超電導に転移させる冷却部と、
    前記超電導に転移された前記超電導コイルに電流を供給する励磁電源と、
    前記電流の供給を停止して永久電流モードを開始する永久電流モード制御部と、
    前記超電導コイルを前記臨界温度以下、かつ定常運転温度よりも高い特定温度にする特定制御部と、
    前記超電導コイルの磁場が安定する特定条件が成立した後に、前記超電導コイルを前記定常運転温度以下に冷却して定常運転を開始する運転制御部と、
    を備える超電導磁石装置。
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