JP7047459B2 - セレン含有水の処理方法 - Google Patents
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〔1〕セレン含有水に還元性鉄化合物を添加し、あるいはセレン含有水中で還元性鉄化合物を生成させ、該還元性鉄化合物を含むセレン含有水を反応槽に導き、アルカリ液性下および非酸化性雰囲気下で上記鉄化合物の還元力によって液中のセレンを還元して沈澱化し、生成した沈澱を固液分離してセレンを系外に除去する方法において、
還元性鉄化合物として、第一鉄と第二鉄を含み、第一鉄と全鉄の比〔Fe(II)/全Fe〕が0.3~0.85の混合水酸化物であるグリーンラストを用い、
上記反応槽の作用を二段階に分け、第一段階で該反応槽をpH8.0~8.5および酸化還元電位-140mVvs.SHE以下に調整して液中のセレンを上記グリーンラストに吸着させ、
次の第二段階でpH9.5~11に調整して上記セレンを金属セレンに還元し、沈澱させることを特徴とするセレン含有水の処理方法。
〔2〕セレン含有水に上記グリーンラストを添加して反応槽に導き、該反応槽をpH8.0~8.5および酸化還元電位-140mVvs.SHE以下に調整して液中のセレンを該グリーンラストに吸着させ、その後、この反応槽にアルカリを添加してpH9.5~11に調整して上記セレンを金属セレンに還元する上記[1]に記載するセレン含有水の処理方法。
〔3〕反応槽として第一反応槽と第二反応槽を用い、セレン含有水に上記グリーンラストを添加して第一反応槽に導き、該第一反応槽においてpH8.0~8.5および酸化還元電位-140mVvs.SHE以下に調整して液中のセレンを上記グリーンラストに吸着させ、これを第二反応槽に導き、該第二反応槽にアルカリを添加してpH9.5~11に調整してセレンを金属セレンに還元する上記[1]に記載するセレン含有水の処理方法。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の処理方法は、セレン含有水に還元性鉄化合物を添加し、あるいはセレン含有水中で還元性鉄化合物を生成させ、該還元性鉄化合物を含むセレン含有水を反応槽に導き、アルカリ液性下および非酸化性雰囲気下で上記鉄化合物の還元力によって液中のセレンを還元して沈澱化し、生成した沈澱を固液分離してセレンを系外に除去する方法において、
還元性鉄化合物として、第一鉄と第二鉄を含み、第一鉄と全鉄の比〔Fe(II)/全Fe〕が0.3~0.85の混合水酸化物であるグリーンラストを用い、
上記反応槽の作用を二段階に分け、第一段階で該反応槽をpH8.0~8.5および酸化還元電位-140mVvs.SHE以下に調整して液中のセレンを上記グリーンラストに吸着させ、
次の第二段階でpH9.5~11に調整して上記セレンを金属セレンに還元し、沈澱させることを特徴とするセレン含有水の処理方法である。
〔FeII (6-x)FeIII x(OH)12〕x+〔Ax/n・yH2O〕x- …(1)
(0.9<x<4.2、Aは陰イオン)
Fe(II)4Fe(III)2(OH)12SO4 → 6Fe(III)OOH+SO4 2-+6H++4e-
Fe(II)4Fe(III)2(OH)12SO4 → 2Fe(II)Fe(III)2O-4+SO4 2-+12H++2e-
試験に使用する還元性鉄化合物を調製した。調製の全工程はアルゴンガスで満たしたグローブボックス内で非酸化性雰囲気下に行った。調製にはイオン交換水を蒸留した純水を使用した。また,純水を使用する前にアルゴンガスをバブリングして溶存酸素を予め除去した。グローブボックス内に設置した1L容器に、全鉄濃度が22.3g/L、Fe(II)/全Fe比が0.75になるように、硫酸鉄(II)七水和物と硫酸鉄(III)n水和物を溶解させた0.5Lの溶液を作成した。この溶液に8MのNaOHを2.3×10-4mL/minの流量で添加してpH7.5に調整した。これを5時間撹拌して還元性鉄化合物を合成した。この還元性鉄化合物を含有する懸濁液を遠心分離機によって固液分離し、上澄み液を廃棄した。回収した還元性鉄化合物の濃縮物に純水を加えて再懸濁し、余剰イオンを洗浄した。この再懸濁して遠心分離した上澄み液を廃棄する洗浄操作を2回繰り返し、最終的に回収した濃縮物を還元性鉄化合物として実施例2、比較例1~3に使用した。この回収した濃縮物のX線回折パターンを図1に示す。図1に示すように、典型的な還元性鉄化合物であるグリーンラスト(Green Rust:Fe(II)4Fe(III)2(OH)12SO4)のピークが検出されており、グリーンラストを含む還元性鉄化合物であることを確認した。
容器にアルゴンガスをバブリング済みの0.5Lの純水を用意した。あらかじめ全Fe濃度を測定したスラリー状の還元性鉄化合物を、Se(IV)添加時にSe/全Feのモル比が0.25となるように添加した。還元性鉄化合物が均一に懸濁して酸化還元電位の値が一定値になったのを確認して、Se(IV)濃度が500mg/Lになるように、Se(IV)を添加して反応を開始した。反応中はアルゴンガスをバブリングして大気による酸化の影響を排除した。反応に伴いpHが変化するため、自動電位差滴定装置を用いて0.5M濃度のNaOHを自動滴下することでpH調整を行った。反応開始直後からは反応液をpH8に保持し、酸化還元電位が-140mV vs. SHEに低下するまで保持した。その間の反応時間は30分間であった。酸化還元電位が上記値まで低下したのを確認した後に、反応液のpHをpH10に再調整して210分間保持した。反応中は溶液のサンプリングを適宜実施した。反応開始から合計240分間経過後、メンブレンフィルターを用いて固形分を濾過した。ろ過した後,濾過液と固形分の分析を実施した。反応時間に対する酸化還元電位とセレン濃度の変化を図2に示す。回収した固形分のX線回折グラフを図3に示す。反応の結果を表1に示す。
溶液をpH8に保持した以外は実施例2と同様にして溶液中のSe(IV)濃度を調べた。反応時間に対する酸化還元電位とセレン濃度の変化を図4に示す。回収した固形分のX線回折グラフを図5に示す。反応の結果を表1に示す。
図4に示すように、反応開始直後から溶液中のSe(IV)濃度および酸化還元電位は急激に低下したが、反応時間30分から60分の間で溶液中のSe(IV)濃度は250mg/L、酸化還元電位は-150mV vs. SHE程度で下げ止まった。これは還元性鉄化合物によるSe(IV)除去作用が吸着のみで、酸化還元反応は起こっていないことを示しており、上記反応時間のうちに還元性鉄化合物表面の吸着が飽和状態に達して定常状態に達したことが分かる。また、反応時間240分後の還元性鉄化合物の成分は、図5のX線回折パターンに示すように、主にグリーンラストであり、グリーンラストの酸化物であるゲーサイトやマグネタイトのピークは見られない。このことからセレンの還元は行われず、セレンは専ら吸着のみによって除去されたことが確認できる。
反応開始直後から溶液をpH9に240分間保持した以外は実施例2と同様の操作を行った。反応時間に対する酸化還元電位とセレン濃度の変化を図6に示す。回収した固形分のX線回折グラフを図7に示す。反応の結果を表1に示す。
図6に示すように、酸化還元電位は-200mV vs. SHEまで迅速に低下するものの、その後の減少速度は非常に小さい。また、溶液中のSe(IV)濃度は反応開始から緩慢に低下しつづけた。
また、図7のX線回折パターンに示すように、反応時間240分後の還元性鉄化合物の成分は、グリーンラストのピークは少なく、グリーンラストの酸化物であるゲーサイトのピークが多い。このことからSe(IV)の除去作用は主に還元性鉄化合物によるSe(IV)のSe(0)への還元によって行われていることが分かる。ただし、pH9程度では還元作用が弱いため、反応開始240分後のSe(IV)濃度は320mg/L程度にとどまっており、Se(IV)の除去効果が低い。
反応開始直後から溶液をpH10に240分間保持した以外は実施例2と同様の操作を行った。反応時間に対する酸化還元電位とセレン濃度の変化を図8に示す。回収した固形分のX線回折グラフを図9に示す。反応の結果を表1に示す。
図8に示すように、酸化還元電位は-300mV vs. SHEまで急激に低下し、その後は殆ど変わらない。一方、溶液中のSe(IV)濃度は20mg/L付近まで次第に低下する。また、図7のX線回折パターンに示すように、反応時間240分後の還元性鉄化合物の成分はグリーンラストのピークは少なく、グリーンラストの酸化物であるゲーサイトおよびマグネタイトのピークが多い。このことからSe(IV)の除去作用は主に還元性鉄化合物によるSe(IV)のSe(0)への還元によって行われていることが分かる。
なお、溶液中のSe(IV)濃度が20mg/L付近まで低下する時間は約160分以上であり、実施例2では約100分であるのに比べて反応時間が長い。これは、還元反応は吸着反応よりも効果的にSe(IV)を除去できるものの、吸着反応よりもその反応速度が相対的に低いためである。
Claims (3)
- セレン含有水に還元性鉄化合物を添加し、あるいはセレン含有水中で還元性鉄化合物を生成させ、該還元性鉄化合物を含むセレン含有水を反応槽に導き、アルカリ液性下および非酸化性雰囲気下で上記鉄化合物の還元力によって液中のセレンを還元して沈澱化し、生成した沈澱を固液分離してセレンを系外に除去する方法において、
還元性鉄化合物として、第一鉄と第二鉄を含み、第一鉄と全鉄の比〔Fe(II)/全Fe〕が0.3~0.85の混合水酸化物であるグリーンラストを用い、
上記反応槽の作用を二段階に分け、第一段階で該反応槽をpH8.0~8.5および酸化還元電位-140mVvs.SHE以下に調整して液中のセレンを上記グリーンラストに吸着させ、
次の第二段階でpH9.5~11に調整して上記セレンを金属セレンに還元し、沈澱させることを特徴とするセレン含有水の処理方法。 - セレン含有水に上記グリーンラストを添加して反応槽に導き、該反応槽をpH8.0~8.5および酸化還元電位-140mVvs.SHE以下に調整して液中のセレンを該グリーンラストに吸着させ、その後、この反応槽にアルカリを添加してpH9.5~11に調整して上記セレンを金属セレンに還元する請求項1に記載するセレン含有水の処理方法。
- 反応槽として第一反応槽と第二反応槽を用い、セレン含有水に上記グリーンラストを添加して第一反応槽に導き、該第一反応槽においてpH8.0~8.5および酸化還元電位-140mVvs.SHE以下に調整して液中のセレンを上記グリーンラストに吸着させ、これを第二反応槽に導き、該第二反応槽にアルカリを添加してpH9.5~11に調整してセレンを金属セレンに還元する請求項1に記載するセレン含有水の処理方法。
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