JP7044581B2 - 耐食性膜及び真空部品 - Google Patents

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Description

本発明は、耐食性膜及び真空部品に関する。
プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置等では、成膜処理が完了した後、装置内に収容された真空部材に対して定期的にフッ素系ガスによるクリーニング処理を行う場合がある。このため、真空部材は、その材料がアルミニウムで構成され、表面にアルマイト処理が施されていることが多い。但し、アルマイト処理を施しても完全にフッ素系ガスとの反応を抑えることはできない。さらに、アルミニウム以外の金属材料が使用される場合には、アルミニウムよりもさらにフッ素系ガスに対する耐性が劣る場合がある。
このような状況の中、フッ素系ガスに晒される真空部材の表面に、フッ素に対する耐食性が高い保護層をコーティングする技術がある(例えば、特許文献1参照)。
特表2016-540889号公報
しかし、真空部材が熱を受けたり熱を放出することによって伸縮したり、または機械的な動作によって伸縮と折曲とが繰り返されたりすると、真空部材と保護層との熱膨張係数の差、または保護層に印加される応力によって保護層が真空部材から?がれる可能性がある。剥がれた保護層は、基板に形成される膜にとっては、例えば、パーティクル状の異物となるため、極力発生させないことが望ましい。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、真空部材の腐食を防止し、異物の発生が抑制された耐食性膜、及び耐食性膜が付けられた真空部品を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る耐食性膜は、真空部材を被覆する耐食性膜である。上記耐食性膜では、セラミック層と金属層とが交互に積層され、上記セラミック層は100%未満の表面被覆率を有する。
このような耐食性膜であれば、耐食性膜は、100%未満の表面被覆率を有するセラミック層と、金属層とが交互に積層された多層積層構造を有する。これにより、金属層が真空部材とセラミック層との熱膨張率差を緩和する緩衝材となり、真空部材の折曲または伸縮によって引き起こされるセラミック層の割れ、またはセラミック層の真空部材からの剥がれが抑制される。また、セラミック層の表面被覆率を100%より小さくしても、耐食性膜を多層構造とすることで、真空部材が直接フッ素に触れることが抑制され、真空部材のフッ素系ガスに対する耐食性も向上する。
上記の耐食性膜においては、上記金属層の表面被覆率が100%未満であってもよい。
このような耐食性膜であれば、金属層が100%未満の表面被覆率を有するので、金属層の緩衝材としての効果がさらに向上する。これにより、真空部材の折曲または伸縮によって引き起こされるセラミック層の割れまたは剥がれがより確実に抑制される。
上記に記載された耐食性膜においては、上記真空部材から離れるにつれ、上記セラミック層の上記表面被覆率が高くなり、上記金属層の上記表面被覆率が低くなってもよい。
このような耐食性膜であれば、フッ素系ガス側は、セラミック層の占有率が金属層の占有率よりも高くなり、真空部材側は、金属層の占有率がセラミック層の占有率よりも高くなるので、金属層の緩衝材としての効果と、セラミック層の耐食性の効果がさらに向上する。これにより、真空部材の折曲または伸縮によって引き起こされるセラミック層の割れまたは剥がれがより確実に抑制される。
上記の耐食性膜においては、上記セラミック層は、イットリア、アルミナ、窒化シリコン及び炭化シリコンのいずれかを含んでもよい。
このような耐食性膜であれば、セラミック層として、フッ素に対して耐食性の高いイットリア、アルミナ、窒化シリコン及び炭化シリコンのいずれかが用いられる。これにより、真空部材の折曲または伸縮によって引き起こされるセラミック層の割れまたは剥がれがより確実に抑制される。
上記の耐食性膜においては、上記金属層は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含んでもよい。
このような耐食性膜であれば、金属層として、他の金属と比較してフッ素に対する耐食性が高いアルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。これにより、真空部材の折曲または伸縮によって引き起こされるセラミック層の割れまたは剥がれがより確実に抑制される。
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る真空部品は、真空部材と、上記真空部材を被覆する耐食性膜であって、セラミック層と金属層とが交互に積層され、上記セラミック層は100%未満の表面被覆率を有する耐食性膜とを具備する。
このような真空部品であれば、耐食性膜は、100%未満の表面被覆率を有するセラミック層と、金属層とが交互に積層された多層積層構造を有する。これにより、金属層が真空部材とセラミック層との熱膨張率差を緩和する緩衝材となり、真空部材の折曲または伸縮によって引き起こされるセラミック層の割れまたは剥がれが抑制される。また、セラミック層の表面被覆率を100%より小さくしても、耐食性膜を多層構造とすることで、真空部材が直接フッ素に触れることが抑制され、真空部材のフッ素系ガスに対する耐食性も向上する。
上記の真空部品においては、上記真空部材は、基板を加熱するヒータ、上記基板を支持するサセプタ、上記サセプタと真空容器とを電気的に接続する導電板、上記真空容器にガスを放出するシャワープレートのいずれかであってもよい。
このような真空部品であれば、基板を支持するサセプタ、サセプタと真空容器とを電気的に接続する導電板、真空容器にガスを放出するシャワープレートが耐食性膜によってフッ素系ガスから保護される。
上記の真空部品においては、上記導電板は、可撓性を有してもよい。
このような真空部品であれば、導電板が可撓性を有し、導電版が機械的な動作によって伸縮したり折曲したりしても、耐食性膜は、上記構造によって導電板から剥がれにくくなる。
以上述べたように、本発明によれば、真空部材の腐食を防止し、異物の発生が抑制された耐食性膜及び真空部品が提供される。
本実施形態に係る真空部品の概略断面図である。 本実施形態に係る耐食性膜が適用される真空処理装置の概略断面図である。 耐食性膜を形成する成膜装置の概略断面図である。 耐食性膜の別の例を示す概略グラフ図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。
図1(a)及び図1(b)は、本実施形態に係る真空部品の概略断面図である。
図1(a)に示す真空部品1Aは、耐食性膜10Aと、真空部材20とを具備する。
真空部品1Aにおいて、真空部材20は、耐食性膜10Aに被覆されている。真空部材20上の耐食性膜10Aは、セラミック層11と、金属層12Aとが交互に積層された積層構造を有する。セラミック層11の下地に対する表面被覆率は、100%未満である。ここで、表面被覆率は、(層が下地を被覆する面積/下地の面積)×100で定義される。下地とは、層の下にある、別の層、基板等を意味する。
例えば、耐食性膜10Aにおいては、島状のセラミック層11がX軸方向またはY軸方向に並ぶとともに、島状のセラミック層11が金属層12Aを介してZ軸方向に積層される。また、X軸方向またはY軸方向において隣り合うセラミック層11間の金属層12Aの下方には、別のセラミック層11が位置する。
一方、図1(b)に示す真空部品1Bは、耐食性膜10Bを具備する。耐食性膜10Bにおいては、セラミック層11と金属層12Bとの表面被覆率が100%未満であり、セラミック層11と金属層12Bとが交互に積層されている。
例えば、耐食性膜10Bにおいては、島状のセラミック層11がX軸方向またはY軸方向に並ぶとともに、島状の金属層12BがX軸方向またはY軸方向に並ぶ。そして、X軸方向またはY軸方向において隣り合うセラミック層11間には、金属層12Bが位置する。また、X軸方向またはY軸方向において隣り合うセラミック層11間の金属層12Bの下方には、別のセラミック層11が位置する。
耐食性膜10A、10Bのそれぞれにおいて、セラミック層11は、少なくとも1層あり、金属層12A(または、金属層12B)は、少なくとも1層ある。また、耐食性膜10A、10Bのそれぞれの最表面は、セラミック層11で覆われている。また、図1(a)、(b)には、真空部材20に最初に形成される層として、金属層12A、12Bのいずれかが例示されているが、セラミック層11でもよい。
セラミック層11は、例えば、イットリア、アルミナ、窒化シリコン及び炭化シリコンのいずれかを含む。金属層12A、12Bは、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む。真空部材20は、例えば、ニッケル、ニッケル系合金(インコネル、ハステロイ等)、アルミニウム、アルミニウム系合金のいずれかを含む。なお、アルミナの熱膨張率は、7.2×10-6(1/K)、イットリアの熱膨張率は、7.2×10-6(1/K)、アルミ系合金5052の熱膨張率は、23×10-6(1/K)、インココネル600の熱膨張率は、11.5~13.3×10-6(1/K)である。
例えば、プラズマCVD装置を構成する電極等(真空部材)は、プラズマに晒される都合上、その表面がアルマイト処理されたアルミニウム部材が使用されることがある。また、プラズマCVD装置では、成膜処理がある枚数に達した場合は、NF、CF等のフッ素系ガスを用いたクリーニングが実施される場合がある。
アルマイト処理されたアルミニウム部材の表面は、比較的化学的に安定であり、フッ素に対する耐性がある。但し、アルマイト処理されたアルミニウム部材でも、完全にフッ素との反応を抑えることができず、成膜処理を重ねるごとに、表面にアルミニウムフッ化物(AlF)が堆積する。このAlFがパーティクルとなって成膜中に、成膜空間に舞うと、ディスプレイ等のデバイスの歩留りが悪くする要因になる。特に、極薄の膜が幾重にも積層される構成のデバイスでは、パーティクルが微小であっても歩留り低下を引き起こす。
また、プラズマCVD装置の内部にはアルミニウム部材以外の金属材料が使用される場合がある。例えば、基板を加熱するヒータを接地電位とするためにはヒータと真空容器とを導電板で接続する必要がある。
特に、ヒータが上下に可動する機構を持つ場合、ヒータに接続されている導電板は、ヒータの上下運動に連動して、折れ曲がったり、伸びたりする。このため、導電板としては、可撓性のある導電板を用いる必要がある。このため、導電板の材料としては、ニッケル系金属等が用いられる。
しかし、真空部材として、アルミニウム以外の金属を使用する場合は、フッ素系ガスに対する耐性がアルミニウムよりも低下する場合がある。このため、長期間の使用によって、アルミニウム以外の金属はフッ素化され、フッ素化物がパーティクルとして発生する場合がある。
また、プラズマCVD装置では、基板の温度を200℃~500℃の範囲に設定する場合がある。従って、基板を支持するサセプタの温度も500℃近傍に加熱される場合がある。このように、真空容器の内部に使用される真空部材は、高温に加熱され、あるいは、真空部材の放冷によって伸縮が繰り返される。従って、上下に可動する機構を持たない真空部材であっても、熱履歴による伸縮によって、アルマイトが応力等の負荷を受け、アルマイトが真空部材から剥がれる場合がある。
このような状況の中、図1(a)に示す耐食性膜10Aは、100%未満の表面被覆率を有するセラミック層11と、金属層12Aとが交互に積層された多層積層構造を有する。このような耐食性膜10A、10Bにおいては、金属層12Aがセラミックに比べて展延性に優れるため、金属層12Aが真空部材20とセラミック層11との熱膨張率差を緩和する緩衝材となって機能する。これにより、真空部材20の折曲または伸縮によって引き起こされるセラミック層11の割れ、またはセラミック層11の真空部材20からの剥がれが抑制される。
また、セラミック層11の表面被覆率が100%より小さくなっても、耐食性膜10Aを多層構造とすることで、真空部材20が直接フッ素に触れることが抑制され、真空部材20のフッ素系プラズマに対する耐食性も向上する。
特に、図1(b)に示す耐食性膜10Bのように、金属層12Bが100%未満の表面被覆率を有する場合は、金属層12Bの緩衝材としての効果がさらに向上する。これにより、セラミック層11の割れ、または、セラミック層11の真空部材20からの剥がれが確実に抑制される。
また、セラミック層11の材料には、フッ素に対して耐食性の高いイットリア、アルミナ、窒化シリコン及び炭化シリコンのいずれかが用いられる。また、金属層12A、12Bとして、他の金属と比較してフッ素に対する耐食性が高いアルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。これにより、セラミック層11の割れ、または、セラミック層11の真空部材20からの剥がれが確実に抑制される。
また、X軸方向またはY軸方向において隣り合うセラミック層11間の金属層12A(または、金属層12B)の下方には、別のセラミック層11が位置する。これにより、X軸方向またはY軸方向において隣り合うセラミック層11間の金属層12A(または、金属層12B)がプロセス中にフッ素化されたとしても、その下方には、別のセラミック層11が位置することから、耐食性膜10A(または、耐食性膜10B)の全体としてフッ素化が進行しにくくなっている。
また、真空部材20が金属で真空部材20に最初に形成される層として、金属層12A(または、金属層12B)が形成された場合には、真空部材20と、真空部材20に最初に形成される層(金属層)との熱膨張が近くなるため、耐食性膜10A(または、耐食性膜10B)が真空部材20からより剥がれにくくなる。
図2は、本実施形態に係る耐食性膜が適用される真空処理装置の概略断面図である。本実施形態では、真空処理装置として、プラズマCVD装置200が例示されている。真空処理装置は、プラズマCVD装置に限らず、エッチング装置でもよい。
プラズマCVD装置200は、真空容器210を有する。真空容器210は、内部に成膜室211を有する。真空容器210は、図示しない真空ポンプに接続されており、成膜室211を所定の減圧雰囲気に排気し、維持することが可能に構成される。
真空容器210は、チャンバ本体212と、高周波電極230と、絶縁部材214とを有する。チャンバ本体212は、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の金属材料で構成される。チャンバ本体212は、底部221と、底部221の周囲に立設された4つの側壁222とを有する直方体形状に形成される。チャンバ本体212は、グランド電位である。
側壁222は、Y軸方向に基板Wが通過可能な開口部226を含む。開口部226は、成膜室211へ基板Wを搬入し、成膜室211から基板Wを搬出するための搬出入口である。開口部226は、基板W及び図示しない基板搬送装置が通過可能な幅及び高さを有する。開口部226には、開口部226を閉じることが可能なドアバルブ251が設けられている。
チャンバ本体212の内部には、基板Wを支持するサセプタ220が設置される。サセプタ220と基板Wとの間には、基板Wを加熱するヒータ225が設けられている。サセプタ220は、昇降軸224を有し、チャンバ本体212の底部221外方に設置された駆動源223によってZ軸方向に昇降移動可能に構成される。昇降軸224は、サセプタ220の底部中心に固定され、チャンバ本体212の底部221を気密に貫通する。
高周波電極230は、サセプタ220とZ軸方向に所定の間隔をおいて対向するように、チャンバ本体212の上部に絶縁部材214を介して設置される。高周波電極230は金属材料で構成され、電極フランジ231と、シャワープレート232とを有する。
電極フランジ231は、マッチングボックス241を介して高周波電源242に電気的に接続される。電極フランジ231は、ガス供給ライン243と接続されるとともに、このガス供給ライン243を介して供給されるプロセスガス(成膜ガス)が導入される空間部233を有する。
シャワープレート232は、電極フランジ231の下端部に固定され、空間部233に導入されたプロセスガスをサセプタ220上の基板Wの全域にわたって供給する複数の孔を有する。高周波電極230は、高周波電源242から高周波電圧が印加されることで、シャワープレート232とサセプタ220との間の成膜室211にプロセスガスのプラズマPを発生させる。
プロセスガスの種類は特に限定されず、成膜材料の種類に応じて適宜設定可能である。プロセスガスは、原料ガスのほか、ヘリウム、アルゴン、窒素等のキャリアガスが含まれてもよい。本実施形態においてプラズマCVD装置200は、例えば、アモルファスシリコン、窒化シリコン、酸化シリコン等のシリコン化合物の薄膜を基板W上に成膜する。
高周波電極230は、シールドカバー215によって被覆されている。シールドカバー215は、チャンバ本体212の上部に配置され、電極フランジ231とは非接触で高周波電極230を被覆する。シールドカバー215と電極フランジ231との間は、大気圧に維持される。シールドカバー215は金属材料で構成され、チャンバ本体212及び接地電位に電気的に接続される。
プラズマCVD装置200は、複数の導電板260をさらに具備する。複数の導電板260は、サセプタ220の周囲に配置され、真空容器210の側壁222とサセプタ220との間を電気的に接続する。これにより、サセプタ220及びヒータ225が接地電位になる。複数の導電板260のそれぞれは、可撓性を有する。
プラズマCVD装置200では、基板WがプラズマCVD装置200外からヒータ225上に搬送されるとき、ドアバルブ251によって開口部226が開状態となるとともに、昇降軸224が降下する。基板Wがヒータ225上に載置された後、昇降軸224が上昇して、基板Wとシャワープレート232との間が所定の距離に設定される。この際、昇降軸224の昇降に応じて、導電板260が折れ曲がったり、伸びたりする。
一方、基板Wを支持するヒータ225は、外部から供給される電力に応じて温度が変わり、この温度変化に応じて伸縮する。また、基板Wを支持するサセプタ220及び真空容器210にガスを放出するシャワープレート232は、ヒータ225の温度またはプラズマ密度に応じて伸縮する場合がある。
仮に、これらの真空部材(導電板260、ヒータ225、サセプタ220、シャワープレート232)に、フッ素に対して耐食性の高い単層のセラミック層を被覆しても、真空部材とセラミック層との熱膨張係数の差、またはセラミック層に印加される応力によってセラミック層が真空部材から?がれる可能性がある。
例えば、インコネルを用いた真空部材の表面に、スパッタリング成膜によって、イットリア層の均一層を形成した場合、フッ素に対する耐性は一時的には上がるものの、長期間の使用では、イットリア層の機械的強度が弱く、真空部材が折れ曲がったり伸縮したりする部分からイットリア層が剥離する場合がある。
これに対して、プラズマCVD装置200では、導電板260、ヒータ225、サセプタ220及びシャワープレート232等の真空部材に耐食性膜10Aまたは耐食性膜10Bが形成される。
これにより、耐食性膜10A(または、耐食性膜10B)中の金属層12A(または、金属層12B)が真空部材20とセラミック層11との熱膨張率差を緩和する緩衝材となり、セラミック層11の割れ、または、セラミック層11の真空部材からの剥がれが抑制される。さらに、耐食性膜10A、10Bは、多層構造であるため、真空部材が直接フッ素に触れることが抑制され、真空部材のフッ素系プラズマに対する耐食性も向上する。
図3は、耐食性膜を形成する成膜装置の概略断面図である。
耐食性膜10A、10Bは、例えば、マグネトロン方式のスパッタリング装置300により形成される。スパッタリング装置300は、真空容器310、ガス導入配管345、ホルダ316、成膜源320、電源331A、331B、及び真空排気ポンプ330等を具備する。
真空容器310は、容器本体311と、容器本体311の上端を覆う蓋体312とを有する。真空容器310は、グランド電位になっている。真空容器310の側壁には、開口319が設けられている。開口319には、ゲートバルブ315が設置されている。真空容器310は、ゲートバルブ315を介して、例えば、他の真空容器に連結されている。
真空容器310は内部に処理室303を画成している。処理室303は、真空排気ポンプ330によって減圧状態(例えば、1×10-5Pa以下)に維持される。真空排気ポンプ330は、例えば、ターボ分子ポンプと、その排圧側に接続されたロータリーポンプとにより構成される。また、真空容器310には、処理室303内に放電ガスを導入するためのガス導入配管345が真空容器310に設けられている。放電ガスは、例えば、アルゴンを含む。但し、放電ガスは、アルゴンに限らない。
処理室303には、ワークである真空部材20を支持するためのホルダ316が設置されている。ホルダ316は、回転軸317を中心に回転可能になっている。ホルダ316と蓋体312との間には、ヒータ機構等の温度調整器318が設けられている。ホルダ316は、例えば、グランド電位になっている。ホルダ316には、複数の真空部材20を設置できる。
ホルダ316下には、成膜源320が配置されている。成膜源320は、ホルダ316に対向する。図3には、成膜源320として、複数のカソードユニット320A、320Bが例示されている。カソードユニット320Aは、ターゲット321A、バッキングプレート322A及びマグネット323Aを有する。カソードユニット320Bは、ターゲット321B、バッキングプレート322B及びマグネット323Bを有する。カソードユニット数は、図示された数に限らない。ターゲット321A、321Bは、スパッタリング源であるとともに、カソード電極でもある。ターゲット321A、321Bは、真空部材20の成膜面に対向する。
ターゲット321Aは、例えば、イットリア、アルミナ、窒化シリコン及び炭化シリコンのいずれかを含む。ターゲット321Bは、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む。ターゲット321A、321Bのそれぞれの平面形状は、例えば、円形である。
ターゲット321Aの表面は、所定の距離を隔ててシャッタ343Aによって覆われたり(閉状態)、シャッタ343Aから開放されて処理室303に露出されたりする(閉状態)。同様に、ターゲット321Bの表面は、所定の距離を隔ててシャッタ343Bによって覆われたり、シャッタ343Bから開放されて処理室303に露出されたりする。
電源331A、331Bのそれぞれは、例えば、DC電源、RF電源(周波数:13.56MHz)またはDCパルス電源(パルス周波数:5kHz以上400kHz以下)のいずれかが適用される。ターゲット321Aは、ケーブル332Aを介して電源331Aに接続されている。ケーブル332Aの中途には、整合回路が設けられてもよい。ターゲット321Bは、ケーブル332Bを介して電源331Bに接続されている。ケーブル332Bの中途には、整合回路が設けられてもよい。
スパッタリング装置300では、処理室303に放電ガスが導入され、所定パワーの電力が電源331Aからターゲット321Aに印加されたり、所定パワーの電力が電源331Bからターゲット321Bに印加されたりする。これにより、処理室303には、プラズマが発生して、プラズマ中のイオンがターゲット321A、321Bをスパッタリングし、ターゲット321A、321Bから放出されたスパッタリング粒子が真空部材20上に堆積する。
例えば、ターゲット321A及びターゲット321Bがスパッタリング源となって、真空部材20に、セラミック層11と金属層12A、またはセラミック層11と金属層12Bとの積層膜が形成される。すなわち、真空部材20がターゲット321Aの直上に位置しているときには、シャッタ343Aが開状態、シャッタ343Bが閉状態で、ターゲット321Aがスパッタリング源となって、真空部材20にセラミック層11が形成される。
一方、この状態からサセプタ316が回転して、真空部材20がターゲット321Bの直上に位置しているときには、シャッタ343Bが開状態、シャッタ343Aが閉状態で、ターゲット321Bがスパッタリング源となって、真空部材20に金属層12Aまたは金属層12Bが形成される。
サセプタ316の回転数は、1rpm以上120rpm以下である。それぞれのターゲット321A、321Bでプラズマを立てた状態で、サセプタ316を回転させながら、ターゲット321A上に真空部材20が位置したときは、シャッタ343Aを「開」、シャッタ343Bを「閉」の状態にし、ターゲット321B上に真空部材20が位置したときは、シャッタ343Bを「開」、シャッタ343Aを「閉」の状態とする。この一連の成膜を繰り返すことで、セラミック層11と金属層12A、またはセラミック層11と金属層12Bとの積層膜が形成される。
例えば、セラミック層11の積層数と金属層12Aの積層数とを合計した合計積層数、またはセラミック層11の積層数と金属層12Bの積層数を合計した合計積層数は、500とする。また、それぞれのターゲット321A、321Bへの投入電力を変えることで、セラミック層11及び金属層12Bのそれぞれの表面被覆率が調整される。例えば、セラミック層11と金属層12Bとがそれぞれ表面被覆率50%のときに、フッ素に対する耐性と、剥離がない機械的強度が両立できる。
例えば、真空部品1Aにおいて、セラミック(Y)層の被覆率50%、金属(Al)層の被覆率100%の耐食性膜10Aは、以下のようにして作製できる。セラミックのターゲット321Aには、RF電源を用いて3W/cmの電力密度の電力を投入する。金属のターゲット321Bに対してはDC電源を用いて3.5W/cmの電力密度の電力を投入する。また、サセプタ316の回転数を15rpmとする。
また、真空部品1Bにおいて、セラミック(Y)層の被覆率50%、金属(Al)層の被覆率50%の耐食性膜10Bは、以下のようにして作製できる。セラミックのターゲット321Aには、RF電源を用いて3W/cmの電力密度の電力を投入する。金属のターゲット321Bに対しては、DC電源を用いて0.5W/cmの電力密度の電力を投入する。また、サセプタ316の回転数を15rpmとする。
(変形例)
図4は、耐食性膜の別の例を示す概略グラフ図である。
図4の縦軸は、表面被覆率である、横軸は、セラミック層11と金属層12Bとの合計積層数(規格値)である。ここで、合計積層数が「500」ならば、横軸の「1」は、「500」に換算され、合計積層数が「1000」ならば、横軸の「1」は、「1000」に換算される。また、耐食性膜10Cにおいては、セラミック層11が少なくとも1層あり、金属層12Bが少なくとも1層ある。また、耐食性膜10Cの最表面は、セラミック層11で覆われている。
スパッタリング装置300を用いれば、積層の手段としては、セラミック層11及び金属層12Bのそれぞれの表面被覆率を1%以上100%以下の範囲で独立して制御することができる。
例えば、耐食性膜10Cにおいては、真空部材20から離れるにつれ、セラミック層11の表面被覆率が高くなり、金属層12Bの表面被覆率が低くなっている。具体的には、耐食性膜10Cの合計積層数を「1000」とした場合、セラミック層11の1層目の表面被覆率は、1%であり、1000層目の表面被覆率は、100%であり、その間のセラミック層11の表面被覆率が連続的に増加する構成になっている。これとは逆に、金属層12Bの1層目の表面被覆率は、100%であり、最表面のセラミック層11下の金属層12Bの表面被覆率は、1%であり、その間の金属層12Bの表面被覆率は、連続的に減少する構成になっている。
このような耐食性膜であれば、フッ素系プラズマ側は、セラミック層11の占有率が金属層12Bの占有率よりも高くなり、真空部材20側は、金属層12Bの占有率がセラミック層11の占有率よりも高くなる。これにより、金属層12Bの緩衝材としての効果と、セラミック層11の耐食性の効果がさらに向上する。これにより、セラミック層11の割れ及び真空部材20からの剥がれがより確実に抑制される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合させることができる。
1A、1B…真空部品
10A、10B、10C…耐食性膜
11…セラミック層
12A、12B…金属層
20…真空部材
200…プラズマCVD装置
210…真空容器
211…成膜室
212…チャンバ本体
214…絶縁部材
215…シールドカバー
220…サセプタ
221…底部
222…側壁
223…駆動源
224…昇降軸
225…ヒータ
226…開口部
230…高周波電極
231…電極フランジ
232…シャワープレート
233…空間部
241…マッチングボックス
242…高周波電源
243…ガス供給ライン
251…ドアバルブ
260…導電板
300…スパッタリング装置
303…処理室
310…真空容器
311…容器本体
312…蓋体
315…ゲートバルブ
316…サセプタ
317…回転軸
318…温度調整器
319…開口
320…成膜源
320A、320B…カソードユニット
321A、321B…ターゲット
322A,322B…バッキングプレート
323A、323B…マグネット
330…真空排気ポンプ
331A、331B…電源
332A、332B…ケーブル
343A、343B…シャッタ
345…ガス導入配管

Claims (6)

  1. 真空部材を被覆する耐食性膜であって、
    セラミック層と金属層とが交互に積層され、前記セラミック層は、100%未満の表面被覆率を有し、
    前記金属層の表面被覆率が100%未満であり、
    前記真空部材から離れるにつれ、
    前記セラミック層の前記表面被覆率が高くなり、
    前記金属層の前記表面被覆率が低くな
    耐食性膜。
  2. 請求項1に記載された耐食性膜であって、
    前記セラミック層は、イットリア、アルミナ、窒化シリコン及び炭化シリコンのいずれかを含む
    耐食性膜。
  3. 請求項1または2に記載された耐食性膜であって、
    前記金属層は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む
    耐食性膜。
  4. 真空部材と、
    前記真空部材を被覆する耐食性膜であって、セラミック層と金属層とが交互に積層され、前記セラミック層は100%未満の表面被覆率を有し、前記金属層の表面被覆率が100%未満であり、前記真空部材から離れるにつれ、前記セラミック層の前記表面被覆率が高くなり、前記金属層の前記表面被覆率が低くなる耐食性膜と
    を具備する真空部品。
  5. 請求項に記載された真空部品であって、
    前記真空部材は、基板を加熱するヒータ、前記基板を支持するサセプタ、前記サセプタと真空容器とを電気的に接続する導電板、前記真空容器にガスを放出するシャワープレートのいずれかである
    真空部品。
  6. 請求項に記載された真空部品であって、
    前記導電板は、可撓性を有する
    真空部品。
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