(第1の実施形態)
先ず、この第1の実施形態における半導体装置製造用の円形の基板であるウエハWに対して行われる処理の概要について説明する。図1は当該ウエハWの縦断側面図である。この図1及び後述の図2~図6において、矢印の先の点線の円枠内には、ウエハWの端部の縦断側面を拡大して示している。ウエハWの端部とはウエハWの周縁の位置R1からウエハWの中心側に例えば15mm寄った位置R2よりも周縁側の領域であり、ウエハWの表面において当該ウエハWの外方に向かうにつれて下降する傾斜面W1を含んでいる。以下、特に記載無い限りウエハWの端部形状とは、ウエハWの表面の端部における径方向に沿った領域の形状であるものとする。
塗布膜形成装置をなし、上記のウエハWを処理する処理モジュールが設けられた塗布、現像装置2において、当該ウエハWの裏面中央部が限定的に、ウエハWの載置台をなすスピンチャック11に吸着保持され(図2)、スピンコートによって下層膜12、レジスト膜13が順に形成される(図3)。そして、塗布、現像装置2の外部装置である露光装置D4に搬入されたウエハWは、平面で見てウエハWよりも大きい水平なステージ14に載置される。そして、ウエハWの裏面全体が当該ステージ14の水平な載置面に吸着された状態で、レジストパターンを形成するためにレジスト膜13が、レンズを含む光学系15により露光される(図4)。この露光時において、ウエハWの端部におけるレジスト膜13の表面の高さが、端部以外の領域におけるレジスト膜の表面の高さと異なる場合、当該端部のレジスト膜の表面は、光学系15のフォーカス面の高さからずれることになり、デフォーカス(焦点異常)が発生する。それにより、パターンの寸法であるCD(critical dimension)が設計値からずれてしまう。
上記のウエハWの端部は、当該ウエハWの外方へ向かうにつれて下方へ落ち込む形状とされている。そして、上記のレジスト膜13及び下層膜12については、塗布レシピを調整することで端部の膜厚分布を調整することができるため、この落ち込みが解消されるように下地膜12及びレジスト膜13を形成することが考えられる。
しかし、ウエハWは反りが生じた状態で塗布、現像装置2に搬入される場合が有る。さらに、上記のように下地膜12及びレジスト膜13のスピンコート時には、ウエハWの裏面中央部のみが吸着保持されるため、保持されているウエハWの姿勢は、ウエハWの周縁部の自重の影響を受けることになる。つまり、スピンコートを行うためにスピンチャック11に保持されたときにウエハWは平坦にならず、反りが生じている場合が有る。上記の図2は、そのようにウエハWに反りが生じている例を示している。このように反りが生じてスピンチャック11に保持されている状態でレジスト膜13の表面が平坦になるように、当該レジスト膜13及び下地膜12の膜厚分布が調整されて成膜が行われたとする。上記の図3はそのようにレジスト膜13の表面が平坦となるように、当該レジスト膜13及び下層膜12が成膜された例を示している。
しかし、上記のようにウエハWは露光時においては、ステージ14に裏面全体が吸着されて載置される。つまり、スピンコート時に生じていた反りが解消されて露光が行われる。そのように反りが解消されることで、スピンコート時には平坦となっていたレジスト膜13の表面の形状が変化し、ウエハWの端部のレジスト膜の表面の高さが、端部以外の領域におけるレジスト膜の表面の高さと異なってしまう場合が有る。図4では、ウエハWの端部が中央部より下方に位置するように反っていたウエハWが平坦化されることで、端部のレジスト膜13の高さが中央部のレジスト膜の高さよりも高くなった例を示している。
このようにウエハWの反り及び端部形状の両方に起因して、デフォーカスが発生する懸念がある。そこで、本実施形態における塗布、現像装置2では、先ず、下地膜12及びレジスト膜13を形成する前に、スピンチャック11に載置されているときと同様にウエハWの裏面中央部のみが吸着された状態で、ウエハWの端部形状を取得する。つまり、反りを含む状態のウエハWの端部形状を取得する。さらにそのように裏面中央部のみが吸着された状態で、水平面に対するウエハWの反りの情報を取得する。そして、塗布、現像装置2は、これらの反りを含む状態のウエハWの端部形状及びウエハWの反りの情報に基づいて、下層膜12、レジスト膜13を夫々形成するための塗布レシピの調整を行う。即ち、これらの各膜を形成するための処理パラメータが変更される。
そのように塗布レシピを調整することによって、レジスト膜13の形成を終えて、後に露光装置D4のステージ14に載置されたときにレジスト膜13の表面が平坦になる、つまりウエハWの端部と端部以外の領域とでレジスト膜の高さが揃い、ウエハWの端部におけるデフォーカスが抑制されるように処理が行われる(図5、図6)。つまり、反りを含む状態のウエハWの端部形状及びウエハWの反りの情報を用いて、スピンチャック11に保持されているときではなく、露光装置D4のステージ14に載置されたときにレジスト膜13の表面が平坦となるように処理が行われる。
(塗布、現像装置の構成)
図5、図6に示すように下地膜12及びレジスト膜13を形成する塗布、現像装置2について、図7~図9を参照しながら説明する。図7、図8、図9は夫々塗布、現像装置2の平面図、斜視図、概略縦断側面図である。この塗布、現像装置2は、キャリアブロックD1と、処理ブロックD2と、インターフェイスブロックD3と、を横方向に直線状に接続して構成されている。また、インターフェイスブロックD3には露光装置D4が、処理ブロックD2と反対側に接続されている。これらの塗布、現像装置2と露光装置D4とにより、ウエハWに上記の塗布膜の形成、塗布膜を構成するレジスト膜の露光及び現像からなる一連の処理を行う半導体装置の製造システムであるレジストパターン形成システム20が構成される。
以降の説明では特に記載が無い限り、ブロックD1~D3及び露光装置D4の配列方向を前後方向とする。この塗布、現像装置2ではウエハWのSOC(Spin On Carbon)と呼ばれる有機膜、SOG(Spin On glass)と呼ばれる無機膜、レジスト膜13が下方側からこの順に積層されて形成される。SOC膜及びSOG膜は既述した下地膜12であり、従って図3などで示した下地膜12はSOC膜及びSOG膜を簡略化して1つの膜として表したものである。なお、以下の処理例ではSOC膜及びSOG膜のうち、SOG膜を形成するための塗布レシピが調整されるものとして説明するが、SOC膜を形成するための塗布レシピが調整されてもよいし、あるいはSOC膜を形成するための塗布レシピ、SOG膜を形成するための塗布レシピの両方が調整されるようにしてもよい。
上記のキャリアブロックD1は、図1で説明したウエハWが格納されたキャリアCを塗布、現像装置2に対して搬入出する。このキャリアブロックD1は、キャリアCの載置台21と、開閉部22と、開閉部22を介してキャリアCからウエハWを搬送するための搬送機構23とを備えている。
処理ブロックD2は、ウエハWに液処理を行う第1~第6の単位ブロックE1~E6が下から順に積層されて構成されている。E1とE2とが互いに同じ単位ブロックであり、E3とE4とが互いに同じ単位ブロックであり、E5とE6とが互いに同じ単位ブロックである。同じ単位ブロックにおいて、互いに並行してウエハWの搬送及び処理が行われる。
ここでは単位ブロックのうち代表して単位ブロックE1を、図7を参照しながら説明する。キャリアブロックD1からインターフェイスブロックD3へ向かう搬送領域24の左右の一方側にはSOC膜形成モジュール3A、SOG膜形成モジュール3Bが前後方向に並べて設けられている。これらのSOC膜形成モジュール3A、SOG膜形成モジュール3Bの構成は後に説明する。また、搬送領域24の左右の他方側には加熱モジュール25と撮像モジュール4とが前後方向に並べて設けられている。加熱モジュール25は、SOC膜形成モジュール3A、SOG膜形成モジュール3Bで夫々薬液が塗布されて膜が形成された後のウエハWを加熱し、膜中に残留する溶剤を除去する。撮像モジュール4はウエハWを撮像し、上記した反りを含む状態のウエハWの端部形状及びウエハWの反りの情報を取得するためのモジュールであり、後にその構成を詳述する。また、上記の搬送領域24には、ウエハWの搬送機構である搬送アームF1が設けられている。
単位ブロックE3~E6について、単位ブロックE1、E2との差異点を説明すると、単位ブロックE3、E4は、SOC膜形成モジュール3A及びSOG膜形成モジュール3Bの代わりに、レジスト膜形成モジュール3Cを備えている。単位ブロックE3、E4に設けられる加熱モジュール25は、レジスト膜形成後のウエハWを加熱して、当該レジスト膜中に含まれる溶剤を除去する。
単位ブロックE5、E6は、SOC膜形成モジュール3A及びSOG膜形成モジュール3Bの代わりに、現像モジュール3Dを備えている。現像モジュール3DはウエハWに現像液を供給して露光済みのレジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する。単位ブロックE5、E6に設けられる加熱モジュール25は、現像前のウエハWを加熱するPEB(ポストエクスポージャーベーク)を行う。このような差違を除いて、単位ブロックE1~E6は互いに同様に構成されている。図9では、搬送アームF1に相当する各単位ブロックE2~E6の搬送アームについて、F2~F6として示している。
処理ブロックD2におけるキャリアブロックD1側には、各単位ブロックE1~E6に跨って上下に伸びるタワーT1と、タワーT1に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な搬送機構26とが設けられている。タワーT1は互いに積層された複数のモジュールにより構成されており、このモジュールとしては、単位ブロックE1~E6の各高さに設けられる受け渡しモジュールTRSが含まれる。当該受け渡しモジュールTRSは、単位ブロックE1~E6の各搬送アームF1~F6との間において、ウエハWの受け渡しを行うために当該ウエハWが載置されるモジュールである。
インターフェイスブロックD3は、単位ブロックE1~E6に跨って上下に伸びるタワーT2、T3、T4を備えており、タワーT2とタワーT3とに対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な搬送機構であるインターフェイスアーム27と、タワーT2とタワーT4とに対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な搬送機構であるインターフェイスアーム28と、タワーT2と露光装置D4との間でウエハWの受け渡しを行うための搬送機構であるインターフェイスアーム29が設けられている。
タワーT2には、上記のインターフェイスアーム27~29間でのウエハWを受け渡しに用いられる受け渡しモジュールTRSや露光前及び露光後のウエハWを格納して滞留させるバッファモジュールなどのモジュールが含まれるが、受け渡しモジュールTRS以外の図示を省略している。なお、タワーT3、T4にもモジュールが設けられているが、このモジュールについての説明は省略する。
(薬液塗布モジュールの構成)
既述のSOG膜形成モジュール3Bについて、図10の縦断側面図を参照しながら説明する。SOG膜形成モジュール3Bは下地膜用の塗布モジュールであり、SOG膜形成モジュール3Bには図2などで説明したスピンチャック11が設けられている。このスピンチャック11における上面であるウエハWの載置面は水平である。図中31はスピンチャック11を鉛直軸周りに回転させる回転機構である。図中32はカップであり、スピンチャック11に載置されたウエハWの周囲を囲む。カップ32の底部には、ウエハWから飛散した薬液をカップ32外へ排出する排液口33と、上方に向かって伸びる排気管34とが設けられている。排気管34により、カップ32外からカップ32内に大気が流入して排気される。図中の点線の矢印は、このように排気される大気の流れを示している。図中35は排気管34に介設された開度が調整自在なダンパーであり、当該ダンパー35の開度に応じた排気量で当該排気管34から排気が行われる。
図中36はスピンチャック11の周囲に3本(図3では2本のみ表示)設けられる昇降自在なピンであり、搬送アームF1またはF2とスピンチャック11との間でウエハWを受け渡す。図中37はSOG膜形成用の材料を含む薬液を鉛直下方に吐出するノズルであり、スピンチャック11に保持されたウエハWの中心部上と、カップ32の外側との間で移動自在に構成されている。図中38は薬液供給管33を介してノズル37に接続される薬液供給源であり、上記の薬液をノズルに供給する。
上記のSOG膜形成モジュール3Bにおける成膜処理について説明すると、スピンチャック11に保持されると共に回転するウエハWの中心部にノズル37から薬液が吐出されてスピンコートが行われる。つまり、吐出された薬液は回転するウエハWの遠心力によってウエハWの周縁部に展伸され、ウエハW表面全体に塗布される。ノズル37からの薬液の吐出が停止し、ウエハWに吐出された薬液が当該ウエハWの周縁部に行き渡った後も、薬液を乾燥させてSOC膜を形成するために、ウエハWの回転が続けられる。その後、ウエハWの回転が停止して成膜処理が終了する。
上記のスピンコーティングによって薬液がウエハWの周端に行き渡った時刻からSOG膜の乾燥が十分に進んでいない所定の時刻に至るまでの期間(薬液乾燥期間とする)における、ウエハWの周端部を流れる気流の速度が大きいほど、当該周端部における薬液の乾燥が速やかに進行する。成膜終了後のウエハWの周端部における当該ウエハWの径方向に沿ったSOG膜の膜厚分布は、この薬液の乾燥速度が大きいほど、周端寄りの位置における膜厚が大きくなる。上記の薬液乾燥期間におけるウエハWの周端部の気流の速度は、ダンパー35の開度に対応しており、ダンパー35の開度が大きくなるほど当該気流の速度が大きくなる。従って、ダンパー35の開度によってウエハWの端部における径方向に沿ったSOG膜の膜厚分布が調整される。より具体的に述べると、ウエハWの径方向に沿って周端へ向かって見たときのSOG膜の厚さの上昇量について、調整することができる。図11には、ダンパー35を第1の開度~第3の開度(第1の開度<第2の開度<第3の開度)としたときの当該SOG膜18の膜厚分布の一例を示している。このようにSOG膜形成モジュール3Bでは、膜厚分布を調整するために、塗布レシピとして薬液乾燥期間におけるダンパー35の開度が調整される。
他の薬液塗布モジュールについて説明しておくと、レジスト用塗布モジュールであるレジスト膜形成モジュール3Cについて、SOG膜形成モジュール3Bとの差異点としては、薬液供給源38からSOG膜形成用の薬液の代わりに、薬液としてレジストが供給されることが挙げられる。また、SOC膜形成モジュール3Aについて、SOG膜形成モジュール3Bとの差異点としては、薬液供給源38からSOG膜形成用の薬液の代わりにSOC膜形成用の材料を含んだ薬液が供給されることが挙げられる。これらレジスト膜形成モジュール3C及びSOC膜形成モジュール3Aについても、SOG膜形成モジュール3Bと同様に、上記のダンパー35の開度を調整することで、ウエハWの端部における径方向に沿った膜厚分布を調整することができる。
(撮像モジュールについて)
続いて、撮像モジュール4について図12の縦断側面図、図13の横断平面図を参照して説明する。この撮像モジュール4はウエハWの端部形状を測定する端部形状測定部をなす。図中41は、ウエハWの搬送口42を備えた筐体であり、この搬送口42が設けられる側を手前側とする。筐体41内にはウエハWの載置台43が設けられており、ウエハWは例えば搬送アームF1、F2の昇降動作により、当該載置台43に受け渡される。この載置台43はスピンチャック11と同様に構成されており、当該載置台43によりウエハWの裏面の中央部のみが限定的に水平に吸着される。図中44は移動機構であり、載置台43を回転させてウエハWを垂直軸周りに回転させる。また移動機構44は、ガイドレール45に沿って載置台43を筐体41内の手前側と奥側との間で水平に移動させる。
図中46は第1のハーフミラーであり、移動機構44によるウエハWの移動路の上方に設けられている。第1のハーフミラー46の上方には、当該第1のハーフミラー46を介して下方に光を照射する横長の第1の照明47が設けられている。図中48は、ウエハWの表面撮像用カメラである。第1の照明47から照射される光が第1のハーフミラー46を通過し、第1のハーフミラー46の下方を移動するウエハWに照射されて当該ウエハWにて反射し、この反射光が第1のハーフミラー46によってさらに反射されて表面撮像用カメラ48に照射されることで、ウエハWの表面の撮像を行うことができる。
また、筐体41の奥側には第2の照明51、第2のハーフミラー52、反射部材53及び側面撮像用カメラ54が設けられている。図14に示すように第2の照明51、第2のハーフミラー52、反射部材53については上方から下方に向けてこの順に設けられており、第2の照明51から照射された光は第2のハーフミラー52を透過して反射部材53により反射され、筐体41の奥側に移動したウエハWの側面に照射される。そして、ウエハWの側面で反射された光は反射部材53、第2のハーフミラー52の順に反射されて、側面撮像用カメラ54に照射されることで、当該側面撮像用カメラ54はウエハWの側面を撮像することができる。側面撮像用カメラ54はウエハWの反りについての情報を取得するために用いられる反り測定部をなす。なお、図14中の二点鎖線は第2の照明51から照射された光の光路を示している。
ウエハWが載置された状態で載置台31が手前側から奥側に水平移動する間に、上記の表面撮像用カメラ48の撮像が断続的に行われることで、ウエハWの表面全体の画像データが取得される。なおこの水平移動中は、ウエハWの回転が停止している。そして、ウエハWが奥側へと位置すると水平移動が停止し、ウエハWが1回転する。このようにウエハWが1回転する間に側面撮像用カメラ54による撮像が行われ、ウエハWの全周に亘る側面の画像データ(ウエハWの側面全体画像データ)が取得される。このように取得されるウエハWの表面全体画像データ及び側面全体画像データは、後述の制御部60に送信される。この第1の実施形態においては、SOG膜及びレジスト膜が形成される前、例えばSOC膜、SOG膜、レジスト膜のいずれも形成されていない状態のウエハWについて、上記の表面全体画像データ及び側面全体画像データの取得が行われる。
(塗布、現像装置の制御部について)
続いて、塗布、現像装置2に設けられる、コンピュータにより構成される制御部60について説明する。制御部60は、上記の撮像モジュール4の側面撮像用カメラ54より送信されたウエハWの側面全体画像データを取得する。図15はこの画像データの一例を、XY座標系のグラフに適用させて示している。グラフのX軸(横軸)は、画像を取得するために撮像モジュール4における載置台43を一回転させているときの当該載置台43の向きを0°~360°として示しており、従って、このX軸はウエハWの側面について、ウエハWの周方向に沿った位置を示していることになる。Y軸(縦軸)は、取得された画像中における高さを示している。このようなウエハWの側面全体の画像データについて横軸の各角度におけるウエハWの上端の高さH1と下端の高さH2とが検出され、これら高さH1、H2との平均値H3が算出される。図15では一例として、180°におけるウエハWの上端の高さH1、下端の高さH2との平均値H3について図示しているが、180°以外の各角度についてもこのような高さの平均値H3が取得される。
そして、この各角度における高さの平均値H3と所定の高さの基準値との差分が、反り量の分布として算出される。図16はこの反り量の分布を示すグラフである。この図16のグラフの縦軸は反り量の大きさを示し、横軸は図15のグラフの横軸と同様に、載置台43の向きを夫々示している。縦軸の0の数値はウエハWに反りが無く、平板であるときのウエハWの高さである。従って、縦軸の+、-は水平面に対してウエハWの端部が上方に向かうように反っていること、水平面に対してウエハWの端部が下方に向かうように反っていることを夫々示している。従って、このように取得される反り量の分布は、水平面に対するウエハWの反りの情報である。
これ以降、制御部60にて行われる処理の概略を示す図17も参照して説明する。上記のように反り量の分布を算出する他に、制御部60は、表面撮像用カメラ48より送信されたウエハWの表面全体の画像データより、当該画像データにおける各ピクセルのRGB値を取得する。このRGB値はウエハWの高さに応じて変化するため、このRGB値から制御部60は、ウエハWの面内全体における各位置の高さを検出することができる。そして、上記のように表面撮像用カメラ48で撮像されるときには、ウエハWは裏面中央部のみが載置台43に吸着されているため、スピンチャック11に載置されるときと同様に反る。従って、取得されたRGB値のうち、ウエハWの端部におけるRGB値は、ウエハWの反りを含んだ状態におけるウエハWの端部形状に相当する。このように端部形状を取得することは、ウエハWの端部の各位置について、任意の高さの水平面に対する高さの変移量の情報を取得していることになる。
図17中に示す、ウエハWの端部の表面における当該ウエハWの周端から中心へ向かう線状の領域R3について、例えばRGB値に基づいて傾斜面W1の上端の位置P1及び下端の位置P2を検出し、さらにこれらの位置P1と位置P2との高低差(補正前高低差と表記する場合が有る)H4を検出する。そして、図16で説明した反り量の分布から、この領域R3に対応する角度における反り量を検出する。そして所定の計算式、一例としては補正前高低差H4+(検出した反り量×所定の係数)に従った演算が行われ、この演算値をウエハWの反りが無い場合の領域R3におけるP1、P2の高低差(補正後高低差と表記する場合が有る)H5として決定する。図17に示す例では領域R3において、ウエハWの周端部が中央部よりも下方に位置するようにウエハWが反っており、この反りによって、反りが無い場合に比べて高低差H4が大きくなっている。そして、この高低差H4が補正され、H4より小さいH5が高低差として取得される例を示している。
代表して領域R3における補正前高低差H4、補正後高低差H5を夫々算出する演算を説明したが、このような演算がウエハWの全周に亘って行われ、ウエハWの全周において補正前高低差H4、補正後高低差H5が算出される。そのように、ウエハWの全周における補正後高低差H5が算出されると、例えばこのウエハWの全周の各位置の補正後高低差H5についての平均値が算出される。
このように算出される補正後高低差H5の平均値と、既述のレジスト膜形成モジュール3C及びSOG膜形成モジュール3Bにおけるダンパー35の開度の変更量との対応関係が予め決められている。図18のグラフは、そのような対応関係の一例を示したものであり、縦軸、横軸は補正後高低差H5の平均値(単位:μm)と、ダンパー35の開度の変更量(単位:%)とを夫々示している。上記のように算出した補正後高低差H5の平均値と、例えばこの図18で示す対応関係とから、ダンパー35の開度の変更量が決定される。そして、例えば予め塗布レシピとして設定されているダンパー35の開度の基準値に対して、取得された変更量が加算されることで、ダンパー35の開度が補正される。
そして、このように補正後高低差H5が算出されたウエハWがレジスト膜形成モジュール3C、SOG膜形成モジュール3Bで処理を受ける際には、ダンパー35がこのように補正された開度となり、塗布膜の乾燥が行われる。なお、ダンパー35の開度を決定するために使用される補正後高低差H5の平均値とダンパー35の開度との変更量との対応関係が、レジスト膜形成モジュール3CとSOG膜形成モジュール3Bとの間で共通であるように説明したが、これらのモジュール間で別個の対応関係を使用してもよい。
続いて、図19を参照して上記のように各種の演算を行う制御部60の構成について説明する。この制御部60は、上記のようにウエハWの表面全体画像データ及び側面全体画像データに基づいて塗布レシピの変更を実行する実行部をなす。図中61はバスである。バス61には、プログラム格納部62、第1のメモリ63及び第2のメモリ64が接続されている。また、表面撮像用カメラ48からウエハWの表面全体画像データが、側面撮像用カメラ54からウエハWの側面全体画像データが夫々制御部60に送信されるように、撮像モジュール4がバス61に接続されている。また、SOG膜形成モジュール3B及びレジスト膜形成モジュール3Cの各ダンパー35が制御信号を受信して既述のように補正された開度となるように、バス61にはこれらSOG膜形成モジュール3B及びレジスト膜形成モジュール3Cが接続されている。
上記の第1のメモリ63には、図18で説明した補正後高低差H5の平均値とダンパー35の開度の変更量との対応関係が記憶されている。また、第2のメモリ64には、既述したように塗布レシピを変更する過程で取得される、図16で説明した反り量の分布、図17で説明した補正前高低差H4、補正後高低差H5、ダンパー35の開度の変更量及び補正されたダンパー35の開度が、例えばウエハW毎に記憶される。従って、ウエハW毎にダンパー35の開度を変更することができる。
プログラム格納部62には、塗布レシピ調整プログラム65及びウエハ処理用プログラム66が格納されている。塗布レシピ調整プログラム65は、ウエハWの側面全体画像データ及びウエハWの表面全体画像データを取得し、これらの画像データから既述した一連の処理を行い、塗布レシピの調整を行うように命令(ステップ群)が組まれたプログラムである。ウエハ処理用プログラム66は、モジュール間を後述する経路でウエハWを搬送して当該ウエハWの処理が行えるように、各搬送機構及びモジュールに制御信号を出力するように命令が組まれたプログラムである。塗布レシピ調整プログラム65により上記のようにレシピの補正が行われている場合は、その塗布レシピでモジュールが動作するようにウエハ処理用プログラムは制御信号を出力する。これらのウエハ処理用プログラム及び塗布レシピ調整プログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、DVDまたはメモリーカードなどの記憶媒体に収納された状態でプログラム格納部62に格納される。
続いて、塗布、現像装置2を含むレジストパターン形成システム20における処理について、図20のフローを参照しながら説明する。先ず、ウエハWが、キャリアCから搬送機構23により処理ブロックD2におけるタワーT1の受け渡しモジュールTRS0に搬送され、然る後、搬送機構26により受け渡しモジュールTRS1に搬送される。そして、搬送アームF1により撮像モジュール4に搬送され、ウエハWの表面全体画像データ及び図15で説明した側面全体画像データが取得される(ステップS1)。続いて、側面全体画像データから図16で説明した反り量の分布が取得され、表面全体画像データから図17で説明したウエハWの端部の傾斜面W1における高低差(補正前高低差)H4がウエハWの全周に亘り取得される(ステップS2)。然る後、図17で説明したように反り量の分布を用いて、ウエハWに反りが無く平坦とした場合の高低差(補正後高低差)H5が算出される。つまり、反りによる傾斜面W1における高低差の誤差がキャンセルされる(ステップS3)。この補正後高低差H5と、図18で説明した補正後高低差H5とダンパー35の開度変更量との対応関係とに基づいて、ダンパー35の開度の補正量が取得される。そして、この開度の補正量が基準値に加算されてレジスト膜形成モジュール3C及びSOG膜形成モジュール3Bで処理を行う際のダンパー35の開度について決定される(ステップS4)。
撮像モジュール4にて画像データ取得済みのウエハWは、SOC膜形成モジュール3Aに搬送されてスピンコートによりSOC膜が形成された後、加熱モジュール25に搬送されて加熱される。然る後、ウエハWは、SOG膜形成モジュール3Bに搬送され、薬液が吐出されてSOG膜のスピンコートが行われる。そして、ウエハWに吐出された薬液を乾燥させる薬液乾燥期間において、既述のようにダンパー35が補正された開度となり、スピンコートされた薬液が乾燥してSOG膜が形成される(ステップS5)。続いて、ウエハWは加熱モジュール25に搬送されて加熱された後、受け渡しモジュールTRS1に搬送され、搬送機構26により受け渡しモジュールTRS3に搬送される。搬送アームF3によりレジスト膜形成モジュール3Cに搬送されてレジストがスピンコートされる。このレジスト膜形成モジュール3CにおいてもSOG膜形成モジュールにおける処理時と同様に、スピンコート後の薬液乾燥期間において、既述のようにダンパー35が補正された開度となり、レジスト膜13が形成される(ステップS6)。なお、上記の図5はこのようにレジスト膜13が形成された状態を示している。
その後、ウエハWは搬送アームF3により、加熱モジュール25に搬送されて加熱された後、タワーT2の受け渡しモジュールTRS31の順で搬送される。続いて、ウエハWは、インターフェイスアーム27、29により、タワーT3を介して露光装置D4へ搬入される。既述したように、ウエハWは裏面全体がステージ14に接するように吸着される。つまり、反りが解消された状態で載置される。既述のように下地膜12をなすSOG膜及びレジスト膜13は、反りを含む状態のウエハWの端部形状及びウエハWの反りの情報に基づいて形成されることで、このようにウエハWがステージ14に吸着されたときに、上記の図6に示したようにレジスト膜13の表面においてウエハWの端部と端部以外の領域とで高さが揃う。ステージ14上を、当該ステージ14に対して相対的に光学系15が移動して露光が行われる。その際に、上記のようにウエハWの端部以外の領域と端部との高さが揃っていることにより、ウエハWの端部においてデフォーカスとなることが抑制される。
露光後のウエハWは、インターフェイスアーム28、29によりタワーT2、T4間を搬送されて、単位ブロックE5に対応するタワーT2の受け渡しモジュールTRS51に搬送され、搬送アームF5により加熱モジュール25→現像モジュール3Dの順で搬送されて、現像処理される。上記のように露光が行われていることにより、ウエハWの端部においても端部以外の領域と同様の寸法でレジストパターンが形成される(ステップS7)。然る後、ウエハWは搬送アームF5によりタワーT1の受け渡しモジュールTRS5に搬送され、搬送機構23によりキャリアCに戻される。なお、単位ブロックE2、E4、E6に夫々ウエハWが搬送されて処理が行われる場合は、搬送アームF2、F4、F6が使用され、タワーT1、T2の受け渡しモジュールTRSについて、単位ブロックE1、E3、E5に対応する高さのモジュールの代わりに単位ブロックE2、E4、E6に対応する高さのモジュールが用いられる。
この塗布、現像装置2によれば、撮像モジュール4により取得されるウエハW表面の画像データ及びウエハW側面の画像データから、ウエハWの反りを含んだ端部形状及び反りについての情報が取得される。そして、取得されたウエハWの端部形状及び反りの情報から、ウエハWが露光時にステージ14に載置されたときにウエハWの端部と端部以外の領域とでレジスト膜13の表面の高さが揃うように、SOG膜及びレジスト膜を形成するための塗布レシピとして、ダンパー35の開度が調整される。従って、ウエハWの端部においてデフォーカスとなることが抑制され、その結果としてウエハWの端部のレジストパターンの線幅と、ウエハWの端部以外の領域におけるレジストパターンの線幅との間でずれが生じることを抑制することができる。従って、1枚のウエハWから製造される半導体デバイスの歩留りの上昇を図ることができる。
なお、ウエハWの端部形状及び反りの情報から、レジスト膜形成モジュール3C及びSOG膜形成モジュール3Bの塗布レシピのうちの一方のみを調整するようにしてもよい。また、塗布レシピの調整としては、ダンパー35の開度を調整することには限られない。例えばウエハWへの薬液吐出時の回転数が大きいほど、ウエハWの周端に供給される薬液の量を増加させ、周端側の塗布膜の厚さを増加させることができる。つまり、ダンパー35の開度を調整する場合と同様に、ウエハWの周端の膜厚分布を調整することができるので、当該回転数を調整してもよい。
(第2の実施形態)
上記の塗布、現像装置2に設けられる撮像モジュールとしては既述の例に限られない。第2の実施形態の塗布、現像装置2に設けられる撮像モジュール7について、図21、図22を参照して撮像モジュール4との差異点を中心に説明する。この撮像モジュール7は、載置台31の代わりに載置台71を備えている。この載置台71の表面は水平であり、ウエハWよりも大きな円形に構成されている。また、この載置台71の表面には多数の吸引孔72が開口しており、各吸引孔72は吸引機構73に接続されている。ウエハWは昇降機構74により昇降するピン75を介して、搬送アームF1、F2から載置台71に受け渡される。なお、図中76は、ピン75が通過するために載置台71に形成された貫通孔である。ピン75を介してウエハWが載置台71に受け渡されると、吸引機構73が動作して、ウエハWの裏面全体が載置台71の表面に密着するように吸引される。従って、この載置台71は上記の露光装置D4と同様にウエハWを吸着することができるように構成されている。
この第2の実施形態において、ウエハWの端部形状を取得する情報取得部をなす撮像モジュール7には、側面撮像用カメラ54、第2の照明51、第2のハーフミラー52及び反射部材53が設けられていない。そして上記の載置台71は載置台43と同様に移動機構44により、手前側と奥側との間で移動し、表面撮像用カメラ48によりウエハWの表面全体を撮像することができる。制御部60は、取得した表面全体画像データから、例えば図17で説明したように傾斜面W1の上端の位置P1と下端の位置P2との高低差H4を算出する。撮像時において、上記のようにウエハWは載置台71に密着しているため、当該ウエハWには反りが含まれていない。従って、このように取得された高低差H4が解消されるように、レジスト膜形成モジュール3C及びSOG膜形成モジュール3Bによる塗布レシピを調整する。
具体的に、例えばウエハWの全周において上記のように取得される高低差H4の平均値を算出する。そして、高低差H4の平均値とダンパー35の開度の変更量との対応関係から調整部である制御部60は、ダンパー35の開度の変更量を決定する。この対応関係としては、図18で説明したグラフの対応関係を用いてもよい。なお、第1の実施形態において図18のグラフは、補正後高低差H5の平均値とダンパー35の開度の変更量との対応関係であるものとして説明したが、この第2の実施形態ではウエハWに反りが含まれない状態で高低差H4を取得しているので、この高低差H4は第1の実施形態の補正後高低差H5に相当する。従ってH4=H5として、図18のグラフを用いてダンパー35の開度の変更量を取得することができる。
このようにダンパー35の開度の変更量を取得した後は、第1の実施形態と同様にレジスト膜形成モジュール3C及びSOG膜形成モジュール3Bのダンパーの開度をこの変更量分だけ変更して処理を行う。このように処理を行うことで第1の実施形態と同様に、露光装置D4における露光時にウエハWの端部と端部以外の領域とでレジスト膜13の表面の高さのずれを抑え、デフォーカスが発生することを防ぐことができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係るレジストパターン形成システム8について、図23の全体構成図を参照して説明する。レジストパターン形成システム8は、塗布、現像装置2と略同様に構成された塗布、現像装置2Aと、露光装置D4とにより構成されている。このレジストパターン形成システム8における処理の概略について、第1の実施形態のレジストパターン形成システム20との差異点を中心に説明すると、レジストパターン形成システム8では、第1の実施形態で説明した塗布レシピの調整が行われない。
また、この塗布、現像装置2Aでは、ウエハWの端部形状の情報を取得する情報取得部をなす撮像モジュール4によるウエハWの表面全体画像データの取得が、レジスト塗布に続く加熱モジュール25による加熱処理の終了後、露光装置D4による露光前に行われる。そのように取得される表面全体画像データからは図17で説明したように、各ピクセルのRGB値が取得される。そして、このRGB値からウエハWの傾斜面W1の各部における高さ、即ち端部の形状について取得される。第3の実施形態では、このように取得されたウエハWの傾斜面W1の高さに基づいて、露光装置D4における露光処理のレシピが調整されてウエハWに処理が行われる。
塗布、現像装置2Aについて、塗布、現像装置2との差異点を中心に説明すると、塗布、現像装置2Aでは、レジスト膜形成モジュール3Cが設けられる第3の単位ブロックE3、第4の単位ブロックE4において、第1の実施形態における第1の単位ブロックE1、第2の単位ブロックE2と同様に撮像モジュール4が設けられる。そして、上記の第3の単位ブロックE3及び第4の単位ブロックE4における搬送アームF3、F4は、レジスト膜形成モジュール3C、加熱モジュール25、撮像モジュール4の順でウエハWを搬送した後、露光装置D4に搬送するために当該ウエハWをインターフェイスブロックD3に受け渡す。また塗布、現像装置2Aの制御部81は、図19で説明した制御部60と略同様に構成されているが、差異点として露光装置D4にデータを送信するための送信部82を備えていることが挙げられる。この送信部82は、上記のように画像データから取得されるウエハWの傾斜面W1の高さについてのデータを露光装置D4に送信することができるように、既述のバス61に接続されて設けられている。
露光装置D4について補足して説明しておくと、露光装置D4は図4、図6で説明したようにステージ14と光学系15とを備えている。ステージ14は互いに直交する水平方向であるX方向、Y方向に沿って夫々移動自在に構成されている。露光時においてはこのステージ14が、例えば移動の軌跡が矩形波を描くように移動して、光学系15がウエハWの表面全体上を通過する。そのようにステージ14が移動する間に光学系15から光照射が行われることで、ウエハWの露光が行われる。そして、この光学系15は図示しない昇降機構により昇降自在に構成されている。
端部以外の領域を露光する際においては、ウエハWと光学系15とが予め設定された距離H6離れるように露光が行われる(図24)。なお、図中の点線の矢印は露光ビームを示している。そして、光学系15がウエハWの端部の傾斜面W1上に移動すると、この距離H6が一定に保たれるように光学系15が下降して露光が行われる(図25)。従って、この第3の実施形態においては、露光レシピである光学系15とステージ14との距離について、予め設定された大きさから傾斜面W1の各位置の高さに基づいて補正された大きさに変更されて露光処理が行われることになる。そして、この第3の実施形態においては、レジスト膜13の表面の傾斜面W1の高さに応じて、このように光学系15が昇降することで、ウエハWの端部にてデフォーカスが発生することが抑制される。結果として、ウエハWの面内の各部において線幅の均一性が高くなるようにレジストパターンを形成することができる。
ところでこの第3の実施形態においては、撮像モジュール4にて表面撮像用カメラ48によりレジスト膜が形成されたウエハWの表面全体画像データを取得する際に、側面撮像用カメラ54により当該ウエハWの側面全体画像データも取得するようにし、第1の実施形態で説明した反り量の分布も取得するようにしてもよい。その場合、例えば第1の実施形態で説明したようにウエハWの表面全体画像データから補正前高低差H4を取得する。そして、反り量分布に基づいてこの補正前高低差H4を補正し、補正後高低差H5を算出する。
上記の送信部82は、そのように算出した補正後高低差H5のデータを露光装置D4に送信し、露光装置D4では光学系15がウエハWの端部上に位置したときに、この高低差H5に基づいた高さに位置するように当該光学系15の高さが制御されるようにしてもよい。つまり、光学系15がウエハWの端部上に位置するときには、予め設定されたステージ14からの高さよりもこの高低差H5の量だけずれた位置に当該光学系15が配置されることによって、レジスト膜13の表面と光学系15との距離H6が設定値からずれることが抑制されるように露光処理が行われる。このように高低差H5に基づいて光学系15の高さが調整される場合には、撮像時におけるウエハWの反りによる影響がキャンセルされるため、レジスト膜13の表面と光学系15との距離が、設定値からずれることをより確実に抑制することができる。
上記のように塗布、現像装置2Aの送信部82から露光装置D4に送信されるデータとしては、ウエハWの端部形状についてのデータ(RGB値)のみであってもよいし、端部形状のデータ及び反りの情報であってもよい。なお、送信部82は、ウエハWの表面全体画像データ及び側面全体画像データを露光装置D4に送信し、上記の補正前高低差H4や補正後高低差H5の算出は露光装置D4で行われて、既述のように高低差H4またはH5に基づいた光学系15の高さの調整が行われるようにしてもよい。従って、既述した第1の実施形態の実行部である制御部60に送信部82を設けて、ウエハWの表面全体画像データ及び側面全体画像データを露光装置D4に送信し、当該露光装置D4で補正後高低差H5を算出して、当該補正後高低差H5に基づいて光学系15の高さを調整して露光処理が行われるようにしてもよい。
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る半導体装置製造システム84について、図26の全体構成図を参照して説明する。この半導体装置製造システム84は、第3の実施形態で説明した塗布、現像装置2Aと、露光装置D4と、ドライエッチングを行うエッチング装置9とを備えており、当該エッチング装置9は塗布、現像装置2AでウエハWに形成されたレジストパターン17をマスクパターンとして、下地膜12であるSOG膜18及びSOC膜19をエッチングする。この半導体装置製造システム84においても、第3の実施形態のレジストパターン形成システム8と同じく、SOG膜形成モジュール3B及びレジスト膜形成モジュール3Cにおける塗布レシピの調整が行われない。そのように塗布レシピの調整が行われない代わりに、エッチング装置9におけるレシピの調整が行われる。また、塗布、現像装置2Aにおける送信部82は、当該エッチング装置9におけるレシピの調整を行うことができるように、後述するデータを当該エッチング装置9へ送信する。
エッチング装置9の一例について図27の概略縦断側面図を用いて説明する。このエッチング装置9は、容量結合プラズマを形成してドライエッチング処理を行う。塗布、現像装置2Aにてレジストパターン17が形成されてキャリアC内に格納されたウエハWは、当該キャリアCに格納された状態でこのエッチング装置9に接続される図示しないローダーモジュールに搬送され、キャリアCから図示しない搬送機構を介して、このエッチング装置9を構成する接地された処理容器91に搬入(ロード)される。処理容器91の側壁には、ウエハWを搬入出するための搬送口を開閉するゲートバルブ92が設けられている。処理容器91内は、排気機構93によって内部が排気されることで、所望の圧力の真空雰囲気とされる。
図中94はウエハWが載置される載置台であり、載置されたウエハWを加熱するための図示しないヒーターが埋設されている。当該載置台94の下部側は上記の容量結合プラズマを形成するための下部電極95として構成されている。載置台94の上部側は静電チャック96として構成されている。静電チャック96の表面は水平面をなし、ウエハWの裏面よりも大きく形成されている。そして、静電チャック96に載置されたウエハWの裏面全体が当該静電チャック96の表面に吸着される。従って、反りが無いようにウエハWが載置台94に載置される。
載置台94の上方には、当該載置台94と対向するように、円形のガスシャワーヘッド97が設けられている。このガスシャワーヘッド97は扁平な円形のガスの拡散空間を備え、この拡散空間は平面視同心円状の仕切りにより、径方向に分割されている。この例では分割された拡散空間を、ガスシャワーヘッド97の中心側から周縁側に向けて101~103として示しており、当該拡散空間101、102、103は、流量調整部104、105、106を夫々介して、エッチングガスの供給源107に接続されている。従って、流量調整部104~106により、拡散空間101~103へ供給されるエッチングガスの流量を調整することができる。また、ガスシャワーヘッド97には、整合器98を介してプラズマ発生用の高周波電源99が接続されており、ガスシャワーヘッド97は上部電極として機能する。図中108は、処理容器91とガスシャワーヘッド97とを絶縁する絶縁部材である。
拡散空間101~103に供給されたエッチングガスは、ガスシャワーヘッド97に形成される吐出口108からシャワー状にウエハWに供給される。このようにウエハWにエッチングガスが供給されるときに高周波電源99がオンになり、電極間に電界が形成されて、エッチングガスがプラズマ化することでエッチングが行われる。また、上記のようにガスシャワーヘッド97内の拡散空間が分割されて拡散空間103が形成されているため、拡散空間103に供給されるエッチングガスの流量を調整することで、ウエハWの端部に供給される当該エッチングガスの流量を調整することができる。
この第4の実施形態における塗布、現像装置2Aでは、第3の実施形態と同様にレジスト膜13が形成されたウエハWについて撮像モジュール4で撮像が行われ、表面全体画像データが取得される。その表面全体画像データから例えば既述の傾斜面W1の高低差H4が取得される。つまりウエハWの反りを含む状態の傾斜面W1の高低差が取得される。そして、ウエハWの周方向における各部の高低差H4について平均値が算出され、この平均値がエッチング装置9に送信される。エッチング装置9では、例えば予め設定された高低差H4の平均値と拡散空間103に供給されるエッチングガスの流量との対応関係に基づいて、当該拡散空間103に供給されるエッチングガスの流量が決定される。そして、撮像されたウエハWがエッチング装置9に搬送されたときに、上記のようにガスシャワーヘッド97からエッチングガスが吐出されると共に吐出されたエッチングガスがプラズマ化されて、SOG膜18、SOC膜19がエッチングされる。このとき、拡散空間103には決定された流量でエッチングガスが供給される。
露光時における光学系15とレジスト膜13の表面との距離が設計値から解離するほど、デフォーカスによりレジストパターン17の開口部の幅が小さくなる。つまり、上記の高低差H4が比較的大きいと、図28の上段に示すようにウエハWの端部におけるレジストパターン17の開口部の幅は設計値に比べて狭くなり、この設計値との解離が比較的大きくなる。そこで、各膜が側方に比較的大きくエッチングされて図28の下段に示すように各部のレジストパターン17の開口部の幅が揃うように、上記の対応関係に従って拡散空間103には比較的多くの流量のエッチングガスが供給されるように決定される。反対に、上記の高低差H4が比較的小さいと、図29の上段に示すようにウエハWの端部におけるレジストパターン17の開口部の幅は設計値に比べて狭くなるが、設計値との解離は比較的小さい。そこで、各膜の側方へのエッチング量が抑えられて図29の下段に示すように各部のレジストパターン17の開口部の幅が揃うように、上記の対応関係に従って拡散空間103には比較的小さい流量でエッチングガスが供給されるように決定される。
ところでこの第4の実施形態についても、高低差H4とウエハWの側面全体画像データとから高低差H5を算出し、このウエハWの周全体の各部における高低差H5の平均値を算出し、送信部82はこの高低差H5の平均値を送信するようにしてもよい。そして、そのように高低差H5の平均値が送信されたエッチング装置9において、予め設定された高低差H5と拡散空間103に供給されるエッチングガスの流量との対応関係に基づいて、当該拡散空間103に供給されるエッチングガスの流量が決定されるようにしてもよい。また、送信部82は表面全体画像データ及び側面全体画像データをエッチング装置9に送信し、エッチング装置9において、高低差H4、H5が算出され、算出された高低差H5から拡散空間103へ供給されるエッチングガスの流量が決定されてもよい。
なお、エッチング装置としては処理容器91の上部に、載置台94の中心を鉛直方向に通る中心軸線に対して同軸状に設けられると共に、各々独立して電流が供給される複数の電磁石をなすコイルを備えるように構成されてもよい。その場合、例えば高周波電源99はガスシャワーヘッド97に接続される代りに載置台94に接続されて、ガスシャワーヘッド97から供給されるエッチングガスをプラズマ化するように構成される。そのようにプラズマが形成されたときに各コイルへの電流の供給量が調整されることで、処理容器91内に形成される磁界の分布が調整されることによってウエハWの端部におけるプラズマ強度が、ウエハWの端部以外の領域におけるプラズマ強度とは独立して制御されるようにする。そのようにウエハWの端部上におけるプラズマ強度を制御することで、図28、図29で説明したように各膜の側方へのエッチング量を制御してもよい。従って、調整されるエッチングのレシピとしてはエッチングガスの流量に限られない。
ところで既述の各実施形態において、ウエハWの端部形状のデータとしてはウエハWの表面の画像データから取得することには限られない。上記の塗布、現像装置2に反射型のレーザー式の変位センサを備えたモジュールを設ける。この変位センサは鉛直下方にレーザーを照射すると共に、ウエハWにて反射されたレーザーを受光する。そして、変位センサは、モジュール内の載置部に載置されたウエハの端部上をウエハWの径方向に沿って水平移動できるように構成されており、変位センサからウエハWの周端部上にレーザーを照射しながら、当該変位センサが移動する。この移動中の変位センサの受光に基づいて、制御部100がウエハW表面の周端部における高さ分布、即ち端部形状を取得するようにしてもよい。
なお、図2、図3ではウエハWの全周において端部が中央部よりも低く位置するようにウエハWが反った場合を示したが、本発明はそのようにウエハWが反った場合の対処とすることには限られず、ウエハWの全周において端部が中央部より高く位置するように反っている場合や、ウエハWの全周の一部の端部が中央部よりも低く、他の一部の端部が中央部よりも高くなるように反っている場合にも適用し、製品の歩留りの向上を図ることができる。
また、上記の各実施形態ではウエハWの表面全体画像データから取得された傾斜面W1の上端と下端との高低差H4、H5に基づいて各レシピを決定しているが、そのような高低差に基づいてレシピを決定することには限られない。例えばウエハWの表面全体画像データからウエハWの周端位置と当該周端位置からウエハWの径方向に沿って当該ウエハWの中心寄りに所定の距離離れた位置(設定離間位置)とを検出し、この周端位置と設定離間位置との間の領域を側方から見たときの近似曲線を取得し、この近似曲線の曲率をウエハWの端部形状として上記の高低差H4の代わりに用いてレシピの調整を行ってもよい。
ところで、図30には第1の実施形態に従って処理を行ったウエハWを示している。このウエハWにおいては上層側から下層側に向けてレジスト膜13、第1の下地膜111、第2の下地膜112、被加工膜113がこの順で積層されている。レジスト膜13、第1の下地膜111、被加工膜113については、ウエハWの面内で均一な膜厚となるように規定のレシピにより薬液が塗布されている。つまり、ウエハWの端部形状に基づいた塗布レシピの調整が行われずに形成されている。第2の下地膜112については図6などで既述した下地膜12と同じく、ウエハWの端部の形状に基づいて薬液を塗布するレシピが調整されることにより形成されている。そのように第2の下地膜112の塗布レシピが調整されることで、ウエハWが露光装置D4のステージ14に載置されたときにデフォーカスが起きないように、ウエハWの面内でレジスト膜13の表面が平坦になるようにされている。
露光装置D4における露光、現像によるレジスト膜13へのパターン形成後は、第1の下地膜111にパターンを形成し、図31に示すように当該第1の下地膜111をハードマスクとして、第2の下地膜112及び被加工膜113のエッチングが行われる。第1の下地膜111は例えばSOC膜、上記ハードマスクによるエッチング対象膜である第2の下地膜112は例えば酸化膜であるSOG膜、同様に上記マスクによるエッチング対象膜である被加工膜113は、例えば酸化膜である熱TEOS(オルトケイ酸テトラエチル)あるいはプラズマTEOSである。
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マスクをなす第1の下地膜111については、上記のように塗布レシピの調整が行われず、ウエハWの面内でその膜厚が均一になるように形成されている。そのように膜厚が均一な膜をマスクとしてエッチングを行うため、当該エッチングにより第2の下地膜112に形成されるパターン(凹部)については、ウエハWの面内で形状が揃い、且つCDについて設計値に揃えられる。従って、第2の下地膜112に形成されるパターンに沿ってエッチングされる被加工膜113についても同様に、エッチングにより形成されるパターンの形状が所望の形状からずれることを抑制することができる。このようにエッチングマスクとなる膜については塗布レシピの調整を行わずに形成し、当該エッチングマスクの下層の膜についての塗布レシピを調整することで、当該下層の膜のさらに下層に設けられる被加工膜113のパターンの形状を良好なものとすることができる。
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ところで、第2の下地膜112は上記のようにウエハWの面内で膜厚が異なるように形成しているため、第2の下地膜112及び被加工膜113をエッチングする際にウエハWの端部と端部以外の領域とで被加工膜113が露出するタイミングは異なる。そこでエッチングガスから見て、エッチング中にウエハWの端部と端部以外の領域とで膜の性質が異なることを防いでウエハWの面内で同様にエッチングが行われるようにすることで、ウエハWの面内各部において、第2の下地膜112及び被加工膜113に形成されるパターンの形状を揃えるようにすることが好ましい。そのためには、この被加工膜113の直上に形成される第2の下地膜112を、この被加工膜113と同じ材質の膜とするか、あるいは上記のSOG膜のような物性が近い膜とする。
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上記のように被加工膜113が熱TEOS(オルトケイ酸テトラエチル)、プラズマTEOSなどの酸化膜である場合は、物性が近い膜として例えばシリコン及び酸素を含む膜を形成することができ、具体的には上記のSOG膜あるいはSOD膜であるHSQ(Hydrogen Silsesquioxane)、MSQ(Methyl Silsesquioxane)などを形成することができるし、その他にSiARC(Poly siloxane)、PSZ(Polysilazane)、PCS(Poly carbosilane)などの膜を形成することができる。なお、SiARCについては、SiNに近い性質も持ち得るが、酸素含有雰囲気で加熱することにより、酸化膜に近い性質を持つようにすることができるので、そのように被加工膜113上に形成することができる。
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上記のSOG膜の成膜工程の一例について簡単に示しておくと、例えば酸化シリコンを含む絶縁膜の前駆体の分子団であるオリゴマーの群を溶剤に溶解させてなる薬液をウエハWに塗布し、例えば500℃に加熱するキュア工程を行うことにより成膜することができる。キュア工程において、化合物中に含まれるSi-H結合がH2O(水分)との加水分解(反応)により、Si-OHが生成され、続いて脱水縮合(反応)が起こってSi-O-Si結合が生成され、オリゴマー同士が架橋されて、SOG膜が形成される。つまり、SOG膜を成膜するにあたり下地膜12を成膜する場合と同様に薬液の塗布と加熱処理とが含まれ、下地膜12と同様にレシピを変更することで、ウエハWの面内の膜厚分布を調整することができる。なお、本発明は各実施形態で示した構成、手法には限られず、各実施形態は適宜変更したり、組み合わせたりすることができる。