以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る地盤改良機用施工位置誘導システム100の構成を示すブロック図である。
この地盤改良機用施工位置誘導システム100は、GPS等の衛星測位システムを利用して例えば、図2に示される地盤改良機200等に取り付けられる鋼管杭1の杭芯先端位置(誘導基準点)P3を、施工目標位置PTに誘導するための地盤改良機200等に特化した施工位置誘導システムである。特に、現在の杭芯先端位置P3’を施工目標位置PTに誘導する誘導作業については、ディスプレイ107を介して地盤改良機200上で規定される機械座標系OXY上で行われるように構成されている。また、誘導基準点となる現在の杭芯先端位置P3’については、施工地盤状況に起因して発生する施工基準姿勢からの平面直角座標系O’X’Y’上でのずれ量Δ’(Δx’、Δy’)を本体20及びリーダー装置30についての各傾斜角度に基づいてリアルタイムに算出し、そのずれ量Δ’(Δx’、Δy’)に基づいて現在の杭芯先端位置P3’から施工目標位置PTに到る機械座標系OXY上での誘導量ΔM(ΔXM、ΔYM)をリアルタイムに修正するようにこの地盤改良機用施工位置誘導システム100は構成されている。なお、杭芯先端位置(誘導基準点)については、施工基準姿勢(図4、図6)における杭芯先端位置を「当初の杭芯先端位置P3」とする一方、施工目標位置PTに誘導中の杭芯先端位置を「現在の杭芯先端位置P3’」としてそれぞれ区別することにする。以降において同じ。また、機械座標系OXY及び平面直角座標系O’X’Y’については図4及び図5を参照しながら後述する。さらに、上記ずれ量Δ’(Δx’、Δy’)については図7から図10を参照しながら後述する。
主な構成として、GPS電波を受信する第1アンテナ101A及び第2アンテナ101Bと、受信したGPS電波から衛星の位置情報及び時刻情報(以下「測位信号」又は「測位データ」という。)を取得する受信装置102と、取得した測位信号に基づいて現在の杭芯先端位置P3’をリアルタイムに算出すると共に、その現在の杭芯先端位置P3’についての衛星測位システムに対応した平面直角座標系O’X’Y’(図4)上での施工基準姿勢からのずれ量Δ’(Δx’、Δy’)をリアルタイムに算出し、そのずれ量Δ’(Δx’、Δy’)を基に杭芯先端の誘導位置(施工目標位置PT)を修正する演算処理装置103と、地盤改良機200の本体20の基準面(例えば水平面)に対する前後方向及び左右方向についての傾斜角度θ1,θ2を計測する本体角度計測部104と、地盤改良機200のリーダー装置30の基準方向(例えば鉛直方向)に対する左右方向(スイング方向)及び前後方向(起倒方向)についての傾斜角度θ3,θ4を計測するリーダー角度計測部105と、基準方向(例えばX’軸)に対する地盤改良機200の方向角度θ(進行方向)を計測する方向角度計測部106と、現在の杭芯先端位置P3’、施工目標位置PTおよび上記ずれ量Δ’(Δx’、Δy’)等を表示するディスプレイ107と、携帯電話用データ通信(以下「LTE」)又は近距離無線通信(以下「無線LAN」)を介して外部機器(例えば測距装置110、サーバー111)と双方向データ通信を行うためのLTE送受信装置/無線LAN108と、実際に鋼管杭1を打設した実施工位置データ等を保存するデータ記憶部109と、地盤改良機200の機械座標系OXYの原点(第1アンテナ101A)からの当初の杭芯先端位置P3のオフセット量を計測する測距装置110と、鋼管杭1の施工目標位置PTについての位置情報(ガイダンス用データ)を演算処理装置103に送信するサーバー111と、本体20の旋回角度を計測する旋回角度計測部112と、を具備して、この地盤改良機用施工位置誘導システム100は構成される。以下、各構成について更に説明する。
第1アンテナ101A及び第2アンテナ101Bは、例えばマイクロストリップ平面アンテナである。第1アンテナ101A及び第2アンテナ101Bで受信されるGPS電波は、周波数が1575.42MHzの搬送波に測位データがC/Aコードによって符号化された電波である。本実施形態では第1アンテナ101Aは地盤改良機200(図2)の操縦室22の上部に第1ブラケット29Aを介して設けられ、第2アンテナ101Bは地盤改良機200(図2)のカウンターウェイト21の上方に第2ブラケット29Bを介して設けられている。
第1受信装置102A及び第2受信装置102Bは、第1アンテナ101A、第2アンテナ101Bで受信したGPS電波からC/Aコードによって符号化された符号化信号を分波して、更にC/Aコードを無効化して符号化信号に含まれる衛星の位置情報及び時刻情報に係る測位信号を取り出す処理(以下「GPS信号処理」という。)を行う。第1受信装置102A及び第2受信装置102Bは、例えば20チャンネルを有し20基のGPS衛星から送信されて来るGPS電波について同時に(パラレルに)GPS信号処理を行うことが可能である。
演算処理装置103はRAM及びROMを備え、第1受信機102Aで得られた複数の衛星からの測位信号と第2受信機102Bで得られた複数の衛星からの測位信号を基にいわゆる相対測位を行うことによって、衛星測位システムに対応した平面直角座標系O’X’Y’(図4)上での第1アンテナ101Aの位置P1および第2アンテナ101Bの位置P2を正確に算出する。そして、予め測距装置110によって計測された機械座標系OXY(図4)上での第1アンテナ101Aの位置P1と当初の杭芯先端位置P3との間のオフセット量(相対位置関係)、並びに地盤改良機200の本体20及びリーダー装置30についての施工基準姿勢からの各傾斜角度θ1,θ2,θ3,θ4を基に、現在の杭芯先端位置P3’についての機械座標系OXY上での施工基準姿勢からのずれ量Δ(ΔX、ΔY)をリアルタイムに算出する。なお、ここで言う「リアルタイムに」とは、「鋼管杭1の杭芯先端を施工目標位置に誘導している間所定のタイミングで」ということを意味している。以降において同じ。
さらに、演算処理装置103はそのずれ量Δ(ΔX、ΔY)に機械座標系OXYから平面直角座標系O’X’Y’への座標変換T(式1)を施して、現在の杭芯先端位置P3’についての平面直角座標系O’X’Y’上での施工基準姿勢からのずれ量Δ’(Δx’、Δy’)をリアルタイムに算出する。そして、そのずれ量Δ’(Δx’、Δy’)に基づいて現在の杭芯先端位置P3’から施工目標位置PTに到る機械座標系OXY上での誘導量ΔM(ΔXM、ΔYM)をリアルタイムに修正する。なお、機械座標系OXY上での施工基準姿勢からの上記ずれ量Δ(ΔX、ΔY)の算出については、図7から図10を参照しながら後述する。
本体角度計測部104は、地盤改良機200の本体20の前後方向・左右方向の水平面に対する傾斜角度をリアルタイムに計測する。ここで言う「前後方向」とは、地盤改良機200の機械座標系OXY(図4)上でのY軸方向を意味している。また、「左右方向」とは、同機械座標系OXY(図4)上でのX軸方向を意味している。従って、「本体20の左右方向の水平面に対する傾斜角度θ1」とは、Y軸方向から本体20を見た場合に施工面とX軸との成す角度θ1を意味している。また、「本体20の前後方向の水平面に対する傾斜角度θ2」とは、X軸方向から本体20を見た場合に施工面とY軸との成す角度θ2を意味している。
なお、上記「本体20の左右方向の水平面に対する傾斜角度θ1」および上記「本体20の前後方向の水平面に対する傾斜角度θ2」をリアルタイムに同時に計測する傾斜センサとしては、例えばifm efector株式会社製の型式JN2201を使用することができる。
リーダー角度計測部105は、地盤改良機200のリーダー装置30の左右方向・前後方向の鉛直方向に対する傾斜角度をリアルタイムに計測する。「左右方向」及び「前後方向」の意味については、本体角度計測部104と同じである。また、ここで言う「リーダー装置30の左右方向の鉛直方向に対する傾斜角度θ3」とは、本体20の機械座標系OXYのY軸方向から見た場合のリーダー装置30(杭芯方向)のZ軸方向に対する傾斜角度を意味している。また、ここで言う「リーダー装置30の前後方向の鉛直方向に対する傾斜角度θ4」とは、本体20の機械座標系OXYのX軸方向から見た場合のリーダー装置30(杭芯方向)のZ軸方向に対する傾斜角度を意味している。
なお、上記「リーダー装置30の左右方向の鉛直方向に対する傾斜角度θ3」および上記「リーダー装置30の前後方向の鉛直方向に対する傾斜角度θ4」をリアルタイムに同時に計測する傾斜センサとしては、例えばifm efector株式会社製の型式JN2201を使用することができる。
方向角度計測部106は、地盤改良機200の進行方向(機械座標系OXYのY軸)と基準方向(平面直角座標系O’X’Y’のX’軸)との成す角度(方向角度θ)をリアルタイムに計測する。この方向角度θは、第1アンテナ101Aの位置情報(緯度経度情報)及び第2アンテナ101Bの位置情報(緯度経度情報)を基に上記演算処理装置103によってリアルタイムに算出される。なお、詳細については図5を参照しながら後述するが、この方向角度θは、「第1アンテナ101Aと第2アンテナ101Bとを結ぶベクトルOP2」と真北との成す角度δ(真方位角)から、機械座標系OXYのY軸と上記ベクトルOP2との成す角度φと、子午線収差角γを差し引くことにより算出される。
ディスプレイ107は、例えば液晶タッチパネルから構成されている。タッチパネルには施工目標位置PT、現在の杭芯先端位置(誘導点)P3’、現在の杭芯先端位置P3’についての機械座標系OXY上での施工目標位置PTに到達するまでの誘導量ΔM(ΔXM、ΔYM)等が表示されている。ディスプレイ107の詳細については図11及び図12を参照しながら後述する。
LTE送受信装置108は、携帯電話用電波をアンテナ(図示せず)を介して受信して、その電波に含まれる所定のデータ、例えば鋼管杭1についての座標が規定された施工位置データ(ガイダンス用データ)を取得する。他方、LTE送受信装置108は、例えば実際に施工した鋼管杭1の実施工位置(貫入位置)についての実施工位置データ(出来高・出来形)を携帯電話用電波に乗せてアンテナ(図示せず)を介して所定のサーバー111または他の端末装置に送信する。
また、LTE送受信装置108は、Wi-Fi(登録商標)、BLUETOOTH(登録商標)等の無線LANを有し、無線LANを介して各種データ、例えば測距装置110による計測データ(第1アンテナ101Aの位置P1と当初の杭芯先端位置P3との間のオフセット量)を受信する。
データ記憶部109は、ハードディスク(HD)又はソリッドステートドライブ(SSD)等の半導体メモリから成る大容量の補助記憶装置、或いはUSBメモリ等の可搬型メモリから成る。サーバー111から送信されて来る地盤改良機200の施工位置に係るガイダンス用データに加え、造成中の鋼管杭1に係る掘削深度、流量、羽根切り回数、回転トルクなどの施工データについてもデータ記憶部109に保存される。
測距装置110は、例えばトータルステーションを使用することが出来る。トータルステーションは、光波(計測光)による測距機能とエンコーダーによる測角機能とを併せ持つ光位置計測装置である。計測者が計測したい位置(計測点)に計測ターゲット用プリズムを設置して、そのプリズムに光波を照射しその反射光を受光することによってトータルステーションの座標中心点(器械点)に対する計測点の位置を正確に算出することができる。なお、精度は落ちるが計測ターゲット用プリズムを使用せずに光波(計測光)を計測点に直接照射して計測することも可能である。
サーバー111は、オペレータからの要求に基づいて地盤改良機200の施工位置に係るガイダンス用データをこの地盤改良機用施工位置誘導システム100に送信する。また、地盤改良機用施工位置誘導システム100から送信されて来る実際の施工データ(杭径、セメント添加量、混合比、回転トルク、深度)を保存する。
旋回角度計測部112は、地盤改良機200の本体20についての旋回中心PCt(図17)を中心とした旋回角度θ5を計測する。なお、この旋回角度θ5を計測する機構については、図23を参照しながら後述する。旋回角度θ5を計測するセンサとしては、磁気センサ、例えばバルーフ株式会社の型式BML SL1-ALZ1-UEZZ-AU1L-KA05の磁気センサを使用することができる。
図2及び図3は、本発明の地盤改良機用施工位置誘導システム100が適用される地盤改良機200を示す説明図である。図2は右側面図を表し、図3は正面図を表している。なお、鋼管杭1は図示されていない。
この地盤改良機200は、本体20を前後進・左右旋回等させるクローラ装置10と、オペレータを収容するための操縦室22ならびにエンジン、油圧ポンプ及びこれらの制御機器等を収容する動力室23が配置された本体20と、スイベルヘッド40を昇降させるためのリーダー装置30と、鋼管杭1に回転トルクを与えるスイベルヘッド40とを具備して構成される。以下、各構成について簡単に説明する。
図3に示されるように、クローラ装置10は、左右独立の走行モータ(図示せず)を有し、各走行モータに直結した左右独立の駆動輪11,11と、回転自在な左右独立の遊動輪12,12と、駆動輪11と遊動輪12との間に巻き掛けられる左右独立の無限履帯13,13と、駆動輪11と遊動輪12との間に配置され無限履帯13の張りを保持する回転自在な左右独立の複数の転輪14とを具備しながら、本体20を前後進・左右旋回させる。
本体20は、上記操縦室22及び上記動力室23以外にも、リーダー装置30を本体20の前後方向に傾斜させる起倒シリンダ24と、リーダー装置30を本体20の左右方向に傾斜させるスイングシリンダ25と、スイベルヘッド40に油圧を供給する油圧ホース(図示せず)を高い位置で支持するためのリレーブラケット26と、リーダー装置30全体を本体20に対し上下に昇降させるスライドシリンダ27と、本体20を地面に押し付ける推力を発生させる4個のアウトリガ28と、第1アンテナ101Aを取り付ける第1矩形面29Aa(図4)を有する第1アンテナブラケット29Aと、第2アンテナ101Bを取り付けるための第2矩形面29Ba(図4)を有する第2アンテナブラケット29Bとを備えている。
第2アンテナブラケット29Bには、第2アンテナ101B以外にも、本体20についての水平方向からの前後・左右の各傾斜角(後述のθ1、θ2)を計測する本体角度計測部105、並びに機械座標系OXYのY軸方向を規定するための機械座標基準点120がそれぞれ取り付けられている。なお、機械座標系OXYのX軸方向は第1アンテナブラケット29Aに基づいて規定される。従って、第1アンテナブラケット29Aと第2アンテナブラケット29Bは互いに直交した関係にある。
リーダー装置30は、スイベルヘッド40をチェーン31によって上下に昇降させる。チェーン31はリーダー装置30の両端部に設けられた駆動スプロケット(図示せず)と遊動スプロケット(図示せず)との間に巻き掛けられている。従って、スイベルヘッド40によって回転駆動している鋼管杭1を、チェーン31によって地中に押し下げる、又は地中から地面に引き上げることが可能となる。
リーダー装置30は、起倒シリンダ24によって前後リーダー支点24aを中心として本体20の前後方向に傾斜可能に構成されている。また、リーダー装置30は、スライドシリンダ27によって本体20の上下方向に変位可能に構成されている。更に、図3に示されるように、リーダー装置30はスイングシリンダ25によって左右リーダー支点25aを中心として左右方向にスイング可能に構成されている。
スイベルヘッド40は、鋼管杭1を回転させる油圧モータ(図示せず)と、油圧モータの回転トルクを鋼管杭1に伝達するスピンドル(図示せず)と、鋼管杭1の径方向に係合して鋼管杭1の軸方向の移動を拘束するチャック(図示せず)とを備えている。また、地盤改良剤を鋼管杭1に供給する注入ホース部が鋼管杭1と共に回転することを防止する為のパイプを支持するパイプクランプ41もスイベルヘッド40は備えている。
また、鋼管杭1の先端には攪拌工具(図示せず)を取り付けることが可能である。撹拌工具は地盤土壌を撹拌するための撹拌羽根と地盤を掘削するための掘削羽根とを備えている。また、撹拌工具は地盤改良剤の注出口を備えており、鋼管杭1の中空部を通して供給された地盤改良剤を地盤中に注入することができる。この撹拌工具により地盤中に円柱形状の柱状改良杭を造成することができる。なお、使用される地盤改良剤としては、例えばセメントミルク等である。
図4は、本発明に係る機械座標系OXYと平面直角座標系O’X’Y’を示す説明図である。機械座標系OXYは、第1アンテナ101Aの位置P1を原点O(基準点O)とし、水平面内の第1アンテナ101Aを通る直線であって第2アンテナ101Bと機械座標基準点120とを結ぶ直線(方向ベクトル)に平行な直線をY軸とし、水平面内の第1アンテナ101Aを通るY軸に直交する直線をX軸とする地盤改良機200についてのローカル座標系である。機械座標系OXYは、地盤改良機200上での第1アンテナ101Aに対する当初の杭芯先端位置P3の相対位置を規定している。なお、ここで言う「水平面」とは、鉛直方向に垂直な平面を意味している。
また、本体20の機械座標系OXYとは別に、平面直角座標系O’X’Y’が設定されている。この平面直角座標系O’X’Y’は、鋼管杭1の施工目標位置PT(目標座標)を規定する衛星測位システムに対応したグローバル座標系である。なお、「衛星測位システムに対応した」とは、この平面直角座標系O’X’Y’がその衛星測位システムの座標系(緯度経度座標系)に等しいか、或いは座標原点(基準点)又は/及び座標軸(基準軸)の位相を同じくすると互いに重なる直交座標系であることを意味している。上記ディスプレイ107に表示される全ての計測点の座標は、この平面直角座標系O’X’Y’によって規定される座標である。
従って、第1アンテナ101Aの位置P1と第2アンテナ101Bの位置P2については、GPS電波に含まれる測位信号から直に算出される座標である。それに対し、これら以外の地盤改良機200上での杭芯先端位置P3,P3’については、機械座標系OXYによって規定される座標(X1、Y1)である。そのため、杭芯先端位置P3,P3’を平面直角座標系O’X’Y’上に正確に表示させるためには、機械座標系OXYから平面直角座標系O’X’Y’への座標変換Tを上記座標(X1、Y1)に作用させる操作が必要となる。なお、左記座標(X1、Y1)については上記測距装置(トータルステーション)110によって計測される。従って、以下に上記測距装置110を使用した座標計測について簡単に説明し、その後上記座標変換Tについて説明する。
図5は、地盤改良機200がX’軸との成す方向角度θを保持して前進する状態を示す説明図である。説明の都合上、測距装置110の計測座標系O”X”Y”は、そのZ”軸が鉛直方向を指向し機械座標系OXYのZ軸と平行関係にあるものと仮定する。従って、測距装置110の計測座標系O”X”Y”と地盤改良機200の機械座標系OXYは、原点を一致させた状態で計測座標系O”X”Y”を時計方向に角度ωだけ回転させると各軸が互いに重なる関係にある。
ここで、計測座標系O”X”Y”のX軸方向の基底ベクトルをi”(=(1、0、0))とし、Y軸方向の基底ベクトルをj”(=(0、1、0))とする。計測座標系O”X”Y”における機械座標系OXYのY軸方向についての基底ベクトルjは下記式1の通り算出される。
(式1)j=(P4”-P2”)/|P4”-P2”|
但し、上記P4”は測距装置110によって計測された機械座標基準点120の座標である。また、上記P2”は測距装置110によって計測された第2アンテナ101Bの座標である。また、||は長さを表す。
従って、計測座標系O”X”Y”における機械座標系OXYのX軸方向についての基底ベクトルiは下記式2に示される通り算出される。
(式2)i=R(90°)j
但し、上記R(90°)は回転角が90°の回転行列である。
従って、計測座標系O”X”Y”と機械座標系OXYとの間の位相差を表す上記角度ωは、下記式3及び下記式4の連立方程式の解として算出される。
(式3)cosω=j・j”
(式4)-sinω=j・i”
但し、・は内積を表す。
従って、計測座標系O”X”Y”から機械座標系OXYへの座標変換行列T1は、下記式5に示される通り回転角がωの回転行列R(ω)に等しくなる。
(式5)
従って、機械座標系OXY上での当初の杭芯先端位置P3の座標(ベクトルOP3)は、下記式6に示される通り測距装置110による第1アンテナ101Aの計測値(座標)及び当初の杭芯先端位置P3の計測値(座標)から一意的に算出される。なお、ここで言う「当初」とは計測部キャリブレーション時または施工基準姿勢時(本体20を水平状態に且つリーダー装置30を鉛直方向に設置した時)という意味である。
(式6)OP3=T1(P3”-P1”)
但し、上記P1”は測距装置110によって計測された第1アンテナ101Aの座標である。また、上記P3”は測距装置110によって計測された当初の杭芯先端位置P3の座標である。
一方、平面直角座標系O’X’Y’のX’軸に対する機械座標系OXYのY軸についての方向角度をθとすると(θの符号についてはX’軸から時計方向に回転する方向を正としている)、左記方向角度θは、第1GPS受信装置102Aから取得される第1アンテナ101Aについての位置情報(緯度経度情報)と第2GPS受信装置102Bから取得される第2アンテナ101Bについての位置情報(緯度経度情報)から一意的に算出される。
すなわち、第1アンテナ101Aと第2アンテナ101Bとを結ぶベクトルOP2についての真方位角δは第1アンテナ101Aと第2アンテナ101Bの各位置情報(経度緯度情報)から算出される。他方、ベクトルOP2についての機械座標系OXYのY軸に対する方向角度φは下記式7に示される通り算出される。
(式7)φ=cos-1{j・(ベクトルOP2)/|ベクトルOP2|}
従って、機械座標系OXYのY軸についての真方位角θ’は、下記式8に示される通り算出される。
(式8)θ’=δ-φ
従って、平面直角座標系O’X’Y’のX’軸に対する機械座標系OXYのY軸の方向角度θは、子午線収差角γ(X’軸の真北からのずれ角度)から下記式9に示される通り算出される。
(式9)θ=θ’-γ
平面直角座標系O’X’Y’は、(1)機械座標系OXYを反時計方向にθだけ回転させて、(2)X軸とY軸を入れ替えた座標系に相当する。従って、機械座標系OXYから平面直角座標系O’X’Y’への座標変換Tは、下記式10の行列Tに相当する。
(式10)
従って、平面直角座標系O’X’Y’上での当初の杭芯先端位置P3の座標(ベクトルO’P3)は、平面直角座標系O’X’Y’上での第1アンテナ101Aの座標(ベクトルO’P1)に、機械座標系OXY上での当初の杭芯先端位置P3の座標(ベクトルOP3)に行列Tを施した座標を加えた下記式11の座標に等しくなる。
(式11)
なお、上記式11中の平面直角座標系O’X’Y’上での第1アンテナ101Aの座標(ベクトルO’P1)については、GPS電波に含まれる測位信号から直に算出されるのに対し、機械座標系OXY上での当初の杭芯先端位置P3の座標(ベクトルOP3)については、後述の計測部キャリブレーション(施工基準姿勢の設定)時で取得されたオフセット量(座標)を使用する。
従って、平面直角座標系O’X’Y’上での現在の杭芯先端位置P3’の座標は、平面直角座標系O’X’Y’上での当初の杭芯先端位置P3の座標(ベクトルO’P3)に、平面直角座標系O’X’Y’上でのずれ量Δ’(Δx’、Δy’)を加えた下記式11aの座標に等しくなる。
(式11a)
なお、平面直角座標系O’X’Y’上でのずれ量Δ’(Δx’、Δy’)は、計測部キャリブレーション(施工基準姿勢の設定)時で取得されたずれ量Δ(ΔX、ΔY)に上記座標変換Tを施した下記式12の座標に等しくなる。
(式12)
因みに、現在の杭芯先端位置P3’を施工目標位置PTに誘導する誘導作業は、誘導作業が簡素化される機械座標系OXY上での誘導量ΔM(ΔX
M、ΔY
M)に基づいて行われる。機械座標系OXY上での誘導量ΔM(ΔX
M、ΔY
M)は、平面直角座標系O’X’Y’上での現在の杭芯先端位置P3’に対する施工目標位置PTのベクトルに、上記座標変換Tの逆行列T
-1を施した下記式12aに示されるベクトル量に等しくなる。
(式12a)
なお、平面直角座標系O’X’Y’上での施工目標位置PT(ペクトルO’PT)については、サーバー111より送信されて来るガイダンス用データから取得される。また、平面直角座標系O’X’Y’上での現在の杭芯先端位置P3’(ベクトルO’P3’)については、上記式11aから得られる。以下、本体20及びリーダー装置30についての施工基準姿勢を規定する計測部キャリブレーションについて説明する。
図6は、本発明に係る計測部キャリブレーションを示す説明図である。図6(a)は地盤改良機200の平面図であり、図6(b)は左側面図であり、図6(c)は正面図である。ここで言う「計測部キャリブレーション」とは、地盤改良機200を施工の基準となる姿勢(施工基準姿勢)に設置したときの各計測部(本体角度、リーダー角度、方向角度)の出力値を所定の基準値(例えば、ゼロ)に設定することを意味している。本実施形態における「施工基準姿勢」とは、例えば本体20をアウトリガ28によって水平状態にしてリーダー装置30を鉛直方向に設置し、さらに第2アンテナ101Bと方向角度計測部106を結んだ仮想直線を平面直角座標系O’X’Y’のX’軸に平行に設置したときの地盤改良機200の姿勢を意味している。従って、本体角度計測部104のゼロ点は水平状態であり、リーダー角度計測部105のゼロ点は鉛直状態であり、方向角度計測部106のゼロ点は平面直角座標系O’X’Y’のX’軸に平行な方向である。
図6(a)に示されるように、施工基準姿勢における第1アンテナ101Aからの当初の杭芯先端位置P3のX軸方向・Z軸方向オフセット量(X1、Y1)は(-913mm、3123.3mm)である。なお、「杭芯先端」とは鋼管杭1の杭芯L1が基準面(施工面)に交差する仮想点を意味している。以降において同じ。
図6(b)に示されるように、第1アンテナ101Aからの当初の杭芯先端位置P3のZ軸方向オフセット量Z1は2926.9mmである。また、前後リーダー支点24aからの当初の杭芯先端位置P3のY軸方向・Z軸方向オフセット量(Y3、Z3)は(992mm、-1574.5mm)である。なお、第1アンテナ101Aからの前後リーダー支点24aのY軸方向・Z軸方向オフセット量(Y2、Z2)は(2131.3mm、1352.4mm)である。
図6(c)に示されるように、左右リーダー支点25aからの当初の杭芯先端位置P3のZ軸方向・X軸方向オフセット量(Z4、X3)は(-1269.5mm、-275mm)である。なお、第1アンテナ101Aからの左右リーダー支点25aのZ軸方向・X軸方向オフセット量(Z5、X2)は(-1657.4mm、-638mm)である。
もし、本体20又はリーダー装置30の各姿勢が施工基準姿勢に対し何ら変化しない場合、当初の杭芯先端位置P3は、第1アンテナ101AからX軸方向に沿ってX1、Y軸方向に沿ってY1、Z軸方向に沿ってZ1オフセットしたところに位置している。しかし、実施工時の地盤状況は、計測部キャリブレーション時の地盤状況とは異なるため、本体20は水平方向に対し前後方向及び/又は左右方向に傾斜する。更にリーダ-装置30についても鉛直方向に対し前後方向(起倒方向)及び/又は左右方向(スイング方向)に傾斜する。つまり、実施工時の現在の杭芯先端位置P3’は、計測部キャリブレーション時(施工基準姿勢)における当初の杭芯先端位置P3からずれることになる。従って、このずれた状態で杭芯L1を鉛直方向に設置する場合、実杭施工位置と施工目標位置PTとの間にずれ量Δ(ΔX、ΔY)が生じることになる。従って、現在の杭芯先端位置P3’については、杭芯L1を鉛直方向に設置した際にずれ量Δ(ΔX、ΔY)が生じない修正誘導位置に誘導する必要がある。
図6(b)の太折れ線は、当初の杭芯先端位置P3についてのY軸方向のずれ量ΔYを算出するための、Y軸方向・Z軸方向についての第1アンテナ101Aと当初の杭芯先端位置P3との相対位置関係を示すYZ仮想折れ線P1abcP3である。同様に、図6(c)の折れ線は、当初の杭芯先端位置P3についてのX軸方向のずれ量ΔXを算出するための、Z軸方向・X軸方向についての第1アンテナ101Aと当初の杭芯先端位置P3との相対位置関係を示すZX仮想折れ線P1defP3である。
なお、上記ずれ量Δ(ΔX、ΔY)の算出については、先ず本体20のみが傾斜しリーダー装置30は傾斜しないと仮定した場合のずれ量(ΔX’、ΔY’)を算出し、次いでリーダー装置30のみが傾斜し本体20は傾斜しないと仮定した場合のずれ量(ΔX”、ΔY”)を算出し、これらを合算したずれ量(ΔX’+ΔX”、ΔY’+ΔY”)を上記ずれ量Δ(ΔX、ΔY)としている。なお、上記ずれ量Δ(ΔX、ΔY)は機械座標系OXYにおけるベクトル量であるため、ディスプレイ107上に表示させる場合は、上記式1で示される行列Tを掛けて平面直角座標系O’X’Y’におけるベクトル量に変換する必要がある。以下、YZ仮想折れ線P1abcP3又はZX仮想折れ線P1defP3を使用した上記ずれ量Δ(ΔX、ΔY)の算出の一例について説明する。
図7は、本体20のみが左右方向に角度θ1だけ傾斜した場合の当初の杭芯先端位置P3のX軸方向についてのずれ量ΔX’を算出する過程を示す説明図である。図7(a)は、計測部キャリブレーション時の本体20の姿勢状態を示す。図7(b)は、本体20が左右方向に角度θ1だけ傾斜したときの姿勢状態を示す。図7(c)は、傾斜前におけるZX仮想折れ線P1def及び傾斜後におけるZX仮想折れ線P1d’e’f’を示す。なお、説明の都合上、変化の前後において第1アンテナ101AのX座標は同じとし、線分efの長さと方向は変化しないものと仮定する。また、リーダー装置30は傾斜しないものと仮定する。
図7(c)に示されるように、ZX仮想折れ線P1deは、第1アンテナ101Aを中心に時計方向に角度θ1だけ回転した場合、点dは点d’に変位し、点eは点e’に変位し、点fは点f’に変位する。線分e’f’の長さと方向は線分efの長さと方向に等しい。従って、計測部キャリブレーション時の第1アンテナ101Aからの左右リーダー支点25aのオフセット量|X2|は、|X2’|(=d’h’-d’h)に変化する。なお、点hは、点d’から点e’を通るZ軸方向に平行な直線に下ろした垂線の足である。点h’は、点d’から点P1を通るZ軸方向に平行な直線に下ろした垂線の足である。
本体20が左右方向に角度θ1だけ傾斜した場合の、第1アンテナ101Aからの左右リーダー支点25aのオフセット量X2’は、下記の通り算出される。
(式13)|X2’|=d’h’-d’h=P1d’*cosθ1-d’e’*sinθ1=|X2|*cosθ1-|Z5|*sinθ1=638*cosθ1-1657.4*sinθ1
従って、本体20が左右方向に角度θ1だけ傾斜した場合の当初の杭芯先端位置P3のX軸方向についてのずれ量ΔX’は、下記の通り算出される。
(式14)ΔX’=|X2|-|X2’|=638-(638*cosθ1-1657.4*sinθ1)=638*(1-cosθ1)+1657.4*sinθ1
図8は、本体20のみが前後方向に角度θ2だけ傾斜した場合の当初の杭芯先端位置P3のY軸方向についてのずれ量ΔY’を算出する過程を示す説明図である。図8(a)は、計測部キャリブレーション時の本体20の姿勢状態を示す。図8(b)は、本体20が前後方向に角度θ2だけ傾斜したときの姿勢状態を示す。図8(c)は傾斜前におけるYZ仮想折れ線P1abc及び傾斜後におけるYZ仮想折れ線P1a’b’c’を示す。なお、説明の都合上、変化の前後において第1アンテナ101AのY座標は同じとし、線分bcの長さと方向は変化しないものと仮定する。また、リーダー装置30は傾斜しないものと仮定する。
図8(c)に示されるように、YZ仮想折れ線P1abcは、第1アンテナ101Aを中心に反時計方向に角度θ2だけ回転した場合、点aは点a’に変位し、点bは点b’に変位し、点cは点c’に変位する。線分b’c’の長さと方向は線分bcの長さと方向に等しい。従って、計測部キャリブレーション時の第1アンテナ101Aからの前後リーダー支点24aのオフセット量Y2は、Y2’(=P1H+H’b’)に変化する。なお、点Hは、点a’から点P1を通るY軸方向に平行な直線に下ろした垂線の足である。点H’は、点a’から点b’を通るY軸方向に平行な直線に下ろした垂線の足である。
本体20が前後方向に角度θ2だけ傾斜した場合の、第1アンテナ101Aからの前後リーダー支点24aのオフセット量Y2’は、下記の通り算出される。
(式15)Y2’=P1H+H’b’=P1a’*cosθ2+a’b’*sinθ2=P1a*cosθ2+ab*sinθ2=Y2*cosθ2+|Z2|*sinθ2=2131.3*cosθ2+1352.4*sinθ2
従って、本体20が前後方向に角度θ2だけ傾斜した場合の当初の杭芯先端位置P3のY軸方向についてのずれ量ΔY’は、下記の通り算出される。
(式16)ΔY’=Y2’-Y2=(2131.3*cosθ2+1352.4*sinθ2)-2131.3=2131.3*(cosθ2-1)+1352.4*sinθ2
図9は、リーダー装置30のみが左右方向に角度θ3だけ傾斜した場合の当初の杭芯先端位置P3のX軸方向についてのずれ量ΔX”を算出する過程を示す説明図である。図9(a)は、計測部キャリブレーション時のリーダー装置30の姿勢状態を示す。図9(b)は、リーダー装置30が左右方向(スイング方向)に角度θ3だけ傾斜したときの姿勢状態を示す。図9(c)は、傾斜前におけるZX仮想折れ線efP3及び傾斜後におけるZX仮想折れ線e’f’P3’を示す。なお、説明の都合上、変化の前後において第1アンテナ101A及び左右リーダー支点25aの各X座標は同じと仮定する。また、本体20は傾斜しないものと仮定する。
図9(c)に示されるように、ZX仮想折れ線efP3を左右リーダー支点25aを中心に時計方向に角度θ3だけ回転した場合、点fは点f’に変位し、点P3は点P3’に変位する。また、杭芯L1は、杭芯L1’に変位する。ここで、杭芯L1と杭芯L1’との交点をf''とする。直角三角形f”efと直角三角形f”ef’は、斜辺と他の1辺が等しいので合同になる。その結果、角度∠f”efと角度∠f”ef’は、θ3/2に等しくなる。従って、当初の杭芯先端位置P3のX軸方向についてのずれ量ΔX”は、下記の通り算出される。
(式17)ΔX”=f”P3*tanθ3=(fP3-ff”)*tanθ3=(|Z4|-X3*tan(θ3/2))*tanθ3=(1269.5-275*tan(θ3/2))*tanθ3
従って、本体20のみが左右方向に角度θ1だけ傾斜し且つリーダー装置30のみが左右方向に角度θ3だけ傾斜した場合の杭芯先端位置P3のX軸方向についてのずれ量ΔXは、式14と式17を合算することにより、下記の通り算出される。
(式18)ΔX=ΔX’+ΔX”=638*(1-cosθ1)+1657.4*sinθ1+(1269.5-275*tan(θ3/2))*tanθ3
図10は、リーダー装置30のみが前後方向に角度θ4だけ傾斜した場合の当初の杭芯先端位置P3のY軸方向についてのずれ量ΔY”を算出する過程を示す説明図である。図10(a)は、計測部キャリブレーション時のリーダー装置30の姿勢状態を示す。図10(b)は、リーダー装置30が前後方向(起倒方向)に角度θ4だけ傾斜したときの姿勢状態を示す。図10(c)は、傾斜前におけるYZ仮想折れ線bcP3及び傾斜後におけるYZ仮想折れ線bc’P3’を示す。なお、説明の都合上、変化の前後において第1アンテナ101A及び前後リーダー支点24aの各Y座標は同じと仮定する。また、本体20は傾斜しないものと仮定する。
図10(c)に示されるように、YZ仮想折れ線bcP3を前後リーダー支点24aを中心に反時計方向に角度θ4だけ回転した場合、点cは点c’に変位し、点P3は点P3’に変位する。また、杭芯L1は、杭芯L1’に変位する。ここで、杭芯L1と杭芯L1’との交点をc”とする。直角三角形c”bcと直角三角形c”bc’は、斜辺と他の1辺が等しいので合同になる。その結果、角度∠c”bcと角度∠c”bc’は、θ4/2に等しくなる。従って、当初の杭芯先端位置P3のY軸方向についてのずれ量ΔY”は、下記の通り算出される。
(式19)ΔY”=c”P3*tanθ4=(cP3+cc”)*tanθ4=(|Z3|+Y3*tan(θ4/2))*tanθ4={1574.5+992*tan(θ4/2)}*tanθ4
従って、本体20のみが前後方向に角度θ2だけ傾斜し且つリーダー装置30のみが前後方向に角度θ4だけ傾斜した場合の杭芯先端位置P3のY軸方向についてのずれ量ΔYは、式16と式19を合算することにより、下記の通り算出される。
(式20)ΔY=ΔY’+ΔY”=2131.3*(cosθ2-1)+1352.4*sinθ2+{1574.5+992*tan(θ4/2)}*tanθ4
上記ずれ量Δ(ΔX、ΔY)に上記式1で示される行列Tを掛けることにより、平面直角座標系O’X’Y’におけるずれ量Δ’(Δx’、Δy’)は上記式12の通り算出される。
(式21)
再び図5に戻って、上記ずれ量Δ’(Δx’、Δy’)については、現在の杭芯先端位置P3’が図6に示される計測部キャリブレーション時(施工基準姿勢)の当初の杭芯先端位置P3に比べ、平面直角座標系O’X’Y’においてX’方向にΔx’、Y’方向にΔy’ずれていることを意味している。
従って、もし当初の杭芯先端位置P3がずれた状態でオペレータが計測部キャリブレーション時の施工基準姿勢を取る場合、現在の杭芯先端位置P3’は、施工目標位置PTからX’方向に-Δx’、Y’方向に-Δy’に移動し、施工目標位置PTと実杭施工位置との間にずれを生じることになる。従って、オペレータは現在の杭芯先端位置P3’を施工目標位置PTからX’方向に+Δx’、Y’方向に+Δy’にずれた修正誘導位置PT*に誘導しなければならないことが分かる。
図11及び図12は、本発明に係るディスプレイ107の表示画面107aを示す説明図である。図11は現在の杭芯先端位置P3’と施工目標位置PTとが比較的離れている場合の表示画面107a上での杭誘導を表している。図12は現在の杭芯先端位置P3’と施工目標位置PTとが比較的近接している場合の表示画面107a上での杭誘導を表している。上述した通り、鋼管杭1の誘導は、本体の移動が簡素化された機械座標系OXY上で行われる。そのため、現在の杭芯先端位置P3’の施工目標位置PTに対するずれ量を示す誘導量ΔM(ΔXM、ΔYM)は、上記式12aで示される機械座標系OXY上での値となる。
また、地盤改良機200の移動姿勢についても機械座標系OXYに基づいて表示画面107a上に表示される。すなわち、地盤改良機200の移動姿勢は、本体前部が施工目標PTを対向しながら本体長手方向がY軸に平行に表示画面107a上に表示される。従って、地盤改良機200の表示画面107上での移動は、本体長手方向がY軸に平行に保持された状態で表示画面107aの縦方向(Y軸方向)または横方向(X軸方向)に沿っての移動となる。
誘導のターゲットとなる施工目標位置PTについては、同心二重円107bで表示されている。誘導される現在の杭芯先端位置P3’については円十字107cで表示され、施工目標位置PTと区別されている。また、Y軸方向の誘導量ΔYMおよびX軸方向の誘導量ΔXMについては、方向と移動量が大きい文字サイズで強調されて表示されている。従って、オペレータは、施工目標位置PTを表す同心二重円107bと現在の杭芯先端位置P3を表す円十字107cを参考にすることにより、現在の杭芯先端位置P3’をスムーズに施工目標位置PTに誘導することが可能となる。なお、図11では現在の杭芯先端位置P3’の施工目標位置PTに対する誘導量ΔM(ΔXM、ΔYM)は、X軸方向左方に11cm、Y軸方向上方に3.0mとなっている。図12では現在の杭芯先端位置P3’の施工目標位置PTに対する誘導量ΔM(ΔXM、ΔYM)は、X軸方向左方に6cm、Y軸方向下方に8cmと図11に対し修正されていることが分かる。
図13は、本発明に係るリーダーの垂直制御を示す説明図である。このリーダーの垂直制御は、地盤改良機200が施工目標位置(PT)から所定の範囲内に近づくとリーダー装置30(杭芯L1)を鉛直方向に設置する制御技術である。図13(a)に示されるように、現在の杭芯先端位置P3’と施工目標位置PTとの距離dが閾値L以下になるときに、演算処理装置103はリーダー装置30を鉛直方向になるようにする。具体的には、演算処理装置103は、スイングシリンダ25及び起倒シリンダ24を駆動して左右方向の傾斜角θ3及び前後方向に対する傾斜角θ4をゼロになるようにする。
以上の通り、本発明の一実施形態に係る地盤改良機用施工位置誘導システム100によれば、現在の杭芯先端位置P3’を施工目標位置PTに誘導する誘導作業が、ディスプレイ107の表示画面107aを介して、本体の移動方向が縦・横のみに簡素化された機械座標系OXY上で行われるように構成されている。そのため、杭の誘導作業を円滑に行うことが可能となる。
他方、誘導基準点である現在の杭芯先端位置P3’については、地盤改良機200の本体20及びリーダー装置30についての少なくとも前後方向、左右方向及び進行方向に関する所定の施工基準姿勢・基準軸からの各傾斜角度θ1,θ2,θ3,θ4,θをリアルタイムにそれぞれ計測しながら、現在の杭芯先端位置P3’についての平面直角座標系O’X’Y’上での当初位置P3からのずれ量Δ’(Δx’、Δy’)をリアルタイムに算出し、そのずれ量Δ’(Δx’、Δy’)に基づいて現在の杭芯先端位置P3’から施工目標位置PTに到る機械座標系OXY上での誘導量ΔM(ΔXM、ΔYM)をリアルタイムに修正するため、GPS等の衛星測位システムを利用した地盤改良機用施工位置誘導システムにおいて地盤改良機200の施工姿勢が変化する地盤状況であっても実際に鋼管杭1を打設した実杭施工位置と施工目標位置PTとの間のずれ(誤差)を最小限に抑えることが可能になる。
なお、図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る地盤改良機用施工位置誘導システム100について説明してきたが、本発明の実施形態は上記のみに限定されることはない。すなわち、本発明の技術的特徴を逸脱しない範囲内において種々の変更・追加等を加えることが可能である。例えば、施工基準姿勢については、本体20は水平状態からずれていてもよく、リーダー装置30についても鉛直状態からずれていても良い。
また、機械座標系OXYについては、地盤改良機200上の直交座標系であれば良く、本体長手方向がY軸に平行な関係になくても良い。また、方向角度θの計測については、ジャイロセンサー等を使用しても良い。
(第2実施形態)
図17は、本発明の第2実施形態に係る地盤改良機用施工位置誘導システム100を示す説明図である。ディスプレイ107の表示画面107aには、施工目標位置PTを表す同心二重円107bと現在の杭芯先端位置P3’を表す円十字107cに加えて、地盤改良機200の旋回中心PCtを中心とし且つ、旋回中心PCtから現在の杭芯先端位置P3’に到る距離を旋回半径Rtとする旋回円Ctが表示されている。
旋回中心PCtは、本体20の旋回中心を意味している。旋回中心PCtは不動点であるのに対し、現在の杭芯先端位置P3’は、地盤改良機200の本体20の基準面(例えば水平面)に対する前後方向及び左右方向についての傾斜角度θ1,θ2と、地盤改良機200のリーダー装置30の基準方向(例えば鉛直方向)に対する左右方向(スイング方向)及び前後方向(起倒方向)についての傾斜角度θ3,θ4とに応じて時々刻々に変化している。従って、旋回半径Rtは、本体20の上記傾斜角度θ1,θ2及びリーダー装置30の上記傾斜角度θ3,θ4に応じてその大きさが変化する。旋回中心PCtの設定については図18を参照しながら後述する。
図18は、旋回中心PCtの設定画面を示す説明図である。オペレータは、旋回中心寸法値の設定画面にて旋回中心PCtの座標(Xt、Yt)を、例えばY寸法入力ボックス130及びX寸法入力ボックス131をタップしてテンキー132から直接入力することになる。
なお、この旋回中心PCtの座標(Xt、Yt)は、機械座標系OXY上での座標である。従って、平面直角座標系O’X’Y’上での旋回中心PCtの座標(ベクトルO’PCt)は、機械座標系OXYから平面直角座標系O’X’Y’への座標変換T(式10)を用いて、下記式22の通り求められる。
(式22)
また、旋回円Ctの旋回半径Rtの長さについては、平面直角座標系O’X’Y’上での現在の杭芯先端位置P3’の座標(式11a)と、平面直角座標系O’X’Y’上での旋回中心PCtの座標(式22)を用いて、下記式23の通り求められる。
(式23)
なお、この旋回半径Rtの長さは機械座標系OXYにおいても同じ値となる。また、旋回半径Rtは、旋回中心PCtの座標(式22)を中心に、上記式11aで得られた現在の杭芯先端位置P3’の座標を通るように描画されることになる。旋回半径Rtの長さは、式22の第4行から明らかな通り、現在の杭芯先端位置P3’についての当初の杭芯先端位置P3からのずれ量Δ’(式12)に応じて変化することになる。以下に旋回半径Rtの具体例について説明する。
図19は、本発明に係る旋回半径Rtの具体例を示す説明図である。図上点線で示されているケース1の旋回半径Rt-1は、例えばリーダー装置30が地面に対し垂直状態にある地盤改良機200の施工姿勢における旋回半径を表している。
図上一点鎖線で示されているケース2の旋回半径Rt-2は、例えばリーダー装置30の杭芯先端位置P3-2がケース1の杭芯先端位置P3-1よりも外側(+Y方向側)に位置する程度に、リーダー装置30が地面に対し傾斜している施工姿勢における旋回半径を表している。
図上二点鎖線で示されているケース3の旋回半径Rt-3は、例えばリーダー装置30の杭芯先端位置P3-3がケース1の杭芯先端位置P3-1よりも内側(-Y方向側)に位置する程度に、リーダー装置30が地面に対し傾斜している施工姿勢における旋回半径を表している。
このように、ディスプレイ107の表示画面107aに表示される旋回半径Rtは、リーダー装置30の地面に対する傾斜状態に応じて描画されることになる。
図20は、本発明に係る旋回円Ctを利用した施工目標位置への誘導手順を示す説明図である。
表示画面107aは、機械座標系OXYを基準座標系としている。そのため、地盤改良機200は見かけ上静止し、従って、現在の杭芯先端位置P3’,旋回円Ct及び旋回中心PCtも見かけ上静止している。他方、施工目標位置PTは見かけ上相対移動する。すなわち、地盤改良機200が上方に移動する場合、施工目標位置PTは下方に見かけ上相対移動する。その逆に、地盤改良機200が下方に移動する場合、施工目標位置PTは上方に見かけ上相対移動する。従って、図中の点線の矢印は、地盤改良機200(現在の杭芯先端位置P3’)の表示画面107a上での実際の移動方向を表し、実線の矢印は、施工目標位置PTの表示画面107a上での見かけの移動方向を表している。
図20(a)に示されるように、オペレータが地盤改良機200を上方に前進移動させる場合、施工目標位置PTは下方に見かけ上相対移動する。オペレータは施工目標位置PTの中心が旋回円Ct上に位置するまで、地盤改良機200を上方に前進移動させる。
図20(b)に示されるように、施工目標位置PTの中心が旋回円Ct上に位置するときに、オペレータはクローラ装置10の前進移動を停止し、本体20の旋回動作に切り替える。因みに本体20の旋回動作は、本体20に内蔵される旋回モータ(図22)によって行われる。オペレータが本体20を図上反時計方向に旋回させる場合、施工目標位置PTは、旋回中心PCtを中心として旋回円Ctに沿って図上時計方向に見かけ上相対移動する。
図20(c)に示されるように、施工目標位置PTの中心が、旋回円Ctに沿って現在の杭芯先端位置P3’に重複するときに、オペレータは本体20の旋回動作を停止する。
このように、地盤改良機200の旋回中心PCtを中心とし、その旋回中心PCtから現在の杭芯先端位置P3’に到る距離を旋回半径Rtとする旋回円Ctを表示画面107aに表示させながら、「クローラ装置10の前進/後進移動」に、「本体20の旋回動作」を組み合わせることにより、現在の杭芯先端位置P3’を施工目標位置PTへスムーズに誘導することが可能となる。
以上の通り、本発明の第2実施形態に係る地盤改良機用施工位置誘導システム100によれば、「クローラ装置10の前進/後進移動」に「本体20の旋回動作」という2つの動作によって、現在の杭芯先端位置P3’を施工目標位置PTへスムーズに効率良く誘導することが可能となる。
(第3実施形態)
図21は、本発明の第3実施形態に係る地盤改良機用施工位置誘導システム100を示す説明図である。ディスプレイ107の表示画面107aには、上記旋回円Ctに加えて、クローラ装置10の走行方向を表す第1走行線LS1と、第1走行線LS1に平行で「現在の杭芯先端位置P3’」を通る第2走行線LS2と、「施工目標位置PTの中心」と「直前の施工済み位置PT’の中心」とを通る第1ガイド線LG1と、「現在の杭芯先端位置P3’」と「施工目標位置PTの中心」とを通る第2ガイド線LG2とのうちの全部又は一部が表示されている。
図上点線で示される第1走行線LS1は、機械座標系OXY上におけるクローラ装置10の走行方向に関する情報をオペレータに与えるものである。また、図上実線で示される第2走行線LS2は、機械座標系OXY上においてクローラ装置10が走行する場合の「現在の杭芯先端位置P3’」と「施工目標位置PTの中心」との位置関係をオペレータに与える。
図上二点鎖線で示される第1ガイド線LG1は、機械座標系OXY上における施工目標位置PTの並び(配置)に関する情報をオペレータに与えるものである。また、図上一点鎖線で示される第2ガイド線LG2は、機械座標系OXY上において現在の杭芯先端位置P3’から施工目標位置PTの中心に到る方位及び距離に関する情報をオペレータに与えるものである。
なお、上記第1ガイド線LG1については、機械座標系OXYにおける施工目標位置PTの座標を基に表示画面107a上に表示される。また、施工目標位置PTの座標については、サーバー111より送信されて来る地盤改良機200の施工位置に係るガイダンス用データから取得される。なお、ガイダンス用データから取得される施工目標位置PTの座標は、平面直角座標系O’X’Y’上での座標であるため、下記式24に示される通り、上記式10で示される行列T(機械座標系OXYから平面直角座標系O’X’Y’への座標変換行列)の逆行列T
-1を作用させる必要がある。
(式24)
また、上記第2ガイド線LG2については、機械座標系OXYにおける施工目標位置PTの座標と現在の杭芯先端位置P3’の座標を基に表示画面107a上に表示される。なお、現在の杭芯先端位置P3’の機械座標系OXYにおける座標については、機械座標系OXY上での当初の杭芯先端位置P3の座標(計測部キャリブレーション時で取得された座標)に、上記式18及び式20によって得られた機械座標系OXY上でのずれ量Δ(ΔX、ΔY)を加えた下記式25の座標に等しくなる。
(式25)
一方、上記第1走行線LS1及び第2走行線LS2については、機械座標系OXYにおけるクローラ装置10の側面の接線を基に表示画面107a上に表示される。このクローラ装置10の側面の接線は、本体20の旋回中心PCtに関する旋回角度θ5によって決定される。従って、以下にこの旋回角度θ5を計測する機構について説明する。
図22は、本体20の旋回角度θ5を計測する計測機構を示す説明図である。
この計測機構は、旋回ロックディスク15の外周端面の全面に取り付けられた磁気テープ140と、その磁気テープ140に対向する形態で本体20に磁気リニアエンコーダ用ブラケット142を介して取り付けられた磁気リニアエンコーダ141とを具備して構成されている。
旋回ロックディスク15は、クローラ装置10の円筒軸16にスペーサ17を介して一体化されている。旋回ロックディスク15に摩擦係合する揺動アーム20dは、揺動アーム用ブラケット20fに揺動軸20eの回りに回転可能に取り付けられている。揺動アーム20dの一端20daは、油圧シリンダ20bのロッド20cに係合している。
従って、油圧シリンダ20bのロッド20cが図上左側に変位する場合、揺動アーム20dが揺動軸20eを支点として反時計回りに回転する。そして、揺動アーム20dの他端に位置する係合片20dbが旋回ロックディスク15に摩擦接合して、本体20は静止する。
他方、油圧シリンダ20bのロッド20cが図上右側に変位する場合、揺動アーム20dが揺動軸20eを支点として時計回りに回転する。そして、先端に位置する係合片20dbが旋回ロックディスク15から離れ、本体20は旋回可能状態(フリー状態)になる。
油圧シリンダ20b、揺動アーム用ブラケット20f及び旋回モータ20aは、本体20のフレーム20gに取り付けられている。旋回モータ20aは、クローラ装置10の軸受け内輪19の内周面に形成された周状ギア19aに噛み合っている。軸受け内輪19は、本体20のフレーム20gに取り付けられた軸受け外輪20h、及び鋼球20iと共に円筒軸16の軸受けを構成している。
また、本体20は、旋回スイベル18によって鉛直方向に対し回転可能に支持されている。従って、旋回モータ20aが回転駆動される場合、旋回モータ20aは周状ギア19aと噛み合いながら、軸受け内輪19の内周(周状ギア19a)に沿って移動する。これにより、本体20は旋回スイベル10の回りに旋回することになる。なお、旋回スイベル18の軸芯は旋回中心PCtに一致する。
図23は、本体20の旋回角度θ5を検出する原理を示す説明図である。なお、図23(a)は、地盤改良機200における磁気テープ140と磁気リニアエンコーダ141との相対位置関係を示している。図23(b)は、同(a)の相対位置関係を直線状に展開した場合の磁気テープ140と磁気リニアエンコーダ141との相対位置関係を示している。
図23(a)に示されるように、クローラ装置10の旋回ロックディスク15の外周端には、N極とS極が交互に配置された磁気テープ140が1周に渡って取り付けられている。他方、磁気テープ140の磁極を検出する磁気リニアエンコーダ141が、旋回ロックディスク15の外周端に対向する形態で本体20側に取り付けられている。従って、本体20が旋回中心PCtの回りに旋回する場合、磁気リニアエンコーダ141は、磁気テープ140との間に所定の隙間CL5を空けて磁気テープ140上を移動することになる。従って、磁気リニアエンコーダ141が移動した移動距離LS5は、本体20の旋回中心PCtの回りの旋回角度θ5に1対1に対応する。なお、移動距離LS5は、磁気リニアエンコーダ141が検出した磁極のカウント数に1対1に対応する。従って、演算処理装置103はそのカウント数を基に移動距離LS5を算出する。
図23(b)に示されるように、本体20が旋回中心PCtの回りを360°旋回する場合、磁気リニアエンコーダ141の移動距離は磁気テープ140の全周長LS0に等しくなる。なお、磁気テープ140の全周長は、2π×R5(旋回ロックディスク15の半径)に等しくなる。従って、本体20の旋回角度θ5は、下記式26の通り求められる。
(式26):θ5=LS5/LS0×360°
以下に、クローラ装置10の走行方向LS1の描画について説明する。
図24は、クローラ装置10の走行方向LS1の描画を示す説明図である。なお、図24(a)は本体20の長手方向がクローラ装置10の走行方向LS1と平行になる状態を示している。図24(b)は本体20が旋回中心PCtの回りに旋回角度θ5だけ旋回する状態を示している。また、本体20の長手方向は機械座標系OXYのY軸と平行になるように設定されている。
図24(a)に示されるように、クローラ装置10の走行方向LS1としては、例えば、図上右側の無限履帯13の右側面の接線を選定することができる。また、この接線の方程式は、接線上の任意の2つの基準点P6,P7から一意的に決定される。
ここで本体20が旋回中心PCtに関して反時計方向に旋回したと仮定する。この場合、無限履帯13,13は見かけ上、旋回中心PCtに関して図上時計方向に旋回することになる。従って、磁気リニアエンコーダ141の位置を示す基準点P5は、見かけ上静止する一方、クローラ装置10の走行方向LS1を決定する基準点P6,P7は旋回中心PCtに関して図上時計方向に回転する。
図24(b)に示されるように、旋回中心PCtの回りの本体20の旋回角度をθ5とする場合、基準点P6,P7の旋回後の機械座標系OXY上の座標P6’,P7’は、上記式5に示される回転行列Rを用いて下記式27及び式28の通り求められる。
(式27)
(式28):
従って、本体20が旋回中心PCtの回りに旋回角度θ5で旋回した場合のクローラ装置10の走行方向LS1については、上記座標P6’,P7’を通る直線として表示されることになる。以下に上記走行線LS1,LS2及び上記ガイド線LG1,LG2を利用した施工目標位置PTへの誘導手順について説明する。
図25は、本発明に係る第1走行線LS1と旋回円Ctを利用した施工目標位置への誘導手順を示す説明図である。なお、施工目標位置PTと地盤改良機200との位置関係は初め、図20(a)の状態にあるものとする。また、実線の矢印は見かけの移動方向を表し、点線の矢印は実際の移動方向を表しているものとする。
図25(a)に示されるように、オペレータは本体20を図上時計方向に旋回させて、クローラ装置10の走行方向(第1走行線LS1)をX軸方向と平行になるように設定する。この場合、本体20は見かけ上静止し、クローラ装置10と施工目標位置PTは、相対位置関係を保持したまま見かけ上旋回中心PCtの回りを旋回する。
図25(b)に示されるように、第1走行線LS1がX軸方向と平行になる場合、オペレータは本体20の旋回動作を停止し、地盤改良機200を図上左方向の-X方向に沿ってクローラ走行させる。この場合、施工目標位置PTが、図上右方向の+X方向に沿って見かけ上相対移動する。
施工目標位置PTの中心が旋回円Ct上に位置するときに、オペレータはクローラ走行を停止し、本体20の旋回動作に切り替える。オペレータは本体20を図上反時計方向に旋回させる。
図25(c)に示されるように、オペレータが本体20を図上反時計方向に旋回させる場合、施工目標位置PTは旋回円Ctに沿って図上時計方向に見かけ上相対移動し、終いには現在の杭芯先端位置P3’に重なるようになる。
このように、クローラ装置10の走行方向を示す第1走行線LS1を利用することにより、オペレータは施工目標位置PTを旋回円Ct上に乗せることが容易となる。施工目標位置PTを旋回円Ctに乗せた後は図20に示される誘導手順によって現在の杭芯先端位置P3’を施工目標位置PTにスムーズに一致させることが可能となる。
なお、上記例では第1走行線LS1がX軸方向と平行になるように、オペレータは本体20を旋回させたが、施工目標位置PTの並びを示す上記第1ガイド線LG1、或いは「現在の杭芯先端位置P3’」と「施工目標位置PT」とを結ぶ第2ガイド線LG2と平行になるように地盤改良機200を旋回させて、現在の杭芯先端位置P3’を施工目標位置PTに一致させることも可能である。以下にこれらについて説明する。
図26は、本発明に係る第1走行線LS1、第1ガイド線LG1及び旋回円Ctを利用した施工目標位置PTへの誘導手順を示す説明図である。なお、第1ガイド線LG1は「施工目標位置PTの中心」と「直前の施工済み位置PT’の中心」とを通るガイド線である。
図26(a)に示されるように、オペレータは例えば地盤改良機200を図上左方向に旋回させて、クローラ装置10の走行方向(第1走行線LS1)を第1ガイド線LG1と平行になるように設定する。この場合、地盤改良機200は見かけ上静止し、施工目標位置PTと直前の施工済み位置PT’と第1ガイド線LG1は、地盤改良機200の旋回方向と逆方向に見かけ上相対移動する。
図26(b)に示されるように、オペレータはクローラ装置10の走行方向(第1走行線LS1)が第1ガイド線LG1と平行になるときに、地盤改良機200の旋回移動を停止する。この場合、施工目標位置PTが現在の杭芯先端位置P3’よりも図上下側に位置しているため、オペレータは地盤改良機200を-Y方向に後進移動させることになる。地盤改良機200が-Y方向に後進移動する場合、施工目標位置PTが、第3ガイド線L3に沿って図上上側(+Y方向)に見かけ上相対移動する。
図26(c)に示されるように、施工目標位置PTの中心が旋回円Ct上に位置するときに、オペレータは地盤改良機200の後進移動を停止し、本体20の旋回動作に切り替える。オペレータが本体20を図上時計方向に旋回させる場合、施工目標位置PTが旋回円Ctに沿って図上反時計方向に見かけ上相対移動し、終いには施工目標位置PTが現在の杭芯先端位置P3’に重なるようになる。
以上、図26に示される通り、クローラ装置10の走行方向を示す第1走行線LS1を、「施工目標位置PTの中心」と「直前の施工済み位置PT’の中心」とを通る第1ガイド線LG1に平行となるように地盤改良機200を旋回させて、次にクローラ装置10を前進/後進移動させて施工目標位置PTを旋回円Ct上に乗せ、そして本体20を旋回中心PCtの回りに旋回させることにより、現在の杭芯先端位置P3’を施工目標位置PTにスムーズに効率良く一致させることが可能となる。
なお、上記誘導手順は、第1走行線LS1に代えて第1走行線LS1と平行関係にある第2走行線LS2を利用しても同様に実施することができる。
図27は、本発明に係る第1走行線LS1、第2ガイド線LG2及び旋回円Ctを利用した施工目標位置PTへの誘導手順を示す説明図である。なお、第2ガイド線LG2は、「現在の杭芯先端位置P3’」と「施工目標位置PTの中心」とを通るガイド線である。
図27(a)に示されるように、オペレータは例えば本体20を図上反時計方向に旋回させて、クローラ装置10の走行方向(第1走行線LS1)を第2ガイド線LG2と平行になるように設定する。本体20が図上反時計方向に旋回する場合、施工目標位置PT及びクローラ装置10は見かけ上旋回中心PCtの回りを図上時計方向に旋回する。
図27(b)に示されるように、オペレータはクローラ装置10の走行方向(第1走行線LS1)が第2ガイド線LG2と平行になるときに、本体20の旋回動作を停止し、クローラ装置10を前進移動させる。この場合、施工目標位置PTが、第2ガイド線L2に沿って図上斜め左方向に見かけ上相対移動する。第1走行線LS1と第2ガイド線LG2の平行状態が維持される場合、施工目標位置PTはやがて現在の杭芯先端位置P3’に重なることになる。
しかしながら、第1走行線LS1と第2ガイド線LG2の平行状態が保持されない場合は、図27(c)に示されるように、オペレータはクローラ装置10を前進させて施工目標位置PTの中心を旋回円Ct上に乗せる。その後は、旋回中心PCtを中心として本体20を図上時計方向に旋回させることにより、現在の杭芯先端位置P3’が施工目標位置PTに重なることになる。
以上、図27に示される通り、クローラ装置10の走行方向を示す第1走行線LS1を、「施工目標位置PTの中心」と「現在の杭芯先端位置P3’」とを通る第2ガイド線LG2に平行となるように本体20を旋回させて、次にクローラ装置10を前進/後進移動させて施工目標位置PTを旋回円Ct上に乗せ、そして本体20を旋回中心PCtの回りに旋回させることにより、現在の杭芯先端位置P3’を施工目標位置PTにスムーズに効率良く一致させることが可能となる。
以上の通り、第2実施形態および第3実施形態に係る地盤改良機用施工位置誘導システム100によれば、本体20の旋回中心PCtから現在の杭芯先端位置P3’に到る距離を半径Rtとする旋回円Ctを表示画面107aに表示させることにより、オペレータはクローラ装置10の前進/後進移動と本体20の旋回動作を組み合わせて、現在の杭芯先端位置P3’を施工目標位置PTにスムーズに効率よく誘導させることが可能となる。
また、上記旋回円Ctに加えて、上記クローラ装置10の走行方向を示す第1走行線LS1と、第1走行線LS1に平行で「現在の杭芯先端位置P3’」を通る第2走行線LS2と、「施工目標位置PTの中心」と「直前の施工済み位置PT’の中心」とを通る第1ガイド線LG1と、「現在の杭芯先端位置P3’」と「施工目標位置PTの中心」とを通る第2ガイド線LG2との内の全部又は一部を表示画面107aに表示させることにより、オペレータは施工目標位置PTを上記旋回円Ctに容易に乗せることが可能となる。これにより、よりスムーズに効率よく現在の杭芯先端位置P3’を施工目標位置PTに誘導させることが可能となる。