JP7040496B2 - 電子顕微鏡における試料観察方法、電子顕微鏡用画像解析装置、電子顕微鏡および電子顕微鏡用画像解析方法 - Google Patents

電子顕微鏡における試料観察方法、電子顕微鏡用画像解析装置、電子顕微鏡および電子顕微鏡用画像解析方法 Download PDF

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Description

本発明は、電子顕微鏡における試料観察方法、電子顕微鏡用画像解析装置、電子顕微鏡および電子顕微鏡用画像解析方法に関する。
電子顕微鏡は試料表面の微細な形態観察に用いられる。電子線(一次電子線)を試料に照射すると、試料から高エネルギーの反射電子と低エネルギーの二次電子が発生する。反射電子は脱出深さが比較的深いため試料の組成や結晶方位情報を多く含んでおり、また、二次電子は脱出深さが浅いため試料表面の凹凸情報を多く含んでおり、それぞれ反射電子検出器、二次電子検出器によって反射電子像および二次電子像(反射電子像と二次電子像をまとめてSEM像と称することもある)として取得することができる。しかし、反射電子はエネルギーが高いため、電子顕微鏡内で散乱する。その結果、対物レンズ等の電子顕微鏡構成体に衝突した反射電子によって励起される二次電子が二次電子検出器に検出されることがあるため、二次電子像には反射電子に起因する情報が含まれる。
近年、試料からの本来の二次電子の信号のみを正確に検出することを目的として、走査電子顕微鏡(SEM)の検出器およびその幾何学的配置には装置毎に様々な工夫がなされるようになった。例えば特許文献1では、二次電子検出器の先端あるいは近傍に正または負の電圧をかけることのできる電極を設け、電極にかける電圧により試料より生じた純粋な二次電子信号と反射電子により生じた二次的な二次電子信号を区別することのできる技術が開示されている。また、加速電圧及び試料と対物レンズの距離(WD)を制御することで、反射電子像から様々な試料情報を切り分けて取得できることが非特許文献1に示されている。このように、検出器の工夫および観察条件の工夫により、SEM観察では各検出器に到達する電子の種類を正確に切り分け、観察目的に応じ様々な像を取得することができる。
特開平6-267484号公報
青山ら、鉄と鋼、96巻(2010)、P654-658
ところで、電子線が照射された試料からは、上記の反射電子や二次電子以外に、特性X線も発生する。この特性X線をX線検出器で検出することにより、試料表面に含まれる元素の種類と濃度およびこれらの分布(面分析)を、SEM像と対応させながら測定することができる。X線検出器には大きく分けて、半導体結晶を用いたエネルギー分散型X線検出器と、分光結晶を用いた波長分散型X線検出器とがあり、前者はおもにSEMに、後者はおもに電子線マイクロアナライザー(EPMA)に搭載されている。
SEMやEPMAで特性X線による元素分析を行う際は、特性X線の励起電圧以上の加速電圧(多くの場合7kV以上)とし、さらに試料と特性X線検出器の幾何学的配置から決まるX線の集光条件とするために、WDを装置によって推奨される位置に固定して測定する必要がある。特に、EPMAではX線検出器に対する試料の高さ方向をμm単位で正確に合わせる必要がある。加えて元素分析の定量性を重視する場合には、試料表面を研磨等で平滑にする必要もある。
以上のような元素分析条件の制約があるため、特性X線による元素分析を行う場合は非特許文献1を用いることはできない。その結果、特性X線による元素分析で観察した二次電子像から反射電子像の信号を切り分けることができないばかりか、試料表面が平滑であるため二次電子像の凹凸コントラストが弱く、コントラストを強調すると、反射電子像と類似の像になってしまい、元素が試料内のどのような構造に一致するのかが不明であるという問題があった。また、元素分析の前に、非特許文献1の方法でX線分析した位置のSEM像(二次電子像と反射電子像を総称してSEM像と呼ぶ)を取得しても、元素分析の条件に合わせて加速電圧やWD等の光学条件の変更を伴うため、煩雑な光軸調整が必要であった。また、光学条件を変更すると視野が移動するため、平滑な試料では同一視野を探して視野ずれをμmレベルで正確に合わせこむことは困難であった。また、元素分析の後では、電子線照射に伴うカーボン汚れ(コンタミネーション)が試料表面に付着するため鮮明なSEM像を取得することは困難であった。
一方、特許文献1に記載の方法では、二次電子検出器の先端あるいは近傍に電極を設ける必要がある。特許文献1に記載の方法で元素分析を行う場合は試料とX線検出器の間に遮蔽物がないようにするため、反射電子検出器および二次電子検出器と電極の位置も制約を受ける。そのため、二次電子と反射電子の分離検出は困難であった。
本発明は、新たな電子検出器の搭載や検出器位置の変更を行うことなく、元素分析と同じ条件で取得した二次電子強度と反射電子強度を用いて画像解析し、組織の微細構造を反映した画像を得ることができる、電子顕微鏡における試料観察方法、電子顕微鏡用画像解析装置、電子顕微鏡および電子顕微鏡用画像解析方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、新たな電子検出器の搭載や検出器位置の変更を行うことなく、元素分析と同じ条件で取得した二次電子像から反射電子の影響を除去する方法について鋭意検討した。
二次電子像と反射電子像のコントラストが類似する理由は、試料からの反射電子により副次的に発生する電子顕微鏡構成体からの二次電子が、試料からの本来の二次電子とともに検出されるためである。そこでまず画像処理を行って本来の二次電子像を推定することを試みた。二次電子検出器で検出した電子が試料からの二次電子と対物レンズ等のSEM構成体からの二次電子の両方を含む場合、二次電子像と反射電子像の差分で試料から本来の二次電子像を再構成できる可能性がある。しかしながら、二次電子像と反射電子像は独立にコントラストを調整しているため、単純な差分では二次電子像から反射電子像のコントラストをキャンセルすることができない。ここで、一方の画像に必要に応じて適当な係数をかけ、さらに適当な定数を加算し、画像の輝度とコントラストを同等に調整した上で差分を取ることが一つの解決策である。しかしながら、SEM像の輝度およびコントラストは、試料および測定機会毎に調整して取得することが常套であるため、測定機会ごとに係数を変える必要があり、この策では実用には適さない。
本発明者らはさらに検討を進め、反射電子像と二次電子像のコントラストが類似していることに着目し、反射電子像と二次電子像の画像コントラストデータ(それぞれを、反射電子強度、二次電子強度とも称することがある。)に多変量統計解析の一手法である主成分分析を適用することを想到した。すなわち、縦横がM×N画素の反射電子像および二次電子像を、反射電子強度と二次電子強度の2次元の自由度を持つM×N個のデータの集まりとみなし、このM×N個のデータの集合に主成分分析を適用することを試みた。
一例として図1(a)に、SEM観察(加速電圧:7kV、WD:11mm))における焼戻マルテンサイトを主相とし試料表面を鏡面研磨した変態誘起塑性鋼板(TRIP鋼板)の反射電子像と二次電子像を示す。この視野の画素数をM×N画素とし、任意の画素ijにおける反射電子像のコントラストをIBij、二次電子像のコントラストをISijとすると、この視野全体では、図1(b)のように、M×N個の2次元ベクトル(IBij,ISij)の集合が得られる。ここで、i=1、2、・・・、M、j=1、2、・・・、Nである。
この集合の各二次元ベクトルを、反射電子像のコントラストIをX軸、二次電子像のコントラストIをY軸とする平面にプロットすると、図2(a)に示す散布図が得られる。反射電子像と二次電子像のコントラストが類似しているため、分散はランダムではなく右肩上がりの相関を示す。このM×N個の2次元ベクトルの集合に多変量統計解析の1つである主成分分析を施した結果、図2(b)に示す第一主成分軸((IBij,ISij)の分散が最大)とこれに直交する第2主成分軸が得られた。図2(b)において、第一主成分は反射電子強度と二次電子強度が相関する成分であり、第2主成分は反射電子強度と二次電子強度が独立な(相関がない)成分であることを意味する。
図1(b)のSEM観察により得られる反射電子強度と二次電子強度の二次元データによるM×N個のデータ集合について、画素ijにおける第一主成分の因子負荷量a1ijおよび第二主成分の因子負荷量a2ijを求めると、図3(a)に示すようなM×N個のデータから構成される第一および第二主成分の因子負荷量の2次元ベクトル(a1ij,a2ij)の集合が得られる。これら各M×N個のa1ijとa2ijを、元の視野の画素に対応させて並べた画像を図3(b)に示す(第1主成分の因子負荷量a1ijによる画像を第1主成分像、第2主成分の因子負荷量a2ijによる画像を第2主成分像と称することとする)。
図3(b)の第一主成分像は反射電子像と類似の像であるのに対し、第二主成分像は元の反射電子像とも二次電子像とも異なる全く新しい像であることがわかった。この第二主成分像には、画像の左側から斜め右下方に走る試料表面研磨の過程で生じた研磨疵が、元の二次電子像に比べて明瞭に確認できる。さらに、試料の微細組織の粒界に対応する僅かな段差が明瞭になり、元の二次電子像に比べて微細組織が明瞭となった。第二主成分像は、反射電子強度と二次電子強度が相関しない成分で構成されることを考慮すると、第二主成分像は二次電子像から反射電子の影響を取り除いた画像に相当すると考えられる。
本発明は、以上の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1]反射電子検出器と二次電子検出器を有する電子顕微鏡における試料観察方法であって、
試料表面の任意の領域を一次電子線で走査する一次電子線走査工程と、
前記領域のM×N画素の反射電子像を取得する反射電子像取得工程と、
前記領域のM×N画素の二次電子像を取得する二次電子像取得工程と、
前記反射電子像と前記二次電子像において、同一画素ijの反射電子像のコントラストIBijと二次電子像のコントラストISijを成分とするM×N個の2次元ベクトル(IBij,ISij)の集合(ここで、i=1、2、・・・、M、j=1、2、・・・、N)に対して多変量統計解析を行い、第一主成分の因子負荷量a1ijと第二主成分の因子負荷量a2ijを求める試料の観察画像演算工程と、
第一主成分の因子負荷量a1ijと第二主成分の因子負荷量a2ijをM×N画素の画像として表示する試料の観察画像表示工程と、
を含む電子顕微鏡における試料観察方法。
[2]反射電子検出器と二次電子検出器を有する電子顕微鏡用画像解析装置であって、
電子顕微鏡で撮像された同一領域におけるM×N画素の反射電子像と二次電子像において、同一画素ijの反射電子像のコントラストIBijと二次電子像のコントラストISijを成分とするM×N個の2次元ベクトル(IBij,ISij)の集合(ここで、i=1、2、・・・、M、j=1、2、・・・、N)に対して多変量統計解析を行い、第一主成分の因子負荷量a1ijと第二主成分の因子負荷量a2ijを求める画像演算部と、
第一主成分の因子負荷量a1ijと第二主成分の因子負荷量a2ijをM×N画素の画像として表示する画像表示部と、
を含む電子顕微鏡用画像解析装置。
[3][2]に記載の電子顕微鏡用画像解析装置を有する電子顕微鏡。
[4]さらに、特性X線検出装置を有する[3]に記載の電子顕微鏡。
[5]前記特性X線検出装置は、波長分散型X線検出装置である[4]に記載の電子顕微鏡。
[6]反射電子像と二次電子像を用いる電子顕微鏡用画像解析方法であって、
電子顕微鏡で撮像された同一領域におけるM×N画素の反射電子像と二次電子像において、同一画素ijの反射電子像のコントラストIBijと二次電子像のコントラストISijを成分とするM×N個の2次元ベクトル(IBij,ISij)の集合(ここで、i=1、2、・・・、M、j=1、2、・・・、N)に対して多変量統計解析を行い、第一主成分の因子負荷量a1ijと第二主成分の因子負荷量a2ijを求める画像演算工程と、
第一主成分の因子負荷量a1ijと第二主成分の因子負荷量a2ijをM×N画素の画像として表示する画像表示工程と、
を含む電子顕微鏡用画像解析方法。
本発明によって、新たな電子検出器の搭載や検出器位置の変更を行うことなく、元素分析で取得した二次電子像と反射電子像の強度データを多変量統計解析することにより、反射電子の影響を取り除いた組織画像(第2主成分像)を得ることができる。この結果、元素分析結果、とくに面分析結果と試料組織との詳細な対応付が容易となり、研究開発、出荷検査、トラブル解析等に極めて有益な情報を提供できる。
図1は、SEM観察により得られる情報を示す図であり、図1(a)は反射電子像と二次電子像の画像であり、図1(b)は得られた反射電子強度と二次電子強度の二次元データによるM×N個のデータ集合を表す説明図である。 図2(a)は、SEM観察により得られた反射電子強度と二次電子強度の各二次元ベクトルをプロットした散布図であり、図2(b)は反射電子強度と二次電子強度の二次元データによるM×N個のデータ集合を主成分分析した結果を示す図である。 図3(a)は、主成分分析により得られる第一および第二主成分の因子負荷量の2次元ベクトルの集合を示す説明図であり、図3(b)は主成分分析による第一主成分成分像と第二主成分像を示す画像である。 図4は、本発明の画像解析装置を有する電子顕微鏡を示す模式図である。 図5は、実施例1におけるEPMAでの炭素マッピングの結果を示す画像であり、図5(a)は炭素マップ、反射電子像および二次電子像を示す画像であり、図5(b)は、反射電子像と二次電子像から求めた第一主成分像と第二主成分像を示す画像である。 図6は、実施例2におけるEPMAでの炭素マッピングの結果を示す画像であり、図6(a)は炭素マップ、反射電子像および二次電子像を示す画像であり、図6(b)は、反射電子像と二次電子像から求めた第一主成分像と第二主成分像を示す画像であり、図6(c)は図6(a)の二次電子像から反射電子像を引く画像処理を行った結果である。 図7は、実施例3におけるSEM観察から得られた画像であり、図7(a)は反射電子像および二次電子像を示す画像であり、図7(b)は図7(a)の反射電子像と二次電子像から求めた第一主成分像と第二主成分像を示す画像である。
図4は、本発明の画像解析装置を有する電子顕微鏡を示す模式図である。なお、図4は本発明の画像解析装置を有する電子顕微鏡の一実施形態であり、図4の実施形態に限定されない。
本発明の電子顕微鏡1は、反射電子検出器と二次電子検出器を有するものを対象とし、さらに、(一次)電子線を試料Sに照射後、反射電子検出器と二次電子検出器の信号を収集、処理し、画像表示するための信号収集・処理部3を有する。電子顕微鏡1としては、例えば走査電子顕微鏡や電子線マイクロアナライザーなどを挙げることができる。
以下、図4を用いて、本発明の試料観察方法について詳細に説明する。
(一次電子線走査工程)
電子銃11から出射した一次電子線18を、集束レンズ12および対物レンズ14により試料Sの表面で集束させると、一次電子線照射位置から反射電子19(実線)と二次電子20(点線)が放出される。反射電子の一部は、対物レンズ等の電子顕微鏡の構成体に衝突して副次的に二次電子21が発生する。電子顕微鏡1では、一次電子線を走査コイル13で試料上の観察対象領域を走査しながら、あるいは試料Sを固定した試料ステージ17を走査しながら、試料Sの観察領域に一次電子線18を照射する。
(反射電子像取得工程および二次電子像取得工程)
同一視野(同一領域)の反射電子と二次電子を同一倍率で、それぞれ反射電子検出器15および二次電子検出器16で逐次取得し、電気信号強度に変換して信号収集・処理部3の信号解析部31に格納する。反射電子像と二次電子像は完全に同一位置で取得するために、同時に取得することがより好ましいが、視野がずれなければ必ずしも同時でなくともよい。このとき、二次電子は試料からの二次電子20以外に電子顕微鏡の構造体からの二次電子も二次電子検出器16に逐次収集される。また、元素分析を行う場合は、反射電子や二次電子の取得を特性X線の取得と同時に行ってもよく、電子顕微鏡1は特性X線検出装置22を備えても良い。特性X線検出装置22において、試料から検出した特性X線23を電気信号強度に変換して信号収集・処理部3の信号解析部31に格納する。なお、特性X線23の電気信号強度は、(図示しない)別の信号収集・処理部の信号解析部に格納された後、後述する画像解析装置4の画像演算部41にデータを転送して画像解析を行ってもよい。また、特性X線検出装置22は、波長分散型X線検出装置であることが好ましい。
次に、信号解析部31では、逐次取り込んだ電気信号を画像表示部32の各表示画素に対応させて、同一画素ijの反射電子コントラストIBijおよび二次電子コントラストISijに変換する。ここで、i、jは画素番号で、i=1、2、・・・、M、j=1、2、・・・、Nである。これらM×N個の画素のコントラストデータを、(i,j)=(1,1)から順に(M,N)画素まで並べて画像表示部32に表示することにより、図1(a)に示すような、電子顕微鏡1で撮像された反射電子像および二次電子像を得ることができる。画像表示を行うにあたり、256階調あるいは別の階調に変換してモニター上に表示することができる。
(観察画像演算工程および観察画像表示工程)
本発明では、さらに信号収集・処理部3から上記のM×N個の反射電子コントラストデータIBijおよび二次電子コントラストデータISijを、画像解析装置4の画像演算部41に転送して画像解析を行う。画像演算部41では、反射電子コントラストおよび二次電子コントラストを成分とするM×N個の2次元ベクトル(IBij,ISij)(ここで、i=1、2、・・・、M、j=1、2、・・・、N)の集合に対して多変量統計解析を行う。多変量統計解析では計算コストの観点から主成分分析を用いることが望ましいが、その他の手法、例えば独立成分分析や非負値行列因子分解を用いることもできる。次いで、M×N個の2次元ベクトル(IBij,ISij)のそれぞれについて、第一主成分の因子負荷量a1ijと第二主成分の因子負荷量a2ijを求める。これらM×N個の(a1ij,a2ij)を(i,j)=(1,1)から順に(M,N)画素まで並べて、M×N画素の画像として画像表示部42に表示することにより、図3(b)に示すような第一主成分像および第二主成分像を得ることができる。なお、図4においては画像表示部32と画像表示部42が別の場合を示したが、画像表示部32と画像表示部42は同じ画像表示部であっても構わない。
炭素を0.2mass%含有する焼戻し処理した低合金鋼(基地相が焼戻しマルテンサイト組織)について、EPMAを用いて炭素のマッピング分析を行いながら、反射電子像および二次電子像を同時に取得した。試料調整は、断面が観察面となるよう導電性樹脂に埋込んだ後、ダイヤモンドペースト、次いでアルミナ懸濁液を用い鏡面に仕上げた。試料分析および観察条件は、加速電圧7kV、照射電流量50nAとし、画素数を256×256とした。得られた炭素マップ(明るいほど分布濃度が高い)、反射電子像および二次電子像を図5(a)に示す。反射電子像と二次電子像は類似のコントラストを持っていた。一方、炭素マップは、反射電子像と二次電子像のいずれのコントラストとも完全に対応しなかった。次いで、図5(a)の反射電子像と二次電子像に対して主成分分析を行い、第一主成分像と第二主成分像を得た。その結果を図5(b)に示す。第二主成分像のコントラストと炭素マップの分布境界は対応していることがわかった。図5(b)の第二主成分像の結果から、この試料において、炭素はマルテンサイト下部組織の粒界に沿って濃化していることがわかった。
炭素を0.2mass%含有し、残留オーステナイト相を含むTRIP鋼板について、EPMAを用いて炭素のマッピング分析を行いながら、反射電子像及び二次電子像を同時に取得した。試料調整は、実施例1と同様に行った。試料分析および観察条件は、加速電圧7kV、照射電流量50nAとし、画素数を256×256とした。得られた炭素マップ、反射電子像および二次電子像を図6(a)に示す。反射電子像と二次電子像は類似のコントラストを持っていた。一方、炭素マップは、反射電子像と二次電子像のいずれのコントラストとも完全に対応しなかった。次いで、図6(a)の反射電子像と二次電子像に対して主成分分析を行い、第一主成分像と第二主成分像を得た。その結果を図6(b)に示す。図6(a)の炭素マップにおける輝度の高い組織は、別途電子線後方散乱回折(EBSD)を用いた結晶相解析で残留オーステナイト相と焼入マルテンサイト相であることがわかった。第二主成分像で輝度の低い組織は、炭素マップで輝度の高い組織と一致したことから、第二主成分像は残留オーステナイト相と焼入マルテンサイト相の分布を示す像であることがわかった。第二主成分像にはさらに結晶粒界の情報も含まれており、残留オーステナイト相および焼入マルテンサイト相が母相の結晶粒界に沿って存在することが第二主成分像よりわかった。また、SEM信号から構成される第二主成分像は、特性X線信号を用いた炭素マップよりも精細であり、空間分解能の観点でも元素マップとの対比が有用であるといえる。
比較例である図6(c)は、図6(a)の二次電子像から反射電子像を引く画像処理を行ったものである。各画像のコントラストが異なるため、単純な減算処理では二次電子像に含まれる反射電子像の成分がキャンセルしきれず、炭素マップとは相関しない画像となった。また、残留オーステナイトの認識も困難であった。
炭素を0.2mass%含有し、残留オーステナイト相を含むTRIP鋼板について、倍率:50000倍でSEM観察した後、倍率を5000倍に下げて再び反射電子像及び二次電子像を同時に取得した。試料調整は、断面が観察面となるよう導電性樹脂に埋込んだ後、ダイヤモンドペーストを用いて鏡面に仕上げた後ナイタールで組織を腐食した。試料観察条件は、加速電圧15kV、WD15mmとし、画素数は1024×768とした。得られた反射電子像および二次電子像を図7(a)に示す。二次電子像の視野中央部に矢印で示すかすかに暗いコントラストの領域は、高倍率で観察した際に生成したコンタミネーションである。次いで、図7(a)の反射電子像と二次電子像に対して主成分分析を行い、第一主成分像と第二主成分像を得た。その結果を図7(b)に示す。図7(a)の二次電子像では弱かったコンタミネーションのコントラストが、図7(b)の第二主成分像では明瞭に観察された。SEM像を主成分分析することにより、試料表面の情報を強く反映した像が得られることがわかった。
1 電子顕微鏡
11 電子銃
12 集束レンズ
13 走査コイル
14 対物レンズ
15 反射電子検出器
16 二次電子検出器
17 試料ステージ
18 入射電子線(一次電子線)
19 試料からの反射電子
20 試料からの二次電子
21 電子顕微鏡構成体からの二次電子
22 特性X線検出装置
23 特性X線
3 信号収集・処理部
31 信号解析部
32 画像表示部
4 画像解析装置
41 画像演算部
42 画像表示部
S 試料

Claims (6)

  1. 反射電子検出器と二次電子検出器を有する電子顕微鏡における試料観察方法であって、
    試料表面の任意の領域を一次電子線で走査する一次電子線走査工程と、
    前記領域のM×N画素の反射電子像を取得する反射電子像取得工程と、
    前記領域のM×N画素の二次電子像を取得する二次電子像取得工程と、
    前記反射電子像と前記二次電子像において、同一画素ijの反射電子像のコントラストIBijと二次電子像のコントラストISijを成分とするM×N個の2次元ベクトル(IBij,ISij)の集合(ここで、i=1、2、・・・、M、j=1、2、・・・、N)に対して多変量統計解析を行い、第一主成分の因子負荷量a1ijと第二主成分の因子負荷量a2ijを求める試料の観察画像演算工程と、
    第一主成分の因子負荷量a1ijと第二主成分の因子負荷量a2ijをM×N画素の画像として表示する試料の観察画像表示工程と、
    を含む電子顕微鏡における試料観察方法。
  2. 反射電子検出器と二次電子検出器を有する電子顕微鏡用画像解析装置であって、
    電子顕微鏡で撮像された同一領域におけるM×N画素の反射電子像と二次電子像において、同一画素ijの反射電子像のコントラストIBijと二次電子像のコントラストISijを成分とするM×N個の2次元ベクトル(IBij,ISij)の集合(ここで、i=1、2、・・・、M、j=1、2、・・・、N)に対して多変量統計解析を行い、第一主成分の因子負荷量a1ijと第二主成分の因子負荷量a2ijを求める画像演算部と、
    第一主成分の因子負荷量a1ijと第二主成分の因子負荷量a2ijをM×N画素の画像として表示する画像表示部と、
    を含む電子顕微鏡用画像解析装置。
  3. 請求項2に記載の電子顕微鏡用画像解析装置を有する電子顕微鏡。
  4. さらに、特性X線検出装置を有する請求項3に記載の電子顕微鏡。
  5. 前記特性X線検出装置は、波長分散型X線検出装置である請求項4に記載の電子顕微鏡。
  6. 反射電子像と二次電子像を用いる電子顕微鏡用画像解析方法であって、
    電子顕微鏡で撮像された同一領域におけるM×N画素の反射電子像と二次電子像において、同一画素ijの反射電子像のコントラストIBijと二次電子像のコントラストISijを成分とするM×N個の2次元ベクトル(IBij,ISij)の集合(ここで、i=1、2、・・・、M、j=1、2、・・・、N)に対して多変量統計解析を行い、第一主成分の因子負荷量a1ijと第二主成分の因子負荷量a2ijを求める画像演算工程と、
    第一主成分の因子負荷量a1ijと第二主成分の因子負荷量a2ijをM×N画素の画像として表示する画像表示工程と、
    を含む電子顕微鏡用画像解析方法。
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