以下、実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
以下の説明においては、3種類の座標系を設定する。第1の座標系は、立体表示装置を設置する空間に対応付けられた3次元直交座標である。この3次元直交座標系においては、水平面の所定方向をx軸方向、水平面においてx軸方向と直交する方向をz軸方向とする。x軸方向及びz軸方向いずれとも直交する鉛直方向をy軸方向とする。ここで、x軸方向が第1の座標軸の方向である。また、x軸の方向が、観察者の左眼と右眼の並ぶ方向(第1の方向)とする。
第2の座標系は、立体表示装置が具備する裸眼立体ディスプレイに対応付けられた3次元直交座標である。この3次元直交座標系においては、裸眼立体ディスプレイの表示面を含む平面に沿ってx11軸とz11軸方向とが直交し、裸眼立体ディスプレイの厚さ方向をy11軸方向とする。
第3の座標系は、立体表示装置が具備する空間結像素子に対応付けられた3次元直交座標である。この3次元直交座標系においては、空間結像素子の一方ないし他方の面を含む平面に沿ってx12軸方向とz12軸方向とが直交し、空間結像素子の厚さ方向をy12軸方向とする。なお、すべての座標系は、平面や断面で記述する場合、黒く塗りつぶした円は、紙面手前から紙面奥に向かう方向を示し、円の中心に黒く塗りつぶした円は、紙面奥から紙面手前に向かう方向を示す。
ここで、裸眼立体ディスプレイと空間結像素子との配置を説明するために用いる第1の仮想線から第4の仮想線について定義する。第1の仮想線及び第2の仮想線は、空間結像素子の一方ないし他方の面において、面内で直交する2つの仮想線である。第1の仮想線はz12軸方向に延伸し、第2の仮想線はx12軸方向に延伸する。第3の仮想線及び第4の仮想線は、裸眼立体ディスプレイの表示面において、表示面の面内で直交する2つの仮想線である。第3の仮想線はz11軸方向に延伸し、第4の仮想線はx11軸方向に延伸する。
(実施の形態1)
図1は立体表示装置1の構成を示す説明図である。図1においては、左眼位置EL及び右眼位置ERとして、観察者の両眼位置の一例を示す。立体表示装置1は裸眼立体ディスプレイ(投影器)11と、空間結像素子(光学素子)12と、傾斜支持部(支持器)13とを含む。裸眼立体ディスプレイ11は、xz平面Pxzに対して、x軸方向に角度θで傾斜するように、傾斜支持部13によって保持されている。空間結像素子12は、裸眼立体ディスプレイ11のy軸方向上方に配置される。空間結像素子12は、xz平面に射影すると第1の仮想線と第3の仮想線は重なり、第2の仮想線と第4の仮想線が重なるように、xz平面Pxzに対して、z軸方向に角度αで傾斜するように配置される。空間結像素子12の一方の面12Pa側に裸眼立体ディスプレイ11が配置され、空間結像素子12の他方の面12Pb側に観察者が位置する。
裸眼立体ディスプレイ11は、液晶表示装置などの表示パネル11aと、表示パネルに取付けられるレンチキュラレンズ又はパララックスバリアなどの光学手段(光学部品)とを含む。本実施の形態では、当該光学手段として、レンチキュラレンズ11bを採用する。
図2は裸眼立体ディスプレイ及び表示パネルの構成を示す説明図である。図2Aは、裸眼立体ディスプレイ11の斜視図である。図2Aに示すように、裸眼立体ディスプレイ11に用いる表示パネル11aは、左眼用画素11Lと右眼用画素11Rとを含む。左眼用画素11Lは左眼用の画像を表示する。右眼用画素11Rは右眼用の画像を表示する。左眼用画素11Lと右眼用画素11Rとは、x11軸方向に交互に配列されている。また、レンチキュラレンズ11bは、板状の部材である。レンチキュラレンズ11bの一面は平面である。レンチキュラレンズ11bの他面は、短辺方向に延伸した半円柱状のシリンドリカルレンズが長辺方向に沿って複数設けられている。レンチキュラレンズ11bは、図2Aに示すように配置される。すなわち、レンチキュラレンズ11bの一面は、表示パネル11aに対向する。レンチキュラレンズ11bのシリンドリカルレンズは、z11軸方向に延伸する。また、複数のシリンドリカルレンズは、x11軸方向に配列される。
図2Bは、裸眼立体ディスプレイ11を構成する表示パネル11aのx11z11平面図である。図2Bに示すように、裸眼立体ディスプレイ11に用いる表示パネル11aには、単位画素11Pがx11軸方向とz11軸方向にマトリクス状に配置されている。単位画素11Pは、左眼用画素11Lと右眼用画素11Rとで構成される。なお、レンチキュラレンズ11bは、表示パネル11aに対抗する面にレンズ面が配置された構成としてもよい。また、光学手段はレンチキュラレンズ11bに限らず、フライアイレンズ、パララックスバリア又はプリズムシート等の光を分離可能な様々な光学素子を用いることができる。また、光学手段は、例えば液晶を用いたGRIN(Gradient Index)レンズ、レンズ効果を有する凹凸基板と液晶分子とを組み合わせた液晶レンズ又は液晶を用いたスイッチングパララックスバリア等を用いることもできる。
空間結像素子12は、裸眼立体ディスプレイ11に表示された画像を空間中に結像させ、空中浮遊像を形成する平板状をなす光学部品である。この空間結像素子12として、例えば、特許文献1に開示された実鏡映像結像光学系を採用することが可能である。
図3は空間結像素子91の構造を模式的に説明する図である。図3Aは、空間結像素子91のx12z12平面図であり、図3Bは、空間結像素子91のB部の部分拡大斜視図である。図3Aに示した空間結像素子91は、x12軸方向とz12軸方向に平面的な広がりを有している。当該平面には一方の面から他方の面(または他方の面から一方の面)に光を透過する菱形状の単位光学素子91aが多数設けられている。単位光学素子91aは、x12軸方向とz12軸方向とに配列されている。ここで、図3BのB部の部分拡大斜視図を説明するために、3次元直交座標系uvwを設定する。3次元直交座標系uvwは、v軸とy12軸は同じであり、uw平面はx12z12と平行な平面である。u軸及びw軸は、y12軸を回転軸として45度回転している。図3Bに示したように、空間結像素子91は、v軸方向に厚みを有している。各単位光学素子91aは、互いに直交した内壁面がv軸方向に形成されている。当該内壁面の夫々は鏡面処理が施されている。
また、空間結像素子として、他の構成のものを用いることも可能である。図4は別の空間結像素子92の構成を示す説明図である。図4Aは、空間結像素子92のx12z12平面図であり、図4Bは、部分拡大斜視図である。図4Aに示すように、図3の空間結像素子91と同様に、空間結像素子92は、x12軸方向とz12軸方向に平面的な広がりを有している。ここで、図4BのB部の拡大斜視図を説明するために、図3Bと同じく3次元直交座標系uvwを設定する。図4Bに示すように、空間結像素子92は、鏡反射面95がv軸とw軸とを含む平面と平行に形成された透明なガラス(またはアクリル樹脂)が、u軸方向に等間隔で複数個が密接することで第1の素子93を形成する。空間結像素子92は、鏡反射面96がu軸とv軸とを含む平面と平行に形成された透明なガラス(またはアクリル樹脂)がw軸方向に等間隔で複数個が密接することで第2の素子94を形成する。uw平面において、鏡反射面95が配列される方向と、鏡反射面96が配列する方向とが、90度で交差するように、第1の素子93と第2の素子94とが、v軸方向において、互いの面が密接する。以上のように、空間結像素子92の一方の面から他方の面(または他方の面から一方の面)に光を透過する菱形状の単位光学素子が、多数形成される。
図5は空間結像素子12の動作原理を示す説明図である。図5Aは空間結像素子12をy12軸方向から見た場合に、空間結像素子12に入射し出射する光の光路を示している。図5Bは空間結像素子12をx12軸方向から見た場合の光路を示している。図5Aに示すように、ある光源Oからランダムに発せられた光は、実線で示す矢印の方向に進行し、空間結像素子12に入射する。空間結像素子12に入射した光は、空間結像素子12に形成された一方の鏡面で反射する。反射した光は、更に一方の鏡面と互いに隣接して直交した他方の鏡面で反射することで、点線で示す矢印の方向に進行する光となる。図5Aは、説明の簡略化のため、空間結像素子12を模式的な形状として表している。しかし、実際の鏡面は非常に微細なものであるため、入射される光と出射される光はほとんど重なる。このため、図5Bに示したように、空間結像素子12の一方の面12Pa側に光源Oを配置すると、空間結像素子12の一方の面12Paに入射した光の一部は、空間結像素子12の内部の鏡面で2回反射する。光源Oからの光で2回反射した光が、空間結像素子12に対して光源Oと面対称の位置Pを通過する光となる。したがって、表示パネル11aに表示される画像が、空間結像素子12に対して面対称の位置に実像として結像する。それにより、この実像を空中浮遊像として観察できる。
なお、図3又は図4で説明した空間結像素子を用いる場合、表示パネル11aの表示面と空間結像素子12の一面とが向き合うように平行に配置する。そうすると、表示パネル11aから発せられる光線は、空間結像素子12の一方の面12Paから入射しても、空間結像素子12の面に垂直に形成される鏡面によって反射することなく、他方の面12Pbから出射する。そのため、表示パネル11aに表示される画像は、空間結像素子12に対して面対称の位置に実像として結像しない。このため、表示パネル11aの表示面に対して、空間結像素子12の一面を傾ける必要がある。
まず、一般のディスプレイ(2D表示)と空間結像素子の組み合わせにより、空中浮遊像を表示する表示装置について説明する。図6は、2D表示のディスプレイを用いた空中浮遊像を表示する表示装置の構成及び動作を説明する図である。図6は、ディスプレイと空間結像素子の配置関係、ならびに観察者の位置と、観察者が視認する空中浮遊像のイメージを示している。
ディスプレイ111は、表示面がxz平面と平行である。空間結像素子12は、ディスプレイ111に対してxz平面に射影したと仮定した場合、第1の仮想線と第3の仮想線が重なり、第2の仮想線と第4の仮想線が重なるよう、ディスプレイ111のy軸方向上方に位置する。また、第2の仮想線及び第3の仮想線及び第4の仮想線はxz平面と平行である。第1の仮想線は、xz平面と交差し、その角度がαである。すなわち、空間結像素子12の一方の面12Pa及び他方の面12Pbは、ディスプレイ111の表示面に対して角度αで傾いている。それにより、ディスプレイ111の表示面から発せられる光は、空間結像素子12の面12Paに入射し、面12Pbから出射される。したがって、ディスプレイ111に表示されたImOは、図2で説明した原理にしたがい、面12Pb側の空間に実像Imとして結像する。観察者は、左眼位置と右眼位置とを結ぶ方向をx軸方向と平行とした所定の位置で、結像した実像Imを空中浮遊像として視認することができる。
次に、図6の配置に従って、2D表示のディスプレイに代わりに、裸眼立体ディスプレイを配置した場合について、図7を用いて説明する。ただし、空中浮遊像のイメージは、説明の便宜上の図7には示していない。表示パネル11aは、左眼用画素11Lと右眼用画素11Rとを含む。左眼用画素11Lは左眼画像Lを表示する。右眼用画素11Rは右眼画像Rを表示する。各複数の左眼用画素11Lと右眼用画素11Rとが、x軸方向に繰り返し配列されている。レンチキュラレンズ11bは複数のシリンドリカルレンズSが所定の間隔でx軸方向に配列される。シリンドリカルレンズSは、x軸方向にのみレンズ効果を有する。このレンズ効果を有する方向が、左眼用画素11L及び右眼用画素11Rが繰り返し配列する方向と一致している。この結果、シリンドリカルレンズSは、左眼用画素11Lから出射される光と右眼用画素11Rから出射される光を異なる方向に分離可能な光学手段として作用する。これにより、左眼用画素11Lが表示する画像と、右眼用画素11Rが表示する画像を、異なる方向に分離することができる。このシリンドリカルレンズSの焦点距離は、シリンドリカルレンズSと、画素との距離に設定されていることが望ましい。ここでの焦点距離は、シリンドリカルレンズSの主点すなわちレンズの頂点と、画素面すなわち左眼用画素11L又は右眼用画素11Rが配置された面との間の距離に設定されているものとする。
上記構成の裸眼立体ディスプレイ11から出射して観察者の眼に入射する光の様子を、仮想カメラで撮影した撮影画像を用いて説明する。図8は、仮想カメラの配置例を示す説明図である。図8は、図2Aに示す裸眼立体ディスプレイ11から出る光を撮影する仮想カメラ80の配置例を示す斜視図である。
図8に示すように、仮想カメラ80は、裸眼立体ディスプレイ11の表示面を撮影する位置に配置される。なお、仮想カメラ80は、例えば、一般的なカメラを想定している。仮想カメラ80は、裸眼立体ディスプレイ11に対してy11軸方向上方に位置し、表示パネル11aの表示面近傍に焦点が合う。
図9は、裸眼立体ディスプレイ11の光学手段としてレンチキュラレンズ11bを用いたときに形成される立体視域を説明するための光路図である。
表示パネル11aには、x11軸方向に左眼用画素11L(L1)~11L(L3)、11L(C1)~11L(C3)及び11L(R1)~11L(R3)と、右眼用画素11R(L1)~11R(L3)、11R(C1)~11R(C2)及び11R(R1)~11R(R3)とが順次配置されている。
図9に示す1L1、2L1及び3L1は、左眼用画素11L(L1)~11L(L3)から出射され、シリンドリカルレンズSLで屈折された光の光路を示してある。1L2、2L2及び3L2は、右眼用画素11R(L1)~11R(L3)から出射され、シリンドリカルレンズSLで屈折された光の光路を示す。また、1C1、2C1及び3C1は、左眼用画素11L(C1)~11L(C3)から出射され、シリンドリカルレンズSCで屈折された光の光路を示している。1C2及び2C2は、右眼用画素11R(C1)~11R(C2)から出射され、シリンドリカルレンズSCで屈折された光の光路を示している。同様に、1R1、2R1及び3R1は、左眼用画素11L(R1)~11L(R3)から出射され、シリンドリカルレンズSRで屈折された光の光路を示している。1R2、2R2及び3R2は、右眼用画素11R(R1)~11R(R3)から出射され、シリンドリカルレンズSRで屈折された光の光路を示している。
ここで、光路上を進行する実際の光は、これらの光路に対して時計回り又は反時計回りに所定の角度の幅を有している。1L1、1C1及び1R1が交わる点を含む領域に左眼画像領域ALが形成される。1L2、1C2及び1R2が交わる点を含む領域に右眼画像領域ARが形成される。これらの左眼画像領域AL及び右眼画像領域ARが立体視できる立体視認範囲となる。左眼画像領域ALに左眼の位置ELがあり、右眼画像領域ARに右眼の位置ERがあるとき、観察者は立体画像を正しく視認することができる。
立体視認範囲が最大となる(すなわち、左眼画像領域AL及び右眼画像領域ARのx11軸方向の距離が最大となる)位置とレンチキュラレンズ11bの位置との距離を最適立体視認距離(Dop)とする。左眼の位置EL及び右眼の位置ERが、最適立体視認距離(Dop)からy11軸方向に移動し、左眼画像領域AL及び右眼画像領域ARと交差する位置において、レンチキュラレンズ11bの位置との距離を、最大立体視認距離(Dmax)及び最小立体視認距離(Dmin)とする。
ここで、シリンドリカルレンズSLに注目すると、左眼画像領域ALと右眼画像領域ARの形成に寄与する光は、左眼用画素11L(L1)及び右眼用画素11R(L1)から出射された光(1L1、1L2)だけである。これらを一次光と定義する。また、左眼用画素11L(L1)又は右眼用画素11R(L1)の隣接画素である左眼用画素11L(L2)又は右眼用画素11R(L2)から出射され、シリンドリカルレンズSLで屈折された光(2L1、2L2)を二次光と定義する。同様に、左眼用画素11L(L1)に、左眼用画素11L(L2)を隔てて隣接する左眼用画素11L(L3)又は、右眼用画素11R(L1)に、右眼用画素11R(L2)を隔てて隣接する右眼用画素11R(L3)から出射され、シリンドリカルレンズSLで屈折された光(3L1、3L2)を三次光と定義する。シリンドリカルレンズSC又はSRに関連する光についても、同様に一次光が左眼画像領域AL及び右眼画像領域ARの形成に寄与する。
図9の光路図から分かるように、観察者とレンチキュラレンズ11bとの間隔が最小立体視認距離Dminよりも短くなると、表示パネル11aの左右側から出射される二次光又は三次光等の高次光の影響が顕在化する。
次に、仮想カメラ80とレンチキュラレンズ11bとの間隔Dを変化させたときに得られる撮影画像について説明する。なお、後述する図10、図12及び図15では、光路を分かりやすくするために、一次光の光路のみを記載している。
図10は仮想カメラ80と裸眼立体ディスプレイ11との位置関係を示す説明図である。図11は仮想カメラ80が撮像する画像を示す説明図である。図10は、仮想カメラ80を裸眼立体ディスプレイ11の中心線上に配置し、仮想カメラ80とレンチキュラレンズ11bとの間隔Dを変化させた場合を示す。図11は図10の構成におけるレンチキュラレンズ11bと仮想カメラ80との間隔と撮影画像との対応関係を示す。仮想カメラ80とレンチキュラレンズ11bとの間隔Dを変化させた場合、間隔Dが最適立体視認距離Dop近傍であれば、図11A及び11Bに示すように、仮想カメラ80が撮影する画像は、左側が左眼用画素11Lの入力画像、右側が右眼用画素11Rの入力画像となる。これに対して、間隔Dが徐々に小さくなると(例えば、最適立体視認距離Dopの1/3程度になると)、図11Cに示すように、二次光の影響を受けて、撮影画像の左側に右眼用画素11Rの入力画像が出現し、右側に左眼用画素11Lの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなると(例えば、最適立体視認距離Dopの1/4程度になると)、図11D及び11Eに示すように、三次光の影響を受けて、撮影画像の左側に左眼用画素11Lの入力画像が出現し、右側に右眼用画素11Rの入力画像が出現する。すなわち、仮想カメラ80とレンチキュラレンズ11bとの間隔Dが最適立体視認距離Dopに比べて小さくなるほど、二次光又は三次光等の高次光の影響を受けて、撮影画像が左眼用画素11Lの入力画像と右眼用画素11Rの入力画像の繰り返しになる。
図12は仮想カメラ80と裸眼立体ディスプレイ11との位置関係を示す説明図である。図13は仮想カメラ80が撮像する画像を示す説明図である。図12は、仮想カメラ80を裸眼立体ディスプレイ11の中心線に対して右側(右眼側)にずらして配置し、仮想カメラ80とレンチキュラレンズ11bとの間隔Dを変化させた場合の例である。すなわち、仮想カメラ80の中心線が表示パネル11aの中央の左眼用画素11Lの右側の右眼用画素11Rに重なるように配置している。図13は図12の構成におけるレンチキュラレンズ11bと仮想カメラ80との間隔と撮影画像との対応関係を示す図である。この場合、間隔Dが最適立体視認距離Dop近傍であれば、図13Aに示すように、仮想カメラ80が撮影する画像は、右眼用画素11Rの入力画像のみとなる。また、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/2程度になると、図13Bに示すように、撮影画像の両側に左眼用画素11Lの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/3~1/4程度になると、図13C及び13Dに示すように、二次光の影響を受けて、撮影画像の両側に右眼用画素11Rの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/4以下になると、図13Eに示すように、三次光の影響を受けて、撮影画像の左側に左眼用画素11Lの入力画像が出現する。
図11や図13に示すような撮影画像となるのは、裸眼立体ディスプレイ11の表示面の中心を通る法線を含む正面の立体視域であるメインローブを構成する一次光と、メインローブに対してx11軸方向の外側の立体視域である他のローブ(サイドローブ)を構成する高次光が混合して撮影画像が形成されるからである。図14は図13の撮影画像の構成を説明する図である。例えば、図14に示すように、仮想カメラ80とレンチキュラレンズ11bとの間隔Dに関わらず、メインローブを構成する一次光によって右眼用画素11Rの入力画像が撮影される。間隔Dが小さくなるにしたがって他のローブを構成する高次光の影響を受けて、左眼用画素11Lの入力画像が多く撮影される。その結果、間隔Dが最適立体視認距離Dop(例えば600mm)の場合、撮影画像はメインローブを構成する一次光による右眼用画素11Rの入力画像のみである。また、間隔Dが0.5×Dop(例えば300mm)の場合、撮影画像は、メインローブを構成する一次光による右眼用画素11Rの入力画像と、他のローブを構成する高次光による両側の左眼用画素11Lの入力画像とを合成した画像となる。撮影画像は中央に右眼用画素11Rの入力画像が配置され、その両側に左眼用画素11Lの入力画像が配置された構成となる。また、間隔Dが0.33×Dop(例えば200mm)又は0.28×Dop(例えば170mm)の場合、他のローブを構成する高次光による左眼用画素11Lの入力画像が中央に寄る。そのため、撮影画像は中央に右眼用画素11Rの入力画像が配置され、その両外側に左眼用画素11Lの入力画像が配置される。更に撮像画像は、その両外側に右眼用画素11Rの入力画像が配置された構成となる。また、間隔Dが0.23×Dop(例えば140mm)の場合、他のローブを構成する高次光による左眼用画素11Lの入力画像が更に中央に寄り、更に外側に左眼用画素11Lの入力画像が出現する。そのため、撮影画像は左眼用画素11Lの入力画像と右眼用画素11Rの入力画像とが3回繰り返し配置された構成となる。
図15は仮想カメラ80と裸眼立体ディスプレイ11との位置関係を示す説明図である。図16は仮想カメラ80が撮像する画像を示す説明図である。図15は、仮想カメラ80を裸眼立体ディスプレイ11の中心線に対して左側(左眼側)にずらして配置し、仮想カメラ80とレンチキュラレンズ11bとの間隔Dを変化させた場合の例である。すなわち、仮想カメラ80の中心線が表示パネル11aの中央の右眼用画素11Rの左側の左眼用画素11Lに重なるように配置している。図16は図15の構成におけるレンチキュラレンズ11bと仮想カメラ80との間隔と撮影画像との対応関係を示す図である。この場合、間隔Dが最適立体視認距離Dop近傍であれば、図16Aに示すように、仮想カメラ80が撮影する画像は、左眼用画素11Lの入力画像のみとなる。また、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/2程度になると、図16Bに示すように、撮影画像の両側に右眼用画素11Rの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/3~1/4程度になると、図16C及び16Dに示すように、二次光の影響を受けて、撮影画像の両側に左眼用画素11Lの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/4以下になると、図16Eに示すように、三次光の影響を受けて、撮影画像の左側に右眼用画素11Rの入力画像が出現する。
図17は図16の撮影画像の構成を説明する図である。図17に示すように、仮想カメラ80とレンチキュラレンズ11bとの間隔Dに関わらず、メインローブを構成する一次光によって左眼用画素11Lの入力画像が、仮想カメラ80により撮影される。間隔Dが小さくなるにしたがって他のローブを構成する高次光の影響を受けて、右眼用画素11Rの入力画像が多く撮影される。その結果、撮影画像は、図14の左眼用画素11Lの入力画像と右眼用画素11Rの入力画像とが入れ替わった構成となる。
すなわち、仮想カメラ80とレンチキュラレンズ11bとの間隔Dが小さくなると、高次光の影響を受けて、撮影画像は左眼用画素11Lの入力画像と右眼用画素11Rの入力画像とが繰り返し配置された構成となる。それにより、仮想カメラ80の位置が裸眼立体ディスプレイ11の中心線からずれると、ずれに応じてメインローブを構成する一次光による画像と他のローブを構成する高次光による画像とが変化する。
次に、図7に示すように、裸眼立体ディスプレイ11に空間結像素子12を組み合わせて配置した場合、観察者が見る空中浮遊像について説明する。図18は観察者が認識する立体画像と入力画像の関係を説明する模式図である。観察者が表示されたオブジェクトを飛び出しと認識するために与える飛び出し視差の入力画像の一例を図18Cに示す。図18Cに示すように、飛び出し視差の入力画像は、表示パネル11aの左眼用画素11Lに、丸形のオブジェクト71が中央のやや右側に配置され、右眼用画素11Rに、丸形のオブジェクト71が中央のやや左側に配置する。図18Cの入力画像を裸眼立体ディスプレイに表示させる。観察者の左眼EL及び右眼ERが裸眼立体ディスプレイ11の立体視認範囲(図示せず)にある場合、図18Aに示すように、観察者は、裸眼立体ディスプレイ11のスクリーン面から、空中に丸形のオブジェクト71が飛び出したように立体画像を認識する。しかしながら、図7に示した裸眼立体ディスプレイ11と空間結像素子12との組み合わせにおいては、図18Bに示したように、観察者が認識する立体画像は、空間結像した裸眼立体ディスプレイ11のスクリーン面に対して、丸型のオブジェクトが奥まった位置にあるかのように視認される。いわゆる逆視が生じる。
図19及び図20は図7に示した裸眼立体ディスプレイ11と空間結像素子12との組み合わせにおける逆視を説明する図である。図19に示すように、例えばD=0.5×Dopの位置に空間結像素子12を配置した場合、空間結像素子12の位置に仮想的に配置した仮想カメラで撮影される画像は、図14及び図17で示した結果より、図20Aに示す画像のようになる。ここで、空間結像素子12は反射光学系であり、空間結像素子12から出射される光線は、入射方向と同じ方向になるため、観察者が見る画像は左右が入れ替わる。その結果、観察者が見る画像は図20Bのようになる。それにより、左眼で視認する画像の中央部に右眼用画素11Rの入力画像が配置され、右眼で視認する画像の中央部に左眼用画素11Lの入力画像が配置される。すなわち、飛び出し視差が奥行き視差になる。
以上のように、本願発明者の考察により、図7に示した裸眼立体ディスプレイ11と空間結像素子12との組み合わせにおいては、観察者が見る画像の中央部で逆視が生じることが判明した。
次に、図1に示す本実施の形態の立体表示装置1の場合、観察者が見る空中浮遊像について説明する。図21は立体表示装置1に用いる裸眼立体ディスプレイ11の立体視域を説明する光路図である。図21は、図9と同様な図である。図21では、図の簡略化のため、レンチキュラレンズ、左眼用画素、右眼用画素等を省いている。代わりに、図21では、仮想線VLと、一次光が支配的な第1の領域A1(左眼画像領域AL)と、第2の領域A2(右眼画像領域AR)に加えて、二次光が支配的な第3の領域A3及び第4の領域A4を示している。仮想線VLは、裸眼立体ディスプレイ11と空間結像素子12を結ぶ仮想の線である。図21に示した仮想線VLは、y軸と平行となるよう設定している。
ここで、図22を用いて図21で示した第3の領域A3及び第4の領域A4を説明する。図22は、立体表示装置1に形成される立体視域を説明する光路図である。図22は、図9と同様な図である。第1の領域A1は、左眼用画素11Lから出射された一次光(1L1、1C1、1R1)が交わる点を含む領域に形成されており、図9の左眼画像領域ALと同じものである。第2の領域A2は、右眼用画素11Rから出射された一次光(1L2,1C2,1R2)が交わる点を含む領域に形成されており、図9の右眼画像領域ARと同じものである。第3の領域A3は、左眼用画素11Lから出射された二次光(2L1、2C1、2R1)が交わる点を含む領域に形成され、左眼用画素11Lの入力画像が投影される領域である。第4の領域A4は、右眼用画素11Rから出射された二次光(2L2,2C2,2R2)が交わる点を含む領域に形成されており、右眼用画素11Rの入力画像が投影される領域である。図22に示したように、一次光が支配的な第1の領域A1及び第2の領域A2の外側には、左眼用画素11Lの入力画像及び右眼用画素11Rの入力画像が投影される領域として、二次光が支配的な第3の領域A3及び第4の領域A4が存在する。また、図の簡略化のため、図示していないが、第3の領域A3及び第4の領域A4の外側には、三次光や更なる高次光が支配的な左眼用画素11Lの入力画像及び右眼用画素11Rの入力画像が投影される領域が存在する。
図21Aは、図7に示したように、裸眼立体ディスプレイ11をxz平面に水平に設置したときの立体視域を説明する光路図である。この場合、第1の領域A1(左眼用画素11Lが投影する画像)が仮想線VL左側に位置し、第2の領域A2(右眼用画素11Rが投影する画像)が仮想線VLの右側に位置する。図21Bは、図1に示すように、裸眼立体ディスプレイ11をxz平面Pxzに対して、x軸方向に角度θで傾斜させて設置したときの立体視域を説明する光路図である。図21Bに示すように、裸眼立体ディスプレイ11がx軸方向に角度θで傾斜すると、仮想線VLの左側に第4の領域A4(右眼用画素11Rが投影する画像)が位置し、仮想線VLの右側には第1の領域A1(左眼用画素11Lが投影する画像)が位置する。図21Aと図21Bとを比較すると、仮想線VLを挟んで左眼用画素11Lが投影する画像と、右眼用画素11Rが投影する画像の関係が左右で入れ替わる。
次に観察者が視認する画像を説明するために、仮想カメラを用いて説明する。図23は、仮想カメラ80と裸眼立体ディスプレイ11との位置関係を示す説明図である。図23は、仮想カメラ80を図21Bに示した裸眼立体ディスプレイ11の仮想線VLに対して左側(左眼側)にずらして配置し、仮想カメラ80とレンチキュラレンズ11bとの間隔Dを変化させた場合の例である。なお、説明の簡略化のため、図中に示した裸眼立体ディスプレイ11は傾けていないが、図23のx11軸は、図21Bのx軸に対して、時計回りに角度θで傾いている。したがって、図23の仮想線VLと図21Bに示した仮想線VLとは同一である。図24は、仮想カメラが撮像する画像を示す説明図である。図24は、図23の構成におけるレンチキュラレンズ11bと仮想カメラ80との間隔と撮影画像との対応関係を示す図である。図24Aに示すように、間隔Dが最適立体視認距離Dop近傍であれば、仮想カメラ80が撮影する画像は、右眼用画素11Rの入力画像のみとなる。また、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/2程度になると、図24Bに示すように、撮影画像の両側に左眼用画素11Lの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/3~1/4程度になると、図24C及び24Dに示すように、高次光の影響を受けて、撮影画像の両側に右眼用画素11Rの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/4以下になると、図24Eに示すように、更に高次光の影響を受けて、撮影画像の左側に左眼用画素11Lの入力画像が出現する。
図25は図24の撮影画像の構成を説明する図である。図25に示すように、仮想カメラ80とレンチキュラレンズ11bとの間隔Dに関わらず、第4の領域A4を構成する二次光によって右眼用画素11Rの入力画像が撮影される。しかし、間隔Dが小さくなるにしたがって他のローブを構成する高次光の影響を受けて、左眼用画素11Lの入力画像が多く撮影される。
図26は仮想カメラと裸眼立体ディスプレイとの位置関係を示す説明図である。図26は、仮想カメラ80を図21Bに示した裸眼立体ディスプレイ11の方向VLに対して右側(右眼側)にずらして配置し、仮想カメラ80とレンチキュラレンズ11bとの間隔Dを変化させた場合の例である。図23と同様に、図21Bのx軸に対してx11軸は時計回りに角度θで傾いている。したがって、図26の仮想線VLと図21Bの仮想線VLとは同一である。図27は仮想カメラが撮像する画像を示す説明図である。図27は、図26の構成におけるレンチキュラレンズ11bと仮想カメラ80との間隔と撮影画像との対応関係を示す。図27Aに示すように、間隔Dが最適立体視認距離Dop近傍であれば、仮想カメラ80が撮影する画像は、左眼用画素11Lの入力画像のみとなる。また、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/2程度になると、図27Bに示すように、撮影画像の両側に右眼用画素11Rの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/3~1/4程度になると、図27C及び27Dに示すように、二次光の影響を受けて、撮影画像の両側に左眼用画素11Lの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/4以下になると、図27Eに示すように、更に高次光の影響を受けて、撮影画像の左側に右眼用画素11Rの入力画像が出現する。
図28は図27の撮影画像の構成を説明する図である。この場合、図28に示すように、仮想カメラ80とレンチキュラレンズ11bとの間隔Dに関わらず、第1の領域A1を構成する一次光によって左眼用画素11Lの入力画像が撮影される。しかし、間隔Dが小さくなるにしたがって他のローブを構成する高次光の影響を受けて、右眼用画素11Rの入力画像が多く撮影される。その結果、図28の撮影画像は、図25の撮影画像に対して、左眼用画素11Lの入力画像と右眼用画素11Rの入力画像とが入れ替わった構成となる。
図29は仮想カメラと裸眼立体ディスプレイとの位置関係を示す説明図である。図30は観察者が認識する立体画像と入力画像の関係を説明する模式図である。図29及び図30は、図1に示した本実施の形態における上記裸眼立体ディスプレイ11に空間結像素子12を組み合わせた場合に、観察者が認識する立体画像を説明する図である。図29に示した左側の仮想カメラ及び右側の仮想カメラは、図19と同様に空間結像素子の位置を想定している。したがって、図18の入力画像を裸眼立体ディスプレイ11に表示させると、D=0.5×Dopの位置に仮想的に配置した仮想カメラ(図29)で撮影される画像は、図25及び図28で示した結果より、図20Aとは画像の左右の関係が入れ替わった図30Aに示す画像となる。図30Aに示す画像が空間結像素子12に入ると、図20で説明したように、空間結像素子12から出射される光線は、入射方向と同じ方向になるため、観察者の見る画像は左右が入れ替わり、図30Bに示した画像のようになる。この結果、観察者が認識する立体画像は、図30Cに示したように、空間結像した裸眼立体ディスプレイ11のスクリーン面から、丸型のオブジェクト71が飛び出す。つまり、裸眼立体ディスプレイ11への入力画像に特別な画像処理を施すことなく、観察者は表示された空中浮遊像を、飛び出しと認識することができる。
図1に示した本実施の形態の立体表示装置1では、裸眼立体ディスプレイ11をx軸方向に角度θで傾斜して配置することで、空間結像素子12に入射する画像の左右が入れ替り、観察者が見る画像の中央部で逆視の出現を抑制することができる。このため、観察者に所定の位置で空中浮遊像を、入力画像の飛び出し視差、奥行き視差に応じた立体画像として認識させることができる。また、本実施の形態の立体表示装置1は、逆視を抑制するために入力画像の画像処理を必要としない。したがって、立体表示装置1を簡易に構成とすることができる。なお、裸眼立体ディスプレイ11と空間結像素子12の距離によっては、観察者が見る画像の端部については、逆視となるが、少なくとも中央部では正視(飛び出し/奥行きが正しく視認)となる。この場合、逆視となる端部については、背景として扱うと良い。例えば、黒を表示するようにすれば、観察者が立体画像を認識する妨げにはならない。
上述において、裸眼立体ディスプレイ11をx軸方向に角度θで傾斜して配置するにあたり、z軸に平行な軸を回転軸とし、観察者から見て時計回りに傾けたが、それに限らない。反時計回りに傾けても良い。図31は、裸眼立体ディスプレイの傾斜配置を示す説明図である。図31では、裸眼立体ディスプレイ11を観察者から見て反時計回りに角度θで傾けている。図31に示す場合においては、第2の領域A2(右眼画像R)が仮想線VLの左側に位置し、第3の領域A3(左眼画像L)が仮想線VLの右側に位置する。したがって、図31の仮想線VLに対して、図29と同様の概念で左側及び右側へ配置した仮想カメラで撮影される画像は、図30Aに示す画像となる。このため、観察者が観る画像は、図30Bとなる。すなわち、観察者は、反時計回りに角度θで傾けたときも、図1に示した時計回りに傾けたときと同じく、図30Cに示すように、丸型のオブジェクト71が飛び出す立体画像を認識することになる。
図21と図31とを用いて説明したように、裸眼立体ディスプレイ11をx軸方向に対して所定角度、傾いた姿勢とするには、傾斜支持部13を用いる。図32は傾斜支持部13の一例を示す斜視図である。傾斜支持部13は、土台部131と、第1の支柱132及び第2の支柱133とを含む。土台部131は、xz平面に設置される。第1の支柱132及び第2の支柱133は、棒状又は棒状のものを複数接続した形状をなし、端部の一端が土台部131に接続される。第1の支柱132及び第2の支柱133の他方の端部には、裸眼立体ディスプレイ11が固定される。第1の支柱132及び第2の支柱133と裸眼立体ディスプレイ11との固定には、例えば第1の支柱132と第2の支柱133の他方の端部に設けられたネジと、裸眼立体ディスプレイ11の四隅に設けられたネジ穴とを使う。第1の支柱132と第2の支柱133は、y軸方向の大きさが異なるため、裸眼立体ディスプレイ11をx軸方向に傾いた状態で保持することができる。裸眼立体ディスプレイ11の傾斜角度を変更するには、第1の支柱132及び第2の支柱133を、y軸方向の大きさが異なるものに交換すれば良い。
また、傾斜支持部13として他の構成ものを用いることも可能である。図33は傾斜支持部13の他の例を示す斜視図である。傾斜支持部13は、土台部131と、アーム部134、取付金具135とを含む。土台部131は、xz平面に設置される。アーム部134は、棒状又は棒状のものを複数接続した形状をなす。アーム部134の端部の一方が土台部131に接続される。アーム部134の他方の端部は、z軸と平行な回転軸を有している。この回転軸に取付金具135が接続される。取付金具135には、裸眼立体ディスプレイ11が固定される。回転軸を回転させることにより、傾斜支持部13は、裸眼立体ディスプレイ11をx軸方向に対して傾いた状態で保持することができる。また、土台部131にz軸と平行な回転軸を有し、回転軸にアーム部134の一方の端部を接続し、アーム部134の他方の端部に取付金具135を接続してもよい。この場合も、同様に傾斜支持部13は裸眼立体ディスプレイ11を傾斜した姿勢で保持することができる。
次に、裸眼立体ディスプレイ11を傾ける角度θの求め方の一例を以下に説明する。図21に示したように、第1の領域A1ないし第2の領域A2の角度範囲がθである。第1の領域A1ないし第2の領域A2の角度範囲を求めるためには、裸眼立体ディスプレイ11の表示中心の輝度プロファイルを取得すればよい。輝度プロファイルとは、観測角度による輝度値の違いを示すものである。裸眼立体ディスプレイ11の表示面の法線方向であって、表示中心と正対する位置を観測角度0度の基準位置とする。表示中心と当該基準位置とを結ぶ線分を半径とし、表示中心を中心する円弧を描いたときに、当該円弧上の点を他の観測位置とする。観測位置での半径と、基準位置での半径がなす角度が観測角度である。基準位置から反時計回りで移動した位置の観測角度をプラスの値と、基準位置から時計回りで移動した位置の観測角度をマイナスの値とする。各観測位置での輝度分布が輝度プロファイルである。第1の領域A1ないし第2の領域A2の角度範囲を求めるためには、例えば、第1の領域A1が白画像、第2の領域A2が黒画像となるような表示を裸眼立体ディスプレイ11に行わせ、輝度プロファイルを取得すれば良い。
以上のような輝度プロファイルは、視野角特性測定装置により取得可能である。視野角特性測定装置として、例えば、コノスコープ(AUTRONIC MELCHERS社製)、VCMaster-3D(ELDIM社製)などが知られている。
図34は裸眼立体ディスプレイ11の輝度プロファイルの一例を示すグラフである。図34のグラフにおいて、横軸が観測角度で単位は度、縦軸が輝度で単位はcd/m2である。図34に示す例では、グラフ81、グラフ82の2つのグラフがある。グラフ81は、第1の領域A1の形成に寄与する光を出射する左眼用画素11Lと、第2の領域A2の形成に寄与する光を出射する右眼用画素11Rとに、左眼用画素11Lに黒、右眼用画素11Rに白を表示して取得したグラフである。グラフ82は、左眼用画素11Lに白、右眼用画素11Rに黒を表示して取得したグラフである。
グラフ81からは、観測角度0度の近傍に第1の領域A1の形成に寄与する光の広がりが-12度から0度の範囲であることが確認できる。グラフ82からは、観測角度0度の近傍に第2の領域A2の形成に寄与する光の広がりが0度から+12度の範囲であることが分かる。よって、当該裸眼立体ディスプレイ11においては、x軸方向(第1の方向)からの傾斜角度θを12度として、時計回り又は反時計回りに傾けて配置すれば良い。
以上のように、図34を用いて輝度プロファイルから第1の領域A1ないし、第2の領域A2の角度範囲を求め、傾斜角θを決定する方法を説明した。しかしながら、実際に使用する空間結像素子12の特性が理想通りでない場合、空間結像素子12から出る光線が理想と若干ずれることがある。この空間結像素子12の特性によるずれを補正するため、傾斜角θの決定にあたり、輝度プロファイルから算出した角度に補正角(例えば0.1~1.5°程度)を加えることも可能である。例えば、空間結像素子12の特性を補正するために、図34から求められた12度をもとに、傾斜角θを12.9としてもよい。
以上のように、傾斜角度θは、裸眼立体ディスプレイ11に、2つ以上に振り分けられた光線の一方と、他方の光線との輝度差が、互いに最大となるパターンを入力し、振り分けられた光線の一方ないし他方の第1の方向における輝度の角度分布を取得し、取得した角度分布に基づき算出することができる。
本実施の形態において、裸眼立体ディスプレイ11をx軸方向に角度θで傾斜して配置するにあたり、z軸に平行な軸を回転軸として、傾斜角度θで傾けて配置するが、その軸の位置は様々な位置とすることが可能である。図35は回転軸の設定例を示す説明図である。図35Aは、θが0度であり関連する技術による立体表示装置の場合である。図35Bが時計回りに傾けた場合、図35Cが反時計回りに傾けた場合である。回転軸Sは裸眼立体ディスプレイ11のx軸方向の中心付近でも良いし、端部付近でも良い。
本実施の形態の立体表示装置1は、2つ以上の方向に光線を振り分け、振り分けた光によって2つ以上の画像を投影する投影器を有する。投影器は例えば、裸眼立体ディスプレイ11である。立体表示装置1は、第1面からの入射光を第2面から出射する平面上の光学素子を有する。光学素子は例えば、空間結像素子12である。立体表示装置1は、互いに直交する第1~第3の座標軸を含む3次元座標系において、第1状態、第2状態に、前記投影器、前記光学素子の少なくとも1つを支持する支持器を有する。支持器は例えば、傾斜支持部13である。光学素子は、投影器の投影面における第1点からの入射光を、光学素子の平面を基準にして面対称な第2点に出射する。第1状態は、光学素子の平面において相互に直交する第1、第2仮想線及び前記投影器の投影面において相互に直交する第3、第4仮想線を、第1、第2の座標軸を含む第1平面に射影すると仮想した場合に、第1、第3仮想線が重なり、第2、第4仮想線が重なる状態である(図7参照)。そして、第2状態は、3次元座標系において、第1仮想線と前記第3仮想線が平行でなく、かつ、第2仮想線と第4仮想線が平行でない状態である(図1参照)。
(変形例1)
傾斜支持部13は、モータなどのアクチュエータを含む構成としてもよい。傾斜支持部13をこのように構成する場合、立体表示装置1は、アクチュエータに制御信号を出力する制御部を備える。制御部は例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)などのメモリを含むコンピュータで構成可能である。傾斜支持部13は、制御部からの制御信号によりアクチュエータを動作させる。それにより、傾斜支持部13は、裸眼立体ディスプレイ11を第1の方向から傾斜角度θで傾いた姿勢で支持することが可能となる。
図36は、制御部の動作を示すフローチャートである。制御部は開始指示を受け付ける(ステップS1)。開始指示は、例えば、観察者がスイッチを操作することにより行う。また、立体表示装置1の起動時に初期化プログラムにより、開始指示信号が入力されるようにしてもよい。制御部は傾斜角度θを取得する(ステップS2)。制御部は制御信号を傾斜支持部13に出力する(ステップS3)。それにより、傾斜支持部13は、裸眼立体ディスプレイ11を第1の方向から傾斜角度θで傾いた姿勢で支持する。傾斜角度θは、観察者が制御部に与えても良い。また、ROMに裸眼立体ディスプレイ11の型式と傾斜角度θとを対応付けて記憶しておき、観察者が裸眼立体ディスプレイ11の型式を制御部に与え、制御部は与えられた型式をもとに、傾斜角度θをROMから読みだしても良い。
本変形例では、傾斜角度の調整を傾斜支持部13が行うので、観察者は傾斜角度が適切な値となっているか、確認することが不要となる。また、複数の裸眼立体ディスプレイ11の型式と傾斜角度θとをそれぞれ記憶しておけば、裸眼立体ディスプレイ11として複数のものが利用可能となる。さらに、また、観察者は自らで傾斜角度の調整をしなくて良いので、立体表示装置1を使用しないときは裸眼立体ディスプレイ11を傾けていない状態にできる。それにより、立体表示装置1の収納スペースを節約することが可能となる。
(実施の形態2)
本実施の形態は、立体表示装置1において、関連する技術の配置と比較して傾ける対象を裸眼立体ディスプレイ11ではなく、空間結像素子12とする形態に関する。図37は立体表示装置1の構成示す説明図である。立体表示装置1は裸眼立体ディスプレイ11と空間結像素子12とを含む。裸眼立体ディスプレイ11と空間結像素子12それぞれの構成は実施の形態1と同様であるから、説明を省略する。以下の説明においては、実施の形態1との異なる点を主に説明する。
本実施の形態では、裸眼立体ディスプレイ11は、表示面がxz平面Pxzと平行となるように配置される。一方、空間結像素子12は、x12z12平面Px12z12に対して、x12次方向に角度θで傾斜するように、図示しない傾斜支持部によって保持されている。空間結像素子12は、xz平面に射影すると第1の仮想線と第3の仮想線は重なり、第2の仮想線と第4の仮想線が重なるように、xz平面Pxzに対して、z軸方向に角度αで傾斜するように配置される。
図38は空間結像素子12の傾斜配置を示す説明図である。図38はx2軸方向から空間結像素子12をみた場合の平面図である。図37及び図38に示すx12軸はx軸と平行である。すなわち、x12軸は第1の方向と平行である。したがって、図38において第1の方向は紙面の左右方向である。図38に示すように、空間結像素子12はx12軸、すなわち第1の方向に対して、z12軸に平行な軸を回転軸として、角度θで傾けて配置してある。
図39は図37に示した立体表示装置1に用いた裸眼立体ディスプレイ11の立体視域を説明する光路図である。図39は、図21Bと同様な図である。図39では、図の簡略化のため、レンチキュラレンズ、左眼用画素、右眼用画素等を省いている。図21Bと同様に、図39では、仮想線VLと、一次光が支配的な第1の領域A1(左眼画像領域AL)、第2の領域A2(右眼画像領域AR)、二次光が支配的な第3の領域A3及び第4の領域A4を示している。
図39に示すように、仮想線VLの左側に第4の領域A4(右眼用画素11Rが投影する画像)が位置し、仮想線VLの右側には第1の領域A1(左眼用画素11Lが投影する画像)が位置するように、空間結像素子12をz2軸に平行な軸を回転軸とし、時計回りに角度θで傾けた状態にする。図21Aと図39とを比較すると、仮想線VLを挟んで左眼用画素11Lが投影する画像と、右眼用画素11Rが投影する画像の関係が左右で入れ替わる。
図40は、仮想カメラ80と裸眼立体ディスプレイ11との位置関係を示す説明図である。本実施の形態では、図40には記載していない空間結像素子12を傾斜させている。裸眼立体ディスプレイ11は傾けていない。すなわち、図40に示すように裸眼立体ディスプレイ11は、表示面が平面Pxzと平行となっている。図40は、仮想カメラ80を図39に示した裸眼立体ディスプレイ11の仮想線VLに対して左側(左眼側)にずらして配置し、仮想カメラ80とレンチキュラレンズ11bとの間隔Dを変化させた場合の例である。図40の仮想線VLと図39に示した仮想線VLとは同一である。図41は、仮想カメラ80が撮像する画像を示す説明図である。図41は、図40の構成におけるレンチキュラレンズ11bと仮想カメラ80との間隔と撮影画像との対応関係を示す図である。図41Aに示すように、間隔Dが最適立体視認距離Dop近傍であれば、仮想カメラ80が撮影する画像は、右眼用画素11Rの入力画像のみとなる。また、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/2程度になると、図41Bに示すように、撮影画像の両側に左眼用画素11Lの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/3~1/4程度になると、図41C及び41Dに示すように、高次光の影響を受けて、撮影画像の両側に右眼用画素11Rの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/4以下になると、図41Eに示すように、更に高次光の影響を受けて、撮影画像の左側に左眼用画素11Lの入力画像が出現する。
図42は図41の撮影画像の構成を説明する図である。図42に示すように、仮想カメラ80とレンチキュラレンズ11bとの間隔Dに関わらず、第4の領域A4を構成する二次光によって右眼用画素11Rの入力画像が撮影される。しかし、間隔Dが小さくなるにしたがって他のローブを構成する高次光の影響を受けて、左眼用画素11Lの入力画像が多く撮影される。
図43は仮想カメラと裸眼立体ディスプレイとの位置関係を示す説明図である。図43は、仮想カメラ80を図39に示した裸眼立体ディスプレイ11の方向VLに対して右側(右眼側)にずらして配置し、仮想カメラ80とレンチキュラレンズ11bとの間隔Dを変化させた場合の例である。図43の仮想線VLと図39の仮想線VLとは同一である。図44は仮想カメラ80が撮像する画像を示す説明図である。図44は、図43の構成におけるレンチキュラレンズ11bと仮想カメラ80との間隔と撮影画像との対応関係を示す。図44Aに示すように、間隔Dが最適立体視認距離Dop近傍であれば、仮想カメラ80が撮影する画像は、左眼用画素11Lの入力画像のみとなる。また、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/2程度になると、図44Bに示すように、撮影画像の両側に右眼用画素11Rの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/3~1/4程度になると、図44C及び44Dに示すように、二次光の影響を受けて、撮影画像の両側に左眼用画素11Lの入力画像が出現する。更に、間隔Dが小さくなり、最適立体視認距離Dopの1/4以下になると、図44Eに示すように、三次光の影響を受けて、撮影画像の左側に右眼用画素11Rの入力画像が出現する。
図45は図44の撮影画像の構成を説明する図である。この場合、図45に示すように、仮想カメラ80とレンチキュラレンズ11bとの間隔Dに関わらず、第1の領域A1を構成する一次光によって左眼用画素11Lの入力画像が撮影される。しかし、間隔Dが小さくなるにしたがって他のローブを構成する高次光の影響を受けて、右眼用画素11Rの入力画像が多く撮影される。その結果、図45の撮影画像は、図42の撮影画像に対して、左眼用画素11Lの入力画像と右眼用画素11Rの入力画像とが入れ替わった構成となる。
図46は仮想カメラと裸眼立体ディスプレイとの位置関係を示す説明図である。図47は観察者が認識する立体画像と入力画像の関係を説明する模式図である。図46及び図47は、図37に示した本実施の形態における上記裸眼立体ディスプレイ11に空間結像素子12を組み合わせた場合に、観察者が認識する立体画像を説明する図である。図46に示した左側の仮想カメラ及び右側の仮想カメラは、図19と同様に空間結像素子の位置を想定している。図46に示すように、例えばD=0.5×Dopの位置に仮想的に配置した仮想カメラで撮影される画像は、図42及び図45で示した結果より、図20Aとは画像の左右の関係が入れ替わった図47Aに示した画像のようになる。図47Aに示す画像が空間結像素子12に入ると、図20で説明したように、空間結像素子12から出射される光線は、入射方向と同じ方向になるため、観察者の見る画像は左右が入れ替わり、図47Bに示した画像のようになる。この結果、観察者が認識する立体画像は、図47Cに示したように、空間結像した裸眼立体ディスプレイ11のスクリーン面から、丸型のオブジェクト71が飛び出す。つまり、飛び出し視差の入力画像を画像処理なしで表示した空中浮遊像を、観察者は飛び出しと認識することができる。
以上ように、図37に示した本実施の形態の立体表示装置1では、空間結像素子12をz2軸に平行な軸を回転軸とし、時計回りに角度θで傾けて配置することによって、空間結像素子12に入射する画像の左右を入れ替え逆視の出現を抑制することができる。このため、観察者に所定の位置で空中浮遊像を、入力画像の飛び出し視差、奥行き視差に応じた立体画像として認識させることができる。また、本実施の形態の立体表示装置1は、逆視を抑制するために入力画像の画像処理を必要としない。したがって、立体表示装置1を簡易に構成とすることができる。なお、裸眼立体ディスプレイ11と空間結像素子12の距離によっては、観察者が見る画像の端部については、逆視となるが、少なくとも中央では正視(飛び出し/奥行きが正しく視認)となる場合もある。この場合、逆視となる端部については、背景として扱うと良い。例えば、黒を表示するようにすれば、観察者が立体画像を認識する妨げにはならない。
上述において、空間結像素子12は、z2軸に平行な軸を回転軸とし、観察者から見て時計回りに傾けたが、それに限らない。反時計回りに傾けても良い。
また、本実施の形態においては、空間結像素子12は、z2軸に平行な軸を回転軸として、傾斜角度θで傾けて配置するが、その軸の位置は様々な位置とすることが可能である。図48は回転軸の設定例を示す説明図である。図48Aは、θが0度であり関連する技術による立体表示装置の場合である。図48Bが時計回りに傾けた場合、図48Cが反時計回りに傾けた場合である。回転軸Sは空間結像素子12のx2軸方向の中心付近でも良いし、端部付近でも良い。
以上のように、実施の形態1と同様に、本実施の形態の立体表示装置1は、観察者が見る画像の中央部で逆視の出現を抑制することができる。このため、観察者に所定の位置で空中浮遊像を、入力画像の飛び出し視差、奥行き視差に応じた立体画像として認識させることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態は、観察者の位置変化により裸眼立体ディスプレイ11の傾斜角度θを動的に変更する形態に関する。図49は立体表示装置100の構成を示す説明図である。本実施の形態の立体表示装置100は裸眼立体ディスプレイ11、空間結像素子12、制御部14、撮像部15、アクチュエータ16を含む。裸眼立体ディスプレイ11と空間結像素子12それぞれの構成は実施の形態1と同様であるから、説明を省略する。
撮像部15は、カメラ、赤外線センサー、レーザーレンジファインダーなどである。撮像部15は観察者Viの頭部を観測する。撮像部15は観測データを制御部14に出力する。アクチュエータ16は、モータやロータリーソレノイドなど電子制御可能なアクチュエータである。アクチュエータ16は裸眼立体ディスプレイ11をz軸に平行な軸を回転軸とし、反時計回りに角度θで傾けて配置する。角度θは、実施の形態1で説明した、所定の位置から観察者が見る画像の中央部で逆視の出現を抑止するために設けた傾斜角度θと同一であるため、詳細な説明は省略する。
制御部14は機能部として、視点検出部(位置検出部)141、角度算出部(傾斜角度算出部)142、信号出力部143を含む。視点検出部141は観察者Viの両眼の位置(2つの視点位置)を検出する。視点検出部141は撮像部15から入力された観測データに基づいて、観察者Viの両眼の位置を求める。角度算出部142は視点検出部141より得た観察者Viの左眼ELの位置及び右眼ERの位置に対応した傾斜角度θsを算出する。信号出力部143は角度算出部142より傾斜角度θsの値の入力を受付けた場合、裸眼立体ディスプレイ11の第1の方向に対する傾斜角度がθからθsとなるように、アクチュエータ16を動作させる。信号出力部143は裸眼立体ディスプレイ11の第1の方向に対する傾斜角度がθsとなったら、アクチュエータ16の動作を停止させる。本実施の形態のアクチュエータ16は、動作を停止することで、その角度を保持するように構成されている。このため、裸眼立体ディスプレイ11は、傾斜角度θsで動かないように支持される。
図50は制御部14のハードウェア構成を示すブロック図である。制御部14はCPU14a、ROM14b、RAM14c、入力部14d、出力部14eを含む。CPU14aはROM14bに記憶された制御プログラムをROM14bに展開して実行することにより、制御部14を視点検出部141、角度算出部142及び信号出力部143として機能させる。ROM14bは、例えば不揮発性の半導体メモリ又は半導体メモリ以外の読み出し専用記憶媒体である。RAM14cは例えばSRAM(Static RAM)、DRAM(Dynamic RAM)、フラッシュメモリである。RAM14cはCPU14aによるプログラムの実行時に発生するデータを一時的に記憶する。入力部14dは撮像部15から撮像した画像が入力される。出力部14eはアクチュエータ16へ制御信号を出力する。
次に、傾斜角度θsの算出方法について説明する。図51は傾斜角度θsの算出方法を説明するための説明図である。図51Aは観察者の左眼EL及び右眼ERと立体表示装置100を上から見た上面図である。図51Bは観察者の左眼EL及び右眼ERと立体表示装置100をx軸方向から見た側面図である。θsを求めるための基準として、基準点Pを定める。基準点Pは空中浮遊像に含まれる点である。基準点Pは、空間結像素子12に対して、裸眼立体ディスプレイ11の表示領域の中心点と面対称の点である。空間結像素子12と裸眼立体ディスプレイ11との距離をWDとすると、空間結像素子12と基準点Pとの距離もWDとなる。空間結像素子12は、裸眼立体ディスプレイ11の映像を面対称の位置に結像させるからである。なお、観察者の左眼EL、右眼ERを結ぶ直線はx軸に平行であるとする。裸眼立体ディスプレイ11の表示領域の中心点を第1点とも言う。基準点Pを第2点ともいう。
次の2つの直線がなす角がθpである。2つの直線は、基準点P、観察者の左眼EL、右眼ERをxz平面に射影して求める。一方の直線は、z軸に平行な直線V1である。他方の直線は、基準点Pと左眼EL、右眼ERの中間点を結ぶ線分に平行な直線V2である。
基準点Pから観察者Viの両眼EL、ERの位置までのz軸方向の距離をΔZとする。基準点Pと左眼EL、右眼ERの中間点とx軸方向の距離をΔXとする。そうすると、θpは以下の式(1)で求まる。さらに、式(2)で傾斜角度θsが求まる。
θpの正負については、観察者が+x方向に移動した場合に正の値とし、観察者が-x方向に移動した場合に負の値とする。
次に、裸眼立体ディスプレイ11の傾斜角度を動的に変更する意義について説明する。図52は立体表示装置1と観察者の位置との関係を示す説明図である。図52に示す三角形で囲んだ白抜きの文字のa、b、c、d、eは、観察者の位置を示す。それぞれの位置は、観察者の左眼ELと右眼ERとの中間位置を示す。
図53は観察者の位置と観察者が視認する画像との関係を示す説明図である。図53Aは、観察者の位置を検出せず、傾斜角度が一定値のθである場合に、観察者が視認する画像を示している。図53Bは、観察者の位置を検出し、それに応じて傾斜角度θsを変更した場合に、観察者が視認する画像を示している。図53Aに示すように、観察者の位置がcに位置する場合は、左眼が見る画像の中央部には左眼画像が、右眼が見る画像の中央部には右眼画像が配置されるので、中央部の逆視が防止されている。しかし、観察者の位置がb又はdの位置となると、左眼に視認される画像において右眼用画素の入力画像(右入力画像)の領域が増加する。右眼に視認される画像において左眼用画素の入力画像(左入力画像)の領域が増加する。さらに、観察者の位置がa又はeの位置となると、左眼及び右眼に視認される画像において、左入力画像と右入力画像の領域が半々となる。観察者が視認する画像の半分の領域が逆視領域となる。
一方、図53Bに示すように、観察者の位置にしたがい、傾斜角度θsを変化させれば、逆視領域の出現を抑制することが可能となる。
以上のように、本実施の形態においては、観察者の位置変化により裸眼立体ディスプレイ11の傾斜角度を動的に変更することにより、観察者が所定の位置に位置しない場合であっても、逆視領域の出現を抑制することが可能となる。
(実施の形態4)
本実施の形態は、逆視領域の出現を画像処理で抑止するとともに、観察者の位置に応じて裸眼立体ディスプレイ11を傾斜させる形態に関する。図54は立体表示装置101の構成を示す説明図である。立体表示装置101の構成は画像入替部17を除き、実施の形態3と同様である。画像入替部17は、裸眼立体ディスプレイ11に表示するべき左眼画像及び右眼画像を入力して受け付ける。画像入替部17は、画像入替処理を行い、処理後の画像を裸眼立体ディスプレイ11に出力する。画像入替処理については、後述する。
画像入替処理の説明に先立ち、観察者の移動による画像の見え方の変化について説明する。図55は、裸眼立体ディスプレイ11単体の見え方の変化についての説明図である。図55Aは観察者Viが裸眼立体ディスプレイ11の正面に位置する場合の説明図である。図55Bは観察者Viが裸眼立体ディスプレイ11の正面から+x方向に移動した場合の説明図である。
図55A及び図55Bに示したように、観察者Viと裸眼立体ディスプレイ11との距離は、最適視認距離(Dop)×0.5に位置しており、最少立体視認距離(Dmin)よりも小さい。このため、観察者Viの左眼及び右眼が見る画像は、二次光又は三次光等の高次光の影響により、左眼用画素11Lの入力画像と右眼用画素11Rの入力画像の繰り返しとなる。
このため、観察者Viが裸眼立体ディスプレイ11の正面にいる場合、観察者Viの右眼が見る画像、左眼が見る画像は、図55Aの下段に示したようになる。すなわち、右眼が見る画像の中央部分は第2の領域A2の画像である。しかし、右眼が見る画像の左右両端部は、第2の領域A2の画像以外が高次光の影響により混入する。左眼が見る画像の中央部分は第1の領域A1の画像である。しかし、左眼が見る画像の左右両端部は第1の領域A1の画像以外が高次光の影響により混入する。
次に、立体表示装置101の画像の見え方について説明する。図56は立体表示装置1と観察者の位置との関係を示す説明図である。図56に示す立体表示装置101は、θ=0で設定されているため、裸眼立体ディスプレイ11が傾いていない。図56に示す三角形で囲んだ白抜きの文字のa、b、c、d、eは、観察者の位置を示す。それぞれの位置は、観察者の左眼ELと右眼ERとの中間位置を示す。
図57は観察者Viの位置と観察者Viが視認する画像との関係を示す説明図である。図57Aは画像入替部17がない場合の画像を示す。図57Bは画像入替部17がある場合の画像を示す。画像入替部17は裸眼立体ディスプレイ11に表示する左眼画像と右眼画像とを入れ替える。それにより、空間結像素子12を組み合わせた立体表示装置101において、画像中央部分の逆視が正視に変換される。しかしながら、観察者Viが位置c以外(例えば、位置a、b、d、e)のいずれかの位置に移動すると、逆視の領域が増大する。
そこで、観察者Viの位置にしたがい、裸眼立体ディスプレイ11を傾斜させる。図58は観察者Viの位置と観察者Viが視認する画像との関係を示す説明図である。図58に示すように観察者Viの位置に合わせて、裸眼立体ディスプレイ11を初期値状態からθs傾ける。それにより、観察者Viが立体表示装置1の位置cから移動した場合であっても、逆視領域の増大を抑制することが可能となる。
図59は立体表示装置101が備える画像入替部17の構成を示すブロック図である。画像入替部17はCPU17a、ROM17b、RAM17c、画像入力部17d、画像出力部17eを含む。CPU17aはROM17bに記憶された制御プログラムをROM17bに展開して実行することにより、各部を制御する。RAM17cは例えばSRAM、DRAM、フラッシュメモリである。RAM17cはCPU17aによるプログラムの実行時に発生するデータを一時的に記憶する。画像入力部17dは裸眼立体ディスプレイ11に表示すべき画像が入力される。画像出力部17eは入力画像を変換処理した後の変換画像を出力する。
図60は画像入替部17が行う画像入替処理の手順を示すフローチャートである。CPU17aは、画像入力部17dを介して入力画像を取得する(ステップS11)。次に、CPU17aは逆視領域の左眼画像と右眼画像とを入れ替える(ステップS12)。そして、CPU17aは入替を行った画像を、画像出力部17eを介して、裸眼立体ディスプレイ11に出力する(ステップS13)。
次に、傾斜角度θsの算出方法について説明する。図61は傾斜角度θsの算出方法を説明するための説明図である。図61Aは観察者Vi及び立体表示装置101を上から見た上面図である。図61Bは観察者Vi及び立体表示装置101をx軸方向から見た側面図である。θsを求めるための基準として、基準点Pを定める。基準点Pは空中浮遊像に含まれる点である。基準点Pは、空間結像素子12に対して、裸眼立体ディスプレイ11の表示領域の中心点と面対称の点である。空間結像素子12と裸眼立体ディスプレイ11との距離をWDとすると、空間結像素子12と基準点Pとの距離もWDとなる。空間結像素子12は、裸眼立体ディスプレイ11の映像を面対称の位置に結像させるからである。なお、観察者Viの左眼EL、右眼ERを結ぶ直線はx軸に平行であるとする。
次の2つの直線がなす角が、傾斜角度θsである。2つの直線は、基準点P、観察者Viの左眼EL、右眼ERをxz平面に射影して求める。一方の直線は、z軸に平行な直線V1である。他方の直線は、基準点Pと左眼EL、右眼ERの中間点を結ぶ線分に平行な直線V2である。
基準点Pから観察者Viの両眼EL、ERの位置までのz軸方向の距離をΔZとする。基準点Pと左眼EL、右眼ERの中間点とx軸方向の距離をΔXとする。そうすると、θsは以下の式(3)で求まる。
θsの正負については、観察者が+x方向に移動した場合に正の値とし、観察者が-x方向に移動した場合に負の値とする。
以上のように本実施の形態においては、観察者が立体表示装置101の正面にいる場合、画像処理により、逆視領域の出現を抑制することが可能となる。また、観察者の位置により動的に裸眼立体ディスプレイ11を傾けて配置するので、観察者が立体表示装置101の正面に居なくても正面にいた場合と同様逆視領域の出現を抑制することが可能となる。
なお、本実施形態においては、観察者が正面に位置するとき、θ=0と設定したが、実際に使用する空間結像素子の特性が理想通りでない場合、正面で左眼及び右眼から正視に見える領域にずれが生じ場合がある。このずれを補正し、左眼及び右眼から正視に見える領域を最大にするために、θに補正角を加えることも可能である。例えば、空間結像素子の特性を補正するために、θ=0.9と設定してもよい。
(実施の形態5)
本実施の形態は、観察者の位置変化により、空間結像素子12を傾ける構成に関する。本実施の形態では、裸眼立体ディスプレイ11を傾けるのではなく、空間結像素子12を傾けることにより、観察者の位置が変化しても、観察者が視認する画像に逆視領域が出現することを抑止する。
図62は立体表示装置102の構成を示す説明図である。本実施の形態の立体表示装置102は裸眼立体ディスプレイ11、空間結像素子12、制御部14、撮像部15、アクチュエータ16を含む。アクチュエータ16は空間結像素子12をz2軸に平行な軸を回転軸とし、反時計回りに角度θで傾けて配置する。裸眼立体ディスプレイ11及び空間結像素子12それぞれの構成は実施の形態1と同様であるから、説明を省略する。また、撮像部15の構成は実施の形態3と同様であるから、説明を省略する。
制御部14は機能部として、視点検出部141、角度算出部142、信号出力部143を含む。視点検出部141、角度算出部142は、実施の形態3と同様である。信号出力部143は角度算出部142より傾斜角度θsとする制御信号を受け付けた場合、空間結像素子12の第1の方向に対する傾斜角度がθからθsとなるように、アクチュエータ16を動作させる。信号出力部143は空間結像素子12の第1の方向に対する傾斜角度がθsとなったら、アクチュエータ16の動作を停止する。実施の形態3と同様に、本実施の形態のアクチュエータ16は、動作を停止することで、その角度を保持するように構成されているため、空間結像素子12は、傾斜角度θsで動かないように支持される。
次に、空間結像素子12の傾斜角度を動的に変更する意義について説明する。図63は立体表示装置102と観察者の位置との関係を示す説明図である。図63に示す三角形で囲んだ白抜きの文字のa、b、c、d、eは、観察者の位置を示す。それぞれの位置は、観察者の左眼ELと右眼ERとの中間位置を示す。
図64は観察者の位置と観察者が視認する画像との関係を示す説明図である。図64は、観察者の位置を検出し、それに応じて傾斜角度θsを変更した場合に、観察者が視認する画像を示している。図64に示すように、実施の形態3と同様に、観察者の位置にしたがい、傾斜角度θsを変化させれば、空間結像素子12に入射する画像の左右が入れ替わり、逆視領域の出現を抑制することが可能となる。
以上のように、本実施の形態においては、観察者の位置変化により空間結像素子12の傾斜角度を動的に変更することにより、観察者が立体表示装置1の正面に位置しない場合であっても、逆視領域の出現を抑制することが可能となる。
(実施の形態6)
本実施の形態においては、実施の形態4が実施の形態3に画像入替処理を加えた形態で
あるのと同様に、実施の形態5に画像入替処理を加えた形態である。本実施の形態は、逆視領域の出現を画像入替処理で抑止するとともに、観察者の位置に応じて空間結像素子12を傾斜させる形態に関する。図65は立体表示装置103の構成を示す説明図である。立体表示装置103の構成は画像入替部17を除き、実施の形態5と同様である。画像入替部17は、裸眼立体ディスプレイ11に表示するべき左眼画像及び右眼画像を入力して受け付ける。画像入替部17は、画像入替処理を行い、処理後の画像を裸眼立体ディスプレイ11に出力する。画像入替処理は、実施の形態4と同様であるから、説明を省略する。
観察者Viの移動による画像の見え方の変化や、立体表示装置103の画像の見え方、画像入替部17による画像処理は、実施の形態4と同様であるから、説明を省略する。
(実施の形態7)
本実施の形態においては、実施の形態1に加えて、画像処理を追加する形態である。前記したように、実施の形態1では、観察者が見る画像に、正視と逆視となる領域が第1の方向(観察者の左眼と右眼が並ぶ方向)に交互に混在する場合がある。図66は、逆視となる領域の一例を示す模式図である。実施の形態1に記載した立体表示装置1(図1参照)に、図66Aに示した左眼画像及び右眼画像を入力し、裸眼立体ディスプレイ11と空間結像素子12との距離が、例えば裸眼立体ディスプレイ11の最適視認距離Dop×0.5であった場合、所定の位置に位置する観察者の左眼及び右眼には、図66Bに示すように、左眼画像と右眼画像とが入れ替わる領域が存在し、逆視として視認される。このとき、左眼画像及び右眼画像において、逆視となって視認される領域は、図66Cに示すように領域LA及び領域LBと領域RA及び領域RBとなる。
そこで、本実施の形態においては、左眼画像と右眼画像の画像とで相互に入れ替える領域をあらかじめ定め、あらかじめ定めた領域に対応する部分の画像を入れ替え、更に逆視領域の出現を抑制する。
相互に入れ替える領域は、裸眼立体ディスプレイの表示画面サイズ及び立体視域、裸眼立体ディスプレイと空間結像素子の距離及び配置関係、及び観察者の位置から定めることができる。したがって、裸眼立体ディスプレイと空間結像素子の距離を含む配置関係が決定されていれば、裸眼立体ディスプレイの輝度プロファイルから取得した一次光が支配的な領域の形成に寄与する光線角度と、空間中に結像する裸眼立体ディスプレイの表示画面の幅と、空間中に結像した画像と観察者との距離とから、相互に入れ替える領域を求めることができる。
図67は、相互に入れ替える領域の算出方法を説明するための説明図である。図68は、観察者が移動した相互に入れ替える領域の一例を示す模式図である。図67Aには、観察者Viの両眼EL,ERと空間結像素子12と空間結像した裸眼立体ディスプレイの表示を示している。図67Bには、観察者の左眼及び右眼が見る空間結像中の領域LAと領域LB及び領域RAと領域RBを示している。
空間結像の幅WSは、空間結像素子12が一方の面側に位置する実体を、他方の面側に実像として結像することから、裸眼立体ディスプレイ(図示せず)の表示面の幅と等しい。また、空間結像に含まれる基準点Pは、空間結像素子からz軸方向に距離WDの位置に位置する。距離WDは、実施の形態3で説明したように、空間結像素子12と裸眼立体ディスプレイとの距離WDと等しい(図51参照)。
基準点Pから、観察者の左眼ELと右眼ERの中間点とのz軸方向の距離をΔZとし、裸眼立体ディスプレイの輝度プロファイル(図34参照)から取得した一次光が支配的な領域の形成に寄与する光線角度θLとすると、空間結像の幅WSのうち、中央に位置する領域の割合EAは以下の式(4)で求まる。更に、求めた領域の割合EA及び相互に入れ替える領域を含む領域数Lnは、式(5)で求まる。更に、相互に入れ替える領域数Lmは、式(6)で求まる。更に、領域LA及び領域LB(もしくは領域RA及びRB)がそれぞれ空間結像に占める割合Wxは、式(7)で求まる。
例えば、空間結像素子と裸眼立体ディスプレイとの距離がDop×0.5であり、裸眼立体ディスプレイの表示幅が150mmであり、光線角度θLが12°の場合、観察者がΔZ=400mmとなる位置に位置すると、空間結像のうち、中央の領域が占める割合EAは、(tan(12°)×400)/150=56.7%となる。
更に、空間結像中に生じる領域数Lnは、INT((1-0.567)/(1/2×0.567))×2+3=3であり、相互に入れ替える領域数Lmは、INT(3/3)×2=2であり、空間結像に占める領域LA及びRAそれぞれの割合Wxは、(1―0.567)/2=21.65%となる。正視と逆視となる領域が第1の方向(観察者の左眼と右眼が並ぶ方向)に交互に混在することから、図67Bに示すように、観察者の左眼が見る空間結像には、領域LAと中央の領域(正視)と領域LBとが第1の方向に配列され、観察者の右眼が見る空間結像には、領域RAと中央の領域(正視)と領域RBとが第1の方向に配列される。
また例えば、空間結像素子と裸眼立体ディスプレイとの距離がDop×0.5であり、観察者がΔZ=400mmからΔZ=150mmとなる位置に移動すると、図68Aに示すような、空間結像を観察者は見ることになる。この場合、中央の領域が占める割合EAは、(tan(12°)×150)/150=21.3%であり、空間結像中に生じる領域数Lnは、INT((1-0.213)/(1/2×0.213))×2+3=5であり、相互に入れ替える領域数Lmは、INT(5/3)×2=2となり、空間結像に占める領域LA及びRAそれぞれの割合Wxは、(1―0.213)/2-((1-0.213)/2-0.213)=21.3%となり、図68Bに示すように、相互に入れ替える領域LA及びLBと領域RA及びRBは、それぞれ中央の領域に隣接する位置に位置する。
相互に入れ替える領域が空間結像に占める割合を求めることで、左眼画像及び右眼画像で相互に入れ替える画像の大きさを取得することができる。例えば、左眼画像及び右眼画像が水平方向に1920ピクセルで構成された画像である場合、ΔZ=400mmでは、画像の中心から画像端部に向けて水平方向に、それぞれ544ピクセル(=1920×0.567/2)離れた位置を起点に、更に画像端部に向けて水平方向にそれぞれ416ピクセル(=1920×0.2165)離れた位置に至る範囲の画像を、左眼画像と右眼画像とで相互に入れ替える。同様に、ΔZ=150mmでは、画像の中心から画像端部に向けて水平方向に、それぞれ204ピクセル(=1920×0.213/2)離れた位置を起点に、更に画像端部に向けて水平方向にそれぞれ409ピクセル(=1920×0.213)離れた位置に至る範囲の画像を、左眼画像と右眼画像とで相互に入れ替える。
以上のように、観察者の位置に応じて、中央に位置する領域の割合EAを求めることができれば、相互に入れ替える領域が空間結像に占める割合を求めることができ、左眼画像及び右眼画像を相互に入れ替える画像の大きさを求めることができる。なお、中央に位置する領域の割合EAを求めるために、裸眼立体ディスプレイの輝度プロファイルから取得した光線角度θLを利用したが、この他に裸眼立体ディスプレイを構成する表示パネルの画素ピッチ及びレンチキュラレンズのレンズピッチ、画素とレンズ間距離などの条件を利用してもよいし、裸眼立体ディスプレイの表示面を撮影するカメラを用いて、裸眼立体ディスプレイから出射する光の様子を所定の位置から撮影し、撮影した画像から求めてもよい(図8参照)。
図69は、本実施の形態の立体表示装置104の構成を示す説明図である。立体表示装置104の構成は、入力画像入替部170を除き、実施の形態1と同様である。入力画像入替部170は、左眼画像及び右眼画像を入力して受け付け、画像入替処理を行い、処理後の画像を裸眼立体ディスプレイ11に出力する。
図70は、入力画像入替部170の構成例を示すブロック図である。図70に示すように、入力画像入替部170は、領域パラメータ格納部170aと画像入替部170bとで構成される。
領域パラメータ格納部170aは、メモリなどの記憶手段であり、画像入替部170bが参照する領域パラメータを複数記憶する。例えば、左眼画像及び右眼画像の内、相互に入れ替える画像の数と夫々の画像の大きさを、上記した算出方法を用いてΔZ別に算出しておき、領域パラメータとして複数格納する。ΔZの値は、あらかじめ所定の位置から観察することを前提に、定数として与えてもよいし、観察者自身が所定の位置に応じて、外部から入力するように構成してもよい。
画像入替部170bは、論理回路やメモリなどの記憶手段を組み合わせたハードウェアとして構成してもよいし、CPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)などのメモリとを含むコンピュータで構成し、CPUがROMに記憶された制御プログラムをRAMに展開して実行することにより、制御プログラムを、画像入替部170bとして機能させるようにしてもよい。
図71は、入力画像入替部170が行う画像入替処理の手順を示すフローチャートである。図72は、入力画像入替部170が行う画像生成の一例を示す模式図である。本実施の形態の入力画像入替部170を用いた画像入替処理について、図71のフローチャート及び図72の概念図を用いて説明する。
まず、画像入替部170bは、領域パラメータ格納部170aから領域パラメータを取得する(ステップS21)。例えば、図72Aに示すように、領域LA及びLBと、RA及びRBを特定できるような値(各領域に対応する画像の位置及び大きさ)を取得する。次に画像入替部170bは、入力画像を取得する(ステップS22)。例えば、図72Bに示すような、左眼画像及び右眼画像を取得する。
次に画像入替部170bは、領域パラメータで特定した画像を、入力画像から抽出する(ステップS23)。次に画像入替部170bは、抽出した画像を相互に入れ替える(ステップS24)。例えば、図72B及び図72Cに示すような、領域LAに対応する左眼画像の画像と、領域RAに対応する右眼画像の画像とを相互に入れ替える。更に、領域LBに対応する左眼画像の画像と、領域RBに対応する右眼画像の画像とを相互に入れ替えることで、図72Cに示すような、左眼用画素の入力画像及び右眼用画素の入力画像を生成する。次に画像入替部170bは、生成した画像を裸眼立体ディスプレイ11に出力する(ステップS25)。
以上のように、入力画像入替部170(画像処理部)は、裸眼立体ディスプレイ11(投影器)が投影する2つ以上の画像を、逆視領域(第1の方向で配列する領域から任意の領域を選択)における左眼画像(一方の画像)と右眼画像(他方の画像)とを相互に入れ替えて裸眼立体ディスプレイ11に入力する。
本実施の形態において、裸眼立体ディスプレイ11の立体視域の形成に寄与する一次光の光線角度と観察者が位置する所定の位置を基に、逆視となる領域を定め、定めた領域に対応する左眼画像及び右眼画像の画像を相互に入れ替え、裸眼立体ディスプレイ11の左眼用画素及び右眼用画素それぞれに表示する。
更に、実施の形態1と同様に、裸眼立体ディスプレイ11をX軸方向に角度θで傾斜して配置することで、空間結像素子12に入射する画像の左右が入れ替り、所定の位置において観察者が見る画像の全面で逆視を抑制することが可能となる。
なお、画像入替部170bが行う画像入替処理について、領域LA及びLBと、RA及びRBを用いて説明したが、更に逆視となる領域が増えた場合に対しても同様に適用することができる。図73は、入力画像入替部が行う画像生成の一例を示す模式図である。例えば、ΔZ=110mmであった場合、図73Aに示すように、領域LAとLBとLCとLDと、領域RAとRBとRCとRDとを特定できるような画像の大きさや位置を値として、領域パラメータ格納部170aに格納しておけば、図73Bに示すように、入力された左眼画像と右眼画像とで、相互に画像を入れ替え、図73Cに示すような、左眼用画素の入力画像及び右眼用画素の入力画像を生成することができる。
相互に入れ替わる領域の大きさは、ΔZ別にパラメータとして保持するため、観察者は、例えば設定を切り替えることで、全面で逆視が抑制された空間結像を、任意の観察位置で見ることができる。
また、本実施の形態では、実施の形態1と同様に裸眼立体ディスプレイ11を傾けた構成としたが、実施の形態2と同様に空間結像素子12を傾けた構成にも適用することができる。空間結像素子12を傾けた状態においても、本実施の形態で説明したように、裸眼立体ディスプレイ11と空間結像素子12との距離に基づいて、入力画像入替部170で処理することで、所定の位置において観察者が見る画像の全面で逆視を抑制する。
更には、実施の形態6と同様に、裸眼立体ディスプレイに設けたx軸方向の傾きをなくし、左右画像を入れ替える。その場合、観察者の左右両眼が見る空間結像は、図67Bに示す図と同じになる。つまり、この場合においても、本実施の形態で説明したように、式(4)~式(7)を用いて、相互に入れ替える領域を算出することができる。算出した結果に基づき、本実施の形態で説明したように、相互に入れ替える領域の左右画像を入れ替えれば良い。
以上のように、裸眼立体ディスプレイに設けたx軸方向の傾きをなくした場合においても、実施の形態6と同様に、あらかじめ左右画像を入れ替え、相互に入れ替える領域の画像を入れ替えることにより、全面で逆視を抑制することができる。
また更には、実施の形態4に対する実施の形態6の関係同様に、空間結像素子に設けたx軸方向の傾きをなくした場合においても、あらかじめ左右画像を入れ替えれば、本実施の形態で説明したように、相互に入れ替える領域の画像を入れ替えることにより、全面で逆視を抑制することができる。
(実施の形態8)
実施の形態7では、所定の観察位置を基に、相互に入れ替える領域を求め画像を入れ替えたが、観察者の位置を動的に取得してもよい。本実施の形態では、観察者の位置を動的に取得し、取得した位置を基に逆視となる領域を求め、領域に対応する左眼画像及び右眼画像の画像を相互に入れ替える。
図74は、観察者が見る画像の一例を示す説明図である。実施の形態5に記載した立体表示装置102(図62参照)に、図74Aに示した左眼画像及び右眼画像を入力する。
例えば、空間結像と観察者Viとの距離ΔZが、350mmであった場合、観察者の左眼及び右眼が見る画像には、図74Bに示すように、左眼画像と右眼画像とが入れ替わる領域が存在する。入れ替わった領域は、逆視となる。ここで、観察者Viが移動し、空間結像素子12と観察者Viとの距離が、250mmに変化すると、観察者の左眼及び右眼が見る画像には、図74Cに示すように、図74Bと比べて左眼画像と右眼画像とが入れ替わる領域が拡大する。すなわち、逆視となる領域が拡大する。
そこで、本実施の形態においては、空間結像素子と観察者との距離に基づいて、左眼画像及び右眼画像とで相互に入れ替える領域を動的に特定し、動的に特定した領域に対応する部分の画像を入れ替え、更に逆視領域の出現を抑制する。相互に入れ替える領域は、実施の形態7で述べたように、裸眼立体ディスプレイ11の立体視域の形成に寄与する一次光の光線角度と観察者の位置で定まる。
図75は、本実施の形態の立体表示装置105の構成を示す説明図である。立体表示装置105の構成は、入力画像入替部171を除き、実施の形態5と同様である。入力画像入替部171は、左眼画像及び右眼画像を入力して受け付け、視点検出部141から取得した観察者Viの両眼位置に基づいて画像入替処理を行い、処理後の画像を裸眼立体ディスプレイ11に出力する。
図76は、入力画像入替部171の構成例を示すブロック図である。図76に示すように、入力画像入替部171は、領域パラメータ格納部171aと画像入替部171bと距離算出部171cと領域算出部171dとで構成される。
領域パラメータ格納部171aは、メモリなどの記憶手段であり、領域算出部171dが参照する領域パラメータを複数格納する。例えば、裸眼立体ディスプレイ11の輝度プロファイル(図34参照)から取得した一次光が支配的な領域の形成に寄与する光線角度θL及び空間結像の幅WSを、領域パラメータとして格納する。
画像入替部171b及び距離算出部171c及び領域算出部171dは、論理回路やメモリなどの記憶手段を組み合わせたハードウェアとして構成してもよいし、CPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)などのメモリとを含むコンピュータで構成し、CPUがROMに記憶された制御プログラムをRAMに展開して実行することにより、制御プログラムを、画像入替部170bとして機能させるようにしてもよい。
図77は、入力画像入替部171が行う画像入替処理の手順を示すフローチャートである。図78は、入力画像入替部171が行う画像生成の一例を示す模式図である。本実施の形態の入力画像入替部171を用いた画像入替処理について、図77のフローチャート及び図78の概念図を用いて説明する。まず、距離算出部171cは、制御部14の視点検出部141から、観察者Viの両眼の位置を取得する(ステップS31)。次に距離算出部171cは、取得した観察者Viの両眼の位置から、基準点Pと観察者Viとの距離ΔZを求める(ステップS32)。領域算出部171dは、領域パラメータ格納部171aが格納する領域パラメータを取得する(ステップS33)。
次に領域算出部171dは、取得した領域パラメータを元に、距離算出部171cが求めた距離ΔZを用いて相互に入れ替える領域を求める(ステップS34)。ΔZを用いた相互に入れ替える領域の求め方は、実施の形態7で述べたとおりである。例えば、ΔZが400mmである場合、図78Aに示すような、領域LAとLB及び領域RAとRBが求められる。
画像入替部171bは、入力画像(左眼画像及び右眼画像)を取得する(ステップS35)。例えば、図78Bに示すような、左眼画像及び右眼画像を取得する。次に画像入替部171bは、領域算出部171dで求めた領域に対応する画像を、入力画像から抽出する(ステップS36)。次に画像入替部171bは、抽出した画像を相互に入れ替える(ステップS37)。例えば、図78B及び図78Cに示すような、領域LAに対応する左眼画像の画像と、領域RAに対応する右眼画像の画像とを相互に入れ替え、領域LBに対応する左眼画像の画像と、領域RBに対応する右眼画像の画像を相互に入れ替えることで、図78Cに示すような、左眼用画素の入力画像及び右眼用画素の入力画像を生成する。次に画像入替部171bは、生成した画像を裸眼立体ディスプレイ11に出力する(ステップS38)。
以上のように、入力画像入替部171(画像処理部)は、裸眼立体ディスプレイ11(投影器)が投影する2つ以上の画像を、逆視領域(第1の方向で配列する領域から任意の領域を選択)における左眼画像(一方の画像)と右眼画像(他方の画像)とを、観察者Viの位置に応じて、動的に相互に入れ替えて裸眼立体ディスプレイ11に入力する。
図79及び80は観察者の位置と観察者が視認する画像との関係を示す説明図である。本実施の形態において、裸眼立体ディスプレイ11の立体視域の形成に寄与する一次光の光線角度と動的に取得した観察者の位置を基に、逆視となる領域を定め、定めた領域に対応する左眼画像及び右眼画像の画像を相互に入れ替え、裸眼立体ディスプレイ11の左眼用画素及び右眼用画素それぞれに表示する。その場合、図79のように、ΔZに基づいて画像処理を行うと、ΔX=0の場合であれば観察者が見る画像の全面で逆視を抑制することが可能となるが、観察者がΔX=0から移動すると逆視領域が出現する。このため、実施の形態5と同様に、観察者Viの位置からΔXを求め、ΔXに応じて空間結像素子12の傾斜角度θsを変えることで、図80に示すように、観察者がΔX=0にいない場合であっても、観察者Viが見る画像の全面で逆視を抑制することが可能となる。
また、本実施の形態では、実施の形態5と同様に、空間結像素子12を観察者の位置に応じて動的に傾ける構成としたが、実施の形態3と同様の構成にも適用することができる。裸眼立体ディスプレイ11を、観察者Viの位置に応じて動的に傾けた場合においても、本実施の形態で説明したように、入力画像入替部で処理することで、観察者Viが見る画像の全面で逆視を抑制する。
更には、実施の形態6と同様に、空間結像素子に設けたx軸方向の傾きをなくし、左右画像を入れ替える。その場合、観察者の左右両眼が見る空間結像は、図74Bに示す図と同じになる。したがって、空間結像素子に設けたx軸方向の傾きをなくした場合においても、実施の形態6と同様に、あらかじめ左右画像を入れ替えれば、本実施の形態で説明したように、相互に入れ替える領域の画像を入れ替えることにより、全面で逆視を抑制することができる。
また更には、実施の形態6に対する実施の形態4の関係同様に、裸眼立体ディスプレイに設けたx軸方向の傾きをなくした場合においても、あらかじめ左右画像を入れ替えれば、本実施の形態で説明したように、相互に入れ替える領域の画像を入れ替えることにより、全面で逆視を抑制することができる。
各実施の形態で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。