以下、本開示の実施形態を、添付図面を用いて説明する。各図において共通の構成については同一の参照符号が付されている。
[第1の実施形態]
図1は、本開示の画像表示装置100の構成例を示す概略図である。図2は、本開示の画像表示装置100の光学モデルの概略を示す図である。
図1は、第1の実施形態の画像表示装置100の斜視図である。図2は、画像表示装置100をXZ平面でみたA-A’の断面構造及び光学モデルを示す図である。
説明のために図1に示すような座標軸を用いて画像表示装置100の説明を行う。なお、説明を簡単にするために、画像表示装置100の各構成との関係が直行又は平行となるような座標軸を設定している。
画像表示装置100は、立体的な被写体(画像)を空中に投影する装置であり、3次元ディスプレイ101及び空間結像素子102を有する。空中像104は、空間結像素子102によって、空中に結像する3次元ディスプレイ101の画面103を示している。本開示では、観察者の両眼はX方向に並び、観察者は矢印105の方向に空中像104を見るものとする。
なお、3次元ディスプレイ101及び空間結像素子102は筐体に収められているものとする。3次元ディスプレイ101及び空間結像素子102を納める画像表示装置100の筐体はどのような形状でもよい。
3次元ディスプレイ101は、複数の視点像を形成するための複数の画素を備えた表示パネルと、各視点像に対応する画素から出射される光を空間的に視点毎に分離するための光学分離手段とを備える。本開示の3次元ディスプレイ101は、後述するように、所定の表示パネルに対する光学分離手段の設計において、空間結像素子によって結像された浮遊画像を観察者が立体像として視認できるように設計される。このため、観察者が空間結像素子を介さずに本開示の3次元ディスプレイ101の画面を直接観察した場合、画面内に正視領域と逆視領域が交互に出現し、観察者は好適に立体像を観察できない。しかし、本明細書では説明の便宜上、この光学分離手段を備えた表示パネルを「3次元ディスプレイ」と呼ぶ。
第1の実施形態の3次元ディスプレイ101は、光学分離手段としてパララックスバリアを採用した3次元ディスプレイ101である。3次元ディスプレイ101は、表示パネル110及びパララックスバリア130を有する。
表示パネル110は、液晶パネル、LEDパネル、及びOLEDパネル等であり、異なる視点の像(視点像)を含む表示像を表示する。表示パネル110は、表示像の画素を表示する複数の画素ユニット120から構成される。
画素ユニット120は、各視点像の画素を表示する複数の視点画素(視点画素群)から構成される。例えば、図2に示すように、表示パネル110の画素ユニット120は、X方向に交互に並ぶ二つの視点画素121、122から構成される。視点画素121には左眼視点の視点像の画素が表示され、視点画素122には右眼視点の視点像の画素が表示される。したがって、この場合、表示パネル110には二つの視点像を含む表示像が表示される。
本実施形態では、二つの視点像を含む表示像を表示する表示パネル110を一例として説明するが、三つ以上の視点像を含む表示像を表示する表示パネル110でもよい。この場合、画素ユニット120は、複数の視点像の各々の画素を表示する視点画素群から構成される。
パララックスバリア130は遮光性のバリアであり、一定のパターンで配置されたスリット131を有する。図3は、本開示の3次元ディスプレイ101の中央部におけるパララックスバリア130を説明する模式図(XY平面図)である。バリアにより視点画素からスリットを通過する光線の角度は制限される。したがって、表示パネル110にパララックスバリア130を好適に配置することによって、スリット131を通して、各画素ユニット120の視点画素121(視点画素群)のみが見える領域と、各画素ユニット120の視点画素122(視点画素群)のみが見える領域ができる。すなわち、スリット131を備えたパララックスバリア130は表示パネル110に表示される表示像から発せられる光線群を視点像毎の光線群に振り分ける光学分離手段(振分ユニット)として機能する。なお、スリット131は、一つの画素ユニット120に対して一つのスリット131が対応するように配置される。
なお、パララックスバリア130としては、遮光部を電気的に透明化できる例えばスイッチャブル液晶(switchable liquid crystal)(LC)パララックスバリアを使用することができる。この場合、遮光部の透明化により、立体像だけでなく、平面像も提供できる。
また、図2に示すように、3次元ディスプレイ101の内部は、空気と異なる屈折率nを有するため、視点画素121、122からスリット131を通過する光線は、空気界面で屈折する。例えば、表示パネル110の中心に位置する画素ユニット120の左端から出て、パララックスバリア130の中心に位置するスリット131を通過する光線を光線LCl1とし、スリット131への入射角αとした場合、入射角αでスリット131を通過する光線LCl1は、空気界面で屈折し、出射角βの光線LCl2として空間結像素子102に向かって進む。ここで、本開示の画像表示装置100は、XZ平面に射影された表示パネル110の表示面の法線ベクトルと、XZ平面に射影された空間結像素子102の面Sの法線ベクトルとが重なるように設計されている。このため、光線LCl2は空間結像素子102へ入射角βで入り、詳細は後述する空間結像素子102の特性により、出射角-βの光線LCl3として出射される。なお、時計回りを正の角度としている。
空間結像素子102は、一方の面側から入力された被写体の光を反射又は屈折させ、他方の面側の空中に被写体の像を凹凸関係が反転した実像として結像する結像手段である。このため、光線LCl3と同様の経路で進んできた他の光線群により、空間結像素子102の面Sに面対称の位置に、3次元ディスプレイ101の画面が実像として結像する(空中像104)。なお、図2に示す空間結像素子102は、具体的な形状、大きさ、及び位置を表すものではなく、概念的な形状、大きさ、及び位置を表したものである。
空間結像素子102としては、例えば、アフォーカルレンズアレイ、2回反射を起こすミラー素子アレイ、再帰反射シート及びハーフミラーを組み合わせた光学系等を用いることができる。ここで、上記の空間結像素子102について説明する。
まず、アフォーカルレンズアレイについて説明する。図4A及び図4Bは、本開示の空間結像素子102として機能するアフォーカルレンズアレイ400の構造の一例を説明する斜視図である。
図4Aに示すアフォーカルレンズアレイ400は、平面に要素レンズが並べられたレンズアレイ401、402を2枚組み合わせた構造であり、各々のアレイ面の各要素レンズは対向する面の要素レンズと対をなす構造である。また、対を成す要素レンズは、光軸が同軸となるように配置され、各レンズアレイ401、402の要素レンズの焦点がアフォーカルレンズアレイ400の内部で一致するように設計されている。これら焦点群で形成される面をS1とする。
なお、アフォーカルレンズアレイ400の構成としては、2方向にレンズ効果を発するアレイが好適であるが、図4Bに示す1方向にシリンドリカルレンズのアレイ411、412である所謂レンチキュラレンズの適用も可能である。
図5A及び図5Bは、アフォーカルレンズアレイ400の動作原理を説明する図である。
図5Aに示すレンズアレイ401、402の要素レンズは、焦点距離が等しく設計されており(f1=f2)、そのため、面S1はアフォーカルレンズアレイ400のZ軸方向における中心面となっている。
光源O1から出た光線LOa1、LOb1、LOc1、LOd1はレンズアレイ401に入射する。要素レンズに入射する光線LOa1、LOb1、及び、光線LOc1、LOd1は、要素レンズのピッチに対して要素レンズ面からO1までの距離が十分離れていれば、平行光とみなすことができる。このため、レンズアレイ401に入射し、屈折した光線LOa2、LOb2、及び、光線LOc2、LOd2は、面S1で交わり、レンズアレイ402で屈折し、光線LOa3、LOb3、LOc3、LOd3として出射される。f1=f2のとき、各光線の入射角及び出射角は等しくなるため、光線LOa3、LOb3、LOc3、LOd3は、面S1に対して光源O1と面対称の位置P1に集まる。したがって、光源O1が位置P1の位置に実像として結像される。同様に、光源O1より面S1との距離が離れた位置の光源O2は、位置P2に結像する。
図5Aに示すように、観察者は、位置P2の像を位置P1の像より手前に見ることになる。したがって、光源O1、O2の代わりに、三次元の被写体を配置した場合は、面S1に対して面対称の位置の空中に、被写体の凹凸関係が反転した実像が結像される。
以上のように、アフォーカルレンズアレイ400は、面S1に対して、一方の面側から入力された被写体を、他方の面側の空中に、凹凸関係が反転した実像として結像する空間結像素子102として機能する。なお、結像に寄与する光線の入射光線と出射光線の関係は、面Sの法線に対する入射角と出射角の大きさは同じで、符号が逆となる。
したがって、図5Bに示すように画面103とアフォーカルレンズアレイ400とを配置すれば、面S1と面対称の位置に画面103が実像として結像する。観察者は矢印105の方から、結像した空中像104を視認できる。
次に、ミラー素子アレイについて説明する。図6A及び図6Bは、本開示の空間結像素子102として機能するミラー素子アレイ600の構造の一例を模式的に説明する図である。図6Aは、ミラー素子アレイ600のUVW座標系におけるUV平面での平面図であり、図6Bは、ミラー素子アレイ600の領域Bの部分拡大斜視図である。
図6Aに示すようにミラー素子アレイ600は、U軸方向とV軸方向に平面的な広がりを有している。当該平面には一方の面から他方の面(又は他方の面から一方の面)に光を透過する菱形状の単位光学素子601が多数設けられている。
ここで、図6Bの領域Bの部分拡大斜視図を説明するために、3次元直交座標系U’V’Wを設定する。3次元直交座標系U’V’Wは、W軸を回転軸としてU軸及びV軸を45度回転した座標系であり、U’V’平面はUV平面と平行な平面である。
図6Bに示すように、ミラー素子アレイ600は、W軸方向に厚みを有している。単位光学素子601は、U’軸方向とV’軸方向に沿ってマトリクス状に配列される。各単位光学素子601は、互いに直交した内壁面がW軸方向に形成され、内壁面の各々は鏡面処理が施されている。
図7A及び図7Bは、本開示の空間結像素子102として機能する他のミラー素子アレイ700の構造の一例を説明する図である。図7Aは、ミラー素子アレイ700のUV平面図であり、図7Bは、ミラー素子アレイ700の領域Bの部分拡大斜視図である。
図7Aに示すように、ミラー素子アレイ700は、ミラー素子アレイ600と同様に、U軸方向とV軸方向に平面的な広がりを有している。領域Bの拡大斜視図を説明するために、図6Aと同様に3次元直交座標系U’V’Wを設定する。
図7Bに示すように、ミラー素子アレイ700は、V’W平面に平行な鏡面710を有する第1の素子701と、U’W平面に平行な鏡面711を有する第2の素子702が、W軸方向において密接した構造である。第1の素子701又は第2の素子702は、側面が鏡面である透明なガラス(又はアクリル樹脂)が、U’軸又はV’軸方向に等間隔で複数個が密接した構造である。したがって、ミラー素子アレイ700は、図7Aに示すように、W軸方向に、一方の面から他方の面に光を透過する菱形状の単位光学素子が、多数形成された構造となる。
図8、図9A、及び図9Bは、ミラー素子アレイ600、700の動作原理を説明する図である。ここでは、ミラー素子アレイ600を例に動作原理を説明するが、ミラー素子アレイ700も同様の動作原理である。
図8は、ミラー素子アレイ600をW軸方向から見たとき、光源Oから出て位置Pに結像する光の光路を模式的に示している。実線は光源から発せられた光を示し、点線は鏡面で反射した光を示す。図9は、U軸方向から見た図であり、ミラー素子アレイ600は、Y軸に対してW軸を傾けて配置している。ここで、ミラー素子アレイ600のV軸方向に形成され、かつ、ミラー素子アレイ600のW軸方向の厚さ中心に位置する面を面S2とする。
図8に示すように、光源Oから発せられた光は、ミラー素子アレイ600に入射する。入射した光が、ミラー素子アレイ600上に形成された直交する二つの鏡面で反射すると、点線で示す矢印の方向に進行する光となる。
なお、図8では、説明の簡略化のため、空間結像素子102を模式的な形状として表しており、実際の直交ミラー素子の間隔は、光源から空間結像素子102までの距離に比べ十分小さくなるように設計される。したがって、ミラー素子アレイ600の内部で2回反射する光の光路をW軸方向から見た場合、入射光と出射光とはほぼ重なる。このため、図9Aに示すように、光源O1から出た光のうち、ミラー素子アレイ600の内部の鏡面で2回反射した光は、面S2に対して光源Oと面対称の位置Pに集まる。したがって、光源O1が位置P1に実像として結像される。同様に、光源O1より面S2との距離が離れた位置の光源O2は、位置P2に結像する。
図9Aに示すように、観察者は位置P2の像を位置P1の像より手前に見ることになる。したがって、光源O1、O2の代わりに、三次元の被写体を配置した場合には、面S2に対して面対称の位置の空中に、被写体の凹凸関係が反転した実像が結像される。
以上のように、ミラー素子アレイ600は、面S2に対して、一方の面側から入力された被写体を、他方の面側の空中に、凹凸関係が反転した実像として結像する空間結像素子102として機能する。なお、結像に寄与する光線の入射光線と出射光線の関係は、面S2の法線に対する入射角と出射角の大きさは同じで、符号が逆となる。
したがって、図9Bに示すように画面103とミラー素子アレイ600を配置すれば、面S2と面対称の位置に画面103が実像として結像する。観察者は矢印105の方から、結像した空中像104を視認できる。
次に、再帰反射シート及びハーフミラーを組み合わせた光学系について説明する。まず、再帰反射シートについて説明する。図10A及び図10Bは、再帰反射シートの動作原理を示す図である。
再帰反射シートは、シート面に入射する光の入射角と、シート内部の反射面で反射されシート面から出射される光の出射角が原理上等しくなるように設計されている。
図10Aは、再帰反射シート1000の構造の一例を説明する側面図である。再帰反射シート1000は、ガラスビーズ等の球体1001が複数並べられた構造である。球体1001に入射する光は表面で屈折し、球体内で反射し、再び表面で屈折し、球体1001から出射する。入射面及び反射面が球面であるため、入射角と出射角は等しくなる。このため、図10Aに示す構造のシートは、光が入射した方向に反射する再帰反射シートとして機能する。
図10Bは、他の再帰反射シート1010の構造の一例を説明する側面図である。再帰反射シート1010は、光の入る方向に対して、三角錐又は四角錐の底面(反射面1011、1012)を複数並べた構造である。図10Bの側面図に示す反射面1011、1012がなす内角は90度に設定されているため、入射した光が各反射面1011、1012で反射すると、入射した方向と同じ方向に戻る。
図11A及び図11Bは、ハーフミラー1101及び再帰反射シート1102を組み合わせた光学系1100の動作原理を説明する図である。
光源O1から出た光線LOa11、LOb11、LOc11は、ハーフミラー1101で透過又は反射される。ハーフミラー1101で反射された光線LOa12、LOb12、LOc12は再帰反射シート1102で再帰反射され、光線LOa13、LOb13、LOc13として再びハーフミラー1101で透過又は反射される。ハーフミラー1101を透過した光線LOa13、LOb13、LOc13を、光線LOa14、LOb14、LOc14とする。光線LOa14、LOb14、LOc14は、ハーフミラー1101の中心に位置する面S3に対して光源O1と面対称の位置P1に集まる。したがって、光源O1が位置P1に実像として結像される。
同様に、光源O1より面S3との距離が離れた光源O2は、位置P2に結像する。図11Aに示すように、観察者は位置P2の像を位置P1の像より手前に見ることになる。したがって、光源O1、O2の代わりに、三次元の被写体を配置した場合には、面S3に対して面対称の位置の空中に、被写体の凹凸関係が反転した実像が結像される。
以上のように、光学系1100は、面S3に対して、一方の面側から入力された被写体を、他方の面側の空中に、凹凸関係が反転した実像として結像する空間結像素子102として機能する。
なお、結像に寄与する光線の入射光線と出射光線の関係は、面S3の法線に対する入射角と出射角の大きさは同じで、符号が逆となる。したがって、図11Bに示すように画面103と光学系1100とを配置すれば、面S3と面対称の位置に画面103が実像として結像する。観察者は矢印105の方から、結像した空中像104を視認できる。
なお、空間結像素子102としては、以上の例に限定されず、ある平面を定義でき、その平面の一方の面側の被写体を他方の面側の空中に凹凸関係が反転した実像として結像させる結像手段であれば使用することができる。
次に、本発明の特徴を明確化するために、従来の3次元ディスプレイと従来の空間結像素子を単に組み合わせときの問題を説明する。
はじめに、図12から図20を用いて従来の3次元ディスプレイ1201について説明する。
図12は、従来のパララックスバリア方式の3次元ディスプレイ1201の光学モデルを説明する図である。
右眼視点の視点像の画素が表示される視点画素1222と、左眼視点の視点像の画素が表示される視点画素1221が交互に配置される。
画素ユニット1220から距離hの位置には、一定の間隔で配置されたスリット1231を備えるパララックスバリア1230が配置される。スリット1231は、一つの画素ユニット1220に対して、一つのスリット1231が対応するように配置されている。
ここで、3次元ディスプレイ1201における光線を以下のように定義する。表示パネル1210の左端の画素ユニット1220における視点画素1222の左端から出射し、最短のスリット1231の中心を通る光線をLLr1、視点画素1221の右端から出射し、最短のスリット1231の中心を通る光線をLLl1、画素ユニット1220の中心から出射し、最短のスリット1231の中心を通る光線をLLc1とする。同様に、表示パネル1210の中央の画素ユニット1220から出射する光線をLCr1、LCl1、LCc1とし、表示パネル1210の右端の画素ユニット1220から出射される光線をLRr1、LRc1、LRl1とする。光線LLr1、LLl1、LLc1、LCr1、LCl1、LCc1、LRr1、LRl1、LRc1は、スリット1231を通過すると3次元ディスプレイ1201の内部の屈折率nと空気の屈折率との差により屈折する。屈折した光線をLLr2、LLl2、LLc2、LCr2、LCl2、LCc2、LRr2、LRl2、LRc2とする。
図12に示すように、通常、3次元ディスプレイ1201は、距離ODにおいて光線LLc2と光線LRc2とが交わるように設計されている。光線LLl2、LLc2、LCl2、LRl2、LRc2で囲まれた領域1260Lは、視点画素1221のみが見える領域であり、光線LLr2、LLc2、LCr2、LRr2、LRc2で囲まれた領域1260Rは、視点画素1222のみが見える領域である。以後、これらの領域1260L、1260Rを単一視点像視域と呼ぶ。
従来の3次元ディスプレイ1201において、左眼視点の視点像を視点画素1221で表示し、右眼視点の視点像を視点画素1222で表示し、左眼1250を領域1260L内に、かつ、右眼1251を領域1260R内に位置させると、観察者は立体像を視認することができる。なお、距離ODの位置は、観察者が所望の立体像を見ながら、パネル面と平行方向に最も大きく動ける位置、すなわち最適視認位置である。このため、距離ODを最適視認距離と呼ぶ。
図13は、観察者が見ている従来のパララックスバリア方式の3次元ディスプレイ1201の画面を説明する図である。画面1300は、観察者の左眼1250が見る画面を示している。他方、画面1301は、観察者の右眼1251が見る画面を示している。
両眼が単一視点像視域1260L、1260Rの内側にある場合、右眼1251は図13の画面1301の画面を見ることができ、左眼1250は図13の画面1300の画面を見ることができる。
次に、図14及び図15を用いて、観察者の両眼が単一視点像視域1260L、1260Rにない場合の光学モデル及び画面を説明する。図14は、従来のパララックスバリア方式の3次元ディスプレイ1201の光学モデルを示す図である。図15は、観察者が見ている従来のパララックスバリア方式の3次元ディスプレイ1201の画面を説明する図である。
図14に示すように、観察者は3次元ディスプレイ1201に近づいた状態である。この場合、観察者の左眼1250、右眼1251には、図15に示すような画面1300、1301が見える。
左眼1250が見る画面1300について図14を用いて説明する。
左眼1250は、光線LLc2と光線LLr2との間に位置する。したがって、画面1300の左端付近では視点画素1222の表示、すなわち、右眼視点の視点像が見える。
また、左眼1250は光線LCl2と光線LCc2との間に位置する。したがって、画面1300の中央付近では視点画素1221の表示、すなわち、左眼視点の視点像が見える。また、左眼1250は光線LRl2と光線LRr2との間に位置しない。つまり、図14に示す左眼1250の位置から右端の画素ユニット1220を右端のスリット1231を介して見ることができない。
しかし、左眼1250は光線LRr2’と光線LRc2’との間に位置する。なお、光線LRr2’、LRc2’は、右端の画素ユニット1220から出る光線LRr1’、LRc1’が右端から2番目のスリット1231を通った光である。つまり、左眼1250の位置からは、右端から2番目のスリット1231を介して、視点画素1222の表示、すなわち、右眼視点の視点像が見える。したがって、画面1300の右端付近では視点画素1222の表示、すなわち、右眼視点の視点像が見える。
図14に位置する右眼1251が見る画面1301(図15)については、左眼1250と左右関係が逆となるので説明を省略する。
図15に示すように、両眼が図14に示す位置にある場合、観察者は画面の中央部では所望の立体像を見ることができるが、画面の端部には奥行関係が逆転した所謂逆視の像を見ることになる。以上のように、観察者の両眼が単一視点像視域1260L、1260Rの外にある場合、観察者は所望の立体像を見ることができない。
次に、従来の3次元ディスプレイ1201及び従来の空間結像素子1202を組み合わせたときの問題を説明する。
図16及び図17は、従来の3次元ディスプレイ1201及び従来の空間結像素子1202を組み合わせた画像表示装置の光学モデルを説明する図である。図18は、観察者が見ている従来の3次元ディスプレイ1201及び従来の空間結像素子1202を組み合わせた画像表示装置の画面を説明する図である。
図12と同様に、表示パネル1210の左端の画素ユニット1220から出射された光線LLr1、LLc1、LLl1は、スリット1231を通過すると屈折し、光線LLr2、LLc2、LLl2となり、空間結像素子1202に入射する。先述のように、結像に寄与する空間結像素子1202への入射光線と出射光線の関係により、光線LLr2、LLc2、LLl2の出射角は、入射角と同じ大きさで符号が逆となるので、光線LLr2、LLc2、LLl2は、光線LLr3、LLc3、LLl3となって出射される。表示パネル1210の中央の画素ユニット1220から出射された光線LCr1、LCc1、LCl1は、スリット1231を通過すると屈折し、光線LCr2、LCc2、LCl2として空間結像素子1202に入射し、空間結像素子1202から光線LCr3、LCc3、LCl3として出射される。また、表示パネル1210の右端の画素ユニット1220から出射された光線LRr1、LRc1、LRl1は、スリット1231を通過すると屈折し、光線LRr2、LRc2、LRl2として空間結像素子1202に入射し、空間結像素子1202から光線LRr3、LRc3、LRl3として出射される。
このように、3次元ディスプレイ1201の画面から出た光は、空間結像素子1202の面Sに対して対称の位置に結像し、空中像となる。
空中像の両端から観察者に向かって進行する光線LLc3、LRc3は、図16に示すように、面Sに対して観察者側では交わらない。つまり、従来の3次元ディスプレイ1201及び従来の空間結像素子1202を単に組み合わせた場合は、図12のような単一視点像視域1260L、1260Rが形成されない。したがって、空中像からODの距離に観察者が両眼を位置させても、所望の立体像を視認することができない。
図16に示すように、光線LLl3と光線LLr3との間に、観察者の左眼1250及び右眼1251は位置しない。同様に、光線LRl3と光線LRr3との間に、観察者の左眼1250及び右眼1251は位置しない。つまり、観察者は3次元ディスプレイ1201の両端のスリット1231を介して、両端の画素ユニット1220を見ることができない。
実際に、観察者の眼に入る光線は端のスリット1231から最も近い端の画素ユニット1220ではなく、内側の画素ユニットから出た光線となる。一例を図17に示す。
左端から2番目の画素ユニット1220から出て、左端のスリット1231を通る光線をLLr1’、LLc1’、LLl1’とし、スリット1231を通過し、屈折した光線をLLr2’、LLc2’、LLl2’とする。光線LLr2’、LLc2’、LLl2’は、空間結像素子1202に入射し、入射角と同じ大きさで符号が逆となる出射角の光線LLr3’、LLc3’、LLl3’となって出射される。
図17に示すように、左眼1250は光線LLl3’と光線LLc3’との間に位置する。つまり、左眼位置から見える左端のスリット1231を出て空中に結像した視点画像は、視点画素1221により形成される左眼視点の視点像となる。一方、左眼位置から見える中央のスリット1231を出て空中で結像した視点画像は、視点画素1222により形成される右眼視点の視点像となる。
このように、従来の3次元ディスプレイ1201及び従来の空間結像素子1202を単に組み合わせた場合は、図18に示すように、観察者の左眼1250及び右眼1251の各々に対して、画面1300、1301内に左眼視点の視点像と右眼視点の視点像が交互に出現する像が入力されることになる。したがって、観察者は所望の立体像を視認することができない。
以上の問題を解決するためには、上述のような空間結像素子による結像に寄与する光の指向性の変化を考慮して、空中像から観察者に向かう光線が単一視点像視域1260L、1260Rを形成する3次元ディスプレイが必要である。本開示の3次元ディスプレイ101は、単一視点像視域1260L、1260Rを形成するために、画面両端の画素ユニット120の中心から出て両端のスリット131を通過した光線が、空間結像素子102によって指向性を変えた後、空中像104から距離ODにおいて交わるように設計されている。
以下、空間結像素子102によって結像した3次元ディスプレイ101の空中像104から観察者に向かう光線が単一視点像視域1260L、1260Rを形成する画像表示装置100の特徴について説明する。
図19及び図20は、本開示の画像表示装置100の光学モデルの一例を説明する図である。
図19は、図1の画像表示装置100の構成において、A-A’断面から観察者に至る光線の光学モデルであり、XZ平面への射影図である。
左眼1250及び右眼1251は、観察者の目である。空中像104は、空間結像素子102によって結像する3次元ディスプレイ101の画面を表す。仮想平面1910は、好適な状態で立体像を視認できる位置を表す。仮想平面1910は、両眼を結んだ直線と平行な平面であって、各画素ユニット120から出射された光が最も重なる位置に設定される。以下の説明では、スリット131の配置パターンは図3に示す配置パターンであるものとする。まず、各パラメータについて説明する。
ピッチ幅Pは、視点画素121、122のピッチ幅を表す。画素ユニット120が、前述のように、二つの視点画素121、122から構成される場合、画素ユニット120のピッチ幅は2Pとなる。ピッチ幅Spは、スリット131の間隔を表す。距離hは、視点画素121又は視点画素122とパララックスバリア130との間の距離を表す。幅WPは、表示パネル110の中心に配置された画素ユニット120の中心から、表示パネル110の端に配置された画素ユニット120の中心までの距離を表す。幅WSは、パララックスバリア130の中心のスリット131から端のスリット131までの距離を表す。距離ODは、空中像104から、仮想平面1910までの距離を表す。すなわち、距離ODは空中像104からの最適視認距離である。幅eは、仮想平面1910におけるピッチ幅Pの視点画素121及び視点画素122の拡大投影幅を表す。なお、言い換えると、幅eは、仮想平面1910における画素ユニット120のピッチの半分の拡大投影幅を表す。
また、表示パネルのX方向において、中心から端までの画素ユニット120の数を画素数mとする。また、3次元ディスプレイ101の内部の屈折率を屈折率nとする。
角度αは、表示パネル110の中心に配置された画素ユニット120から最短距離にあるスリット131に入射する光の最大入射角を表す。つまり、図19に示す光線LCr1、及び、光線LCl1のスリット131への入射角が角度αである。
角度βは、スリット131に角度αで入射した光線の出射角度を表す。前述のように、XZ平面に射影された表示パネル110の表示面の法線ベクトルと、XZ平面に射影された空間結像素子102の面Sの法線ベクトルとが重なるため、光線LCr2、及び、光線LCl2の空間結像素子102への入射角は角度βとなる。
角度γは、表示パネル110の端に配置された画素ユニット120の中心からパララックスバリア130の端に配置されたスリット131に入射する光の入射角を表す。つまり、図19に示す光線LLc1、及び、光線LRc1のスリット131への入射角が角度γである。
角度δは、スリット131に角度γで入射した光の出射角度を表し、光線LLc2、及び、光線LRc2の空間結像素子102への入射角が角度δとなる。
図19に示すように、3次元ディスプレイ101は、空中像104から観察者側に向かう各光線によって、単一視点像視域1260L、1260Rが形成されるように設計されている。具体的には、空間結像素子102を出た光線LLc3と光線LRc3とが距離ODで交わるように、以下のように各パラメータを定める。
図19に示すように、光線LLc3、及び、光線LRc3の角度をθL、θRとすると、幾何的な対称性により、θL及びθRの大きさは等しく、さらに、前述の空間結像素子102の特性により、θL及びθRの大きさは角度δとなる。したがって、光線LLc3、LRc3が距離ODで交わる条件から式(1)が成立する。
式(1)における幅WSは、ピッチ幅Sp、及び、画素数mから式(2)で与えられる。
式(1)における角度δについては、3次元ディスプレイ101内の屈折率nとスネルの法則から式(3)が成立する。
角度γについては、図19に示すパララックスバリア130と画素ユニット120との距離h、幅WS、幅WPの幾何的な関係から式(4)が成立する。
式(4)における幅WPは、視点数、視点画素のピッチ幅P、及び、画素数mから式(5)が成立する。なお、式(5)の係数「2」は視点数である。
式(1)から式(5)により、画素ユニット120のピッチ幅2Pと、ピッチ幅Spの関係は、距離OD、距離h、屈折率n、及び画素数mによって決定される。2PとSpの関係式をわかり易く説明する便宜上、式(6)の近似が成り立つものとする。式(1)から式(5)を整理すると、式(7)を導出できる。
式(7)で例示したように、式(1)から式(5)を用いて、距離OD、距離h、屈折率n、画素数mに加えて、画素ユニット120のピッチ2Pが定めれば、光線LLc3と光線LRc3とが、距離ODで交わる3次元ディスプレイ101のピッチ幅Spを算出できる。なお、式(7)の近似は、距離ODに対して距離WPが大きくなれば成立しなくなる。その場合でも、式(1)から式(5)と上記定めたパラメータから解析的手法を用いて、光線LLc3と光線LRc3とが距離ODで交わるピッチ幅Spを算出できる。
しかしながら、式(1)から式(5)の条件を満たすだけでは、単一視点像視域1260L、1260Rの幅を決定する視点画素の投影幅eを所望の値に定めることができない。
観察者が立体像を視認できる条件の一つは、左眼1250が左眼領域1260L内、かつ、右眼1251が右眼領域1260R内に位置する場合である。観察者の両眼間隔は一定であるため、幅eが両眼間隔の半分より狭い場合はその条件を満たすことができない。すなわち、観察者は立体像が視認できない。
一般的に成人男子の両眼間隔の平均値は65mm、標準偏差は±3.7mmであり、成人女子の両眼間隔の平均値は62mm、標準偏差は±3.6mmである(Neil A Dodgson、“Variation and extrema of human interpupillary distance”、Proc.SPIE vol.5291)。これより、観察者の両眼間隔を65mmとすると、幅eは少なくとも32.5mm以上必要である。
また、両眼が所定の単一視点像視域内に位置する状態、すなわち、立体像を視認できる状態で、観察者が空中像104と平行方向(X方向)に動ける範囲を大きくすることを考慮すると、幅eは65mm以上に設定されることが好適である。
幅eは、ピッチ幅Pの視点画素の拡大投影幅であり、ピッチ幅P、距離OD、距離h、屈折率nによって、以下の関係式が成立する。
図19の光線LCl3に着目すると、幅eは距離ODの正接である。光線LCl3の角度θcの大きさは、前述の空間結像素子102の特性により、角度βとなる。したがって、式(8)が成立する。
式(8)における角度βは、3次元ディスプレイ101の内部の屈折率nとスネルの法則から、式(9)を満たす。
式(9)における角度αは、ピッチ幅Pと距離hの幾何的な関係から式(10)を満たす。
したがって、式(8)から式(10)を用いて、ピッチ幅P、距離OD、距離h、及び、屈折率nを定めることにより、幅eを所望の値に設定でき、幅eを設定した各パラメータの値を式(1)から式(5)に用いて、ピッチ幅Spを算出できる。
本開示では、3次元ディスプレイ101のピッチ幅Spは、式(1)から式(5)、及び式(8)から式(10)を用いて算出された値であることを特徴とする。
なお、画素ユニット120のX方向において、N個の視点画素が含まれる場合、式(5)で定義される幅WPの代わりに、式(11)で定義される幅WPを用いればよい。
また、幅eの設定には画素ユニット120のピッチ(N・P)の半分の値と距離hとから角度αを算出すればよい。すなわち、式(10)の代わりに、式(12)を用いればよい。
以上のように設計された3次元ディスプレイ101と空間結像素子102の組み合わせにより、図19に示すように空中像104から観察者に向かう光線が単一視点像視域1260L、1260Rを形成する。
したがって、左右各々の視点像を視点画素121、122に表示し、左眼1250を左眼領域1260L内に、かつ、右眼1251を右眼領域1260R内に位置させると、観察者は画面全体に渡って好適な立体像を視認することができる。
なお、図19に示す3次元ディスプレイ101を観察者が空間結像素子102を介さず直接見た場合は、観察者は所望の立体像を視認することができない。図19に示すように、両端のスリット131を通過した光線LLc2、及び、LRc2は交わらないため、単一視点視域が形成されないためである。この場合、観察者に向かう光線は、図16及び図17と同様の光学モデルとなり、観察者の見る画面は図18と同様になる。つまり、観察者は画面内に正視領域と逆視領域とが交互に出現する画像を見ることになる。
単一視点像視域1260Lは、光線LLl3、LLc3、LCl3、LRl3、LRc3で囲まれた領域であり、単一視点像視域1260Rは、LRr3、LLr3、LLc3、LRc3、LCr3で囲まれた領域である。したがって、本開示の空間結像素子102は、X方向において、少なくともこれらの光線を通す分の幅をもつ必要がある。
図20を用いて、空間結像素子102に必要となる幅について説明する。
空間結像素子102の中心から端までを距離WIとし、3次元ディスプレイ101のパララックスバリア130から空間結像素子102の面Sまでの距離をDpiとし、光線LLr1及び光線LLl1のスリット131への入射角を角度ε、光線LLr2及び光線LLl2のスリット131からの出射角を角度ζとする。なお、図20に示す空間結像素子102は端部で、光線LLr3及び光線LRl3が出射できる幅とする。
このとき、式(13)が成立する。
また、角度ζと角度εについては、3次元ディスプレイ101内部の屈折率nとスネルの法則から式(14)が成立する。
また、式(14)における角度εについては、幅WS、幅WP、ピッチ幅P、距離hの幾何的な関係から式(15)が成立する。
式(14)及び式(15)から、角度ζは式(16)のように表され、角度εは式(17)のように表される。
式(15)から式(17)を用いて、式(13)を整理すると、距離WIは式(18)のように表される。
つまり、幅WIは、幅WS、幅WP、ピッチ幅P、距離h、及び距離Dpiにより算出できる。なお、幅WSは式(2)から、幅WPは式(5)から算出すればよい。
以上より、本開示の画像表示装置100において、3次元ディスプレイ101の両端からの光線で、単一視点像視域1260L、1260Rを形成するために必要な空間結像素子102の幅WIは、式(19)を満たすことが条件となる。
なお、画素ユニット120のX方向において、N個の視点画素が含まれる場合、式(5)で定義される幅WPの代わりに、式(20)で定義される幅WPを用いればよい。
このとき、幅WIは式(21)を満たすことが条件となる。
ここで、図21から図22を用いて、特許文献4に開示の画像表示装置における問題点について説明する。
図21A及び図21Bは、特許文献4の記載された画像表示装置の光学モデルを説明する図である。図21Aは、特許文献4に開示の画像表示装置の理想的な光学モデルを示し、図21Bは、特許文献4に開示の画像表示装置の実際の光学モデルを示す。ここでは、複数の視点群を提供する画素が二つの視点を提供する場合について説明する。
特許文献4には、3Dディスプレイモジュール2101及び光学素子2102を含む画像表示装置2100が開示されている。3Dディスプレイモジュール2101はバックライト光源2140、複数の画素2120、及びパララックスバリア2130を含む。画素2120には、複数の視点群が含まれる。ここでは、二つの視点群2121、2122が含まれるものとする。
特許文献4では、画素2120のピッチ幅をPvと定義し、パララックスバリア2130の開口2131のピッチ幅をPb1と定義し、パララックスバリア2130と画素2120との間の距離をd1と定義している。また、バックライト光源2140からの光は仮想焦点Fvで集光され、バックライト光源2140は仮想焦点Fvと光学素子2102との間に位置している。そして、仮想焦点Fvからパララックスバリア2130までの距離を距離VDと定義し、観察者2180から、仮想浮遊ベース面2150(本開示の空中像104)までの距離は、仮想焦点Fvからパララックスバリア2130までの距離と等しい、と記載されている。つまり、仮想浮遊ベース面2150と観察者2180の観測位置として設定された仮想平面2160との距離はVDと定義されている。
特許文献4には、ピッチ幅Pvに対するピッチ幅Pb1の比はVD/(VD-d1)であることが記載されている。したがって、パララックスバリア2130の開口2131のピッチ幅をPb1は、VD、Pv、d1が定まれば、式(22)によって算出できる。
特許文献4に開示の図21Aに示す光学モデル、及び、式(22)は、本開示の3次元ディスプレイ101に対応する3Dディスプレイモジュール2101内部における屈折率nを1とした場合に成り立つ。
しかし、実際には3Dディスプレイモジュール2101内部の屈折率nを空気の屈折率と同じ(n=1)にすることはできない。したがって、図21Aに示すように開口2131を通過する光線LB、LRは直線とならず、屈折することになり、図21Bに示すような光学モデルになる。
図21Bに示すように、屈折を考慮した場合、バックライト光源2140の集光される点は距離VDより短い位置となり、また、観察者2180が好適な立体像を視認するためには、距離VDより近づいた位置で画像表示装置2100を観察しなければならないことが分かる。
次に、特許文献4の開示から導かれる設計の問題点について、式(22)に具体的な値を設定し、考察する。
第1の問題点として、VD(本開示におけるOD)、d1(本開示におけるh)、Pv(本開示における画素ユニットの幅2・P)から決定される視点画素の拡大投影幅eに該当する設計要件が特許文献4では明示されていない。したがって、VD、d1、Pvの設定によっては、幅eが両眼間隔の半分(32.5mm)より狭くなる。
例えば、VDを500mm、Pvを0.2mmとした場合のd1と幅eについて考察する。前述の式(8)から式(10)において、n=1とし、OD=VD、P=Pv/2として計算すると、d1は1.54mmより小さくなければ、幅eが32.5mmより小さくなってしまい、観察者は立体像を視認できない。言い換えれば、VDを500mm、Pvを0.2mmとし、d1を1.54mm以上として、式(22)からピッチ幅Pb1を算出した画像表示装置を設計した場合、観察者は距離VDの位置で立体像を視認できない。
第2の問題点として、特許文献4では3Dディスプレイモジュール2101の内部の屈折率が考慮されていない。このため、画面の両端からの光線が交わる位置について考慮されていない。ここで、VDを500mm、Pvを0.2mmとし、n=1で幅eが65mmになるd1を、前述のように、本開示の式(8)から式(10)から算出すると、d1は0.77mmとなる。VDを500mm、Pvを0.2mm、d1は0.77mmとした場合、Pb1は式(22)より0.200308mmと算出される。表1に、VD、Pv、d1、Pb1の設計値をまとめる。
3Dディスプレイモジュール2101が表1のように設計された場合について、実際に存在する屈折率による影響を図19の光学モデルに示した光線LLc3及び光線LRc3の交点位置を使って考察する。なお、図19で定義したように、空中像104から光線LLc3及び光線LRc3の交点までの距離をODとする。
図22は、屈折率n及び画素数mと距離ODとの関係を示すグラフである。図22では表1の設計における関係を示す。
図22に示すように、3Dディスプレイモジュール2101内部における屈折率nが空気と同じ(n=1)であれば、距離ODはmに関わらず500mmとなる。しかし、屈折率nが1より大きくなるにしたがって距離ODは小さくなる。また、屈折率nが1より大きい場合は、mが大きくなるにしたがって距離ODは小さくなる。つまり、屈折率nと画素数mによって、観察者は設計されたVD=500mmの位置より空中像に近い位置でなければ、好適に立体像を観察できないことが分かる。
次に、表1の設計において、画素数mを500とし、n=1とn=1.5の場合の光線図を作成し、単一視点像視域1260L、1260Rについて考察する。図23A、図23B、及び図23Cは、任意の設計における画像表示装置の単一視点像視域を説明する光学図である。
図23Aは、m=500、n=1として、また、他の値を表1の設計値として、図19に示した各光線を、計算によって描画した図である。
縦軸はZ軸方向を表し、単位はmm、0は空中像の位置であり、-100mmの位置に光学素子2102(本開示の空間結像素子102の面S)が配置されている。横軸はX方向を表し、単位はmm、0は3Dディスプレイモジュール2101の中心である。
図23Aでは、光線LLc3と光線LRc3とがZ=500mmの交わり、また、各光線により、単一視点像視域1260L、1260Rが形成される。したがって、観察者は設計通り、空中像から距離500mmの位置で立体像を視認できる。
図23Bは、m=500、n=1.5として、また、他の値を表1の設計値とし、図19に示した各光線を計算によって描画した図である。
この場合、光線LLc3と光線LRc3との交点は、Z=324.87mmとなる。図23Bに示すように、光線LLl3、LLc3、LCl3、LRl3、LRc3で囲まれた単一視点像視域1260L、及び、光線LLr3、LLc3、LCr3、LRr3、LRc3で囲まれた単一視点像視域1260Rは、Z=500mmより近い空間(空中像側)に形成されている。
したがって、観察者は空中像から距離500mmの位置では、好適に立体像を視認できない。両眼は単一視点像視域1260L、1260Rの位置にないため、図14及び図15で説明したように、画面の端部では所望の立体像を見ることができない。このため、観察者が所望の立体像を見るためには、設計値、すなわち、VD=500mmより近い位置、好適には324.87mmの位置に移動しなければならない。
表1に示した特許文献4による3Dディスプレイモジュール2101の設計と、本開示の3次元ディスプレイ101(図19)の設計を比較する。
距離VDは、本開示における距離ODであり、距離ODを500mmとする。また、特許文献4のピッチ幅Pv=0.2mmを、本開示のピッチ幅Pに合わせると0.1mmmとなる。n=1.5として、拡大投影幅eを65mmとした場合、式(8)から(10)より、d1に相当する距離hは1.16mmと算出される。これらの値にm=500を加え、式(1)から(5)を用いてパララックスバリア130のピッチ幅Spを算出すると、0.200306mmとなる。表2に、これらの設計値をまとめる。
図23Cは、表2の設計値を用いて、図19に示した各光線を、計算によって描画した図である。
図23Cに示すように、光線LLc3と光線LRc3とがZ=500mmの交わり、各光線により、単一視点像視域1260L、1260Rが形成される。したがって、観察者は設計通り、空中像から距離500mmの位置で所望の立体像を視認できる。つまり、本開示の計算式を用いることで、設計通りの画像表示装置100を提供できることが分かる。
第1の実施形態によれば、好適な3次元の像を視認できる画像表示装置100を設計することができる。
なお、本発明において、図3に示したスリット131の延伸方向が視点画素の配列方向(Y軸方向)と平行なパララックスバリア130を用いた3次元ディスプレイに代わり、図31に示す3次元ディスプレイの適用も可能である。
図31は、振分ユニットとして機能するパララックスバリア130のスリット131の延伸方向が視点画素の配列方向(Y軸方向)に対して、角度λで配置された3次元ディスプレイの一例である。図31のように、視点画素の配列に対してスリットを傾けて配置することにより、図3のようにX方向に並ぶ視点画素からの光線を振り分けだけでなく、Y方向に並ぶ視点画素の光線も異なる方向に振り分けができる。すなわち、画素ユニットは、X方向の視点画素のみでなく、Y方向の視点画素も含んだ構成となる。図31は、6つの方向へ視点像を提示でき、視点画素125の各々に示す番号が形成される視点像の番号である。
図31のような3次元ディスプレイを本発明に適用する場合は、X方向におけるスリットピッチをSp、視点画素125のピッチをP、X方向における振分ユニットが対応する視点数をN(図31の場合はN=3)、X方向における中心から端までの画素ユニットの数をmとして、式(2)、式(11)、式(12)に代入し、先に説明したように、ピッチ幅Spを算出できる。なお、上述のように、振分ユニットが視点画素に対して斜めに配置された場合は、画素ユニットのX方向の視点数Nは整数に限定されない。
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、3次元ディスプレイ101の構成が異なる。図24は、本開示の画像表示装置100の光学モデルの概略を示す図である。XZ平面でみたA-A’の断面構造、及び光学モデルを示す図である。図24は、第1の実施形態で説明した図2と対応する。
第2の実施形態の3次元ディスプレイ101は、光学分離手段としてレンチキュラレンズを採用した3次元ディスプレイ101である。3次元ディスプレイ101は、表示パネル110及びレンチキュラレンズ140を有する。
レンチキュラレンズ140は、一定のパターンでシリンドリカルレンズ141が配置される。図25は、本開示の3次元ディスプレイ101の中央部におけるレンチキュラレンズ140の模式図(XY平面図)である。
シリンドリカルレンズ141の焦点距離は、シリンドリカルレンズ141の頂点から視点画素まで距離hとほぼ等しくなるように、屈折率及び曲率半径が設計される。説明の便宜上、シリンドリカルレンズ141の屈折率と3次元ディスプレイ101内部の屈折率は等しいものとする。
シリンドリカルレンズ141の焦点距離と距離hがほぼ等しいため、視点画素121、122から等方的に発せられた光は、シリンドリカルレンズ141を通過するとほぼ平行光になる。このため、表示パネル110にレンチキュラレンズ140を好適に配置することによって、シリンドリカルレンズ141を通して特定の視点画素121、122(視点画素群)のみが見える領域ができる。すなわち、レンチキュラレンズ140は、表示パネル110に表示される表示像から発せられる光線群を視点像毎の光線群に振り分ける光学分離手段(振分ユニット)として機能する。なお、シリンドリカルレンズ141は、一つの画素ユニット120に対して一つのシリンドリカルレンズ141が対応するように配置される。
なお、レンチキュラレンズ140としては、電気的にレンズのON/OFFが切り替えられる液晶レンズを使用することもできる。この場合、レンズをOFFすることで、立体像だけでなく、平面像も提供できる。
以上のように、本実施形態におけるレンチキュラレンズ140は、第1の実施形態におけるパララックスバリア130と同様に光学分離手段として機能するため、図25の詳細な説明は省略する。
また、本実施形態においても、二つの視点像を含む表示像を表示する表示パネル110を一例として説明するが、三つ以上の視点像を含む表示像を表示する表示パネル110でもよい。この場合、画素ユニット120は、複数の視点像の各々の画素を表示する視点画素群から構成される。
図26は、本開示の画像表示装置100の光学モデルの一例を説明する図である。
図26に示す画像表示装置100の光学モデルは、図19に示す画像表示装置100のパララックスバリア130をレンチキュラレンズ140に、スリット131をシリンドリカルレンズ141に置き換えた場合の光学モデルである。
図19のスリット131の間隔を表すピッチ幅Spと対応するシリンドリカルレンズ141の間隔をピッチ幅Lp、図19のパララックスバリア130の中心のスリット131から端のスリット131までの距離WSと対応するレンチキュラレンズ140の中心のシリンドリカルレンズ141から端のシリンドリカルレンズ141までの距離をピッチ幅WLとする。なお、距離hは、シリンドリカルレンズ141の頂点から視点画素121、122まで距離を表す。それ以外の符号や構成は図19と同じであるため説明を省略する。
第2の実施形態における3次元ディスプレイ101も、第1の実施形態と同様に、単一視点像視域1260L、1260Rを形成するため、画面両端の画素ユニット120の中心から出て両端のシリンドリカルレンズ141を通過した光線が、空間結像素子102によって指向性を変えた後、空中像104から距離ODにおいて交わるように設計される。したがって、表示パネル110のX方向において、中心から端までの画素ユニット120の数を画素数mとすると、式(1)から式(5)の関係と同様に、以下の式(23)から(27)が導かれる。
また、式(8)から式(10)を用いて、ピッチ幅P、距離OD、距離h、及び、屈折率nを定めることにより、幅eを所望の値に設定できる。幅eを設定した各パラメータの値を式(23)から式(26)に代入することによって、シリンドリカルレンズ141のピッチ幅Lpを算出できる。
ここで、式(1)から式(5)と、式(21)から式(25)との関係は、WSをWLにSpをLpに置き換えたものである。したがって、第2の実施形態の画像表示装置100において空間結像素子102に必要となる幅については、式(19)又は式(21)において、WSにWL、SpにLpを代入することにより、幅WIを算出できる。
なお、画素ユニット120のX方向において、N個の視点画素が含まれる場合、式(27)で定義される幅WPの代わりに、式(11)で定義される幅WPを用いればよい。また、幅eの設定には画素ユニット120のピッチ(N・P)の半分の値と距離hとから角度αを算出すればよい。すなわち、式(10)の代わりに、式(12)を用いればよい。
以上のように設計される第2の実施形態の画像表示装置100は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。さらに、3次元ディスプレイ101の光学分離手段に用いるレンチキュラレンズ140はパララックスバリア130に比べて光の利用効率がよいため、第1の実施形態の画像表示装置100と比較して、明るい空中像の提供、又は、低消費電力化が可能となる。
なお、本発明において、図25に示したシリンドリカルレンズ141の延伸方向が視点画素の配列方向(Y軸方向)と平行なレンチキュラレンズ140を用いた3次元ディスプレイに代わり、図32に示す3次元ディスプレイの適用も可能である。
図32は、振分ユニットとして機能するシリンドリカルレンズ141の延伸方向が視点画素の配列方向(Y軸方向)に対して、角度λで配置された3次元ディスプレイの一例である。図32のように、視点画素の配列に対してシリンドリカルレンズを傾けて配置することにより、図25のようにX方向に並ぶ視点画素からの光線を振り分けだけでなく、Y方向に並ぶ視点画素の光線も異なる方向に振り分けができる。すなわち、画素ユニットは、X方向の視点画素のみでなく、Y方向の視点画素も含んだ構成となる。図32は、6つの方向へ視点像を提示でき、視点画素125の各々に示す番号が形成される視点像の番号である。
図32のような3次元ディスプレイを本発明に適用する場合は、X方向おけるシリンドリカルレンズ141のピッチ幅Lp、視点画素125のピッチをP、X方向における振分ユニットが対応する視点数をN(図32の場合はN=3)、X方向における中心から端までの画素ユニットの数をmとして、式(24)、式(11)、式(12)に代入し、先に説明したように、ピッチ幅Lpを算出できる。なお、上述のように、振分ユニットが視点画素に対して斜めに配置された場合は、画素ユニットのX方向の視点数Nは整数に限定されない。
[第3の実施形態]
第3の実施形態では、3次元ディスプレイ101の構成が異なる。第1、第2の実施形態では、光学分離手段として機能するパララックスバリア130、レンチキュラレンズ140は、表示パネル110の空間結像素子102側に配置された。しかし、第3の実施形態では、表示パネル110に対しての空間結像素子102とは反対側に光学分離手段が配置される。
図27は、本開示の画像表示装置100の光学モデルの一例を説明する図である。
本実施形態の画像表示装置100は、表示パネル110に対しての空間結像素子102とは反対側にパララックスバリア130を設置する。また、画像表示装置100は、さらに、3次元ディスプレイ101のパララックスバリア130側に設置された投光器150を備える。
以下、空中像104から観察者に向かう光線が単一視点像視域1260L、1260Rを形成する画像表示装置100の特徴について説明するが、第1の実施形態と同じ符号についての説明は省略する。
図27に示すように、光線LLc3及び光線LRc3が距離ODで交わる条件から式(28)が成立する。
式(28)における幅WSは、ピッチ幅Sp、及び、画素数mから、式(29)が成立する。
また、3次元ディスプレイ101内部の屈折率nとスネルの法則から式(30)が成立する。
また、角度γに関しては、図27に示す距離h、及び幅WS、幅WPの幾何的な関係から、式(31)が成立する。
幅WPは、視点数2、視点画素のピッチ幅P、及び、中心から端までの画素ユニットの画素数mから式(32)が成立する。
また、式(8)から式(10)を用いて、ピッチ幅P、距離OD、距離h、及び、屈折率nを定めることにより、幅eを所望の値に設定できる。幅eを設定した各パラメータの値を式(28)から式(32)に代入することによって、スリット131のピッチ幅Spを算出できる。
なお、画素ユニット120のX方向において、N個の視点画素が含まれる場合、式(32)で定義される幅WPの代わりに、式(11)で定義される幅WPを用いればよい。また、幅eの設定には画素ユニット120のピッチ(N・P)の半分の値と距離hとから角度αを算出すればよい。すなわち、式(10)の代わりに、式(12)を用いればよい。
さらには、第1の実施形態で図31を用いて説明したように、パララックスバリア130のスリット131の延伸方向が視点画素の配列方向(Y軸方向)に対して、角度λで配置する構造の適用も可能である。
以上のように設計される第3の実施形態の画像表示装置100は、第1の実施形態の画像表示装置100と同様の効果を奏する。
[第4の実施形態]
第4の実施形態では、3次元ディスプレイ101の構成が異なる。第4の実施形態では、第3の実施形態で示した画像表示装置100の光学分離手段として用いたパララックスバリア130に代わり、レンチキュラレンズ140を用いる。
図28は、本開示の画像表示装置100の光学モデルの一例を示す図である。
第2の実施形態での説明と同様に、パララックスバリア130に代わり、レンチキュラレンズ140を用いた場合は、WSにWL、SpにLpを置き換えて、各パラメータを算出する。したがって、式(28)から式(32)に用いて、WSにWL、SpにLpを代入し、シリンドリカルレンズ141のピッチ幅Lpを算出できる。
さらには、第1の実施形態で図32を用いて説明したように、シリンドリカルレンズ141の延伸方向が視点画素の配列方向(Y軸方向)に対して、角度λで配置する構造の適用も可能である。
以上のように設計される第4の実施形態の画像表示装置100は、第1の実施形態の画像表示装置100と同様の効果を奏する。
[第5の実施形態]
第5の実施形態では3次元ディスプレイ101の構成が異なる。
図29及び図30は、本開示の画像表示装置100の光学モデルの概略を示す図である。
3次元ディスプレイ101は、投光器150、3次元印刷物160、及びレンチキュラレンズ140を有する。
3次元印刷物160は、複数の視点像が印刷されたものである。3次元印刷物160は、例えば、複数の視点像を短冊状に分割し、各視点像の短冊を一定のパターンに配列することによって生成された印刷物である。なお、3次元印刷物160の種類に限定されない。図29では、レンチキュラレンズ140の裏面に2視点の像が短冊状に印刷された例を示している。より多視点の像を表示するには、画素ユニット120内に各視点像を分割して配置すればよい。
投光器150は、3次元印刷物160に対して光を照射する装置である。投光器150は、例えば、LED素子から構成される。なお、投光器150の種別に限定されない。
投光器150から3次元印刷物160へ照射された光は、3次元印刷物160に含まれる各視点像に対応する光となり、シリンドリカルレンズ141により分離される。
なお、図29では、投光器150をレンチキュラレンズ140の裏面側(3次元印刷物160側)に配置したが、図30に示すように、投光器150がレンチキュラレンズ140側に配置されてもよい。投光器150から照射された光はレンチキュラレンズ140から侵入し、印刷された視点画素で反射された光がシリンドリカルレンズ141によって分離される。図示しないが、投光器150としてフロントライトを用いてもよい。
第5の実施形態の画像表示装置100の光学モデルは、第2の実施形態と同じである。したがって、3次元印刷物160のシリンドリカルレンズ141のピッチ幅Lpは第2の実施形態と同様に以下のように算出できる。
式(8)から式(10)を用いて、ピッチ幅P、距離OD、距離h、及び、屈折率nを定めることにより、幅eを所望の値に設定し、幅eを設定した各パラメータの値を式(23)から式(27)に代入することによって、シリンドリカルレンズ141のピッチ幅Lpを算出する。また、空間結像素子102に必要となる幅については、式(19)又は式(21)において、WSにWL、SpにLpを置き換えることにより、幅WIを算出できる。
したがって、第5の実施形態は、第2の実施形態と同様の効果を奏する。
[第6の実施形態]
本発明の立体的な像を投影する3次元ディスプレイは、観察位置によって異なる視点像を投影するマルチ表示ディスプレイへの適用も可能である。
以下、観察位置に応じて2つの異なる画面を投影するマルチ表示ディスプレイへの適用例を説明する。説明にあたり、パララックスバリア130を表示パネル110の空間結像素子102側に配置した図19に示す光学モデルを用いるが、マルチ表示ディスプレイへの適用は、レンチキュラレンズ140を用いた構成(図26に示す光学モデル)や、表示パネル110に対しての空間結像素子102とは反対側に光学分離手段が配置される構成(図27、図28に示す光学モデル)や、3次元ディスプレイに3次元印刷物160を用いる構成(図29、図30に示す光学モデル)においても可能である。
既に説明したように3次元ディスプレイでは、単一視点像視域1260L及び、1260Rを形成し、観察者の両眼が所定の位置にあるとき立体像として視認できるように設計される。マルチ表示ディスプレイでは、観察者の左右両眼が、一方の単一視点像視域にある場合と、他方の単一視点像視域にある場合で、別の視点像が観察できるように各々の単一視点像視域を大きく設計する。すなわち、eを両眼間隔より大きく設計する。
以下、図19の光学モデルにおいて、拡大投影幅eを300mmとする設計例を説明する。距離ODを500mm、ピッチ幅Pを0.1mmm、n=1.5とした場合、式(8)から(10)より、距離hは0.274mmと算出される。これらの値にm=500を加え、式(1)から(5)を用いてパララックスバリア130のピッチ幅Spを算出すると、0.200072mmとなる。表3に、これらの設計値をまとめる。
図33は、表3の設計値を用いて、図19に示した各光線を、計算によって描画した図である。図33に示すように、光線LLc3と光線LRc3とがZ=500mmの交り、各光線により、単一視点像視域1360、1361が形成される。単一視点像視域1360は、図19に示す視点画素121のみが見える領域であり、単一視点像視域1361は、図19に示す視点画素122のみが見える領域である。
ここで、図34に示すように、視点画素121に視点像1400を表示し、視点画素122には視点像1401を表示すると、観察者の左右両眼が単一視点像視域1360内に位置するときは、観察者は図35Aに示すように視点像1400を視認し、観察者の左右両眼が単一視点像視域1361内に位置するときは、観察者は図35Bに示すように視点像1401を視認する。
以上のように設計された本発明の画像表示装置100は、観察する位置に応じて異なる単一の視点像からなる画面を空中像として提供できる。なお、本実施形態に用いる空間結像素子102に必要となる幅については、式(19)又は式(21)から算出できる。
なお、図35A、35Bのように空中像を提供するように設計されたマルチ表示ディスプレイを、空間結像素子なしで観察した場合について、図36及び図37を用いて説明する。
図36は、空間結像素子が無い場合、すなわち、図19におけるスリット131から出た光線LLl2、LLc2、LLr2、LCl2、LCc2、LCr2、LRl2、LRc2、LRr2を、図33と同様に計算によって描画した図である。
図36に示すように、光線LLc2と光線LRc2は交わることなく、各光線により、単一視点像視域は形成されない。したがって、観察者が見る画面には、2つの視点像が混在する。一例として、図36に示すように、観察者の左眼1250がX=10mm、Z=500mm、右眼1251がX=75mm、Z=500mmに位置する場合、各々の眼が見る画面を図37に示す。
図37に示すように、各々の眼に投影される画面には、視点像1400の領域と、視点像1401の領域とが含まれる。
以上、本願の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。