JP7037751B2 - 炭化水素類合成用触媒、並びに、これを備える炭化水素類製造装置及び炭化水素燃料製造装置 - Google Patents
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Description
先ず、本発明の炭化水素類合成用触媒について説明する。本発明の炭化水素類合成用触媒は、ゼオライト担体と、前記ゼオライト担体に担持されている、コバルト元素及びアルカリ金属元素とを含有するものである。担体としてゼオライトを用いることによって、二酸化炭素と水素とを原料とするC2以上の炭化水素類の合成反応において高い触媒活性を示す触媒を得ることができる。一方、担体として、メソポーラスシリカ、シリカ微粒子、アルミナ微粒子を用いた場合には、二酸化炭素と水素とを原料とするC2以上の炭化水素類の合成反応における触媒活性が低くなる。
次に、本発明の炭化水素類合成用触媒を用いた炭化水素類の合成方法について説明する。本発明の炭化水素類合成用触媒は、二酸化炭素及び水素を原料とする炭化水素類の合成方法に好適に用いることができる。この炭化水素類の合成方法においては、本発明の炭化水素類合成用触媒に二酸化炭素と水素とを含有する原料混合ガスを接触させる。これにより、二酸化炭素からC2以上の炭化水素類を効率よく合成することができる。
次に、本発明の炭化水素燃料製造装置について図面を参照しながら説明するが、本発明の炭化水素燃料製造装置は前記図面のものに限定されない。図5は、本発明の炭化水素燃料製造装置の好適な一実施態様を示す概略図である。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本発明の炭化水素燃料製造装置における炭化水素類製造ユニット10は、前記本発明の炭化水素類製造装置であり、前記本発明の炭化水素類合成用触媒101が配置(好ましくは充填)された水素化反応装置102を備えるものである。この炭化水素類製造ユニット10における炭化水素類の合成方法は、〔炭化水素類の合成方法及びそれに用いる炭化水素類製造装置〕において説明したとおりである。したがって、本発明の炭化水素燃料製造装置の炭化水素類製造ユニット10においては、二酸化炭素と水素とを原料として常圧又は3.0MPa以下(好ましくは2.0MPa以下)の低加圧下でC2以上の炭化水素類を効率よく製造することができる。
本発明の炭化水素燃料製造装置における重合反応ユニット11は、炭化水素類製造装置10において得られるC2以下の低級炭化水素類を重合させてC3以上の高級炭化水素類からなる炭化水素燃料を得るための重合反応装置111を備えるものである。この重合反応装置には、重合触媒112が配置(より好ましくは充填)されていることが好ましい。前記重合触媒としては、例えば、70質量%以上の白金担持ゼオライト触媒と30質量%以下の前記本発明の炭化水素合成用触媒との重合用混合触媒が挙げられる。このような重合用混合触媒を用いることによって、炭化水素類製造装置10において得られるC2以下の低級炭化水素類が重合反応によりC3以上の高級炭化水素類に変換されるとともに、炭化水素類製造装置10において得られる水素化反応生成ガス中に残存する一酸化炭素がFTS反応によりC2以下の低級炭化水素類に変換され、さらに、重合反応によりC3以上の高級炭化水素類に変換される。したがって、本発明の炭化水素燃料製造装置においては、C3以上の高級炭化水素類からなる炭化水素燃料を高収率で製造することができる。
本発明の炭化水素燃料製造装置における分離回収ユニット12は、炭化水素類製造装置10において得られる炭化水素類及び重合反応装置111において得られる炭化水素類をC2以下の低級炭化水素類とC3以上の高級炭化水素類とに分離して前記高級炭化水素類からなる炭化水素燃料を得るための分離回収装置121を備えるものである。このような分離回収ユニット12には2以上の分離回収装置121が備えられていることが好ましい。2以上の分離回収装置を順次切替えて使用することにより、分離回収操作を連続的に実施することができる。
酢酸コバルト及び炭酸カリウムを含む水溶液〔酢酸コバルト四水和物((CH3COO)2Co・4H2O、和光純薬工業株式会社製)及び炭酸カリウム(K2CO3、和光純薬工業株式会社製)を水に溶解して調製したもの〕に、HZSM-5型ゼオライト(Zeolyst International社製、平均細孔径:0.58nm、Si/Alモル比:40)を浸漬して、前記ゼオライト100質量部に対してCo元素の担持量が20質量部、K元素の担持量が6.0質量部となるように、前記ゼオライトに酢酸コバルト(II)及び炭酸カリウムを付着させた。得られた触媒前駆体から水分を蒸発させて触媒前駆体を乾燥した後、大気中、500℃で5時間焼成して、前記HZSM-5型ゼオライト100質量部にコバルト20質量部及びカリウム6.0質量部が担持された触媒を得た。
得られた触媒0.2gを固定床触媒評価装置のステンレス反応管に充填し、これに水素含有ガス(H2(10%)+He(90%))を流量20ml/分で流通させながら400℃で60分間加熱して還元前処理を行い、その後、触媒を100℃まで放冷した。この還元前処理後の触媒に原料混合ガス(CO2(10%)+H2(30%)+He(60%))を流量20ml/分で流通させながら昇温速度5℃/分で100℃から400℃まで加熱した。この間の触媒出ガス中のCO2及び生成した炭化水素類についてガス分析計(株式会社アルバック製「Qulee BGM-202」)を用いて質量分析を行なった。図2Aには各触媒温度におけるCO2転化率を示す。また、図2B~図2Eには各触媒温度における生成した炭化水素類(CH4、C2~C4)のマススペクトル(MS)強度)を示す。なお、実施例1の結果は、図3A~図4Eにも示した。また、図2A中の転化率の大小及び図2B~図2E中の活性の高低は、温度300~400℃の範囲内でのCO2転化率の最大値及びMS強度の最大値に基づいて評価した。
HZSM-5型ゼオライトの代わりにBEA型ゼオライト(Zeolyst International社製、平均細孔径:0.65nm、Si/Alモル比:38.5)を用いた以外は実施例1と同様にして、前記BEA型ゼオライト100質量部にコバルト20質量部及びカリウム6.0質量部が担持された触媒を得た。得られた触媒について、実施例1と同様にして触媒活性評価試験を行なった。その結果を図2A~図2Eに示す。
HZSM-5型ゼオライトの代わりにシリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「90G」、比表面積:90m2/g)を用いた以外は実施例1と同様にして、前記シリカ微粒子100質量部にコバルト20質量部及びカリウム6.0質量部が担持された触媒を得た。得られた触媒について、実施例1と同様にして触媒活性評価試験を行なった。その結果を図2A~図2Eに示す。
HZSM-5型ゼオライトの代わりにアルミナ微粒子(Sasol社製「Puralox TH100」、比表面積:100m2/g)を用いた以外は実施例1と同様にして、前記アルミナ微粒子100質量部にコバルト20質量部及びカリウム6.0質量部が担持された触媒を得た。得られた触媒について、実施例1と同様にして触媒活性評価試験を行なった。その結果を図2A~図2Eに示す。
HZSM-5型ゼオライトの代わりに平均細孔径が3.9nmのメソポーラスシリカ(太陽化学株式会社製「TMPS-4R」)を用いた以外は実施例1と同様にして、前記メソポーラスシリカ100質量部にコバルト20質量部及びカリウム6.0質量部が担持された触媒を得た。得られた触媒について、実施例1と同様にして触媒活性評価試験を行なった。その結果を図2A~図2Eに示す。
HZSM-5型ゼオライトの代わりに平均細孔径が8.0nmのメソポーラスシリカ(シグマ-アルドリッチ社製「SBA-15」)を用いた以外は実施例1と同様にして、前記メソポーラスシリカ100質量部にコバルト20質量部及びカリウム6.0質量部が担持された触媒を得た。得られた触媒について、実施例1と同様にして触媒活性評価試験を行なった。その結果を図2A~図2Eに示す。
図2C~図2Eに示したように、担体としてHZSM-5型ゼオライトを用いた場合(実施例1)には、C2~C4の炭化水素類の合成反応において、シリカ微粒子(比較例1)、アルミナ微粒子(比較例2)又はメソポーラスシリカ(比較例3~4)を用いた場合に比べて高い触媒活性を示す触媒が得られることが確認された。また、図2Bに示したように、担体としてHZSM-5型ゼオライトを用いた場合(実施例1)には、CH4の生成反応が抑制されることがわかった。一方、担体としてBEA型ゼオライトを用いた場合(実施例2)には、C2及びC4の炭化水素類の合成反応においては、シリカ微粒子(比較例1)、アルミナ微粒子(比較例2)又はメソポーラスシリカ(比較例3~4)を用いた場合に比べて高い触媒活性を示し、C3の炭化水素類の合成反応においては、アルミナ微粒子(比較例2)又はメソポーラスシリカ(比較例3~4)を用いた場合に比べて高い触媒活性を示す触媒が得られることが確認された。
酢酸コバルト及び炭酸カリウムを含む水溶液の代わりに、酢酸コバルト、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムを含む水溶液〔酢酸コバルト四水和物((CH3COO)2Co・4H2O、和光純薬工業株式会社製)、炭酸カリウム(K2CO3、和光純薬工業株式会社製)及び炭酸ナトリウム(Na2CO3、和光純薬工業株式会社製)を水に溶解して調製したもの〕を用い、前記ゼオライト100質量部に対してCo元素の担持量が20質量部、K元素の担持量が6.0質量部、Na元素の担持量が1.8質量部となるように、前記ゼオライトに酢酸コバルト(II)、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムを付着させた以外は実施例1と同様にして、前記HZSM-5型ゼオライト100質量部にコバルト20質量部、カリウム6.0質量部及びナトリウム1.8質量部が担持された触媒を得た。得られた触媒について、実施例1と同様にして触媒活性評価試験を行なった。その結果を図3A~図3Eに示す。
前記ゼオライト100質量部に対してNa元素の担持量が3.6質量部となるように、前記ゼオライトに酢酸コバルト(II)、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムを付着させた以外は実施例3と同様にして、前記HZSM-5型ゼオライト100質量部にコバルト20質量部、カリウム6.0質量部及びナトリウム3.6質量部が担持された触媒を得た。得られた触媒について、実施例1と同様にして触媒活性評価試験を行なった。その結果を図3A~図3Eに示す。
前記ゼオライト100質量部に対してNa元素の担持量が7.2質量部となるように、前記ゼオライトに酢酸コバルト(II)、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムを付着させた以外は実施例3と同様にして、前記HZSM-5型ゼオライト100質量部にコバルト20質量部、カリウム6.0質量部及びナトリウム7.2質量部が担持された触媒を得た。得られた触媒について、実施例1と同様にして触媒活性評価試験を行なった。その結果を図3A~図3Eに示す。
図3C~図3Eに示したように、ゼオライト担体100質量部に対してNaを1.8~3.6質量部(Kとの合計量で7.8~9.6質量部)担持した場合(実施例3~4)には、C2~C4の炭化水素類の合成反応において、Naを担持しなかった場合(実施例1)に比べて高い触媒活性を示す触媒が得られることが確認された。また、Naを7.2質量部(Kとの合計量で13.2質量部)担持した場合(実施例5)には、C3及びC4の炭化水素類の合成反応において、Naを担持しなかった場合(実施例1)に比べて僅かに高い触媒活性を示す触媒が得られることが確認された。
Si/Alモル比が40のHZSM-5型ゼオライトの代わりに、Si/Alモル比が30のHZSM-5型ゼオライト(Zeolyst International社製、平均細孔径:0.58nm)を用いた以外は実施例1と同様にして、前記HZSM-5型ゼオライト100質量部にコバルト20質量部及びカリウム6.0質量部が担持された触媒を得た。得られた触媒について、実施例1と同様にして触媒活性評価試験を行なった。その結果を図4A~図4Eに示す。
Si/Alモル比が40のHZSM-5型ゼオライトの代わりに、Si/Alモル比が50のHZSM-5型ゼオライト(Zeolyst International社製、平均細孔径:0.58nm)を用いた以外は実施例1と同様にして、前記HZSM-5型ゼオライト100質量部にコバルト20質量部及びカリウム6.0質量部が担持された触媒を得た。得られた触媒について、実施例1と同様にして触媒活性評価試験を行なった。その結果を図4A~図4Eに示す。
Si/Alモル比が40のHZSM-5型ゼオライトの代わりに、Si/Alモル比が80のHZSM-5型ゼオライト(Zeolyst International社製、平均細孔径:0.58nm)を用いた以外は実施例1と同様にして、前記HZSM-5型ゼオライト100質量部にコバルト20質量部及びカリウム6.0質量部が担持された触媒を得た。得られた触媒について、実施例1と同様にして触媒活性評価試験を行なった。その結果を図4A~図4Eに示す。
Si/Alモル比が40のHZSM-5型ゼオライトの代わりに、Si/Alモル比が280のHZSM-5型ゼオライト(Zeolyst International社製、平均細孔径:0.58nm)を用いた以外は実施例1と同様にして、前記HZSM-5型ゼオライト100質量部にコバルト20質量部及びカリウム6.0質量部が担持された触媒を得た。得られた触媒について、実施例1と同様にして触媒活性評価試験を行なった。その結果を図4A~図4Eに示す。
図5に示した炭化水素燃料製造装置を用いて、二酸化炭素と水素とを含有する原料混合ガスから炭化水素燃料を製造した。下記の定常状態に達した時点において、各ユニットで以下のような組成のガスが得られ、炭化水素燃料を高収率(C3以上の炭化水素類が95体積%以上)で製造できることが確認された。
水素化反応温度:300℃、水素化反応圧力:0.1~2.0MPa
吸着温度:30℃、吸着圧力:0.1~2.0MPa
脱着温度:150℃、脱着圧力:0.1~1.0MPa
重合反応温度:300℃、重合反応圧力:0.1~2.0MPa。
HZSM-5型ゼオライトにコバルト、カリウム及びナトリウムが担持された本発明の炭化水素類合成用触媒を用いて、原料混合ガス(CO2:22~27体積%、H2:73~78体積%、H2/CO2(体積比):約3)から、水素化反応生成ガス(C2~C3:35体積%以下、C4以上:35体積%以下、CH4:5体積%以下、CO2:3体積%以下、CO:3体積%以下、H2:5体積%以下)が得られた。
HZSM-5型ゼオライトに白金が担持された触媒とHZSM-5型ゼオライトにコバルト、カリウム及びナトリウムが担持された本発明の炭化水素類合成用触媒との重合用混合触媒(白金担持触媒70質量%以上+炭化水素類合成用触媒30質量%以下)を用いて、下記の分離回収ユニット12において分離除去されたC2以下の低級炭化水素類を含有するガス(C2~C3:50体積%以下、CH4:30体積%以下、CO:10体積%以下、H2:10体積%以下)から、重合反応生成ガス(C4以上:50体積%以下、C2~C3:25体積%以下、CH4:20体積%以下、CO:1体積%以下、H2:2体積%以下)が得られた。
ゼオライト吸着剤(ZSM-5型ゼオライト+BEA型ゼオライト)を用いて、前記水素化反応生成ガスと前記重合反応生成ガスとの混合ガスから、前記C2以下の低級炭化水素類を含有するガスを分離除去することによって、C3以上の炭化水素類が95体積%以上の炭化水素燃料(C4以上:90体積%以上、C2~C3:8体積%以下、CH4:2体積%以下)が得られた。
Claims (6)
- ゼオライト担体と、前記ゼオライト担体に担持されている、コバルト元素及びアルカリ金属元素とを含有し、二酸化炭素と水素とを原料とする炭化水素類の合成反応に用いられることを特徴とする炭化水素類合成用触媒。
- 前記ゼオライト担体の平均細孔径が、0.4~2.0nmであることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素類合成用触媒。
- 前記ゼオライト担体中のSiとAlとのモル比がSi/Al=20~500であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭化水素類合成用触媒。
- 請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の炭化水素類合成用触媒が配置されており、該炭化水素類合成用触媒に二酸化炭素と水素との原料混合ガスを接触させて炭化水素類を得るための水素化反応装置を備えることを特徴とする炭化水素類製造装置。
- 請求項4に記載の炭化水素類製造装置と、
該炭化水素類製造装置において得られるC2以下の低級炭化水素類を重合させてC3以上の高級炭化水素類からなる炭化水素燃料を得るための重合反応装置と、
を備えることを特徴とする炭化水素燃料製造装置。 - 前記炭化水素類製造装置において得られる炭化水素類及び前記重合反応装置において得られる炭化水素類をC2以下の低級炭化水素類とC3以上の高級炭化水素類とに分離して前記高級炭化水素類からなる炭化水素燃料を回収するための分離回収装置を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の炭化水素燃料製造装置。
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