以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
また、以下の説明において、ステータ1の中心軸が延びる方向、すなわちスロットの貫通方向を「軸方向」とする。軸方向に沿った一側を上側、他側を下側とする。上下方向は、位置関係を特定するために用いるためであって、実際の方向を限定するものではない。すなわち、下方向は重力方向を必ずしも意味するものではない。軸方向は、特に限定されず、鉛直方向、水平方向、これらの方向に交差する方向などを含む。
また、ステータ1の中心軸に直交する方向を「径方向」とする。径方向に沿った一側を内側、他側を外側とする。さらに、ステータ1の中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」とする。
また以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示す場合がある。よって、各構成要素の寸法および比率は実際のものと必ずしも同じではない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示する場合がある。
(ステータ)
図1に示すように、ステータ1は、モータの構成部品であって、図示しないロータと相互作用して回転トルクを発生させる。ステータ1は、コイル束10と、ステータコア20と、絶縁紙30と、ウエッジ40と、を備える。本実施形態のステータ1は、いくつかのスロット21を跨いでコイルを巻き付ける分布巻きとされる。
<ステータコア>
本実施形態のステータコア20は、一体型のステータコア20である。なお、分割型のステータコアを用いてもよい。ステータコア20は、中空の円柱形状に形成される。ステータコア20は、薄い珪素鋼鈑を重ねて形成される。ステータコア20には、複数のティース23が放射状に形成される。ティース23同士の間には、スロット21が形成される。ティース23は、スロット21を介して径方向に延びる。
スロット21は、スロット21の径方向開口部であるスロットオープン22を有する。スロットオープン22は、スロット21においてコイル辺部11を収容する空間の周方向幅よりも小さい。スロットオープン22は、周方向において、スロット21の中央部に形成される。
<コイル束>
コイル束10は、コイル線が環状に巻き付けられてなる。なお、コイル束10の各コイル線が束として並ぶ方向は、径方向である。本実施形態のコイル線は、丸線であるが、特に限定されず、平角線などでもよい。
図2は、後述する巻き付け型100のブレード131、132、コイル移動機構150及びコイルストッパ160が示されたコイル束を模式的に示す。図2に示すように、コイル束10は、二つのコイル辺部11と、コイル渡り部12と、を有する。
二つのコイル辺部11は、スロット21内に収容される。コイル辺部11は、軸方向に延びる。具体的には、一方のコイル辺部11が収納されるスロット21と、他方のコイル辺部11が収納されるスロット21とは、異なる。なお、一方のコイル辺部11が収納されるスロット21と、他方のコイル辺部11が収納されるスロット21とは、隣り合っていてもよく、別のスロットを介して周方向に配置されてもよい。
コイル辺部11は、整列巻きである。すなわち、整列巻きでは、コイル辺部11が所定方向に規則正しく積層される。なお、本実施形態のコイル辺部11は、スロット21において、周方向に規則正しく積層されるが、これに限定されない。
コイル渡り部12は、二つのコイル辺部11を繋ぐ。コイル渡り部12は、軸方向両側に配置される。具体的には、軸方向上側に位置するコイル渡り部12は、二つのコイル辺部11の上端部を連結する上側コイルエンドである。軸方向下側に位置するコイル渡り部12は、コイル辺部11の下端部を連結する下側コイルエンドである。
コイル束は、軸方向上側において、第1折曲痕13aと、第2折曲痕13bと、を有する。第1折曲痕13aは、径方向に折り曲げられた痕である。第2折曲痕13bは、第1折曲痕13aから軸方向上側において、スロットオープン22に向けて周方向に折り曲げられた痕である。
<絶縁紙>
図1に示すように、絶縁紙30は、スロット21に挿入される複数のコイル線からなるコイル辺部11を被覆する。絶縁紙30は、スロット21において径方向内側を除く空間を区画するティースに沿って配置される。本実施形態の絶縁紙30は、U字形状である。
<ウエッジ>
ウエッジ40は、スロット21内に配置されたコイル線と、スロットオープン22との間に配置される。コイル束10は、絶縁紙30で被覆されていてもよく、被覆されていなくてもよい。ウエッジ40は、スロットオープン22を塞ぐ。
本実施形態のウエッジ40は、スロット21内の上端部に配置される。また、本実施形態のウエッジは、軸方向視においてU字形状である。ウエッジ40の軸方向長さは、スロット21の軸方向長さよりも小さい。なお、ウエッジ40は省略されてもよい。
[巻き付け型]
図3~図8を参照して、本実施形態の巻き付け型100を説明する。図3~図5に示すように、巻き付け型100は、本体110と、仕切り120と、複数のブレード131、132と、支持部材140と、を備える。巻き付け型100にコイル線を巻き付けることにより、図3に示す折り曲げコイル束を形成する。
<折り曲げコイル束>
図3は、巻き付け型100の第1仕切り120a、第2仕切り120b、第3仕切り120c及びブレード131、132が示された折り曲げコイル束を模式的に示す。折り曲げコイル束は、後述するコイル束の上側を折り曲げる工程(S13、S14、S16)において、巻き付け型100を用いて環状のコイル束を折り曲げることによって形成される。「折り曲げる」とは、コイル束の上端部を径方向内側に向かって傾斜させる。
折り曲げコイル束は、複数のコイル群として、第1層16、第2層17及び第3層18を有する。第2層17は、第1層16よりも外周側に位置する。第3層18は、第2層17よりも外周側に位置する。
第1~第3層16~18は、軸方向上側において、軸方向位置が異なる。本実施形態では、コイル束10の軸方向上側において、軸方向上から順に、第3層18、第1層16、及び第2層17が位置する。すなわち、第3層18は、上段コイル束であり、第1層16は中段コイル束であり、第2層17は、下段コイル束である。
コイル束の軸方向下側は、軸方向位置が揃う。すなわち、下側のコイル渡り部12は、同一平面上に位置する。
第1層16、第2層17、及び第3層18の軸方向長さは、互いに異なる。本実施形態では、軸方向長さの小さい順に、第2層17、第1層16及び第3層18である。
第1層16、第2層17、及び第3層18のそれぞれは、周方向に1または複数のコイル線の列が配置される。列のそれぞれにおいて、径方向に複数のコイル線が並ぶ。
折り曲げコイル束は、傾斜部14を有する。詳細には、第1~第3層16~18のそれぞれは、傾斜部14を有する。軸方向上から順に、第3層18の傾斜部14、第1層16の傾斜部14、及び第2層17の傾斜部14が位置する。
傾斜部14は、軸方向に延びるコイル辺部11に対して、傾斜する。傾斜部14は、二つのコイル辺部11を繋ぐコイル渡り部12を含む。傾斜部14は、後述する挿入する工程(S30)において、スロットオープン22を通過する通過部15を有する。通過部15は、軸方向にコイル線が積層される。通過部15の周方向の長さは、スロットオープン22の周方向の長さよりも小さい。
<本体>
図4に示すように、本体110は、軸方向に延びる。本体110は、略直方体形状を有する。
本体110は、コイル線が巻き付けられる巻付面を含む。本体110の巻付面は、下側巻付面111及び側部巻付面112を有する。下側巻付面111は、軸方向下側に設けられる。詳細には、下側巻付面111は、本体110の下面に設けられる。側部巻付面112は、本体110の対向する二面に設けられる。詳細には、側部巻付面112は、軸方向に延びるとともに、互いに対向する側面に設けられる。
図5に示すように、側部巻付面112の間隔は、径方向内側に向かって狭くなる。対向する側部巻付面112の間隔は、スロット21の形状と同じである。具体的には、対向する側部巻付面112の間隔は、コイル束10が挿入される2つのスロット21の間隔と同一である。同一とは、寸法公差及び巻き付け時の隙間を除いては同一とする。側部巻付面112の軸方向長さは、スロット21の軸方向長さと同じまたは短い。
<仕切り>
図4に示すように、仕切り120は、本体110の軸方向上側に、本体110と間隔をあけて配置される。仕切り120の周方向長さは、本体110の周方向長さと同一であってもよい。仕切り120は、例えば、軸方向視において半円形状であって、本体110の周方向の両端部上にそれぞれ位置する。
巻き付け型100は、軸方向位置が異なる複数の仕切り120を含む。本実施形態の巻き付け型100は、軸方向下から順に、第1仕切り120a、第2仕切り120b、及び第3仕切り120cが位置する。なお、本明細書において、第1~第3仕切り120a~120cの少なくとも1つを単に仕切り120とも言う。
本実施形態では、ブレード131、132よりも径方向内側において、各仕切り120は、軸方向上側に向かって、コイル束の径が大きくなる位置に配置される。具体的には、第3仕切り120cに巻き付けられるコイル束の径は、第2仕切り120bに巻き付けられるコイル束の径よりも大きい。第2仕切り120bに巻き付けられるコイル束の径は、第1仕切り120aに巻き付けられるコイル束の径よりも大きい。
各仕切り120は、支持部材140によって支持される。各支持部材140は、径方向に移動する。詳細には、各支持部材140は、径方向に回転する。各支持部材140の回転軸Tは一致する。各支持部材140の回転により、各仕切り120は、回転運動により径方向に移動する。すなわち、各仕切り120は、本体110に対して径方向に移動する。共通の軸Tを中心に、各仕切り120を移動させる。すなわち、1つの軸Tを中心に、複数の仕切り120を径方向に移動させる。これにより、共通の駆動機構により、各仕切り120の径方向の位置変化を行うことができるので、巻き付け型100の簡素化が実現できる。
このように、各仕切り120は、径方向に移動するので、各仕切り120を本体110の上側の任意のエリアに配置できる。具体的には、本体110の上側において、径方向外側から内側に向けて、待避エリアA、巻き線エリアB、及び折り曲げエリアCが設けられる。巻き線エリアBは、コイル線を巻き付ける工程時に使用される仕切り120を配置するエリアである。巻き線エリアBは、本体110の直上に位置する。折り曲げエリアCは、コイル線が巻き付けられたコイル束を折り曲げる工程時に使用される仕切り120を配置するエリアである。折り曲げエリアCは、本体110よりも径方向内側に位置する。待避エリアAは、コイル線を巻き付ける工程及びコイル束を折り曲げる工程が実施されない仕切り120を配置するエリアである。待避エリアAは、本体110よりも径方向外側に位置する。
本実施形態では、各仕切り120は、コイル線が巻き付けられる前の径方向位置と、コイル線を巻き付ける際の径方向位置とが異なる。各仕切り120は、コイル線が巻き付けられる前には、待避エリアAに位置し、コイル線が巻き付けられる際には、巻き線エリアBに位置する。
また各仕切り120は、コイル線が巻き付けられた後の径方向位置と、コイル線を巻き付ける際の径方向位置とが異なる。各仕切り120は、コイル線が巻き付けられる際には、巻き線エリアBに位置し、コイル線を巻き付けた後は、折り曲げエリアCに移動する。
ブレード131、132よりも径方向内側において、各仕切り120の少なくとも一部は、軸方向視において重なる。また、コイル線を巻き付け型100に巻き付ける工程における各仕切り120の位置は、軸方向視において重なる。なお、各仕切り120は径方向に移動するので、各仕切り120の少なくとも一部は、移動させることにより軸方向視において重なる。
各仕切り120は、コイル線が巻き付けられる巻付面を含む。仕切り120の巻付面は、上側巻付面121、及び側部巻付面122を有する。上側巻付面121は、軸方向上側に設けられる。詳細には、上側巻付面121は、仕切り120の上面に設けられる。各上側巻付面121は、軸方向位置が異なる。
上側巻付面121は、軸方向下側に向かうにつれて径方向内側に位置して、傾斜する。コイル線を巻き付ける際に、仕切り120の上側巻付面121は、径方向内側に向かってコイル束の径が小さくなる。また、上側巻付面121は、径方向内側に向かうにつれて軸方向下側に位置して、傾斜する。上側巻付面121は、本体110の側部巻付面112と、径方向に空隙を有する。
側部巻付面122は、仕切り120の対向する二面に設けられる。詳細には、側部巻付面122は、対向する側面に設けられる。側部巻付面122は、軸方向上側に向かうにつれて径方向内側に位置して、傾斜する。また、側部巻付面122は、径方向内側に向かうにつれて軸方向上側に位置して、傾斜する。
図6~図8に示すように、上側巻付面121は、コイル線が巻き付けられる方向に沿う溝125を有する。さらに側部巻付面122は、コイル線が巻き付けられる方向に沿う溝126を有する。溝125、126によって、コイル線が案内されて巻き付けられる。
各仕切り120は、同時に巻き付けられる複数のコイル線の直径の和で区画され、コイル線が巻き付けられる方向に延びる壁部127を有する。同時に巻き付けられるコイル線を、壁部127間の巻付面上に1列に並べることができる。図6~図8では、10本のコイル線が同時に巻き付けられるので、コイル線の直径×10が壁部127間の距離Lである。
図6に示すように、第1仕切り120aの上側巻付面121aは、軸方向位置が異なる複数の面を有する。すなわち、複数の面は、同一平面上に位置しない。詳細には、壁部127で区画された2つの上側巻付面121aは、互いに平行である。しかし、上側巻付面121の複数の面の延びる高さは、コイル線の整数倍の直径分、ずれる。図7では、壁部127で区画された右側の上側巻付面121aは、左側の上側巻付面121aよりもコイル線の直径分、軸方向上側に位置する。
ここで、本体110の下側巻付面111及び側部巻付面112と、第1仕切り120aの上側巻付面121a及び側部巻付面122aとで構成される巻き枠を下段巻き枠と言う。本体110の下側巻付面111及び側部巻付面112と、第2仕切り120bの上側巻付面121b及び側部巻付面122bとで構成される巻き枠を中段巻き枠と言う。本体110の下側巻付面111及び側部巻付面112と、第3仕切り120cの上側巻付面121c及び側部巻付面122cとで構成される巻き枠を上段巻き枠と言う。
<ブレード>
図5に示すように、複数のブレード131、132は、本体110の径方向内側に配置される。図3に示すように、複数のブレード131、132は、軸方向に延びる。ブレード131、132は、棒状の部材である。ブレード131、132は、本体110に取り付けられてもよく、分離してもよい。
一対のブレード131、132は、本体110と仕切り120との間を渡るコイル線を、コイル束10の周方向内側及び外側から挟む。コイル束10の周方向とは、コイル束を基準として、二つのコイル辺部11において対向する側が内周側で、その反対側が外周側である。図3に示すように、一対のブレード131、132は、本体110の周方向両端部に位置する。すなわち、1つの本体110部に対して、1対のブレード131、132が2組配置される。
図3に示すように、一対のブレード131、132の軸方向上端部は、互いにR形状を有して対向する。すなわち、ブレード131、132の上端部において対向する面に、R形状が形成される。R形状は、コイル線をブレードに容易に案内するために設けられる。R形状とは、円弧状に湾曲する形状である。R形状を有することにより、後述するコイル線を巻き付ける工程において、コイル線がブレード131、132間にスムーズに案内される。
コイル線をコイル束の周方向内側から挟むブレード131は、軸方向に移動可能に構成される。本実施形態のブレード131は、後述するコイル移動機構150により、軸方向に移動する。ブレード131が軸方向に移動することにより、仕切り120の径方向の位置変化に対して緩衝することを回避できる。
コイル線をコイル束の周方向内側及び外側から挟むブレード131、132間の周方向の距離は、スロット21の径方向開口部であるスロットオープン22の周方向の幅よりも小さい、または同じである。これにより、スロット21にコイル束を後述する挿入する工程(S30)において、スロットオープン22を通過するコイル線の列を容易に形成できる。
ブレード131、132は、コイル束を保持する工程(S20)にも用いる。ブレード131、132は、スロット21にコイル束を挿入する工程(S30)にも用いる。ブレード131、132は、スロット21にコイル束を収納する工程(S60)にも用いる。すなわち、コイル束の上側を折り曲げる工程で用いるブレード131、132は、保持する工程(S20)、挿入する工程(S30)及び収納する工程(S60)で用いるブレードと共通である。
[ステータの製造方法]
図1~図29を参照して、本実施形態のステータ1の製造方法を説明する。
<環状コイル束の形成>
まず、図9に示すように、巻き付け型100にコイル線を複数回巻き付けて、図3に示す折り曲げコイル束を形成する(ステップS10)。この工程(S10)では、例えば、以下のように実施する。
まず、図10に示すように、本体110及び第2仕切り120b(中段巻き枠)にコイル線を巻き付け、中段コイル束としての第1層16を形成する(ステップS11)。
具体的には、第1仕切り120a及び第3仕切り120cを待避エリアAに配置するとともに、第2仕切り120bを巻き線エリアBに配置する。巻き線エリアBでは、第2仕切り120bの上側巻付面121bは、本体110の下側巻付面111に対して平行でもよいが、本実施形態では傾斜する。この場合、第2仕切り120bを径方向に移動する際に、コイル線が緩むことを抑制できるので、コイルエンドを短くできる。
中段巻き枠を回転させるとともに、中段巻き枠に向けてコイル線を供給する巻き線ノズルを、径方向に移動させる。なお、巻き線ノズルを回転させて、中段巻き枠にコイル線を巻き付けてもよい。
また中段巻き枠に複数本のコイル線を同時に巻き付ける。すなわち、本体110の下側巻付面111及び第2仕切り120bの上側巻付面121bに沿う方向である径方向に並んだ複数のコイル線を同時に巻き付ける。なお、中段巻き枠に1本のコイル線を順次巻き付けてもよい。
第2仕切り120bの溝125、126によって、コイル線が案内されて巻き付けられる。また、第2仕切り120bの壁部127に区画された領域には、同時に巻き付けられる複数のコイル線が配置される。図10では、10本のコイル線が同時に巻き付けられる。
これにより、径方向内側から外側に向けて複数のコイル線が並ぶ第1層16を形成する。その後、図11に示すように、第2仕切り120bを待避エリアAに移動する。
次に、図12に示すように、本体110及び第1仕切り120a(下段巻き枠)にコイル線を巻き付け、下段コイル束としての第2層17を形成する。具体的には、第1仕切り120aを待避エリアAから巻き線エリアBに移動する。第1層16の形成(S11)と同様に、コイル線を下段巻き枠に巻き付ける。これにより、第1層16の外周側に配置され、径方向内側から外側に向けて複数のコイル線が並ぶ第2層17を形成する。
次に、図13に示すように、第2層17の軸方向上側を折り曲げる(ステップS13)。この工程(S13)では、ブレード131、132は、本体110と第1仕切り120aとの間を渡るコイル線を、コイル束の周方向内側及び外側から挟み(図3参照)、第1仕切り120aが本体110に対して径方向に移動する。なお、図3では、中段の第1層16及び上段の第3層18の上側も傾斜しているが、この工程(S13)では、第1層16の上側は折り曲げられておらず、第3層18は形成されていない。
具体的には、第1仕切り120aを径方向内側に回転させる。このとき、第2層17の上端部は、第1仕切り120aに支持された状態で、径方向の内側に向かって傾斜する。これにより、第1仕切り120aは、折り曲げエリアCに移動する。この工程(S13)を実施することにより、下段折り曲げコイル束として、傾斜部14を有する第2層16を形成できる。
次に、図14に示すように、第1層16の軸方向上側を折り曲げる(ステップS14)。この工程(S14)では、ブレード131、132は、本体110と第2仕切り120bとの間を渡るコイル線を、コイル束の周方向内側及び外側から挟み、第2仕切り120bが本体110に対して径方向に移動する。
具体的には、図12に示すように待避エリアAに配置された第2仕切り120bを、図13に示すように巻き線エリアBに移動し、図14に示すように、さらに折り曲げエリアCに移動する。第2層17を折り曲げる工程(S13)と同様に、折り曲げエリアCでは、第1層16の軸方向上側を径方向内側に向かって傾斜させる。この工程(S14)を実施することにより、中段折り曲げコイル束として、傾斜部14を有する第1層16を形成できる。
次に、図15に示すように、本体110及び第3仕切り120c(上段巻き枠)にコイル線を巻き付け、第3層18を形成する(ステップS15)。具体的には、第3仕切り120cを待避エリアAから巻き線エリアBに移動する。第2層17と同様に、コイル線を上段巻き枠に巻き付ける。これにより、第2層17の外周側に配置され、径方向内側から外側に向けて複数のコイル線が並ぶ第3層18を形成する。
次に、図16に示すように、第3層18の軸方向上側を折り曲げる(ステップS16)。この工程(S16)では、ブレード131、132は、本体110と第3仕切り120cとの間を渡るコイル線を、コイル束の周方向内側及び外側から挟み、第3仕切り120cが本体110に対して径方向に移動する。
具体的には、第2層17を折り曲げる工程(S13)と同様に、折り曲げエリアCでは、第3層18の軸方向上側を径方向内側に向かって傾斜させる。この工程(S16)を実施することにより、上段折り曲げコイル束として、傾斜部14を有する第3層18を形成できる。
上側が折り曲げられた第1~第3層16~18を形成する上記工程(S11~S16)において、1つの軸Tを中心に、複数の仕切り120を径方向に移動させる。各仕切り120は、回転運動により、径方向に移動する。
また、第2層17、第1層16及び第3層18を折り曲げる工程(S13、S14、S16)において、各傾斜部14に、スロットオープンの開口幅よりも小さい幅を有する通過部15(図3参照)を設ける。通過部15は、圧縮することにより形成される。本実施形態では、径方向及び軸方向においてコイル線同士の隙間が小さくなるよう通過部15を圧縮する。軸方向視において、各層16~18の通過部15の少なくとも一部は、重なる。
本実施形態では、コイル束の上側を折り曲げる工程(S14、S16)において、軸方向に延びる複数のブレード131、132で傾斜部14をコイル束の周方向内側及び外側から挟む。そして、図18~図20に示すように、コイル束の上側を折り曲げる工程(S14、S16)で傾斜部14を形成する際に、ブレード131、132により、傾斜部14が、折り曲げ方向と交差する方向に屈曲される。すなわち、ブレード131、132により、本体110と仕切り120との間を渡るコイル線が、渡り方向と交差する方向に屈曲される。詳細には、ブレード131、132により、傾斜部14が周方向に屈曲される。
具体的には、図18に示すように、第2層17の傾斜部は、折り曲げ方向と交差する方向には屈曲しない。ブレード131、132を第2層17が屈曲しないように配置する。図19に示すように、ブレード131、132により、第1層16の傾斜部は、周方向他側に屈曲される。図20に示すように、ブレード131、132により、第3層18の傾斜部は、周方向一側に屈曲される。ブレード131、132を径方向外側及び内側に向けて移動することにより、折り曲げ方向と交差する方向に傾斜部を屈曲できる。第1層16及び第3層18には、周方向に折り曲げられた第2折曲痕13bが形成される。
次に、コイル束の下側を圧縮する(ステップS17)。すなわち、コイル束において、本体110に巻き付けられたコイル線を圧縮する。この工程(S17)では、本体110に巻き付けられたコイル線の軸方向断面形状が、スロット21の軸方向断面形状になるように圧縮する。すなわち、スロット21の形状と同一の形状を有する巻き枠にコイル線が巻き付けられてなるコイル辺部11が、スロット21の形状に合わせて圧縮される。圧縮により、コイル辺部11の軸方向に垂直な断面の断面積は、スロット21の軸方向に垂直な断面の断面積と同一にする。なお、「同一」とは、寸法公差を除いては同一とする。また、コイル辺部11の周方向の長さは、スロットオープン22の周方向の開口幅よりも大きい。
圧縮は、例えば押圧部材115(図22参照)を用いて行う。押圧部材115において、コイル線に当接する面の形状は、スロット21の周方向側面の形状と同一である。同一とは、寸法公差を除いては同一とする。押圧部材115を本体110に巻き付けられたコイル束に押し付けることにより、コイル線の隙間を低減できる。
これらの工程(S10)を実施することにより、図3及び図17に示す折り曲げコイル束を形成できる。本実施形態によれば、本体110と仕切り120との間を渡るコイル線を、複数のブレード131、132によって周方向内側及び外側から挟み、仕切り120を本体110に対して径方向内側に位置させることができる。これにより、本体110に巻き付けられたコイル束10の本体部よりも上側に、本体部に対して傾斜する傾斜部14を形成することができる。このため、コイル束10の本体部をスロット21に挿入するとともに、コイル束10の傾斜部14を、スロットオープン22からスロット21に挿入することができる。例えば本体部を圧縮すること等によって、ステータの占積率を向上させることができる。
このように形成されたコイル束は、スロット21に挿入されるコイル辺部11において、図21に示すように、周方向に複数のコイル線の列が配置され、列のそれぞれにおいて、径方向に複数のコイル線が並ぶようにコイル束を形成することができる。本実施形態では、周方向に複数のコイル線が6列配置される。周方向両端には、径方向に10本のコイル線が並ぶ。周方向両端以外の中央部には、径方向に20本のコイル線が並ぶ。図21の周方向の6列のうち、下から2列ごとに、第1層16、第2層17、及び第3層18が示される。
本実施形態では、コイル辺部11の軸方向に垂直な断面の形状を、スロット21の軸方向に垂直な断面の形状にあわせて、コイル辺部11を形成する。詳細には、周方向各列において、径方向に並ぶコイル線の本数で、スロット21の形状に極力合わせる。
本実施形態の第1層16、第2層17及び第3層18を形成する工程(S11、S12、S15)では、図22に示すように、ウエッジ形状の治具41またはウエッジ40を巻き付け型100に取り付けて、コイル線を巻き付ける。ウエッジ形状とは、スロットオープン22の径方向開口部を塞ぐ部材の形状である。
ウエッジ40を巻き付け型100に取り付ける場合には、ウエッジ40がコイル束の径方向内側端部を挟むようにウエッジ40を変形する。また圧縮する工程(S17)では、本体110に巻き付けられたコイル線と、ウエッジ40とを共に圧縮する。具体的には、本体110に巻き付けられたコイル線及びウエッジ40の軸方向断面形状が、スロット21の軸方向断面形状になるように圧縮する。押圧部材115を本体110に巻き付けられたコイル束に押し付けることにより、ウエッジ40とコイル線との隙間を低減できる。
<コイル束の保持>
図23、図24及び図26は、コイル束が挿入されるスロットが表れるように、ステータコア20の上面及び下面の一部のみを示す。図23に示すように、ステータコア20の径方向内側に配置される複数のブレード131、132にコイル束を保持する(ステップS20)。なお、ブレード131、132の一部は、スロットオープン22からスロット21内に入ってもよい。コイル束を保持するブレードは、特に限定されないが、巻き付け型100のブレード131、132を用いる。詳細には、保持する工程(S20)で用いるブレード131、132を、コイル束の一側を折り曲げる工程(S13、S15、S18)で用いる。保持する工程(S20)において、傾斜部14を、ブレード131、132間に配置する。
保持する工程(S20)は、後述する挿入する工程(S30)で実施されてもよい。この場合、図24に示すように、ブレード131、132は、ティース23に対応して配置される。詳細には、複数のブレード131、132とティース23とは、径方向において対向し、かつ周方向位置が一致する。このため、後述する収納する工程(S60)において、コイル束は、複数のブレード131、132間からスロットオープン22に挿入される。また、ブレード131、132は、後述するコイル移動機構150の径方向外側に配置される。
<スロットに挿入>
次に、スロット21の軸方向下側から上側に向けて、コイル束をスロット21に挿入する(ステップS30)。すなわち、コイル束を折り曲げた上側から、スロット21に挿入する。この工程(S30)では、ステータコア20の2つのスロット21の軸方向下側から上側に向けて、折り曲げコイル束をスロット21に挿入する。なお、本実施形態では、折り曲げコイル束を挿入する2つのスロット21は、スロット21を4つ挟んだ一のスロット21と他のスロット21とされるが、これに限定されない。
具体的には、図23に示すように、ステータコア20の軸方向の下方に折り曲げコイル束を配置する。このとき、通過部15がスロットオープン22の軸方向の下方に位置する状態で、ステータコア20に対し折り曲げコイル束を配置する。また、傾斜部14が径方向の内側を向いた状態で、ステータコア20に対し折り曲げコイル束を配置する。
次いで、図24に示すように、折り曲げコイル束を軸方向の上方に向けて移動させる。これにより、コイル辺部11をスロット21に挿入する。下側のコイル渡り部12は、ステータコア20の底部でスロット21間を跨ぐ。また、傾斜部14は、コイル辺部11よりも径方向内側を通過する。傾斜部14の通過部15は、スロットオープン22を通過する。
挿入する工程(S30)では、コイル移動機構150によりコイル束をスロットに挿入する。具体的には、コイル束をコイル移動機構150に当接させて、コイル移動機構150を上側に向けて移動する。これにより、コイル束10の内側がコイル移動機構150に引っ掛けられた状態で上方に向かって引き上げられる。コイル束の負荷を低減する観点から、コイル移動機構150は、例えば円板形状を有する。
コイル移動機構150は、フィンを有してもよい。フィンは、軸方向下方に向けて拡径する。後述する収納する工程(S60)において、拡径したフィンにより、コイル束10が径方向内側から外側に押圧される。ブレード131、132に保持されたコイル束10がスロットオープン22からスロット21内部に向けて挿入される。
挿入する工程(S30)では、ウエッジ形状の治具41またはウエッジ40と、コイル束とを共にスロット21に挿入する。ウエッジ形状の治具41またはウエッジ40は、スロット21内において径方向内側に位置する。
<コイル束のスロットへの未挿入部分の圧縮>
図24に示すように、ステータコア20の軸方向下側でコイル束を圧縮する(ステップS40)。すなわち、コイル束におけるスロット21への未挿入部分を圧縮する。図25に示すように、この工程(S40)では、コイル束の軸方向断面形状がスロット21の軸方向断面形状になるようにコイル束を圧縮する。
図24及び図25に示すように、この工程(S40)では、コイル束の軸方向断面位置とスロット21の軸方向断面位置とが重なる位置で、コイル束を圧縮する。なお、コイル束の軸方向断面位置の少なくとも一部がスロット21の軸方向断面位置と重なればよいが、重なりは広いほどよい。
この工程(S40)では、コイル束の圧縮される軸方向位置を変えながら順に圧縮する。スロット21に挿入される直前にコイル束を圧縮することが好ましい。コイル束を軸方向に段階的に圧縮できるので、圧縮荷重を小さくすることが可能であり、圧縮のための設備の小型化が可能である。
挿入する工程(S30)と、圧縮する工程(S40)とは、同時に実施される。「同時」とは、挿入する工程と圧縮する工程とが、時系列において重なることを意味する。それぞれの工程の開始時点と終了時点とは、同時でもよく、異なってもよい。挿入する工程と、圧縮する工程とを同じタイミングとすることにより、コイル束を軸方向上側に移動して、コイル束が軸方向に段階的に圧縮される。本実施形態では、挿入される直前に、スロット21直下で、コイル束が圧縮される。すなわち、コイル束において圧縮された部分が、圧縮された直後にスロット21に挿入される。圧縮位置変更のためのコイル束の軸方向移動が、スロット21への挿入のためのコイル束の軸方向移動にもなる。
この工程(S40)では、複数のスロット21に挿入されるコイル束を同時に圧縮する。「同時」とは、一のスロット21に挿入されるコイル束を圧縮する工程と、他のスロット21に挿入されるコイル束を圧縮する工程とが、時系列において重なることを意味する。それぞれの圧縮する工程の開始時点と終了時点とは、同時でもよく、異なってもよい。
図24及び図25では、隣り合うスロット21に挿入されるコイル束を同時に圧縮する。また、一のコイル束と他のコイル束とを同時に圧縮してもよく、一のコイル束における異なる部分を同時に圧縮してもよい。
ここで、1つのスロット21に挿入されるコイルを圧縮装置200により圧縮する方法について説明する。まず、圧縮装置200について説明する。
図25に示すように、圧縮装置200は、第1治具210と、第2治具220と、第3治具230と、連結部材240と、を備える。第1治具210は、周方向一側に配置された第1側面211と、周方向他側に配置された第2側面212と、を有する。第1治具210の周方向一側に、間隔を隔てて第2治具220が配置される。第1治具210の周方向他側に、間隔を隔てて第3治具230が配置される。第1治具210と第2治具220との周方向の間隔は、径方向外側よりも径方向内側が狭い。第1治具210と第3治具230との周方向の間隔は、径方向外側よりも径方向内側が狭い。
第2治具220と第3治具230とは、連結部材240により連結される。連結部材240は、スロットよりも径方向内側に位置する。詳細には、連結部材240は、第2治具220から径方向内側に向けて延びる部分241と、第3治具230から径方向内側に向けて延びる部分242と、それぞれの部分241、242を締結する締結部材243とを含む。
なお、圧縮装置200は、第2治具220及び第3治具230を移動する移動部材をさらに備えてもよい。移動部材は、例えばアクチュエータなどである。
続いて、圧縮装置200を用いて、ステータコア20の軸方向下側でコイル束を圧縮する方法を説明する。
コイル束の周方向一端を第1治具210に当接させる。第2治具220により、コイル束の周方向他端側から押圧する。第2治具220は、周方向から各コイル束に当接する。第2治具220が第1治具210に近づくように、第2治具220を周方向他側に移動する。
また、コイル束の周方向他端を第1治具210に当接させる。第3治具230により、コイル束の周方向他端側から押圧する。第3治具230は、周方向から各コイル束に当接する。第3治具230が第1治具210に近づくように、第3治具230を周方向に移動する。
本実施形態では、隣り合うスロット21に挿入されるコイル束を同時に圧縮する。具体的には、一方のスロット21に挿入されるコイル束の周方向一端を第1治具210の第1側面211に当接させる。他方のスロット21に挿入されるコイル束の周方向一端を第1治具210の第2側面212に当接させる。次に、第2治具220により、一方のスロット21に挿入されるコイル束の周方向他端側から押圧する。第3治具230により、他方のスロット21に挿入されるコイル束の周方向他端側から押圧する。第2治具220及び第3治具230を第1治具210側に同時に移動する。
圧縮する工程(S40)は、コイル束の径方向外端を第1治具210に当接させる。この構成により、コイル束は周方向及び径方向に圧縮される。
また、コイル束を形成する工程(S10)では、丸線のコイル線を用いてコイル束を形成する。圧縮する工程(S40)では、コイル線の断面形状を角形に変形する。圧縮により、丸線の断面形状を変形させて、占積率を向上する。
なお、この圧縮する工程(S40)では、上述した治具210、220、230を備える圧縮装置を用いずに実施してもよい。例えば、圧縮する工程(S40)では、ローラを用いてコイル束を圧縮する。
この工程(S40)を実施することにより、ステータコア20の軸方向下側で環状のコイル束が圧縮され、圧縮された部分がスロット21に挿入される。このため、圧縮されて密になったコイル線をスロット21に挿入することができる。したがって、ステータ1の占積率を向上できる。
なお、本実施形態では、コイル束を形成する工程(S10)で複数層の折り曲げを実施した後に圧縮する工程(S17)と、テータコアの軸方向下側でコイル束を圧縮する工程(ステップS40)と、を実施する。ステータコアの軸方向下側でコイル束を圧縮する工程(ステップS40)を実施するので、圧縮する工程(S17)は省略されてもよい。
<コイル束の復元>
次に、折り曲げコイル束を元の形状に復元する(ステップS50)。この工程(S50)は、折り曲げコイル束を元の形状に復元するために、傾斜部14の角度を小さくする。すなわち、この工程(S50)は、折り曲げコイル束を元の形状と同一の形状に復元することと、折り曲げられた状態よりも元の形状に近づいた状態に復元することと、を含む。
具体的には、折り曲げコイル束を元の形状のコイル束に変形する。詳細には、図26に示す矢印の方向に、各層の傾斜部14を上側に向けて回転させて、コイル辺部11と軸方向に平行にする。これにより、上側のコイル渡り部12は、スロット21を跨ぐ。
具体的には、第3層18の傾斜部14を元の形状に復元する(ステップS51)。次に、第1層16の傾斜部14を元の形状に復元する(ステップS52)。次に、第2層17の傾斜部14を元の形状を復元する(ステップS53)。
この工程(S51~S53)において、図26に示すように、コイル束の軸方向下端部にコイルストッパ160を当接させる。コイルストッパ160は、ステータコア20の下端よりも軸方向下方に配置される。コイルストッパ160は、コイル束においてスロット21の下方に位置する部分に当接する。コイルストッパ160により、コイル束の下端部及び上端部に径方向外側に向かう力を与えることができる。このため、スロット21にコイル束を容易に挿入できる。
この工程(S50)では、図26に示すように、コイル移動機構150を移動させることにより、コイル束の上側を元の形状に復元する。また、コイル移動機構150の上昇に伴って、ブレード132が上昇する。
この工程(S50)では、傾斜部14をコイル束の周方向内側から挟むブレード131、は、傾斜部14をコイル束の周方向外側から挟むブレード132よりも、軸方向下側に位置する。例えば、ブレード131は、挿入方向と逆方向に移動する。これにより、折り曲げた傾斜部14を復元する際に、ブレード131と干渉することを防止できる。例えば、ブレード131は、第1~第3層16~18の傾斜部14の高さに対応するために、軸方向位置を移動する。
<スロットに収納>
コイル束の軸方向上側を、スロット21の径方向開口部であるスロットオープン22から、スロット21に収納する(ステップS60)。この工程(S60)では、図21に示す複数の列のうちスロット内において、周方向位置がスロットオープン22に重なる列を、最後に収納する。
本実施形態では、スロットオープン22は、スロット21の周方向中央部に位置する。複数の列は、3以上である。このため、収納する工程(S60)は、スロット21の周方向一側に、少なくとも1つの列を収納する。スロット21の周方向他側に、少なくとも1つの列を収納する。スロット21の周方向中央部に、少なくとも1つの列を最後に収納する。
具体的には、第3層18の傾斜部を元の形状に復元する(ステップS51)。そして、図27に示すように、スロット21の周方向一側(図27における上側)に、第3層18の傾斜部の2列をスロット21に収納する(ステップS61)。なお、第3層18を元の形状と同一の形状に復元すると、第3層18の傾斜部はスロット21に収納される。
次いで、第1層16の傾斜部を元の形状に復元する(ステップS52)。そして、図28に示すように、スロット21の周方向他側(図28における下側)に、第1層16の傾斜部の2列を収納する(ステップS62)。
最後に、第2層17の傾斜部を元の形状に復元する(ステップS53)。そして、図29に示すように、スロット21の周方向中央部に、第2層17の傾斜部の2列を収納する(ステップS63)。
このように、コイル束の軸方向上側において、スロットオープン22に対向しない列から挿入することができる。このため、先にスロット21内に挿入された列をスロットオープン22から離れた周方向一側及び他側に移動することで、次に挿入する列を挿入する際の抵抗を低減できる。したがって、スロットオープン22でのコイルの挿入抵抗を低減することができる。
さらに、本実施形態では、コイル束を形成する際に、第2層17が最下段に位置するようにコイル線を巻き付ける。このため、第2層17を最後にスロットオープン22からスロット21に収納することができる。
また図19に示すように、第1層16の2列の傾斜部は、周方向他側に屈曲され、図20に示すように、第3層18の2列の傾斜部は、周方向一側に屈曲され、かつ図18に示すように、第2層17の2列の傾斜部は、折り曲げ方向と交差する方向に屈曲されていない。このため、第3層18の傾斜部を、スロットオープン22からスロット21の周方向一側に容易に挿入できる。第1層16の傾斜部を、スロットオープン22からスロット21の周方向他側に容易に挿入できる。第2層17の傾斜部をスロット21の中央部に容易に挿入できる。
なお、図18~図20では、2列のコイル線をスロットオープン22からスロット21に収納するが、これに限定されない。スロットオープン22から収納するコイル線の周方向幅が、スロットオープン22の周方向幅よりも小さい列数を任意に選択できる。
なお、スロット21に予め絶縁紙30を配置して、コイル束をスロット21に挿入してもよい。また、絶縁紙30を被覆したコイル束をスロット21に挿入してもよい。
また、ウエッジ形状の治具41を巻き付け型に取り付けてコイル線を巻き付けた場合には、ウエッジ形状の治具41を取り外す。その後、治具41が配置された空間にウエッジ40を挿入する。
以上の工程(S10~S60)を実施することにより、図1に示すように、ステータ
を製造できる。
(変形例1)
上述した実施形態では、コイル束10の軸方向上側において、軸方向上から順に、第3層18、第1層16、及び第2層17が位置するが、これに限定されない。コイル束の軸方向上側において、軸方向上から順に、第3層18、第2層17、及び第1層16が位置してもよい。この場合、第1仕切り120aには、第1層16となるコイル線が巻き付けられる。第2仕切り120bには、第2層17となるコイル線が巻き付けられる。第3仕切り120cには、第3層18となるコイル線が巻き付けられる。
なお、コイル束の軸方向上側において、軸方向上から順に、第1層16、第3層18、及び第2層17が位置してもよい。また、コイル束の軸方向上側において、軸方向上から順に、第1層16、第2層17、及び第3層18が位置してもよい。
このように、コイル束の傾斜部14の位置は、特に限定されない。このため、各層を形成する工程及び折り曲げる工程(S11~S16)の順序は、図9に限定されない。
(変形例2)
上述した実施形態では、コイル束10の軸方向下側は、軸方向位置が揃うが、これに限定されない。軸方向下側において、軸方向位置の異なる複数の層を有するコイル束を形成してもよい。例えば、コイル束の軸方向下側において、軸方向上から順に、第3層18、第1層16、及び第2層17が位置してもよい。また、コイル束の軸方向下側において、軸方向上から順に、第3層18、第2層17、及び第1層16が位置してもよい。
本変形例では、スロット21に挿入する工程(S30)において各層を軸方向上側に移動する際に、コイル束における下端部で移動を止めてもよい。コイル束の軸方向上側において、軸方向上から順に、第3層18、第1層16、及び第2層17が位置する場合、以下のように実施する。第3層18の上昇を下側のコイル渡り部12で止めて、第3層18の傾斜部14を復元する。次に、第1層16の上昇を下側のコイル渡り部12で止めて、第1層16の傾斜部14を復元する。次に、第2層17の上昇を下側のコイル渡り部12で止めて、第2層17の傾斜部14を復元する。
(変形例3)
上述した実施形態では、第1~第3層16~18の軸方向長さが互いに異なるが、各層の軸方向長さは同じでもよい。変形例1及び2のように、コイル束の上側及び下側の軸方向位置を制御することにより、各層の軸方向長さは任意に設定できる。
(変形例4)
上述した実施形態の巻き付け型100は、軸方向上側において、軸方向位置の異なる複数の層を有するコイル束を形成する例を説明したが、これに限定されない。巻き付け型100は、少なくとも1つの傾斜部を有するコイル束を形成するので、仕切り120は、1つ以上であればよい。
また、1つのスロット21に挿入するコイル束は、1つでもよく、複数でもよい。後者の場合、環状のコイル束を複数回スロットに挿入する。
(変形例5)
上述した実施形態では、コイル束の上側を折り曲げる工程(S13、S14、S16)を実施するが、折り曲げる工程(S13、S14、S16)は省略されてもよい。この場合、挿入する工程(S30)では、折り曲げられていない環状のコイル束をスロット22に挿入する。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。