JP7035402B2 - 送風器の異常診断装置、電力装置及び送風器の異常診断方法 - Google Patents

送風器の異常診断装置、電力装置及び送風器の異常診断方法 Download PDF

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Description

本発明は、送風器の異常診断装置、電力装置及び送風器の異常診断方法に関する。
従来より、情報機器や家電、産業機器等の様々な、動作時に熱を発する機器に対して、冷却ファン等の送風器を設けて対流冷却により放熱することが広く行われている。
経年劣化や故障によって送風器の風量が低減し、あるいは送風器が停止すると、発熱部を中心とした部分の部品が熱劣化し、機器本体が機能を停止することがある。
このため、送風器の異常を早期に検出することが行われている。
特許文献1は、ファンを含む放熱モジュールの性能低下の有無を検出可能な情報処理装置を開示している。
特許文献1の情報処理装置は、発熱デバイスの近傍に設けられた第1温度センサと、筐体内の発熱デバイスから遠い位置に設けられた第2温度センサを備えている。情報処理装置は、第1温度センサによって検知された発熱デバイスの温度と第2温度センサによって検知された筐体内の温度との間の温度差を検出する。情報処理装置は、この温度差が閾値を超えた時点から所定期間中、温度差を監視し、この結果に基づいて放熱モジュールの性能が低下したか否かを判定する。
特許文献1は、負荷が実行対象の処理の内容に応じて大きく変動し、これに伴い発熱デバイスの近傍の温度も変化するような情報処理装置を対象としている。このため、特許文献1においては、発熱デバイス近傍の温度の推移を第1温度センサにより観察して放熱モジュールの性能低下の有無を検出している。
特開2010-9539号公報
特許文献1に開示された情報処理装置においては、発熱デバイスの温度は、上記のように負荷に応じて変化し得る。このような、温度が変化し得る発熱デバイスを冷却する放熱モジュールの異常を正確に診断するためには、特許文献1に開示されているように、発熱デバイス近傍の温度を直接測定して、温度の想定外の上昇を検出するのが確実である。
しかし、この場合には、放熱モジュールが故障したときに、筐体内及び発熱デバイス近傍に時間をかけて熱が徐々に蓄積され、その結果が異常として検出されるため、放熱モジュールの停止からその検出までに時間を要する。したがって、放熱モジュールの故障が迅速に検出されないことがある。
特許文献1の情報処理装置とは異なり、定常的に連続運転することにより発熱部の温度の変化が少ない電力装置においては、送風器の異常診断に関する好適な方法は提案されていない。
特に、このような連続運転するような電力装置は、太陽光パワーコンディショナ等のようにライフラインの維持に関連するものが多い。このため、送風器の異常診断に時間を要する特許文献1のような手法を採用した場合には、ライフラインが長時間停止することも考えられる。したがって、送風器の異常を早期に検出し、装置本体の故障を未然に防ぐことが望まれている。
本発明が解決しようとする課題は、連続運転による発熱部を備えた電力装置に設けられる、送風器の異常を早期に検出可能な、送風器の異常診断装置、電力装置及び送風器の異常診断方法を提供することである。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、本発明は、連続運転による発熱部と、該発熱部より生じる発熱を冷却するための送風器を備えた電力装置に設けられ、前記送風器の異常を診断する異常診断装置であって、前記電力装置は、排気口を備える筐体を備え、前記送風器は、前記筐体内の空気を前記排気口から排出し、前記筐体の外側の前記排気口の近傍に設けられた温度測定器と、制御部と、を備え、該制御部は、前記温度測定器により測定された温度が、所定の時間前に測定された温度よりも小さい場合に、前記送風器に異常が生じたと診断する、送風器の異常診断装置を提供する。
上記のような構成によれば、温度測定器が筐体の外側の排気口の近傍に設けられている。したがって、通常時においては排気口から排出される筐体内の空気の温度が測定されるが、送風器の異常時においては、筐体内の空気が排気口から十分に排出されないために外気の温度が測定される。
上記の構成における、連続運転による発熱部を備えた電力装置においては、定常的に連続運転することにより発熱部の温度の変化が少ない。このため、送風器により排気口から排出される筐体内の空気の温度も、通常時においては略一定の、外気よりも高い温度となっている。送風器に異常が生じると、排気口から高温の空気が十分に排出されなくなるため、排気口近傍の温度は外気の温度に近づき低下する。すなわち、温度測定器は、送風器の異常時には通常時よりも低い温度を測定する。
ここで、送風器の異常時に筐体の外側の排気口の近傍の温度が低下すると、温度測定器により測定された温度が、所定の時間前に測定された温度よりも小さい場合に、送風器に異常が生じたと診断する制御部が、送風器に異常が生じたと診断する。
このように、上記のような構成においては、連続運転による発熱部を備えた電力装置において、送風器に異常が生じた場合に直ぐに値が変化する排気口近傍の温度の観察により送風器の異常を診断することができる。したがって、送風器の異常を早期に検出できる。
本発明の一態様においては、前記制御部は、前記所定の時間の間隔における前記温度の変化率を計算し、該変化率が負値である閾値よりも小さい場合に、前記送風器に異常が生じたと診断する。
上記のような構成によれば、制御部は温度の変化率を計算する。ここで、排気口の近傍の温度が低下すると、計算された温度の変化率は負値となる。この変化率が閾値よりも更に小さい場合に、制御部は、温度が通常時には想定し得ない程度に急峻に低下したと判断し、送風器に異常が生じたと診断可能である。このため、上記のような送風器の異常診断装置をより適切に実現可能である。
本発明の別の態様においては、前記閾値は、前記送風器が正常に動作している状態における前記温度測定器による前記温度の測定値の推移データである正常データから複数の時刻における前記変化率を計算し、該変化率の平均と標準偏差を計算することで導出されている。
上記のような構成によれば、閾値が、送風器が実際に正常に動作している状態の温度の推移データを基に統計的に導出されているため、閾値の精度を高くすることができる。これにより、送風器の異常の誤検出や異常の見逃しを抑制することができる。
本発明の別の態様においては、前記閾値は、前記平均と、前記標準偏差に所定の値を乗算した値との差分である暫定閾値を基に計算され、前記送風器に実際に異常が発生した際の前記温度の測定値の推移データである異常データがない場合には、前記暫定閾値が前記閾値として設定されている。
上記のような構成によれば、閾値は、平均から、標準偏差に所定の値を乗算した値を減算した暫定閾値を基に計算されている。特に、送風器に実際に異常が発生した際の推移データがない場合に、この暫定閾値が閾値として設定されている。すなわち、送風器が実際に正常に動作しているデータにおける変化率の分布は平均とその近傍が最も高くなるが、暫定閾値を平均より適度に小さい値とすることで、計算された変化率が暫定閾値以上であれば、送風器の動作は正常であると判断可能である。これにより、送風器の正常動作を異常動作とする誤検出を少なくすることができる。
本発明の別の態様においては、前記異常データがある場合には、前記暫定閾値が、前記異常データでの前記変化率の最小値である第1最小値と、所定の判定閾値の間の値であれば、前記暫定閾値が前記閾値として設定され、前記暫定閾値が、前記判定閾値と、前記正常データでの前記変化率の最小値である第2最小値との間の値であれば、前記判定閾値が前記閾値として設定されている。
上記において、第1最小値は、異常データでの変化率の最小値であり、異常データにおいて温度の変化率が最も急峻に低下した場合の値である。また、第2最小値は、正常データでの変化率の最小値であり、送風器が正常に動作した範囲において、温度の変化率が最も急峻に低下した場合の値である。異常データにおいては、温度が通常時には想定し得ない程度に急峻に低下したと考えられるため、第1最小値は、第2最小値よりも小さな値となっている。
ここで、正常な動作ではあるが、閾値の導出に用いられた正常データの中には挙動として表れておらず、第2最小値よりも小さな変化率が計算されるような状態が、実際には存在する可能性がある。すなわち、計算された変化率が第1最小値以上第2最小値以下の範囲にあっても、変化率が第2最小値に近い値であると、本来は正常動作であるにもかかわらず、これを異常動作として誤検出することが考えられる。
上記のような構成によれば、暫定閾値が第2最小値より小さい値である所定の判定閾値と第2最小値との間の値である場合に、判定閾値を閾値として設定することで、変化率が判定閾値以上第2最小値以下の場合であっても正常と診断できる。したがって、上記のような誤検出を低減可能である。
また、所定の判定閾値が第1最小値より大きい値であるため、判定閾値を過剰に小さい値として設定することによる異常の見逃しを抑制可能である。
本発明の別の態様においては、前記標準偏差は、前記正常データ中の、前記変化率が飽和している飽和期間内の値を基に計算されている。
上記のような構成によれば、正常データ中の、変化率が飽和している飽和期間、すなわち、温度がほとんど変化せず変化率が0に近い期間内の変化率の値を基に、標準偏差が計算され、これを基に閾値が導出されている。すなわち、正常データ取得中に何らかの外部要因等により測定温度が大きく変化するような場合があったとしても、このような飽和期間に該当しない場合を考慮しないため、変化率の分布が大きく乱れるのを抑制できる。したがって、正常データにおける変化率の、精度の高い標準偏差及び閾値を導出可能であり、これにより異常診断の精度を高めることができる。
本発明の別の態様においては、上記のような送風器の異常診断装置が設けられた、電力装置を提供する。
上記のような構成によれば、上記のような送風器の異常診断装置を設けた電力装置を実現可能である。
本発明の別の態様においては、電力装置が、複数の前記送風器と、この各々に対応する複数の前記温度測定器を備えている。
上記のような構成によれば、複数の送風器を備えている電力装置であっても、この各々に対応する温度測定器を設けることにより、各送風器の異常診断を個別に実行することが可能である。
また、本発明は、連続運転による発熱部と、該発熱部より生じる発熱を冷却するための送風器を備えた電力装置において、前記送風器の異常を診断する異常診断方法であって、前記電力装置の筐体の外側の、前記送風器により前記筐体内の空気が排出される前記電力装置の排気口の近傍の温度を測定し、測定された前記温度が、所定の時間前に測定された温度よりも小さい場合に、前記送風器に異常が生じたと診断する、送風器の異常診断方法を提供する。
上記のような方法によれば、上記の異常診断装置において既に説明したように、連続運転による発熱部を備えた電力装置において、送風器に異常が生じた場合に直ぐに値が変化する排気口近傍の温度の観察により送風器の異常を診断することができる。したがって、送風器の異常を早期に検出できる。
本発明の一態様においては、異常診断方法は、前記所定の時間の間隔における前記温度の変化率を計算し、該変化率が負値である閾値よりも小さい場合に、前記送風器に異常が生じたと診断する。
上記のような構成によれば、上記の異常診断装置において既に説明したように、上記のような送風器の異常診断方法をより適切に実施可能である。
本発明によれば、連続運転による発熱部を備えた電力装置に設けられる、送風器の異常を早期に検出可能な、送風器の異常診断装置、電力装置及び送風器の異常診断方法を提供することができる。
本発明の実施形態における電力装置の模式図である。 前記実施形態における電力装置に設けられた送風器の異常診断装置における、異常診断方法を示すフローチャートである。 前記実施形態における閾値の設定方法を示すフローチャートである。 正常データを示すグラフである。 前記閾値の設定方法を示す説明図である。 前記閾値の設定方法を示す説明図である。 カーブフィッティングの原理を示す説明図である。 カーブフィッティング後の正常データを示すグラフである。 前記実施形態に関する実施例を説明する表である。 前記実施例を用いた実験において使用した、実験パターンの表である。 前記実験の結果を示す表である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態における異常診断装置は、連続運転による発熱部と、発熱部より生じる発熱を冷却するための送風器を備えた電力装置に設けられ、送風器の異常を診断するものであり、電力装置は、排気口を備える筐体を備え、送風器は、筐体内の空気を排気口から排出し、筐体の外側の排気口の近傍に設けられた温度測定器と、制御部と、を備え、制御部は、温度測定器により測定された温度が、所定の時間前に測定された温度よりも小さい場合に、送風器に異常が生じたと診断する。
図1は、実施形態における電力装置の模式図である。
図1に示される電力装置1は、連続運転による発熱部3を備えている。すなわち、電力装置1は、通常時には外部からの操作等の外的要因等により処理内容が変わり負荷が動的に変化するようなものではなく、一定の処理を連続、継続して実行するものである。これに伴い、発熱部3は、通常時には定常的に発熱し、略一定の温度を保っている。
電力装置1は筐体2を備え、発熱部3は筐体2内に設けられている。
電力装置1は、本実施形態においては例えば、太陽光発電電力を得る太陽電池に接続されて、太陽電池が出力する直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナである。また、発熱部3は、パワーコンディショナ内に設けられて実際にこの変換処理を行うインバータである。
筐体2は、送風器4、給気口5、及び排気口6を備えている。
送風器4は、給気口5から外気を取り込み、発熱部3により生じる発熱を対流冷却により放熱、冷却し、温まった筐体2内の空気を排気口6から排出する。
本実施形態においては、送風器4は冷却ファンであり、筐体2内に複数、例えば5個が設けられている。
本実施形態においては、給気口5も各送風器4に対応するように複数個が設けられているが、発熱部3に万遍なく外気を行き渡らせることができればこれに限られず、1個であってもよいし、送風器4に対応しないように複数個が設けられていてもよい。
排気口6は、送風器4に対応するように複数、例えば5個が設けられている。各排気口6は、対応する送風器4の近くに設けられている。各送風器4から送られる空気は、対応する排気口6を介して外部へ排出される。
上記のような電力装置1に対し、送風器4の異常を診断する異常診断装置10が設けられている。異常診断装置10は、温度測定器11と、制御部12、及び異常通知部13を備えている。
温度測定器11は、各送風器4及び各排気口6に対応して複数個、本実施形態においては例えば5個が設けられている。温度測定器11は、例えば温度センサであってよい。各温度測定器11は、筐体2の外側に、なおかつ、各温度測定器11に対応する排気口6の近傍に設けられている。これにより、各送風器4が動作している場合には、各送風器4により対応する排気口6を介して筐体2から排出される空気の温度が、対応する温度測定器11によって測定される。また、各送風器4が動作していない場合には、外気の温度が対応する温度測定器11によって測定される。
各温度測定器11は、測定した温度を随時、次に説明する制御部12へと送信する。
次に、制御部12について説明する。
本実施形態のような連続運転による発熱部3を備えた電力装置1においては、既に説明したように、発熱部3は通常時には定常的に発熱し、略一定の温度を保っている。このため、各温度測定器11によって測定される、対応する送風器4によって排気口6を介して排出される空気の温度は、通常時においては略一定の、外気よりも高い値となる。ここで、送風器4に異常が発生した場合には、排気口6から正常に筐体2内の空気を排出できなくなるため、対応する温度測定器11によって測定される温度は外気の値に近い、通常時よりも低い値となる。
制御部12は、この原理に基づき、温度測定器11により測定された温度が、所定の時間前に測定された温度よりも小さい場合に、送風器4に異常が生じたと診断する。
より詳細には、制御部12は、所定の時間の間隔における温度の変化率を計算し、所定の負値である閾値と変化率を比較して、変化率がこの閾値よりも小さい場合に、送風器4に異常が生じたと診断する。
以下、制御部12の動作について説明する。
制御部12は、各温度測定器11から随時送付される温度を受信し、内部に保存する。
制御部12は、温度測定器11の各々の測定結果に対し、所定の計算時間間隔ごとに、所定の時間の間隔における温度変化率を計算する。本実施形態においては、所定の計算時間間隔は例えば0.5秒であり、所定の時間は例えば30秒であり、所定の時間の間隔は30秒間、すなわち30秒前から温度変化率を計算する時点までの期間である。すなわち、本実施形態においては、0.5秒ごとに、過去30秒間における温度変化率を計算する。
温度変化率は、本実施形態においては、温度変化率を計算する時点における温度と、所定の時間前の時点における温度の差分を、所定の時間で除算したものである。例えば、所定の時間すなわち30秒前の時点における温度が20℃、現在すなわち温度変化率を計算する時点における温度が17℃とすると、この場合の変化率は、(17-20)/30=-0.1(℃/秒)となる。すなわち、本実施形態における温度変化率は、所定の時間の間隔における温度の変化速度である。本実施形態においては、上記のように、温度の下がり具合を観察するものである。このように温度が下がる場合においては、変化率は負の値となる。すなわち、温度変化率が低いほど、温度の下がり具合が激しく急峻な変化となっている。
制御部12は、各温度測定器11の測定結果に対し、所定の計算時間間隔ごとに計算された温度変化率を、閾値と比較する。本実施形態においては温度の下がり具合を観察し、下がり具合が想定よりも更に急峻に下がる場合を異常として診断するものである。このため、閾値は負の値となる。
すなわち、この閾値を超えて温度変化率が下回り小さい値を取る場合においては、通常の場合を超えた速度で測定温度が低下していると判断可能である。この場合に、制御部12は、この温度測定器11に対応する送風器4の識別情報と、この送風器4に異常が発生している旨の情報を異常通知部13へ送信する。
逆に、閾値を超えて温度変化率が下回っておらず、温度変化率が閾値よりも大きい値を取る場合においては、温度変化は通常の場合として想定される範囲内のものであり、この温度測定器11に対応する送風器4に異常は発生していないと判断する。
また、制御部12は、何らかの要因で電力装置1から排出される空気の温度が一時的に上昇し、その後速やかに低下して通常時の状態に復帰するような場合に、これを異常と診断しないように制御されている。すなわち、制御部12は実際には、例えば温度変化率が大きく変化しない状態が一定の期間続いた後に、温度変化率が閾値を超えて下回り小さい値を取った場合を、異常として診断している。
送風器4ごとに、筐体2内の設置場所、通常時における冷却の期待性能等が異なっていることが多い。したがって、閾値は送風器4ごとに異なる値が設定されている。
異常通知部13は、送風器4の識別情報と、この送風器4に異常が発生している旨の情報を制御部12から受信した場合には、それを作業者、使用者等に通知する。異常通知部13は、ディスプレイ等の表示装置や、これと併せて使用される警報器等であってよい。または、遠隔地の作業者へ異常情報を送信するための無線送信器等であってもよい。
上記の所定の時間の設定に関しては、例えば強風により排気口6から排出された空気が温度測定器11に接触しないように流されて温度測定器11が一時的に外気の温度を検出した場合等に、短時間で測定された温度が乱高下する場合がある。すなわち、所定の時間を短く設定しすぎると、送風器4が正常に動作していても、このような場合に制御部12が誤って異常と診断する可能性がある。したがって、本実施形態において30秒と設定したように、適度に長い時間とする必要がある。
次に、図1、図2を用いて、上記の異常診断装置10を用いて送風器4の異常を診断する異常診断方法について説明する。図2は、電力装置1に設けられた送風器4の異常診断装置10における、異常診断方法を示すフローチャートである。
本異常診断方法は、電力装置1の筐体2の外側の、送風器4により筐体2内の空気が排出される電力装置1の排気口6の近傍の温度を測定し、測定された温度が、所定の時間前に測定された温度よりも小さい場合に、送風器4に異常が生じたと診断するものである。
また、所定の時間の間隔における温度の変化率を計算し、変化率が負値である閾値よりも小さい場合に、送風器4に異常が生じたと診断する。
まず、電力装置1を起動させ、連続運転の状態にする。これにより、発熱部3は、略一定の温度を保つように定常的に発熱する。
この状態で、各温度測定器11は、対応する排気口6の近傍の温度の測定を開始する(ステップS1)。
各温度測定器11は、測定した温度を随時、次に説明する制御部12へと送信する。
制御部12は、各温度測定器11から随時送付される温度を受信し、内部に保存する。
制御部12は、温度測定器11の各々の測定結果に対し、所定の時間の間隔における温度変化率を計算する(ステップS2)。
その後、制御部12は、各温度測定器11の測定結果に対し、計算された温度変化率を閾値と比較する(ステップS3)。
閾値を超えて温度変化率が下回っておらず、温度変化率が閾値よりも大きい値を取る場合においては、温度変化は通常の場合として想定される範囲内のものであり、この温度測定器11に対応する送風器4に異常は発生していないと判断する(ステップS2へ遷移)。制御部12は、このような温度変化率の計算及び閾値との比較を、所定の計算時間間隔ごとに実行する。
閾値を超えて温度変化率が下回り小さい値を取る場合においては、通常の場合を超えた速度で測定温度が低下していると判断可能である。この場合に、制御部12は、この温度測定器11に対応する送風器4の識別情報と、この送風器4に異常が発生している旨の情報を異常通知部13へ送信する。異常通知部13は、送風器4の識別情報と、この送風器4に異常が発生している旨の情報を制御部12から受信し、作業者、使用者等に通知する(ステップS4)。
(閾値の設定方法)
既に説明したような異常診断を適切かつ効果的に実行するためには、適切な閾値の値の導出と設定が必要である。以下、図3を用いて閾値の設定方法を説明する。図3は、本実施形態における閾値の設定方法を示すフローチャートである。
まず、送風器4が正常に動作している状態における温度測定器11による温度の測定値の推移データである正常データを取得する(ステップS11)。
後述するように、閾値は、この正常データから複数の時刻における温度変化率を計算して分布を求め、温度変化率の平均と標準偏差を計算することで導出される。すなわち、温度変化率の平均や標準偏差の精度を高め、より好適な閾値を導出するためには、できるだけ多くの温度変化率データが必要となる。このために、正常データの取得はできるだけ長時間行うのが好ましい。
図4は、正常データの一例を示すグラフである。図4に示されるように、正常データは温度の測定値の推移データであるため、連続した曲線となっている。
正常データとしては、例えば図4に期間TTとして示されるような、電力装置1の起動直後等の、正常な動作の範囲内で一時的に温度が上下動する場合の温度の推移も含まれている可能性がある。正常データは送風器4が通常状態にあるか否かを判断する閾値の導出に使用されるため、正常データから電力装置1が連続運転して送風器4が通常状態にある部分のみを抽出し、この部分のみを閾値の導出に使用するのが適切である。
このため、正常データから飽和期間STのみを抽出する(ステップS12)。
ここで、飽和期間STとは温度変化率がほとんど変化せず、飽和して0に近い値となっている期間である。これに対し、温度変化率が変化している期間TTを過渡期間TTと呼称する。図4においては、500秒付近の境界Bよりも後が飽和期間STとなっている。
上記のように、飽和期間STにおける温度変化率から閾値が導出されるため、閾値の精度を上げるには、正常データから飽和期間STを正確に抽出する必要がある。この、飽和期間STの抽出方法については後に詳説する。
上記のように抽出された正常データの飽和期間STに対し、所定の計算時間間隔ごとに、所定の時間の間隔における温度変化率を計算する(ステップS13)。
所定の時間は、既に説明した異常診断装置10の制御部12における所定の時間、本実施形態においては例えば30秒と、同じ値である。
所定の計算時間間隔は、本実施形態においては、既に説明した異常診断装置10の制御部12における所定の計算時間間隔、本実施形態においては例えば0.5秒と、同じ値としているが、異なっていてもよい。
次に、上記のように計算された多数の温度変化率に対して分布をとり、この分布の平均μと標準偏差σを計算し、暫定閾値として、平均μと、標準偏差σに所定の値を乗算した値との差分を計算する(ステップS14)。このように、平均μと標準偏差σは、正常データ中の、飽和期間内の値を基に計算されている。
上記のように計算された温度変化率はガウス分布に従う。したがって、Nを計算された温度変化率の総数、x(i=1~N)を各温度変化率の値とすると、温度変化率の平均μと標準偏差σは、次の数式1、数式2により計算される。
Figure 0007035402000001
Figure 0007035402000002
ここで、上記のように温度変化率はガウス分布に従うため、図5に示される形状のように分布する。ガウス分布に従うデータにおいては、あるデータがμ―σからμ+σの範囲に含まれる確率は68.27%であることが知られている。同様に、μ―2σからμ+2σの範囲に含まれる確率は95.45%、μ―3σからμ+3σの範囲に含まれる確率は99.73%、μ―4σからμ+4σの範囲に含まれる確率は99.99%となる。更に、μ―5σからμ+5σの範囲に含まれる確率は99.9999%となる。
このため、送風器4が正常に動作している状態の温度変化率のとり得る値の殆どは、μ―5σからμ+5σの範囲Rに含まれる。すなわち、制御部12によって計算された温度変化率がこの範囲Rにない場合に、送風器4に異常が発生していると判断することは妥当である。
本実施形態においては上記のように、温度の下がり具合を観察するものである。すなわち、本実施形態において検出したい送風器4の異常は、正常データに対して計算された温度変化率の値の範囲を外れて、温度の下がり具合が激しく温度変化率が小さい場合に相当する。このため、暫定閾値を範囲Rの下限μ―5σとし、温度変化率がこの値以下の場合を検出することで、異常を判断することができる。
本実施形態においては、上記のように所定の値を5とし、これに伴い暫定閾値をμ―5σとしているが、上記のようにこの値は最良値である。所定の値は、例えば3以上5以下の範囲にある、5以外の値であってよい。すなわち、暫定閾値はμ―5σ以上μ―3σ以下の値であってよい。
次に、送風器4に実際に異常が発生した際の温度の測定値の推移データである異常データの有無を判断する(ステップS15)。
図6(a)は、ある送風器4に対応する温度測定器11によって測定された、温度が時間により推移する例を示すグラフである。時間Tよりも前の時間においては、送風器4は正常に動作して図4と同様な形状を示す正常データNDとなっている。しかし、時間Tの直後から温度は急峻に下降し、送風器4に何らかの異常が発生したことを示す異常データADとなっている。
異常データがない場合には、上記のように計算された暫定閾値を閾値Tとして設定する(ステップS16)。
以下、異常データがある場合の処理について説明する。
異常データがある場合には、異常データに対して、所定の計算時間間隔ごとに、所定の時間の間隔における温度変化率を計算する(ステップS17)。所定の時間、所定の計算時間間隔は、正常データの飽和期間STに対して温度変化率を計算したステップS13と同じ値を使用する。
また、ステップS17により計算された異常データの温度変化率の最小値である第1最小値αと、ステップS13により計算された正常データの温度変化率の最小値である第2最小値βを、それぞれ計算する。
図6(b)は、図6(a)に対応する温度変化率の例を示すグラフである。正常データND中で最も値が低い位置に第2最小値βが、及び異常データAD中で最も値が低い位置に第1最小値αが、それぞれ示されている。本実施形態においては、温度の下がり具合を観察して異常を診断するものであり、図6(a)に示されるように異常データADにおいては正常データNDに比べると温度が低下する傾向にある。このため、図6(b)に示されるように、異常データADにおいては温度変化率が全体的に小さくなっている。このように、異常データAD中の最小値である第1最小値αは、正常データND中の最小値である第2最小値βよりも小さい値となる。
更に、第1最小値αと第2最小値βの間の領域において、第2最小値βの近傍の値となる、所定の判定閾値Tを設定する。その上で、第1最小値αと判定閾値Tの間の区間内に、暫定閾値があるか否かを判定する(ステップS18)。図6(c)に、第1最小値α、第2最小値βと、判定閾値Tの大小関係を示す。
送風器4の異常を診断する際に用いられる閾値Tとしては、送風器4の異常の誤検出を防ぐため、少なくとも第2最小値βよりも小さい値に設定されている必要がある。また、送風器4の異常を見逃すことがないよう、第1最小値αよりも大きい値に設定されている必要がある。更に、送風器4の異常を迅速に検出するために、閾値Tはできるだけ大きな値に設定されているのが望ましい。
一般に、統計的仮設検定を行う場合、帰無仮説を棄却するか否かを判定する基準として、有意水準が用いられる。この考え方を第1最小値αと第2最小値βの間の区間(95%信頼区間CI)における閾値Tの設定に適用すると、例えば、有意水準を5%とした場合には、100回に5回は誤った閾値設定になることとなる。
本実施形態においては、誤った閾値設定となるのは、閾値Tが第2最小値βの近くに設定された場合である。すなわち、送風器4の正常な動作ではあるが、ステップS11で取得された正常データの中には挙動として表れておらず、第2最小値βよりも小さな変化率が計算されるような状態が存在する可能性がある。この場合においては、実際には正常な動作に相当する温度変化率が、区間CIの上位5%の区間である上位区間UI内に含まれることとなり、閾値Tを第2最小値βとした場合においては、異常の誤検出が生じ得る。
上記の考えに基づき、本実施形態においては、判定閾値Tを、第1最小値αと第2最小値βの間の領域CIを100%としたときの、第1最小値αから例えば95%の位置にある値として設定している。この判定閾値Tを暫定閾値と比較した結果に基づき、最終的な閾値Tを決定する。
判定閾値Tは、次の数式3により表すことができる。
Figure 0007035402000003
本実施形態においては、上記のように、判定閾値Tを、第1最小値αから例えば95%の位置にある値として設定したが、設定の趣旨を損なわなければ、これ以外の値、例えば93~97%程度の値を用いても構わない。
ステップS18における判定の結果、第1最小値αと判定閾値Tの間の区間、すなわち図6(c)に示される下位区間LI内に暫定閾値があれば、暫定閾値を閾値Tとして設定する(ステップS19)。暫定閾値は判定閾値Tよりも小さいため、上位区間UI内に存在する可能性のある、送風器4が正常に動作した場合の温度変化率は、異常として誤検出されない。
暫定閾値が下位区間LIではなく上位区間UIにあれば、この暫定閾値を用いた場合には、上位区間UI内に存在する可能性のある、送風器4が正常に動作した場合の温度変化率が異常として誤検出される可能性がある。この場合には、誤検出を抑制するため、暫定閾値ではなく、判定閾値Tを閾値Tとして設定する(ステップS20)。
このように、異常診断装置10においては、閾値Tは、平均μと、標準偏差σに所定の値を乗算した値との差分である暫定閾値を基に計算されている。
異常データがない場合には、暫定閾値が閾値Tとして設定されている。
異常データがある場合には、暫定閾値が第1最小値αと所定の判定閾値Tの間の値であれば、暫定閾値が閾値Tとして設定され、暫定閾値が判定閾値Tと第2最小値βとの間の値であれば、判定閾値Tが閾値Tとして設定されている。
(飽和期間の抽出方法)
次に、図3のステップS12として示された、正常データから飽和期間STを抽出する方法について説明する。
上記のように、正常データは送風器4が通常状態にあるか否かを判断する閾値の導出に使用される。したがって、正常データから温度が安定していない過渡期間TTを考慮しないように除外し、飽和期間STのみを抽出する必要がある。本実施形態においては、例えば図4においてBとして示したような、過渡期間TTと飽和期間STの境界Bを決定することにより、飽和期間STを抽出する。
図4のような温度が推移するデータにおいて、過渡期間TTと飽和期間STの境界Bを決定する場合、一般的には、図4のように推移データをプロットし、温度変化の飽和が始まったおおよその場所を見定め、境界Bを設定する。しかし、この方法においては、推移データごとに人手で境界Bを設定するため、手間を要する。また、推移データには測定ノイズが含まれている場合が多く、このような場合には境界Bの設定自体が容易ではない。図4の推移データには、測定ノイズが実際よりも強調して示されている。
本実施形態においては、まず、正常データから上記のような測定ノイズの影響を排除するため、正常データに対してカーブフィッティングを適用し、第1データを作成する。カーブフィッティングは、実験的に得られた連続データに対して、最もよく当てはまるような曲線を導出する手法である。一般的に、カーブフィッティングには非線形回帰が用いられており、これにより、実測データの非線形回帰モデルが導出される。
図7は、カーブフィッティングの動作原理を示す説明図である。図7においては、横軸が時間で縦軸が温度の座標系上に複数のデータがプロットされており、これらのデータに対してカーブフィッティングが適用されて導出された曲線が示されている。
図8は、図4に示される推移データに対して、カーブフィッティングを適用した例である。カーブフィッティングで導出した非線形回帰モデルは、実測データに含まれていた測定ノイズが大きく低減されている。
本実施形態においては、関数1-eをベースとして最適化を実行している。
上記のように正常データにカーブフィッティングを適用し、測定ノイズを低減した第1データに対し、境界Bを計算する。
第1データにおいて、時刻tにおける温度をTとし、このときのベクトルをa=(t,T)とする。また、時刻tの次に、例えば本実施形態においては0.5秒後に、温度を測定した時刻tn+1の温度をTn+1とし、このときのベクトルをb=(tn+1,Tn+1)とする。これら2つのベクトルa、bの内積は、これらのベクトル間のなす角度をθとすると、次の数式4で表される。
Figure 0007035402000004
上記のベクトルの内積は、換言すれば、2つの連続する時刻t、tn+1間の、第1データにおける接線のずれとして疑似的に扱うことが可能であり、これが0°に近い値を持つと、温度の変化が飽和していると判断することができる。
数式4を展開すると、θを導出する次の数式5が得られる。
Figure 0007035402000005
上式に基づいて、温度を測定した時刻を追って、第1データに対してθを計算し、これが所定の飽和判断閾値よりも小さくなる時刻を境界Bとして、以降、例えば再度θが飽和判断閾値よりも大きくなる時刻までの期間を飽和期間STとして抽出する。
飽和判断閾値は、本実施形態においては、例えば0.01が好適であるが、他の値であってもよい。
図8には、上記のように計算された境界Bと、この境界Bにより抽出された飽和期間STが示されている。
図8のデータの形状を目視した限りにおいては、t=400程度に境界Bを設定するのが妥当のように思えるが、実際にはt=400を過ぎても、温度は徐々に上昇している。上記の計算によれば、t=500付近の値が境界Bとして計算されて、図8においてはt=500付近に境界Bが示されている。このときの温度は45℃程度であり、t=500以降は殆ど温度が変化していない。
このように、正常データを基にした第1データ上の、近接する時刻間の傾きの変化が所定の飽和判断閾値よりも小さい期間を、変化率が飽和している飽和期間として抽出する。
上記の第1データは、正常データに対しカーブフィッティングを適用して作成されており、近接する時刻間の傾きの変化は、近接する時刻の各々における第1データ上のベクトル間の内積である。
次に、上記の送風器4の異常診断装置10、電力装置1及び送風器4の異常診断方法の効果について説明する。
上記のような構成によれば、温度測定器11が筐体2の外側の排気口6の近傍に設けられている。したがって、通常時においては排気口6から排出される筐体2内の空気の温度が測定されるが、送風器4の異常時においては、筐体2内の空気が排気口6から十分に排出されないために外気の温度が測定される。
連続運転による発熱部3を備えた電力装置1においては、定常的に連続運転することにより発熱部3の温度の変化が少ない。このため、送風器4により排気口6から排出される筐体2内の空気の温度も、通常時においては略一定の、外気よりも高い温度となっている。送風器4に異常が生じると、排気口6から高温の空気が十分に排出されなくなるため、排気口6近傍の温度は外気の温度に近づき低下する。すなわち、温度測定器11は、送風器4の異常時には通常時よりも低い温度を測定する。
ここで、送風器4の異常時に筐体2の外側の排気口6の近傍の温度が低下すると、温度測定器11により測定された温度が、所定の時間前に測定された温度よりも小さい場合に、送風器4に異常が生じたと診断する制御部12が、送風器4に異常が生じたと診断する。
このように、異常診断装置10においては、連続運転による発熱部3を備えた電力装置1において、送風器4に異常が生じた場合に直ぐに値が変化する排気口6近傍の温度の観察により送風器4の異常を診断することができる。したがって、送風器4の異常を早期に検出できる。
また、制御部12は温度の変化率を計算する。ここで、排気口6の近傍の温度が低下すると、計算された温度の変化率は負値となる。この変化率が閾値よりも更に小さい場合に、制御部12は、温度が通常時には想定し得ない程度に急峻に低下したと判断し、送風器4に異常が生じたと診断する。このため、上記のような送風器4の異常診断装置10をより適切に実現可能である。
また、閾値は、送風器4が正常に動作している状態における温度測定器11による温度の測定値の推移データである正常データから複数の時刻における変化率を計算し、変化率の平均μと標準偏差σを計算することで導出されている。すなわち、閾値が、送風器4が実際に正常に動作している状態の温度の推移データを基に統計的に導出されているため、閾値の精度を高くすることができる。これにより、送風器の異常の誤検出や異常の見逃しを抑制することができる。
また、閾値は、平均μから、標準偏差σに所定の値を乗算した値を減算した暫定閾値を基に計算されている。特に、送風器4に実際に異常が発生した際の推移データがない場合に、この暫定閾値が閾値として設定されている。すなわち、送風器4が実際に正常に動作しているデータにおける変化率の分布は平均μとその近傍が最も高くなるが、暫定閾値を平均μより適度に小さい値とすることで、計算された変化率が暫定閾値以上であれば、送風器の動作は正常であると判断可能である。これにより、送風器4の正常動作を異常動作とする誤検出を少なくすることができる。
特に本実施形態においては、所定の値は例えば5であり、この場合には、暫定閾値はμ―5σとなる。この場合においては、送風器4が正常に動作している状態で計算される温度変化率のとり得る値が暫定閾値以上となる確率は99.9999%となり、正常に動作している状態で計算される温度変化率の殆どが暫定閾値以上となる。したがって、送風器4の異常の誤検出を効果的に抑制可能である。
また、異常データがある場合には、暫定閾値が第1最小値αと判定閾値Tの間の値であれば、暫定閾値が閾値として設定され、暫定閾値が判定閾値Tと第2最小値βとの間の値であれば、判定閾値Tが前記閾値として設定されている。
上記において、第1最小値αは、異常データでの変化率の最小値であり、異常データにおいて温度の変化率が最も急峻に低下した場合の値である。また、第2最小値βは、正常データでの変化率の最小値であり、送風器が正常に動作した範囲において、温度の変化率が最も急峻に低下した場合の値である。異常データにおいては、温度が通常時には想定し得ない程度に急峻に低下したと考えられるため、第1最小値αは、第2最小値βよりも小さな値となっている。
ここで、正常な動作ではあるが、閾値の導出に用いられた正常データの中には挙動として表れておらず、第2最小値βよりも小さな変化率が計算されるような状態が、実際には存在する可能性がある。すなわち、計算された変化率が第1最小値α以上第2最小値β以下の範囲にあっても、変化率が第2最小値βに近い値であると、本来は正常動作であるにもかかわらず、これを異常動作として誤検出することが考えられる。
上記のような構成によれば、暫定閾値が第2最小値βより小さい値である所定の判定閾値Tと第2最小値βとの間の値である場合に、判定閾値Tを閾値として設定することで、変化率が判定閾値T以上第2最小値β以下の場合であっても正常と診断できる。したがって、上記のような誤検出を低減可能である。
また、所定の判定閾値Tが第1最小値αより大きい値であるため、判定閾値Tを過剰に小さい値として設定することによる異常の見逃しを抑制可能である。
特に本実施形態においては、判定閾値Tを、第1最小値αと第2最小値βの間の領域CIを100%としたときの、第1最小値αから例えば95%の位置にある値として設定している。すなわち、閾値の上限は、有意水準を5%とした場合の100回に5回の誤った閾値設定を回避可能な、最も大きな値となる。これにより、異常の誤検出と見逃しの各々を、効果的に抑制可能である。
また、正常データ中の、変化率が飽和している飽和期間、すなわち、温度がほとんど変化せず変化率が0に近い期間内の変化率の値を基に、標準偏差σが計算され、これを基に閾値が導出されている。すなわち、正常データ取得中に何らかの外部要因等により測定温度が大きく変化するような場合があったとしても、このような飽和期間に該当しない場合を考慮しないため、変化率の分布が大きく乱れるのを抑制できる。したがって、正常データにおける変化率の、精度の高い標準偏差σ及び閾値を導出可能であり、これにより異常診断の精度を高めることができる。
また、送風器4が正常に動作している状態における温度測定器11による温度の測定値の推移データである正常データを基にした第1データ上の、近接する時刻間の傾きの変化が所定の飽和判断閾値よりも小さい期間を、変化率が飽和している飽和期間として抽出し、飽和期間内の変化率の値を基に閾値が導出されている。
変化率の飽和は、例えば、温度の変化率の推移を観測すること等により、判定することが可能ではある。しかし、温度の変化率を観測する場合においては、どの程度の期間に対して変化率を計算するかにより計算される変化率の値も大きく変わる。すなわち、期間の値によって変化率の精度に影響が出る。これに対し、上記の構成において参照される、近接する時刻間の傾きの変化は、例えば第1データ上のベクトル間の演算等により簡易に導出可能である。すなわち、近接する時刻間の傾きの変化は、単純に第1データの形状に基づいた演算により導出可能であり、計算の際に決定すべき外部変数が少ないため、正確に飽和期間を抽出することができる。これにより、第1データから温度が安定していない期間のデータを正確に除外して精度の高い閾値を導出できるため、送風器4の異常の誤検出や異常の見逃しを抑制することができる。
また、正常データに対しカーブフィッティングを適用して作成された第1データに対して閾値が導出されているため、測定ノイズの影響が低減された、精度の高い閾値を導出可能である。これにより、送風器4の異常の誤検出や異常の見逃しを抑制することができる。
また、近接する時刻間の傾きの変化は、近接する時刻の各々における第1データ上のベクトル間の内積である。
ベクトルの内積は、換言すれば、2つの連続する時刻間の、第1データにおける接線のずれとして疑似的に扱うことが可能であり、これが0°に近い値を持つと、温度の変化が飽和していると判断することができる。したがって、簡易な演算で適切に閾値を導出可能である。
また、上記のような構成においては、上記のような送風器4の異常診断装置10が設けられた、電力装置1の提供が可能となる。
特に、本実施形態のように、複数の送風器4を備えている電力装置1であっても、この各々に対応する温度測定器11を設けることにより、各送風器4の異常診断を個別に実行することが可能な電力装置1を提供できる。
(実施例)
次に、上記実施形態の実施例を説明する。電力装置としては、太陽光パワーコンディショナを使用した。この電力装置には、図1に示されるものと同様に5つの送風器が設けられており、この各々に対して温度測定器を設けた。温度測定器11における計算時間間隔と時間の間隔は、上記実施形態と同様にそれぞれ、0.5秒と30秒とした。
5つの送風器の各々に対し、図9に示されるように閾値を設定した。図9においては、各送風器が、送風器4A、4B、4C、4D、4Eとして示されている。各送風器に対して、上から順に、第2最小値β、第1最小値α、判定閾値T、暫定閾値(μ―5σ)、及び閾値Tが示されている。
送風器4Aにおいては、暫定閾値は判定閾値Tよりも大きな値となっており、結果として判定閾値Tが閾値Tに設定されている。
送風器4B、4C、4D、4Eにおいては、暫定閾値は判定閾値Tよりも小さな値となっており、結果として暫定閾値が閾値Tに設定されている。
上記のような設定がなされた異常診断装置及び電力装置に対し、異常診断装置が送風器の異常を正常に診断することを確認するため、温度の測定中に、各送風器を意図的に停止させて模擬的に送風器が異常な状態を発生させた。図10は、停止させた送風器の組み合わせを説明する表である。本表に記載される31種類の停止パターンの各々に従って、送風器を停止させ、誤検出の有無と、送風器の停止から異常検出までの時間を評価した。
31種類の全停止パターンにおいて、誤検出は観測されなかった。
送風器の停止から異常検出までの時間については、図11を用いて説明する。図11は図10に対応する表であり、31種類の停止パターンの各々において、異常が検出された送風器においては、送風器の停止から異常検出までの時間が対応する箇所に記載されている。
各停止パターンにおいて、最も速く異常が検出された送風器における異常検出までの時間は、7.0~12.5秒程度であり、迅速に異常が診断、検出されることが確認できた。
なお、本発明の送風器の異常診断装置、電力装置及び送風器の異常診断方法は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において他の様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態においては、異常診断装置10の制御部12は筐体2の内部にあるように図示し説明したが、筐体2の外部に設けられても構わない。この場合には、温度測定器11も筐体2の外に設けられているため、異常診断装置10全体を筐体2の外側に取り付けることが可能である。これにより、異常診断装置10が電力装置1の製造時に組み込まれている場合はもとより、既に運用中の電力装置1に対し、後付けで、異常診断装置10を設けることが容易となる。
また、上記実施形態においては、近接する時刻間の傾きの変化を、近接する時刻の各々における第1データ上のベクトル間の内積として計算した。この実施形態におけるベクトルは、a=(t,T)、b=(tn+1,Tn+1)として説明したように、原点座標からの各点の方向を示すものであったが、これに限られない。例えば第1データ上の各点における接線ベクトルを演算し、これらの内積を計算することで、近接する時刻間の傾きの変化を計算しても構わない。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
1 電力装置
2 筐体
3 発熱部
4 送風器
6 排気口
10 異常診断装置
11 温度測定器
12 制御部
13 異常通知部
AD 異常データ
ND 正常データ
ST 飽和期間
TT 過渡期間
判定閾値
α 第1最小値
β 第2最小値
μ 平均
σ 標準偏差

Claims (8)

  1. 連続運転による発熱部と、該発熱部より生じる発熱を冷却するための送風器を備えた電力装置に設けられ、前記送風器の異常を診断する異常診断装置であって、
    前記電力装置は、排気口を備える筐体を備え、
    前記送風器は、前記筐体内の空気を前記排気口から排出し、
    前記筐体の外側の前記排気口の近傍に設けられた温度測定器と、
    制御部と、
    を備え、
    該制御部は、所定の時間の間隔における、前記温度測定器により測定された温度の変化率を計算し、前記温度測定器により測定された前記温度が、前記所定の時間前に測定された温度よりも小さく、前記変化率が負値である閾値よりも小さい場合に、前記送風器に異常が生じたと診断する、送風器の異常診断装置。
  2. 前記閾値は、前記送風器が正常に動作している状態における前記温度測定器による前記温度の測定値の推移データである正常データから複数の時刻における前記変化率を計算し、該変化率の平均と標準偏差を計算することで導出されている、請求項に記載の送風器の異常診断装置。
  3. 前記閾値は、前記平均と、前記標準偏差に所定の値を乗算した値との差分である暫定閾値を基に計算され、
    前記送風器に実際に異常が発生した際の前記温度の測定値の推移データである異常データがない場合には、前記暫定閾値が前記閾値として設定されている、請求項に記載の送風器の異常診断装置。
  4. 前記異常データがある場合には、
    前記暫定閾値が、前記異常データでの前記変化率の最小値である第1最小値と、所定の判定閾値の間の値であれば、前記暫定閾値が前記閾値として設定され、
    前記暫定閾値が、前記判定閾値と、前記正常データでの前記変化率の最小値である第2最小値との間の値であれば、前記判定閾値が前記閾値として設定されている、請求項に記載の送風器の異常診断装置。
  5. 前記標準偏差は、前記正常データ中の、前記変化率が飽和している飽和期間内の値を基に計算されている、請求項からのいずれか一項に記載の送風器の異常診断装置。
  6. 請求項1からのいずれか一項に記載の送風器の異常診断装置が設けられた、電力装置。
  7. 複数の前記送風器と、この各々に対応する複数の前記温度測定器を備えている、請求項に記載の電力装置。
  8. 連続運転による発熱部と、該発熱部より生じる発熱を冷却するための送風器を備えた電力装置において、前記送風器の異常を診断する異常診断方法であって、
    前記電力装置の筐体の外側の、前記送風器により前記筐体内の空気が排出される前記電力装置の排気口の近傍の温度を測定し、
    所定の時間の間隔における、測定された前記温度の変化率を計算し、測定された前記温度が、前記所定の時間前に測定された温度よりも小さく、前記変化率が負値である閾値よりも小さい場合に、前記送風器に異常が生じたと診断する、送風器の異常診断方法。
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