JP7035402B2 - 送風器の異常診断装置、電力装置及び送風器の異常診断方法 - Google Patents
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Description
経年劣化や故障によって送風器の風量が低減し、あるいは送風器が停止すると、発熱部を中心とした部分の部品が熱劣化し、機器本体が機能を停止することがある。
このため、送風器の異常を早期に検出することが行われている。
特許文献1の情報処理装置は、発熱デバイスの近傍に設けられた第1温度センサと、筐体内の発熱デバイスから遠い位置に設けられた第2温度センサを備えている。情報処理装置は、第1温度センサによって検知された発熱デバイスの温度と第2温度センサによって検知された筐体内の温度との間の温度差を検出する。情報処理装置は、この温度差が閾値を超えた時点から所定期間中、温度差を監視し、この結果に基づいて放熱モジュールの性能が低下したか否かを判定する。
しかし、この場合には、放熱モジュールが故障したときに、筐体内及び発熱デバイス近傍に時間をかけて熱が徐々に蓄積され、その結果が異常として検出されるため、放熱モジュールの停止からその検出までに時間を要する。したがって、放熱モジュールの故障が迅速に検出されないことがある。
特に、このような連続運転するような電力装置は、太陽光パワーコンディショナ等のようにライフラインの維持に関連するものが多い。このため、送風器の異常診断に時間を要する特許文献1のような手法を採用した場合には、ライフラインが長時間停止することも考えられる。したがって、送風器の異常を早期に検出し、装置本体の故障を未然に防ぐことが望まれている。
上記のような構成によれば、温度測定器が筐体の外側の排気口の近傍に設けられている。したがって、通常時においては排気口から排出される筐体内の空気の温度が測定されるが、送風器の異常時においては、筐体内の空気が排気口から十分に排出されないために外気の温度が測定される。
上記の構成における、連続運転による発熱部を備えた電力装置においては、定常的に連続運転することにより発熱部の温度の変化が少ない。このため、送風器により排気口から排出される筐体内の空気の温度も、通常時においては略一定の、外気よりも高い温度となっている。送風器に異常が生じると、排気口から高温の空気が十分に排出されなくなるため、排気口近傍の温度は外気の温度に近づき低下する。すなわち、温度測定器は、送風器の異常時には通常時よりも低い温度を測定する。
ここで、送風器の異常時に筐体の外側の排気口の近傍の温度が低下すると、温度測定器により測定された温度が、所定の時間前に測定された温度よりも小さい場合に、送風器に異常が生じたと診断する制御部が、送風器に異常が生じたと診断する。
このように、上記のような構成においては、連続運転による発熱部を備えた電力装置において、送風器に異常が生じた場合に直ぐに値が変化する排気口近傍の温度の観察により送風器の異常を診断することができる。したがって、送風器の異常を早期に検出できる。
上記のような構成によれば、制御部は温度の変化率を計算する。ここで、排気口の近傍の温度が低下すると、計算された温度の変化率は負値となる。この変化率が閾値よりも更に小さい場合に、制御部は、温度が通常時には想定し得ない程度に急峻に低下したと判断し、送風器に異常が生じたと診断可能である。このため、上記のような送風器の異常診断装置をより適切に実現可能である。
上記のような構成によれば、閾値が、送風器が実際に正常に動作している状態の温度の推移データを基に統計的に導出されているため、閾値の精度を高くすることができる。これにより、送風器の異常の誤検出や異常の見逃しを抑制することができる。
上記のような構成によれば、閾値は、平均から、標準偏差に所定の値を乗算した値を減算した暫定閾値を基に計算されている。特に、送風器に実際に異常が発生した際の推移データがない場合に、この暫定閾値が閾値として設定されている。すなわち、送風器が実際に正常に動作しているデータにおける変化率の分布は平均とその近傍が最も高くなるが、暫定閾値を平均より適度に小さい値とすることで、計算された変化率が暫定閾値以上であれば、送風器の動作は正常であると判断可能である。これにより、送風器の正常動作を異常動作とする誤検出を少なくすることができる。
上記において、第1最小値は、異常データでの変化率の最小値であり、異常データにおいて温度の変化率が最も急峻に低下した場合の値である。また、第2最小値は、正常データでの変化率の最小値であり、送風器が正常に動作した範囲において、温度の変化率が最も急峻に低下した場合の値である。異常データにおいては、温度が通常時には想定し得ない程度に急峻に低下したと考えられるため、第1最小値は、第2最小値よりも小さな値となっている。
ここで、正常な動作ではあるが、閾値の導出に用いられた正常データの中には挙動として表れておらず、第2最小値よりも小さな変化率が計算されるような状態が、実際には存在する可能性がある。すなわち、計算された変化率が第1最小値以上第2最小値以下の範囲にあっても、変化率が第2最小値に近い値であると、本来は正常動作であるにもかかわらず、これを異常動作として誤検出することが考えられる。
上記のような構成によれば、暫定閾値が第2最小値より小さい値である所定の判定閾値と第2最小値との間の値である場合に、判定閾値を閾値として設定することで、変化率が判定閾値以上第2最小値以下の場合であっても正常と診断できる。したがって、上記のような誤検出を低減可能である。
また、所定の判定閾値が第1最小値より大きい値であるため、判定閾値を過剰に小さい値として設定することによる異常の見逃しを抑制可能である。
上記のような構成によれば、正常データ中の、変化率が飽和している飽和期間、すなわち、温度がほとんど変化せず変化率が0に近い期間内の変化率の値を基に、標準偏差が計算され、これを基に閾値が導出されている。すなわち、正常データ取得中に何らかの外部要因等により測定温度が大きく変化するような場合があったとしても、このような飽和期間に該当しない場合を考慮しないため、変化率の分布が大きく乱れるのを抑制できる。したがって、正常データにおける変化率の、精度の高い標準偏差及び閾値を導出可能であり、これにより異常診断の精度を高めることができる。
上記のような構成によれば、上記のような送風器の異常診断装置を設けた電力装置を実現可能である。
上記のような構成によれば、複数の送風器を備えている電力装置であっても、この各々に対応する温度測定器を設けることにより、各送風器の異常診断を個別に実行することが可能である。
上記のような方法によれば、上記の異常診断装置において既に説明したように、連続運転による発熱部を備えた電力装置において、送風器に異常が生じた場合に直ぐに値が変化する排気口近傍の温度の観察により送風器の異常を診断することができる。したがって、送風器の異常を早期に検出できる。
上記のような構成によれば、上記の異常診断装置において既に説明したように、上記のような送風器の異常診断方法をより適切に実施可能である。
本実施形態における異常診断装置は、連続運転による発熱部と、発熱部より生じる発熱を冷却するための送風器を備えた電力装置に設けられ、送風器の異常を診断するものであり、電力装置は、排気口を備える筐体を備え、送風器は、筐体内の空気を排気口から排出し、筐体の外側の排気口の近傍に設けられた温度測定器と、制御部と、を備え、制御部は、温度測定器により測定された温度が、所定の時間前に測定された温度よりも小さい場合に、送風器に異常が生じたと診断する。
図1に示される電力装置1は、連続運転による発熱部3を備えている。すなわち、電力装置1は、通常時には外部からの操作等の外的要因等により処理内容が変わり負荷が動的に変化するようなものではなく、一定の処理を連続、継続して実行するものである。これに伴い、発熱部3は、通常時には定常的に発熱し、略一定の温度を保っている。
電力装置1は筐体2を備え、発熱部3は筐体2内に設けられている。
送風器4は、給気口5から外気を取り込み、発熱部3により生じる発熱を対流冷却により放熱、冷却し、温まった筐体2内の空気を排気口6から排出する。
本実施形態においては、給気口5も各送風器4に対応するように複数個が設けられているが、発熱部3に万遍なく外気を行き渡らせることができればこれに限られず、1個であってもよいし、送風器4に対応しないように複数個が設けられていてもよい。
排気口6は、送風器4に対応するように複数、例えば5個が設けられている。各排気口6は、対応する送風器4の近くに設けられている。各送風器4から送られる空気は、対応する排気口6を介して外部へ排出される。
各温度測定器11は、測定した温度を随時、次に説明する制御部12へと送信する。
本実施形態のような連続運転による発熱部3を備えた電力装置1においては、既に説明したように、発熱部3は通常時には定常的に発熱し、略一定の温度を保っている。このため、各温度測定器11によって測定される、対応する送風器4によって排気口6を介して排出される空気の温度は、通常時においては略一定の、外気よりも高い値となる。ここで、送風器4に異常が発生した場合には、排気口6から正常に筐体2内の空気を排出できなくなるため、対応する温度測定器11によって測定される温度は外気の値に近い、通常時よりも低い値となる。
より詳細には、制御部12は、所定の時間の間隔における温度の変化率を計算し、所定の負値である閾値と変化率を比較して、変化率がこの閾値よりも小さい場合に、送風器4に異常が生じたと診断する。
制御部12は、各温度測定器11から随時送付される温度を受信し、内部に保存する。
制御部12は、温度測定器11の各々の測定結果に対し、所定の計算時間間隔ごとに、所定の時間の間隔における温度変化率を計算する。本実施形態においては、所定の計算時間間隔は例えば0.5秒であり、所定の時間は例えば30秒であり、所定の時間の間隔は30秒間、すなわち30秒前から温度変化率を計算する時点までの期間である。すなわち、本実施形態においては、0.5秒ごとに、過去30秒間における温度変化率を計算する。
すなわち、この閾値を超えて温度変化率が下回り小さい値を取る場合においては、通常の場合を超えた速度で測定温度が低下していると判断可能である。この場合に、制御部12は、この温度測定器11に対応する送風器4の識別情報と、この送風器4に異常が発生している旨の情報を異常通知部13へ送信する。
逆に、閾値を超えて温度変化率が下回っておらず、温度変化率が閾値よりも大きい値を取る場合においては、温度変化は通常の場合として想定される範囲内のものであり、この温度測定器11に対応する送風器4に異常は発生していないと判断する。
本異常診断方法は、電力装置1の筐体2の外側の、送風器4により筐体2内の空気が排出される電力装置1の排気口6の近傍の温度を測定し、測定された温度が、所定の時間前に測定された温度よりも小さい場合に、送風器4に異常が生じたと診断するものである。
また、所定の時間の間隔における温度の変化率を計算し、変化率が負値である閾値よりも小さい場合に、送風器4に異常が生じたと診断する。
この状態で、各温度測定器11は、対応する排気口6の近傍の温度の測定を開始する(ステップS1)。
各温度測定器11は、測定した温度を随時、次に説明する制御部12へと送信する。
制御部12は、温度測定器11の各々の測定結果に対し、所定の時間の間隔における温度変化率を計算する(ステップS2)。
閾値を超えて温度変化率が下回っておらず、温度変化率が閾値よりも大きい値を取る場合においては、温度変化は通常の場合として想定される範囲内のものであり、この温度測定器11に対応する送風器4に異常は発生していないと判断する(ステップS2へ遷移)。制御部12は、このような温度変化率の計算及び閾値との比較を、所定の計算時間間隔ごとに実行する。
既に説明したような異常診断を適切かつ効果的に実行するためには、適切な閾値の値の導出と設定が必要である。以下、図3を用いて閾値の設定方法を説明する。図3は、本実施形態における閾値の設定方法を示すフローチャートである。
後述するように、閾値は、この正常データから複数の時刻における温度変化率を計算して分布を求め、温度変化率の平均と標準偏差を計算することで導出される。すなわち、温度変化率の平均や標準偏差の精度を高め、より好適な閾値を導出するためには、できるだけ多くの温度変化率データが必要となる。このために、正常データの取得はできるだけ長時間行うのが好ましい。
正常データとしては、例えば図4に期間TTとして示されるような、電力装置1の起動直後等の、正常な動作の範囲内で一時的に温度が上下動する場合の温度の推移も含まれている可能性がある。正常データは送風器4が通常状態にあるか否かを判断する閾値の導出に使用されるため、正常データから電力装置1が連続運転して送風器4が通常状態にある部分のみを抽出し、この部分のみを閾値の導出に使用するのが適切である。
このため、正常データから飽和期間STのみを抽出する(ステップS12)。
上記のように、飽和期間STにおける温度変化率から閾値が導出されるため、閾値の精度を上げるには、正常データから飽和期間STを正確に抽出する必要がある。この、飽和期間STの抽出方法については後に詳説する。
所定の時間は、既に説明した異常診断装置10の制御部12における所定の時間、本実施形態においては例えば30秒と、同じ値である。
所定の計算時間間隔は、本実施形態においては、既に説明した異常診断装置10の制御部12における所定の計算時間間隔、本実施形態においては例えば0.5秒と、同じ値としているが、異なっていてもよい。
上記のように計算された温度変化率はガウス分布に従う。したがって、Nを計算された温度変化率の総数、xi(i=1~N)を各温度変化率の値とすると、温度変化率の平均μと標準偏差σは、次の数式1、数式2により計算される。
本実施形態においては上記のように、温度の下がり具合を観察するものである。すなわち、本実施形態において検出したい送風器4の異常は、正常データに対して計算された温度変化率の値の範囲を外れて、温度の下がり具合が激しく温度変化率が小さい場合に相当する。このため、暫定閾値を範囲Rの下限μ―5σとし、温度変化率がこの値以下の場合を検出することで、異常を判断することができる。
図6(a)は、ある送風器4に対応する温度測定器11によって測定された、温度が時間により推移する例を示すグラフである。時間T1よりも前の時間においては、送風器4は正常に動作して図4と同様な形状を示す正常データNDとなっている。しかし、時間T1の直後から温度は急峻に下降し、送風器4に何らかの異常が発生したことを示す異常データADとなっている。
異常データがある場合には、異常データに対して、所定の計算時間間隔ごとに、所定の時間の間隔における温度変化率を計算する(ステップS17)。所定の時間、所定の計算時間間隔は、正常データの飽和期間STに対して温度変化率を計算したステップS13と同じ値を使用する。
図6(b)は、図6(a)に対応する温度変化率の例を示すグラフである。正常データND中で最も値が低い位置に第2最小値βが、及び異常データAD中で最も値が低い位置に第1最小値αが、それぞれ示されている。本実施形態においては、温度の下がり具合を観察して異常を診断するものであり、図6(a)に示されるように異常データADにおいては正常データNDに比べると温度が低下する傾向にある。このため、図6(b)に示されるように、異常データADにおいては温度変化率が全体的に小さくなっている。このように、異常データAD中の最小値である第1最小値αは、正常データND中の最小値である第2最小値βよりも小さい値となる。
本実施形態においては、誤った閾値設定となるのは、閾値Tが第2最小値βの近くに設定された場合である。すなわち、送風器4の正常な動作ではあるが、ステップS11で取得された正常データの中には挙動として表れておらず、第2最小値βよりも小さな変化率が計算されるような状態が存在する可能性がある。この場合においては、実際には正常な動作に相当する温度変化率が、区間CIの上位5%の区間である上位区間UI内に含まれることとなり、閾値Tを第2最小値βとした場合においては、異常の誤検出が生じ得る。
判定閾値TDは、次の数式3により表すことができる。
暫定閾値が下位区間LIではなく上位区間UIにあれば、この暫定閾値を用いた場合には、上位区間UI内に存在する可能性のある、送風器4が正常に動作した場合の温度変化率が異常として誤検出される可能性がある。この場合には、誤検出を抑制するため、暫定閾値ではなく、判定閾値TDを閾値Tとして設定する(ステップS20)。
異常データがない場合には、暫定閾値が閾値Tとして設定されている。
異常データがある場合には、暫定閾値が第1最小値αと所定の判定閾値TDの間の値であれば、暫定閾値が閾値Tとして設定され、暫定閾値が判定閾値TDと第2最小値βとの間の値であれば、判定閾値TDが閾値Tとして設定されている。
次に、図3のステップS12として示された、正常データから飽和期間STを抽出する方法について説明する。
上記のように、正常データは送風器4が通常状態にあるか否かを判断する閾値の導出に使用される。したがって、正常データから温度が安定していない過渡期間TTを考慮しないように除外し、飽和期間STのみを抽出する必要がある。本実施形態においては、例えば図4においてBとして示したような、過渡期間TTと飽和期間STの境界Bを決定することにより、飽和期間STを抽出する。
図8は、図4に示される推移データに対して、カーブフィッティングを適用した例である。カーブフィッティングで導出した非線形回帰モデルは、実測データに含まれていた測定ノイズが大きく低減されている。
本実施形態においては、関数1-exをベースとして最適化を実行している。
第1データにおいて、時刻tnにおける温度をTnとし、このときのベクトルをa=(tn,Tn)とする。また、時刻tnの次に、例えば本実施形態においては0.5秒後に、温度を測定した時刻tn+1の温度をTn+1とし、このときのベクトルをb=(tn+1,Tn+1)とする。これら2つのベクトルa、bの内積は、これらのベクトル間のなす角度をθとすると、次の数式4で表される。
数式4を展開すると、θを導出する次の数式5が得られる。
飽和判断閾値は、本実施形態においては、例えば0.01が好適であるが、他の値であってもよい。
図8のデータの形状を目視した限りにおいては、t=400程度に境界Bを設定するのが妥当のように思えるが、実際にはt=400を過ぎても、温度は徐々に上昇している。上記の計算によれば、t=500付近の値が境界Bとして計算されて、図8においてはt=500付近に境界Bが示されている。このときの温度は45℃程度であり、t=500以降は殆ど温度が変化していない。
上記の第1データは、正常データに対しカーブフィッティングを適用して作成されており、近接する時刻間の傾きの変化は、近接する時刻の各々における第1データ上のベクトル間の内積である。
連続運転による発熱部3を備えた電力装置1においては、定常的に連続運転することにより発熱部3の温度の変化が少ない。このため、送風器4により排気口6から排出される筐体2内の空気の温度も、通常時においては略一定の、外気よりも高い温度となっている。送風器4に異常が生じると、排気口6から高温の空気が十分に排出されなくなるため、排気口6近傍の温度は外気の温度に近づき低下する。すなわち、温度測定器11は、送風器4の異常時には通常時よりも低い温度を測定する。
ここで、送風器4の異常時に筐体2の外側の排気口6の近傍の温度が低下すると、温度測定器11により測定された温度が、所定の時間前に測定された温度よりも小さい場合に、送風器4に異常が生じたと診断する制御部12が、送風器4に異常が生じたと診断する。
このように、異常診断装置10においては、連続運転による発熱部3を備えた電力装置1において、送風器4に異常が生じた場合に直ぐに値が変化する排気口6近傍の温度の観察により送風器4の異常を診断することができる。したがって、送風器4の異常を早期に検出できる。
上記において、第1最小値αは、異常データでの変化率の最小値であり、異常データにおいて温度の変化率が最も急峻に低下した場合の値である。また、第2最小値βは、正常データでの変化率の最小値であり、送風器が正常に動作した範囲において、温度の変化率が最も急峻に低下した場合の値である。異常データにおいては、温度が通常時には想定し得ない程度に急峻に低下したと考えられるため、第1最小値αは、第2最小値βよりも小さな値となっている。
ここで、正常な動作ではあるが、閾値の導出に用いられた正常データの中には挙動として表れておらず、第2最小値βよりも小さな変化率が計算されるような状態が、実際には存在する可能性がある。すなわち、計算された変化率が第1最小値α以上第2最小値β以下の範囲にあっても、変化率が第2最小値βに近い値であると、本来は正常動作であるにもかかわらず、これを異常動作として誤検出することが考えられる。
上記のような構成によれば、暫定閾値が第2最小値βより小さい値である所定の判定閾値TDと第2最小値βとの間の値である場合に、判定閾値TDを閾値として設定することで、変化率が判定閾値TD以上第2最小値β以下の場合であっても正常と診断できる。したがって、上記のような誤検出を低減可能である。
また、所定の判定閾値TDが第1最小値αより大きい値であるため、判定閾値TDを過剰に小さい値として設定することによる異常の見逃しを抑制可能である。
変化率の飽和は、例えば、温度の変化率の推移を観測すること等により、判定することが可能ではある。しかし、温度の変化率を観測する場合においては、どの程度の期間に対して変化率を計算するかにより計算される変化率の値も大きく変わる。すなわち、期間の値によって変化率の精度に影響が出る。これに対し、上記の構成において参照される、近接する時刻間の傾きの変化は、例えば第1データ上のベクトル間の演算等により簡易に導出可能である。すなわち、近接する時刻間の傾きの変化は、単純に第1データの形状に基づいた演算により導出可能であり、計算の際に決定すべき外部変数が少ないため、正確に飽和期間を抽出することができる。これにより、第1データから温度が安定していない期間のデータを正確に除外して精度の高い閾値を導出できるため、送風器4の異常の誤検出や異常の見逃しを抑制することができる。
ベクトルの内積は、換言すれば、2つの連続する時刻間の、第1データにおける接線のずれとして疑似的に扱うことが可能であり、これが0°に近い値を持つと、温度の変化が飽和していると判断することができる。したがって、簡易な演算で適切に閾値を導出可能である。
特に、本実施形態のように、複数の送風器4を備えている電力装置1であっても、この各々に対応する温度測定器11を設けることにより、各送風器4の異常診断を個別に実行することが可能な電力装置1を提供できる。
次に、上記実施形態の実施例を説明する。電力装置としては、太陽光パワーコンディショナを使用した。この電力装置には、図1に示されるものと同様に5つの送風器が設けられており、この各々に対して温度測定器を設けた。温度測定器11における計算時間間隔と時間の間隔は、上記実施形態と同様にそれぞれ、0.5秒と30秒とした。
送風器4Aにおいては、暫定閾値は判定閾値TDよりも大きな値となっており、結果として判定閾値TDが閾値Tに設定されている。
送風器4B、4C、4D、4Eにおいては、暫定閾値は判定閾値TDよりも小さな値となっており、結果として暫定閾値が閾値Tに設定されている。
送風器の停止から異常検出までの時間については、図11を用いて説明する。図11は図10に対応する表であり、31種類の停止パターンの各々において、異常が検出された送風器においては、送風器の停止から異常検出までの時間が対応する箇所に記載されている。
各停止パターンにおいて、最も速く異常が検出された送風器における異常検出までの時間は、7.0~12.5秒程度であり、迅速に異常が診断、検出されることが確認できた。
2 筐体
3 発熱部
4 送風器
6 排気口
10 異常診断装置
11 温度測定器
12 制御部
13 異常通知部
AD 異常データ
ND 正常データ
ST 飽和期間
TT 過渡期間
TD 判定閾値
α 第1最小値
β 第2最小値
μ 平均
σ 標準偏差
Claims (8)
- 連続運転による発熱部と、該発熱部より生じる発熱を冷却するための送風器を備えた電力装置に設けられ、前記送風器の異常を診断する異常診断装置であって、
前記電力装置は、排気口を備える筐体を備え、
前記送風器は、前記筐体内の空気を前記排気口から排出し、
前記筐体の外側の前記排気口の近傍に設けられた温度測定器と、
制御部と、
を備え、
該制御部は、所定の時間の間隔における、前記温度測定器により測定された温度の変化率を計算し、前記温度測定器により測定された前記温度が、前記所定の時間前に測定された温度よりも小さく、前記変化率が負値である閾値よりも小さい場合に、前記送風器に異常が生じたと診断する、送風器の異常診断装置。 - 前記閾値は、前記送風器が正常に動作している状態における前記温度測定器による前記温度の測定値の推移データである正常データから複数の時刻における前記変化率を計算し、該変化率の平均と標準偏差を計算することで導出されている、請求項1に記載の送風器の異常診断装置。
- 前記閾値は、前記平均と、前記標準偏差に所定の値を乗算した値との差分である暫定閾値を基に計算され、
前記送風器に実際に異常が発生した際の前記温度の測定値の推移データである異常データがない場合には、前記暫定閾値が前記閾値として設定されている、請求項2に記載の送風器の異常診断装置。 - 前記異常データがある場合には、
前記暫定閾値が、前記異常データでの前記変化率の最小値である第1最小値と、所定の判定閾値の間の値であれば、前記暫定閾値が前記閾値として設定され、
前記暫定閾値が、前記判定閾値と、前記正常データでの前記変化率の最小値である第2最小値との間の値であれば、前記判定閾値が前記閾値として設定されている、請求項3に記載の送風器の異常診断装置。 - 前記標準偏差は、前記正常データ中の、前記変化率が飽和している飽和期間内の値を基に計算されている、請求項2から4のいずれか一項に記載の送風器の異常診断装置。
- 請求項1から5のいずれか一項に記載の送風器の異常診断装置が設けられた、電力装置。
- 複数の前記送風器と、この各々に対応する複数の前記温度測定器を備えている、請求項6に記載の電力装置。
- 連続運転による発熱部と、該発熱部より生じる発熱を冷却するための送風器を備えた電力装置において、前記送風器の異常を診断する異常診断方法であって、
前記電力装置の筐体の外側の、前記送風器により前記筐体内の空気が排出される前記電力装置の排気口の近傍の温度を測定し、
所定の時間の間隔における、測定された前記温度の変化率を計算し、測定された前記温度が、前記所定の時間前に測定された温度よりも小さく、前記変化率が負値である閾値よりも小さい場合に、前記送風器に異常が生じたと診断する、送風器の異常診断方法。
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