JP7035331B2 - 床材 - Google Patents

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Description

本発明は、耐荷重性、耐水性、耐衝撃性能を有し、特にトイレや洗面所等で発生する水滴音の隣室への伝達を防止することのできる水廻り用に特に適している床材に関する。
近年、建築内装用に用いられる床材には様々な役割が求められるようになってきている。遠因としては購買層の安全意識の高まりや居住形態の変化等があげられる。(特許文献1,2)
たとえば、特許文献1は衝撃吸収性と遮音性に優れた床材について記載されている。特許文献1に記載の床材は人間が転倒時に床へと衝突する際、その衝撃を和らげる衝撃吸収性と、マンション等の集合住宅において求められる遮音性能を併せ持つことが記載されている。
ところで、特許文献1では遮音性能の基準として衝撃音低減性能(ΔL等級)を採用している。この試験方法は床上の歩行や軽量物の落下音の低減指標として広く用いられている数値である。
他方、住居空間内で発生する音の全ての低減指標をΔL等級であらわすことは難しい。特に近年では戸建て住宅の構造が多様化しているため、快適な生活を送るために様々な状況で発生する騒音を軽減する必要が生じてきている。
そのひとつとしてトイレ等での水滴音が上げられる。住宅構造の多様化とともにトイレや洗面所が寝室等の隣室や真上に設定されることも増えてきているため、そこから発生する水滴音を軽減する必要性も増加の傾向にある。
これらの騒音の軽減には住居構造体そのものの設計も重要である。一方、洗面所等水廻り部分で使用される床材において、前述のような水滴音に配慮した構造のものはあまり例がない。
そもそも、洗面所等の水廻りに使用できる床材には、耐水性という意味である程度の制限がある。一般的には塩ビないしはオレフィン系樹脂製のクッションフロアや床タイル、基材として樹脂素材や耐水性を付与した木質基材を用いた床材などが用いられる。
これらの床材は洗面所等における遮音性能を意識してつくられていないことが多いため、前述のような水滴音の軽減に配慮した床材はこれまで例がなかった。
特開2015-17372号公報 特開2016-3540号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、トイレや洗面所等の水廻りに用いることができるだけの耐荷重性と耐水性を保ちつつ、衝撃吸収性能と水滴音の隣室への伝達を防止することができる床材を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、化粧層と化粧層の裏面に設けられる基材層と、前記基材層裏面に設けられた緩衝層からなる床材であって、前記基材層を構成する材料100重量部のうち60重量部がポリエチレン又は、ポリプロピレンからなり、かつ27重量部の木粉、9重量部の充填剤及び3重量部の発泡剤を含んでいる熱可塑性樹脂であり、かつ前記基材層のアスカーC硬度が55~75であり、かつ基材裏面に設けられた緩衝層がポリエチレンからなる独立気泡層とポリエーテル系ポリウレタンフォームからなる連続気泡層の順に2層の積層体であり、かつ前記独立気泡層の厚みが前記連続気泡層の厚みの1~1.43倍であり、かつ前記緩衝層の全ての層の厚みの合計が前記基材層の厚みよりも大きいことを特徴とする床材を提供する。
本発明の床材によれば、トイレや洗面所等の水廻りに用いることができるだけの耐水性を保ちつつ、耐衝撃性と水滴音の隣室への伝達を防止することができる床材を提供することができる。まず、本発明では床材の基材層の構成材料100重量部のうち30~ 90重量部を熱可塑性樹脂とし、かつ前記基材層のアスカーC硬度を55~75とすることで床材の耐水性を確保し、同時に連続気泡層独立気泡層とを積層した緩衝層の厚みを基材層よりも厚くすることで衝撃吸収性能を付与する。さらに、連続気泡層独立気泡層の厚みの比を1.0~0.5とすることで連続気泡層による水滴音の軽減と、トイレや洗面所において重要な耐荷重性能を満たすことができる。
また、前記基材層の厚みが3~9mmであり、かつ前記基材層のJIS K 7171に準拠して測定した曲げ弾性率が1000~6000MPaであることを特徴とする床材を提供する。前記基材層の厚みおよび曲げ弾性率を制御することで、衝撃や振動を受けた際の基材の振動を制御し、より効率よく高い衝撃吸収性能や水滴音の伝達の阻害を行うことができる。
また、前記緩衝層における独立気泡層連続気泡層と基材層との間に位置しており、かつ連続気泡層におけるJIS K 6767に準拠して測定した24時間後の圧縮永久ひずみを独立気泡層におけるJIS K 6767に準拠して測定した2 4時間後の圧縮永久ひずみで除した値が0.8~2.0であり、かつ独立気泡層におけるJIS K 6767に準拠して測定した24時間後の圧縮永久ひずみが3.0~7.0であることを特徴とする床材を提供することができる。請求項3に記載の順で積層することで、振動や衝撃が住居構造体にいたるまでに通過していく層の固さを段階的に柔らかくなるように調整することができる。この効果によって衝撃や水滴音が段階的に吸収されより効率よく高い衝撃吸収性能や水滴音の伝達の阻害を行うことができると筆者たちは推測する。
また前記連続気泡層がポリウレタンフォームによって形成され、かつその見かけ密度が30~70kg/mであり、かつその発泡倍率が12~30倍であることを特徴とする床材を提供することができる。見かけ密度と発泡倍率を所定の値に保つことで、トイレや洗面所等で用いられる際に必要な耐荷重性と水滴音の伝達の阻害能力をよりバランスよく発揮することができる。
また前記独立気泡層がポリエチレン含む熱可塑性樹脂を発泡させて得られる発泡体によって形成され、かつその発泡倍率が5~12倍であることを特徴とする床材を提供することができる。独立気泡層の発泡倍率を所定の値に保つことで、トイレや洗面所等で用いられる際に必要な耐荷重性と水滴音の衝撃吸収性能をよりバランスよく発揮することができる。
また請求項1に記載の床材が、化粧層、基材層、緩衝層の厚みの合計値が10.0~15.0mmであることを特徴とする床材を提供することができる。床材の厚みの合計値を所定の値に保つことで廊下や居室に用いられる床材との床の高さのレベルがそろうため、前記の各種性能を満足しながら、違和感のない居住空間を形成することができる。
本発明によれば、トイレや洗面所等の水廻りに用いることができるだけの耐荷重性と耐水性を保ちつつ、衝撃吸収性能と水滴音の隣室への伝達を防止することができる床材を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る層構成を示す概略断面図である。 本発明の一実施形態に係る床材どうしの係合状態を示す概略断面図である。 本発明の図2の実施形態と異なる一実施形態に係る床材どうしの係合状態を示す概略断面図である。 本発明の図2や図3の実施形態と異なる一実施形態に係る床材どうしの係合状態を示す概略断面図である。 本発明のボルト締め付け試験を示す概略平面図である。 本発明の図5のボルト締め付け試験を示す概略断面図である。 本発明の局部荷重試験を示す概略平面図である。 本発明の図7の部分拡大図である。
発明を実施するための形態としては、例えば図1に示す様な、化粧層11と化粧層1 1の裏面に設けられる基材層12と、前記基材層裏面に設けられた緩衝層からなる床材であって、緩衝層が、連続気泡層14独立気泡層13からなる2層の積層体である床材である。以下、具体的に各層につき順次説明する。
[基材層]
本実施形態に係る基材層は、基材100重量部のうち30~90重量部がポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)のうち少なくとも一種を含む熱可塑性樹脂であって、熱可塑性樹脂と、充填材と、添加剤とを含む。
本実施形態における充填剤としては、無機充填剤及び有機充填剤が挙げられる。無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。有機充填剤としては、例えば、メラミンシアヌレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、木粉、セルロース及びその誘導体が挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
充填剤の含有量は、熱可塑性樹脂成分の所定の含有量を犯さない限り特に制限されないが、その合計量が、基材100重量部を基準として10~50質量%であることが好ましい。充填剤を添加する理由としては、基材の線膨張率の調整、単位面積当たりの燃焼カロリーの低減、嵩増しによる製造コストの低減等が挙げられるが、充填剤の含有量が基材100重量部を基準として20~40質量%であると、適度に基材の線膨張率を低減しながら、製造コストの手頃な基材を製造することができる。充填剤は、無機充填剤が好ましい。
本実施形態に係る熱可塑性樹脂は、燃焼時にダイオキシン等の有毒ガスの発生を防ぐ観点から、ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)のうち少なくとも一種を含む熱可塑性樹脂であることが好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
中でも、本実施形態に係る熱可塑性樹脂は、無極性であることが好ましい。このような無極性の熱可塑性樹脂を用いることで、上述した充填剤を添加した際の増粘効果を最小限に抑えることができ、基材を安定して生産することができる。
エチレン単独重合体としては、例えば、高圧法で合成された低密度ポリエチレン、中低圧法で合成されたコモノマーを含まない高密度ポリエチレン等が挙げられる。中でも、低密度ポリエチレンが好ましい。
低密度ポリエチレンとしては、例えば、ノバテックLD LC802A、ノバテックLD LC604(以上、日本ポリエチレン製)、宇部ポリエチレン J2516(宇部丸善ポリエチレン製)等の市販品を用いることができる。
ポリプロピレンおよびプロピレン-αオレフィン共重合体は、例えば、ホモポリプロピレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ないしはプロピレンと1-ブテンや1-オクテン等のα-オレフィン共重合体等が挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
熱可塑性樹脂分の含有量は、基材重量100重量部を基準として、30~90重量部であることが好ましく、40~75質量%であることがより好ましく、45~60質量%であることが更に好ましい。なお、この場合、樹脂分は架橋されていてもよい。また適宜添加剤として発泡剤を加えることで、樹脂を発泡させてもよい。
前記熱可塑性樹脂の物理特性は、成形後の樹脂基材の表面のアスカーC硬度が55~75であることを満足するものであれば特に限定されるものではないが、床用基材として必要な耐熱性、耐荷重性、剛性等の確保、及び前項で述べたような発泡処理を加える際には溶融張力の高いポリプロピレンを用いることが特に好ましい。
溶融張力の高いポリプロピレンとしては、JIS K7210に準拠して測定した230℃におけるメルトフローレート(MFR)が0.1~10.0であるようなポリプロピレンが好ましい。具体的には E111G、E200GP(株式会社プライムポリマー製)FY6H、EA9(日本ポリプロ株式会社製)等があげられる。
また、本実施形態に係る樹脂組成物には、必要に応じて顔料等を添加して着色してもよい。顔料の添加による着色は、透明であってもよいし、半透明であってもよいし、不透明であってもよい。顔料としては、例えば、酸化鉄、カーボンブラック等の無機顔料、又はアニリンブラック、フタロシアニンブルー等の有機顔料などを挙げることができる。
顔料の添加量としては、樹脂組成物全量を基準として、好ましくは5~15重量部である。
また、樹脂組成物には、必要に応じて、難燃剤、安定剤、滑剤、改質剤、発泡剤等の周
知の添加剤を用いることができる。
難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属酸化物系難燃剤、リン酸エステル系等のリン系難燃剤、テトラブロモビスフェノールA等の臭素系難燃剤などが挙げられる。
安定剤としては、例えば、フェノール/アミン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤等のラジカル補足剤、リン系、イオウ系等の過酸化物分解剤、ベンゾトリアゾール系ヒドロキシフェニルトリアジン系、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミド系、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、オクチル酸亜鉛等の脂肪酸金属塩系、テトラフルオロエチレンとα-オレフィンとの共重合体であるエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)及びそれらをアクリル変性させたもの等の滑剤などが挙げられる。
発泡剤としては、熱分解型発泡剤、もしくは物理発泡剤を用いることができる。熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)/亜鉛金属石鹸系等のアゾ系発泡剤や炭酸水素ナトリウム(重曹)/クエン酸系等の炭酸塩系発泡剤などが挙げられる。また、物理発泡剤としてはカプセル内に揮発性の炭化水素を封入したマイクロカプセル型発泡剤や超臨界状態にした窒素や二酸化炭素を混連中の樹脂内に送り込む方法等があげられる。これらの中でも、材料単価が安く取り扱いの容易で適用範囲の広い炭酸水素ナトリウム/クエン酸系発泡剤が好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
基材成形の方法は特に限定されるものではない。たとえば射出成形、押出成形、圧縮成形等の方法が挙げられるが、生産性等を鑑みるに押出成形による連続生産が特に好ましい。
基材成形の材料は、各成分を押出機で溶融し、混練し、分散させた後に、適宜ペレット化したものを用いることができる。押出機は単軸押出機でも2軸押出機でもよいが、生産性や品質への影響を考慮した場合、2軸押出機が望ましい。
基材成形の条件としては、押出温度180℃~220℃、押出圧力4.0MPa~40.0MPaが挙げられる。また、押出安定性の観点から、押出圧力は、4.0MPa~20.0MPaがより好ましい。
樹脂基材の厚みは、用途に応じて適宜設定することができるが、後述の緩衝層の合計厚みを越えてはならない。例えば、緩衝層の厚みの合計が7.0mmであれば樹脂基材の厚みは7.0mmを超えてはならない。
樹脂基材の材料となる樹脂は、必要に応じて架橋処理が施されていてもよい。架橋処理としては、電子線照射処理、過酸化物添加とそれに続く熱処理による熱架橋処理、水架橋型樹脂の添加とそれに続く過熱蒸気処理等の加熱処理による水架橋処理が挙げられる。樹脂組成物が上記シラン架橋性樹脂を含む場合には、過熱蒸気処理、水架橋処理を行うことができる。
樹脂基材の架橋処理は、樹脂組成物を成形したものに施してもよく、基材成形工程中にあわせて行っても良い。
前記樹脂基材の側面部には施工時の便宜のために係合突起を設けることが好ましい。この係合突起は、前記樹脂基材の成形時に同時に設けても良いし、成形後の基材に対して切削加工を行うことで設けても良い。また係合突起部と矩形基材部を別々に成形し、それらを熱融着ないしは接着剤等を用いた接着処理によって結合することで形成しても良い。
また前記係合突起の形状は特に限定されるものではないが、前記係合突起が係合された状態において、係合突起内部に樹脂基材の温度による伸縮を許容できる空間が設けられてなることが好ましい。具体的には図2のような矩形基材部21から延びる係合突起部23と矩形基材部22から延びる係合突起部24が形状においては空間幅d1と突出幅d2と開口幅d3と首部幅d4との関係において、d1>d2>d3>d4であることが好ましい。またd3-d4の値は樹脂基材の0℃~40℃における線膨長長さに応じて適宜定めることが好ましく、たとえば樹脂基材の材料がポリオレフィン60重量部程度を含む材料で成形され、その線膨張係数が8.0×10-5程度であるとすれば、d3-d4の値は0.3~0.5mmであることが好ましい。
また前記係合突起の形状は、図2に示すように、嵌め合わせ後に矩形基材部21から延びる係合突起部23と矩形基材部22から延びる係合突起部24が垂直方向にかみ合っている、または、図3に示すように、前記係合突起の形状は、嵌め合わせ後に矩形基材部31から延びる係合突起部33と矩形基材部32から延びる係合突起部34が垂直方向にかみ合っていることが好ましい。図4のように矩形基材部41から延びる係合突起部43と矩形基材部42から延びる係合突起部44が水平方向にかみ合っているのみで図3の垂直方向のかみ合わせ部35に相当する部分が存在しない場合、係合部付近に局部的な荷重がかかった場合に下側の係合部が荷重に追随して沈み込んでしまうために段差や目隙が生じてしまう可能性があるが、図2及び図3のように垂直方向にかみ合っている形状であれば荷重による沈み込みに対してかみ合わせ部35が干渉することで局所荷重による沈み込みを押さえ、耐荷重性を向上させることができる。
[化粧層]
本実施形態に係る樹脂基材は、化粧層を設けてもよい。化粧層は、公知の材料を使用して適宜設けることができる。本発明の目的が達成できるのであれば、化粧層は設けなくともよい。化粧層は、インクジェット、グラビアコーティング等の印刷技術を用いて設けても良いし、市販の化粧フィルム等を接着剤を用いて貼り付けることで設けても良い。
[緩衝層]
本実施形態に係る緩衝層は、連続気泡構造体からなる層(以下、連続気泡層)と独立気泡構造体からなる層(以下、独立気泡層)とを含む。また、その厚みの合計は前記基材層よりも大きくなければならない。
本実施形態に係る緩衝層は、連続気泡層と独立気泡層とを2層以上積層することによって形成される。その順序は特に限定されないが、基材層、独立気泡層、連続気泡層の順で積層されたものが特に好適に用いられる。この順で積層することによって基材層側から順に材質を軟質なものすることができ、より衝撃吸収性能と水滴音の軽減性能とを高く保つことができる。
[独立気泡層]
本実施形態における緩衝層のうち独立気泡層は、後述する連続気泡層の厚みの1~1.43(10/7)倍の厚みを持つ。
前記独立気泡層の物理特性は特に限定されるものではないが、JIS K 6767 に準拠して測定した24時間後の圧縮永久ひずみが3.0~7.0であることがより好ましい。圧縮永久ひずみの値が7.0以上である場合、特にトイレでの使用を想定した際に、便器配管のボルトの締め付けや便座の荷重によって生じた緩衝材のひずみが復元せず、不自然な隙間ができたり、周囲の床材との段差が生じてしまい、外観に齟齬をきたす可能性が高まる。また、24時間後の圧縮永久ひずみが3.0以下であると、独立気泡層が硬質になりすぎてしまい、衝撃吸収性能が低下してしまう。
前記独立気泡層の材質は特に限定されるものではないが、その材質はポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)のうち少なくとも一種を含む熱可塑性樹脂を発泡させて得られる発泡体によって形成され、かつその発泡倍率が5~12倍であることが好ましい。またこれら熱可塑性樹脂は基材層と同様に必要に応じて架橋処理がなされていても良く、また、発泡性能、材料費の低減、難燃性の付与等の種々の性能の付与のために基材層と同様の充填材、添加剤、難燃剤等を含んでいても良い。これらの材質及び発泡倍率を満たす限り、十分な衝撃吸収性と耐荷重性を両立することができる。
[連続気泡層]
本実施形態における緩衝層のうち連続気泡層は、独立気泡層の厚みの0.7~1倍の厚みを持つ。
前記連続気泡層の物理特性は特に限定されるものではないが、JIS K 6767 に準拠して測定した24時間後の圧縮永久ひずみを独立気泡層におけるJIS K 6767に準拠して測定した24時間後の圧縮永久ひずみで除した値が0.8~2.0であることがより好ましい。圧縮永久ひずみの比が0.8以下である場合独立気泡層と連続気泡層の固さの差が小さくなりすぎるために硬さの大きく異なる層を通過させることによる水滴音の軽減効果がうまく発揮されない。また圧縮永久ひずみの比が3.0以上であると、連続気泡層が圧縮ひずみに対して弱くなりすぎるためにトイレでの使用を想定した際に、便器配管のボルトの締め付けや便座の荷重によって生じた緩衝材のひずみが復元せず、不自然な隙間ができたり、周囲の床材との段差が生じてしまう可能性が高まる。
前記連続気泡層の材質は特に限定されるものではないが、その材質はポリウレタンフォームによって形成され、かつその見かけ密度が30~70kg/mであり、かつその発泡倍率が12~30倍であることが好ましい。また、前記連続気泡層は基材層と同様に必要に応じて架橋処理がなされていても良く、また、発泡性能、材料費の低減、難燃性の付与等の種々の性能の付与のために基材層と同様の充填材、添加剤、難燃剤等を含んでいても良い。また所望の性能を満たすために熱処理による圧縮等を行っても良い。これらの材質及び発泡倍率を満たす限り、十分な水滴音の軽減効果と耐荷重性を両立することができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[樹脂基材の作製]
(実施例1~2、比較例1)
基材層として表1に示す材料を200℃にて加熱溶融混合し、厚み12.0mm、幅150mmで短手両端に本実形状を持つ金型を押出機の先端に取り付けて発泡倍率1.6倍で押し出した。その後、冷却水を循環させた前記金型と同型の冷却金型に引き込み、冷却固化した後900mm長さに切断した。作成した板状基材を堆積し80℃のオーブンで12時間過熱した後に外気冷却を行い、樹脂基材層を作成した。
[化粧層の作成]
厚さ0.070mmのポリプロピレン系着色シート表面にコロナ放電処理を施した後、グラビア印刷機により2液型ウレタンインキを用いて絵柄模様層を印刷し、設けた印刷層上に90μmの透明ポリプロピレン樹脂層を押出ラミネートして表面保護層を設けた。さらに、表面保護層上に2μmのツヤ調整用コート層を設けて、化粧シートを得た。得られた化粧シートを湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルトを用いて前記樹脂基材層と貼り合せ、化粧層を設けた。
[緩衝層の作成]
ポリエチレン系樹脂を主成分とした厚さ9.0mmの独立気泡層に対しロールコーターによって2液硬化型ウレタン接着剤を50g/mで塗布した後、厚さ5.0mmのウレタンフォームAからなる連続気泡層を貼り付けて圧締ロールによって圧締する。1週間にて養生した後、緩衝材を140mm×890mmのサイズに成形した。
[床材の作成]
化粧層を設けた樹脂基材の化粧面の反対側にコロナ処理を施し、エポキシ系2液硬化型接着剤を100g/mで塗布する。塗布した接着剤上に成形した緩衝層を独立気泡層側から貼り付け、圧締機で圧締した後、積み重ねて1週間養生することで、実施例1~2、比較例1の床材を得た。
[実施例3]
基材層の厚みを6.0mm、独立気泡層の厚みを4.0mm、ウレタンフォームBからなる連続気泡層の厚みを3.0mmとした以外は実施例1と同様にして実施例3の床材を得た。
[実施例4]
緩衝層の貼りあわせを連続気泡層側から行った以外は実施例3と同様にして実施例4の床材を得た。
[実施例5]
ウレタンフォームCからなる連続気泡層を用いた以外は実施例3と同様にして実施例5の床材を得た。
[比較例2]
基材層として木質基材Aを用いた以外は実施例1と同様にして比較例2の床材を得た。
[比較例3]
独立気泡層の厚みを5.0mm、ウレタンフォームAからなる連続気泡層の厚みを9.0mmとした以外は実施例1と同様にして比較例3の床材を得た。
[比較例4]
基材層として木質基材Bを用いた以外は実施例1と同様にして比較例4の床材を得た。
[比較例5]
ウレタンフォームAからなる連続気泡層の厚みを2.0mmとした以外は実施例1と同様にして比較例5の床材を得た。
[比較例6]
独立気泡層の厚みを7.0mmとし、連続気泡層を設けない以外は実施例3と同様にして比較例6の床材を得た。
[比較例7]
連続気泡層の厚みを7.0mmとし、独立気泡層を設けない以外は実施例3と同様にして比較例7の床材を得た。
各試験体についてまとめたものを表2及び表3に示す。
各実施例および各比較例の作成には以下の材料を用いた。
[ポリプロピレン]
プライムポリプロ E111G(株式会社プライムポリマー製、MFR=0.5)
プライムポリプロ E200GP(株式会社プライムポリマー製、MFR=2.0)
[ポリエチレン]
ハイゼックス 5000SR(株式会社プライムポリマー製、MFR=0.37)
ネオゼックス 2015M (株式会社プライムポリマー製、MFR=1.2)
[タルク]
MS-K(日本タルク株式会社製、商品名)
[ウレタンフォーム]
ウレタンフォームA:エバーライト VO(ブリヂストン化成品株式会社製、商品名)
ウレタンフォームB:エバーライト CFZZ(ブリヂストン化成品株式会社製、商品名)
ウレタンフォームC:エバーライト VO(ブリヂストン化成品株式会社製、商品名)を熱プレス機で1/2に圧縮したもの。
[接着剤]
湿気硬化型ホットメルト :タイフォース FH-315(DIC株式会社製、商品名)
ウレタン系接着剤 :ダイアボンド DW4006(ノガワケミカル株式会社製、商品名、主剤)
ダイアボンド HA5A(ノガワケミカル株式会社製、商品名、硬化剤)
エポキシ系接着剤 :SA-7446 A/B(サンユレック株式会社製、商品名、主剤/硬化剤)
[床材の評価]
作製した床材について、下記の方法に従い、耐水性と耐荷重性と衝撃吸収性能と水滴音軽減性能を評価した。結果を表4、表5に示す。
(耐水性)
JAS(日本農林規格)規定のI類浸漬剥離試験を5サイクル行い、目視にて基材の状態を確認した。試験前と比較して膨潤の度合いが軽微であるものを○、それ以外を×とし手評価した。
(耐荷重性)
ボルト締め付けによる凹み量と局部荷重を掛けた際の段差変化量について評価試験を行った。
(ボルト締め付け試験)
150mm×50mmのサイズにカットした24mm構造用合板52上に同サイズの床材51を両面テープによって固定し、側面から厚みを測定した。図6のように直径10mmの穴を50mm間隔で3つ開け、図5のように合板側からφ10mmの六角ボルト62を通し、床材側からφ10mmのナット63を入れて締め付けた。ボルト53へのナット
54の締め付けにはトルクレンチを用い、締め付けトルクは40N・mとした。締め付け後、再度側面から厚みを測定し、厚み変化量の平均値を沈み込み量とした。
(局部荷重試験)
450mm×900mmサイズにカットした24mm構造用合板上に、図7の通りに上サネ71と下サネ72が当たり、上サネ73と下サネ74が当たる様に床材を施工し、局部Aを拡大した図8に示すような上サネ81と下サネ82が当たり、または上サネ83と下サネ84が当たる位置の段差86、段差87、段差88を測定した。図7に黒丸で示した位置にφ25mmのゴム脚からなる圧縮子75(図8では圧縮子85)を設置し、圧縮子1つに対して15kgfの荷重をかけ、3日間静置した。
その後荷重を取り除き1週間静置した後、再度段差86、段差87、段差88を測定した。段差86、段差87、段差88の変化量を計算し、その平均を取ることで段差変化量(mm)を求めた。
(衝撃吸収性)
JIS A 6519に準拠した方法で転倒衝撃時の床の固さ試験を行い、Gs値を測定した。
(水滴音軽減性能)
600mm×600mmのサイズにカットした24mm構造用合板上に床材を施工し、中央に容量18Lの円筒形の陶器の甕を設置した。甕に10Lの水を入れた後、構造用合板の4方を600mm×600mmの12mm合板で囲んで試験用箱体を作成した。600mm×600mmのサイズにカットした12mm合板の中央にφ28mmの穴を開けたものを準備し、前述の試験用箱体の天頂部に乗せ、天頂部の穴に底部を除いた500Lペットボトルを逆さに固定した。固定したペットボトルに500mLの水を流し込み、甕に落下する水の音を騒音計によって測定した。
Figure 0007035331000001
Figure 0007035331000002
Figure 0007035331000003
Figure 0007035331000004
Figure 0007035331000005
11…化粧層
12…基材層
13…独立気泡構造体からなる層
14…連続気泡構造体からなる層
21、22、31、32、41、42…矩形基材部
23、24、33、34、43、44…係合突起部
35…かみ合わせ部
51、61…床材
52…構造用合板
53、62…ボルト
54、63…ナット
71、73、81、83…上サネ
72、74、82、84…下サネ
75、85…圧縮子
86、87、88…段差
d1…空間幅
d2…突出幅
d3…開口幅
d4…首部幅

Claims (2)

  1. 化粧層と化粧層の裏面に設けられる基材層と、前記基材層裏面に設けられた緩衝層からなる床材であって、前記基材層を構成する材料100重量部のうち60重量部がポリエチレン又は、ポリプロピレンからなり、かつ27重量部の木粉、9重量部の充填剤及び3重量部の発泡剤を含んでいる熱可塑性樹脂であり、かつ前記基材層のアスカーC硬度が55~75であり、かつ基材裏面に設けられた緩衝層がポリエチレンからなる独立気泡層とポリエーテル系ポリウレタンフォームからなる連続気泡層の順に2層の積層体であり、かつ前記独立気泡層の厚みが前記連続気泡層の厚みの1~1.43倍であり、かつ前記緩衝層の全ての層の厚みの合計が前記基材層の厚みよりも大きいことを特徴とする床材。
  2. 請求項1に記載の床材が、化粧層、基材層、緩衝層の厚みの合計値が10.0~15.0mmであることを特徴とする床材。
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