<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体吐出装置10の部分的な構成図である。本実施形態の液体吐出装置10は、液体の例示であるインクを印刷用紙等の媒体12に吐出するインクジェット方式の印刷装置である。図1に示す液体吐出装置10は、制御ユニット20と搬送機構22とキャリッジ24と液体吐出ヘッド26とメンテナンスユニット30とを具備する。図1では、1個の液体吐出ヘッド26をキャリッジ24に搭載した場合を例示しているが、これに限られず、複数個の液体吐出ヘッド26をキャリッジ24に搭載してもよい。液体吐出装置10にはインクを貯留する液体容器14(カートリッジ)が装着される。
液体容器14は、液体吐出装置10の本体に着脱可能な箱状の容器からなるインクタンクタイプのカートリッジである。なお、液体容器14は、箱状の容器に限られず、袋状の容器からなるインクパックタイプのカートリッジであってもよい。液体容器14には、インクが貯留される。インクは、黒色インクであってもよく、カラーインクであってもよい。液体容器14に貯留されるインクは、ポンプ(図示略)によって液体吐出ヘッド26に供給(圧送)される。
制御ユニット20は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置202と半導体メモリー等の記憶装置203とを含んで構成され、記憶装置203に記憶された制御プログラムを制御装置202が実行することで液体吐出装置10の各要素を統括的に制御する。図1に示すように、媒体12に形成すべき画像を表す印刷データGがホストコンピューター等の外部装置(図示略)から制御ユニット20に供給される。制御ユニット20は、印刷データGで指定された画像が媒体12に形成されるように液体吐出装置10の各要素を制御する。
搬送機構22は、制御ユニット20による制御のもとで媒体12をY方向に搬送する。液体吐出ヘッド26は、略箱状のキャリッジ24に搭載され、液体容器14から供給されるインクを制御ユニット20による制御のもとで媒体12に吐出する。制御ユニット20は、Y方向に交差するX方向に沿ってキャリッジ24を往復させる。搬送機構22による媒体12の搬送とキャリッジ24の反復的な往復とに並行して液体吐出ヘッド26が媒体12にインクを吐出することで媒体12の表面に所望の画像が形成される。なお、液体容器14を液体吐出ヘッド26とともにキャリッジ24に搭載することも可能である。
液体吐出ヘッド26は、複数の液体吐出部70(ヘッドチップ)を備える。本実施形態では、X方向に沿って並ぶように、4つの液体吐出部70を配列した場合を例示する。4つの液体吐出部70のそれぞれに1つずつ対応するノズル列L1~L4が配置されている。各ノズル列L1~L4は、Y方向に沿って直線状に配列された複数のノズルNの集合である。各ノズルNからは、液体容器14から供給されるインクが吐出される。各ノズル列L1~L4のノズルNは、液体吐出ヘッド26の吐出面260(媒体12との対向面)に形成される。なお、液体吐出部70やノズル列の数や配列は例示したものに限られない。例えば千鳥配列またはスタガ配列とすることも可能である。X-Y平面(媒体12の表面に平行な平面)に垂直な方向をZ方向と表記する。
図2は、本実施形態のメンテナンスユニット30の構成を説明するための図である。メンテナンスユニット30は、液体吐出ヘッド26のメンテナンスを行うための構造体である。本実施形態のメンテナンスには、吸引動作によってノズルNからインクを排出して行う第1メンテナンスと、フラッシング動作によってノズルNからインクを吐出して行う第2メンテナンスが含まれる。メンテナンスユニット30は、例えばX方向において液体吐出装置10の非印刷領域H(媒体12が搬送される印刷領域以外の領域)に配置される。本実施形態の非印刷領域Hには、第1メンテナンスを行うための第1メンテナンス領域H1と第2メンテナンスを行うための第2メンテナンス領域H2が含まれる。
図1および図2に示すように、メンテナンスユニット30は、第1メンテナンス用のキャップ32と第2メンテナンス用の液体受け部34と吐出面260を払拭するためのワイパー36とを備える。キャップ32は、Z方向の負側が開口する略箱状のキャップであり、液体受け部34は、Z方向の負側が開口する略箱状のタンクである。ただし、液体受け部34をキャップ32と同様に構成してもよい。キャップ32は第1メンテナンスでノズルNから排出されるインクを受けるために用いられ、液体受け部34は第2メンテナンスでノズルNから吐出されるインクを受けるために用いられる。なお、キャップ32内と液体受け部34内にはそれぞれ、インクを吸収する吸収体を配置してもよい。ワイパー36は、ゴム等の弾性部材をブレード状にしたワイパーである。ただし、ワイパー36はブレード状に限られず、例えば短冊状であってもよい。また、ワイパー36の材質は弾性部材に限られるものではなく、織物や不織布等の繊維部材であってもよい。
キャップ32と液体受け部34とワイパー36とはこの順にX方向に並べて配置される。キャップ32は第1メンテナンス領域H1に配置され、液体受け部34は第2メンテナンス領域H2に配置される。キャップ32は、制御ユニット20の制御のもとにモーター(図示略)によって、吐出面260に接触するZ方向負側のセット位置と吐出面260から離間するZ方向正側の待機位置との間で昇降(上下動)可能である。液体受け部34は、制御ユニット20の制御のもとにモーター(図示略)によって、吐出面260から所定の距離だけ離間したZ方向負側のセット位置とセット位置よりも吐出面260からZ方向正側に離間した待機位置との間で昇降(上下動)可能である。ワイパー36は、キャップ32と液体受け部34とが待機位置にあるときに、制御ユニット20の制御のもとにモーター(図示略)によって、X方向の負側と正側を往復可能である。なお、キャップ32と液体受け部34の待機位置は、例えばキャリッジ24やワイパー36の移動に邪魔にならない程度に下降した位置である。
本実施形態の第1メンテナンスは、液体の排出によるメンテナンスであり、具体的にはキャップ32で吐出面260を覆ってノズルNをキャッピング(封止)し、吸引動作によってキャップ32内を負圧にすることでノズルNからインクを排出させるメンテナンス(クリーニング)である。第2メンテナンスは、液体の吐出によるメンテナンスであり、具体的には液体受け部34を吐出面260から所定距離だけ離間させて、フラッシング動作によってノズルNからインクを吐出させるメンテナンス(フラッシング)である。第1メンテナンスや第2メンテナンスによれば、ノズルNから気泡や増粘インクなどを排出させることで、吐出不良などの不具合を抑制できる。
本実施形態のキャップ32には、4つの液体吐出部70のうち任意の1つの液体吐出部70のノズル列の領域を覆う大きさの凹部322が形成される。したがって、本実施形態の第1メンテナンスでは、1つの液体吐出部70のノズル列ごとに順番に行われる。このような構成のキャップ32によれば、複数の液体吐出部70の全体の領域を覆う場合に比較してキャップ32のサイズを小さくでき、液体吐出部70の数が増えてもキャップ32のサイズを変えなくて済むので、メンテナンスユニット30を小型化できる。
本実施形態の液体受け部34は、4つの液体吐出部70のうち任意の1つの液体吐出部70のノズル列の領域に対応する大きさである。したがって、本実施形態の第2メンテナンスでは、1つの液体吐出部70のノズル列ごとに順番に行われる。このような構成の液体受け部34によれば、複数の液体吐出部70の全体の領域に対応する場合に比較して液体受け部34のサイズを小さくでき、液体吐出部70の数が増えても液体受け部34のサイズを変えなくて済むので、メンテナンスユニット30を小型化できる。
キャップ32の凹部322は、排出管37を介して廃液部38(廃液タンク)に連通する。具体的には、凹部322にはその底壁を貫通する貫通孔323が形成され、貫通孔323には排出管37が接続されている。排出管37は、凹部322と廃液部38とを連通する。排出管37には、吸引ポンプPが設けられている。廃液部38は、凹部322から吸引されて排出管37に排出されるインクを収容する。
排出管37には、吸引ポンプPと凹部322との間に、凹部322を大気に連通するか廃液部38に連通するかを切り替える切替弁Vaが設けられている。切替弁Vaは、例えば三方弁で構成される。吸引動作後にキャップ32を吐出面260に対して接離する際に、切替弁Vaによって凹部322を大気に連通し、凹部322内の負圧を解消することで、キャップ32を外したときのノズルN内のメニスカス(ノズル内で露出している液体の自由表面)の破壊を防止できる。
図3は、液体吐出装置10の機能的な構成図である。図3では、搬送機構22やキャリッジ24等の図示を便宜的に省略している。制御ユニット20は、駆動信号生成部40と制御部50とデータテーブルCを備える。図1に示す制御装置202が制御プログラムを実行することで、制御装置202が駆動信号生成部40と制御部50として機能する。制御部50は、駆動信号生成部40を制御する。データテーブルCは、図1に示す記憶装置203に記憶されている。制御部50は、メンテナンスユニット30を制御する。具体的には制御部50は、キャップ32を制御してインクの排出による第1メンテナンスを行い、ワイパー36を制御して吐出面260を払拭し、液体受け部34を制御してインクの排出による第2メンテナンスを行う。
駆動信号生成部40は、駆動信号COMを生成する。駆動信号COMは、所定の周期ごとにインク(液滴)を吐出するための駆動パルス(駆動波形)を含む電圧信号である。例えば図4に示すような駆動パルスWが駆動信号COMに含まれる。駆動パルスWの波形形状は任意であり、駆動パルスの波形形状を変えることでノズルNから吐出されるインクの吐出重量を変えることができる。また、駆動信号COMの1周期に複数の駆動パルスを含む構成や、波形が相違する複数の駆動信号COMを利用する構成も採用され得る。駆動信号COMを生成するためのデータ(例えば電圧データ)は、データテーブルCに記憶されている。制御部50は、各駆動信号COMを生成する場合には、駆動信号COMの波形に対応するデータをデータテーブルCから読み出して、駆動信号生成部40によって駆動信号COMを生成する。
液体吐出ヘッド26は、駆動部262と液体吐出部70を具備する。駆動部262は、制御ユニット20による制御のもとで液体吐出部70を駆動する。液体吐出部70は、液体容器14から供給されるインクを複数のノズルNから媒体12に吐出する。液体吐出部70は、相異なるノズルNに対応する複数の吐出部266を包含する。各吐出部266は、駆動部262から供給される駆動信号Vに応じてインクを吐出する。
駆動信号生成部40が生成した駆動信号COMと印刷データGに応じてインクの吐出の有無を指示する印刷信号SIとが制御ユニット20から駆動部262に供給される。駆動部262は、駆動信号COMと印刷信号SIとに応じた駆動信号Vを吐出部266ごとに生成して複数の吐出部266に並列に出力する。具体的には、駆動部262は、複数の吐出部266のうち印刷信号SIがインクの吐出を指示する吐出部266には駆動信号COMの駆動パルスWを駆動信号Vとして供給し、印刷信号SIがインクの非吐出を指示する吐出部266には所定の基準電位VMの駆動信号Vを供給する。
図5は、任意の1個の吐出部266に着目した液体吐出部70の断面図である。図5に示す液体吐出部70は、流路基板71の一方側に圧力室基板72と振動板73と圧電素子74と支持体75とが配置されるとともに他方側にノズル板76が配置された構造体である。流路基板71と圧力室基板72とノズル板76とは例えばシリコンの平板材で形成され、支持体75は例えば樹脂材料の射出成形で形成される。複数のノズルNはノズル板76に形成される。図5の構成では、ノズル板76のうち媒体12に対向する面が、液体吐出ヘッド26の吐出面260を構成する。
流路基板71には、開口部712と分岐流路714と連通流路716とが形成される。分岐流路714および連通流路716はノズルNごとに形成された貫通孔であり、開口部712は複数のノズルNにわたり連続する開口である。支持体75に形成された収容部752(凹部)と流路基板71の開口部712とを相互に連通させた空間は、支持体75の導入流路754を介して液体容器14から供給されるインクを貯留する共通液室SR(リザーバー)として機能する。
圧力室基板72には開口部722がノズルNごとに形成される。振動板73は、圧力室基板72のうち流路基板71とは反対側の表面に設置された弾性変形可能な平板材である。圧力室基板72の各開口部722の内側で振動板73と流路基板71とに挟まれた空間は、共通液室SRから分岐流路714を介して供給されるインクが充填される圧力室SC(キャビティ)として機能する。各圧力室SCは、流路基板71の連通流路716を介してノズルNに連通する。圧力室SCと共通液室SRと、これらを連通する分岐流路714と、連通流路716と、ノズルNとで構成される空間が、液体吐出ヘッド26の内部空間SDを構成する。
振動板73のうち圧力室基板72とは反対側の表面にはノズルNごとに圧電素子74が形成される。各圧電素子74は、第1電極742と第2電極746との間に圧電体744を介在させた駆動素子である。第1電極742および第2電極746の一方に駆動信号Vが供給され、所定の基準電位VMが他方に供給される。駆動信号Vの供給により圧電素子74が変形することで振動板73が振動すると、圧力室SC内の圧力が変動して圧力室SC内のインクがノズルNから吐出される。具体的には、駆動信号Vの振幅に応じた吐出量のインクがノズルNから吐出される。図5に例示した1個の吐出部266は、圧電素子74と振動板73と圧力室SCとノズルNとを包含する部分である。
なお、第1電極742および第2電極746のうち基準電位VMが供給される電極を、複数の圧電素子74にわたる共通電極とすることも可能である。このように、図5の構成では、駆動信号Vの供給により圧電素子74が変形して圧力室SCの圧力を変動させることで、液体吐出ヘッド26の内部空間SDの圧力が変動し、ノズルNからインクを吐出させることができる。
圧電素子74には、例えば図4に示す駆動パルスWを印加することによって、ノズルNからインクを吐出させることができる。図4の駆動パルスWは、基準電位VMに対する高位側電位VHおよび低位側電位VLを有する。図4の駆動パルスWによれば、基準電位をVMとすると、基準電位VMよりも電位を高くすることで、ノズルN内のメニスカスを圧力室SC側へ引き込むことができる。逆に、基準電位VMよりも電位を低くすることで、ノズルN内のメニスカスを圧力室SCとは反対側のノズルNの開口部(インクが吐出されるノズルNの開口部)側に押し出してインクを吐出できる。なお、駆動パルスWの波形は図4に示すものに限られない。例えばノズルN内のメニスカスを圧力室SC側へ引き込む場合には基準電位VMよりも電位を低くし、逆にノズルN内のメニスカスをノズルNの開口部側に押し出す場合には基準電位VMよりも電位を高くするような駆動パルスWで圧電素子74を駆動するようにしてもよい。
本実施形態における液体吐出ヘッド26のメンテナンス工程では、キャップ32を制御してインクの排出による第1メンテナンスを液体吐出部70ごとに順番に行った後、ワイパー36を制御して吐出面260を払拭し、その後に液体受け部34を制御してインクの排出による第2メンテナンスを液体吐出部70ごとに順番に行う。したがって、吸引動作による第1メンテナンスを行った後、第2メンテナンスを行うまでには、すべての液体吐出部70に対してキャップ32を吐出面260から外したり、ワイパー36による吐出面260の払拭などを行ったりするために時間がかかるので、その間は先に第1メンテナンスが実施された各液体吐出部70のノズルNが待機中となる。ここでの「待機中」とは、ノズルNからインクが吐出されない状態にあることをいう。
このようなメンテナンス工程における待機中にノズルN内のインクが乾燥して増粘してしまうことがある。第2メンテナンスでは、ノズルN内のメニスカスを圧力室SC側にインクを引き込んでから押し出して吐出させるから、インクの乾燥や増粘によりメニスカスがノズルNの内壁に貼り付いて動き難くなっていると、インクの引き込みの際にメニスカスが急激に動いて破壊されてしまう虞がある。このため、本実施形態では、第1メンテナンスを行った後、第2メンテナンスを行うまでに、ノズルN内のインクを微振動させる動作(微振動動作)を行うことによって、メニスカスがノズルNの内壁に沿って動き易くなるようにしておく。
例えば図6は、微振動動作を行うメンテナンス工程において、圧電素子74に印加する電位の変化を示す図である。図6に示すように、第1メンテナンスが行われる期間T1では、基準電位を低位側電位VL(例えば0V)とし、第2メンテナンスが行われる期間T3では、低位側電位VLよりも高いVMを基準電位とするフラッシング用の駆動パルスを印加する。フラッシング用の駆動パルスは、印刷用の駆動パルスと同じでもよく、異なっていてもよい。本実施形態では図4に示す駆動パルスWを、印刷用の駆動パルスとして用いるとともに、フラッシング用の駆動パルスとしても用いる。第1メンテナンスを行った後、第2メンテナンスを行う前までの待機中の期間T2は、基準電位を低位側電位VLとする微振動動作を行う。
ところが、このように第1メンテナンスを行った後、第2メンテナンスを行う前までの待機中に微振動動作を行う場合、待機中のノズルN内のインクの温度によっては、微振動動作によって不具合が発生してしまう虞がある。具体的には、待機中のノズルN内のインクの温度が高いほど、ノズルN内のメニスカスで乾燥が進み、インクの増粘が進行しやすい。そのため、その状態で第1メンテナンス後の微振動を続けると、増粘したインクが圧力室SC内まで拡散されて、結果的に圧力室SC内のインクまで増粘して吐出不良の原因となる虞がある。
そこで、本実施形態では、第1メンテナンスを行った後であって第2メンテナンスを行う前の微振動動作において、ノズルN内のインクの検出温度が閾値以上の場合は、ノズルN内のインクの振動エネルギーが低下するように圧力室SC内の圧力を変動させる。具体的には図3に示すように、本実施形態の液体吐出装置10は、ノズルN内のインクの温度を直接的または間接的に検出する検出部28を備える。そして、微振動動作において検出部28が所定の閾値以上の温度を検出した場合には、制御部50は、振動エネルギーが、検出部28が所定の閾値以上の温度を検出しない場合の振動エネルギーより低いモードの微振動用の駆動パルスで圧電素子74に印加することで圧力室SC内を微振動させる。ここでの微振動用の駆動パルスは、ノズルNからインクが吐出されない程度に圧力室SCの圧力を変動させるために圧電素子74に印加する駆動波形である。これによれば、インクが増粘し易く拡散し易い温度でも、待機中のノズルN内で増粘したインクが圧力室SCまで拡散することを抑制しつつメニスカスをノズルNの内壁に沿って動き易くすることができる。したがって、メンテナンス工程において待機中のノズルN内のインクの増粘による吐出不良を抑制できる。
検出部28は、ノズルN内のインクの温度を検出する温度センサーである。温度センサーは、液体吐出部70ごとに設けられ、各液体吐出部70のノズルN内のインクの温度を直接的に検出することができる。または、温度センサーで各液体吐出部70の温度を検出し、その検出温度に基づいてノズルN内のインクの温度を間接的に取得してもよい。なお、検出部28は、温度センサーに限られない。
図7は、本実施形態の微振動動作のモードを説明するための図である。図7は、駆動信号生成部40によって所定の周期Tごとに生成される微振動用の駆動パルスの具体例である。本実施形態の微振動動作では、図7に示す第1モードの駆動パルスW1と第2モードによる駆動パルスW2を選択可能である。第2モードの駆動パルスW2は、周期Tにおける振動数が第1モードの駆動パルスW1よりも低い。これにより、第2モードの駆動パルスW2を選択することで、第1モードの駆動パルスW1を選択するよりも、ノズルN内のインクの振動エネルギーが低下するように圧力室SC内の圧力を変動させることができる。したがって、本実施形態の微振動動作では、ノズルN内のインクの検出温度が閾値以上でない場合は第1モードによる駆動パルスW1で微振動させて、閾値以上の場合は、第2モードによる駆動パルスW2で微振動させる。
以下、このような本実施形態に係る液体吐出装置10の駆動方法について説明する。図8は、第1実施形態に係るメンテナンス工程のフローチャートである。本実施形態のメンテナンス工程は、記憶装置203に記憶される所定のプログラムに基づいて制御装置202によって実行される。第1実施形態に係るメンテナンス工程には、インクの排出による第1メンテナンスと吐出面260の払拭とインクの吐出による第2メンテナンスとを含み、第1メンテナンスと第2メンテナンスとはノズル列ごとに行われる。
図9乃至図14は、本実施形態に係るメンテナンス工程を説明するための作用説明図である。図9乃至図11は、第1メンテナンスの作用説明図であり、図9は、第1メンテナンスでノズル列L1のノズルNからインクを排出する場合の作用説明図である。図10は、図9に続く作用説明図であって、ノズル列L1の第1メンテナンス終了後にキャップ32を外す場合の作用説明図である。図11は、図10に続く作用説明図であって、第1メンテナンスで次のノズル列L2のノズルNからインクを排出する場合の作用説明図である。図12は、ノズル列L1~L4の第1メンテナンスを行った後に吐出面260を払拭する場合の作用説明図である。
図13及び図14は、第2メンテナンスの作用説明図であり、図13は、第2メンテナンスでノズル列L1のノズルNからインクを吐出する場合の作用説明図である。図14は、図13に続く作用説明図であって、第2メンテナンスで次のノズル列L2のノズルNからインクを吐出する場合の作用説明図である。
本実施形態に係るメンテナンス工程では、図8に示すように、先ずステップS11にて制御装置202は、ノズル列L1~L4の順番に第1メンテナンスを行う。具体的には制御装置202は、図9に示すように、ノズル列L1が第1メンテナンス領域H1に対向する位置まで液体吐出ヘッド26をX方向に移動し、キャップ32でノズル列L1のノズルNをキャッピングする。具体的には、吐出面260のノズル列L1を凹部322の開口縁部で囲むように、キャップ32を吐出面260に接触させてノズル列L1のノズルNをキャッピングする。
そして、制御装置202は、切替弁Vaで凹部322を廃液部38に連通して吸引ポンプPを駆動することによって、凹部322内を吸引して凹部322内を負圧にすることで、ノズルNからインクを排出する(図9)。ノズルNから排出されたインクは、排出管37を経て廃液部38に収容される。ノズル列L1の第1メンテナンスが終了すると、制御装置202は、切替弁Vaによって凹部322を大気に連通し(図10)、その後にキャップ32を吐出面260から外して待機位置まで移動する。これにより、キャップ32を吐出面260から外す前に凹部322内の負圧が解消されるので、キャップ32を外したときのノズルN内のメニスカスの破壊を防止できる。
次に、図11に示すように、制御装置202は、ノズル列L2が第1メンテナンス領域H1に対向する位置まで液体吐出ヘッド26をX方向に移動し、キャップ32でノズル列L2のノズルNをキャッピングする。そして、制御装置202は、切替弁Vaで凹部322を廃液部38に連通して吸引ポンプPを駆動することによって、凹部322内を吸引して凹部322内は負圧にすることで、ノズルNからインクを排出する(図11)。ノズル列L2の第1メンテナンスが終了すると、制御装置202は、切替弁Vaによって凹部322を大気に連通し、その後にキャップ32を吐出面260から外して待機位置まで移動する。その後は、上記と同様にノズル列L3とノズル列L4の第1メンテナンスを順番に行うことで、ノズル列L1~L4の第1メンテナンスを終了する。
ノズル列L4の第1メンテナンスを行った後に、キャップ32を吐出面260から外して待機位置まで移動すると、液体吐出ヘッド26を所定の位置まで移動して、吐出面260の払拭(ワイピング)を行う(図12)。具体的には制御装置202は、ワイパー36で吐出面260を払拭する。このように、すべてのノズル列L1~L4の第1メンテナンスを行った後に吐出面260を払拭することで、第1メンテナンスの吸引動作によって吐出面260に付着したインクや異物を除去できる。
このような第1メンテナンスを行った後、第2メンテナンスを開始するまでは、吐出面260の払拭などが終了するまで時間があり、その間はノズルL1~L4のノズルNが待機中となる。本実施形態では、このノズルL1~L4のノズルNの待機中に、ステップS12~S14にて検出部28で検出されたノズルN内のインクの温度に応じて第1モードまたは第2モードによる微振動動作を行う。具体的には制御装置202は、ステップS12にて検出部28で検出されたノズルN内のインクの温度が所定の閾値以上でないと判断した場合は、ステップS13にて第1モードの微振動用の駆動パルスW1(図7)を圧電素子74に印加して微振動動作を行う。
他方、制御装置202は、ステップS12にて検出部28で検出されたノズルN内のインクの温度が所定の閾値以上であると判断した場合は、ステップS14にて第2モードの微振動用の駆動パルスW2(図7)を圧電素子74に印加して微振動動作を行う。これにより、ノズルN内のインクの温度が所定の閾値以上に高い場合は、所定の閾値よりも低い場合よりもノズルN内のインクの振動エネルギーを低下させることができる。したがって、インクが増粘し易く拡散し易い温度でも、待機中のノズルN内で増粘したインクが圧力室SCまで拡散することを抑制できるので、第2メンテナンスでインクを大量に吐出しなくても、その後の印刷において吐出不良を抑制できる。
この場合、検出部28でノズル列ごとに温度を検出することで、ノズル列ごとに第1モードまたは第2モードによる微振動動作を行うことができる。例えば図12では、ノズル列L1~L3の温度が所定の閾値以上であるのに対して、ノズル列L4の温度は所定の閾値以上でなかった場合である。この場合には、ノズル列L1~L3は第2モードによる微振動動作を行い、ノズル列L4は第1モードによる微振動動作を行う。
このような吐出面260の払拭が終了すると、ステップS15にて制御装置202は、ノズル列L1~L4の順番に第2メンテナンスを行う。吐出面260を払拭したときにノズルN内に他のノズルNのインクが入り込んでしまう場合がある。本実施形態では、吐出面260を払拭した後にインクの吐出による第2メンテナンスを行うことで、吐出面260の払拭で入り込んだインクをノズルNから排出できる。
具体的にはステップS15にて制御装置202は、図13に示すように、ノズル列L1が第2メンテナンス領域H2に対向する位置まで液体吐出ヘッド26をX方向に移動し、液体受け部34を待機位置から上昇し、吐出面260から所定の距離だけ離間したセット位置まで移動する。そして、制御装置202は、フラッシング動作によってノズル列L1のノズルNからインクを吐出する(図13)。フラッシング動作では、圧電素子74にフラッシング用の駆動パルスWを印加することによって圧力室SC内の圧力を変動させて各ノズルNからインクを吐出する。吐出されたインクは、液体受け部34内の吸収体(図示省略)に吸収される。
次に、制御装置202は、ノズル列L2が第2メンテナンス領域H2に対向する位置まで液体吐出ヘッド26をX方向に移動し、フラッシング動作によってノズル列L2のノズルNからインクを吐出する(図14)。その後は、上記と同様にノズル列L3とノズル列L4の第2メンテナンスを順番に行うことで、ノズル列L1~L4の第2メンテナンスを終了し、一連のメンテナンス工程を終了する。
このように本実施形態によれば、第1メンテナンスを行った後であって第2メンテナンスを行う前に微振動動作を行うから、待機中のノズルN内のメニスカスがノズルNの内壁を動き易くなるので、第2メンテナンスでインクを吐出するときにメニスカスのうちノズルNの内壁に付着した部分が急激に動いてメニスカスが破壊されることを抑制できる。しかも、微振動動作においてノズルN内のインクの温度が所定の閾値以上の場合は、ノズルN内のインクの振動エネルギーを低下させることができる。したがって、インクが増粘し易く拡散し易い温度でも、待機中のノズルN内で増粘したインクが圧力室SCまで拡散することを抑制できるので、その後の印刷において吐出不良を抑制できる。
なお、本実施形態の微振動動作は、必ずしもノズル列L1~L4のすべての第1メンテナンスを行った後のタイミングで行うようにしなくてもよい。例えば第1メンテナンスが終了したノズル列に対して、次のノズル列の第1メンテナンスが開始される前に微振動動作を行うようにしてもよい。ここでの第1メンテナンスの終了とは、吸引ポンプPを停止した時点である。すなわち、各ノズル列において微振動動作を開始するタイミングは、第1メンテナンスが終了した後であり、吸引ポンプPを停止した後であれば、吸引ポンプPを停止した直後のタイミングやキャップ32の負圧を解除した直後のタイミングなど、どのようなタイミングで開始してもよい。
また、本実施形態では、図7の第2モードの微振動用の駆動パルスW2のように、第1モードの微振動用の駆動パルスW1よりも振動数を低下させることで、振動エネルギーを低くさせる場合を例示したが、これに限られない。例えば図15に示す第1実施形態の第1変形例の第2モードの微振動用の駆動パルスW2のように、第1モードの微振動用の駆動パルスW1よりも振動周波数を低下させるようにしてもよい。第1変形例の第2モードにおいて各微振動用の駆動パルスW2が発生する周期tは、第1モードにおいて各微振動用の駆動パルスW1が発生する周期t’よりも長くなるので、振動エネルギーを低くさせることができる。
また、図15に示す第1実施形態の第2変形例の第2モードの駆動パルスW2のように、第1モードの微振動用の駆動パルスW1よりも振幅を低下させるようにしてもよい。第1変形例の第2モードにおいて各微振動用の駆動パルスW2の振幅hは、第1モードにおいて各微振動用の駆動パルスW1の振幅h’よりも長くなるので、振動エネルギーを低くさせることができる。なお、図7および図15の例示に限られず、第2モードの微振動用の駆動パルスW2は、振動数の低下、振動周波数の低下、振幅の低下の何れか2以上の組み合わせで、第1モードの微振動用の駆動パルスW1よりも振動エネルギーが低くなる駆動パルスとしてもよい。
また、もしノズルN内のインクが乾燥して増粘していたとしても、図16に示す第1実施形態の第3変形例のように、第2メンテナンスのフラッシング動作で吐出するインクのドットサイズ(媒体12に着弾させるインクのドットの大きさ)を変えることによって、ノズルN内のメニスカスの破壊を抑制することもできる。図16の表の上段にはフラッシング用の駆動パルスW、図16の表の中段には圧力室SC側へのメニスカスの引き込み時の状態、図16の表の下段にはノズルNの開口部側へのメニスカスの押し出し時の状態を示す。
図16の表の上段において、フラッシング用の駆動パルスWがドットサイズ(大)の場合は、上述した図4の駆動パルスと同様の波形である。ドットサイズ(大)の駆動パルスWによれば、基準電位VMから高位側電位VHに遷移してその状態を一定時間維持することで、メニスカスは駆動パルスWの印加前の位置Mから圧力室SC側へいったん引き込まれる(図16の中段左側)。そして、高位側電位VHから低位側電位VLまで遷移してその状態を一定時間維持することで、メニスカスはノズルNの開口部側に一気に押し出され(図16の下段左側)、その後に基準電位VMに戻すことでインクが引きちぎれて、ノズルNの開口部から液滴となって吐出される。
他方、フラッシング用の駆動パルスWがドットサイズ(小)の場合は、高位側電位VHから低位側電位VLに遷移する途中で、波形成分(波形要素)W’を含んでいる。ドットサイズ(小)の駆動パルスWによれば、基準電位VMから高位側電位VHに遷移しその状態を一定時間維持することで、メニスカスは駆動パルスWの印加前の位置Mから圧力室SC側へいったん引き込まれる。このとき、ドットサイズ(小)の駆動パルスWでは、ドットサイズ(大)の駆動パルスWよりも時間をかけて徐々にメニスカスが圧力室SC側に引き込まれる。そして、高位側電位VHから低位側電位Vに遷移する途中には波形成分(波形要素)W’があるため、図16の中段に示す引き込み時の状態は、ドットサイズ(大)の場合はメニスカスがノズルNの内壁に沿って動いて変形するのに対して、ドットサイズ(小)の場合はメニスカスのノズルNの中央付近が変形するので、ノズルNの内壁近傍のメニスカスは動き難い。
そして、波形成分(波形要素)W’のあと急峻に低位側電圧VLに変位することにより、メニスカスの中央部がノズルNの開口部側に押し出される(図16の下段右側)。このため、図16の下段に示す押し出し時の状態においても、ドットサイズ(大)の場合はメニスカスがノズルNの内壁に沿って動いて変形するのに対して、ドットサイズ(小)の場合はメニスカスのノズルNの中央付近が変形するので、ノズルNの内壁近傍のメニスカスは動き難い。その後に基準電位VMに戻すことでインクが引きちぎれ、ノズルNの開口部から液滴となって吐出される。
このように、ドットサイズ(小)の場合は、ドットサイズ(大)の場合に比較して、メニスカスのうちノズルNの中央付近が変形し、ノズルNの内壁近傍は動き難い。したがって、第2メンテナンスで液体を吐出するときにメニスカスのうちノズルNの内壁に付着した部分が急激に動いてメニスカスが破壊されることを抑制できる。
なお、本実施形態の微振動動作において、振動エネルギーを低下させる第2モードの駆動パルスW2を1種類にして、第2モードに切り替えるための温度の閾値も1つとした場合を例示したが、第2モードの駆動パルスの種類と閾値を複数にすることで、複数の閾値を超えるごとに、検出部28の検出温度に応じて振動エネルギーを徐々に低下させる駆動パルスを圧電素子74に印加することも可能となる。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。図17は、第2実施形態のメンテナンス工程において、圧電素子74に印加する電位の変化を示す図である。第1実施形態では、図6に示すように、第1メンテナンスを行った後から第2メンテナンスを行う前までの待機中の期間T2での微振動動作の駆動パルスの基準電位を、第1メンテナンス期間T1のときの基準電位と同じ低位側電位VL(例えば0V)の場合を例示した。これに対して、第2実施形態では、第1メンテナンスを行った後から第2メンテナンスを行う前までの待機中の期間T2に、微振動用の駆動パルスの基準電位を低位側電位VLよりも高い電位に引き上げてメニスカスを圧力室SC側に動かしてから微振動動作を行う。すなわち、第1メンテナンス期間T1で圧電素子74に印加する電位を第1電位とし、期間T2の微振動動作で圧電素子74に印加する微振動用の駆動パルスの基準電位を第2電位とすれば、第2電位は第1電位より高い。
具体的には図17に示すように、第1メンテナンスを行った後の待機中の期間T2に、微振動用の駆動パルスの基準電位を、低位側電位VLよりも高い電位VMに引き上げる場合を例示する。電位VMは、第2メンテナンスでの駆動パルスの基準電位に等しい。第1メンテナンスを行った後(例えば第1メンテナンスの直後)においては、まだノズルN内のインクが乾燥していなくて、ノズルNの内壁をメニスカスが動き易いから、基準電位を引き上げてもメニスカスが破壊され難い。もし期間T2中に、ノズルN内のインクが乾燥して増粘したとしても、すでに第2メンテナンスでの基準電位VMに引き上げられて、ノズルN内のメニスカスを圧力室SC側に引き込まれているので、低位側電位VLから第2メンテナンスの駆動パルスに切り替わるよりは、ノズルN内のメニスカスの引き込みによる影響を抑制することができる。
このような第2実施形態によれば、もし基準電位VMに引き上げた後にインクの乾燥や増粘が進行したとしても、第2メンテナンスでノズルN内のインクを圧力室SC内に引き込んでから押し出して吐出するときの引き込み電位(高位側電位VH)と期間T1での基準電位VMとの電位差Vpを、図6での電位差Vp’に比較して小さくできる。したがって、第2メンテナンスでインクを吐出させるときのメニスカスの急激な引き込みを抑えることができるので、メンテナンス工程中におけるノズルN内のメニスカスの破壊を抑制できる。
さらに、図17では、第1メンテナンスを行った後から第2メンテナンスを行う前までの期間T2において、圧電素子74に低位側電位VL(第1電位)より高い電位(基準電位VM)が印加されている期間T2’’が、低位側電位VL(第1電位)が印加されている期間T2’よりも長い。これによれば、第2メンテナンスでインクを吐出させるときのメニスカスの急激な動きを抑えることができる。したがって、メンテナンス工程中におけるノズルN内のメニスカスの破壊を抑制できる。
さらに、図17では、第2メンテナンスを行った後、すなわち本実施形態のメンテナンス工程が終了してから印刷動作までの待機中の期間T4の基準電位を、印刷動作期間T5の印刷用の駆動パルスの基準電位VM’に引き上げておくようにしてもよい。これによれば、メンテナンス工程が終了してから印刷動作までの待機中において、もし基準電位VM’に引き上げた後にインクの乾燥や増粘が進行したとしても、その後の印刷動作でノズルN内のインクを圧力室SC内に引き込んでから押し出して吐出するときの引き込み電位(高位側電位VH)と基準電位VM’との電位差Vqを、図6での電位差Vq’に比較して小さくできる。したがって、印刷動作でインクを吐出させるときのメニスカスの急激な引き込みを抑えることができるので、印刷動作中におけるノズルN内のメニスカスの破壊を抑制できるから、吐出不良を抑制できる。
なお、第2実施形態における微振動用の駆動パルスの基準電位は、第2メンテナンスで圧電素子74に印加されるフラッシング用の駆動パルスの基準電位VMと同じ電位である場合を例示したが、これに限られない。例えば図18に示す第2実施形態の第1変形例のように、第1メンテナンスで圧電素子74に印加される駆動パルスの基準電位VLを第1電位とし、第2メンテナンスで圧電素子74に印加される駆動パルスの基準電位VM’を第3電位とすれば、第3電位は第1電位より高い。また、図18では、微振動用パルスの基準電位VMである第2電位は、第3電位よりは低いが第1電位よりも高い。これによれば、第2電位は第3電位よりは低いものの、第1メンテナンスを行った後のまだインクが乾燥しておらずノズルNの内壁を動き易いメニスカスの状態において、第1電位でのノズルN内のメニスカスの位置より第3電位でのノズルN内のメニスカスの位置に期間T2中に近づけることができ、続く期間T3での第2メンテナンスの駆動パルスで電位を引き上げてもメニスカスが破壊され難い。また、期間T2中にさらに基準電位をより高くすることもできる。図18に示す例では、期間T2中に基準電位VMから基準電位VM‘に引き上げている。なお、図18に示す例では、基準電位VM’に引き上げた後は基準電位を維持しているが、基準電位VM’の微振動用の駆動パルスを印加することもできる。また、第2メンテナンスでのフラッシング用の駆動パルスWにおいて、引き込み電位と基準電位(第3電位)との電位差Vp’’を、図17の電位差Vpよりもさらに小さくできる。したがって、第2メンテナンスでインクを吐出させるときのメニスカスの急激な引き込みを抑えることができるので、メンテナンス工程中におけるノズルN内のメニスカスの破壊の抑制効果を高めることができる。
さらに、図18では、第2メンテナンスを行った後、すなわち本実施形態のメンテナンス工程が終了してから印刷動作までの待機中の期間T4においても、メンテナンス工程中の期間T2での微振動動作と同様に、ノズルN内のインクの温度に応じて振動エネルギーを低下させる微振動動作を行うようにしてもよい。これによれば、メンテナンス工程の期間T3が終了してから印刷動作期間T5までの待機中の期間T4において、インクが増粘し易く拡散し易い温度でも、待機中の期間T4においてノズルN内で増粘したインクが圧力室SCまで拡散することを抑制できるので、その後の印刷動作において吐出不良を抑制できる。
また、第1実施形態および第2実施形態では、待機中の期間T2に微振動動作を行う場合を例示したが、これに限られず、例えば図19に示す第2実施形態の第2変形例のように、待機中には微振動動作を行わずに基準電位を引き上げるようにしてもよい。図19では、図17の場合と同様に、第2メンテナンス前の待機中の期間T2には、基準電位をVLからVMに引き上げる。この構成によっても、第2メンテナンスでインクを吐出させるときのメニスカスの急激な引き込みを抑えることができるので、メンテナンス工程中におけるノズルN内のメニスカスの破壊を抑制できる。さらに、図19においても、図17の場合と同様に、メンテナンス工程が終了してから印刷動作までの待機中の期間T4の基準電位を、印刷用の駆動パルスの基準電位VM’に引き上げる。これにより、印刷動作でインクを吐出させるときのメニスカスの急激な引き込みを抑えることができるので、印刷動作中におけるノズルN内のメニスカスの破壊を抑制できるから、吐出不良を抑制できる。
以上の実施形態の液体吐出装置10は、1つのノズル列を有する液体吐出部70を備えるため、第1メンテナンスと第2メンテナンスを液体吐出部70のノズル列ごとに順番に行う場合を例示したが、これに限られない。液体吐出部70が複数のノズル列を備える場合には、第1メンテナンスと第2メンテナンスを、液体吐出部70ごと(1つの液体吐出部70のすべてのノズル列ごと)に行うようにしてもよく、またノズル列ごと(1つの液体吐出部70が備える複数のノズル列のうちの1つのノズル列ごと)に行うようにしてもよい。また、図20に示す第2実施形態の第3変形例のように、4つの液体吐出部70を、2つずつ含む2つのグループに分けて第1及び第2メンテナンスを実施することもできる。図20のキャップ32と液体受け部34はそれぞれ、2つの液体吐出部70のノズル列を含む大きさである。この構成によれば、キャップ32を用いる第1メンテナンスと、液体受け部34を用いる第2メンテナンスをグループごとに行うことができる。
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態について説明する。前述の実施形態では、ノズル列L1~L4の順番に第1メンテナンスを行ったあと、ノズル列L1~L4の順番に第2メンテナンスを行った。第3実施形態では、ノズル列L1~L4の順番に第1メンテナンスを実施する間、第1メンテナンスが終了したノズル列に対して、第2メンテナンスを必要とする状態であるか否かを所定期間ごとに検出し、第2メンテナンスが必要となったノズル列がある場合は、次のノズル列の第1メンテナンスを実施する前に、第2メンテナンスが必要となったノズル列の第2メンテナンスを実施することができる。
本実施形態は、第1メンテナンスを1度に同時に実施できる液体吐出部70の単位を1つのグループとして説明する。例えば、図2に示されるように、液体吐出ヘッド26が1列のノズル列を有する液体吐出部70を4つ備える場合に、液体吐出部70を1ずつ第1~第4グループとして分けることができる。この場合、第1~第4グループの順に第1メンテナンスを開始し、第1メンテナンスが終了したグループのノズル列に対して第2メンテナンスを必要とする状態であるか否かを所定期間ごとに検出する。第2メンテナンスを必要とする状態であるかについては、例えば圧電素子74にかかる逆起電力を検出する検出部を備え、その検出結果に応じてノズルN内のインクの粘度を検出する。そして、制御装置202は、検出されたインクの粘度が所定の閾値を超えていると判断した場合に、第2メンテナンスを必要とする状態であることを検出する。
例えば、第1グループのノズル列L1の第1メンテナンスが終了し、続いて第2グループのノズル列L2の第1メンテナンスを行っている途中で、既に第1メンテナンスが終了した第1グループのノズル列L1が第2メンテナンスを必要とする状態であることを検出した場合には、次の第3グループのノズル列L3の第1メンテナンスを行う前に、第2メンテナンスを必要とする状態であると検出した第1グループの第2メンテナンスを行う。なお、グループ数、及び1グループに含まれる液体吐出部70(ノズル列)の数は上記の数に限定されない。例えば、液体吐出ヘッド26が2列のノズル列を有する液体吐出部70を16個備える場合に、液体吐出部70を4つずつ第1~第4グループに分けることができる。このように、本実施形態によれば、複数の液体吐出部70を複数のグループごとに第1メンテナンスを順次実施し、次のグループの液体吐出部70の第1メンテナンスを行う前に、既に第1メンテナンスが終了したグループで第2メンテナンスを必要とする状態のノズル列(液体吐出部70)があれば、そのノズル列(液体吐出部70)のグループの第2メンテナンスを先に行うことができる。したがって、第2メンテナンスを必要とする状態の液体吐出部70が他の全ての液体吐出部70の第1メンテナンスが終わるまで待機する場合に比較して、第2メンテナンスまでの待機時間を短くできるので、待機中にインクの乾燥や増粘などが進行してしまうことを抑制できる。なお、全てのグループの第1メンテナンスが終了した後、改めて全てのグループの第2メンテナンスを順次実施することもできる。
以上詳述した実施形態によれば、液体吐出ヘッド26が備える液体吐出部70の数が増えてメンテナンス工程での待機時間期間T2が長くなったとしても、待機中のノズル内の液体の増粘による吐出不良を抑制できる。また、多数の液体吐出部70を備える液体吐出ヘッド26において、第1メンテナンスおよび第2メンテナンスを一度に実施する液体吐出部70の数を少なくし全液体吐出部70の第1メンテナンスを終了するまでの期間が長くなっても、先に第1メンテナンスが終了した液体吐出部70の待機中のノズル内の液体の増粘による吐出不良を抑制できる。したがって、液体吐出ヘッド26が備える液体吐出部70の数を増やしても、それに応じてキャップ32や液体受け部34のサイズを大きくしなくて済むので、メンテナンスユニット30の大型化を避けつつ、印刷動作による吐出不良を抑制できる。
<変形例>
以上に例示した態様および実施形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示や上述の態様から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
(1)上述した実施形態では、液体吐出ヘッド26を搭載したキャリッジ24をX方向に沿って反復的に往復させるシリアルヘッドを例示したが、液体吐出ヘッド26を媒体12の全幅にわたり配列したラインヘッドにも本発明を適用可能である。
(2)上述した実施形態では、圧力室に機械的な振動を付与する圧電素子を利用した圧電方式の液体吐出ヘッド26を例示したが、加熱により圧力室の内部に気泡を発生させる発熱素子を利用した熱方式の液体吐出ヘッドを採用することも可能である。
(3)上述した実施形態で例示した液体吐出装置10は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体吐出装置10の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等を形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、液体の一種として生体有機物の溶液を吐出するチップ製造装置としても利用される。