JP7029246B2 - 飲料及び飲料のフロック発生を抑制する方法 - Google Patents

飲料及び飲料のフロック発生を抑制する方法 Download PDF

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Description

本発明は、焙煎発芽大麦を含む穀物の抽出物を含有する容器詰穀物茶飲料、及び飲料のフロック発生を抑制する方法に関する。
従来より、麦茶をはじめとする穀物茶飲料は、麦特有の甘味やその香ばしさから広く愛飲されており、複数種の穀物や茶葉を組み合わせて配合することで、嗜好性が高められている(例えば、特許文献1~3参照)。
特開2008-237066号公報 特開2012-170374号公報 特開2015-8704号公報
しかしながら、穀物茶飲料においては、焙煎発芽大麦を配合すると嗜好性が上がる一方で、長期間の保管や加温時に、浮遊物状又は白濁状の懸濁又は沈殿物であるフロック(オリ)が発生する場合があった。
これまで、フロックの発生要因はスターチであると考えられてきた。しかし、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、必ずしもスターチ量を調節するだけではフロックの発生を抑制できるとは限られないことがわかった。
本発明は、焙煎発芽大麦の抽出物を含み、かつフロックの発生を抑制可能な飲料を提供することを目的とする。また、本発明は、飲料のフロック発生を抑制する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、焙煎発芽大麦の抽出物を含む飲料であっても、糖類の1種であるラフィノースの含有量や色度の指標となるEBCや濁度(A720)を所定の範囲内に調節することにより、フロックの発生を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
(1)本発明は、焙煎発芽大麦を含む穀物の抽出物を含有する容器詰穀物茶飲料であって、ラフィノースの含有量が1.5~9.5ppmであり、EBCが10以上、濁度(A720)が0.04以下である飲料である。
(2)本発明は、濁度(A720)が0.035以下である(1)記載の飲料である。
(3)本発明は、含有量が、フルクトース2~15ppm、グルコース4~30ppm、スクロース3~17ppm、又はマルトース5~40ppmである(1)又は(2)記載の飲料である。
(4)本発明は、フルクトース、グルコース、スクロース、マルトース、ラフィノース及びスタキオースの6種の糖類の合計含有量が、20~110ppmである(1)から(3)いずれか記載の飲料である。
(5)本発明は、スターチが、100mg/100mL以上の量で含まれる(1)から(4)いずれか記載の飲料である。
(6)本発明は、前記穀物は、さらにハトムギ又は大麦を含む(1)から(5)いずれか記載の飲料である。
(7)本発明は、発芽処理された焙煎穀物の抽出物を含有する飲料におけるラフィノース含有量及び濁度(A720)を調節することで、前記飲料のフロック発生を抑制する方法である。
本発明によれば、焙煎発芽大麦の抽出物を含み、かつフロックの発生を抑制可能な飲料を提供することができる。また、本発明によれば、飲料のフロック発生を抑制する方法を提供することができる。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、本明細書にて、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
<飲料>
本実施形態に係る飲料は、焙煎発芽大麦を含む穀物の抽出物を含有する容器詰穀物茶飲料であって、ラフィノースの含有量が1.5~9.5ppmであり、EBCが10以上 、濁度(A720)が0.04以下である。本実施形態に係る飲料は、焙煎発芽大麦がもつ特有の甘みや香ばしさが付与され嗜好性が向上しながらも、ラフィノースの含有量、EBC、及び濁度(A720)が所定の範囲に調節されていることによりフロックの発生が抑制される。
以下、EBC、濁度(A720)、及び穀物の抽出物に含まれる成分について具体的に説明する。
[EBC]
EBCは、煮出し色度と称されるものであり、値が高いほど色が濃いことを示す。EBCは、EBC(European Brewery Convention)のAnalytica-EBC標準法、又はこれに準じた方法により測定する。本明細書において、EBCは、波長430nmの条件で測定した値である。具体的には、試料を10mm(光路長)のセルに入れ、430nmの単色光で吸光度を測定し、下式(1)に示す算出式により算出する。波長430nmにおける吸光度が0.8以上の場合には、試料を蒸留水で希釈してから測定する。
EBC=25×f×A430 ・・・(1)
(式(1)中、「25」は、EBCを換算するためのファクター、「f」は希釈率、「A430」は、波長430nmにおける吸光度である。)
本実施形態に係る飲料のEBCは、嗜好性に優れる点から、10以上、好ましくは12以上である。EBCが過小であると、味の濃さ等の嗜好性が低下する傾向がある。EBCの上限値は、特に限定されないが、好ましくは28以下、より好ましくは25以下、特に好ましくは20以下である。EBCが過大であると、味が濃すぎたり、白色のフロックが目立ちやすくなったりする。
[濁度(A720)]
濁度(A720)は、10mm(光路長)のセル中、波長720nmにおける吸光度であり、数値が小さいほど透明性が高いことを示す。本明細書において、濁度A720は、例えば、分光光度計U-5100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて波長720nm条件で測定した値である。
本実施形態に係る飲料の濁度(A720)は、フロックの発生を抑制する点から、0.04以下であり、好ましくは0.035以下、より好ましくは0.030以下である。濁度A720が過大であると、フロックが発生しやすくなる。濁度(A720)の下限値は、特に限定されないが、0であってもよい。
ここで、濁度A720は、フロックの発生を抑制する上で重要な指標となることが明らかになった。ヘイズとフロック発生との間には相関関係があると従来考えられていたが、後述する実施例からも明らかなように、ヘイズからはフロックの発生しやすさを正確に予測することが難しい場合がある。濁度A720を指標とすることにより、フロックの発生しやすさを予測することができ、濁度A720を所定の範囲内に調節することにより、フロックの発生を抑制できることが明らかになった。
[穀物の抽出物に含まれる成分について]
本実施形態に係る飲料は、以下に説明するように、糖類の1種であるラフィノースを所定の範囲内で含有する。また、本実施形態に係る飲料は、ラフィノース以外に糖類の1種である、フルクトース、グルコース、スクロース、又はマルトースを所定の範囲内で含有することが好ましい。さらに、本実施形態に係る飲料は、スターチを所定の範囲内で含有することが好ましい。
[ラフィノース]
ラフィノースの含有量は、後述する他の糖類と同様に、味の濃さ、香りの強さ、甘味の強さ、香ばしさ等の飲料の嗜好性と相関関係があるが、他の糖類とは異なり、フロックの発生と強い相関関係があることが明らかになった。ラフィノースの含有量は、フロック発生を抑制し、及び/又は嗜好性に優れる点から、1.5~9.5ppmであり、好ましくは2.0~8.0ppmであり、より好ましくは2.5~7.5ppmである。ラフィノースの含有量が過小であると、嗜好性が低下する傾向がある。ラフィノースの含有量が過大であると、フロックが発生しやすくなると共に、嗜好性が低下する傾向がある。
[フルクトース]
フルクトースの含有量は、フロック発生を抑制し、及び/又は嗜好性に優れる点から、好ましくは1~25ppm、より好ましくは2~20ppmであり、特に好ましくは4~15ppmである。フルクトースの含有量が過小であると、嗜好性が低下する傾向がある。フルクトースの含有量が過大であると、フロックが発生しやすくなると共に、嗜好性が低下する傾向がある。
[グルコース]
グルコースの含有量は、フロック発生を抑制し、及び/又は嗜好性に優れる点から、好ましくは2~40ppm、より好ましくは4~35ppmであり、特に好ましくは6~30ppmである。グルコースの含有量が過小であると、嗜好性が低下する傾向がある。グルコースの含有量が過大であると、フロックが発生しやすくなると共に、嗜好性が低下する傾向がある。
[スクロース]
スクロースの含有量は、フロック発生を抑制し、及び/又は嗜好性に優れる点から、好ましくは2~25ppm、より好ましくは3~20ppmであり、特に好ましくは4~17ppmである。スクロースの含有量が過小であると、嗜好性が低下する傾向がある。グルコースの含有量が過大であると、フロックが発生しやすくなると共に、嗜好性が低下する傾向がある。
[マルトース]
マルトースの含有量は、フロック発生を抑制し、及び/又は嗜好性に優れる点から、好ましくは2~60ppm、より好ましくは5~50ppmであり、特に好ましくは10~40ppmである。マルトースの含有量が過小であると、嗜好性が低下する傾向がある。マルトースの含有量が過大であると、フロックが発生しやすくなると共に、嗜好性が低下する傾向がある。
[スタキオース]
スタキオースの含有量は、フロック発生を抑制し、及び/又は嗜好性に優れる点から、好ましくは0.8~10ppm、より好ましくは1~5ppmであり、特に好ましくは1.5~4ppmである。スタキオースの含有量が過小であると、嗜好性が低下する傾向がある。スタキオースの含有量が過大であると、フロックが発生しやすくなると共に、嗜好性が低下する傾向がある。
これらラフィノース、フルクトース、グルコース、スクロース、マルトース、及びスタキオースの6種の糖類の合計含有量は、好ましくは10~180ppm、より好ましくは15~140ppm、特に好ましくは20~110ppmである。これら6種の糖類の合計含有量が上記範囲であることにより、フロックを抑制しながら、適度な味の濃さ、香りの強さ、甘味の強さ、香ばしさ等を付与して嗜好性に優れた飲料とすることができる。
なお、これらの糖類の含有量は、液体クロマトグラフ質量分析計により測定する。
(スターチ)
本明細書中、「スターチ」とは、上述した6種の糖に加えて、これら以外の糖であるオリゴ糖や、アミロースとアミロペクチンとの混合物であるデンプンや、デンプンの加水分解物であるデキストリン等の糖を含む。本明細書中において、スターチの含有量は、F-キットスターチ(製品番号;207748;ロッシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いた酵素法定量によって、後述する方法で測定する。
スターチの含有量は、特に制限されないが、甘味やボディー感(飲みごたえ)を付与する点から、その下限は、好ましくは90mg/100ml以上、より好ましくは100mg/100ml以上である。一方、スターチの含有量の上限は、特に制限されないが、例えば、180mg/100ml以下、160mg/100ml以下である。従来より、フロック発生を抑制するためにスターチの含有量を下げることが検討されていたが、本実施形態においては、ラフィノースの含有量、EBC、濁度(A720)が所定の範囲内に調節されていることから、飲料に甘味やボディー感を付与するスターチを比較的多めに付与することができ、嗜好性の点でメリットが大きい。
なお、上述した6種の糖類やスターチは、穀物の焙煎により生成されるものであってもよいし、従来公知の方法で精製されたものであってもよい。また、上述した6種の糖類やスターチの含有量の調整は、上記含有量を満たすように、発芽大麦に加えて複数種の穀物から少なくとも1種以上を選定して用いてもよいし、それらの抽出液の混合割合を変更して適宜調整してもよい。また、上記含有量を満たすために従来公知の方法で精製された成分単体や副原料を追加してもよい。例えば、ラフィノースの含有量を多くしたい場合には、焙煎発芽大麦の使用量を多くしたり、ラフィノースの含有量が多い穀物の使用量を多くしたり、穀物の焙煎条件をL値が高くなるように調製したりすればよい。ラフィノースの含有量を少なくしたい場合には、焙煎発芽大麦の使用量を少なくしたり、ラフィノースの含有量が少ない穀物の使用量を少なくしたり、糖類の吸着能を有する吸着剤で処理したりすればよい。また、スターチの含有量を多くしたい場合には、スターチの含有量が多い穀物の使用量を多くしたり、穀物の焙煎条件をL値が高くなるように調整したり、焙煎麦の抽出時間を長くしたりすればよい。
[可溶性固形分]
可溶性固形分は、飲料中の可溶性固形分全体の濃度を糖用屈折計で測定した値であり、「Brix」を指す。本明細書において、可溶性固形分は、例えばデジタル示差濃度計DD-7(株式会社アタゴ製)を使用して30℃で測定したときの値をいう。
本実施形態に係る飲料の可溶性固形分は、特に制限されないが、甘味やボディー感(飲みごたえ)を付与する点から、可溶性固形分の下限は、好ましくは0.30質量%以上、より好ましくは0.30質量%以上である。一方、可溶性固形分の上限は、フロックの発生を抑制する点から、好ましくは0.45質量%以下である。
可溶性固形分は、穀物の焙煎条件や、穀物の抽出条件を変更して適宜調整してもよく、可溶性固形分を添加して調整してもよい。例えば、可溶性固形分を多くしたい場合には、焙煎麦の抽出時間を長くしたり、抽出時に適量の炭酸塩(炭酸水素ナトリウム等)を添加したりすればよい。例えば、炭酸水素ナトリウムを添加する場合には、抽出溶媒1Lに対して0.25g以上6g以下の範囲から可溶性固形分が所望の値となる適量を選択すればよい。炭酸塩(炭酸水素ナトリウム等)の添加によって抽出溶媒のpHを調整することで、可溶性固形分を多く取りやすくなる。
<飲料の製造方法>
本実施形態に係る飲料の製造方法は、一般的な方法を採用可能であり、必要に応じて、穀物を焙煎する焙煎工程、焙煎穀物を抽出して抽出液を得る抽出工程、抽出液に水や各種添加物を調合する調合工程、調合された飲料を加熱殺菌する加熱殺菌工程、調合された飲料を容器に充填する容器充填工程等を含む。
[焙煎工程]
一般的な焙煎方法を採用可能であり、所望の糖類及びスターチの含有量、EBC、濁度(A720)等を得るために適正な焙煎方法(焙煎時間、焙煎温度等)が選択されればよい。一般的な方法としては、熱風焙煎、直火焙煎、砂炒焙煎、遠赤外焙煎等が挙げられる。焙煎穀物は、ホールのまま抽出工程に移行してもよく、粉砕して抽出工程に移行してもよい。
例えば、焙煎発芽大麦のL値は、好ましくは20~40、より好ましくは24~34、さらに好ましくは27~31である。L値が上記範囲内であることで、飲料に好ましい味の濃さ、香ばしさを付与できる焙煎強度を選択しやすくなる。本明細書において、L値は、色差計ZE-2000(日本電色工業株式会社製)を用いて測定する。
なお、本実施形態に係る飲料(抽出物)の原料としては、焙煎発芽大麦以外の穀物も用いてもよく、発芽大麦以外の穀物としては、例えば、大麦、ハトムギ、小麦等の麦類、玄米、発芽玄米等の米類、黒豆等の豆類、あわ、キビ等を用いることができる。これらは単独でも用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。嗜好性の高い飲料を得る観点から、これら穀物の中でも、麦類が好ましく、嗜好性の点から、特に大麦やハトムギが好ましく用いられる。また、大麦やハトムギは、炭水化物栄養価が高く、米や他の麦に比べタンパク質を多く含むため、体内の新陳代謝を活発化させることが知られており、好ましく用いられる。また、ハトムギは、抗潰瘍性成分としてのコイクセノライドと、ひきつけを抑制する成分としてのコイクソールとを含有する。ハトムギの効用としては、抗酸化作用、美肌作用、イボとり作用等が知られており、好ましく用いられる。
穀物は、それぞれ所望の時期に収穫後、乾燥、脱穀、焙煎、粉砕等の適切な処理が施される。焙煎することにより、穀物に含まれる糖とタンパク質とのメイラード反応が生じやすくなり、香ばしさや褐色が増強される。
また、飲料(抽出物)の原料としては、上述した穀物以外に、カメリア・シネンシス種の茎葉や、カメリア・シネンシス種以外の植物の茎葉を用いてもよい。
カメリア・シネンシス種の茎葉は、発酵条件の違いによって、発酵茶(紅茶)、半発酵茶(ウーロン茶等)、不発酵茶(緑茶等)、後発酵茶(プアール茶等)、香味品質の異なる茶葉となることが知られている。
カメリア・シネンシス種以外の植物としては、例えば、明日葉、グァバ、柿、笹、クコ、よもぎ、アマチャヅル、桑、杜仲葉、シソ、びわ、大麦若葉、仙草、ドクダミ、オオバコ、スイカズラ、ツキミソウ、カキドオシ、カワラケツメイ、ギムネマ・シルベスタ、黄杞茶(クルミ科)、甜茶(バラ科)、ギムネマ、ルイボス、ラフマ、タンポポ、ペパーミント、モロヘイヤ、イチョウ、松葉、蓮、及びオリーブ等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
抽出物の原料は、上述したように、6種の糖類やスターチの含有量が上述した範囲を満たすように、発芽大麦に加えて複数種の穀物から少なくとも1種以上を選定して用いるとよい。甘味や香ばしさ等の嗜好性の向上を図りながら、フロック発生を抑制する点から、焙煎発芽大麦の使用量は、好ましくは飲料1Lに対して0.5~5.5、より好ましくは1.0~4.5g、より好ましくは1.5~3.5gである。
[抽出工程]
一般的な抽出方法を採用可能であり、所望の糖類の含有量、EBC、及び濁度(A720)を得るために適正な抽出方法(抽出倍率、抽出温度、抽出時間等)が選択されればよい。一般的な方法としては、水蒸気蒸留、液化炭酸ガス抽出、アルコール抽出、熱水抽出等の従来公知の抽出方法を用いることができる。また、抽出に用いる抽出溶媒の種類は、特に限定されるものではないが、脱イオン交換処理精製したもの又は蒸留水を用いることが好ましい。これらは、安価、手軽であり、かつ安全に調製し抽出設備に供することができる。なお、水以外の抽出溶媒としては、エタノールやその他の親水性有機溶媒が挙げられる。また、抽出溶媒に対して、抽出効率化の目的で、食品添加物のいわゆる炭酸塩(炭酸水素ナトリウム(重曹)等)、リン酸塩、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸等を適宜添加してもよい。
抽出倍率(原料に対する抽出溶媒の倍率)は、特に限定されない。抽出に用いる水に対して原料(穀物)の使用量が少なくなるほど、得られる抽出液は、味の濃さ、香りの強さ、甘味の強さが小さくなる。原料(穀物)の使用量が多くなるほど、得られる抽出液は、味の濃さ、香りの強さ、甘味の強さが大きくなる。このため、抽出倍率は、焙煎された原料(穀物)からこれを引き出すために、最適な量に調整されることが一般的である。
抽出温度は、特に限定されないが、例えば、80℃以上100℃以下であることが好ましい。上記温度範囲で抽出を行えば、抽出効率が高い。抽出時間も特に限定されないが、5分以上1時間以下の範囲内で行うことが好ましい。上記抽出時間で抽出液を得れば、熱による風味変化や香気成分の散逸を抑えつつ、甘味、香ばしさの各成分を抽出しやすい傾向にある。これにより、嗜好性に優れた茶飲料を得やすくなる。
[調合工程]
得られた抽出液は、そのまま本発明の飲料として提供することができるが、得られた抽出液に対して、pHや可溶性固形分の調整及び/又は希釈等を適宜行ってもよい。また、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、品質安定剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
[殺菌工程・容器詰め工程]
得られた抽出液は、適宜加熱殺菌等を行ってもよく、容器に充填して保存する。容器としては、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるペットボトル)、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、金属缶、瓶等が挙げられる。金属缶や瓶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合は、レトルト殺菌(110~140℃、1~数十分間)により製造されるが、ペットボトルや紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめレトルト殺菌と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換機等で高温短時間殺菌(UHT殺菌:110~150℃、1~数十秒間)し、一定の温度まで冷却後、容器に充填する等の方法が選択できる。
<飲料のフロック発生を抑制する方法>
本実施形態に係る飲料のフロック発生抑制方法は、発芽処理された焙煎穀物の抽出物を含有する飲料におけるラフィノース含有量及び濁度(A720)を調節することで、飲料のフロック発生を抑制する方法である。ここで、穀物としては、上述したように、大麦、ハトムギ、小麦等の麦類、玄米、発芽玄米等の米類、黒豆等の豆類、あわ、キビ等が好ましく挙げられる。
本実施形態に係る飲料のフロック発生抑制方法によれば、上述したように、ラフィノースの含有量及び濁度を調節することでフロックの発生を抑制することができ、視覚的な優位性を確保できる。
本実施形態に係る方法を単独で行っても十分なフロック発生抑制効果が得られるが、必要に応じてフロックの発生を抑制する公知の技術を併用してもよい。公知の技術としては、酵素処理により高分子多糖類を分解する製造方法、限外ろ過やケイ藻土等の精密ろ過を行う製造方法、沈殿物の発生を促した後にこれを除去する方法等が挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[抽出液1~8の調製]
カラム型抽出器を用いて、表1に示される量の焙煎穀物類と焙煎発芽大麦(L値:29.74)とに水温90度以上の水を加えて粗液を得て、さらにアスコルビン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウム(重曹)とを加えて、抽出液1~8を得た。表1中の数字の単位は、[g/L]である。なお、抽出液1、8は、焙煎発芽大麦の抽出液を含まない。
Figure 0007029246000001
[比較例1及び参照例]
表1に示される抽出液1を比較例1の飲料とし、抽出液8を参照例の飲料とした。比較例1及び参照例の飲料中の各糖類及びスターチの含有量、Brix、濁度(A720)、EBC、ヘイズは、表2に示される通りである。
[実施例1~5及び比較例2]
表1に示される抽出液2~7を適宜調合し、実施例1~5及び比較例2の飲料とした。実施例1~5及び比較例2の飲料中の、各糖類及びスターチの含有量、Brix、濁度(A720)、EBC、ヘイズは、表2に示される通りである。なお、スターチの含有量は、以下に示すように、Fキットスターチを用いた酵素法定量によって測定した。また、ヘイズは、ヘイズメーターNDH2000(日本電色株式会社製)を用い、セル(10mm×40mm)に試料を入れ20℃で測定したとき値である。
(スターチの含有量の測定方法)
(A)試料を2~10倍に希釈した後、試料溶液0.10mlに対し、溶液Iを0.20ml混和し、55~60℃(温浴中)で15分間インキュベーションした。その後、試料を温浴から取り出し、室温に戻してから、蒸留水を1.00ml、溶液IIを1.00ml秤取、混和し、約3分後に波長340nmにおける吸光度E1を測定した。さらに、溶液IIIを0.02ml混和し、約15分後に波長340nmにおける吸光度E2を測定した。そして、吸光度ΔE(=吸光度E2-吸光度E1)を算出した。
(B)試料を2~10倍に希釈した後、試料溶液0.10mlを55~60℃(温浴中)で15分間インキュベーションした。その後、温浴から取り出し、室温に戻してから、蒸留水を1.20ml、溶液IIを1.00ml秤取、混和し、約3分後に波長340nmにおける吸光度E1を測定した。さらに、溶液IIIを0.02ml混和し、約15分後に波長340nmにおける吸光度E2を測定した。そして、吸光度ΔE(=吸光度E2-吸光度E1)を算出した。
上記(A)(B)において使用した溶液は、下記の通りである。
溶液I:「F-キット スターチ」のビン1(約100mg凍結乾燥品:クエン酸バッファー、pH約4.6;酵素アミログルコシダーゼ(AGS)約84Uを蒸留水6mlで溶解した溶液。
溶液II:「F-キット スターチ」のビン2(約5g粉末;トリエタノールアミンバッファー、pH約7.6;ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)約75mg:アデノシン三リン酸(ATP)約190mg;MgSO)を蒸留水27mlで溶解した溶液。
溶液III:「F-キット スターチ」のビン3(0.7ml懸濁液:ヘキソキナーゼ(HK)約200U;グルコース‐6‐リン酸デヒドロゲナーゼ(G6P-DH)約100U)。
そして、ΔE=ΔE-ΔEを算出し、次式によりスターチの含有量を算出した。
スターチの含有量(mg/100ml)=0.597×ΔE×100×希釈倍率
Figure 0007029246000002
[評価]
表3に、各飲料の製造直後における官能性評価と、加温2週間後のフロック発生の評価を合わせて示す。なお、各評価は、専門的な訓練を受けたパネル10名により、以下の評価基準に従って1~7点の7段階評価を実施し、各パネルによる評価点の平均点とした。
(官能性評価)
7点:とても良い
6点:良い
5点:やや良い
4点:どちらともいえない
3点:やや悪い
2点:悪い
1点:とても悪い
(フロック発生の評価)
7点:全く認められない
6点:僅かに認められる
5点:少し認められる
4点:比較的認められる
3点:とても認められる
2点:かなり認められる
1点:非常に認められる
Figure 0007029246000003
[結果]
表2及び表3に示されるように、比較例1の飲料は、焙煎発芽大麦の抽出液を含有していないため、フロックの発生が認められないものの、味の濃さ、香り、甘味、香ばしさが不足し、嗜好性(総合的なおいしさ)に不足感があった。なお、参照例の飲料は、焙煎発芽大麦を配合せず、穀物の配合量を多くしてスターチの含有量を増大させているが、フロックの発生が認められなかった。このことから、これまで、焙煎発芽大麦の抽出液を含有させると、スターチの含有量が多くなりフロックが発生すると考えられていたが、スターチの含有量がフロックの発生の直接の要因ではないことが確認できた。
これに対し、ラフィノースの含有量が1.5~9.5ppmであり、EBCが10以上、濁度(A720)が0.04以下である実施例1~5の飲料は、焙煎発芽大麦を含む穀物の抽出物を含有することにより、味の濃さ、香り、甘味、香ばしさが増大し、嗜好性(総合的なおいしさ)が増大しながらも、フロックの発生が抑制されていることがわかる。特に、フルクトースの含有量が2~15ppm、グルコースの含有量が4~30ppm、スクロースの含有量が3~17ppm、及びマルトースの含有量が5~40ppmである実施例1~3の飲料は、フロックの発生がより確実に抑制されていることがわかる。一方、ラフィノースの含有量が過大であり、濁度(A720)が過大である比較例2の飲料は、フロックの発生が目立った。

Claims (5)

  1. 焙煎発芽大麦を含む穀物の抽出物を含有する容器詰穀物茶飲料であって、
    可溶性固形分が0.45質量%以下であり、
    フルクトース、グルコース、スクロース、マルトース、ラフィノース及びスタキオースの6種の糖類の合計含有量が、20~110ppmであり、
    スターチの含有量が、100~160mg/100mLであり、
    ラフィノースの含有量が1.5~9.5ppmであり、
    EBCが10以上、濁度(A720)が0.04以下であり、
    前記飲料を加温したときのフロックの発生を抑制した飲料。
  2. 濁度(A720)が0.035以下である請求項1記載の飲料。
  3. 含有量が、
    フルクトース2~15ppm、
    グルコース4~30ppm、
    スクロース3~17ppm、又は
    マルトース5~40ppmである請求項1又は2記載の飲料。
  4. 前記穀物は、さらにハトムギ又は大麦を含む請求項1からいずれか記載の飲料。
  5. 発芽処理された焙煎穀物の抽出物を含有する飲料における可溶性固形分を0.45質量%以下に、フルクトース、グルコース、スクロース、マルトース、ラフィノース及びスタキオースの6種の糖類の合計含有量を20~110ppmに、スターチの含有量を100~160mg/100mLに、ラフィノース含有量を1.5~9.5ppmに、及び濁度(A720)を0.04以下に調節することで、前記飲料のフロック発生を抑制する方法。
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