以下、電子部品として例えば自動車用の気体センサのコネクタに適用した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、電子部品としての気体センサ1(例えばNOxセンサ)の構造について簡単に述べておく。図11(b)、(c)に示すように、気体センサ1は、電子部品本体であるセンサ本体部2と、センサ本体部2から導出された複数本例えば6本のリード線3と、それらリード線3に接続される外部接続用のコネクタ11とを備えて構成される。詳しい図示及び説明は省略するが、前記センサ本体部2は、ケース内にセンサ素子などを備えて構成されている。前記リード線3の先端(上端)には、接続用端子4が設けられ、後述するコネクタ端子と例えば溶接により接続される。
ここで、前記コネクタ11について、図1から図5を参照して述べる。図1~図3に示すように、このコネクタ11は、インシュレータ12と、このインシュレータ12に組付けられる複数本この場合6本のコネクタ端子13とを有して構成される。以下、コネクタ11(インシュレータ12)の前後左右といった方向を述べる場合には、図1、図3等を縦断正面図、図2(a)、図5(a)等を平面図として説明する。
前記インシュレータ12は、例えば合成樹脂から構成され、全体として、上面が開口した円筒容器状に構成されている。従って、このインシュレータ12には、上面で開口し底壁部を残す深さで下方に延びる中空部が形成されている。この中空部は、図10にも示すように、上から見て、横(左右)方向に長い、第1の横溝14、第2の横溝15、第3の横溝16を奥側から順に有していると共に、縦(前後)方向に長い、左縦溝17、中央縦溝18、右縦溝19を左から順に有して構成されている。これら横溝14、15、16と、縦溝17、18、19とは、いわゆる井桁状に交差する形態で形成されている。
このとき、横溝14、15、16は、全て後述するコネクタ端子13の直径寸法よりもやや大きいだけの細幅で形成されており、例えば、幅寸法dが、例えば0.7±0.05mmとされている。また、左縦溝17及び右縦溝19も同等の細幅で形成されている。中央縦溝18に関しては、左縦溝17及び右縦溝19の約4倍程度の幅寸法で設けられている。そして、インシュレータ12の底低壁には、コネクタ端子13の先端部(下端部)が貫通される6個の穴20が上下に貫通して形成されている。図10に示すように、6個の穴20は、左縦溝17の前後両端、右縦溝19の前後両端、第2の横溝15の左右両端に位置して夫々形成されている。
前記コネクタ端子13は、図1、図3、図4等に示すように、ばね性を有する金属線材を、所定形状に折曲げて構成される。図4に示すように、コネクタ端子13を構成する金属線材の直径寸法wは、例えばφ0.6±0.02mmとされている。図3に示すように、コネクタ端子13は、左右一対となったものが、3対設けられる。このコネクタ端子13は、下端が前記穴20に挿通される先端部13aとされ、その上部に位置決め用の抜止め部13bを有し、更に上方に真直ぐ延びている。そして、その上端部が内側(左側に位置するものは右側、右側に位置するものは左側)に丸みを帯びて下方に折返され更にくの字をなすように折曲げられたばね部13cを有した形態に成形されている。
前記コネクタ端子13のうち、奥側に配置される左右一対のうち、左側のものは、先端部13aが、左縦溝17の後端の穴20に挿通され、右側のものは、右縦溝19の後端の穴20に挿通される。そして、図1、図2(a)等に示すように、左右のコネクタ端子13のばね部13c同士が、第1の横溝14内で突き合わされた状態とされる。
同様に、前後方向中央に配置される左右一対のコネクタ端子13のうち、左側のものは、先端部13aが、第2の横溝15の左端の穴20に挿通され、右側のものは、第2の横溝15の右端の穴20に挿通され、左右のコネクタ端子13のばね部13c同士が、第2の横溝15内で突き合わされた状態とされる。手前側に配置される左右一対のコネクタ端子13のうち、左側のものは、左縦溝17の前端の穴20に挿通され、右側のものは、右縦溝19の前端の穴20に挿通され、左右のコネクタ端子13のばね部13c同士が、第3の横溝16内で突き合わされた状態とされる。
さて、上記したコネクタ11の組立てに使用される組立用治具21及び組立装置31について述べる。そのうち組立用治具21は、前記インシュレータ12に対し開口部側から着脱可能に嵌合され、コネクタ端子13の組付けを補助するためのものであり、図6~図10に示す構成を備える。即ち、組立用治具21は、合成樹脂の成型品からなり、図6等に示すように、インシュレータ12の上端に宛がわれる径大なフランジ部22と、そのフランジ部22から下方に突出する嵌合凸部23とを一体に有している。
前記嵌合凸部23は、図8~図10に示すように、前記インシュレータ12の中央縦溝18に上方から嵌合する大きさをなし、図8などに示すように、中央部に前後に延びる隔壁部23aを有している。これと共に、その隔壁部23aに交差するように、前後に4列の仕切壁部が設けられていることによって、図10などに示すように、上から見て隔壁部23aの左右に位置して、後列、中列、前列の3列で合計6個の案内溝24が設けられている。これら案内溝24は、前記第1、第2、第3の横溝14、15、16に連続するように、幅寸法d(例えば0.7mm)で形成されている。
そして、図8~図10に示すように、前記フランジ部22には、前記コネクタ端子13を差し込むための挿入口25が6か所に位置して形成されている。これら挿入口25は、前記各案内溝24の上端に夫々連続すると共に、図9に示すように、上方に向けて拡開するテーパ状に形成されている。また、挿入口25同士は一部で連続している。これにて、組立用治具21のインシュレータ12に対する嵌合状態で、各案内溝24は、各挿入口25から差し込まれた各コネクタ端子13の先端部13aを、前記穴20に向けてガイドする隙間をインシュレータ12の内壁との間に形成する役割を果たす。また、前記隔壁部23aは、図8に示すように、左右2本のコネクタ端子13のばね部13c同士が突き合わされる部分を隔てながら保持する役割を果たす。
更に、全体としての詳しい図示及び説明は省略するが、上記コネクタ11の組立を自動で実行する組立装置31は、次のように構成されている。即ち、図12に一部示すように、組立装置31は、作業ベース上に、インシュレータ12に対して組立用治具21を装着、取外しする着脱機構、組立用治具21の装着状態でインシュレータ12が固定的にセットされる基台部、コネクタ端子13が供給される供給部32を備えている。そして、コネクタ端子13を側方から保持する把持機構33、前記把持機構33をX、Y,Zの3次元方向に自在に移動させる移動機構としてのロボットアーム、コネクタ端子13を組立用治具21の挿入口25に向けて下方に押込む押込み機構34、カメラ等からなる視覚認識装置、全体を制御するコンピュータからなる制御装置などを備えている。
前記把持機構33は、図12に示すように、中央部に固定把持部33aを有すると共に、その左右に開閉機構により開閉される可動把持爪33b、33cを有して構成され、供給部23において供給される左右一対のコネクタ端子13を把持する。左右一対のコネクタ端子13は、下端を揃えた状態で、可動把持爪33bと固定把持部33aとの間、及び、可動把持爪33cと固定把持部33aとの間に保持される。このとき、図12(b)に示すように、可動把持爪33b、33cは、ばね35の力により内側(固定把持部33a側)に向けて押圧されており、ばね部13cを弾性的に狭めるようにしてコネクタ端子13を保持するようになっている。
前記押込み機構34は、固定把持部33aと可動把持爪33b、33cとの間において上下動可能に設けられる左右一対のプッシャ34a、34bと、それらプッシャ34a、34bを上下に往復駆動する駆動機構とを備えている。これにより、図12(d)~(f)に示すように、2個のプッシャ34a、34bの移動(下降)により、左右一対のコネクタ端子13、13を、挿入口25からインシュレータ12内に差込んでいくようになっている。尚、上記組立作業は、視覚認識装置の認識に基づいて各部の位置合わせがされながら、制御装置により自動で実行されるようになっている。また、図11(c)に示すように、組立装置31は、リード線3の接続用端子4と、コネクタ端子13の先端部13aとを溶接により接続するための例えばレーザ溶接機等の溶接装置36も備えている。
次に、上記した組立用治具21及び組立装置31を用いて、前記コネクタ11を組立てる本実施形態に係る組立方法について、図11及び図12も参照して説明する。組立装置31によって、インシュレータ12に対し6本のコネクタ端子13を組付けるにあたっては、まず、図7~図10に示すように、インシュレータ12に対し組立用治具21を嵌合配置する治具配置工程が実行される。この治具配置工程は、図示しない着脱機構により自動で実行され、組立用治具21が装着されたインシュレータ12は、組立装置31の基台部にセットされる。
インシュレータ12に対する組立用治具21の装着により、組立用治具21のフランジ部22が、インシュレータ12の上端に宛がわれると共に、嵌合凸部23がインシュレータ12の中央縦溝18に嵌合する。この状態では、図8~図10に示すように、組立用治具21(インシュレータ12)の上面部には、上方に拡開してコネクタ端子13を差し込むための6個の挿入口25が設けられていると共に、それら挿入口25から差し込まれたコネクタ端子13の先端部13aを各穴20に向けてガイドする案内溝24がインシュレータ12の内壁との間に形成されている。
次いで、図11(a)にも示すように、コネクタ端子13を挿入口25から差し込んで案内溝24に沿って送り、その先端部13aを穴20に通して貫通させる挿入工程が実行される。この挿入工程は、詳細には、図12に示すようにして実行される。即ち、まず図12(a)に示すように、把持機構33を供給部32に移動させ、可動把持爪33b、33cを閉塞方向に駆動して、図12(b)に示すように、固定把持部33aと可動把持爪33bとの間、及び、固定把持部33aと可動把持爪33cとの間に夫々コネクタ端子13を把持させる。
左右一対のコネクタ端子13を把持すると、その状態で把持機構33を移動させ、図12(c)に示すように、基台部にセットされたインシュレータ12の上方に移動させる。この状態では、左右のコネクタ端子13の下端部(先端部13a)が、例えば後列の左右の挿入口25に夫々挿入されるまで移動させる。このとき、組立用治具21の挿入口25は、上方に拡開した形状をなしているので、コネクタ端子13の下端を挿入口25に容易に差し込むことができる。
更に、図12(d)に示すように、押込み機構34のプッシャ34a、34bが下降するように移動され、左右のコネクタ端子13が下方に押されるようになる。各コネクタ端子13の先端部13aは、組立用治具21の嵌合凸部23に形成された案内溝24に沿って下方に移動する。そして、コネクタ端子13の先端部13aは、インシュレータ12の底壁に当接した後、図10に一部矢印で示すように、各横溝14、15、16並びに各縦溝17、19内を、穴20に向かって移動する。
このとき、コネクタ端子13の直径寸法wに対し、各横溝14、15、16並びに各縦溝17、19の幅寸法dのクリアランスが、ごく小さい(0.1mm)事情があっても、案内溝24によって、コネクタ端子13の先端部13aをスムーズに案内することができる。コネクタ端子13の先端部13aが穴20まで導かれると、図12(e)に示すように、コネクタ端子13は、その先端部13aがインシュレータ12の底壁の穴20を通して下方に突出するように貫通する。コネクタ端子13は、抜止め部13bが底壁上に接触するまで挿入される。すると、図12(f)に示すように、プッシャ34a、34bが上昇される。
この挿入工程は、前後に3列の全ての挿入口25(全ての穴20)について繰り返して行われ、6本のコネクタ端子13がインシュレータ12に装着される。挿入工程が終了すると、穴20を貫通した各コネクタ端子13の先端部13aを、センサ本体部2電と電気的に接続する接続工程が実行される。本実施形態では、接続工程は、図11(b)、(c)に示すように、各リード線3の先端の接続用端子4に、コネクタ11のコネクタ端子13の先端部13aを差し込み、溶接装置36により溶接することにより行われる。この後、組立用治具21をインシュレータ12から取外す取外し工程が実行され、コネクタ11が得られる。
ここで、本実施形態のコネクタ11においては、2本のコネクタ端子13が対になり、ばね部13c同士が突き合わされた形態でインシュレータ12に組付けられる。この場合、最終的には、図2(a)に示すように、ばね部13c同士突き合わされた状態とされることが、正しい組付けである。ところが、図2(b)に示すように、ばね部13c同士の突合せ部分が前後にずれる不良品が発生する虞がある。上記組立工程にあっては、接続工程が終了するまでは、対となるコネクタ端子13のばね部13c同士に、ずれがない状態を維持する必要がある。
ところが、本実施形態では、図8や図12(f)などに示すように、前記組立用治具21の嵌合凸部23には、中央部に前後に延びて、コネクタ端子13のばね部13cの突き合わされる部分を隔てながら保持する隔壁部23aが設けられている。これにより、コネクタ端子13のばね部13c同士は、組立用治具21の隔壁部23aにより隔てられた状態で保持されるので、挿入工程、接続工程の作業中に、それらコネクタ端子13がずれ動くことなく、接続工程まで済ませることができる。そして、その後の取外し工程において、組立用治具21がインシュレータ12から取外されることにより、コネクタ端子13のばね部13c同士が正しく突き合せられるようになる。
このように本実施形態によれば、次のような作用・効果を得ることができる。即ち、本実施形態の組立方法においては、インシュレータ12に開口側から着脱可能に嵌合され上方に拡開する挿入口25を有すると共に、コネクタ端子13の先端部13aを穴20に向けてガイドする案内溝24を形成する組立用治具21を備え、治具配置工程、挿入工程、接続工程を順に実行するようにした。
これにより、組立用治具21を用いることによって、金属線材製のコネクタ端子13を採用した場合の、インシュレータ12に対する挿入作業の困難性を克服することができ、挿入作業を容易に行うことができる。この結果、本実施形態によれば、インシュレータ12に対して金属線材製のコネクタ端子13を組付けるものにあって、組立作業性の向上を図ることができるという優れた効果を得ることができる。ひいては、コネクタの組立作業の自動化を図ることが可能となったのである。
特に本実施形態においては、2本のコネクタ端子13が対になって突き合わされるコネクタ11にあって、組立用治具21に、2本のコネクタ端子13のばね部13c同士が突き合わされる部分を隔てながら保持する隔壁部23aを設ける構成とした。これにより、対になった2本のコネクタ端子13が、組立用治具21の隔壁部23aにより隔てられた状態で保持されるので、挿入工程、接続工程の作業中に、それらコネクタ端子13がずれ動くことなく、接続工程まで済ませることができる。そして、その後の組立用治具21をインシュレータ12から取外す取外し工程において、それらコネクタ端子13が正しく突き合せることができる。
また本実施形態では、把持機構33、移動機構、押込み機構34などを有する組立装置31を備え、コネクタ11の組立工程を、組立装置31により自動で行う構成とした。これにより、従来では人手で面倒な作業を行っていた挿入工程についても、自動で実行することが可能となった。この結果、人手により行うことが面倒な挿入工程に関して、組立装置31により自動化して効率的な作業を行うことができる。
そして、本実施形態の組立用治具21によれば、インシュレータ12に着脱可能に嵌合され、上方に拡開する挿入口25を有すると共に、コネクタ端子13の先端部13aを穴20に向けてガイドする案内溝24を形成するように構成した。これにより、インシュレータ12に対して金属線材製のコネクタ端子13を組付けるものにあって、組立用治具21を用いて挿入工程等の組立方法を実行することにより、組立作業性の向上を図ることができるという優れた効果を得ることができる。特に本実施形態では、組立用治具21に隔壁部23aを設けたので、2本のコネクタ端子13のばね部13c同士が突き合わされる部分におけるずれによる不良の発生を防止することができる。
更に、本実施形態の組立装置31によれば、把持機構33、移動機構、押込み機構34などを有して構成されるので、インシュレータ12に対して金属線材製のコネクタ端子13を組付けるものにあって、組立装置31を用いて組立方法を実行することにより、組立作業性の向上を図ることができるという優れた効果を得ることができる。特に、人手により行うことが面倒な挿入工程に関して、組立装置31により自動化して効率的な作業を行うことができる。
尚、上記実施形態では、インシュレータに6本(3対)のコネクタ端子を組付ける構成としたが、コネクタ端子の数としては、1本以上、或いは一対以上であれば良く、様々な形態のコネクタに適用することができる。コネクタ端子の形状としても様々な変更が可能であり、突き合せのないものであっても良い。電子部品としても、センサ用のコネクタに限定されるものではなく、各種電子部品用のコネクタ全般に適用することができる。基板用のコネクタであっても良い。
その他、組立用治具の形状や構造、さらには組立装置の全体的な構成についても、様々な変更が可能である。組立工程は、一部手作業により行う工程を含ませても良い。本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。