本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
<画像形成装置>
本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像(潜像)を形成する静電荷像形成手段と、像保持体の表面に形成された静電荷像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、現像されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、被転写体に転写されたトナー像を定着するための定着手段とを備える。本実施形態の画像形成装置は、必要に応じて、転写後の像保持体の表面に残留した残留トナー等を除去して清掃する像保持体清掃手段を備えていてもよい。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置100を示す概略構成図である。本実施形態に係る画像形成装置100は、図1に示すように、例えば、矢印aで示す方向に回転する像保持体10と、像保持体10の例えば上方に像保持体10に相対して設けられ、像保持体10の表面を帯電する帯電手段としての帯電装置20と、帯電装置20により帯電した像保持体10の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段としての露光装置30と、露光装置30により像保持体10の表面に形成された静電荷像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する現像手段としての現像装置40と、現像されたトナー像を被転写体であるベルト状の中間転写体50に転写する転写手段としての一次転写装置51と、被転写体である記録媒体Pに転写する転写手段としての二次転写装置52と、被転写体である記録媒体Pに転写されたトナー像を定着するための定着手段としての定着装置80と、を備える。中間転写体50は、像保持体10に接触しつつ矢印bで示す方向に走行する。画像形成装置100は、像保持体10の表面をクリーニングするクリーニング装置70を備えてもよい。
画像形成装置100において、帯電装置20、露光装置30、現像装置40、中間転写体50、およびクリーニング装置70は、例えば、像保持体10を囲む円周上に、時計周り方向にこの順序で配置されている。
中間転写体50は、支持ローラ50A、50B、背面ローラ50C、および駆動ローラ50Dによって、ベルトの内側から張力を付与されつつ保持されるとともに、駆動ローラ50Dの回転に伴い、矢印bの方向に駆動される。中間転写体50の内側における像保持体10に相対する位置には、中間転写体50をトナーの帯電極性とは異なる極性に帯電させて中間転写体50の外側の面に像保持体10上のトナーを吸着させる一次転写装置51が設けられている。中間転写体50の例えば下方における外側には、記録紙等の記録媒体Pをトナーの帯電極性とは異なる極性に帯電させて、中間転写体50に形成されたトナー像を記録媒体P上に転写する二次転写装置52が背面ローラ50Cに対向して設けられている。
中間転写体50の例えば下方には、さらに、二次転写装置52に記録媒体Pを供給する記録媒体供給装置53と、二次転写装置52においてトナー像が形成された記録媒体Pを搬送しつつ、トナー像を定着させる定着装置80と、が設けられている。
記録媒体供給装置53は、1対の搬送ローラ53Aと、搬送ローラ53Aで搬送される記録媒体Pを二次転写装置52に向かって誘導する誘導板53Bと、を備える。定着装置80は、二次転写装置52によってトナー像が転写された記録媒体Pを加熱、押圧することにより、トナー像の定着を行う例えば1対の熱ローラである定着ローラ81と、定着ローラ81に向かって記録媒体Pを搬送する搬送体82とを有する。
記録媒体Pは、記録媒体供給装置53と二次転写装置52と定着装置80とにより、矢印cで示す方向に搬送される。
中間転写体50には、さらに、二次転写装置52において記録媒体Pにトナー像を転写した後に中間転写体50に残ったトナーを除去するクリーニングブレード55を有する中間転写体クリーニング装置54が設けられている。
像保持体10としては、例えば、導電性基体上に設けられる感光層が無機材料で構成される無機感光体や、感光層が有機材料で構成される有機感光体等が挙げられる。有機感光体としては、例えば、導電性基体上に、露光により電荷を発生する電荷発生層と、電荷を輸送する電荷輸送層とを積層する機能分離型の感光体が挙げられる。また、導電性基体上に、電荷を発生する機能と電荷を輸送する機能とを同一の層が果たす単層型感光層を設けた感光体が挙げられる。さらに、無機感光体としては、例えば、導電性基体上に、アモルファスシリコンにより構成された感光層を設けた感光体が挙げられる。なお、本実施形態に係る像保持体10の形状は円筒状とされているが、これに限られず、例えば、シート状、プレート状等他の形状を採用してもよい。
帯電装置20としては、例えば、導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が挙げられる。また、帯電装置20としては、例えば、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等の他の例も挙げられる。本実施形態では、一例として、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器を用いている。なお、帯電装置20による像保持体10表面上の帯電の極性に制限はないが、本実施形態では負極性とされている。
露光装置30としては、例えば、像保持体10表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は像保持体10の分光感度領域にあるものがよい。半導体レーザの波長としては、例えば、780nm前後に発振波長を有する近赤外がよい。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザを採用してもよい。また、露光装置30としては、例えばカラー画像形成のためにはマルチビーム出力するタイプの面発光型のレーザ光源を採用してもよい。
現像装置40は、例えば、現像領域で像保持体10に対向して配置されており、トナーを含む現像剤(トナーを含む一成分現像剤、またはトナーとキャリアとを含む二成分現像剤)を収容する現像容器41を有する。現像容器41は、現像容器本体41Aとその上端を塞ぐ現像容器カバー41Bとを有している。なお、本明細書において、現像領域とは、像保持体10上に形成された静電荷像について現像装置40により現像する領域をいう。
現像容器本体41Aは、例えば、その内側に、現像ロール42を収容する現像ロール室42Aを有しており、現像ロール室42Aに隣接して、第1撹拌室43Aと第1撹拌室43Aに隣接する第2撹拌室44Aとを有している。また、現像ロール室42A内には、例えば、現像容器カバー41Bが現像容器本体41Aに装着されたときに現像ロール42表面の現像剤の層厚を規制するための層厚規制部材45が設けられている。
第1撹拌室43Aと第2撹拌室44Aとの間は例えば仕切り壁41Cにより仕切られている。図示しないが、第1撹拌室43Aおよび第2撹拌室44Aは仕切り壁41Cの長手方向(現像装置長手方向)両端部に開口部が設けられて通じており、第1撹拌室43Aおよび第2撹拌室44Aによって循環撹拌室が構成されている。
そして、現像ロール室42Aには、像保持体10と対向するように現像ロール42が配置されている。現像ロール42は、図示しないが、例えば磁性を有する磁性ロール(固定磁石)の外側にスリーブを設けたものである。第1撹拌室43Aの現像剤は磁性ロールの磁力によって現像ロール42の表面上に吸着されて、現像領域に搬送される。また、現像ロール42はそのロール軸が現像容器本体41Aに回転自由に支持されている。ここで、現像ロール42と像保持体10とは、逆方向に回転し、対向部において、現像ロール42の表面上に吸着された現像剤は、像保持体10の進行方向と同方向から現像領域に搬送されるようになっている。
また、現像ロール42のスリーブには、図示しないバイアス電源が接続され、現像領域に現像バイアスが印加されるようになっている。本実施形態に係る現像バイアスは、交番電界が印加されるように、直流電源による直流成分(AC)に交流電源による交流成分(DC)が重畳されたバイアスとされている。なお、現像ロール42に印加される直流バイアス電圧の極性はトナーの帯電極性とは逆極性とされるが、本実施形態では正極性とされている。
第1撹拌室43Aおよび第2撹拌室44Aには現像剤を撹拌しながら搬送する第1撹拌部材43および第2撹拌部材44が各々配置されている。第1撹拌部材43は、例えば、現像ロール42の軸方向に伸びる第1回転軸と、回転軸の外周に螺旋状に固定された撹拌搬送羽根(突起部)とで構成されている。また、第2撹拌部材44も、例えば、第2回転軸および撹拌搬送羽根(突起部)とで構成されている。第1撹拌部材43および第2撹拌部材44は、現像容器本体41Aに回転自由に支持されている。また、第1撹拌部材43および第2撹拌部材44は、その回転によって、第1撹拌室43Aおよび第2撹拌室44Aの中の現像剤が互いに逆方向に搬送されるように配設されている。そして、本実施形態では、現像容器41内の現像剤は、第1撹拌部材43および第2撹拌部材44によって撹拌、搬送されるとともに帯電される。現像剤の帯電極性に制限はないが、本実施形態では負極性とされている。
そして、第2撹拌室44Aの長手方向一端側には、補給用現像剤を第2撹拌室44Aへ供給するための補給搬送路46の一端が連結されており、補給搬送路46の他端には、補給用の現像剤を収容し、補給する現像剤補給容器60が連結されている。これにより、本実施形態に係る画像形成装置100は、補給用の現像剤が、現像剤補給容器60から補給搬送路46を経て現像装置40の現像容器41(第2撹拌室44A)に供給される構成となっている。現像剤補給容器60の詳しい構成については後述する。
一次転写装置51、および二次転写装置52としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。像保持体10に付着したトナーを中間転写体50に移動させるために、一次転写装置51に転写バイアスが印加される。また、中間転写体50に付着したトナーを記録媒体Pに移動させるために、図示しない電源から二次転写装置52に転写バイアスが印加される。
中間転写体50としては、例えば、導電剤を含んだポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外に円筒状のものも用いられる。
クリーニング装置70は、例えば、筐体71と、筐体71から突出するように配設されるクリーニングブレード72と、を含んで構成されている。なお、クリーニングブレード72は、筐体71の端部で支持された形態であってもよいし、別途、支持部材(ホルダー)により支持される形態であってもよいが、本実施形態では、筐体71の端部で支持された形態を採用している。
<現像剤補給容器>
図2に、現像装置40に補給用の現像剤を補給する現像剤補給容器60の一例の概略構成を示す。現像剤補給容器60は、補給用の現像剤を収容する例えば円筒形状の現像剤収容室61と、現像剤収容室61内の現像剤を回転に伴い搬送する搬送部として例えば螺旋状の溝部62と、溝部62により搬送されてきた現像剤を排出する排出口64を有する、例えば円筒形状の現像剤排出室63と、を備え、排出口64を介した吸気動作と排気動作とにより、図1の現像装置40の現像容器41(第2撹拌室44A)に現像剤を排出する構成となっている。なお、現像剤補給容器60は、現像装置40に着脱可能であってもよい。
図2の現像剤補給容器60では、例えば、現像剤収容室61と現像剤排出室63とを連結するように、排出口64を介した吸気動作と排気動作とを行うための吸排気手段としてポンプ部65が設けられている。また、現像剤補給容器60は、外部とは排出口64を通じて連通しており、排出口64を除き外部から密閉された構成となっている。すなわち、ポンプ部65により現像剤補給容器60の内圧を加圧、減圧させて排出口64から現像剤を排出する構成となっている。現像剤補給容器60には、安定した排出性能が保たれる程度の気密性が求められる。
現像剤補給容器60では、外部からの駆動力(回転力)を受けて現像剤収容室61とポンプ部65と現像剤排出室63とが一体的に回転し、現像剤収容室61の内面に形成された螺旋状の溝部62によって、現像剤が現像剤排出室63へ搬送される。ポンプ部65は、少なくとも現像剤排出室63に対して作用するように設けられ、伸縮運動に伴いその容積が可変となっている。ここで、ポンプ部65が伸縮されることによって、排出口64を介した吸気動作と排気動作とが交互に行われ、この溝部62によって搬送されてきた現像剤が排出口64の近傍で吸気によって撹拌され、排気によって現像容器41に排出される。
図1の現像剤補給容器60では、吸気動作により現像剤補給容器60内に向かう気流によって、内部の現像剤が解砕され、現像剤の流動性が確保される。よって、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有し、トナーのテトラヒドロフラン可溶分のMwが10,000以上60,000以下であり、Mw/Mnが5以上10以下であり、トナーの赤外吸収スペクトル分析における、720cm-1付近のピーク吸収に対する1500cm-1付近のピーク吸収の比が0.6以下であり、720cm-1付近のピーク吸収に対する820cm-1付近のピーク吸収の比が0.4以下であるトナーを高温高湿環境下で使用した場合において、パドル状や梯子状の撹拌翼を有する撹拌搬送部材によって撹拌、搬送する現像剤補給容器を用いる場合に比べて、トナーを含む現像剤の排出安定性を向上することができる。また、形成した画像において黒点(トナー塊の画像上への排出)等の画像欠陥の発生が抑制され、定着性が向上する。
このような現像剤補給容器60により、排出口64を介した吸気動作と排気動作とを交互に行い、現像剤を排出口64の近傍で吸気によって撹拌し、排気によって現像容器41に排出することができる。現像剤補給容器60は、現像剤を現像容器41に定量排出することができるものであることが好ましい。定量排出するためには、例えば、排気動作を予め定めた排出量で行えばよい。ここで、「定量排出」とは、現像剤排出量の標準偏差が55以内であることを言う。
現像剤収容室61は、例えば、現像剤収容室61の回転軸線方向に延伸して設けられた中空の円筒形状を有している。この円筒形状の現像剤収容室61の内面には、現像剤収容室61内に収容された現像剤を、自らの回転に伴い、現像剤排出室63の排出口64に向けて搬送する搬送部として機能する、螺旋状に内部に向かって突出した溝部62が設けられている。
現像剤排出室63は、例えば、現像剤排出室63の回転軸線方向に延伸して設けられた中空の円筒形状を有している。現像剤収容室61と現像剤排出室63とは、ポンプ部62により連結されている。
現像剤収容室61と現像剤排出室63を構成する材質は、圧力に耐え得る材質であればよく、特に制限はないが、例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂等が挙げられる。
現像剤収容室61および現像剤排出室63の形状は、円筒形状の他に、円錐形状、円盤形状等であってもよい。
ポンプ部65は、現像剤排出室63の排出口64を介して吸気動作と排気動作とを交互に行わせる吸排気機構として機能する。すなわち、ポンプ部65は、排出口64を通して現像剤補給容器60の内部に向かう気流と現像剤補給容器60から外部に向かう気流を交互に繰り返し発生させる気流発生機構として機能する。
ポンプ部65は、図2に示すように、例えば現像剤収容室61と現像剤排出室63との間に設けられており、現像剤収容室61と現像剤排出室63に接続、固定されている。すなわち、ポンプ部65は現像剤収容室61と現像剤排出室63とともに外部から受けた駆動力により一体的に回転可能となるように構成されている。ポンプ部65は、その内部に現像剤を収容可能な構成となっている。このポンプ部65内の現像剤収容スペースは、吸気動作時における現像剤の流動化に対する役割を担っている。
ポンプ部65は、例えば、往復運動に伴いその容積が可変な樹脂製等の容積可変となっている蛇腹状となっている。具体的には、山折り部と谷折り部とが周期的に交互に複数形成された蛇腹状となっている。よって、このポンプ部65は、外部から受けた駆動力により、圧縮、伸張を交互に繰り返し行うことができる。このようなポンプ部65を採用することにより、現像剤補給容器60の現像剤収容室61と現像剤排出室63の内圧を、大気圧よりも高い状態と大気圧よりも低い状態とに、予め定めた周期で、交互に繰り返し変化させることができる。その結果、排出口64から現像剤排出室63内にある現像剤を効率良く、排出させることが可能となる。
ポンプ部65を構成する材質は、伸縮機能を有し、内容積の変化によって現像剤補給容器60の内圧を変化させることができる材質であればよく、特に制限はないが、例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエチレン等の樹脂を肉薄で形成したものや、ゴム、その他の伸縮性材料等が挙げられる。
樹脂材料の厚みを調整する等により、現像剤収容室61、現像剤排出室63、ポンプ部65のそれぞれが上述した機能を有するのであれば、それぞれを同じ材質で、例えば、射出成形法やブロー成形法等を用いて一体的に成形されたものを用いてもよい。
現像剤収容室61内の現像剤を回転に伴い搬送する搬送部としては、例えば、上記のような螺旋状に内部に向かって突出した溝部62等が挙げられる。
排出口64の形状、大きさ、数等は、現像剤の流動特性等に基づいて適宜決めればよく、特に制限はない。排出口64の形状としては、例えば、長方形状等の多角形状、円形状、楕円形状等が挙げられる。排出口64の数は、1つであっても、複数であってもよい。
図3に、現像装置40に補給用の現像剤を補給する現像剤補給容器60の他の例の概略構成を示す。図3の現像剤補給容器60は、例えば円筒形状の現像剤収容室61と、排出口64を介した吸気動作と排気動作とを行うためのポンプ部65と、例えば円筒形状の現像剤排出室63とを有し、現像剤収容室61の一端に、ポンプ部65が連結して設けられており、現像剤収容室61の他端と現像剤排出室63とが連結されている。
図3の現像剤補給容器60では、外部からの駆動力(回転力)を受けてポンプ部65と現像剤収容室61と現像剤排出室63とが一体的に回転し、現像剤収容室61の内面に形成された螺旋状の溝部62によって、現像剤が現像剤排出室63へ搬送される。ポンプ部65は、少なくとも現像剤収容室61および現像剤排出室63に対して作用するように設けられ、伸縮運動に伴いその容積が可変となっている。ここで、ポンプ部65が伸縮されることによって、排出口64を介した吸気動作と排気動作とが交互に行われ、この溝部62によって搬送されてきた現像剤が排出口64の近傍で吸気によって撹拌され、排気によって現像容器41に排出される。
図3の現像剤補給容器60では、吸気動作により現像剤補給容器60内に向かう気流によって、内部の現像剤が解砕され、現像剤の流動性が確保される。よって、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有し、トナーのテトラヒドロフラン可溶分のMwが10,000以上60,000以下であり、Mw/Mnが5以上10以下であり、トナーの赤外吸収スペクトル分析における、720cm-1付近のピーク吸収に対する1500cm-1付近のピーク吸収の比が0.6以下であり、720cm-1付近のピーク吸収に対する820cm-1付近のピーク吸収の比が0.4以下であるトナーを高温高湿環境下で使用した場合において、パドル状や梯子状の撹拌翼を有する撹拌搬送部材によって撹拌、搬送する現像剤補給容器を用いる場合に比べて、トナーを含む現像剤の排出安定性を向上することができる。また、形成した画像において黒点(トナー塊の画像上への排出)等の画像欠陥の発生が抑制され、定着性が向上する。
排出口64を介した吸気動作と排気動作とを行うための吸排気手段として図2,3のような蛇腹状のポンプ部65を例に挙げたが、吸排気手段としては、排出口を介した吸気動作と排気動作とを行うことができるものであればよく、その構造に特に制限はない。その他の例として、例えば、外部にエアポンプ等を設け、それと現像剤補給容器とを管等でつなぎ、吸気排気する機構が挙げられる。
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態に係る画像形成装置で用いられるトナーは、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有し、トナーのテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定によって得られた重量平均分子量をMw、および数平均分子量をMnとしたとき、Mwが10,000以上60,000以下であり、Mw/Mnが5以上10以下であり、トナーの赤外吸収スペクトル分析における、720cm-1付近のピーク吸収に対する1500cm-1付近のピーク吸収の比が0.6以下であり、720cm-1付近のピーク吸収に対する820cm-1付近のピーク吸収の比が0.4以下であるトナーである。
(結着樹脂)
本実施形態に係るトナーは、結着樹脂として、ポリエステル樹脂を含み、結着樹脂の主成分としてポリエステル樹脂を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂であっても、非晶性ポリエステル樹脂であってもよく、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂との混合物であってもよい。ポリエステル樹脂は、酸成分モノマ(多価カルボン酸)とアルコール成分モノマ(多価アルコール)とから合成されるものであり、本実施形態において、「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。主成分とは、トナー中の結着樹脂100質量部に対して50質量部以上のことをいう。
ここで、「結晶性樹脂」の「結晶性」とは、樹脂またはトナーの示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを指す。具体的には、自動接線処理システムを備えた島津製作所社製の示差走査熱量計(装置名:DSC-50型)を用いた示差走査熱量測定(DSC)において、10℃/minの昇温速度で昇温した後、液体窒素で冷却し、再度10℃/minで昇温した際のオンセット点から吸熱ピークのピークトップまでの温度が10℃以内であるときに「明確な」吸熱ピークであるとする。DSC曲線におけるベースラインの平坦部の点およびベースラインからの立ち下がり部の平坦部の点を指定し、その両点間の平坦部の接線の交点が「オンセット点」として自動接線処理システムにより求められる。一方、明確な吸熱ピークではなく、階段状の吸熱量変化が認められる樹脂は、「非晶性樹脂」を意味し、常温固体で、ガラス転移温度以上の温度において熱可塑化するものを指す。また、「非晶性樹脂」は、示差走査熱量測定(DSC)において、ガラス転移に対応した階段状の吸熱点の他に、結晶融点に対応した吸熱ピークを示さない。
[酸由来構成成分]
酸由来構成成分は、特に制限はなく、脂肪族ジカルボン酸、芳香族カルボン酸が好ましく用いられる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸など、あるいはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、これらに限定されない。また芳香族カルボン酸としては例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類の低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられる。また、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類等が挙げられる。さらに良好な定着性を確保するため、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用することが好ましい。また、前述のアルケニルコハク酸類の具体的なものとしては、ドデセニルコハク酸、ドデシルコハク酸、ステアリルコハク酸、オクチルコハク酸、オクセニルコハク酸等が挙げられる。
[アルコール由来構成成分]
アルコール由来構成成分としては特に制限はないが、脂肪族ジオールとして、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール等が挙げられる。また、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどや、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が用いられる。また、良好な定着性を確保するため、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用してもよい。
本実施形態に係るトナーは、上記特定のテトラヒドロフラン可溶分のMw、Mw/Mn、トナーの赤外吸収スペクトル分析におけるピーク吸収の要件を満たすためには、アルコール由来構成成分としてビスフェノールA等のビスフェノール誘導体を含まないビスフェノール構成成分非含有ポリエステル樹脂を含有するトナーであることが好ましく、脂肪族多価アルコールを構成成分として含むビスフェノール構成成分非含有ポリエステル樹脂を含有するトナーであることがより好ましい。すなわち、上記アルコール由来構成成分のうち、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等は用いないことが望ましい。
ビスフェノールA等のビスフェノール誘導体は、疎水性の高いアルコール成分モノマであり、ビスフェノール構成成分非含有ポリエステル樹脂は、通常、エステル基の濃度が高く、これを結着樹脂として含むトナーは、定着画像が割れにくいという利点はある。一方、ビスフェノール構成成分非含有ポリエステル樹脂を結着樹脂として含むトナーは、アルコール由来構成成分としてビスフェノール誘導体を含むビスフェノール構成成分含有ポリエステル樹脂を含有するトナーよりも高温高湿環境下で放置された後のトナーの表面弾性率の低下幅が大きい。そのため、ビスフェノール構成成分非含有ポリエステル樹脂を含有するトナーは、ビスフェノール構成成分含有ポリエステル樹脂を含有するトナーと比較して吸湿性が高いため、トナーの粒子同士の凝集性が高い。また、トナー表面の可塑化により外添剤がトナー表面に埋没しやすく、現像剤補給容器や現像装置内等の部材の壁面や搬送部材、搬送経路等に付着し易いため、高温高湿環境下におけるトナー凝集や部材、搬送経路等へのトナーの固着による詰まり等が発生し、トナーの排出が安定しないという問題があった。特に、パドル状や梯子状の撹拌翼を有する撹拌搬送部材を用いると、撹拌搬送部材と現像剤収容室との摺擦や、排出口近傍でのトナー圧縮が発生し、トナーの排出が安定しないという問題があった。
しかし、上記の通り、上記現像剤補給容器を用いることによって、このようなトナーを高温高湿環境下で使用した場合において、パドル状や梯子状の撹拌翼を有する撹拌搬送部材によって撹拌、搬送する現像剤補給容器を用いる場合に比べて、トナーを含む現像剤の排出安定性を向上することができる。
ポリエステル樹脂の製造方法としては特に制限はなく、酸成分とアルコール成分を反応させる一般的なポリエステル重合法で製造すればよく、例えば、直接重縮合、エステル交換法等が挙げられ、単量体の種類によって使い分けて製造すればよい。前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、通常1/1程度である。
ポリエステル樹脂の製造は、例えば、重合温度180℃以上230℃以下の間で行えばよく、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させてもよい。単量体が、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、重合反応が部分的に早くなったり、遅くなる場合があり、無着色粒子を多く発生する場合があるため、高沸点の溶媒を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶媒を留去しながら行ってもよい。共重合反応において相溶性の悪い単量体が存在する場合はあらかじめ相溶性の悪い単量体と、その単量体と重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分とともに重縮合させてもよい。
ポリエステル樹脂の製造時に使用してもよい触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物、リン酸化合物、およびアミン化合物等が挙げられる。この中でも、例えば、スズ、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド等のスズ含有触媒を用いることが好ましい。
本実施形態においては、静電荷像現像用トナー用の樹脂として共重合可能なものであれは、親水性極性基を有する化合物を用いてもよい。具体例としては、仮に用いる樹脂がポリエステルである場合、スルホニル-テレフタル酸ナトリウム塩、3-スルホニルイソフタル酸ナトリウム塩等の芳香環に直接スルホニル基が置換したジカルボン酸化合物が挙げられる。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは10,000以上であることが好ましく、25,000以上50,000以下の範囲であることがより好ましい。このポリエステル樹脂を含むと、擦摺性に優位である。ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwが10,000を下回ると、トナーがゲル分を含有していても分離しやすくなることから、遊離した樹脂に由来する問題(フィルミング、脆さによる微粉増加、粉体流動性悪化など)が発生する場合がある。
結着樹脂等の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120を用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、テトラヒドロフラン(THF)溶媒で行う。そして上記重量平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出したものである。
本実施形態に係るトナーにおいて、ポリエステル樹脂以外の樹脂を含んでもよい。ポリエステル樹脂以外の樹脂としては特に制限されないが、具体的には、スチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル系単量体;さらにアクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルフォン酸ナトリウム等のエチレン系不飽和酸単量体;さらにアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのオレフィン類単量体の単独重合体、それらの単量体を2種以上組み合せた共重合体、またはそれらの混合物、さらには、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等、非ビニル縮合系樹脂、または、それらと前記ビニル系樹脂との混合物、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
結着樹脂の含有量は、例えばトナー全体に対して80質量%以上95質量%以下の範囲である。
本実施形態に係る画像形成装置で用いられるトナーは、結着樹脂として、結晶性樹脂を含有していることが好ましい。トナーが結晶性樹脂を含有することにより、吸湿性がより小さくなる。
結晶性樹脂の含有量は、トナーに対して3重量%以上20重量%以下であることが好ましく、5重量%以上15重量%以下であることがより好ましい。結晶性樹脂の含有量がトナーに対して3重量%未満であると、トナーが溶融しにくくなるため定着温度を高くする必要が生じ、低温定着が困難となる場合があり、20重量%を超えると、内部添加剤の分散が不十分となる等により、帯電保持性が低下する場合がある。
(その他の構成成分)
本実施形態に係るトナーは、必要に応じて、着色剤、離型剤、帯電制御剤、金属酸化物等の他の添加剤を含有してもよい。これら添加剤は、結着樹脂に混練するなどして内添してもよいし、粒子としてトナー粒子を得たのち混合処理を施すなどして外添してもよい。
着色剤としては、特に制限はなく、公知の顔料が用いられ、必要に応じて、公知の染料を含んでもよい。具体的には、以下に示すイエロー、マゼンタ、シアン、黒(ブラック)等の各顔料が用いられる。
イエローの顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物等に代表される化合物が用いられる。
マゼンタの顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が用いられる。
シアンの顔料としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が用いられる。
黒の顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、鉄黒等が用いられる。
着色剤の含有量は、例えばトナー全体に対して5質量%以上20質量%以下の範囲である。
離型剤としては、特に制限はなく、例えば、カルナバワックス、木蝋、米糠蝋等の植物性ワックス;蜜ワックス、昆虫ワックス、鯨ワックス、羊毛ワックスなどの動物性ワックス;モンタンワックス、オゾケライトなどの鉱物性ワックス、エステルを側鎖に有するフィッシャートロプシュワックス(FTワックス)、特殊脂肪酸エステル、多価アルコールエステル等の合成脂肪酸固体エステルワックス;パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、およびシリコーン化合物等の合成ワックス;等が挙げられる。離型剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
離型剤の含有量は、例えばトナー全体に対して0.1質量%以上10質量%以下の範囲である。
帯電制御剤としては、特に制限はなく、従来公知の帯電制御剤が使用される。例えば、ニグロシン染料、脂肪酸変性ニグロシン染料、カルボキシル基含有脂肪酸変性ニグロシン染料、四級アンモニウム塩、アミン系化合物、アミド系化合物、イミド系化合物、有機金属化合物等の正帯電性帯電制御剤;オキシカルボン酸の金属錯体、アゾ化合物の金属錯体、金属錯塩染料やサリチル酸誘導体等の負帯電性帯電制御剤;等が挙げられる。帯電制御剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属酸化物としては、特に制限はなく、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。金属酸化物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(トナーの特性)
本実施形態に係る画像形成装置で用いられるトナーのテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定によって得られた重量平均分子量をMw、および数平均分子量をMnとしたとき、Mwは10,000以上60,000以下であり、25,000以上50,000以下であることが好ましい。Mwがこの範囲であるトナーは、定着性に優れる。トナーのテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定によって得られた重量平均分子量Mwが10,000未満であると、ゲル分が存在していてもトナー定着の際にホットオフセットが生じる可能性が高くなり、60,000を超えると、最低定着温度、すなわちトナー画像が形成された基材を折り曲げたときにトナー画像が分離しなくなる温度が、高くなる。
Mw/Mnは、5以上10以下であり、6以上8以下であることが好ましい。Mw/Mnが5未満であると、結着樹脂の製造における技術的難易度が高いため高価となり、10を超えると、定着温度に対する溶融性の差異が大きく、定着画像にムラが生じやすくなり、定着画像の品質に劣る。
ここで、トナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC測定における、分子量分布曲線、各平均分子量、ピーク分子量は、次の通り測定する。
まず、測定対象となるトナー粒子(またはトナー)0.5mgをTHF(テトラヒドロフラン)1gに溶解させ、超音波分散をかけた後に、濃度が0.5%となるように調整し、この溶解成分をGPCにより測定する。
GPC装置として「HLC-8120GPC、SC-8020(東ソー製)」を用い、カラムは「TSKgel、SuperHM-H(東ソー製6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHFを用いる。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6mL/min、サンプル注入量10μL、測定温度40℃、RI(Refractive Index)検出器を用いて実験を行う。また、検量線は、東ソー製「polystylene標準試料TSK standard」:「A-500」、「F-1」、「F-10」、「F-80」、「F-380」、「A-2500」、「F-4」、「F-40」、「F-128」、「F-700」の10サンプルから作製する。
トナー粒子のトルエン不溶分は、25質量%以上45質量%以下が好ましく、28質量%以上38質量%以下がより好ましく、30質量%以上35質量%以下がさらに好ましい。トナー粒子のトルエン不溶分を上記範囲にすると、トナー粒子の吸湿性が低下し、トナー粒子の搬送性を高め易くなる。
ここで、トナー粒子のトルエン不溶分とは、トルエンに不溶なトナー粒子の構成成分である。つまり、トルエン不溶分は、トルエンに不溶な結着樹脂の成分(特に結着樹脂の高分子量成分)を主成分(例えば全体の50質量%以上)とした不溶分である。このトルエン不溶分は、トナー中に含まれる架橋樹脂の含有量の指標と言える。トルエン不溶分は、次の方法により測定された値とする。
秤量したガラス繊維製の円筒ろ紙に秤量したトナー粒子(またはトナー)を1g投入し、加熱式ソックスレー抽出装置の抽出管に装着する。そして、フラスコにトルエンを注入して、マントルヒータを用いて110℃に加熱する。また、抽出管に装着した加熱ヒータを用いて抽出管の周部を125℃に加熱する。抽出サイクルが4分以上5分以下の範囲で1回となるような還流速度で抽出を行う。10時間抽出した後、円筒ろ紙とトナー残渣を取り出して乾燥し、秤量する。そして、式:トナー粒子(またはトナー)残渣量(質量%)=[(円筒ろ紙量+トナー残渣量)(g)-円筒ろ紙量(g)]÷トナー粒子(またはトナー)質量(g)×100に基づいて、トナー粒子(またはトナー)残渣量(質量%)を算出し、このトナー粒子(またはトナー)残渣量(質量%)をトルエン不溶分(質量%)とする。
なお、トナー粒子(またはトナー)残渣は、着色剤、外添剤等の無機物、および結着樹脂の高分子量成分等からなる。また、トナー粒子に離型剤を含む場合、加熱による抽出を行うことから、離型剤はトルエン可溶分となっている。
トナー粒子のトルエン不溶分は、例えば、結着樹脂において、1)末端に反応性官能基を有する高分子成分に架橋剤を添加して架橋構造、または分岐構造を形成する方法、2)末端にイオン性官能基を有する高分子成分に多価金属イオンにより架橋構造または分岐構造を形成する方法、3)イソシアネートなどの処理による樹脂鎖長の延長、分岐を形成する方法等により調整される。
トナーの赤外吸収スペクトル分析における、720cm-1付近のピーク吸収に対する1500cm-1付近のピーク吸収の比は、0.6以下であり、0.5以下であることが好ましく、720cm-1付近のピーク吸収に対する820cm-1付近のピーク吸収の比は、0.4以下であり、0.3以下であることが好ましい。また、本実施形態に係るトナーの赤外吸収スペクトル分析における、720cm-1付近のピーク吸収に対する1500cm-1付近のピーク吸収の比は、0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、720cm-1付近のピーク吸収に対する820cm-1付近のピーク吸収の比は、0.05以上であることが好ましく、0.08以上であることがより好ましい。この720cm-1付近のピーク吸収に対する1500cm-1付近のピーク吸収の比が0.6を超えると、トナー粒子の強度が低下しやすくなり、0.2未満であると、トナー粒子の保存性が低下する場合がある。また、この720cm-1付近のピーク吸収に対する820cm-1付近のピーク吸収の比が0.4を超えると、トナー粒子の強度が低下しやすくなり、0.05未満であると、トナー粒子の保存性が低下する場合がある。
トナーの赤外吸収スペクトル分析における、1500cm-1付近のピーク吸収に対する820cm-1付近のピーク吸収の比は、0.5以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましい。また、本実施形態に係るトナーの赤外吸収スペクトル分析における、1500cm-1付近のピーク吸収に対する820cm-1付近のピーク吸収の比は、0.1以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。この1500cm-1付近のピーク吸収に対する820cm-1付近のピーク吸収の比が0.5を超えると、トナー粒子の強度が低下しやすくなり、0.1未満であると、トナー粒子の保存性が低下する場合がある。
ここで、赤外吸収スペクトル分析による各波長または波数のピーク吸収(吸光度)の測定は、次に示す方法により測定される。まず、測定対象となるトナー粒子(またはトナー)を、KBr錠剤法により測定試料を作製する。そして、測定試料に対して、赤外分光光度計(日本分光株式会社製:FT-IR-410)により、積算回数300回、分解能4cm-1の条件で、波数500cm-1以上4000cm-1以下の範囲を測定する。そして、吸収光の無いオフセット部分等でベースライン補正を実施して、各波長または波数の吸光度を求める。なお、「720cm-1付近」、「820cm-1付近」、「1500cm-1付近」とは、それぞれ波数「720±20cm-1」、「820±20cm-1」、「1500±20cm-1」を指す。
ここで、720cm-1付近のピークは、脂肪鎖の炭素-水素結合(C-H結合)に基づく変角振動であり、ポリエステル樹脂が有する脂肪鎖に由来するピークである。820cm-1付近のピークは、芳香環の炭素-水素結合(C-H結合)に基づく面外変角振動であり、構成成分としてビスフェノールA等のビスフェノール誘導体を含有する場合に、ビスフェノールのベンゼン環の隣接水素に由来するピークである。1500cm-1付近のピークは、芳香環の炭素-炭素二重結合(C=C結合)に基づく伸縮振動であり、構成成分としてビスフェノールA等のビスフェノール誘導体を含有する場合に、ビスフェノールのベンゼン環に由来するピークである。赤外吸収スペクトルにおけるピークが上記条件を満たすトナーは、例えば、構成成分としてビスフェノールA等のビスフェノール誘導体を含有しない、またはビスフェノール誘導体の含有量がアルコール構成成分全体の5モル%以下であるものである。
図5に、トナーの赤外吸収スペクトルの一例を示す。図5において、波数720cm-1、820cm-1および1500cm-1付近の吸収ピークをそれぞれ矢印により示す。図5において、720cm-1付近のピーク吸収に対する1500cm-1付近のピーク吸収の比が0.6以下であり、720cm-1付近のピーク吸収に対する820cm-1付近のピーク吸収の比が0.4以下であるトナーの赤外吸収スペクトルの例を下、中央に、720cm-1付近のピーク吸収に対する1500cm-1付近のピーク吸収の比が0.6を超え、720cm-1付近のピーク吸収に対する820cm-1付近のピーク吸収の比が0.4を超えるトナーの赤外吸収スペクトルの例を上に示す。
トナーの体積平均粒径D50vは、0.5μm以上5.0μm以下であることが好ましい。上記範囲内であることで、付着力が高く、現像性の向上が図られる。また、画像の解像性の向上も図られる。トナーの体積平均粒径D50vは、0.8μm以上4.0μm以下の範囲であることがより好ましく、1.0μm以上3.0μm以下の範囲であることがさらに好ましい。
トナーの体積平均粒径D50v、数平均粒度分布指標(GSDp)、体積平均粒度分布指標(GSDv)等は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置、例えば、LA920(堀場製作所社製)を用いて測定される。粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒子径を体積D16v、数D16p、累積50%となる粒子径を体積D50v、数D50p、累積84%となる粒子径を体積D84v、数D84pと定義する。これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
(トナーの製造方法)
本実施形態で用いるトナーを製造する方法としては、特に制限はなく、例えば、混練粉砕法や、液中乳化法、重合法等の湿式製法が挙げられる。
例えば、結着樹脂、必要に応じて、着色剤、他の添加剤等をヘンシェルミキサ等の混合装置に投入して混合し、この混合物を二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミル、ニーダ等で溶融混練した後、ドラムフレーカー等で冷却し、ハンマーミル等の粉砕機で粗粉砕し、さらにジェットミル等の粉砕機で粉砕した後、風力分級機等を用いて分級することにより、粉砕トナーが得られる。
また、結着樹脂、必要に応じて、着色剤、他の添加剤を酢酸エチル等の溶剤に溶解し、炭酸カルシウム等の分散安定剤が添加された水中に乳化、懸濁し、溶剤を除去した後、分散安定剤を除去して得られた粒子を濾過、乾燥することによって液中乳化乾燥トナーが得られる。
また、結着樹脂を形成する重合性単量体、着色剤、重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、イソプロピルパーオキシカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、2,4-ジクロリルベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等)および他の添加剤等を含有する組成物を水相中に撹拌下で加えて造粒し、重合反応後、粒子を濾過、乾燥することによって重合トナーが得られる。
なお、トナーを得る際の各材料(結着樹脂、着色剤、その他の添加剤等)の配合割合は、要求される特性、低温定着性、色等を考慮して設定すればよい。
<現像剤>
本実施形態において、現像剤は、前記本実施形態に係るトナーを含有する以外は特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成をとればよい。本実施形態における現像剤は、トナーを、単独で用いると一成分系の現像剤となり、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の現像剤となる。
例えばキャリアを用いる場合のそのキャリアとしては、特に制限はなく、それ自体公知のキャリアが挙げられ、例えば、特開昭62-39879号公報、特開昭56-11461号公報等に記載された樹脂被覆キャリア等の公知のキャリアが挙げられる。
キャリアの具体例としては、以下の樹脂被覆キャリアが挙げられる。該キャリアの核体粒子としては、通常の鉄粉、フェライト、マグネタイト造型物などが挙げられ、その体積平均粒径は、30μm以上200μm以下程度の範囲である。
また、上記樹脂被覆キャリアの被覆樹脂としては、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のα-メチレン脂肪酸モノカルボン酸類;ジメチルアミノエチルメタクリレート等の含窒素アクリル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等のビニルピリジン類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロぺニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;弗化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン等のビニル系フッ素含有モノマ;などの単独重合体、または2種類以上のモノマからなる共重合体、さらに、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等を含むシリコーン樹脂類、ビスフェノール、グリコール等を含有するポリエステル類、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上併用してもよい。被覆樹脂の被覆量としては、前記核体粒子100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下程度の範囲が好ましく、0.5重量部以上3.0重量部以下の範囲がより好ましい。
キャリアの製造には、加熱型ニーダ、加熱型ヘンシェルミキサ、UMミキサなどを使用すればよく、前記被覆樹脂の量によっては、加熱型流動転動床、加熱型キルンなどを使用してもよい。
現像剤における前記本実施形態のトナーとキャリアとの混合比としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定的に解釈されるものではなく、種々の変形、変更、改良が可能であり、本発明の要件を満足する範囲内で実現可能であることは言うまでもない。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<測定方法>
トナーの体積平均粒径D50vは、マルチサイザーII(アパチャー径50μm、ベックマン-コールター社製)を用いて測定した。具体的には、マルチサイザーIIによって測定された粒度分布について、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、小径側から体積の累積分布を描き、累積50%となる粒径をD50vとした。
<非晶性ポリエステル樹脂(A1)の作製>
内部を乾燥させた三口フラスコに、テレフタル酸ジメチル60質量部、フマル酸ジメチル74質量部、ドデセニルコハク酸無水物30質量部、トリメリット酸22質量部、プロピレングリコール138質量部、ジブチルスズオキサイド0.3質量部を加えた。窒素雰囲気下で撹拌しながら昇温し、反応により生成された水を系外へ除去しながら、185℃で3時間反応させた後、徐々に減圧しながら240℃まで温度を上げて、さらに4時間反応させた後、冷却した。こうして、重量平均分子量Mwが39,000の非晶性ポリエステル樹脂(A1)を作製した。
<非晶性ポリエステル樹脂(A2)の作製>
190℃で3時間反応させた後、徐々に減圧しながら220℃まで温度を上げて、さらに2.5時間反応させた以外は非晶性ポリエステル樹脂(A1)と同様の方法で非晶性ポリエステル樹脂(A2)を作製した。非晶性ポリエステル樹脂(A2)の重量平均分子量Mwは26,000であった。
<非晶性ポリエステル樹脂(A3)の作製>
プロピレングリコール138質量部の代わりに、プロピレングリコール128質量部、ブチレングリコール19質量部とし、195℃で4時間反応させた後、徐々に減圧しながら240℃まで温度を上げて、さらに6時間反応させた以外は非晶性ポリエステル樹脂(A1)と同様の方法で非晶性ポリエステル樹脂(A3)を作製した。非晶性ポリエステル樹脂(A3)の重量平均分子量Mwは56,000であった。
<結晶性ポリエステル樹脂(B1)の作製>
内部を乾燥させた三口フラスコに、セバシン酸ジメチル100質量部と、ヘキサンジオール67.8質量部と、ジブチルスズオキサイド0.10質量部とを加えた。窒素雰囲気下で撹拌しながら昇温し、反応中に生成された水を系外へ除去しながら、185℃で5時間反応させた後、徐々に減圧しながら220℃まで温度を上げて、6時間反応させた後、冷却した。こうして、重量平均分子量が33,700の結晶性ポリエステル樹脂(B1)を作製した。
なお、この結晶性ポリエステル樹脂(B1)の融解温度を、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求めたところ、71℃であった。
<非晶性ポリエステル樹脂(A4)の作製>
テレフタル酸ジメチル60質量部、フマル酸ジメチル74質量部、ドデセニルコハク酸無水物30質量部、トリメリット酸22質量部、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物137質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物191質量部、ジブチルスズオキサイド0.3質量部にした以外は非晶性ポリエステル樹脂(A1)と同様にして非晶性ポリエステル樹脂(A4)を作製した。非晶性ポリエステル樹脂(A4)の重量平均分子量Mwは27,000であった。
<トナー(1)の作製>
非晶性ポリエステル樹脂(A1)73質量部と、結晶性ポリエステル樹脂(B1)6質量部と、着色剤(C.I.Pigment Red 122)7質量部と、離型剤として、パラフィンワックス(融解温度73℃、日本精鑞株式会社製)5質量部と、エステルワックス(ベヘン酸ベヘニル、ユニスターM-2222SL、日油社製)2質量部とを、ヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製)に投入し、周速15m/秒で5分間撹拌混合した後、得られた撹拌混合物をエクストルーダー型連続混練機で溶融混練した。ここで、エクストルーダー型連続混練機の設定条件は、供給側温度が160℃、排出側温度が130℃、冷却ロールの供給側温度が40℃、排出側温度が25℃であった。なお、冷却ベルトの温度を10℃に設定した。
得られた溶融混練物を冷却した後、ハンマーミルを用いて粗粉砕し、次いでジェット式粉砕機(日本ニューマチック工業社製)を用いて体積平均粒子径が6.5μmになるように微粉砕し、さらにエルボージェット分級機(日鉄鉱業株式会社製、型式:EJ-LABO)を用いて分級して、微粉、粗粉を除去し、トナー(1)を得た。トナー(1)の体積平均粒径は7.0μmであった。
トナー(1)のテトラヒドロフラン可溶分をGPCにより測定した結果、重量平均分子量Mwは37,000であり、数平均分子量Mnは5,000、ピーク分子量は9,500であった。これより、Mw/Mnは、7.4と算出された。トナー(1)の赤外吸収スペクトルより、720cm-1付近のピーク吸収(C)に対する1500cm-1付近のピーク吸収(A)の比(A/C)、720cm-1付近のピーク吸収(C)に対する820cm-1付近のピーク吸収(B)の比(B/C)、1500cm-1付近のピーク吸収(A)に対する820cm-1付近のピーク吸収(B)の比(B/A)を算出し、A/Cは0.5、B/Cは0.1、B/Aは0.3であった。また、トナー(1)のトルエン不溶分は34質量%であった。
<トナー(2)の作製>
非晶性ポリエステル樹脂(A1)を非晶性ポリエステル樹脂(A2)に変更した以外はトナー(1)の作製と同様にしてトナー(2)を作製した。トナー(2)の体積平均粒径は6.8μmであった。トナー(2)の重量平均分子量Mwは25,000、数平均分子量Mnは3,000、ピーク分子量は7,000、Mw/Mnは8.3であった。トナー(2)のA/Cは0.6、B/Cは0.2、B/Aは0.3であった。また、トナー(2)のトルエン不溶分は28質量%であった。
<トナー(3)の作製>
非晶性ポリエステル樹脂(A1)を非晶性ポリエステル樹脂(A3)に変更した以外はトナー(1)の作製と同様にしてトナー(3)を作製した。トナー(3)の体積平均粒径は7.5μmであった。トナー(3)の重量平均分子量Mwは60,000、数平均分子量Mnは8,500、ピーク分子量は11,000、Mw/Mnは7.1であった。トナー(3)のA/Cは0.5、B/Cは0.2、B/Aは0.4であった。また、トナー(3)のトルエン不溶分は38質量%であった。
<トナー(4)の作製>
トナー(4)の作製において結晶性樹脂を用いず、非晶性ポリエステル樹脂(A1)を79質量部に変更した以外はトナー(1)の作製と同様にしてトナー(4)を作製した。トナー(4)の体積平均粒径は7.1μmであった。トナー(4)の重量平均分子量Mwは39,000、数平均分子量Mnは4,500、ピーク分子量は9,800、Mw/Mnは8.7であった。トナー(4)のA/Cは0.6、B/Cは0.1、B/Aは0.3であった。また、トナー(4)のトルエン不溶分は33質量%であった。
<トナー(5)の作製>
非晶性ポリエステル樹脂(A1)を非晶性ポリエステル樹脂(A4)に変更した以外はトナー(4)の作製と同様にしてトナー(5)を作製した。トナー(5)の体積平均粒径は7.7μmであった。トナー(5)の重量平均分子量Mwは27,000、数平均分子量Mnは5,000、ピーク分子量は7,500、Mw/Mnは5.4であった。トナー(5)のA/Cは3.0、B/Cは1.7、B/Aは0.6であった。また、トナー(5)のトルエン不溶分は31質量%であった。
<現像剤の作製>
上記各トナー8質量部と、キャリア100質量部とをVブレンダーで混合して、現像剤を得た。なお、キャリアは、フェライト粒子(体積平均粒径:50μm)100質量部と、トルエン14質量部と、スチレン-メチルメタクリレート共重合体(成分比(モル比):スチレン/メチルメタクリレート=90/10、重量平均分子量Mw=80,000)2質量部とを、まず、フェライト粒子を除く上記成分を10分間スターラで撹拌させて分散した被覆液を調製し、次に、この被覆液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダー(井上製作所製)に入れて、60℃において30分撹拌した後、さらに加温しながら減圧して脱気し、乾燥させ、その後105μmで篩分して得たものである。
[実施例1~4]
<排出性試験>
トナー(1)~(4)を用い、図2に示す画像形成装置に着脱可能な現像剤補給容器および画像形成装置(富士ゼロックス社製、ApeosPort-VI C7771、Kエンジン)を用いて、28℃85%RHの高温高湿条件で、トナー仕込み量500gで1秒毎にトナーの排出量を測定した。排出口を介した吸気動作と排気動作とを交互に〇〇秒ずつ行い、トナーを排出口の近傍で吸気によって撹拌し、排気によって現像容器に定量排出するようにした。現像剤補給容器の回転数は、20rpmとした。トナー100g~400g排出時の排出量(mg/s)を測定し、排出安定性を標準偏差として評価した。結果を表1に示す。
<定着試験>
トナー(1)~(4)を用い、図2に示す現像剤補給容器および画像形成装置(富士ゼロックス社製、ApeosPort-VI C7771、Kエンジン)を用いて、28℃85%RHの高温高湿条件で、定着温度120℃の条件で定着試験を行った。用紙はA3用紙(富士ゼロックス製、P紙)を使用した。用紙先端側に単位面積当たりのトナー載り量(TMA)が5g/m2のパッチ画像を形成し、その後端側は画像を形成しない白紙部のあるチャートを用いた。この画像を繰り返し10枚形成してサンプリングし、黒点(トナー塊の画像上への排出)の有無を目視で観察し、パッチ部のトナーのはがれ(オフセット)および白紙部への再定着性を定着性として下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
(定着性)
○:パッチ部のトナーはがれ(画像抜け)なし、および白紙部への再定着なし
△:パッチ部のトナーはがれ(画像抜け)なし、および白紙部への軽微な再定着あり
×:パッチ部のトナーはがれ(画像抜け)あり、および白紙部への再定着あり
[比較例1]
図4に示す現像剤補給容器200を用いた以外は、実施例1と同様にして、評価を行った。図4に示す現像剤補給容器200は、円筒状の現像剤収容室202と、パドル状の撹拌翼を有する撹拌搬送部材204とを有し、撹拌搬送部材204の回転に伴い、トナーを搬送し、排出口206から現像装置の現像容器にトナーを排出する構成となっている。撹拌搬送部材204の回転数は、20rpmとした。結果を表1に示す。
[参考例1]
トナー(5)を用いた以外は、実施例1~4と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例5]
図3に示す現像剤補給容器を用いた以外は、実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
このように、実施例では、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有し、トナーのテトラヒドロフラン可溶分のMwが10,000以上60,000以下であり、Mw/Mnが5以上10以下であり、トナーの赤外吸収スペクトル分析における、720cm-1付近のピーク吸収に対する1500cm-1付近のピーク吸収の比が0.6以下であり、720cm-1付近のピーク吸収に対する820cm-1付近のピーク吸収の比が0.4以下であるトナーを高温高湿環境下で使用した場合において、パドル状や梯子状の撹拌翼を有する撹拌搬送部材によって撹拌、搬送する現像剤補給容器を用いる場合に比べて、トナーを含む現像剤の排出安定性を向上することができた。また、形成した画像において黒点(トナー塊の画像上への排出)等の画像欠陥の発生が抑制され、定着性が向上した。