JP7026474B2 - コンクリートブロックの連結構造 - Google Patents
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そのため、特許文献1には、比較的軽量で、取り扱い易い立方体からなるプレキャスト製のコンクリートブロックが開示されている。このコンクリートブロックは、コンクリート硬化後に取り外し可能な分割中子を用いて六つの外面全てに連通した中空部を備えている。特許文献1のコンクリートブロックでは、同一外形の円柱状の分割中子をその軸線方向が直交及び一致するように配置することで中空部を形成している。
一方、護床工のように規模の大きな構造体を複数個の中空ブロックによって構成する場合、水圧の影響によって個々のブロックの配置が容易に変動しないように、各ブロック間を連結して、構造全体として水圧に対抗できる構造が必要となる。
特許文献3には、連結手段に柔部材であるワイヤーではなく剛部材であるボルトを用いている点で相違するが、特許文献2とほぼ同様な構成の継手装置(特許文献2の連結装置に相当。)が開示されている。
この引張力と反力との関係について図1を参照して説明する。図1は、特許文献2に記載されているワイヤーによる連結装置の中空ブロックとワイヤーエンドの関係を拡大して示した断面図である。同図より、支圧部材SPを構成するチューブTは中空ブロックCBの貫通孔H方向に延びてワイヤーWを通す一種のガイドとなり、プレートPは開口部Oの円弧面COに面接触する。ワイヤーエンドWEはリング状に設けられ、クリップCによって固定されており、そこにシャックルSが取り付けられている。この状態でワイヤーWに引張力TFが作用すると、引張力TFはワイヤーエンドWEからプレートPを介して中空ブロックCBに伝達される。ここで前記のとおり、中空ブロックCBの円弧面CO(受圧面)が引張方向と直交する面に対して傾斜しているため、同図に示すような円弧面COに対して直角方向の分力TFv及び接線方向の分力TFhが発生する。この接線方向の分力TFhの作用によって、チューブTとプレートPに挟まれた中空ブロックCBの出隅部Dに局所的な応力が生じ、コンクリートの割れ欠けを誘引する原因となる。特に、護床工として中空ブロックを河床に設置した場合、季節による水位や流速の変動に加え、集中豪雨等の影響により土石砂や流木などの外力が繰り返し作用する過酷な環境下では、経年とともに出隅部Dの損傷が拡大し、中空ブロック全体に派生する可能性も懸念される。
係るコンクリートブロックの連結構造によれば、連結用の受圧部が連結手段から伝達される引張力の方向に対して直交する面に形成されているので、受圧部にはその面に直交する方向に対してのみその反力が圧縮力としてコンクリートに作用するため、コンクリートの割れ欠け等、損傷の原因となる局所的な応力が生じず、耐久性の向上が期待できる。
係るコンクリートブロックによれば、底部には開口が無い、あるいは他の部分に比べて開口が小さいため、重心がブロック中心よりも下側(底部側)にあり、水流に対して安定している。また、底部の開口を無くす、あるいは小さくすることで、底部の強度が高まるため、特許文献1のコンクリートブロックに比べて、作用応力に対する耐力の向上を図ることができ、コンクリートブロックの下方の河床等が洗掘され難い。なお、当該コンクリートブロックは、護床工に限定されるものではなく、例えば根固めブロックとして使用することも可能である。
連結手段にワイヤとワイヤエンドを用いることにより、ワイヤの柔軟性のため、ブロックを不整地盤に倣って配置することができる。また、ワイヤエンドと受圧部との間に余裕を持たせることにより、各ブロック単位で局所的な変動が生じても、その変動をワイヤの余裕代で吸収することが可能となる。
また、連結手段にボルト及びナットを用いることにより、そのボルトの剛性によって、ブロック間の連結の一体性を高めることができる。
<コンクリートブロック1A(第一の実施形態)>
コンクリートブロックの第一の実施形態では、河川の護床を形成するために使用するコンクリートブロック1Aについて説明する。コンクリートブロック1Aを河床に複数並設すると、護床が形成される。
図2に示すように、コンクリートブロック1Aは、中空部2を有する立方体状を呈している。中空部2は、コンクリートブロック1Aの底面(ブロック底面11)を除く五つの外面(ブロック上面12およびブロック側面13)に連通している。すなわち、コンクリートブロック1Aは、ブロック底面11以外の五つの面(ブロック上面12およびブロック側面13,13,…)にそれぞれ開口3が形成されている。中空部2は、ブロック上面12およびブロック側面13,13,…からコンクリートブロック1Aの中心部に向けて延在する同一直径の円柱状の空洞が五つ組み合わされた形状を有している。したがって、ブロック上面12および四つのブロック側面13,13,…に形成された開口3,3,…は、全て同サイズの円形である。
本実施形態の型枠5は、せき板51を組み合わせることにより立方体状を呈している。
中子6は、主中子61と、4つの副中子62,62,…とを組み合わせることにより形成されている。
主中子61は、開口3と同一の直径を有する円柱状部材であって、コンクリートブロック1Aの1辺の長さよりも短い長さを有している。本実施形態の主中子61の下端面は平面を呈している。主中子61は、型枠5の中央部に立設するように配設する。このとき、主中子61の上端面が型枠5の上端面と面一となるように配設することで、主中子61の下端面と型枠5の底部のせき板51の内面との間に隙間(底版のとして必要な厚さを確保できる隙間)Sを設けておく。なお、本実施形態では、隙間Sの高さを、ブロック側面13に形成された開口32の下端から当該ブロック側面13とブロック底面11との角部までの長さとしている。また、主中子61は型枠5の側面に配設された対向する一対のせき板51,51に横架するように配設してもよい。この場合には、主中子61の長さをコンクリートブロック1Aの一辺の長さと同一とし、主中子61の両端面をせき板51の内面に当接させる。
4つの副中子62,62,…は、開口3(主中子61)と同一の直径を有する円柱状部材であって、主中子61の側面中央部に設置される。副中子62の主中子61側の端面は、主中子61の外面形状に応じて円筒面(上面視円弧状)に窪んでいる(図4参照)。一方、副中子62の主中子61と反対側の端面は平面である。4つの副中子62,62,…は、それぞれ主中子61の中心軸と直交するように、四方に向けて延出させる。各副中子62の先端面(主中子61と反対側の端面)は、型枠5の側面に設けられたせき板51の内面に当接させる。
そして、コンクリートに所定の強度が発現したら、型枠5を脱型するとともに、中子6を取り除く。中子6を取り除く際には、図4に示すように、各副中子62をそれぞれブロック側面13の開口3から抜き出した後、主中子61をブロック上面12の開口3から抜き出す。
コンクリートブロック1Aと同様に、河川の護床を形成するために使用するコンクリートブロック1Bについて説明する。
図5に示すように、コンクリートブロック1Bは、中空部2を有する立方体状を呈している。中空部2は、コンクリートブロック1Bの各面(ブロック底面11、ブロック上面12およぼブロック側面13,13,…)に連通している。したがって、コンクリートブロック1Bの6つの面には、それぞれ開口3,3,…が形成されている。中空部2は、各面(ブロック底面11、ブロック上面12およびブロック側面13,13,…)からコンクリートブロック1Bの中心部に向けて延在する円柱状の空洞が組み合わされた形状を有している。ブロック底面11からコンクリートブロック1Bの中心部に向けて延在する空洞は、その他の外面(ブロック上面12およびブロック側面13,13,…)から延在する空洞に比べて、小さい直径を有している。一方、ブロック上面12およびブロック側面13,13,…から延在する空洞は、全て同じ直径である。すなわち、ブロック底面11に形成された開口31の直径は、ブロック上面12およびブロック側面13,13,…に形成された開口32,32,…の直径よりも小さい。
この他のコンクリートブロック1Bの詳細は、コンクリートブロック1Aと同様なため、詳細な説明は省略する。
本実施形態の型枠5は、せき板51を組み合わせることにより立方体状を呈している。
本実施形態の中子6は、主中子61と、4つの副中子62,62,…とを組み合わせることにより形成されている。なお、副中子62の詳細は、コンクリートブロック1Aと同様なため、詳細な説明は省略する。
主中子61は、円柱状の本体部分63と、本体部分63の下端に形成された円柱状の底部分64とを有している。本体部分63は、ブロック上面12に形成された開口32と同じ直径を有していて、コンクリートブロック1Bの1辺の長さよりも短い長さを有している。底部分64は、ブロック底面11に形成された開口31と同じ直径(本体部分63の直径よりも小さい直径)を有していて、コンクリートブロック1Bの1辺の長さから本体部分63の長さを差し引いた長さを有している。すなわち、主中子61の全長は、コンクリートブロック1の1辺の長さと同一である。なお、本実施形態では、底部分64の長さを、ブロック側面13に形成された開口32の下端から当該ブロック側面13とブロック底面11との角部までの長さとしている。
本実施形態では、主中子61を型枠5の中央部に立設するように配置する。このとき、主中子61(底部分64)の下端面は、型枠5の底部に配設されたせき板51の内面に当接させる。
そして、コンクリートに所定の強度が発現したら、型枠5を脱型するとともに、中子6を取り除く。中子6を取り除く際には、4つの副中子62,62,…をコンクリートブロック1Bの各ブロック側面13から抜き出した後、主中子61をコンクリートブロック1Bの上面から抜き出す。
本実施形態では、ブロック側面13の開口3の周囲には中空部2に通じる貫通孔4が形成されている。各ブロック側面13に形成された貫通孔4は、当該ブロック側面13に対して垂直である。貫通孔4は、後述する連結手段を挿通することが可能な内径を有している。コンクリートブロック1は、貫通孔4を挿通させた連結手段を介して、隣接する他のコンクリートブロック1と連結可能である。なお、貫通孔4の数および配置は限定されるものではない。また、貫通孔4は必要に応じて形成すればよい。さらに、貫通孔4は、ブロック底面11やブロック上面12に形成してもよい。
本実施形態では、貫通孔4のコンクリートブロック1の開口3側端部には、コンクリートブロック連結用の受圧部8が後述する連結手段9の引張方向に対して直交する面に以下に示すとおり2つの形態で形成されている。
図7(a)及び(b)は、コンクリートブロック1A又は1Bの開口3側端部に凹状及び凸状に形成された受圧部8A及び8Bの斜視図である。後述する連結手段9の引張力を受ける受圧面81及び82は係る引張方向に対して直交する面に形成されているため、連結手段9の引張力が受圧面81及び82に対して直交する方向にコンクリートに圧縮力として作用する。このため、特許文献1及び2に記載されているような受圧面が連結手段の引張方向と直交する面に対して傾斜している形態と比べ、水流や土石、流木等を原因とする繰り返し外力によって、コンクリートに割れや欠けを誘発するような局所的な応力が発生し難く、耐久性の向上が期待できる。
受圧部8A及び8Bは、ウレタンやスチロール、その他プラスチック類や木材等、コンクリートの側圧に対して形状の保持が可能な剛性を有しつつ、形状の加工や取り外しが容易な素材を用いて副中子62の所定の位置に別途固定した型枠や、副中子62に一体的に形成された型枠を用いて形成しても良い。
本実施形態の連結構造のうち、ブロック間を連結するための引張部材は、主部材をワイヤとする連結手段9Aと、同じく主部材を鋼製のボルトとする連結手段9Bによって構成される。
図8は、本発明によるコンクリートブロック1の受圧部8のうち、凹状の受圧部8Aを例に連結手段9を取り付けた断面図であり、(a)にワイヤタイプ、(b)にボルトタイプをそれぞれ示す。
ワイヤエンド92は、リング状に設けられ、クリップ93によって固定されており、そこにはシャックル94が着脱容易な連環として取り付けられている。クリップ93は、いわばワイヤエンド92から受圧プレート83に伝えられるワイヤ91の張力の入力端部として機能する。
ボルト95の端部は、ナット96によって固定されており、受圧プレート83に伝えられるボルト95の張力の入力端部として機能する。また、ナット95とプレート83の間に必要に応じて不図示のワッシャや座金等を配置しても良い。さらに、緩みを防止するため、ダブルナットを用いても良い。
さらに、連結手段にボルト及びナットを用いることにより、そのボルトの剛性によって、ブロック間の連結の一体性を高めることができる。
本解析では、図9(a)に示すように、各辺が1200mmの立方体状で、ブロック上面12およびブロック側面13,13,…にそれぞれ900mmの開口3が形成されているコンクリートブロック1に対して、上流側から水流が作用した場合の応力状態を解析した。また、比較例として、図9(b)に示すように、各辺が1200mmの立方体状で、全面(ブロック底面111、ブロック上面112およびブロック側面113)にそれぞれ900mmの開口103が形成されているコンクリートブロック100の応力状態についても解析を行った。表1に解析に使用したコンクリートブロック1A,100の材料定数を示す。
解析結果(引張応力および圧縮応力)を表2に示す。
例えば、コンクリートブロック1Aの用途は護床工に限定されるものではない。根固めブロックとして使用することもできる。
また、中子6の部材点数や、中子6を構成する主中子61や副中子62の長さ等は限定されるものではなく、適宜形成すれば良い。
さらに、コンクリートブロック1の底面11は、本発明の実施形態であるコンクリートブロック1A及び1Bの底面11に限定されるものではなく、特許文献1に記載のコンクリートブロックと同様に、同一外形の円柱状の分割中子をその軸線方向が直交及び一致するように配置することで中空部が形成されたコンクリートブロックの底面でも良い。
11 ブロック底面
12 ブロック上面
13 ブロック側面
2 中空部
3,31,32 開口
4 貫通孔
5 型枠
51 せき板
6 中子
61 主中子
62 副中子
63 本体部分
64 底部分
7 支圧プレート
8 受圧部
9 連結手段
Claims (6)
- 外面からブロック中心部に向けて延在する同一直径の円柱状の空洞が組み合わされ形成された中空部を有する立方体状のコンクリートブロックの連結構造であって、
前記連結構造は前記ブロックに設けた貫通孔と、
前記貫通孔の前記ブロックの内方端部の面に設けた連結用の受圧部と、
前記貫通孔に挿通して前記受圧部にて前記ブロックに固定し、少なくとも隣接する二つの該ブロックを連結する連結手段とを具備し、
前記受圧部は前記連結手段の引張方向に対し直交する面になるように、前記ブロックの内方端部の面に凹状ではなく、該受圧部の基端部に向かって裾広がりの凸状に形成され、
前記ブロックの内方端部の面は前記連結手段の引張方向と直交する面に対して傾斜していることを特徴とするコンクリートブロックの連結構造。 - 中空部を有する立方体状のコンクリートブロックであって、
前記中空部は、底面を除く五つの外面のそれぞれからブロック中心部に向けて延在する同一直径の円柱状の空洞が組み合わされた形状を有していて、
側面から延在する前記空洞の中心は、当該側面の中心よりも上側に位置していることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリートブロックの連結構造。 - 河川の護床を形成するために使用する中空部を有する立方体状のコンクリートブロックの連結構造であって、
前記中空部は、底面を除く五つの外面のそれぞれからブロック中心部に向けて延在する同一直径の円柱状の第一空洞と、前記底面からブロック中心部に向けて延在する円柱状の第二空洞と、が組み合わされた形状を有しており、
前記第二空洞の中心は、前記底面の中心よりも下流側に位置していて、
前記第二空洞の直径は、前記第一空洞の直径よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載のコンクリートブロックの連結構造。 - 河川の護床を形成するために使用する中空部を有する立方体状のコンクリートブロックの連結構造であって、
前記中空部は、底面を除く五つの外面のそれぞれからブロック中心部に向けて延在する同一直径の円柱状の第一空洞と、前記底面からブロック中心部に向けて延在する円柱状の第二空洞と、が組み合わされた形状を有しており、
側面から延在する前記第一空洞の中心は、当該側面の中心よりも上側に位置していて、
上面から延在する前記第一空洞の中心は、当該上面の中心よりも下流側に位置しており、
前記第二空洞の中心は、前記底面の中心よりも下流側に位置していて、
前記第二空洞の直径は、前記第一空洞の直径よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載のコンクリートブロックの連結構造。 - 前記連結手段は少なくとも前記貫通孔に挿通されたワイヤと、
前記受圧部より前記ブロックの内方側に前記ワイヤの端部に設けられたワイヤエンドと、
からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のコンクリートブロックの連結構造。 - 前記連結手段は少なくとも前記貫通孔に挿通されたボルトと、
前記受圧部より前記ブロックの内方側に前記ボルトの端部に設けられたナットと、
からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のコンクリートブロックの連結構造。
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