JP7021074B2 - 耐コロナ性部材用樹脂組成物、樹脂組成物の耐コロナ性発現方法及び耐コロナ性部材 - Google Patents
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Description
また、特許文献2及び3には、PAS樹脂と、導電性カーボンブラック、黒鉛、エポキシ基含有α-オレフィン系共重合体を含有する樹脂組成物からなる成形品(ケーブル用部品、難着雪リング)が開示されている。これは、樹脂組成物の体積抵抗率を適度な値にすることで耐コロナ性等とともに、耐熱性、耐候性、難燃性、防水性、気密性、靱性などの諸性能を追求したものである。
前記シリコーン系ポリマーが、シリコーン・アクリル共重合体、シリコーン系コアシェルゴム、及びシリコーン複合パウダーからなる群より選ばれる1種または2種以上であり、
前記非導電性無機フィラーが、繊維状無機フィラー、粒状無機フィラー、及び板状無機フィラーからなる群より選ばれる1種または2種以上であり、かつ、前記粒状無機フィラー及び前記板状無機フィラー(ガラスフレークを除く)を含有する場合においてはそれぞれ1種単独では含有せず、少なくとも前記繊維状無機フィラーとともに含有し、
前記非導電性無機フィラーの含有量が、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂100体積部に対して30体積部以上150体積部以下であり、
前記シリコーン系ポリマーの含有量が、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂及び前記シリコーン系ポリマーの含有量の合計に対して、45体積%以下であり、かつ、
前記シリコーン系ポリマーと前記非導電性無機フィラーの含有量の合計が、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂100体積部に対して、85体積部以上である耐コロナ性樹脂組成物に関する。
〔3〕本発明の更なる一態様は、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂がポリフェニレンスルフィド樹脂を含有する、上記耐コロナ性樹脂組成物に関する。
〔4〕本発明の更なる一態様は、前記シリコーン系ポリマーがシリコーン・アクリル共重合体及びシリコーン系コアシェルゴムからなる群より選ばれる1種または2種以上を含有する、上記耐コロナ性樹脂組成物に関する。
〔5〕本発明の更なる一態様は、前記非導電性無機フィラーの含有量が、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂100体積部に対して40体積部以上である、上記耐コロナ性樹脂組成物に関する。
ポリアリーレンスルフィド樹脂に、シリコーン系ポリマー及び非導電性無機フィラーを添加する工程を含み、
前記シリコーン系ポリマーが、シリコーン・アクリル共重合体、シリコーン系コアシェルゴム、及びシリコーン複合パウダーからなる群より選ばれる1種または2種以上であり、
前記非導電性無機フィラーが、繊維状無機フィラー、粒状無機フィラー、及び板状無機フィラーからなる群より選ばれる1種または2種以上であり、かつ、前記粒状無機フィラー及び前記板状無機フィラー(ガラスフレークを除く)を含有する場合においてはそれぞれ1種単独では含有せず、少なくとも前記繊維状無機フィラーとともに含有し、
前記非導電性無機フィラーの含有量が、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂100体積部に対して30体積部以上150体積部以下であり、
前記シリコーン系ポリマーの含有量が、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂及び前記シリコーン系ポリマーの含有量の合計に対して、45体積%以下であり、かつ、
前記シリコーン系ポリマーと前記非導電性無機フィラーの含有量の合計が、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂100体積部に対して、85体積部以上である樹脂組成物の耐コロナ性発現方法に関する。
〔7〕本発明の別の一態様は、上記耐コロナ性樹脂組成物を成形してなる耐コロナ性部材に関する。
本実施形態の耐コロナ性樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(PAS樹脂)と、特定のシリコーン系ポリマーと、非導電性無機フィラーとを、所定の比率で含有することを特徴としている。
なお、本明細書において、シリコーン・アクリル共重合体、シリコーン系コアシェルゴム、及びシリコーン複合パウダーから選ばれる1種以上のシリコーン系ポリマーを単に「シリコーン系ポリマー」と記載することもある。
本実施形態の耐コロナ性樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(PAS樹脂)を含有する。PAS樹脂は、機械的性質、電気的性質、耐熱性その他物理的・化学的特性に優れ、且つ、加工性が良好であるという特徴を有する。
PAS樹脂は、主として、繰返し単位として-(Ar-S)-(但しArはアリーレン基)で構成された高分子化合物であり、本実施形態では一般的に知られている分子構造のPAS樹脂を使用することができる。
本実施形態の耐コロナ性樹脂組成物は、シリコーン・アクリル共重合体、シリコーン系コアシェルゴム、及びシリコーン複合パウダーからなる群より選択される1種または2種以上のシリコーン系ポリマーを含有する。これらのシリコーン系ポリマーは、耐コロナ性向上の効果に優れている。
シリコーン・アクリル共重合体は、アクリル構造単位(アクリル成分)とSi含有構造単位(シリコーン成分)とを含む共重合体である。アクリル成分は、(メタ)アクリル酸エステル等のアクリル系モノマーに由来する。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、C1-12アルキルアクリレートが挙げられる。Si含有構造単位としては、モノメチルシロキサン単位、ジメチルシロキサン単位、モノフェニルシロキサン単位、ジフェニルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位等が挙げられるがこれらに限定されない。また、これらの構造単位の一部が、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、メルカプト基などで変性されていてもよい。
シリコーン・アクリル共重合体の重合形態は特に限定されないが、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。
シリコーン系コアシェルゴムとしては、コア層と、コア層を覆う1層以上のシェル層とから構成される粒子状のものが挙げられ、コア層またはシェル層の少なくとも1層がゴム弾性体を含有する。ゴム弾性体は特に限定されないが、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分等から選ばれる1種以上を重合させて得られるゴム、またはその架橋ゴムが好ましい。また、コア層またはシェル層の少なくとも1層が、主成分として上述のSi含有構造単位を含むゴム弾性体であることがより好ましい。コア層とシェル層はグラフト共重合によって結合されていてもよい。一実施形態では、コア層がゴム弾性体を含むことが好ましい。
シリコーン複合パウダーの例としては、球状シリコーンゴムの表面をシリコーンレジンで被覆した球状粉末等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
本実施形態の耐コロナ性樹脂組成物は、非導電性無機フィラーを含有する。非導電性無機フィラーは、繊維状無機フィラー、粒状無機フィラー、及び板状無機フィラーからなる群より選ばれる1種または2種以上である。そして、粒状無機フィラー及び板状無機フィラー(ガラスフレークを除く)を含有する場合においてはそれぞれ1種単独では含有せず、少なくとも前記繊維状無機フィラーとともに含有する。なお、本明細書において、「無機フィラー」と記載した場合、導電性フィラーであることを明記していない限り、非導電性無機フィラーを意味する。
繊維状無機フィラーの例としては、比表面積が大きいものであれば特に限定されない。例えば、ガラス繊維、ウィスカー、ウォラストナイト等が挙げられ、ガラス繊維が好ましい。繊維状無機フィラーは、繊維径が3~13μmの範囲にあるものが好ましく、3~11μmの範囲にあるものがより好ましい。繊維径が13μm以下であると機械強度向上の観点でより好ましい。また、入手の容易さの点では繊維径が3μm以上であることが好ましい。繊維径が3~11μmの範囲にあるものがより好ましい。また、異径比が1~4、かつ、アスペクト比が2~1500の形状であることが好ましい。なお、本明細書において、異径比とは、「長手方向に直角の断面の長径(断面の最長の直線距離)/短径(長径と直角方向の最長の直線距離)」であり、アスペクト比とは、「長手方向の最長の直線距離/長手方向に直角の断面の短径(「断面の最長の直線距離」と直角方向の最長の直線距離)」である。
粒状無機フィラーとしては、比表面積が大きく電気トリーの進行を遅延させることができるものであれば特に限定されない。粒状無機フィラーの例としては、ガラスビーズ、シリカ、炭酸カルシウム、タルク(粒状)等が挙げられる。低吸水性である観点では、ガラスビーズ及びシリカが好ましく、コストの観点では、ガラスビーズが好ましい。形状は、異径比が1~4、かつ、アスペクト比が1~2の形状(球状を含む)がより好ましい。表面平滑性による放電緩和の観点では球状フィラーがより好ましい。粒径は、後述する成形品(耐コロナ性部材)中における好ましいモード径を達成し得る範囲であることが好ましい。
板状無機フィラーとしては、電気トリーの進行を遅延させることができるものであれば特に限定されない。例えば、ガラスフレーク、マイカ、タルク(板状)、カオリン、クレイ、アルミナ等が挙げられる。耐コロナ性向上の観点から、ガラスフレーク、マイカ、及びタルクが好ましく、ガラスフレーク及びマイカがより好ましい。板状無機フィラーの形状としては、例えば、異径比が4より大きく、アスペクト比が1~1500の形状が好ましい。厚みに関しては、薄いほど(例えば、平均厚みが20μm以下)、枚数の絶対数が増えるため、比表面積が大きくなり、ラビリンス効果が高まるのでより好ましい。粒径は、後述する成形品(耐コロナ性部材)中における好ましいモード径を達成し得る範囲であることが好ましい。
中でも、板状無機フィラー(ガラスフレークを除く)及び/又は粒状無機フィラーを用いる場合、これらの無機フィラーと繊維状無機フィラーとを併用することにより機械物性の向上に寄与し得る。板状無機フィラー(ガラスフレークを除く)及び/又は粒状無機フィラーと繊維状無機フィラーとを併用する場合には、全非導電性無機フィラー中、繊維状無機フィラーは、以下の量とすることが好ましい。すなわち、板状無機フィラー(ガラスフレークを除く)の場合、それと併用する繊維状無機フィラーは15体積%以上が好ましく、25体積%以上がより好ましい。また、粒状無機フィラーの場合、それと併用する繊維状無機フィラーは5体積%以上が好ましく、10体積%以上がより好ましい。
なお、繊維状無機フィラー及びガラスフレークはそれぞれ単独で使用しても機械物性の向上に寄与し得る。
本実施形態の耐コロナ性樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、滑剤、核剤、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、金属不活性剤、その他老化防止剤、UV吸収剤、安定剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、発泡剤、有機フィラー、導電性フィラー等を含有していてもよい。
本実施形態の耐コロナ性樹脂組成物は、PAS樹脂と、シリコーン系ポリマーと、無機フィラーと、を少なくとも含有する混合成分を、溶融混練することにより製造することができる。本実施形態の耐コロナ性樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、当該技術分野で知られている各種方法を採用することができる。例えば、上述した各成分を混合した後、押出機に投入し、溶融混練し、ペレット化する方法が挙げられる。また、一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを所定量混合して成形に供し、成形後に目的組成の成形品を得る方法、成形機に各成分の1又は2以上を直接仕込む方法等を用いてもよい。
本実施形態の樹脂組成物の耐コロナ性発現方法は、PAS樹脂を含有する樹脂組成物に、所定量のシリコーン系ポリマー及び無機フィラーを添加する工程を含むことにより、耐コロナ性を発現させることを特徴としている。
既述の通り、本実施形態の耐コロナ性樹脂組成物は、所定量のシリコーン系ポリマー及び無機フィラーを添加することで機械物性を維持しながら優れた耐コロナ性を発現させている。換言すると、樹脂組成物に所定量のシリコーン系ポリマー及び無機フィラーを添加することにより、その樹脂組成物に優れた耐コロナ性及び機械物性を発現させることができる。
本実施形態の樹脂組成物の耐コロナ性発現方法におけるPAS樹脂、シリコーン系ポリマー、及び無機フィラーは、既述の耐コロナ性樹脂組成物におけるPAS樹脂、シリコーン系ポリマー、及び無機フィラーと同じであり、耐コロナ性を発現させるための各成分の好ましい例や添加量、添加し得る他の成分も同様である。
本実施形態の耐コロナ性部材は、既述の耐コロナ性樹脂組成物を成形してなることを特徴とし、耐コロナ性と機械物性とのバランスに優れている。
本実施形態の耐コロナ性部材を製造する方法としては特に限定はなく、当該技術分野で知られている各種方法を採用することができる。例えば、記述の耐コロナ性樹脂組成物を押出機に投入して溶融混練してペレット化し、このペレットを所定の金型を装備した射出成形機に投入し、射出成形することで作製することができる。
耐コロナ性部材の形状は特に限定されず用途に応じて適宜選択することができる。例えば、シート状、板状、筒状、被膜状等の他、所望の形状の三次元成形体に成形することができる。
以上より、図2に示すように板状無機フィラーを配向した耐コロナ性部材を、その内部の板状無機フィラーがコロナ放電に起因する電圧の印加方向と直交するように配置することで、耐コロナ性の効果をより効果的に発揮することができる。
例えば、シート状の耐コロナ性部材においては、そのシートの肉厚方向、すなわちシート面と直交する方向に高周波・高電圧が印加された場合、コロナ放電によりシートの肉厚方向に電気トリーが進行するが、板状無機フィラーが上記のように配向していると電気トリーの進行を最も効果的に阻止することができ、シート状の耐コロナ性部材の寿命を長くすることが可能となる。他の形状においても同様である。
各実施例・比較例において、表1~表4に示す各原料成分をドライブレンドして得た混合物を、シリンダー温度320℃の二軸押出機に投入し(無機フィラーは押出機のサイドフィード部より別添加)、溶融混練し、ペレット化した。表1~表4に示す各原料成分の詳細を以下に記す。
・PPS樹脂1:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:130Pa・s(せん断速度:1216sec-1、310℃))、比重:1.35(23/4℃)
・PPS樹脂2:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:20Pa・s(せん断速度:1216sec-1、310℃))、比重:1.35(23/4℃)
・PPS樹脂3:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:30Pa・s(せん断速度:1216sec-1、310℃))、比重:1.35(23/4℃)
上記PPS樹脂1~3の溶融粘度は以下のようにして測定した。
東洋精機製作所製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmL/フラットダイを使用し、バレル温度310℃、せん断速度1216sec-1での溶融粘度を測定した。
・シリコーン系ポリマー1:(株)カネカ製 KANE ACE MR-01(シリコーンアクリルコアシェルゴム)、比重:1.1(23/4℃)
・シリコーン系ポリマー2:東レ・ダウコーニング(株)製、DOW CORNING TORAY DY 33-315(ポリオルガノシロキサン)、比重:0.98(23/4℃)
・シリコーン系ポリマー3:日信化学工業(株)製、R-181S(シリコーン・アクリル共重合体)、比重:1.03(23/4℃)
・ガラス繊維1:チョップドガラス繊維、日本板硝子(株)製、ECS03T-747H 平均繊維径:10.5μm、比重:2.6(23/4℃)
・ガラスフレーク:日本板硝子(株)製、REFG-108 平均粒子径(50%d):623μm、比重:2.6(23/4℃)
・ガラスビーズ:ポッターズ・バロティーニ(株)製、GL-BS、平均粒子径(50%d):21μm、比重:2.6(23/4℃)
・金マイカ:西日本貿易(株)製 150-S、平均粒子径(50%d):163μm、比重:2.9(23/4℃)
各非導電性無機フィラーについて、PPS樹脂1と非導電性無機フィラーとを、PPS樹脂1:非導電性無機フィラー=70:30(体積比)の比率で、シリンダー温度320℃の二軸押出機に投入し(無機フィラーは押出機のサイドフィード部より別添加)、溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットから、射出成形機(住友重機械工業(株)製、SE100D)により、シリンダー温度320℃、金型温度150℃で縦100mm、横100mm、厚み3mmの試験片(平板)を作製し、IEC60093に準拠して、印加電圧500V、23℃で体積抵抗率を測定したところ、いずれも、1×1015Ω・cm以上であった。
各実施例・比較例において作製した試験片10を、図1に示すように、高圧側電極12(φ9.5mm)とアース側電極14(φ25mm)の間に固定し、耐電圧試験機(ヤマヨ試験機有限会社製YST-243WS-28)を用いて、空気中で、130℃、周波数200Hz、印加電圧18kVを加え、絶縁破壊が生じるまでの時間を測定した。測定後、試験片上のコロナ放電を当てた辺り(具体的には、電極を接触させた部位及びその周辺)の白化の有無を、目視で確認した。測定結果を表1~表4に示す。
ISO178に準じて評価用試験片をシリンダー温度320℃、金型温度150℃で射出成形にて成形し、曲げ強さを評価した。結果を表1~表4に示す。
これに対し、無機フィラーの含有量がPAS樹脂100体積部に対して30体積部未満である比較例1では、コロナ破壊寿命が200時間程度であり耐コロナ性が劣ることが示された。また、無機フィラーの含有量がPAS樹脂100体積部に対して150体積部を超える比較例6及び比較例7では、樹脂組成物の溶融粘度の増加により押出成形を行うことができなかった。
また、実施例1及び実施例2と、比較例4との比較から、本願発明の特定のシリコーン系ポリマーを用いた場合に、優れた耐コロナ性が得られることが分かる。
また、表1~表4に示す結果より、樹脂成分中のシリコーン系ポリマーの比率が低い場合であっても、シリコーン系ポリマーと無機フィラーの含有量の合計がPAS樹脂100体積部に対して85体積部以上であれば、優れた耐コロナ性が得られることが分かる。これに対し、シリコーン系ポリマーと無機フィラーの含有量の合計がPAS樹脂100体積部に対して85体積部未満である比較例2及び3では、無機フィラーの含有量がPAS樹脂100体積部に対して30体積部以上であっても、優れた耐コロナ性は得られなかった。
また、比較例5と実施例3及び実施例4との比較より、シリコーン系ポリマーの含有量が、PAS樹脂とシリコーン系ポリマーの含有量の合計に対して、45体積%以下であると、優れた耐コロナ性とともに、優れた機械物性が得られることが示された。さらに、実施例3と実施例4の比較により、樹脂成分中のシリコーン系ポリマーの比率がより低い場合に、より良好な機械物性(曲げ強度)が得られることが分かる。
また、それぞれ形状が異なる無機フィラーを同程度の含有量で用いた実施例・比較例(無機フィラー以外の成分はほぼ同じ)を比較すると以下のことが分かる。すなわち、繊維状のものを単独で用いた実施例1、板状のもの(ガラスフレーク)を単独で用いた実施例5より、繊維状無機フィラー、ガラスフレークを単独で用いても良好な機械物性(曲げ強度)が得られることが分かる。また、粒状のもの(ガラスビーズ)と繊維状のもの(ガラス繊維)とを併用した実施例14~16、及び粒状のものを単独で用いた比較例9、並びに板状のもの(マイカ)と繊維状のもの(ガラス繊維)とを併用した実施例12、及び板状のものを単独で用いた比較例8を比較すると、粒状無機フィラー及び板状無機フィラー(ガラスフレークを除く)は単独で用いるのではなく、繊維状無機フィラーと併用することにより初めて良好な機械物性が得られることが分かる。
10A 耐コロナ性部材
10B 耐コロナ性部材
12 高圧側電極
14 アース側電極
16 非導電性無機フィラー
Claims (4)
- 樹脂組成物の耐コロナ性発現方法であって、
ポリアリーレンスルフィド樹脂に、シリコーン系ポリマー及び非導電性無機フィラーを添加する工程を含み、前記工程において、
前記シリコーン系ポリマーとして、シリコーン・アクリル共重合体及びシリコーン系コアシェルゴムからなる群より選ばれる1種または2種を用い、
前記非導電性無機フィラーとして、粒状無機フィラー及び板状無機フィラーのうちの1種または2種を用い、かつ、前記板状無機フィラーとしてガラスフレークを用いる場合を除き、前記粒状無機フィラー及び前記板状無機フィラーをそれぞれ1種単独では用いず、少なくとも繊維状無機フィラーとともに用い、
前記非導電性無機フィラーの含有量を、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂100体積部に対して30体積部以上150体積部以下とし、
前記シリコーン系ポリマーの含有量を、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂及び前記シリコーン系ポリマーの含有量の合計に対して、45体積%以下とし、かつ、
前記シリコーン系ポリマーと前記非導電性無機フィラーの含有量の合計を、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂100体積部に対して、85体積部以上とする樹脂組成物の耐コロナ性発現方法。 - 前記繊維状無機フィラーが、ガラス繊維であり、前記粒状無機フィラーが、ガラスビーズ及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記板状無機フィラーが、ガラスフレーク及びマイカからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂組成物の耐コロナ性発現方法。
- 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂がポリフェニレンスルフィド樹脂を含有する、請求項1または2に記載の樹脂組成物の耐コロナ性発現方法。
- 前記非導電性無機フィラーの含有量が、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂100体積部に対して40体積部以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物の耐コロナ性発現方法。
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