本開示の分野は、治療目的のための身体組織へのエネルギインパルス(及び/または場)の送出に関する。本開示は、特に、片頭痛、てんかんまたはその他の病状を治療するデバイス及び方法に関し、ここでは、患者は、このデバイス及び方法を、医療専門家の直接的な支援なしで、自己医療として使用する。これらの状態を治療するために使用されるエネルギインパルス(及び/または場)は、電気及び/または電磁エネルギを包含し、患者に、特に患者の迷走神経に、非侵襲的に送出される。
病状の治療に電気刺激を用いることは周知である。筋肉と神経との間の現在理解されている電気生理学的関係の最も成功した用途は、心臓ペースメーカである。心臓ペースメーカの起源は、1800年代に遡るが、1950年までは、外部でかつ嵩張るものであろうとも、最初の実用的なペースメーカは開発されていなかった。最初の実際に機能的で、装用可能なペースメーカは1957年に登場し、1960年に最初の完全に埋込可能なペースメーカが開発された。
このころ、静脈を介して心臓に電気リードを接続可能なことが発見され、これは、胸腔を開いて心臓の壁にリードを取り付けることの必要性をなくした。1975年に、ヨウ化リチウム電池の導入で、ペースメーカの電池寿命が数カ月から10年を超えるまでに延びた。現代のペースメーカは、心筋内の種々の異なるシグナリング病状を処置することが可能であり、除細動器としても作用することも可能である(DENOらに対する米国特許第6,738,667号を参照、この開示はあらゆる目的に対して、参照することにより、本明細書に包含される)。リードが患者内に埋め込まれるため、ペースメーカは、埋め込み可能な医療デバイスの例である。
他のこのような例は、埋め込み型電極による脳の電気刺激(脳深部電気刺激法)であり、これは、本態性振戦及びパーキンソン病等の痛み及び運動障害を含む様々な病状を治療するために用いることが認められている(Joel S.PERLMUTTER及びJonathan W.Mink.Deep brain stimulation.Annu.Rev.Neurosci 29(2006):229-257)。
この神経の電気刺激の他の用途は、脊椎の下部における仙骨神経根の刺激による下肢の放散痛の治療である(Paul F.WHITE, Shitong Li及びJen W.Chiu.Electroanalgesia:Its Role in Acute and Chronic Pain Management.Anesth Analg 92(2001):505-513、US特許6871099,題名「Fully implantable microstimulator for spinal cord stimulation as a therapy for chronic pain」WHITEHURST,et alによる)。
迷走神経刺激(迷走神経刺激としてVNSも知られている)は、電気刺激の形態である。これは、最初に、部分的発症てんかんの治療のために開発され、その後、うつ病および他の障害の治療のために開発された。通常、左迷走神経は、最初に手術によりそこに電極を埋め込み、この後、電極を電気刺激器に接続することにより、首の中の位置で刺激される。(特許番号US4702254題名Neurocybernetic prosthesis,ZABARAによる;US6341236 題名Vagal nerve stimulation techniques for treatment of epileptic seizures,OSORIO et alによる;US5299569 題名Treatment of neuropsychiatric disorders by nerve stimulation,WERNICKE et alによる;G.C.ALBERT,C.M.Cook,F.S.Prato,A.W.Thomas.Deep brain stimulation,vagal nerve stimulation and transcranial stimulation:An overview of stimulation parameters and neurotransmitter release.Neuroscience and Biobehavioral Reviews 33(2009):1042-1060;GROVES DA,Brown VJ.Vagal nerve stimulation:a review of its applications and potential mechanisms that mediate its clinical effects.Neurosci Biobehav Rev 29(2005):493-500;Reese TERRY,Jr.Vagus nerve stimulation:a proven therapy for treatment of epilepsy strives to improve efficacy and expand applications.Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc.2009;2009:4631-4634;Timothy B.MAPSTONE.Vagus nerve stimulation: current concepts.Neurosurg Focus 25(3,2008):E9,pp.1~4; ANDREWS,R.J.Neuromodulation.I.Techniques-deep brain stimulation, vagus nerve stimulation,and transcranial magnetic stimulation.Ann.N.Y.Acad.Sci.993(2003):1-13;LABINER,D.M., Ahern,G.L.Vagus nerve stimulation therapy in depression and epilepsy: therapeutic parameter settings.Acta.Neurol.Scand.115(2007):23-33)。
定義による慢性日常性頭痛は、3カ月より多くにわたって、一月当たり少なくとも15日の頻度で生じる。慢性緊張性頭痛等の他の原発性頭痛障害を患う人々と同様に、慢性片頭痛患者は、慢性頭痛患者の集団を包含する(Bert B.VARGAS, David W. Dodick. The Face of Chronic Migraine: Epidemiology, Demographics, and Treatment Strategies. Neurol Clin 27 (2009) 467-479; Peter J. GOADSBY, Richard B. Lipton, Michel D. Ferrari. Migraine - Current understanding and treatment. N Engl J Med 346 (4,2002): 257- 270; Stephen D SILBERSTEIN. Migraine. LANCET 363 (2004):381-391)。
片頭痛は、典型的には、前駆症状、前兆、頭痛、及び、後発症状の段階を経る。これらの全ての段階が必ずしも発生するものではなく、各段階の始まりまたは終わりを区別する必要はなく、前兆の例外もあり得る。1つの片頭痛発作の後発症状が次の片頭痛発作の前駆症状と重ならない限り、発作間の間隔が後発症状に続く。
前駆症状は、前駆兆候が続く誘因事象を有する。前駆症状は、他の症状の中でも、疲労、眠気、高揚感、大食症、抑うつ症、及び、興奮性に特徴があることが多い。過度のストレスまたは感覚集中等の要因(誘発要因とも称される)は、通常、発作の少なくとも48時間より前に生じる。前駆症状の平均的持続時間は、6から10時間であるが、片頭痛の発作の半分は、前駆症状が2時間より少なく(または、無し)であり、片頭痛の発作の約15%は、前駆症状が、12時間から2日にわたって続く。
前兆は、脳内での皮質拡延性抑圧による。片頭痛患者の約20~30%が、通常は、視覚的前兆である前兆を経験しており、これは、視野内で移動する閃輝暗点(ジグザグのライン)として認識される。しかし、前兆症状は、その形態にかかわらず、持続時間及び重さが患者から患者に、更に同じ個人でも大きく異なる。
頭痛段階は、何時でも始まるが、最も一般的には、患者が朝起きたときに、軽い痛みとして始まる。この後、次第に可変速度で増大し、通常、痛みが中から重度として表現されるピークに達する。片頭痛は、子供では頭の両側に生じることが多いが、片側性の痛みの大人のパターンは、青年期に現れることが多い。この痛みは、後頭部/首の領域で開始し、後に前頭側頭骨となると報告されることが多い。拍動性で、肉体的労力で悪化し、あらゆる刺激が頭痛を強める傾向がある。痛みの段階は、大人で4~72時間、子供で1~72時間続き、平均的な持続時間は一般的に1日よりも少ない。痛みの強さは、通常、漸増し、漸減する滑らかな曲線をたどる。頭痛が解消した後、多くの患者に1~2日残存する後発症状が残る。前駆症状中の主たる症状は、精神的疲労等の認知的困難である。
片頭痛/副鼻腔炎による頭痛を治療するための非侵襲的迷走神経刺激を使用する上でのより詳細な背景情報は、同時係属で、本発明の譲受人に譲渡された出願番号US13/109,250、公開番号US20110230701、表題「Electrical and magnetic stimulators used to treat migraine/sinus headache and comorbid disorders」SIMONらによる、及び、出願番号US13/183,721、公開番号US20110276107、表題「Electrical and magnetic stimulators used to treat migraine/sinus headache, rhinitis, sinusitis, rhinosinusitis, and comorbid disorders」SIMONらによるを参照する必要があり、これらは、あらゆる目的に対して参照することにより、全体が包含される。
認知症は、病歴及び連続的な精神状態に関する検査の双方における認知機能障害の兆候に基づく臨床診断である。診断は、新たに取得した情報の学習及び保持(一時的陳述記憶)、総合作業の取扱及び推論能力(実行認知機能)、視空間能力及び地理的方向性、並びに、言語機能の内の2つ以上の障害が存在するときに、行われる。診断は、抑うつ症、ビタミン欠乏症、甲状腺機能低下、腫瘍、硬膜下血腫、中枢神経系感染、ヒト免疫不全ウイルス感染に関係する認知障害、処方薬剤の副作用、及び、薬物乱用等の、そうでなければ認識機能障害の一因となる潜在的に治療可能な障害を除いた後、行っても良い(McKHANN G, Drachman D, Folstein M, Katzman R, Price D, Stadlan EM. Clinical diagnosis of Alzheimer’s disease: report of the NINCDS-ADRDA Work Group under the auspices of Department of Health and Human Services Task Force on Alzheimer’s Disease. Neurology 34(7,1984):939-44; David S. KNOPMAN. Alzheimer’s Disease and other dementias. Chapter 409 (pp. 2274-2283) In: Goldman’s Cecil Medicine, 24th Edn. (Lee Goldman and Andrew I. Schafer, Eds.). Philadelphia : Elsevier-Saunders, 2012; THOMPSON S B. Alzheimers Disease: Comprehensive Review of Aetiology, Diagnosis, Assessment Recommendations and Treatment. Webmed Central AGING 2011; 2(3): WMC001681, pp. 1-42)。
認知症有病率は、71~79才の5%から90才以上の37%まで、年齢と共に増大する。しかし、老齢の有病率に関わらず、アルツハイマー病等の認知症は、加齢過程と一体ではない(NELSON PT, Head E, Schmitt FA, Davis PR, Neltner JH, Jicha GA, Abner EL, Smith CD, Van Eldik LJ, Kryscio RJ, Scheff SW. Alzheimer’s disease is not “brain aging”: neuropathological, genetic, and epidemiological human studies. Acta Neuropathol 121(5,2011):571-87)。遺伝子は、早発型のAD(ケースの1%未満)に役割を果たす。より一般的なADの形式に対する最も強力な遺伝的危険因子は、APOE e4遺伝子であり、その1つまたは複数のコピーをある程度の人口におけるAD患者の60%が持っている。そうでない場合、ADの危険は、低レベルの教育、重度の頭部外傷、脳血管疾患、糖尿病及び肥満によって増加することがある。
認知症の原因となる主要な疾患は、3つの神経変性病(アルツハイマー病、レビー小体病、前頭側頭葉変性症)及び脳血管疾患である。米国では、アルツハイマー病は、認知症のケースの約70%を占め、血管性認知症は、ケースの17%を構成する。レビー小体認知症及び前頭側頭葉変性症は、ケースの残りの13%を、あまり一般的でない原因(例えば、アルコール依存症/中毒認知症、外傷性脳損傷、正常圧水頭症、パーキンソン病認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、及び、不審病因)と共に占める。絶対数では、約540万のアメリカ人が現在、アルツハイマー病を抱えて生活し、約130万のアメリカ人がレビー小体型認知症に冒されている。
それぞれのタイプの認知症の患者は、特定の典型的な症状を示す。アルツハイマー病、では、前向性健忘症が主な症状であり、病気の発生後に生じる事象の新たな記憶を生成する能力の喪失である。レビー小体による認知症は、パーキンソンニズム、幻視、及び、レム睡眠障害により、特徴づけられる。前頭側頭葉変性症は、目立つ行動及び人格変化により、または、この病気の初期段階における目立った言語障害により、特徴付けられる。脳血管性認知症は、アテローム性動脈硬化症の後遺症のことがあり、認知障害の原因である脳の位置の1つまたは複数の脳梗塞(虚血性脳梗塞)によるものである。血管性認知症を伴うアルツハイマー病の同時存在は、一般的であり、これらの2つの認知症を症状のみに基づいて区別することは困難なことがある。
認知力が刻々と日々変化することも、認知症の人が示すことがある。したがって、認知症患者の介護人は、一時的に患者が混乱し、支離滅裂になり、僅か数時間後または次の日に患者が機敏で理路整然とすることがあることにしばしば気付く。これらのいわゆる認識変動の時間的経過及び状況の前例は、このような変動を分析するために開発された臨床的基準を使用して、認知症の1つの形式を他から区別するのに有益となることがある(変動の臨床的評価、1日の変動評価基準、メイヨー変動質問表)。レビー小体による認知症は、一時的かつ自発的な混乱した挿話に関連し、有意な認識活動に参加する力がなく、続いて、多くは数時間のうちに、通常レベルの機能の近くまで戻る。対照的に、アルツハイマー病における認識変動は、潜在的な認識機能障害がそれ自体を示す状況で誘発されることが多く、典型的には、会話における繰り返し、最近の課題または事象に関する物忘れ、または、記憶力貧困による他の行動として現れる。アルツハイマー病の患者における認識変動のこの状況的誘発態様では、刻々とシフトするよりも、より持続した状態でシフト(良い日/悪い日)することが多い。
認識変動のメカニズムは、レビー小体による認知症に一般的な刻々のタイプ、または、アルツハイマー患者には一般的でない日々のタイプについてもいずれも知られていない。しかし、このメカニズムは、「夕暮れ症候群」等の概日の現象に包含されるものとは明らかに相違しており、これは、認識変動が1日の特定の時間の辺りで発生する必要がないからである。認識変動のメカニズムが何であろうとも、日常生活の活動の障害に関係するゆえに、変動する認知機能障害に関連するストレスを患者及び介護者が免れるように、それを予防的または対症療法としてのみの場合でも、それを阻止または覆すことができることは極めて有益である(Jorge J. PALOP, Jeannie Chin and Lennart Mucke. A network dysfunction perspective on neurodegenerative diseases. Nature 443(7113,2006):768-73; WALKER MP, Ayre GA, Cummings JL, Wesnes K, McKeith IG, O’Brien JT, Ballard CG. The Clinician Assessment of Fluctuation and the One Day Fluctuation Assessment Scale. Two methods to assess fluctuating confusion in dementia. Br J Psychiatry 177(2000):252-6; BRADSHAW J, Saling M, Hopwood M, Anderson V, Brodtmann A. Fluctuating cognition in dementia with Lewy bodies and Alzheimer’s disease is qualitatively distinct. J Neurol Neurosurg Psychiatry 75(3,2004):382-7; BALLARD C, Walker M, O’Brien J, Rowan E, McKeith I. The characterisation and impact of ’fluctuating’ cognition in dementia with Lewy bodies and
Alzheimer’s disease. Int J Geriatr Psychiatry 16(5,2001):494-8; CUMMINGS JL. Fluctuations in cognitive function in dementia with Lewy bodies. Lancet Neurol 3(5,2004):266; David R. LEE, John-Paul Taylor, Alan J. Thomas. Assessment of cognitive fluctuation in dementia: a systematic review of the literature. International Journal of Geriatric Psychiatry 27(10, 2012): 989-998; BACHMAN D, Rabins P. “Sundowning” and other temporally associated agitation states in dementia patients. Annu Rev Med 57(2006):499-511]。
患者の病気の経過の初期段階は、バイオマーカを使用させ、これは、AD等の認知症の進行を示す患者で測定可能な認識、生理学、生化学及び解剖学的変数である。AD用の最も一般的に測定されるバイオマーカは、脳脊髄液(CSF)内の低下したAβ42、増加したCSFタウ、PETでの低下したフルオロデオキシグルコース吸収(FDG-PET)、PETアミロイド画像化、及び、脳萎縮症の構造的MRI対策を含む。ADを段階づけするためのバイオマーカの使用は、病気の診断用の改定基準でバイオマーカが使用可能なポイントに開発された(MASDEU JC, Kreisl WC, Berman KF. The neurobiology of Alzheimer disease defined by neuroimaging. Curr Opin Neurol 25(4,2012):410-420; DUBOIS B, Feldman HH, Jacova C, Dekosky ST, Barberger-Gateau P, Cummings J, Delacourte A, Galasko D, Gauthier S, Jicha G, Meguro K, O’brien J, Pasquier F, Robert P, Rossor M, Salloway S, Stern Y, Visser PJ, Scheltens P. Research criteria for the diagnosis of Alzheimer’s disease: revising the NINCDS-ADRDA criteria. Lancet Neurol 6(8,2007):734-46; GAUTHIER S, Dubois B, Feldman H, Scheltens P. Revised research diagnostic criteria for Alzheimer’s disease. Lancet Neurol 7 (8,2008):668-670)。
この背景部分の残部では、最近のADの治療方法を説明する。ここに概略するように、これらは、AD患者の認知的症状を治療する方法、及び、ADの病態生理学的経過を治療することを意図する方法を包含する。以下に引用する公報に記載の方法は、ADの症状のみの治療における非常にささやかな成功よりも大きなものを示すために実証しておらず、ADの過程を停止するための方法が知られていないため、追加の方法が必要とされることは明らかである。患者の青斑上における迷走神経の刺激の効果、および、その効果の結果により、以下の文献は、これらの主題に関係しており、以下のものが強調されている。
ADの現在有力なアミロイドカスケード仮説(及びその後の仮説の変種)の前は、AD研究の焦点は、AD患者の明確に画定される神経科学の異常を探すことであり、これは、パーキンソン病のレボドパ治療に類似する合理的な治療的介入の発展の基礎を提供したであろう。これにより、アルツハイマー病のコリン作動性仮説が導かれ、これは、前脳基底部におけるコリン作動性ニューロンの変性および大脳皮質や他の分野でのコリン作動性神経伝達の関連する変性が、アルツハイマー病患者に見られる認知機能の低下に大きく貢献することを述べている。その研究から生じた症候性薬物治療は、その効果は非常にささやかで、薬が病気の進行を遅らせるものでもないにもかかわらず、現在のAD治療の主力であり中心である。ADの対症療法用承認薬は、神経伝達物質-アセチルコリンまたはグルタミン酸塩のいずれかを調節、つまり、コリンエステラーゼ阻害薬(タクリン、リバスチグミン、ガランタミンおよびドネペジル)及びパーシャルNメチル-D-アスパラギン酸拮抗薬(メマンチン)である(FRANCIS PT, Ramirez MJ, Lai MK. Neurochemical basis for symptomatic treatment of Alzheimer’s disease. Neuropharmacology 59(4-5,2010):221-229; FRANCIS PT, Palmer AM, Snape M, Wilcock GK. The cholinergic hypothesis of Alzheimer’s disease: a review of progress. J Neurol Neurosurg Psychiatry 66(2,1999):137-47; MESULAM M.The cholinergic lesion of Alzheimer’s disease: pivotal factor or side show? Learn Mem 11(1,2004):43-49)。
アセチルコリンまたはグルタミン酸以外の神経伝達物質を調節することによる、ADの対症療法も考慮されてきた。そのような神経伝達物質はノルエピネフリン(ノルアドレナリン)であり、これは脳内において、主に青斑で合成される。ノルエピネフリンレベルの治療的調節のための理論的根拠は、ADでは、青斑核でノルアドレナリン作動性ニューロンが損失し、そして治療は、その損失を補償することである(HAGLUND M, Sjobeck M, Englund E. Locus ceruleus degeneration is ubiquitous in Alzheimer’s disease: possible implications for diagnosis and treatment. Neuropathology 26(6,2006):528-32; SAMUELS ER, Szabadi E. Functional neuroanatomy of the noradrenergic locus coeruleus: its roles in the regulation of arousal and autonomic function part II: physiological and pharmacological manipulations and pathological alterations of locus coeruleus activity in humans. Curr Neuropharmacol 6(3,2008):254-85; Patricia SZOT. Common factors among Alzheimer’s disease, Parkinson’s disease, and epilepsy: Possible role of the noradrenergic nervous system. Epilepsia 53(Suppl. 1,2012):61-66)。
したがって、複数の研究者は、AD患者の治療として脳内ノルエピネフリンを増加することを提案した(EM VAZEY, VK Hinson, AC Granholm, MA Eckert, GA Jones. Norepinephrine in Neurodegeneration: A Coerulean Target. J Alzheimers Dis Parkinsonism 2(2,2012):1000e114, pp. 1-3)。ノルエピネフリン自体の投与は、他のカテコールアミンと同様に、ノルエピネフリンは血液脳関門を通過できないため、中枢神経系におけるそのレベルを増加させるための方法として実現可能ではない。そのようなアンフェタミンおよびメチルフェニデートなどの多くの他の薬物は、ノルエピネフリンの脳内レベルを増加させることができるが、それらは、他の神経伝達物質システムに影響を及ぼし、重大な副作用を有する。その結果として、より少ない直接法が、中枢神経系におけるノルエピネフリンレベルを増加させ、または、アドレナリン作動性シグナル伝達を活性化する方法として使用され、または、提案されている。これらは、ノルエピネフリンに似た特別な薬剤を使用することを包含し、これは、ノルエピネフリンの前駆体として作用し、ノルエピネフリンの再取り込みをブロックし、ノルエピネフリンの放出を増進するアドレナリン受容体拮抗薬として作用する(MISSONNIER P, Ragot R, Derouesne C, Guez D, Renault B. Automatic attentional shifts induced by a noradrenergic drug in Alzheimer’s disease: evidence from evoked potentials. Int J Psychophysiol 33(3,1999): 243-51; FRIEDMAN JI, Adler DN, Davis KL. The role of norepinephrine in the pathophysiology of cognitive disorders: potential applications to the treatment of cognitive dysfunction in schizophrenia and Alzheimer’s disease. Biol Psychiatry. 46(9,1999):1243-52; KALININ S, Polak PE, Lin SX, Sakharkar AJ, Pandey SC, Feinstein DL. The noradrenaline precursor L-DOPS reduces pathology in a mouse model of Alzheimer’s disease. Neurobiol Aging 33(8,2012):1651-1663; MOHS, R.C., Shiovitz, T.M., Tariot, P.N., Porsteinsson, A.P., Baker, K.D., Feldman, P.D., 2009. Atomoxetine augmentation of cholinesterase inhibitor therapy in patients with Alzheimer disease: 6-month, randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel-trial study. Am. J. Geriatr. Psychiatry 17, 752-759; SCULLION GA, Kendall DA, Marsden CA, Sunter D, Pardon MC. Chronic treatment with the a2-adrenoceptor antagonist fluparoxan prevents age-related deficits in spatial working memory in APP×PS1 transgenic mice without altering β-amyloid plaque load or astrocytosis. Neuropharmacology 60(2-3,2011):223-34)。青斑核の活動を介して、ノルエピネフリンレベルを変更すると考えられている他の因子には、慢性ストレス、慢性アヘン剤治療、及び、抗うつ治療が含まれる(NESTLER EJ, Alreja M, Aghajanian GK. Molecular control of locus coeruleus neurotransmission. Biol Psychiatry 46(9,1999):1131-1139; SAMUELS, E.R., and Szabadi, E. Functional neuroanatomy of the noradrenergic locus coeruleus: its roles in the regulation of arousal and autonomic function part II: physiological and pharmacological manipulations and pathological alterations of locus coeruleus activity in humans. Curr. Neuropharmacol. 6(2008), 254-285)。
しかし、複数の理由により、薬理学的に誘導されたノルエピネフリンの増加、または、中枢神経系におけるアドレナリン受容体を介するシグナル伝達の増加が実質的にAD患者の利益になることは、確定されていない。まず、AD患者では、クロニジン(中枢作用アルファ2アドレナリンアゴニスト)は認知機能に影響を及ぼさないこと、及び、持続的注意および記憶を損なうおそれがあること、が報告された。他の推定は、アルファ2-アドレナリン受容体アゴニスト、グアンファシンは、認知機能に影響しないことを一貫して示す。したがって、クロニジンまたはグアンファシンの投与は、正常な対象またはAD若しくは他の認知障害を有する患者のいずれでも、認知機能における任意の着実な改善を提供するように見えない。一方、アルファ2-アドレナリン受容体拮抗薬、イダゾキサンは、計画、持続的注意、発話流ちょう性、及び、エピソード記憶を改善したが、前頭葉型認知症患者における空間ワーキングメモリを減じた(MARIEN MR, Colpaert FC, Rosenquist AC. Noradrenergic mechanisms in neurodegenerative diseases: a theory. Brain Res Brain Res Rev 45(1,2004):38-78)。
第2に、ノルエピネフリンは、AD患者における興奮及び不安を大きく悪化させ、したがって、増加したノルエピネフリンレベルの任意の潜在的な利点が、行動的副作用及び心血管系の副作用によって相殺されることがある(HERRMANN N、Lanctot KL、Khan LR. The role of norepinephrine in the behavioral and psychological symptoms of dementia. J Neuropsychiatry Clin Neurosci 16(3,2004):261-76; PESKIND, E.R., Tsuang, D.W., Bonner, L.T., Pascualy, M., Riekse, R.G., Snowden, M.B., Thomas, R., Raskind, M.A.. Propranolol for disruptive behaviors in nursing home residents with probable or possible Alzheimer disease: a placebo-controlled study. Alzheimer Dis. Assoc. Disord. 19(2005): 23-28)。
第3に、ADにおける青斑核細胞の喪失は、他の細胞におけるノルエピネフリンの代償生産につながることがあり、したがって、何人かのAD患者のノルエピネフリンレベルが実際に増加することがある(Fitzgerald PJ. Is elevated norepinephrine an etiological factor in some cases of Alzheimer’s disease? Curr Alzheimer Res 7(6,2010):506-16; ELROD R, Peskind ER, DiGiacomo L, Brodkin KI, Veith RC, Raskind MA. Effects of Alzheimer’s disease severity on cerebrospinal fluid norepinephrine concentration. Am J Psychiatry 154(1,1997):25-30)。
ADにおける全体的な脳内ノルエピネフリンレベルの減少があったとしても、この減少は、必ずしも青斑によって変調された脳領域の中に均一に発生するものではなく、補償受容体のパターンの変化も、脳の異なる領域のノルアドレナリン作動性受容体サブタイプの選択的な減少及び増加で、複雑化することがある(HOOGENDIJK WJ, Feenstra MG, Botterblom MH, Gilhuis J, Sommer IE, Kamphorst W, Eikelenboom P, Swaab DF. Increased activity of surviving locus ceruleus neurons in Alzheimer’s disease. Ann Neurol 45(1,1999):82-91; SZOT P, White SS, Greenup JL, Leverenz JB, Peskind ER, Raskind MA. Compensatory changes in the noradrenergic nervous system in the locus coeruleus and hippocampus of postmortem subjects with Alzheimer’s disease and dementia with Lewy Bodies. J Neurosci 26(2006):467-478; SZOT P, White SS, Greenup JL, Leverenz JB, Peskind ER, Raskind MA. Changes in adrenoreceptors in the prefrontal cortex of subjects with dementia: evidence of compensatory changes.Neuroscience 146(2007):471-480)。
したがって、必要とされるものは、AD患者の中枢神経系全体にノルエピネフリンレベルを無差別に増加させる薬理学的方法ではなく、必要とされる場所でのみ、選択的に、ノルエピネフリンレベルを増加(または減少)することができる方法である。これは、その増加が認識力を改善することを意図するにせよ、または、そのノルエピネフリンレベルの増加が、AD患者の脳内に発生する病態生理学的変化を阻止し、遅延させまたは拮抗させることを意図するにせよ、真実である。(COUNTS SE, Mufson EJ. Noradrenaline activation of neurotrophic pathways protects against neuronal amyloid toxicity. J Neurochem 113(3,2010):649-60; WENK GL, McGann K, Hauss-Wegrzyniak B, Rosi S. The toxicity of tumor necrosis factor-alpha upon cholinergic neurons within the nucleus basalis and the role of norepinephrine in the regulation of inflammation: implications for Alzheimer’s disease. Neuroscience 121(3,2003):719-29; KALININ S, Gavrilyuk V, Polak PE, Vasser R, Zhao J, Heneka MT, Feinstein DL. Noradrenaline deficiency in brain increases beta-amyloid plaque burden in an animal model of Alzheimer’s disease. Neurobiol Aging 28(8,2007):1206-1214; HENEKA MT, Ramanathan M, Jacobs AH, Dumitrescu-Ozimek L, Bilkei-Gorzo A, Debeir T, Sastre M, Galldiks N, Zimmer A, Hoehn M, Heiss WD, Klockgether T, Staufenbiel M. Locus ceruleus degeneration promotes Alzheimer pathogenesis in amyloid precursor protein 23 transgenic mice. J Neurosci. 26(5,2006):1343-54; HENEKA MT, Nadrigny F, Regen T, Martinez-Hernandez A, Dumitrescu-Ozimek L, Terwel D, Jardanhazi-Kurutz D, Walter J, Kirchhoff F, Hanisch UK, Kummer MP. Locus ceruleus controls Alzheimer’s disease pathology by modulating microglial functions through norepinephrine. Proc Natl Acad Sci U S A. 107(13,2010):6058-6063; JARDANHAZI-KURUTZ D, Kummer MP, Terwel D, Vogel K, Thiele A, Heneka MT. Distinct adrenergic system changes and neuroinflammation in response to induced locus ceruleus degeneration in APP/PS1 transgenic mice. Neuroscience 176(2011):396-407; YANG JH, Lee EO, Kim SE, Suh YH, Chong YH. Norepinephrine differentially modulates the innate inflammatory response provoked by amyloid-β peptide via action at β-adrenoceptors and activation of cAMP/PKA pathway in human THP-1 macrophages. Exp Neurol 236(2,2012):199-206; KONG Y, Ruan L, Qian L, Liu X, Le Y. Norepinephrine promotes microglia to uptake and degrade amyloid beta peptide through upregulation of mouse formyl peptide receptor 2 and induction of insulin-degrading enzyme. J Neurosci 30(35,2012):11848-11857; KALININ S, Polak PE, Lin SX, Sakharkar AJ, Pandey SC, Feinstein DL. The noradrenaline precursor L-DOPS reduces pathology in a mouse model of Alzheimer’s disease. Neurobiol Aging 33(8,2012):1651-1663; HAMMERSCHMIDT T, Kummer MP, Terwel D, Martinez A, Gorji A, Pape HC, Rommelfanger KS, Schroeder JP, Stoll M, Schultze J, Weinshenker D, Heneka MT. Selective Loss of Noradrenaline Exacerbates Early Cognitive Dysfunction and Synaptic Deficits in APP/PS1 Mice. Biol Psychiatry. 2012 Aug 9. Epub ahead of print, pp. 1-10; O’DONNELL J, Zeppenfeld D, McConnell E, Pena S, Nedergaard M. Norepinephrine: A Neuromodulator That Boosts the Function of Multiple Cell Types to Optimize CNS Performance. Neurochem Res. 2012 Jun 21. (Epub ahead of print}, pp. 1-17)。
向精神剤も、うつ病、興奮、及び、睡眠障害等のADの二次的症状を治療するために、神経伝達物質の変調物質と組み合わせて使用されている(Julius POPP and Sonke Arlt. Pharmacological treatment of dementia and mild cognitive impairment due to Alzheimer’s disease. Current Opinion in Psychiatry 24(2011):556-561; Fadi MASSOUD and Gabriel C Leger. Pharmacological treatment of Alzheimer disease. Can J Psychiatry. 56(10,2011):579-588; Carl H. SADOWSKY and James E. Galvin. Guidelines for the management of cognitive and behavioral problems in dementia. J Am Board Fam Med 25(2012):350 -366)。
AD経過自体を変更するように向けた治療は、治験と考えられている。これらは、AD患者の脳内で起こる激しい炎症の治療、エストロゲン療法、フリーラジカル捕捉剤の使用、脳内の毒性アミロイドフラグメントを減少させるように設計された治療(ワクチン接種、抗アミロイド抗体、選択的アミロイド低下剤、アミロイド重合を防止するためキレート剤、アミロイドの除去を改善するための脳シャント術、及び、A-ベータアミロイドフラグメントの発生を防ぐβ-セクレターゼ阻害剤)、及び、過剰なタウリン酸化を阻止または逆とすることができ、それによって神経原線維変化の形成を減少させる薬剤を包含する。レチノイド等のいくつかの薬剤は、ADの病因の複数の側面を標的にすることができる(TAYEB HO, Yang HD, Price BH, Tarazi FI. Pharmacotherapies for Alzheimer’s disease: beyond cholinesterase inhibitors. Pharmacol Ther 134(1,2012):8-25; LEMER AJ, Gustaw-Rothenberg K, Smyth S, Casadesus G. Retinoids for treatment of Alzheimer’s disease. Biofactors 38(2,2012):84-89; KURZ A, Perneczky R. Novel insights for the treatment of Alzheimer’s disease. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 35(2,2011):373-379; MINATI L, Edginton T, Bruzzone MG, Giaccone G. Current concepts in Alzheimer’s disease: a multidisciplinary review. Am J Alzheimers Dis Other Demen 24(2,2009):95-121)。
しかし、ADの治療のための単一の標的または発病させる経路を識別し難いことが次第に認識されている。最善の方策は、多数のタイプの治療を含むマルチターゲット療法であると考えられる(MANGIALASCHE F, Solomon A, Winblad B, Mecocci P, Kivipelto M. Alzheimer disease: clinical trials and drug development. Lancet Neurol 9(7,2010):702-716)。そのマルチターゲットアプローチにおける標的は炎症経路を含み、複数の治療薬がそれを標的とするために提案されており、非ステロイド抗炎症剤、スタチン、RAGE拮抗薬及び抗酸化物質を含む(STUCHBURY G, Munch G. Alzheimer associated inflammation, potential drug targets and future therapies. J Neural Transm. 2005 Mar; 112(3):429-53Joseph BUTCHART and Clive Holmes. Systemic and Central Immunity in Alzheimer’s Disease:Therapeutic Implications. CNS Neuroscience & Therapeutics 18(2012): 64-76)。他のこのような薬剤、エタネルセプトは、TNFアルファを標的とするが、血液脳関門(BBB)を通過しないため、その使用は、痛みを伴う脊髄経路介してまたはBBBを通るための実験的方法を介して投与するという不都合なことを有する(Patent US7640062, 表題「Methods and systems for management of alzheimer’s disease」SHALEVに対して)。この不都合を持たない1つのTNF阻害剤はサリドマイドである(Tweedie D, Sambamurti K, Greig NH: TNF-alpha Inhibition as a Treatment Strategy for Neurodegenerative Disorders: New Drug Candidates and Targets. Curr Alzheimer Res 2007, 4(4):375-8)。しかし、サリドマイドは、出生異常を生じさせることが一般大衆に周知であり、小規模の試験では、その使用で、AD患者の認知を改善することは見られなかった(Peggy PECK. IADRD: Pilot Study of Thalidomide for Alzheimer’s Disease Fails to Detect Cognitive Benefit but Finds Effect on TNF-alpha. Doctor’s Guide Global Edition, July 26, 2002)。
AD患者の認知を含む認知を回復または向上させるために、種々のデバイスが提案されている(Mijail Demian SERRUYA and Michael J. Kahana. Techniques and devices to restore cognition. Behav Brain Res 192(2,2008): 149-165)。脳深部電気刺激法は、AD患者の記憶を増進する試みで全体的に失敗または逆効果であった。しかし、改善された言語想起が、視床下部及び円蓋の深部脳刺激を病的肥満を治療するために使用した1つのケーススタディで観察されている(HAMANI C, McAndrews MP, Cohn M, Oh M, Zumsteg D, Shapiro CM, Wennberg RA, Lozano AM. Memory enhancement induced by hypothalamic/fornix deep brain stimulation. Ann Neurol 63(2008):119-23; Adrian W. LAXTON and Andres M. Lozano. Deep brain stimulation for the treatment of Alzheimer disease and dementias. World Neurosurg. (2012), pp. 1-8)。嗅内であるが、海馬ではない脳深部刺激は、空間ナビゲーションで使用される記憶を向上させることが見出された。その研究の著者は、認識増進の目的で神経機能代替装置を使用する際、刺激は連続的に作用させる必要はなく、代わりに、患者が重要な情報を学習しようとしているときにのみ、作用させることを示唆する。更に、EEG(3~8Hz)におけるシータ波の移送のリセットは、動物実験で観察されたものと同様に、記憶能力を改善することを示唆する(Nanthia SUTHANA, Zulfi Haneef, John Stern, Roy Mukamel, Eric Behnke, Barbara Knowlton and Itzhak Fried. Memory enhancement and deep-brain stimulation of the entorhinal area. N Engl J Med 366(2012):502-10; LEMON N, Aydin-Abidin S, Funke K, Manahan-Vaughan D. Locus coeruleus activation facilitates memory encoding and induces hippocampal LTD that depends on beta-adrenergic receptor activation. Cereb Cortex 19(12,2009):2827-37)。
AD患者の磁気刺激も実行したが、その使用は、認識技能に影響することのみを意図しており、また、経頭蓋磁気刺激の使用のみであった(Mamede de CARVALHO, Alexandre de Mendonca, Pedro C. Miranda, Carlos Garcia and Maria Lourdes Sales Luis. Magnetic stimulation in Alzheimer’s disease. Journal of Neurology 244 (1997, 5): 304-307; COTELLI M, Manenti R, Cappa SF, Zanetti O, Miniussi C. Transcranial magnetic stimulation improves naming in Alzheimer disease patients at different stages of cognitive decline. Eur J Neurol. 15(12, 2008):1286-92; GUSE B, Falkai P, Wobrock T. Cognitive effects of high-frequency repetitive transcranial magnetic stimulation: a systematic review. J Neural Transm. 117(1,2010):105-22; Raffaele NARDONE, Jurgen Bergmann, Monica Christova, Francesca Caleri, Frediano Tezzon, Gunther Ladurner, Eugen Trinka and Stefan Golaszewski. Effect of transcranial brain stimulation for the treatment of Alzheimer disease: A review. International Journal of Alzheimer’s Disease 2012, Article ID 687909: pp. 1-5; Raffaele NARDONE, Stefan Golaszewski, Gunther Ladurner, Frediano Tezzon, and Eugen Trinka. A Review of Transcranial Magnetic Stimulation in the in vivo Functional Evaluation of Central Cholinergic Circuits in Dementia. Dement Geriatr Cogn Disord 32(2011):18-25)。
AD症状を治療するための迷走神経刺激を使用する方法は、WERNICKEらに対する「Treatment of dementia by nerve stimulation」と題する米国特許第US5269303号に開示されている。それは、患者のEEGで示される突発活動または患者の覚醒レベルのいずれかで説明される「認知症症状」に向けたものであり、認知力自体に向けたものではない。
2002年に、迷走神経の電気刺激がAD患者の認識力に有益な影響を有することが報告された(SJOGREN MJ, Hellstrom PT, Jonsson MA, Runnerstam M, Silander HC, Ben-Menachem E. Cognition-enhancing effect of vagus nerve stimulation in patients with Alzheimer’s disease: a pilot study. J Clin Psychiatry 63(11,2002):972-80)。この試験の論理は、迷走神経刺激は、先に、てんかん及びうつ病等の他の疾患に対する迷走神経刺激中の患者の認知能力が増進されること、及び、動物実験で認知能力の増進が観察されたことである。脳脊髄液のタウタンパク質の改善と共に、長期間にわたるAD患者の改善された認知能力に関する結果は、後に報告された(MERRILL CA, Jonsson MA, Minthon L, Ejnell H, C-son Silander H, Blennow K, Karlsson M, Nordlund A, Rolstad S, Warkentin S, Ben-Menachem E, Sjogren MJ. Vagus nerve stimulation in patients with Alzheimer’s disease: Additional follow-up results of a pilot study through 1 year. J Clin Psychiatry. 2006 Aug;67(8):1171-8)。これらの結果は、対照群がなく、患者数が少ないため、特に称されているタウタンパク質の変化について、直ちに、懐疑的に迎えられた(Theresa DEFINO. Symptoms stable in AD patients who underwent vagus nerve stimulation. Neurology Today 6(21,2006):14-15)。
少なくとも認知症の症候性認知態様を治療する迷走神経の刺激は、脊椎、前額部及び耳たぶ等の位置で見つけられる神経の刺激よりも、より効果的であるかのしれない(CAMERON MH, Lonergan E, Lee H. Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation (TENS) for dementia. Cochrane Database of Systematic Reviews 2003, Issue 3. Art. No.: CD004032. (2009 update); Erik J.A. SCHERDER, Marijn W. Luijpen, and Koene R.A. van Dijk. Activation of the dorsal raphe nucleus and locus coeruleus by transcutaneous electrical nerve stimulation in Alzheimer’s disease: a reconsideration of stimulation-parameters derived from animal studies. Chinese Journal of Physiology 46(4,2003): 143-150)。しかし、BOON及び仲間は、現行の刺激パラメータでの迷走神経刺激は、動物モデルでは認知を改善可能であると判断するも、ヒト患者であっても認知能力を高めるということには異議を唱える(Paul BOON, Ine Moors, Veerle De Herdt, Kristl Vonck. Vagus nerve stimulation and cognition. Seizure15(2006), 259-263)。実際、ヒトでは、迷走神経刺激は認知の柔軟性及び創造的思考を損なう(GHACIBEH GA, Shenker JI, Shenal B, Uthman BM, Heilman KM. Effect of vagus nerve stimulation on creativity and cognitive flexibility. Epilepsy Behav 8(4,2006):720-725)。更に、学習には何ら効果を有しないが、記憶の安定化を増進する可能性があり、これは記憶力の改善につながる(GHACIBEH GA, Shenker JI, Shenal B, Uthman BM, Heilman KM. The influence of vagus nerve stimulation on memory. Cogn Behav Neurol 19(3,2006):119-22; CLARK KB, Naritoku DK, Smith DC, Browning RA, Jensen RA. Enhanced recognition memory following vagus nerve stimulation in human subjects. Nature Neurosci 2(1999):94-98)。異なるタイプの記憶の中で、迷走神経刺激は、言語認識記憶のみを改善することが報告されている(McGLONE J, Valdivia I, Penner M, Williams J, Sadler RM, Clarke DB. Quality of life and memory after vagus nerve stimulator implantation for epilepsy. Can J Neurol Sci 35(3,2008):287-96)。しかし、このような調査のほとんどは、てんかんをコントロールするために電極を埋め込んだ患者で行われており、アルツハイマー病の患者は、この研究に含まれていない。
動物モデルの認知における迷走神経刺激の効果は、以下の刊行物に記載の実験結果で得られる。動物実験は、全体的に、迷走神経刺激を用いて認知の促進が可能なことがあることを示し、これが示唆するものは、上記のヒトの実験の失敗は、認知を優先的に向上させるパラメータに代え、てんかんまたはうつ病を治療するための刺激パラメータを使用することに起因する可能性があることを示唆する。迷走神経刺激は、青斑を活性化し、ラットの偏桃体基底外側核及び海馬へのノルエピネフリン出力を増加することを示した(NARITOKU DK, Terry WJ, Helfert RH. Regional induction of fos immunoreactivity in the brain by anticonvulsant stimulation of the vagus nerve. Epilepsy Res 22(1,1995):53-62; HASSERT DL, Miyashita T, Williams CL. The effects of peripheral vagal nerve stimulation at a memory-modulating intensity on norepinephrine output in the basolateral amygdala. Behav Neurosci 118(1,2004):79-88; CHEN CC, Williams CL. Interactions between epinephrine, ascending vagal fibers, and central noradrenergic systems in modulating memory for emotionally arousing events. Front Behav Neurosci 6:35. Epub 2012 Jun 28, pp. 1-20)。
外傷性脳損傷のラットモデルでは、迷走神経刺激が、回復速度、及び、運動及び認知回復の双方を促進することを示した(SMITH DC, Modglin AA, Roosevelt RW, Neese SL, Jensen RA, Browning RA, et al. Electrical stimulation of the vagus nerve enhances cognitive and motor recovery following moderate fluid percussion injury in the rat. J Neurotrauma 22(12,2005):1485-1502)。中程度の強度で送出した迷走神経の電気刺激(VNS)に続く学習実験は、研究用ラットの記憶を強化し、一方、より低またはより高い強度のVNSは、ほとんどまたは全く効果がなく、これは、海馬におけるシナプス可塑性を包含すると考えられる(ZUO Y, Smith DC, Jensen RA. Vagus nerve stimulation potentiates hippocampal LTP in freely moving rats. Physiol Behav 90(4,2007):583-589)。より一般的には、迷走神経刺激は、ノルエピネフリンレベルを青斑上の効果を介して調節する(DORR AE, Debonnel G. Effect of vagus nerve stimulation on serotonergic and noradrenergic transmission. J Pharmacol Exp Ther 318(2,2006):890-898; MANTA S, Dong J, Debonnel G, Blier P. Enhancement of the function of rat serotonin and norepinephrine neurons by sustained vagus nerve stimulation. J Psychiatry Neurosci 34(4,2009):272-80; SHEN H, Fuchino Y, Miyamoto D, Nomura H, Matsuki N. Vagus nerve stimulation enhances perforant path-CA3 synaptic transmission via the activation of β-adrenergic receptors and the locus coeruleus. Int J Neuropsychopharmacol 15(4,2012):523-30)。
そうでなければ、迷走神経刺激がシナプス活性(例えば、発作)に影響を及ぼすことが提案される唯一のメカニズムは、脳循環上の影響を介するものである(HENRY TR, Bakay RA, Pennell PB, Epstein CM, Votaw JR. Brain blood-flow alterations induced by therapeutic vagus nerve stimulation in partial epilepsy: II. prolonged effects at high and low levels of stimulation. Epilepsia 45(9,2004):1064-1070)。
本発明の譲受人に譲渡された同時係属の特許出願(公開US20110152967、表題「Non-invasive treatment of neurodegenerative disease」、SIMONら)において、出願人は、ADの基本的な病態生理を治療するために使用することのある迷走神経を刺激する6つの新たなメカニズムを開示しており、すなわち、(1)TGFベータまたは他の抗炎症サイトカインの有効率または有効性を強化するような方法で迷走神経を刺激、(2)レチノイン酸の有効率または有効性を強化するような方法で迷走神経を刺激、(3)BDNF等の神経栄養因子の発現を促進するような方法で迷走神経を刺激、(4)その間にTNF関連のグリア伝達が発生するセルの活性を調節することを包含し、グリオトランスミッタとして機能するTNFアルファの容量を調節するために迷走神経を刺激、(5)TNFアルファの減成を調節し、及び/または、炎症促進性メディエイタとして、既存のTNFアルファ分子の活性を修正するために迷走神経を刺激、及び、(6)TRACEYらによって提案されたものとは区別されるメカニズムを介して、炎症促進性サイトカインの放出を抑制しまたは有効性を抑制するような方法で迷走神経を刺激することである。したがって、TRACEYに対する「Inhibition of inflammatory cytokine production by cholinergic agonists and vagus nerve stimulation」と題する特許US6610713及びUS6838471は、迷走神経の刺激を介する炎症の治療に関連して、病気の長いリスト内の神経変性病の治療について述べている。しかし、彼の方法が、抗炎症サイトカインの活性を調節することを意図すること、及び、実際に、その開示は、迷走神経の刺激を介して炎症のメディエイタとして抗炎症サイトカインに対する役割を放棄していることを、TRACEYは述べたりまたは示唆したりしていない。
本開示では、1つまたは複数の電極が患者の皮膚に適用され、患者の組織内に1つまたは複数電流を生成する。本開示の1つの実施形態の目的は、治療効果を達成するために、1つまたは複数神経の信号と相互作用するように電気インパルスを形成し、適用することである。開示の一部は、特に、迷走神経にまたはその回りの刺激により、発作、てんかん、頭痛、神経変性病疾患、疾患、若しくは病気、または、他の病状等の患者の病状を治療するために、患者の首の近くに非侵襲的に配置するデバイスで患者を治療することに向けられている。
てんかん発作を予測する方法に関する多くの文献が存在する。このような方法のいくつかは、複数の評価の対象となっている(Brian LITT and Javier Echauz. Prediction of epileptic seizures. Lancet Neurology 1(2002): 22-30; MORMANN F, Andrzejak RG, Elger CE, Lehnertz K. Seizure prediction: the long and winding road. Brain 130(Pt 2,2007):314-33; MORMANN F, Kreuz T, Rieke C, Andrzejak RG, Kraskov A, David P, Elger CE, Lehnertz K. On the predictability of epileptic seizures. Clin Neurophysiol 116(3,2005):569-87; MORMANN F, Elger CE, Lehnertz K. Seizure anticipation: from algorithms to clinical practice. Curr Opin Neurol 19(2,2006):187-93)。てんかん発作を予測する新たな方法の開発にツールも利用可能である(TEIXEIRA CA, Direito B, Feldwisch-Drentrup H, Valderrama M, Costa RP, Alvarado-Rojas C, Nikolopoulos S, Le Van Quyen M, Timmer J, Schelter B, Dourado A. EPILAB: a software package for studies on the prediction of epileptic seizures. J Neurosci Methods. 200(2,2011): 257-71)。
予測に使用される脳波データは、患者の脳内に埋め込まれる電極、または、患者の頭皮に装着若しくは取り付けられる脳波計電極からのいずれかである(CASSON A, Yates D, Smith S, Duncan J, Rodriguez-Villegas E. Wearable electroencephalography. What is it, why is it needed, and what does it entail? IEEE Eng Med Biol Mag. 29(3,2010):44-56)。追加データは、心拍に関するデータ等の予測を作成するのに有益なものでも良い(DELAMONT RS, Julu PO, Jamal GA. Changes in a measure of cardiac vagal activity before and after epileptic seizures. Epilepsy Res 35(2,1999):87-94)。したがって、VALDERRAMAらは、EEGデータと共にECGデータの分析を包含することにより、発作の予測を改善することができる(M. VALDERRAMA, S. Nikolopoulos, C. Adam, Vincent Navarro and M. Le Van Quyen. Patient-specific seizure prediction using a multi-feature and multi-modal EEG-ECG classification. XII Mediterranean Conference on Medical and Biological Engineering and Computing 2010, IFMBE Proceedings, 2010, Volume 29, Part 1, 77-80)。睡眠不足及び発作が切迫しているかどうかの患者の自己予測も、予測するのに有益なことがある(HAUT SR, Hall CB, Masur J, Lipton RB. Seizure occurrence: precipitants and prediction. Neurology. 69(20,2007):1905-10)。加速度計を使用して収集したモーションデータは、アーティファクトの検出に有益なことがある(Sweeney KT, Leamy DJ, Ward TE, McLoone S. Intelligent artifact classification for ambulatory physiological signals. Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc. 2010; 2010:6349-52)。
予測したてんかん発作に対して提案された対抗策は、速効性抗痙攣物質のオンデマンド放出、局所冷却、バイオフィードバックオペラント条件付け、及び、発作に発展しない状態に脳ダイナミクスをリセットする電気または他の刺激が含まれる(STACEY WC, Litt B. Technology insight: neuroengineering and epilepsy-designing devices for seizure control. Nat Clin Pract Neurol 4(4,2008):190-201)。提案された電気刺激対抗策は、深部脳刺激、または、埋込型迷走神経刺激器を含む他の埋込型電極の使用を包含するが、非侵襲的迷走神経刺激ではない。非侵襲的磁気刺激も提案されているが、迷走神経の刺激ではない。(THEODORE WH, Fisher R. Brain stimulation for epilepsy. Acta Neurochir Suppl. 97(2,2007):261-72)。ほとんどの電気刺激対抗策は、開ループデバイスを有し、てんかん発作を予測またはモニタするために使用可能なセンサから電気刺激器への直接フィードバックがないことを意味する。更に最近、閉ループ刺激器も記載されており、ここでは、センサから電気刺激器にフィードバックすることがある。閉ループ治療は、必要なとき及び位置にのみ、投与すべき正確なタイミングでまたは投与量としても良く、例えば、発作を検出したときに直ちにまたはその前に、発作の原発位置に直接、検出した発作の特性にしたがって投与量を変更して投薬する(Patents US6480743, entitled System and method for adaptive brain stimulation, to Kirkpatrick et al; US7231254, entitled Closed-loop feedback-driven neuromodulation, to DiLorenzo; US7209787, entitled Apparatus and method for closed-loop intracranial stimulation for optimal control of neurological disease, to DiLorenzo)。
一部の患者は、てんかん発作を十分前もって自ら検出することができ、一部の患者は、確実に検出することができることに注意すべきである(HAUT SR, Hall CB, LeValley AJ, Lipton RB.Can patients with epilepsy predict their seizures? Neurology. 68(4,2007):262-6; STACEY WC, Litt B. Technology insight: neuroengineering and epilepsy-designing devices for seizure control. Nat Clin Pract Neurol 4(4,2008):190-201)。したがって、本開示の1つの態様は、(1)患者が彼/彼女の自身のてんかん発作を予測し、または、デバイスがEEGデバイスから取得したデータに、上記のもの等の刊行物に記載のような付属の非侵襲的データ(例えば、心拍及び動き)を加えて予測し、(2)患者または介護人がここに記載のデバイスを使用して非侵襲的に迷走神経の刺激を実行する、ステップを備える。迷走神経刺激を実行する論理的根拠は、薬理学的耐性部分てんかんのための補助療法に対する補助療法であり、それが既にFDAにより1997年に承認されていることである。これは、てんかん患者によるオンデマンドの迷走神経刺激の使用を包含する(BOON, P., Vonck, K., Van Walleghem, P., D’Have, M., Goossens, L.,Vandekerckhove, T., Caemaert, J., De Reuck, J., Programmed and magnet-induced vagus nerve stimulation for refractory epilepsy. J. Clin. Neurophysiol. 18(2001):402-407; MORRIS III, G.L., 2003. A retrospective analysis of the effects of magnet-activated stimulation in conjunction with vagus nerve stimulation therapy. Epilepsy Behav. 4(2003): 740-745)。本開示の1つの実施形態の新規性は、迷走神経刺激が非侵襲的でかつ発作を予測して実行されることである。
このような電気刺激の治療用アプリケーションの多くは、患者内の医療用埋込型電極を包含する。対照的に、ここに記載のシステム、デバイスまたは方法は、外科手術を含まない、すなわち、埋設可能な医療デバイスではない。代わりに、本システム、デバイス及び方法は、神経及び組織に非侵襲的にエネルギを伝送することにより、神経を刺激する。医療処置は、方法の使用を通じて皮膚(または、創傷床等、ボディの他の表面)に切開部が生成されないとき、または、ボディの開口を超えて(例えば、口または耳の外耳道を超えて)内部体腔に接触しないときに、非侵襲と提示される。このような非侵襲的処置は、物質またはデバイスが皮膚(または、創傷床等、ボディの他の表面)を通して、または、ボディの開口を通して体腔内に侵襲的処置(低侵襲的処置を含む)で挿入することとは相違する。
例えば、神経の経皮的電気刺激は、電極を皮膚に取り付け、または、そうでない場合は、皮膚を破断することなく、皮膚の表面を超えて刺激し若しくはぴったりフィットする導電性衣服を使用するため、非侵襲的である(Thierry KELLER and Andreas Kuhn. Electrodes for transcutaneous (surface) electrical stimulation. Journal of Automatic Control, University of Belgrade 18(2,2008):35-45; Mark R. PRAUSNITZ. The effects of electric current applied to skin: A review for transdermal drug delivery. Advanced Drug Delivery Reviews 18 (1996) 395-425)。対照的に、神経の経皮的電気刺激は、低侵襲であり、これは、皮膚の針穿刺を介して、皮膚の下に電極を導入することを包含するためである。
他の非侵襲的電気刺激の形態は、磁気刺激である。これは、ファラデーの電磁誘導の法則にしたがって、時間変動磁場により、組織内で電場及び電流の誘導を含む。磁気刺激は非侵襲的であり、これは、磁場が、ボディの外側に位置するコイルを通して時間変動電流を流すことにより、形成されるからである。電場は、所定距離に誘導され、導電性のボディ組織内に電流を流す。磁気刺激用電気回路は、全体的に複雑で高価であり、5,000アンペア以上の放電電流を生成することのある高電流インパルスジェネレータ使用し、これは、刺激器コイルを介して磁気パルスを生成する。磁気刺激器を用いる電気神経刺激の原理は、磁気刺激の医療用途の説明と共に、Chris HOVEY及びReza Jalinousによる、「The Guide to Magnetic Stimulation」、The Magstim Company Ltd社、Spring Gardens, Whitland, Carmarthenshire, SA34 0HR, United Kingdom, 2006に説明されている。対照的に、本出願人により開示される磁気刺激器は、刺激器コイル内を流れるかなり小さな電流を使用する比較的簡単なデバイスである。したがって、これらは、使用が簡単で、より安価な非侵襲的磁気刺激デバイスに対する要求を満たすことを意図したものである。
このような非侵襲的医療方法及びデバイスの侵襲的処置と比較可能な潜在的な利点は、以下のようである。患者は、非侵襲的でしたがってより協調的なことがあり、より良好な結果となる処置を経験するという心理的な準備をすることができる。非侵襲的な処置は、出血、感染、皮膚または内臓器官の損傷、血管損傷、及び、静脈若しくは肺の血液凝固による等の生体組織の損傷を回避することができる。非侵襲的処置は、一般的に無痛で、手術の危険及びコスト無しで実行することができる。これらは、通常、局部麻酔の必要なしでも実行される。医療専門家による非侵襲的処置の使用は、トレーニングをほとんど必要としないことがある。非侵襲的処置に通常関連する低減したリスクに鑑み、このような処置のいくつかは、患者または家族によって家庭で、または、第1応答者によって家庭若しくは職場で使用するために適用されても良い。更に、非侵襲的処置のコストは、比較可能な侵襲的処置に対して著しく低減することができる。
同時係属の本発明の譲受人に譲渡された特許出願において、出願人は、非侵襲的電気的迷走神経刺激デバイスを開示しており、これは、本開示において、特定の用途に対して改善されて適用される(出願番号 13/183,765 及び公開番号 US2011/0276112, 表題 「Devices and methods for non-invasive capacitive electrical stimulation and their use for vagus nerve stimulation on the neck of a patient」, SIMONらに対して.; 出願番号12/964,050 及び、 公開番号 US2011/0125203, 表題 「Magnetic Stimulation Devices and Methods of Therapy」, SIMONらに対して;並びに他の同時係属の、本発明の譲受人に譲渡され、かつ、ここに引用された出願、これらは参照することにより、ここに包含される)。本開示は、指摘しない限り同様な機能を有すると理解されている磁気刺激装置ではなく、電気刺激デバイスを詳細に説明するものであり、この詳細な説明は、電気または磁気神経刺激デバイスのいずれにも適用することが可能である。先のデバイスは既に開示されているため、本開示は、先の開示に対して新規なものに焦点を当てている。
本開示では、刺激器は、訓練を受けたヘルスケア提供者が近くにいなくても、通常、患者自身によって適用される。自己刺激治療の主たる利点は、症状が発生したときに、診療所または救急処置室に健康管理提供者が訪問しなければならないことよりも、事実上、直ちに処理することができることである。更に、患者は、原則毎日治療を施し(例えば、1日当たり1または複数回)、疾患を予防的に治療しても良い。このような訪問の必要性は、患者が既に経験している苛立ちを大きくするだけである。自己刺激治療の他の利点は、患者の家庭または職場に治療の利便性を提供することであり、これは、例えば神経刺激が、1日の空き時間に予防的理由で神経刺激を何時施すかについてのスケジューリングの困難性を排除する。更に、訓練されたヘルスケア提供者を関与させることを必要としないことにより、治療コストを低減しても良い。
本開示の例示的な教示は、片頭痛、及び、これらの症状が頭痛の併存症であるアレルギーから発生するかどうかに関わらず、洞症状(「洞」頭痛)を含む群発頭痛等の原発頭痛の治療である。しかし、開示した方法及びデバイスによる電気刺激は、他の疾患、及び、引用した同時係属の本発明の譲受人に譲渡された特許出願に記載の疾患を含むものを治療するために使用しても良い。
本医療用途に対して、電気刺激デバイスは、通常、患者の首に作用される。本開示の1つの実施形態では、刺激器は、別個の刺激器組立体内で並置して配置される2つの電極を備え、ここでは、電極は電気的絶縁材料で分離される。各電極と患者の皮膚とは、皮膚と電極との間に延びる導電媒体を通して電気的に接続される。
デバイスの位置及び配向角は、電流が刺激器電極を通ったときに、患者が刺激を感知するまで、首の位置の回りで調節される。適用される電流は、患者が刺激から感覚を最初に感知するレベルまで、次第に増加する。この後、電力が増大するが、患者が最初に何らかの不快を示すものよりも少ないレベルに設定される。刺激器信号の波形は、周波数と、患者に治療効果を生じさせるように選択された他のパラメータとを有しても良い。
この後、電気刺激は、典型的には90秒から30分(通常、90~180秒)作用され、これは、5分以内に、少なくとも部分的に頭痛を緩和することが多い。この後、治療は、頭痛を非常に緩和し、約20分以内に鼻腔を急速に開くことを患者に経験させる。治療の効果は、4~5時間またはそれ以上継続することがある。
患者自身が神経刺激を施す利点に関わらず、このような自己刺激は、安全及び効率に関する特定のリスク及び困難を有する。いくつかの状況において、迷走神経刺激器は、左または右迷走神経に作用させるべきで、逆にしてはならない。例えば、刺激器が首の左迷走神経に適用される場合、記述したように作用するが、偶発的に見疑の迷走神経に作用させた場合には、このデバイスは、心臓障害を生じさせる可能性がある。一方、いくつかの状況では、刺激は、右の迷走神経に適用した場合に、実際に最も効果的となり、左の迷走神経に適用した場合には、比較的効果が少ない。したがって、患者は、迷走神経刺激器を彼または彼女自身で使用する場合、首の規定側にのみ使用できるように、デバイスをデザインすることが有益である。本開示は、規定されていない首の側における不注意による刺激を防止する方法を開示する。
他の問題は、患者の首に迷走神経刺激器の位置決めに関する。刺激器は、迷走神経に対する刺激器の位置で非常に小さな振動に対して頑丈にデザインされており、それにも関わらず、刺激から最大の効果を得るために、刺激セッションを介して維持するのが好ましい最適位置が存在する。患者は、神経が刺激されているかどうか検知し、刺激器の位置を最適にするためにサーチして調節可能であるが、患者は、次善位置に対する補償する試みで刺激の振幅を調整する選択肢を有する。しかし、刺激-振幅制御を使用する補償に対する能力が、刺激の振幅が高すぎることになる場合、皮膚及び神経の近部の他の組織が不快となることがある可能性により、制限される。関連する問題は、刺激される神経に対する刺激器の変動する動きは、例えば、呼吸に伴う首の筋肉の収縮により、ある程度は避けることはできない。首上のデバイスの次善位置とデバイスの回避できない動きとの組み合わせは、患者が各刺激セッションで正確に規定された刺激適用量を受けることを補償することを困難にする。本開示では、非侵襲的な迷走神経の電気刺激が用いられ、神経変性疾患を治療する。神経変性疾患は、神経細胞の劣化によるもので、脳機能障害を生じさせる。疾患は、通常、認知症に関連する記憶に影響する病状と、運動に問題を生じさせる病状との、2つのグループに大きく分けられる。最も広く知られている神経変性疾患は、アルツハイマー病(または、アルツハイマー)及びその前兆の軽度の認知障害(MCI)と、パーキンソン病(パーキンソン病認知症を含む)と、多発性硬化症とが含まれる。
他の問題は、刺激が症状を十分に緩和したか効果のいくつかの主観的評価にのみ基づいて刺激セッションを停止しようとすることがあることである。しかし、以下の理由により、刺激セッションが長すぎる場合は、効果が減少することがある。迷走神経の刺激の累積的効果の数値をS(t)で表す。本例示的目的を、神経の近部における刺激電圧Vに比例した割合で増加し、時定数τPで減少する関数として表すと、長期にわたる刺激の後、累積した刺激効果は、VとτPとの積に等しい値に飽和することがある。したがって、TPが特定の治療セッションにおける迷走神経刺激の持続時間である場合、時間t<TPに対し、S(t)=VτP[1-exp(-t/τP)]+S0exp(-t/τP)、t>TPに対し、S(t)=S(TP)exp(-[t-TP]/τP)であり、ここに、時間tは刺激開始から測定し、S0は、t=0とのときのSの値である。刺激セッションの最適の持続時間は、時定数τPが患者毎に相違するため、患者ごとに相違する。後の治療セッションが、前の治療セッションの有効性を考慮してデザインされるように、個々の患者を治療するために設計されている範囲で、刺激振幅Vは可能な限り一定なことが有益であり、治療セッションは、上述の収穫逓減の原理を考慮する必要がある。最低でも、セッション内の平均的刺激振幅は、神経に対する刺激器の動き、及び、患者による振幅調整に関わらず、推定または評価すべきである。あまり知られていない神経変性疾患には、副腎白質ジストロフィー、エイズによる認知症、アレキサンダー病、アルパース病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病、牛海綿状脳症、カナバン病、脳アミロイド、血管障害、小脳性運動失調、コケイン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、びまん性骨髄硬化性硬化症、致死性家族性不眠症、ファジオ・ロンド病、フリードライヒ失調症、前頭側頭型認知症または頭葉変性症、遺伝性痙性対麻痺、ハンチントン病、ケネディ病、クラッベ病、レビー小体型認知症、ライム病、マシャド・ジョセフ病、運動ニューロン疾患、多系統萎縮症、神経有棘赤血球症、ニーマン・ピック病、ペリツェウス・メルツバッハー病、ピック病、その若年フォームを含む原発性側索硬化症、進行性球麻痺、進行性核上まひ、その乳児型を含むレフサム病、サンドホフ病、シルダー病、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー病、脊髄の亜急性連合変性症、生存運動ニューロン脊髄性筋萎縮症、脊髄癆、テイ=サックス病、中毒性脳症、伝達性海綿状脳症、血管性認知症、及び、X連鎖脊髄性筋萎縮症、並びに、シヌクレイノパチー、プログラニュリン症、タウオパチー、アミロイド病、プリオン病、タンパク質凝集疾患、及び、運動障害等の特発性または特発性疾患が含まれる。より包括的なリストは、米国政府(gov)の国立衛生研究所(nih)の国立神経疾患脳卒中研究所(ninds)のウェブサイト(www)で見ることができる。このような疾患は、複数の名前を有し、疾患の分類は、組み合わせで生じまたは原型的でない、病理学的に単純化し過ぎることがあることが理解されよう。
これらの潜在的な問題は、刺激器の配置及び動きに関するもので、刺激器電極が迷走神経の回りに埋め込まれた患者に生じるものではない。患者ではなく、ヘルスケア提供者が非侵襲的刺激デバイスの慎重使用に信頼できる状況でも、これらはあまり重要ではない。より一般的には、患者が神経刺激器で自己刺激を行うときに、現実的な問題が生じ、つまり、どのように、刺激デバイスを維持及び充電するか、どのように、患者が刺激セッションを開始するか、どのように、患者の現在の医療状況に基づいて刺激セッションをデザインするか、どのように、連続する治療に影響を与えることのある要因を考慮してデバイスの作動をモニタするか、及び、どのように、終了したときに治療セッションの達成を評価するか、である。更に、患者が自己刺激を実行可能なときに、医療記録及び請求書維持等の管理事項に対処する必要がある。本開示は、このような問題の多くに対処することを意図する。本開示は、それぞれが異なる問題の解決策に包含されることのある複数の構成を備え、システム全体として、構成部分を個々に考慮するよりもより機能的である。
上述の神経変性疾患のそれぞれの少なくともいくつかの病理学の態様は、他の疾患とは相違しているにも関わらず、これらの病状は、通常、他の特徴と共有しており、したがって、これらはグループとして考慮しても良い。更に、共通して有するそれぞれの病理の態様は、同様な治療方法で処置することを可能とすることが多い。したがって、多くの刊行物は、神経変性疾患は共通の特徴を記載する(Dale E. BREDESEN, Rammohan V. Rao and Patrick Mehlen. Cell death in the nervous system. Nature 443(2006): 796-802; Christian HAASS. Initiation and propagation of neurodegeneration. Nature Medicine 16(11,2010): 1201-1204; Eng H LO. Degeneration and repair in central nervous system disease. Nature Medicine 16(11,2010):1205-1209; Daniel M. SKOVRONSKY, Virginia M.-Y. Lee, and John Q. TROJANOWSKI. Neurodegenerative Diseases: New Concepts of Pathogenesis and Their Therapeutic Implications. Annu. Rev. Pathol. Mech. Dis. 1(2006): 151-70; Michael T. LIN and M. Flint Beal. Mitochondrial dysfunction and oxidative stress in neurodegenerative diseases. Nature 443(2006): 787-795; Jorge J. PALOP, Jeannie Chin and Lennart Mucke. A network dysfunction perspective on neurodegenerative diseases. Nature 443(2006): 768-773; David C. RUBINSZTEIN. The roles of intracellular protein-degradation pathways in neurodegeneration. Nature 443(2006): 780-786)。
本開示は、発作、てんかん、頭痛、神経変性病疾患(neurogenerative disease disorder)、疾患、認知症、アルツハイマー病、虚血性脳卒中、外傷後脳震盪、慢性外傷性脳症等、または、他の病状等の患者の病状の治療を開示する。
上述のように、認知症は、病歴及び連続的な精神状態に関する検査の双方における認知機能障害の兆候に基づく臨床診断である。認知症の経過をより良いステージとする能力により、治療は、認知症の実際の発症前の段階で正当化される可能性がある。特に、本開示は、認知症の根底にある病理生体過程を、原則、停止または逆転するように導くことが可能なように、病状の進行の過程で早期に使用することが最適なことがある。したがって、本開示は、患者が前駆症状を示し、または、患者が軽度の認識機能障害(MCI)と診断された場合でも、治療を考慮する(DeCARLI C. Mild cognitive impairment: prevalence, prognosis, aetiology, and treatment. Lancet Neurol 2(1,2003):15-21; MAYEUX R. Clinical practice. Early Alzheimer’s disease. N Engl J Med 362(23,2010):2194-2201; WILSON RS, Leurgans SE, Boyle PA, Bennett DA. Cognitive decline in prodromal Alzheimer disease and mild cognitive impairment. Arch Neurol 68(3,2011):351-356)。
より詳細に後述するように、電気インパルスが患者の外皮の表面を介して迷走神経に伝達される。電気インパルスは、ノルエピネフリン(NE)及びアセチルコリン(Ach)等が脳内に抑制性伝達物質が放出されるように、迷走神経の活性を調整するのに十分である。本開示は、CNSのあらゆる場所で無差別に抑制性神経伝達物質を増加するのではなく、代わりに、迷走神経刺激パラメータの適切な選択を通して、必要な場所で抑制性神経伝達物質のレベルを優先的に増加させるもので、これは、個別的及び疾患の過程に基づいて調整しても良い。これらの抑制性神経伝達物質の放出は、脳内の小グリア細胞をM1表現型状態(架空の侵入生物を殺すために、破壊的神経毒放出する)から、M2表現型状態(予備状態であり、死滅細胞を食し、神経成長因子を放出する)に移行する。したがって、神経変性疾患または障害により引き起こされる神経炎症が、低減または排除され、これにより、疾患または障害の進行を遅らせるまたは阻止される。
アルツハイマー病(AD)に関して、AD患者及びADの前兆を有する患者(例えば、軽度の認知障害)に利益となる新規な作用のメカニズムは、患者の青斑の投影からノルエピネフリンの増大した量の放出を誘導するために迷走神経の刺激を用いることに基づく。ノルエピネフリンは、中枢神経系(CNS)内の神経炎症を強固にサポートすることが知られており、ベータアミロイドに対して向けられた神経炎症は、ADにおける神経細胞損失の主要なドライバである。したがって、本開示は、CNS内のノルエピネフリンの正常レベルが、ベータアミロイドの公差を維持し、これは、AD無しでも存在する。
しかし、ADでは、ベータアミロイドを包含するこれらの脳領域を刺激するノルエピネフリン放出青斑核細胞の最終フィールドは、損傷を受けまたは破壊され、これは、この後、これらの青斑細胞の周核損失に至る(ウォラー様変性症)。青斑核細胞の喪失、およびそれらが産生する保護ノルエピネフリンの損失は、漸減許容ベータアミロイド凝集体に対するミクログリア細胞による炎症性サイトカイン及び細胞毒性物剤の放出の増加を誘発する。これは、青斑最終フィールド及びそれが生成するノルエピネフリンの損傷及びその喪失を生じさせ、更に、他の隣接する神経細胞を損傷しまたは喪失させる。この結果は、保護青斑細胞と脳のベータアミロイド含有領域の双方が死滅する悪循環である。本開示は、迷走神経刺激を使用して、患者の青斑の投影からの大量のノルエピネフリンの放出を誘導することにより、この悪循環を破壊する。したがって、可能な限りノルエピネフリンの放出を高く維持することは、小グリア細胞をM1破壊状態からM2修復状態に遷移させることにより、この退行性サイクルを遮断し、これにより、神経炎症を低減し、病気の進行を停止及び減速し、青斑自体を保護する。
ADの進行は、バイオマーカの使用を介してモニタすることが可能である。発症前の段階は、個人は認知力が正常であるが、ある程度はAD病理学的変化を有する第1段階で発生する。これにADの第2前駆段階が続き、一般には、軽度の認知障害(MCI)と称される。ADの最終段階は、真の認知症である。本開示の方法は、これらの段階のいずれの患者に適用しても良い。ほとんどの患者に対し、刺激は30分間実行し、この治療は、12週以上にわたって週1回実行しても良く、これは、前駆症状から真の認知症まで病気の進行は慢性化した状況であるためである。あるいは、刺激は、患者が重要な情報を知ろうとするときにのみ実行しても良い。しかし、刺激プロトコルのパラメータは、患者の症状における異質性に応じて変更しても良いことが理解されよう。異なる刺激パラメータは、更に患者の病状の変化の過程として選択しても良い。好ましい実施形態では、開示した刺激方法及びデバイスは、興奮若しくは不安、または、心拍若しくは血圧の変化等の臨床的に重大な副作用を生じない。
脳震盪後症候群(PCS)は、脳震盪後、数週間、数ヶ月、または、時には、1年以上継続することがある症状のセットである。PCSは、軽度の形態の外傷性脳損傷(TBI)を生じさせることがある。PCSの速度は異なるが、ほとんどの研究は、単一の軽度TBIの病歴を有する個人の約15%が損傷に関連する永続的な症状を発症することを報告している。診断は、症状が脳震盪から損傷後3ヶ月以上続くときに行っても良い。病気は、症状の広い範囲、つまり、頭痛等の物理的、集中が困難等の認識、興奮性等の心理的及び行動に関連する。脳震盪の後に発生する頭痛は、片頭痛または緊張タイプの頭痛のように感じることがある。多くの頭痛は、緊張タイプの頭痛であり、これは、頭部外傷と同時に生じる首の外傷に関連することがある。PCSに対する治療は存在しないが、症状は治療可能であり、薬物と、物理的及び行動的治療を使用しても良く、個人は、症状に関する教育を受け、回復を期待することができる。PCSのケースの多くは、一定期間後に解消する。
慢性外傷性脳症(CTE)は、進行性退行性病である脳障害の1つの形態であり、これは、現在、多数回の脳震盪及び他の形態の頭部外傷の履歴を有する個人について、死後に診断されるだけである。この病気は、初期に、ボクシングの経験がある者に発見されたため、以前、ボクサー認知症(DP)と称されていた。CTEは、繰返し脳損傷を受けているフットボール、サッカー、アイスホッケー、ラグビー、プロレス及び他のコンタクトスポーツに参加するプロスポーツ選手に最も一般的に見られている。更に、爆発に晒されまたは震盪性外傷受けた兵士にも見られており、双方のケースは、特徴的な脳組織の変性及びタウタンパク質の蓄積から生じている。CTEを患う個人は、記憶喪失、攻撃性、精神錯乱及びうつ病など、一般に、外傷後数年または数十年現れる認知症の症状を示すことがある。
ADの治療と同様に、本開示は、このような脳震盪後症候群、CTEおよび脳震盪の他の形態等の脳震盪の治療のための方法およびデバイスを提供する。迷走神経の刺激は、脳内の抑制性神経伝達物質の放出を増加させ、これは、破壊的(M1)ではなく修復(M2)になるように、グリア細胞を変更する。これは、患者が1つ以上の脳震盪を受けた後に発生することのある変性過程を遅くし、または完全に停止する。
脳卒中は、脳若しくは脳幹、脊髄、または、網膜への正常な血液供給の損失による脳機能の急激な喪失である。これは、血栓症または動脈塞栓症による、血管の閉塞で生じる血流の不足(虚血)による可能性がある。脳卒中はまた、出血に起因することもある。血栓性脳卒中は、血餅(血栓)が脳の動脈の1つに形成されたときに発生し、これは、動脈中に蓄積される脂肪性沈着物(プラーク)の近傍に形成され、血流の低下(アテローム性動脈硬化症)を引き起こすことがある。一般的ではないが、血栓は、片頭痛の症状の血管痙攣の場所で形成されることがある。血栓がブロック可能なのは、大きな脳動脈(広範囲の脳を損傷させる)または小さな動脈であり、後者はいわゆるラクナ脳梗塞を生じさせる。塞栓性脳卒中は、血餅または他の破片(血栓)が、例えば、患者の心臓の心房である、脳の外に形成され、血流を介して搬送され、脳の動脈内に留まるときに発生する。全脳卒中の約半分から3分の2が血栓性脳卒中である。
虚血性脳卒中は、脳卒中患者の87%で発生し、症候性または無症候性のいずれかのことがある。症候性虚血性脳卒中は、焦点、または、神経組織の死によって引き起こされるグローバル脳、脊髄若しくは網膜の機能不全(中枢神経系梗塞)の臨床徴候により明らかである。無症候性脳卒中は、無症状である文書化された中枢神経系梗塞(酸素不足による組織の死)である。症候性虚血性脳卒中は、通常好ましくは、脳卒中の発症から3時間以内に、血栓溶解剤(血餅バスター)で処理される。対照的に、出血性脳卒中は、脳卒中患者の13%で発生し、神経外科で治療しても良い。出血性脳卒中は、脳内の出血(脳出血)及び脳を覆う内外層の間の出血(くも膜下出血)を含む。
一過性脳虚血発作(TIA)は、更に、脳、脊髄または網膜における虚血に起因する。TIAは、虚血性脳卒中と同じ基本的な病因を共有し、反対側の麻痺、突然の脱力若しくはしびれ、減光若しくは視力低下、失語症、不明瞭な発語及び精神錯乱等の同じ症状を生じる。脳卒中とは異なり、TIAの症状は、典型的には一日以内に解消可能であり、一方、脳卒中からの症状は、神経組織の死により、持続可能である。したがって、一過性脳虚血発作は、急性梗塞がない状態での、局所脳、脊髄または網膜虚血で生じる神経機能障害に起因する神経機能障害の一過性症状として確定しても良い(EASTON JD, Saver JL, Albers GW, et al. Definition and evaluation of transient ischemic attack: a scientific statement for healthcare professionals from the American Heart Association/American Stroke Association Stroke Council et al. Stroke 40(6,2009):2276-2293; PRABHAKARAN S. Reversible brain ischemia: lessons from transient ischemic attack. Curr Opin Neurol 20(1,2007):65-70)。
脳卒中は、梗塞を生じさせ、これは、酸欠状態で不可避的に死に、または、死につつある神経組織を有する。梗塞は、虚血組織の周辺部で囲まれ、これは、血液かん流を通じて酸素の迅速に復旧する。したがって、脳卒中患者の迅速な診断及び治療は、可能な限り周辺組織を保存するために不可欠とすることが可能であり、これにより、救出可能な組織により、実行される神経機能を保存する。虚血性脳卒中は、全体的に無痛で、通常、患者は、診断中に意識が残る。問い合わせたときに患者により示される神経症状、及び、検査は、脳卒中が起きたかどうかを予備的に評価するために使用される。
本開示は、リハビリ中に脳卒中患者の運動技能の回復を支援する方法として、頸部迷走神経の刺激を開示する。本開示は、更に、脳卒中患者の運動障害以外の病状のリハビリ治療のための非侵襲的神経刺激の使用を開示する。特に、非侵襲的迷走神経刺激は、空間無視として知られ、更に、半空間無視、半失認症(hemiagnosia)、半側空間無視(hemineglect)、半側無視、片側視覚的不注意(unilateral visual inattention)、半分不注意(hemi-inattention)、または、無視症候群としても知られている疾患を治療するために使用しても良い。いくつかの推定は90%と高い頻度を認識するが、全ての脳卒中を患った人間のほぼ25~30%で発生するといわれている(RINGMAN JM, Saver JL, Woolson RF, Clarke WR, Adams HP. Frequency, risk factors, anatomy, and course of unilateral neglect in an acute stroke cohort. Neurology 63(3,2004):468-474; BUXBAUM LJ, Ferraro MK, Veramonti T, Farne A, Whyte J, Ladavas E, Frassinetti F, Coslett HB. Hemispatial neglect: Subtypes, neuroanatomy, and disability. Neurology 62(5,2004):749-756; KLEINMAN JT, Newhart M, Davis C, Heidler-Gary J, Gottesman RF, Hillis AE. Right hemispatial neglect: frequency and characterization following acute left hemisphere stroke. Brain Cogn 64(1,2007):50-59)。空間無視は、子供を含むすべての年齢の脳卒中患者に発生する(LAURENT-VANNIER A, Pradat-Diehl P, Chevignard M, Abada G, De Agostini M.Spatial and motor neglect in children. Neurology 60(2,2003):202-207)。
本開示の1つの態様では、非侵襲的迷走神経刺激は、例えば、神経組織のグルタミン酸媒介の興奮に対して、中脳水道周囲灰白質、縫線核、及び、青斑核からそれぞれ放出される、GABA、及び/または、セロトニン、及び/または、ノルエピネフリンの抑止的効果を介して対抗する作用により、急性脳卒中の際に神経防護治療として使用しても良い。本開示の他の態様では、迷走神経刺激は、脳内のグリア細胞を修正し、これらの細胞を上述のようにM1からM2状態に転移させる。
本開示による迷走神経刺激治療は、30秒から5分、好ましくは約90秒から3分、より好ましくは約2分(それぞれ、単一適用量として画定される)実行することができる。脳卒中または一過性脳虚血発作を回避するための治療等予防的治療のため、治療は、一週間から何年も続くことのある期間にわたって、1日当たり複数回の適用量を施すことが好ましい。特定の実施形態では、治療は、日に所定回数、及び/または、日を通じて所定間隔で複数回の適用を包含する。例示的な実施形態では、以下の内の1つを有するもので、つまり、(1)所定の間隔または時間で、1日当たり3回の単一適用、(2)連続的、または、所定の間隔若しくは回数で5分離して2回適用、好ましくは1日当たり2若しくは3回、(3)連続的、または、所定の間隔若しくは5分離して繰返して3回適用、例えば1日当たり2若しくは3回、(4)連続的、または、5分離して1~3回適用、1日当たり4~6回。治療の開始は、切迫した脳卒中またはTIAが予測されるときに始まり、または、危険因子低減プログラムにおいて、患者が朝起きた後に始めて全日を通じて行っても良い。
急性脳卒中の治療等急性治療に対して、この治療は、(1)は発症時の一治療、(2)発症時の一治療に続いて、5~15分の別の治療、または、(3)1時間ごとの一治療を包含しても良い。
脳卒中患者及び/またはPCSのリハビリ中に発生するような、急性発作の長期にわたる治療に対して、この治療は、(1)3治療/日、(2)連続的または5分離して2治療、3x/日、(3)連続的または5分離して3治療、2x/日、(4)連続的または5分離して2若しくは3治療、10x/日まで、または、(5)連続的または5分離して2または3治療、15,30,60または120分毎を包含しても良い。例示的な実施形態では、各治療セッションは、連続的または5分離して、患者に1~3適用を施すことを含む。治療セッションは、日を通じて、15、30、60または120分ごとに適用され、患者は、1日24時間にわたり毎時2適用を受けることが可能である。
本開示の他の用途では、ここに開示した非侵襲的迷走神経刺激器は、介護人または患者により長期にわたり、予防的に発作を制限または防止するために使用することができる。上述のような埋め込み可能な迷走神経刺激器は、長期にわたって、てんかん発作を最小にまたは排除するために使用されている。しかし、これらのデバイスは、患者の首に埋め込む必要があり、これは、コストがかかり、侵襲的で恒久的な処置である。本開示では、患者は自身で迷走神経を非侵襲的に、毎日定期的に刺激することが可能であり、埋め込み可能なVNSデバイスと同様な結果が得られる。本開示のこの態様では、患者は、彼/彼女の医師と共に、発作を効果的に制限または防止するために非侵襲的刺激の適切な数及び間隔を決定する。更に、患者が、発作の発生しそうな前駆症状を経験している場合は、彼/彼女は、非侵襲的デバイスを直ちに使用して、発作の発生を敏感に制限または防止することができる。上記リストした全ての治療に対し、人は左右を変えて、または、特に脳半球で発生する脳卒中または脳震盪の場合、人は、脳卒中領域または頭痛側に対してそれぞれ同じ側または反対側を治療しても良い。または、単一治療に対し、人は、一側を1分治療した後に、反対側を1分治療しても良い。これらの治療パラダイムの変更は、患者毎の理由に基づいて選択しても良い。しかし、刺激プロトコルのパラメータは、患者の症状における異質性に応じて変更しても良いことが理解される。異なる刺激パラメータは、更に患者の病状の変化の過程として選択しても良い。好ましい実施形態では、開示した刺激方法及びデバイスは、興奮若しくは不安、または、心拍若しくは血圧の変化等の臨床的に重大な副作用を生じない。
本開示では、複数の電極が患者の皮膚に適用され、患者の組織内に電流を生成する。本開示の1つの実施形態の目的は、治療効果を達成するために、1つまたは複数の神経の信号と相互作用するように電気インパルスを形成し、適用することである。多くの開示は、特に、迷走神経またはその回りを、患者の首またはその近部に非侵襲的に配置したデバイスで刺激することにより、治療することを対象とする。
本開示のいくつかの実施形態は、神経変性疾患に焦点を当てているが、神経刺激は、喘息、COPD及び/または運動誘発性気管支収縮に関連する気管支収縮の治療のための気管支の平滑筋の弛緩、起立性低血圧と関連する血圧の上昇、例えば治療抵抗性に伴うことのある血圧の低下、てんかんに伴う発作等の治療、腸閉塞、うつ病、不安神経症及び/または人格障害等の精神神経疾患、アナフィラキシ、肥満及び/またはII型糖尿病、認知症及び/またはアルツハイマー病、てんかん発作等の発作、片頭痛、緊張型、群発型、MOH及び他のタイプの頭痛等の神経変性疾患、鼻炎、副鼻腔炎、脳卒中、心房細動、自閉症の治療、肝機能、胃不全麻痺及び他の機能性胃腸障害、運動障害、CHF、慢性痛、線維筋痛、代謝または甲状腺疾患、循環器疾患、及び/または、迷走神経の神経伝送によって影響を受け得る他の病気の変調の調整等、患者にも利益となることが理解されよう。異なる不具合に対するこのような治療は、ElectroCore,LLC社に譲渡された以下の米国特許出願に開示されている(その全ての開示は、参照することにより、あらゆる目的のためにその全体が包含される。つまり、2013年4月8日付け米国特許出願13/858114(ELEC-47)、2013年3月3日付け米国特許出願第13/783391号(ELEC-49)、2013年1月8日付け米国特許出願第13/736096号(ELEC-43)、2012年12月30日付け米国特許出願第13/731035(ELEC-46)、2012年9月5日付け米国特許出願第13/603799(ELEC-44-1)、2012年1月24日付け米国特許出願第13/357,010(ELEC-41)、2011年10月24日付け米国特許出願13/279,437号(ELEC-40)、2011年8月31日付け米国特許出願第13/222,087号(ELEC-39)、2011年7月15日付け米国特許出願第13/183,765号(ELEC-38)、2011年7月15日付け米国特許出願第13/183,721号である2014年3月18日発行の現米国特許第8,676,330号(ELEC-36)、2011年5月17日付け米国特許出願第13/109,250号である2014年3月18日発行の現米国特許第8,676,324号(ELEC-37)、2011年3月30日付け米国特許出願第13/075,746号(ELEC-35)、2011年2月10日付け米国特許出願第13/024,727号(ELEC-34)、2011年1月12日付け米国特許出願第13/005,005号(ELEC-33)、2010年12月9日付け米国特許出願第12/964,050号(ELEC-32),2010年8月9日付け米国特許出願第12/859568号(ELEC-31)、2009年3月20日付け米国特許出願第12/408,131号(ELEC-17CP1)及び2009年11月9日付け米国特許出願第12/612,177号で2011年10月18日発行の現米国特許第8,041,428号(ELEC-14CP1)である。
本開示のデバイス及び方法は、副交感神経、交感神経、脊髄または脳神経を包含するがこれらに制限するものではない体の他の組織及び神経に適用することが可能なことが理解されよう。1つの実施形態では、本開示のデバイスは、三叉神経に適用して、片頭痛、緊張型頭痛、慢性頭痛及び/または後頭神経痛を包含するがこれらに制限するものではない種々の病状を治療する。この実施形態では、後述のデバイスは、患者の前額部配置し、患者の皮膚を介して、三叉神経の滑車及び/または眼窩上の枝分かれ部に、神経を刺激するのに十分な電気インパルスを経皮的に作用させ、頭痛に伴う痛みを和らげる。これらの症状のこのような治療は以下の特許/特許出願により十分に記載されており(これらの全体の開示は、参照することにより、あらゆる目的についてその全体がここに包含される)、つまり、米国特許公開番号2013/0282095号,2009/0210028号,2007/0276451号及び米国特許8,428,734号である。
迷走神経の電気刺激が多くの不具合の治療に用いることが可能である事実は、以下から理解し得る。迷走神経は運動及び知覚繊維を有する。迷走神経は、頭蓋を出て、頸動脈鞘内で首の付け根まで首を下方に通過し、この後、胸郭及び腹部に移動し、ここで内臓の神経支配に貢献する。人の迷走神経(第10脳神経、左右の対)は、100,000以上の神経線維(軸索)を有し、ほとんどはグループに組織化されている。このグループは、種々のサイズの小束内に包含され、神経に沿って分岐及び合流する。通常の生理学的条件下では、各繊維は一方向にのみ電気インパルス導き、これは、順方向と定義され、逆行性方向と反対である。しかし、神経の外部電気刺激は、順方向及び逆行方向に伝搬する活動電位を生成することができる。中枢神経系から体内の種々の器官に信号を伝達する遠心性出力繊維に加えて、迷走神経は、体の器官の状態についての感覚(求心性)情報を中枢神経系に戻して伝達する。迷走神経における神経線維の約80~90%は求心性(感覚)繊維であり、内臓の状態を中枢神経系と通信する。
左または右の迷走神経内で最大の神経線維は、径がほぼ20μmで、密な有髄であり、一方、約1μmより小さな径の最小神経線維は、完全に無髄である。神経の先端部分が電気的に刺激されたときに、複合活動電位が、より近くに位置する電極で記録され得る。複合活動電位は、同様な伝導速度を有する多数の繊維の加算した応答を表す複数の活動のピークまたは波を有する。複合活動電位における波は、対応する機能カテゴリに分類される神経線維の異なる形式を示し、概略的な径は以下のようである。つまり、Aアルファ繊維(求心性または遠心性繊維、12~20μm径)、Aベータ繊維(求心性または遠心性繊維、5~12μm)、Aガンマ繊維(遠心性繊維、3~7μm)、Aデルタ繊維(求心性繊維、2~5μm)、B繊維(1~3μm)及びC繊維(無髄、0.4~1.2μm)である。グループA及びグループBの繊維の径は、ミエリン鞘の厚さを含む。
迷走(または迷走性)求心性神経線維は、頭蓋骨基部の近部の腫脹の形態を取る迷走感覚神経節に位置する細胞体から生じる。迷走神経求心性は、孤束内の脳幹を横断し、終端シナプスの約80パーセントが孤束(または、孤束核、複数の孤束核、または、NTS)の神経核内に位置する。NTSは、扁桃体、縫線核、中脳水道周囲灰白質、巨細胞性網様体傍核、嗅覚結核、青斑核、疑核及び視床下部等の中枢神経内の多種多様な組織内に突出する。NTSは更に、傍小脳脚核内に突出し、これは、次に、視床下部、視床、偏桃体、前頭、及び、下辺縁皮質、外側前頭前皮質、及び、他の皮質領域に突出する(JEAN A. The nucleus tractus solitarius: neuroanatomic,neurochemical and functional aspects. Arch Int Physiol Biochim Biophys 99(5,1991):A3-A52)。したがって、迷走神経求心性の刺激は、この突起を介して脳と脳幹の多くの組織の活性を調節することができる。
迷走遠心性神経線維に関して、2つの迷走神経のコンポーネントが、周辺の副交感神経の機能を調節するために脳幹で進化してきた。背側運動核及びその接続部を有する背側迷走神経複合体は、主として横隔膜のレベルの下側の副交感神経機能を制御し、一方、疑核及び顔面神経核後核を有する腹側迷走神経複合体は、主として、心臓、胸腺及び肺、首及び胸郭上部の分泌線及び組織、並びに、食道複合体の筋肉等の特殊な筋肉等、横隔膜の上の器官の機能を制御する。例えば、心臓を刺激する節前副交感神経迷走神経細胞の細胞体は、疑核内に存在し、これは、迷走神経刺激によって生成され得る潜在的な心臓血管の副作用に関連する。
迷走遠心性繊維は、それぞれ標的器官内またはその近部に配置される副交感神経の神経節の神経細胞を刺激する。これらの繊維の活動による迷走神経副交感神経の緊張は、交感神経の神経支配により、部分的に反射的にバランスされる。したがって、迷走神経の電気刺激は、節後神経線維の副交感神経活動の調整だけでなく、交換神経活動の反射調節も生じる。迷走遠心性神経の調整を通じて直接的に、または、迷走求心性神経の電気刺激でもたらされる脳幹及び脳機能の活動を介して間接的に自律神経活動の幅広い変化をもたらす迷走神経の能力は、迷走神経の刺激が多くの末端器官の多岐にわたる病状を治療することが可能であるという事実を説明する。特定の状態の選択的な治療が可能であり、これは、電気刺激のパラメータ(周波数、振幅、パルス幅等)が、それぞれ個人における特定の生理反応を生じる特定の求心性または遠心性のA,B及び/またはC繊維の活動を選択的に活性化または調節し得るためである。
通常実行されるように、迷走神経を刺激するために使用される電極は、首切開手術中に神経の回りに埋め込まれる。多くの患者に対し、てんかん、うつ病または他の状態を治療するために、永久電極を埋設する目的で行っても良い(Arun Paul AMAR,Michael L Levy,Charles Y.Liu及びMichael L.J.Apuzzo.第50章.Vagus nerve stimulation pp.625~638,特に634-635.Elliot S.Krames,P Hunber Peckham,Ali R Rezai,eds.Neuromodulation.ロンドン:Academic Press,2009;KIRSE DJ,Werle AH,Murphy JV,Eyen TP, Bruegger DE, Hornig GW,Torkelson RD.Vagus nerve stimulator implantation in children. Arch Otolaryngol Head Neck Surg 128(11,2002):1263-1268)。その場合、電極はらせん電極のことが多いが、他のデザインを使用しても良い(特許US4979511,題名 Strain relief tether for implantable electrode,TERRYによる,Jr;US5095905,題名Implantable neural electrode,KLEPINSKIによる)。他の患者では、手術中に偶発的に損傷されていないことを確認するために、開首甲状腺手術中に迷走神経が電気的に刺激される。その場合、首内の迷走神経は、外科的に露出され、一時的刺激電極が神経の回りにクリップされる(SCHNEIDER R,Randolph GW,Sekulla C,Phelan E,Thanh PN,Bucher M,Machens A,Dralle H,Lorenz K.Continuous intraoperative vagus nerve stimulation for identification of imminent recurrent laryngeal nerve injury.Head Neck 2012 Nov 20 doi:10 1002/hed.23187(Epub ahead of print,pp.1~8))。
更に、最小侵襲の外科的アプローチすなわち経皮的神経刺激を使用して迷走神経を電気的に刺激することも可能である。この処置では、一対の電極(アクティブ電極及びリターン電極)が患者の首の皮膚を通して迷走神経の近部に導入され、電極に接続されたワイヤが患者の皮膚からパルスジェネレータに延び(公開番号US20100241188,題名Percutaneous electrical treatment of tissue,J.P.ERRICO et alによる;SEPULVEDA P,Bohill G,Hoffmann TJ Treatment of asthmatic bronchoconstriction by percutaneous low voltage vagal nerve stimulation: case report Internet J Asthma Allergy Immunol 7(2009):e1(pp1~6);MINER,J.R.,Lewis,L.M.,Mosnaim,G.S.,Varon,J.,Theodoro,D Hoffman,T.J.Feasibility of percutaneous vagus nerve stimulation for the treatment of acute asthma exacerbations Acad Emerg Med 2012;19:421-429)、その全開示は、全ての目的に対して、参照することにより、本明細書に包含される。
経皮的神経刺激処置は、迷走神経に対してではなく、主として痛みの治療に対して説明してきており、これは、通常は痛みを生じさせるとは考えられず、特別な課題を提示する(HUNTOON MA,Hoelzer BC,Burgher AH, Hurdle MF, Huntoon EA. Feasibility of ultrasound-guided percutaneous placement of peripheral nerve stimulation electrodes and anchoring during simulated movement: part two, upper extremity. Reg Anesth Pain Med 33(6,2008):558-565; CHAN I, Brown AR, Park K, Winfree CJ.Ultrasound-guided, percutaneous peripheral nerve stimulation: technical note.Neurosurgery 67(3 Suppl Operative,2010):ons136-139;MONTI E.Peripheral nerve stimulation:a percutaneous minimally invasive approach.Neuromodulation 7(3,2004):193-196;Konstantin V SLAVIN.Peripheral nerve stimulation for neuropathic pain. US Neurology 7(2,2011):144-148)。
いくつかの実施形態では、刺激デバイスは、患者に経皮浸透を通じて、迷走神経を包含する頸動脈鞘の内部、隣接部または極近接部の標的位置に導入される。所定位置となると、電気インパルスが刺激装置の電極を介して1つまたは複数の選択した神経(例えば、迷走神経またはその分岐の1つ)に印加され、神経(複数を含む)を刺激、ブロックまたは調節し、患者の状態またはその状態の症状を治療する。いくつかの状態に対しては、治療は激しいことがあり、患者に反応を起こすために1つまたは複数の神経と電気インパルスが直ちに相互作用を開始することを意味する。いくつかの実施形態では、電気インパルスは神経(複数を含む)に反応を生じさせ、患者の状態または症状を、3時間より短く、好ましくは1時間より短く、更に好ましくは15分よりも短い時間で改善する。他の状態に対しては、数日、数週間、数か月または数年にわたって神経の刺激を間欠的に予定しまたは必要に応じて行うことで、患者の改善を起こし得る。迷走神経の刺激に対する適切な経皮的処置のより完全な説明が、同時継続中の2009年4月13日付け「Percutaneous Electrical Treatment of Tissue」と題する米国特許出願(出願番号12/422483)で見ることができ、その完全な開示は、参照することにより、その全体があらゆる目的に対して本明細書に包含される。
本開示の他の実施形態では、患者の外側に発生しかつ制限される時間的に変化する磁界は、患者の組織内に電磁界を生成し、及び/または、渦電流を誘導する。他の実施形態では、患者の皮膚に適用された電極は、患者の組織内に電流を生成する。本開示の1つの実施形態の目的は、脳卒中及び/または一過性脳虚血発作を防止または回避するために、1つまたは複数の神経と相互作用するように、電気インパルスを生成および作用させ、急性脳梗塞または一過性脳虚血発作の影響を改善または制限し、及び/または、脳卒中患者を回復することである。
開示の一部は、患者の首またはその近部にデバイスを非侵襲的に配置して、特に、迷走神経またはその周りの電気刺激により患者を治療することに向けられている。しかし、本開示のデバイス及び方法は、制限するものではないが、副交感神経、交換神経、脊椎神経、または、脳神経を含む体の他の組織及び神経に作用させることが可能であることも理解される。当業者に明らかなように、この方法は、心臓に問題が存在することが知られている患者に使用する前に、十分に評価することが必要である。更に、本発明の治療パラダイムは、上述のような埋め込み可能及び/または経皮的刺激デバイスを含む多岐にわたる迷走神経刺激に使用することができることが認識される。
図1Aは、刺激によって潜在的に影響される他の解剖学的構造との接続に関連して、「迷走神経刺激」として刺激する位置を示す。本開示の他の実施形態では、種々の脳及び脳幹構造が刺激によって優先的に調整される。これらの構造は、脳卒中または一過性脳虚血発作のための予防または治療としての活性を調節するための理論的根拠とともに、以下の開示のセクションで説明する。予備的事項として、始めに、迷走神経自体及びその最も近接する接続を説明し、これらは、刺激を実行するために使用される電気波形の後述の開示に特に関係する。
迷走神経(第10脳神経、左右対)は、運動及び感覚繊維を有する。迷走神経は、頭蓋を出て、頸動脈鞘内で首の付け根まで首を下方に通過し、この後、胸郭及び腹部に移動し、ここで内臓の神経支配に貢献する。
人の迷走神経は100,000を超える神経線維(軸索)を有し、主にグループに編成されている。このグループは、種々のサイズの小束内に包含され、神経に沿って分岐及び合流する。通常の生理学的状態では、各繊維は一方向にのみ電気信号を伝達し、これは、順方向と規定され、逆行性方向と反対である。しかし、神経の外部電気刺激は、順方向及び逆行方向に伝搬する活動電位を生成することができる。中枢神経系から体内の種々の器官に信号を伝達する遠心性出力繊維に加えて、迷走神経は、体の器官の状態についての感覚(求心性)情報を中枢神経系に戻して伝達する。迷走神経における神経線維の約80~90%は求心性(感覚)繊維であり、内臓の状態を中枢神経系と通信する。遠心性方向及び求心性方向の電気信号の伝搬は、図1Aに矢印で示してある。組織間の通信が双方向の場合、遠心性及び求心性神経線維を個別に示すのではなく、図1Aに2つの矢印を有する単一接続として示してある。
左または右の迷走神経内で最大の神経線維は、径がほぼ20μmで、密な有髄であり、一方、約1μmより小さな径の最小神経線維は、完全に無髄である。神経の先端部分が電気的に刺激されたときに、複合活動電位が、より近くに位置する電極で記録され得る。複合活動電位は、同様な伝導速度を有する多数の繊維の加算した応答を表す複数の活動のピークまたは波を有する。複合活動電位内の波は、異なるタイプの神経線維を示し、対応する機能的カテゴリに分類され、近似する径は以下の通りである。つまり、Aアルファ繊維(求心性または遠心性繊維、12~20μm径)、Aベータ繊維(求心性または遠心性繊維、5~12μm)、Aガンマ繊維(遠心性繊維、3~7μm)、Aデルタ繊維(求心性繊維、2~5μm)、B繊維(1~3μm)及びC繊維(無髄、0.4~1.2μm)。グループA及びグループBの繊維の径は、ミエリン鞘の厚さを含む。迷走神経の組織は、新生児及び幼児で発達し、これは、自律反射の成熟の一部を占めることが理解される。したがって、本発明における迷走神経刺激のパラメータは、この年齢関連成熟を説明するように選択されることが理解される(PEREYRA PM,Zhang W,Schmidt M,Becker LE.Development of myelinated and unmyelinated fibers of human vagus nerve during the first year of life. J Neurol Sci 110(1-2,1992):107-113;SCHECHTMAN VL, Harper RM, Kluge KA.Development of heart rate variation over the first 6 months of life in normal infants. Pediatr Res 26(4,1989):343-346)。
迷走神経(または、迷走神経の)求心性神経線維は、迷走感覚神経節内に位置する細胞体から生じる。これらの神経節は、頭蓋骨にちょうど後ろ側の迷走神経の頸部側に見られる腫脹の形態を取る。下側及び上側迷走神経節と称されるこのような2つの神経節がある。更に、これらは、それぞれ節状及び頚静脈神経節と呼ばれる(図1A参照)。頚部(上側)神経節は、頭蓋骨の基部の頸静脈孔を通るように、迷走神経上の小さな神経節である。節状(下側)神経節は、第1頸椎の横突起の高さに位置する迷走神経上の神経節である。
迷走神経求心性は、孤束内の脳幹を横断し、末端シナプスの約80パーセントは孤束(または、孤束核、孤束核、または、NTS、図1A参照)の中枢内に位置する。NTSは、扁桃体、縫線核、中脳水道周囲灰白質、室傍核、嗅結節、青斑核、疑核及び視床下部等の中枢神経系における多種多様の組織内に突出する。NTSは、更に、傍小脳脚核内に突出し、これは、次に視床下部、視床、扁桃体、前島、及び、下辺縁皮質、外側前頭前皮質、及び、他の皮質領域に突出する(JEAN A.The nucleus tractus solitarius:neuroanatomic,neurochemical and functional aspects.Arch Int Physiol Biochim Biophys 99(5,1991):A3-A52)。このような中央投影は、内受容および休止状態の神経回路網に関連して以下に説明する。
迷走遠心性神経線維に関して、2つの迷走神経のコンポーネントが、周辺の副交感神経の機能を調節するために脳幹で進化してきた。背側運動核及びその接続部を有する背部迷走神経複合体(図1A参照)は、主として横隔膜(例えば、腸及びそのクロム親和性細胞)の下のレベルの副交感神経機能を制御し、一方、疑核及び顔面神経核後核を有する腹側迷走神経複合体は、主として横隔膜より上の、心臓、胸腺及び肺の器官、首及び胸郭上部の他の線及び組織、並びに、食道複合体の筋肉等の特別な筋肉の機能を制御する。例えば、心臓を刺激する節前副交感神経迷走神経細胞の細胞体は、疑核内に存在し、これは、迷走神経刺激によって生成され得る潜在的な心臓血管の副作用に関連する。
大まかにいうと、出願人は、脳に対するnVNSの効果は3つの成分が存在することを判断した。最大の効果が2分間の刺激中に発生し、(例えば、瞳孔測定、心拍変動、電気皮膚反応または誘発電位を使用して測定した)自律機能の急激な変化として明瞭に見ることができる脳機能、fMRI画像解析に示すように、種々の脳領域の活性化、及び、抑制の著しい変化を生じる。第2の効果は、中程度の強度であり、刺激後、15~180分持続する。動物実験は、脳の様々な部分における神経伝達物質レベルの数時間持続する変化を示している。第3の効果は、強さが軽度の強さであり、8時間まで継続し、例えば片頭痛の動物モデルにおいて臨床的に見られる症状の長時間にわたる緩和に対して貢献する。
したがって、病状、慢性的または急性治療であるかどうか、及び、病気の自然経過にしたがって、異なる治療プロトコルを使用しても良い。特に、出願人は、てんかん、発作等の特定の神経変性疾患を有する患者に対して、迷走神経を「連続的に刺激する」こと(または、臨床的に効果的な利点を提供するために)は、必要ないことを見出した。ここに定義される用語、「連続的に刺激する」は、24時間/日、連続的に特定のオン/オフパターンを継続することを意味するものとして、定義される。例えば、既存の埋め込み可能迷走神経刺激装置は、迷走神経を、24時間/日及び数日/週にわたって、30秒オン/5分オフ(または、同様)のパターンで「連続的に刺激する」。出願人は、この連続的な刺激は、多くの疾患に対して所要の臨床的利点を提供するためには、必要でないと、判断した。例えば、急性片頭痛発作またはてんかん発作の治療では、治療パラダイムは、痛みまたは発作の始まりまたはその前に2分間の刺激を行い、15分後、更に2分間の刺激を行う。てんかん、予防的治療、アルツハイマー病及び/またはPCSに対して、一日当たり2分の刺激を3回行うことが最適と見られる。しばしば、複数回連続して、2分間刺激が必要とされる。したがって、初期治療プロトコルは、所要の状態に対して大規模な患者集団に対して最適であり得るものに対応する。しかし、治療は、それぞれ特定の患者の反応にしたがって、個別化した基準で変更しても良い。
本開示は、迷走神経の刺激、つまり、予防、急性及び補償(リハビリ的)を含む3つのタイプのインターベンションを考慮する。これらの内でも、急性治療は迷走神経刺激の最小の処置を包含し、これは、症状の出現時に開始する。主として、症状を伴う神経伝達の興奮を抑制する自律神経系を求め、係合することを意図している。予防的治療は、急性症状が丁度生じたばかり(そうでない場合でも)のように処置され、また、症状が再発したかのように(そうでない場合でも)一定間隔で繰り返される意味で、急性治療と共通する。他方、リハビリまたは代償治療は、中枢神経系の長期にわたる調節を促進することを試み、新たな神経回路を形成することにより、患者の疾病の結果として生じた不備を補償する。
本開示による迷走神経刺激治療は、30秒から5分、好ましくは約90秒から約3分でより好ましくは約2分間(それぞれ単一の処置として)の連続周期で実施される。処置が完了した後、一定期間にわたって治療が停止される(後述するように、治療にしたがって)。脳卒中または一過性脳虚血発作を回避するための治療等、予防的処置については、治療は、1週間から所定年数まで続くことのある期間にわたり、1日当たり複数回の処置を施すことが好ましい。特定の実施形態では、治療は、日中の所定時間に、及び/または、1日を通して所定の間隔で複数回の処置が行われる。例示的な実施形態では、治療は以下のうちの1つで行われ、つまり、(1)所定の間隔または時間で3回/日、(2)2回、連続してまたは所定の間隔若しくは時間で5分離して、好ましくは2または3回/日、(3)3回、連続してまたは所定の間隔若しくは時間で5分離して、例えば2または3回/日、または、(4)1~3回、連続してまたは5分離して、1日当たり4~6回。治療の開始は、差し迫った脳卒中またはTIA発作が予測されるとき、若しくは、PCSからの頭痛等、患者が急性症状を感じたときに始めても良く、または、リスクファクタ低減プログラムで、朝、患者が起きた後に開始し、一日を通して実行しても良い。
例示的な実施形態では、各治療期間は、連続的にまたは5分離して、患者に対して1~3回施される。治療セッションは、患者が1日24時間を通して、時間毎に2回の処置を受けられるように、日中、15,30,60または120分毎に処置される。
特定の障害に対しては、時刻は、治療間の時間間隔よりも重要である。例えば、青斑核は、1日24時間中に、不活性期間と活性期間との期間を有する。典型的には、不活性期間は夕方近く、または、患者が眠っているときの真夜中に生じ得る。青斑核で生成される脳内の抑制性神経伝達物質のレベルが減少するのが、不活性期間中である。これは、特定の障害に影響を与え得る。例えば、PCSまたは慢性進行性外傷性脳症に起因する片頭痛または群発性頭痛を患っている患者は、青斑核の不活性期間の後にこれらの頭痛がすることが多い。これらの障害のタイプに対し、脳内の抑制性神経伝達物質の量が、障害の急性発作を緩和または防ぐために十分高いレベルに維持することができるように、不活性期間中における予防的治療が最適である。
これらの実施形態では、予防的治療は、青斑核の不活性期間のタイミングに、複数回/日行うことを包含しても良い。1つの実施形態では、本開示による治療は、1日当たり2~3回、または、1日当たり2~3「治療セッション」で施す、1以上の回数分を包含する。治療セッションは、真夜中に及び患者が起きた朝に再度、夕方近くまたは深夜に行われるのが好ましい。例示的な実施形態では、各治療セッションは、1~4回、好ましくは2~3回包含し、各回は約90秒から約3分持続する。
他の障害に対して、治療セッション間の間隔は、最も重要であり、これは、出願人が迷走神経の刺激は、脳内の抑制性神経伝達物質レベルに、例えば、少なくとも1時間で、3時間まで、場合によっては8時間までの持続効果を有することが可能であると判断したためである。1つの実施形態では、本開示による治療は、24時間にわたる間隔で1回以上(すなわち、治療セッション)施すことを包含する。好ましい実施形態では、このような治療セッションは1~5回で、好ましくは2~4回の治療セッションである。各治療セッションは、1~3回含むことが好ましく、それぞれ約60秒から約3分、好ましくは約90秒から約150秒、より好ましくは約2分持続する。
急性脳卒中または発作または頭痛症状の治療等の急性の治療に対して、本開示による治療は、1以上の実施形態を有しても良く、(1)症状の発症時に1回、(2)症状の発症時に1回、続いて、5~15分の他の回、または、(3)症状の発症時から急性発作が軽減またはなくなるまで、15分から1時間毎に1回行う。これらの実施形態では、各実行回は、約60秒から約3分、好ましくは約90秒から約150秒、より好ましくは約2分の間持続するのが好ましい。
てんかんを持つ脳卒中患者、脳卒中、アルツハイマー病、認知症またはPCSを持つてんかん患者のリハビリテーション中に生じるような急性の損傷の長期にわたる治療に対し、この治療は、(1)3回処置/日、(2)2回処置、連続的または5分離して、3x/日、(3)3回処置、連続的または5分離して、2x/日、(4)2または3回処置、連続的または5分離して、10x/日まで、または、(5)1,2または3回処置、連続的または5分離して、15,30,60または120分ごとに行うことを包含しても良い。
上記した治療の全てについて、左右側間で交互に治療しても良く、または、特に脳半球で起こる脳卒中若しくは片頭痛震盪の場合に、それぞれ脳卒中-脳半球若しくは頭痛側に対して同側若しくは反対側を治療しても良い。または、単一治療について、一側で1分、続いて反対側で1分治療しても良い。これらの治療パラダイムの変更は、患者ごとに応じて選択しても良い。しかし、刺激プロトコルのパラメータは、患者の症状の異質性に応じて変更しても良いことが理解される。異なる刺激パラメータは、更に、患者の状態変化の経過と共に選択しても良い。好ましい実施形態では、開示した方法及びデバイスは、興奮若しくは不安神経症、または、心拍若しくは血圧の変化等の臨床的に重要な副作用を生じるものではない。
予防的治療は、患者が前駆、ハイリスク双安定状態にあるときに最も効果的であり得る。その状態では、患者は同時に正常のまま、または、症状を示すことができ、正常状態と症状との間の選択は、生理的フィードバックネットワークによる変動の増幅にしたがう。例えば、血栓は、ゲルまたは流体相で存在しても良く、変動のフィードバック増幅が相の及び/またはゲル相の体積を変化させる。したがって、血栓は、迷走神経刺激で調整され得る血流及び炎症で影響されるように、血栓の形成に含まれる酵素のネットワークで示される非線形動力学にしたがって、形成されまたは形成されない(PANTELEEV MA,Balandina AN,Lipets EN,Ovanesov MV,Ataullakhanov FI.Task-oriented modular decomposition of biological networks:trigger mechanism in blood coagulation. Biophys J 98(9,2010):1751-1761;Alexey M SHIBEKO,Ekaterina S Lobanova,Mikhail A Panteleev及びFazoil I Ataullakhanov.Blood flow controls coagulation onset via the positive feedback of factor VII activation by factor Xa.BMC Syst Biol 2010;4(2010):5,pp.1~12)。その結果、脳卒中に対する予防中の迷走神経刺激治療のメカニズムは、血栓によって既に生じている虚血の始まりを引き起こす興奮性神経伝達を刺激が抑制するときに、急性治療中生じるものとは一般的に相違する。それにも関わらず、予防的治療は、更に、最終的には血栓の形成時に生じ興奮を制限するように、興奮性神経伝達を抑制することができ、急性治療は、他の血栓の形成を阻止することができる。
このような阻害に関与する回路が図1Aに示してある。背側迷走神経複合体内の興奮性神経は、その神経伝達物質として一般にグルタミン酸を用いる。背側迷走神経複合体内の神経伝達を阻害するため、本開示は、孤束(NTS)の核が有する、抑制性神経伝達物質を生成する組織との双方向接続を使用し、または、NTSが有する視床下部との接続を使用し、これは、次に、抑制性神経伝達物質を生成する組織に突出する。抑止は、後述する刺激波形の結果として生じる。したがって、最後野と背側運動核のNTSにより、グルタミン酸媒介活性化に対抗する作用は、それぞれ中脳水道周囲灰白質、縫線核及び青斑核からのGABA、及び/または、セロトニン、及び/または、ノルエピネフリンである。図1Aは、これらの興奮性と抑制性の影響が組み合わされて、背側運動核の出力を調節する方法を示す。同様な影響がNTS自体内で結合し、NTS及び背側運動核の結合した抑制性の影響が一般的な抑制効果を生じる。
視床下部またはNTSによる中脳水道周囲灰白質、縫線核及び青斑核内の抑制性回路の活性化も、これらの組織のそれぞれを接続する回路を互いに調節させる。したがって、図1Aに示すように、中脳水道周囲灰白質は、縫線核及び青斑核に伝達し、青斑核は縫線核に伝達する(PUDOVKINA OL,Cremers TI,Westerink BH.「The interaction between the locus coeruleus and dorsal raphe nucleus studied with dual-probe microdialysis.」Eur J Pharmacol 7(2002);445(1-2):37-42.;REICHLING DB,Basbaum AI.Collateralization of periaqueductal gray neurons to forebrain or diencephalon and to the medullary nucleus raphe magnus in the rat. Neuroscience 42(1,1991):183-200;BEHBEHANI MM.The role of acetylcholine in the function of the nucleus raphe magnus and in the interaction of this nucleus with the periaqueductal gray.Brain Res 252(2,1982):299-307)。中脳水道周囲灰白質、縫線核及び青斑核も、虚血中に興奮されることになるものを含む脳内の他の多くの場所に突出する。したがって、本開示のこの態様では、急性脳卒中または一過性脳虚血発作中の迷走神経刺激は、中脳水道周囲灰白質、縫線核及び青斑核のその活性化を介する、全体的な神経保護の抑制効果を有する。
特に、迷走神経刺激は、島(更に、島的皮質(insulary cortex)、島皮質または島ローブとしても知られている)として知られている脳の一部及びその前帯状皮質(ACC)との接続に対する神経保護としても良い。迷走神経から島及びACCに導かれる神経回路が図1Aに示してある。脳卒中患者に対して島の保護は特に重要であり、これは、島に対するダメージが運動コントロール、手及び目運動機能(hand and eye motor movement)、運動学習、嚥下、語音明瞭度、長く複雑な話しかけられた文章に対する処理能力、感覚及び自律機能を含む典型的な脳卒中患者における症状を生じさせることが知られているためである(ANDERSON TJ,Jenkins IH,Brooks DJ,Hawken MB,Frackowiak RS,Kennard C.Cortical control of saccades and fixation in man.A PET study. Brain 117(5,1994):1073-1084;FINK GR,Frackowiak RS,Pietrzyk U,Passingham RE (April 1997).Multiple nonprimary motor areas in the human cortex.J.Neurophysiol 77(4,1997):2164-2174;SOROS P,Inamoto Y,Martin RE.Functional brain imaging of swallowing:an activation likelihood estimation meta-analysis.Hum Brain Mapp 30(8,2009):2426-2439;DRONKERS NF.A new brain region for coordinating speech articulation.Nature 384(6605,1996):159-161;ACKERMANN H,Riecker A.The contribution of the insula to motor aspects of speech production:a review and a hypothesis.Brain Lang 89(2,2004): 320-328;BOROVSKY A,Saygin AP,Bates E,Dronkers N.Lesion correlates of conversational speech production deficits. Neuropsychologia 45(11,2007):2525-2533;OPPENHEIMER SM, Kedem G,Martin WM.Left-insular cortex lesions perturb cardiac autonomic tone in humans.Clin Auton Res ;6(3,1996):131-140; CRITCHLEY HD.Neural mechanisms of autonomic, affective,and cognitive integration. J. Comp. Neurol.493(1,2005):154-166)。
次に、迷走神経を刺激するために使用される本開示のデバイスについて説明する。本開示の実施形態が図1Cに示してあり、これは、病状を治療するために、神経にインパルスエネルギを送出する電極ベースの神経刺激/調整デバイス302の概略図である。図示のように、デバイス302は、インパルスジェネレータ310、インパルスジェネレータ310に連結された電源320、インパルスジェネレータ310と通信し、電源320に連結される制御ユニット330及びワイヤ345を介してインパルスジェネレータ310に連結される電極340を備える。好ましい実施形態では、同じインパルスジェネレータ310、電源320及び制御ユニット330は、磁気刺激装置または電極ベースの刺激装置302の双方に使用しても良く、ユーザは、磁気コイルまたは電極340が取り付けられているかどうかにしたがって、パラメータを変更することができる。
一対の電極340が図1Cに示してあるが、実際には、電極は3またはそれ以上の異なる電極を備え、そのそれぞれが直列または並列にインパルスジェネレータ310に接続される。したがって、図1Cに示す電極340は、デバイスの全ての電極を集合的に表す。
図1Cの350を付したアイテムは、ボリュームであり、電極340と接触し、導電媒体を充填されている。電極340が埋設される導電媒体は、電極を完全に囲む必要はない。ボリューム350は、標的皮膚面で患者に電気的に接続され、患者の神経または組織を刺激するために達成することが必要な電極340を通る電流密度形成する。患者の皮膚面に対する電気接続は、インターフェース351を介している。1つの実施形態では、インターフェースは、マイラーの薄いシート等の電気絶縁(誘電体)材料で形成される。その場合、患者に対する刺激装置の電気的連結は、容量性である。他の実施形態では、インターフェースは、導電媒体350自体、導電若しくは浸透膜、または、金属片等の、導電材料を備える。その場合、患者に対する刺激装置の電気的連結は、オーム性である。図示のように、体の表面に適用されたときにぴったりするように変形可能としても良い。したがって、インターフェース351の外面における湾曲または屈曲は、体の表面の湾曲または屈曲にも対応し、この体にインターフェース351が適用され、媒体と体表面とを接触させる。
制御ユニット330は、インパルスジェネレータ310を制御し、デバイスの電極(または、磁気コイル)のそれぞれに対する信号を生成する。信号は、この信号が非侵襲的に標的神経または組織に電極340を介して作用したときに、特定の病状の改善に適切であるように選択される。神経刺激/調整デバイス302は、その機能により、パルスジェネレータと称しても良いことに注意が必要である。双方がSHAFFERに対する特許公開公報US2005/0075701及びUS2005/0075702は、本開示に適用しても良いパルスジェネレータの説明を包含する。例として、パルスジェネレータは、市販もされており、例えば、5301 スティーブンスクリーク大通り サンタクララ カルフォルニア州 95051に住所を有するAgilent Technologies Inc.社のAgilent 33522A Function/Arbitrary Waveform Generatorである。
制御ユニット330は、汎用コンピュータを備えてもよく、1または複数のCPU、実行可能なコンピュータプログラム(システムのオペレーティングシステムを含む)及びデータ保存及び検索を格納するコンピュータメモリ、磁気ディスク装置とキーボードとコンピュータマウスとタッチスクリーンと任意の外部供給生理学的信号(図11参照)からの外部信号を受信する通信装置(シリアルまたはUSBポート)、外部から供給されるアナログ信号(図11参照)をデジタル処理するアナログ・デジタルコンバータ、システムの一部を構成するプリンタ及びモデム等の外部装置との間でデータを送受信する通信装置、システムの一部を構成するモニタまたはディスプレイスクリーン上に情報の表示を生成するハードウェア、並びに、上述のコンポーネントを相互接続するバスを備える。したがって、ユーザは、キーボードまたはタッチスクリーン等のデバイスで、制御ユニット330に対して命令をタイピングまたは別の方法で提供することにより、システムを操作し、システムのコンピュータモニタまたはディスプレイスクリーン等のデバイス上でその結果を見ても良く、または、結果をプリンタ、モデム及び/または保存ディスクに送っても良い。システムの制御は、外部から供給された生理学的または環境信号から測定されたフィードバックに基づいても良い。これに代え、制御ユニット330は、コンパクトかつ簡単な構造を有し、例えば、ユーザがオン/オフスイッチ及びパワーコントロールホイールまたはノブまたはそのタッチスクリーン相当のものを使用するだけでシステムを操作しても良い。以下のセクションでは、実施形態も記載してあり、ここでは、刺激器ハウジングは単純な構造を有するが、制御ユニット330の他の部材は、他のデバイスに割り振ってある(図7参照)。
神経または組織を刺激するパラメータは、パワーレベル、周波数及び列の継続(または、パルス数)を包含する。貫通深さ、強度及び選択性等の各パルスの刺激特性は、電極に伝達される電気エネルギの立ち上り時間及びピークの電気エネルギ、並びに、電極で生成される電場の空間的分布に従う。立ち上り時間及びピークエネルギは、刺激装置及び電極の電気特性、並びに、患者内の電流の流れる領域の組織で支配される。本開示の一実施形態では、パルスパラメータは、刺激される神経を囲む詳細な組織を考慮するような方法で設定される。(Bartosz SAWICKI,Robert Szmurlo,Przemyslaw Plonecki,Jacek Starzynski,Stanislaw Wincenciak,Andrzej Rysz.Mathematical Modelling of Vagus Nerve Stimulation.pp.92~97:Krawczyk,A.Electromagnetic Field,Health and Environment:Proceedings of EHE’07.Amsterdam,IOS Press,2008)。パルスは、単相、二相または多相であっても良い。本開示の実施形態は、列における各パルスが、同一の刺激間間隔を有する固定周波数、及び、車内の各パルス間隔を変化させることができる変調周波数を包含する。
図2Aは、本開示の実施形態による、選択した神経の一部または複数部分に適用される刺激、遮断及び/または調整インパルスの例示的な電圧/電流曲線を示す。好ましい実施形態について、電圧及び電流は、電極(または、磁気コイル)により、患者内に生成される非侵襲的なものを参照する。図示のように、神経の一部または複数部分に対する遮断及び/または調整インパルス410用の電圧/電流プロファイル400は、パルスジェネレータ310を使用して達成しても良い。好ましい実施形態では、パルスジェネレータ310は、電源320、及び、例えばプロセッサとクロックとメモリ等を有して、刺激、遮断及び/または調整インパルス410を神経に送出する電極340に対するパルス列420を生成する制御ユニット330を使用して実装しても良い。神経刺激/調整デバイス302は、外部から電力を供給し及び/または再充電しても良く、または、その自身の電源320を有しても良い。周波数、振幅、デューティサイクル、ハルス幅、パルス形状等の変調信号400のパラメータは、プログラム可能であることが好ましい。外部通信デバイスは、治療を向上するためにパルスジェネレータプログラミングを変更しても良い。
電極に対して刺激、遮断及び/または調整インパルスの電圧/電流プロファイルを生成する調整ユニットを実現するデバイスに対する追加または代替手段として、特許公報第US2005/0216062に開示されたデバイスを採用しても良い。その特許公報は、異なる生物学的及び生物医学的用途の広範囲のスペクトルに対する電磁的または他の形態の電気刺激を作用させる出力信号を生じさせるのに適する多機能電気刺激(ES)システムを開示しており、これは、非侵襲的に神経を刺激するために電場パルスを形成する。システムは、サイン波、方形または若しくは刃状波、または、単純若しくは複合パルス等の異なる形状を有する信号をそれぞれが生成する複数の異なる信号ジェネレータに連結されるセレクタを有するES信号ステージを包含し、そのパラメータは、振幅、持続時間、繰り返し率及び他の変数に関して調整可能である。このようなシステムで生成され得る信号はLIBOFFにより公開されている(A.R.LIBOFF.Signal shapes in electromagnetic therapies:a primer.pp.17~37:Bioelectromagnetic Medicine (Paul J.Rosch及びMarko S.Markov,eds.).ニューヨーク:Marcel Dekker(2004))。ESステージの選択したジェネレータからの信号は、所要の極性を有する高または低電圧または電流出力を生成するように処理される少なくとも1つの出力ステージに送られ、これにより、出力ステージは、その意図する用途に対して適切な電気刺激信号を得ることができる。更に、システムには測定ステージが設けられ、これは、処置される物質に作用する電気刺激信号、及び、この物質に広がっている優勢な状態を検知する種々のセンサの出力を測定及び表示し、これにより、システムのユーザは、信号を手動調整、または、フィードバックにより自動的に調整させ、ユーザが望むどのようなタイプの電気刺激信号も提供することが可能であり、そして、ユーザは処置される物質上のこの信号の効果を観察することができる。
刺激及び/または調節インパルス信号410は、治療効果、すなわち選択された神経のいくつかまたは全ての伝達を刺激及び/または調整に影響するように選択された周波数、振幅、デューティサイクル、パルス幅、パルス形状等を有することが好ましい。例えば、周波数は約1Hz以上で、例えば約15Hz~100Hzの間、好ましくは約15~50Hzで、より好ましくは約15~35Hzとしても良い。例示的な実施形態では、周波数は25Hzである。変調信号は、例えば1マイクロ秒~約1000マイクロ秒で、好ましくは約100~400マイクロ秒、より好ましくは約200~400マイクロ秒等、治療効果に影響するように選択されたパルス幅を有しても良い。例えば、神経の近部の組織内にデバイスで誘導または生成される電場は、約5~600V/m、好ましくは100V/mよりも小さく、より好ましくは30V/mよりも小さくても良い。電場の勾配は、2V/m/mmよりも大きくても良い。より一般的には、刺激デバイスは、神経を脱分極し、1000Hzでほぼ8V/mの活動電位伝搬の閾値に到達するために十分な電場を神経の近部に生成する。変調信号は、治療効果に影響するように選択された、例えば約0.2ボルト以上、約0.2ボルト~約40ボルト、好ましくは約1~20ボルト、より好ましくは約2~12ボルトの間等のピーク電圧振幅を有しても良い。
いくつかの開示した刺激装置の目的は、神経線維の選択性及び空間選択性の双方を提供することである。空間選択性は、電極(または磁気コイル)のデザインを介して部分的に達成しても良く、神経線維の選択性は、刺激波形のデザインを介して部分的に達成しても良いが、2つのタイプの選択性は、絡み合っている。これは、例えば、波形は、2つの神経が互いに近接しているかどうかに関わらず2つの神経の一方のみを選択的に刺激し得るため、刺激信号を神経の1つにのみに焦点を当てる必要がない(GRILL W and Mortimer J T.Stimulus waveforms for selective neural stimulation.IEEE Eng.Med.Biol.14(1995):375-385)。これらの方法は、例えば、局所麻酔薬の使用、加圧、虚血の誘発、冷却、超音波の使用、刺激強度の段階的な増加、軸索の絶対不応期の利用、及び、神経ブロックの適用等の選択的神経刺激を達成するために使用される他の方法を補完する(John E.SWETT及びCharles M.Bourassa.Electrical stimulation of peripheral nerve.Electrical Stimulation Research Techniques,Michael M.Patterson and Raymond P.Kesner,eds.Academic Press.(ニューヨーク,1981)pp.243~295)。
今まで、神経刺激用の刺激波形パラメータの選択は、高度に経験主義的であり、ここでは、最初に成功したパラメータのセットのいくつかについて、各患者に対する改善したパラメータのセットの発見を目指して変更される。刺激パラメータを選択するためのより効果的なアプローチは、自然に発生する電気波形を取り込む目的で、間接的に刺激しようとしている解剖学的領域の電気活性に近似する刺激波形を選択することと考えられ、例えば、THOMAS による「Electrotherapy device using low frequency magnetic pulses」と題する特許番号US6234953、及び、GLINERらによる「Systems and methods for enhancing or affecting neural stimulation efficiency and/or efficacy」と題する出願番号US20090299435に示唆されている。最適な設定を探して、反復的に刺激パラメータを変更しても良い(特許US7869885,題名「Threshold optimization for tissue stimulation therapy」、BEGNAUDらによる)。しかし、ここに記載のいくつかの刺激波形は、試行錯誤によって見出され、その後慎重に改善したものである。
侵襲的な神経刺激は、典型的には方形波パルス信号を使用する。しかし、出願人は、方形の波形は、過度の痛みを生じさせるため、非侵襲的刺激には理想的ではないことを見出した。先行パルス及び同様な波形変更が、神経刺激波形の選択性を改善する方法として提案されてきたが、出願人は、それが理想的とは見ない(Aleksandra VUCKOVIC,Marco Tosato及びJohannes J Struijk.A comparative study of three techniques for diameter selective fiber activation in the vagal nerve:anodal block,depolarizing prepulses and slowly rising pulses.J.Neural Eng.5(2008):275-286;Aleksandra VUCKOVIC,Nico J.M.Rijkhoff,and Johannes J.Struijk.Different Pulse Shapes to Obtain Small Fiber Selective Activation by Anodal Blocking-A Simulation Study.IEEE Transactions on Biomedical Engineering 51(5,2004):698-706;Kristian HENNINGS.Selective Electrical Stimulation of Peripheral Nerve Fibers:Accommodation Based Methods.Ph.D.Thesis,Center for Sensory-Motor Interaction,Aalborg University,Aalborg,Denmark,2004)。
出願人は、更に、方形波形のバーストを有する刺激波形は、非侵襲的刺激に対して理想的ではないことを見出した(M.I.JOHNSON,C.H.Ashton,D.R.Bousfield and J.W.Thompson.Analgesic effects of different pulse patterns of transcutaneous electrical nerve stimulation on cold-induced pain in normal subjects. Journal of Psychosomatic Research 35(2/3,1991):313-321;特許US7734340,題名「Stimulation design for neuromodulation」,De Ridderによる)。しかし、図2B及び2Cに示すように、正弦曲線パルスのバーストは好ましい刺激波形である。ここに示すように、個々の正弦曲線パルスは、τの周期を有し、バーストはNのこのようなパルスを有する。これに、無信号の期間が続く(バースト間期間)。バーストの後に無音のバースト間期間が続くパターンがそれ自体をTの周期で繰り返す。例えば、サイン曲線周期τは、約50~1000マイクロ秒(約1~20KHzに相当)の間、好ましくは約100~400マイクロ秒(約2.5~10KHzに相当)の間、より好ましくは約133~400マイクロ秒(約2.5~7.5KHzに相当)、更に好ましくは、約200マイクロ秒(約5KHzに相当)としても良く、バースト毎のパルス数はN=1~20、好ましくは約2~10、より好ましくは約5であり、バーストに続く無音のバースト間期間の全体パターンは、約10~100Hz、好ましくは約15~50Hz、より好ましくは25~35Hz、更に好ましくは約25Hzに相当する周期Tを有しても良い(より小さなTの値は図2Eに示してあり、バーストを認識可能とする)。これらの例示的値がT及びτに使用されたときに、波形は、高周波数(1/200マイクロ秒=5000/秒)において、現在行われているように、経皮性の神経刺激波形に包含されるものに比較して、重要なフーリエ係数を包含する。
上記波形は、パルスのバーストを有し、各バーストが約10~100Hzを有し、各パルスが約1~20KHzの周波数を有する。波形について考えている他の方法は、それ自体が約10~100Hzの周波数で繰り返す1~20KHzである。出願人は、迷走神経の刺激に使用されてきたこのような波形を意識していないが、一流のアスリートの筋力増大の手段として筋肉を刺激するために使用されてきている。しかし、筋肉強化の用途に対して、使用される電流(200mA)は非常に痛みをもたらし、ここに開示されたものよりも2桁大きい。更に、筋肉強化に使用される信号は、正弦曲線以外(例えば、三角形)でも良く、パラメータτ,N,Tは、上記例示した値と異なる(A.DELITTO,M.Brown,M.J.Strube,S.J.Rose,R.C.Lehman.Electrical stimulation of the quadriceps femoris in an elite weight lifter:a single subject experiment. Int J Sports Med 10(1989):187-191;Alex R WARD, Nataliya Shkuratova. Russian Electrical Stimulation:The Early Experiments. Physical Therapy 82 (10,2002):1019-1030;Yocheved LAUFER及びMichal Elboim.Effect of Burst Frequency and Duration of Kilohertz-Frequency Alternating Currents and of Low- Frequency Pulsed Currents on Strength of Contraction,Muscle Fatigue, and Perceived Discomfort. Physical Therapy 88(10,2008):1167-1176; Alex R WARD. Electrical Stimulation Using Kilohertz-Frequency Alternating Current. Physical Therapy 89(2,2009):181-190;J.PETROFSKY,M.Laymon,M.Prowse,S.Gunda,and J.Batt. The transfer of current through skin and muscle during electrical stimulation with sine, square, Russian and interferential waveforms. Journal of Medical Engineering and Technology 33(2,2009):170-181;特許US4177819,題名「Muscle stimulating apparatus」,KOFSKYらによる)。バースト刺激も、埋め込み可能なパルスジェネレータに関連して開示されているが、バースティングは神経興奮パターン自体の特徴である(特許US7734340 DE RIDDERによる,題名「Stimulation design for neuromodulation」;出願US20110184486 DE RIDDERによる,題名「Combination of tonic and burst stimulations to treat neurological disorders」)。例として、図2B及び2Cに示す電場は、17V/mのEmax値を有しても良く、これは、神経を刺激するために十分であるが、周囲の筋肉を刺激するために必要な閾値よりもかなり低い。
変調信号400を生成するためにフィードバックの使用は、特に、フィードバックが、患者から自然に発生する経時的に変化する非周期的な生理的信号を測定するセンサから生成される場合、周期的でない信号となる。実際、患者から自然に発生する生理的信号に大きな変動がないことは、通常、患者が不健康であることの指標であると考えられる(図11)。これは、患者の生理的変数を調整する病理的制御システムが、2以上の可能な安定状態の1つのみの回りに捕捉され、したがって、外部及び内部ストレスに正常に応答することができなかったことがある。したがって、フィードバックが変調信号400を生成するために使用されない場合でも、健康的な人に自然に生じる変動をシミュレートするように、非周期的な態様で信号を人工的に調整するために有益となる。したがって、刺激信号の雑音調節は、病理学的、生理学的制御システムをリセットさせ、または、確率共鳴として知られている機構を通して、非線形相転移を受けることがある(B.SUKI,A.Alencar,M.K.Sujeer,K.R.Lutchen,J.J.Collins,J.S.Andrade,E.P.Ingenito,S.Zapperi,H.E.Stanley,Life-support system benefits from noise,Nature 393(1998)127-128;W Alan C MUTCH,M Ruth Graham,Linda G Girling及びJohn F Brewster. Fractal ventilation enhances respiratory sinus arrhythmia. Respiratory Research 2005,6:41,pp.1~9)。
本開示の一実施形態では、フィードバック付きまたは無しの変調信号は、選択した神経線維を、1つまたは複数刺激パラメータ(電力、周波数及びここに記載の他のもの)が、選択し、または、最も新しいそのパラメータの現行平均値に対応する平均を有する統計的分布をサンプリングし、その後にパラメータの値をランダムにサンプリングした値に設定することにより変更されるように、選択した神経線維を刺激する。サンプリングされた統計的分布は、ガウス分布及び1/fを備え、記録された自然に発生するランダムな時系列から、または、計算式によって得られる。パラメータ値は、そのように定期的に、または、他の統計的分布のサンプリングによりランダムに選択された時間間隔で変更され、選択された平均及び変動係数を有し、サンプリングされた分布は、ガウス分布及び指数関数を有し、記録された自然に発生するランダムな時系列からまたは計算式によって得られる。
本開示の他の実施形態では、本開示によるデバイスは「ペースメーカ」タイプの形態で提供され、電気インパルス410は、神経の選択した領域に、間欠的な原則で、刺激デバイスで発生され、患者に神経の低反応性を形成する。
本開示の電極は、首の表面またはボディの他の表面に適用され、神経に電気エネルギを非侵襲的に送出するために使用される。本開示の実施形態は、使用する電極の数、電極間の距離、及び、ディスクまたはリング電極が使用されるかどうかが相違することがある。この方法の好ましい実施形態では、個々の患者に電極構造を選択し、皮膚の表面に過度の電流を生成することなく、選択した神経に電場及び電流を最適に集中させる。この焦点合わせと表面電流とのかね合いは、DATTAらで記載されている(Abhishek DATTA, Maged Elwassif, Fortunato Battaglia and Marom Bikson. Transcranial current stimulation focality using disc and ring electrode configurations: FEM analysis. J. Neural Eng. 5 (2008): 163-174)。DATTAらは、特に経頭蓋電流刺激のための電極構造の選択に向けられており、彼らが記載する原理は抹消神経にも適用可能である(RATTAY F. Analysis of models for extracellular fiber stimulation. IEEE Trans. Biomed. Eng. 36 (1989): 676-682)。
電極ベースの刺激器の好ましい実施形態は、図3に示してある。図示のように、刺激器は、そのバックカバーを取り外したスマートホン(31)を備えかつハウジング(32)に結合され、このハウジングは回路(図示しない)と共に一対の電極面(33)を有し、電極に電力を供給しかつスマートホンに相互接続する。図3の電極面(33)は、図1の部材351に対応する。図3Aは、タッチスクリーンを有するスマートホン(31)の側部を示す。図3Bは、スマートホンの背部に結合された刺激器(32)のハウジングを示す。ハウジングの一部はスマートホンの背部と同一面に配置され、スマートホンの本来の背部に見えるスマートホンの部材を収容する窓を有する。このような部材は、例えば、スマートホンの後部カメラ(34)、フラッシュ(35)及びスピーカ(36)であり、刺激器と共に使用しても良い。オーディオヘッドセットジャックソケット(37)及び多目的ジャック(38)等の他のスマートホンの本来の部材も使用しても良い。なお、図3に示すスマートホンの本来の部材は、Samsung Galaxyスマートホンに対応し、その位置は、他のスマートホンのモデルを使用する実施形態では異なることがある。
図3Cは、後方に突出するハウジング(32)の複数の部分を示す。2つの電極面(33)が突出し、したがって、患者の皮膚に適用されることがある。刺激器は、ストラップまたはフレームまたはカラーで所定位置に保持しても良く、または、手で患者に当接して保持しても良い。本開示の他の実施形態は、単一のこのような電極面または2つより多くの電極面を有しても良い。
ドーム(39)もハウジングから突出し、電極面でも支えたときに、このデバイスをテーブル上でほぼ平坦に配置するのを可能とする。ドームは、更に、バッテリ等の比較的高背の部材をその下側に配置して収容する。これに代え、刺激デバイスは、スマートホンのバッテリから電極を供給しても良い。ドームの下側のバッテリが再充電可能な場合、ドームは、それに挿入されるジャックを使用してバッテリを再充電するソケット(41)を有しても良く、これには、例えば、ベースステーション(後述する)からの電極ケーブルを取り付けられる。ハウジングの腹部(40)は、電極及びドームよりも少ない範囲で突出する。腹部は、後述するように、ハウジング内の電子部材(図示しない)を含むプリント回路基板を収容する。
一般に、刺激器は、刺激器の電極(図1の340)をチャンバ内で皮膚の表面から離隔して配置するように設計されており、導電材料(図1の350)が電極と、皮膚(図1の351)に接触する刺激器ヘッドの外部部材との間のチャンバに配置される。この設計の新規な点の1つは、刺激器が対応する適切な刺激波形(図2参照)と共に、電場を形成し、神経を刺激することにより、選択的に生理反応を形成するが、特に痛みを生じる神経の刺激を避け、標的神経以外の神経及び組織、の実質的な刺激を避けることである。電場の形成は、同時係属の本発明の譲受人に譲渡された出願US20110230938(出願番号13/075746)、SIMONらの表題「Devices and methods for non-invasive electrical stimulation and their use for vagal nerve stimulation on the neck of a patient」の対応する式に関して記載されており、これは参照することによりここに包含される。
特定の実施形態では、ディスクインターフェース351は実際に電極として機能し、ねじ340は単に、信号ジェネレータ電極に対する出力接続部である。この実施形態では、導電流体またはゲルは、信号ジェネレータと、インターフェースまたは電極351との間に位置する。この実施形態では、導電流体は、電極(複数を含む)351に到達する前に、信号から高周波成分を除去または取り除かれる。信号が生成されるときに、電力のスイッチング及び電気ノイズは、典型的に望ましくない高周波スパイクが加わり、信号に戻される。更に、正弦曲線のパルスのバーストが、信号に高周波成分を誘導する。導電流体で電極351に達する直前に信号をフィルタリングすることにより、滑らかで、清浄な信号が患者に適用され、これにより、患者が感じる痛み及び不快を低減し、患者により高い振幅を作用させることを可能とする。これは、患者の皮膚の表面に多くの痛み及び不快を生じさせることなく、迷走神経等のより深い神経に到達する十分に強い信号を作用させることができる。
他の実施形態では、ローパスフィルタを、導電流体に代えて、信号の望ましくない高周波成分を除去するために使用しても良い。ローパスフィルタは、デジタル若しくはアクティブフィルタ、または、単に、信号ジェネレータと電極/インターフェースとの間に配置される2つの直列の抵抗と並列のキャパシタを備えても良い。
電極面(33)は図3Cにほぼ半球状として示してあり、したがって、電極面が患者の皮膚に押圧されると、皮膚の接触面が増大する。しかし、電極面(図1の351に対応する)の他のデザインでは、電極面は平坦である。このような他のデザインは、図4に示してある。図4Aに示すように、電極面(351)は、非導電性(例えば、プラスチック)チャンバ(345)の頂部に適合する金属(例えば、ステンレス鋼)ディスクを有する。チャンバの他端では、ねじ付きポートが、実際の電極(340)として作用する金属ねじを受け入れる。ワイヤが、ねじに取付けられ、これをインパルスジェネレータ回路に接続する。組立てられた部材が図4Bに示してあり、これは更に、電解溶液またはゲル等のチャンバ内の導電材料(350)の位置を示し、これは、電極(340)が外部電極面(351)に電流を導くことができる。
1つの実施形態では、刺激器の電極に適用される信号波形(図2)は、携帯電話ハウジングの外部、及び、これから離隔したインパルスジェネレータ(図1の310)の部材で、当初は生成される。携帯電話は、外部制御部材から、無線で送信された波形を受信し、または、例えば、図3の多目的ジャック38を介してケーブルにより発信される波形を受信するために、電話機にダウンロード可能なソフトウェアアプリケーションを有するのが好ましい。波形を圧縮された形態で送信する場合、例えば、LFAC(Free Lossless Audio Codec)を使用して無損失の態様に圧縮されることが好ましい。これに代え、ダウンロードされたソフトウェアアプリケーションは、それ自体、電極(図1Cの340)に適用され、続いて、電極組立体(図1の351及び図3の33)の外部インターフェースに搬送されるように、プログラムしても良い。更に他の実施形態では、ソフトウェアアプリケーションは、外部デバイスからダウンロードするのではなく、代わりに、例えば、刺激器(図3B及び3Cの32)ハウジング内に存在する読出し専用メモリ内で使用できる。
1つの実施形態では、波形は、最初はソフトウェアアプリケーションで搬送され、波形信号が一般的音響波形であるかのように、電話のスピーカ出力またはイヤホンジャックソケット(図3Bの37)に接触する。その偽音響波形は、全体的にステレオ波形となり、「左」及び「右」電極に適用される信号を示す。この後、波形は刺激器(図3Bの32及び3C)のハウジングに、以下のように、搬送される。刺激器のハウジングは、電気刺激を実行するときはいつでも、スピーカ出力にプラグ接続される付属の懸垂オーディオジャックまたはイヤホンジャックソケット37を有しても良く、または、スピーカ出力またはイヤホンジャックソケットと、刺激器のハウジングとの間を配線で接続しても良い。いずれの場合も、刺激器のハウジング(図3Cの40)の腹部の下に位置する印刷基板上の電気回路が次に、スピーカ出力またはイヤホンジャックソケットを介して受信する偽オーディオ信号を、成形し、フィルタを通し、及び/または、増幅しても良い。刺激器のハウジング内のパワーアンプが、次に、ラウドスピーカを駆動するためのオーディオパワーアンプの使用に類似する方法で、電極に信号を駆動しても良い。代替的に、信号処理及び増幅は、電話及び/または刺激器(図3B及び3Cの32)のハウジングのソケットにプラグ止め可能な別個のデバイスで実行し、ソフトウェアアプリケーション及び電極に連結しても良い。
上述のように、スマートホンから刺激器ハウジングに刺激波形を通すことに加え、スマートホンは、更に、刺激器ハウジングに制御信号を通しても良い。したがって、刺激波形は、全体的に、アナログタイプの偽オーディオ信号とみなされるが、信号が、デジタル制御信号が送信されようとしていることを意味するパルスの特徴的配列を包含する場合、刺激器ハウジング内の論理回路が、この後、モデムの作動に類似するパルスの特法的配列が続く一連のデジタルパルスを複合するように設定しても良い。
波形を電極に導く多くのステップは、タッチスクリーン(図3Aの31)を介してユーザが制御しても良いステップを包含し、上述のソフトウェアアプリケーションで実行される。例として、ソフトウェアアプリケーションは、アンドロイドオペレーティングシステムを使用する電話機用に記述しても良い。このようなアプリケーションは、典型的には、Eclipse等の統合開発環境(IDE)で、アンドロイドソフトウェア開発キット(SDK)を使用するジャバプログラミング言語で開発される(Mike WOLFSON. Android Developer Tools Essentials. Sebastopol, California: O’Reilly Media Inc., 2013; Ronan SCHWARZ, Phil Duston, James Steele, and Nelson To. The Android Developer’s Cookbook. Building Applications with the Android SDK, Second Edition. Upper Saddle River, NJ : Addison-Wesley, 2013; Shane CONDER and Lauren Darcey. Android Wireless Application Development, Second Edition. Upper Saddle River, NJ : Addison-Wesley, 2011; Jerome F. DIMARZIO. Android - A Programmer’s Guide. New York: McGraw-Hill. 2008. pp. 1-319)。このようなアンドロイドソフトウェアアプリケーション(例えば、MediaPlayer API)等の特にオーディオ機能に関連するアプリケーションプログラミングインターフェース(API)は、オープンハンドセットアライアンスのアンドロイドオープンソースプロジェクト、ウェブドメインデベロッパー、developer.android.com.、サブドメイン、/guide/topics/media/、2014年7月18日のメディアプレイバックにより記載されている。これらのAPIも、後述するように、特に、本開示のスマートホンカメラ性能の使用に関連する。ソフトウェアアプリケーションの追加コンポーネントは、デバイス製造者(Samsung Mobile SDK, at web domain developer.samsung.com with subdomain /samsung-mobile-sdk, 2014年7月18日)から入手可能である。
特定の実施形態では、刺激器及び/またはスマートホンは、スイッチまたはボタン等の刺激器を無効/有効とするユーザ制御装置を有する。このスイッチは、刺激器を有効とするとき(及び、逆の場合も同様に)に、自動的に全てのスマートホン機能を無効とすることが好ましい。これは、スマートホンの医療装置機能が完全に、電話の機能の残部から分離することを確実にする。好ましい実施形態では、刺激器/電話機の患者/オーナだけが、刺激器機能を可能とするように、スイッチがパスワードで制御される。このような実施形態の1つでは、スイッチは、バイオメトリックスキャン(例えば、指紋、光学読み取り等)で制御し、刺激器機能が患者による使用だけを可能とする。これは、電話機を紛失または盗まれた場合に、患者だけが、規定の治療を使用可能であることを確実にする。
刺激器及び/または電話機は、更に、患者がインターネット上でより多くの治療をオーダー可能とするソフトウェアを有する(ドッキングステーションとの関係で、以下により詳細に論じる)。このような治療適用の購入は、処方箋等を介して医師の承認を必要とする。このため、ソフトウェアは、患者がより多くの治療の承認をダウンロードするために入力すべき承認コードを包含することが好ましい。このような承認がないと、刺激器は無効となり、治療を送出しない。
図3に示すデバイスは、市販のスマートホンに適合するものであるが、いくつかの実施形態では、刺激器のハウジングは、更に、電話機でない無線デバイス(例えばWi-Fiが有効なデバイス)に結合し及び/または電力を供給しても良い。これに代え、刺激器は、ブルートゥース(登録商標)等近距離データ交換用無線接続を介して、電話機または他のWi-Fi有効デバイスに連結しても良い。この実施形態では、刺激器ハウジングは、スマートホンに取付けられず、したがって、ハンドバック、財布またはポケットに入れて患者が持ち運びに便利な種々の他の形状及びサイズを有しても良い。
他の実施形態では、刺激器ハウジングは、標準の電話機ケースと同様に、電話機に取り付け可能な電話機用保護または装飾ケースの一部としてデザインしても良い。このような実施形態の1つでは、刺激器/ケースは、電話機用のバッテリ寿命を追加しても良く、バッテリを再充電するための電話機のバッテリに対する電気接続部を有しても良い(例えば、Mophie(登録商標)等の一部)。この電気接続部は、スマートホンを刺激器に連結するために使用しても良い。
迷走神経等の神経を電気的に刺激することの効果の再現性は、連続的な刺激セッションにおける患者の皮膚上の最適位置に対する電極面の位置決めする可能性に、部分的に依存する。本開示は、続くセッション中における刺激デバイスの再位置決めのための方法を包含する。以下に説明する方法は、最初に、超音波で神経を画像化することにより刺激器に対する最適位置を決定し、この後、染料のスポット(タトゥー)で患者の皮膚上にその位置をマーキングし、最終的に、スマートホンの後部カメラで染料の位置の画像と合わせて、刺激デバイスを再位置決めする。
迷走神経(または、他の刺激される神経)を画像化するために使用する好ましい超音波トランスデューサ/プローブは、その形状から「ホッケースティック」と称されるスタイルのプローブであり、これは、多くの超音波機械製造業者から市販されている。例えば、表面観察用のHitachi Aloka UST-536 19 mmのホッケースティック型のトランスデューサは、6~13MHzの周波数範囲、90°のスキャンアングルを有し、ほぼ19mmx4mmのプローブ表面積(Hitachi Aloka Medical America, 10 Fairfield Boulevard, Wallingford CT 06492)を有する。トランスデューサは、トランスデューサの下に位置する解剖学的構造を表示する超音波機械に接続する。
迷走神経を電気的に刺激するための首の表面位置は、迷走神経が超音波画像の中心に見えるように、各スマートホン電極の中心が配置される位置(図3の33)に、超音波プローブを位置決めすることにより、予め決定される(KNAPPERTZ VA, Tegeler CH, Hardin SJ, McKinney WM. Vagus nerve imaging with ultrasound: anatomic and in vivo validation. Otolaryngol Head Neck Surg 118(1,1998):82-5)。電極用位置が発見されると、位置的なスポットがインクで患者の首にマークされ、位置及び超音波プローブの配向の情報を、超音波プローブの寸法の短い両側に取付けられるステンシルの孔を通して保持する。各電極のための皮膚上の好ましい超音波位置が確認されると、後部カメラの中心の下の補間された最適位置が、患者の皮膚に、後述するより恒久的蛍光染料の1つでマークされる(タトゥーを入れて)。補間は、複数の孔を有する長い矩形のステンシルを使用して実行しても良く、ステンシルの端部に近接する孔は、電極位置用にマークされた一時的なスポットに整合し、ステンシルの中央孔は、恒久的蛍光染料を、スマートホンカメラの下に配置される位置に塗布するために使用される。通常、2以上の隣接する蛍光染料位置がマークされ、ステンシルがその後に皮膚上の蛍光スポットに中心を合わせて重ねられると、ステンシルの端部の孔も、電極位置に合致する法音波プローブ位置を記録するためにマークされた一時的スポットに整合する。
任意の無毒性染料が、患者の皮膚の位置に恒久的にマークするために使用しても良いことが理解される。しかし、恒久的染料の好ましいタイプは、例えば紫外線(ブラックライト)または赤外線を照射したときに、患者の首のスポットとして目に見えまたは検出可能なだけである。これは、そうでなければ彼または彼女の首に目に見えるスポットマークが存在する理由を説明する困惑を患者が免れるためであり、更に、このような染料は、患者の暗色皮膚または明色皮膚に関わらず、刺激器をどこに配置するかを示すために適切だからである。患者の皮膚のカラーに染料の色を合致させる試みである他の方法は、一般的に実現困難である。蛍光染料でマークすること(例えば、通常の強調表示ペンから)は、先に医師及び放射線科医が、処置を行う場所の外形を描くために実行している。しかし、本開示のマーキングは、患者が単独でデバイスを小さな個別スポットに位置決めするために繰返し使用することを意図している点で相違している(DAVID, J. E., Castle, S. K. B., and Mossi, K. M. Localization tattoos: an alternative method using fluorescent inks. Radiation Therapist 15(2006):1-5; WATANABE M, Tsunoda A, Narita K, Kusano M, Miwa M. Colonic tattooing using fluorescence imaging with light-emitting diode-activated indocyanine green: a feasibility study. Surg Today 39(3,2009):214-218)。
位置指示蛍光スポットが、上述のように患者の皮膚に塗布すると、これらは消えてゆき、最終的には、患者の皮膚の着色した外面が剥離するように見えなくなる。剥離は、患者が彼または彼女の首を洗うときに自然に発生し、機械的(例えば、研磨)または美容師が通常使用する化学的方法により促進することができる。スポットが見えなくなる前に、紫外線または赤外線(場合によっては)でそれを観察しつつ、スポットの外側の皮膚をマスキングし、この後、新しい染料溶液を綿棒で直接塗ることにより、患者または家族が染料/フルオロファを同じスポットに再塗布しても良い。紫外線光で励起される蛍光の観察は、それがブルーライトを有するため、裸眼で行うことができ、赤外線光で励起された蛍光の観察は、カメラのIRブロックフィルターを除去した後、通常のデジタルカメラで行うことができる。いくつかのカメラについては、IRブロックフィルターの除去が必要ないことがある(例えば、網膜生体認証スキャンを実行可能なもの)。赤外線蛍光染料のいくつかは、その濃度(例えば、インドシニアングリーン)に依存して、室内照明の下でも裸眼でかすかに見ることができる。
代替的に、蛍光スポットをマーキングまたは再マーキングする半恒久的または恒久的タトゥーを入れる方法を、免許を有するタトゥー専門家が、染料/フルオロファを外側皮膚層または皮膚内のより深い層内に注入することにより、使用しても良い(Maria Luisa Perez-COTAPOS, Christa De Cuyper, and Laura Cossio. Tattooing and scarring: techniques and complications. In: Christa de Cuyper and Maria Luisa Cotapos (Eds.). Dermatologic Complications with Body Art: Tattoos, Piercings and Permanent Make-Up. Berlin and London: Springer, 2009, pp. 31-32)。
紫外線マーキングにつては多くの染料を使用可能であるが、皮膚表面のマーキングに最も便利なものは、イベントの出席者にハンドスタンプするための市販のものである。タトゥー用アプリケーションについて、紫外線吸収注入可能フルオロフォアは、市販されており、微小球内に封入されている(Technical sheet for Opticz UV Blacklight Reactive Blue Invisible Ink. 2013. Blacklight.com, 26735 W Commerce Dr Ste 705, Volo, IL 60073-9658; Richard P. HAUGLAND. Fluorophores excited with UV light. Section 1.7 In: The Molecular Probes Handbook: A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, 11th Edition, 2010. Molecular Probes/Life Technologies. 4849 Pitchford Ave., Eugene, Oregon 97402. pp. 66-73; Technical sheet for BIOMATRIX System. 2013. NEWWEST Technologies, Santa Rosa CA 95407-0286)。
多くの染料も赤外線マーキング用に使用可能であり、その主たる利点は、人の皮膚または組織からの自己蛍光は、一般的にその蛍光を検出するのを阻害しないことである。実際、赤外蛍光は、皮下約2センチメートルまで画像を浮かび上がらせることがある。このような染料の例は、インドシアニングリーン及びAlexa Fluor 790である。量子ドットも赤外蛍光を生成するために使用しても良く、その利点は、これらは非常に安定しており、非常に明るい蛍光であることである。これらは、タトゥーの目的で微小球内に封入しても良い。量子ドットは、エレクトロルミネセンスを有し、刺激器で生成された電場及び電流だけが、量子ドットから赤外光の放射を誘導するようにしても良い(Richard P. HAUGLAND. Alexa Fluor Dyes Spanning the Visible and Infrared Spectrum - Section 1.3; and Qdot Nanocrystals - Section 6.6. In: The Molecular Probes Handbook: A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, 11th Edition, 2010. Molecular Probes/Life Technologies. 4849 Pitchford Ave., Eugene, Oregon 97402; GRAVIER J, Navarro FP, Delmas T, Mittler F, Couffin AC, Vinet F, Texier I. Lipidots: competitive organic alternative to quantum dots for in vivo fluorescence imaging. J Biomed Opt. 16(9,2011):096013; ROMOSER A, Ritter D, Majitha R, Meissner KE, McShane M, Sayes CM. Mitigation of quantum dot cytotoxicity by microencapsulation. PLoS One. 6(7,2011):e22079:pp. 1-7; Andrew M. SMITH, Michael C. Mancini, and Shuming Nie. Second window for in vivo imaging. Nat Nanotechnol 4(11,2009): 710-711)。
患者が刺激器を首に適用する準備が整うと(図8及び10に示すように)、彼または彼女は、スナップインオプティカルアタッチメント(図5Cの50)をスマートホンの後部で、後部カメラ(図3Bの34)及びカメラフラッシュ(図3Bの35)の上部位置で電極面(図3及び5の33)間に配置する。オプティカルアタッチメントの目的は、患者皮膚の中または下に配置した染料のスポットからの蛍光のカメラ画像を形成することにより、電極を最適に位置決めするのを容易とすることである。
スナップインオプティカルアタッチメントが配置されると、オプティカルアタッチメントと後部カメラ/フラッシュとの間に、図5A,5B及び5Cに34´及び35´で示すように開口が形成される。開口の上に位置する図5A及び5Bの光学素子は、スマートホンに存在しており、これらの図で開口の下に位置する光学素子は、スナップインオプティカルアタッチメントの部材である。スマートホンの光学素子は、フラッシュを含み、これは、写真を撮る際に照明を提供するようにプログラムされていることがある(または、更に、フラッシュライトとして作用するようにプログラムされることもある)発光ダイオード(LED)43である。スナップインオプティカルアタッチメントが無いと、LED照明された対象物からの反射光が、スマートホン内のレンズ44により撮像されることになる。スナップインオプティカルアタッチメントが配置されると、このアタッチメント内のマクロレンズ(図5A,5B及び5Cの56)は、近接した対象物の撮像を可能とし、これは、本願においては、患者の皮膚58上または下側の染料59の蛍光スポットから生じる蛍光55である。実施例として、マクロレンズは、Carson Opticalより発売されているものと同様でもよい(LensMag(商標)-model ML-415, Carson Optical, 35 Gilpin Avenue, Hauppauge, NY 11788)。
患者の皮膚内の蛍光染料から蛍光を発光させるため、染料は、その励起スペクトル内のピークに相当する波長で照射する必要がある。本開示の好ましい実施形態では、赤外線照明は、染料(例えば、インドシアニングリーン)を、820nmより大きな波長で蛍光を発しさせ、その励起波長に近い760または785nmで蛍光を発するために、LEDを使用しても良い。スマートホンカメラに見られるLEDは、主に可視範囲(400~700nm)の光を生成するだけのことがあるため、図5Aに示す光学部材は、好ましい赤外線励起波長に向けてシフトするために使用される。フラッシュユニットのLED43から光がでると、最初に、700nmよりも短い波長の光(可視光)を通して700nmよりも大きい波長の光(赤外光)を反射するダイクロイックミラーに出会う。ダイクロイックミラーを通過した光は、この後、可視光を吸収して、約760~785nmの範囲にピークを有するりん光赤外光を発するりん光発光材料52のフィルムに出会う(Haifeng XIANG, Jinghui Cheng, Xiaofeng Ma, Xiangge Zhou and Jason Joseph Chruma. Near-infrared phosphorescence: materials and applications. Chem. Soc. Rev. 42(2013): 6128-6185)。りん光赤外光がLEDに向けて後方に発光すると、ダイクロイックミラー51は、りん光を反射してチャンバ53内に戻し、ここで、LEDから離隔する方向に発光されたりん光と結合する。チャンバ53は、銀等の反射材料を内部に被覆されており、したがって、りん光は銀からまたはダイクロイックミラー51から多数回反射し、最終的に、患者の皮膚のスポットに向けて導かれるスリット54からの光として出現する。同様に、りん光を生成することなく、りん光層52を通過する可視光も、りん光層52に再度出会うまでは、銀被覆から多数回反射することがあり、これは、この時、りん光を生成し、または、ダイクロイックミラーを通って戻り、LEDの表面からダイクロイックミラー51を通して戻らなければ、喪失する(りん光層から後方散乱する可視光の第1パスと共に)。チャンバ53に入る可視光のいくらかは、スリット54からの光としても出現することがある。しかし、スリットから現れる可視光は、患者の皮膚58内の赤外線染料59から蛍光55を生成するために必要な波長を有しない。更に、スリットから現れ、最終的にマクロレンズ56を通る路を形成する可視光のいくらかは、約800nmよりも大きな波長を有する光のみを通すフィルタ57でブロックされる。したがって、フィルタ57は、LEDからのいくらかの可視光だけでなく、りん光層52で生成される約780nmより少ない赤外波長の励起もブロックする。フィルタ57を通過する光は、染料59のスポットからの蛍光がほとんどであり、その蛍光は、スマートホンの後部カメラの受光素子上にレンズ44で撮像され、これにより蛍光スポットの画像が生成される。
上記説明はマクロレンズ56と患者の皮膚58との間に間隙が存在することを仮定しており、光の励起波長は、赤外線染料59がどこに配置されていても、マクロレンズの下側を通ることがあることに留意されたい。これは、電極表面の高さ(図5A及び図5Bの33’)は、マクロレンズ56が患者の皮膚の表面に達するのを防止するため、これは一般的ケースである。しかし、マクロレンズ56が皮膚の表面に全体的に押圧された場合でも、蛍光染料59のスポットは、皮膚の表面からより深く注入されている場合は、光で励起することもできる。これは、赤外光が、皮膚を通して約2cmまで浸透することができる。
LED43が、蛍光染料の励起に適切な波長の光を生成する場合、図5Aに示すりん光層52は必要ない。例えば、これは、LED43が約760nm~785nmの波長を有する十分な光を生成する場合であり、これは、赤外染料インドシアニングリーンを励起する。これは、更に、紫外線及び紫色の範囲の光で励起される染料を励起し、青色蛍光を生成する場合である。これらの場合、図5Bに示すスナップインオプティカルアタッチメントがより好ましい。ここに示すように、フィルタ51´は、フルオロフォアを励起する範囲のみの波長を有する光を通し、したがって、フルオロフォア(または、他の交絡波長)で放出される蛍光の波長は通過しない。励起照明は、励起光がスリット54から発する光として現れるように、反射内面を有するチャンバ53´内に入り、これは、患者の皮膚58内または下のフルオロフォアスポット59に向けられる。励起照明は、この後、患者の皮膚内のフルオロフォアスポットで蛍光55を発光させ、これは、マクロレンズ56で収集される。励起波長に対応する光は、更に、マクロレンズ56で収集されるが、フィルタ57´は、光の励起波長をブロックし、蛍光だけを通過させる。蛍光は、この後、スマートホンのレンズ44で収集され、スマートホンのカメラ44でスマートホンのカメラの感光材料上に撮像され、これにより、患者の皮膚内またはその下の蛍光スポットの画像が生成される。
刺激器を患者で初期テストする際、適切なスナップインオプティカルアタッチメントが配置され(上述のように)、スマートホンのカメラが作動をオンにされ、一方、電極面33からの電気インパルスが患者の皮膚に適用される。電極が患者の皮膚上の最適位置の近くにある場合、患者の皮膚に適用された蛍光スポットが、スマートホンのカメラで生成される画像で見え、スマートホン(図3の31)の画面上で視認可能である。この後、最大の治療効果が達成されるまで、電極がわずかに平行移動され、回転され、患者の皮膚内に押し込まれる。特別な刺激器セッティングにおける応答を評価する方法は、本発明の譲受人に譲渡された同時係属の出願US13/872,116(公開番号US20130245486)、SIMONらの表題「DEVICES AND METHODS FOR MONITORING NON-INVASIVE VAGUS NERVE STIMULATION」に記載されており、これは、参照することによりここに包含される。電極の最適治療位置が決定されると、蛍光スポットの基準画像がその位置で記録され、将来の参照のためにスマートホンのメモリに保存される。
後のセッション中、患者が刺激器を彼または彼女の皮膚に適用するときに、適切なスナップインオプティカルアタッチメントも所定位置に配置し、スマートホンのカメラの作動をオンにし、一方、電極面33からの電気インパルスが患者の皮膚に適用される。患者の皮膚に適用された蛍光スポットが、スマートホンのカメラで生成される画像で見え、スマートホン(図3の31)の画面上で視認可能である。蛍光スポットの先に記録した基準画像に、蛍光スポットの現在見えている画像を重ね合わせることにより、現在位置、配向、及び、皮膚内の電極表面の深さが、先に記録した最適基準位置と一致する程度を確認することができる。これは、図6に示してあり、これは現在撮像された蛍光スポット及び重ねられた基準蛍光スポット、及び、前者を後者のスポットに整合させるために必要な回転及び平行移動を示す。現在の画像を基準画像に重ねることに代え、2つの画像を画素毎に差を取り、その差の絶対値を表示しても良い。その場合、電極面の最適位置決めは、基準画像が現在の画像をほぼゼロにするときに生じる。ゼロにされたときの画像の画素値の合計は、現在及び基準画像の一致の程度の指標として使用しても良い。刺激器の制御ユニットは、画像の位置合わせの指標における所定のカットオフが達成されていない限り、迷走神経の電気刺激を無効にするように構成しても良い。例えば、このような蛍光スポットのアライメントの指標を使用することは、患者が首の意図した側の迷走神経の刺激を試みることを確実にするために使用しても良い。しかし、上述の蛍光のアライメント方法は、全ての患者、特に、著しく皺が形成されまたは大量の脂肪組織を首に有する患者には、適切でないことがある。
本開示の1つの実施形態では、迷走神経の刺激のコントロールの重要な部分は、刺激器のハウジングから物理的に分離した制御部材にある。この実施形態では、コントローラの別個の部材と刺激器ハウジングとは、一般的に互いに無線で通信する。したがって、無線技術の使用は、相互接続するケーブルの不便かつ距離制限を回避する。コントローラの多くの部材を物理的に刺激器ハウジングから離隔する本開示の追加の理由は、以下の通りである。
第1に、刺激器は、刺激パルスを生成するために必要な最小数の部材で構成され、残りの部材は、刺激器の外側に存在するコントローラの一部に配置され、この結果、より軽くかつより小さな刺激器ハウジングとなる。実際、刺激器ハウジングは、非常に小さく、刺激器ハウジングの外側に、容易に操作可能な十分大きなスイッチ及びノブを配置することは困難である。代わりに、本開示について、ユーザは、スマートホンのタッチスクリーンを使用してデバイスを操作しても良い。
第2に、コントローラ(図1Cの330)は、刺激器ハウジング内またはその近部に位置することの制限から解放されたときに、追加機能を与えられても良い。例えば、コントローラに、医療記録の管理及び請求のために、患者に刺激を適用したとき及び方法を記録するデータロギング部材を追加しても良い。患者に対する完全な電子医療記録データベースは、刺激器から離隔して(例えば、インターネットのある場所)に配置しても良く、提供された刺激サービスに対する請求システムもある場所に配置しても良く、したがって、インターネットまたは電話ネットワークに対するアクセスを包含する通信システムを使用して、コントローラを記録管理及び請求システム内に一体化することが有益である。
第3に、データベースからコントローラへの通信は、刺激が自己管理のときに、患者の電気刺激を計測する目的に対しても有益である。例えば、患者に対する処方が、迷走神経刺激の単一のセッションで送出すべき刺激エネルギの量を特定するだけで、次の刺激を可能とする前に待ち時間が続く場合、コントローラは、データベースに問い合わせし、その後、所定の待ち時間が経過したときにのみ、刺激を許可することができる。同様に、コントローラは、請求システムに、患者の口座が正常であることを確認し、口座に問題がある場合は、刺激を差し控えることができる。
第4に、先の考察の結果、コントローラは、刺激デバイスから別個のコンピュータプログラムを有するように構成し、データベースを携帯電話またはインターネット接続を介してアクセスするようにしても良い。
第5に、いくつかの用途では、刺激器ハウジング及びコントローラの部品を物理的に分離することが望まれ得る。例えば、患者が子供のとき、子供が迷走神経刺激を制御または調節することができなくすることが要求される。その場合の最適な配置は、刺激器ハウジングがタッチスクリーン部材、子供が作動可能な制御スイッチまたは調整ノブを有しない。これに代え、刺激器上の任意のタッチスクリーン部材、スイッチ及びノブを無効とし、刺激の制御は、子供が操作できない遠隔のコントローラでのみ行い、これは、親またはヘルスケア提供者の管理の下で維持される。
第6に、いくつかの用途では、コントローラにより刺激器に送信される特定の制御信号は、自身がコントローラに送信されかつ分析される生理的及び環境信号に依存する。このような用途では、生理的及び環境信号の多くは、すでに無線で送信され、この場合には、刺激器ハウジングに及びこれから送られる任意の無線信号を含むこのような全ての無線活動のハブとして、コントローラの外部部材をデザインするために最も便利である。
これらを考慮して、本開示の実施形態は、刺激器に/刺激器から、データを送信/受信しても良く、データベースに/データベースから、データを送信/受信しても良いベースステーションと、インターネットを介してアクセス可能なこれらを含むシステムの他の部材とを備える。典型的には、ベースステーションは、その機能を達成するために必要な追加部材に取付けられるラップトップコンピュータである。したがって、任意の特定の刺激セッションの前、ベースステーションは、波形パラメータまたは実際の波形を含む、セッションの刺激器(図3)パラメータにロードしても良い。図2参照。1つの実施形態では、刺激器の再充電可能なバッテリ(図3の41参照)を、解放可能な電気エネルギの特定量のみ充電することにより、ベースステーションは、更に、セッション中に患者が消費することのある刺激エネルギ量を制限するために使用され、これは、刺激セッションの間に規制するためのパラメータの設定と異なる。したがって、ベースステーションは、刺激器の再充電可能なバッテリに接続し得る電源を有しても良く、ベースステーションは、充電を計測する。実際問題として、したがって、刺激器は、2つのバッテリを使用し、一方は刺激エネルギを電極に(その充電は、ベースステーションで制限しても良い)、他方は他の機能を実行するために適用しても良い。バッテリの充電または解放可能なエネルギを評価する方法は、当該分野で、例えば、ARMSTRONGらに対する「Power supply monitoring for an implantable device」と題する特許US7751891で知られている。代わりに、刺激器ハウジング内の制御部材は、刺激セッション中に消費される電極刺激エネルギの量をモニタし、制限に達したときに、制限に達したときに関わらず、制限に達したときに刺激セッションを停止する。
刺激器コントローラの異なる部材間の通信接続は、図7に示してあり、これは図1Cの制御ユニット330の拡大表示である。ベースステーションのコントローラ部材332と刺激器ハウジング331との間の接続は、図7に334として示してある。ベースステーションのコントローラ部材332とインターネットベースまたはスマートホン部材333との間の接続は、335として示してある。刺激器ハウジング331内の部材とインターネットベースまたはスマートホン部材333との間の接続は、336として示してある。例えば、スマートホンと刺激器ハウジングとの間のオーディオジャックソケットを介する制御接続は、刺激器ハウジング自体とインターネットに置いたデバイスとの間の直接的な任意の無線通信と同様に、このカテゴリに包含される。原則として、図7の接続334,335及び336は、有線または無線のいずれでも良い。本開示の異なる実施形態は、1つまたは複数の接続を欠いても良い。
赤外線または超音波無線制御を、コントローラの部材間の通信に用いることが可能であるが、これらは見通し線の制限のために、好ましくはない。代わりに、本開示では、デバイス間の通信は、無資格のISM周波数帯域(260~470MHz,902~928MHz,2400~2.4835GHz)を使用するのが好ましい。331,332及び333におけるデバイスの無線周波数システムの部材は、マイクロコントローラ、水晶発振素子、関連バラン及びマッチング回路及びアンテナを一体化したシステムオンチップトランシーバ(transceiver)を備える(Dag GRINI. RF Basics, RF for Non-RF Engineers. Texas Instruments, Post Office Box 655303, Dallas, Texas 75265, 2006)。
2.4GHzのトランシーバは、高速データ通信(1Mbpsよりも大きい)及び、より低い周波数で作動するものよりも小さなアンテナを提供し、これは短距離デバイスに適切である。更に、2.4GHzの無線規格(ブルーツゥース、Wi-Fi及びジグビー)が、デバイス間の通信用プロトコルとして使用しても良い。ジグビー無線規格は、世界のほとんどの管轄地域で2.4GHzで動作するが、ヨーロッパではISM周波数868MHzで、アメリカ及びオーストラリアでは915MHzでも動作する。データ伝送速度は、その基準で20~250キロビット/秒で変化する。多くの市販の健康関連センサはジグビーを使用して動作するため、図11との関連で後述するように、センサ値に基づいて、コントローラがフィードバック及びフィードフォワード方法を使用して患者の迷走神経刺激を調節するアプリケーションへの使用が推奨される(ZigBee Wireless Sensor Applications for Health, Wellness and Fitness. ZigBee Alliance 2400 Camino Ramon Suite 375 San Ramon, CA 94583)。
2.4GHz無線機は、より低い周波数で動作する無線機よりも電力消費量が大きく、これは、低減された回路効率のためである。更に2.4GHzのスペクトルは、混雑しており、電子レンジ、コードレス電話機、802.11b/g無線ローカルネットワーク、ブルートゥースデバイス等から重大な干渉を受ける。サブGHz無線機は、低電力消費を可能とし、年間を通じて単一のバッテリで動作することが可能である。これらの要因は、低システムコストと組み合わされて、サブGHzトランシーバを、最大範囲及び多数年にわたる動作寿命が必要な低速データ用途に最適である。
異なる周波数の動作に必要なアンテナ長さは、433MHzで17.3cm、915MHzで8.2cm、及び、2.4GHzで3cmである。したがって、図3に示すデバイスを支える首カラーにアンテナが設けられなければ、433MHzの伝送に対して、アンテナ長さが不都合となる。2.4GHz帯域が世界的スペクトラム標準であるため、2.4GHz帯域は、1つのデバイスを世界中の主要マーケットに供給可能とすることに有益である。しかし、433MHzは、ほとんどの世界で2.4GHzに対する代替手段として発展し得るものであり、868及び915MHz無線機をベースとするデザインは、アメリカ及びヨーロッパのマーケットに単一製品として供給することが可能である。
範囲は、トランシーバの感度及びその出力で決定される。無線機感度に影響する主要な要因は、データ速度である。データ速度が高いと感度が低下し、十分な範囲を達成するためにより高い出力が必要となる。例えば、低速データのみを必要とする用途では、40Kbpsが好ましく、トランシーバはまだ標準の既製の20ppm結晶(standard off-the-shelf 20 parts per million crystal)を使用することができる。
無線で刺激器ハウジングに伝送されることのある典型的な信号波形は、図2B及び2Cに示してある。ここで見られるように、各正弦波パルスは、タウの期間と、このようなパルスNを有するバーストとを備える。これに、無信号(バースト間期間)の期間が続く。バーストにサイレントバースト間期間を繰り返すパターン自体は、Tの期間を有する。例えば、正弦波の期間タウは、200マイクロ秒で、バースト毎のパルス数は、N=5で、バーストにサイレントバースト間期間が続く全体のパターンはT=40000マイクロ秒であり、これは、25Hzの刺激(Tのより小さな値は図2Cに示してあり、バーストを識別可能としてある)に相当する。これらの例示的な値をT及びタウに使用すると、波形は、より高い周波数でかなりのフーリエ成分(1/200マイクロ=5000/秒)を含む。このような信号は、40Kbps無線伝送を使用して容易に伝送することができる。信号パラメータタウ、N、T、Emax等のみを伝送することにより、信号を圧縮することも可能であるが、この場合は、刺激器ハウジングの制御用電子装置が、伝送されたパラメータから波形を構成する必要があり、これは、刺激器ハウジングの部材の複雑性を追加することになる。
しかし、刺激器ハウジングが取り付けられるセンサも情報を伝送することを意図しているため、図2に示す信号を伝送することだけが必要な場合よりも、かなり多くのデータ伝送が必要となることがある。したがって、本開示は、ISM周波数帯域に制限されるものではなく、任意の周波数帯域を使用しても良く、更に、このような周波数ホッピング及びスペクトラム直接拡散等の無線伝送におけるノイズ及び干渉を抑制または防止する当該分野で既知の技術を使用しても良い。
選択した神経線維は、患者の首に位置する迷走神経の刺激を含む開示した電気刺激デバイスを使用する方法の異なる実施形態で刺激される。その位置では、迷走神経は、頸動脈鞘内、頸動脈の近く及び頚静脈内に位置する。頸動脈鞘は、胸鎖乳突筋の深部で首の両側の咽頭後のスペースの側方境界に位置する。右迷走神経の刺激は心臓に望ましくない作用を生じさせ得るため、左迷走神経が刺激のために選択されることがあるが、しかし、用途によって、右迷走神経または左右両迷走神経を代わりに刺激しても良い。
頸動脈鞘内の3つの主要構造は、総頸動脈、内頸静脈及び迷走神経である。頸動脈は内頚静脈に対して中間に位置し、迷走神経は2つ血管の後方に位置する。典型的には、患者の頸動脈鞘または内頚静脈の位置(したがって、迷走神経の位置)は、例えば感覚または超音波画像により、当該分野で既知の任意の方法で確認される。迷走神経に対して胸鎖乳突筋の上の首の皮膚から開始すると、皮膚上の位置が外頚静脈のいずれかの側にすぐ接していない限り、ラインが胸鎖乳突筋、頸動脈鞘及び内頚静脈を連続的に通過しても良い。後者の場合、ラインは、迷走神経に出会う前に、胸鎖乳突筋と頸動脈鞘のみを連続的に通過し、内頚静脈に当たらない。したがって、外頚静脈に近接するポイントは、迷走神経の非侵襲的刺激が好ましいことがある。磁気刺激コイルは、約第5から第6頸椎のレベルで、このようなポイントを中心としても良い。
図8は、首のその位置における迷走神経を刺激するための図3(図8の30で、図3の31と32を付加したものと同じ)に示すデバイス30を示し、刺激デバイス30は、上述のように患者の首の標的位置に適用する状態を示す。例えば、図8は、以下の頸椎の位置を示し、つまり、第1頸椎71、第5頸椎75、第6頸椎76及び第7頸椎77である。スマートホンが患者の首に適用されるため、患者は、スマートホンのタッチスクリーンを見てタッチするために鏡29が必要である。したがって、スマートホンの画面に表示される画像は、デバイスが図8に示すように使用するときに逆にしても良い。これに代え、スマートホンの画面に表示される画像は、ベースステーションのコンピュータプログラムに無線で送信しても良く、これは、ベースステーションのコンピュータ画面に表示する画像となり、患者は、ベースステーションを介して無線でスマートホンと相互作用しても良い。
図9は、子供の首に適用する刺激器30を示し、これは、首の損傷及び頸痛に使用されるものと同様な発泡頸椎カラー78で部分的に不動になっている。カラーは、ストラップ79で締め付けられ、刺激器は、カラーの孔を通して子供の首の表面に達するように挿入されている。このような用途では、刺激器は、コントローラの刺激パラメータ(例えば、オン/オフ、刺激振幅、周波数等)を調節するために使用し得るワイヤレスコントローラを使用して、遠隔的にオン及びオフにしても良い。
図10は、図8に示す首位置で迷走神経を刺激するために配置された際の、電気刺激器30の使用をより詳細に示す図である。図10に示す生体構造は、椎骨レベルC6の首の半分の断面図である。迷走神経60は図10に、太い周囲輪郭で識別される頸動脈鞘61と共に特定してある。頸動脈鞘は、迷走神経をだけでなく、更に、内解静脈62及び総頸動脈63も囲む。首の表面の近くに識別し得る構造は、外頚静脈64及び胸鎖乳突筋65を含み、これは、患者が彼または彼女の頭を回したときに突出する。迷走神経の近部の他の器官は、気管66、甲状腺67、食道68、斜角前筋69、中斜角筋70、肩甲拳筋71、板状筋のコッリ筋72、頭半棘筋73、半棘コッリ筋74、頸長筋及び頭長筋75を包含する。第6頸椎76も示してあり、ハッチングマークで識別される骨構造を有する。第6頸椎76も、ハッチングマークで識別される骨構造と共に示してある。図に示す他の構造は、横隔神経77、交感神経節78、腕神経叢79、椎骨動脈及び静脈80、椎前筋膜81、広頚筋82、肩甲舌骨筋83、前頸静脈84、胸骨舌骨筋85、胸骨甲状筋86、及び、脂肪87に関連する皮膚である。
患者を治療する方法は、図8,9及び10に示すように迷走神経を刺激することを包含し、ここに開示する電気刺激デバイスを使用する。刺激は、左右の迷走神経またはこれらの双方を同時にまたは交互に行っても良い。デバイスの位置決め及び配向は、電流が刺激電極を介して流れるときに、患者が刺激を知覚するまで、その場所の周りで調整される。流される電流は、最初は、刺激器からの感覚を患者が知覚できるレベルまで、次第に増大される。電力は増大されるが、患者が最初に何らかの不快を示したものよりも低いレベルに設定される。ストラップ、ハーネスまたはフレームが、刺激器を所定位置に維持するために使用しても良い。刺激信号は、患者に治療効果を生じさせるために選択された周波数及び他のパラメータを有しても良く、すなわち、各患者に対する刺激パラメータは、個別化ベースで調節される。通常、刺激信号の振幅は、患者に取って心地よい最大値に設定され、この後、他の刺激パラメータが調整される。
この後、刺激は、図2に示すような正弦波バースト波形で実行される。ここで見られるように、各正弦波パルスは、τの期間と、このようなパルスNを有するバーストとを備える。これに、無信号(バースト間期間)の期間が続く。バーストの後に無音のバースト間期間が続くパターンがそれ自体をTの周期で繰り返す。例えば、サイン曲線周期τは、約50~1000マイクロ秒(約1~20KHzに相当)の間、好ましくは約100~400マイクロ秒(約2.5~10KHzに相当)の間、より好ましくは約133~400マイクロ秒(約2.5~7.5KHzに相当)、更に好ましくは、約200マイクロ秒(約5KHzに相当)としても良く、バースト毎のパルス数はN=1~20、好ましくは約2~10、より好ましくは約5であり、バーストに続く無音のバースト間期間の全体パターンは、約10~100Hz、好ましくは約15~50Hz、より好ましくは25~35Hz、更に好ましくは約25Hzに相当する周期Tを有しても良い(より小さなTの値は図2Cに示してあり、バーストを認識可能とする)。これらの例示的な値をT及びタウに使用すると、現在実行されている経皮的神経刺激波形に含まれるものと比べて、波形は、より高い周波数でかなりのフーリエ成分(1/200マイクロ秒=5000/秒)を含む。
患者が刺激デバイスを使用して、例えば、家庭または仕事場で、自己刺激治療を行う場合、彼または彼女は、以下に説明するステップで実行する。最適な刺激位置が、上述のように、既に患者の首にマークされ、蛍光スポットの基準画像が既に取得されていると仮定する。先の刺激セッションは、通常、刺激ハウジングの再充電可能なバッテリを放電しており、セッション間で、ベースステーションが、多くても最小レベルまでのみ、刺激器を再充電するために使用されている。刺激器のバッテリが先の刺激セッションから残留する充電を有する場合、ベースステーションは、患者の刺激をサポートしない最小レベルまで刺激器を放電する。
患者は、携帯電話またはベースステーション(例えば、ラップトップコンピュータ)を使用し、刺激器の使用を開始するようにデザインされたコンピュータプログラムを呼び出す(ラップトップコンピュータ上または携帯電話上のアプリ)ことにより、刺激セッションを開始することができる。スマートホン及びベースステーションのプログラムが開始し、互いに無線で相互作用しても良く、以下では、スマートホンのプログラム(アプリ)に対する参照は、双方の動作が連携することがあるため、ベースステーションのプログラムに対しても適用されても良い。セキュリティの理由から、プログラムは、ユーザ名及びパスワードの要求から始まり、ユーザのデモグラフィック情報及び先の刺激経験からのデータが既に、ログインアカウントに関連付けられる。スマートホンは、指紋または音声認識アプリ、または、他の信頼できる認証方法を用いて患者を認証するために使用しても良い。患者の医師が、更なる治療を承認しない場合は、ベースステーションは、刺激器のバッテリを充電せず、代わりに、コンピュータプログラムは、医師のコンピュータを呼び出しまたは通信して、承認を要求する。医師による承認を受信した後、コンピュータプログラムは(ラップトップコンピュータまたは携帯電話のアプリを介して)、通常はインターネット上のどこかにあるデータベースに問い合わせ、患者のアカウントが適切であることを認証する。適切でない場合、プログラムは、1つまたは複数の刺激セッションに対して前払いを要求しても良く、これは、クレジットカード、デビットカード、ペイパル等を使用して、患者が支払う。コンピュータプログラムは更に、そのインターナルデータベース、または、ベースステーションのデータベースに問い合わせ、刺激器が最後に使用されたときと現在の期間との間に十分な時間が経過していることを判断し、必要な待ち時間が経過したことを確証する。
神経刺激セッションの実行の承認を受信した後、患者インターフェースコンピュータプログラムは、刺激器に刺激セッションを準備させるために、ベースステーションが使用するパラメータを選択することに関連する質問を患者に尋ねる。コンピュータプログラムが尋ねる質問は、患者が治療を受けている症状に依存しており、これは、どれが、本目的に対して、片頭痛に対する治療として考えられるかである。頭痛は、原則として、頭痛段階(前駆症状、前兆、頭痛、後発症状及び発作間間隔)のいずれかにあり、これは、コンピュータプログラムの質問を通して確認される。質問は、(1)これは急性かまたは予防的治療か?、(2)急性の場合、あなたの頭痛はどのように激しいか、痛みがどのくらい続いているか、(3)最後の刺激から、通常でない、または、注目すべき何かが生じたか?、等である。一般に、提示する質問のタイプは、頭痛日誌にあるものである(TASSORELLI C, Sances G, Allena M, Ghiotto N, Bendtsen L, Olesen J, Nappi G, Jensen R. The usefulness and applicability of a basic headache diary before first consultation: results of a pilot study conducted in two centers. Cephalalgia 28(10,2008):1023-1030)。
このような事前情報を患者から受け取った後、コンピュータプログラムは、機器診断テストを行い、刺激セッションのために刺激器を準備する。一般に、刺激パラメータを設定するアルゴリズムは、医師により定められており、刺激器バッテリを充電する程度、どの迷走神経を刺激すべきか(右または左)、及び、刺激セッションの後、次の刺激セッションを開始するまで患者が待機すべき時間を包含する。コンピュータは、医師のコンピュータに、アルゴリズムのアップデートがあるかどうか問い合わせ、無い場合には、既存のアルゴリズムを使用する。患者も、期待するものを知るために、インターフェースコンピュータプログラムにより、刺激セッションパラメータのアドバイスを受ける。
ベースステーションが刺激器バッテリに必要な充電をすると、コンピュータプログラム(または、スマートホンアプリ)は、患者に刺激器の使用準備ができたことを示す。この時点で、患者はスマートホンに図5に示す光学アタッチメント50を取り付け、電極面を清浄にし、ハードウェアに対して他の予備的調整を行う。セッションのための刺激パラメータが表示され、患者が可能な任意のオプションを選択する。患者が開始の準備ができると、彼または彼女は、タッチスクリーン上の「スタート」ボタンを押し、図8に示すように、迷走神経の刺激を始めても良い。
患者が、首の意図した側で迷走神経を適正に刺激しているかどうかテストするために、多くの方法を使用しても良い。例えば、スマートホン内の加速度計及びジャイロスコープを、画面の患者が期待する表示に対するスマートホンのタッチパネルの位置及び配向を決定するために使用しても良く、刺激器を保持するためにどの手を用いるか、コンピュータプログラムによる決定は刺激器ボディの外側のキャパシタンスを測定することにより行われ、これは、親指のボールに対してデバイスの回りを囲む指を区別することを可能とする(Raphael WIMMER and Sebastian Boring. HandSense: discriminating different ways of grasping and holding a tangible user interface. Proceedings of the 3rd International Conference on Tangible and Embedded Interaction, pp. 359-362. ACM New York, NY, 2009)。電極を皮膚に押圧すると、電極間の抵抗が低下し、これは後部カメラの動作を開始することが可能である。蛍光画像は、デバイスが、先にタトゥーとして付した蛍光スポットの近部で首の側部に適用された場合にのみ、スマートホンの画面に現れる。これらのデータの全体が、コンピュータプログラムに対して、患者が誤った迷走神経を刺激しようとしていること、または、デバイスが不適切に保持されていることを示す場合には、刺激が保留され、刺激器は、インターフェースコンピュータプログラム(携帯電話またはラップトップコンピュータ内)を介して、患者にその事実を警告するために、患者と通信しても良い。この後、プログラムは、首に対してデバイスをより良好に適用する方法を提案しても良い。
しかし、刺激器が適正に適用され、及び、患者の首の蛍光スポットの画像がスマートホンの画面に現れる場合、刺激器は、所定の初期刺激パラメータにしたがって刺激を開始する。この後、患者は、彼または彼女が正しい首位置と考えるものについて、刺激電極を介して電流が流れるときを彼または彼女が気付くまで、刺激器の位置及び角度方向を調節する。更に、現在見える首のスポットの蛍光画像を先に取得した基準画像に重ねる試みが行われる。適用される電流は、患者が刺激から感覚を最初に感知するレベルまで、ベースステーションのキーボードまたはスマートホンのタッチスクリーンを使用して、次第に増加される。この後、刺激振幅が患者により増大されるが、最初に何らかの不快と感じられるものよりも少ないレベルに設定される。試行錯誤により、この後、刺激は患者により最適化され、患者は、刺激器を蛍光スポットを使用して整合させ、最低の受け入れ可能な刺激振幅で最大の受け入れ可能な感覚を見つけようとする。刺激器が手で所定位置に保持される場合、例えば、呼吸中の首の動きにより、刺激器の意図しない変動運動が生じやすい。このような相対運動は、刺激の効果に悪影響する。しかし、これらは、スマートホン内の加速度計及びジャイロスコープでモニタされても良く、これは、運動データとして刺激器から患者のインターフェースコンピュータプログラム(携帯電話またはラップトップコンピュータ内)に伝送されても良い。相対運動も、撮像された蛍光スポットの位置における変動としてモニタし、測定しても良い。患者インターフェースコンピュータプログラムで示される相対運動のグラフ表示を観察することにより、患者はディスプレイを使用して、意識的に運動を最小化しようとしても良い。そうでない場合、患者は、その最適位置から離隔する刺激器の運動の補償として、刺激器の振幅を調整しようとしても良い。以下のセクションでは、このような補償を行うために、刺激器自体が刺激の振幅を調整しても良い方法を説明する。
セッション中、患者は刺激器を彼の首から持ち上げることがあり、これは、電極間の抵抗の増加及び患者の首のスポットの蛍光画像の喪失として検出される。これが発生したときは、デバイスは、安全のため、刺激器への電力供給を保留する。この後、患者は刺激器を彼の首に再適用し、セッションを復旧することができ、しかし、刺激の中断はコンピュータプログラムが認識し記録される。この後、刺激器のバッテリが消耗するまで、または、患者が刺激セッションの終了を決定するまで、患者による刺激が継続する。その時点で、患者は、刺激セッションが終了したことをスマートホンの画面上の応答ボタンをタッチすることで同意し、刺激器は、そのマイクロプロセッサが刺激セッションに関して記憶することになるデータをデータベースステーションに送信する(例えば、セッション中の時間に応じた刺激振幅及びデバイスの動きに関する情報、刺激の期間、中断の存在等)。このような情報は、この後、患者のインターフェースコンピュータプログラム(携帯電話またはラップトップコンピュータ内)に伝送され、表示され、これは後に、刺激の有効性に関する患者の質問に答えることになる。このような質問は、刺激後の頭痛の重症度に関する、重症度が次第にまたは刺激の過程で急激に減少したかどうか、及び、刺激中に普通ではないまたは特別な何かが生じたかどうかで良い。このような全ての刺激後データは、刺激パラメータ及び治療方式の選択に使用されるアルゴリズムの調整の可能性を見直すために、患者インターフェースコンピュータプログラムにより、インターネットで医師のコンピュータに送出される。医師は、各患者の経験に基づくだけでなく、全ての患者の総合的な経験に基づいてアルゴリズムを調整し、例えば、最も多く及び最も少なく反応する患者の特性を識別することにより、刺激器の使用の有効性を改善することが理解される。
インターフェースコンピュータプログラムをログオフする前に、患者は、全ての先の治療セッションについてのデータベース記録及び概要を見直し、彼または彼女自身の治療の進捗を判断しても良い。刺激が、患者の医師の指示による予防のための治療レジメンの一部である場合、患者インターフェースコンピュータプログラムは、次回の自己治療セッションのためのスケジュールを患者に思い出させ、必要な場合には、スケジュールの変更を可能とする。
いくらかの患者に対して、わずか90秒実行しても良いが、30分以上であっても良い。一般に、治療は、毎日1回若しくは2回、または、週に複数回を、治療を継続するかどうか判断されるまで、12週間以上、実行する。間欠性の症状の患者に対しては、治療は、患者の症状があるときにのみ実行しても良い。しかし、刺激プロトコルのパラメータは、患者の病態生理における異質性に応じて変更しても良いことが理解される。異なる刺激パラメータは、更に患者の病状の変化の過程として選択しても良い。
本開示のいくつかの実施形態では、迷走神経のペアリングは、追加の感覚刺激と一緒でも良い。対となった感覚刺激は、例えば、迷走神経の電気刺激と同じ周波数で脈動する明るい光、音、触覚刺激、または、舌の電気刺激で臭い/味をシミュレートするものであても良い。対となった感覚刺激の論拠は、左右の迷走神経の双方の同時で対となった刺激と同様であり、すなわち、脳内で相互作用する刺激の対は、個々の信号に関連する神経細胞群よりも、より大きく、より整然とした神経細胞群を形成することがあり、これにより、治療効果が増進することにある。このペアリングは、特に、いくつかのこのように脳の感覚回路が片頭痛の誘因に部分的に対応すると考えられるときに、考慮しても良い。
脳の特定領域を優先的に刺激する刺激パラメータの選択は、実験的に行っても良く、ここで、刺激パラメータのセットが選択され、脳の応答領域がfMRIまたは関連する撮像方法を使用して測定される(CHAE JH,Nahas Z,Lomarev M,Denslow S,Lorberbaum JP,Bohning DE,George MS.A review of functional neuroimaging studies of vagus nerve stimulation (VNS).J Psychiatr Res.37(6,2003):443-455;CONWAY CR,Sheline YI,Chibnall JT,George MS,Fletcher JW,Mintun MA.Cerebral blood flow changes during vagus nerve stimulation for depression.Psychiatry Res.146(2,2006):179-84)。したがって、刺激パラメータの異なるセットで撮像を実行することにより、特定の脳の領域に一致するようにパラメータを選択することの逆問題が、データベースを参照することによって解決することができるように、データベースを構成しても良い。
神経刺激プロトコルに対するパラメータの個別化された選択は、皮膚痛または筋収縮の感覚無しに、有益な反応を得るために、試行錯誤に基づいても良い。代替的に、パラメータ値の選択は、後述するように、制御理論で理解されるように、チューニングすることを包含しても良い。パラメータは、通常の生理的変動を刺激するために、ランダムに変更しても良く、これにより、患者に有益な反応を誘導することが可能であることが理解される(Buchman TG.Nonlinear dynamics,complex systems,and the pathobiology of critical illness.Curr Opin Crit Care 10(5,2004):378-82)。
迷走神経刺激は、迷走神経に対する刺激器の動きを補償し、過度の心拍等の潜在的に危険が状況を回避するために、制御理論(フィードバック)の方法を採用する。したがって、これらの方法では、環境信号または迷走神経刺激のパラメータは、所定の範囲内の生理学的信号の値を維持するため、行われる生理学的測定にしたがって、自動的に変更しても良い。
迷走神経を刺激しているときに、動きの変動性は多くの場合、患者の呼吸に起因し、これは、迷走神経(図10の65で認識される)の近くに位置する胸鎖乳突筋の収縮、及び、形状の関連する変形を含む。この変動性を補償する刺激振幅の変動は、患者の呼吸相を測定し、または、より直接的に、刺激器の動きを測定し、この後、説明するように制御理論の分野で既知のコントローラ(例えば、PIDコントローラ)を使用することにより、実行しても良い。
図11は、開示した迷走神経刺激方法の制御理論を表示するものである。「システム」(患者)は、「環境」から入力を受ける。例えば、環境は、周囲温度、光および音を含み、これらのすべては片頭痛発作の要因となることがある。「システム」が患者の特別な生理学的要素のみで画定されると、「環境」は、「システム」に含まれない患者の生理学的システムを含むと考え得る。したがって、いくつかの生理学的要素が、患者の他の生理学的要素の挙動で影響することが可能で、逆は可能でない場合、先の要素は、環境の一部とすることができるが、後の要素はシステムの一部とすることができる。他方において、先の要素を制御し、後の要素に影響させることを意図する場合、双方の要素は「システム」の一部と考えられる。”
システムは、更に「コントローラ」から入力を受け、この場合、これは迷走神経刺激デバイス、及び、刺激プロトコルのパラメータ(振幅、周波数、パルス幅、バースト数等)を選択若しくは設定に使用し、または、刺激器を使用若しくは調節する必要に応じて患者に警告し得る(すなわち、アラーム)電子部材を備えても良い。例えば、コントローラは、図1Cの制御ユニット330を有しても良い。システムの生理学的計測は、センサを用いて行われるため、図11に示す概要におけるフィードバックが可能である。したがって、測定することができるシステムの変数の値は、システムの状態(システム出力)を画定する。実際問題として、これらの測定の幾つかのみが実際に行われ、これらは、コントローラに対する「感知された生理的入力」を表す。
好ましいセンサは、移動モニタリングに使用される通常のものを含む。例えば、センサは、心拍または変動、ECG、呼吸深さまたは速さ、中核温度、水和反応、血圧、脳機能、酸素供給、皮膚インピーダンス、及び、皮膚温度を監視するための通常のホルター臨床モニタ用に使用されているものを備えても良い。これらのセンサは、現在、兵士の生理学的状態を監視するプログラムで使用されるように、衣類に組み込み、または、スポーツ用リストウォッチに配置しても良い(G.A.SHAW,A.M.Siegel,G.Zogbi,及びT.P.Opar.Warfighter physiological and environmental monitoring:a study for the U.S.Army Research Institute in Environmental Medicine and the Soldier Systems Center.MIT Lincoln Laboratory,Lexington MA.2004年11月1日,pp.1~141)。ECGセンサは、例えばP波形態指標であるECGの特定の特徴、並びに、副交感神経及び交換神経系の緊張の指標である心拍変動を自動的に抽出及び分析するように適合させるべきである。非侵襲的誘導プレスチモグラフィ、水銀式シラスティック歪ゲージまたはインピーダンスニューモグラフィを使用する呼吸作用の測定は、特に、心臓に対する呼吸の影響を考慮するため、推奨される。非侵襲的加速度計も、動きアーチファクトを識別するために、歩行センサに含んでも良い。事象マーカも、患者に対して関連環境及び感覚をマークするために、含まれても良い。
脳のモリタリングのため、センサは歩行可能なEEGセンサ(CASSON A,Yates D,Smith S,Duncan J,Rodriguez-Villegas E.Wearable electroencephalography.What is it,why is it needed,and what does it entail?IEEE Eng Med Biol Mag.29(3,2010):44-56)、または、前頭前皮質光活性化マッピング用のトポグラフィシステム(Atsumori H,Kiguchi M,Obata A,Sato H,Katura T,Funane T,Maki A.Development of wearable optical topography system for mapping the prefrontal cortex activation. Rev Sci Instrum. 2009 Apr;80(4):043704)を備えても良い。従来の線形フィルタを生のEEGデータに適用するだけでなく、データから非線形信号特性のほぼリアルタイムの抽出も有する信号処理方法は、EEGモニタリングの一部と考えても良い(D.Puthankattil SUBHA, Paul K.Joseph,Rajendra Acharya U,及びChoo Min Lim.EEG signal analysis:A survey.J Med Syst 34(2010):195-212)。このような特性はEEG帯域(例えば、デルタ、シータ、アルファ、ベータ)を包含する。
呼吸相の検出は、プローブが鼻の孔に位置するように、患者の頬にサーミスタまたはサーモカップルプローブを付着することにより、非侵襲的に実行しても良い。胸の回りに締め付けたベルトからの歪ゲージ信号、並びに、誘導性脈波検査及びインピーダンスニューモグラフィも、呼吸相の機能として起伏する信号を非侵襲的に生成するために伝統的に用いられている。呼吸相は、呼吸中に迷走神経刺激器の動きを生じさせる胸鎖乳突筋の動きから推測しても良く、後述するように、迷走神経刺激器に取り付けられる加速度計を使用して測定される。このような信号をデジタル化した後、呼吸相は、「プカ(puka)」等のソフトウェアを用いて決定しても良く、これは、広範囲にわたる生理学的信号を処理し、表示するために使用されるオープンソースソフトウェア及びユーザマニュアルの膨大な公開されたライブラリであるPhysioToolkitの一部である(GOLDBERGER AL,Amaral LAN,Glass L,Hausdorff JM,Ivanov PCh,Mark RG,Mietus JE,Moody GB,Peng CK,Stanley HE.PhysioBank,PhysioToolkit,及びPhysioNet:Components of a New Research Resource for Complex Physiologic Signals. Circulation 101(23,2000):e215-e220]available from PhysioNet,M.I.T.Room E25-505A,77 Massachusetts Avenue,Cambridge,MA 02139)。本開示の1つの実施形態では、制御ユニット330は、このようなアナログの呼吸信号を受けるアナログ-デジタル変換器、及び、制御ユニット330内に存在するデジタル化した呼吸波形の分析のためのソフトウェアを有する。そのソフトウェアは、呼気終端及び吸気終端等の呼吸波形内のターニングポイントを抽出し、先の呼吸の波形と現在の呼吸の部分的波形が一致する周波数に基づいて、今後のターニングポイントを予測する。制御ユニット330は、その後、インパルスジェネレータ310を制御し、例えば、吸気の全て若しくは第1,第2呼気のみ、または、吸気の予期される吸気の中間半分のみ等の選択した呼吸相中の選択した神経をのみを刺激する。本開示の他の実施形態では、生理学的または環境信号は、図7に示すように、無線でコントローラに伝送される。このような信号のいくつかは、ベースステーションが受信しても良く(例えば、周囲音信号)、他は、刺激器ハウジング内で受信しても良い(例えば、運動信号)。
インパルスジェネレータ310を制御し、電極により、患者の呼吸相にしたがって、一時的に刺激を調節するように、制御ユニット330をプログラムすることは治療上有益なことがある。YOSHIHOTOによる「Vagus nerve stimulation system」と題する特許出願JP2008/081479Aには、心拍を安全限度内の維持するためのシステムが記載されている。心拍数が高すぎると、そのシステムは、患者の迷走神経を刺激し、心拍数が低すぎると、そのシステムは、迷走神経を刺激する異なるパラメータを使用するのではなく、心臓自体を刺激することにより、心拍の安定を達成しようとする。その開示では、迷走神経の刺激は電極を用い、これは、体表面に適用される表面電極または皮下注射鍼を介して迷走神経の近部に導入される電極の一方について記載する。その開示は、ここで対象としている頭痛の問題とは無関係であるが、以下の理由のために、呼吸サイクルの特定の相での刺激を考慮する。迷走神経は、横隔神経の近くであるため、Yoshihotoは、横隔神経は迷走神経と共に電気的に刺激されることがあると指摘している。出願人は、この問題を経験しておらず、したがって、その問題は誤って配置された電極のものの可能性がある。いずれの場合も、横隔神経は、横隔膜の筋肉運動を制御し、その結果、横隔神経の刺激は、患者にしゃっくり、若しくは、横隔膜の不規則な動きを生じさせ、または、そうでないときは不快感を生じさせる。横隔膜の不規則な運動の効果を最小にするため、Yoshihotoのシステムは、呼吸サイクルの呼気相ではなく、吸気相でのみ横隔神経(及び、迷走神経を一緒に刺激する可能性もある)を刺激するようにデザインされている。更に、そのシステムは、横隔神経及び横隔膜を緩やかに刺激するために、吸気中の電気刺激の強さを次第に増大し、この後、減少する(特に、振幅及び刺激速度)ようにデザインされている。
更に、本開示の選択肢として、刺激のパラメータを制御ユニット330で調整し、心拍を安全または所要限度内としかつ維持するために、電極による刺激を一時的に調整するようにインパルスジェネレータ310を制御しても良い。その場合、刺激のパラメータは、段階的に個別に上下し(電力、周波数等)、増加した、変化しない、または、減少した心拍として、効果が制御ユニット330のメモリに格納される。心拍が特定した範囲外の値に変化すると、制御ユニット330は、その範囲内の心拍を生じさせるように記録された値に、自動的にパラメータをリセットし、または、その範囲内に心拍がまだ到達しない場合、先に取得したデータが、所要範囲内の心拍に向けて心拍が変化する方向にパラメータを上下する。同様に、動脈圧も、本開示の実施形態で非侵襲的に記録され、上述のように、制御ユニット330は動脈圧波形から、収縮期、拡張期及び平均動脈圧を抽出する。制御ユニット330は、この後、心拍について上述したものと同じ方法により、所定の安全または所要限度内の血圧を達成しかつ維持するように、インパルスジェネレータ310を制御し、電極により一時的に神経刺激を調製する。
図11のシステムの測定された出力変数をyi(i=1~Q)で示し、yiの所要(基準または設定値)値をriで示し、システムに対するコントローラの入力を変数uj(j=1~P)とする。いくつかの実施形態では、コントローラの目標が入力ujを、出力変数(または、そのサブセット)が基準信号riに密に追従すること、すなわち、システムに対する環境入力またはノイズが存在しても、制御誤差ei=ri-yiが小さいことである。誤差関数ei=ri-yiが図11のコントローラに対する検知された生理的入力と考える(すなわち、基準信号はコントローラに組み込まれており、これは、これらの信号から測定されたシステム値を減じ、制御誤差信号を構成する)。コントローラは、更に、測定した1セットの環境信号vk(k=1~R)を受け取り、これは図11に示すように、更に、システムに作用する。
システムの入力u(t)の機能的形態は、図2B及び2Cに示すように制約される。通常、調節に必要なパラメータは、図2に示す信号の振幅に関連したものである。システムを制御するためのフィードバックを使用する第1実施例として、動きアーチファクトに対して補償するため、迷走神経刺激器(すなわち、コントローラからの出力)からの入力u(t)の調節の問題を考える。
神経活性化は、一般的に、軸索に沿う2次的空間微分の機能であり、これは軸索に対する刺激器の位置がずれたときに変化することになる(F.RATTAY.The basic mechanism for the electrical stimulation of the nervous system.Neuroscience 89(2,1999):335-346)。このような動きアーチファクトは、患者の動き(例えば、首の動き)若しくは患者の内部の動き(例えば、呼吸に関連する胸鎖乳突筋の収縮)に起因することがあり、または、体に対する刺激器の動き(スリップ若しくはドリフト)に起因することがある。したがって、このような望ましくない、または避けることができない動きのために、通常は、意図(r)するもの対実際(y)の神経振幅刺激に、連続的に調整が必要ないくらかの誤差(e=r-y)が存在する。
加速度計は、例えば、750 キャニオン Dr#300 コッペル,テキサス州 75019に住所を有するSTMicroelectronicsのModel LSM330DLを使用して、あらゆるこれらのタイプの動きを検出するために使用可能である。1つの実施形態では、患者の首に1つ以上の加速度計を取り付けられ、1つ以上の加速度計が、刺激器が患者に接触する部位の近部で刺激器のヘッド(複数を含む)に取り付けられ、または、スマートホン内の加速度計が用いられる。一時的に組み込まれる加速度計の出力が、各加速度計の現在位置を測定するため、組み合わせた加速度計の出力は、下側の組織に対する刺激器のあらゆる動きを測定することを可能とする。
刺激器の下側の迷走神経の位置は、刺激器の中心が配置される位置に超音波プローブを配置することにより、予め決定し得る(KNAPPERTZ VA,Tegeler CH,Hardin SJ,McKinney WM.Vagus nerve imaging with ultrasound:anatomic and in vivo validation.Otolaryngol Head Neck Surg 118(1,1998):82-5)超音波プローブは、1つまたは複数の加速度計の取付け具を含み、刺激器と同じ形状を有するように構成される。予備的プロトコルの一部として、加速度計を取付けられた患者は、この後、刺激器による長期の刺激に伴う首の動き、胸鎖乳突筋を収縮するような深い呼吸、及び、一般的な刺激が可能な動きを指示または支援される。これは、患者の首の初期位置に対して可能性のある刺激器のスリップまたは動きを含む。これらの動きが行われる間、加速度計は位置情報を取得し、超音波画像から対応する迷走神経の位置が決定される。これらの予備的データにより、この後、先に取得した迷走神経位置との間に、加速度計位置データの関数として補間することにより、刺激期間中の加速度計のデータを受けるだけで、刺激器に対する迷走神経の位置を推測することが可能である。このようなデータは、患者の首のスポットの現在の蛍光画像が基準画像と一致する範囲を測定する画像データを補足し、したがって、更に、刺激器の相対運動を測定する。
迷走神経に対する刺激器の任意の所与の位置に対し、迷走神経の近部で生成する電場の振幅を推測することも可能である。これは、関連する体組織をシミュレートする想像線内の深さ及び位置の機能として、刺激器により生成される電場を計算または測定することにより、行われる(Francis Marion MOORE. Electrical Stimulation for pain suppression:mathematical and physical models.Thesis,School of Engineering,Cornell University,2007;Bartosz SAWICKI,Robert Szmurlo,Przemyslaw Plonecki,Jacek Starzynski,Stanislaw Wincenciak,Andrzej Rysz.Mathematical Modelling of Vagus Nerve Stimulation.pp.92~97:Krawczyk,A.Electromagnetic Field,Health and Environment:Proceedings of EHE’07 Amsterdam, IOS Press,2008)。したがって、動きに対して補償するため、コントローラは、その所要値に対して、迷走神経の近部の電場の振幅の推測されるずれに比例して、刺激器(u)からの出力の振幅を増大または低減する。
本目的に対し、システム出力変数とシステムの状態を示す変数との間に、相違はない。この後、システムの状態空間表示またはモデルは、1次微分方程式のセットを有し、この形態は、dyi/dt=Fi(t,{yi},{uj},{vk};{ri})であり、ここにtは時間であり、一般的に、各変数yiの変化の速度は、多くの他の出力変数並びに入力及び環境信号の関数(Fi)である。
伝統的な制御理論は、状況に関連し、Fi の形態の関数は、状態と入力変数の線形結合としてあるが、線形項の係数は必ずしも予め知られているものではない。この線形の場合には、微分方程式は線形変形(例えば、ラプラス変換)法で解決しても良く、これは、微分方程式を簡単に解決するために、代数方程式に変換する。したがって、例えば、1入力1出力システム(変数の添え字を除外する)は、
の形態のコントローラからの入力を有しても良く、ここで、コントローラのパラメータは、比例ゲイン(Kp)、積分ゲイン(Ki)及び微分ゲイン(Kd)である。このタイプのコントローラは、制御入力が、誤差e=r-yを使用するフィードバックで制御入力信号を形成し、PIDコントローラ(比例-積分-微分)として知られている。PIDコントローラの市販版は入手可能であり、全ての制御用途の90%で用いられている。
対応する状態の微分方程式が予め知られている場合は、コントローラのパラメータの最適な選択は、計算を通じて行うことができる。しかし、これらは通常は知られておらず、したがって、コントローラのパラメータ(チューニング)の選択は、誤差eがシステム入力を形成するために使用されるか、または、使用されないかの実験(それぞれ、閉ループまたは開ループ実験)により、達成される。開ループ実験では、入力はステップ毎に増大し(または、ステップのランダム2進数列で)、システム応答が測定される。閉ループ実験では、積分または微分ゲインがゼロに設定され、比例ゲインは、システムが振動を開始するまで増大し、振動周期が測定される。実験が開または閉ループかどうかにしたがって、PIDパラメータ値は、最初にZiegler及びNicholsによって記載されたルールにしたがって選択しても良い。更に、チューニングルールの改善されたバージョンもあり、コントローラによって自動的に実装可能なものも含まれる(LI,Y.,Ang,K.H.及びChong,G.C.Y.特許,software and hardware for PID control:an overview and analysis of the current art.IEEE Control Systems Magazine,26(1,2006):42~54;Karl Johan Astrom & Richard M.Murray.Feedback Systems:An Introduction for Scientists and Engineers.Princeton NJ:Princeton University Press,2008;Finn HAUGEN.Tuning of PID controllers(Chapter 10):Basic Dynamics and Control.2009.ISBN 978-82-91748-13-9.TechTeach, Enggravhogda 45,N-3711 Skien,Norway.http://techteach.no.,pp.129~155;Dingyu XUE,YangQuan Chen,Derek P.Atherton.PID controller design(Chapter 6),:Linear Feedback Control:Analysis and Design with MATLAB.Society for Industrial and Applied Mathematics(SIAM).3600 Market Street, 6th Floor,Philadelphia,PA(2007),pp.183~235;Jan JANTZEN,Tuning Of Fuzzy PID Controllers,Technical University of Denmark,report 98-H 871,1998年9月30日)。
図11に示すコントローラは、フィードフォワード方法を使用してもよい(Coleman BROSILOW,Babu Joseph.Feedforward Control(Chapter9):Techniques of Model-Based Control.Upper Saddle River,N.J.:Prentice Hall PTR,2002.pp,221~240)。したがって、図9のコントローラは、予測タイプのコントローラ、及び、システムの出力変数の将来価値に基づく基準を最適にするために、可能な入力中で選択する目的で、システムのモデルがシステムの将来の出力を計算するために使用されるとき等、なお他の事情で開発された方法であっても良い。
このようなフィードバック及びフィードフォワード方法を差し迫った片頭痛の発作の予測及び回避するために使用することが、本発明の譲受人に譲渡された同時係属のSIMONらに対する「Nerve stimulation methods for averting imminent onset or episode of a disease」と題する出願US13/357,010(公開US2012/0185020)に開示されており、これは、参照することにより包含される。
いくつかの実施形態では、例えば図12A及び12Bに示すように、アダプタまたはドングル(1204A,1204B)等のデバイスは携帯デバイスであり、機械的または電気的に、直接的または間接的に、携帯電話(1202B)、または、タブレットコンピュータ(1202A)、高性能デバイス、アイウェアコンピュータ、または、他の電源若しくは電源を有するデバイス等他の通信デバイスのポートに連結するように構成される。代替的に、携帯デバイスは、その携帯デバイスまたは他のデバイスに対してローカルまたはこれから離隔しコンピュータと通信する任意の手持型またはウェアラブルデバイスである。例えば、ポートは、データ転送ポートまたは充電ポートとすることができる。例えば、ポートはオーディオジャック、充電ポート、USBポート、ライトニングポートまたは他の任意のポートで、シリアルまたはパラレルとすることができる。代替的にまたは追加的に、携帯デバイスは、携帯電話または他のデバイスと、Wi-Fi、ブルートゥース、WiLanまたは他の無線通信プロトコルを介して連結または通信しても良い。携帯デバイスは、ポートを介して、直接または間接的に動力を供給される。したがって、携帯電話または他のデバイスのポートにプラグ接続されると、携帯電話は、携帯電話または他のデバイスのポートを介して動力を供給される刺激器として機能する。代替的に、携帯電話は、例えば、充電可能若しくは使い捨てバッテリ、ソーラパネルまたは他の充電技術、方法若しくはプロトコル等の自己の電源で動力を供給しても良い。デバイスは、ハウジング及びハウジング上の接触面を有し、接触面は、携帯デバイスのユーザの皮膚表面に接触するように構成される。デバイスは、後述するように動作する。デバイスは、携帯デバイスと同一面または非同一面となるように携帯デバイスに連結することができる。デバイスは、携帯デバイスが、保護用プラスチックシェルまたは耐水性のゴム引きケース等の携帯デバイスケース内に入れたときに、携帯デバイスと共に使用できる。
いくつかの実施形態では、携帯デバイスは、例えば、指紋スキャナ、網膜スキャナ、パスワード等、患者、許可されたユーザ若しくはデバイスを発行された人以外がデバイスを使用するのを防止するために、例えば、指紋スキャナ、網膜スキャナ、パスコード等、アクセスコントロール装置またはアプリケーションを有する。
いくつかの実施形態では、種々の機能若しくは作動は、所定の位置、及び/または、1つ若しくは複数装置若しくはシステムの動作との関係で行われる。いくつかの実施形態では、所与の機能及び動作は第1デバイスまたは位置で行われ、機能及び動作の残部は、1つまたは複数の追加デバイスまたは位置で実行することができる。
いくつかの実施形態では、装置またはシステムは、少なくとも1つのプロセッサ、及び、少なくとも1つのプロセッサで実行されたときに装置またはシステムを後述する1つまたは複数の方法論的動作を装置またはシステムに実行させる命令を格納するメモリを備える。いくつかの実施形態では、メモリは、1つまたは複数の構造、メタデータ、ライン、タグ、ブロック、ストリング、または、他の適切なデータ編成等を格納する。
ここに記載の実施形態との関係で記載した種々の例示的な論理ブロック、モジュール、回路及びアルゴリズムステップは、電子機器、コンピュータソフトウェアまたは双方の組み合わせで実施しても良い。このハードウェア及びソフトウェアの互換性を明瞭に説明するため、種々の例示的な部材、ブロック、モジュール、回路及びステップが、一般的にその機能性の観点から上述してきた。そのような機能がハードウェアまたはソフトウェアとして実施されるかどうかは、全体のシステムにかかる特定の用途及びデザインの制約に依存する。熟練した職人が、記載の機能をそれぞれの用途に対して種々の方法で実施しても良いが、このような実施態様の判断は、本開示の範囲から逸脱させるものと解釈すべきものではない。
コンピュータソフトウェアで実施される実施形態は、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語またはこれらの任意の組み合わせで実施しても良い。コードセグメントまたはマシンで実行可能な命令は、手順、機能、サブプログラム、プログラム、ルーチン、サブルーチン、モジュール、ソフトウェアパッケージ、クラス、または、命令の任意の組み合わせ、データ構造、または、プログラムステートメントを表しても良い。コードセグメントは、情報、データ、引数、パラメータまたはメモリコンテンツを渡し及び/または受信することにより、他のコードセグメントまたはハードウェア回路に連結しても良い。情報、引数、パラメータ、データ等は、メモリシェアリング、メッセージの受け渡し、トークンパッシング、ネットワーク送信等を含む任意の適切な手段を介して、渡し、通過させまたは送信することができる。
これらのシステムおよび方法を実施するために使用される実際のソフトウェアコードまたは特別制御ハードウェアは、本開示を制限するものではない。したがって、システム及び方法の動作及び挙動は、ソフトウェア及び制御ハードウェアが、ここの記載に基づいてシステム及び方法を具体化するようにデザインすることが可能なことが理解されている特別なソフトウェアコードを参照することなく記載した。
当業者に理解されるように、本開示の態様はシステム、方法またはコンピュータプログラム製品として具体化することができる。したがって、本開示の態様は、全体的にハードウェアの実施形態、全体的にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含む)、または、ここでは全て一般的に「回路」、「モジュール」若しくは「システム」と称することができるソフトウェア及びハードウェアの態様を含む組み合わせた実施形態の形態を取ることができる。更に、開示の態様は、それに具体化したコンピュータ可読プログラムコードを有する1つまたは複数コンピュータ可読媒体(複数を含む)に具体化したコンピュータプログラムの形態を取ることができる。
コンピュータ可読媒体(複数を含む)の1つまたは複数の組み合わせを利用可能である。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体またはコンピュータ可読記憶媒体とすることができる。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、制限するものではないが、電子、磁気、光、電磁、赤外線または半導体システム、装置若しくはデバイス若しくは上記の適宜の適切な組み合わせとすることができる。コンピュータ可読記憶媒体のより詳細な実施例(包括的でないリスト)は、以下を包含しており、つまり、1つまたは複数のワイヤ、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、フラッシュメモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、消去可能プログラム可能リードオンリーメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)、光学記憶装置、磁気記憶装置、または、上記の任意の適切な組み合わせを含む。本書類では、コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行システム、装置またはデバイスで用い、または、接続するためにプログラムを包含しまたは格納することのできる任意の有形の媒体とすることができる。
コンピュータ可読信号媒体は、例えば、ベース帯域または搬送波の一部として組み込まれたコンピュータ可読プログラムコードを有する伝搬されたデータ信号を含むことができる。このような伝搬された信号は、制限するものではないが、電磁、光、または、その任意の適切な組み合わせを含む任意の種々の形態をとることができる。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではなく、命令実行システム、装置またはデバイスに使用しまたは接続して使用するプログラムに通信し、伝搬しまたは移送することのできるコンピュータ可読記憶媒体ではない。コンピュータ可読媒体に具体化したプログラムコードは、制限するものではないが、無線、有線、光ファイバケーブル、無線周波数(RF)等またはこれらの任意の適切な組み合わせを含む任意の適切な媒体を使用して伝送することができる。
本開示の態様の動作を実行するコンピュータプログラムコードは、ジャバ、Smalltalk、C++等のオブジェクト指向言語、及び、「C」プログラミング言語または同様なプログラミング言語等の通常の手続型プログラミング言語を含む1つまたは複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述することができる。プログラムコードは、全体的にユーザのコンピュータで、部分的にユーザのコンピュータで、独立型ソフトウェアパッケージとして、部分的にユーザのコンピュータ及び部分的に遠隔コンピュータ、または、全体的に遠隔コンピュータ若しくはサーバで実行することができる。後者のシナリオでは、遠隔コンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)若しくはワイドエリアネットワーク(WAN)を含む、任意のタイプネットワークをを介してユーザのコンピュータに接続することができ、または、接続は、外部コンピュータ(例えば、インターネットサービスプロバイダを介して)に行うことが可能である。
以下の特許請求の範囲内の全ての手段またはステッププラスファンクションの構造、材料、動作、および、均等物は、具体的に請求されるものとして、他の請求された部材と組み合わせて機能を実行する任意の構造、材料または動作を包含することを意図するものである。ここに記載の図は例示である。本開示の精神から逸脱することなく、ここに記載の図またはステップ(または、動作)について多くの変形が可能である。例えば、ステップは異なる順序で実行でき、または、ステップを追加、削除若しくは変更することが可能である。これらの変形例の全ては、当該開示の一部とみなされる。
本開示について、特定の実施形態を参照してここに説明してきたが、これらの実施形態は、本開示の原理及び用途を説明するだけのものであることが理解される。したがって、添付の特許請求の範囲で画定される本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の変形を図示の実施形態に施し、他の配置を構成しても良いことが理解される。