以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、服薬指導支援システム1の概要を示す図である。図1に示すように、服薬指導支援システム1は、ユーザが利用する端末2と、端末2とネットワーク4を介して接続されるサーバ3とによって構成される。
本発明の実施形態におけるユーザは、薬局等における薬剤師を想定している。また、本発明の実施形態における服薬指導支援システム1が支援する薬剤師の業務は、患者の話をヒアリングしたり、調剤した薬剤の適正な使用のために必要な情報を患者に提供したりする服薬指導業務である。特に、服薬指導支援システム1は、薬剤師が新たに服薬指導を行う際や、服薬指導の指導文を登録する際、過去の指導文の中から参照に適した指導文を抽出し、薬剤師に提示する。
端末2及びサーバ3は、制御部としてのCPU(「Central Processing Unit」の略)、主記憶部としてのメモリ、補助記憶部としてのHDD(「Hard Disk Drive」の略)やフラッシュメモリ、表示部としての液晶ディスプレイ、入力部としてのキーボードやマウス、タッチパネルディスプレイ、有線通信部としてのLAN(Local Area Network)ケーブル又は無線通信部としての無線モジュール等を備える。
補助記憶部としてのHDDやフラッシュメモリには、OS(「Operating System」の略)、アプリケーションプログラム、処理に必要なデータ等が記憶されている。端末2及びサーバ3のCPUは、補助記憶部からOSやアプリケーションプログラムを読み出して主記憶部に格納し、主記憶部にアクセスしながら、その他の機器を制御し、後述する処理を実行する。
端末2は、例えば、タブレット端末、スマートフォン、ノートPC(「Personal Computer」の略)、デスクトップPC等である。サーバ3は、例えば、データセンター等に配置されるサーバ用コンピュータであり、1台の筐体で実現されても良いし、複数台の筐体で実現されても良い。ネットワーク4は、例えば、インターネットやWAN(「Wide Area Network」の略)等である。
端末2の補助記憶部には、端末2を服薬指導支援システム1の一部として機能させるためのウェブ閲覧ソフトのプログラムがインストールされる。また、サーバ3の補助記憶部には、サーバ3を服薬指導支援システム1の一部として機能させるためのウェブサーバ用プログラムがインストールされるとともに、服薬指導支援システム1に利用されるデータを記憶するデータベースが構築される。ユーザは、端末2のウェブ閲覧ソフトの機能によって、サーバ3が提供するウェブサービスが利用可能となる。尚、端末2の補助記憶部には、ウェブ閲覧ソフトのプログラムに代えて、服薬指導支援システム1専用のプログラムがインストールされても良い。
図2は、服薬指導支援システム1に用いられるデータの一例である。図2(a)に示す参照用薬歴データ5は、過去の指導文の中から参照に適した指導文を抽出する際に利用されるデータである。サーバ3の記憶部は、参照用薬歴データ5を記憶する参照用薬歴記憶部として機能する。
図2(a)に示すように、参照用薬歴データ5は、このデータを一意に識別する薬歴識別番号11と、薬歴データの属性を示す複数の薬歴属性6と、過去の服薬指導の内容を示す指導文20と、指導文20を抽出する際に用いられる抽出スコア21と、を含む。薬歴識別番号11は主キーであり、参照用薬歴データ5がサーバ3の記憶部に記憶される際に自動的に付番される。薬歴属性6及び指導文20は、過去の薬歴データのデータベース(不図示)からサーバ3によって取得される。抽出スコア21は、図4を参照しながら後述する抽出スコア算出処理によって算出される。
薬歴属性6は、指導種別を一意に識別する指導種別コード12、薬剤師を識別する薬剤師識別情報、患者の属性を示す患者属性情報、及び薬剤の効能を示す薬効情報を含む。薬剤師識別情報は、薬剤師を一意に識別する薬剤師コード13である。患者属性情報は、新規の患者又は継続の患者のいずれかを示す新規継続区分14、患者の年齢の区分を示す年齢区分15、患者の性別を示す性別16、患者が妊婦か否かを示す妊婦区分17、及び患者が受診した診療科を一意に識別する診療科コード18である。薬効情報は、患者が処方された薬剤の効能を示す第1薬効19a乃至第10薬効19jである。
指導種別とは、服薬指導の内容を薬歴として残す際の分類項目である。分類項目としては、SOAP形式が知られている。SOAP形式とは、「Subjective data(主観的情報):患者が話した内容や症状など」、「Objective data(客観的情報):検査データ、処方内容など」、「Assessment(判断・評価):薬剤師としての判断や評価」、「Plan(計画):今回の服薬指導内容や次回確認する内容など」の4つの分類項目に従って、服薬指導の内容を分類するものである。但し、本発明の実施形態における指導種別は、SOAP形式に限定されるものではなく、ユーザである薬剤師が新たな分類項目を追加することができる。
年齢区分15は、本発明の実施形態においては、患者の実年齢によって、「幼児」、「未成年」、「一般」及び「高齢」に分けている。但し、年齢区分15は、この例に限定されるものではない。
本発明の実施形態では、過去の指導文の中から参照に適した指導文を抽出する際、異なるメーカーの薬剤であっても、薬効が同じであれば、同様のものとして取り扱う。そこで、サーバ3は、過去の薬歴データのデータベース(不図示)から情報を取得して参照用薬歴データ5を生成する際、薬効に関する情報を取得し、参照用薬歴データ5の第1薬効19a乃至第10薬効19jに記憶する。1回の服薬指導において、複数の薬剤が処方されたり、1つの薬剤でも複数の薬効があったりするので、1つの参照用薬歴データ5に複数の薬効が含まれることがある。薬効の例としては、全身麻酔剤、催眠鎮静剤・抗不安剤、抗てんかん剤、解熱鎮痛消炎剤、興奮剤・覚せい剤、抗パーキンソン剤、精神神経用剤、総合感冒剤等が挙げられるが、この例に限定されるものではない。
図2(b)に示す抽出条件設定データ7a及び図2(c)に示す抽出条件設定データ7bは、過去の指導文の中から参照に適した指導文を抽出する際に利用されるデータである。サーバ3の記憶部は、抽出条件設定データ7a及び7bを記憶する抽出条件設定記憶部として機能する。
図2(b)に示すように、抽出条件設定データ7aは、このデータを一意に識別する設定識別番号(親)31と、全ての薬剤師に共通する設定か、又は個別の薬剤師に対する設定かを示す設定区分32と、設定区分32が個別の場合、その薬剤師を一意に識別する薬剤師コード33と、過去の指導文の中から参照に適した指導文を抽出する際に用いられる抽出条件8と、を含む。設定識別番号(親)31は主キーであり、抽出条件設定データ7aがサーバ3の記憶部に記憶される際に自動的に付番される。抽出条件設定データ7a及び7bは親子関係になっており、設定識別番号(親)31は抽出条件設定データ7bの外部キーにもなる。設定区分32、薬剤師コード33及び抽出条件8は、図5を参照しながら後述する抽出条件設定受付処理によって設定される。
本発明の実施形態では、抽出条件8は、薬局内の全ての薬剤師に共通する設定を用いても良いし、薬剤師ごとの個別の設定を用いても良い。後述する指導文抽出処理において、サーバ3は、服薬指導支援システム1にログイン中の薬剤師に関する抽出条件設定データ7aが存在すれば、その個別の設定を用いて指導文を抽出し、存在しなければ、共通の設定を用いて指導文を抽出する。設定区分32が共通の場合、薬剤師コード33は、例えば「0」など、個別の薬剤師と対応付けられていない値が記憶される。
抽出条件設定データ7aに記憶される抽出条件8は、新規継続区分34、年齢区分35、性別36、妊婦区分37、診療科コード38及び第1薬効39a乃至第10薬効39jであり、それぞれ、参照用薬歴データ5の新規継続区分14、年齢区分15、性別16、妊婦区分17、診療科コード18及び第1薬効19a乃至第10薬効19jに対応する。
図2(c)に示すように、抽出条件設定データ7bは、このデータを一意に識別する設定識別番号(子)41と、抽出条件設定データ7aと紐付けられるための設定識別番号(親)42と、抽出条件8としての薬剤師を示す抽出薬剤師識別情報(=抽出薬剤師コード43)と、を含む。設定識別番号(子)41は主キーであり、抽出条件設定データ7bがサーバ3の記憶部に記憶される際に自動的に付番される。前述の通り、設定識別番号(親)42は外部キーであり、これによって抽出条件設定データ7a及び7bの親子関係が構築される。抽出薬剤師識別情報は、図5を参照しながら後述する抽出条件設定受付処理によって設定される。
本発明の実施形態における服薬指導支援システム1は、ログイン中の薬剤師に関する過去の指導文の中からだけでなく、他の薬剤師に関する過去の指導文も含めた中から、参照に適した指導文を抽出し、薬剤師に提示することもできる。そして、ユーザである薬剤師は、どの薬剤師を抽出範囲に含めるのかを適宜設定することができる。例えば、経験が浅い薬剤師であれば、経験が豊富な同僚の薬剤師に関する過去の指導文を含める設定にすることによって、経験が豊富な薬剤師の指導文を参考にできるので、より良い服薬指導を実践することが可能となり、ユーザの満足感が得られる。
本発明の実施形態では、図2に示すデータの他に、指導種別コードの内容を示す指導種別マスタ、薬剤師コードと対応付けられている薬剤師の情報を示す薬剤師マスタ、診療科コードの内容を示す診療科マスタ、薬効の内容を示す薬効マスタ等を用いる。
図3は、服薬指導支援システム1の処理の流れを示すフローチャートである。図3では、便宜上、ステップS1乃至S5に処理の順番を示す矢印が図示されているが、必ずしも、この順番で処理が実行される訳ではない。
図3に示すステップS1及びステップS2は、例えば薬局の業務時間外にバッチ処理で実行し、ステップS3乃至ステップS5は、端末2からの要求(リクエスト)に応じてオンライン処理で実行する。
バッチ処理では、サーバ3の制御部は、予め設定されているスケジュールに従い、ステップS1及びステップS2を順次実行する。
オンライン処理では、端末2の制御部が、入力部を介して入力される要求(リクエスト)を受け付け、ネットワーク4を介してサーバ3に送信する。サーバ3の制御部は、端末2から要求(リクエスト)を受信すると、データベースの検索等の必要な処理を実行し、ネットワーク4を介して端末2に応答(レスポンス)を送信する。端末2は、サーバ3から応答(レスポンス)を受信すると、その内容を表示部に表示する。抽出条件の設定の要求(リクエスト)に対しては、サーバ3の制御部は、ステップS3のみ実行する。一方、過去の指導文の提示の要求(リクエスト)に対しては、サーバ3の制御部は、ステップS4及びステップS5を順次実行する。
このように、処理に時間を要するステップS2の抽出スコア算出処理はバッチ処理で実行し、処理に時間を要しないステップS4の指導文抽出処理及びステップS5の指導文提示処理はオンライン処理で実行することによって、患者に適した指導文の抽出と、ユーザの要求(リクエスト)に対する応答(レスポンス)時間の短縮を両立でき、ユーザの満足感が得られる。
尚、服薬指導支援システム1では、オンライン処理を行う際、最初にユーザのログイン処理(不図示)を実行する。そして、オンライン処理の間、サーバ3の制御部は、どの薬剤師がログイン中であるかを薬剤師コードによって識別可能である。
ステップS1の薬歴データ取得処理では、サーバ3の制御部は、過去の薬歴データのデータベース(不図示)から情報を取得し、参照用薬歴データ5を生成し、記憶部に記憶する。例えば、サーバ3の制御部は、初回の実行を除き、過去の薬歴データのデータベース(不図示)における各データの更新時刻を参照し、前回の実行から更新されているデータのみを取得し、参照用薬歴データ5を新規に生成したり、一部の項目を更新したりする。
ステップS2の抽出スコア算出処理では、サーバ3の制御部は、参照用薬歴記憶部(=参照用薬歴データ5を記憶するサーバ3の記憶部)から指導文を取得し、抽出スコアを算出し、抽出スコアを参照用薬歴記憶部に記憶させる。すなわち、サーバ3の制御部は、抽出スコア算出部として機能する。
図4は、抽出スコア算出処理を説明する図である。図4(a)は、同一の薬歴属性の範囲内の指導文集合51の一例を示している。指導文集合51は、参照用薬歴記憶部に記憶されている参照用薬歴データ5のうち、図2に示す薬歴属性6の1又は複数が特定の値に合致する指導文20の一例である。図4(a)に示す例では、X1乃至X4の4件の指導文が含まれている。
サーバ3の制御部は、予め類似度を算出する範囲の基本パターンを記憶しておく。基本パターンは、図2に示す薬歴属性6の一部によって構成されても良いし、全部によって構成されても良い。例えば、薬歴属性6のうち、指導種別コード12、新規継続区分14及び年齢区分15ごとに類似度を算出する場合、指導種別コード12がSOAP形式の4パターン、新規継続区分14が「新規」及び「継続」の2パターン、年齢区分15が「幼児」、「未成年」、「一般」及び「高齢」の4パターンであれば、基本パターンの数は、4×2×4=32となる。サーバ3の制御部は、基本パターンの薬歴属性6を検索条件として参照用薬歴データ5を検索し、同一の薬歴属性の範囲内の指導文集合51を取得し、取得される指導文集合51に対して抽出スコアを算出することを繰り返す。基本パターンの数が32であれば、サーバ3の制御部は、抽出スコア算出処理を32回繰り返す。
図4(b)は、図4(a)に示す指導文集合51の全ての組み合わせの類似度算出結果52を示している。図4(b)に示すように、類似度算出結果52は、X1とX2の類似度Y12、X1とX3の類似度Y13、X1とX4の類似度Y14、X2とX3の類似度Y23、X2とX4の類似度Y243、X3とX4の類似度Y34の6件である。
本発明の実施形態では、サーバ3の制御部は、ゲシュタルトパターンマッチングによって、2つの指導文の文字列の類似度を算出する。ゲシュタルトパターンマッチングでは、比較する2つの文字列に対し、最長共通部分列を再帰的に求め、全ての共通部分列の長さの和を2つの文字列の長さの合計で除算した値を類似度とする。2つの文字列が完全に一致する場合は類似度が1となり、いずれの部分列でも一致しない場合は類似度が0となる。但し、類似度の算出方法はこの例に限定されるものではなく、他の公知の類似度算出手法を適用することが可能である。
図4(c)は、図4(b)に示す類似度算出結果52に基づく抽出スコア計算式53を示している。本発明の実施形態では、サーバ3の制御部は、同一の薬歴属性の範囲内で算出される類似度の合計を抽出スコアとする。図4(c)に示すように、抽出スコア計算式53は、X1の抽出スコアZ1=Y12+Y13+Y14、X2の抽出スコアZ2=Y12+Y23+Y24、X3の抽出スコアZ3=Y13+Y23+Y34、X4の抽出スコアZ4=Y14+Y24+Y34となる。但し、抽出スコアの算出方法はこの例に限定されるものではなく、同一の薬歴属性の範囲内で算出される類似度に基づいて算出されるものであれば、他の計算式を用いても良い。
このように、抽出スコア算出部としてのサーバ3の制御部は、参照用薬歴記憶部から薬歴属性ごとに指導文を取得し、同一の薬歴属性の範囲内の指導文同士の類似度を算出し、その類似度に基づいて抽出スコアを算出する。図6及び図7を参照しながら後述する指導文編集において、参照用に提示される指導文をそのまま転記する、又は微細な修正のみを加える等、実際の服薬指導において採用される回数が多い指導文は、多くの他の指導文との間で類似度が大きい値になる。従って、この抽出スコア算出部によれば、採用回数が多く、重要な指導文がユーザに提示される確率が高まっていき、ユーザの満足感が得られる。また、同一の薬歴属性の範囲内に限定して類似度を算出することによって、薬歴属性が異なり、ノイズと考えられる指導文の影響を排除し、かつ算出時間を短縮できる。
図3の説明に戻る。ステップS3の抽出条件設定受付処理では、サーバ3の制御部は、端末2から送信される要求(リクエスト)に応答し、過去指導文の抽出条件設定を受け付けるための抽出条件設定画面の表示データを端末2に送信する。端末2の制御部は、抽出条件設定画面の表示データを表示部に表示し、薬歴属性の中から抽出条件の設定を受け付け、端末2の入力部を介して入力される抽出条件の設定値をサーバ3に送信する。サーバ3の制御部は、抽出条件の設定値を抽出条件設定データ7a及び7bとして抽出条件設定記憶部(=抽出条件設定データ7a及び7bを記憶するサーバ3の記憶部)に記憶させる。すなわち、端末2の制御部及びサーバ3の制御部は、抽出条件設定受付部として機能する。この抽出条件設定受付部によれば、ユーザが指導文20の提示結果に納得できない場合、ユーザ自らが抽出条件8の再設定を行い、迅速に改善でき、ユーザの満足感が得られる。
図5は、抽出条件設定画面の一例を示す図である。図5に示す抽出条件設定画面60は、過去指導文の抽出条件設定を受け付けるための画面である。抽出条件設定画面60は、設定区分61、薬剤師62、患者年代63、新規継続64、患者性別65、妊婦66、診療科67及び薬効68の設定項目と、設定の登録指示を受け付けるための登録ボタン69と、抽出条件設定画面60を閉じる指示を受け付けるための閉じるボタン70と、を有する。
設定区分61は、図2(b)に示す抽出条件設定データ7aの設定区分32及び薬剤師コード33に対応する設定項目であり、共通61a及び個別61bの2種類のラジオボタン(=排他的選択肢)によって構成されている。共通61aの選択は、全ての薬剤師に共通する設定とすることを意味し、個別61bの選択は、個別の薬剤師に対する設定とすることを意味する。
端末2の制御部は、設定区分61の選択を受け付け、共通61aが選択されると、共通を示すデータをサーバ3に送信する。サーバ3の制御部は、抽出条件設定データ7aの設定区分32を「共通」、抽出条件設定データ7aの薬剤師識別情報(=薬剤師コード33)を「薬剤師に対応付けられていない値」(例えば0)とし、抽出条件設定記憶部(=抽出条件設定データ7aを記憶するサーバ3の記憶部)に記憶させる。
一方、端末2の制御部は、設定区分61の選択を受け付け、個別61bが選択されると、個別を示すデータと、ログイン中の薬剤師を示す薬剤師識別情報(=ログイン処理に用いられた薬剤師コード)をサーバ3に送信する。サーバ3の制御部は、抽出条件設定データ7aの設定区分32を「個別」とし、ログイン中の薬剤師を示す薬剤師識別情報を、抽出条件設定データ7aの薬剤師識別情報として抽出条件設定記憶部に記憶させる。
これによって、経験が浅いユーザは、共通の設定によって過去の指導文20を参照可能になるとともに、経験豊かなユーザは、個別の設定によって過去の指導文20を参照可能になる。従って、経験の度合に関係なく有益な利用が可能となり、ユーザの満足感が得られる。
薬剤師62は、図2(c)に示す抽出条件設定データ7bの抽出薬剤師コード43に対応する設定項目であり、複数のチェックボックス62a(=非排他的選択肢)と、各チェックボックス62aに対応する複数の薬剤師名62bと、によって構成されている。薬剤師名62bの「自分」は、ログイン中の薬剤師のことを意味する。
チェックボックス62aがチェックされた薬剤師名62bに対応する薬剤師識別情報は、抽出条件として設定される。すなわち、端末2の制御部は、抽出条件とする薬剤師62の選択を受け付け、選択される薬剤師を示す薬剤師識別情報(=薬剤師コード)をサーバ3に送信する。サーバ3の制御部は、抽出条件設定データ7bの抽出薬剤師識別情報(=抽出薬剤師コード43)として抽出条件設定記憶部(=抽出条件設定データ7aを記憶するサーバ3の記憶部)に記憶させる。図5に示す例では、薬剤師名62bが「自分」及び「〇〇薬剤師」のチェックボックス62aにチェックされていることから、抽出条件設定データ7bの抽出薬剤師識別情報には、ログイン中の薬剤師に関する薬剤師コードと、〇〇薬剤師に関する薬剤師コードが記憶される。
このように、ユーザである薬剤師は、どの薬剤師を抽出範囲に含めるのかを適宜設定することができる。例えば、経験が浅い薬剤師であれば、経験が豊富な薬剤師に関する過去の指導文20を含める設定にすることによって、経験が豊富な薬剤師の指導文20を参考にできるので、より良い服薬指導を実践することが可能となり、ユーザの満足感が得られる。
患者年代63、新規継続64、患者性別65、妊婦66及び診療科67は、それぞれ、図2(b)に示す抽出条件設定データ7aの年齢区分15、新規継続区分14、性別16、妊婦区分17及び診療科コード18に対応する設定項目であり、指導対象患者と同じ63a、64a、65a、66a又は67a、及びすべて63b、64b、65b、66b又は67bの2種類のラジオボタン(=排他的選択肢)によって構成されている。指導対象患者と同じ63a、64a、65a、66a又は67aの選択は、指導対象患者と同様の設定値を抽出条件とすることを意味し、すべて63b、64b、65b、66b又は67bの選択は、すべての設定値を抽出条件とすることを意味する。
端末2の制御部は、それぞれ、患者年代63、新規継続64、患者性別65、妊婦66及び診療科67の選択を受け付け、指導対象患者と同じ63a、64a、65a、66a又は67aが選択されると、指導対象患者と同じを示すデータをサーバ3に送信する。サーバ3の制御部は、指導対象患者と同じを示す設定値を抽出条件設定データ7aの年齢区分15、新規継続区分14、性別16、妊婦区分17又は診療科コード18とし、抽出条件設定記憶部(=抽出条件設定データ7aを記憶するサーバ3の記憶部)に記憶させる。
一方、端末2の制御部は、それぞれ、患者年代63、新規継続64、患者性別65、妊婦66及び診療科67の選択を受け付け、すべて63b、64b、65b、66b又は67bが選択されると、すべてを示すデータをサーバ3に送信する。サーバ3の制御部は、すべてを示す設定値を抽出条件設定データ7aの年齢区分15、新規継続区分14、性別16、妊婦区分17又は診療科コード18とし、抽出条件設定記憶部に記憶させる。
薬効68は、図2(b)に示す抽出条件設定データ7aの第1薬効39a乃至第10薬効39jに対応する設定項目であり、指導対象処方と同じ68a及び任意選択68bの2種類のラジオボタン(=排他的選択肢)と、任意選択68bを行うための複数のチェックボックス68c(=非排他的選択肢)と、各チェックボックス68cに対応する複数の薬効名称68dと、によって構成されている。指導対象処方と同じ68aの選択は、指導対象処方と同じ薬効を抽出条件とすることを意味し、任意選択68bの選択は、チェックボックス68cによって選択されている薬効を抽出条件とすることを意味する。
端末2の制御部は、薬効68の選択を受け付け、指導対象処方と同じ68aが選択されると、指導対象処方と同じを示すデータをサーバ3に送信する。サーバ3の制御部は、指導対象処方と同じを示す設定値を、抽出条件設定データ7aの第1薬効39a乃至第10薬効39jの1又は複数の項目に設定し、抽出条件設定記憶部(=抽出条件設定データ7aを記憶するサーバ3の記憶部)に記憶させる。
一方、端末2の制御部は、薬効68の選択を受け付け、任意選択68bが選択されると、チェックボックス68cによって選択されている薬効を示すデータをサーバ3に送信する。サーバ3の制御部は、チェックボックス68cによって選択されている薬効を、抽出条件設定データ7aの第1薬効39a乃至第10薬効39jの1又は複数の項目に設定し、抽出条件設定記憶部に記憶させる。
図3の説明に戻る。ステップS4の指導文抽出処理では、サーバ3の制御部は、端末2から送信される要求(リクエスト)に応答し、参照用薬歴記憶部(=参照用薬歴データ5を記憶するサーバ3の記憶部)から、抽出条件を満たし、かつ抽出スコアが大きい方から所定の順位内の指導文を抽出する。すなわち、サーバ3の制御部は、指導文抽出部として機能する。この指導文抽出部によれば、指導文20が何故この患者に対して提示されたのかという根拠が分かり易く、ユーザの満足感が得られる。
また、ステップS5の指導文提示処理では、サーバ3の制御部は、ステップS4の指導文抽出処理において抽出される指導文のデータを端末2に送信する。端末2の制御部は、指導文のデータを表示部に表示することによって、ユーザに提示する。すなわち、端末2の制御部及びサーバ3の制御部は、指導文提示部として機能する。
図6は、指導文編集画面の一例を示す図である。図6に示す指導文編集画面80は、指導文の編集を受け付けるための画面である。指導文編集画面80は、プロブレム編集項目81と、指導文編集項目82と、前回指導タブ83、指導文参照タブ84、薬品別文言集タブ85、指導セットタブ86及び過去指導文タブ87の表示項目と、参照用指導文を指導文編集項目82に転記する指示を受け付けるための全てコピーボタン88と、編集結果の登録指示を受け付けるための登録ボタン89と、指導文編集画面80を閉じる指示を受け付けるための閉じるボタン90と、を有する。
プロブレム編集項目81における「プロブレム」とは、POS(Problem Oriented System:問題志向型システム)の考え方における患者が抱える問題のことを意味する。プロブレム編集項目81は、患者が抱える問題を解決するプロセスの名称を示すプロセス名称81aと、プロセス名称81aの編集指示を受け付けるためのプロブレム編集ボタン81bと、によって構成されている。図6に示す例では、プロセス名称81aとして、「#2 症状の観察」が図示されている。
指導文編集項目82は、1又は複数の行を有するリストになっていて、指導種別ごとに行を分けて指導文が編集できるようになっている。例えば、端末2がタブレット端末であれば、ユーザが指導文編集項目82の行をタップすることによって、その行が編集可能となる。
指導文編集項目82は、各行の選択を受け付けるための1又は複数のチェックボックス82a(=非排他的選択肢)と、各チェックボックス82aに対応する指導種別プルダウンメニュー82b及び指導文82cと、チェックボックス82aによって選択されている行の削除指示を受け付けるための削除ボタン82dと、行の追加指示を受け付けるための行を追加ボタン82eと、によって構成されている。
前回指導タブ83、指導文参照タブ84、薬品別文言集タブ85、指導セットタブ86及び過去指導文タブ87の表示項目は、排他的表示項目であり、いずれか1つのタブの内容のみが指導文編集画面80に表示される。図6に示す例では、過去指導文タブ87の表示項目が表示されている。
前回指導タブ83は、指導対象患者に対する前回の服薬指導において登録された指導文等が参照可能である。指導文参照タブ84は、予め登録されている定型的な指導文等が参照可能である。薬品別文言集タブ85は、予め登録されている薬品別の文言集が参照可能である。指導セットタブ86は、予め登録されている1又は複数の指導種別及び指導文のセットが参照可能である。過去指導文タブ87は、過去の指導文が参照可能である。前回指導タブ83、指導文参照タブ84、薬品別文言集タブ85及び指導セットタブ86の詳細説明は省略する。
過去指導文タブ87は、抽出条件設定画面60の表示指示を受け付けるための抽出条件設定ボタン87aと、指導種別87cごとに指導文87dが表示される過去指導文リスト87bと、によって構成されている。
端末2の制御部は、過去指導文タブ87の選択を受け付けると、サーバ3に過去指導文タブ87を表示する要求(リクエスト)を送信する。サーバ3の制御部は、要求(リクエスト)に応じて、ステップS4の指導文抽出処理及びステップS5の指導文提示処理を実行し、過去指導文タブ87の表示データを端末2に送信する。端末2の制御部は、過去指導文タブ87の表示データを指導文編集画面80内に表示する。
図6に示す例では、指導種別87cが「S」の指導文87dが2件、指導種別87cが「О」の指導文87dが2件、指導種別87cが「A」の指導文87dが2件、指導種別87cが「P」の指導文87dが2件の計8件が図示されている。すなわち、図6に示す例では、サーバ3の制御部は、指導種別ごとに、抽出条件を満たし、かつ抽出スコアが大きい方から2位までの指導文を抽出している。但し、抽出件数はこの例に限られるものではなく、1位だけを抽出しても良いし、3位以上を抽出しても良い。
図7は、過去指導文選択画面の一例を示す図である。図7に示す過去指導文選択画面100は、図6に示す指導文編集画面80においてポップアップ画面として表示される画面であり、指導文編集画面80において指導文編集項目82に転記する過去指導文の選択を受け付けるための画面である。過去指導文選択画面100は、指導種別101及び指導文102の表示項目と、指導文編集項目82への転記指示を受け付けるためのコピーボタン103と、過去指導文選択画面100を閉じる指示を受け付けるための閉じるボタン104と、を有する。
例えば、端末2がタブレット端末であれば、ユーザが、図6に示す指導文編集画面80の過去指導文タブ87において指導文87dをタップすると、タップされた指導文87dの指導種別87cに関する過去指導文のリストを含む過去指導文選択画面100がポップアップ画面として端末2の表示部に表示される。図6及び図7に示す例では、ユーザが、指導文編集画面80の過去指導文タブ87において、指導種別87cが「S」の指導文87dをタップした結果、過去指導文選択画面100には、指導種別101が「S」、指導文102が「残業なし。病床不変。」及び「残薬なし。ご家族代理。」の2件が表示されている。ユーザが、この2件のうち1件又は2件を選択した状態で、端末2の入力部を介してコピーボタン103をタップすると、ポップアップ画面である過去指導文選択画面100が閉じられるとともに、選択されている指導文102の内容が指導文編集画面80の指導文編集項目82に転記された状態で表示される。この後、ユーザが、指導文編集画面80の登録ボタン89をタップすると、指導文編集画面80の指導文編集項目82に表示されている内容が、過去の薬歴データのデータベース(不図示)に登録される。
以上の通り、本発明の実施形態における服薬指導支援システム1によれば、ユーザの満足感が得られる服薬指導支援システム等を提供することができる。特に、指導文抽出部としてのサーバ3の制御部は、参照用薬歴データ5を記憶する参照用薬歴記憶部から、抽出条件8を満たし、かつ抽出スコア21が大きい方から所定の順位内の指導文20を抽出することから、指導文20が何故この患者に対して提示されたのかという根拠が分かり易く、ユーザの満足感が得られる。また、抽出条件設定受付部としての端末2の制御部及びサーバ3の制御部は、薬歴属性6の中から抽出条件8の設定を受け付け、抽出条件設定データ7a及び7bとして抽出条件設定記憶部に記憶させることから、ユーザが指導文20の提示結果に納得できない場合、ユーザ自らが抽出条件8の再設定を行い、迅速に改善でき、ユーザの満足感が得られる。更に、処理に時間を要する抽出スコア算出部の処理はバッチ処理で実行し、処理に時間を要しない指導文抽出部及び指導文提示部の処理はオンライン処理で実行することによって、患者に適した指導文の抽出と、ユーザの要求(リクエスト)に対する応答(レスポンス)時間の短縮を両立でき、ユーザの満足感が得られる。
また、抽出スコア算出部としてのサーバ3の制御部は、参照用薬歴記憶部から薬歴属性6ごとに指導文20を取得し、同一の薬歴属性6の範囲内の指導文20同士の類似度を算出し、類似度に基づいて抽出スコア21を算出する。参照用に提示される指導文をそのまま転記する、又は微細な修正のみを加える等、実際の服薬指導において採用される回数が多い指導文は、多くの他の指導文との間で類似度が大きい値になる。従って、この抽出スコア算出部によれば、採用回数が多く、重要な指導文がユーザに提示される確率が高まっていき、ユーザの満足感が得られる。また、同一の薬歴属性の範囲内に限定して類似度を算出することによって、薬歴属性が異なり、ノイズと考えられる指導文の影響を排除し、かつ算出時間を短縮できる。
また、抽出条件設定データ7aは、全ての薬剤師に共通する設定か、又は個別の薬剤師に対する設定かを示す設定区分32を含み、抽出条件設定受付部は、設定区分32の選択を受け付け、個別の薬剤師に対する設定が選択されると、ログイン中の薬剤師を示す薬剤師識別情報(=ログイン処理に用いられた薬剤師コード)を抽出条件設定データ7a及び7bの前記薬剤師識別情報(=薬剤師コード33)として抽出条件設定記憶部に記憶させる。これによって、経験が浅いユーザは、共通の設定によって過去の指導文20を参照可能になるとともに、経験豊かなユーザは、個別の設定によって過去の指導文20を参照可能になる。従って、経験の度合に関係なく有益な利用が可能となり、ユーザの満足感が得られる。
また、抽出条件設定データ7bは、抽出条件8としての薬剤師を示す抽出薬剤師識別情報(=抽出薬剤師コード43)を含み、抽出条件設定受付部は、抽出条件8とする薬剤師の選択を受け付け、選択される薬剤師を示す薬剤師識別情報を抽出条件設定データ7bの抽出薬剤師識別情報として抽出条件設定記憶部に記憶させる。これによって、ユーザである薬剤師は、どの薬剤師を抽出範囲に含めるのかを適宜設定することができる。例えば、経験が浅い薬剤師であれば、経験が豊富な同僚の薬剤師に関する過去の指導文20を含める設定にすることによって、経験が豊富な薬剤師の指導文20を参考にできるので、より良い服薬指導を実践することが可能となり、ユーザの満足感が得られる。
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る服薬指導支援システム等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。